説明

可変容量型ターボチャージャおよび可変ノズル機構の組付方法

【課題】可変ノズル機構をアセンブリー化して、そのアセンブリー化した可変ノズル機構を軸受ハウジング等のハウジングに組み付ける際に、外部のアクチュエータからの往復変位を回転変位に変換するリンク機構と前記可変ノズル機構との連結作業を確実に、且つ簡単に行うことができるようにすることを目的とする。
【解決手段】タービンロータ7への排ガスの流れを調整する可変ノズル機構部23と、可変ノズル機構を作動せしめるアクチュエータからの往復変位を回転変位に変換して軸受ハウジング内部に伝達するリンク機構35と、リンク機構の出力部と可変ノズル機構の入力部とを係合せしめる係合部51と、を備え、係合部51はピン46と該ピン46が挿入するピン挿入溝45から構成されるとともに、該ピン46の挿入位置の周囲にピン46の先端を挿入位置に案内可能な平滑面47が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルベーンの翼角を変化可能に構成した可変ノズル機構を備えた可変容量型ターボチャージに関し、特に、アッセンブリー化された可変ノズル機構を、軸受ハウジングを含むハウジングへ組み付け容易な構造、およびその可変ノズル機構の組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関等に用いられる比較的小型の排気ターボチャージャでは、エンジンからの排ガスを、タービンハウジングに形成されたスクロール内に充填し、該スクロールの内周側設けられた複数のノズルベーンに通して、該ノズルベーンの内周側に設けられたタービンロータに作用させる構造が採用されている。
また、複数の複数のノズルベーンの翼角が変化可能に構成された可変ノズル機構を備えた可変容量型ターボチャージャが多く用いられている。例えば、特許文献1、2のように知られている。
【0003】
この可変ノズル機構を備えた可変容量型ターボチャージャにおいては、可変ノズル機構をアセンブリー化して、そのアセンブリー化した可変ノズル機構を軸受ハウジングやタービンハウジングに組み付けて製造している。
【0004】
組み付けの際には、可変ノズル機構を構成するドライブリングに対して、タービンハウジングや軸受ハウジングの外部に設けられたアクチュエータからの往復変位の駆動力を回転変位に変換するリンク機構を連結する必要がある。
【0005】
連結部の構造は、図9に示すように、軸受ハウジングの壁部を貫通して支持されるリンク機構の支持軸01と、該支持軸01のハウジング内部側の先端部に設けられたレバー03と、レバー03の端部にレバー03に対して直角方向に突設された連結ピン05とを備え、この連結ピン05が可変ノズル機構06を構成するドライブリング07の側面に連結ピン05側に切り起こして形成された係合凸部09に嵌合するように挿入して、アセンブリー化した可変ノズル機構を軸受ハウジングに組み付けるようになっている。そして、アクチュエータからの往復変位の駆動力が、リンク機構によって支持軸01の回転駆動力に変換されて、連結ピン05と係合凸部09との係合を介して、ドライブリング07全体を回動させる。
【0006】
この可変ノズル機構06の正面視図を図10に示す。連結ピン05か挿入される係合凸部09は、ドライブリング07の外周側の側面部分に形成されている。可変ノズル機構06はノズルマウント010、レバープレート012、ドライブリング07等がアセンブリー化されて構成されている
【0007】
このように、レバー側のピン部をドライブリング側の係合凹部や孔部に係合させて組み付けを行う構造については、特許文献1(特開2008−215083号公報)、特許文献2(特開2009−150363号公報)に示されている。
特許文献1には、その特許文献1の図1等に、アクチュエータからの往復変位は、リンク15、ピン14を介してドライブリング3に伝達される構成が示されている。
また、特許文献2には、その図7等に、ノズルベーン2の駆動源であるアクチュエータに連結されるリンク15、該リンク15に連結されるクランクピン10s、該クランクピン10sがドライブリング3に係合されて該ドライブリング3を回動駆動する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−215083号公報
【特許文献2】特開2009−150363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示されるように、レバー03の端部に突設された連結ピン05を、ドライブリング07側の係合凸部09に嵌合する際に、係合凸部09が切り起こし形状に形成されるため、図9のように連結ピン05の先端部分を両側の係合凸部09の間に挿入する作業が手間取り、すなわち、相互に突起状態の部材を嵌合させるため組み付け作業効率を悪化させていた。
