説明

可変圧力噴射用の多数の源の燃料システム

【課題】燃料噴射システムのコストの増大を抑制すること。
【解決手段】エンジン用の燃料システムが開示される。燃料システムは、第1の圧力まで燃料を加圧するように構成された第1の源と、第2の圧力まで燃料を加圧するように構成された第2の源とを有する。さらに、燃料システムは、燃料を受け入れてそれをエンジン内に噴射するように構成された燃料噴射器、ならびに燃料噴射器と第1および第2の源との間に配置された単一の弁を有する。単一の弁は、第1および第2の源と燃料噴射器とに流体連通し、可変圧力燃料を燃料噴射器に供給できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料システム、より詳しくは、可変圧力噴射イベントを行うための多数の加
圧燃料源を有する燃料システムに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年5月24日に出願され「一群の噴射器の圧力制御部を有する多数
の源の燃料システム(Multi−Source Fuel System Havin
g Grouped Injector Pressure Control)」と題さ
れた、デニス・H・ギブソン(Dennis H.GIBSON)による(特許文献1)
、2006年5月24日に出願され「閉ループ圧力制御部を有する多数の源の燃料システ
ム(Multi−Source Fuel System Having Closed
Loop Pressure Control)」と題された、デニス・H・ギブソン
(Dennis H.GIBSON)による(特許文献2)、および2006年5月31
日に出願され「可変圧力噴射用の多数の源の燃料システム(Multi−Source
Fuel System For Variable Pressure Inject
ion)」と題された、デニス・H・ギブソン(Dennis H.GIBSON)によ
る(特許文献3)の利益を主張する。これらの開示は、参照により本明細書に明確に援用
される。
【背景技術】
【0003】
コモンレール燃料システムは、エンジンの燃焼室内に燃料を導入するための方法を提供
する。典型的なコモンレール燃料システムは、ソレノイドに電圧が印加されたときに燃料
ノズルを開放する作動ソレノイドを有する噴射器を含む。次に、ソレノイドに電圧が印加
され続けている期間と、当該期間中に燃料噴射器ノズルに供給される燃料の圧力とに基づ
いて、燃料が燃焼室内に噴射される。
【0004】
エンジン性能および排気エミッションを最適化するために、エンジン製造業者は、燃料
噴射器ノズルに供給される燃料の圧力を変化させ得る。このような一例は、2004年9
月2日に公開されたシノグレ(Shinogle)による(特許文献4)に記載されてい
る。(特許文献4)は、燃料供給を保持する第1のコモンレールと、作動液(例えば油)
供給を保持する第2のコモンレールとに流体接続可能な燃料噴射器を有する燃料システム
を記載している。(特許文献4)のそれぞれの燃料噴射器には、燃料の圧力を増加させる
ために作動液によって可動な増圧ピストンが備えられる。燃料噴射器を第1のコモンレー
ルに流体接続することによって、第1の圧力で燃料を噴射できる。燃料噴射器を第1およ
び第2のコモンレールに流体接続することによって、第1の圧力よりも高い第2の圧力で
燃料を噴射できる。
【0005】
(特許文献4)の燃料噴射システムは、異なる圧力で燃料をエンジンに十分に供給し得
るが、燃料噴射システムは制限され、問題を生じさせる可能性がある。具体的には、(特
許文献4)の燃料噴射システムは、2つの異なる圧力で燃料を噴射できるだけなので、燃
料噴射システムはいくつかの用途から制限される場合がある。さらに、システムは、2つ
の異なる流体、すなわち燃料と油を利用するので、一方の流体と他方の流体とが汚染し合
わないように注意しなければならない。汚染が発生した場合、エンジンは、所望に応じて
動作できなくなり、損傷を受ける可能性がある。その上、それぞれの燃料噴射器自体が、
当該噴射器から噴霧された燃料の圧力を変化させるために専用の増圧器を含むので、シス
テムは多数の構成部材を含むことになるだろう。この多数の構成部材は、燃料噴射システ
ムのコストと、燃料システムを正確に制御する困難性とを増加させる場合がある。さらに
、ポンプ出力を制御することによって、噴射燃料の圧力が噴射器の上流の相当の距離にわ
たって調整されるので、実際の噴射圧力は所望の噴射圧力よりも遅れる可能性がある。こ
の圧力の遅れにより、意図した噴射プロファイルから逸脱する噴射プロファイルが生じる
場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第11/420,057号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/420,051号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/443,312号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0168673号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の燃料システムは上述の課題の1つ以上を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態はエンジン用の燃料システムに関する。燃料システムは、第1の圧力ま
で燃料を加圧するように構成された第1の源と、第2の圧力まで燃料を加圧するように構
成された第2の源とを含む。さらに、燃料システムは、燃料を受け入れてエンジン内に噴
射するように構成された燃料噴射器を含む。その上、燃料システムは、燃料噴射器と第1
および第2の源との間に配置された単一の弁を含み、単一の弁は、第1および第2の源と
燃料噴射器とに流体連通し、可変圧力燃料を燃料噴射器に供給できる。
【0009】
本開示の他の形態は、燃料を噴射する方法に関する。本方法は、第1の圧力まで第1の
燃料流を加圧するステップと、第2の圧力まで第2の燃料流を加圧するステップとを含む
。さらに、本方法は、単一の位置で第1および第2の燃料流を受け入れるステップと、そ
れに応答して第3の圧力の第3の燃料流を発生させるステップと、第3の燃料流を噴射器
に導くステップと、第3の燃料流を選択的に噴射するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】開示される模範的なエンジンの概略図である。
【図2】図1のエンジンに使用するための開示される模範的な燃料システムの概略断面図である。
【図3】図1のエンジン用の開示される他の模範的な燃料システムの概略断面図である。
【図4】図1のエンジン用の開示される他の模範的な燃料システムの概略断面図である。
【図5】開示される他の模範的なエンジンの概略図である。
【図6】図5のエンジン用の開示される模範的な燃料システムの概略断面図である。
【図7】図5のエンジン用の開示される他の模範的な燃料システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、エンジン10と燃料システム12の模範的な実施形態とを有する機械5を示し
