説明

可変装飾用玩具

【課題】極めて簡単な構造でコストも安く、可変成形基材を被覆する表面と共に形体に変形を加え、常時その形状保持のまま被覆材表面に部品の装着や彩色を施すこともできる可変装飾用玩具を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂の成形物をからなり、加温処理で変形させてから、常時形状保持することを特徴とする可変成形基材を少なくとも一部に内蔵し、彩色を施すこともできる被覆材に覆われ、その内蔵される可変成形基材は被覆材の表面に後付け部品を任意に装着固定するための構造を併せ持つことを特徴とする可変装飾用玩具を得ること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変装飾用玩具である。さらに詳しくは、可変成形基材とそれを覆う被覆材表面と共に形体に変形を加え、常時その形状保持のまま被覆材表面に部品の装着や彩色を施すこともできる可変装飾用玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可変部を有する玩具は接合部分を備えた硬質樹脂製のロボット型が多く、その他は可変部ではなく可動部を有する玩具が殆どである。また、それらの玩具は素材や形状の違いがあっても殆どが色彩・模様までを施され、量産された完成品として提供されており、需要者はその完成品の中から選択する方法か、若しくは個別に時間と費用をかけて特別に注文する方法しかなかった。さらに、変化にとんだ小ロットの生産は経済上合わないという問題があった。
【0003】
これに対し、可変玩具や彩色用玩具等が考案されており、例えば登録実用新案第3146475号「立体成形顔面体可変着脱玩具」、彩色用材としては欧抄630.668号公開和文抄録「彩色用材」、特許第4555043号「形状保持性を有する玩具用芯材及びその芯材を備える玩具」等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3146475号
【特許文献2】欧抄630.668号公開和文抄録
【特許文献3】特許第4555043号
【0005】
特許文献1の登録実用新案第3146475号「立体成形顔面体可変着脱玩具」は、複数の顔面体を複数の立体フィギュアに、それぞれ任意に選択し着脱する方式である。複数の完成品の中から選択、組み合わせで可変することは可能ではあるが、単体で可変成形基材とそれを覆う被覆材表面と共に形体に変形を加え、常時その形状保持のまま被覆材表面に部品の装着や彩色を施すこともできないという問題がある。
【0006】
特許文献2の欧抄630.668号公開和文抄録「彩色用材」は、任意の彩色ができる彩色用材のカバーで形体を覆うもので、子供を対象とした遊戯用フィギュアであり固定形体の範囲に制約され、可変成形基材とそれを覆う被覆材表面と共に形体に変形を加え、常時その形状保持のまま被覆材表面に部品の装着や彩色を施すこともできないという問題がある。
【0007】
特許文献3の特許第4555043号「形状保持性を有する玩具用芯材及びその芯材を備える玩具」は、唯一、熱可塑性樹脂を利用したものとして登録されているが、これはその玩具の芯材が変形し、屈伸、回転あるいは捻り等の常時動作形状を変化させることが可能な細密な構造の芯材を備える玩具であり、可変成形基材とそれを覆う被覆材表面と共に形体に変形を加え、常時その形状保持のまま被覆材表面に部品の装着や彩色を施すこともできないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、上述のような立体玩具のように画一的に量産されたものからの選択か、個別に時間と費用をかけて特別に注文する方法しかなく、経済上手軽に扱える独自の立体玩具を提供できないという点であった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決し、極めて簡単な構造でコストも安く、可変成形基材とそれを覆う被覆材表面と共に形体に変形を加えられ、常時その形状保持のまま被覆材表面に部品の装着や彩色を施すこともできる可変装飾用玩具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る可変装飾用玩具は以下の要件を備えたことを特徴とする。
(イ)熱可塑性樹脂の成形物からなり、加温処理で変形させてから常温冷却をし、通常状態で形状保持することを特徴とする可変成形基材を内蔵する可変装飾用玩具である。
(ロ)上記の可変成形基材が少なくとも一部に内蔵され、彩色を施すこともできる被覆材に覆われてなることを特徴とする可変装飾用玩具である。
