説明

可変容量型タービン及び可変容量型ターボチャージャ

【課題】 簡単な追加加工又は簡単な設計変更を行うだけで、タービンインペラ33の特定の高速回転数域に対して離調して、タービンインペラ33の共振を回避すること。
【解決手段】各タービンブレード37の外縁の一部に切欠き61が形成され、各切欠き61の先端の指向方向は、タービンインペラ33の軸心に対して垂直になっている。 また、各タービンブレード37の外縁に凹部63が形成され、各凹部63は、タービンインペラ33の軸心Cからの長さが下流側に向かって漸減する漸減領域63a、及び漸減領域63aの下流側に隣接されかつタービンインペラ33の軸心Cからの長さが下流側に向かって漸増する漸増領域63bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス等のガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させる可変容量型タービン等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば可変容量型ターボチャージャに用いられる可変容量型タービンについて種々の開発が行われており、可変容量型タービンの先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。そして、先行技術に係る可変容量型タービンの構成等について説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係る可変容量型タービンは、タービンハウジングを具備しており、このタービンハウジングは、可変容量型ターボチャージャにおけるベアリングハウジングに設けられている。また、タービンハウジング内には、タービンインペラが回転可能に設けられており、このタービンインペラは、可変容量型ターボチャージャにおけるロータ軸(タービン軸)に一体的に連結してあって軸心(タービンインペラの軸心(換言すれば、ロータ軸の軸心))周りに回転可能なタービンホイール、及びこのタービンホイールの外周面に周方向に等間隔に設けられた複数枚のタービンブレードを備えている。そして、タービンハウジング内におけるタービンインペラの入口側(上流側)には、複数枚の可変ノズルが周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズルは、タービンインペラの軸心と平行な軸心周りに回動可能である。
【0004】
タービンハウジングの適宜位置には、エンジンからの排気ガスを取入れるガス取入口が形成されている。また、タービンハウジングの内部には、タービンスクロール流路が複数枚の可変ノズルを囲むように形成されており、タービンスクロール流路は、ガス取入口に連通してあって、排気ガスを取入可能である。更に、タービンハウジングにおけるタービンインペラの出口側(下流側)には、排気ガスを排出するガス排出口が形成されている。
【0005】
従って、タービンスクロール流路に取入れた排気ガスをタービンインペラの入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸を回転させることができる。
【0006】
ここで、排気ガスの流量が少ない場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、複数枚の可変ノズルを絞る方向へ同期して回動させることにより、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流速を高くして、タービンインペラの仕事量を十分に確保する。一方、排気ガスの流量が多い場合(換言すれば、エンジン回転数が高速域にある場合)には、可変ノズルのスロート面積を大きくして、タービンインペラ側へ多くの排気ガスを供給する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、可変容量型タービンによって回転力を十分かつ安定的に発生させることができ、可変容量型タービンの性能を高めることができる。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として、特許文献1及び特許文献2の他に、特許文献3に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−231934号公報
【特許文献2】特開2003−27951号公報
【特許文献3】特開平5−149103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述のように、複数枚の可変ノズルによって可変容量型タービンの性能を高めることができるものの、可変ノズルのウェイク(伴流)による励振周波数(タービンブレードの励振周波数)とタービンインペラの固有振動数が一致すると、タービンインペラが共振することになる。エンジン上ではタービン回転数の上昇に伴ってタービン圧力比も上昇し、励振力も高くなる。そして、タービンインペラが特定の高速回転数域になったときに、可変ノズルのウェイクによる励振周波数とタービンインペラの固有振動数が一致すると、タービンブレードに共振による過大な振動応力が発生して、タービンインペラの疲労の蓄積が進む。そのため、可変ノズルの枚数の変更により励振周波数を調整したり、タービンブレードの肉厚分布の変更によりタービンインペラの固有振動数を調整したりすることにより、タービンインペラの特定の高速回転数域に対して離調して、タービンインペラの共振を回避する必要がある。
【0010】
また、エンジンの仕様によってコンプレッサの容量、即ち、コンプレッサインペラの仕様が変化するが、コンプレッサインペラの仕様が変化しても、所定の条件の範囲ではタービンインペラの仕様を変更しない場合がある。この場合に、エンジン上での作動回転数が変化するので、場合によってはタービンインペラの固有振動数を調整して共振の頻度を下げる必要がある。
【0011】
