可変伝達比の閉塞機構を有するカプセル用浸出装置
【課題】同じレバーアームにおいて比較的少ない手動閉塞力を必要とし、あるいは、浸出部品をカプセルの周囲において安定した方法で閉塞するために同じ力に関して小さいレバーアームを必要とする装置を提供する。
【解決手段】飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出ユニットは、フレームと、浸出中にカプセルを少なくとも部分的に封入するための第1のカプセル保持部材及び第2のカプセル保持部材とを備え、第1のカプセル保持部材が、開位置と閉位置との間で前記フレームに沿って第2のカプセル保持部材に対して移動でき、作動部材を備え且つ2つの位置間で前記第1の保持部材を作動させるための閉塞機構を備え、閉塞機構は、作動部材によって与えられるトルクを第1のカプセル保持部材に対する並進閉塞力へと変換することができるギヤ手段を備える。
【解決手段】飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出ユニットは、フレームと、浸出中にカプセルを少なくとも部分的に封入するための第1のカプセル保持部材及び第2のカプセル保持部材とを備え、第1のカプセル保持部材が、開位置と閉位置との間で前記フレームに沿って第2のカプセル保持部材に対して移動でき、作動部材を備え且つ2つの位置間で前記第1の保持部材を作動させるための閉塞機構を備え、閉塞機構は、作動部材によって与えられるトルクを第1のカプセル保持部材に対する並進閉塞力へと変換することができるギヤ手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えばカプセルの容積内に導入される熱い加圧水などの液体と相互作用するときに飲料または液体食料品を生成できる原料を収容するカプセルを扱うようになっている、飲料または液体食料品の浸出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特にコーヒーメーカーの分野では、飲料原料を収容するカプセルが浸出装置内に挿入される機械が幅広く開発されてきた。浸出装置がカプセルの周囲で緊密に閉じられ、カプセルの第1の面で水が注入されることにより、カプセルの閉じられた容積内で飲料が生成され、飲料をカプセルの第2の面から排出してカップやグラスなどの容器内に集めることができる。
【0003】
浸出装置は、「新しい」カプセルの挿入および廃棄カプセルの除去を容易にするように開発されてきた。
【0004】
WO2005/004683は、
フレームと、
カプセルのための固定保持部品と、
フレームに対してスライド可能に装着される可動保持部品と、
再開放時に作用し且つ内部浸出圧によって生み出される対抗力に抵抗しつつカプセルの周囲で保持部品を安定した液密態様で閉塞できる機械的システムを与えるナックルジョイント機構と、
ナックルジョイント機構を直接に動かすためのハンドルと、
を備える浸出装置に関するものである。
【0005】
かかる装置は、フレーム内の通路を通じた垂直落下によるカプセルの挿入と、挿入方向と同じ方向での廃棄カプセルの除去とを可能にする簡単なアセンブリを与える。
【0006】
そのような装置は使用が容易で信頼できるが、依然として幾つかの不都合がある。特に、当該装置は、レバーによって閉塞することが比較的困難である場合があり、および/または、十分にコンパクトでない場合がある。コンパクト性は、装置の適切な機能のために必要な幾つかの技術的要因および制約によって決まる。閉塞に際しては、ユーザによりレバーに対して及ぼされる手動力からナックルジョイント機構を閉塞するに足る力を伝えるために、比較的長いレバーが必要とされる。手動力はナックルジョイント機構の閉塞力の設定によって決まり、前記閉塞力は、流体密な耐圧システムを形成するためにカプセルの周囲に及ぼされる締め付け力によって決まる。したがって、手動力が依然として許容できる状態を保つべく、レバーアームは、ナックルジョイント機構に対して必要なトルクを及ぼすように増大されなければならない。また、装置の後側にレバーを位置決めするレバーの長さが必要であり、これはあまり最適ではない。なぜなら、ユーザが機械の前面から比較的離れたポイントから自分の腕を延ばしてレバーを把持しなければならないとともに、装置を閉じるために大きな円弧を描かなければならないからである。利用できる空間は、装置のそのような構造を収容するため或いは機械の快適な動作を行なうために十分でない場合がある(特に、狭いキッチン)。
【0007】
特定のシステムにおいては、閉塞力も、カプセルの側面を穿孔できるに足るものでなければならない。例えば、閉塞後にカプセル内への注入流体の導入を可能にするため、閉塞中にカプセルの挿入側が穿孔される。カプセルを穿孔するために必要な力は、ゆったりとした形態ではなく、ぎっしり詰まった形態で原料がカプセル内にある場合に比較的重要となり得る。カプセルを形成する材料も、装置の所要閉塞力に対して影響を及ぼす。したがって、カプセル、特にぎっしりと詰まった物質を収容するカプセルを穿孔するために必要な力の増大は、ハンドルに対する大きな作用を許容できないレベルでユーザに課す。そのため、カプセルの周囲での装置の閉塞中にカプセルを正確に穿孔するために必要な力を与えつつ、ハンドルに対する作用を減少させる必要がある。
【0008】
また、既知の装置は、閉塞/開放サイクル中に可動保持部品の移動を補償できるに足る十分な長さおよび柔軟性を有している必要があるウォーターラインに連結される。したがって、ウォーターラインの延在は、水流中断または流量制御の問題を引き起こす可能性があるラインの圧搾または屈曲を避けるため、フレームの比較的大きな内容積を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記問題に鑑みて、本発明の目的は、幾つかの想定し得る実施形態によれば、同じレバーアームにおいて比較的少ない手動閉塞力を必要とし、あるいは、浸出部品をカプセルの周囲において安定した方法で閉塞するために同じ力に関して小さいレバーアームを必要とする装置を提供することである。
【0010】
閉塞の容易性に影響を与えることなく且つ依然としてユーザが許容できる手動作用のレベルで、カプセルに対して高い閉塞力を与えることにより、穿孔しおよび/または十分に緊密なシール係合を装置内で行なう装置が必要である。
【0011】
また、技術的制約に影響を与えない、特に比較的高い閉塞力を必要としない、単純で且つ低コストな装置が必要である。
【0012】
既存の浸出装置の閉塞効率および信頼性を維持しつつ、特に、流体密な耐圧閉塞を行ないつつ、よりコンパクトな構造で形成され得る装置が必要である。
【0013】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の中心思想を更に発展させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第1の態様は、飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出装置であって、
メインフレームと、
第1のカプセル保持部品と、
カプセルを少なくとも部分的に保持するための第2のカプセル保持部品であって、前記フレーム内で前記第1のカプセル保持部品に対して移動できるとともに、ナックルジョイント手段を備える閉塞機構によって前記フレームに対して連結され、それにより、前記2つの部品間にカプセルを挿入できるように前記2つの部品が互いに離れる開位置と、前記第1および第2の保持部品がカプセルの周囲で閉じられる閉位置とから移動する、第2のカプセル保持部品と、
レバー手段を形成し、前記閉塞機構によって前記第2の保持部品を開位置から閉位置へ或いはその逆へ作動させるようになっているハンドルと、
を備える浸出装置において、
前記閉塞機構が前記ハンドルに関連付けられる更なる力伝達手段を備え、この更なる力伝達手段は、前記ハンドルによって前記ナックルジョイント手段に対して加えられる力を減少させるようになっているとともに、カプセルに関して前記保持部品を閉じるために必要とされる力の増大を補償することを特徴とする浸出装置に関する。
【0015】
第1の形態において、力伝達手段は、ナックルジョイント手段に対するハンドルの力を減少させるようになっている更なる力レバーを備える。
【0016】
この構成は、よりコンパクトな設計のための機会を与える。同じレバーアームにおいて必要とされる力が少ないため、手動ハンドルを短くすることができるとともに、より効果的に且つ都合の良い様態で手動ハンドルを位置させることができる。
【0017】
想定し得る形態において、ナックルジョイント手段は、第1の端部が移動可能な保持部品に対して連結され且つ他端がフレームに対して回転可能に取り付けられる、少なくとも一対のロッドから構成され、好ましくは、平行に配置される2対のロッドから構成される。また、前記少なくとも一対のロッドの第2の端部は、ハンドルに対して直接に回転可能に連結されるのではなく、力伝達手段に対しても回転可能に連結される。結果として、レバーの角度を成す経路における角度単位(すなわち、1度のΔA)は、作用を、ハンドルの角度を成す経路の初めよりもハンドルの角度を成す経路の終わり(すなわち、ナックルジョイント手段の「ハードポイント」を乗り越えなければならない場所)の方で小さいナックルジョイント手段の変位へと変換する。これにより、ハードポイントが乗り越えられるときにハンドルに関与する手動作用が小さくなり、したがって、所定のトルクの既存のシステムと比べて、レバーアームを減少させる機会が与えられる。
【0018】