ている。機械5は、鉱業、建設業、農業、発電業、運送業等の産業、または公知の他の任
意の産業に関連するある種の作業を行う固定機械または移動機械であり得る。例えば、機
械5は、土工機械、発電設備、ポンプまたは他の任意の適切な作業実行機械として具体化
されてもよい。
【0012】
本開示に関して、エンジン10は4行程ディーゼルエンジンとして図示かつ記載される
。しかし、当業者は、エンジン10が、例えばガソリンエンジンまたはガス燃料エンジン
等の他の任意の種類の内燃機関として具体化され得ることを認識するであろう。エンジン
10は、複数のシリンダ16を画成するエンジンブロック14と、それぞれのシリンダ1
6内に摺動可能に配置されたピストン18と、それぞれのシリンダ16に関連するシリン
ダヘッド20とを含むことが可能である。
【0013】
シリンダ16とピストン18とシリンダヘッド20とが燃焼室22を形成し得る。図示
した実施形態では、エンジン10は6つの燃焼室22を含む。しかし、エンジン10が、
より多数またはより少数の燃焼室22を含み得ることと、燃焼室22が「直列」形態、「
V字」形態または他の任意の適切な形態に配置され得ることが考えられる。
【0014】
図1にも示したように、エンジン10は、エンジンブロック14内に回転するように配
置されるクランクシャフト24を含むことが可能である。コネクティングロッド26によ
り、それぞれのピストン18をクランクシャフト24に接続することが可能であり、この
結果、それぞれの個々のシリンダ16内におけるピストン18の摺動運動により、クラン
クシャフト24の回転が生じる。同様に、クランクシャフト24の回転により、ピストン
18の摺動運動が生じ得る。クランクシャフト24が回転したとき、燃焼室22は特定の
順序で点火することが可能である。点火順序は、図1の左から燃焼室22を番号付けした
場合、例えば、1番目、5番目、3番目、6番目、2番目、4番目であり得る。すなわち
、1番目すなわち最も左の燃焼室が最初に点火し得る(例えば、クランクシャフト24の
360度の1回転内で、残りのシリンダよりも先に燃料と空気の混合物を燃焼させ得る)
。最も左の燃焼室22の点火に続いて、左から5番目の燃焼室が点火することが可能であ
り、以下同様である。このようにして、隣接する燃焼室22が連続的に点火しなくてもよ
い。
【0015】
燃料システム12は、それぞれの燃焼室22内への加圧燃料の噴射を行うように協働す
る構成部材を含み得る。具体的には、燃料システム12は、燃料供給を保持するように構
成されたタンク28と、燃料を加圧して、1つ以上の加圧燃料流を複数の燃料噴射器32
に導くように構成された燃料ポンプ装置30とを含むことが可能である。低圧フィードを
燃料ポンプ装置30に供給するために、燃料移送ポンプ36をタンク28と燃料ポンプ装
置30との間の燃料ライン40内に配置し得る。
【0016】
燃料ポンプ装置30は、第1のポンプ機構30aと第2のポンプ機構30bとを有する
機械的に駆動される電子制御ポンプとして具体化されることが可能である。回転可能なカ
ム(図示せず)を介して、第1および第2のポンプ機構30a、30bのそれぞれをポン
プドライブシャフト46に動作可能に接続し得る。燃料を加圧するために、圧縮行程を通
して、第1および第2のポンプ機構30a、30bのドライブピストン要素(図示せず)
にカムを適合させることが可能である。圧縮行程の期間を変更し、これによって、第1お
よび第2のポンプ機構30a、30bの流量を変化させるために、第1および第2のポン
プ機構30a、30bに関連するプランジャ(図示せず)を可変タイミングで閉鎖し得る
。その代わりに、第1および第2のポンプ機構30a、30bは、回転可能な斜板、また
は加圧燃料の流量を変化させるための公知の他の任意の手段を含んでもよい。所望ならば
、その代わりに、燃料ポンプ装置30が、一定の出力容量を有しかつ並列または直列関係
に配置される2つの別個のポンプ要素として具体化され得ることが考えられる。
【0017】
別個の加圧燃料流を発生させるように、第1および第2のポンプ機構30a、30bを
適合させることが可能である。例えば、第1のポンプ機構30aは、第1の燃料供給ライ
ン42を介して第1のコモンマニホルド34に導かれる第1の加圧燃料流を発生させ得る
。第2のポンプ機構30bは、第2の燃料供給ライン43を介して第2のコモンマニホル
ド37に導かれる第2の加圧燃料流を発生させ得る。一実施例において、第1の加圧燃料
流は約100Mpaの圧力を有することが可能であり、一方、第2の加圧燃料流は約20
0Mpaの圧力を有することが可能である。一方向の燃料流を第1のポンプ機構30aか
ら第1のコモンマニホルド34に供給するために、第1のチェック弁44を第1の燃料供
給ライン42内に配置し得る。一方向の燃料流を第2のポンプ機構30bから第2のコモ
ンマニホルド37に供給するために、第2のチェック弁45を第2の燃料供給ライン43
内に配置し得る。
【0018】
燃料ポンプ装置30はエンジン10に動作可能に接続され、クランクシャフト24によ
って駆動されることが可能である。例えば、図1には、ギヤトレイン48を介してクラン
クシャフト24に接続されているような燃料ポンプ装置30のポンプドライブシャフト4
6が示されている。しかし、その代わりに、第1および第2のポンプ機構30a、30b
の一方または両方を電気的に、油圧的に、空気圧的にまたは他の任意の適切な方法で駆動
し得ることが考えられる。
【0019】
燃料噴射器32は、シリンダヘッド20内に配置され、また複数の燃料ライン50を介
して第1および第2のコモンマニホルド34、37に接続されることが可能である。それ
ぞれの燃料噴射器32は、所定のタイミング、燃料圧力および燃料流量において、関連す
る燃焼室22内に、ある量の加圧燃料を噴射するように動作可能であり得る。燃焼室22
内への燃料噴射のタイミングをピストン18の運動と同期させることが可能である。例え
ば、噴射燃料の圧縮点火燃焼を許容するために、圧縮行程においてピストン18が上死点
(TDC)位置に近づいたときに、燃料を噴射してもよい。その代わりに、予混合圧縮着
火(HCCI)動作のために、ピストン18が上死点位置に向かって圧縮行程を開始した
ときに、燃料を噴射してもよい。さらに、後処理再生用の還元雰囲気を形成するためのそ
の後のポスト噴射のために、ピストン18が膨張行程中に上死点位置から下死点位置に向
かって移動しているときに、燃料を噴射してもよい。
【0020】
図2に示したように、それぞれの燃料噴射器32は、閉鎖されたノズルユニット燃料噴
射器として具体化され得る。具体的には、それぞれの燃料噴射器32は、ガイド54とノ
ズル部材56とニードル弁体58と第1のソレノイドアクチュエータ60と第2のソレノ
イドアクチュエータ62とを収容する噴射器本体52を含むことが可能である。
【0021】
噴射器本体52は、シリンダヘッド20内で組み立てられるように構成されたほぼ円筒
状の部材であり得る。噴射器本体52は、ガイド54およびノズル部材56を受け入れる
ための中央ボア64と、ノズル部材56の先端68が突出し得る開口部66とを有するこ
