説明

可変容量回路、電圧測定装置および電力測定装置

【課題】動作周波数が高速で、しかも信頼性の高い可変容量回路を提供する。
【解決手段】直流信号の通過を阻止しつつ駆動信号S2の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素E11,E12,E13,E14をそれぞれ含む第1の構成単位31、第2の構成単位32、第3の構成単位33および第4の構成単位34がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体13を備えている。ここで、第1電気的要素E11,E12,E13,E14は、互いに逆向きに直列接続された一対のダイオード41a,41bで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その静電容量を高速に変化し得る可変容量回路、この可変容量回路を備えて測定対象体の電圧を非接触で測定し得る電圧測定装置、およびこの電圧測定装置を用いた電力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電圧測定装置として、特開平4−305171号公報および特開平7−244103号公報において開示された種々の電圧測定装置が知られている。
【0003】
これらの電圧測定装置のうちの特開平4−305171号公報の従来の技術において、測定対象体(帯電体)の両表面の電荷密度を測定するために使用される電圧測定装置(距離補償型電位計)は、検出電極および振動体を内蔵したプローブユニット、発振器、プリアンプ、増幅器、同期検波器、積分器、高電圧発生器、およびインピーダンス整合回路を備えて構成されている。この電圧測定装置では、検出電極を振動体で振動させながら測定対象体に対向させる。この際に、検出電極と測定対象体との間に形成される静電容量が変化して、測定対象体と検出電極との間の電界強度も変化するため、検出電極には、測定対象体と検出電極との間の電界強度に応じた交流電圧が発生する。高電圧発生器は、この交流電圧に応じた直流電圧を発生して、プローブユニットの電圧にフィードバックする。この場合、測定対象体と検出電極との間の電界強度は、プローブユニットの電圧と帯電体の電圧とが一致したときにゼロになる。したがって、測定対象体と検出電極との間の電界強度がゼロになったとき、つまり、検出電極に発生する交流電圧がゼロボルトになったときに、高電圧発生器がプローブユニットにフィードバックしている直流電圧を検出することにより、測定対象体の電圧が測定される。
【0004】
他方、特開平7−244103号公報の従来の技術において、開示されている電圧測定装置(距離補償型表面電位計)では、測定対象体(試料)の面から発する電気力線のうちの入力孔を通って検出電極(固定電極)に達する電気力線により、検出電極の面には、測定対象体の電位に比例し、かつ検出電極と測定対象体との間の静電容量に比例した電荷が発生する。また、導体セクターが、機械的に作動することにより、入力孔を通って検出電極に達する電気力線に対して遮蔽と開放とを繰り返す。これにより、検出電極の電荷は、発生、消滅を繰り返し、その変化率に比例した電流が負荷抵抗を流れて、この負荷抵抗に交流電圧が発生する。この特開平7−244103号公報に開示されている電圧測定装置は、この交流電圧を発生させる構成については上記の特開平4−305171号公報の電圧測定装置と相違するが、この構成以外については特開平4−305171号公報の電圧測定装置と基本的に同様に構成されており、負荷抵抗に発生する交流電圧に基づいてプローブケース(プローブユニットのケースと等価)と測定対象体との間の電位差を縮めることにより、特開平4−305171号公報の電圧測定装置と同様にして測定対象体の電位が測定されている。
【特許文献1】特開平4−305171号公報(第2頁、第6図)
【特許文献2】特開平7−244103号公報(第2頁、第9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の各電圧測定装置には、以下のような問題点がある。すなわち、特開平4−305171号公報の電圧測定装置では、検出電極を振動体で作動振動させている。また、特開平7−244103号公報の電圧測定装置では、導体セクターを機械的に作動させている。したがって、両電圧測定装置には、機械的に可動する構成を有していることに起因して、動作周波数の高速化が困難であると共に、信頼性の向上が困難であるという問題点が存在している。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、動作周波数が高く、かつ信頼性も高い可変容量回路、電圧測定装置および電力測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の可変容量回路は、直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含む第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体を備えている。
【0008】
また、請求項2記載の可変容量回路は、第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体を備え、前記第1の構成単位と前記第4の構成単位との組、および前記第2の構成単位と前記第3の構成単位との組のうちの一方の組の各構成単位が直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含むと共に、他の組の各構成単位が交流信号の通過を許容する第2電気的要素をそれぞれ含んでいる。
【0009】
また、請求項3記載の可変容量回路は、請求項2記載の可変容量回路において、前記各第2電気的要素は、コンデンサ、コイル、抵抗および共振体のうちの少なくとも1つを含んで構成されている。
【0010】
また、請求項4記載の可変容量回路は、第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体を備え、前記第1の構成単位と前記第2の構成単位との組、および前記第3の構成単位と前記第4の構成単位との組のうちの一方の組の各構成単位が直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含むと共に、他の組の各構成単位が直流信号の通過を阻止しつつ交流信号の通過を許容する第3電気的要素をそれぞれ含んでいる。
【0011】
また、請求項5記載の可変容量回路は、請求項4記載の可変容量回路において、前記各第3電気的要素は、コンデンサおよび共振体のうちの少なくとも一方を含んで構成されている。
【0012】
また、請求項6記載の可変容量回路は、請求項1から5のいずれかに記載の可変容量回路において、前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成されている。
【0013】
また、請求項7記載の可変容量回路は、請求項1記載の可変容量回路において、前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成され、前記第1の構成単位および前記第2の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの一方同士が接続され、前記第3の構成単位および前記第4の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの他方同士が接続されている。
【0014】
また、請求項8記載の可変容量回路は、請求項1記載の可変容量回路において、前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成され、前記第1の構成単位および前記第3の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの一方同士が接続され、前記第2の構成単位および前記第4の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの他方同士が接続されている。
【0015】
また、請求項9記載の可変容量回路は、請求項2または3記載の可変容量回路において、前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成され、前記第1電気的要素を含む前記一方の組の前記各構成単位のうちの一方に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの一方同士が接続され、当該各構成単位のうちの他方に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの他方同士が接続されている。
【0016】
また、請求項10記載の可変容量回路は、請求項6から9のいずれかに記載の可変容量回路において、前記各第1素子は、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有している。
【0017】
また、請求項11記載の可変容量回路は、請求項10記載の可変容量回路において、前記各第1素子は、前記P型半導体および前記N型半導体で形成されたダイオードで構成されている。
【0018】
また、請求項12記載の可変容量回路は、請求項10記載の可変容量回路において、前記逆向きに直列接続された2つの第1素子に含まれている前記各P型半導体および前記各N型半導体は、入力端子および出力端子を接続点として前記4つの構成単位で構成される環状回路内に配設された1つのトランジスタで構成されている。
【0019】
また、請求項13記載の可変容量回路は、請求項10記載の可変容量回路において、前記第1電気的要素を含んで互いに隣接する2つの前記構成単位に含まれている前記各第1素子のうちの当該2つの構成単位の接続点を挟んで互いに逆向きで隣接する2つの当該第1素子に含まれている前記各P型半導体および前記各N型半導体は、1つのトランジスタで構成されている。
【0020】
また、請求項14載の可変容量回路は、請求項1から13のいずれかに記載の可変容量回路において、前記第1の構成単位および前記第3の構成単位の各インピーダンスの積と、前記第2の構成単位および前記第4の構成単位の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一に規定されている。
【0021】
また、請求項15記載の可変容量回路は、請求項1から14のいずれかに記載の可変容量回路において、前記第1の構成単位および前記第2の構成単位の接続点と、前記第3の構成単位および前記第4の構成単位の接続点との間に交流電圧を印加して前記容量変化機能体の静電容量を変化させる駆動回路を含んでいる。
【0022】
また、請求項16記載の可変容量回路は、請求項15記載の可変容量回路において、前記駆動回路は、前記交流電圧を二次巻線に発生させるトランスを備えている。
【0023】
また、請求項17記載の電圧測定装置は、測定対象体の電圧を測定可能に構成された電圧測定装置であって、前記測定対象体に対向可能な検出電極と、請求項15または16記載の可変容量回路とを備え、前記可変容量回路は、前記第1の構成単位および前記第4の構成単位の接続点が前記検出電極側に位置すると共に前記第2の構成単位および前記第3の構成単位の接続点が参照電位側に位置するように前記検出電極と前記参照電位との間に接続されている。
【0024】
また、請求項18記載の電圧測定装置は、請求項17記載の電圧測定装置において、前記参照電位を生成する電圧生成回路と、制御部とを備え、前記制御部は、前記可変容量回路が前記静電容量を変化させているときに、前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
【0025】
また、請求項19記載の電圧測定装置は、請求項18記載の電圧測定装置において、前記制御部は、前記静電容量の変化時において、前記可変容量回路を介して前記検出電極と前記参照電位との間に流れる電流、または前記可変容量回路における前記検出電極側の端部と前記参照電位側の端部との間に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
【0026】
また、請求項20記載の電圧測定装置は、請求項19記載の電圧測定装置において、前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設されたインピーダンス素子を備え、前記制御部は、前記インピーダンス素子に前記電流が流れたときに当該インピーダンス素子に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
【0027】
また、請求項21記載の電圧測定装置は、請求項19記載の電圧測定装置において、前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設された共振回路を備え、前記制御部は、前記共振回路に前記電流が流れたときに当該共振回路に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
【0028】
また、請求項22記載の電圧測定装置は、請求項19記載の電圧測定装置において、前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設された一次巻線および当該一次巻線と磁気的に結合する二次巻線を有するトランスを備え、前記制御部は、前記二次巻線に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
【0029】
また、請求項23記載の電圧測定装置は、請求項19から22のいずれかに記載の電圧測定装置において、前記制御部は、前記電流の値、または前記検出電極側の端部と前記参照電位側の端部との間に発生する前記電圧の値に応じて電圧値が変化する検出信号を入力してディジタルデータに変換するA/D変換回路を備え、当該ディジタルデータに基づいて前記検出信号の電圧値が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる。
【0030】
また、請求項24記載の電力測定装置は、測定対象体に流れている電流を測定する電流測定装置と、前記測定対象体の電圧を測定する請求項17から23のいずれかに記載の電圧測定装置とを備え、前記電流測定装置によって測定された前記電流と前記電圧測定装置によって測定された前記電圧とに基づいて電力を測定する。
【発明の効果】
【0031】
