可変界磁電動機
【課題】電動機の回転または移動速度上昇に伴う逆起電圧の抑制し、従来の弱め界磁制御による反磁界を可動子の界磁に与えることなく、同等の出力特性を得るようにする。
【解決手段】鉄心1の一部を外部からの磁束励磁2により磁気飽和させることで、鉄心1の磁路の磁気抵抗が増加し、それに伴い、固定子コイル3に鎖交する磁束量が減少する。そのため、固定子コイル3の逆起電圧が抑制され、再び電流が流せる状態になることから、出力を引き上げることが可能になる。
【解決手段】鉄心1の一部を外部からの磁束励磁2により磁気飽和させることで、鉄心1の磁路の磁気抵抗が増加し、それに伴い、固定子コイル3に鎖交する磁束量が減少する。そのため、固定子コイル3の逆起電圧が抑制され、再び電流が流せる状態になることから、出力を引き上げることが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の回転または移動速度は、電動機に供給する固定子巻線の逆起電圧と電源電圧の間に電位差が無くなると、電動機に電流を供給することができなくなるため、出力が制限される。
【0003】
電動機の逆起電圧は、可動子の界磁から固定子巻線に鎖交する磁束の変化量により決まる。
【0004】
従来、逆起電圧の上昇により出力が制限に達した電動機の回転もしくは移動速度を上昇させる方法として、弱め界磁制御が用いられる。
【0005】
弱め界磁制御は可動子の界磁に対して逆方向の磁界をかけることにより、可動子の磁束を弱め、固定子巻線に鎖交する磁束量を減らし、逆起電圧を抑制する。
【0006】
弱め界磁制御は、可動子の最高回転もしくは移動速度を上昇させることが可能だが、可動子の界磁に逆方向の磁界がかかるため、永久磁石を有する可動子の場合、減磁の恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−233887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、電動機の回転または移動速度上昇に伴う逆起電圧の抑制方法についてであり、従来の弱め界磁制御による反磁界を可動子の界磁に与えることなく、同等の出力特性を得ることを目的とする。
【0009】
更に、従来の弱め界磁制御による最高回転もしくは速度を更に引き上げ、動作範囲を拡大することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明によれば、固定子と可動子を有し、前記可動子は永久磁石を有し、前記固定子は前記可動子で発生した磁束と鎖交する巻線回路を有する回転式もしくは直動式の電動機において、前記固定子に補助巻線回路を設け、該補助巻線回路に流れる電流により前記固定子の磁気抵抗を磁気飽和により変化させることで前記巻線回路に鎖交する磁束を調整することができることを特徴とする電動機。
【0011】
電動機の磁路となる固定子鉄心に補助巻線から発生した磁束を通すことにより、固定子鉄心の一部に磁束が集中し、鉄心が磁束を通しにくい磁気飽和状態となることから、可動子の永久磁石から固定子巻線に鎖交する磁束が減少し、逆起電圧を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、従来の可動子の界磁に反磁界を与える弱め磁束制御に対し、固定子鉄心の磁気抵抗を補助巻線により変化させ、固定子巻線の鎖交磁束を制御するので、可動子の界磁に永久磁石を用いた場合に反磁界による減磁が起こらない。
【0013】
固定子鉄心の補助巻線回路は、電源供給が外部から可能なので、従来の弱め界磁制御と組み合わせることができ、最高回転もしくは移動速度を更に引き上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固定子鉄心の一部を磁気飽和させるための補助巻線を固定子鉄心に設けた永久磁石同期電動機の断面図。(実施例1)
【図2】可動子の永久磁石から発生する磁束に対し、固定子鉄心に直交する磁束を補助巻線から与える永久磁石同期電動機。(実施例2)
【図3】実施例2の永久磁石同電動機を1/4にカットした断面から見た図。
【図4】実施例1の構造をリニアモータに適応した断面図。(実施例3)
【図5】実施例2の構造をリニアモータに適応したときの外観図。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
