説明

可変容量タービン

【課題】三次元翼状に形成されたノズルベーンを用いた場合であっても、ノズルベーンに要求される広い回動範囲を確保できる可変容量タービンを提供する。
【解決手段】本発明に係る可変容量タービンの可変ノズル5は、タービンインペラの外周を囲むように配置される一対の円環状部材51,52と、該一対の円環状部材51,52を間隔を空けて対向配置するように一対の円環状部材51,52間の複数箇所に設けられる連結部材54と、翼面53fが一対の円環状部材51,52の対向方向に平行な面以外の面を少なくとも含む翼本体53aと回動軸が対向方向となるように翼本体53aを一対の円環状部材51,52間に回動自在に支持する軸部53b,53cとからなりタービンインペラの外周に間隔を空けて複数設けられる翼部53とを備え、連結部材54は、翼本体53aの回動による可動範囲を避けた態様で設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流動している流体の運動エネルギー等を、回転翼の回転運動に変換するタービンが用いられている。また、流体の流量が減少した場合でも、効率よく回転翼を回転させることができる可変容量タービンも使用されている。
この可変容量タービンには、タービン内における流体の流量を調整する可変ノズルが設けられている。可変ノズルは、一対の円環状部材と、該一対の円環状部材を互いに対向させて連結する複数のピンと、一対の円環状部材の間に回動自在に設けられる翼本体を備えた複数のノズルベーン(翼部)とを有している。複数のノズルベーンが同期して回動することで、可変ノズルにおけるノズル開度が調整され、一対の円環状部材の間に導入される流体の流量が調整される。
【0003】
ところで、上記ピンは、一対の円環状部材が対向する方向で延在しているために、流体の流動方向と直交する方向で延在しており、ピンの下流側には流体の圧力及び流速が局所的に低下した領域、いわゆるウェークが生じる。このようなウェークが生じるとタービン効率を低下させる虞があるため、ウェークの影響を抑えるための様々な手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、三次元翼状に形成された翼本体を有するノズルベーンを、可変ノズルに使用することが提唱されている。この三次元翼とは、翼本体が上記対向方向に対して傾斜している形状や、上記対向方向での翼本体の断面形状が湾曲している形状等を指す。三次元翼状に形成されたノズルベーンを使用することで、更なるタービン効率の向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−204907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような課題が存在する。
上記ピンは一対の円環状部材が対向する方向で延在している一方で、三次元翼状に形成された翼本体は上記対向方向に対して傾斜しており、翼本体にはピンに向けて突出した箇所が存在する。そのため、ノズルベーンを所定の回動範囲で回動させた場合に、上記突出箇所がピンと干渉し、ノズルベーンに要求される回動範囲が確保できなくなる虞があった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、三次元翼状に形成されたノズルベーンを用いた場合であっても、ノズルベーンに要求される広い回動範囲を確保できる可変容量タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る可変容量タービンは、タービンインペラに流入する流体の流量を調整する可変ノズルを備える可変容量タービンであって、可変ノズルは、タービンインペラの外周を囲むように配置される一対の円環状部材と、該一対の円環状部材を間隔を空けて対向配置するように一対の円環状部材間の複数箇所に設けられる連結部材と、翼面が一対の円環状部材の対向方向に平行な面以外の面を少なくとも含む翼本体と回動軸が対向方向となるように翼本体を一対の円環状部材間に回動自在に支持する軸部とからなりタービンインペラの外周に間隔を空けて複数設けられる翼部とを備え、連結部材は、翼本体の回動による可動範囲を避けた態様で設けられる、という構成を採用する。
本発明によれば、連結部材が翼本体の回動による可動範囲を避けた態様で設けられることから、翼本体を回動させたときの翼本体と連結部材との干渉が発生せず、翼本体に要求される広い回動範囲が確保される。
【0009】
また、本発明に係る可変容量タービンは、連結部材が、上記対向方向に延在する棒形状に形成されるとともに、回動した翼本体と干渉する位置に凹部を有する、という構成を採用する。