請求項1,2または4記載の可変容量回路によれば、第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位をこの順に環状に接続して容量変化機能体を構成し、かつ4つの構成単位のうちの隣接する少なくとも2つの構成単位については、直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含んで構成し、他の2つの構成単位については、第1電気的要素、交流信号の通過を許容する第2電気的要素、および直流信号の通過を阻止しつつ交流信号の通過を許容する第3電気的要素のいずれかを含んで構成したことにより、機械的に可動する構成を含む可変容量回路と比較して、数百kHz〜数MHzといった高い周波数での容量変化動作が可能(動作周波数の高速化が可能)で、しかも信頼性の高い可変容量回路を実現することができる。加えて、この可変容量回路では、隣接する少なくとも2つの構成単位が上記のような第1電気的要素を含んでいるため、4つの構成単位の4つの接続点のうちの対向する一対の接続点間(非隣接な一対の接続点間)に駆動用の交流電圧を印加した際に、他の対向する一対の接続点間(他の非隣接な一対の接続点間)の静電容量を交流電圧の周波数の2倍の周波数(容量変調周波数)で変化させることができる結果、より高い周波数での容量変化動作を行わせることができる。
【0032】
また、請求項3記載の可変容量回路によれば、コンデンサ、コイル、抵抗および共振体のうちの少なくとも1つを含んで第2電気的要素を構成したことにより、簡易、かつ安価に可変容量回路を構成することができる。特に、第1の構成単位と第4の構成単位との組、および第2の構成単位と第3の構成単位との組のうちの一方の組または他方の組の各構成単位を共振体、具体的には第1の構成単位および第2の構成単位の接続点と第3の構成単位および第4の構成単位の接続点との間に印加される駆動用の交流電圧の周波数の2倍の周波数(容量変調周波数)のときにインピーダンスが最小となり、かつそれ以外の周波数のときに十分に高いインピーダンスとなる共振体を含めて構成したときには、容量変化機能体(具体的には容量変化機能体を構成する各可変容量要素)の容量変調周波数(交流電圧の2倍の周波数)において共振体のインピーダンスが低くなる結果、容量変化機能体に十分な交流電流を流すことができる。このため、この交流電流を利用した電圧検出の精度を十分に高めることができる。
【0033】
また、請求項5記載の可変容量回路によれば、コンデンサおよび共振体のうちの少なくとも一方を含んで第3電気的要素を構成したことにより、簡易、かつ安価に可変容量回路を構成することができる。特に、第1の構成単位と第2の構成単位との組、および第3の構成単位と第4の構成単位との組のうちの一方の組または他方の組の各構成単位を共振体、具体的には第1の構成単位および第2の構成単位の接続点と第3の構成単位および第4の構成単位の接続点との間に印加される駆動用の交流電圧の周波数の2倍の周波数(容量変調周波数)のときにインピーダンスが最小となり、かつそれ以外の周波数のときに十分に高いインピーダンスとなる共振体を含めて構成したときには、容量変化機能体(具体的には容量変化機能体を構成する各可変容量要素)の容量変調周波数(交流電圧の2倍の周波数)において共振体のインピーダンスが低くなる結果、容量変化機能体に十分な交流電流を流すことができる。このため、この交流電流を利用した電圧検出の精度を十分に高めることができる。
【0034】
また、請求項6および10記載の可変容量回路によれば、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ一端が他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子(例えば、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有して形成された第1素子)を逆向きに直列接続して第1電気的要素を構成したことにより、可変容量回路を大幅に小型化することができる。
【0035】
また、請求項7,8,9および10記載の可変容量回路によれば、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ一端が他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子(例えば、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有して形成された第1素子)を逆向きに直列接続して第1電気的要素を構成したことにより、可変容量回路を大幅に小型化することができる。また、第1接続態様(一端同士を接続する態様)の一対の第1素子を含む電気的要素と第2接続態様(他端同士を接続する態様)の一対の第1素子を含む電気的要素とを混在させて容量変化機能体を構成する場合、上記のいずれかの構成を採用することにより、容量変化動作中における容量変化機能体中の容量体として機能する第1素子を、対向する一対の接続点を基準としたときに左右対称の位置に配置することができるため、その一対の接続点間の電位差を一層低減することができる。
【0036】
また、請求項11記載の可変容量回路によれば、第1素子をP型半導体およびN型半導体で形成されたダイオードで構成したことにより、簡易、かつ安価に可変容量回路を構成することができる。
【0037】
また、請求項12および13記載の可変容量回路によれば、第1電気的要素を構成する2つの第1素子に含まれている各P型半導体および各N型半導体を1つのトランジスタで構成したことにより、より少ない部品点数で、簡易、かつ安価に可変容量回路を構成することができる。
【0038】
また、請求項14記載の可変容量回路によれば、第1の構成単位および第3の構成単位の各インピーダンスの積と、第2の構成単位および第4の構成単位の各インピーダンスの積とを同一またはほぼ同一に規定したことにより、環状に接続されてブリッジ回路に構成されている容量変化機能体がブリッジ回路としての平衡条件を満足しているため、対向する一対の接続点(非隣接な一対の接続点)間に駆動用の交流電圧を印加した際に、対向する他の一対の接続点間にこの交流電圧の電圧成分を発生させないようにすることができる。このため、静電容量変化時において容量変化機能体に発生する電流または容量変化機能体の両端間電圧への駆動用の交流電圧の影響を排除することができる。
【0039】
また、請求項15記載の可変容量回路によれば、第1の構成単位および第2の構成単位の接続点と、第3の構成単位および第4の構成単位の接続点との間に交流電圧を印加して容量変化機能体の静電容量を変化させる駆動回路を含んで構成したことにより、容量変化機能体における第1の構成単位および第4の構成単位の接続点と、第2の構成単位および第3の構成単位の接続点とを、可変容量回路における他の回路との一対の接続点として使用することができる。このため、上記したブリッジ回路としての平衡条件を満足することと相俟って、静電容量変化時(容量変調時)において容量変化機能体に発生する交流電流または容量変化機能体の両端間電圧への駆動用の交流電圧の影響を排除することができる。
【0040】
また、請求項16記載の可変容量回路によれば、交流電圧を二次巻線に発生させるトランスを用いて駆動回路を構成したことにより、トランスという汎用性の高い部品を使用して、容量変化機能体に交流電圧をフローティング状態で簡易に供給(印加)することができる。また、一次巻線に対する二次巻線の巻数比を増やすことにより、より大きな電圧値の交流電圧を容量変化機能体に供給することができる。このため、容量変化機能体の容量変調範囲をより広くすることができる結果、例えば電圧測定装置に利用したときに、測定対象体の電圧を高感度で測定することができる。
【0041】
また、請求項17記載の電圧測定装置によれば、測定対象体に対向可能な検出電極と、上記の可変容量回路とを備え、第1の構成単位および第4の構成単位の接続点を検出電極側に位置させると共に第2の構成単位および第3の構成単位の接続点を参照電位側に位置させて検出電極と参照電位との間に可変容量回路を接続し、かつこの可変容量回路の容量変化動作を利用して測定対象体の電圧を測定することにより、機械的に可動する構成を含む可変容量回路を用いた構成と比較して、可変容量回路が高い周波数での容量変化動作が可能で、しかも高い信頼性を有しているため、測定対象体の電圧を短時間で測定することができると共に、電圧測定装置自体の信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、請求項18記載の電圧測定装置によれば、参照電位を生成する電圧生成回路と、制御部とを備え、可変容量回路が静電容量を変化させているときに、制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、変化させた参照電位の電圧が測定対象体の電圧に一致したときに、可変容量回路を介して検出電極と参照電位との間に流れる電流、または可変容量回路の容量変化機能体における検出電極側の端部と参照電位側の端部との間に発生する電圧がほぼゼロになることを利用して、測定対象体の電圧を高い精度で測定することができる。
【0043】
また、請求項19記載の電圧測定装置によれば、可変容量回路における静電容量の変化時において、可変容量回路を介して検出電極と参照電位との間に流れる電流、または可変容量回路における検出電極側の端部と参照電位側の端部との間に発生する電圧が減少するように制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、短時間で、しかも確実に参照電位の電圧を測定対象体の電圧に一致させることができるため、高い測定精度を維持しつつ、短時間で、しかも確実に測定対象体の電圧を測定することができる。
【0044】
また、請求項20記載の電圧測定装置によれば、検出電極と参照電位との間に可変容量回路と直列にインピーダンス素子を配設すると共に、インピーダンス素子に電流が流れたときにこのインピーダンス素子に発生する電圧が減少するように制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、インピーダンス素子のインピーダンス値を変えることで電流が流れたときにインピーダンス素子に発生する電圧の値を任意に変更することができる。このため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体の電圧を正確に測定することができる。
【0045】
また、請求項21記載の電圧測定装置では、検出電極と参照電位との間に可変容量回路と直列に共振回路を配設すると共に、共振回路に電流が流れたときにこの共振回路に発生する電圧が減少するように制御部が電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させている。したがって、この構成によれば、共振回路の共振時におけるインピーダンス値を変えることで電流が流れたときに共振回路に発生する電圧の値を任意に変更することができるため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体の電圧を測定することができる。しかも、共振回路の共振周波数で可変容量回路の静電容量を変化させることで、共振回路に流れる電流をより大きな電圧として検出することができる。この結果、耐ノイズ性能を高めることができるため、誤動作の少ない状態で測定対象体の電圧を測定することができる。
【0046】
また、請求項22記載の電圧測定装置では、検出電極と参照電位との間にトランスの一次巻線を配設すると共に、制御部が、一次巻線と磁気的に結合する二次巻線に発生する電圧が減少するように、電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させている。したがって、この構成によれば、二次巻線側の回路をグランド電位(基準電位)を基準とした回路となるように容易に構成することができる。したがって、例えば演算増幅器を使用する回路構成を採用したときに、差動型の演算増幅器と比較してより安価なシングルエンド型の演算増幅器を使用することができるため、装置全体のコストの低減を図ることができる。また、絶縁用電子部品の使用により、演算増幅器に入力される電圧を可変容量回路に流れる電流に対して電気的に絶縁でき、かつ演算増幅器に入力される電圧のレベルを任意に設定できるため、測定しようとする測定対象体の電圧が極めて高い電圧であったとしても、演算増幅器に入力される電圧の信号レベルを演算増幅器の入力仕様に容易に適合させることができる。
【0047】
また、請求項23記載の電圧測定装置によれば、可変容量回路に流れる電流の値または可変容量回路に発生する電圧の値に応じて電圧値が変化する検出信号を入力してディジタルデータに変換するA/D変換回路を備え、制御部が、このディジタルデータに基づいて、検出信号の電圧値が減少するように電圧生成回路に対して参照電位の電圧を変化させることにより、CPUやDSP(Digital Signal Processor)を用いたディジタル回路で制御部を簡易に構成することができる。
【0048】
また、請求項24記載の電力測定装置は、測定対象体に流れている電流を測定する電流測定装置と、測定対象体の電圧を測定する上記の電圧測定装置とを備え、電流測定装置によって測定された電流と電圧測定装置によって測定された電圧とに基づいて、例えば測定対象体に供給されている電力を測定する。したがって、この電力測定装置によれば、信頼性の高い電圧測定装置を備えたことで、電力測定装置自体の信頼性を十分に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る可変容量回路、電圧測定装置および電力測定装置の最良の形態について説明する。
【0050】
最初に、本発明に係る電圧測定装置1について、図面を参照して説明する。
【0051】
電圧測定装置1は、図1に示すように、プローブユニット2および本体ユニット3を備え、測定対象体4の電圧V1を非接触で測定可能に構成されている。この場合、電圧V1とは、グランド電位(基準電位)に対する電圧をいう。
【0052】
プローブユニット2は、図1に示すように、ケース11、検出電極12、可変容量回路19、電流検出器15およびプリアンプ16を備えている。ケース11は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて構成されている。検出電極12は、例えば、平板状に形成されると共に、その一方の面側がケース11の外表面に露出し、かつ他方の面側がケース11の内部に露出するようにしてケース11に固定されている。一例として、検出電極12は、ケース11に設けられている孔(図示せず)に、この孔を閉塞し、かつケース11に対して電気的に絶縁された状態で取り付けられている。また、本例では、一例として、ケース11は、その表面が樹脂材などで形成された絶縁被膜で覆われている。この場合、検出電極12は、この絶縁被膜で覆われていてもよいし、絶縁被膜から露出していてもよい。
【0053】
可変容量回路19は、図1に示すように、1つの容量変化機能体13および1つの駆動回路14を備えている。また、可変容量回路19(具体的には容量変化機能体13)は、第1の構成単位31、第2の構成単位32、第3の構成単位33および第4の構成単位34がこの順に環状に接続されて、いわゆるブリッジ回路(本発明における環状回路)に構成されている。具体的には、各構成単位31,32,33,34は、図2に示すように、第1電気的要素E11,12,13,14(以下、特に区別しないときには「第1電気的要素E1」ともいう)をそれぞれ1つずつ含んで構成されている。
【0054】
