説明

可変容量回路

【課題】可変容量ダイオード2への印加逆制御電圧変化対その容量変化の関係を線形にする補正手段に負性インピーダンス変換回路3を用い、容量変化範囲を狭くせず、複雑な補正手段を用いずに済む可変容量回路を提供する。
【解決手段】非接地側入力端子1aと接地側入力端子1b間に接続され、可制御電圧形成装置6の可変制御電圧が供給される可変容量ダイオード2と、入力端と出力端と接地端を有し、入力端が記非接地側入力端子1aに、出力端が容量素子5を介して接地側入力端子1bに接続された負性インピーダンス変換回路3を備え、容量素子5の容量を非接地側入力端子1aと接地側入力端子1b間に形成される分布容量に略等しい値に選び、可制御電圧形成装置6の調整によって可変制御電圧を線形変化させるに伴い可変容量ダイオード2の容量を対数的に変化させるように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容量回路に係り、特に、可変容量ダイオードが示す制御電圧対容量変化特性を、負性インピーダンス変換回路を用いることによって制御電圧の線形変化に対して容量が対数変化になるように補正したり、制御電圧の線形変化に対して容量が線形変化になるように補正することができる可変容量回路に関する。
【背景技術】
【0002】
可変容量ダイオードにおける容量変化特性は、可変容量ダイオードの種類によってその程度に差があるが、一般に、印加される逆制御電圧が比較的低い範囲において、逆制御電圧と容量との関係を求めると、逆制御電圧の線形変化に対する容量の対数変化は一定の傾斜を保った比較的線形に近いものになるのに対し、印加される逆制御電圧が比較的高い範囲において、逆制御電圧と容量との関係を求めると、逆制御電圧の線形変化に対する容量の対数変化はその傾斜が順次ゆるやかになって行き、逆制御電圧が最も高い範囲になると、ほぼ水平状態に近づくという特性を有している。
【0003】
ところで、LC同調回路に可変容量ダイオードを用い、その可変容量ダイオードの容量変化を利用する場合は、逆制御電圧の線形変化に対して容量が対数変化することが好ましく、また、アクティブフィルタに可変容量ダイオードを用い、その可変容量ダイオードの容量変化を利用する場合は、逆制御電圧の線形変化に対して容量が線形変化することが好ましい。この理由は、LC同調回路においては、そのLC共振周波数の変化が可変容量ダイオードの容量値の平方根に逆比例するためであるのに対し、アクティブフィルタにおいては、その共振周波数がの変化が単に可変容量ダイオードの容量値の変化に逆比例するためである。
【0004】
可変容量ダイオードをLC同調回路の可変容量素子、または、アクティブフィルタの可変容量素子のいずれに用いる場合であっても、可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧の線形変化に対して、可変容量ダイオードの容量変化特性が可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧の線形変化に対して線形になるように補正する必要がある。
【0005】
ここで、LC同調回路に可変容量ダイオードを用いるとき、可変容量ダイオードの容量変化に対する従来から用いられている簡単な線形化手段は、可変容量ダイオードに直列に補正用キャパシタを接続する補正手段がある。この補正手段を用いれば、可変容量ダイオードと補正用キャパシタとの総合容量値は、可変容量ダイオードの最小容量値側では補正用キャパシタによる影響は殆どなく、総合容量値が逆制御電圧の線形変化に対して略線形に変化するが、可変容量ダイオードの容量値が大きくなると、総合容量値が補正用キャパシタによる影響を受け、その容量値が大きくなればなるほど総合容量値が低下するようになるので、可変容量ダイオードの容量値の大きな領域における容量変化の水平方向への屈曲の割合がゆるやかになり、結果的に総合容量値が線形の変化に近づくようになる。
【0006】
また、アクティブフィルタに可変容量ダイオードを用いるとき、可変容量ダイオードに直列に補正用キャパシタを接続する補正手段を用いても、それは逆制御電圧の線形変化に対して可変容量ダイオードと補正用キャパシタとの総合容量値の対数変化を略直線にする補正手段であるので、逆制御電圧の線形変化に対して可変容量ダイオードと補正用キャパシタとの総合容量値を線形変化にするものに使用することができない。このため、ここでは、可変容量ダイオードに印加する逆制御電圧を半導体素子を用いた非線形回路を通すことによって非線形逆制御電圧に変換し、この非線形逆制御電圧を可変容量ダイオードに印加してその容量値を制御することにより、入力される逆制御電圧に対する可変容量ダイオードの容量変化特性を線形にする補正手段を用いている。