本発明によれば、連結部材が、回動した翼本体と干渉する位置に凹部を有しており、回動時における翼本体と連結部材との干渉が発生しない。また、連結部材が上記対向方向に延在する棒形状に形成されており、従来の可変容量タービンにおける連結部材と同じ位置に、本発明における連結部材を設置することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る可変容量タービンは、翼本体が、上記対向方向における一方の縁部から他方の縁部に向かうに従って連結部材から離間するように傾斜して設けられ、凹部は、一方の縁部に対向して設けられる、という構成を採用する。
本発明によれば、翼本体が傾斜して設けられる場合であっても、回動時における翼本体と連結部材との干渉が発生しない。
【0011】
また、本発明に係る可変容量タービンは、翼本体の上記対向方向での断面形状が、連結部材に向けて膨出した湾曲形状に形成され、凹部は、翼本体の連結部材に向けて膨出した部分に対向して設けられる、という構成を採用する。
本発明によれば、翼本体が連結部材に向けて膨出した湾曲形状に形成される場合であっても、回動時における翼本体と連結部材との干渉が発生しない。
【0012】
また、本発明に係る可変容量タービンは、翼本体の上記対向方向での断面形状が、連結部材に対して窪んだ湾曲形状に形成され、凹部は、翼本体の上記対向方向での両縁部にそれぞれ対向して設けられる、という構成を採用する。
本発明によれば、翼本体が連結部材に対して窪んだ湾曲形状に形成される場合であっても、回動時における翼本体と連結部材との干渉が発生しない。
【0013】
また、本発明に係る可変容量タービンは、翼本体が、上記対向方向に対して傾斜して設けられ、連結部材は、翼本体の傾斜に沿って延在している、という構成を採用する。
本発明によれば、翼本体と連結部材との間に形成される隙間が、上記対向方向において略同一となることから、要求される回動範囲内で翼部を回動させたときに、翼部が連結部材と干渉しない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、三次元翼状に形成された翼部を備える可変ノズルを可変容量タービンに用いた場合に、該翼部に要求される回動範囲を確保できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ターボチャージャ100の全体構成図である。
【図2】図1のA−A線視断面図である。
【図3】ノズルベーン53とピン54との位置関係を示す概略図である。
【図4】ピン54及び第2ノズルベーン55の概略図である。
【図5】第2ピン56の概略図である。
【図6】第3ノズルベーン57の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の可変容量タービンにおける実施の形態を、図1から図6を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。また、各図面における矢印Fは前方向を示している。
以下の実施形態では、可変容量タービンを備えるターボチャージャの例を示す。
【0017】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態におけるターボチャージャ100の全体構成図である。
ターボチャージャ100は、不図示のエンジンから導かれる排気ガス(流体)の運動エネルギー等を利用して、圧縮された空気をエンジンに過給し、エンジンの性能を向上させるものである。ターボチャージャ100は、ロータ1と、タービン部2(可変容量タービン)と、軸受け部3と、コンプレッサ部4とを有している。タービン部2、軸受け部3及びコンプレッサ部4は、前方より順次配置され一体的に設けられている。
【0018】
ロータ1は、排気ガスの流動によって回転するものであって、ロータ軸11と、タービンインペラ12と、コンプレッサインペラ13とを有している。
ロータ軸11は、前後方向で延びる回転軸であって、軸受け部3に回転自在に設けられている。タービンインペラ12は、排気ガスの流動によって回転する回転翼であって、タービン部2の内部に設置され、ロータ軸11の前端部に一体的に接続されている。コンプレッサインペラ13は、回転することで流体を吸引すると共に、吸引した流体を径方向外側に送り出す回転翼であって、コンプレッサ部4の内部に設置され、ロータ軸11の後端部に一体的に接続されている。
【0019】
タービン部2は、排気ガスの運動エネルギー等をロータ1の回転運動に変化させるものであって、タービンスクロール流路21と、可変ノズル5と、タービン出口22とを有している。なお、タービン部2は、複数のボルト2aを用いて軸受け部3と一体的に接続されている。