この場合、各第1電気的要素E1は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ他端が一端に対して高電位のときに容量体としてそれぞれ機能する一対の第1素子41a,41b(以下、特に区別しないときには第1素子41ともいう)をそれぞれ1つずつ含み、各第1素子41が互いに逆向きに直列接続されて構成されている。これにより、各第1電気的要素E1は、直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化するように構成されている。なお、本明細書において、「直流信号の通過を阻止する」とは、直流信号の通過を完全に阻止する場合と、直流信号に対して例えば100MΩ以上の抵抗値で通過を制限する場合とを含む概念である。本例では、一例として、各第1素子41は、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有して構成され、具体的には1つのダイオード(一例として可変容量ダイオード。バリキャップやバラクタダイオードともいう。)で構成され、各第1電気的要素E1は、これら2つのダイオードが逆向きに直列接続されて(アノード端子同士が接続されて)構成されている。また、各第1素子41a,41bには同一またはほぼ同一の特性の可変容量ダイオードが使用されて、第1の構成単位31および第3の構成単位33の各インピーダンスの積と、第2の構成単位32および第4の構成単位34の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一(一例として数%程度の範囲内で相違する状態)に設定されている。
【0055】
なお、図2に示す容量変化機能体13では、各第1電気的要素E1は、一対の第1素子41a,41bの一端同士を接続して(一対のダイオードのアノード端子同士を接続して)構成されているが、図3に示す容量変化機能体13のように、一対の第1素子41a,41bの他端同士を接続して(一対のダイオードのカソード端子同士を接続して)、各第1電気的要素E1を構成することもできる。また、可変容量ダイオードは、電圧を逆方向に印加したときにダイオードのPN接合における空乏層の厚みが変化することによる静電容量(接合容量)の変化を利用したものであり、この静電容量の変化を大きくしたものをいう。他方、PN接合で構成される一般的なダイオード(シリコンダイオード)においても、可変容量ダイオードと比べて少ないものの、上記した静電容量(接合容量)の変化は発生する。このため、図2,3に示す各容量変化機能体13におけるすべての第1素子41a,41bを、一般的なダイオードで構成された第1素子51a,51b(以下、区別しないときには、第1素子51ともいう)に置き換えた構成(図4,5参照)であっても、容量変化機能体13を構成することができる。
【0056】
また、可変容量回路19は、検出電極12と参照電位となる部位(本例ではケース11)との間に、容量変化機能体13における第1の構成単位31および第4の構成単位34の接続点Aが検出電極12側に位置すると共に第2の構成単位32および第3の構成単位33の接続点Cがケース11側に位置するように配設されている。具体的には、可変容量回路19は、図1に示すように、容量変化機能体13の接続点Aが検出電極12に接続されると共に、容量変化機能体13の接続点Cが電流検出器15を介してケース11に接続されている。また、第1の構成単位31および第2の構成単位32の接続点Bと、第3の構成単位33および第4の構成単位34の接続点Dとが駆動回路14に接続されている。また、可変容量回路19は、ケース11の外部に露出しない状態で、ケース11内部に配設されている。
【0057】
駆動回路14は、例えば、トランスおよびフォトカプラなどの絶縁用電子部品を用いて構成されて、本体ユニット3から入力した駆動信号S1を、この駆動信号S1と電気的に絶縁されると共に駆動信号S1と同一の周波数f1の駆動信号S2(本発明における交流電圧)に変換して容量変化機能体13に出力(印加)する。本例では、一例として、駆動回路14は、図1に示すように、二次巻線14cの各端部が容量変化機能体13の接続点B,Dに接続されたトランス14aを備え、入力した駆動信号S1に基づいてトランス14aの一次巻線14bを励磁して、二次巻線14cに駆動信号S2を発生させる。この構成により、駆動回路14は、駆動信号S1を低歪みで駆動信号S2に変換し、この駆動信号S2を容量変化機能体13の各接続点B,D間に印加する。本例では、後述するように一例として駆動信号S1として正弦波信号を用いているため、駆動信号S2も正弦波信号として出力される。また、なお、上記の駆動回路14に代えて、単独で(本体ユニット3から駆動信号S1を入力せずに)駆動信号S2を出力するフローティング信号源(図示せず)をプローブユニット2内に配設することもできる。
【0058】
電流検出器15は、一例として抵抗で構成されて、可変容量回路19(具体的には可変容量回路19の容量変化機能体13)とケース11との間に接続されている。これにより、電流検出器15は、可変容量回路19と直列に接続された状態で検出電極12とケース11との間に配設されて、可変容量回路19の容量変化機能体13に流れている電流i(物理量)を検出すると共に、この電流iの電流値に比例した値で、かつ電流iの向きに対応した極性の電圧V2をその両端間に発生させる。プリアンプ16は、不図示の直流遮断用の一対のコンデンサ、不図示の増幅回路(演算増幅器など)、および不図示の絶縁用電子部品(トランスおよびフォトカプラなど)を備えて構成されている。また、プリアンプ16は、本例では、一例として差動型の演算増幅器で構成されて、コンデンサを介して入力した電圧V2を増幅回路で増幅すると共に、増幅した電圧を絶縁用電子部品によって増幅回路に対して電気的に絶縁された検出信号S3に変換して出力する。この場合、電圧V2は電流iの値に比例して変化するため、この電圧V2を増幅して生成された検出信号S3も電流iの値に比例して変化する。また、上記した電流検出器15およびプリアンプ16は、可変容量回路19と共にケース11内部に配設されている。
【0059】
本体ユニット3は、図1に示すように、発振回路21、増幅回路22、同期検波回路23、積分器24、電圧生成回路25、電圧計26およびフィルタ回路27を備えて構成されている。発振回路21は、一定の周期T1(周波数f1)の駆動信号S1を生成してプローブユニット2に出力すると共に、周期T1の二分の一の周期T2(周波数(2×f1))の検波用信号S11を駆動信号S1に同期させて生成して同期検波回路23に出力する。この場合、本例では、発振回路21は、駆動信号S1および検波用信号S11として正弦波信号を生成する。フィルタ回路27は、プローブユニット2から入力した検出信号S3に含まれている容量変化機能体13の容量変調周波数と同じ周波数の信号S3aを選択的に通過させる。
【0060】
増幅回路22は、フィルタ回路27から入力した信号S3aを予め設定された電圧レベルまで増幅して、検出信号S4として出力する。本例では、容量変化機能体13の容量変調周波数は、駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数f2になる。このため、この静電容量C1の変化によって生じる電流iの周波数も駆動信号S1の周波数f1の2倍の周波数f2となり、プリアンプ16で生成される検出信号S3中には周波数f1,f2の各信号成分が含まれるものの、増幅回路22から出力される検出信号S4の周波数はフィルタ回路27によるフィルタリングによってf2となる。同期検波回路23は、検出信号S4を検波用信号S11で同期検波することにより、パルス信号S5を生成するように構成されている。この場合、パルス信号S5は、その振幅が可変容量回路19を流れる電流iの値に比例して変化し、かつその極性が可変容量回路19を流れる電流iの向きに応じて変化する。
【0061】
積分器24は、パルス信号S5を連続的に積分することで直流電圧V3を生成して、電圧生成回路25に出力する。本例では、一例として、積分器24は、積分動作を開始した後に、最初のパルス信号S5が入力されるまでの間、ゼロボルトの直流電圧V3を出力するように設定されている。これらのフィルタ回路27、増幅回路22、同期検波回路23および積分器24は、制御部CNTを構成して、電圧生成回路25を制御する。電圧生成回路25は、制御部CNTの制御下で、フィードバック電圧V4を生成してプローブユニット2のケース11に印加する。具体的には、電圧生成回路25は、入力した直流電圧V3を増幅することにより、フィードバック電圧V4を生成する。これにより、参照電位であるケース11の電圧は、フィードバック電圧V4と等しく維持される。電圧計26は、グランド電位(基準電位)を基準としたフィードバック電圧V4を測定して、その電圧値を表示する。
【0062】
次いで、電圧測定装置1を使用した測定対象体4の電圧V1の測定方法と共に、電圧測定装置1の測定動作について説明する。なお、発明の理解を容易にするため、一例として、電圧V1が正の定電圧であるとして説明するが、電圧V1が負の定電圧であるときにも、対応する信号や電圧の極性が逆になる以外は、正の定電圧のときと同様にして測定される。また、電圧V1が交流のときにも、原理的には正の定電圧や負の定電圧のときと同様にして測定される。
【0063】
まず、電圧V1の測定に際して、検出電極12が非接触な状態で測定対象体4に対向するように、プローブユニット2を測定対象体4の近傍に配設する。これにより、図1に示すように、検出電極12と測定対象体4との間に静電容量C0が形成された状態となる。この場合、静電容量C0の容量値は、検出電極12と測定対象体4の距離に反比例して変化するが、プローブユニット2を配設し終えた後は、湿度などの環境条件が一定のもとでは一定となる(変動しない)。ただし、静電容量C0は、湿度等の環境条件が変化したときには変動する。
【0064】
次いで、電圧測定装置1の起動状態において、本体ユニット3では、発振回路21が駆動信号S1および検波用信号S11の生成を開始して、駆動信号S1をプローブユニット2に、また検波用信号S11を同期検波回路23に出力する。プローブユニット2では、可変容量回路19の駆動回路14が、入力した駆動信号S1を駆動信号S2に変換して容量変化機能体13の各接続点B,D間に印加(出力)する。容量変化機能体13では、各接続点B,D間に印加された駆動信号S2が分圧されて、第1の構成単位31、第2の構成単位32、第3の構成単位33および第4の構成単位34にそれぞれ印加される。
【0065】
この場合、図6に示すように、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Ta(接続点Dを基準として接続点Bの電位が高電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に大きくなる期間)では、各第1電気的要素E1における逆電圧が印加されて(逆バイアスされて)コンデンサとして機能する各第1素子41の各静電容量が徐々に減少する。具体的には、各第1電気的要素E11,E14では、逆バイアスされている各第1素子41bの静電容量が、また各第1電気的要素E12,E13では、逆バイアスされている各第1素子41aの静電容量が徐々に減少する。また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Tb(接続点Dを基準として接続点Bの電位が高電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に小さくなる期間)では、逆バイアスされている各第1素子41、具体的には各第1電気的要素E11,E14では各第1素子41b、また各第1電気的要素E12,E13では各第1素子41aの各静電容量が徐々に増加する。
【0066】
また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Tc(接続点Dを基準として接続点Bの電位が低電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に大きくなる期間)では、逆バイアスされてコンデンサとして機能する各第1素子41、具体的には各第1電気的要素E11,E14では各第1素子41a、また各第1電気的要素E12,E13では各第1素子41bの各静電容量が徐々に減少する。また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Td(接続点Dを基準として接続点Bの電位が低電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に小さくなる期間)では、逆バイアスされている各第1素子、具体的には各第1電気的要素E11,E14では各第1素子41a、また各第1電気的要素E12,E13では各第1素子41bの各静電容量が徐々に増加する。なお、各第1電気的要素E1に含まれている第1素子41a,41bのうちの順電圧が印加されている(順バイアスされている)第1素子41a,41bは等価的に抵抗として機能している。このため、各第1電気的要素E1の静電容量は、駆動信号S2の1周期T1内において、減少および増加を2回繰り返す。
【0067】
このようにして、駆動信号S2の1周期T1内において、各構成単位31〜34に含まれている各第1電気的要素E1の静電容量が増加および減少を2回ずつ繰り返すため、これらの静電容量を合成してなる容量変化機能体13の静電容量C1(接続点A,B間の静電容量)も増加および減少を2回繰り返す。つまり、可変容量回路19は、入力した駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2=2×f1)でその静電容量C1を連続的(本例では周期的)に変化させる動作を実行する。この場合、上記したように、可変容量回路19が電流検出器15を介在させた状態でケース11と検出電極12との間に直列に接続されているため、その静電容量C1と、測定対象体4および検出電極12の間に形成される静電容量C0とは、測定対象体4とケース11との間に直列に接続された状態になっている。このため、静電容量C1が周波数f2(容量変調周波数)で周期的に変化することにより、測定対象体4とケース11との間の静電容量C2(各静電容量C0,C1の直列合成容量)も、図6に示すように、駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2)で変化する。
【0068】
また、可変容量回路19では、上記したように、容量変化機能体13の各第1素子41には同一またはほぼ同一の特性の可変容量ダイオード(または一般的なダイオード)が使用され、この結果、第1の構成単位31および第3の構成単位33の各インピーダンスの積と、第2の構成単位32および第4の構成単位34の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一に設定されている。したがって、ブリッジ回路でもある容量変化機能体13は、ブリッジ回路としての平衡条件を満足しているため、駆動信号S2の電圧成分(駆動信号S1と同じ周波数f1の電圧信号)が各接続点A,C間にほとんど発生しない状態で、その静電容量C1を周期T2で変化させている。また、接続点Aに接続されている各構成単位31,34に含まれている各第1電気的要素E11,E14の組、および接続点Cに接続されている各構成単位32,33に含まれている各第1電気的要素E12,E13の組のうちの少なくとも一方の組に含まれている2つの第1電気的要素E1が共に常時コンデンサとして機能しているため、検出電極12とケース11とは、可変容量回路19を介して交流的に接続されているものの直流的には短絡されない状態に維持されている。