しかしながら、可変ノズルの枚数の変更又はタービンブレードの肉厚分布の変更は、可変容量型タービンの大幅な設計変更を伴うことになり、可変容量型タービンを最終的に仕上げるまでに多大な労力及びコストを費やすことになる。つまり、可変容量型タービンの疲労寿命の低下を抑えつつ、可変容量型タービンを最終的に仕上げるまで労力及びコストを低減することは容易でないという問題がある。
【0012】
なお、特許文献3に示すように、分割したタービンブレードを突部と切込み部との組合わせ等によって一体化することにより、タービンブレードの固有振動数を調整する場合にも、タービンブレードの大幅な設計変更を伴うことになり、前述と同様の問題が生じる。
【0013】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の可変容量型タービン等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発明者は、前述の課題を解決するために、種々の試行錯誤を繰り返した結果、図3に示すように、各可変ノズルの外縁の一部に、先端の指向方向がタービンインペラの軸心Cに対して垂直になっている切欠きを形成することにより、図4に示すように、タービンインペラの固有値(1次固有値、2次固有値、3次固有値)を小さくして、タービンインペラの固有振動数を調整できるという、新規な知見を得ることができ、本発明を完成するに至った。
【0015】
ここで、図3は、新規な知見に係るタービンインペラの半断面図、図4は、相対切欠き深さとタービンインペラの固有値変化割合の関係を示す図であって、タービンインペラの固有値変化割合は、振動解析によって求められている。なお、相対切欠き深さとは、タービンブレードの切欠き形成箇所におけるタービンインペラの径方向の長さD1に対する切欠きの深さD2の割合(D2/D1)のことであって、タービンインペラの固有値変化割合とは、切欠きの無いタービンインペラの固有値に対する切欠きの有るタービンインペラの固有値の変化の割合ことである。
【0016】
本発明の第1の特徴は、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させる可変容量型タービンにおいて、タービンハウジング内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なタービンホイール、及び前記タービンホイールの外周面に間隔を置いて設けられた複数枚のタービンブレードを備えたタービンインペラと、前記タービンハウジング内における前記タービンインペラの入口側(上流側)を周方向に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心と平行な軸心周りに回動可能な複数枚の可変ノズルと、を具備し、前記タービンハウジングの内部にガスを取入可能なタービンスクロール流路が複数枚の前記可変ノズルを囲むように形成され、前記タービンハウジングにおける前記タービンインペラの出口側(下流側)にガスを排出するガス排出口が形成され、各タービンブレードの外縁の一部に切欠きが形成され、各切欠きの先端の指向方向(換言すれば、各切欠きの深さ方向)が前記タービンインペラの軸心に対して垂直(垂直な方向)になっていることを要旨とする。
【0017】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、ブラケット等の介在部材を介して間接的に設けられたことを含む意であって、同様に、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、ブラケット等の介在部材を介して間接的に配設されたことを含む意である。
【0018】
第1の特徴によると、前記タービンスクロール流路に取入れたガスを前記タービンインペラの入口側から出口側へ流通させることにより、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させることができる。
【0019】
ここで、ガスの流量が少ない場合には、複数枚の前記可変ノズルを絞る方向へ同期して回動させることにより、前記タービンインペラ側へ供給されるガスの流速を高くして、前記タービンインペラの仕事量を十分に確保する。一方、ガスの流量が多い場合には、複数枚の前記可変ノズルを開く方向へ同期して回動させることにより、前記可変ノズルのスロート面積を大きくして、前記タービンインペラ側へ多くの排気ガスを供給する。これにより、ガスの流量の多少に関係なく、前記可変容量型タービンによって回転力を十分かつ安定的に発生させることができ、前記可変容量型タービンの性能を高めることができる(第1の特徴による一般的な作用)。
【0020】
各タービンブレードの外縁の一部に切欠きが形成され、各切欠きの先端の指向方向が前記タービンインペラの軸心に対して垂直になっているために、前述の新規な知見を適用すると、前記タービンインペラの固有値(1次固有値、2次固有値、3次固有値)を小さくして、前記タービンインペラの固有振動数を調整できる。これにより、簡単な追加加工を行うだけで、前記タービンインペラの特定の高速回転数域に対して離調して、前記タービンインペラの共振を回避することができる(第1の特徴による特有の作用)。
【0021】
本発明の第2の特徴は、ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させる可変容量型タービンにおいて、タービンハウジング内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なタービンホイール、及び前記タービンホイールの外周面に間隔を置いて設けられた複数枚のタービンブレードを備えたタービンインペラと、前記タービンハウジング内における前記タービンインペラの入口側(上流側)を周方向に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心と平行な軸心周りに回動可能な複数枚の可変ノズルと、を具備し、前記タービンハウジングの内部にガスを取入可能なタービンスクロール流路が複数枚の前記可変ノズルを囲むように形成され、前記タービンハウジングにおける前記タービンインペラの出口側にガスを排出するガス排出口が形成され、各タービンブレードの外縁に凹部(擬似切欠き)が形成され、各凹部は、前記タービンインペラの軸心からの長さ(径方向の長さ)が下流側に向かって(換言すれば、前記タービンインペラの先端側に向かって)漸減する漸減領域、及び前記漸減領域の下流側に隣接されかつ前記タービンインペラの軸心からの長さが下流側に向かって漸増する漸増領域を有していることを要旨とする。
