説明

可変容量型内接歯車ポンプ

【課題】偏心リングの位置に応じて接触位置を適宜調節することにより、所要の液体の吐出量に調整し得ることを実現する可変容量型内接歯車ポンプを提供する。
【解決手段】可変容量型内接歯車ポンプは、偏心リング8がスプリング9の付勢力に抗して吐出ポート3側へ移動することでカム部材たる間座28と偏心リング8の外周面との接触位置が変化することにより、液体たる潤滑油の吐出量が可変になる。これにより、回転数に応じた所要の吐出油圧の獲得を実現している。具体的には、可変バルブタイミング機構を作動させ得る吐出油圧の確保と、高回転域での潤滑油の速やかな供給とを両立させ得るものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や自動変速機などにおける潤滑油や作動油などを送り出す可変容量型内接歯車ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可変容量型内接歯車ポンプ(以下、内接歯車ポンプと称する)としては、例えば特許文献1のもののように、ポンプボディ内にカムリングを揺動移動自在に保持し、駆動軸にインナーロータを係合し、インナーロータと噛み合う内接歯型のアウターロータをカムリング内に回転自在に保持したものが知られている。特許文献1に記載のものでは、吐出口の圧力が設定圧力以上に上昇した時、カムリングをポンプボディの内孔内の径方向に揺動移動させることにより、ポンプの歯高さを公転直径としインナーロータの回転中心位置を公転中心として、アウターロータの回転中心位置を公転させる。これによって、ポンプボディに固定して配置された、吸入領域上に相対し位置するインナーロータの外歯とアウターロータの内歯とにより形成される油移送溜まり部の容積を変化させて吐出量を可変にする構成である。
【0003】
具体的には、吐出口の圧力は駆動軸の回転速度に依存する。そして圧力は設定圧力までは比例して上昇する挙動を示すが、設定圧力以上に上昇すると、油移送溜まり部の容積を減じることにより駆動軸一回転当たりの吐出量を減じることにより、例えば可変バルブタイミング機構を作動させるに足るような所要の吐出量で保持する。これにより、回転数上昇に伴う無駄な吐出量の上昇を回避し得るようになっている。
【0004】
しかしながら実際には、回転数のさらなる上昇に伴って必要となる内燃機関の冷却のために高回転数の場合ではより吐出量を上昇させたり、或いは他の要因によって吐出量を抑えたりするなど、内燃機関の回転数に応じて所要の潤滑油の吐出量に調整し得るものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8‐159046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の点に着目したものであり、内燃機関の回転数に応じた所要の吐出量に調整し得る可変容量型内接歯車ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち本発明に係る可変容量型内接歯車ポンプは、吸入ポートと吐出ポートとポンプ室とを備えるハウジングと、ハウジング内に収容されるアウターロータと、アウターロータを収容する偏心リングと、アウターロータに噛み合うインナーロータと、アウターロータを吸入ポート側に付勢する弾性部材とを備えてなる可変容量型内接歯車ポンプであって、吐出ポートにおける液体圧力が高くなった際には偏心リングが弾性部材の付勢力に抗して吐出ポート側へ移動するものであり、弾性部材の先端側において偏心リングに接し得るカム部材を設け、当該カム部材の形状を偏心リングが弾性部材の付勢力に抗して吐出ポート側へ移動することで当該カム部材と偏心リングの外周との接触位置が変化し得る形状とすることにより、液体の吐出量が可変になることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、当該カム部材の形状を偏心リングが弾性部材の付勢力に抗して吐出ポート側へ移動することで当該カム部材と偏心リングの外周との接触位置が変化し得る形状とし、偏心リングの位置に応じて接触位置を適宜調節することにより、所要の液体の吐出量に調整し得ることを実現する可変容量型内接歯車ポンプが実現可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内燃機関の回転数に応じて所要の潤滑油の吐出量に調整し得るものを実現する可変容量型内接歯車ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態の内部構成を示す平面図。