【特許文献1】使用する特許文献はなし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知の可変容量ダイオードを用いたLC同調回路において、可変容量ダイオードに逆制御電圧を印加したときに、その逆制御電圧の線形変化に対して可変容量ダイオードの容量値を対数変化させるための補正手段としては、可変容量ダイオードに直列に補正用キャパシタを接続する補正手段が用いられているが、この補正手段を用いると、総合容量値の変化領域は、補正用キャパシタを用いない場合の変化領域に比べて狭くなってしまう。
【0008】
また、可変容量ダイオードを用いたアクティブフィルタにおいて、可変容量ダイオードに逆制御電圧を印加したときに、その逆制御電圧の線形変化に対して可変容量ダイオードの容量値を線形変化させるための補正手段としては、可変容量ダイオードに印加する逆制御電圧を半導体素子を用いた非線形回路を通すことによって非線形逆制御電圧に変換し、この非線形逆制御電圧を可変容量ダイオードに印加してその容量値を制御することにより、入力される逆制御電圧に対する可変容量ダイオードの容量変化特性を線形にする補正手段を用いているが、この半導体を用いた非線形回路は、半導体のカットオフ領域の特性を、導通領域の特性を用いて補正しようとするものであって、その温度特性を考慮した非線形回路を構成する必要があり、回路構成は自ずと複雑にならざるを得なかった。
【0009】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、その目的は、可変容量ダイオードにおける印加逆制御電圧変化対容量変化の関係を線形にするための補正手段に負性インピーダンス変換回路を用い、容量変化範囲を狭くせず、複雑な補正手段を用いずに済む可変容量回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明による可変容量回路は、非接地側入力端子と接地側入力端子間に接続され、可制御電圧形成装置から出力される可変制御電圧が供給される可変容量ダイオードと、入力端と出力端と接地端とを有する負性インピーダンス変換回路であって、入力端が前記非接地側入力端子に接続され、出力端が容量素子を介して接地側入力端子に接続された負性インピーダンス変換回路とを備え、容量素子の容量値を非接地側入力端子と接地側入力端子間に形成される分布容量値に略等しい値になるように選び、それにより可制御電圧形成装置の調整により可制御電圧形成装置から出力される可変制御電圧を線形変化させるに伴って可変容量ダイオードの容量値が対数的に変化するように形成されている第1の構成手段を具備する。
【0011】
また、前記目的を達成するために、本発明による可変容量回路は、非接地側入力端子と接地側入力端子間に接続され、可制御電圧形成装置から出力される第1の可変制御電圧が供給される第1の可変容量ダイオードと、入力端と出力端と接地端とを有する負性インピーダンス変換回路であって、入力端が非接地側入力端子に接続され、出力端が可制御電圧形成装置から出力される第2の可変制御電圧が供給される第2の可変容量ダイオード容量素子を介して接地側入力端子に接続された負性インピーダンス変換回路とを備え、第1の可変制御電圧及び第2の可変制御電圧は、可制御電圧形成装置の調整により互いに逆方向に増減し、第1及び第2の可変制御電圧の各容量値を互いに逆方向に変化させるように構成され、それにより可制御電圧形成装置から出力される第1及び第2の可変制御電圧を線形変化させるに伴って第1及び第2の可変容量ダイオードの総合容量値が正負容量領域を線形に変化するように形成されている第2の構成手段を具備する。
【0012】
さらに、前記目的を達成するために、本発明による可変容量回路は、前記第2の構成において、非接地側入力端子と接地側入力端子間に、第1の可変容量ダイオードに並列に固定容量素子を付加接続し、固定容量素子の容量値を、第1及び第2の可変制御電圧を線形変化させるに伴って第1及び第2の可変容量ダイオードの総合容量値が正容量領域だけを線形に変化するような値に選んでいる第3の構成手段を具備する。
【発明の効果】
【0013】
