説明

可搬型ネットワーク通信装置、使用ネットワークインターフェイス部の選択方法、コンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【課題】可搬型ネットワーク通信装置を用いた通信の安定性を向上させる。
【解決手段】可搬型ネットワーク通信装置は、複数の第1のネットワークインターフェイス部と、複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、いずれか1つのネットワークインターフェイス部を利用して、パケットの送受信を行う通信処理部と、各第1のネットワークインターフェイス部について受信信号強度を決定する受信信号強度決定部と、各第1のネットワークインターフェイス部について受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する信号強度変化算出部と、変化値に基づき複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、通信処理部によるパケットの送受信に用いられる第1のネットワークインターフェイス部を選択するインターフェイス選択部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークにおけるパケットの送受信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーソナルコンピュータ等の通信端末によるインターネットアクセスを実現するために、通信端末と接続するためのネットワークインターフェイス部と、インターネットに接続するための複数の無線ネットワークインターフェイス部とを備え、これら複数の無線ネットワークインターフェイス部の中から所定の条件に従って、使用する無線ネットワークインターフェイス部を選択する可搬型の無線中継装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−21878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可搬型ネットワーク中継装置は、ユーザによって持ち運ばれて使用場所が変化し得るため、可搬型ネットワーク中継装置と無線ネットワークの無線基地局との間における遮蔽物の数及び種類や、これら装置間の距離が変化し得る。このため、可搬型ネットワーク中継装置と無線基地局との間における無線信号の強度が変化して、通信が不安定となるおそれがあった。しかしながら、従来の可搬型ネットワーク中継装置では、各無線ネットワークインターフェイス部における消費電力や上位レイヤのプロトコルに基づいて使用するネットワークインターフェイス部を選択していたため、上述した通信の不安定を解消することができなかった。
【0005】
上述した問題は、可搬型ネットワーク中継装置に限らず、携帯電話装置などの任意の可搬型ネットワーク通信装置において共通する問題であった。例えば、携帯電話装置についても、使用場所の変化に伴って、携帯電話装置と無線基地局との間における遮蔽物の数及び種類や、これら装置間の距離が変化して、通信が不安定となるおそれがあった。
【0006】
本発明は、可搬型ネットワーク通信装置を用いた通信の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]可搬型ネットワーク通信装置であって、互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局との間で無線通信を行う複数の第1のネットワークインターフェイス部と、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、いずれか1つの前記第1のネットワークインターフェイス部を利用して、パケットの送受信を行う通信処理部と、各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記無線基地局から受信する信号の受信信号強度を決定する受信信号強度決定部と、各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記決定された受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する信号強度変化算出部と、前記算出された変化値に基づき、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記通信処理部によるパケットの送受信に用いられる前記第1のネットワークインターフェイス部である使用ネットワークインターフェイス部を選択する、インターフェイス選択部と、を備える、可搬型ネットワーク通信装置。適用例1の可搬型ネットワーク通信装置によると、受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさに基づき使用インターフェイス部を選択するので、可搬型ネットワーク通信装置の位置が変わって、無線基地局との間における無線信号の強度が変化し得る状況であっても、より安定して通信が可能な第1のネットワークインターフェイス部を、使用インターフェイス部として選択することができる。それゆえ、適用例1の可搬型ネットワーク通信装置によると、可搬型ネットワーク通信装置を用いた通信の安定性を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が最も小さい前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさが最も小さいために最も安定して通信可能な無線ネットワークに対応する第1のネットワークインターフェイス部を、使用ネットワークインターフェイス部として選択することができる。加えて、最も安定して通信可能な無線ネットワークに対応する第1のネットワークインターフェイスを使用ネットワークインターフェイス部として選択することができるので、使用ネットワークインターフェイス部を新たに選択された第1のネットワークインターフェイス部に切り替える際に、認証の失敗や、セッションの切断等の不具合が発生する可能性を低減させることができる。
【0010】
[適用例3]適用例1に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定の大きさよりも小さい前記第1のネットワークインターフェイス部の中から、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさが比較的小さいために比較的安定して通信可能な無線ネットワークに対応する第1のネットワークインターフェイス部を、使用ネットワークインターフェイス部として選択することができる。
【0011】
[適用例4]適用例3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部には、それぞれ予め優先度が設定されており、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定の大きさよりも小さく、かつ、前記優先度の最も高い前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、各第1のネットワークインターフェイス部に設定する優先度を調整することにより、各第1のネットワークインターフェイス部における使用ネットワークインターフェイス部としての選択され易さを制御することができる。
【0012】
[適用例5]適用例3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定の大きさよりも小さく、かつ、最も低域の周波数帯を使用する前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、遮蔽物の変化に対して比較的強く伝播性能の比較的良い周波数帯を利用して、可搬型ネットワーク通信装置と無線基地局との間の通信を実現することができる。
【0013】
[適用例6]適用例3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、各前記第1のネットワークインターフェイス部を用いた無線通信における接続確立のための処理の開始から終了までの期間である準備期間を測定する準備期間測定部を備え、各前記第1のネットワークインターフェイス部は、それぞれ対応する無線ネットワークとの間で前記処理を実行し、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定のしきい値よりも小さく、かつ、前記準備期間が最も短いネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、可搬型ネットワーク通信装置とは異なる通信端末が可搬型ネットワーク通信装置を介して通信を行おうとする際に、比較的短時間のうちに通信を開始することができる。または、可搬型ネットワーク通信装置自身が通信端末として通信を行おうとする際に、比較的短時間のうちに通信を開始することができる。
【0014】
[適用例7]適用例3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、各前記第1のネットワークインターフェイス部を用いた無線通信における接続確立のための処理の実行結果を示す情報を記憶する記憶部を備え、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定のしきい値よりも小さく、かつ、前記実行結果が成功であった前記第1のネットワークインターフェイス部の中から、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、可搬型ネットワーク通信装置とは異なる通信端末が可搬型ネットワーク通信装置を介して通信を行おうとする際に、接続確立のための処理が成功しない可能性を低く抑えることができる。または、可搬型ネットワーク通信装置自身が通信端末として通信を行おうとする際に、接続確立のための処理が成功しない可能性を低く抑えることができる。したがって、通信端末または可搬型ネットワーク通信装置が通信を開始できる状況になるまでに要する期間が長くなることを抑制できる。
【0015】