【図2】同実施形態の断面図。
【図3】同実施形態の吐出量が最少となる場合の内部構成を示す平面図。
【図4】同実施形態に係るグラフ。
【図5】同実施形態に係る要部の動作説明図。
【図6】本発明の第二実施形態の内部構造を示す平面図。
【図7】同実施形態の吐出量が最小となる場合の内部構成を示す平面図。
【図8】同実施形態に係るグラフ。
【図9】同実施形態に係る要部の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
この実施形態の可変容量型の内接歯車ポンプ(以下、内接歯車ポンプと称する)100は、自動車の内燃機関たるエンジンに取り付けられてクランク軸1により駆動されるもので、エンジンの潤滑系統に液体である潤滑油を供給するものである。内接歯車ポンプ100は、吸入ポート2と吐出ポート3とポンプ室4とを備えるハウジング5と、ハウジング5内に収容されるアウターロータ6と、アウターロータ6に噛み合うインナーロータ7と、アウターロータ6の外周に嵌められる偏心リング8と、アウターロータ6を吸入ポート2側に付勢する弾性部材であるスプリング9とを備えている。
【0014】
ハウジング5は、アウターロータ6、インナーロータ7及びスプリング9を収容するケース部10と、そのケース部10を閉じるようにして取り付けられるカバー部11とを備えている。ケース部10は、そのほぼ中央位置に、アウターロータ6、インナーロータ7及び偏心リング8を収容するポンプ室4を備えるとともに、スプリング9を収納するスプリング室13を備える。これに加えて、ケース部10は、図示しないストレーナが接続される吸入部に連通する連通孔15と、連通孔15からスプリング室13に潤滑油を導く導入路16とを備えている。また、連通孔15に通じポンプ室4の吸入ポート2側に潤滑油を導く導入路51を備えている。
【0015】
ポンプ室4は平面視において、中心の異なる複数の円弧を連続させるようにして内周壁41の形状が決定されている。ポンプ室4の内径は、偏心リング8の外形より大きいものである。なお、初期位置22とは、吐出ポート3側の潤滑油の圧力が低く、スプリング9の付勢力により偏心リング8すなわちアウターロータ6が後述する吸入ポート2側に付勢されている場合に、アウターロータ6が留まっている位置(の中心)である。又、90°移動位置26とは、後述する吐出ポート3側の潤滑油の圧力が最大になった場合に、アウターロータ6がスプリング9の付勢力に抗して移動した際の位置(の中心)である。ここで、矢印はアウターロータ6の回転中心の移動軌跡である。アウターロータ6は、初期位置22から90°移動位置26まで図示の矢印に概ね沿って公転するようになっている。
【0016】
スプリング室13は、スプリング9を収容するもので、そのポンプ室4側の端部には、スプリング9の端部に設けられるカム部材たる間座28を収容する小室29を備えている。このスプリング室13の小室29に導入路16の一端が接続され、初期位置22にアウターロータ6がある場合に、間座28のスプリング9側に潤滑油が導入される。スプリング室13は、ポンプ室4と連通している。これにより、ポンプ室4の内周壁41と偏心リング8の外周面との間には潤滑油が存在することになる。また、ポンプ室4の内周壁41のうち吸入ポート2側に設けた導入路51により90°移動位置26にアウターロータ6がある場合やアウターロータ6が初期位置から90°移動位置26に到る途中の位置にある場合においても、ポンプ室4の内周壁41と偏心リング8の外周面との間には潤滑油が存在することになる。
【0017】
カバー部11は、図2そのケース部10に対向する第一面に、インナーロータ7のための軸孔30の周囲に設けられる吸入ポート2と吐出ポート3とを備えている。
【0018】
アウターロータ6は、外形を真円とするもので、内歯歯車である。これに対して、インナーロータ7は、アウターロータ6の内歯に噛み合う外歯歯車であり、歯数はアウターロータ6のそれより一つ少ない。偏心リング8は、外形がほぼ真円の円環状のもので、内径をアウターロータ6の外径とほぼ同一としている。
【0019】
また詳細は後述するが、本実施形態では、偏心リング8の間座28に対応する位置では、偏心リングの8外周面8aが、スプリング9先端の間座28に平面視で点接触すなわち線接触し、偏心リング8の動作に応じてその接触位置a(図5)が変り得るように構成してある。