【0069】
また、本体ユニット3の積分器24は、電圧測定装置1の動作開始直後において、ゼロボルトの直流電圧V3を出力するため、電圧生成回路25は、所定電圧のフィードバック電圧V4(一例として、電圧V1よりも低電圧であって、ほぼゼロボルトとする)を生成してプローブユニット2のケース11に印加する。このため、測定対象体4とケース11との間には電位差(V1−V4)が生じた状態になっている。したがって、上記したように、静電容量C1の周期T2での周期的な変化に基づいて測定対象体4とケース11との間の静電容量C2が周期T2で周期的に変化することにより、可変容量回路19には、測定対象体4およびケース11の各電圧V1,V4の電位差(V1−V4)に応じた振幅の電流i(周期T2)が流れる。この場合、電流iは、電位差(V1−V4)が大きいときにはその振幅(電流値)が大きくなり、電位差(V1−V4)が小さいときにはその電流値が小さくなる。すなわち、電流iは、図示はしないが、その周期がT2であって、その振幅が電位差(V1−V4)に応じて変化する交流信号として流れる。プリアンプ16は、この電流iに起因して電流検出器15の両端に発生する電圧V2を増幅することにより、検出信号S3として本体ユニット3に出力する。この場合、検出信号S3には、電流iの周波数f2と同一の周波数成分が主として含まれると共に、駆動信号S2の周波数f1と同一の周波数成分も含まれている。
【0070】
本体ユニット3の制御部CNTでは、フィルタ回路27が、検出信号S3に含まれている周波数f2の信号成分を信号S3aとして選択的に出力し、増幅回路22は、この信号S3aを増幅して検出信号S4を生成して同期検波回路23に出力する。次いで、同期検波回路23は、入力した検出信号S4を検波用信号S11で同期検波することにより、パルス信号S5を生成して、積分器24に出力する。続いて、積分器24は、パルス信号S5を連続的に積分することで直流電圧V3を生成して、電圧生成回路25に出力する。この場合、上記したように、本例では、電圧測定装置1の動作開始後からフィードバック電圧V4が電圧V1に達するまでは、検出信号S3が常に正極性の信号となり、同様にして検出信号S4も正極性の信号となるため、パルス信号S5は、常に正極性のパルス信号となる。この結果、積分器24、つまり制御部CNTから出力される直流電圧V3は徐々にその電圧値が上昇する。したがって、電圧生成回路25で生成されるフィードバック電圧V4も、図7に示すように、その電圧値が徐々に上昇する。この結果、電流検出器15、プリアンプ16、フィルタ回路27、増幅回路22、同期検波回路23、積分器24および電圧生成回路25で構成されるフィードバックループ内で、測定対象体4とケース11との間の電位差(V1−V4)が徐々に低下(減少)するように負のフィードバックが行われる。したがって、電流iは、電流値が徐々に低下(減少)していく。
【0071】
その後、フィードバック電圧V4が電圧V1に達したときには、電位差(V1−V4)がゼロボルトになる。この状態では、測定対象体4とケース11との間の静電容量C2が周期的に変化していたとしても、電流iが流れない。また、電流iが流れないため、電流検出器15において電圧V2が発生しない(電圧V2がゼロボルトになる)結果、プリアンプ16から検出信号S3が出力されなくなる。また、検出信号S3が出力されないため、増幅回路22からも検出信号S4が出力されない状態となり、同期検波回路23からのパルス信号S5の出力も停止し、この結果、積分器24から出力される直流電圧V3の上昇も停止して一定の電圧に維持される。このため、電圧生成回路25から出力されるフィードバック電圧V4の上昇が停止して、図7に示すように、フィードバック電圧V4が一定の電圧に維持される。したがって、電圧計26で表示されている電圧値(フィードバック電圧V4)を継続して観察し、その電圧値の上昇が停止して一定になったとき(すなわち、電流iがゼロアンペアになったときに)、そのときの電圧計26で表示されている電圧値(フィードバック電圧V4)を測定対象体4の電圧V1として測定する。以上により、測定対象体4の電圧V1が完了する。なお、増幅回路22や電圧生成回路25などのゲイン(利得)を上げることにより、電圧測定装置1における上記フィードバックループの応答速度を十分に高速にすることができる。この場合には、変動する電圧V1に対しても、フィードバック電圧V4を十分に追従させることができるため、値が安定するのを待つことなく電圧計26に表示されている電圧値を測定対象体4の電圧V1として測定することができる。
【0072】
このように、この電圧測定装置1では、直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素E1をそれぞれ含む第1の構成単位31、第2の構成単位32、第3の構成単位33および第4の構成単位34をこの順に環状に接続して容量変化機能体13が構成されている。したがって、この容量変化機能体13を用いた可変容量回路19によれば、機械的に可動する構成が存在していないため、数百kHz〜数MHzといった高い周波数での容量変化動作が可能(動作周波数の高速化が可能)で、しかも信頼性の高い可変容量回路を実現することができる。
【0073】
また、この可変容量回路19を使用した電圧測定装置1では、測定対象体4に検出電極12を対向させることによって測定対象体4と検出電極12との間に一定の(固定の)静電容量C0を形成した状態とし、この状態において、可変容量回路19における容量変化機能体13の静電容量C1を周期的に変化させ、この容量変化機能体13の容量変化動作を利用して測定対象体4の電圧V1を測定している。したがって、この電圧測定装置1によれば、機械的に可動する構成を含む可変容量回路を用いた構成と比較して、装置自体の信頼性を十分に向上させつつ、フィードバック電圧V4に対して数百kHz〜数MHzといった高い周波数での制御が可能になる結果、短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。さらに、この電圧測定装置1によれば、検出電極12をケース11の表面に配設し、可変容量回路19をケース11の内部に配設した状態で測定対象体4の電圧V1を測定できるため、可変容量回路19を測定対象体4と直接対向させるための孔をケース11に設ける必要がなくなる。この結果、この孔を介して異物がケース11内に誤って挿入される事態、およびこの誤挿入に起因したケース11内の部品の破損を確実に回避することができるため、電圧測定装置1の信頼性を一層向上させることができる。
【0074】
また、電圧測定装置1では、可変容量回路19の容量変化機能体13が静電容量C1を周期的に変化させているときに、制御部CNTが電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4の電圧を変化させている。したがって、この電圧測定装置1によれば、容量変化機能体13の周期的な容量変化時において容量変化機能体13に発生する(流れる)電流iを検出しつつ、この電流iがゼロアンペアとなったときのこのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定することで、測定対象体4の電圧V1を高い精度で測定することができる。さらに、この電圧測定装置1によれば、制御部CNTが、検出した電流iが減少するように電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4の電圧を変化させることにより、フィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1に短時間で、しかも確実に一致させることができる。この結果、高い測定精度を維持しつつ、短時間で、しかも確実に測定対象体4の電圧V1を測定することができる。特に、この電圧測定装置1によれば、上述したような高い周波数で測定対象体4とケース11との間の静電容量C2を変化させることができるため、電流検出器15〜電圧生成回路25のフィードバックループの応答速度を高速化できる結果、一層短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。このため、この電圧測定装置1によれば、測定対象体4の電圧V1が時間的に変動するときや、測定対象体4の電圧V1が周期的に変化する交流電圧のときにも、その電圧V1を正確に測定することができる。
【0075】
また、この可変容量回路19によれば、上述したように直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素E1をそれぞれ含ませて各構成単位31〜34を構成したことにより、駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数f2で静電容量C1を変化させることができる。したがって、この電圧測定装置1によれば、この可変容量回路19を用いたことにより、電流検出器15〜電圧生成回路25のフィードバックループの応答速度を一層高速化できる結果、より一層短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。特に、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ一端が他端に対して低電位のときに容量体として機能する第1素子、具体的には互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有して構成された第1素子(より具体的にはダイオードで構成された第1素子)で各第1電気的要素E1を構成したことにより、容量変化機能体13、さらには可変容量回路19を大幅に小型化できると共に、簡易、かつ安価に構成することができる。
【0076】
また、容量変化機能体13における第1の構成単位31および第2の構成単位32の接続点Bと、第3の構成単位33および第4の構成単位34の接続点Dとの間に駆動信号S2を印加する駆動回路14を備え、かつ第1の構成単位31および第3の構成単位33の各インピーダンスの積と、第2の構成単位32および第4の構成単位34の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一となるように(ブリッジ回路としての平衡条件を満足するように)可変容量回路19を構成したことにより、各接続点B,D間に駆動信号S2を印加したときに、駆動信号S2の電圧成分(駆動信号S2と同じ周波数f1の電圧信号)が各接続点A,C間にほとんど発生しない状態(発生したとしても、非常にレベルの小さい電圧信号が発生している状態)で、その静電容量C1を周期T2で変化させることができる。したがって、この可変容量回路19を用いた電圧測定装置1によれば、静電容量変化時において可変容量回路19に発生する電流iへの駆動信号S2の影響を排除できる結果、この電流iをより正確にプリアンプ16で検出することができ、これにより、測定対象体4の電圧V1をより正確に測定することができる。
【0077】
また、トランス14aを用いて駆動回路14を構成したことにより、トランス14aという汎用性の高い部品を使用して、容量変化機能体13に駆動信号S2をフローティング状態で簡易に供給(印加)することができる。また、一次巻線14bに対する二次巻線14cの巻数比を増やすことにより、より大きな電圧値の駆動信号S2を容量変化機能体13に供給することができる。このため、容量変化機能体13の容量変調範囲(静電容量C1の変動範囲)をより広くすることができる結果、測定対象体4の電圧V1を高感度で測定することができる。
【0078】
また、この電圧測定装置1によれば、検出電極12とケース11との間に可変容量回路19と直列にインピーダンス素子で構成された電流検出器15を配設すると共に、この電流検出器15に電流iが流れたときに発生する電圧V2が減少するように制御部CNTが電圧生成回路25に対してフィードバック電圧V4(ケース11の電圧)を変化させる構成を採用したことにより、インピーダンス素子のインピーダンス値を変えることで電流iが流れたときに発生する電圧V2の値を任意に変更することができる。このため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体4の電圧V1を測定することができる。
【0079】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記した電圧測定装置1では、I(比例)制御でフィードバック電圧V4を制御しているが、さらにフィードバックループ内に積分回路および微分回路(いずれも図示せず)のうちの少なくとも1つを追加することにより、PI(比例・積分)制御、PD(比例・微分)制御およびPID(比例・積分・微分)制御のいずれかでフィードバック電圧V4を制御することもできる。このPID制御を採用することにより、電圧V1への追従性を高めることができるため、特に、測定対象体4の電圧V1が変化するときにおいて、その電圧V1を精度良く測定することができる。
【0080】
また、上記した可変容量回路19の容量変化機能体13では、図2〜図5に示すように、第1電気的要素E11〜E14をそれぞれ含むようにしてすべての構成単位31〜34を構成しているが、これに限定されるものではなく、同各図に示す容量変化機能体13において、第1〜第4の構成単位31〜34のうちの第1の構成単位31と第4の構成単位34との組、および第2の構成単位32と第3の構成単位33との組のうちの一方の組の各構成単位に含まれている第1電気的要素を、交流信号の通過を許容する第2電気的要素で置き換えて、容量変化機能体を構成することもできる。この場合、第2電気的要素は、コンデンサ、コイル、抵抗および共振体のうちの少なくとも1つを含んで構成される。一例として、図8に示す容量変化機能体13Aは、図2に示す容量変化機能体13における第2の構成単位32および第3の構成単位33の各第1電気的要素E12,E13を第2電気的要素E22,E23(電気的特性の同じコンデンサ62,63)でそれぞれ置き換えて構成された第2の構成単位32Aおよび第3の構成単位33Aを含んで構成されている。なお、コンデンサ62,63に代えて、電気的特性(インダクタンス値)の同じ一対のコイル62a,63aを使用してもよいし、電気的特性(抵抗値)の同じ一対の抵抗62b,63bを使用してもよいし、または電気的特性(周波数−インピーダンス特性)の同じ一対の共振体62c,63cを使用してもよい。この場合、共振体62c,63cについては、駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数(容量変調周波数)f2のときにインピーダンスが最小となり、かつそれ以外の周波数のときに十分に高いインピーダンスとなる電気的特性の共振体を使用する。具体的には、セラミック共振器、水晶振動子、およびコイルとコンデンサとで構成されたLC共振回路(直列共振回路)などの各種共振体を用いることができる。また、この共振体62c,63cについては、直流電流の通過を許容する構成でもよい。
