可変焦点レンズ及びその焦点制御方法
【課題】 高速応答を可能化にした可変焦点液体レンズ及びその焦点制御方法を提供する。
【解決手段】 圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12を有する超音波振動子11の駆動により励振される超音波を上記中央開口部12に放射して、該中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子11が上記中央開口部12に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変する。
【解決手段】 圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12を有する超音波振動子11の駆動により励振される超音波を上記中央開口部12に放射して、該中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子11が上記中央開口部12に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的可動部を有することなく焦点を可変できる可変焦点レンズ及びその焦点制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焦点距離調整機能を有する顕微鏡や撮像装置、情報記録再生装置等の各種光学装置のレンズ系においては、多くの場合、ネジ等の直動機構を手動や電動(モータ等)により、複数のレンズ間の距離を変化させて焦点距離を変化させて、焦点距離調整を行うようにしていた。
【0003】
例えば、携帯型電子機器等における撮像部の光学系は、プラスチックレンズと、それを光軸方向に移動させ焦点位置を変化させるためのアクチュエータとギア機構を組み合わせたものが主流となっている。
【0004】
これに対し、レンズの位置関係を動かすことなく、例えば電気的な制御信号のみによって焦点距離を変化させることができる可変焦点液体レンズとして、例えば、透明部材の間に2種の液体が挿入され、電圧印加によりエレクトロウェッティング現象を利用して液体界面を変形させるようにしたもの可変焦点液体レンズ(例えば、特許文献1、2参照)や、透明部材と薄板や弾性膜等より成る変形部との間に液体が挿入され、液体に圧力を加えることによって薄膜や弾性膜を変形させるようにした可変焦点液体レンズ(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
また、アクチュエータにより機械的にシリコーンゲルを変形させるようにした可変焦点レンズ(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4154858号公報
【特許文献2】特開2006−145807号公報
【特許文献3】特開2009−217249号公報
【特許文献4】特開2009−271095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子機器のディジタル化の進展とともに、ディジタルスチルカメラが普及してきている。ディジタルスチルカメラにおいて、薄型でコンパクトカメラが市場で求められている。また、携帯電話のカメラ装着率の拡大に伴い、より軽くかつより薄い携帯電話の撮像部のコンパクト化が強く要請されてきている。
【0008】
しかしながら、ステッピングモータやボイスコイルモータ等のアクチュエータ付レンズは、フォーカシングの際に光軸に沿ってレンズを動かす必要があるため、レンズモジュールが大きくなる、時間応答性が低いなどの問題点があり、また、機械的可動部を有するため、衝撃に弱い、部品数が多いなどの問題点がある。
【0009】
また、可変焦点液体レンズは、レンズの位置関係を動かすことなく焦点を可変することのできるので、光学系を薄型化するのに適しているのであるが、レンズの使用条件、使用時間によっては2液体が混ざり合い乳化によるレンズの白濁や、レンズ液体内に電気分解やキャビテーションによる気泡が発生し、レンズの光学特性に影響を与え、また、環境温度によって液体粘性が変化し,レンズの光学特性に影響を与えるなどの問題点がある。
【0010】
さらに、アクチュエータにより機械的にシリコーンゲルを変形させる可変焦点レンズでは、アクチュエータを用いるためレンズの応答速度が遅く、また、機械的可動部を有し部品数が多いなどの問題点がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の現状に鑑み、簡単な構造で高速応答を可能にした薄型の可変焦点レンズ及びその焦点制御方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
液体表面に超音波が伝搬した場合,その気液界面ではエネルギー密度差により,液体側から気体側に向かって静圧(音響放射力と呼ばれる)が働き、液体は気体側に向かって引っ張られる形となり液面形状が変形する現象がある。従来、本現象を用いて液体の粘性を測定する手法などが報告されている。
【0014】
本発明では、人体の水晶体を模擬した機械的可動部を持たない可変焦点レンズを透明粘弾性材料とリング型圧電超音波振動子で構成し、レンズ自体を超音波の放射力により変形させることにより、その焦点位置を変化させる。すなわち、粘弾性材料に音響放射力を作用させ、その形状を変化させて可変焦点レンズとして動作させる。本発明に係る可変焦点レンズでは、アクチュエータなどの動作機構を必要としないことから、従来の可変焦点レンズに比べて大幅に小型化することができる。また、リング状超音波振動子の径方向広がり振動モードを利用することにより、厚み方向に依存しないレンズ設計が可能となり、さらに小型化することができる。
【0015】
すなわち、本発明は、可変焦点レンズであって、圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子と、上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部とを備え、上記超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射して上記レンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子は、上記圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部に音響定在波を発生させるものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子は、正円形状の上記中央開口部を囲繞する円環状の圧電体からなるものとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子は、長径と短径を有する長尺な直線状の上記中央開口部を囲繞する圧電体からなり、超音波を上記中央開口部に放射して音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部をシリンドリカルレンズとして機能させるものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記レンズ部は、入射側開口又は出射側開口の一方が透明樹脂フィルムにて閉じられた上記超音波振動子の上記中央開口部に注入された透明粘弾性材料の原材料液体をゲル化してなるものとすることができる。
【0020】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記透明樹脂フィルムは、上記レンズ部を正レンズとして機能させる曲面を有するものとすることができる。
【0021】
さらに、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記透明樹脂フィルムは上記レンズ部を負レンズとして機能させる曲面を有するものとすることができる。
【0022】