タービンスクロール流路21は、エンジンから排出された排気ガスが不図示のガス導入口を介して導入される流路であって、タービンインペラ12を囲んで略環状に形成されている。
【0020】
可変ノズル5は、タービンスクロール流路21からタービンインペラ12に導入される排気ガスの流量を調整するノズルであって、タービンスクロール流路21の内側に設けられ、タービンインペラ12を囲んで略環状に形成されている。可変ノズル5の後側には、後述する複数のノズルベーン53を同期して回動させるためのノズル駆動部5Aが設けられている。なお、可変ノズル5の詳細は後述する。
【0021】
タービン出口22は、タービン部2における排気ガスの吐出口であって、不図示の排気ガス浄化装置に接続されている。なお、タービン出口22は、タービンインペラ12の設置箇所を介して可変ノズル5と連通している。
【0022】
軸受け部3は、複数のベアリング31を介してロータ軸11を回転自在に軸支するものである。
【0023】
コンプレッサ部4は、外部から導入された空気を圧縮するものであって、空気導入口41と、ディフューザ流路42と、コンプレッサスクロール流路43とを有している。なお、コンプレッサ部4は、複数のボルト4aを用いて軸受け部3と一体的に接続されている。
空気導入口41は、不図示のエアクリーナを介して外部から空気を導入するための導入口であって、コンプレッサ部4の後側に向かって開口している。
【0024】
ディフューザ流路42は、コンプレッサインペラ13によって送り出された空気が導入される流路であって、コンプレッサインペラ13を囲んで略環状に形成されている。また、ディフューザ流路42は、コンプレッサインペラ13の設置箇所を介して空気導入口41と連通している。
コンプレッサスクロール流路43は、ディフューザ流路42と連通し、コンプレッサインペラ13を囲んで略環状に形成されている。コンプレッサスクロール流路43には、不図示の空気吐出口が接続され、該空気吐出口は、エンジンの吸気口に接続されている。
【0025】
次に、可変ノズル5の構成を、図2及び図3を参照して詳述する。
図2は、図1のA−A線視断面図である。
図3は、ノズルベーン53とピン54との位置関係を示す概略図であって、(a)は図2のB矢視図、(b)は(a)のC−C線視断面図である。
図2及び図3に示すように、可変ノズル5は、シュラウドリング51(円環状部材)と、ハブリング52(円環状部材)と、複数のノズルベーン53(翼部)とを有している。
【0026】
シュラウドリング51及びハブリング52は、タービンインペラ12の外周を囲むように配置される円環状の部材であって、互いに対向して設置されている。シュラウドリング51は前方側に設けられ、ハブリング52は後方側に設けられている。ハブリング52は、ノズル駆動部5Aを介してタービン部2及び軸受け部3に支持されている。また、シュラウドリング51とハブリング52とは、複数のピン54(連結部材)を介して一体的に接続されている。ピン54は、シュラウドリング51及びハブリング52を間隔を空けて対向配置するように、シュラウドリング51とハブリング52との間の複数箇所に設けられている。
【0027】
ノズルベーン53は、その回動により可変ノズル5の開度を変化させ、可変ノズル5内を流動する排気ガスの流量を調整する翼部材であって、シュラウドリング51とハブリング52との間に前後方向に延びる軸周りで回動自在に複数設けられている。また、複数のノズルベーン53は、タービンインペラ12の外周に間隔を空けて、可変ノズル5の周方向に等間隔に並んで設けられている。
図3に示すように、ノズルベーン53は、シュラウドリング51とハブリング52との間に設けられる翼本体53aと、翼本体53aの前後方向での両端側から相反する方向に突出する第1軸部53b(軸部)及び第2軸部53c(軸部)とを有している。翼本体53a、第1軸部53b及び第2軸部53cは、一体的に成形されている。
【0028】
翼本体53aは、前後方向に延びる軸周りに回動自在に設けられている。また、翼本体53aは、前方側すなわちシュラウドリング51側の一縁部53d(一方の縁部)から、後方側すなわちハブリング52側の他縁部53e(他方の縁部)に向かうに従って、ピン54から離間するように傾斜して設けられている。そのため、翼本体53aの翼面53fは、前後方向に平行な面以外の面を少なくとも含んでいる。
第1軸部53b及び第2軸部53cは、シュラウドリング51及びハブリング52に厚さ方向で形成された孔部に回転自在にそれぞれ嵌合している。そのため、第1軸部53b及び第2軸部53cは、回動軸が前後方向となるように翼本体53aをシュラウドリング51及びハブリング52に回動自在に支持している。なお、第2軸部53cは、ハブリング52を貫通してその後側まで延びており、ノズル駆動部5Aに接続されている。