[適用例8]適用例3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、前記互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局からの信号の受信可能領域の大きさを、それぞれ特定する受信可能領域特定部を備え、前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定のしきい値よりも小さく、かつ、前記受信可能領域の大きさが最も大きい無線基地局が所属する無線ネットワークに対応する前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、可搬型ネットワーク通信装置が移動した場合であっても、可搬型ネットワーク通信装置が同一の受信可能領域に存在する可能性を高めることができ、可搬型ネットワーク通信装置を介した通信の安定性を向上させることができる。
【0016】
[適用例9]適用例1ないし適用例8のいずれかに記載の可搬型ネットワーク通信装置において、前記受信信号強度決定部は、少なくとも1つの前記第1のネットワークインターフェイス部について、他の前記第1のネットワークインターフェイス部を用いて前記可搬型ネットワーク通信装置の位置情報を検出し、前記検出した位置情報に基づき前記受信信号強度を決定する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、少なくとも1つの第1のネットワークインターフェイス部を用いた通信における電波環境が悪いために、かかる第1のネットワークインターフェイス部について受信信号強度決定部により決定された受信信号強度の精度が低くなり得る状況であっても、精度の高い受信信号強度を決定することができる。
【0017】
[適用例10]適用例1ないし適用例9のいずれかに記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、通信端末との間で無線通信又は有線通信を行う第2のネットワークインターフェイス部を備え、前記通信処理部は、前記使用インターフェイス部と前記第2のネットワークインターフェイス部との間でパケットの中継を行い、前記インターフェイス選択部は、前記使用ネットワークインターフェイス部を、前記通信処理部によって前記第2のネットワークインターフェイス部との間でパケットの中継が行われる前記第1のネットワークインターフェイス部として、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部の中から選択する、可搬型ネットワーク通信装置。このような構成により、可搬型ネットワーク通信装置が、第2のネットワークインターフェイス部を介して通信端末から受信するデータ(パケット)を、第1のネットワークインターフェイス部に中継する構成において、可搬型ネットワーク通信装置を介した通信の安定性を向上させることができる。
【0018】
[適用例11]互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局との間で無線通信を行う複数の第1のネットワークインターフェイス部を有する可搬型ネットワーク通信装置において、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、パケットの送受信に用いられる1つの前記第1のネットワークインターフェイス部である使用ネットワークインターフェイス部を選択する方法であって、(a)各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記無線基地局から受信する信号の受信信号強度を決定する工程と、(b)各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記決定された受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する工程と、(c)前記算出された変化値に基づき、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する工程と、を備える、方法。適用例11の方法によると、受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさに基づき使用インターフェイス部を選択するので、可搬型ネットワーク通信装置の位置が変わって、無線基地局との間における無線信号の強度が変化し得る状況であっても、より安定して通信が可能な第1のネットワークインターフェイス部を、使用インターフェイス部として選択することができる。それゆえ、適用例11の方法によると、可搬型ネットワーク通信装置を用いた通信の安定性を向上させることができる。
【0019】
[適用例12]互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局との間で無線通信を行う複数の第1のネットワークインターフェイス部を有する可搬型ネットワーク通信装置において、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、パケットの送受信に用いられる1つの前記第1のネットワークインターフェイス部である使用ネットワークインターフェイス部を選択するためのコンピュータプログラムであって、各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記無線基地局から受信する信号の受信信号強度を決定する機能と、各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記決定された受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する機能と、前記算出された変化値に基づき、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する機能と、をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。適用例12のコンピュータプログラムによると、受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさに基づき使用インターフェイス部を選択するので、可搬型ネットワーク通信装置の位置が変わって、無線基地局との間における無線信号の強度が変化し得る状況であっても、より安定して通信が可能な第1のネットワークインターフェイス部を、使用インターフェイス部として選択することができる。それゆえ、適用例12のコンピュータプログラムによると、可搬型ネットワーク通信装置を用いた通信の安定性を向上させることができる。
【0020】
[適用例13]適用例12に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。このような構成により、かかる記録媒体を用いてコンピュータにプログラムを読み取らせ、各機能を実現させることができる。
【0021】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、可搬型ネットワーク通信装置を含む無線通信システムや、可搬型ネットワーク中継装置や、携帯電話装置や、これら装置又はシステムの制御方法や、これら装置又はシステムの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の可搬型ネットワーク通信装置を適用した一実施例としての可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。
【図2】可搬型ネットワーク中継装置を用いた通信態様を模式的に示す説明図である。
【図3】第1実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】中継ネットワークインターフェイス部が選択される様子を模式的に示す第1の説明図である。
【図5】中継ネットワークインターフェイス部が選択される様子を模式的に示す第2の説明図である。
【図6】第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。
【図7】第2実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】第3実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第4実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。
【図10】第4実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】第5実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。
【図12】第5実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第6実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。
【図14】図13に示す無線基地局テーブルの設定内容の一例を示す説明図である。
【図15】図13に示す受信信号強度テーブルの設定内容の一例を示す説明図である。
【図16】第6実施例における受信信号強度決定処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の可搬型ネットワーク通信装置を適用した一実施例としての携帯電話装置の構成を示すブロック図である。
【図18】第7実施例における携帯電話装置を用いた通信態様を模式的に示す説明図である。
【図19】第7実施例における使用ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は、本発明の可搬型ネットワーク通信装置を適用した一実施例としての可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。可搬型ネットワーク中継装置10は、無線LAN(Local Area Network)インターフェイス部(以下、「無線LAN−IF部」とも表記する)40と、無線WAN(Wide Area Network)インターフェイス部(以下、「無線WAN−IF部」とも表記する)50と、移動体通信インターフェイス部(以下、「移動体通信IF部」とも表記する)60と、CPU(Central Processing Unit)20と、フラッシュROM(Read-Only Memory)34と、RAM(Random Access Memory)32とを備えている。可搬型ネットワーク中継装置10は、パーソナルコンピュータやゲーム機などの無線LANクライアントを、インターネットや、無線LANクライアントが所属する無線LANとは異なる無線LANに接続させる。