1つの形態において、ハンドルは、フレームに固定される後側伝達点の比較的上側の前方位置に配置される。この構成は、力伝達手段を介した作用の適切な伝達においてより有効であると同時に、コンパクトな浸出構造に関与することが分かった。確かに、力伝達手段は、ナックルジョイント手段とハンドルとの間においてナックルジョイント手段のほぼ上側で延びており、したがって、力減少により、非常に多くの更なる空間を要することなくナックルジョイント手段に作用する。ハンドルは、動作中に小さい円弧形状の経路を描くとともに、ユーザが近づき易くなる。
【0019】
また、ハンドルは、フレームの上側に対して関節結合されることが好ましい。これも、関与する力の有効性および装置の人間工学に関係する。
【0020】
また、ハンドルは、閉塞位置で延在する際、その長さを第2の保持部品およびナックルジョイント手段によって形成されるアセンブリの長さより短くすることもできる。特に、ハンドルは、大人のユーザによる装置の閉塞の容易性を害することなく、アセンブリの長さよりも短くすることができる。例えば、ハンドルを25%以上短くすることができる。
【0021】
例えば、力伝達手段は、ハンドルの経路の少なくとも最後の50%が、約20%またはそれ未満、より好ましくは少なくとも10%未満のナックルジョイント手段の経路移動に利用されるように、ハンドルおよびナックルジョイント手段に関連して構成される。
【0022】
これにより、ナックルジョイント手段の経路は、ロッド手段の回転端部の2つの軸を通過する中心線に対して膝ポイントにより移動される横断または「垂直」距離として決定される。
【0023】
好ましくは、本発明の浸出装置は、カプセルの容易な挿入および除去または取り出しを行なうことができるように方向付けられる。このため、第2の保持部品は、フレーム内で略水平方向にスライドするようになっている。また、装置は、2つの保持部品間でカプセルを垂直に落下させるようになっている通路を更に備えることができる。したがって、カプセルの挿入は、マネーボックスと同様の形態で行なうことができる。閉塞前にカプセルを所定の位置に保持するため、2つの保持部品間にカプセルリテーニング手段も設けられる。これらのリテーニング手段は、WO2005/004683に記載される解決策と同一であってもよい。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態において、飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出ユニットは、フレームと、浸出中にカプセルを少なくとも部分的に封入するための第1および第2のカプセル保持部材とを備える。第1の保持部材は、開位置と閉位置との間でフレームに沿って第2の保持部材に対して移動できる。2つの位置間で第1の保持部材を作動させるために作動部材を備える閉塞機構が設けられる。閉塞機構は、作動部材によって与えられるトルクを第1の保持部材に対する並進閉塞力へと変換することができるギヤ手段を備える。
【0025】
好ましくは、ギヤ手段は、回転中に伝達比が次第に変化するようになっており、したがって、穿孔するために必要とされる力の増大を補償することができおよび/または保持部品によってカプセルを緊密に封入することができる。
【0026】
ギヤ手段は、非円形の横断面を有する一対のスプールギヤを備えることができる。特に、各スプールギヤが長い横半径を有し、それぞれの横半径が互いに噛み合う関係を成して互いに約90度で位置される。
【0027】
作動部材は、ハンドルであることが好ましく、あるいは、駆動シャフトを有するモータであってもよい。本発明の他の利点は、確かに、電動式浸出装置のためのモータによって及ぼされる作用を減少させる機会を与えることができることであり、したがって、モータコストおよび/またはエネルギ消費がかなり節約される。
【0028】
本発明の他の態様において、飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出装置は、
メインフレームと、
第1のカプセル保持部品と、
カプセルを少なくとも部分的に保持し、前記第1のカプセル保持部品に対して移動できる第2のカプセル保持部品と、
前記第2の保持部品に対して接続され、前記部品内に水を注入するように構成される水供給手段と、
を備え、
前記水供給手段が、前記フレームに対して固定される長さ補償チューブ部を備え、前記第2の保持部品が前記長さ補償チューブ部に対して移動できることを特徴とする。
【0029】
したがって、装置の閉位置から開位置への保持部の相対的な移動を補償するために必要な水供給手段の長さ補償チューブ部は、比較的静的な形態を保つようになっている。水供給手段のそのような形態により、装置の開放中にチューブの移動を吸収するために必要な容積を排除することができる。また、チューブの長さがかなり減少されてもよい。水チューブは、浸出状態(圧力、流量、温度…)に影響を及ぼす場合がある繰り返し屈曲または捩れなどの機械的応力を殆ど受けず、したがって、その寿命が向上される。
【0030】
特に、長さ補償チューブ部は、第2の保持部品が開位置へ移動するにつれてそれ自体が前記第2の保持部品内に少なくとも部分的に挿入するように前記第2の保持部品に対して装着される。長さ補償チューブ部は、前記カプセル保持部品がその開位置へ向けて移動するにつれて前記カプセル保持部品の通路内で少なくなくとも部分的にスライドすることができる。通路は、保持部品の一部であり或いは保持部品に接続される中空金属チューブから形成することができ、また、チューブ自体の一部に作用する機械的応力を減少させつつスライド係合状態でチューブの一部を案内することができる。想定し得る形態において、補償チューブ部の一部は、保持部品が開かれるときに保持部品からカプセルを取り出すのを助けるために保持部品の内側で移動する。本発明の更なる利点、特徴、および、目的は、同封の図面の図と関連する本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の形態に係る飲料製造機のための浸出装置を斜視的に示している。
【図2】図1の浸出装置の縦断面図を示している。
【図3】開位置における図1および図2の浸出装置を斜視的に示している。
【図4】開位置におけるフレームを伴わない浸出装置の簡略化された斜視図を示している。
【図5】図4の側面図である。
【図6】中間位置における浸出装置の簡略化された斜視図を示している。
【図7】図6の側面図である。
【図8】閉位置における浸出装置の簡略化された斜視図を示している。
【図9】図8の側面図である。
【図10】固定された補償チューブ手段を備える本発明の変形例の断面図を示している。
【図11】内部にカプセルを挿入するための開位置における本発明の他の実施形態に係る浸出装置の斜視図を示している。
【図12】側壁が取り除かれた図11の実施形態を斜視図で示している。
【図13】閉位置における図11の浸出装置の側壁が取り除かれた状態の斜視図を示している。
【図14】図11の浸出装置の正中垂直面に沿う側面図を示している。
【図15】閉位置における図11の浸出装置の正中垂直面に沿う側面図を示している。
【図16】図12〜図15の実施形態のギヤ手段の可変伝達比の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付図面を詳しく参照する前に、明確にするため、以下の定義を与える。
【0033】
用語「飲料」は、飲用液体および(これに限定されないが)スープ等の液体食料品の両方を包含する。
【0034】
用語「カプセル」は、乾燥、液体、固体または他の形態で飲料原料を封入する任意の容器である。カプセルは、硬質外皮または軟質外皮を有することができる。カプセルは、同じ材料または異なる材料から形成することができる。カプセルは、密閉シールすることができ(例えば、アルミニウム本体および膜)或いは密閉シールすることができない(例えば、部分的に或いは全体的に多孔質)。
【0035】
用語「浸出」および「浸出装置」とはそれぞれ、圧力抽出、混合、溶解、注入など、液体と原料との間の全ての種類の相互作用、および、浸出プロセスを行なうためにカプセルを扱うことができる飲料機の一部としての技術的モジュールのことである。
【0036】
浸出装置の空間的関係は、本発明の範囲から逸脱することなく変えることもできる。特に、浸出装置が水平配置で描かれ且つ理解を容易にするため「前方向」および「後方向」に言及するが、他の空間的形態、すなわち、垂直または斜めの形態で装置を配置することができる。
【0037】
図1および図2は、本発明の浸出装置またはモジュールの第1の実施形態の概略図を示している。
【0038】
カプセル用の浸出装置は、様々な飲料製造機内、特にコーヒーメーカー内に組み込むことができる。浸出装置は、供給源に接続され且つ(例えば、サーモブロック、ボイラまたは他のタイプのヒータに接続されるポンプから供給される)加圧水を必要とするだけで済む独立したモジュールを構成することができる。
【0039】
本発明の浸出装置1は、アルミニウム、ステンレススチール、銅、または、硬質プラスチック、あるいは、これらの組み合わせ等の耐久材料から一般に形成されるメインフレーム2を備える。フレームは、飲料供給出口3によって装置の前方に延びるとともに、略管状形態のハウジング4によって装置の後方に延びている。したがって、フレームは、正中水平面Iに沿って略水平に延びる。供給出口は、飲料を収集し且つそれを方向Aで下方へ供給するように構成される内部チャネルを含む。
【0040】