【0081】
この容量変化機能体13Aにおいても、機械的に可動する構成が存在していないため、高い周波数での容量変化動作が可能で、しかも信頼性の高い可変容量回路を実現することができる。また、容量変化機能体13Aでも、容量変化機能体13と同様にして、少なくとも隣接する一対の構成単位が第1電気的要素E1を含むため、各接続点B,D間に駆動信号S2が印加されたときに、各接続点A,C間の静電容量C1が駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数f2で変化する。このため、この容量変化機能体13Aを使用した電圧測定装置1(図1参照)でも、電圧測定装置1と同様にして、装置自体の信頼性を十分に向上させつつ、フィードバック電圧V4に対して数百kHz〜数MHzといった高い周波数での制御が可能(動作周波数の高速化が可能)になる結果、短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。また、この容量変化機能体13Aにおいても、接続点Aに接続されている各構成単位31,34、または接続点Cに接続されている各構成単位32,33が第1電気的要素(常時コンデンサとして機能する電気的要素)を含んで構成されている。このため、検出電極12とケース11とを、可変容量回路19を介して交流的に接続されているものの直流的には短絡されない状態に維持することができる。また、上記した電気的特性の共振体62c,63cを使用することにより、容量変化機能体13Aの容量変調周波数(周波数f2)において、各共振体62c,63c(つまり共振体62c,63cで構成された各構成単位32A,33A)のインピーダンスを低くすることができる結果、容量変化機能体13Aに十分な交流電流(電流i)を流すことができる。このため、容量変化機能体13Aを使用した電圧測定装置1における電圧検出の精度を十分に高めることができる。
【0082】
また、図2〜図5に示す容量変化機能体13において、第1〜第4の構成単位31〜34のうちの第1の構成単位31と第2の構成単位32との組、および第3の構成単位33と第4の構成単位34との組のうちの一方の組の各構成単位に含まれている第1電気的要素E1を、直流信号の通過を阻止しつつ交流信号の通過を許容する第3電気的要素で置き換えて、容量変化機能体を構成することもできる。この場合、第3電気的要素は、コンデンサおよび共振体のうちの少なくとも1つを含んで構成される。一例として、図9に示す容量変化機能体13Bは、図2に示す容量変化機能体13における第3の構成単位33および第4の構成単位34の各第1電気的要素E13,E14を第3電気的要素E33,E34(一例として電気的特性の同じコンデンサ63,64)でそれぞれ置き換えて構成された第3の構成単位33Bおよび第4の構成単位34Aを含んで構成されている。なお、コンデンサ63,64に代えて、電気的特性(周波数−インピーダンス特性)の同じ一対の共振体63d,64aを使用してもよい。この場合、共振体63d,64aについては、駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数(容量変調周波数)f2のときにインピーダンスが最小となり、かつそれ以外の周波数のときに十分に高いインピーダンスとなる電気的特性の共振体を使用する。具体的には、セラミック共振器、水晶振動子、およびコイルとコンデンサとで構成されたLC共振回路(直列共振回路)などの各種共振体を用いることができる。また、この共振体63d,64aについては、直流電流の通過を阻止する構成とする。
【0083】
この容量変化機能体13Bにおいても、機械的に可動する構成が存在していないため、高い周波数での容量変化動作が可能で、しかも信頼性の高い可変容量回路を実現することができる。また、容量変化機能体13Bでも、容量変化機能体13と同様にして、少なくとも隣接する一対の構成単位が第1電気的要素E1を含むため、各接続点B,D間に駆動信号S2が印加されたときに、各接続点A,C間の静電容量C1が駆動信号S2の周波数f1の2倍の周波数f2で変化する。このため、この容量変化機能体13Bを使用した電圧測定装置1(図1参照)でも、電圧測定装置1と同様にして、装置自体の信頼性を十分に向上させつつ、フィードバック電圧V4に対して数百kHz〜数MHzといった高い周波数での制御が可能(動作周波数の高速化が可能)になる結果、短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。また、この容量変化機能体13Bにおいては、接続点Aに接続されている各構成単位31,34の一方が第1電気的要素(常時コンデンサとして機能する電気的要素)を含むと共に、他方がコンデンサまたは直流電流の通過阻止機能を有する共振体を含んで構成され、また接続点Cに接続されている各構成単位32,33の一方が第1電気的要素(常時コンデンサとして機能する電気的要素)を含むと共に、他方がコンデンサまたは直流電流の通過阻止機能を有する共振体を含んで構成されている。このため、検出電極12とケース11とを、可変容量回路19を介して交流的に接続されているものの直流的には短絡されない状態に維持することができる。また、上記した電気的特性の共振体63d,64aを使用することにより、容量変化機能体13Bの容量変調周波数(周波数f2)において、各共振体63d,64a(つまり共振体63d,64aで構成された各構成単位33B,34A)のインピーダンスを低くすることができる結果、容量変化機能体13Bに十分な交流電流(電流i)を流すことができる。このため、容量変化機能体13Bを使用した電圧測定装置1における電圧検出の精度を十分に高めることができる。
【0084】
なお、図8,9に示す容量変化機能体13A,13Bについては、上記の構成に限定されるものではなく、図示はしないが、例えば、第1電気的要素E11,E12,E14を可変容量ダイオードに代えて、一般的なダイオード(シリコンダイオード)で構成してもよいし、またカソード端子同士が接続されて直列接続された一対のダイオード(可変容量ダイオードやシリコンダイオード)で構成することもできる。
【0085】
また、図4に示す容量変化機能体13では、各構成単位31〜34を一対の第1素子51(具体的には一般的なダイオード)でそれぞれ構成しているが、各構成単位31〜34を構成する一対のダイオードは、アノード端子同士が接続されることにより、互いに逆向きに直列接続されている。すなわち、各構成単位31〜34は、P型半導体とN型半導体とが、N−P−P−Nというように配列されて構成されている。このため、図4に示す容量変化機能体13において各構成単位31〜34を構成する一対の第1素子51(ダイオード)を1つのNPN型バイポーラトランジスタTR1〜TR4で置き換えることにより、各構成単位31〜34に含まれている各第1電気的要素E11〜E14を1つのトランジスタでそれぞれ構成して、図10に示す容量変化機能体13Cを構成することもできる。この容量変化機能体13Cでは、各トランジスタTR1〜TR4が、各々の入力端子(コレクタ端子およびエミッタ端子の一方)および出力端子(コレクタ端子およびエミッタ端子の他方)がそれぞれ接続されて(それぞれ接続点となって)、各構成単位31〜34で構成される環状経路内に配設されている。なお、各トランジスタTR1〜TR4の制御端子(ベース端子)は未接続となる(接続点とはならない)。
【0086】
また、図4に示す容量変化機能体13では、各接続点A,B,C,Dを挟んで、構成単位31,34、構成単位31,32、構成単位32,33、および構成単位33,34の各第1電気的要素E1に含まれている1つのダイオード同士が互いに隣接している(具体的には、各ダイオード同士が互いに逆向きに直列接続されている)。このように、逆向きに直列接続された一対のダイオードで第1電気的要素E1が構成され、かつ少なくとも2つの隣接する構成単位がこの第1電気的要素E1を含んでいる容量変化機能体13では、この2つの構成単位間の接続点を挟んで、各第1電気的要素E1に含まれている1つのダイオード同士が互いに逆向きに直列接続された構成となる。このため、この容量変化機能体13では、この接続点を介して、各ダイオードを構成する2つのP型半導体と2つのN型半導体とがP−N−N−Pという順序で配列されている。具体的には、図4の容量変化機能体13では、第4の構成単位34の第1素子51bと第1の構成単位31の第1素子51aとの組、第1の構成単位31の第1素子51bと第2の構成単位32の第1素子51aとの組、第2の構成単位32の第1素子51bと第3の構成単位33の第1素子51aとの組、および第3の構成単位33の第1素子51bと第4の構成単位34の第1素子51aとの組において、各第1素子51a,51bを構成する2つのダイオードが互いに逆向きに直列接続される結果、各接続点A,B,C,Dを挟んで2つのP型半導体と2つのN型半導体とが、P−N−N−Pという順序で配列されている。このため、各組の2つのダイオードを1つのPNP型バイポーラトランジスタTR5〜TR8で置き換えることにより、図11に示す容量変化機能体13Dを構成することもできる。この場合、各第1電気的要素E1は、1つのトランジスタの一部と、他の1つのトランジスタの一部とで構成されることになる。この容量変化機能体13Dでも、容量変化機能体13Cと同様にして、各トランジスタTR5〜TR8が、各々の入力端子(コレクタ端子およびエミッタ端子の一方)および出力端子(コレクタ端子およびエミッタ端子の他方)がそれぞれ接続されて(それぞれ接続点となって)、各構成単位31〜34で構成される環状経路内に配設されている。他方、各トランジスタTR5〜TR8の制御端子(ベース端子)は、容量変化機能体13Cとは異なり、接続点A,B,C,Dとして使用される。
【0087】
また、カソード端子同士が接続されて互いに直列に接続された一対のダイオードで各構成単位31〜34の各第1電気的要素E11〜E14が構成されている図5に示す容量変化機能体13についても、図4に示す容量変化機能体13と同様にして、各第1電気的要素E11〜E14を構成する一対のダイオードをPNP型バイポーラトランジスタTR5〜TR8で置き換えることにより、図12に示す容量変化機能体13Eを構成することができ、また、上記した各ダイオードの組(各接続点A,B,C,Dを挟んで隣接する一対のダイオードでそれぞれ構成される4つの組)をNPN型バイポーラトランジスタTR1〜TR4で置き換えることにより、図13に示す容量変化機能体13Fを構成することができる。また、トランジスタとして、バイポーラトランジスタを使用する例について説明したが、NPN型バイポーラトランジスタに代えて同型のMOSFET(電界効果型トランジスタ)を使用してもよいし、またはPNP型バイポーラトランジスタに代えて同型のMOSFET(電界効果型トランジスタ)を使用してもよいのは勿論である。この場合、MOSFETについては、その入力端子はドレイン端子およびソース端子の一方となり、出力端子はドレイン端子およびソース端子の他方となる。また、図11,13に示す構成においては、制御端子としてのゲート端子が接続点A,B,C,Dとして使用される。このようにトランジスタTR1〜TR4(またはTR5〜TR8)を用いて第1電気的要素E1を構成することにより、より少ない部品点数で、簡易、かつ安価に容量変化機能体13C〜13Fを構成することができる。
【0088】
また、図14に示す電圧測定装置1Aのように、電流検出器15を配設せずに、容量変化機能体13,13A,・・,13F(特に区別しないときには、これらを容量変化機能体13ともいう)の両端間電圧V5をプリアンプ16で検出して検出信号S3として出力プローブユニット2Aを使用し、両端間電圧V5に比例して変化する検出信号S3に基づいて制御部CNTが電圧生成回路25を制御して、測定対象体4の電圧V1を測定する構成を採用することもできる。ここで、容量変化機能体13の両端間電圧V5とは、容量変化機能体13における検出電極12側の端部(接続点A)と、容量変化機能体13におけるケース11側の端部(接続点C)との間に発生する電圧をいう。この場合、プリアンプ16における一対の入力端子のうちの一方の入力端子は、図14に示すように、コンデンサ17を介して容量変化機能体13における検出電極12側の端部に接続され、他方の入力端子は、容量変化機能体13におけるケース11側の端部に接続されている。なお、この構成以外の構成については、電圧測定装置1Aは電圧測定装置1と同一のため、図14では、電圧測定装置1の各構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。この電圧測定装置1Aにおいても、上記の容量変化機能体13を含む可変容量回路19を使用したことにより、電圧測定装置1と同様にして、電流検出器15〜電圧生成回路25のフィードバックループの応答速度を高速化できる結果、短時間で測定対象体4の電圧V1を測定することができると共に、測定対象体4の電圧V1が時間的に変動するときや、測定対象体4の電圧V1が周期的に変化する交流電圧のときにも、その電圧V1を正確に測定することができる。また、電圧測定装置1Aによれば、信頼性の高い可変容量回路19を使用したことにより、装置自体の信頼性を一層向上させることができる。
【0089】
また、電圧測定装置1,1Aでは、同期検波回路23を用いて検出信号S4に含まれている周波数f2を含む所定の帯域の周波数成分を抽出する構成を採用しているが、これに限定されるものではなく、図示はしないが、同期検波方式に代えて、公知の包絡線検波方式を採用することもできる。
【0090】
また、電圧測定装置1では、可変容量回路19とケース11との間に電流検出器15を配設しているが、図15に示す電圧測定装置1Bのように、検出電極12Aと可変容量回路19との間に電流検出器15を配設することもできる。また、電圧測定装置1では、アナログ信号で作動するフィルタ回路27、増幅回路22、同期検波回路23および積分器24を用いて電圧生成回路25をアナログ的にフィードバック制御しているが、電圧測定装置1Bのように、検出信号S3をディジタルデータに変換することによって電圧生成回路25をディジタル的にフィードバック制御することもできる。
【0091】
以下、この電圧測定装置1Bについて、この電圧測定装置1Bを用いて構成した電力測定装置71と共に、図15を参照して説明する。なお、この電圧測定装置1Bの構成要素のうち、電圧測定装置1と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0092】