可動子の界磁が作る磁路に対し、直交した磁束を発生させる補助巻線を設け、補助巻線の励磁により、磁路の磁気抵抗を調整する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の第1実施例であり、永久磁石同期電動機の永久磁石4の界磁の磁路を磁気飽和させるために補助巻線2を固定子鉄心1に設けた機構である。
【0017】
固定子鉄心1に設けた補助巻線2から発生する磁束により、固定子鉄心1の磁気抵抗が増加し、永久磁石5から巻線3に鎖交する磁束量が減少する。
【実施例2】
【0018】
図2は本発明の第2実施例であり、永久磁石11の界磁に直交する磁束を補助巻線6からコの字型鉄心7を通して与える機構である。
【0019】
図3の断面図より、補助巻線6の磁束がコの字型鉄心7を通して固定子鉄心8の磁路を磁気飽和させることにより、磁気抵抗を増加させることができるため、固定子巻線9に鎖交する磁束量が減少する。
【実施例3】
【0020】
図4は実施例1と同様の機構をリニアモータに適応した例である。
【実施例4】
【0021】
図5は実施例2と同様の機構をリニアモータに適応した例である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
電気自動車等の広範囲の運転が要求される場合に、従来の弱め界磁制御の範囲以上の走行が可能である。
【0023】
さらに、永久磁石に反磁界を与えない弱め界磁制御なので、減磁する恐れがなく保磁力の弱い永久磁石を有する電動機に対しても適応が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 固定子鉄心
2 補助巻線
3 固定子巻線
4 永久磁石
5 可動子鉄心
6 補助巻線
7 コの字型鉄心
8 固定子鉄心
9 固定子巻線
10 永久磁石
11 可動子鉄心
12 可動子鉄心
13 永久磁石
14 固定子巻線
15 固定子鉄心
16 補助巻線
17 コの字型鉄心
18 補助巻線
19 固定子巻線
20 固定子鉄心
21 永久磁石
22 可動子鉄心
【技術分野】
【0001】
本発明は電動機の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の回転または移動速度は、電動機に供給する固定子巻線の逆起電圧と電源電圧の間に電位差が無くなると、電動機に電流を供給することができなくなるため、出力が制限される。
【0003】
電動機の逆起電圧は、可動子の界磁から固定子巻線に鎖交する磁束の変化量により決まる。
【0004】
従来、逆起電圧の上昇により出力が制限に達した電動機の回転もしくは移動速度を上昇させる方法として、弱め界磁制御が用いられる。
【0005】
弱め界磁制御は可動子の界磁に対して逆方向の磁界をかけることにより、可動子の磁束を弱め、固定子巻線に鎖交する磁束量を減らし、逆起電圧を抑制する。
【0006】
弱め界磁制御は、可動子の最高回転もしくは移動速度を上昇させることが可能だが、可動子の界磁に逆方向の磁界がかかるため、永久磁石を有する可動子の場合、減磁の恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−233887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、電動機の回転または移動速度上昇に伴う逆起電圧の抑制方法についてであり、従来の弱め界磁制御による反磁界を可動子の界磁に与えることなく、同等の出力特性を得ることを目的とする。
【0009】
更に、従来の弱め界磁制御による最高回転もしくは速度を更に引き上げ、動作範囲を拡大することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明によれば、固定子と可動子を有し、前記可動子は永久磁石を有し、前記固定子は前記可動子で発生した磁束と鎖交する巻線回路を有する回転式もしくは直動式の電動機において、前記固定子に補助巻線回路を設け、該補助巻線回路に流れる電流により前記固定子の磁気抵抗を磁気飽和により変化させることで前記巻線回路に鎖交する磁束を調整することができることを特徴とする電動機。
【0011】
電動機の磁路となる固定子鉄心に補助巻線から発生した磁束を通すことにより、固定子鉄心の一部に磁束が集中し、鉄心が磁束を通しにくい磁気飽和状態となることから、可動子の永久磁石から固定子巻線に鎖交する磁束が減少し、逆起電圧を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、従来の可動子の界磁に反磁界を与える弱め磁束制御に対し、固定子鉄心の磁気抵抗を補助巻線により変化させ、固定子巻線の鎖交磁束を制御するので、可動子の界磁に永久磁石を用いた場合に反磁界による減磁が起こらない。