また、装置は、カプセル保持部、すなわち、第1の或いは前側保持部5および後側保持部6のそれぞれを更に備え、両方の保持部は、浸出プロセス中に互いに協働してカプセルを所定位置に保持する。また、保持部5,6は、カプセルの水注入側で筐体を形成するように構成され、それにより、筐体に入る水がカプセル内で原料と相互作用することができる。筐体は、保持部の周縁7に沿って流体密であることが好ましい。この場合、流体密性は、カプセルの縁に当接し且つカプセルを前側保持部の縁へ向けて押圧する後側保持部6の十分な力によって得られる。適切なシールのため、ジョイント8を、後側保持部6に設けることができ、あるいは、係属中の欧州特許出願第04025320.5に記載されるようにカプセル自体の一部として設けることができる。
【0041】
後側保持部は、十分な圧力が筐体の内側に形成されたときにカプセルの膜を裂く或いは穿刺する突出要素を有するプレートであってもよい。飲料は、プレート自体におよび/またはプレートの表面および/または側面に行なわれた穴およびチャネルを通じて排出させることができる。例えば、カプセルの供給側を予め開放してプレートのフィルタによって飲料を濾過するなど、他の浸出原理も可能である。
【0042】
前側保持部5はフレームに固定されることが好ましく、例えば、前側保持部は、供給出口3とハウジウング4との間に形成される稜線9に挿入固定される。
【0043】
後側保持部6は、内部キャビティ10を有する籠の形状を成しており、内部キャビティ10は、カプセルの本体を取り囲むとともに、キャビティ内に水を注入するようになっている、したがって、キャビティと共に流体密な筐体を形成するカプセル内に水を注入するようになっている水供給手段11と関連付けられる。キャビティ10の底部には、カプセルを開放して加圧水がカプセル内に入ることができるようにするためのブレード等の穿孔要素12が収容されている。水注入口13によって、側面または底部など、任意のポイントでキャビティ内に水を注入することができる。水供給手段は、ヒータから注入口へと水を輸送するためのチューブ手段14と、装置内の圧力を制御して逆流を避けるための背圧弁15と、シールされたコネクタ16とを更に含んでいる。
【0044】
後側保持部6は、フレーム2内で移動でき、カプセルを2つの保持部5,6間に挿入できるようにする開位置からカプセルを浸出するための閉位置へと動くことができる。保持部は、必ずしも完全に直線状とは限らない開位置から閉位置への閉経路に沿って移動できる。当該経路は完全に直線状でないことが好ましい。特に、閉経路は、前側保持部の中心を通過する中心線Oに対して僅かにオフセットされる第1の部分を有する。閉経路は、中心線Oに沿って中心付けられる第2の部分を有する。閉経路の単なる直線移動の変化は、中心を外れた挿入の位置から浸出位置へカプセルを移動するための機能を有する。カプセルは、保持部の閉塞中に押し進めることができるリテーニング手段によって事前位置に保持される。保持部品が再び開かれると、リテーニング手段によってもはや保持されないカプセルは、重力によって落下できる。カプセルの挿入・事前位置決めのそのような形態は、WO2005/004683A1において既に十分に詳しく説明されており、その内容は、少なくとも閉塞中にカプセルを保持するための解決策の説明に関して(すなわち、2頁36行目〜7頁26行目)、本明細書本文の一部である。
【0045】
閉塞経路で保持部を案内するため、保持部は、例えば、外側へ突出し且つハウジングの側面に沿って設けられる長手方向に向けられた溝18に沿って案内されるサイドピン17を含む。溝には第1(後側)および第2(前側)の部分が形成されており、第1の部分は、装置の閉状態で保持部の中心線に対して僅かにオフセットされる。
【0046】
図3からも明らかなように、フレームには、カプセルを受けるようになっている上側通路19が設けられている。通路19の輪郭は、正しい挿入側で受けられるカプセルの形状に適合させることができる。図2において明らかなように、フレームは、浸出プロセスが終わり且つ後側保持部が再び開かれるときに廃棄カプセルを廃棄するための下側通路20も備えている。既に述べたように、後側保持部が再び開かれると、カプセルがカプセルリテーニング手段によってもはや保持されないため、カプセルは重力によって落下する。
【0047】
ここで、本発明の中心的思想を構成する浸出装置の運動学的閉塞配置について図4〜図9に関連して説明する。
【0048】
まず第一に、浸出装置はハンドル21によって手動で閉じられるようになっており、ハンドル21は、装置の上側に位置されるとともに、フレームの上側に固定される軸22に沿って回転可能に関節結合される。
【0049】
後側保持部は、それ自体知られるナックルジョイント機構23に対して関連付けられる。そのような機構は、保持部6を移動させることができるとともに、その折り畳み位置に対して僅かに反転された角度形態を成す機構の伸長に対応する「ハードポイント」が乗り越えられたときに保持部を「膝」効果によって所定位置に確実にロックすることができる。このため、この機構は、ロッド26,27から構成される2つの対24,25を備えることが好ましい。2つの対は、ねじれ作用に対する高い抵抗を与えるために保持部の両側に平行に配置される。第1または前側ロッド26は、前端軸28で後側保持部6側に取り付けられるとともに、他端が自由枢軸29でナックルジョイント機構の第2または後側ロッド27に対して取り付けられる。このとき、第2の後側ロッド27は、その構造および機能が以下で説明される力伝達手段に対して後端軸30により取り付けられる。つまり、2つのロッド26,27は、浸出装置の閉塞中に前軸および後軸28,30が離間されるときに垂直および水平に移動できる能力を有する自由枢軸29に沿って取り付けられる。なお、前軸および後軸28,30はいずれもそれぞれフレームにガイドされて連結されるが、枢軸29はそのようになっていない。前軸28は、側溝18内でサイドピン17によって突出する。後軸30は、保持部が前側保持部へ向けて前方へ押し進められるときにフレームに対して動かず反力を受けることができる。
【0050】
図2から明らかなように、製造公差を補償でき且つその閉塞力を正確に制御できるように、ナックル手段の力制御システムが設けられる。このため、2つのロッド26,27が接続軸50/楕円体51によって取り付けられる。楕円体51内における軸50の位置を制御して、ナックル機構を閉じるために必要な力を調整するため、ニードル53が設けられる。ニードル53の位置は、相補的なネジ54に沿って長手方向に調整可能であるとともに、スクリュードライバまたはスパナによって移動させることができる。浸出装置の使用中にニードルがねじって外れないように、コイル52を更に設けることができる。そうしなければ、浸出装置の閉塞力に影響が及ぶ。本発明によれば、ハンドルは、ナックルジョイント機構23の後軸30に対して直接に関節結合されないが、中間力伝達手段31に対して連結される。中間力伝達手段31の機能は、ハンドルからの力を減少させてナックルジョイント機構に伝えることである。この機構は、ハンドルおよびナックルジョイント機構の各側に対してそれぞれ接続されるロッド34,35から構成される少なくとも2つの第2の対32,33から形成される。ロッドの各対は、上側自由枢軸36を介してハンドルに連結される上側ロッド34と、中間自由枢軸37を介して上側ロッドに連結され且つ例えば約110〜130度の特定の固定角でナックルジョイント機構23に対して連結固定される更に短い下側ロッド35とを備える。
【0051】
したがって、開位置(図4〜5)から閉方向(図7〜8および最終的に図8〜9)へ向かうハンドル21の回動により、伝達手段31が中間枢軸37で折り畳まれ、そのため、手段31の折り畳み角度Aが減少するにつれて増大する力が、ナックルジョイント機構へ伝えられる。その結果、図7の中間位置と閉位置との間の「ハードポイント」を通過するために力伝達手段によってナックル機構に対して及ぼされる力は、閉操作の初め(すなわち、図5の開位置と図7の中間位置との間)の力よりも高い。また、比較的、開「V」形状から逆「V」形状(図9)へと通過するときの閉塞プロセスの最後におけるナックルジョイント機構の垂直変位Δd2は、開位置から中間位置(図7)への変位Δd1よりもかなり小さい。変位Δd2は、それ自体、依然として比較的重要なハンドルの動作角度範囲A2(図7)に沿って作用する。したがって、ナックルジョイント機構の変位(あるいは、保持部の相対的な変位と同等の様態で)に対するハンドルの回転角の比率ΔA/Δdは、ハンドルが閉位置へ向けて下方に作動されるにつれて増大する傾向がある。
【0052】
無論、力伝達手段は、その形態が異なってもよいが同じ力減少機能(すなわち、同じ主効果)を及ぼす等価な手段と置き換えることができる。
【0053】
図10は、本発明の他の態様に関する浸出装置の変形例を示している。改良点は、カプセルの浸出装置への水供給手段にある。水供給手段11は、フレームに対して移動できない長さ補償チューブ部38を備え、一方、後側保持部6は、開閉中に前側保持部品に対して移動する。長さ補償チューブ部は、例えば、直線形態で好ましくは後方へ延びるチューブの部分である。チューブは柔軟または半硬質であってもよいが、その剛性は、保持部6が開かれる(すなわち、後方へ移動される)間にチューブ自体を保持部6内に挿入できるように決定されるべきであり、装置の開口を塞がないようにあまり硬くすべきではない。
【0054】
チューブ38の前端39の部分は、保持部6内にスライド可能に装着することができる。特に、保持部は、硬質スリーブ状のフレアー部などの管状通路40を含むことができる。通路内における前端39の接続は液密であるがスライド接続であり、したがって、Oリングなど、通路の内部に挿入される1つ以上のシール要素41が必要となる。
【0055】