【0024】
無線LAN−IF部40は、変調器や、アンプや、アンテナを含み、例えばIEEE802.11b/g/nに準拠した無線LANのアクセスポイントとして、無線LANのクライアント(例えばパーソナルコンピュータやゲーム機)と無線通信を行う。
【0025】
無線WAN−IF部50は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えばIEEE802.11a/b/g/nに準拠した無線LANのクライアントとして、無線LANのアクセスポイント(例えば公衆無線LANのアクセスポイント)と無線通信を行う。無線WAN−IF部50は、受信信号強度決定部51を備えている。受信信号強度決定部51は、図示しない無線LANのアクセスポイントから出力される信号の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を決定する。
【0026】
移動体通信IF部60は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えば3G/HSPAに準拠した移動体通信の端末として、図示しない移動体通信網の無線基地局と無線通信を行う。移動体通信IF部60は、受信信号強度決定部61を備えている。受信信号強度決定部61は、図示しない移動体通信網の無線基地局から出力される信号の受信信号強度を決定する。
【0027】
このように、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10は、それぞれが互いに異なる無線ネットワークにおける無線通信を行う複数のネットワークインターフェイスを有している。
【0028】
フラッシュROM34には、予めプログラム群が格納されており、CPU20は、このプログラム群をそれぞれ実行することにより、転送処理部21、転送制御部22、信号強度変化算出部23、インターフェイス選択部24として、それぞれ機能する。
【0029】
転送処理部21は、ルータ機能部21rと、ブリッジ機能部21bとを有しており、各無線通信インターフェイス部(無線LAN−IF部40、無線WAN−IF部50、移動体通信IF部60)を介して入力されるパケット(レイヤ3パケット及びレイヤ2フレーム)を、宛先アドレスに従って転送する。ルータ機能部21rは、レイヤ3パケットの中継を行う。ブリッジ機能部21bは、レイヤ2フレームの中継を行う。可搬型ネットワーク中継装置10は、ルータ機能部21r及びブリッジ機能部21bがいずれも機能することによりルータ装置として動作し、ブリッジ機能部21bのみが機能することによりブリッジ装置として動作する。
【0030】
転送制御部22は、転送処理部21を制御する。具体的には、転送処理部21がパケットを中継する際に用いる経路選択用の各種テーブル(ルーティングテーブルや、ARPテーブル等)の作成や更新等の処理を行う。
【0031】
信号強度変化算出部23は、無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60における単位時間当たりの受信信号強度の変化量(以下、単に「単位時間当たりの変化量」とも呼ぶ)を算出する。インターフェイス選択部24は、無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60のうち、いずれか一方のネットワークインターフェイス部を、無線LAN−IF部40から受信したパケットの中継先のネットワークインターフェイス部(以下、「中継ネットワークインターフェイス部」又は「中継ネットワークIF部」と呼ぶ)として選択する。
【0032】
図2は、可搬型ネットワーク中継装置を用いた通信態様を模式的に示す説明図である。図2の通信態様では、通信端末として動作するパーソナルコンピュータ100と、可搬型ネットワーク中継装置10とは、同じ無線LAN201に接続されている。無線LAN201において、可搬型ネットワーク中継装置10は無線LANアクセスポイントとして動作し、パーソナルコンピュータ100は無線LANクライアントとして動作する。このとき、無線LAN−IF部40は、通信端末との間で無線通信を実行するネットワークインターフェイス部(端末側IF部)として動作する。
【0033】
また、図2の通信態様では、可搬型ネットワーク中継装置10と、無線LANアクセスポイント装置150とは、同じ無線LAN202に接続されている。無線LAN202において、可搬型ネットワーク中継装置10は、無線LANクライアントとして動作し、無線LANアクセスポイント装置150は、無線LANアクセスポイントとして動作する。可搬型ネットワーク中継装置10は、無線WAN−IF部50を用いて無線LANアクセスポイント装置150との無線通信を行う。無線LAN202は、図示しないISP(Internet Services Provider)のネットワークを介してインターネットINTに接続されている。
【0034】
また、図2の通信態様では、可搬型ネットワーク中継装置10は、移動体通信IF部60を用いて、移動体通信網203の無線基地局160との間で無線通信を行う。移動体通信網203は、インターネットINTに接続されている。このように、可搬型ネットワーク中継装置10は、インターネットINT側のネットワーク(換言すると、パーソナルコンピュータ100が所属しないネットワーク)と接続するためのネットワークインターフェイス部(以下、「WAN側IF部」と呼ぶ)として、無線WAN−IF部50と移動体通信IF部60とを備えている。
【0035】
このような図2の通信態様では、パーソナルコンピュータ100は、無線LAN201及び無線LAN202を介してインターネットINTに接続された装置(例えば、WEBサーバ)と通信を行うことができる。この場合、無線WAN−IF部50は、中継ネットワークIF部として機能する。また、パーソナルコンピュータ100は、無線LAN201及び移動体通信網203を介してインターネットINTに接続された装置と通信を行うことができる。この場合、移動体通信IF部60は、中継ネットワークIF部として機能する。
【0036】
可搬型ネットワーク中継装置10では、WAN側IF部である2つのネットワークインターフェイス部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)のうち、中継ネットワークIF部として機能させるネットワークインターフェイス部を、後述の中継ネットワークIF部選択処理を実行することにより選択する。可搬型ネットワーク中継装置10では、かかる処理を実行することにより、可搬型ネットワーク中継装置10を介した通信の安定性を向上させることができる。
【0037】
前述の可搬型ネットワーク中継装置10は、請求項における可搬型ネットワーク通信装置に相当する。また、中継ネットワークインターフェイス部は請求項における使用ネットワークインターフェイス部に、無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60は請求項における複数の第1のネットワークインターフェイス部に、無線LAN−IF部40は請求項における第2のネットワークインターフェイス部に、転送処理部21及び転送制御部22は請求項における通信処理部に、信号強度変化算出部23は請求項における受信信号強度算出部に、単位時間当たりの変化量は請求項における変化値に、それぞれ相当する。
【0038】
A2.中継ネットワークインターフェイス部選択処理:
図3は、第1実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。可搬型ネットワーク中継装置10では、電源がオンすると、中継ネットワークインターフェイス部選択処理が繰り返し実行される。
【0039】
受信信号強度決定部51は、無線WAN−IF部50における受信信号強度を決定し、受信信号強度決定部61は、移動体通信IF部60における受信信号強度を決定する(ステップS105)。具体的には、例えば、受信信号強度決定部51は、無線LANのアクセスポイント150が出力するビーコンを受信した際の受信強度を測定することにより、受信信号強度を決定する。また、例えば、受信信号強度決定部61は、受信信号強度の値を含む信号を、無線基地局160を介して移動体通信網から受信することにより受信信号強度を決定することができる。なお、受信信号強度決定部51及び受信信号強度決定部61は、複数の無線基地局から出力される信号を受信している場合には、最も強い受信信号強度を、各WAN側IF部における受信信号強度として決定する。
【0040】
信号強度変化算出部23は、ステップS105で決定された受信信号強度の値と、受信信号強度が決定された時刻とをフラッシュROM34に記憶させる(ステップS110)。信号強度変化算出部23は、各WAN側IF部について、フラッシュROM34に記憶されている単位時間当たりの変化量を算出する(ステップS115)。具体的には、信号強度変化算出部23は、前回決定された受信信号強度の値及び時刻と、今回決定された受信信号強度の値及び時刻とをフラッシュROM34から読み出して、これらの受信信号強度の値の差分の絶対値を求め、前回受信信号強度を決定したときから今回受信信号強度を決定するまでの期間で除することにより、単位時間当たりの変化量を算出する。
【0041】
インターフェイス選択部24は、ステップS115で算出された単位時間当たりの変化量に基づき、各WAN側IF部のうち、単位時間当たりの変化量が最も小さいネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する(ステップS120)。可搬型ネットワーク中継装置10は、その高い携帯性により移動しながら使用され得る。この場合、可搬型ネットワーク中継装置10と無線基地局(無線LAN202における無線LANアクセスポイント装置150や、移動体通信網203における無線基地局160)との間における遮蔽物の数及び種類や、可搬型ネットワーク中継装置10と無線基地局との間の距離が変化するために、電波環境が変化して、可搬型ネットワーク中継装置10を介した通信が不安定となり得る。そこで、可搬型ネットワーク中継装置10では、WAN側IF部である無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60のうち、単位時間当たりの変化量が最も小さいネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択することにより、電波環境が比較的安定しているネットワークを選択し、可搬型ネットワーク中継装置10を介した通信の安定性を向上させるようにしている。