以上、詳細に述べたように、本発明による可変容量回路は、一対の入力端子間に、1つまたは2つの可変容量ダイオードと可制御電圧形成装置と負性インピーダンス変換回路とを接続し、可制御電圧形成装置の調整による一対の入力端子間に形成される容量を、片対数目盛グラフ上に記録したときに略直線状になるように、または、両線形目盛グラフ上に記録したときに略直線状になるように補正しているもので、容量変化範囲を狭くすることなく、しかも、補正手段に複雑な回路構成を用いるこなく実現することができ、LC同調回路における同調周波数の調整またはアクティブフィルタのカットオフ周波数の調整を行うときに用いて好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここで、本発明による可変容量回路の構成原理について述べる。
【0015】
まず、本発明の構成原理の第1のものは、可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧の線形変化とその逆制御電圧の印加による当該可変容量ダイオードの容量の対数変化との関係を略直線状態、すなわち線形になるように補正したものである。
【0016】
ここで、図3(a)、(b)は、可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧の変化状態に対応した可変容量ダイオードの容量の変化状態を示す片対数目盛グラフに記録した特性曲線であって、横軸方向は等電圧間隔で目盛った逆制御電圧、縦軸方向は対数容量で目盛った可変容量ダイオードの容量をそれぞれ示し、実曲線(a)は通常の逆制御電圧変化に対する容量変化を示す変化特性であり、点直線(b)は本発明による逆制御電圧変化に対する容量変化を補正した変化特性である。
【0017】
図3の実曲線(a)に示されるように、通常、可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧を最小電圧値から順次増大させた場合、最小電圧値に近い領域においては、逆制御電圧の増加に対する可変容量ダイオードの容量の変化特性が一定の傾斜の直線に沿って減少するようになっているが、中間電圧値から最大電圧値に近づくにつれて逆制御電圧の増加に対する可変容量ダイオードの容量の変化特性の減少を示す傾斜が一定傾斜値から徐々にゆるやかな傾斜値になり、最終的にその傾斜が水平に近づく曲線になっている。
【0018】
この場合、可変容量ダイオードの容量の変化特性の傾斜が水平状態に近づいたことは、その時点の可変容量回路の容量が可変容量ダイオードを含む入力回路部分の分布容量に近づいたことを示すもので、そのために逆制御電圧を変化させても当該容量の変化割合は極めて少なくなる。そこで、本発明による可変容量回路は、負性インピーダンス変換回路を用いてこの分布容量を打ち消すような補正を行うことにより、図3の点直線(b)に示されるように片対数目盛グラフ上に略直線状の特性曲線が得られるようにしたものである。
【0019】
図1は、かかる分布容量を打ち消すような補正を行い、略直線状の特性曲線を実現することができる本発明の一つの実施の形態を示す回路構成図であって、一部の構成部分が回路ブロックで示されているものである。
【0020】
図1において、1aは非接地側入力端子、1bは接地側入力端子、2は可変容量ダイオード、3は負性インピーダンス変換回路(NCC)、4は入力結合容量、5は負荷容量、6は可制御電圧形成装置、7はバッファ抵抗である。
【0021】
そして、可変容量ダイオード2は、カソードが入力結合容量4を通して非接地側入力端子1aに、アノードが非接地側入力端子1bにそれぞれ接続され、可制御電圧形成装置6とバッファ抵抗7の直列回路も可変容量ダイオード2に並列接続される。負性インピーダンス変換回路3は、入力端と出力端と接地端を有し、その入力端が入力結合容量4を通して非接地側入力端子1aに接続され、その出力端が負荷容量5を通して接地端とともに接地側入力端子1bに接続される。この場合、負荷容量5は、その容量値を非接地側入力端子1aと接地側入力端子1b間に形成される分布容量値C0 (図2に図示の特性曲線の場合6pF)に略等しくなるように選んでいる。
【0022】
このような構成にすれば、負性インピーダンス変換回路3の出力端に接続された負荷容量5の容量値を非接地側入力端子1aと接地側入力端子1b間に形成される分布容量値C0 に略等しく選んでいるので、負性インピーダンス変換回路3の出力端から負性インピーダンス変換回路3側を見た負性容量値が−C0 になり、非接地側入力端子1aと接地側入力端子1b間に形成される分布容量値C0 が打ち消される。このため、非接地側入力端子1aと接地側入力端子1b間に形成される可変容量ダイオード2を含む総合容量値は、可制御電圧形成装置6の調整によって可変容量ダイオード2に供給される逆制御電圧を線形に順次増大させた場合、最小電圧値に近い領域では総合容量値が負性容量値−C0 の影響を殆ど受けず、総合容量値の減少が極めて少ないが、中間電圧値から最大電圧値の領域に近づくに従って総合容量値が負性容量値−C0 の影響を受け、総合容量値の減少が順次大きくなり、その結果、総合容量値は、図3の点直線(b)に示すように、ほぼ直線状の変化特性になる。