とが可能である。燃料噴射器32からの燃料漏れを抑制するために、ガイド54とノズル
部材56との間に、例えばOリング等のシール用部材(図示せず)を配置してもよい。
【0022】
ガイド54も、ニードル弁体58を受け入れるように構成された中央ボア70と制御室
72とを有するほぼ円筒状の部材であり得る。中央ボア70は、圧力室として機能するこ
とが可能であり、燃料供給通路74を介して連続的に供給される加圧燃料を保持する。噴
射中、燃料ライン50からの加圧燃料は燃料供給通路74と中央ボア70とを介してノズ
ル部材56の先端68に流れ得る。
【0023】
ニードル弁体58の運動を制御するために、加圧燃料を選択的に制御室72から排出す
るかまたはそこに供給することが可能である。具体的には、制御通路76により、制御室
72に関連するポート78を第1のソレノイドアクチュエータ60に流体接続することが
可能である。ニードル弁体58の軸方向移動に対して半径方向に向けられる制御室72の
側壁内に、またはその代わりに、制御室72の軸方向端部内に、ポート78を配置し得る
。燃料供給通路74に連通する制限供給通路80を介して、制御室72に加圧燃料を連続
的に供給することが可能である。制御通路76から加圧燃料が排出されたとき、供給通路
80を制限することにより、制御室72内の圧力低下が許容され得る。
【0024】
同様に、ノズル部材56は、ニードル弁体58を受け入れるように構成される中央ボア
82を有するほぼ円筒状の部材として具体化され得る。さらに、ノズル部材56は、中央
ボア82からエンジン10の燃焼室22内への加圧燃料の噴射を許容するために、1つ以
上のオリフィス84を含み得る。
【0025】
ニードル弁体58は、ハウジングガイド54およびノズル部材56内に摺動配置される
ほぼ円筒状の細長い部材であり得る。ニードル弁体58は、その先端86が、オリフィス
84を介した燃料流を遮断する第1の位置と、オリフィス84が燃焼室22内への加圧燃
料流を許容するように開放される第2の位置との間で軸方向に可能であり得る。
【0026】
通常、ニードル弁体58を第1の位置に向かって付勢することが可能である。特に、そ
れぞれの燃料噴射器32は、先端86をオリフィス閉鎖位置に向かって軸方向に付勢する
ために、ガイド54のストッパ90とニードル弁体58の座面92との間に配置されたバ
ネ88を含み得る。燃料噴射器32内の構成部材の摩耗を低減するために、バネ88とス
トッパ90との間に第1のスペーサ94を配置することが可能であり、またバネ88と座
面92との間に第2のスペーサ96を配置することが可能である。
【0027】
ニードル弁体58は多数の駆動油圧面を有し得る。特に、ニードル弁体58は、加圧燃
料が作用したときに第1の閉鎖位置またはオリフィス閉鎖位置に向かってニードル弁体5
8を駆動しようとする油圧面98と、バネ88の付勢に抗し、かつニードル弁体58を第
2の開放位置またはオリフィス開放位置に向かって逆方向に駆動しようとする油圧面10
0とを含むことが可能である。
【0028】
ニードル弁体58の開放運動を制御するために、第1のソレノイドアクチュエータ60
をニードル弁体58の先端86の反対側に配置し得る。特に、第1のソレノイドアクチュ
エータ60は、制御室72とタンク28との間に配置された2位置弁体を含むことが可能
である。弁体は、制御室72からタンク28への流体の流れを遮断する閉鎖位置に向かっ
てバネ付勢され、また燃料が制御室72からタンク28に流れることが許容される開放位
置に向かってソレノイド作動されることが可能である。弁体は、第1のソレノイドアクチ
ュエータ60に関連するコイルに印加された電流に応じて、閉鎖位置と開放位置との間で
可動であり得る。その代わりに、弁体を油圧的に動作させるか、機械的に動作させるか、
空気圧的に動作させるか、または他の任意の適切な方法で動作させ得ることが考えられる
。さらに、その代わりに、弁体が、閉鎖位置と開放位置との間の任意の位置に可動である
比例式の弁体として具体化され得ることが考えられる。
【0029】
第2のソレノイドアクチュエータ62は、ニードル弁体58の閉鎖運動を制御するため
に、第1のソレノイドアクチュエータ60とタンク28との間に配置された2位置弁体を
含み得る。弁体は、燃料がタンク28に流れることが許容される開放位置に向かってバネ
付勢され、またタンク28への流体の流れを遮断する閉鎖位置に向かってソレノイド作動
されることが可能である。弁体は、第2のソレノイドアクチュエータ62に関連するコイ
ルに印加された電流に応じて、開放位置と閉鎖位置との間で可能であり得る。その代わり
に、弁体を油圧的に動作させるか、機械的に動作させるか、空気圧的に動作させるか、ま
たは他の任意の適切な方法で動作させ得ることが考えられる。さらに、その代わりに、弁
体が3位置式の弁体として具体化され得ることが考えられ、この場合、両方向の加圧燃料
流が促進される。
【0030】
図2にも示したように、圧力制御弁102はそれぞれの燃料噴射器32に関連すること
が可能である。具体的には、圧力制御弁102は、第1の弁体106と、第2の弁体10
8と、それを移動させるように接続されたアクチュエータ104と、第3の弁体110と
、バイパス回路112とを含み得る。第1および第2のコモンマニホルド34、37内の
燃料圧力と、アクチュエータ104に入力された電流とに応じて、圧力制御弁102は、
燃料供給通路74を介して燃料噴射器32に導かれた燃料の圧力を調整することが可能で
ある。圧力制御弁102が、燃料噴射器32の一部、または1つ以上の燃料噴射器32に
関連する別個の独立型の構成部材であり得ることが考えられる。
【0031】
加圧燃料の一部を第2のコモンマニホルド37からノズル部材56の中央ボア82に選
択的に通過させるために、弁体106が、その端部に作用する流体圧力によって可動なパ
イロット作動式の比例弁体または他の適切な装置として具体化されることが可能である。
具体的には、弁体106は、第1の加圧燃料流の最大量が中央ボア82に導かれる第1の
位置から、第2のコモンマニホルド37からの加圧燃料が中央ボア82に流れない第2の
位置に向かって、戻りバネ114の付勢に抗して可動であり得る。さらに、弁体106は
、最大量の一部をタンク28にまた最大量の残部を中央ボア82に導くように、第1の位
置と第2の位置との間の任意の位置に可動であり得る。弁体106によって中央ボア82
とタンク28とに導かれた燃料の量と比は、弁体106の端部に作用する流体圧力に依存
することが可能であり、また中央ボア82に供給された燃料の圧力に影響を与えることが
可能である。例えば、弁体106を介してタンク28に排出される燃料量が増加した(例
えば、弁体106が、ずっとではないが第2の位置に向かって移動された)ときに、中央
ボア82に導かれた燃料の圧力が減少し得る。逆に、弁体106を介してタンク28に排
出される第1の燃料流の量が減少した(例えば、弁体106が第1の位置に向かって移動
された)ときに、中央ボア82に導かれた燃料の圧力が増加し得る。このようにして、オ
リフィス84を介した可変噴射圧力と燃焼室22内への侵入深さとを得ることが可能であ
る。
【0032】