【0042】
なお、無線WAN−IF部50と移動体通信IF部60とでは、互いに通信方式が異なり、また、受信信号強度の決定方法が異なるため、受信信号強度を決定する際の基準(決定される受信信号強度の単位)が異なり得る。そこで、ステップS115において無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60についてそれぞれ得られた単位時間当たりの変化量のうち、他方を一方の基準に合わせる、または、両方を新たな同一の基準に合わせる(正規化する)ことが好ましい。このため、例えば、比較器を用いて単位時間当たりの変化量を換算したり、予め換算後の値が設定されたテーブルを用意しておき、かかるテーブルを参照して単位時間当たりの変化量を換算したり、所定の演算式により換算値を算出することができる。
【0043】
中継ネットワークIF部が選択されると、転送制御部22は、選択された中継ネットワークIF部を図示しないルーティングテーブルに登録する。その結果、パーソナルコンピュータ100とインターネットINTに接続された装置との間の通信を行う際に、中継ネットワークIF部として選択されたネットワークインターフェイス部(無線WAN−IF部50又は移動体通信IF部60)が用いられる。
【0044】
図4は、中継ネットワークインターフェイス部が選択される様子を模式的に示す第1の説明図である。図4では、無線LANアクセスポイント装置150は、鉄道車両500内に固定配置されている。ユーザは、可搬型ネットワーク中継装置10及びパーソナルコンピュータ100を持って鉄道車両500に乗車しており、鉄道車両500内で可搬型ネットワーク中継装置10及びパーソナルコンピュータ100の電源をオンにしている。なお、鉄道車両500は走行している。車両の外には、無線基地局160が設置されている。
【0045】
図4上段に示すように、時刻t1において無線WAN−IF部50について決定された受信信号強度はA(t1)であり、移動体通信IF部60について決定された受信信号強度はB(t1)である。次にステップ105が実行された時刻はt2であり、図4下段に示すように、時刻t2において無線WAN−IF部50について決定された受信信号強度はA(t2)であり、移動体通信IF部60について決定された受信信号強度はB(t2)である。
【0046】
無線LANアクセスポイント装置150と可搬型ネットワーク中継装置10とは、いずれも鉄道車両500内に配置されているため、時刻t1と時刻t2とで、これらの装置間における遮蔽物や装置間の距離は変化しない。したがって、受信信号強度A(t1)と受信信号強度A(t2)との差分の絶対値は、極めて小さい。
【0047】
これに対して、無線基地局160は鉄道車両500の車外に配置されているので、無線基地局160と可搬型ネットワーク中継装置10との間の遮蔽物の数や種類、及び装置間の距離は、鉄道車両500の移動と共に大きく変化する。したがって、受信信号強度B(t1)と受信信号強度B(t2)との差分の絶対値は、比較的大きい。このため、無線WAN−IF部50について算出される単位時間当たりの変化量は、移動体通信IF部60について算出される単位時間当たりの変化量に比べて小さくなり、無線WAN−IF部50が中継ネットワークIF部として選択される。
【0048】
図5は、中継ネットワークインターフェイス部が選択される様子を模式的に示す第2の説明図である。図5では、無線LANアクセスポイント装置150及び無線基地局160は、いずれも固定設置されている。ユーザは、可搬型ネットワーク中継装置10及びパーソナルコンピュータ100を持って移動(例えば、自動車等による移動)をしている。
【0049】
図5に示すように、無線LANアクセスポイント装置150から出力される信号の受信可能領域(以下、単に「受信可能領域」と呼ぶ)AR1は、無線基地局160から出力される信号の受信可能領域AR2に含まれている。ユーザ(可搬型ネットワーク中継装置10及びパーソナルコンピュータ100)は、時刻t1,t2のいずれにおいても、受信可能領域AR1,AR2内に存在する。
【0050】
図5上段に示すように、時刻t1において無線WAN−IF部50について決定された受信信号強度はC(t1)であり、移動体通信IF部60について決定された受信信号強度はD(t1)である。次にステップ105が実行された時刻はt2であり、図5下段に示すように、時刻t2において無線WAN−IF部50について決定された受信信号強度はC(t2)であり、移動体通信IF部60について決定された受信信号強度はD(t2)である。
【0051】
時刻t2における可搬型ネットワーク中継装置10と無線LANアクセスポイント装置150との間の距離は、時刻t1における可搬型ネットワーク中継装置10と無線LANアクセスポイント装置150との間の距離に比べて大きい。これに対して、時刻t2における可搬型ネットワーク中継装置10と無線基地局160との間の距離は、時刻t1における可搬型ネットワーク中継装置10と無線基地局160との間の距離とほぼ同じである。したがって、可搬型ネットワーク中継装置10と各WAN側IF部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)との間における遮蔽物の数や種類が、いずれも時刻t1と時刻t2とでほとんど変わらないとすれば、移動体通信IF部60について算出される単位時間当たりの変化量は、無線WAN−IF部50について算出される単位時間当たりの変化量に比べて小さくなる。したがって、図5の例では、移動体通信IF部60が中継ネットワークIF部として選択される。
【0052】
以上説明したように、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10では、WAN側IF部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)のうち、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が最も少ないネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する。したがって、可搬型ネットワーク中継装置10の移動に伴って電波環境が変化し得る場合でも、電波環境が比較的安定したネットワークを選択して、パケットの中継を行うので、可搬型ネットワーク中継装置10を介した通信の安定性を向上させることができる。また、電波環境が比較的安定したネットワークに対応するWAN側IF部を、中継ネットワークIF部として選択するので、中継ネットワークIF部を新たに選択されたWAN側IF部に切り替える際に、認証の失敗やセッションの切断等の不具合が発生する可能性を低減させることができる。加えて、可搬型ネットワーク中継装置10では、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が「最も小さい」ネットワークインターフェイス部を選択するので、比較処理の回数を1回とすることができ、選択に要する期間を短くすることができる。
【0053】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置10aは、予めフラッシュROM34に優先度テーブルTB1が格納されている点と、WAN側IF部から中継ネットワークIF部を選択する際の基準において、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10と異なり、他の構成は、可搬型ネットワーク中継装置10と同じである。
【0054】
図6に示すように、優先度テーブルTB1には、無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60のそれぞれについて、優先度が予め設定されている。本実施例では、無線WAN−IF部50に優先度「1」が、移動体通信IF部60に優先度「2」が、それぞれ設定されている。なお、優先度「1」は、優先度「2」よりも高い優先度であることを示す。この優先度は、ユーザが任意の基準にしたがって設定することができる。例えば、通信速度や、各ネットワークインターフェイス部の消費電力量や、通信コストなどに基づき、ユーザが任意に設定することができる。
【0055】
図7は、第2実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。第2実施例の中継ネットワークIF部選択処理は、ステップS120に代えて、ステップS125,S130,S135を実行する点において、図3に示す第1実施例の中継ネットワークIF部選択処理と異なり、他の手順は、第1実施例と同じである。
【0056】
図7に示すように、ステップS115において、各WAN側IF部について単位時間当たりの変化量が算出されると、インターフェイス選択部24は、算出された単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部の有無を判定する(ステップS125)。
【0057】
単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部が有ると判定されると(ステップS125:YES)、インターフェイス選択部24は、優先度テーブルTB1を参照して、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部のうち、優先度が最も高いネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する(ステップS130)。これに対し、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部が無いと判定されると(ステップS125:NO)、インターフェイス選択部24は、前回選択されたネットワークインターフェイス部を、今回の中継ネットワークIF部として選択する(ステップS135)。
【0058】