特に、連結ピン05の位置や係合凸部09の位置が軸受ハウジングやタービンハウジン等の内部奥に位置される場合には、視認性が悪く組み付け作業性をさらに悪化させていた。また、適切な係合が得られない状態で組み付け作業をした場合には組み付け不良を生じて十分な性能を発揮できないおそれもあった。
【0010】
特許文献1、2においても、図9の前述の説明と同様に、クランクピンをドライブリングの係合孔または両係合凸部間に挿入して係合させる作業を行う必要があるが、係合のしやすさを考慮した構造については開示されていない。また挿入位置が軸受ハウジングやタービンハウジング等の内部で目視困難な位置にある場合には一層作業性の悪化を招く問題があった。
【0011】
そこで、本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、可変ノズル機構をアセンブリー化して、そのアセンブリー化した可変ノズル機構を軸受ハウジング等のハウジングに組み付ける際に、外部のアクチュエータからの駆動力の伝達を行うリンク機構と、前記可変ノズル機構との連結作業を確実に、且つ簡単に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、内燃機関の排ガスが内部に導入されるタービンハウジングと、該タービンハウジング内に設けられて排ガスによって回転駆動されるタービンロータと、一端が前記タービンハウジング内に挿入され、該一端に前記タービンロータが取り付けられるタービンシャフトと、該タービンシャフトを支持する軸受と、該軸受が収納され、かつ外周部から軸方向に張り出した円筒壁部が形成された軸受ハウジングと、該軸受ハウジングの前記円筒壁部の内側に組み付けられ、前記タービンロータへの排ガスの流れを調整する可変ノズル機構と、該可変ノズル機構を作動せしめるアクチュエータからの往復変位を回転変位に変換して軸受ハウジング内部に伝達するリンク機構と、該リンク機構の出力部と前記可変ノズル機構の入力部とを係合せしめる係合部と、を備え、該係合部はピンと該ピンが挿入するピン挿入孔または挿入溝からなるピン挿入部によって構成されるとともに、該ピンの挿入位置の周囲にピンの先端を挿入位置に案内可能な平滑面が形成されていることを特徴とする。
【0013】
かかる発明によれば、前記リンク機構の出力部と前記可変ノズル機構の入力部とを係合せしめる係合部を、ピンと該ピンが挿入するピン挿入孔または挿入溝からなるピン挿入部によって構成するとともに、ピンの挿入位置の周囲にピンの先端を挿入位置に案内可能な平滑面が形成されるので、タービンロータへの排ガスの流れを調整する可変ノズル機構を、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に組み付けて固定する際に、ピンと該ピンの挿入位置との位置合わせが容易になる。
特に、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に存在することによって、組み立ての際に円筒壁部の影になってピンの先端および挿入位置の視認性が悪くても確実に、且つ簡単に組み立てができるようになる。その結果、組み付け不良も生じにくくなり可変容量型ターボチャージャの品質の安定性の向上が図れる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記ピンが前記可変ノズル機構を構成するドライブリングの外周側の側面に突設されてなり、前記ピン挿入部が前記リンク機構を構成する出力レバーの端部に形成された二又爪部とその間に形成された挿入溝からなり、前記二又爪部の側面が前記平滑面を形成するとよい。
【0015】
このように構成することによって、可変ノズル機構を、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に組み付ける際に、可変ノズル機構を構成するドライブリングの外周側の側面に突設されたピンの先端を、二又爪部の側面に形成された平滑面に当接して、平滑面に沿ってピンを移動することで挿入位置への位置合わせが容易になる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記ピンが前記リンク機構を構成する出力レバーの端部に突設されてなり、前記ピン挿入部が前記可変ノズル機構を構成するドライブリングの外周側の側面に形成された溝または孔からなり、該溝または孔の周囲のドライブリングの側面が前記平滑面を形成するとよい。
【0017】
このように構成することによって、可変ノズル機構を、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に組み付ける際に、リンク機構を構成する出力レバーの端部に突設されたピンの先端を、可変ノズル機構を構成するドライブリングの外周側の側面に形成された溝または孔の周囲に形成された平滑面に当接して、平滑面に沿ってピンを移動することで挿入位置への位置合わせが容易になる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記ピン挿入部のピン挿入孔または挿入溝の周縁部には前記ピンが挿入しやすいように角R処理がされているとよい。