チューブの補償部の後端42は、必要に応じてチューブの方向を変える機能を有する変向接続部49に対して取り付け固定することができる。この場合、チューブ38の補償部は、ウォーターヒータからの流体を導く上流側流体供給チューブ43を受けるための注入口42と補償チューブ手段の後側取り付け端部を受けるための出口44とを有する硬質な中空ケーシングであってもよい。当該ケーシングは、必要に応じて、普通は水供給手段の更に下流側、すなわち、浸出キャビティの直前に設けられる通常の背圧弁45を取り囲むことができる。ケーシングを介した適切な流体密接続を確保するため、適切なシール要素46,47、取付具48が設けられる。
【0056】
後側保持部6が後方へ移動されると、その後端42が固定されるがその前端39が自由なチューブの補償部は、それ自体が通路内に挿入し、最終的に浸出キャビティ10内に挿入する。保持部の前端は、その耐久性を向上させるため、プラスチック、金属、および/または、繊維で補強することができる。保持部全体をこれらの材料で形成し或いは補強することもできる。前端は、水供給用の通路とシール係合した状態で所定位置に後退するときにシール作用を径方向で高めるために僅かに拡径させることもできる。
【0057】
チューブ38の補償部の前端39は、浸出装置の再開放中に保持部品6が後方へ移動されるときに、保持部品6の内部キャビティ10の内側に突出することができる。したがって、チューブの補償部は、カプセルをキャビティから除去するのに役立つことができる。保持部品6が後方へ移動されるときに、カプセルが依然として穿孔要素12と係合している場合があり、それにより、カプセルがキャビティ内に留まったままとなる場合がある。そのため、チューブの補償部は、保持部品が後方へスライドしているときにカプセルを押し出して穿孔要素から外れるようにすることができる。
【0058】
ここで、本発明の他の可能な形態を図11〜図16に関連して説明する。
【0059】
装置は、左側フレーム部分61と、右側フレーム部分62と、上側フレーム部分63(例えば、安定性のため)と、前側飲料出口部分64とから構成されることができるメインフレーム60を備えている。
【0060】
フレームは、完全なプラスチックまたは金属或いはプラスチックと金属との組み合わせによって製造することができる。前記部分は、射出部品または押出部品から形成することができる。
【0061】
図11〜図13における装置は、2つの保持部材、すなわち、装置内にカプセル9を挿入できるようにするための図12の開位置で離間関係を成して位置される第1および第2の保持部材65,66をそれぞれ備えている。
【0062】
本発明の態様によれば、カプセルを受けてカプセルの下降を案内するとともにカプセルを浸出装置内で事前位置に保持するために、カプセルリテーニング部材67が保持部材間の開放隙間内に設けられる。リテーニング部材67は、浸出装置の閉塞中にカプセルを保持し且つ浸出装置の再開放中にカプセルの取り出しを可能にするようになっている。
【0063】
浸出装置内のカプセルを保持して取り出すための原理の詳細な説明は、本出願と同じ日に出願された“Brewing device with a capsule holder for facilitating insertion and removal of capsule”と題される同時係属の欧州特許出願において与えられる。
【0064】
開示された実施形態では、第1の保持部材がフレームに沿ってスライド可能に装着される。すなわち、2つの側部65,66が略長手方向正中軸Iに沿って往復動できる。第2の保持部材66は、移動できない位置すなわち固定位置でフレーム内に配置される。したがって、カプセル67の周囲で保持部材65,66を閉塞するため、第1の保持部材65は、それが図13の閉位置で第2の保持部材との流体密な係合を形成できる位置に至るまで、第2の保持部材66へ近づくように押し進められる。
【0065】
本発明の一態様によれば、浸出装置は、作動部材69と、作動部材69によって及ぼされる或いは作動部材69に対して及ぼされる力を第1の保持部材へ伝える力伝達手段70とを備える閉塞機構68を有する。作動部材69は手動レバーであってもよい。レバーは、ユーザによって加えられるトルクを力伝達手段68に対して直接に伝える。力伝達手段は、レバーのトルクを並進力に変えて保持部材65へ伝えるように構成されるスプールギヤ手段を備える。
【0066】
特に、スプールギヤ手段70は一対のギヤ71,72から構成され、これらのギヤは、互いに噛み合うとともに、フレームに対して、すなわち、フレームの左側および右側部分61,62に対して回転可能に、後軸73および前軸74に対して接続される。後側ギヤ71は、レバーのトルクを受け且つ前側ギヤすなわちスレーブギヤ72を回転させるマスターギヤを形成する。前側ギヤ72は、当該前側ギヤに対して横断して装着され且つ前側ギヤの軸心74からオフセットされる枢支点76で、ロッド手段75に対して接続される。ロッド手段75は、前記枢支点76を介して前側ギヤ72に対しおよび前側枢支点77を介して第1の保持部材65に対してそれぞれ接続される一対のサイドロッドであってもよい。レバーにおける角度を成す経路、例えば約90度の経路の結果として、ギヤが回転駆動され、それにより、並進力がロッド手段75を介して第1の保持部材65に対して伝えられる。ロッド手段および前側ギヤは、枢支点76で折り畳まるナックルジョイント手段を形成する。また、好ましい形態によれば、スプールギヤ手段は、可変伝達比を与えるようになっている。伝達比は、図16に示されるように、マスターギヤの入口速度とスレーブギヤの出口速度との間の比率を表わす。伝達比は、ピッチ点での半径の比率(r1/r2)によって直接に与えられる。本発明によれば、半径の比率r1/r2は、ギヤ手段の角度を成す経路中に次第に変化し、結果としてレバーの角度を成す経路中にも次第に変化し、したがって、スレーブギヤに対して可変出口速度が与えられ、これは、可変並進閉塞速度として第1の保持部材に伝えられる。
【0067】
好ましくは、スプールギヤは、伝達比が次第に増大する出力トルクおよび逆に減少する回転出力速度を与えるように設計される。この増大する出力トルクは、増大する並進力を第1の保持部材に対して伝え、また、逆に、第2の保持部材へ向けた第1の保持部材の閉塞の速度の減少を伝える。
【0068】
したがって、より高い閉塞力が最も望ましい場合には、すなわち、閉塞動作の最後で、より高い閉塞力が供給される。レバーに及ぼされる入力を著しく変えることなく、出力の変更も得られ、したがって、装置の手動閉塞が容易になる。
【0069】
このため、閉塞方向(図16の方向A)へ向けた閉塞機構の角度を成す経路中、マスタ−ギヤの(互いに噛み合う点での)半径r1が更に小さくなるとともに、スレーブギヤの(互いに噛み合う点での)半径r2が更に大きくなる。回転は、閉塞動作の初めにr1がr2よりも大きくなり且つ閉塞動作の終わりにr1がr2よりも小さくなるように行なわれる。
【0070】
例えば、伝達比r1/r2が5:1から1:5へと変化し得る。
【0071】
可変伝達比を得るため、ギヤは、長い縦軸と短い横軸とを有する非円形横断面を有することができる。
【0072】
例えば、ギヤは楕円形の横断面を有する。このため、各スプールギヤは長い横半径を有する。したがって、スプールギヤのそれぞれの長い横半径は、互いに約90度で位置される。
【0073】
図14および図15は、装置の開状態および閉状態をそれぞれ示している。開状態では、レバー69がほぼ直立姿勢で位置されるとともに、第1の保持部材65が第2の(固定)保持部材66から離間される。マスターギヤの半径r1は最大であり、一方、スレーブギヤの半径r2は最小である。ギヤの少なくとも一方、例えばスレーブギヤは、枢支点間の距離を短くし且つよりコンパクトな構造を有するため、その小さい寸法の領域に内方湾曲部を備えていてもよい。装置を閉塞するためにレバーが下側へ作動されると、伝達比が変化し、次第に増大する力および閉塞速度の減少が保持部材で引き起こされる。レバーの角度を成す経路の最後(図15)で、すなわち、90度の角度経路で、ギヤ手段の伝達比が逆にされて、力が最大となり、そのため、速度が最小になる。
【0074】
浸出装置は、第1の保持部材の内面からカプセルを引き離すための取り出し力を加えるパンチの形態を成す取り出し補助手段78を更に備える。カプセルは、例えば穿孔要素がカプセルと係合されることにより、表面に付着されたまま留まることができる。したがって、取り出し補助手段78は、保持部材が再び開くときに取り出し補助手段が取り出し力を加えるようにするべく、カプセルの周囲での保持部材の開放と連係される。このため、取り出し補助手段はギヤ手段によって案内される。取り出し補助手段のパンチは、スレーブギヤが直接に係合する後端を有しており、ギヤによって押されて並進する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えばカプセルの容積内に導入される熱い加圧水などの液体と相互作用するときに飲料または液体食料品を生成できる原料を収容するカプセルを扱うようになっている、飲料または液体食料品の浸出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特にコーヒーメーカーの分野では、飲料原料を収容するカプセルが浸出装置内に挿入される機械が幅広く開発されてきた。浸出装置がカプセルの周囲で緊密に閉じられ、カプセルの第1の面で水が注入されることにより、カプセルの閉じられた容積内で飲料が生成され、飲料をカプセルの第2の面から排出してカップやグラスなどの容器内に集めることができる。
【0003】
浸出装置は、「新しい」カプセルの挿入および廃棄カプセルの除去を容易にするように開発されてきた。
【0004】
WO2005/004683は、
フレームと、
カプセルのための固定保持部品と、
フレームに対してスライド可能に装着される可動保持部品と、
再開放時に作用し且つ内部浸出圧によって生み出される対抗力に抵抗しつつカプセルの周囲で保持部品を安定した液密態様で閉塞できる機械的システムを与えるナックルジョイント機構と、
