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可変ピッチプロペラ制御方法および可変プロペラ制御装置ならびに可変ピッチプロペラ制御装置を搭載した船舶
説明

可変ピッチプロペラ制御方法および可変プロペラ制御装置ならびに可変ピッチプロペラ制御装置を搭載した船舶

【課題】従来の方法よりも、高い水準の省エネルギー化を実現することができる、可変ピッチプロペラ制御方法および可変プロペラ制御装置ならびに可変ピッチプロペラ制御装置を搭載した船舶を提供する。
【解決手段】主機燃料消費率特性記憶部41に記憶されている主機燃料消費率特性とプロペラ効率特性記憶部42に記憶されている可変ピッチプロペラ60のプロペラ効率特性とを考慮して、燃料消費量特性制御部43により求められた燃料消費量特性に基づいて、主機50と主機50により駆動される可変ピッチプロペラ60を制御する制御手段40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料消費量の最適化による省エネルギー化に有効な可変ピッチプロペラ(Controllable Pitch Propeller 以下適宜「CPP」と記す。)制御方法および可変ピッチプロペラ制御装置ならびに可変ピッチプロペラ制御装置を搭載した船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料消費量を最適化するため、プロペラ効率を最大にする方法が用いられている(例えば特許文献1〜5)。この方法は、プロペラ効率が最大となるように可変ピッチプロペラを制御し、プロペラ効率が最大であるが故に燃料消費量の面でも良くなるという考え方に基づいている。
【0003】
特許文献1には、可変ピッチプロペラの自動負荷制御装置において、運航時と試運転時とで燃料の性状が異なる場合や主機の運転条件の異なる場合に、主機の実際の負荷と試運転により設定された負荷との間に生じる差を修正するために、燃料性状等に応じて主機燃料投入量を補正する補正計算手段を設ける構成が開示されている。
しかし、同文献に開示されているのは、設定した負荷で主機を運転するための補正計算手段を設けることのみであり、適切な回転数と出力の関係をどのようにして求めるかについては記載されていない。
【0004】
特許文献2には、ブースト・ディーゼル・エンジンの非定常運転条件を伴う可変ピッチ・プロペラの制御方法において、エンジン負荷またはエンジン出力を増加させる際に不完全燃焼による煙の発生量を減少させるために、最初に一定出力のもとでプロペラのピッチを減少させ回転速度を増加させ、次いで、プロペラのピッチを増加させる構成が開示されている。
しかし、この構成は大量の燃料を供給した場合、主機の運転がトルクリッチゾーン(サージングゾーン)に入って不完全燃焼による煙(黒煙)を上げることを避けるためのものである。これは、いわゆるオーバーロードコントロールの一部であり、煙を生じる過負荷条件以外の状況において燃料消費量を最適化することについては何ら考慮されていない。
【0005】
特許文献3には、船舶推進装置において、主機の燃料消費効率を最適に保つことができるように、ガバナ制御とプロペラピッチ制御手段とを総合的に制御する構成が開示されている。
しかし、同文献に記載の発明は、ハンドルを通常航行状態と微速航行状態とで切換える操作が煩雑であるという問題の解消を課題とするものであり、上記開示は、主機の燃料消費効率を最適に保つことに関する一般的な説明にすぎない。このため、燃料消費量を最適に保つための具体的な構成は何ら記載されていない。
【0006】
特許文献4には、可変ピッチプロペラ装置におけるピッチ角制御方法において、エンジン回転数によってプロペラのピッチ角を自動制御する構成が開示されている。
しかし、この構成は、特許文献2同様、不完全燃焼による極端に燃費の悪い状態を避けることを目的として、プロペラのピッチ角を制御することにより、エンジンの出力が最高となる回転数域(パワーバンド)内となるようにエンジンの回転数を維持するものである。また、不完全燃焼の生じる過負荷条件以外の通常の運転状態において更に燃費を良くするための構成は記載されていない。
【0007】
特許文献5には、船舶の推進装置において、据付け工数が少なくスペースも小さくてすむ定速回転型主機を主機関の代わりに使用するため、プロペラの回転数調整を可変ピッチプロペラにより行う構成が開示されている。
しかし、この構成は、可変ピッチプロペラを用いて船速を変えることにより周波数を一定(定回転)として、効率の悪いインバータ(周波数調整)を使用しないことにより、電力ロスを少なくして燃料費を節約するものであり、同文献には、燃費を良くするためのCPPの制御方法については何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平3−9517号公報
【特許文献2】特開平7−149287号公報
【特許文献3】特開平8−239093号公報
【特許文献4】特開平8−295289号公報
【特許文献5】特開2000−108992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したとおり、燃料消費量を最適化するために用いられている従来の方法としては、プロペラ効率を最大にする方法、および主機の不完全燃焼による極端な燃費の悪化を避ける方法がある。しかし、これら従来の方法はいずれも、省エネルギー化を実現するための方法として、十分なものではない。
そこで、本発明は、従来の方法より高い水準の省エネルギー化を実現することができる、可変ピッチプロペラ制御方法および可変プロペラ制御装置ならびに可変ピッチプロペラ制御装置を搭載した船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明の可変ピッチプロペラ制御方法は、主機と前記主機により駆動される可変ピッチプロペラを、前記主機の主機燃料消費率特性と前記可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて制御したことを特徴とする。