また、本発明は、焦点制御方法であって、リング状の圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射し、上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レンズ自体を超音波の放射力により変形させることにより、その焦点位置を変化することができ、透明粘弾性材料からなるレンズ部とリング型圧電超音波振動子のみで構成される単純な構造の可変焦点レンズとしたことにより、通常のカメラモジュールに必要な焦点合わせのためのアクチュエータやギア機構を不要であり、これらモジュールを大幅に小型化することができる。
【0024】
本発明に係る可変焦点レンズは、リング状超音波振動子の径方向広がり振動モードを利用することにより、厚み方向に依存しないレンズ設計が可能となり、1mm程度に薄型化することが可能であり、また、代表的な可変焦点レンズである液体レンズに比べて、構造がより単純であるため、大量生産性に優れている。また、耐熱・耐寒性を有する粘弾性材料(例えばシリコーンゲル)をレンズ部に用いることにより、液体レンズで問題となる温度依存性を改善でき、また、レンズ内への気体の混入などの心配もない。
【0025】
したがって、本発明によれば、簡単な構造で高速応答を可能にした薄型の可変焦点レンズ及びその焦点制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した可変焦点レンズの構成を模式的に示す図であり、(A)は可変焦点レンズの斜視図であり、(B)はその断面図である。
【図2】上記可変焦点レンズの製造過程を模式的に示す図である。
【図3】上記可変焦点レンズにおける超音波振動子の振動の様子を模式的に示す図であり、(A)は有限要素分析(FEM)による計算結果を示し、(B)は音響定在波の発生状態を示している。
【図4】上記可変焦点レンズにおいてレンズ部の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波を模式的に示す図であり、(A)は音響定在波の音圧分布の様子を示し、(B)はその音圧振幅値の有限要素分析(FEM)による計算結果を示している。
【図5】上記可変焦点レンズにおける超音波振動子を構成している圧電体に印加される周波数が226kHzの電気信号の電圧振幅値を0V、12V、15V、18V、21Vに変化した場合のレンズ部中央の変形の様子を示す図である。
【図6】上記レンズ部に光線が入射した場合の透過光分布の様子を示す図である。
【図7】上記可変焦点レンズにおける超音波振動子の駆動電圧と焦点距離の関係を示す図である。
【図8】上記可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子の駆動電圧をオンオフした場合に、1951 USAF テストパターンチャートを撮影して得られた画像の変化の様子を示す図であり、(A)はオフ状態での取得画像を示し、(A)はオン状態での取得画像を示している。
【図9】上記可変焦点レンズの応答速度の測定結果を示す図である。
【図10】上記可変焦点レンズを容器に収納した状態を示す断面図である。
【図11】上記可変焦点レンズのレンズ部に透明樹脂(PET)フィルムによりレンズ効果を付与した例を模式的に示す図であり、(A)はレンズ部を正(凸)レンズとして機能させた可変焦点レンズを示し、(B)はレンズ部を負(凹)レンズとして機能させた可変焦点レンズを示している。
【図12】シリンドリカルレンズとして機能する可変焦点レンズの構成を模式的に示す図であり、(A)は可変焦点レンズの平面図であり、(B)はその縦断側面図である。
【図13】複数個の可変焦点レンズを2次元に配列してレンズアレイを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0028】
本発明は、例えば図1に示すような構成の可変焦点レンズ10に適用される。
【0029】
図1は、本発明を適用した可変焦点レンズ10の構成を模式的に示す図であり、可変焦点レンズ10の斜視図を(A)に示し、その断面図を(B)に示している。
【0030】
この可変焦点レンズ10は、圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12を有する超音波振動子11と、上記中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13を備える。
【0031】
上記超音波振動子11は、図1の(B)に具体的な寸法例を示してあるように、正円形状の中央開口部12を有する厚み2mm、外径30mm、内径15mmの円環形状で、厚さ方向に分極される圧電体(例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrTi)O3 ))11Aからなる。
【0032】
上記圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12に充填される透明粘弾性材料としては、アクリル系粘弾性材料、シリコン系粘弾性材料、ウレタン系粘弾性材料など各種の透明粘弾性材料を挙げることができ、流動性がなく、複素弾性率が小さい材料が適している。
【0033】
この可変焦点レンズ10は、上記透明粘弾性材料として例えばシリコーンゲル(信越化学工業株式会社製のKE-1052、信越シリコーン)を用いて、次のようにして上記レンズ部13が形成されている。
【0034】
すなわち、この可変焦点レンズ10において、上記レンズ部13は、図2の(A)に示すように、入射側開口又は出射側開口の一方が厚み0.1mmの透明樹脂(PET)フィルム14にて閉じられた上記超音波振動子11の上記中央開口部12に、図2の(B)に示すように、透明粘弾性材料(シリコーンゲル)の原材料液体13Aを注入し、図2の(C)に示すように、注入された透明粘弾性材料の上記原材料液体13Aをゲル化することにより形成される。
【0035】
ここで、上記信越化学工業株式会社製のKE-1052、信越シリコーンは、−40°C〜200°Cに亘る広い温度範囲で安定した弾性を呈する無色透明で光透過性が良好なシリコーンゲルとして供給されており、その複素弾性率は2×104N/m2である。上記シリコーンゲル(信越化学工業株式会社製のKE-1052、信越シリコーン)は、主剤(KE-1052-A)と硬化剤(KE-1052-B)を所定の配合比で配合した無色透明の原材料液体を100〜150°Cで15分から60分加熱することにより硬化しゲル状になる透明粘弾性材料である。
【0036】
この可変焦点レンズ10のレンズ部13は、上記主剤(KE-1052-A)と硬化剤(KE-1052-B)を1:0.7の配合比で配合した原材料液体13Aをゲル化して形成した。このようにして形成したレンズ部13は、上記透明樹脂(PET)フィルム14を備えることにより、逆さにしてもレンズ形状の変化は極めて少なく、姿勢の影響を被ることはなかった。
【0037】
すなわち、上記透明樹脂(PET)フィルム14は、上記中央開口部12に透明粘弾性材料の原材料液体13Aを注入してゲル化して上記レンズ部13を形成する際に、上記原材料液体13Aが上記中央開口部12から漏出するのを防止する機能、及び、形成されたレンズ部13のレンズ面が姿勢に依存して変形するのを防止する機能を果たしている。
【0038】
上記中央開口部12に注入される透明粘弾性材料は、シリコーンゲルに限定されるものでなく、常温下又は加熱下において注入作業が可能な程度の流動性を有し、常温下又は加熱下において硬化する性質を有しているものであればよい。
【0039】
また、上記中央開口部12に注入された透明粘弾性材料の原材料液体13Aが表面張力によりその形状を維持して上記中央開口部12から漏出せず、また、ゲル化した状態でレンズ面の変形に姿勢が影響しない条件を満たすように、可変焦点レンズ10のサイズを小さくした場合、あるいは、上記条件を満たす特性の透明粘弾性材料を用いる場合には、上記透明樹脂(PET)フィルム14はなくても良い。