ナックルジョイント機構を直接に動かすためのハンドルと、
を備える浸出装置に関するものである。
【0005】
かかる装置は、フレーム内の通路を通じた垂直落下によるカプセルの挿入と、挿入方向と同じ方向での廃棄カプセルの除去とを可能にする簡単なアセンブリを与える。
【0006】
そのような装置は使用が容易で信頼できるが、依然として幾つかの不都合がある。特に、当該装置は、レバーによって閉塞することが比較的困難である場合があり、および/または、十分にコンパクトでない場合がある。コンパクト性は、装置の適切な機能のために必要な幾つかの技術的要因および制約によって決まる。閉塞に際しては、ユーザによりレバーに対して及ぼされる手動力からナックルジョイント機構を閉塞するに足る力を伝えるために、比較的長いレバーが必要とされる。手動力はナックルジョイント機構の閉塞力の設定によって決まり、前記閉塞力は、流体密な耐圧システムを形成するためにカプセルの周囲に及ぼされる締め付け力によって決まる。したがって、手動力が依然として許容できる状態を保つべく、レバーアームは、ナックルジョイント機構に対して必要なトルクを及ぼすように増大されなければならない。また、装置の後側にレバーを位置決めするレバーの長さが必要であり、これはあまり最適ではない。なぜなら、ユーザが機械の前面から比較的離れたポイントから自分の腕を延ばしてレバーを把持しなければならないとともに、装置を閉じるために大きな円弧を描かなければならないからである。利用できる空間は、装置のそのような構造を収容するため或いは機械の快適な動作を行なうために十分でない場合がある(特に、狭いキッチン)。
【0007】
特定のシステムにおいては、閉塞力も、カプセルの側面を穿孔できるに足るものでなければならない。例えば、閉塞後にカプセル内への注入流体の導入を可能にするため、閉塞中にカプセルの挿入側が穿孔される。カプセルを穿孔するために必要な力は、ゆったりとした形態ではなく、ぎっしり詰まった形態で原料がカプセル内にある場合に比較的重要となり得る。カプセルを形成する材料も、装置の所要閉塞力に対して影響を及ぼす。したがって、カプセル、特にぎっしりと詰まった物質を収容するカプセルを穿孔するために必要な力の増大は、ハンドルに対する大きな作用を許容できないレベルでユーザに課す。そのため、カプセルの周囲での装置の閉塞中にカプセルを正確に穿孔するために必要な力を与えつつ、ハンドルに対する作用を減少させる必要がある。
【0008】
また、既知の装置は、閉塞/開放サイクル中に可動保持部品の移動を補償できるに足る十分な長さおよび柔軟性を有している必要があるウォーターラインに連結される。したがって、ウォーターラインの延在は、水流中断または流量制御の問題を引き起こす可能性があるラインの圧搾または屈曲を避けるため、フレームの比較的大きな内容積を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記問題に鑑みて、本発明の目的は、幾つかの想定し得る実施形態によれば、同じレバーアームにおいて比較的少ない手動閉塞力を必要とし、あるいは、浸出部品をカプセルの周囲において安定した方法で閉塞するために同じ力に関して小さいレバーアームを必要とする装置を提供することである。
【0010】
閉塞の容易性に影響を与えることなく且つ依然としてユーザが許容できる手動作用のレベルで、カプセルに対して高い閉塞力を与えることにより、穿孔しおよび/または十分に緊密なシール係合を装置内で行なう装置が必要である。
【0011】
また、技術的制約に影響を与えない、特に比較的高い閉塞力を必要としない、単純で且つ低コストな装置が必要である。
【0012】
既存の浸出装置の閉塞効率および信頼性を維持しつつ、特に、流体密な耐圧閉塞を行ないつつ、よりコンパクトな構造で形成され得る装置が必要である。
【0013】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の中心思想を更に発展させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第1の態様は、飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出装置であって、
メインフレームと、
第1のカプセル保持部品と、
カプセルを少なくとも部分的に保持するための第2のカプセル保持部品であって、前記フレーム内で前記第1のカプセル保持部品に対して移動できるとともに、ナックルジョイント手段を備える閉塞機構によって前記フレームに対して連結され、それにより、前記2つの部品間にカプセルを挿入できるように前記2つの部品が互いに離れる開位置と、前記第1および第2の保持部品がカプセルの周囲で閉じられる閉位置とから移動する、第2のカプセル保持部品と、
レバー手段を形成し、前記閉塞機構によって前記第2の保持部品を開位置から閉位置へ或いはその逆へ作動させるようになっているハンドルと、
を備える浸出装置において、
前記閉塞機構が前記ハンドルに関連付けられる更なる力伝達手段を備え、この更なる力伝達手段は、前記ハンドルによって前記ナックルジョイント手段に対して加えられる力を減少させるようになっているとともに、カプセルに関して前記保持部品を閉じるために必要とされる力の増大を補償することを特徴とする浸出装置に関する。
【0015】
第1の形態において、力伝達手段は、ナックルジョイント手段に対するハンドルの力を減少させるようになっている更なる力レバーを備える。
【0016】
この構成は、よりコンパクトな設計のための機会を与える。同じレバーアームにおいて必要とされる力が少ないため、手動ハンドルを短くすることができるとともに、より効果的に且つ都合の良い様態で手動ハンドルを位置させることができる。
【0017】
想定し得る形態において、ナックルジョイント手段は、第1の端部が移動可能な保持部品に対して連結され且つ他端がフレームに対して回転可能に取り付けられる、少なくとも一対のロッドから構成され、好ましくは、平行に配置される2対のロッドから構成される。また、前記少なくとも一対のロッドの第2の端部は、ハンドルに対して直接に回転可能に連結されるのではなく、力伝達手段に対しても回転可能に連結される。結果として、レバーの角度を成す経路における角度単位(すなわち、1度のΔA)は、作用を、ハンドルの角度を成す経路の初めよりもハンドルの角度を成す経路の終わり(すなわち、ナックルジョイント手段の「ハードポイント」を乗り越えなければならない場所)の方で小さいナックルジョイント手段の変位へと変換する。これにより、ハードポイントが乗り越えられるときにハンドルに関与する手動作用が小さくなり、したがって、所定のトルクの既存のシステムと比べて、レバーアームを減少させる機会が与えられる。
【0018】
1つの形態において、ハンドルは、フレームに固定される後側伝達点の比較的上側の前方位置に配置される。この構成は、力伝達手段を介した作用の適切な伝達においてより有効であると同時に、コンパクトな浸出構造に関与することが分かった。確かに、力伝達手段は、ナックルジョイント手段とハンドルとの間においてナックルジョイント手段のほぼ上側で延びており、したがって、力減少により、非常に多くの更なる空間を要することなくナックルジョイント手段に作用する。ハンドルは、動作中に小さい円弧形状の経路を描くとともに、ユーザが近づき易くなる。
【0019】
また、ハンドルは、フレームの上側に対して関節結合されることが好ましい。これも、関与する力の有効性および装置の人間工学に関係する。
【0020】
また、ハンドルは、閉塞位置で延在する際、その長さを第2の保持部品およびナックルジョイント手段によって形成されるアセンブリの長さより短くすることもできる。特に、ハンドルは、大人のユーザによる装置の閉塞の容易性を害することなく、アセンブリの長さよりも短くすることができる。例えば、ハンドルを25%以上短くすることができる。
【0021】
例えば、力伝達手段は、ハンドルの経路の少なくとも最後の50%が、約20%またはそれ未満、より好ましくは少なくとも10%未満のナックルジョイント手段の経路移動に利用されるように、ハンドルおよびナックルジョイント手段に関連して構成される。
【0022】
これにより、ナックルジョイント手段の経路は、ロッド手段の回転端部の2つの軸を通過する中心線に対して膝ポイントにより移動される横断または「垂直」距離として決定される。
【0023】
好ましくは、本発明の浸出装置は、カプセルの容易な挿入および除去または取り出しを行なうことができるように方向付けられる。このため、第2の保持部品は、フレーム内で略水平方向にスライドするようになっている。また、装置は、2つの保持部品間でカプセルを垂直に落下させるようになっている通路を更に備えることができる。したがって、カプセルの挿入は、マネーボックスと同様の形態で行なうことができる。閉塞前にカプセルを所定の位置に保持するため、2つの保持部品間にカプセルリテーニング手段も設けられる。これらのリテーニング手段は、WO2005/004683に記載される解決策と同一であってもよい。
【0024】
本発明の他の好ましい実施形態において、飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出ユニットは、フレームと、浸出中にカプセルを少なくとも部分的に封入するための第1および第2のカプセル保持部材とを備える。第1の保持部材は、開位置と閉位置との間でフレームに沿って第2の保持部材に対して移動できる。2つの位置間で第1の保持部材を作動させるために作動部材を備える閉塞機構が設けられる。閉塞機構は、作動部材によって与えられるトルクを第1の保持部材に対する並進閉塞力へと変換することができるギヤ手段を備える。
【0025】