(ハ)上記の可変成形基材が、それを覆う被覆材の表面に任意に装飾、装着する後付け部品を有害な接着剤や面倒な針や糸で縫い付けることなく簡単に固定することのできる構造を併せ持つことを特徴とする可変装飾用玩具である。
【発明の効果】
【0011】
従来はひとつひとつ型紙を作成して個々に表現され、時間と費用がかかり、特別に注文されて高価な装飾用玩具としてしか実現できなかった独自の立体玩具、装飾体であるが、基本形体から可変できることで自由度が広がり、従来通りの素材本来の柔軟さを残しながら、また需要者の要望を楽しみながら簡単に満たすことができる。個々の特徴を形体から表現できることによって、独創性のある唯一の立体玩具を提供することができる。
【0012】
例えば、需要者が飼っている愛玩動物にそっくりな立体ぬいぐるみにすることも可能になる。このことによって、常時携帯できる愛玩動物の分身ぬいぐるみとして、同行不可能な病院、飲食店等の施設や、旅行にも同伴させることもでき、大人のみならず、精神的に不安定な子どもや高齢者、入院患者等への安心感や癒しの効果も考えられる。
【0013】
さらに、新たな造形表現・創造性を育てることができることから、玩具のみに制限されることなく、教育・芸術・製造・商業展示など他分野にも広く利用可能である。また、本発明の可変装着用玩具は半完成品の玩具だけではなく、各部分の材料を提供することにより、手工芸分野の拡大に寄与し、普及に有効性を期待される発明でもある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の可変装飾用玩具の実施例1の正面図の変形概略図である。
【図2】同実施例1の図1の断面図の変形概略図である。
【図3】同実施例2原型平面図である。
【図4】同実施例2頭部と尻尾部断面図の変形概略図である。
【図5】同実施例2頭部部品装着パターン図である。
【図6】同実施例2完成平面図である。
【図7】同実施例1、2の装着部品の装着部分の断面拡大図である。
【図8】同実施例の装着部品の構造の断面拡大図である。
【図9】同実施例3のテディベアのぬいぐるみの基本形体と変形概略図である。
【図10】同実施例4の人形の基本形体と変形概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔可変成形基材〕
ここで本発明の可変装飾用玩具の可変成形基材は、変形可能な可塑性の素材に用いられる熱可塑性樹脂としては、−60〜120℃での連続使用が可能であり、耐熱老化、耐候性、耐薬品性、軽量性、環境性に富む既知の合成ゴム、例えばオレフィン系エラストマーを使用するのが実用上、最も好適であるがこれに限定されるものではない。
【0016】
実際の変形には上記の場合、数分間の加温処理により、自由自在に折り曲げ、折り戻し、
伸縮、加圧、引張り、捻りが可能であり、且つ、常温冷却でその状態を常時形状保持することができる構造とする。
【0017】
本発明の可変装飾玩具の少なくとも一部には、被覆材、緩衝材と充填材との中間層に可変成形基材が配置される構造とする。若しくは、被覆材が可変成形基材に直に接する構造でもよい。
【0018】
また、その可変成形基材の形状は被覆材若しくは緩衝材との結束性を持ち、且つ、後付の部品を固定するためのシート状、網状、若しくはこれと同等の作用をする構造とするが、使用目的に合わせた形状の成形物、または棒状の形体等適宜組み合わせで使用しても良い。
【0019】
さらに、その可変成形基材の厚さや結束等の方法を変化させることにより、玩具用基材の断面形状あるいは断面の大きさを変化させ、この可変成形基材を用いた玩具の形状、大きさや構造上の強度の自由度が拡大され適宜変化させることができる。したがって、製作可能であれば大きさや小ささの制限はない。
【0020】
〔被覆材〕
本発明の可変装飾用玩具の表面の被覆材の素材は玩具の使用目的により種々選択ができ、天然物素材若しくは合成物素材あるいは半合成物素材であってもよく、通常は布材、樹脂材、天然素材で人体に害のない被覆材で覆われることが好ましいがこれに限定されるものではなく、これらは適宜組み合わせて使用しても良い。また、可変部にはその形状変化に追従するような伸縮可能な柔軟性に富む素材とする。
【0021】
例えば、布材としては毛、綿、絹、ポリエステル、レーヨンまたはアクリル等のあらゆる繊維素材からなる、織布、編布、パイル織布、起毛織布、不織布、フエルト、再生布などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0022】