この構成により、プロペラ効率特性に加えて主機燃料消費率特性をも考慮して可変ピッチプロペラを制御することができる。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記燃料消費量特性は、船体に搭載する主機の出力と回転数により決まる燃料消費量最少特性であることを特徴とする。
この構成により、燃料消費量最少特性に基づく制御を主機の出力あるいは回転数を基に行うことができる。
請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記燃料消費量最少特性は、船速を考慮して求めた特性であることを特徴とする。
この構成により、船速に応じて変化する燃料消費量最少特性に対応させて、可変ピッチプロペラを制御することができる。
請求項4に記載の本発明は、請求項2または請求項3に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記プロペラ効率特性は、前記可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、前記船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたことを特徴とする。
この構成により、可変ピッチプロペラ制御方法において、船体に備えられた可変ピッチプロペラの状態を反映させたプロペラ効率特性を用いることができる。
請求項5に記載の本発明は、請求項2から請求項4のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、前記プロペラ効率特性に対し、前記船体への海象の影響に基づく補正を行ったことを特徴とする。
この構成により、海象による船体への影響を可変ピッチプロペラ制御方法に反映させることができる。
請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の可変ピッチプロペラ制御方法において、船速と前記主機の出力の関係から、海象の影響としての波浪による抵抗増加量の程度を推定して、使用する前記燃料消費量特性を決めたことを特徴とする。
この構成により、直接評価することが困難な波浪の影響を取得の容易な情報に基づいて推定することができる。
【0011】
請求項7に記載の本発明の可変ピッチプロペラ制御装置は、船体を推進する原動機としての主機と、前記主機により駆動される可変ピッチプロペラと、前記主機の出力を設定する出力設定手段と、前記出力設定手段の設定と前記主機の主機燃料消費率特性と前記可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて前記主機と前記可変ピッチプロペラを制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
この構成により、プロペラ効率特性に加えて主機燃料消費率特性をも考慮して可変ピッチプロペラを制御することができる。
請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記燃料消費量特性は、前記船体に搭載する前記主機の出力と回転数により決まる燃料消費量最少特性であることを特徴とする。
この構成により、燃料消費量最少特性に対応して、可変ピッチプロペラを制御することができる。
請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記燃料消費量最少特性は、船速を考慮して求めた特性であることを特徴とする。
この構成により、船速に応じて変化する燃料消費量最少特性を考慮して可変ピッチプロペラを制御することができる。
請求項10に記載の本発明は、請求項7から請求項9のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記可変ピッチプロペラの回転数とピッチ角の関係を示す可変ピッチプロペラ特性データに基づき制御を行ったことを特徴とする。
この構成により、ピッチ角の制御を可変ピッチプロペラ特性データに基づいて行うことができる。
請求項11に記載の本発明は、請求項7から請求項10のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記プロペラ効率特性は、前記可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、前記船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたことを特徴とする。
この構成により、可変ピッチプロペラ制御において考慮されるプロペラ効率特性に、船体に備えられたプロペラの状態を反映させることができる。
請求項12に記載の本発明は、請求項7から請求項11のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラの制御装置において、前記プロペラ効率特性に対し、前記船体への海象の影響に基づく補正を行ったことを特徴とする。
この構成により、海象による船体への影響を可変ピッチプロペラ制御に反映させることができる。
請求項13に記載の本発明は、請求項12に記載の可変ピッチプロペラ制御装置において、前記燃料消費量最少特性を船体抵抗別に複数有しており、前記制御手段が船速と前記主機の出力の関係から波浪による抵抗増加量の程度を推定して、使用する前記燃料消費量最少特性を決めたことを特徴とする。
この構成により、直接評価することが困難な波浪の影響を取得の容易な情報に基づいて推定し、推定に基づいて使用する前記プロペラ効率特性を決めることができる。
【0012】
請求項14に記載の本発明の船舶は、請求項7から請求項13のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置を搭載したことを特徴とする。