このように、ピン挿入孔または挿入溝の周縁部に角R処理が施されているためピンが挿入しやすく、平滑面上でピンの先端部分を滑らせて挿入位置を探して押し込む際に、確実に実に容易に組み付けできる。
【0019】
また、本発明は、前記可変ノズル機構を前記軸受ハウジングに組み付ける可変ノズル機構の組付方法であって、前記リンク機構が組み付けられた軸受ハウジングを用意し、該軸受ハウジングに対して前記可変ノズル機構を組み付ける際に、前記係合部のピンを前記平滑面に当てて、その後、ピンの先端部を平滑面に沿って移動しながらピンをピン挿入位置に位置させ、その後可変ノズル機構を軸受ハウジング側に押し込んで組み付けることを特徴とする。
【0020】
かかる発明によれば、前記リンク機構が組み付けられた軸受ハウジングを用意し、該軸受ハウジングに対して前記可変ノズル機構を組み付ける際に、前記係合部のピンを前記平滑面に当てて、その後、ピンの先端部を平滑面に沿って移動しながらピンをピン挿入部に位置させ、その後可変ノズル機構を軸受ハウジング側に押し込んで組み付けるので、ピンと該ピンの挿入位置との位置合わせが容易になる。
特に、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に存在することによって、組み立ての際に円筒壁部の影になってピンの先端および挿入位置の視認性が悪くても確実に、且つ簡単に組み立てができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前記リンク機構の出力部と前記可変ノズル機構の入力部とを係合せしめる係合部を、ピンと該ピンが挿入するピン挿入孔または挿入溝からなるピン挿入部によって構成するとともに、ピンの挿入位置の周囲にピンの先端を挿入位置に案内可能な平滑面が形成されるので、タービンロータへの排ガスの流れを調整する可変ノズル機構を、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に組み付けて固定する際に、ピンと該ピンの挿入位置との位置合わせが容易になる。
特に、軸受ハウジングの円筒壁部の内側に存在することによって、組み立ての際に円筒壁部の影になってピンの先端および挿入位置の視認性が悪くても確実に、且つ簡単に組み立てができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態を示す可変容量型ターボチャージャの全体構成を示す要部断面図である。
【図2】第1実施形態のリンク機構部と可変ノズル機構部との組み付け状態を説明する説明図であり、(A)はリンク機構部を示し、(B)は可変ノズル機構部を示す。
【図3】第1実施形態のドライブリングの全体図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のC−C線断面図である。
【図4】第1実施形態におけるリンク機構部と可変ノズル機構部との係合状態を示す説明図である。
【図5】図4における係合部の変形例1である。
【図6】図4における係合部の変形例2である。
【図7】図4の係合部における組み付け状態を示す説明図である。
【図8】第2実施形態を示す断面説明図である。
【図9】従来技術を示す説明図である。
【図10】従来技術を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜7を参照して説明する。
図1は、可変ノズル機構付きの排気ターボチャージャ(可変容量型ターボチャージャ)1の一例を示し、回転軸線に沿う部分断面図である。
図1に示すように、排気ターボチャージャ1には、厚肉筒状のタービンハウジング3が設けられ、このタービンハウジング3の上流側の外周部には渦巻き状にスクロール5が形成されている。一方、タービンハウジング3の上流側の内周部には、輻流型のタービンロータ7が設けられている。
タービンロータ7が取り付けられているタービンシャフト9は、回転中心が、図中回転軸心Kであり、図示しないコンプレッサと同軸である。また、タービンシャフト9は、軸受11を介して軸受ハウジング13に回転自在に支持されている。
【0025】
軸受ハウジング13の背面15には環状の凹部(円筒壁部)17が形成され、この凹部17にノズル19及びノズルマウント21等を備えるノズルアッセンブリである可変ノズル機構部(可変ノズル機構)23が収納される。
ノズル19は、回転軸心K回りに等間隔で複数設けられている。また、ノズル19は、タービンのラジアル方向の位置ではスクロール5の内周側に位置している。
【0026】
また、ノズル19はノズルベーン19aとノズル軸19bを有している。ノズル軸19bは、軸受ハウジング13に固定されるノズルマウント21に回動可能に支持され、そのノズル軸19bの支持部は回転軸心K回りに等間隔に複数設けられている。そして、この可変ノズル機構部23によって、ノズルベーン19aの翼角を変化させることが可能になっている。
