説明

可変容量タービン及び過給機

【課題】インペラの各翼における励振を抑制する。
【解決手段】枠体51,52に挟まれて配置される可動ベーン50をインペラ21周りに複数備える可変容量タービンであって、各上記可動ベーン50における上記可動ベーン50と上記枠体51,52との隙間距離を不均等とすることにより、各可動ベーン50の下流側圧力を不均等とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に挟まれて配置される可動ベーンをインペラ周りに複数備える可変容量タービン及び該可変容量タービンを備える過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両搭載用の過給機等においては、インペラ周りにノズルユニットを備える可変容量タービンが用いられている。
このような可変容量タービンでは、ノズルユニットがインペラ周りに配列される複数の可動ベーンを備えており、これらの可動ベーンを回動させて可動ベーン間隔を調節することによって、効率的なインペラへの排気ガス供給を実現している。
そして、各可動ベーンは、同一形状を有しており、さらに等間隔で配列される。この結果、インペラに対して、周囲から均一に排気ガスが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−57328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の可変容量タービンにおいては、各稼動ベーンが同一形状でかつ等間隔で配置されていることから、各可動ベーンにおける排気ガス流れが同様となり、各可動ベーンにおける下流側の圧力が均等となる。
この結果、タービンインペラの各翼には、各可動ベーンの下流領域を通過するたびに、同じ強さの応力が作用することとなり、励振される。
このような各タービンインペラの各翼の励振が強い場合には、タービンインペラに疲労が蓄積し、タービンインペラの寿命が低下する等の問題が生じる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、枠体に挟まれて配置される可動ベーンをインペラ周りに複数備える可変容量タービン及び該可変容量タービンを備える過給機において、インペラの各翼における励振を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、枠体に挟まれて配置される可動ベーンをインペラ周りに複数備える可変容量タービンであって、各上記可動ベーンにおける上記可動ベーンと上記枠体との隙間距離を不均等とすることにより、各可動ベーンの下流側圧力を不均等とするという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記可動ベーンの配列方向において、上記可動ベーンの下流側圧力が相対的に高い領域あるいは上記可動ベーンの下流側圧力が上記相対的に低い領域が不等間隔に配列されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、タービンとコンプレッサとを備える過給機であって、上記第1または第2の発明である可変容量タービンを上記タービンとして備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各可動ベーンにおける当該可動ベーンと枠体との隙間距離を不均等とすることにより、各可動ベーンの下流側圧力が不均等とされている。
このため、各可動ベーンの下流領域を通過する際にインペラの各翼に作用する応力の強さが変化することとなり、インペラの各翼の励振を抑制することが可能となる。
したがって、本発明によれば、枠体に挟まれて配置される可動ベーンをインペラ周りに複数備える可変容量タービン及び該可変容量タービンを備える過給機において、インペラの各翼における励振を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である過給機の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態である過給機においてタービンが備えるタービンインペラとノズルベーンとの位置関係を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態である過給機においてタービンが備えるノズルベーンと枠体との拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態である過給機においてノズルベーンの下流領域における圧力を不均等とする場合の圧力分布の一例を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態である過給機においてノズルベーンの下流領域における圧力を不均等とする場合の圧力分布の一例を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態である過給機においてノズルベーンの下流領域における圧力を不均等とする場合の圧力分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る可変容量タービン及び過給機の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
また、以下の説明においては、本発明の可変容量タービンを備える過給機について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の過給機10の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、過給機10は、タービン20と、コンプレッサ30と、軸部40とを備えている。