好ましくは、ギヤ手段は、回転中に伝達比が次第に変化するようになっており、したがって、穿孔するために必要とされる力の増大を補償することができおよび/または保持部品によってカプセルを緊密に封入することができる。
【0026】
ギヤ手段は、非円形の横断面を有する一対のスプールギヤを備えることができる。特に、各スプールギヤが長い横半径を有し、それぞれの横半径が互いに噛み合う関係を成して互いに約90度で位置される。
【0027】
作動部材は、ハンドルであることが好ましく、あるいは、駆動シャフトを有するモータであってもよい。本発明の他の利点は、確かに、電動式浸出装置のためのモータによって及ぼされる作用を減少させる機会を与えることができることであり、したがって、モータコストおよび/またはエネルギ消費がかなり節約される。
【0028】
本発明の他の態様において、飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出装置は、
メインフレームと、
第1のカプセル保持部品と、
カプセルを少なくとも部分的に保持し、前記第1のカプセル保持部品に対して移動できる第2のカプセル保持部品と、
前記第2の保持部品に対して接続され、前記部品内に水を注入するように構成される水供給手段と、
を備え、
前記水供給手段が、前記フレームに対して固定される長さ補償チューブ部を備え、前記第2の保持部品が前記長さ補償チューブ部に対して移動できることを特徴とする。
【0029】
したがって、装置の閉位置から開位置への保持部の相対的な移動を補償するために必要な水供給手段の長さ補償チューブ部は、比較的静的な形態を保つようになっている。水供給手段のそのような形態により、装置の開放中にチューブの移動を吸収するために必要な容積を排除することができる。また、チューブの長さがかなり減少されてもよい。水チューブは、浸出状態(圧力、流量、温度…)に影響を及ぼす場合がある繰り返し屈曲または捩れなどの機械的応力を殆ど受けず、したがって、その寿命が向上される。
【0030】
特に、長さ補償チューブ部は、第2の保持部品が開位置へ移動するにつれてそれ自体が前記第2の保持部品内に少なくとも部分的に挿入するように前記第2の保持部品に対して装着される。長さ補償チューブ部は、前記カプセル保持部品がその開位置へ向けて移動するにつれて前記カプセル保持部品の通路内で少なくなくとも部分的にスライドすることができる。通路は、保持部品の一部であり或いは保持部品に接続される中空金属チューブから形成することができ、また、チューブ自体の一部に作用する機械的応力を減少させつつスライド係合状態でチューブの一部を案内することができる。想定し得る形態において、補償チューブ部の一部は、保持部品が開かれるときに保持部品からカプセルを取り出すのを助けるために保持部品の内側で移動する。本発明の更なる利点、特徴、および、目的は、同封の図面の図と関連する本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の形態に係る飲料製造機のための浸出装置を斜視的に示している。
【図2】図1の浸出装置の縦断面図を示している。
【図3】開位置における図1および図2の浸出装置を斜視的に示している。
【図4】開位置におけるフレームを伴わない浸出装置の簡略化された斜視図を示している。
【図5】図4の側面図である。
【図6】中間位置における浸出装置の簡略化された斜視図を示している。
【図7】図6の側面図である。
【図8】閉位置における浸出装置の簡略化された斜視図を示している。
【図9】図8の側面図である。
【図10】固定された補償チューブ手段を備える本発明の変形例の断面図を示している。
【図11】内部にカプセルを挿入するための開位置における本発明の他の実施形態に係る浸出装置の斜視図を示している。
【図12】側壁が取り除かれた図11の実施形態を斜視図で示している。
【図13】閉位置における図11の浸出装置の側壁が取り除かれた状態の斜視図を示している。
【図14】図11の浸出装置の正中垂直面に沿う側面図を示している。
【図15】閉位置における図11の浸出装置の正中垂直面に沿う側面図を示している。
【図16】図12〜図15の実施形態のギヤ手段の可変伝達比の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付図面を詳しく参照する前に、明確にするため、以下の定義を与える。
【0033】
用語「飲料」は、飲用液体および(これに限定されないが)スープ等の液体食料品の両方を包含する。
【0034】
用語「カプセル」は、乾燥、液体、固体または他の形態で飲料原料を封入する任意の容器である。カプセルは、硬質外皮または軟質外皮を有することができる。カプセルは、同じ材料または異なる材料から形成することができる。カプセルは、密閉シールすることができ(例えば、アルミニウム本体および膜)或いは密閉シールすることができない(例えば、部分的に或いは全体的に多孔質)。
【0035】
用語「浸出」および「浸出装置」とはそれぞれ、圧力抽出、混合、溶解、注入など、液体と原料との間の全ての種類の相互作用、および、浸出プロセスを行なうためにカプセルを扱うことができる飲料機の一部としての技術的モジュールのことである。
【0036】
浸出装置の空間的関係は、本発明の範囲から逸脱することなく変えることもできる。特に、浸出装置が水平配置で描かれ且つ理解を容易にするため「前方向」および「後方向」に言及するが、他の空間的形態、すなわち、垂直または斜めの形態で装置を配置することができる。
【0037】
図1および図2は、本発明の浸出装置またはモジュールの第1の実施形態の概略図を示している。
【0038】
カプセル用の浸出装置は、様々な飲料製造機内、特にコーヒーメーカー内に組み込むことができる。浸出装置は、供給源に接続され且つ(例えば、サーモブロック、ボイラまたは他のタイプのヒータに接続されるポンプから供給される)加圧水を必要とするだけで済む独立したモジュールを構成することができる。
【0039】
本発明の浸出装置1は、アルミニウム、ステンレススチール、銅、または、硬質プラスチック、あるいは、これらの組み合わせ等の耐久材料から一般に形成されるメインフレーム2を備える。フレームは、飲料供給出口3によって装置の前方に延びるとともに、略管状形態のハウジング4によって装置の後方に延びている。したがって、フレームは、正中水平面Iに沿って略水平に延びる。供給出口は、飲料を収集し且つそれを方向Aで下方へ供給するように構成される内部チャネルを含む。
【0040】
また、装置は、カプセル保持部、すなわち、第1の或いは前側保持部5および後側保持部6のそれぞれを更に備え、両方の保持部は、浸出プロセス中に互いに協働してカプセルを所定位置に保持する。また、保持部5,6は、カプセルの水注入側で筐体を形成するように構成され、それにより、筐体に入る水がカプセル内で原料と相互作用することができる。筐体は、保持部の周縁7に沿って流体密であることが好ましい。この場合、流体密性は、カプセルの縁に当接し且つカプセルを前側保持部の縁へ向けて押圧する後側保持部6の十分な力によって得られる。適切なシールのため、ジョイント8を、後側保持部6に設けることができ、あるいは、係属中の欧州特許出願第04025320.5に記載されるようにカプセル自体の一部として設けることができる。
【0041】
後側保持部は、十分な圧力が筐体の内側に形成されたときにカプセルの膜を裂く或いは穿刺する突出要素を有するプレートであってもよい。飲料は、プレート自体におよび/またはプレートの表面および/または側面に行なわれた穴およびチャネルを通じて排出させることができる。例えば、カプセルの供給側を予め開放してプレートのフィルタによって飲料を濾過するなど、他の浸出原理も可能である。
【0042】
前側保持部5はフレームに固定されることが好ましく、例えば、前側保持部は、供給出口3とハウジウング4との間に形成される稜線9に挿入固定される。
【0043】
後側保持部6は、内部キャビティ10を有する籠の形状を成しており、内部キャビティ10は、カプセルの本体を取り囲むとともに、キャビティ内に水を注入するようになっている、したがって、キャビティと共に流体密な筐体を形成するカプセル内に水を注入するようになっている水供給手段11と関連付けられる。キャビティ10の底部には、カプセルを開放して加圧水がカプセル内に入ることができるようにするためのブレード等の穿孔要素12が収容されている。水注入口13によって、側面または底部など、任意のポイントでキャビティ内に水を注入することができる。水供給手段は、ヒータから注入口へと水を輸送するためのチューブ手段14と、装置内の圧力を制御して逆流を避けるための背圧弁15と、シールされたコネクタ16とを更に含んでいる。
【0044】
後側保持部6は、フレーム2内で移動でき、カプセルを2つの保持部5,6間に挿入できるようにする開位置からカプセルを浸出するための閉位置へと動くことができる。保持部は、必ずしも完全に直線状とは限らない開位置から閉位置への閉経路に沿って移動できる。当該経路は完全に直線状でないことが好ましい。特に、閉経路は、前側保持部の中心を通過する中心線Oに対して僅かにオフセットされる第1の部分を有する。閉経路は、中心線Oに沿って中心付けられる第2の部分を有する。閉経路の単なる直線移動の変化は、中心を外れた挿入の位置から浸出位置へカプセルを移動するための機能を有する。カプセルは、保持部の閉塞中に押し進めることができるリテーニング手段によって事前位置に保持される。保持部品が再び開かれると、リテーニング手段によってもはや保持されないカプセルは、重力によって落下できる。カプセルの挿入・事前位置決めのそのような形態は、WO2005/004683A1において既に十分に詳しく説明されており、その内容は、少なくとも閉塞中にカプセルを保持するための解決策の説明に関して(すなわち、2頁36行目〜7頁26行目)、本明細書本文の一部である。