弁体108も、比例弁体または他の適切な装置として具体化されることが可能であり、
また第1の位置と第2の位置との間の弁体106の位置に影響を与えるように可動であり
得る。具体的には、弁体108は、第1のコモンマニホルド34からの加圧パイロット燃
料が弁体106の端部に連通される第1の位置と、弁体106の端部の加圧パイロット燃
料がタンク28に排出される第2の位置との間で可動であり得る。パイロット燃料が弁体
106の端部から排出されるかまたはそれに連通される速度は、燃料噴射器32内の燃料
圧力が変化する割合に影響を与えることが可能である。弁体108をアクチュエータ40
に接触させ続けるために、弁体108の上流からの燃料が、関連する戻りバネの付勢と協
働し得る。
【0033】
アクチュエータ104は、1つ以上の列のピエゾ電気結晶を有するピエゾ電気機構とし
て具体化されることが可能である。ピエゾ電気結晶は、ランダムなドメイン配向を有する
構造である。これらのランダムな配向は、不変の双極子挙動を有する正イオンおよび負イ
オンの非対称構成である。例えば電流の印加等によって、電界が結晶に印加されたとき、
ピエゾ電気結晶は、ドメインが整列するように電界の軸に沿って膨張する。印加電流に応
じて第1の位置と第2の位置との間で弁体108を移動させるために、アクチュエータ1
04を機械的に接続し得る。
【0034】
弁体110は、弁体106を介して燃料噴射器32に流れる燃料の圧力に影響を与える
ように構成された圧力調整弁体として具体化されることが可能である。特に、弁体106
が第1の位置から移動したとき、ある燃料が弁体106を通過して弁体110に至るよう
に、弁体106とタンク28との間に弁体110を配置し得る。弁体110の第1の端部
は、第1のコモンマニホルド34からの燃料に連通し、戻りバネの付勢と共に、弁体11
0を流れ遮断位置に向かって付勢することが可能である。流れ遮断位置にあるとき、実質
的に、燃料は弁体110を通過してタンク28に至ることができない。弁体110の第2
の端部は、弁体106を通過した燃料に連通することが可能であり、また弁体110を流
れ通過位置に向かって付勢することが可能である。流れ通過位置にあるとき、タンク28
に排出されることが許容される燃料量は、弁体106を通過した燃料量と、通過した燃料
の結果として生じる圧力と、第1のコモンマニホルド34から弁体110の反対端に供給
された燃料の圧力とに依存し得る。このようにして、第1のコモンマニホルド34内の燃
料の圧力は、第2のコモンマニホルド37から燃料噴射器32に送られる燃料の圧力に影
響を与えることが可能である。
【0035】
バイパス回路112により、最小燃料圧力が燃料噴射器32に対して常に利用可能であ
ることが保証され得る。特に、弁体106が第2の位置にあるとき、噴射器32用の燃料
源のみが、バイパス回路112を介した第1のコモンマニホルド34であり得る。バイパ
ス回路112は、噴射器32内の燃料圧力が第1のコモンマニホルド34内の燃料圧力未
満に低下したときにのみ、燃料がバイパス回路112を介して流れるようにバイパス回路
112を介した一方向の燃料流を保証するチェック弁116を含むことが可能である。
【0036】
図3は、図2の燃料システム12の代替実施形態を示している。図2の燃料システム1
2と同様に、図3の燃料システム12は、第1および第2のコモンレール34と37から
燃料ライン50を介して加圧燃料流を受け入れる燃料噴射器32を含み得る。しかし、図
2に示した圧力制御装置102とは対照的に、図3の実施形態は、異なる圧力制御装置3
02を含んでもよい。圧力制御装置302は、弁体306に動作可能に接続されかつ制御
システム316と通信するアクチュエータ304を含むことが可能である。弁体306は
、燃料噴射器32に関連し、そして第1および第2の加圧燃料流を選択的に混合しおよび
/またはそれらを燃料噴射器32に導くように、アクチュエータ304によって可動であ
り得る。アクチュエータ304および弁体306が、燃料噴射器32と一体であるかまた
は独立型の構成部材として別個であり得ることが考えられる。
【0037】
アクチュエータ304は、104と実質的に同じであり、また1つ以上の列のピエゾ電
気結晶を有するピエゾ電気装置として具体化されることが可能である。例えば電流の印加
等によって、電界が304の結晶に印加されたとき、ピエゾ電気結晶が306の移動に影
響を与えるように電界の軸に沿って膨張する。
【0038】
パイロット流体によって弁体306を移動させるために、アクチュエータ304を接続
することが可能である。特に、アクチュエータ304に接続されたパイロット要素320
は、コモンレール34からのパイロット流体が弁体306の端部に連通される第1の位置
と、弁体306の端部からのパイロット流体がタンク28に排出されることが許容される
第2の位置との間で可動であり得る。電流がアクチュエータ304のピエゾ電気結晶に印
加されたとき、パイロット要素320を第1の位置から第2の位置に向かって移動させる
ように、アクチュエータ304が膨張することが可能である。対照的に、電流がアクチュ
エータ304のピエゾ電気結晶から除去されたとき、パイロット要素320を第1の位置
に向かって戻すように、アクチュエータ304が収縮することが可能である。所望ならば
、アクチュエータ304のピエゾ電気結晶を省略して、パイロット要素320の移動を他
の適切な方法で制御し得ることが考えられる。さらに、その代わりに、所望ならば、パイ
ロット要素320を使用することなく弁体306を移動させるために、アクチュエータ3
04を直接的かつ機械的に接続し得ることが考えられる。
【0039】
弁体306は、上述のパイロット流体に応じて可動な比例弁体または他の適切な装置と
して具体化されることが可能である。具体的には、コモンレール34からの十分なパイロ
ット流体が弁体306の端部に接触したとき、弁体306は、第2の加圧燃料流のみが中
央ボア82に導かれる第1の位置にあるかまたはそこに向かって付勢され得る。パイロッ
ト流体が弁体306の端部から排出されたとき、バネ322は、第1の加圧燃料流のみが
中央ボア82に導かれる第2の位置に向かって弁体306を付勢することが可能である。
弁体306は、第1および第2の加圧燃料流の一部を中央ボア82に導くように、パイロ
ット流体によって第1の位置と第2の位置との間の任意の位置に可動であり得る。弁体3
06によって中央ボア82に導かれた第1または第2の流れの量と比は、アクチュエータ
304のピエゾ電気結晶に印加された電流に依存することが可能であり、また中央ボア8
2に供給された燃料の結果として生じる圧力に影響を与えることが可能である。さらに、
パイロット要素320を介して流れる流体の速度は、弁体320の作動速度と、中央ボア
82内の噴射圧力が変化する結果として得られた割合とに影響を与えることが可能である
。加圧燃料のこの調整/混合により、中央ボア82で燃料圧力を変化させることを許容す
ることが可能になり、オリフィス84を介した燃料の可変噴射率と燃焼室22への侵入深
さとが得られる。
【0040】
制御システム316は、1つ以上の入力に応じて圧力制御装置302および/または燃