【0040】
このように上記中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13は、上記中央開口部12に注入された透明粘弾性材料の原材料液体13Aをゲル化してなるものとすることにより、上記中央開口部12を囲繞している上記圧電体11Aの内周壁とレンズ部13との間に空隙を生じることなく密着性を確保することができ、上記超音波振動子11により発生される超音波が効率よく伝搬されることになる。
【0041】
なお、上記レンズ部13は、上記中央開口部12の形状に適合した円盤形状に予め形成した透明粘弾性材料を上記中央開口部12に充填することにより形成するようにしても良い。
【0042】
そして、この可変焦点レンズ10において、上記超音波振動子11は、上記円環形状の圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振される周波数の連続正弦波の電気信号が上記圧電体11Aに印加されることにより駆動され、上記超音波振動子11の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部12に放射して上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部13の周囲の媒質(気体もしくは液体)と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面において生じるエネルギー密度差に応じて上記界面を静的に変形させてレンズ面として機能させる。
【0043】
すなわち、上記超音波振動子11は、上記圧電体11Aの振動状態を有限要素分析(FEM)により計算した結果を図3の(A)に示すように、周波数226kHz,18Vppの連続正弦波の電気信号が上記円環形状の圧電体11Aに印加されることより、上記圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振される。上記超音波振動子11の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部12に放射して上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に伝搬させると、図3の(B)に示すように、音響定在波を発生させることにより、透明粘弾性材料内に超音波を効率よく伝搬することができる。上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面は、上記音響定在波の発生により、静的に変形させてレンズ面として機能する。
【0044】
ここで、上記超音波振動子11の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部12に放射して上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に伝搬させることにより、上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波は、上記中央開口部12が正円形状であるので、図4の(A)に示すように、同心円状となる。上記音響定在波の音圧振幅値の有限要素分析(FEM)による計算結果は、図4の(B)に実線にて示すように、破線にて示すベッセル関数でフィッティングすることができる。
【0045】
そして、上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波により、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面において生じるエネルギー密度差は、上記レンズ部13の透明粘弾性材料の表面張力により平滑化され、上記界面が上記同心円の中心を通過する回転対称軸を光軸とする曲面形状に静的に変形されてレンズ面として機能する。
【0046】
上記超音波振動子11が上記中央開口部12に放射する超音波の放射圧は、上記圧電体11Aに印加される周波数が226kHzの電気信号の電圧振幅値に応じて変化するので、上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波による上記レンズ部13の透明粘弾性材料の変形変位は、上記電圧振幅値の増大とともに大きくなる。
【0047】
上記圧電体11Aに印加される周波数が226kHzの電気信号の電圧振幅値を0V、12V、15V、18V、21Vに変化した場合の上記レンズ部13中央の変形の様子を図5に示す。また、上記レンズ部13に光線が入射した場合の透過光分布の様子を図6に示す。さらに、この可変焦点レンズ10における超音波振動子11の駆動電圧と焦点距離の関係を図7に示す。このように、上記圧電体11Aに電気信号を印加することにより透過光が焦点を結び、この可変焦点レンズ10は、上記圧電体11Aに印加される電気信号の電圧振幅値に応じて焦点距離が変化する。
【0048】
この可変焦点レンズ10では、リング状の圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12を有する超音波振動子11の駆動により励振される超音波を上記中央開口部12に放射し、上記中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子11が上記中央開口部12に放射する超音波の放射圧、すなわち、上記圧電体11Aに印加される電気信号の電圧振幅値により、上記レンズ面の焦点を可変することができる。
【0049】
ここで、この可変焦点レンズ10において、上記超音波振動子11の駆動電圧をオンオフした場合に、1951 USAF テストパターンチャートを撮影して得られた画像の変化の様子を図8の(A)、(B)に示す。
【0050】
この可変焦点レンズ10は、上記超音波振動子11の駆動電圧をオフした状態では、負(凹)レンズとして働き、透過光はレンズ面で広まり、図8の(A)に示すように、焦点が存在しない。そして、この可変焦点レンズ10は、上記超音波振動子11の駆動電圧をオンすると、正(凸)レンズとして働き、図8の(B)に示すように、透過光は焦束され、駆動電圧が18Vであったとき、図8の(B)に示すように、対象にピントが合い、焦点距離はレンズ面から55mmであった。
【0051】
また、この可変焦点レンズ10の応答速度を測定した結果を図9に示す。
【0052】
この可変焦点レンズ10において、上記超音波振動子11の駆動電圧(18V)をオンしてから焦点が定常状態に達するまでの応答速度は、図9に示すように、およそ0.1秒であった。
【0053】
この可変焦点レンズ10は、最適設計することにより、さらに低電圧、高速応答化することが可能である。
【0054】
このような構成の可変焦点レンズ10では、レンズ自体を超音波の放射力により変形させることにより、その焦点位置を変化することができ、透明粘弾性材料からなるレンズ部13と超音波振動子11のみで構成される単純な構造であって、通常のカメラモジュールに必要な焦点合わせのためのアクチュエータやギア機構を不要であり、これらモジュールを大幅に小型化することができる。
【0055】
また、この可変焦点レンズ10では、径方向と直交する厚み方向に分極される板状の円環状圧電体11Aで超音波振動子11を構成し、上記圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部13に音響定在波を発生させるので、厚み方向に依存しないレンズ設計が可能となり、1mm程度に薄型化することが可能であり、また、代表的な可変焦点レンズである液体レンズに比べて、構造がより単純であるため、大量生産性に優れている。また、耐熱・耐寒性を有する透明粘弾性材料である例えばシリコーンゲルによりレンズ部13を構成することにより、液体レンズで問題となる温度依存性を改善でき、また、レンズ部13内への気体の混入などの心配もない。さらに、径方向拡がり振動モードは厚み振動モードよりも低い周波数で励振されるので、超音波振動子11を少ない電力で簡単に駆動することができる。