【0029】
ピン54は、シュラウドリング51とハブリング52とを互いに対向させて一体的に連結する複数の連結部材であって、前後方向に延在する棒形状に形成されている。また、ピン54の両端部は、シュラウドリング51及びハブリング52に厚さ方向で形成された孔部にそれぞれ嵌合して一体的に接続されている。
【0030】
ピン54は、回動した翼本体53aと干渉する位置に凹部54aを有している。凹部54aは、シュラウドリング51の近傍に形成され、翼本体53aの一縁部53dに対向して設けられている。すなわち、ピン54は、翼本体53aが要求される回動範囲で回動した場合に、翼本体53aの回動による可動範囲を避けた態様で設けられている。
【0031】
なお、本実施形態では、前後方向に沿って形成された翼本体を有する従来の翼部を用いる場合におけるピンの設置箇所と同一の箇所に、本実施形態におけるピン54を設置することができる。そのため、従来のシュラウドリング及びハブリング等を本実施形態においても使用することができるため、ターボチャージャ100の製造の手間及びコストの増加を抑制することができる。
【0032】
続いて、本実施形態におけるターボチャージャ100の動作を説明する。
まず、エンジンの作動に伴い、エンジンから排出された排気ガスが不図示のガス導入口を介して、タービン部2のタービンスクロール流路21に導入される。タービンスクロール流路21に導入された排気ガスは、タービンスクロール流路21内でタービンインペラ12の中心軸周りを旋回して流動する。次に、排気ガスは、タービンスクロール流路21から可変ノズル5内に旋回しつつ導入される。
【0033】
このとき、可変ノズル5は、エンジンから導かれる排気ガスの流量に応じて、その開度を変化させる。すなわち、ノズル駆動部5Aの作動により複数のノズルベーン53が同期して回動することで、可変ノズル5の開度が変化する。よって、エンジンの回転数が低くエンジンから排出される排気ガスの流量が少ない場合には、可変ノズル5の開度を小さくすることで可変ノズル5内の排気ガスの流速を向上させ、タービンインペラ12を回転させることができる。また、エンジンの回転数が高くエンジンからの排気ガスの流量が多い場合には、可変ノズル5の開度を大きくすることで、多くの排気ガスを円滑に流動させることができる。
結果として、上述のような可変ノズル5を用いることで、エンジンの低回転域から高回転域までの広い範囲に亘りエンジンの性能を向上させることができる。
【0034】
可変ノズル5のノズルベーン53には、その回動範囲が定められている。エンジンから排出される排気ガスの流量が少ない場合には、ノズルベーン53は可変ノズル5の周方向に沿う向きに回動し、エンジンから排出される排気ガスの流量が多い場合には、ノズルベーン53は可変ノズル5の径方向に沿う向きに回動するため、エンジンからの排気ガスの排出量に応じてノズルベーン53の回動範囲が定められている。
【0035】
また、ノズルベーン53の翼本体53aは、前述の通りピン54の延在方向に対して傾斜しており、ノズルベーン53の開度が最大又は最小となったときに、翼本体53aの一縁部53dがピン54と干渉する虞がある。
しかし、図3に示すように、本実施形態におけるピン54には凹部54aが形成されているため、翼本体53aの一縁部53dとの干渉を避けることができ、結果としてノズルベーン53に要求される広い回動範囲を確保することができる。また、図3(b)に示す符号53Aは、本実施形態における翼本体53aの最大開度での姿勢を示しており、符号53Bは、従来の可変ノズルにおける翼本体の最大開度での姿勢を示している。翼本体53aの一縁部53dが凹部54a内に配されるため、翼本体53aをピン54側に向けて従来の翼本体以上に回動させることが可能であり、翼本体53aに要求される広い回動範囲を確保することができる。
【0036】
次に、排気ガスは可変ノズル5内からタービンインペラ12に旋回しつつ導入される。この排気ガスの導入により、タービンインペラ12が所定の方向で回転する。タービンインペラ12を回転させた後の排気ガスは、タービン出口22から排出される。排気ガスは、タービン出口22と接続された不図示の排気ガス浄化装置によって浄化された後に、大気中に放出される。
【0037】
また、タービンインペラ12は、ロータ軸11を介してコンプレッサインペラ13と一体的に接続されているため、タービンインペラ12が回転することでコンプレッサインペラ13も回転する。コンプレッサインペラ13の回転により、外部から空気導入口41を介して導入された空気がコンプレッサインペラ13に吸引され、吸引された空気はコンプレッサインペラ13の径方向外側に送り出される。
【0038】