【0027】
ノズルベーン19aは、ノズルマウント21と、このノズルマウント21にノズルサポート25により所定間隔を存してタービン軸方向に対向するように連結された環状のノズルプレート27との間に配置され、該ノズルプレート27は、タービンハウジング3の内筒部先端側に嵌合される。
【0028】
ノズルマウント21には径方向に段差部29が設けられ、この段差部29に円盤状のドライブリング31が回転軸心Kと同心状に回動可能に嵌合している。ドライブリング31には、図2(B)のように、ひょうたん形状のレバープレート33が複数個、周方向に並んで係合しており、このレバープレート33の一端部は、ドライブリング31に取り付けられ、他端部はノズルマウント21の内部を回転軸心Kと同一方向に貫通したノズル軸19bの端部に連結している。
【0029】
そして、ドライブリング31が回転軸心Kの回りに回動する角度に応じて、ノズル軸19bが回動して、それ角度に応じてノズルベーン19aが回動するようになっている。すなわち、ドライブリング31を回動させることでノズル19の開度が調整されるようになっている。ここでは、ノズルベーン19aが周方向に12枚設置され、それに対応してレバープレート33は回転軸心Kの回りに12個設けられている。
【0030】
また、ドライブリング31が設けられるノズルマウント21の段差部29より僅かに下方(中心寄り)に鋲34(図2(B)参照)が設けられされている。この鋲34のフランジ状の頭部によりドライブリング31が段差部29より脱落しないように保持されている。
【0031】
以上説明したノズル19(19a、19b)、ノズルマウント21、ノズルプレート27、ドライブリング31、およびレバープレート33を備えてアセンブリー化されて可変ノズル機構部23が構成されている。また、軸受ハウジング13の背面15には環状の凹部17が形成され、この凹部17には、背面15を貫通してリンク機構部(リンク機構)35が設けられている。
【0032】
このリンク機構部35は、可変ノズル機構部23を作動せしめる図示しないアクチュエータからの往復変位を回転変位に変換して軸受ハウジング13の内部に組み付けられる可変ノズル機構部23に回転力を伝達するものである。
そして、リンク機構部35は、アクチュエータが一端に連結する入力レバー37と、入力レバー37の他端に連結し軸受ハウジング13の壁を貫通して配設される連結レバー39と、該連結レバー39が一端部に連結した出力レバー41から成っている。
【0033】
この出力レバー41は、図4に示すように、二又爪部43とその間に形成されたピン挿入溝45とからなり、二又爪部43の側面は、ドライブリング31の側面に突設されたピン46の端面が、組み付け時に当接する平滑面47に形成されている。
なお、図3にはドライブリング31の形状を示し、図3(A)は正面視形状であり、周方向にレバープレート33の一端部が取り付けられる長円形状の嵌合穴49が形成されている。
【0034】
また、二又爪部43と、その二又爪部43の間に形成されたピン挿入溝45と、ピン46によって、リンク機構部35の出力部と可変ノズル機構部23の入力部とを係合せしめる係合部51が構成されている。
【0035】
出力レバー41は、図4に示すように二又爪部43の根元部分には連結レバー39の端部が接続し、二又爪部43の間に形成されるピン挿入溝45は略長円形状に切り欠かれた形状になっており、長円形状の短径部分はピン46が遊嵌する程度の幅を有している。さらに、二又爪部43の左右それぞれの先端部分には角R処理(Ra)が施されている。
【0036】
この角R処理(Ra)の曲面処理により、環状の凹部17の内周壁面への二又爪部43の先端角部分の接触を回避してピン46と二又爪部43との係合位置をドライブリング31の外周側に位置させるようにしている。これにより、小さい出力レバー41の回転力で安定したドライブリング31の回動が行われるようになっている。
また、二又爪部43の平滑面47側の開口周縁部分には、ピン46が挿入しやすいように角R処理(Rb)が施されている。
【0037】
図5、図6、図7は、図4に示した出力レバー41の変形例の出力レバー53である。図7は図5、図6のF−F線断面図を示す。
図5、図6、図7のように、出力レバー53は二又爪部55と挿入溝54を有し、該二又爪部55の断面形状は略L字状を有し、該略L字状の平滑面57(図7)の幅dは、図4に示した直線状の出力レバー41より広く形成されている。
その他の構成は図4と同様である。この変形例の場合には、平滑面57側の幅dを広く確保してあるので、ピン46の先端との当接面が広がりピン46の組み付け時の作業性が向上するとともに、ピン46と接触する二又爪部55の部分だけを略L字状の断面形状として他の部分を図4のレバーよりも薄肉化することで、出力レバー53の全体重量の軽量化ができるため、作動時の出力レバー53の回転作動の安定性と摺動部分の負荷低減効果も得られる。