この構成により、主機燃料消費率特性と可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて制御される可変ピッチプロペラにより、船舶を推進できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プロペラ効率特性に加えて主機燃料消費率特性をも考慮して可変ピッチプロペラを制御することにより、プロペラ性能や駆動源である主機の運転限界だけでなく、主機の主機燃料消費率特性も考慮した制御を行うことができるから、従来よりも高い水準の省エネルギー運行が可能となる。
特に、主機の出力と回転数により決まる燃料消費量最少特性を用いることにより、出力あるいは回転数、あるいはその近似値を使用して燃料消費量が最少となる運転条件を得ることができる。
また、燃料消費量最少特性として船速を考慮して求めた特性を用いることにより、船速の維持を燃料消費量最少特性に対応させて制御することができる。
また、プロペラ効率特性として、可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたものを用いることにより、主機燃料消費率特性との関連付けが容易にできる。
また、海象による船体への影響などを考慮して制御に反映させることにより、風や波のある実際の海面を航行する状況においても、平水中同様、高い水準の省エネルギー運行が可能となる。
また、主機の出力の関係から、海象の影響としての波浪による抵抗増加量の程度を推定して制御をおこなった場合は、直接評価することが困難な波浪の影響を取得の容易な情報に基づいて推定することができ、波浪の程度に応じて複数の燃料消費量最少特性を選択し得る。
さらに、船舶に本発明の可変ピッチプロペラ装置を搭載した場合は、主機燃料消費率特性と可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて制御される可変ピッチプロペラにより船舶を推進でき、従来よりも高い水準の省エネルギー運行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】CPPの性能特性曲線および等船速線を示したグラフ
【図2】主機の主機燃料消率特性曲線を示したグラフ
【図3】回転数Nと燃料消費量Fとの関係を船速毎に示したグラフ
【図4】図2の主機の燃料消費率特性曲線を示したグラフにCCP推進効率極大曲線および燃料消費量最少曲線を書き加えたグラフ
【図5】可変ピッチプロペラ制御装置ならびに同制御装置を搭載した船舶の概略を示すブロック図
【図6】従来の自動負荷制御方法を説明するグラフ
【図7】従来の過負荷保護方法を説明するグラフ
【図8】従来の自動船速制御方法を説明するグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、従来技術について説明する。現在、可変ピッチプロペラ(CPP)装備船に採用されている制御方法には、自動負荷制御方法、過負荷保護方法、自動船速制御方法などがある。それぞれの制御方法は、次のようなものである。図6〜図8は従来の自動負荷制御方法を説明するグラフである。
【0016】
図6は自動負荷制御方法を説明するグラフである。同図では、横軸が主機により回転するプロペラの回転数(N)を示し、縦軸がプロペラの出力(P)を示している。
同図に示すように、自動負荷制御方法は、(N,P)の組み合わせをプロペラ回転数の3乗に所定の係数を乗じた式により表される曲線に乗せるように主機(原動機)の出力を制御するものである。この方法は、同図に示す3乗曲線(P=a×N)とプロペラ効率が最高の点を結んだ曲線とが近似していることから、プロペラ効率に着目して推進効率が良くなるように制御する方法である。なお、上記所定の係数aとしては、船の形状や使用される状況に応じた値が適宜用いられる。
【0017】
図7は過負荷保護方法を説明するグラフである。同図では、横軸が主機の回転数(N)を示し、縦軸が主機の出力(P)を示している。
主機は、同図に縦方向の直線(実線)を用いて示すように主機許容回転数以下で用いられる。また、ある回転数において、出力を所定値以上に上げると不完全燃焼による煙(黒煙)をあげ、ひいては燃料を供給することができなくなる。このような現象は、図7に実線を用いて示した主機過負荷曲線の左側の領域において生じる。この主機過負荷曲線の左側の領域を過負荷領域(サージングゾーン)という。過負荷保護方法は、主機の出力とプロペラの回転数の関係を示す折れ線として記憶し、主機の運転状態が過負荷領域に入らないよう制御する方法である(特許文献2、特許文献4参照)。この制御方法は、不完全燃焼が生じる条件における運転を避けるためのものであり、主機が通常運転される過負荷領域ではない領域における燃費特性について何ら考慮するものではない。
【0018】
図8は自動船速制御方法を説明するグラフである。同図では、横軸が主機により回転するプロペラの回転数(N)を示し、縦軸が主機の出力(P)を示している。主機の出力(P)はプロペラの入力(P)にほぼ等しい。同図に示すように、自動船速制御方法は、操船者が入力した船速から外れた場合に、主機の回転数あるいは可変ピッチプロペラのピッチ角、または回転数とピッチ角の両方を制御して、希望の船速を保持するよう制御する方法である。例えば、ピッチ角がp+dpの場合、船速が目標船速Vよりもdvほど低いとき(V−dv)、ピッチ角を維持しつつ回転数Nを上げることにより図中に矢印Aで示すように可変ピッチプロペラの特性を示す曲線(点線)に沿って船速が増大し、回転数を維持しつつピッチ角を上げることにより図中に矢印Bで示すように船速が増大する。
上述した方法の機能以外の機能を持つ制御が行われる場合もあるが、従来の自動負荷制御方法において、主機の主機燃料消費率特性(より具体的には、図7における主機過負荷曲線と主機許容回転数を示す直線により挟まれる領域における主機の主機燃料消費率特性、図2参照)を考慮したものはない。
【0019】