【0020】
このような構成において、スプリング室13にスプリング9を挿入し、ポンプ室4に偏心リング8を外周に嵌めたアウターロータ6を入れ、そのアウターロータ6の内側にインナーロータ7を挿入する。この状態でカバー部11をケース部10に固定して、ポンプ室4を実質的に閉じる。インナーロータ7は、クランク軸1に接続されるものである。
【0021】
このようにして組み立てられて、アウターロータ6が初期位置(の中心)22である状態では、アウターロータ6の内歯とインナーロータ7の外歯とが、吸入ポート2と吐出ポート3とが最も近接しつつ対向する間にある部分において完全に噛み合う。
【0022】
この初期位置22において、偏心リング8の外周は、吸入ポート2寄りの位置に内周壁41に接触している。この実施形態では、インナーロータ7が、図1において、反時計回転方向に回転するものである。初期位置においては、インナーロータ7とアウターロータ6とは、上述したように一歯のみが完全に隙間なく噛み合い、他の内歯及び外歯との間には空隙42が形成される。初期位置22において静止している状態では、空隙42は、その噛み合い箇所43から回転方向に移動するにしたがって大きく、つまり吸入ポート2に沿って大きくなり、噛み合い箇所43と対向する位置において最大となる。そして、空隙42が最大になる位置からさらに回転方向に移動するにしたがって、つまり吐出ポート3に沿って移動するにしたがって小さくなる。
【0023】
以上に説明した初期位置22から、インナーロータ7が回転すると、吸入ポート2に潤滑油が導かれ、吸入ポート2の位置にある空隙42に入る。空隙42に吸入された潤滑油は、空隙42が吐出ポート3の位置まで移動することにより、空隙42の容積が小さくなることで吐出される。このようにして、潤滑油を潤滑系統に供給することにより、潤滑状態に応じて吐出ポート3側において潤滑油の油圧が上昇する。
【0024】
油圧の上昇に伴って、吐出ポート3内の油圧が上昇し、その結果、吐出ポート3に接続されている空隙42内の圧力が上昇する。これにより、アウターロータ6は、内歯と外歯とが完全に噛み合う噛み合い箇所43を支点として、インナーロータ7とアウターロータ6との偏心量を公転半径とし、インナーロータ7の回転中心を公転中心としてスプリング9の弾性力に抗してインナーロータ7と同じ回転方向に移動する。この場合、偏心リング8の外周壁がポンプ室4の内周壁41が所定隙間52を維持した状態で回転方向に移動しながら、アウターロータ6が移動するものである。このようにしてアウターロータ6の中心が90°移動位置(の中心)26に向かって移動することにより、吸入ポート2の位置にある空隙42が小さくなっていく。つまり、吸入ポート2の位置の空隙42の容積が減少し、吸入する潤滑油の油量、したがって吐出する油量(吐出量)が減少していく。
【0025】
そして、さらに吐出ポート3内の油圧が上昇して最大になると、アウターロータ6は90°移動位置26に到達する。この間、つまり初期位置22から90°移動位置26へ移動する間、偏心リング8は、ポンプ室4の内周壁41に所定隙間52を維持した状態で近接しており、最終的にはアウターロータ6が90°移動位置26にある状態で吸入ポート寄りの位置にほぼ密着する。すなわちアウターロータ6が90°移動位置26に達した状態では、吸入ポート2の位置にある空隙42が最少になるため、吸入量が最少となって吐出量が最少となる。このため、潤滑系統における潤滑油の消費量が降下するのに対応して、吐出ポート3側における圧力も降下し、アウターロータ6はスプリング9の弾性力により初期位置22に向かって付勢される。
【0026】
このように、吐出ポート3側の圧力が上昇することにより、噛み合い箇所43を支点とする回転力がアウターロータ6に作用し、アウターロータ6がインナーロータ7と同じ方向に回転する。これにより偏心リング8がスプリング9の弾性力に抗して移動する。この場合に偏心リング8が吐出ポート3側に向かって移動する。
【0027】
しかして本実施形態ではエンジンが、図示しない可変バルブタイミング機構を備えている。この可変バルブタイミング機構とは、作動油の油圧により図示しない吸気カムシャフト及び排気カムシャフトとの間に所望の回転位相差を生じさせて、バルブタイミングを可変制御するものである。
【0028】