【0056】
ここで、上記可変焦点レンズ10では、径方向と直交する厚み方向に分極される板状の円環状圧電体11Aで超音波振動子11を構成し、上記圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部13に音響定在波を発生させるので、この可変焦点レンズ10を容器に収納して保護する場合、例えば図10に示すように、上記径方向拡がり振動モードで励振される圧電体11Aが変位しない位置で上記圧電体11Aを厚み方向の両側から挟持する金属製リブ101A,101Bを有する上ハーフ110Aと下ハーフ110Bからなる容器100に収容される。上記上ハーフ110Aと下ハーフ110Bには、上記レンズ部13に対応する位置にそれぞれ開口(入射窓と出射窓)120A,120Bが形成されている。また、上記圧電体11Aの電極に上記金属製リブ101A,101Bを介して導通され、上記圧電体11Aに駆動電圧を印加するためのリード線105A,105Bが上記金属製リブ101A,101Bから導出されている。
【0057】
ここで、上記可変焦点レンズ10において、上記透明樹脂(PET)フィルム14は、上記中央開口部12に透明粘弾性材料の原材料液体13Aを注入してゲル化して上記レンズ部13を形成する際に、上記原材料液体13Aが上記中央開口部12から漏出するのを防止する機能、及び、形成されたレンズ部13のレンズ面が姿勢に依存して変形するのを防止する機能を果たすものであるが、上記透明樹脂(PET)フィルム14をレンズ効果のある曲面形状にしたり、上記透明樹脂(PET)フィルム14を上記レンズ部13にレンズ効果を付与する曲面形状に成形することもできる。
【0058】
例えば、図11の(A)に示す可変焦点レンズ10Aにように、レンズ部13を正(凸)レンズとして機能させる曲面を有する透明樹脂フィルム14Aを備えるものとしたり、また、 図11の(B)に示す可変焦点レンズ10Bにように、レンズ部13を負(凹)レンズとして機能させる曲面を有する透明樹脂フィルム14Bを備えるものとすることができる。
【0059】
また、上記可変焦点レンズ10では、光軸方向と同方向の厚み方向に分極される円環形状の圧電体11Aからなる超音波振動子11を駆動することにより、径方向拡がり振動モードで励振される超音波による音響定在波を発生させて、正円形状の中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を静的に変形させるようにしたが、上記超音波振動子11は、径方向と同方向の厚み方向に分極される円筒形状の圧電体により構成し、円筒形状の圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されるようにすることもできる。
【0060】
また、上記可変焦点レンズ10では、正円形状の中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13を備え、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を、上記超音波振動子11の駆動により発生される音響定在波により静的に変形させ、上記回転対称軸を光軸とする曲面形状のレンズ面として機能するようにして、正円形状のレンズを構成したが、楕円形状や長円形状のレンズを構成することもできる。
【0061】
さらに、例えば図12に示す可変焦点レンズ20のように長径と短径を有する長尺な直線状の中央開口部22を囲繞する圧電体21Aからなる超音波振動子21と上記中央開口部22に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部23とでシリンドリカルレンズを構成することもできる。
【0062】
この図12に示す可変焦点レンズ20では、上記超音波振動子21は、光軸方向と直交する径方向に分極された長円筒形状の圧電体21Aにより構成されており、上記長円筒形状の圧電体21Aが径方向拡がり振動モードで励振されるようになっている。
【0063】
そして、この可変焦点レンズ20では、上記超音波振動子21の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部22に放射して上記レンズ部23の透明粘弾性材料内に伝搬させて音響定在波を発生させ、その短径方向の音響定在波により、上記レンズ部23の周囲の媒質と上記レンズ部23の透明粘弾性材料とで形成される界面を静的に変形させて、長軸を回転対称軸とする曲面形状のレンズ面とし、上記レンズ部23をシリンドリカルレンズとして機能させることができる。
【0064】
なお、上記可変焦点レンズ20において、上記超音波振動子21は、径方向と直交する光軸方向に分極された長円環形状の圧電体により構成して、上記長円環形状の圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されるようにしてもよい。
【0065】
さらに、上記可変焦点レンズ10は、複数個を1次元配列あるいは2次元配列してレンズアレイを構成するようにしても良い。例えば、図13に示すように、複数個の可変焦点レンズ10を2次元に配列してレンズアレイ30を構成することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,10B 可変焦点レンズ、11 超音波振動子、11A 圧電体、12 中央開口部、13 レンズ部、13A 原材料液体、14,14A,14B 透明樹脂(PET)フィルム、20 可変焦点レンズ、21A 圧電体、21 超音波振動子、22 中央開口部、23 レンズ部、30 レンズアレイ、100 容器、101A,101B 金属製リブ101A,101B、105A,105B リード線、110A 上ハーフ、110B 下ハーフ、120A,120B 開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的可動部を有することなく焦点を可変できる可変焦点レンズ及びその焦点制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焦点距離調整機能を有する顕微鏡や撮像装置、情報記録再生装置等の各種光学装置のレンズ系においては、多くの場合、ネジ等の直動機構を手動や電動(モータ等)により、複数のレンズ間の距離を変化させて焦点距離を変化させて、焦点距離調整を行うようにしていた。
【0003】
例えば、携帯型電子機器等における撮像部の光学系は、プラスチックレンズと、それを光軸方向に移動させ焦点位置を変化させるためのアクチュエータとギア機構を組み合わせたものが主流となっている。
【0004】
これに対し、レンズの位置関係を動かすことなく、例えば電気的な制御信号のみによって焦点距離を変化させることができる可変焦点液体レンズとして、例えば、透明部材の間に2種の液体が挿入され、電圧印加によりエレクトロウェッティング現象を利用して液体界面を変形させるようにしたもの可変焦点液体レンズ(例えば、特許文献1、2参照)や、透明部材と薄板や弾性膜等より成る変形部との間に液体が挿入され、液体に圧力を加えることによって薄膜や弾性膜を変形させるようにした可変焦点液体レンズ(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
また、アクチュエータにより機械的にシリコーンゲルを変形させるようにした可変焦点レンズ(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4154858号公報
【特許文献2】特開2006−145807号公報
【特許文献3】特開2009−217249号公報
【特許文献4】特開2009−271095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子機器のディジタル化の進展とともに、ディジタルスチルカメラが普及してきている。ディジタルスチルカメラにおいて、薄型でコンパクトカメラが市場で求められている。また、携帯電話のカメラ装着率の拡大に伴い、より軽くかつより薄い携帯電話の撮像部のコンパクト化が強く要請されてきている。