近年、船舶などに対する省エネルギー化の要請が高くなっている。このため、省エネルギー化のために、燃費の良好な低い出力領域において主機を用いた航行がなされる。従来、このような低い出力による航行においても、プロペラの推進効率のみを考慮して可変ピッチプロペラのピッチ角の制御がなされていた。しかし、低い出力を用いる場合、高い出力を用いた航行と比較して、推進効率が良好となるプロペラの回転数と主機の燃費効率が良好となるプロペラの回転数との間の差が大きい。このため、従来の自動負荷制御方法は、省エネルギー化に有効なものとはいえない。
そこで、本発明は、プロペラの推進器性能のみならず主機の主機燃料消費率特性をも考慮し、両者のかけ算である燃料消費量の最低点を狙った制御を行う。このように主機の主機燃料消費率特性をも考慮して可変ピッチプロペラのピッチ角を制御することにより、従来の方法よりも高い水準の省エネルギー化を実現することができる。このことは、究極的な省エネルギー化につながるものである。
【0020】
本発明の可変ピッチプロペラ制御方法および制御装置に共通する構成について、図1および図2を参照して説明する。
図1はCPPの性能特性曲線を示したグラフであり、横軸が可変ピッチプロペラの回転数(N)を示し、縦軸が主機の出力(P)を示している。なお、可変ピッチプロペラと主機の回転数は、主機直結の場合には等しく、減速機を装備している場合には、その減速比に比例する。また、主機の出力は可変ピッチプロペラとほぼ等しい。同グラフは、破線で示す曲線が基準ピッチ角pである可変ピッチプロペラの特性を示す性能曲線であり、点線で示す曲線が基準ピッチ角とは異なるピッチ角(p−dp、p+dp、p+2dp)である可変ピッチプロペラの特性を示す性能曲線である。図1のグラフから、可変ピッチプロペラのピッチ角を変えることにより回転数と出力との関係が変わることが分かる。
また、図1には、実線により等船速線(所定の速度となる回転数と出力の組み合わせを示す線)も記入している。この等船速線により、可変ピッチプロペラのピッチ角を変えると同じ船速を実現するために必要な出力(必要出力)が変化することが分かる。
【0021】
図1に実線で示す等船速線の底となる点(特定の船速を得るために必要な出力が最も低くなる点)は、推進効率が最良であり必要出力が最少となる点である。同図によれば、必要出力が最少となる点が、破線で示した基準ピッチ角の性能曲線付近にあることが分かる。同図に破線で示した基準ピッチ角(p)の性能曲線を以下ではCCP推進効率極大曲線と呼ぶことにする。
なお、等ピッチ角での回転数と出力の関係を示す性能曲線は、P=a×Nにより表される曲線(カーブ)に近い。ここでaは定数であり、プロペラの形状やピッチ角によって異なる値をとる。
【0022】
図2は主機の主機燃料消費率特性曲線を示したグラフであり、横軸が主機の回転数(N)を示し、縦軸が主機の出力(P)を表している。同図に示す等高線のような曲線群は、等燃料消費率曲線である。そして、各等燃料消費率曲線は、単位出力・単位時間当たりの燃料消費量を示しており、燃料消費量が同じになる回転数Nと出力Pとの組み合わせとなる点を結んだものである。この燃料消費率の一般的な単位は(g/kW/H)で、1kW・1時間当たりに消費する燃料の質量(g)で示される。なお、同図の等高線の中心に近いほど燃料消費率が低い(燃費がよい)。
【0023】
図2の等燃料消費率曲線から同一馬力の燃料消費率の最良点を探し、それを結んだ線を図中に一点鎖線で示す。この一点鎖線で示す線を以下では燃料消費率極小曲線と呼ぶことにする。
【0024】
本発明によるCPP制御の概要を説明すると、以下の通りである。
ある船速(V)で運航する場合、プロペラの回転数と主機の出力との間には図1に実線で示した関係がある。このため、回転数N(Q)を決めると、図1のグラフから回転数N(Q)に対応する必要出力P(Q)(kw)を読み取ることができる。そして、回転数N(Q)、必要出力P(Q)における燃料消費率Fr(Q)(g/kW/H)を図2から読み取ることができる。この結果として、1時間当たりの燃料消費量F(g/H)が必要出力P(Q)と燃料消費率E(Q)の積として得られる。
【0025】
図3は、上述のようにして求められる回転数Nと燃料消費量Fとの関係を船速毎に示したグラフであり、横軸が主機の回転数Nを示し、縦軸が燃料消費量Fを示している。図3のグラフは、ある船速を実現する回転数と出力の組み合わせについて燃料消費量を求めた結果について、船速毎に回転数と燃料消費量とをプロットすることにより得られるものである。同グラフにより、船速ごとに燃料消費量が最少となる回転数Nminを求めることができる。図3のグラフに示すNmin(V)は、船速Vにおいて燃料消費量が最少となる回転数を示している。ただし、図3に示したように、船速別に計算する方法は一例であり、船速維持のために燃料消費量最少曲線を辿って制御する上で有用ではあるが、特にこのような目的を有さない場合は、燃料消費量の計算を船速別になす必要は無い。
【0026】
図4は、図2の主機の主機燃料消費率特性曲線を示したグラフにCCP推進効率極大曲線および燃料消費量最少曲線を書き加えたグラフである。横軸が主機の回転数Nを示し、縦軸が主機の出力Pを示している。この図4には図1に破線で示したCCP推進効率極大曲線も書き込んである。すなわち、図4に破線で示したCPP推進効率極大曲線は、図1に示した基準ピッチ(CCP推進効率極大曲線)と同じである。
【0027】
図4に示すように、破線で示したCPP推進効率極大曲線と一点鎖線で示した燃料消費量最少曲線とは一致しない。また、同一出力における両曲線の距離(回転数の違い)は、最大出力付近では小さいものの出力が小さくなるにしたがって大きくなる。このため、低い出力で航行する場合において、CPP推進効率が最大となるようにCPP推進効率極大曲線のみに基づいて制御を行う従来の方法は、省エネルギー化に有効なものではない。そこで、本発明は、CPPのピッチ角制御において、CPP推進効率極大曲線に加えて主機燃料消費率特性である燃料消費率極小曲線を考慮した燃料消費量最少曲線を用いる。これにより、従来よりも高い水準の省エネルギー化、特に、低い出力で航行する場合において、従来の方法に比して、顕著な省エネルギー化を実現することができる。本発明による省エネルギー化は、主機の最大出力の70%以下の出力で航行する場合に、特に顕著な効果を発揮する。