【0022】
第2の特徴によると、前述の第1の特徴による一般的な作用と同様の作用を奏する他に、各タービンブレードの外縁に前記凹部が形成され、各凹部は前記漸減領域及び前記漸増領域を有しているため、前述の新規な知見を類推して適用すると、前記タービンインペラの固有値(1次固有値、2次固有値、3次固有値)を小さくして、前記タービンインペラの固有振動数を調整できる。これにより、簡単な設計変更を行うだけで、前記タービンインペラの特定の高速回転数域に対して離調して、前記タービンインペラの共振を回避することができる(第2の特徴による特有の作用)。
【0023】
本発明の第3の特徴は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する可変容量型ターボチャージャにおいて、第1の特徴又は第2の特徴からなる可変容量型タービンを具備したことを要旨とする。
【0024】
第3の特徴によると、第1の特徴又は第2の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡単な追加加工又は簡単な設計変更を行うだけで、前記タービンインペラの特定の高速回転数域に対して離調して、前記タービンインペラの共振を回避することができるため、前記可変容量型タービンの疲労蓄積のスピードを抑えつつ、前記可変容量型タービンを最終的に仕上げるまで労力及びコストを十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図2における矢視部IIの拡大断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの断面図である。
【図3】新規な知見に係るタービンインペラの半断面図である。
【図4】相対切欠き深さとタービンインペラの固有値変化割合の関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係るタービンインペラの半断面図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例に係るタービンインペラの半断面図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係るタービンインペラの半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について図1から図7を参照して説明する。
なお、図面中、「F」は、前方向を指し、「R」は、後方向を指してある。
【0028】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型ターボチャージャ1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型ターボチャージャ1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0029】
可変容量型ターボチャージャ1は、ベアリングハウジング3を具備しており、このベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられてあって、複数のベアリング5,7には、前後方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0030】
ベアリングハウジング3の後側には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサ11が配設されており、このコンプレッサ11の具体的な構成は、次のようになる。
【0031】
即ち、ベアリングハウジング3の後側には、コンプレッサハウジング13が設けられており、このコンプレッサハウジング13内には、コンプレッサインペラ15が回転可能に設けられている。より具体的には、コンプレッサハウジング13内には、コンプレッサホイール17が設けられており、コンプレッサホイール17は、固定ナット19を介してロータ軸9の前端部に一体的に連結してあって、コンプレッサインペラ15の軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能である。また、コンプレッサホイール17の外周面は、コンプレッサインペラ15の軸方向から径方向外側に向かって延びている。更に、コンプレッサホイール17の外周面には、複数枚のコンプレッサブレード21が周方向に等間隔に設けられている。
【0032】
コンプレッサハウジング13におけるコンプレッサインペラ15の入口側(コンプレッサハウジング13の前側)には、空気を取入れる空気取入口23が形成されており、この空気取入口23は、接続管(図示省略)を介してエアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング13の間におけるコンプレッサインペラ15の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路25が形成されており、このディフューザ流路25は、空気取入口23に連通してある。更に、コンプレッサハウジング13の内部には、コンプレッサスクロール流路27がコンプレッサインペラ15を囲むように形成されており、このコンプレッサスクロール流路27は、ディフューザ流路25に連通してある。そして、コンプレッサハウジング13の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口(図示省略)が形成されており、この空気排出口は、コンプレッサスクロール流路27に連通してあって、エンジンの給気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0033】