コンプレッサインペラ13によって送り出された空気はディフューザ流路42に導入される。空気はディフューザ流路42内で圧縮されて、その圧力が上昇する。次に、圧縮された空気は、ディフューザ流路42からコンプレッサスクロール流路43に導入され、不図示の空気吐出口を介してエンジンに供給される。圧縮された空気をエンジンに供給することで、エンジンの性能を向上させることができる。
以上で、ターボチャージャ100の動作が終了する。
【0039】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、ピン54の延在方向に対して傾斜した翼本体53aを有するノズルベーン53を可変ノズル5に用いた場合にも、翼本体53aに要求される広い回動範囲を確保することができる。そのため、エンジンの低回転域から高回転域までの広い範囲に亘ってエンジンの性能を向上できるという効果がある。
【0040】
〔第2実施形態〕
図4は、本実施形態におけるピン54及び第2ノズルベーン55の概略図である。
この図において、図3に示す第1の実施形態における構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
本実施形態における第2ノズルベーン55(翼部)は、シュラウドリング51とハブリング52との間に設けられる第2翼本体55a(翼本体)と、第2翼本体55aの前後方向での両端側から相反する方向に突出する第1軸部53b及び第2軸部53cとを有している。
第2翼本体55aにおける前後方向での断面形状は、ピン54に向けて膨出した湾曲形状に形成されている。そのため、第2翼本体55aの第2翼面55f(翼面)は、前後方向に平行な面以外の面を少なくとも含んでいる。第1軸部53b及び第2軸部53cは、シュラウドリング51及びハブリング52に回転自在に各々軸支されている。
【0042】
ピン54は、シュラウドリング51とハブリング52とを互いに対向させて一体的に連結する複数の連結部材であって、前後方向に延在する棒形状に形成されている。また、ピン54は、回動した第2翼本体55aと干渉する位置に第2凹部54b(凹部)を有している。第2凹部54bは、第2翼本体55aのピン54に向けて膨出した部分に対向して設けられている。すなわち、ピン54は、第2翼本体55aが要求される回動範囲で回動した場合に、第2翼本体55aの回動による可動範囲を避けた態様で設けられている。
【0043】
なお、本実施形態では、前後方向に沿って形成された翼本体を有する従来の翼部を用いる場合におけるピンの設置箇所と同一の箇所に、本実施形態におけるピン54を設置することができる。そのため、従来のシュラウドリング及びハブリング等を本実施形態においても使用することができるため、ターボチャージャ100の製造の手間及びコストの増加を抑制することができる。
【0044】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第2翼本体55aにおける前後方向での断面形状がピン54に向けて膨出した湾曲形状に形成されている場合にも、第2ノズルベーン55に要求される広い回動範囲を確保することができる。そのため、エンジンの低回転域から高回転域までの広い範囲に亘ってエンジンの性能を向上できるという効果がある。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、可変容量タービンはタービン部2としてターボチャージャ100に設けられているが、これに限定されるものではなく、例えば流動している流体の運動エネルギー等をロータ1の回転運動に変換し、その回転運動によって発電を行う発電機等に用いてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、タービン部2に導入される流体として不図示のエンジンから排出される排気ガスを用いているが、これに限定されるものではなく、他の気体や液体を用いてもよい。同様に、コンプレッサ部4が圧縮する流体として空気を用いているが、他の気体を用いてもよい。例えば、冷蔵・冷凍装置等に用いられる冷媒ガスを圧縮する構成としてもよい。
【0048】
また、第1の実施形態におけるピン54の代わりに、図5に示す第2ピン56を用いてもよい。
図5は、第2ピン56の概略図である。
ノズルベーン53における翼本体53aは、前後方向に対して傾斜して設けられている。第2ピン56(連結部材)は、ノズルベーン53における翼本体53aの傾斜に沿って延在しており、翼本体53aと第2ピン56との間には、翼本体53aにおける翼面53fの法線方向において一定の隙間が形成されている。すなわち、第2ピン56は、翼本体53aが要求される回動範囲で回動した場合に、翼本体53aの回動による可動範囲を避けた態様で設けられている。したがって、翼本体53aに要求される広い回動範囲を確保することができる。