以上の構成を有する第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置10aは、WAN側IF部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)のうち、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する。したがって、可搬型ネットワーク中継装置10の移動に伴って電波環境が変化し得る場合でも、電波環境が比較的安定したネットワークを選択してパーソナルコンピュータ100から送信されるパケットを中継するので、可搬型ネットワーク中継装置10を介した通信の安定性を向上させることができる。加えて、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部の中から、最も優先度が高いネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択するので、ユーザは、優先度テーブルTB1に設定する優先度を調整することにより、各WAN側IF部における中継ネットワークIF部としての選択され易さを制御することができる。
【0059】
C.第3実施例:
図8は、第3実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。第3実施例の可搬型ネットワーク中継装置の装置構成は、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10の装置構成と同じである。第3実施例の中継ネットワークIF部選択処理は、ステップS130に代えて、ステップS130aを実行する点において、図7に示す第2実施例の中継ネットワークIF部選択処理と異なり、他の手順は第2実施例と同じである。
【0060】
図8に示すように、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部が有ると判定されると(ステップS125:YES)、インターフェイス選択部24は、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部のうち、最も低域の周波数帯を使用するネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する(ステップS130a)。具体的には、例えば、無線WAN−IF部50の使用周波数帯が2.4GHz帯であり、移動体通信IF部60の使用周波数帯が800MHz帯であり、いずれのネットワークインターフェイス部についても単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さい場合には、最も低域の周波数帯を使用する無線WAN−IF部50が、中継ネットワークIF部として選択される。
【0061】
このように、最も低域の使用周波数帯を使用するネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択するのは、使用周波数帯がより低域であるほど遮蔽物の数や種類等の変化に強く伝播性能が良いので、遮蔽物の変化が生じても安定した通信を実現できるからである。
【0062】
以上の構成を有する第3実施例の可搬型ネットワーク中継装置は、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10及び第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置10aと同様な効果を有する。加えて、第3実施例の可搬型ネットワーク中継装置は、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部の中から、最も低域の使用周波数帯を使用するネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択する。したがって、可搬型ネットワーク中継装置の移動に伴って可搬型ネットワーク中継装置と無線基地局(無線LANアクセスポイント装置150や無線基地局160)との間における遮蔽物の数や種類が変わっても、可搬型ネットワーク中継装置10を介した通信の安定性を向上させることができる。
【0063】
D.第4実施例:
図9は、第4実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。第4実施例の可搬型ネットワーク中継装置10bの装置構成は、CPU20が準備期間測定部25として機能する点と、フラッシュROM34が準備期間データ格納部341を備えている点とにおいて、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10の装置構成と異なり、他の構成は可搬型ネットワーク中継装置10と同じである。
【0064】
準備期間測定部25は、各WAN側IF部における接続確立処理(シーケンス)の実行に要する期間を測定(計時)する。具体的には、準備期間測定部25は、パーソナルコンピュータ100から出力されたデータを中継するためにWAN側IF部において接続確立処理が実行される度に、接続確立処理の開始から処理が終了するまで(すなわち、各WAN側IF部を利用してパケットの中継が行い得る状態となるまで)に要する期間(以下、「準備期間」と呼ぶ)を計時して、得られた準備期間の情報を準備期間データ格納部341に記憶させる。例えば、無線WAN−IF部50を用いた接続確立シーケンスとして、EESID(Extended Service Set Identifier)やWPA(Wi-Fi Protected Access)キーを用いた認証や、MAC(Media Access Control)アドレスを用いた認証や、PPPoE(PPP over Ethernet(登録商標))での認証や、HTTP(HyperText Transfer Protocol)ベースの認証が実行され得る。そこで、準備期間測定部25は、無線WAN−IF部50については、これらの認証処理を含む準備期間を計時する。
【0065】
図10は、第4実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。第4実施例の中継ネットワークIF部選択処理は、ステップS130に代えて、ステップS128及びS130bを実行する点において、図7に示す第2実施例の中継ネットワークIF部選択処理と異なり、他の手順は第2実施例と同じである。
【0066】
図10に示すように、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部が有ると判定されると(ステップS125:YES)、インターフェイス選択部24は、準備期間データ格納部341から各WAN側IF部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)について記録されている準備期間データを読み出し、各WAN側IF部について前回までの準備期間の平均値を算出する(ステップS128)。
【0067】
インターフェイス選択部24は、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部のうち、ステップS128において算出された準備期間の平均値が最も小さいネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する(ステップS130b)。
【0068】
このように、準備期間の平均値が最も小さいネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択するのは、パーソナルコンピュータ100からデータを送ろうとする際に、可搬型ネットワーク中継装置10においてより短期間のうちにパケットの転送を開始することができるからである。
【0069】
以上の構成を有する第4実施例の可搬型ネットワーク中継装置10bは、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10及び第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置10aと同様な効果を有する。加えて、第4実施例の可搬型ネットワーク中継装置は、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部の中から、前回までの準備期間の平均値が最も小さいネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択する。したがって、パーソナルコンピュータ100からデータを送ろうとする際に、可搬型ネットワーク中継装置10においてより短期間のうちにパケットの転送を開始することができる。
【0070】
E.第5実施例:
図11は、第5実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。第5実施例の可搬型ネットワーク中継装置10cは、フラッシュROM34が接続確立履歴格納部342を備えている点において、図6に示す第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置10aと異なり、他の構成は可搬型ネットワーク中継装置10aと同じである。
【0071】
接続確立履歴格納部342は、各WAN側IF部において実行された接続確立処理の成功又は失敗の履歴を格納する。無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60は、接続確立処理を実行するたびに、かかる処理の成功又は失敗の情報を接続確立履歴格納部342に格納する。接続確立処理が失敗の場合としては、例えば、誤った認証キーを用いたために認証が失敗した場合や、各WAN側IF部と可搬型ネットワーク中継装置10cとの間の遮蔽物により電波環境が悪化して認証用データが各WAN側IF部に届かない場合などが想定される。なお、接続確立履歴格納部342は、請求項における記憶部に相当する。
【0072】
図12は、第5実施例における中継ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。第5実施例の中継ネットワークIF部選択処理は、ステップS130に代えてステップS129及びS130cを実行する点において、図7に示す第2実施例の中継ネットワークIF部選択処理と異なり、他の手順は第2実施例と同じである。
【0073】