電力測定装置71は、直流および交流の電力を測定可能に構成されており、電圧測定用のクランプ式プローブユニット2B、電流測定用のクランプ式プローブユニット5、および本体ユニット3Aを備えて構成されている。この場合、電力測定装置71では、プローブユニット2Bと本体ユニット3Aに含まれている後述の構成要素とで、測定対象体4(一例として電線。以下、「電線4」ともいう)の電圧V1を測定する電圧測定装置1Bが構成されている。また、プローブユニット5と本体ユニット3Aに含まれている後述の構成要素とで、電線4に流れている電流I1を測定する電流測定装置81が構成されている。電力測定装置71は、電圧測定装置1Bによって測定された電圧V1の電圧値と電流測定装置81によって測定された電流I1の電流値とに基づいて、電線4に供給されている電力W1を測定する。
【0093】
電圧測定装置1Bは、プローブユニット2Bと、本体ユニット3A内に配設されている発振回路21、A/D変換回路72、CPU73、D/A変換回路74、電圧生成回路25および電圧計26Aとを備えて構成されている。この場合、プローブユニット2Bは、ケース11、検出電極12A、可変容量回路19、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bを備えている。検出電極12Aは、各々が樹脂材などで形成された絶縁被膜RE1によって全体的に被覆されると共に各々の一端側がケース11において回動自在に連結され、これによって各々の他端側同士が接離自在に構成された一対の弧状電極P1,P2で構成されている。この構成により、検出電極12Aは、電線4をクランプすることが可能となっている。また、可変容量回路19、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bは樹脂材などで形成された絶縁被膜RE2で被覆されたケース11内に配設されている。また、可変容量回路19および電流検出器15は、互いに直列に接続された状態で、検出電極12Aとケース11との間に配設されている。また、電圧測定装置1Bでは、電圧測定装置1とは異なり、電流検出器15が検出電極12Aに接続されて、可変容量回路19がケース11に接続されている。また、電流検出器15を検出電極12A側に配設したことによってプリアンプ16を介して検出電極12Aが直流的に参照電位側に接続されるのを回避するため、電圧V2を検出するプリアンプ16の各入力端子と電流検出器15の各端部との間に直流遮断用のコンデンサ18a,18bがそれぞれ配設されている。なお、電圧測定装置1と同様にして、可変容量回路19および電流検出器15の順序でこれらを検出電極12Aとケース11との間に直列に接続することもでき、この構成ではプリアンプ16の各入力端子と電流検出器15の各端部との間へのコンデンサ18a,18bの配設が不要となる。
【0094】
本体ユニット3A内に配設されたA/D変換回路72は、CPU73およびD/A変換回路74と共に、本発明における制御部CNT1を構成し、アナログ信号としての検出信号S3をディジタルデータD1に変換してCPU73に出力する。CPU73は、入力したディジタルデータD1から例えば駆動信号S1の周波数f1の2倍の周波数f2を含む所定の周波数帯域の成分についてのデータを抽出する検波処理(フィルタリング処理)と、この検波処理によって抽出されたデータを積分する積分処理とを実行する。また、CPU73は、この積分処理によって得られた積分データD2をD/A変換回路74に出力する。また、CPU73は、後述するように、電流測定装置81の一部としても機能して、A/D変換回路75から出力されたディジタルデータD4に基づいて、測定対象体4に流れている電流I1の電流値を算出(測定)する電流算出処理も実行する。さらに、CPU73は、算出した電流I1の電流値と、電圧計26Aから出力されたフィードバック電圧V4の電圧値(ディジタルデータD3で示される値)とに基づいて、電線4に供給されている電力W1を算出(測定)する電力算出処理も実行する。D/A変換回路74は、積分データD2をアナログ信号としての直流電圧V3に変換して電圧生成回路25に出力する。電圧計26Aは、フィードバック電圧V4を測定して、その電圧値を表示すると共に、測定したフィードバック電圧V4の電圧値をディジタルデータD3に変換してCPU73に出力する。
【0095】
電流測定装置81は、図15に示すように、プローブユニット5と、本体ユニット3A内に配設されているA/D変換回路75、CPU73および表示装置76とを備えて構成されている。この場合、プローブユニット5は、クランプした電線4に流れる電流I1の電流値を非接触で検出すると共に、電流値に応じて振幅が変化する検出信号S6をA/D変換回路75に出力する。A/D変換回路75は、入力した検出信号S6をディジタルデータD4に変換してCPU73に出力する。CPU73は、上述した電流算出処理を実行することにより、ディジタルデータD4に基づいて電流I1の電流値を算出して表示装置76に表示させる。
【0096】
このように構成された電力測定装置71では、電圧測定装置1Bが、制御部CNT1を構成するA/D変換回路72、CPU73およびD/A変換回路74が検出信号S3をディジタルデータD1に変換すると共にそのディジタルデータD1に基づいて電圧生成回路25をディジタル的にフィードバック制御する以外は、電圧測定装置1の制御部CNTの各構成要素と同様にして電圧生成回路25をフィードバック制御して、フィードバック電圧V4を電圧V1に一致させる。
【0097】
他方、電流測定装置81は、A/D変換回路75がプローブユニット5で検出された検出信号S6をディジタルデータD4に変換してCPU73に出力し、CPU73がこのディジタルデータD4に基づいて電流算出処理を実行することによって電線4に流れている電流I1の電流値を算出する。
【0098】
また、CPU73は、電圧計26Aから入力したディジタルデータD3で示されるフィードバック電圧V4の電圧値(つまり電圧V1の電圧値)と、電流算出処理によって算出した電流I1の電流値とに基づいて電力算出処理を実行することにより、電線4に供給されている電力W1を算出(測定)して、表示装置76に表示させる。これにより、電力W1の測定が完了する。この場合、CPU73は、電力W1および電流I1の電流値と共に、電圧V1の電圧値を表示装置76に表示させる。なお、これらの電流値や電圧値を表示装置76に表示させる構成に代えて、ストレージ装置(図示せず)に記憶させたり、データ伝送装置(図示せず)を介して外部に伝送する構成を採用することもできる。
【0099】
このように、この電圧測定装置1Bでは、測定対象体4としての電線4の電圧V1を測定する際に、可変容量回路19に流れている電流iを示す検出信号S3をディジタルデータD1に変換し、このディジタルデータD1に基づいて電圧生成回路25をディジタル的にフィードバック制御する。したがって、制御部CNT1(A/D変換回路72、CPU73およびD/A変換回路74)をCPUやDSPを用いて簡易に構成することができる。また、電圧測定装置1Bでは、絶縁被膜RE1によって全体的に被覆された一対の弧状電極P1,P2で検出電極12Aが構成され、かつ可変容量回路19、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bが絶縁被膜RE2で被覆されたケース11内に配設されている。したがって、検出電極12A、可変容量回路19、電流検出器15、プリアンプ16および一対のコンデンサ18a,18bが外部に露出していないため、これらの回路および部品と、装置外部の異物との接触を確実に回避することができる。また、機械的に可動する構成を含まない信頼性の高い可変容量回路19を使用している。したがって、電圧測定装置1Bの信頼性を十分に向上させることができると共に、この電圧測定装置1Bを用いた電力測定装置71についても、信頼性を十分に向上させることができる。
【0100】
また、ディジタル的にフィードバック制御する電圧測定装置1Bを用いた電力測定装置71について説明したが、図16に示すように、アナログ的にフィードバック制御する電圧測定装置1Cを用いて電力測定装置91を構成することもできる。以下、この電力測定装置91について説明する。なお、電圧測定装置1と同一の構成要素、および電力測定装置71と同一の構成要素については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0101】
電力測定装置91は、直流および交流の電力を測定可能に構成されており、図16に示すように、プローブユニット2B,5、および本体ユニット3Bを備えて構成されている。この場合、電力測定装置91では、プローブユニット2Bと本体ユニット3Bに含まれている後述の構成要素とで、測定対象体4(一例として電線4)の電圧V1を測定する電圧測定装置1Cが構成されている。また、プローブユニット5と本体ユニット3Bに含まれている後述の構成要素とで、電線4に流れている電流I1を測定する電流測定装置81が構成されている。電力測定装置91は、電圧測定装置1Cによって測定された電圧V1の電圧値と電流測定装置81によって測定された電流I1の電流値とに基づいて、電線4に供給されている電力W1を測定する。
【0102】
電圧測定装置1Cは、プローブユニット2Bと、本体ユニット3B内に配設されている発振回路21、制御部CNT、電圧生成回路25および電圧計26Aとを備えて構成されている。この場合、制御部CNTは、アナログ信号としての検出信号S3に基づいて直流電圧V3を生成して電圧生成回路25に出力することにより、アナログ的にフィードバック電圧V4をフィードバック制御して、フィードバック電圧V4を電圧V1に一致させる。電流測定装置81は、プローブユニット5と、本体ユニット3A内に配設されているA/D変換回路75、CPU73および表示装置76とを備えて構成されている。この場合、CPU73は、電流算出処理を実行することにより、A/D変換回路75から入力したディジタルデータD4に基づいて電流I1の電流値を算出して表示装置76に表示させる。また、CPU73は、電圧計26Aから入力したディジタルデータD3に基づいてフィードバック電圧V4(電圧V1)の電圧値を表示装置76に表示させる。さらに、CPU73は、電圧計26Aから入力したディジタルデータD3で示されるフィードバック電圧V4の電圧値(つまり電圧V1の電圧値)と、電流算出処理によって算出した電流I1の電流値とに基づいて電力算出処理を実行することにより、電線4に供給されている電力W1を算出(測定)して、表示装置76に表示させる。
【0103】
この電力測定装置91においても、電圧測定装置1Bと同様にして電圧測定装置1Cの信頼性を十分に向上させることができる結果、この電圧測定装置1Cを用いた電力測定装置91自体の信頼性を十分に向上させることができる。
【0104】
また、上記した電圧測定装置1,1B,1Cでは、抵抗を用いて電流検出器15を構成しているが、インピーダンス素子であれば、抵抗に限らず、コンデンサやコイルで構成することもできるし、これらを組み合わせて構成することもできる。このようにインピーダンス素子を用いることにより、インピーダンス素子のインピーダンス値を変えることにより、電流iが流れたときに発生する電圧V2の電圧値を任意に変更することができる。このため、測定対象体4の電圧の高低に応じて電流検出器15に発生する電圧V2を適切な値に設定できる結果、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体4の電圧を正確に測定することができる。
【0105】
また、インピーダンス素子に代えて、セラミック共振器や水晶振動子などの各種共振体を含む共振回路、およびコイルとコンデンサとで構成されたLC共振回路(直列共振回路または並列共振回路)のいずれかを用いることもできる。これらの共振回路のうちの共振体を含む共振回路およびLC並列共振回路は、特定の周波数(共振周波数)においてインピーダンスが最大になるという特性を有している。このため、一例として図17に示すように、コイル15aとコンデンサ15bとで構成されたLC並列共振回路を用いて電流検出器15を構成し、この特定の周波数を容量変化機能体13の容量変調周波数と一致させることにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときでも、電流検出器15の両端に発生する電圧V2に含まれている電圧成分のうちの電流iに起因した電圧成分をこのノイズに起因した電圧成分に対して十分に大きくすることができるため、ノイズを抑制することができる。
【0106】
他方、LC直列共振回路は、特定の周波数(共振周波数)において全体としてのインピーダンスが最小(ゼロ)になるという特性を有している。この場合、LC直列共振回路を構成するコンデンサ(コイルも同様)の両端電圧は最大となる。このため、一例として図18に示すように、コイル15aとコンデンサ15bとで構成されたLC直列共振回路を用いて電流検出器15を構成し、この特定の周波数を容量変調周波数と一致させると共に、コンデンサ15b(またはコイル15a)の両端電圧を電圧V2としてプリアンプ16が検出する構成を採用することにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときであっても、上記したLC並列共振回路と同様にして電流検出器15の両端に発生するこのノイズに起因した電圧の発生を抑制することができる。したがって、これらの共振回路で電流検出器15を構成することにより、共振回路の共振時におけるインピーダンス値を変えることで電流iが流れたときに共振回路に発生する電圧の値を任意に変更することができるため、低電圧から高電圧までの広い電圧範囲に亘って測定対象体4の電圧V1を測定することができる。しかも、共振回路の共振周波数で可変容量回路19の静電容量C1を変化させることで、共振回路に流れる電流iをより大きな電圧として検出することができるため、このノイズに起因した電圧信号の検出信号S3への混入を低減できる結果、電圧測定装置1,1B,1Cの耐ノイズ性能を高めることができる。したがって、誤動作の少ない状態で測定対象体4の電圧V1を測定することができる。
【0107】
また、抵抗等のインピーダンス素子や共振回路を用いて電流を電圧に変換して検出する構成に代えて、電流を直接検出する構成を採用することもできる。この構成においては、電磁誘導型の電流検出器(CT形電流検出器)を用いたり、ホール素子、磁気ブリッジ、フラックスゲートセンサ、MI(磁気インピーダンス)センサ、MR(磁気抵抗効果)センサ、GMR(巨大磁気抵抗効果)センサおよびTMR(トンネル磁気抵抗効果)センサなどの磁気センサを用いて構成することができる。
【0108】
また、電圧測定装置1Bでは、プリアンプ16で生成される検出信号S3を、A/D変換回路72に直接入力する例について説明したが、フィルタ回路27と同じ特性のフィルタ回路(図示せず)を介して検出信号S3をA/D変換回路72に入力することもできる。この場合、フィルタ回路は、プローブユニット2Bおよび本体ユニット3Aの少なくとも一方に配設する。このように構成することで、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときでも、このノイズの検出信号S3への混入を抑制することができる。したがって、電圧測定装置1Bの耐ノイズ性能を高めることができる。また、電圧測定装置1,1A,1Cにおいても、本体ユニット3にフィルタ回路27を配設する構成に代えて、プローブユニット2側に配設する構成を採用することもできる。
【0109】