【0049】
また、第2の実施形態における第2ノズルベーン55の代わりに、図6に示す第3ノズルベーン57を用いてもよい。
図5は、第3ノズルベーン57の概略図である。
第3ノズルベーン57(翼部)は、第2ノズルベーン55と同様に、第3翼本体57a(翼本体)と、第1軸部53bと、第2軸部53cとを有している。第3翼本体57aの前後方向での断面形状はピン54に対して窪んだ湾曲形状に形成されている。そのため、第3翼本体57aの第3翼面57f(翼面)は、前後方向に平行な面以外の面を少なくとも含んでいる。
また、ピン54は、回動した第3翼本体57aと干渉する位置に第3凹部54c(凹部)を有している。第3凹部54cは、第3翼本体57aの前後方向での両縁部にそれぞれ対向して設けられている。すなわち、ピン54は、第3翼本体57aが要求される回動範囲で回動した場合に、第3翼本体57aの回動による可動範囲を避けた態様で設けられている。したがって、第3翼本体57aに要求される広い回動範囲を確保することができる。
【符号の説明】
【0050】
2…タービン部(可変容量タービン)、5…可変ノズル、12…タービンインペラ、51…シュラウドリング(円環状部材)、52…ハブリング(円環状部材)、53…ノズルベーン(翼部)、53a…翼本体、53b…第1軸部(軸部)、53c…第2軸部(軸部)、53d…一縁部(一方の縁部)、53e…他縁部(他方の縁部)、53f…翼面、54…ピン(連結部材)、54a…凹部、54b…第2凹部(凹部)、54c…第3凹部(凹部)、55…第2ノズルベーン(翼部)、55a…第2翼本体(翼本体)、55f…第2翼面(翼面)、56…第2ピン(連結部材)、57…第3ノズルベーン(翼部)、57a…第3翼本体(翼本体)、57f…第3翼面(翼面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンインペラに流入する流体の流量を調整する可変ノズルを備える可変容量タービンであって、
前記可変ノズルは、
前記タービンインペラの外周を囲むように配置される一対の円環状部材と、
該一対の円環状部材を間隔を空けて対向配置するように前記一対の円環状部材間の複数箇所に設けられる連結部材と、
翼面が前記一対の円環状部材の対向方向に平行な面以外の面を少なくとも含む翼本体と、回動軸が前記対向方向となるように前記翼本体を前記一対の円環状部材間に回動自在に支持する軸部とからなり、前記タービンインペラの外周に間隔を空けて複数設けられる翼部とを備え、
前記連結部材は、前記翼本体の回動による可動範囲を避けた態様で設けられることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項2】
請求項1に記載の可変容量タービンにおいて、
前記連結部材は、前記対向方向に延在する棒形状に形成されるとともに、回動した前記翼本体と干渉する位置に凹部を有することを特徴とする可変容量タービン。
【請求項3】
請求項2に記載の可変容量タービンにおいて、
前記翼本体は、前記対向方向における一方の縁部から他方の縁部に向かうに従って前記連結部材から離間するように傾斜して設けられ、
前記凹部は、前記一方の縁部に対向して設けられることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項4】
請求項2に記載の可変容量タービンにおいて、
前記翼本体の前記対向方向での断面形状は、前記連結部材に向けて膨出した湾曲形状に形成され、
前記凹部は、前記翼本体の前記連結部材に向けて膨出した部分に対向して設けられることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項5】
請求項2に記載の可変容量タービンにおいて、
前記翼本体の前記対向方向での断面形状は、前記連結部材に対して窪んだ湾曲形状に形成され、
前記凹部は、前記翼本体の前記対向方向での両縁部にそれぞれ対向して設けられることを特徴とする可変容量タービン。
【請求項6】
請求項1に記載の可変容量タービンにおいて、
前記翼本体は、前記対向方向に対して傾斜して設けられ、
前記連結部材は、前記翼本体の傾斜に沿って延在していることを特徴とする可変容量タービン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21475(P2012−21475A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160575(P2010−160575)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】