樹脂材としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム等からなる、成形可能で弾力性があり、形体変化に追従できるものを用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
天然素材では海綿、水苔、ヤシ、麻繊維等からなる、形体変化に追従できるものであれば屋外用としても利用可能であるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明に係る被覆材の表面は、自由に彩色できるようなに全体、少なくとも一部が白色、または無地であることを基本とするが、使用目的によっては模様や文字等を入れること や既に彩色、着色済みであることも可能である。
【0025】
さらに、本発明に係る被覆材は、彩色部に関しては特に着色剤を十分に吸収できるような吸水性に富む素材であり、他に耐熱性、耐薬品性、耐裂性に富み彩色に適した上塗りができる素材が好適であるが、着色可能であればこれに限定されるものではない。
【0026】
本発明に係る被覆材に彩色する着色剤は、特に限定されるものはなく、水性、油性、または、顔料系、染料系等種々利用可能であるが、使用目的に合わせて適宜組み合わせで使用しても良い。
【0027】
また、本発明に係る被覆材と可変成形基材との間には、必要に応じて緩衝材・充填材を入れることができる。緩衝材・充填材の素材は玩具の使用目的により種々選択ができ、天然物素材若しくは合成物素材あるいは半合成物素材であってもよく、通常は弾力性のある綿状、粒状、海綿状の天然繊維材、合成繊維材若しくは樹脂材で人体に害のない緩衝材、充填材で構成されることが好ましいがこれに限定されるものではなく、これらは適宜組み合わせて使用しても良い。
【0028】
〔装着部品〕
ここで、本発明の可変装飾用玩具の装着部品は、従来は製作過程でその装着部品の位置を決定固定されていた立体玩具であるが、被覆材の表面に任意に固定できるものとし、且つ、有害な接着剤を使用せず、面倒な針と糸を用いることなく、簡単に後付固定できることなどの要件も満たす構造とする。
【0029】
また、本発明に係る装着部品は、樹脂製若しくはこれと同等の効果を発揮する素材で、耐候性、耐薬品性、軽量性、環境性に富む既知の合成樹脂、例えばスチロール樹脂を使用するのが実用上、最も好適であるがこれに限定されるものではない。
【0030】
装着部品の被覆材と可変成形基材に刺し通した尖端部は抜け落ちないための返し、またはストッパーを備えた調節可能な構造とするが、使用目的に合わせて適宜固定若しくは脱着可能な構造とすることも可能である。さらに、尖端に穴を設けることで確実に固定する方法も選ぶことも可能になる。
【0031】
実際に表される本発明の可変装飾玩具の装着部品の形状は使用目的に合わせて構成される。例えば人形形体であれば顔面の部材である目、口、鼻、眉等であり、動物形体であれば目、鼻、角等、乗り物形体であれば車輪等も含まれる。その他、その付属品や持ち物、連結部品、接続具の装飾物等もあるがこれらは一例であってこれに限定されるものではない。
【0032】
〔玩具〕
本発明において玩具とは、子供用の玩具に限定されず、装飾具、教育用材、各種模型等に使用するのが実用上、最も好適であるがこれに限定されるものではない。
【0033】
また、本発明の構造を持つ装飾用玩具の表現形体は、動物や人形、マスコット、キャラクター、定型、不定形に関係なく製作可能である。被覆材の伸縮度に制限はあるものの制限範囲内で自由自在な形状をとることができる。従来から代表されるテディベアのぬいぐるみにみられるような胴体部に対し頭部、腕部、脚部が回動自在なものにも各部分の形体自体に自由自在な形状をとることが可能になる。
【0034】
さらに、内部に用いられる可変成形基材は、末端処理が難しく腐食の恐れのある金属類は用いず、合成ゴム類の熱可塑性樹脂製、部品は樹脂製で構成されることにより、洗浄、乾燥することも可能であり安全で清潔に繰り返し永く使用できるものとなる。また、素材は塩素を含んでいないため環境性にも配慮されたものとなる。
【0035】
以下、図面に示す実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
図1は、(a)に示す全体に可変成形基材3が内蔵された円盤状の基本形体が加温処理により、表面の被覆材1と共に(b)に示す星形に変形され、常時その形状保持のまま(c)に示す各装着部品、ここでは目と口の装着部品5を固定し全体に彩色6を施した一例である。