ベアリングハウジング3の前側には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させる可変容量型タービン29が配設されており、この可変容量型タービン29の具体的な構成は、次のようになる。
【0034】
即ち、ベアリングハウジング3の前側には、タービンハウジング31が設けられており、このタービンハウジング31内には、タービンインペラ33が回転可能に設けられている。より具体的には、タービンハウジング31内には、タービンホイール35が設けられており、このタービンホイール35は、ロータ軸9の後端部に一体的に連結してあって、タービンインペラ33の軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能である。また、タービンホイール35の外周面は、タービンインペラ33の軸方向から径方向外側に向かって延びている。更に、タービンホイール35の外周面には、複数枚のタービンブレード37が周方向に等間隔に設けられている。
【0035】
タービンハウジング31内には、可変ノズルユニット39がタービンインペラ33を囲むように配設されている。より具体的には、タービンハウジング31内におけるタービンインペラ33の径方向外側には、ノズルリング41が取付リング43を介して設けられており、このノズルリング41には、シュラウドリング45が複数(1つのみ図示)の連結ピン47を介して一体的かつ前後に離隔して設けられている。また、ノズルリング41とシュラウドリング45の間、換言すれば、タービンハウジング31内におけるタービンインペラ33の入口側には、複数枚の可変ノズル49が周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズル49は、タービンインペラ33の軸心Cに平行な軸心周りに回動可能(揺動可能)である。ここで、複数枚の可変ノズル49のノズル軸49sは、特許文献1に示すように、同期機構51によって連動連結してある。
【0036】
なお、ベアリングハウジング3の前側下部には、伝動軸53が回動可能に設けられており、この伝動軸53の前端部は、複数枚の可変ノズル49を同期して回動させるシリンダ等のアクチュエータ(図示省略)に接続レバー55を介して接続(連動連結)しあって、伝動軸53の後端部は、同期機構51に接続してある。
【0037】
タービンハウジング31の適宜位置には、排気ガスを取入れるガス取入口(図示省略)が形成されており、このガス取入口は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング31の内部には、タービンスクロール流路57がタービンインペラ33を囲むように形成されており、このタービンスクロール流路57は、ガス取入口に連通してあって、排気ガスを取入可能である。更に、タービンハウジング31におけるタービンインペラ33の出口側(タービンハウジング31の後側)には、排気ガスを排出するガス排出口59が形成されており、このガス排出口59は、タービンスクロール流路57に連通してあって、接続管(図示省略)を介して排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0038】
そして、各タービンブレード37の外縁の一部には、切欠き61が形成されており、各切欠き61の先端の指向方向(換言すれば、各切欠き61の深さ方向)は、タービンインペラ33の軸心に対して垂直になっている。ここで、各切欠き61の先端の指向方向を前述のように設定したのは、可変容量型ターボチャージャ1の運転中(可変容量型タービン29の運転中)に、タービンブレード37に遠心力による過大な引張応力が発生することを回避するためである。
【0039】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
ガス取入口からタービンスクロール流路57に取入れた排気ガスをタービンインペラ33の入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ15をタービンインペラ33と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口23から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路25及びコンプレッサスクロール流路27を経由して空気排出口から排出することができ、エンジンへ供給される空気を過給することができる。
【0041】
ここで、排気ガスの流量が少ない場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、アクチュエータによって複数枚の可変ノズル49を絞る方向へ同期して回動させることにより、タービンインペラ33側へ供給される排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ33の仕事量を十分に確保する。一方、排気ガスの流量が多い場合(換言すれば、エンジン回転数が低速域にある場合)には、アクチュエータによって複数枚の可変ノズル49を開く方向へ同期して回動させることにより、可変ノズル49のスロート面積を大きくして、タービンインペラ33側へ多くの排気ガスを供給する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、可変容量型タービン29によって回転力を十分かつ安定的に発生させることができ、可変容量型タービン29の性能を高めることができる(可変容量型ターボチャージャ1による一般的な作用)。
【0042】