【0045】
閉塞経路で保持部を案内するため、保持部は、例えば、外側へ突出し且つハウジングの側面に沿って設けられる長手方向に向けられた溝18に沿って案内されるサイドピン17を含む。溝には第1(後側)および第2(前側)の部分が形成されており、第1の部分は、装置の閉状態で保持部の中心線に対して僅かにオフセットされる。
【0046】
図3からも明らかなように、フレームには、カプセルを受けるようになっている上側通路19が設けられている。通路19の輪郭は、正しい挿入側で受けられるカプセルの形状に適合させることができる。図2において明らかなように、フレームは、浸出プロセスが終わり且つ後側保持部が再び開かれるときに廃棄カプセルを廃棄するための下側通路20も備えている。既に述べたように、後側保持部が再び開かれると、カプセルがカプセルリテーニング手段によってもはや保持されないため、カプセルは重力によって落下する。
【0047】
ここで、本発明の中心的思想を構成する浸出装置の運動学的閉塞配置について図4〜図9に関連して説明する。
【0048】
まず第一に、浸出装置はハンドル21によって手動で閉じられるようになっており、ハンドル21は、装置の上側に位置されるとともに、フレームの上側に固定される軸22に沿って回転可能に関節結合される。
【0049】
後側保持部は、それ自体知られるナックルジョイント機構23に対して関連付けられる。そのような機構は、保持部6を移動させることができるとともに、その折り畳み位置に対して僅かに反転された角度形態を成す機構の伸長に対応する「ハードポイント」が乗り越えられたときに保持部を「膝」効果によって所定位置に確実にロックすることができる。このため、この機構は、ロッド26,27から構成される2つの対24,25を備えることが好ましい。2つの対は、ねじれ作用に対する高い抵抗を与えるために保持部の両側に平行に配置される。第1または前側ロッド26は、前端軸28で後側保持部6側に取り付けられるとともに、他端が自由枢軸29でナックルジョイント機構の第2または後側ロッド27に対して取り付けられる。このとき、第2の後側ロッド27は、その構造および機能が以下で説明される力伝達手段に対して後端軸30により取り付けられる。つまり、2つのロッド26,27は、浸出装置の閉塞中に前軸および後軸28,30が離間されるときに垂直および水平に移動できる能力を有する自由枢軸29に沿って取り付けられる。なお、前軸および後軸28,30はいずれもそれぞれフレームにガイドされて連結されるが、枢軸29はそのようになっていない。前軸28は、側溝18内でサイドピン17によって突出する。後軸30は、保持部が前側保持部へ向けて前方へ押し進められるときにフレームに対して動かず反力を受けることができる。
【0050】
図2から明らかなように、製造公差を補償でき且つその閉塞力を正確に制御できるように、ナックル手段の力制御システムが設けられる。このため、2つのロッド26,27が接続軸50/楕円体51によって取り付けられる。楕円体51内における軸50の位置を制御して、ナックル機構を閉じるために必要な力を調整するため、ニードル53が設けられる。ニードル53の位置は、相補的なネジ54に沿って長手方向に調整可能であるとともに、スクリュードライバまたはスパナによって移動させることができる。浸出装置の使用中にニードルがねじって外れないように、コイル52を更に設けることができる。そうしなければ、浸出装置の閉塞力に影響が及ぶ。本発明によれば、ハンドルは、ナックルジョイント機構23の後軸30に対して直接に関節結合されないが、中間力伝達手段31に対して連結される。中間力伝達手段31の機能は、ハンドルからの力を減少させてナックルジョイント機構に伝えることである。この機構は、ハンドルおよびナックルジョイント機構の各側に対してそれぞれ接続されるロッド34,35から構成される少なくとも2つの第2の対32,33から形成される。ロッドの各対は、上側自由枢軸36を介してハンドルに連結される上側ロッド34と、中間自由枢軸37を介して上側ロッドに連結され且つ例えば約110〜130度の特定の固定角でナックルジョイント機構23に対して連結固定される更に短い下側ロッド35とを備える。
【0051】
したがって、開位置(図4〜5)から閉方向(図7〜8および最終的に図8〜9)へ向かうハンドル21の回動により、伝達手段31が中間枢軸37で折り畳まれ、そのため、手段31の折り畳み角度Aが減少するにつれて増大する力が、ナックルジョイント機構へ伝えられる。その結果、図7の中間位置と閉位置との間の「ハードポイント」を通過するために力伝達手段によってナックル機構に対して及ぼされる力は、閉操作の初め(すなわち、図5の開位置と図7の中間位置との間)の力よりも高い。また、比較的、開「V」形状から逆「V」形状(図9)へと通過するときの閉塞プロセスの最後におけるナックルジョイント機構の垂直変位Δd2は、開位置から中間位置(図7)への変位Δd1よりもかなり小さい。変位Δd2は、それ自体、依然として比較的重要なハンドルの動作角度範囲A2(図7)に沿って作用する。したがって、ナックルジョイント機構の変位(あるいは、保持部の相対的な変位と同等の様態で)に対するハンドルの回転角の比率ΔA/Δdは、ハンドルが閉位置へ向けて下方に作動されるにつれて増大する傾向がある。
【0052】
無論、力伝達手段は、その形態が異なってもよいが同じ力減少機能(すなわち、同じ主効果)を及ぼす等価な手段と置き換えることができる。
【0053】
図10は、本発明の他の態様に関する浸出装置の変形例を示している。改良点は、カプセルの浸出装置への水供給手段にある。水供給手段11は、フレームに対して移動できない長さ補償チューブ部38を備え、一方、後側保持部6は、開閉中に前側保持部品に対して移動する。長さ補償チューブ部は、例えば、直線形態で好ましくは後方へ延びるチューブの部分である。チューブは柔軟または半硬質であってもよいが、その剛性は、保持部6が開かれる(すなわち、後方へ移動される)間にチューブ自体を保持部6内に挿入できるように決定されるべきであり、装置の開口を塞がないようにあまり硬くすべきではない。
【0054】
チューブ38の前端39の部分は、保持部6内にスライド可能に装着することができる。特に、保持部は、硬質スリーブ状のフレアー部などの管状通路40を含むことができる。通路内における前端39の接続は液密であるがスライド接続であり、したがって、Oリングなど、通路の内部に挿入される1つ以上のシール要素41が必要となる。
【0055】
チューブの補償部の後端42は、必要に応じてチューブの方向を変える機能を有する変向接続部49に対して取り付け固定することができる。この場合、チューブ38の補償部は、ウォーターヒータからの流体を導く上流側流体供給チューブ43を受けるための注入口42と補償チューブ手段の後側取り付け端部を受けるための出口44とを有する硬質な中空ケーシングであってもよい。当該ケーシングは、必要に応じて、普通は水供給手段の更に下流側、すなわち、浸出キャビティの直前に設けられる通常の背圧弁45を取り囲むことができる。ケーシングを介した適切な流体密接続を確保するため、適切なシール要素46,47、取付具48が設けられる。
【0056】
後側保持部6が後方へ移動されると、その後端42が固定されるがその前端39が自由なチューブの補償部は、それ自体が通路内に挿入し、最終的に浸出キャビティ10内に挿入する。保持部の前端は、その耐久性を向上させるため、プラスチック、金属、および/または、繊維で補強することができる。保持部全体をこれらの材料で形成し或いは補強することもできる。前端は、水供給用の通路とシール係合した状態で所定位置に後退するときにシール作用を径方向で高めるために僅かに拡径させることもできる。
【0057】
チューブ38の補償部の前端39は、浸出装置の再開放中に保持部品6が後方へ移動されるときに、保持部品6の内部キャビティ10の内側に突出することができる。したがって、チューブの補償部は、カプセルをキャビティから除去するのに役立つことができる。保持部品6が後方へ移動されるときに、カプセルが依然として穿孔要素12と係合している場合があり、それにより、カプセルがキャビティ内に留まったままとなる場合がある。そのため、チューブの補償部は、保持部品が後方へスライドしているときにカプセルを押し出して穿孔要素から外れるようにすることができる。
【0058】
ここで、本発明の他の可能な形態を図11〜図16に関連して説明する。
【0059】
装置は、左側フレーム部分61と、右側フレーム部分62と、上側フレーム部分63(例えば、安定性のため)と、前側飲料出口部分64とから構成されることができるメインフレーム60を備えている。
【0060】
フレームは、完全なプラスチックまたは金属或いはプラスチックと金属との組み合わせによって製造することができる。前記部分は、射出部品または押出部品から形成することができる。
【0061】
図11〜図13における装置は、2つの保持部材、すなわち、装置内にカプセル9を挿入できるようにするための図12の開位置で離間関係を成して位置される第1および第2の保持部材65,66をそれぞれ備えている。
【0062】
本発明の態様によれば、カプセルを受けてカプセルの下降を案内するとともにカプセルを浸出装置内で事前位置に保持するために、カプセルリテーニング部材67が保持部材間の開放隙間内に設けられる。リテーニング部材67は、浸出装置の閉塞中にカプセルを保持し且つ浸出装置の再開放中にカプセルの取り出しを可能にするようになっている。
【0063】
浸出装置内のカプセルを保持して取り出すための原理の詳細な説明は、本出願と同じ日に出願された“Brewing device with a capsule holder for facilitating insertion and removal of capsule”と題される同時係属の欧州特許出願において与えられる。