【0013】
固定子鉄心の補助巻線回路は、電源供給が外部から可能なので、従来の弱め界磁制御と組み合わせることができ、最高回転もしくは移動速度を更に引き上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固定子鉄心の一部を磁気飽和させるための補助巻線を固定子鉄心に設けた永久磁石同期電動機の断面図。(実施例1)
【図2】可動子の永久磁石から発生する磁束に対し、固定子鉄心に直交する磁束を補助巻線から与える永久磁石同期電動機。(実施例2)
【図3】実施例2の永久磁石同電動機を1/4にカットした断面から見た図。
【図4】実施例1の構造をリニアモータに適応した断面図。(実施例3)
【図5】実施例2の構造をリニアモータに適応したときの外観図。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0015】
可動子の界磁が作る磁路に対し、直交した磁束を発生させる補助巻線を設け、補助巻線の励磁により、磁路の磁気抵抗を調整する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の第1実施例であり、永久磁石同期電動機の永久磁石4の界磁の磁路を磁気飽和させるために補助巻線2を固定子鉄心1に設けた機構である。
【0017】
固定子鉄心1に設けた補助巻線2から発生する磁束により、固定子鉄心1の磁気抵抗が増加し、永久磁石5から巻線3に鎖交する磁束量が減少する。
【実施例2】
【0018】
図2は本発明の第2実施例であり、永久磁石11の界磁に直交する磁束を補助巻線6からコの字型鉄心7を通して与える機構である。
【0019】
図3の断面図より、補助巻線6の磁束がコの字型鉄心7を通して固定子鉄心8の磁路を磁気飽和させることにより、磁気抵抗を増加させることができるため、固定子巻線9に鎖交する磁束量が減少する。
【実施例3】
【0020】
図4は実施例1と同様の機構をリニアモータに適応した例である。
【実施例4】
【0021】
図5は実施例2と同様の機構をリニアモータに適応した例である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
電気自動車等の広範囲の運転が要求される場合に、従来の弱め界磁制御の範囲以上の走行が可能である。
【0023】
さらに、永久磁石に反磁界を与えない弱め界磁制御なので、減磁する恐れがなく保磁力の弱い永久磁石を有する電動機に対しても適応が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 固定子鉄心
2 補助巻線
3 固定子巻線
4 永久磁石
5 可動子鉄心
6 補助巻線
7 コの字型鉄心
8 固定子鉄心
9 固定子巻線
10 永久磁石
11 可動子鉄心
12 可動子鉄心
13 永久磁石
14 固定子巻線
15 固定子鉄心
16 補助巻線
17 コの字型鉄心
18 補助巻線
19 固定子巻線
20 固定子鉄心
21 永久磁石
22 可動子鉄心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と可動子を有し、前記可動子には永久磁石を有し、前記固定子には前記可動子で発生した磁束と鎖交する巻線回路を有する回転式もしくは直動式の電動機において、前記固定子に補助巻線回路を設け、該補助巻線回路に流れる電流により前記固定子の磁気抵抗を磁気飽和により変化させることで前記巻線回路に鎖交する磁束を調整できることを特徴とする電動機。
【請求項1】
固定子と可動子を有し、前記可動子には永久磁石を有し、前記固定子には前記可動子で発生した磁束と鎖交する巻線回路を有する回転式もしくは直動式の電動機において、前記固定子に補助巻線回路を設け、該補助巻線回路に流れる電流により前記固定子の磁気抵抗を磁気飽和により変化させることで前記巻線回路に鎖交する磁束を調整できることを特徴とする電動機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−102584(P2013−102584A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244164(P2011−244164)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】
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