【0037】
図2は、上記図1の変形の各工程(a) (b) (c)の中心の断面をそれぞれ図にしたものである。
【実施例2】
【0038】
図3は、斜線で示された頭部と耳、尻尾部に可変成形基材3が内蔵された犬の動物形体である全体が被覆材1に覆われた可変装飾用玩具の可変前の基本形体の平面図である。
【0039】
図4は、上記図3の頭部と耳、尻尾部の変形の各工程を断面図にしたもので、(a)に示す頭部と耳、尻尾部に可変成形基材3が内蔵された原型を加温処理により、(b)に示す頭部は前後に伸ばし、鼻先にボリュームをもたせた形状にし、頭部に付属した立ち耳の形状を折れ耳に変形させ、尻尾部は細長く引張させ、常時その形状保持のまま(c)に示す頭部には目の装着部品5の固定を示し、尻尾部はさらに湾曲を加えた一例である。
【0040】
図5は、上記図4の頭部に装着部品5である目の各種パターンの一例を示したものである。同じ部品でも形状や位置またはその間隔によって個々に表情を変えることが可能になり、さらに独自性の高いものにすることができる。
【0041】
図6は、上記図3,図4の一例にさらに胴体部と頭部の被覆材1に特徴のある模様の彩色6を施し、完成させた一例である。頭部と尻尾部の点線部分は基本形体を示すものである。
【0042】
図7は上記図2(c)、上記図5(c)の装着部品5が緩衝材2と充填材4の中間層に配置された可変成形基材3に装着固定されている部分の断面拡大図である。
【0043】
図8は装着部品の構造の一例を示したものである。5(a)は3段階固定調節できるもの、5(b)は返しが付いた完全固定部品である。また、一例であるが装飾部品の表面形体をループ状にすることにより接続、連結が可能になる。5(c)はネジ式固定部品できるもの、5(d)、5(e)は、3段階脱着固定調節タイプで付けたり、外したりすることが可能な部品である。
【実施例3】
【0044】
図9は(a)のような従来から代表されるテディベアのぬいぐるみの基本形体である。胴体部に対し頭部、腕部、脚部が回動自在なものに対し、各部分の形体自体に可変成形基材3を内蔵させることにより、自由自在な形状をとることができる。(b1)は縦方向に加圧して変形させ、被覆材1にパンダ模様の彩色6させた一例であり、(b2)は逆に縦方向に伸ばして、手、脚を曲げて形状保持をさせ、被覆材1全体に彩色6を施した一例である。また、(b1)、(b2)の濃い点線部分は基本形体を示すものである。
【実施例4】
【0045】
図10は実施例3の図9と同様に可変成形基材3を内蔵した(a)の回動自在な人形の基本形体に対し、(b1)は縦方向に加圧して、圧縮した女の子の人形に、(b2)は逆に縦方向に伸ばして、引張した男の子の人形に、髪型を変え、それぞれ装飾部品7を装着し、被覆材1に彩色6を施すことにより個々の特徴を生かし、全く異なった人形に変化させた一例である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように本発明の可変装飾用玩具によれば、基本形体から形状を好みの形に変えられ、装着部品、彩色、模様を任意に施すことができることから、今までには無い粘土造形と絵を描く感覚の両方を併せ持ち自由な表現ができる立体を提供することができる。さらに、極めて簡単な構造で安全でしかもコストも安く実現できることで手軽に使用でき、玩具だけではなく利用範囲がさらに拡大されることとなる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・被覆材
2・・・緩衝材
3・・・可変成形基材
4・・・充填材
5・・・装着部品
6・・・彩色
7・・・装飾部品


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件を備えることを特徴とする可変装飾用玩具。
(イ)熱可塑性樹脂の成形物からなり、加温処理で変形させてから常温冷却をし、通常状態で形状保持することを特徴とする可変成形基材を内蔵する。
(ロ)上記の可変成形基材が少なくとも一部に内蔵され、彩色を施すこともできる被覆材に覆われてなることを特徴とする。
(ハ)上記の可変成形基材が、それを覆う被覆材の表面に任意に装飾・装着する後付け部品を有害な接着剤や面倒な針や糸で縫い付けることなく簡単に固定することのできる構造を併せ持つことを特徴とする。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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