【0023】
次に、本発明の構成原理の第2のものは、第1及び第2の可変容量ダイオードにそれぞれ印加される逆制御電圧の線形変化とそれらの逆制御電圧の印加による当該第1及び第2の可変容量ダイオードの各容量の逆方向への対数変化とを表わす特性曲線の関係が総合容量値零点に対して点対称状態を示すように、一側の特性曲線を総合容量値零点に対して180°回転させて他側の特性曲線とし、全体として総合容量値零点を通って正負容量値方向に直線状態に伸びる総合容量変化特性を示すように補正したものである。そして、この構成原理における一例としては、総合容量値零点の位置を、第1及び第2の可変容量ダイオードへの逆制御電圧がそれぞれ6Vである点に設定している。
【0024】
ここで、図4(a1 )、(a2 )、(b)は、第1及び第2の可変容量ダイオードにそれぞれ印加される逆制御電圧の変化状態に対応した第1及び第2の可変容量ダイオードの容量の変化状態を、両線形目盛グラフに記録した特性曲線であって、横軸方向は等電圧間隔で目盛った互いに逆方向に向う逆制御電圧、縦軸方向は等容量間隔で目盛った第1及び第2の可変容量ダイオードの総合容量をそれぞれ示し、実曲線(a1 )は第1の可変容量ダイオードの通常の逆制御電圧変化に対する容量変化を示す特性曲線、実曲線(a2 )は第2の可変容量ダイオードの通常の逆制御電圧変化に対する容量変化を示す特性曲線、点実線(b)は本発明による両方向の逆制御電圧変化に対応した総合容量の変化が直線状になるように補正した特性曲線である。
【0025】
図4の各実曲線(a1 )、(a2 )に示されるように、第1及び第2の可変容量ダイオードにそれぞれ印加される逆制御電圧を最小電圧値から順次増大させると、逆制御電圧の最小電圧値に近い領域においては逆制御電圧の増加に対する第1及び第2の可変容量ダイオードの容量変化を示す特性曲線が直線的に減少するが、中間電圧値から最大電圧値に近づくに従って逆制御電圧の増加に対する第1及び第2の可変容量ダイオードの容量変化を示す特性曲線の減少傾斜が徐々にゆるやかになり、最終的にその傾斜が水平に近づく特性曲線になる。そこで、本発明によって補正した特性曲線は、第1及び第2の可変容量ダイオードの容量変化を示す同形状の特性曲線を、負性インピーダンス変換回路を用いて組み合わせ、直線状の容量変化を示す特性曲線、すなわち、図4(b)に示されるように両線形目盛グラフ上に略直線の特性曲線が得られるようにしたものである。
【0026】
図2は、かかる補正を行った特性曲線を実現することができる本発明の実施の形態に係る回路構成図であって、一部の構成部分が回路ブロックで示されているものである。
【0027】
図2において、11aは非接地側入力端子、11bは接地側入力端子、12は第1の可変容量ダイオード、13は第2の可変容量ダイオード、14は負性インピーダンス変換回路(NCC)、15は入力結合容量、16a、16bは可制御電圧形成装置、17a、17bはバッファ抵抗、18は出力結合容量、19はバイパス容量である。
【0028】
そして、第1の可変容量ダイオード12は、カソードが入力結合容量15を通して非接地側入力端子11aに、アノードが非接地側入力端子11bにそれぞれ接続され、第1の可変容量ダイオード12に並列にそれぞれ一方の可制御電圧形成装置16aとバッファ抵抗17aの直列回路が接続される。第2の可変容量ダイオード13は、カソードが出力結合容量18を通して負性インピーダンス変換回路14の出力端に接続され、アノードがバイパス容量19を通して接地側入力端子11bに接続されるとともに、一方の可制御電圧形成装置16aとバッファ抵抗17aとの接続点に接続される。また、第2の可変容量ダイオード13のカソードと接地側入力端子11bとの間には他方の可制御電圧形成装置16bとバッファ抵抗17bの直列回路が接続される。
【0029】
この場合、第1の可変容量ダイオード12と第2の可変容量ダイオード13は、一方の可制御電圧形成装置16aの調整によって、第1の可変容量ダイオード12の容量が増大または減少したときに、第2の可変容量ダイオード13の容量が差動的に減少または増大するように、第1及び第2の可変容量ダイオード12、13の接続極性を選ぶとともに、第1及び第2の可変容量ダイオード12、13にそれぞれ接続される一方の可制御電圧形成装置16a及び他方の可制御電圧形成装置16bの接続状態が設定される。
【0030】