【0038】
以上のように構成された可変ノズル機構付きの排気ターボチャージャ1の作動は、エンジンからの排気ガスはスクロール5に入り、該スクロール5の渦巻に沿って周回しながらノズルベーン19aに流入する。そして、この排ガスは、ノズルベーン19aの翼間を通過してタービンロータ7にその外周側から流入し、中心側に向かい半径方向に流れてタービンロータ7に膨脹仕事をなした後に、軸方向に沿って流れ、ガス出口に案内されて機外に送出される。
【0039】
可変ノズル機構付きの排気ターボチャージャ1の容量を制御するにあたっては、ノズルベーン19aを流れる排ガスが所要の流速になるような該ノズルベーン19aの翼角を設定し、翼角制御手段(不図示)により翼角を変更する。かかる翼角に対応するアクチャエータの往復変位はドライブリング31に伝達され、該ドライブリング31が回転駆動される。該ドライブリング31の回動により、レバープレート33が回動してレバープレート33の他端部に固定されたノズル軸19bが回動されて、このノズル軸19bの回動によりノズルベーン19aが回動して翼角が変化する。
【0040】
次に、可変ノズル機構部23を軸受ハウジング13の背面15に形成された凹部17に組み付ける組付手順について説明する。
リンク機構部35がまず軸受ハウジング13側に組み付けられ、このリンク機構部35が組み付けられた軸受ハウジング13を用意し、軸受ハウジング13の凹部17に対して可変ノズル機構部23を合わせて重ねるように組み付ける。この際に、係合部51を構成するピン46を、出力レバー41(53)の二又爪部43(55)の平滑面47(57)に当てるようにして大まかに位置合わせを行う。
【0041】
その後、ピン46の先端部を図6に示すように平滑面47(57)に沿って移動しながらピン46の先端位置をピン挿入位置に位置させる(図6(B))。
そのピン挿入位置に合致した位置に来たときには、平滑面47(57)側の長円形の開口周縁部分には、ピン46が挿入しやすいように角R処理(Rb)(R2〜3程度)が施されているとともに、軽く押し付けながら平滑面47(57)上を滑らすため、挿入位置でピンの移動が止まることで、認識できる。
その後、さらに押し付けてピン46をピン挿入溝45(54)内に挿入する。
【0042】
そして、ノズルマウント21の外周部分を、軸受ハウジング13の凹部17の先端に合わせるように位置させて、凹部17の先端部とタービンハウジング3の円筒形状の開口部の段付き先端部によって挟み込むとともに、ボルト59によって固定する。このノズルマウント21の外周部分を軸受ハウジング13とタービンハウジング3との間に挟持するときに、ノズルプレート27をタービンハウジング3の内筒部先端側に嵌合する。
【0043】
以上のような組み付け方法によると、軸受ハウジング13に対して可変ノズル機構部23を組み付ける際に、係合部51のピン46を、相手側の出力レバー41の平滑面47に当てて、その後、ピン46の先端部を平滑面47に沿って移動しながらピン46をピン挿入溝45に位置させるため、挿入位置でピンの移動が止まることで、その挿入位置を簡単に認識でき、ピン46と該ピン46の挿入位置との位置合わせを容易に行うことができる。
なお、押し込む側は、軸受ハウジング13側からでも、可変ノズル機構部23側からでも、どちらからでも可能である。
【0044】
軸受ハウジング13の凹部17の内周側に、係合部51が存在することによって、組み立ての際に、凹部17の縦壁17aの影になってピン46の先端および挿入位置の視認性が悪くても確実に且つ簡単に組み立てができるようになる。
その結果、組み付け不良も生じにくくなり可変容量型ターボチャージャ1の品質の安定性が向上する。
【0045】
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、第1実施形態の係合部51を構成したピン46とピン挿入溝45(54)との配置関係を逆にした係合部60を形成している。
【0046】
図8に示すように、出力レバー61の端部にピン63を形成し、そのピン63に対向する位置のドライブリング65の外周側の側壁面に挿入溝67または挿入孔を形成する。この挿入溝67または挿入孔は、ピン63の当接面側から反対側に切り起こされて形成されている。切り起こしの角部には角R処理(Rc)(R2〜3程度)が施されている。
【0047】
また、挿入溝67または挿入孔の周囲にはピン63の先端部を挿入位置に案内可能な平滑面69が形成されている。すなわち、該挿入溝67または挿入孔の周囲のドライブリング65の側面が該平滑面69を形成している。
【0048】