【0008】
しかしながら、ステッピングモータやボイスコイルモータ等のアクチュエータ付レンズは、フォーカシングの際に光軸に沿ってレンズを動かす必要があるため、レンズモジュールが大きくなる、時間応答性が低いなどの問題点があり、また、機械的可動部を有するため、衝撃に弱い、部品数が多いなどの問題点がある。
【0009】
また、可変焦点液体レンズは、レンズの位置関係を動かすことなく焦点を可変することのできるので、光学系を薄型化するのに適しているのであるが、レンズの使用条件、使用時間によっては2液体が混ざり合い乳化によるレンズの白濁や、レンズ液体内に電気分解やキャビテーションによる気泡が発生し、レンズの光学特性に影響を与え、また、環境温度によって液体粘性が変化し,レンズの光学特性に影響を与えるなどの問題点がある。
【0010】
さらに、アクチュエータにより機械的にシリコーンゲルを変形させる可変焦点レンズでは、アクチュエータを用いるためレンズの応答速度が遅く、また、機械的可動部を有し部品数が多いなどの問題点がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の現状に鑑み、簡単な構造で高速応答を可能にした薄型の可変焦点レンズ及びその焦点制御方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
液体表面に超音波が伝搬した場合,その気液界面ではエネルギー密度差により,液体側から気体側に向かって静圧(音響放射力と呼ばれる)が働き、液体は気体側に向かって引っ張られる形となり液面形状が変形する現象がある。従来、本現象を用いて液体の粘性を測定する手法などが報告されている。
【0014】
本発明では、人体の水晶体を模擬した機械的可動部を持たない可変焦点レンズを透明粘弾性材料とリング型圧電超音波振動子で構成し、レンズ自体を超音波の放射力により変形させることにより、その焦点位置を変化させる。すなわち、粘弾性材料に音響放射力を作用させ、その形状を変化させて可変焦点レンズとして動作させる。本発明に係る可変焦点レンズでは、アクチュエータなどの動作機構を必要としないことから、従来の可変焦点レンズに比べて大幅に小型化することができる。また、リング状超音波振動子の径方向広がり振動モードを利用することにより、厚み方向に依存しないレンズ設計が可能となり、さらに小型化することができる。
【0015】
すなわち、本発明は、可変焦点レンズであって、圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子と、上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部とを備え、上記超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射して上記レンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子は、上記圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部に音響定在波を発生させるものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子は、正円形状の上記中央開口部を囲繞する円環状の圧電体からなるものとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子は、長径と短径を有する長尺な直線状の上記中央開口部を囲繞する圧電体からなり、超音波を上記中央開口部に放射して音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部をシリンドリカルレンズとして機能させるものとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記レンズ部は、入射側開口又は出射側開口の一方が透明樹脂フィルムにて閉じられた上記超音波振動子の上記中央開口部に注入された透明粘弾性材料の原材料液体をゲル化してなるものとすることができる。
【0020】
また、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記透明樹脂フィルムは、上記レンズ部を正レンズとして機能させる曲面を有するものとすることができる。
【0021】
さらに、本発明に係る可変焦点レンズにおいて、上記透明樹脂フィルムは上記レンズ部を負レンズとして機能させる曲面を有するものとすることができる。
【0022】
また、本発明は、焦点制御方法であって、リング状の圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射し、上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レンズ自体を超音波の放射力により変形させることにより、その焦点位置を変化することができ、透明粘弾性材料からなるレンズ部とリング型圧電超音波振動子のみで構成される単純な構造の可変焦点レンズとしたことにより、通常のカメラモジュールに必要な焦点合わせのためのアクチュエータやギア機構を不要であり、これらモジュールを大幅に小型化することができる。
【0024】
本発明に係る可変焦点レンズは、リング状超音波振動子の径方向広がり振動モードを利用することにより、厚み方向に依存しないレンズ設計が可能となり、1mm程度に薄型化することが可能であり、また、代表的な可変焦点レンズである液体レンズに比べて、構造がより単純であるため、大量生産性に優れている。また、耐熱・耐寒性を有する粘弾性材料(例えばシリコーンゲル)をレンズ部に用いることにより、液体レンズで問題となる温度依存性を改善でき、また、レンズ内への気体の混入などの心配もない。
【0025】
したがって、本発明によれば、簡単な構造で高速応答を可能にした薄型の可変焦点レンズ及びその焦点制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用した可変焦点レンズの構成を模式的に示す図であり、(A)は可変焦点レンズの斜視図であり、(B)はその断面図である。
【図2】上記可変焦点レンズの製造過程を模式的に示す図である。
【図3】上記可変焦点レンズにおける超音波振動子の振動の様子を模式的に示す図であり、(A)は有限要素分析(FEM)による計算結果を示し、(B)は音響定在波の発生状態を示している。
【図4】上記可変焦点レンズにおいてレンズ部の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波を模式的に示す図であり、(A)は音響定在波の音圧分布の様子を示し、(B)はその音圧振幅値の有限要素分析(FEM)による計算結果を示している。
【図5】上記可変焦点レンズにおける超音波振動子を構成している圧電体に印加される周波数が226kHzの電気信号の電圧振幅値を0V、12V、15V、18V、21Vに変化した場合のレンズ部中央の変形の様子を示す図である。
【図6】上記レンズ部に光線が入射した場合の透過光分布の様子を示す図である。
【図7】上記可変焦点レンズにおける超音波振動子の駆動電圧と焦点距離の関係を示す図である。
【図8】上記可変焦点レンズにおいて、上記超音波振動子の駆動電圧をオンオフした場合に、1951 USAF テストパターンチャートを撮影して得られた画像の変化の様子を示す図であり、(A)はオフ状態での取得画像を示し、(A)はオン状態での取得画像を示している。
【図9】上記可変焦点レンズの応答速度の測定結果を示す図である。
【図10】上記可変焦点レンズを容器に収納した状態を示す断面図である。
【図11】上記可変焦点レンズのレンズ部に透明樹脂(PET)フィルムによりレンズ効果を付与した例を模式的に示す図であり、(A)はレンズ部を正(凸)レンズとして機能させた可変焦点レンズを示し、(B)はレンズ部を負(凹)レンズとして機能させた可変焦点レンズを示している。