このような構成にすれば、負性インピーダンス変換回路3の入力端側に第1の可変容量ダイオード12が、負性インピーダンス変換回路3の出力端側に第2の可変容量ダイオード13がそれぞれ接続され、一方の可制御電圧形成装置16aを調整することにより、第1の可変容量ダイオード12の容量変化方向と第2の可変容量ダイオード13の容量変化方向とが互いに逆になり、そのときに第2の可変容量ダイオード13の容量が負性インピーダンス変換回路3の入力端から見たとき負性容量になって第1の可変容量ダイオード12の容量に加算されるので、非接地側入力端子11aと接地側入力端子11b間に形成される第1及び第2の可変容量ダイオード12、13を含む総合容量は、図4の点直線(b)に示すようにほぼ直線状の特性曲線になる。
【0031】
そして、図4のグラフに示した実曲線(a1 )、(a2 )及び点直線(b)から判るように、一方の可制御電圧形成装置16aを調整することにより、第1の可変容量ダイオード12に印加される逆制御電圧が約2Vであるときの容量が400pF(P点参照)になり、第2の可変容量ダイオード13に印加される逆制御電圧が約10Vであるときの容量が−100pF(Q点参照)になるとすれば、P点における容量(400pF)とQ点における容量(−100pF)との総合容量は300pF(R点参照)になる。同じように、一方の可制御電圧形成装置16aの調整により、第1の可変容量ダイオード12に印加される逆制御電圧及び第2の可変容量ダイオード13に印加される逆制御電圧が相互に逆方向に変化した場合においても、それらの総合容量は点直線(b)に示す直線上を移動するようになる。
【0032】
ところで、図2に図示された可変容量回路は、図4の点直線(b)の下半分に示すように負性容量を示す領域が存在しており、現実の可変容量回路としては、負性容量を示す領域が存在しない方が使い勝手がよい。
【0033】
図5は、かかる負性容量を示す領域が存在しない可変容量回路を実現した本発明の一つの実施の形態を示す回路構成図であって、同様に一部の構成部分が回路ブロックで示されているものである。
【0034】
図5において、20は第1の可変容量ダイオード12に並列接続された付加容量であって、その他、図2に図示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付け、それら構成要素の説明は省略する。
【0035】
図5に示すように、この可変容量回路は、第1の可変容量ダイオード12に並列に付加容量20を接続したもので、付加容量20の容量によって図4の点直線(b)における負性容量領域を実質的になくすようにしたものである。すなわち、図4(c)に図示の直線は、点直線(b)の全体を付加容量20の容量分だけ正容量方向にシフトさせたもので、図4の例においては、付加容量20の容量を約500pFに選んでいる。このような構成にすれば、この可変容量回路が可制御電圧形成装置16aの調整によって負性容量を生じることはなく、使い勝手のよい可変容量回路を得ることができる。
【0036】
ところで、前述のような可変容量回路に用いられる負性インピーダンス変換回路は、可変容量回路の使用周波数信号帯によってその構成を異にするもので、この可変容量回路をアクティブフィルタ等のように比較的低い周波数信号帯において使用する場合には、オペアンプを用いた負性インピーダンス変換回路が用いるのが好適である。
【0037】
図6は、オペアンプを用いた負性インピーダンス変換回路の構成の一例を示すもので、211 は非接地側入力端子、212 は接地側入力端子、22はオペアンプ、23、24、25はインピーダンスである。そして、オペアンプ22は、非反転入力端(+)と出力端との間にインピーダンス23が接続され、反転入力端(−)と出力端との間にインピーダンス24が接続され、非反転入力端(+)が非接地側入力端子211 に接続され、反転入力端(−)と出力端と接地側入力端子212 との間にインピーダンス25が接続されている。
【0038】
この負性インピーダンス変換回路の動作は、入力端子211 、212 間に入力電圧eiが供給され、その入力電圧eiがオペアンプ22の非反転入力端(+)に供給されたとき、オペアンプ22の出力電圧をeo、インピーダンス23に流れる電流をi、3つのインピーダンス23、24、25のインピーダンスをそれぞれZ1 、Z2 、Z3 とすれば、入力端子211 、212 から見た入力インピーダンスZinは、Zin=ei/iで示される。このとき、i=(ei−eo)/Z1 、及び、ei=eo{Z3 /(Z2 +Z3 )}の関係を有するので、入力インピーダンスZinは、
Zin=−{(Z1 ・Z3 )/Z2 }・・・・(1)
となる。
【0039】