【0028】
ここで、燃料消費量最少曲線とは、各船速において1時間当たりの燃料消費量(g/H)が最少になる回転数Nminとその回転数を得るために必要な出力を示す点を結ぶことにより得られる線をいう。燃料消費量最少曲線が示す回転数と出力の点をねらってCPPのピッチ角を制御することによって、同じ船速における燃料消費量を最少化することができる。なお、燃料消費量特性は、本実施の形態のように燃料消費量の計算を船速別に行って求めることの他、また船速以外の例えば抵抗別に行うなど各種の方法によって求めることができる。また、燃料消費量最少曲線を主機の最大出力の70%以下の出力で航行する場合に用いるなど、燃料消費量最少曲線に基づいた制御方法としては各種の方法が考えられる。
【0029】
以上のとおり、主機の出力設定手段(ガバナー)の設定に基づいて出力Pが決まり、図4に基づいて、同図上において燃料消費量最少曲線とぶつかる点から回転数(主機=プロペラ)が決まる。すなわち、燃料消費量最少曲線上の主機の出力Pに対応する回転数Nにより回転数が決まる。主機とプロペラが直結されている場合、主機の回転数Nはプロペラの回転数に等しい。次に、図1において、上記のように、図4に基づいて決まった出力Pと回転数Nを得るように、プロペラのピッチ角を合わせ込む。このようにプロペラのピッチ角を制御することにより、燃料消費量が最少となるようにすることができる。なお、減速機を装備している場合には、その減速比に応じて、プロペラへの入力と回転数を補正し、図1に適用する。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態では、本発明を船舶の可変ピッチプロペラ(CPP)制御方法として実施する場合について説明する。本実施形態の可変ピッチプロペラ制御方法は、主機と主機により駆動される可変ピッチプロペラを、主機の主機燃料消費率特性と可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて制御するものである。主機の主機燃料消費率特性を考慮することで、プロペラの性能のみを考慮した場合に比して、燃料消費効率を向上させることができる。
【0031】
可変ピッチプロペラのピッチ角変更は、プロペラの角度を変更することにより行う。そして、また、燃料消費量特性として、主機の出力と回転数により決まる特性を考慮する。ここで「特性を考慮する」とは、制御対象物に特有の性質を反映する数値などのデータを指標として用いることをいう。
【0032】
本実施形態では、燃料消費量特性として、船速別の特性を用いる。図1に示すように、プロペラ効率だけを考慮した場合、最も効率の良いピッチ角は、船速が変化しても、ほとんど変らない。しかしながら、図2、図3に示すように、燃料消費量が最少となる回転数は、船速によって異なる。そこで、本実施形態では、船速を考慮して、燃料消費量特性としての燃料消費量最少特性を求める。このように、燃料消費量特性として船速別の特性を用いることにより、船速によって変化する燃料消費量が最少となる回転数に対応したCCP制御を行うことができる。
【0033】
プロペラ効率特性として、可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたものを用いる。このように、燃料消費量特性を導出する際、船舶に搭載された状態を反映したプロペラ効率特性を考慮することにより、より実際の航行状態に対応したCPP制御を実現することができる。
ここで「自航要素」としては、プロペラが船体の後ろに設けられることによる影響を反映する伴流係数や、プロペラの働きが船体におよぼす影響の程度を示す指数であるスラスト減少係数が挙げられる。
プロペラ効率特性として、可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたものを用いることにより、プロペラへの必要入力と主機出力が対応させることができるので、主機燃料消費率特性との関連付けが容易にできる。
【0034】
プロペラ効率特性としては、船体への海象の影響に基づく補正を行ったものを用いることとしてもよい。ここで「海象の影響」とは、船舶が海上を航海する場合における波浪や風といった気象の影響をいう。海象の影響により、船舶の抵抗増加量の程度は、平水中における抵抗を基準として、+10%、+20%、+30%といった具合に、単純な計算により求めることができる。
また、船体に対する海象の影響を特定する方法としては、「船速と前記主機の出力」の関係から海象の影響としての「波浪による抵抗増加量の程度を推定」して、使用するプロペラ効率特性を特定する方法を用いることができる。
【0035】
本実施形態の方法を適用した船舶の運転方法は、以下のようになる。
(1)船員が主機出力Pを設定する。(主機の燃料噴射量を調節するガバナーを調節する。)
(2)制御手段で主機の出力Pを図4に適用し、燃料消費量最少曲線にぶつけ主機の回転数Nを得る。(主機とプロペラが直結されている場合、主機の回転数Nはプロペラの回転数Nと等しい。)
(3)次に制御手段で、図1に上記の出力Pと回転数Nを適用する。(図1の線図は、プロペラ単体効率に自航要素、伝達効率を加味した状態、要するに船体に実装された状態を想定して模型試験から得る。また、実績データ等より推定することも可能である。)
(4)現在の運転状況に対応する出力P’と回転数N’のP’に基づいて、図4にP=P’の直線を引き、この直線と燃料消費量最少曲線の交点からNを求め、このNに近づくようにCPPのピッチ角を制御する。次に運転状況をサンプリングする時間には、その時点における運転状況は変化しP”とN”になるので、更にP=P”の直線と燃料消費量最少曲線の交点からNを求める。時間の経過に伴い刻々と変化する運転状況に対応して、上述した制御と同様の制御を繰り返す。
【0036】
本実施形態の方法を適用した波浪中を航行する船舶の運転方法は、以下のようになる。
(5)波浪中を航行している場合は、船体抵抗が増加するので出力Pと回転数Nを図1に相当する線図として複数用意する。また、同様な理由から図4の燃料消費量最少曲線も複数本用意する。