料噴射器32の動作を調整するように協働する構成部材を含み得る。特に、制御システム
316は、圧力制御装置302からの混合燃料流に動作可能に関連するセンサ317と制
御装置318とを含むことが可能である。制御装置318は、センサ317からの信号に
応じて、アクチュエータ304に印加される電流を調整し得る。
【0041】
センサ317は、圧力制御装置302から流出する混合燃料流の圧力を感知するように
、また圧力を示す信号を発生させるように構成された圧力センサとして具体化されること
が可能である。その代わりに、センサ317が、例えば、温度、粘度、流量または公知の
他の任意のパラメータ等の、混合燃料流に関連する燃料の異なるまたは追加のパラメータ
を感知し得ることが考えられる。
【0042】
制御装置318は、燃料システム12の動作を制御するための手段を含む単一のマイク
ロプロセッサまたは複数のマイクロプロセッサとして具体化されることが可能である。制
御装置318の機能を実行するように、商業的に入手可能な多数のマイクロプロセッサを
構成できる。制御装置318が、多数のエンジン機能を制御できる一般的なエンジンマイ
クロプロセッサとして容易に具体化され得ることを理解されたい。制御装置318はメモ
リと、二次記憶装置と、プロセッサと、アプリケーションを実行するための他のコンポー
ネントとを含み得る。他の種々の回路は、電源回路、信号調整回路、ソレノイド駆動回路
、および他の種類の回路等の制御装置318に関連することが可能である。
【0043】
噴射タイミングと所望の噴射圧力とに関連する1つ以上のマップを制御装置318のメ
モリに記憶し得る。上述のマップのそれぞれは表、グラフおよび/または方程式の形態で
あることが可能である。一実施例において、噴射タイミングおよび所望の噴射圧力は、ア
クチュエータ304を制御するための2次元テーブルの座標軸を形成し得る。アクチュエ
ータ304のピエゾ結晶の膨張および収縮に関連する所望の圧力、パイロット要素の位置
、および/またはコマンド電流は、別個の2次元マップに関係することが可能である。さ
らに、所望ならば、噴射タイミングが、単一の2次元マップのパイロット要素の位置、お
よび/またはコマンド電流に直接関係し得ることが考えられる。
【0044】
センサ317によって発生された信号を受け取り、それに応答してアクチュエータ30
4を動作させるように、制御装置318を構成することが可能である。特に、制御装置3
18はセンサ317と通信して、そこから信号を受け取り得る。制御装置318は、その
メモリに記憶されたマップを参照し、センサ317からの信号と、マップで確認された所
望の圧力値とを比較し、そしてその比較に応じて、アクチュエータ304のピエゾ結晶に
導かれた電流を調整することが可能である。例えば、関係マップを参照して所望の噴射圧
力を決定し、測定された圧力と所望の噴射圧力とを比較し、そして測定された圧力が所望
の圧力よりもかなり低い(例えば、所定の大きさだけ所望の圧力よりも低い)ことを決定
した後に、制御装置318は、アクチュエータ304に供給される電流を減少させること
が可能であり、これによって、コモンレール34からの低圧燃料が弁体306に連通し、
それが第2の位置に向かって移動される。第2の位置に向かうこの移動により、弁体30
6を介して導かれた燃料の圧力を増加させることが可能になる。対照的に、比較によって
、測定された圧力が所望の圧力よりもかなり高い(例えば、所定の大きさだけ所望の圧力
よりも高い)ことが示された場合、制御装置318は、アクチュエータ304に供給され
る電流を増加させることが可能であり、これによって、弁体306がタンク28に連通し
、弁体306が第1の位置に向かって移動される。第1の位置に向かうこの移動により、
弁体306を介して導かれた燃料の圧力を減少させることが可能になる。
【0045】
図4は、図3の燃料システム12の代替実施形態を示している。図3の燃料システム1
2と同様に、図4の燃料システム12は、第1および第2のコモンレール34と37から
燃料ライン50とアクチュエータ304とを介して加圧燃料流を受け入れる燃料噴射器3
2を含み得る。しかし、図3に示したアクチュエータ304に関連する単一の弁体306
とは対照的に、図4のアクチュエータ304は、2つの別個の弁体408と410を含ん
でもよい。
【0046】
第1および第2の加圧燃料流が弁体306(図3参照)を介して導かれた場合の噴射イ
ベント中に、第2のコモンレール37からのより高圧の燃料が逆方向に第1のコモンレー
ル34に流入することが可能である。この逆流により、燃料システム12の効率が低下さ
れることがある。燃料システム12の効率を向上させるために、図4のアクチュエータ3
04は別個の弁体408と410を実装し得る。
【0047】
弁体306と同様に、弁体408は、アクチュエータ304によって可動な比例弁体ま
たは他の適切な装置として具体化されることが可能である。アクチュエータ304は、こ
の実施形態において、弁体408に直接的かつ機械的に接続されるものとして示されてい
るが、その代わりに、図3のパイロット要素320と同様のパイロット要素(図示せず)
を介して、アクチュエータ304を弁体408に間接的に接続し得ることが考えられる。
弁体408は、第1のコモンレール34からの加圧燃料が燃料噴射器32から遮断される
第1の位置と、第1のコモンレール34からの燃料の最大量が燃料噴射器32に導かれる
第2の位置との間で可動であり得る。さらに、弁体408は、第1の加圧燃料流の一部を
燃料噴射器32に導くように、第1の位置と第2の位置との間の任意の位置に可動であり
得る。弁体408によって第1のコモンレール34から燃料噴射器32に導かれた第1の
加圧燃料流の量は、アクチュエータ304のピエゾ電気結晶に印加された電流に対応する
ことが可能である。
【0048】
弁体408とは対照的に、弁体410は2位置ソレノイド作動弁体として具体化され得
る。弁体410は、第2のコモンレール37からの加圧燃料が実質的に中央ボア82に導
かれない第1の位置から、第2のコモンレール37からの燃料の最大量が燃料噴射器32
に導かれる第2の位置に可動であり得る。第1のコモンレール34、第2のコモンレール
37、または第1および第2のコモンレール34、37の両方から加圧燃料を独立して導
くために、弁体408と410を別々にまたは同時に動作させることが可能である。第1
および第2のコモンレール34、37からの加圧燃料のこの混合により、中央ボア82で
燃料圧力を変化させることを許容することが可能になり、オリフィス84を介した燃料の
可変噴射率と燃焼室22への侵入深さとが得られる。
【0049】
図5は、燃料システム12の代替実施形態を示している。図3の燃料システム12と同
様に、図5の燃料システム12は、第1および第2のコモンレール34と37から燃料ラ
イン50を介して加圧燃料流を受け入れる燃料噴射器32を含み得る。しかし、図3に示
したそれぞれの個々の噴射器に関連する圧力制御装置302とは対照的に、1つの圧力制
御装置502が複数の燃料噴射器32に関連することが可能である。具体的には、第1の
圧力制御装置502は第1群の燃料噴射器32に関連することが可能であり、一方、第2
の圧力制御装置502は第2群の燃料噴射器32に関連することが可能である。第1群お