ここで、インピーダンス23、24を抵抗素子に選び、それらのインピーダンスZ1 、Z2 を抵抗R1 、R2 とし、インピーダンス25を容量素子に選び、そのインピーダンスZ3 を容量C3 とすれば、Z3 =1/sC3 (sはラプラス変換子)で表わされるから、入力インピーダンスZinは、
Zin=−{R1 /(sC3 ・R2 )}・・・・(2)
となって、負性容量{−(C3 ・R2 )/R1 }が形成される。
【0040】
一方、インピーダンス24、25を抵抗素子に選び、それらのインピーダンスZ2 、Z3 を抵抗R2 、R3 とし、インピーダンス22を容量素子に選び、そのインピーダンスZ1 を容量C1 とすれば、入力インピーダンスZinは、
Zin=−{R3 /(sC1 ・R2 )}・・・・(3)
となって、負性容量{−(sC1 ・R2 )/R3 }が形成される。
【0041】
この場合、オペアンプ22は、その非反転入力端(+)及び反転入力端(−)に接続される素子、例えばインピーダンス23、24が逆の入力端に接続されたとしても、その動作は殆ど同じである。また、前式(2)、(3)から明らかなように、R1 /R2 及びR3 /R2 はそれぞれ係数であるので、同種類のインピーダンスであれば、容量素子であってもインダクタ素子であってもよいが、抵抗素子が最も使用し易いことはいうまでもない。
【0042】
次に、図7は、図6に図示の負性インピーダンス変換回路に第1及び第2の可変容量ダイオードを差動的に動作させる回路を組み合わせた負性容量回路の一つの構成例を示す回路構成図である。
【0043】
図7において、26は結合容量であって、使用周波数において低インピーダンスを示す大容量のものであり、27は抵抗素子であって、高い抵抗値を有するゼロ電位維持用抵抗であって、その他、図5及び図6図示された構成要素と同じ構成要素については同じ符号を付け、それらの構成要素についての説明は省略する。
【0044】
本構成例による負性容量回路は、図5に図示された負性容量回路の動作とほぼ同じ動作をするものであって、第1の可変容量ダイオード12及び第2の可変容量ダイオード13は、一方の可制御電圧形成装置16aの調整によって第1の可変容量ダイオード12に印加される逆制御電圧及び第2の可変容量ダイオード13に印加される逆制御電圧が相互に逆方向に変化し、付加容量20の容量を含んだ総合容量は、図4(c)に図示の直線に示す線上を移動するものである。
【0045】
一方、この可変容量回路をLC同調回路等のように比較的高い周波数信号帯において使用する場合には、ディスクリート素子によって構成された負性インピーダンス変換回路を用いるのが好適であって、その一例として、本件出願人によって提示された特開2005−303505号公報に記載の負性インピーダンス変換回路がある。この特開2005−303505号公報に記載の負性インピーダンス変換回路は、エミッタとコレクタとが共通接続された一対の入力トランジスタとそれらの共通接続に接続された出力トランジスタとを備えた増幅段を備え、出力トランジスタのコレクタ及びエミッタから一対の入力トランジスタのベースに至る正帰還ループ及び負帰還ループが接続されているものである。
【0046】
かかる構成の負性インピーダンス変換回路は、ある程度高い高周波信号帯に至るまで使用することが可能であるが、増幅段の正帰還ループ利得及び負帰還ループ利得に少なくとも40dB程度を必要とするので、使用可能な周波数信号帯の上限をより高くした場合、出力トランジスタのコレクタ負荷抵抗及びエミッタ負荷抵抗の抵抗値を小さく選ぶ必要があり、その結果として増幅段のループ利得が不足する場合が生じる。このような場合には、増幅段の段数を増やして増幅利得を高めたり、1チップ内にダーリントン接続した複合トランジスタからなる増幅段を用いて同じ様に増幅利得を高める必要がある。
【0047】
次いで、図8及び図9は、前述のような要件を満たす負性インピーダンス変換回路を用いた負性容量回路の構成例を示すもので、図8に図示の構成例は、負性インピーダンス変換回路に1個の可変容量ダイオードを組み合わせて用いた負性容量回路の構成例を示すものであり、図9に図示の構成例は、負性インピーダンス変換回路に第1及び第2の可変容量ダイオードを組み合わせて用いた負性容量回路の構成例を示すものである。
【0048】