【図12】シリンドリカルレンズとして機能する可変焦点レンズの構成を模式的に示す図であり、(A)は可変焦点レンズの平面図であり、(B)はその縦断側面図である。
【図13】複数個の可変焦点レンズを2次元に配列してレンズアレイを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0028】
本発明は、例えば図1に示すような構成の可変焦点レンズ10に適用される。
【0029】
図1は、本発明を適用した可変焦点レンズ10の構成を模式的に示す図であり、可変焦点レンズ10の斜視図を(A)に示し、その断面図を(B)に示している。
【0030】
この可変焦点レンズ10は、圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12を有する超音波振動子11と、上記中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13を備える。
【0031】
上記超音波振動子11は、図1の(B)に具体的な寸法例を示してあるように、正円形状の中央開口部12を有する厚み2mm、外径30mm、内径15mmの円環形状で、厚さ方向に分極される圧電体(例えばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(ZrTi)O3 ))11Aからなる。
【0032】
上記圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12に充填される透明粘弾性材料としては、アクリル系粘弾性材料、シリコン系粘弾性材料、ウレタン系粘弾性材料など各種の透明粘弾性材料を挙げることができ、流動性がなく、複素弾性率が小さい材料が適している。
【0033】
この可変焦点レンズ10は、上記透明粘弾性材料として例えばシリコーンゲル(信越化学工業株式会社製のKE-1052、信越シリコーン)を用いて、次のようにして上記レンズ部13が形成されている。
【0034】
すなわち、この可変焦点レンズ10において、上記レンズ部13は、図2の(A)に示すように、入射側開口又は出射側開口の一方が厚み0.1mmの透明樹脂(PET)フィルム14にて閉じられた上記超音波振動子11の上記中央開口部12に、図2の(B)に示すように、透明粘弾性材料(シリコーンゲル)の原材料液体13Aを注入し、図2の(C)に示すように、注入された透明粘弾性材料の上記原材料液体13Aをゲル化することにより形成される。
【0035】
ここで、上記信越化学工業株式会社製のKE-1052、信越シリコーンは、−40°C〜200°Cに亘る広い温度範囲で安定した弾性を呈する無色透明で光透過性が良好なシリコーンゲルとして供給されており、その複素弾性率は2×104N/m2である。上記シリコーンゲル(信越化学工業株式会社製のKE-1052、信越シリコーン)は、主剤(KE-1052-A)と硬化剤(KE-1052-B)を所定の配合比で配合した無色透明の原材料液体を100〜150°Cで15分から60分加熱することにより硬化しゲル状になる透明粘弾性材料である。
【0036】
この可変焦点レンズ10のレンズ部13は、上記主剤(KE-1052-A)と硬化剤(KE-1052-B)を1:0.7の配合比で配合した原材料液体13Aをゲル化して形成した。このようにして形成したレンズ部13は、上記透明樹脂(PET)フィルム14を備えることにより、逆さにしてもレンズ形状の変化は極めて少なく、姿勢の影響を被ることはなかった。
【0037】
すなわち、上記透明樹脂(PET)フィルム14は、上記中央開口部12に透明粘弾性材料の原材料液体13Aを注入してゲル化して上記レンズ部13を形成する際に、上記原材料液体13Aが上記中央開口部12から漏出するのを防止する機能、及び、形成されたレンズ部13のレンズ面が姿勢に依存して変形するのを防止する機能を果たしている。
【0038】
上記中央開口部12に注入される透明粘弾性材料は、シリコーンゲルに限定されるものでなく、常温下又は加熱下において注入作業が可能な程度の流動性を有し、常温下又は加熱下において硬化する性質を有しているものであればよい。
【0039】
また、上記中央開口部12に注入された透明粘弾性材料の原材料液体13Aが表面張力によりその形状を維持して上記中央開口部12から漏出せず、また、ゲル化した状態でレンズ面の変形に姿勢が影響しない条件を満たすように、可変焦点レンズ10のサイズを小さくした場合、あるいは、上記条件を満たす特性の透明粘弾性材料を用いる場合には、上記透明樹脂(PET)フィルム14はなくても良い。
【0040】
このように上記中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13は、上記中央開口部12に注入された透明粘弾性材料の原材料液体13Aをゲル化してなるものとすることにより、上記中央開口部12を囲繞している上記圧電体11Aの内周壁とレンズ部13との間に空隙を生じることなく密着性を確保することができ、上記超音波振動子11により発生される超音波が効率よく伝搬されることになる。
【0041】
なお、上記レンズ部13は、上記中央開口部12の形状に適合した円盤形状に予め形成した透明粘弾性材料を上記中央開口部12に充填することにより形成するようにしても良い。
【0042】
そして、この可変焦点レンズ10において、上記超音波振動子11は、上記円環形状の圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振される周波数の連続正弦波の電気信号が上記圧電体11Aに印加されることにより駆動され、上記超音波振動子11の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部12に放射して上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部13の周囲の媒質(気体もしくは液体)と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面において生じるエネルギー密度差に応じて上記界面を静的に変形させてレンズ面として機能させる。
【0043】
すなわち、上記超音波振動子11は、上記圧電体11Aの振動状態を有限要素分析(FEM)により計算した結果を図3の(A)に示すように、周波数226kHz,18Vppの連続正弦波の電気信号が上記円環形状の圧電体11Aに印加されることより、上記圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振される。上記超音波振動子11の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部12に放射して上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に伝搬させると、図3の(B)に示すように、音響定在波を発生させることにより、透明粘弾性材料内に超音波を効率よく伝搬することができる。上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面は、上記音響定在波の発生により、静的に変形させてレンズ面として機能する。
【0044】
ここで、上記超音波振動子11の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部12に放射して上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に伝搬させることにより、上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波は、上記中央開口部12が正円形状であるので、図4の(A)に示すように、同心円状となる。上記音響定在波の音圧振幅値の有限要素分析(FEM)による計算結果は、図4の(B)に実線にて示すように、破線にて示すベッセル関数でフィッティングすることができる。