よび第2群の燃料噴射器32のそれぞれは、不連続に点火する燃焼室22のみに関連し得
る。例えば、1番目、2番目および3番目の燃焼室22に関連するそれらの燃料噴射器3
2は第1群の燃料噴射器32であることが可能であり、一方、4番目、5番目および6番
目の燃焼室22に関連するそれらの燃料噴射器32は第2群であることが可能である。こ
のようにして、単一の群内では燃料噴射器32は、決して燃料を連続的に噴射することは
ない。
【0050】
噴射イベント間の変化する圧力要求に応答するために、一般に圧力調整される一群の燃
料噴射器32からの連続的な燃料噴射を制限することによって、圧力制御装置502に対
して、適切な時間を与え得る。すなわち、必要な噴射圧力に応答するために、一群の燃料
噴射器32の間で噴射イベントを交互に発生させることによって、同じ群の燃料噴射器3
2内からの連続噴射と比較して、2倍程度の時間が圧力制御装置502に与えられる。こ
のようにして、それぞれの圧力制御装置502は、他の全ての噴射イベントの圧力を調整
する程度に十分に迅速に応答するであろう。
【0051】
図6に示したように、それぞれの圧力制御装置502は、弁体606に動作可能に接続
されたアクチュエータ604を含むことが可能である。弁体606は、第1および第2の
加圧燃料流を選択的に混合して、対応する第1群または第2群の燃料噴射器32に混合流
を導くように、アクチュエータ604によって可動であり得る。
【0052】
アクチュエータ604は、アクチュエータ304と実質的に同じであり、また1つ以上
の列のピエゾ電気結晶を有するピエゾ電気装置として具体化されることが可能である。例
えば電流の印加等によって、電界が604の結晶に印加されたとき、ピエゾ電気結晶が弁
体606の移動に影響を与えるように軸に沿って膨張する。
【0053】
パイロット流体によって弁体606を移動させるために、アクチュエータ604を接続
することが可能である。特に、アクチュエータ604に接続されたパイロット要素620
は、第2のコモンレール37からのパイロット流体が弁体606の端部に連通される第1
の位置と、弁体606の端部からのパイロット流体がタンク28に排出されることが許容
される第2の位置との間で可動であり得る。電流がアクチュエータ604のピエゾ電気結
晶に印加されたとき、パイロット要素620を第1の位置から第2の位置に向かって移動
させるように、アクチュエータ604が膨張することが可能である。対照的に、電流がア
クチュエータ604のピエゾ電気結晶から除去されたとき、パイロット要素620を第1
の位置に向かって戻すように、アクチュエータ604が収縮することが可能である。所望
ならば、アクチュエータ604のピエゾ電気結晶を省略して、パイロット要素620の移
動を他の適切な方法で制御し得ることが考えられる。さらに、その代わりに、所望ならば
、パイロット要素620を使用することなく弁体606を移動させるために、アクチュエ
ータ604を直接的かつ機械的に接続し得ることが考えられる。
【0054】
弁体606は、上述のパイロット流体に応じて可動な比例弁体または他の適切な装置と
して具体化されることが可能である。具体的には、コモンレール34からの十分なパイロ
ット流体が弁体606の端部に接触したとき、弁体606は、第2の加圧燃料流のみが、
対応する群の燃料噴射器32に導かれる第1の位置にあるかまたはそこに向かって付勢さ
れ得る。パイロット流体が弁体606の端部から排出されたとき、バネ622は、第1の
加圧燃料流のみが、対応する燃料噴射器群に導かれる第2の位置に向かって弁体606を
付勢することが可能である。弁体606は、第1および第2の加圧燃料流の一部を燃料噴
射器群に導くように、パイロット流体によって第1の位置と第2の位置との間の任意の位
置に可動であり得る。弁体606によって導かれた第1または第2の流れの量と比は、ア
クチュエータ604のピエゾ電気結晶に印加された電流に依存することが可能であり、ま
た供給された燃料の結果として生じる圧力に影響を与えることが可能である。さらに、パ
イロット要素620を介して流れる流体の速度は、弁体620の作動速度と、噴射圧力が
変化する結果として得られた割合とに影響を与えることが可能である。加圧燃料のこの調
整/混合により、中央ボア82で燃料圧力を変化させることを許容することが可能になり
、オリフィス84を介した燃料の可変噴射率と燃焼室22への侵入深さとが得られる。
【0055】
図7は、図6の燃料システム12の代替実施形態を示している。図6の燃料システム1
2と同様に、図7の燃料システム12は、第1および第2のコモンレール34と37から
燃料ライン50と2つの圧力制御装置502とを介して加圧燃料流を受け入れる2つの群
の燃料噴射器32を含み得る。しかし、図6に示したそれぞれのアクチュエータ604に
関連する単一の弁体606とは対照的に、図7のそれぞれのアクチュエータ604は、2
つの別個の弁体708と710を含んでもよい。
【0056】
第1および第2の加圧燃料流が弁体606(図6参照)を介して導かれた場合の噴射イ
ベント中に、第1のコモンレール37からのより高圧の燃料が逆方向に第2のコモンレー
ル34に流入することが可能である。この逆流により、燃料システム12の効率が低下さ
れることがある。燃料システム12の効率を向上させるために、図7のアクチュエータ6
04は別個の弁体708と710を実装し得る。
【0057】
弁体606と同様に、弁体708は、アクチュエータ604によって可動な比例弁体ま
たは他の適切な装置として具体化されることが可能である。アクチュエータ604は、こ
の実施形態において、弁体708に直接的かつ機械的に接続されるものとして示されてい
るが、その代わりに、図6のパイロット要素620と同様のパイロット要素(図示せず)
を介して、アクチュエータ604を弁体708に間接的に接続し得ることが考えられる。
弁体708は、第1のコモンレール34からの加圧燃料が、対応する群の燃料噴射器32
から遮断される第1の位置と、第1のコモンレール34からの燃料の最大量が一群の燃料
噴射器32に導かれる第2の位置との間で可動であり得る。さらに、弁体708は、第1
の加圧燃料流の一部を燃料噴射器群に導くように、第1の位置と第2の位置との間の任意
の位置に可動であり得る。弁体708によって第1のコモンレール34から一群の燃料噴
射器32に導かれた第1の加圧燃料流の量は、アクチュエータ604のピエゾ電気結晶に
印加された電流に対応することが可能である。
【0058】
弁体708とは対照的に、弁体710は2位置ソレノイド作動弁体として具体化され得
る。弁体710は、第2のコモンレール37からの加圧燃料が実質的に、対応する燃料噴
射器群に導かれない第1の位置から、第2のコモンレール37からの燃料の最大量が一群
の燃料噴射器32に導かれる第2の位置に可動であり得る。第1のコモンレール34、第
2のコモンレール37、または第1および第2のコモンレール34、37の両方から加圧
燃料を独立して導くために、弁体708と710を別々にまたは同時に動作させることが
可能である。第1および第2のコモンレール34、37からの加圧燃料のこの混合により