(6)船速と出力の関係から波浪による船体抵抗増加量を推定し、図1に相当する線図を複数本のうちから選択し、図4の燃料消費量最少曲線も複数本のうちから選択して適用する。
これにより、直接評価することが困難な波浪の影響を取得の容易な情報に基づいて推定することができ、波浪の程度に応じて複数の燃料消費量最少特性を選択し得る。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態では、可変ピッチプロペラ制御装置を備えた船舶として本発明を実施する場合について、図5を参酌して説明する。
図5は、可変ピッチプロペラ制御装置ならびに同制御装置を搭載した船舶の概略を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態の船舶1は、出力設定手段30、制御手段40、主機50および可変ピッチプロペラ60を有する可変ピッチプロペラ制御装置2を備えている。船舶1は、実際の速度を測定する船速計70を備えている。船速計70により測定された船速は、海象により船舶1が受けている抵抗を評価するためにも用いられる。
【0038】
出力設定手段30は、船舶1の主機の出力を設定するものである。出力設定手段30の設定は、船員が主機の燃料噴射量を調節するガバナーを調節することにより行われる。船員は経験から、ガバナーの調節レベルと海象を配慮した船速の関係を体得しており、結果的に海象を配慮した船速を設定することにもなっている。逆に、船速を直接設定する船速設定手段として、出力設定手段30を構成することも可能である。
出力設定手段30の設定に基づいて、制御手段40が主機50および可変ピッチプロペラ60を制御する。出力設定手段30は、たとえば、主機50に燃料を供給するためのスロットル開閉に用いられる手段や、可変ピッチプロペラ60のピッチ角を設定するための手段などであってもよい。
【0039】
制御手段40は、出力設定手段30から入力された出力と、主機50の主機燃料消費率特性と可変ピッチプロペラ60のプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性、すなわち主機燃料消費率特性とプロペラ効率特性とを用いて導出した燃料消費量特性に基づいて、主機50と可変ピッチプロペラ60を制御するものである。
制御手段40は、出力設定手段30から入力された出力を目標出力として、主機50および可変ピッチプロペラ60の制御を行うものである。ただし、上述したとおり、出力設定手段30は、直接、出力を設定するものに限られない。このため、出力設定手段30により設定された出力ではなく、船速を設定し船速計70により測定された実際の船速を制御手段40による制御に用いることとしてもよい。
【0040】
制御手段40は、主機燃料消費率特性記憶部41、プロペラ効率特性記憶部42、燃料消費量特性制御部43、主機制御部44、可変ピッチプロペラ特性データ記憶部45および可変ピッチプロペラ制御部46を備えている。
【0041】
主機燃料消費率特性記憶部41、プロペラ効率特性記憶部42および可変ピッチプロペラ特性データ記憶部45はいずれも、データを記憶するものであり、一般に用いられる記憶装置を用いて構成することができる。また、これらは別体として構成しても、一体として構成してもよい。
主機燃料消費率特性記憶部41は、主機50の主機燃料消費率特性に関する情報(図2)を記憶するものである。
【0042】
プロペラ効率特性記憶部42は、可変ピッチプロペラ60のプロペラ効率特性に関する情報を記憶するものである。プロペラ効率特性に関する情報としては、例えば、図1に示すグラフの情報が挙げられる。同図に示すように、プロペラ効率特性記憶部42には、プロペラ効率特性として、海象により変わりうる船速別の特性(回転数、ピッチ角、出力の関係)が記録されている。
【0043】
燃料消費量特性制御部43は、主機燃料消費率特性(図2)とプロペラ効率特性(図1)を考慮して燃料消費量特性(図4)を導出し、燃料消費量特性に基づいて、出力設定手段30から入力された目標出力において、燃料消費量を抑制するために適した回転数を出力するものである。燃料消費量特性として燃料消費量最少特性(燃料消費量最少曲線)の燃料消費量最少データを導出した場合、燃料消費量が最少となる回転数となるように、主機制御部44が主機50を制御する。
【0044】
なお、燃料消費量最少データは、主機燃料消費率特性と可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮し予め求めたものを利用してもよい。またこの場合、燃料消費量最少特性を船体抵抗別に複数有したものであってもよい。
また、燃料消費量特性制御部43から出力された回転数および船速の情報および可変ピッチプロペラ特性データ記憶部45に記憶されている情報に基づいて、可変ピッチプロペラ制御部46が可変ピッチプロペラ60を制御する。また、燃料消費量特性制御部43は、主機50の出力を直接計測する出力計51から入力された出力、または船速計70により計測され入力された船速のいずれを上述した制御に用いてもよい。
【0045】
可変ピッチプロペラ特性データ記憶部45には、可変ピッチプロペラ60の回転数とそのピッチ角との関係に関するデータが記憶されている。このため、可変ピッチプロペラ制御部46による制御において、当該データを参照することにより、燃料消費量特性制御部43から出力された回転数と出力に基づく可変ピッチプロペラ60のピッチ制御の精度を良好にすることができる。
【0046】
プロペラ効率特性記憶部42の記憶するプロペラ効率特性に関する情報には、可変ピッチプロペラ60のピッチ角を変えた性能を基に、船舶1の船体の船体抵抗と出力の関係、船体の船体抵抗と船速との関係、自航要素および伝達効率を考慮して求められた情報が含まれている。このため、可変ピッチプロペラ60が船舶1に設けられた実際の状態を反映した条件の下で、主機50および可変ピッチプロペラ60の制御を行うことができる。
【0047】