各タービンブレード37の外縁の一部に切欠き61が形成され、各切欠き61の先端の指向方向がタービンインペラ33の軸心Cに対して垂直になっているために、前述の新規な知見([課題を解決するための手段]参照)を適用すると、タービンインペラ33の固有値(1次固有値、2次固有値、3次固有値)を小さくして、タービンインペラ33の固有振動数を調整できる。これにより、簡単な追加加工を行うだけで、タービンインペラ33の特定の高速回転数域に対して離調して、タービンインペラ33の共振を回避することができる(可変容量型ターボチャージャ1(可変容量型タービン29)による特有の作用)。
【0043】
従って、本発明の実施形態によれば、可変容量型タービン29の疲労蓄積のスピードを抑えつつ、可変容量型タービン29を最終的に仕上げるまで労力及びコストを十分に低減することができる(可変容量型ターボチャージャ1(可変容量型タービン29)による効果)。
【0044】
(変形例)
本発明の変形例について図5から図7を参照して説明する。
【0045】
各タービンブレード37の外縁の一部に切欠き61が形成される代わりに、図5(a)(b)、図6(a)(b)、及び図7(a)に示すように、各タービンブレード37の外縁の一部に凹部(模擬切欠き)63が形成されるようにしても構わなく、各凹部63は、タービンインペラ33の軸心Cからの長さ(径方向の長さ)が下流側に向かって(換言すれば、タービンインペラ33の先端側に向かって)漸減する漸減領域63a、及び漸減領域63aの下流側に隣接されかつタービンインペラ33の軸心Cからの長さが下流側に向かって漸増する漸増領域63bを有している。また、各タービンブレード37の外縁の一部に凹部63が形成される代わりに、図7(b)に示すように、各タービンブレード37の外縁の全体に凹部63が形成されるようにしても構わない。
【0046】
そして、本発明の実施形態の変形例によれば、前述の可変容量型ターボチャージャ1による一般的な作用を奏する他に、各タービンブレード37の外縁の一部又は全体に凹部63が形成され、各凹部63は漸減領域63a及び漸増領域63bを有しているため、前述の新規な知見([課題を解決するための手段]参照)を類推して適用すると、タービンインペラ33の固有値(1次固有値、2次固有値、3次固有値)を小さくして、タービンインペラ33の固有振動数を調整できる。これにより、簡単な設計変更を行うだけで、タービンインペラ33の特定の高速回転数域に対して離調して、タービンインペラ33の共振を回避することができる。
【0047】
従って、本発明の実施形態の変形例においても、前述の可変容量型タービン29による効果と同様の効果を奏する。
【0048】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0049】
1 可変容量型ターボチャージャ
3 ベアリングハウジング
9 ロータ軸
11 コンプレッサ
13 コンプレッサハウジング
15 コンプレッサインペラ
29 可変容量型タービン
31 タービンハウジング
33 タービンインペラ
35 タービンホイール
37 タービンブレード
39 可変ノズルユニット
49 可変ノズル
57 タービンスクロール流路
59 ガス排出口
61 切欠き
63 凹部
63a 漸減領域
63b 漸増領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させる可変容量型タービンにおいて、
タービンハウジング内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なタービンホイール、及び前記タービンホイールの外周面に間隔を置いて設けられた複数枚のタービンブレードを備えたタービンインペラと、
前記タービンハウジング内における前記タービンインペラの入口側を周方向に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心と平行な軸心周りに回動可能な複数枚の可変ノズルと、を具備し、
前記タービンハウジングの内部にガスを取入可能なタービンスクロール流路が複数枚の前記可変ノズルを囲むように形成され、前記タービンハウジングにおける前記タービンインペラの出口側にガスを排出するガス排出口が形成され、
各タービンブレードの外縁の一部に切欠きが形成され、各切欠きの先端の指向方向が前記タービンインペラの軸心に対して垂直になっていることを特徴とする可変容量型タービン。
【請求項2】
ガスの圧力エネルギーを利用して回転力を発生させる可変容量型タービンにおいて、
タービンハウジング内に回転可能に設けられ、軸心周りに回転可能なタービンホイール、及び前記タービンホイールの外周面に間隔を置いて設けられた複数枚のタービンブレードを備えたタービンインペラと、
前記タービンハウジング内における前記タービンインペラの入口側を周方向に間隔を置いて配設され、前記タービンインペラの軸心と平行な軸心周りに回動可能な複数枚の可変ノズルと、を具備し、
前記タービンハウジングの内部にガスを取入可能なタービンスクロール流路が複数枚の前記可変ノズルを囲むように形成され、前記タービンハウジングにおける前記タービンインペラの出口側にガスを排出するガス排出口が形成され、
各タービンブレードの外縁に凹部が形成され、各凹部は、前記タービンインペラの軸心からの長さが下流側に向かって漸減する漸減領域、及び前記漸減領域の下流側に隣接されかつ前記タービンインペラの軸心からの長さが下流側に向かって漸増する漸増領域を有していることを特徴とする可変容量型タービン。
【請求項3】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給する可変容量型ターボチャージャにおいて、
請求項1又は請求項2に記載の発明特定事項からなる可変容量型タービンを具備したことを特徴とする可変容量型ターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−242520(P2010−242520A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89357(P2009−89357)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】