また、電圧測定装置1B,1Cを電力測定装置71,91に適用する例について説明したが、電圧測定装置1,1A,1B,1Cは、レーザープリンタなどの複写機における感光ドラムの表面電位を検出する表面電位計として利用することができる。また、壁内に配設されている電気配線の位置を検出する探知機として利用することもできる。これらの機器に本発明に係る電圧測定装置を用いることにより、これらの機器の信頼性(耐久性や耐候性を含む)を十分に向上させることができる。さらに、プリント基板に形成されているプリントパターンの断線等を検査する基板検査装置にも本発明を適用することができる。
【0110】
また、電圧測定装置1,1A,1B,1Cでは、フィードバック電圧V4が電圧V1に達して一定になったとき、つまり、電流iがゼロアンペアになったときや両端間電圧V5がゼロボルトになったときのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定する構成を採用することにより、電圧V1を高精度で測定しているが、測定精度的に許容される場合、電流iや両端間電圧V5が所定値(例えば数ミリアンペアや数ミリボルト)以下となったときのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定する構成を採用することもできる。また、電位差(V1−V4)が所定値(例えば数百ミリボルト)以下に達したときのフィードバック電圧V4を測定対象体4の電圧V1として測定する構成を採用することもできる。この構成を採用することにより、測定対象体4の電圧V1を許容できる精度で、より短時間に測定することができる。
【0111】
また、上記した各容量変化機能体13の各構成単位については、図2〜図5、および図8〜図13に示すように、第1電気的要素E1(一例として互いに逆向きに直列接続された2つのダイオード(図10〜図13の場合には等価的に2つのダイオード))、第2電気的要素E22,E23、および第3電気的要素E33,E34のいずれかで構成した例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図2に示す第1の構成単位31を例に挙げて、第1電気的要素E11を含む構成単位に関して説明すると、1つの第1電気的要素E11と共にこの第1電気的要素E11以外の構成要素を含んで第1の構成単位31を構成することもできる。具体的には、接続点Aと第1素子41aとの間、接続点Bと第1素子41bとの間の少なくとも1つに、抵抗、コンデンサ、コイルおよび他のダイオードの少なくとも1つを配設することもできる。また、各第1素子41a,41b以外の構成要素を含んで第1電気的要素E1を構成することもできる。具体的には、各第1素子41a,41b間に、抵抗、コンデンサおよびコイルの少なくとも1つを配設して、第1電気的要素E1を構成することもできる。また、第1素子41a,41bの各々、および第1素子41a,41b全体の少なくとも1つに対してコンデンサを並列に接続することもできる。
【0112】
また、例えば、図8に示す構成単位32Aを例に挙げて、第2電気的要素E22(E23)を含む構成単位に関して説明すると、接続点Bと第2電気的要素E22との間、および接続点Cと第2電気的要素E22との間の少なくとも1つに、抵抗、コンデンサ、およびコイルのうちの少なくとも1つを配設することもできる。また、第2電気的要素E22に対してコンデンサを並列に接続することもできる。また、例えば、図9に示す構成単位33Bを例に挙げて、第3電気的要素E33(E34)を含む構成単位に関して説明すると、接続点Cと第3電気的要素E33との間、および接続点Dと第3電気的要素E33との間の少なくとも1つに、抵抗、コンデンサ、およびコイルの少なくとも1つを配設することもできる。また、第3電気的要素E33に対して他のコンデンサを並列に接続することもできる。
【0113】
また、可変容量ダイオードも一般的なダイオードも基本的な構成が同じであるため、例えば図2に示す容量変化機能体13において、各第1電気的要素E1を構成する第1素子41a,41bとしての可変容量ダイオードのうちの一方を一般的なダイオードを使用して構成するなど、可変容量ダイオードと一般的なダイオードとを混在して使用することもできる。ただし、可変容量ダイオードと一般的なダイオードとは、逆バイアスが印加されたときの静電容量が異なるため、ブリッジ回路の平衡条件を満足し、かつ接続点A,Cを基準としてその両側に配設されている各構成単位31,32と各構成単位34,33とが線対称となるか、または接続点B,Dを基準としてその両側に配設されている各構成単位31,34と各構成単位32,33とが線対称となるように構成するのが好ましい。
【0114】
また、上記の例では、容量変化機能体を構成する全ての電気的要素について、各電気的要素を構成する一対の第1素子としてのダイオード(可変容量ダイオード、一般的なダイオード、およびトランジスタ内に等価的に存在するダイオード)の接続態様を、アノード端子同士を接続する態様およびカソード端子同士を接続する態様のいずれか一方に統一しているが、アノード端子同士を接続して構成した(図2の接続態様。以下、第1接続態様ともいう)電気的要素と、カソード端子同士を接続して構成した(図3の接続態様。以下、第2接続態様ともいう)電気的要素とを混在させて容量変化機能体を構成することもできる。
【0115】
この場合、各電気的要素を構成する一対の第1素子(ダイオード)では、容量変化機能体13,13A,13C,13Eが各接続点B,D間への駆動信号S2の印加によって静電容量C1を変化させている状態において、一方が等価的に抵抗として機能する状態と等価的にコンデンサとして機能する状態とを周期的に繰り返し、他方は一方とは常に逆の状態(一方が抵抗のときにはコンデンサとして機能し、一方がコンデンサのときには抵抗として機能する状態)になるように状態を変化させることを考慮して、一対の第1素子を含む各構成単位での接続態様を第1接続態様および第2接続態様のいずれにするのかを決定するのが好ましい。
【0116】
具体的には、全ての構成単位に一対の第1素子を含ませて構成した場合、第1の構成単位および第2の構成単位に含まれている2つの第1素子についてアノード端子(一端)およびカソード端子(他端)のうちの一方同士を接続したときには、第3の構成単位および第4の構成単位に含まれている2つの第1素子についてはアノード端子(一端)およびカソード端子(他端)のうちの他方同士を接続するのが好ましい。すなわち、第1の構成単位および第2の構成単位において第1の接続態様としたときには、第3の構成単位および第4の構成単位においては第2の接続態様とし、逆に、第1の構成単位および第2の構成単位において第2の接続態様としたときには、第3の構成単位および第4の構成単位においては第1の接続態様とするのが好ましい。
【0117】
具体的には、図2,3に示す容量変化機能体13のように全ての構成単位E11〜E14が一対の第1素子41a,41bを含む構成の場合、例えば、図19に示す容量変化機能体13Gのように、第1の構成単位E11および第2の構成単位E12において第1の接続態様(アノード端子同士を接続する態様)としたときには、第3の構成単位E13および第4の構成単位E14においては第2の接続態様(カソード端子同士を接続する態様)とする。また、図示はしないが、第1の構成単位E11および第2の構成単位E12において第2の接続態様としたときには、第3の構成単位E13および第4の構成単位E14においては第1の接続態様とする。
【0118】
また、全ての構成単位が一対の第1素子を含んで構成されている場合、第1の構成単位および第3の構成単位に含まれている2つの第1素子についてアノード端子(一端)およびカソード端子(他端)のうちの一方同士を接続し、第2の構成単位および第4の構成単位に含まれている2つの第1素子についてアノード端子(一端)およびカソード端子(他端)のうちの他方同士を接続することもできる。すなわち、第1の構成単位および第3の構成単位において第1の接続態様とし、第2の構成単位および第4の構成単位において第2の接続態様とすることもできるし、第1の構成単位および第3の構成単位において第2の接続態様とし、第2の構成単位および第4の構成単位において第1の接続態様とすることもできる。
【0119】
具体的には、図2,3に示す容量変化機能体13のように全ての構成単位E11〜E14が一対の第1素子41a,41bを含む構成の場合、例えば、図20に示す容量変化機能体13Hのように、第1の構成単位E11および第3の構成単位E13において第1の接続態様(アノード端子同士を接続する態様)としたときには、第2の構成単位E12および第4の構成単位E14においては第2の接続態様(カソード端子同士を接続する態様)とする。また、図示はしないが、第1の構成単位E11および第3の構成単位E13において第2の接続態様としたときには、第2の構成単位E12および第4の構成単位E14においては第1の接続態様とする。
【0120】
また、第1の構成単位と第4の構成単位との組、および第2の構成単位と第3の構成単位との組のうちの一方の組の各構成単位が一対の第1素子を含んで構成されている場合、一方の組の各構成単位のうちの一方に含まれている2つの第1素子についてアノード端子(一端)およびカソード端子(他端)のうちの一方同士を接続したときには、この各構成単位のうちの他方に含まれている2つの第1素子についてはアノード端子(一端)およびカソード端子(他端)のうちの他方同士を接続するのが好ましい。
【0121】
具体的には、図8に示す容量変化機能体13Aのように第1の構成単位E11と第4の構成単位E14との組が一対の第1素子41a,41bを含む構成の場合、例えば、図21に示す容量変化機能体13Jのように、一方の第1の構成単位E11において第1の接続態様(アノード端子同士を接続する態様)としたときには、他方の第4の構成単位E14においては第2の接続態様(カソード端子同士を接続する態様)とする。また、図示はしないが、第1の構成単位E11において第2の接続態様としたときには、第4の構成単位E14においては第1の接続態様とする。
【0122】
同様にして、図示はしないが、図8に示す容量変化機能体13Aとは逆に、第2の構成単位E12と第3の構成単位E13との組が一対の第1素子41a,41bを含み、第1の構成単位E11と第4の構成単位E14との組が第2電気的要素E22,E23(例えば電気的特性の同じコンデンサ62,63)を含む容量変化機能体では、一方の第2の構成単位E12において第1の接続態様とし、他方の第3の構成単位E13において第2の接続態様とすることができる。また、一方の第2の構成単位E12において第2の接続態様とし、他方の第3の構成単位E13において第1の接続態様とすることもできる。
【0123】
以上のように、第1接続態様の電気的要素と第2接続態様の電気的要素とを混在させて容量変化機能体を構成する場合、上記のいずれかの構成を採用することにより、容量変化動作中における容量変化機能体中のコンデンサとして機能する第1素子41を、対向する一対の接続点A,Cを基準としたときに左右対称(線対称)の位置に配置することができるため、接続点A,C間の電位差を一層低減することができる。したがって、上記のいずれかの構成を採用するのがより好ましい。
【0124】
次に、実験例を挙げて説明する。この場合、第1素子としてバラクタダイオード(BB147。フィリップス社製)を使用した。また、駆動信号S2として、周波数が2.25MHzで、振幅が16Vの正弦波電圧信号を使用した。この実験によれば、図22,23に示すように商用周波数で変化している測定対象体4の電圧V1を、図1に示す電圧測定装置1を用いて測定する場合において、容量変化機能体として図2に示す容量変化機能体13を使用したときには、図22に示すように、接続点A,C間に発生する信号(容量変調周波数と同じ周波数の信号)Sacの振幅が3.2Vであるのに対し、容量変化機能体として図19に示す容量変化機能体13Gを使用したときには、接続点A,C間に発生する信号Sacの振幅を図23に示すように約半分(約1.7V)にまで低減させることができる。なお、容量変調周波数は商用周波数と比較して極めて高い。このため、図22,23では、信号Sacを模式的に記載している。また、同図では、信号Sacの振幅についての変化の様子の理解を容易にするために、信号Sacと共にその包絡線も記載している。
【0125】
また、トランスおよびフォトカプラなどの絶縁用電子部品と、差動型の演算増幅器とを含んでプリアンプ16を構成する例について上記したが、図24〜図28に示すように、トランスおよびフォトカプラなどの絶縁用電子部品(同図では一例としてトランス61)を電流検出器15に含めることで、容量変化機能体13に直接接続されない絶縁用電子部品の二次側の回路をグランド電位(基準電位)を基準とした回路となるように容易に構成することができる。したがって、プリアンプ16をシングルエンド型の演算増幅器で構成することもできる。この構成によれば、差動型の演算増幅器と比較してシングルエンド型の演算増幅器が安価なため、装置全体のコストの低減を図ることができる。また、トランス61などの絶縁用電子部品の使用により、プリアンプ16に入力される電圧V2を電流iに対して電気的に絶縁でき、かつ電圧V2のレベルを任意に設定できるため、測定しようとする測定対象体4の電圧V1が極めて高い電圧であったとしても、電圧V2の信号レベルをプリアンプ16の入力仕様に容易に適合させることができる。
【0126】
最初に、図24に示す構成について説明する。この構成では、電流検出器15は、トランス61および抵抗62を備えて構成されている。この場合、トランス61の一次巻線61aは、その一端側が可変容量回路19の接続点Cに接続され、かつ他端側がケース11に接続されて、可変容量回路19と直列に接続された状態で検出電極12とケース11(参照電位)との間に配設されている。また、トランス61の二次巻線61bは、その一端側がプリアンプ16の入力端子に接続され、他端側がグランド電位に接続されている。また、二次巻線61bには、抵抗62が並列に接続されている。この構成により、電流検出器15は、可変容量回路19に流れる電流iを検出すると共に、電流iに比例した電圧V2を抵抗62の両端間に発生させる。また、プリアンプ16は、グランド電位を基準とした信号として電圧V2を入力して増幅することにより、検出信号S3に変換して出力する。
【0127】
次に、図25に示す構成について説明する。なお、図24に示す構成と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この構成では、図24の構成における抵抗62に代えて、コイル63aとコンデンサ63bとで構成される並列共振回路63が二次巻線61bに並列に接続されている。この構成によれば、上記した図17に示す構成と同様にして、並列共振回路63の共振周波数を容量変化機能体13の容量変調周波数と一致させることにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときでも、そのノイズを抑制して、電流検出器15の両端に発生する電圧V2に含まれている電圧成分のうちの電流iに起因する電圧成分をこのノイズに起因する電圧成分に対して十分に大きくする(S/N比を大きくする)ことができる。したがって、この構成によれば、本体ユニット3のフィルタ回路27の配設を省略することができる。