また、プロペラ効率特性記憶部42には、平水中におけるプロペラ効率特性のみならず、海象により船舶1の抵抗が増大した状態に対応して複数のプロペラ効率特性に関する情報が記憶されている。このため、船舶1の船体への海象の影響を考慮して、より適切なプロペラ効率特性を用いること、すなわち、海象を考慮して平水中におけるプロペラ効率特性を補正することが可能となる。本実施形態では、海象の船体抵抗への影響は、船速計70により測定された船速と、出力計51により測定された主機50の出力、に基づいて、評価する構成を採用している。この構成により、直接測定することが困難な波浪の影響を評価して、補正する際に考慮することができる。
【0048】
主機50は、船舶1を推進する原動機であり、シャフトを介して可変ピッチプロペラ60を駆動回転するものであり、その出力が制御手段40の主機制御部44により制御される。主機制御部44が燃料消費量特性(図4)に基づいた制御をなすことにより自動的に、回転数と出力の組み合わせが、図2に示す過負荷曲線よりも右に位置し、かつ許容回転数以下となる範囲となるように主機50が制御される。この結果、不完全燃焼により極端に燃費が低下することが防止される。
【0049】
可変ピッチプロペラ60は、主機50の出力を推進力に変換する装置であり、複数枚の羽根を支持するハブを備えており、ハブが主機50とシャフトによって連結されている。そして、ハブに対する羽根の傾き(角度)を変えることにより、ピッチ角を変更することが可能なものである。
【0050】
上述した実施形態においては、本発明を船舶用の可変ピッチプロペラに適用する場合について説明した。しかし、船舶への適用は本発明の一つの実施形態に過ぎず、本発明は船舶以外の用途に用いられる可変ピッチプロペラの制御方法としても実施することができる。船舶以外の用途としては、例えば、航空機を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
本発明の可変ピッチプロペラ制御方法を実施する際に用いられる燃料消費量特性の一例である燃料消費量最少曲線を求める方法の具体例について以下に説明する。ただし、本実施例の方法は一例であり、本発明は本実施例の方法により実施されるものに限られない。
【0052】
(1)図2に示す主機燃料消費率特性曲線を特定する。主機燃料消費率特性曲線の特定は、例えば、主機の製造メーカから提供された情報に基づいて行う。
(2)可変ピッチプロペラ(CPP)のピッチ角を変えた場合における回転数Nと出力Pとの関係を示す性能曲線を特定する。性能曲線の特定は、例えば、CPPのプロペラメーカから提供された情報に基づいて行う。
(3)(2)で性能曲線を特定したCPPを実際に船体に設置した場合に問題となる船体の抵抗と船速の関係、自航要素と通称される数値および伝達効率などは、一般に用いられる通常の推定法あるいは水槽試験により得る。
(4)上記(2)および(3)により、図1のCPPの性能特性曲線を示したグラフを描く。
(5)図1のグラフにおいて実線で示す同一船速線上における点を何点か選び、当該選んだ点の回転数Nと出力Pを読み取る。
(6)上記(5)の各点に対応する燃料消費率Frを図2上で読み取る(図1で選んだ点と同じ点(N、P)における燃料消費率を読み取る。)。
(7)各点(N、P)における燃料消費量Fは、下記の式に示すように、燃料消費率Frと出力Pの積として得られる。
F=FrxP
そして、図3に示すように、燃料消費量Fは各船速毎に回転数Nの関数となる。
(8)船速Vを変えて上記(5)から(7)の手順を繰り返し、各船速において燃料消費量Fが最少となる点を求め、当該求めた点を結ぶことにより図3に示す燃料消費量最少曲線が得られる。
(9)燃料消費量Fが最少となる回転数Nminは、図3の燃料消費量最少曲線から各船速Vごとに読み取ることができる。そこで、各船速Vにおける回転数Nminに対応するCPPの出力Pを図1から読み取る。このようにして得られた、図3の燃料消費量最少点に対応する回転数Nminと出力Pとの組み合わせにより特定される点を結んで得られる燃料消費量最少曲線を図2に追記したものが図4である。
以上により平穏な海面(平水)での燃料消費量最少曲線を描くことができる。
【0053】
(実施例2)
実施例1は平水すなわち風や波のない水面を想定している。しかしながら、風や波浪のある実際の海面を航行する状況では上記(3)における船体の抵抗が変わる。そこで、本実施例では、風や波浪などの海象の影響を考慮した燃料消費量最少曲線を作成する場合について説明する。すなわち、実施例1の(3)のプロセスに下記(10)(11)を追加することにより、船体の抵抗をも考慮した可変ピッチプロペラ制御方法を実施することができる。
(10)図1のCPPの性能特性曲線を得るために、例えば抵抗10%増し、20%増しなどの複数の条件において通常の推定法あるいは水槽試験を実施し、抵抗増加がある場合の燃料消費量最少曲線を作成する。
なお(3)に記載した自航要素や伝達効率などは海象による変化が少ないというのが定説なので、抵抗増加だけを考えておけば実用上は十分である。
(11)海上を航行しているときにおいて、船体の抵抗が平水中と比べてどの程度増加しているかを正確に判断することは困難である。しかし、図1から分かるとおり、必要出力に対する海象(抵抗増加)の影響は、プロペラピッチ(回転数)よりも船速の方に大きく現れる。また抵抗増加量が多少変っても燃料消費量最少曲線の変化は大きくないことが分かっているので、抵抗増加量を正確に特定する必要性は小さい。そこで、回転数と出力の組み合わせから、複数の燃料消費量最少曲線のうちのどの曲線上に位置するかを判断し、上記(10)の異なる抵抗増加量における燃料消費量最少曲線のうちどの曲線を使うかを決めればよい。
【0054】
また、特定の燃料消費量最少曲線を用いるのではなく、複数の燃料消費量最少曲線を使いその間に内挿することとしてもよい。たとえば、抵抗増加が15%程度と判断される場合、抵抗増加が10%と20%の2つの燃料消費量最少曲線の間の値を用いればよい。
【0055】