図8に示されるように、本構成例による負性インピーダンス変換回路28は、エミッタが共通接続された一対の入力トランジスタ291 、292 及び出力トランジスタ30からなる増幅段と、結合容量31と帰還抵抗33とからなる正帰還ループ及び結合容量31、32と帰還抵抗34とからなる負帰還ループとからなっている。そして、入力トランジスタ291 のベースに供給される信号に対しては、入力トランジスタ291 がエミッタフォロワ動作、入力トランジスタ292 がベース接地動作、出力トランジスタ30がエミッタ接地動作を行い、出力トランジスタ30のコレクタに生じた信号は負帰還ループを通して入力トランジスタ291 のベースに帰還され、一方、入力トランジスタ292 のベースに供給される信号に対しては、入力トランジスタ292 及び出力トランジスタ30がエミッタ接地動作を行い、出力トランジスタ30のコレクタに生じた信号は正帰還ループを通して入力トランジスタ292 のベースに帰還され、負性インピーダンス変換回路28が構成される。
【0049】
この場合、図8に示される負性容量回路は、負性インピーダンス変換回路28の内部構成が図1に図示された負性容量回路3と異なっているだけで、その機能には特段の違いはなく、また、負性インピーダンス変換回路28の以外の構成については図1に図示された負性容量回路と同じ構成になっている。このため、図1に図示された構成要件と同じ構成要件については同じ符号を付け、それらの構成要件についての説明は省略し、同じように、図8に示される負性容量回路の動作についても、図1に図示された負性容量回路の動作とほぼ同じであるので、当該負性容量回路の動作の説明も省略する。
【0050】
また、図9に示されるように、本構成例による負性容量回路35は、一対の入力ダーリントン接続複合トランジスタ361 、362 及び出力トランジスタ37からなる増幅段と、結合容量38と帰還抵抗39とからなる正帰還ループ及び帰還抵抗40と結合容量41とからなる負帰還ループとからなっている。そして、入力ダーリントン接続複合トランジスタ361 のベースに供給される信号に対しては、入力ダーリントン接続複合トランジスタ361 がエミッタ接地動作、出力トランジスタ37が実質的にエミッタフォロワ動作を行い、出力トランジスタ37のエミッタに生じた信号は負帰還ループを通してダーリントン接続複合トランジスタ361 のベースに帰還され、一方、入力ダーリントン接続複合トランジスタ362 のベースに供給される信号に対しては、入力ダーリントン接続複合トランジスタ362 がエミッタ接地動作及び出力トランジスタ37が実質的にエミッタ接地動作を行い、出力トランジスタ37のコレクタに生じた信号は正帰還ループを通して入力ダーリントン接続複合トランジスタ362 のベースに帰還され、負性インピーダンス変換回路35が構成される。
【0051】
この場合、図9に示される負性容量回路は、負性インピーダンス変換回路35の内部構成が図5に図示された負性容量回路3と異なっているだけで、その機能には特段の違いはなく、また、負性インピーダンス変換回路35の以外の構成については図5に図示された負性容量回路14と同じ構成になっている。このため、図5に図示された構成要件と同じ構成要件については同じ符号を付け、それらの構成要件についての説明は省略し、同じように、図9に示される負性容量回路の動作についても、図5に図示された負性容量回路の動作とほぼ同じであるので、当該負性容量回路の動作の説明も省略する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】分布容量を打ち消すような補正を行い、略直線状の特性曲線を実現することができる本発明の一つの実施の形態を示す回路構成図である。
【図2】補正を行って正負容量方向に直線状に延びる特性曲線を実現できる本発明の一つの実施の形態を示す回路構成図である。
【図3】可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧の変化状態に対応した可変容量ダイオードの容量の変化状態を示す片対数目盛グラフに記録した特性曲線である。
【図4】第1及び第2の可変容量ダイオードに印加される逆制御電圧の変化状態に対応したそれらの容量の変化状態を両線形目盛グラフに記録した特性曲線である。
【図5】負性容量を示す領域が存在しない可変容量回路を実現した一つの構成例を示す回路構成図である。
【図6】オペアンプを用いて構成した負性インピーダンス変換回路の回路構成を示す回路図である。
【図7】図6に図示の負性インピーダンス変換回路に第1及び第2の可変容量ダイオードを差動動作させる回路を組み合わせた負性容量回路の回路構成を示す回路図である。
【図8】増幅段の利得を低下させることのない負性インピーダンス変換回路を用いた負性容量回路の構成の一例を示す回路図である。
【図9】増幅段の利得を低下させることのない負性インピーダンス変換回路を用いた負性容量回路の構成の他の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0053】