【0128】
次に、図26に示す構成について説明する。なお、図24に示す構成と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この構成では、図24の構成における抵抗62に代えて、コイル64aとコンデンサ64bとで構成される直列共振回路64が二次巻線61bに並列に接続されている。また、プリアンプ16には、コイル64aとコンデンサ64bとの接続点において発生する電圧が電圧V2として出力される。この構成によれば、上記した図18に示す構成と同様にして、直列共振回路64の共振周波数を容量変調周波数と一致させることにより、容量変調周波数とは異なる周波数のノイズが電流iに重畳しているときであっても、上記したLC並列共振回路と同様にして電流検出器15の両端に発生するこのノイズに起因した電圧の発生を抑制することができる。また、図27に示すように、二次巻線61bの一端側とプリアンプ16の入力端子との間にコイル64aとコンデンサ64bとで構成される直列共振回路64を直列に接続し、かつ二次巻線61bの他端側をグランド電位に接続する構成を採用することもできる。この構成においても、図26に示す電流検出器15と同様の作用効果を奏することができる。
【0129】
また、図25〜図27に示す構成では、コイルとコンデンサとで構成されたいわゆるLC共振回路を使用しているが、LC共振回路に代えて、水晶振動子やセラミック振動子などの共振体を使用することもできる。一例として、図28に示す電流検出器15は、図27に示す電流検出器15のコイル64aおよびコンデンサ64bに代えて共振体65aを使用して構成された共振回路65を備えている。同図に示す電流検出器15においても、図26,27に示す電流検出器15と同様にして、二次巻線61bに共振回路65が直列に接続されているため、図26,27に示す電流検出器15と同様の作用効果を奏することができる。
【0130】
また、検出信号S4を検波用信号S11で同期検波して、その振幅が可変容量回路19を流れる電流iの値に比例して変化し、かつその極性が可変容量回路19を流れる電流iの向きに応じて変化するパルス信号S5を生成する同期検波回路23と、積分器24とを備えた構成について上記したが、他の構成を採用して電圧測定装置を実現することもできる。例えば、同期検波回路23に代えて、例えば包絡線検波方式によって検出信号S4を検波することにより、その振幅(電圧値)が電流iの振幅(電流値)に比例して変化するアナログ信号(直流電圧V3)を生成する検波回路を使用する構成を採用することもできる。この構成によれば、積分器24の配設を不要にすることができる。さらに、上記した容量変化機能体13(または、13A〜13H,13J)については、集積回路化して1つのパッケージに収納する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】電圧測定装置1のブロック図である。
【図2】電圧測定装置1の容量変化機能体13の回路図である。
【図3】電圧測定装置1の容量変化機能体13の他の回路図である。
【図4】電圧測定装置1の容量変化機能体13の他の回路図である。
【図5】電圧測定装置1の容量変化機能体13の他の回路図である。
【図6】容量変化機能体13の動作を説明するための駆動信号S2と静電容量C2との関係図である。
【図7】フィードバック電圧V4の時間変化を示す特性図である。
【図8】容量変化機能体13Aの回路図である。
【図9】容量変化機能体13Bの回路図である。
【図10】容量変化機能体13Cの回路図である。
【図11】容量変化機能体13Dの回路図である。
【図12】容量変化機能体13Eの回路図である。
【図13】容量変化機能体13Fの回路図である。
【図14】電圧測定装置1Aのブロック図である。
【図15】電圧測定装置1Bおよびこれを用いた電力測定装置71のブロック図である。
【図16】電圧測定装置1Cおよびこれを用いた電力測定装置91のブロック図である。
【図17】電流検出器15の構成例を示す回路図である。
【図18】電流検出器15の他の構成例を示す回路図である。
【図19】容量変化機能体13Gの回路図である。
【図20】容量変化機能体13Hの回路図である。
【図21】容量変化機能体13Jの回路図である。
【図22】測定対象体4の電圧V1および容量変化機能体13を用いた電圧測定装置1における信号Sacの各波形図である。
【図23】測定対象体4の電圧V1および容量変化機能体13Gを用いた電圧測定装置1における信号Sacの各波形図である。
【図24】電流検出器15およびプリアンプ16の他の構成例を示す回路図である。
【図25】電流検出器15の他の構成例を示す回路図である。
【図26】電流検出器15の他の構成例を示す回路図である。
【図27】電流検出器15の他の構成例を示す回路図である。
【図28】電流検出器15の他の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0132】
1,1A,1B,1C 電圧測定装置
3,3A,3B 本体ユニット
4 測定対象体
11 ケース
12 検出電極
13,13A〜13H,13J 容量変化機能体
14 駆動回路
14a トランス
14c 二次巻線
15 電流検出器
19 可変容量回路
25 電圧生成回路
31,32,32A,33,33A,33B,34,34A 構成単位
71,91 電力測定装置
CNT,CNT1 制御部
E11〜E14 第1電気的要素
E22,E23 第2電気的要素
E33,E34 第3電気的要素
i 電流
V1 測定対象体の電圧
V4 フィードバック電圧(参照電位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含む第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体を備えている可変容量回路。
【請求項2】
第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体を備え、前記第1の構成単位と前記第4の構成単位との組、および前記第2の構成単位と前記第3の構成単位との組のうちの一方の組の各構成単位が直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含むと共に、他の組の各構成単位が交流信号の通過を許容する第2電気的要素をそれぞれ含んでいる可変容量回路。
【請求項3】
前記各第2電気的要素は、コンデンサ、コイル、抵抗および共振体のうちの少なくとも1つを含んで構成されている請求項2記載の可変容量回路。
【請求項4】
第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位および第4の構成単位がこの順に環状に接続されて構成された容量変化機能体を備え、前記第1の構成単位と前記第2の構成単位との組、および前記第3の構成単位と前記第4の構成単位との組のうちの一方の組の各構成単位が直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化する第1電気的要素をそれぞれ含むと共に、他の組の各構成単位が直流信号の通過を阻止しつつ交流信号の通過を許容する第3電気的要素をそれぞれ含んでいる可変容量回路。
【請求項5】
前記各第3電気的要素は、コンデンサおよび共振体のうちの少なくとも一方を含んで構成されている請求項4記載の可変容量回路。
【請求項6】
前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成されている請求項1から5のいずれかに記載の可変容量回路。
【請求項7】
前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成され、
前記第1の構成単位および前記第2の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの一方同士が接続され、
前記第3の構成単位および前記第4の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの他方同士が接続されている請求項1記載の可変容量回路。
【請求項8】
前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成され、
前記第1の構成単位および前記第3の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの一方同士が接続され、
前記第2の構成単位および前記第4の構成単位に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの他方同士が接続されている請求項1記載の可変容量回路。
【請求項9】
前記各第1電気的要素は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ当該一端が当該他端に対して低電位のときに容量体として機能する2つの第1素子を逆向きに直列接続して構成され、
前記第1電気的要素を含む前記一方の組の前記各構成単位のうちの一方に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの一方同士が接続され、当該各構成単位のうちの他方に含まれている前記2つの第1素子は前記一端および前記他端のうちの他方同士が接続されている請求項2または3記載の可変容量回路。
【請求項10】
前記各第1素子は、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有している請求項6から9のいずれかに記載の可変容量回路。
【請求項11】
前記各第1素子は、前記P型半導体および前記N型半導体で形成されたダイオードで構成されている請求項10記載の可変容量回路。
【請求項12】
前記逆向きに直列接続された2つの第1素子に含まれている前記各P型半導体および前記各N型半導体は、入力端子および出力端子を接続点として前記4つの構成単位で構成される環状回路内に配設された1つのトランジスタで構成されている請求項10記載の可変容量回路。
【請求項13】
前記第1電気的要素を含んで互いに隣接する2つの前記構成単位に含まれている前記各第1素子のうちの当該2つの構成単位の接続点を挟んで互いに逆向きで隣接する2つの当該第1素子に含まれている前記各P型半導体および前記各N型半導体は、1つのトランジスタで構成されている請求項10記載の可変容量回路。
【請求項14】
前記第1の構成単位および前記第3の構成単位の各インピーダンスの積と、前記第2の構成単位および前記第4の構成単位の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一に規定されている請求項1から13のいずれかに記載の可変容量回路。
【請求項15】
前記第1の構成単位および前記第2の構成単位の接続点と、前記第3の構成単位および前記第4の構成単位の接続点との間に交流電圧を印加して前記容量変化機能体の静電容量を変化させる駆動回路を含んでいる請求項1から14のいずれかに記載の可変容量回路。
【請求項16】
前記駆動回路は、前記交流電圧を二次巻線に発生させるトランスを備えている請求項15の可変容量回路。
【請求項17】
測定対象体の電圧を測定可能に構成された電圧測定装置であって、
前記測定対象体に対向可能な検出電極と、請求項15または16記載の可変容量回路とを備え、
前記可変容量回路は、前記第1の構成単位および前記第4の構成単位の接続点が前記検出電極側に位置すると共に前記第2の構成単位および前記第3の構成単位の接続点が参照電位側に位置するように前記検出電極と前記参照電位との間に接続されている電圧測定装置。
【請求項18】
前記参照電位を生成する電圧生成回路と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記可変容量回路が前記静電容量を変化させているときに、前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる請求項17記載の電圧測定装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記静電容量の変化時において、前記可変容量回路を介して前記検出電極と前記参照電位との間に流れる電流、または前記可変容量回路における前記検出電極側の端部と前記参照電位側の端部との間に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる請求項18記載の電圧測定装置。
【請求項20】
前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設されたインピーダンス素子を備え、
前記制御部は、前記インピーダンス素子に前記電流が流れたときに当該インピーダンス素子に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる請求項19記載の電圧測定装置。
【請求項21】
前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設された共振回路を備え、
前記制御部は、前記共振回路に前記電流が流れたときに当該共振回路に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる請求項19記載の電圧測定装置。
【請求項22】
前記検出電極と前記参照電位との間に前記可変容量回路と直列に配設された一次巻線および当該一次巻線と磁気的に結合する二次巻線を有するトランスを備え、
前記制御部は、前記二次巻線に発生する電圧が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる請求項19記載の電圧測定装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記電流の値、または前記検出電極側の端部と前記参照電位側の端部との間に発生する前記電圧の値に応じて電圧値が変化する検出信号を入力してディジタルデータに変換するA/D変換回路を備え、当該ディジタルデータに基づいて前記検出信号の電圧値が減少するように前記電圧生成回路に対して前記参照電位の電圧を変化させる請求項19から22のいずれかに記載の電圧測定装置。
【請求項24】
測定対象体に流れている電流を測定する電流測定装置と、
前記測定対象体の電圧を測定する請求項17から23のいずれかに記載の電圧測定装置とを備え、
前記電流測定装置によって測定された前記電流と前記電圧測定装置によって測定された前記電圧とに基づいて電力を測定する電力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−195137(P2007−195137A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231491(P2006−231491)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】