なお、試計算を行った船においては、抵抗が30%程度増加しても燃料消費量最少曲線はほとんど変化しない結果となった。このような船においては、波浪中であっても(9)までで得られた回転数Nと燃料消費量Fとの関係を船速毎に示したグラフ(図3参照)を使えばよい。
【0056】
以上の方法で得られた燃料消費量最少曲線を使い、航行中の出力に合った回転数になるようCPPのピッチ角を制御することにより、海象にかかわらず燃料消費量が最少となる運航が可能となる。
【0057】
上記試算とは別の船の実航海中に記録されたデータによれば、波浪中を航行中のデータには、同一馬力で見た回転数には8%程度のばらつきがあり、同一データを同一回転数で見た馬力では25%程度のばらつきがある。すなわち、波浪のある海上を航海していると、主機が燃費効率最適点(燃焼効率が最適となる出力Pと回転数Nの組み合わせ)から外れて運転されている時間が長いことを示しており、本発明の方法でCPPを制御することにより燃費の改善が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、コンテナ船をはじめ、油タンカー、LNG船、又はLPG船などの船舶、および航空機など可変ピッチプロペラを備えたものの制御に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0059】
1 船舶
2 可変ピッチプロペラ制御装置
30 出力設定手段
40 制御手段
41 主機燃料消費率特性記憶部
42 プロペラ効率特性記憶部
43 燃料消費量特性制御部
44 主機制御部
45 可変ピッチプロペラ特性データ記憶部
46 可変ピッチプロペラ制御部
50 主機
51 出力計
60 可変ピッチプロペラ
70 船速計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機と前記主機により駆動される可変ピッチプロペラを、前記主機の主機燃料消費率特性と前記可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて制御したことを特徴とする可変ピッチプロペラ制御方法。
【請求項2】
前記燃料消費量特性は、船体に搭載する主機の出力と回転数により決まる燃料消費量最少特性であることを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
【請求項3】
前記燃料消費量最少特性は、船速を考慮して求めた特性であることを特徴とする請求項2に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
【請求項4】
前記プロペラ効率特性は、前記可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、前記船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
【請求項5】
前記プロペラ効率特性に対し、前記船体への海象の影響に基づく補正を行ったことを特徴とする請求項2から請求項4のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
【請求項6】
船速と前記主機の出力の関係から、海象の影響としての波浪による抵抗増加量の程度を推定して、使用する前記燃料消費量特性を決めたことを特徴とする請求項5に記載の可変ピッチプロペラ制御方法。
【請求項7】
船体を推進する原動機としての主機と、
前記主機により駆動される可変ピッチプロペラと、
前記主機の出力を設定する出力設定手段と、
前記出力設定手段の設定と前記主機の主機燃料消費率特性と前記可変ピッチプロペラのプロペラ効率特性とを考慮した燃料消費量特性に基づいて前記主機と前記可変ピッチプロペラを制御する制御手段を備えたことを特徴とする可変ピッチプロペラ制御装置。
【請求項8】
前記燃料消費量特性は、前記船体に搭載する前記主機の出力と回転数により決まる燃料消費量最少特性であることを特徴とする請求項7に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
【請求項9】
前記燃料消費量最少特性は、船速を考慮して求めた特性であることを特徴とする請求項8に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記可変ピッチプロペラの回転数とピッチ角の関係を示す可変ピッチプロペラ特性データに基づき制御を行ったことを特徴とする請求項7から請求項9のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
【請求項11】
前記プロペラ効率特性は、前記可変ピッチプロペラのピッチ角を変えた性能を基に、前記船体の船体抵抗と船速の関係、自航要素および伝達効率を考慮して求めたことを特徴とする請求項7から請求項10のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
【請求項12】
前記プロペラ効率特性に対し、前記船体への海象の影響に基づく補正を行ったことを特徴とする請求項7から請求項11のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラの制御装置。
【請求項13】
前記燃料消費量最少特性を船体抵抗別に複数有しており、前記制御手段が船速と前記主機の出力の関係から波浪による抵抗増加量の程度を推定して、使用する前記燃料消費量最少特性を決めたことを特徴とする請求項12に記載の可変ピッチプロペラ制御装置。
【請求項14】
請求項7から請求項13のうちの1項に記載の可変ピッチプロペラ制御装置を搭載したことを特徴とする船舶。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−6531(P2013−6531A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140923(P2011−140923)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】