図12に示すように、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部が有ると判定されると(ステップS125:YES)、インターフェイス選択部24は、接続確立履歴格納部342を参照し、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部であって、前回実行された接続確立の処理が成功したネットワークインターフェイス部があるか否かを判定する(ステップS129)。単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部であって、前回実行された接続確立の処理が成功したネットワークインターフェイス部がないと判定されると(ステップS129:NO)、前述のステップS135が実行される。
【0074】
これに対して、ステップS129において、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部であって、前回実行された接続確立の処理が成功したネットワークインターフェイス部があると判定されると(ステップS129:YES)、インターフェイス選択部24は、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さく、前回の接続確立の処理が成功であり、かつ、優先度が最も高いネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択する(ステップS130c)。前回の接続確立の処理が成功したネットワークインターフェイス部を用いると、今回もかかる処理が成功する可能性が高い。そこで、可搬型ネットワーク中継装置10cでは、前回の接続確立の処理が成功したネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択することにより、接続確立処理の開始から可搬型ネットワーク中継装置10においてパケットの中継を開始できる状態となるまでに要する時間が、接続確立の処理の失敗によって長くなることを抑制している。
【0075】
以上の構成を有する第5実施例の可搬型ネットワーク中継装置10cは、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10及び第2実施例の可搬型ネットワーク中継装置10aと同様な効果を有する。加えて、前回の接続確立処理が成功したネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択するので、次回の接続確立処理が成功する可能性を高めることができる。したがって、接続確立処理の開始から可搬型ネットワーク中継装置10においてパケットの中継を開始できる状態となるまでに要する時間が、接続確立の処理の失敗によって長くなることを抑制することができる。
【0076】
F.第6実施例:
図13は、第6実施例の可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。第6実施例の可搬型ネットワーク中継装置10dは、CPU20が位置特定部26として機能する点と、フラッシュROM34が無線基地局テーブルTB2及び受信信号強度テーブルTB3を備えている点と、各WAN側IF部の受信信号強度の決定方法とにおいて、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10と異なり、他の構成は可搬型ネットワーク中継装置10と同じである。位置特定部26は、可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置を特定する。
【0077】
図14は、図13に示す無線基地局テーブルの設定内容の一例を示す説明図である。無線基地局テーブルTB2では、各無線基地局について、無線基地局ID(識別子)と、緯度と、経度と、送信出力とが対応付けられている。無線基地局テーブルTB2では、無線基地局IDとして、無線LANアクセスポイントについてはMAC(Media Access Control)アドレスが、移動体通信網の無線基地局についてはセルIDが、それぞれ設定されている。無線基地局テーブルTB2の緯度及び経度とは、各無線基地局の配置位置の緯度及び経度を意味する。無線基地局テーブルTB2の送信出力とは、各無線基地局からの信号の送信出力を意味する。図14では、図示の便宜上、6つのエントリ(No.1〜6)が代表して示されている。なお、説明の便宜上、図14では、各エントリに設定されている各値を模式的な値により表わしている。
【0078】
無線基地局テーブルTB2は、例えば、予めユーザが設定しておくことができる。この場合、ユーザは、可搬型ネットワーク中継装置10dの使用が見込まれるエリアに配置されている無線基地局(無線LANアクセスポイント及び移動体通信網の基地局)について、識別子,緯度,経度,送信出力値を予め調べておき、無線基地局テーブルTB2に設定することができる。また、例えば、公衆無線LANサービスの提供事業者が、各無線LANアクセスポイントについての識別子(MACアドレス),緯度,経度,送信出力値を対応付けたデータベースを有し、このデータベースをユーザに開放しているケースにおいては、このデータベースにアクセスして、一部の無線LANアクセスポイント(例えば、可搬型ネットワーク中継装置10dの使用が見込まれるエリアに配置されている無線LANアクセスポイント)又は全ての無線LANアクセスポイントについての情報を可搬型ネットワーク中継装置10dにダウンロードして、無線基地局テーブルTB2に設定することもできる。また、移動体通信網を有する電気通信事業者が各無線基地局についての識別子(セルID),緯度,経度,送信出力値を対応付けたデータベースを有し、このデータベースをユーザに開放しているケースにおいても、同様にして、一部又は全ての無線基地局について、無線基地局テーブルTB2に設定することができる。
【0079】
図15は、図13に示す受信信号強度テーブルの設定内容の一例を示す説明図である。受信信号強度テーブルTB3では、所定の代表地点について、位置情報(緯度,軽度)と、各WAN側IF部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)の受信信号強度の値とが対応付けられている。なお、説明の便宜上、図11では、各代表地点の位置情報及び受信信号強度を模式的な値により表わしている。これらの値は、予めユーザが設定しておくことができる。具体的には、ユーザは、所定の代表地点における無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60の受信信号強度を測定し、受信信号強度テーブルTB3に設定しておくことができる。なお、公衆無線LANサービスの提供事業者や、移動体通信網を有する電気通信事業者が各代表地点における受信信号強度の値を管理するデータベースを有し、このデータベースをユーザに開放しているケースでは、このデータベースにアクセスして、代表地点の位置情報及び受信信号強度の値を取得して受信信号強度テーブルTB3に記録することもできる。
【0080】
図16は、第6実施例における受信信号強度決定処理の手順を示すフローチャートである。可搬型ネットワーク中継装置10dでは、電源がオンすると、受信信号強度決定処理が繰り返し実行される。
【0081】
位置特定部26は、各WAN側ネットワークIF部について、他方のWAN側IF部で受信した信号に基づき、無線基地局の位置及び送信出力を決定する(ステップS205)。各無線基地局から出力される信号には、各無線基地局の識別子が含まれている。例えば、ビーコンやプローブ応答には、無線LANアクセスポイントのMACアドレスが含まれている。また、移動体通信網の基地局から出力される信号には、セルIDが含まれている。そこで、位置特定部26は、これら信号に含まれる無線基地局の識別子(MACアドレス又はセルID)をキーとして、無線基地局テーブルTB2から各無線基地局の位置(緯度、経度)及び送信出力を特定する。このとき、少なくとも3つの無線基地局から出力される信号に基づき、少なくとも3つの無線基地局の位置を特定する。
【0082】
次に、位置特定部26は、各WAN側IF部について、他方のWAN側IF部における受信信号強度と、ステップS205で特定した無線基地局の位置及び送信出力に基づき、可搬型ネットワーク中継装置10dの位置を決定する(ステップS210)。具体的には、位置特定部26は、まず、ステップS205で位置及び送信出力が特定された各無線基地局について、送信出力と、中継ネットワーク選択処理のステップS105で決定した受信信号強度とに基づき、無線基地局から可搬型ネットワーク中継装置10dに至るまでの減衰電力(空間伝播損失)を求める。具体的には、例えば、受信信号強度と受信電力値を対応付けたテーブルを予め用意しておき、かかるテーブルを参照して、受信信号強度に基づき受信電力値を特定する。そして、受信電力値から送信出力値(送信電力値)を差し引くことにより、減衰電力値(空間伝播損失)を求めることができる。各無線基地局と可搬型ネットワーク中継装置10dとの間における電波環境(遮蔽物の数や種類等)が同じであると想定すると、各無線基地局と可搬型ネットワーク中継装置10dとの間の距離がより大きいほど、減衰電力はより大きくなると推定される。次に、位置特定部26は、位置及び送信出力が特定された無線基地局のうち任意に選択した2つの無線基地局について求めた減衰電力の比と、これら2つの無線基地局の位置情報(緯度,経度)から、可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置の候補の地点からなる第1の直線を定める。例えば、予め、2点間の距離の比と、減衰電力の比とを対応付けたテーブルを用意しておき、かかるテーブルを参照して、減衰電力の比に基づき2点からの距離の比を求め、2つの無線基地局の位置からの距離の比が求めた距離の比となるような直線を、第1の直線として定めることができる。同様にして、位置特定部26は、前回と異なる組み合わせとなる2つの無線基地局について求めた減衰電力の比と、これら2つの無線基地局の位置情報(緯度,経度)から、可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置の候補の地点からなる第2の直線を定める。そして、第1の直線と第2の直線との交点(緯度,経度)を求め、この交点を、可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置として決定する。