1a、11a、21a 非接地側入力端子
1b、11b、21b 接地側入力端子
2 可変容量ダイオード
3、14、28、35 負性インピーダンス変換回路(NCC)
4、15 入力結合容量
5 負荷容量
6、16a、16b 可制御電圧形成装置
7、17a、17b バッファ抵抗
12 第1の可変容量ダイオード
13 第2の可変容量ダイオード
18 出力結合容量
19 バイパス容量
20 付加容量
22 オペアンプ
23、24、25 インピーダンス
26 結合容量
27 抵抗素子
291 、292 一対の入力トランジスタ
30、37 出力トランジスタ
31、32、38、41 容量素子
33、34、39、40 帰還抵抗
361 、362 一対のダーリントン接続複合トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接地側入力端子と接地側入力端子間に接続され、可制御電圧形成装置から出力される可変制御電圧が供給される可変容量ダイオードと、入力端と出力端と接地端とを有する負性インピーダンス変換回路であって、前記入力端が前記非接地側入力端子に接続され、前記出力端が容量素子を介して前記接地側入力端子に接続された負性インピーダンス変換回路とを備え、前記容量素子の容量値を前記非接地側入力端子と前記接地側入力端子間に形成される分布容量値に略等しい値になるように選び、それにより前記可制御電圧形成装置の調整により前記可制御電圧形成装置から出力される可変制御電圧を線形変化させるに伴って前記可変容量ダイオードの容量値が対数的に変化するように形成されていることを特徴とする可変容量回路。
【請求項2】
非接地側入力端子と接地側入力端子間に接続され、可制御電圧形成装置から出力される第1の可変制御電圧が供給される第1の可変容量ダイオードと、入力端と出力端と接地端とを有する負性インピーダンス変換回路であって、前記入力端が前記非接地側入力端子に接続され、前記出力端が前記可制御電圧形成装置から出力される第2の可変制御電圧が供給される第2の可変容量ダイオード容量素子を介して前記接地側入力端子に接続された負性インピーダンス変換回路とを備え、前記第1の可変制御電圧及び前記第2の可変制御電圧は、前記可制御電圧形成装置の調整により互いに逆方向に増減し、前記第1及び第2の可変制御電圧の各容量値を互いに逆方向に変化させるように構成され、それにより前記可制御電圧形成装置から出力される前記第1及び第2の可変制御電圧を線形変化させるに伴って前記第1及び第2の可変容量ダイオードの総合容量値が正負容量領域を線形に変化するように形成されていることを特徴とする可変容量回路。
【請求項3】
前記非接地側入力端子と前記接地側入力端子間に、前記第1の可変容量ダイオードに並列に固定容量素子を付加接続し、前記固定容量素子の容量値を、前記第1及び第2の可変制御電圧を線形変化させるに伴って前記第1及び第2の可変容量ダイオードの総合容量値が正容量領域だけを線形に変化するような値に選んでいることを特徴とする請求項2に記載の可変容量回路。
【請求項4】
前記負性インピーダンス変換回路は、オペアンプと、その一方の入力端と出力端間に接続された第1のインピーダンスと、その他方の入力端と出力端間に接続された第2のインピーダンスと、その他方の入力端と接地点間に接続された第3のインピーダンスとによって構成されているものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変容量回路。
【請求項5】
前記負性インピーダンス変換回路は、個別増幅素子を用いて構成された第1及び第2の入力端と1つの出力端を有する差動増幅器と、その第1の入力端と出力端間に接続された第1のインピーダンスと、その第2の入力端と出力端間に接続された第2のインピーダンスと、その第2の入力端と接地点間に接続された第3のインピーダンスとによって構成されているものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変容量回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−278159(P2008−278159A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118724(P2007−118724)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(390033363)株式会社ゼネラル リサーチ オブ エレクトロニックス (32)
【Fターム(参考)】