【0014】
タービン20は、内燃機関から供給される排気ガスのエネルギを回転動力に変換するものであり、タービンインペラ21、タービンハウジング22及びノズルユニット23を備えている。
【0015】
タービンインペラ21は、ディスクの一面に複数の翼21aが立設されたラジアルインペラであり、その外周部から流入して隣り合う翼間を流れて軸線方向へ抜ける排気ガスGによってトルクを受けて回転する。
【0016】
タービンハウジング22は、タービンインペラ21を覆うものであって、外側に突出した排気ガス導入路を有している。この排気ガス導入路は、内燃機関の排気口に接続されて、内燃機関が排出する排気ガスGをタービンハウジング22内に導き入れる。また、タービンハウジング22には、軸部40が備えるシャフト41の同軸上に位置させて排気ガス排出口22aが形成されている。この排気ガス排出口22aは、排気筒(図示せず)等に接続される。
【0017】
ノズルユニット23は、タービンインペラ21(インペラ)に排気ガスGを効率的に供給するためのものであり、複数のノズルベーン50(50a〜50k)、枠体51,52及びベーン駆動機構53を有している。
図2は、図1で示したノズルベーン50(可動ベーン)とタービンインペラ21との位置関係を示すための模式図である。そして、この図に示すように、ノズルベーン50a〜50kは、タービンインペラ21周りに等間隔で配列されている。図3は、ノズルベーン50と枠体51,52とを拡大した拡大図である。この図に示すように、各ノズルベーン50は、枠体51,52に挟まれて配置されている。
枠体51,52は、ノズルベーン50の配列方向に沿った環状形状を有しており、タービンハウジング22に固定されている。
【0018】
ベーン駆動機構53は、ノズルベーン駆動リング53a、ノズルベーン駆動軸53b、ノズルリンク板53c、駆動軸53d、ピストンロッド53e及び連結部53f,53gを備えている。
ノズルベーン駆動リング53aは、枠体52に対して回動自在に設置されている。ノズルベーン駆動軸53bは、ノズルベーン50と同数設けられ、ノズルベーン駆動リング53aに貫装されている。ノズルリンク板53cは、各ノズルベーン50の駆動軸と各ノズルベーン駆動軸53bとを、クランク状に連結する。駆動軸53dは、一端部を連結部53fによってピストンロッド53eと連結されており、ピストンロッド53eの往復運動によって回動される。また、駆動軸53dは、他端部を連結部53gによってノズルベーン駆動リング53aに連結されており、ノズルベーン駆動リング53aは、駆動軸53dの回転運動によって回動される。
このように構成されたベーン駆動機構53が駆動されることによって、各ノズルベーン50が等しく回動される。
【0019】
コンプレッサ30は、外気を圧縮して内燃機関に供給するものであり、コンプレッサインペラ31、及びコンプレッサハウジング32を備えている。
【0020】
コンプレッサインペラ31は、ディスクの一面に複数の翼が立設されたラジアルインペラであり、回転駆動されることによりディスクの翼が立設された側に軸線方向から流入する外気を圧縮する。
【0021】
コンプレッサハウジング32は、コンプレッサインペラ31を覆うものである。コンプレッサハウジング32には、シャフト41と同軸上に位置させて吸気口32aが形成されている。この吸気口32aから外気が吸引される。
また、コンプレッサハウジング32は、外周側から突出した吐出流路を有している。この吐出流路は、内燃機関の給気口に接続されて、加圧空気を内燃機関へと導く。
【0022】
軸部40は、タービン20とコンプレッサ30とを接続すると共にタービンインペラ21の回転動力をコンプレッサインペラ31に伝達するものであり、シャフト41と、ベアリング42と、ベアリングハウジング43とを備えている。
【0023】
シャフト41は、タービンインペラ21とコンプレッサインペラ31とを連結する。シャフト41の軸心と、タービンインペラ21及びコンプレッサインペラ31の回転軸とは、同心である。
タービンインペラ21とシャフト41とは溶接等により一体化され、コンプレッサインペラ31とシャフト41とはボルト等を介して結合されている。
【0024】
ベアリング42は、ベアリングハウジング43内でシャフト41を回転自在に支持するものである。
【0025】
ベアリングハウジング43は、ベアリング42及びシャフト41を囲い、ベアリング42の位置固定するものである。このベアリングハウジング43は、タービンハウジング22とコンプレッサハウジング32との間に設けられ、タービンハウジング22とコンプレッサハウジング32とを接続する。
【0026】
このような構成を有する本実施形態の過給機10においては、内燃機関が排出する高温及び高圧の排気ガスGが、排気ガス導入路よりタービンハウジング22内に導入されて、タービンインペラ21を回転させた後に、排気ガス排出口22aより外部へ排気される。そして、タービンインペラ21の回転は、シャフト41を介してコンプレッサインペラ31に伝達され、コンプレッサインペラ31を回転させる。これにより、吸気口32aから外気が、コンプレッサハウジング32内に吸入され、圧縮された後に、吐出流路を通過して、内燃機関に供給される。
【0027】
そして、本実施形態の過給機10のタービン20においては、各ノズルベーン50と枠体51,52との隙間距離が不均等とされており、これによって各ノズルベーン50の下流側圧力が不均等になるように構成されている。