【0083】
なお、ステップS205において位置及び送信出力が特定できた無線基地局の数が2つである場合には、例えば、上述した第1の直線を求めた上で、2つの無線基地局を結ぶ直線と第1の直線との交点を求め、この交点を、可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置として決定することができる。また、位置及び送信出力が特定できた無線基地局の数が1つである場合には、例えば、かかる無線基地局を基準として所定の方向及び所定の距離だけ離れた位置を、可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置として決定することができる。
【0084】
位置特定部26は、受信信号強度テーブルTB3を参照して、ステップS210で決定された可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置に基づき、各WAN側IF部の受信信号強度を決定する(ステップS215)。具体的には、例えば、位置特定部26は、受信信号強度テーブルTB3を参照して、ステップS210において決定された可搬型ネットワーク中継装置10dの現在位置(緯度、経度)から最も近い位置の代表地点を特定し、特定された代表地点に設定されている各WAN側IF部における受信信号強度を、一方のWAN側IF部(ステップS205において受信信号強度を参照したWAN側IF部とは異なるWAN側IF部)の受信信号強度として決定する(ステップS215)。
【0085】
このような受信信号強度決定処理により、無線WAN−IF部50の受信信号強度が決定される具体例について以下説明する。ステップS205により、他方のWAN側IF部である移動体通信IF部60における受信信号強度に基づき、移動体通信網の無線基地局の位置が特定される。ステップS210により、移動体通信IF部60における受信信号強度と、移動体通信網の無線基地局の位置及び送信出力とに基づき、可搬型ネットワーク中継装置10dの位置が決定される。ステップS215により、可搬型ネットワーク中継装置10dの位置に基づき最も近い代表地点が特定され、かかる代表地点に設定されている無線WAN−IF部50における受信信号強度(例えば、図15に示すNo.1の代表地点が特定された場合には、受信信号強度「R1」)が決定される。
【0086】
このように、各WAN側IF部の受信信号強度を決定するために、他方のWAN側IF部の受信信号強度を利用するのは、電波環境が悪く、受信信号強度決定部51や受信信号強度決定部61により決定される受信信号強度の精度が低くなり得る状況であっても、精度の高い受信信号強度を決定するためである。かかる状況とは、例えば、無線LANアクセスポイント装置150と可搬型ネットワーク中継装置10dとの間に遮蔽物が多く存在するために、受信信号強度が非常に低くなり、無線WAN−IF部50における受信信号強度を正確に測定し難い場合などを意味する。
【0087】
以上説明した第6実施例の可搬型ネットワーク中継装置10dは、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10と同じ効果を有する。加えて、可搬型ネットワーク中継装置10dでは、各WAN側IF部の受信信号強度を決定するために、他方のWAN側IF部の受信信号強度決定部により決定された受信信号強度を利用して決定する。したがって、一方のWAN側ネットワークIF部を用いた通信における電波環境が悪く、かかるネットワークインターフェイス部の受信信号強度決定部(受信信号強度決定部51又は受信信号強度決定部61)により決定された受信信号強度の精度が低くなり得る状況であっても、精度の高い受信信号強度を決定することができる。
【0088】
G.第7実施例:
上述した第1ないし第6実施例では、本発明の可搬型ネットワーク通信装置を可搬型ネットワーク中継装置(モバイルルータ)に適用した例を述べたが、本実施例では、本発明の可搬型ネットワーク通信装置を、携帯電話装置に適用した例を示す。
【0089】
図17は、本発明の可搬型ネットワーク通信装置を適用した一実施例としての携帯電話装置の構成を示すブロック図である。携帯電話装置600は、無線WAN−IF部650と、移動体通信IF部660と、CPU620と、フラッシュROM632と、RAM631と、音声入出力部641と、表示部642と、操作部643とを備えている。携帯電話装置600は、電話機として他の電話機との間で音声通話を行うことができると共に、データ通信端末として、例えば、インターネットに接続された装置との間でデータ通信を行うことができる。
【0090】
第7実施例のCPU620は、転送処理部21及び転送制御部22に代えて、データ通信制御部621と、電話機能部622と、表示制御部623と、操作制御部624と、アプリケーション実行部625として機能する点において、第1実施例のCPU20と異なる。
【0091】
データ通信制御部621は、携帯電話装置600がネットワークを介してデータ通信を行う際に、かかる通信を制御する。例えば、携帯電話装置600で実行されるアプリケーションが、携帯電話装置600とネットワークを介して接続された装置との間におけるTCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)通信を伴う場合には、TCPやIPの処理を実行する。具体的には、例えば、フラッシュROM632に記憶されている図示しないルーティングテーブルに従って、レイヤ3のパケットの送信や受信を行う。なお、第7実施例では、データ通信制御部621は、請求項における通信処理部に相当する。
【0092】
電話機能部622は、呼接続及び呼切断や、音声符号化や、ノズル除去等の電話機能を実現するための各種処理を行う。表示制御部623は、表示部642における画像表示(例えば、アプリケーション実行の結果得られたWEB画面の表示等)を制御する。操作制御部624は、操作部643からの入力情報を解釈して、他の各機能部621〜625に伝える。アプリケーション実行部625は、フラッシュROM632に格納されているアプリケーションソフトウェアに従って、アプリケーションを実行する。
【0093】
なお、第7実施例のCPU620は、上述した各機能部621〜625として機能すると共に、信号強度変化算出部626及びインターフェイス選択部627としても機能する。第7実施例の信号強度変化算出部626は、第1実施例の信号強度変化算出部23と同じ機能を実現するため、説明を省略する。同様に、第7実施例のインターフェイス選択部627は、第1実施例のインターフェイス選択部24と同じ機能を実現するため、説明を省略する。
【0094】
音声入出力部641は、図示しないマイクロフォン及びスピーカを備え、入力される音声に基づき音声信号を生成したり、音声信号に基づき音声の再生を行う。表示部642は、操作メニュー画面や、アプリケーションの実行結果として得られた画像や映像を表示する。表示部642としては、例えば、タッチパネル式の液晶ディスプレイを採用することができる。操作部643は、音量を調整するためのボタンや、表示部642に表示されるカーソルの位置を移動させるためのボタンなど、各種操作ボタンを備えている。
【0095】
なお、第7実施例の無線WAN−IF部650は、第1実施例の無線WAN−IF部50と同じ機能を有するため説明を省略する。同様に、移動体通信IF部660は第1実施例の移動体通信IF部60と、RAM631は第1実施例のRAM32と、フラッシュROM632は第1実施例のフラッシュROM34と、それぞれ同じ機能を有するため、説明を省略する。
【0096】
図18は、第7実施例における携帯電話装置を用いた通信態様を模式的に示す説明図である。図18の通信態様は、通信端末と接続する側の構成を有していない点において、図2に示す第1実施例の通信態様と異なり、他の構成は、第1実施例の通信態様と同じである。具体的には、携帯電話装置600は、端末側IF部を備えておらず、携帯電話装置600とは別の通信端末(例えば、第1実施例におけるパーソナルコンピュータ100)から受信するデータ(パケット)の中継や、別の通信端末宛のデータ(パケット)の中継を行わない。携帯電話装置600は、第1実施例のパーソナルコンピュータ100で実行されるアプリケーションと同様なアプリケーションを自ら実行し、かかるアプリケーションが通信を伴う場合に、WAN側IF部(ネットワークに接続するためのインターフェイス部)である無線WAN−IF部650又は移動体通信IF部660のいずれかを用いてパケットの送受信を行う。
【0097】
第7実施例の携帯電話装置600では、後述する使用インターフェイス部選択処理を実行して、2つのWAN側IF部(無線WAN−IF部650及び移動体通信IF部660)のうち、パケットの送受信に利用するネットワークインターフェイス部(以下、「使用ネットワークインターフェイス部」又は「使用ネットワークIF部」と呼ぶ)を選択することにより、携帯電話装置600を用いた通信の安定性を向上させることができる。
【0098】
なお、本実施例において、携帯電話装置600は、請求項における可搬型ネットワーク通信装置に相当する。また、データ通信制御部621は請求項における通信処理部に相当する。
【0099】
図19は、第7実施例における使用ネットワークインターフェイス部選択処理の手順を示すフローチャートである。第7実施例の使用ネットワークインターフェイス部選択処理は、ステップS120に代えて、ステップS120aを実行する点において、図3に示す第1実施例の中継ネットワークインターフェイス部選択処理と異なり、他の手順は第1実施例の中継ネットワークインターフェイス部選択処理と同じである。
【0100】
上述したステップS105〜S115が実行された後、インターフェイス選択部627は、ステップS115で算出された単位時間当たりの変化量に基づき、各WAN側IF部のうち、単位時間当たりの変化量が最も小さいネットワークインターフェイス部を、使用ネットワークIF部として選択する(ステップS120a)。このステップS120aは、「中継ネットワークIF部」に代えて、「使用ネットワークIF部」として選択する点において、ステップS120と異なり、詳細な処理内容はステップS120と同じである。
【0101】