第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様に、軸受ハウジング13に対して可変ノズル機構部23を組み付ける際に、係合部60のピン63を平滑面69に当てて、その後、ピン63の先端を平滑面69に沿って移動しながらピン63をピン挿入溝67に位置させるため、挿入位置でピン63の移動が止まることで、その挿入位置を簡単に認識でき、ピン63と該ピン63の挿入溝との位置合わせが容易になる。
【0049】
なお、以上の第1実施形態、および第2実施形態において、ピンの挿入溝または挿入孔の周縁部には前記ピンが挿入しやすいように角R処理を施す説明をしたが、ピン46、63の先端側にもさらに角R処理を施してもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、可変ノズル機構をアセンブリー化して、そのアセンブリー化した可変ノズル機構を軸受ハウジング等のハウジングに組み付ける際に、外部のアクチュエータからの往復変位の駆動力を回転変位の駆動力に変換するリンク機構と前記可変ノズル機構との連結作業を確実に、且つ簡単に行うことができるので、可変容量型のターボチャージャへの利用に適している。
【符号の説明】
【0051】
1 可変容量型のターボチャージャ
3 タービンハウジング
5 スクロール
7 タービンロータ
9 タービンシャフトと、
11 軸受
13 軸受ハウジング
17 凹部(円筒壁部)
23 可変ノズル機構部(可変ノズル機構)
35 リンク機構部(リンク機構)
51、60 係合部
46、63 ピン
47、57、69 平滑面
43、55 二又爪部
45、54、67 ピン挿入溝(挿入溝)
41、53 61 出力レバー
31、65 ドライブリング



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスが内部に導入されるタービンハウジングと、
該タービンハウジング内に設けられて排ガスによって回転駆動されるタービンロータと、
一端が前記タービンハウジング内に挿入され、該一端に前記タービンロータが取り付けられるタービンシャフトと、
該タービンシャフトを支持する軸受と、
該軸受が収納され、かつ外周部から軸方向に張り出した円筒壁部が形成された軸受ハウジングと、
該軸受ハウジングの前記円筒壁部の内側に組み付けられ、前記タービンロータへの排ガスの流れを調整する可変ノズル機構と、
該可変ノズル機構を作動せしめるアクチュエータからの往復変位を回転変位に変換して軸受ハウジング内部に伝達するリンク機構と、
前記リンク機構の出力部と前記可変ノズル機構の入力部とを係合せしめる係合部と、を備え、
該係合部はピンと該ピンが挿入するピン挿入孔または挿入溝からなるピン挿入部によって構成されるとともに、該ピンの挿入位置の周囲にピンの先端を挿入位置に案内可能な平滑面が形成されていることを特徴とする可変容量型ターボチャージャ。
【請求項2】
前記ピンが前記可変ノズル機構を構成するドライブリングの外周側の側面に突設されてなり、前記ピン挿入部が前記リンク機構を構成する出力レバーの端部に形成された二又爪部とその間に形成された挿入溝からなり、前記二又爪部の側面が前記平滑面を形成することを特徴とする請求項1記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項3】
前記ピンが前記リンク機構を構成する出力レバーの端部に突設されてなり、前記ピン挿入部が前記可変ノズル機構を構成するドライブリングの外周側の側面に形成された溝または孔からなり、該溝または孔の周囲のドライブリングの側面が前記平滑面を形成することを特徴とする請求項1記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項4】
前記ピン挿入部のピン挿入孔または挿入溝の周縁部には前記ピンが挿入しやすいように角R処理がされていることを特徴とする請求項2または3記載の可変容量型ターボチャージャ。
【請求項5】
前記請求項1乃至4に記載の可変ノズル機構を前記軸受ハウジングに組み付ける可変ノズル機構の組付方法であって、前記リンク機構が組み付けられた軸受ハウジングを用意し、該軸受ハウジングに対して前記可変ノズル機構を組み付ける際に、前記係合部のピンを前記平滑面に当てて、その後、ピンの先端部を平滑面に沿って移動しながらピンをピン挿入位置に位置させ、その後可変ノズル機構を軸受ハウジング側に押し込んで組み付けることを特徴とする可変ノズル機構の組付方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−72403(P2013−72403A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213558(P2011−213558)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【特許番号】特許第5134717号(P5134717)
【特許公報発行日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】