、対応する燃料噴射器群の中央ボア82で燃料圧力を変化させることを許容することが可
能になり、オリフィス84を介した燃料の可変噴射率と燃焼室22への侵入深さとが得ら
れる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の燃料システムは、例えばディーゼルエンジンとガソリンエンジンとガス燃料エ
ンジンとを含む種々のエンジンタイプに広く適用される。開示される燃料システムは、可
変燃料供給圧力を供給することが有利であり得る加圧燃料システムを利用する任意のエン
ジンに実装することが可能である。次に、燃料システム12の動作について説明する。
【0060】
燃料圧力によって生じる力の不均衡により、ニードル弁体58を移動させることが可能
である。例えば、ニードル弁体58が第1の閉鎖位置またはオリフィス閉鎖位置にあると
き、燃料供給通路74からの加圧燃料は、油圧面98に作用するために制御室72に流入
し得る。それと同時に、燃料供給通路74からの加圧燃料は、噴射前に中央ボア70と8
2に流入し得る。油圧面98に発生された油圧力と組み合わされたバネ88の力は、油圧
面100に発生された反力よりも大きいことが可能であり、これにより、ニードル弁体5
8は、オリフィス84を介した燃料流を制限するように第1の位置に留まる。オリフィス
84を開放して、加圧燃料を中央ボア82から燃焼室22内に噴射するために、第1のソ
レノイドアクチュエータ60は、その関連する弁体を移動させて、加圧燃料を制御室72
と油圧面98とから選択的に排出することが可能である。油圧面98に作用する圧力のこ
の減少により、油圧面100にわたって作用する反力がバネ88の付勢力を克服すること
を許容することが可能になり、これにより、ニードル弁体58がオリフィス開放位置に向
かって移動される。
【0061】
オリフィス84を閉鎖して、燃焼室22内への燃料噴射を終了するために、第2のソレ
ノイドアクチュエータ62に電圧を印加し得る。特に、第2のソレノイドアクチュエータ
62に関連する弁体が流れ遮断位置に向かって付勢されたとき、制御室72からの流体が
タンク28に排出されることを防止し得る。制御室72を制御するために、加圧流体が制
限供給通路80を介して連続的に供給されるので、制御通路76を介した排出が防止され
るときに、圧力が制御室72内で急速に増加することが可能である。バネ88の付勢力と
組み合わされた制御室72内の増加圧力は、油圧面100に作用する反力を克服して、ニ
ードル弁体58を閉鎖位置に向かって強制的に移動させ得る。所望ならば、第2のソレノ
イドアクチュエータ62が省略され、そして第1のソレノイドアクチュエータ60が、ニ
ードル弁体58の開放運動および閉鎖運動の両方を開始するために使用され得ることが考
えられる。
【0062】
図2の模範的な実施形態では、圧力制御弁102は、中央ボア70と82に供給され、
それに続いて燃焼室22内に噴射された燃料の圧力に影響を与えることが可能である。具
体的には、アクチュエータ104のピエゾ電気結晶に印加された電流に応じて、アクチュ
エータ104は、弁体108を移動させて、加圧燃料を弁体106の端部から排出するこ
とが可能であり、弁体106が、その第1の位置に向かって移動して、第2のコモンマニ
ホルド37からタンク28に排出される加圧燃料の量を減少させることが許容される。タ
ンク28に排出される燃料の量を減少させることにより、燃料噴射器32内の圧力を増加
させることが可能になる。対照的に、電流がアクチュエータ104から除去されたとき、
弁体108は、第1のコモンマニホルド34からの加圧燃料を弁体106の端部に連通さ
せるように移動することが可能であり、これにより、弁体106が、その第2の位置に向
かって付勢されて、第2のコモンマニホルド37からタンク28に排出される加圧燃料の
量を増加させる。タンク28に排出される燃料の量を増加させることは、燃料噴射器32
に供給される燃料の圧力を低下させるように作用し得る。
【0063】
排出燃料が弁体110に達したとき、排出燃料は、ドレン28に向かって進み続け得る
か、または弁体110を横切る圧力差に応じて遮断され得る。具体的には、弁体106を
介して排出される燃料の圧力から生じる弁体110の力が、第1のコモンマニホルド34
内の燃料圧力と、関連する戻りバネの付勢とから生じる力よりも大きかった場合、排出燃
料をタンク28に送るために、弁体110を開放し得る。しかし、弁体106を介して排
出される燃料から生じる力が、第1のコモンマニホルド34内の燃料圧力と戻りバネの付
勢とから生じる力よりも小さかった場合、排出燃料をタンク28から遮断し得る。このよ
うにして、第1のコモンマニホルド34内の燃料の圧力は、燃料噴射器32に導かれた燃
料の圧力に影響を与えることが可能である。
【0064】
燃料は、圧力制御弁102の動作に関係なく、噴射器32に対して常に利用可能であり
得る。特に、バイパス回路112は、燃料噴射器32内の燃料圧力が第1のコモンマニホ
ルド34内の燃料圧力未満に低下した場合は常に、第1のコモンマニホルド34内の燃料
が噴射器32に流れることが許容されることを保証し得る。
【0065】
燃料システム12は無限の範囲の噴射圧力を供給することが可能である。特に、噴射燃
料の圧力が弁体106の位置に応じて変化し得るので、また弁体106がその第1の位置
と第2の位置との間の任意の位置に移動され得るので、多数の異なる圧力が噴射のために
利用可能であり得る。さらに、燃料システム12は、上述の圧力変化に影響を与えるため
に燃料のみを利用し得るので、異なる流体間における汚染の問題が生じない。
【0066】
図3と図4に示した燃料システム12の代替実施形態に示したように、圧力制御装置3
02は、中央ボア70と82に供給され、それに続いて燃焼室22内に噴射された燃料の
圧力に影響を与えることが可能である。具体的には、アクチュエータ304のピエゾ電気
結晶に印加された電流に応じて、第1のコモンレール34から燃料噴射器32に流入する
加圧燃料の量を増加または減少させるように、アクチュエータ304は弁体306(図3
参照)および弁体408(図4参照)の移動に影響を与えることが可能である。図3の実
施形態について、アクチュエータ304を移動させることにより、第2のコモンレール3
7から燃料噴射器32に流入する加圧燃料の量を同時に制御することも可能になる。対照
的に、図4の実施形態について、弁体410を独立して制御して、第2のコモンレール3
7から燃料噴射器32内への燃料流を許容または遮断することが可能である。
【0067】
制御装置318により、燃料噴射イベントの圧力にわたる正確な制御が可能であり得る
。特に、異なる噴射(パイロット、メイン、ポスト等)の段階中、噴射燃料の圧力を変化
させることが望ましいかもしれない。この圧力変化を実現するために、制御装置318は
、そのメモリに記憶された関係マップを参照し、燃料噴射器32の現在のタイミング段階
に対応する所望の圧力を決定することが可能である。次に、制御装置318によって、上
述の所望の圧力とセンサ317からの信号とを比較して、誤差値を決定し得る。誤差値が
所定値を超えた場合、制御装置318は、アクチュエータ304に供給された電流を調整