つまり、本実施形態の過給機10のタービン20においては、図2に示すノズルベーン50の下流領域Ra〜Rkにおける圧力が不均等となるように、各ノズルベーン50と枠体51,52との隙間距離が不均等に設定されている。
なお、ノズルベーン50と枠体51,52との隙間距離とは、図3に示すように、ノズルベーン50と枠体51との隙間距離d1と、ノズルベーン50と枠体52との隙間距離d2とを合わせた距離である。
具体的には、ノズルベーン50と枠体51,52との隙間距離を広げることによって漏れ流れが増えて圧力損失が生まれることからノズルベーン50の下流領域の圧力が相対的に低くなる。一方、ノズルベーン50と枠体51,52との隙間距離を狭めることによって漏れ流れが減少して圧力損失を低下させることができ、ノズルベーン50の下流領域の圧力が相対的に高くなる。
【0028】
図4〜図6は、実際に図2に示すノズルベーン50の下流領域Ra〜Rkにおける圧力を不均等とする場合の圧力分布を示すグラフであり、横軸が下流領域Ra〜Rkの位置を示し、縦軸が圧力を示している。
この図に示すように、ノズルベーン50の下流領域Ra〜Rkにおける圧力を不均等とする場合には、例えば、図4に示すように一箇所の下流領域Rdのみの圧力を他の下流領域Ra〜Rc,Re〜Rkに対して低く設定する場合、図5に示すように連続する下流領域Ra〜Rfの圧力を高くして他の連続する下流領域Rg〜Rkの圧力を低く設定する場合、図6に示すように下流領域Ra,Rc,Rf,Rjの圧力を高くして他の下流領域Rb,Rd,Re,Rg〜Ri,Rkの圧力を低く設定する場合等が考えられる。
【0029】
このように本実施形態の過給機10におけるタービン20によれば、各ノズルベーン50における当該ノズルベーン50と枠体51,52との隙間距離を不均等とすることにより、各ノズルベーン50の下流側圧力が不均等とされている。
このため、各ノズルベーン50の下流領域Ra〜Rkを通過する際にタービンインペラ21の各翼21aに作用する応力の強さが変化することとなり、タービンインペラ21の各翼21aの励振を抑制することが可能となる。
【0030】
また、よりタービンインペラ21の各翼21aの励振を抑制するためには、図6に示したように、ノズルベーン50の配列方向において、ノズルベーン50の下流側圧力が相対的に高い領域が不当間隔に配列されていることが好ましい。
また、よりタービンインペラ21の各翼21aの励振を抑制するためには、ノズルベーン50の配列方向において、ノズルベーン50の下流側圧力が相対的に低い領域が不当間隔に配列されていても良い。
【0031】
なお、このような本実施形態の過給機10におけるタービン20は、例えば、組立て寸法の管理レベルを従来よりも低く設定することによって容易に製造することができる。
つまり、このような本実施形態の過給機10におけるタービン20は、従来の可変容量タービンよりも組立てた際の歩留まりが向上する。
また、このような本実施形態の過給機10におけるタービン20は、例えば、先にタービン20を組立て、その後ノズルベーン50等を加工することによって上記隙間距離を調節するようにしても良い。
【0032】
また、本実施形態の過給機10におけるタービン20は、従来の可変容量タービンと同様に、全てのノズルベーンの形状が同一でかつその配置間隔が等間隔とされている。このため、低コストで製造することが可能となる。
【0033】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、ノズルベーン50の枚数が11枚である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ノズルベーン50の枚数がより多いまたはより少ない構成を採用することもできる。
【0035】
また、上記実施形態においては、本発明の可変容量タービンを備える過給機について説明した。
しかしながら、本発明の可変容量タービンは、過給機のみに適用されるものではなく、例えば、発電用タービン等に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10……過給機、20……タービン(可変容量タービン)、30……コンプレッサ、50……ノズルベーン(可動ベーン)、51,52……枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に挟まれて配置される可動ベーンをインペラ周りに複数備える可変容量タービンであって、
各前記可動ベーンにおける前記可動ベーンと前記枠体との隙間距離を不均等とすることにより、各可動ベーンの下流側圧力を不均等とすることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項2】
前記可動ベーンの配列方向において、前記可動ベーンの下流側圧力が相対的に高い領域あるいは前記可動ベーンの下流側圧力が前記相対的に低い領域が不等間隔に配列されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量タービン。
【請求項3】
タービンとコンプレッサとを備える過給機であって、
請求項1または2記載の可変容量タービンを前記タービンとして備えることを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−209833(P2010−209833A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58080(P2009−58080)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】