【0045】
そして、上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波により、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面において生じるエネルギー密度差は、上記レンズ部13の透明粘弾性材料の表面張力により平滑化され、上記界面が上記同心円の中心を通過する回転対称軸を光軸とする曲面形状に静的に変形されてレンズ面として機能する。
【0046】
上記超音波振動子11が上記中央開口部12に放射する超音波の放射圧は、上記圧電体11Aに印加される周波数が226kHzの電気信号の電圧振幅値に応じて変化するので、上記レンズ部13の透明粘弾性材料内に発生する音響定在波による上記レンズ部13の透明粘弾性材料の変形変位は、上記電圧振幅値の増大とともに大きくなる。
【0047】
上記圧電体11Aに印加される周波数が226kHzの電気信号の電圧振幅値を0V、12V、15V、18V、21Vに変化した場合の上記レンズ部13中央の変形の様子を図5に示す。また、上記レンズ部13に光線が入射した場合の透過光分布の様子を図6に示す。さらに、この可変焦点レンズ10における超音波振動子11の駆動電圧と焦点距離の関係を図7に示す。このように、上記圧電体11Aに電気信号を印加することにより透過光が焦点を結び、この可変焦点レンズ10は、上記圧電体11Aに印加される電気信号の電圧振幅値に応じて焦点距離が変化する。
【0048】
この可変焦点レンズ10では、リング状の圧電体11Aにより囲繞された中央開口部12を有する超音波振動子11の駆動により励振される超音波を上記中央開口部12に放射し、上記中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子11が上記中央開口部12に放射する超音波の放射圧、すなわち、上記圧電体11Aに印加される電気信号の電圧振幅値により、上記レンズ面の焦点を可変することができる。
【0049】
ここで、この可変焦点レンズ10において、上記超音波振動子11の駆動電圧をオンオフした場合に、1951 USAF テストパターンチャートを撮影して得られた画像の変化の様子を図8の(A)、(B)に示す。
【0050】
この可変焦点レンズ10は、上記超音波振動子11の駆動電圧をオフした状態では、負(凹)レンズとして働き、透過光はレンズ面で広まり、図8の(A)に示すように、焦点が存在しない。そして、この可変焦点レンズ10は、上記超音波振動子11の駆動電圧をオンすると、正(凸)レンズとして働き、図8の(B)に示すように、透過光は焦束され、駆動電圧が18Vであったとき、図8の(B)に示すように、対象にピントが合い、焦点距離はレンズ面から55mmであった。
【0051】
また、この可変焦点レンズ10の応答速度を測定した結果を図9に示す。
【0052】
この可変焦点レンズ10において、上記超音波振動子11の駆動電圧(18V)をオンしてから焦点が定常状態に達するまでの応答速度は、図9に示すように、およそ0.1秒であった。
【0053】
この可変焦点レンズ10は、最適設計することにより、さらに低電圧、高速応答化することが可能である。
【0054】
このような構成の可変焦点レンズ10では、レンズ自体を超音波の放射力により変形させることにより、その焦点位置を変化することができ、透明粘弾性材料からなるレンズ部13と超音波振動子11のみで構成される単純な構造であって、通常のカメラモジュールに必要な焦点合わせのためのアクチュエータやギア機構を不要であり、これらモジュールを大幅に小型化することができる。
【0055】
また、この可変焦点レンズ10では、径方向と直交する厚み方向に分極される板状の円環状圧電体11Aで超音波振動子11を構成し、上記圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部13に音響定在波を発生させるので、厚み方向に依存しないレンズ設計が可能となり、1mm程度に薄型化することが可能であり、また、代表的な可変焦点レンズである液体レンズに比べて、構造がより単純であるため、大量生産性に優れている。また、耐熱・耐寒性を有する透明粘弾性材料である例えばシリコーンゲルによりレンズ部13を構成することにより、液体レンズで問題となる温度依存性を改善でき、また、レンズ部13内への気体の混入などの心配もない。さらに、径方向拡がり振動モードは厚み振動モードよりも低い周波数で励振されるので、超音波振動子11を少ない電力で簡単に駆動することができる。
【0056】
ここで、上記可変焦点レンズ10では、径方向と直交する厚み方向に分極される板状の円環状圧電体11Aで超音波振動子11を構成し、上記圧電体11Aが径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部13に音響定在波を発生させるので、この可変焦点レンズ10を容器に収納して保護する場合、例えば図10に示すように、上記径方向拡がり振動モードで励振される圧電体11Aが変位しない位置で上記圧電体11Aを厚み方向の両側から挟持する金属製リブ101A,101Bを有する上ハーフ110Aと下ハーフ110Bからなる容器100に収容される。上記上ハーフ110Aと下ハーフ110Bには、上記レンズ部13に対応する位置にそれぞれ開口(入射窓と出射窓)120A,120Bが形成されている。また、上記圧電体11Aの電極に上記金属製リブ101A,101Bを介して導通され、上記圧電体11Aに駆動電圧を印加するためのリード線105A,105Bが上記金属製リブ101A,101Bから導出されている。
【0057】
ここで、上記可変焦点レンズ10において、上記透明樹脂(PET)フィルム14は、上記中央開口部12に透明粘弾性材料の原材料液体13Aを注入してゲル化して上記レンズ部13を形成する際に、上記原材料液体13Aが上記中央開口部12から漏出するのを防止する機能、及び、形成されたレンズ部13のレンズ面が姿勢に依存して変形するのを防止する機能を果たすものであるが、上記透明樹脂(PET)フィルム14をレンズ効果のある曲面形状にしたり、上記透明樹脂(PET)フィルム14を上記レンズ部13にレンズ効果を付与する曲面形状に成形することもできる。
【0058】
例えば、図11の(A)に示す可変焦点レンズ10Aにように、レンズ部13を正(凸)レンズとして機能させる曲面を有する透明樹脂フィルム14Aを備えるものとしたり、また、 図11の(B)に示す可変焦点レンズ10Bにように、レンズ部13を負(凹)レンズとして機能させる曲面を有する透明樹脂フィルム14Bを備えるものとすることができる。
【0059】
また、上記可変焦点レンズ10では、光軸方向と同方向の厚み方向に分極される円環形状の圧電体11Aからなる超音波振動子11を駆動することにより、径方向拡がり振動モードで励振される超音波による音響定在波を発生させて、正円形状の中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を静的に変形させるようにしたが、上記超音波振動子11は、径方向と同方向の厚み方向に分極される円筒形状の圧電体により構成し、円筒形状の圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されるようにすることもできる。
【0060】
また、上記可変焦点レンズ10では、正円形状の中央開口部12に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部13を備え、上記レンズ部13の周囲の媒質と上記レンズ部13の透明粘弾性材料とで形成される界面を、上記超音波振動子11の駆動により発生される音響定在波により静的に変形させ、上記回転対称軸を光軸とする曲面形状のレンズ面として機能するようにして、正円形状のレンズを構成したが、楕円形状や長円形状のレンズを構成することもできる。
【0061】