この可変バルブタイミング機構を行なうためには所定圧力以上の潤滑油の吐出油圧を要する。すなわち本実施形態では上述の通り、クランク軸1の回転数上昇に起因する吐出ポート3側の圧力が一定以上上昇すると吐出量を減じるようにすることにより、この可変バルブタイミング機構を行ない得るまでの油圧を無駄なく獲得しつつ、無駄な吐出油圧の上昇を回避し得るようにしている。
【0029】
しかして本実施形態では、偏心リング8がスプリング9の付勢力に抗して吐出ポート3側へ移動することで当該間座28と偏心リング8の外周面8aとの接触位置aが変化することにより、液体たる潤滑油の吐出量が可変になることを特徴とするものである。
【0030】
本実施形態では図1及び図3に示すように、間座28において偏心リング8に当接する面を凸面28aとしている。これにより、クランク軸1の回転数上昇により図3に示す矢印に沿って偏心リング8が動作する際には、吐出油圧が図4に示すように変化する。
【0031】
具体的には同図に示すように、一定の回転数までは図1に示す所期位置22で潤滑油を吐出するため、回転数に比例して吐出油圧は上昇する。しかしスプリング9を弾性付勢し移動させ得るVVT作動油圧に該当する回転数に到達すると、偏心リング8の移動に伴いクランク軸1の一回転当たりの潤滑油の吐出量が減じられるために、回転数の上昇と吐出量の減少とが相殺されることにより吐出油圧が横ばいの状態となる。これにより、斯かる回転数領域に於いては可変バルブタイミング機構を作動させ得る吐出油圧を確保しつつ不要なそれ以上の吐出油圧の上昇が抑制される。しかしながら回転数がさらに上昇すると、エンジンの温度上昇を抑制することとより潤滑を促すために、再び吐出油圧は再び上昇に転じるようになる。
【0032】
このことは、図5に示す間座28の凸面28aと偏心リング8の外周面8aとの接触位置aが、同図左側に示す初期位置から一旦、図示中央に示す一方側へ凸面28aにおいて徐々に没入していく向きに移動すること偏心リング8の移動が凸面28aの形状によって促されるために吐出油圧の抑制度合いが強く起こる。しかる後にある回転数を超えると、図示左側に示す90°移動位置26へ向かって他方側へ、すなわち凸面28aにおいて徐々に隆起していく向きに接触位置aが移動することにより偏心リング8の移動が凸面28aの形状に妨げられる分、回転数の上昇に対する吸入ポート2の位置の空隙42の容積の減少度合いが追いつかなくなるので、再び吐出油圧は上昇するようになる。これにより、可変バルブタイミング機構を作動させ得る吐出油圧の確保と、高回転域での潤滑油の速やかな供給とを両立させ得るものとなっている。
【0033】
このように、本実施形態によれば、カム部材たる間座28の凸面28aと外周面8aとの接触位置aを変更させることによって回転数の上昇に伴う吐出油圧の抑制の度合いを変動させることにより、回転数に応じた所要の吐出油圧の獲得を実現している。具体的には、可変バルブタイミング機構を作動させ得る吐出油圧の確保と、高回転域での潤滑油の速やかな供給とを両立させ得るものとしている。
【0034】
<第二実施形態>
以下に、本実施形態の第二実施形態について説明する。本実施形態において、上記第一実施形態の構成要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
【0035】
本実施形態に係る内接歯車ポンプ100は、間座28の形状が凸面ではなく凹面とすることにより、接触位置bの移動による偏心リング8aが移動する挙動が異なる以外は、上記実施形態のそれと共通する。また内燃機関が可変バルブタイミング機構を備えている点も同様である。
【0036】
つまり本実施形態では、間座28において偏心リング8の外周面8aに接触する凹面8bを設けることによって、クランク軸1の回転数に応じた所要の潤滑油の吐出圧力を得るようにしている。以下、具体的に説明する。
【0037】
本実施形態では図6及び図7に示すように、間座28において偏心リング8に当接する面を凹面28bとしている。この凹面28bを形成する曲率は、具体的には偏心リング8の外周面8aの曲率よりも小さく設定している。換言すれば凹面28aの曲率半径は外周面8aの曲率半径よりも大きく設定している。
【0038】
そしてクランク軸1の回転数上昇により図3に示す矢印に沿って偏心リング8が動作する際には、吐出油圧が図8に示すように変化する。
【0039】