【0064】
開示された実施形態では、第1の保持部材がフレームに沿ってスライド可能に装着される。すなわち、2つの側部65,66が略長手方向正中軸Iに沿って往復動できる。第2の保持部材66は、移動できない位置すなわち固定位置でフレーム内に配置される。したがって、カプセル67の周囲で保持部材65,66を閉塞するため、第1の保持部材65は、それが図13の閉位置で第2の保持部材との流体密な係合を形成できる位置に至るまで、第2の保持部材66へ近づくように押し進められる。
【0065】
本発明の一態様によれば、浸出装置は、作動部材69と、作動部材69によって及ぼされる或いは作動部材69に対して及ぼされる力を第1の保持部材へ伝える力伝達手段70とを備える閉塞機構68を有する。作動部材69は手動レバーであってもよい。レバーは、ユーザによって加えられるトルクを力伝達手段68に対して直接に伝える。力伝達手段は、レバーのトルクを並進力に変えて保持部材65へ伝えるように構成されるスプールギヤ手段を備える。
【0066】
特に、スプールギヤ手段70は一対のギヤ71,72から構成され、これらのギヤは、互いに噛み合うとともに、フレームに対して、すなわち、フレームの左側および右側部分61,62に対して回転可能に、後軸73および前軸74に対して接続される。後側ギヤ71は、レバーのトルクを受け且つ前側ギヤすなわちスレーブギヤ72を回転させるマスターギヤを形成する。前側ギヤ72は、当該前側ギヤに対して横断して装着され且つ前側ギヤの軸心74からオフセットされる枢支点76で、ロッド手段75に対して接続される。ロッド手段75は、前記枢支点76を介して前側ギヤ72に対しおよび前側枢支点77を介して第1の保持部材65に対してそれぞれ接続される一対のサイドロッドであってもよい。レバーにおける角度を成す経路、例えば約90度の経路の結果として、ギヤが回転駆動され、それにより、並進力がロッド手段75を介して第1の保持部材65に対して伝えられる。ロッド手段および前側ギヤは、枢支点76で折り畳まるナックルジョイント手段を形成する。また、好ましい形態によれば、スプールギヤ手段は、可変伝達比を与えるようになっている。伝達比は、図16に示されるように、マスターギヤの入口速度とスレーブギヤの出口速度との間の比率を表わす。伝達比は、ピッチ点での半径の比率(r1/r2)によって直接に与えられる。本発明によれば、半径の比率r1/r2は、ギヤ手段の角度を成す経路中に次第に変化し、結果としてレバーの角度を成す経路中にも次第に変化し、したがって、スレーブギヤに対して可変出口速度が与えられ、これは、可変並進閉塞速度として第1の保持部材に伝えられる。
【0067】
好ましくは、スプールギヤは、伝達比が次第に増大する出力トルクおよび逆に減少する回転出力速度を与えるように設計される。この増大する出力トルクは、増大する並進力を第1の保持部材に対して伝え、また、逆に、第2の保持部材へ向けた第1の保持部材の閉塞の速度の減少を伝える。
【0068】
したがって、より高い閉塞力が最も望ましい場合には、すなわち、閉塞動作の最後で、より高い閉塞力が供給される。レバーに及ぼされる入力を著しく変えることなく、出力の変更も得られ、したがって、装置の手動閉塞が容易になる。
【0069】
このため、閉塞方向(図16の方向A)へ向けた閉塞機構の角度を成す経路中、マスタ−ギヤの(互いに噛み合う点での)半径r1が更に小さくなるとともに、スレーブギヤの(互いに噛み合う点での)半径r2が更に大きくなる。回転は、閉塞動作の初めにr1がr2よりも大きくなり且つ閉塞動作の終わりにr1がr2よりも小さくなるように行なわれる。
【0070】
例えば、伝達比r1/r2が5:1から1:5へと変化し得る。
【0071】
可変伝達比を得るため、ギヤは、長い縦軸と短い横軸とを有する非円形横断面を有することができる。
【0072】
例えば、ギヤは楕円形の横断面を有する。このため、各スプールギヤは長い横半径を有する。したがって、スプールギヤのそれぞれの長い横半径は、互いに約90度で位置される。
【0073】
図14および図15は、装置の開状態および閉状態をそれぞれ示している。開状態では、レバー69がほぼ直立姿勢で位置されるとともに、第1の保持部材65が第2の(固定)保持部材66から離間される。マスターギヤの半径r1は最大であり、一方、スレーブギヤの半径r2は最小である。ギヤの少なくとも一方、例えばスレーブギヤは、枢支点間の距離を短くし且つよりコンパクトな構造を有するため、その小さい寸法の領域に内方湾曲部を備えていてもよい。装置を閉塞するためにレバーが下側へ作動されると、伝達比が変化し、次第に増大する力および閉塞速度の減少が保持部材で引き起こされる。レバーの角度を成す経路の最後(図15)で、すなわち、90度の角度経路で、ギヤ手段の伝達比が逆にされて、力が最大となり、そのため、速度が最小になる。
【0074】
浸出装置は、第1の保持部材の内面からカプセルを引き離すための取り出し力を加えるパンチの形態を成す取り出し補助手段78を更に備える。カプセルは、例えば穿孔要素がカプセルと係合されることにより、表面に付着されたまま留まることができる。したがって、取り出し補助手段78は、保持部材が再び開くときに取り出し補助手段が取り出し力を加えるようにするべく、カプセルの周囲での保持部材の開放と連係される。このため、取り出し補助手段はギヤ手段によって案内される。取り出し補助手段のパンチは、スレーブギヤが直接に係合する後端を有しており、ギヤによって押されて並進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出ユニット(1,1A,1B)であって、
フレーム(2)と、
浸出中にカプセル(9)を少なくとも部分的に封入するための第1のカプセル保持部材(7)及び第2のカプセル保持部材(8)と、
を備え、
前記第1のカプセル保持部材(7)が、開位置と閉位置との間で前記フレーム(2)に沿って前記第2のカプセル保持部材(8)に対して移動でき、
作動部材(11)を備え且つ2つの位置間で前記第1の保持部材を作動させるための閉塞機構(3)を備える浸出ユニット(1,1A,1B)において、
前記閉塞機構(3)が、前記作動部材(11)によって与えられるトルクを前記第1のカプセル保持部材(7)に対する並進閉塞力へと変換することができるギヤ手段(12)を備え、
前記ギヤ手段(12)が、回転中に伝達比が次第に変化するようになっており、非円形の横断面を有する一対のスプールギヤ(14,15)を備えることを特徴とする浸出ユニット。
【請求項2】
前記スプールギヤ(14,15)の各々が、長い横半径を有し、それぞれの横半径が互いに噛み合う関係を成して互いに約90度で位置されることを特徴とする、請求項1に記載の浸出ユニット。
【請求項3】
前記作動部材がハンドルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸出ユニット。
【請求項4】
前記作動部材が駆動シャフトを有するモータであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸出ユニット。
【請求項1】
飲料原料を収容するカプセルの浸出のための浸出ユニット(1,1A,1B)であって、
フレーム(2)と、
浸出中にカプセル(9)を少なくとも部分的に封入するための第1のカプセル保持部材(7)及び第2のカプセル保持部材(8)と、
を備え、
前記第1のカプセル保持部材(7)が、開位置と閉位置との間で前記フレーム(2)に沿って前記第2のカプセル保持部材(8)に対して移動でき、
作動部材(11)を備え且つ2つの位置間で前記第1の保持部材を作動させるための閉塞機構(3)を備える浸出ユニット(1,1A,1B)において、
前記閉塞機構(3)が、前記作動部材(11)によって与えられるトルクを前記第1のカプセル保持部材(7)に対する並進閉塞力へと変換することができるギヤ手段(12)を備え、
前記ギヤ手段(12)が、回転中に伝達比が次第に変化するようになっており、非円形の横断面を有する一対のスプールギヤ(14,15)を備えることを特徴とする浸出ユニット。
【請求項2】
前記スプールギヤ(14,15)の各々が、長い横半径を有し、それぞれの横半径が互いに噛み合う関係を成して互いに約90度で位置されることを特徴とする、請求項1に記載の浸出ユニット。
【請求項3】
前記作動部材がハンドルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸出ユニット。
【請求項4】
前記作動部材が駆動シャフトを有するモータであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浸出ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−59649(P2013−59649A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−258768(P2012−258768)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2009−511504(P2009−511504)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2009−511504(P2009−511504)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】
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