さらに、例えば図12に示す可変焦点レンズ20のように長径と短径を有する長尺な直線状の中央開口部22を囲繞する圧電体21Aからなる超音波振動子21と上記中央開口部22に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部23とでシリンドリカルレンズを構成することもできる。
【0062】
この図12に示す可変焦点レンズ20では、上記超音波振動子21は、光軸方向と直交する径方向に分極された長円筒形状の圧電体21Aにより構成されており、上記長円筒形状の圧電体21Aが径方向拡がり振動モードで励振されるようになっている。
【0063】
そして、この可変焦点レンズ20では、上記超音波振動子21の駆動により径方向拡がり振動モードで励振される超音波を上記中央開口部22に放射して上記レンズ部23の透明粘弾性材料内に伝搬させて音響定在波を発生させ、その短径方向の音響定在波により、上記レンズ部23の周囲の媒質と上記レンズ部23の透明粘弾性材料とで形成される界面を静的に変形させて、長軸を回転対称軸とする曲面形状のレンズ面とし、上記レンズ部23をシリンドリカルレンズとして機能させることができる。
【0064】
なお、上記可変焦点レンズ20において、上記超音波振動子21は、径方向と直交する光軸方向に分極された長円環形状の圧電体により構成して、上記長円環形状の圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されるようにしてもよい。
【0065】
さらに、上記可変焦点レンズ10は、複数個を1次元配列あるいは2次元配列してレンズアレイを構成するようにしても良い。例えば、図13に示すように、複数個の可変焦点レンズ10を2次元に配列してレンズアレイ30を構成することができる。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,10B 可変焦点レンズ、11 超音波振動子、11A 圧電体、12 中央開口部、13 レンズ部、13A 原材料液体、14,14A,14B 透明樹脂(PET)フィルム、20 可変焦点レンズ、21A 圧電体、21 超音波振動子、22 中央開口部、23 レンズ部、30 レンズアレイ、100 容器、101A,101B 金属製リブ101A,101B、105A,105B リード線、110A 上ハーフ、110B 下ハーフ、120A,120B 開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子と、
上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部と
を備え、
上記超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射して上記レンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする可変焦点レンズ。
【請求項2】
上記超音波振動子は、上記圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部に音響定在波を発生させることを特徴とする請求項1記載の可変焦点レンズ。
【請求項3】
上記超音波振動子は、正円形状の上記中央開口部を囲繞する円環状の圧電体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項4】
上記超音波振動子は、長径と短径を有する長尺な直線状の上記中央開口部を囲繞する圧電体からなり、超音波を上記中央開口部に放射して音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部をシリンドリカルレンズとして機能させることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に可変焦点レンズ。
【請求項5】
上記レンズ部は、入射側開口又は出射側開口の一方が透明樹脂フィルムにて閉じられた上記超音波振動子の上記中央開口部に注入された透明粘弾性材料の原材料液体をゲル化してなることを特徴とする請求項1記載の可変焦点レンズ。
【請求項6】
上記透明樹脂フィルムは上記レンズ部を正レンズとして機能させる曲面を有することを特徴とする請求項5記載の可変焦点レンズ。
【請求項7】
上記透明樹脂フィルムは上記レンズ部を負レンズとして機能させる曲面を有することを特徴とする請求項5記載の可変焦点レンズ。
【請求項8】
リング状の圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射し、上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、
上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする焦点制御方法。
【請求項1】
圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子と、
上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部と
を備え、
上記超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射して上記レンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする可変焦点レンズ。
【請求項2】
上記超音波振動子は、上記圧電体が径方向拡がり振動モードで励振されることにより、上記レンズ部に音響定在波を発生させることを特徴とする請求項1記載の可変焦点レンズ。
【請求項3】
上記超音波振動子は、正円形状の上記中央開口部を囲繞する円環状の圧電体からなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の可変焦点レンズ。
【請求項4】
上記超音波振動子は、長径と短径を有する長尺な直線状の上記中央開口部を囲繞する圧電体からなり、超音波を上記中央開口部に放射して音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部をシリンドリカルレンズとして機能させることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に可変焦点レンズ。
【請求項5】
上記レンズ部は、入射側開口又は出射側開口の一方が透明樹脂フィルムにて閉じられた上記超音波振動子の上記中央開口部に注入された透明粘弾性材料の原材料液体をゲル化してなることを特徴とする請求項1記載の可変焦点レンズ。
【請求項6】
上記透明樹脂フィルムは上記レンズ部を正レンズとして機能させる曲面を有することを特徴とする請求項5記載の可変焦点レンズ。
【請求項7】
上記透明樹脂フィルムは上記レンズ部を負レンズとして機能させる曲面を有することを特徴とする請求項5記載の可変焦点レンズ。
【請求項8】
リング状の圧電体により囲繞された中央開口部を有する超音波振動子の駆動により励振される超音波を上記中央開口部に放射し、上記中央開口部に透明粘弾性材料を充填してなるレンズ部に伝搬させ、音響定在波を発生させることにより、上記レンズ部の周囲の媒質と上記レンズ部の透明粘弾性材料とで形成される界面を変形させてレンズ面として機能させ、
上記超音波振動子が上記中央開口部に放射する超音波の放射圧により上記レンズ面の焦点を可変することを特徴とする焦点制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−61549(P2013−61549A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200794(P2011−200794)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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