することが可能であり、これにより、弁体306(図3の実施形態参照)を介してまたは
弁体408と410(図4の実施形態参照)を介して導かれる低圧燃料と高圧燃料との比
率が変化される。
【0068】
第1および第2のコモンレール34、37からの燃料の流量のこの変化は、中央ボア7
0と82内の燃料圧力に直接かつ即座に影響を与えることが可能である。例えば、アクチ
ュエータ304に印加される電流が増加されることにより、第1のコモンレール34から
の加圧燃料の流量が減少され、結果として、中央ボア70と82内の燃料圧力が増加され
ることが可能になる。対照的に、アクチュエータ304に印加される電流が減少されるこ
とにより、第1のコモンレール34からの加圧燃料の流量が増加され、結果として、中央
ボア70と82内の燃料圧力が増加されることが可能になる。図3について、第2のコモ
ンレール37からの加圧燃料の流量の変化は、第1のコモンレール34からの加圧燃料の
流量の逆変化に同時に対応し得る。図4について、ソレノイド作動弁体410を介して、
第2のコモンレール37からの加圧燃料の流量を独立して制御することが可能である。
【0069】
燃料システム12は、2つの異なる加圧燃料流を混合しおよび/またはそれらを単一の
噴射器に導くことによって噴射燃料の圧力を変化させ得るので、噴射のために利用可能な
異なるレベルの燃料圧力の数は無限であり得る。特に、燃料システム12を特定の所定の
圧力レベルに制限しなくてもよい。噴射燃料の圧力のこの可撓性は、異なる用途に対する
燃料システム12の使用と、エンジン10の動作範囲および効率とに影響を与えることが
可能である。さらに、上述の可撓性は、より広範囲の動作状態下における排気基準のコン
プライアンスを許容することが可能である。
【0070】
その上、燃料システム12は最小数の追加の構成部材で噴射燃料の圧力を変化させ得る
ので、燃料システム12の複雑さおよびコストを低減し得る。具体的には、圧力制御装置
302を追加しても、燃料システム12には、ごく僅かな複雑さまたはコストが追加され
るだけであろう。
【0071】
さらに、燃料システム12の形態により、燃料システム12の応答性を向上させ得る。
特に、弁体のすぐ下流の測定圧力に基づき、弁体306を介してまたは弁体408と41
0を介して導かれた燃料の圧力を調整し得るので、所望の燃料圧力と実際の噴射燃料圧力
との間には、ごく僅かな遅れが存在する可能性がある。向上された上述の応答性により、
より高い燃料効率と、エンジン10のより低い排気エミッションと、機械5の向上された
応答性とを得ることが可能である。
【0072】
図6と図7に示した燃料システム12の代替実施形態では、それぞれの圧力制御装置5
02は、群内の燃料噴射器32の作動された1つのみが必要とする圧力に応じて、対応す
る群の燃料噴射器32に供給される燃料の圧力に影響を与えることが可能である。具体的
には、アクチュエータ604のピエゾ電気結晶に印加された電流に応じて、第1のコモン
レール34から一群の燃料噴射器32に流れる、作動される燃料噴射器32によって使用
するための加圧燃料の量を増加または減少させるように、アクチュエータ604は弁体6
06(図6参照)および弁体708(図7参照)の移動に影響を与えることが可能である
。図6の実施形態について、アクチュエータ604を移動させることにより、第2のコモ
ンレール37から、対応する群の燃料噴射器32に流入する加圧燃料の量を同時に制御す
ることも可能になる。対照的に、図7の実施形態について、弁体710を独立して制御し
て、第2のコモンレール37から一群の燃料噴射器32内への燃料流を許容または遮断す
ることが可能である。
【0073】
第1および第2のコモンレール34、37からの燃料の流量のこの変化は、中央ボア7
0と82内の燃料圧力に直接かつ即座に影響を与えることが可能である。例えば、アクチ
ュエータ604に印加される電流が増加されることにより、第2のコモンレール37から
の加圧燃料の流量が減少され、結果として、共通の群の燃料噴射器32に導かれる燃料圧
力が減少されることが可能になる。対照的に、アクチュエータ604に印加される電流が
減少されることにより、第2のコモンレール37からの加圧燃料の流量が増加され、結果
として、共通の群の燃料噴射器32に導かれる燃料圧力が増加されることが可能になる。
図6について、第2のコモンレール37からの加圧燃料の流量の変化は、第1のコモンレ
ール34からの加圧燃料の流量の逆変化に同時に対応し得る。図7について、ソレノイド
作動弁体710を介して、第2のコモンレール37からの加圧燃料の流量を独立して制御
することが可能である。
【0074】
燃料システム12は共通の圧力制御装置502を利用し得るので、燃料システム12の
複雑さおよびコストを低減し得る。具体的には、複数の燃料噴射器32の噴射圧力を制御
するために、1つの圧力制御装置502を利用し得るので、燃料システム12の構成部材
の数を低減することが可能であり、簡単で安価なシステムが得られる。さらに、それぞれ
の圧力制御装置は、不連続に点火する燃焼室のみに関連するので、圧力制御装置502の
応答性は多様な用途のために十分であり得る。
【0075】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の燃料システムに種々の修正および変更を
なし得ることが当業者には明らかであろう。他の実施形態は、本明細書に開示される燃料
システムの仕様および実施を考慮すれば当業者には明らかであろう。仕様および実施例は
模範的なものに過ぎないと考えるべきであり、本発明の真の範囲は、次の特許請求の範囲
およびそれらの等価物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する方法であって、
第1の圧力まで第1の燃料流を加圧するステップと、
第2の圧力まで第2の燃料流を加圧するステップと、
単一の位置で前記第1および第2の燃料流を受け入れ、それに応答して第3の圧力の第3の燃料流を発生させるステップと、
前記第3の燃料流を噴射器に導くステップと、
前記第3の燃料流を選択的に噴射するステップと
を含む方法。
【請求項2】
応答して発生させるステップが、第1の圧力の燃料と第2の圧力の燃料とを混合して、
第3の圧力の燃料流を生成するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の燃料流のみが前記第1の燃料流からの燃料を含み、
前記第3の燃料流の圧力が、前記第2の燃料流の圧力に基づいて前記第1の燃料流から変化される請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−177381(P2012−177381A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141286(P2012−141286)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2009−512069(P2009−512069)の分割
【原出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【Fターム(参考)】