具体的には同図に示すように、一定の回転数までは図1に示す所期位置22で潤滑油を吐出するため、回転数に比例して吐出油圧は上昇する。しかしスプリング9を弾性付勢し移動させ得るVVT作動油圧に該当する回転数に到達すると、偏心リング8の移動に伴いクランク軸1の一回転当たりの潤滑油の吐出量が減じられるために、回転数の上昇と吐出量の減少が相殺することにより吐出油圧の上昇度合いが緩慢となるが、第一実施形態ほどには吐出油圧の上昇は抑制されない。これにより、斯かる回転数領域に於いては可変バルブタイミング機構を行ない得る吐出油圧を十分に確保している。しかしながら回転数がさらに上昇すると、さらに吐出油圧の上昇度合いが抑制されていき、高回転域では吐出油圧は略横ばいとなる。
【0040】
このことは、図9に示す間座28の凹面28bと偏心リング8の外周面8aとの接触位置bが、同図左側に示す初期位置から一旦、図示中央に示すように一方側へ凹面28bにおいて徐々に隆起していく向きに移動すること偏心リング8の移動が凹面28bの形状によって抑制されるために吐出油圧の抑制度合いが緩やかながら起こる。しかる後にある回転数を超えると、図示右側へ示す90°移動位置26へ向かって他方側へ、すなわち凹面28bにおいて徐々に没入していく向きに接触位置bが移動することにより偏心リング8の移動が凹面28bの形状に促される分、回転数の上昇に対する吸入ポート2の位置の空隙42の容積の減少度合いが強くなる。これにより、可変バルブタイミング機構を作動させ得る吐出油圧の確保と、高回転域での潤滑油の過度な供給の抑制とを両立させ得るものとなっている。
【0041】
このように、本実施形態によれば、カム部材たる間座28の凹面28bと外周面8aとの接触位置bを変更させることによって回転数の上昇に伴う吐出油圧の抑制の度合いを変動させることにより、回転数に応じた所要の吐出油圧の獲得を実現している。具体的には、可変バルブタイミング機構を作動させ得る吐出油圧の確保と、高回転域での潤滑油の過度な供給の抑制とを両立させ得るものとしている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態においては、ハウジングをエンジンとは個別の部材で構成するものを説明したが、エンジンのシリンダブロックと、シリンダブロックに取り付けられるチェーンカバーとでハウジングを構成するものであってよい。さらには上記実施形態ではカム部材には凸面、凹面の何れかを設けた態様を開示したが、所要の吐出油圧を得るべく、凹凸を組み合わせるような形状であっても良い。また歯車の歯数や間座に設ける凹面、凸面の曲率といった具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0044】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は内燃機関や自動変速機などにおける潤滑油や作動油などを送り出す可変容量型内接歯車ポンプとして利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
2…吸入ポート
3…吐出ポート
4…ポンプ室
5…ハウジング
6…アウターロータ
7…インナーロータ
8…偏心リング
9…弾性部材(スプリング)
28…カム部材(間座)
100…可変容量型内接歯車ポンプ(内接歯車ポンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入ポートと吐出ポートとポンプ室とを備えるハウジングと、ハウジング内に収容されるアウターロータと、アウターロータを収容する偏心リングと、アウターロータに噛み合うインナーロータと、アウターロータを吸入ポート側に付勢する弾性部材とを備えてなる可変容量型内接歯車ポンプであって、
吐出ポートにおける液体圧力が高くなった際には偏心リングが弾性部材の付勢力に抗して吐出ポート側へ移動するものであり、
弾性部材の先端側において偏心リングに接し得るカム部材を設け、当該カム部材の形状を偏心リングが弾性部材の付勢力に抗して吐出ポート側へ移動することで当該カム部材と偏心リングの外周との接触位置が変化し得る形状とすることにより、液体の吐出量が可変になることを特徴とする可変容量型内接歯車ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96290(P2013−96290A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239149(P2011−239149)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】