使用ネットワークIF部が選択されると、データ通信制御部621は、選択された使用ネットワークIFを図示しないルーティングテーブルに登録する。その結果、携帯電話装置600とインターネットINTに接続された装置との間の通信を行う際に、使用ネットワークIF部として選択されたネットワークインターフェイス部(無線WAN−IF部650又は移動体通信IF部660)が用いられる。
【0102】
以上説明した第7実施例の携帯電話装置600は、第1実施例の可搬型ネットワーク中継装置10と同様な効果を有する。すなわち、携帯電話装置600の移動に伴って電波環境が変化し得る場合でも、電波環境が比較的安定したネットワークを選択して、パケットの送受信を行うので、携帯電話装置600を用いた通信の安定性を向上させることができる。また、電波環境が比較的安定したネットワークに対応するWAN側IF部を、使用ネットワークIF部として選択するので、使用ネットワークIF部を新たに選択されたWAN側IF部に切り替える際に、認証の失敗や、セッションの切断等の不具合が発生する可能性を低減させることができる。加えて、携帯電話装置600では、単位時間当たりの受信信号強度の変化量が「最も小さい」ネットワークインターフェイス部を選択するので、比較処理の回数を1回とすることができ、選択に要する期間を短くすることができる。
【0103】
H.変形例:
この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、各実施例を組み合わせたり、次のような変形も可能である。
【0104】
H1.変形例1:
第2ないし第5実施例では、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部のうち、所定の条件を満たすネットワークインターフェイスを中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部として選択していたが、かかる所定の条件としては、上記各実施例に限定されるものではない。例えば、各WAN側IF部のうち、受信可能領域の最も広い無線基地局に対応するネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部として選択するという条件を採用することができる。このような構成により、可搬型ネットワーク中継装置10a〜10c及び携帯電話装置600が移動した場合であっても、可搬型ネットワーク中継装置10a〜10c及び携帯電話装置600が同一の受信可能領域に存在する可能性を高めることができ、可搬型ネットワーク中継装置10a〜10c及び携帯電話装置600を用いた通信の安定性を向上させることができる。
【0105】
受信可能領域の大きさは、例えば、予め各基地局について受信可能領域の大きさを示す情報(例えば、無線基地局からの受信可能な距離)を設定したテーブルをフラッシュROM34,632に格納しておき、かかるテーブルを参照して特定することができる。また、無線LANについての受信可能領域については、例えば、無線LANアクセスポイント装置150から出力されるビーコンに受信可能領域の大きさに関する情報が含まれている場合には、かかる情報に基づき、受信可能領域の大きさを特定することができる。移動体通信網についての受信可能領域については、例えば、以下のようにして受信可能領域の大きさを特定することができる。無線基地局160と移動体通信IF部60,660との間において、所定のフィードバックアルゴリズムに基づき最適な送信出力が選択される。そこで、予め送信出力と受信可能領域の大きさを示す情報(例えば、無線基地局160からの受信可能な距離)とを対応付けるテーブルをフラッシュROMに格納しておき、かかるテーブルを参照して選択された送信出力の値に基づいて受信可能領域の大きさを特定することができる。なお、このテーブルにおいては、送信出力がより大きいほど、より大きな受信可能領域を示す情報が設定される。以上の構成では、CPU20は、フラッシュROM34に予め格納されているプログラムを実行することにより、受信可能領域の大きさを特定する機能部として機能することができ、かかる機能部は、請求項における受信可能領域特定部に相当する。
【0106】
H2.変形例2:
第6実施例では、可搬型ネットワーク中継装置10dの位置を特定するために、WAN側IF部における受信信号強度と、ステップS205で特定した無線基地局の位置及び送信出力に基づき特定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、位置特定部26が、GPS(Global Positioning System)受信部を備え、GPS衛星(測位衛星)から送信されるGPS信号(測位信号)を受信することにより、可搬型ネットワーク中継装置10dの位置を特定することもできる。また、GPS以外にも、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System:準天頂衛星システム)などの他の衛星測位システムを用いて可搬型ネットワーク中継装置10dの位置を特定することもできる。
【0107】
H3.変形例3:
第1ないし第6実施例では、可搬型ネットワーク中継装置10,10a〜10dは、パーソナルコンピュータ100との接続を、無線LAN−IF部40を用いた無線接続により実現していたが、無線接続に代えて、有線接続により実現することもできる。この構成では、可搬型ネットワーク中継装置10,10a〜10dに、有線接続用のネットワークインターフェイス部を設け、かかるネットワークインターフェイス部とパーソナルコンピュータ100とをネットワークケーブルで接続する。なお、有線接続用のネットワークインターフェイス部としては、例えば、IEEE802.3abや、IEEE802.3au等に準拠したネットワークインターフェイス部を採用することができる。
【0108】
H4.変形例4:
各実施例では、単位時間当たりの受信信号強度の変化量に基づいて中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部を選択していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、単位時間当たりの受信信号強度の「変化量」に代えて、単位時間当たりの受信信号強度の「変化率」に基づき中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部を選択することもできる。具体的には、まず、各実施例と同様に、前回と今回との受信信号強度の値の差分の絶対値を求め、さらに、得られた値を今回の受信信号強度の絶対値で除して得られた値(受信信号強度の変化率)を求める。そして、この変化率が最も小さいネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部として選択する、或いは、変化率が所定値よりも小さいネットワークインターフェイス部の中から各実施例2〜5の条件を満たすネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部として選択することもできる。これらの構成では、受信信号強度の変化率を、前回受信信号強度を決定したときから今回受信信号強度を決定するまでの期間で除していない。しかしながら、各WAN側IF部について同時に中継ネットワークIF部選択処理を実行することから、それぞれのWAN側IF部について同じ期間における変化率を比較するので、単位時間当たりの変化率を比較する場合と同じ結果を得ることができる。なお、同様の理由により、各実施例においても、かかる除算を省略することもできる。すなわち、一般には、中継ネットワークIF部又は使用ネットワークIF部を選択するために用いる情報として、受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す任意の変化値を、本発明において採用することができる。
【0109】
H5.変形例5:
第4実施例では、ステップS130bにおいて、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さく、かつ、準備期間の平均値が最も短いネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、単位時間当たりの変化量が所定値よりも小さく、かつ、前回測定した準備期間が最も短いネットワークインターフェイス部を、中継ネットワークIF部として選択することもできる。この構成では、ステップS129を省略することができ、中継ネットワークIF部選択処理に要する期間を短くすることができる。また、前回準備期間を測定した際の通信環境(電波環境や、認証サーバの動作状況等)と、次回接続確立をする際の通信環境とは互いに似ている可能性が高い。それゆえ、前回測定した準備期間は、次回に接続確立する際の準備期間に近い値となる可能性が高い。したがって、前回測定した準備期間が最も短いネットワークインターフェイス部を中継ネットワークIF部として選択することにより、次回接続を確立する際の準備期間と同程度の長さになる可能性の高いネットワークインターフェイス部を選択できる。このため、パーソナルコンピュータ100からデータを送ろうとする際に、より短期間のうちにパケットの中継を開始することができる。
【0110】
H6.変形例6:
第1ないし第6実施例では、中継ネットワークインターフェイス部選択処理は、可搬型ネットワーク中継装置10,10a〜10dの電源がオンすると繰り返し実行されていた。また、第7実施例では、使用ネットワークインターフェイス部選択処理は、携帯電話装置600の電源がオンすると繰り返し実行されていた。しかしながら、本発明において、これら処理が実行されるタイミング及び実行頻度は、これに限定されるものではない。例えば、随時又は定期的に受信信号強度を監視して、受信信号強度が所定の度合い以上に変化した場合に、中継ネットワークインターフェイス部選択処理及び使用ネットワークインターフェイス部選択処理を実行する構成を採用することもできる。このように、受信信号強度の変化の発生や、WAN側IF部の交換の発生といった、中継ネットワークインターフェイス部選択処理及び使用ネットワークインターフェイス部選択処理に影響を与える任意のイベントが発生したことをトリガとして、中継ネットワークインターフェイス部選択処理及び使用ネットワークインターフェイス部選択処理を実行することができる。また、例えば、第1実施例の中継ネットワークインターフェイス部選択処理であれば、所定の期間ごと(例えば、100ミリ秒ごと)に1サイクル(ステップS105〜S120)が実行されて終了する構成を採用することもできる。同様に、第7実施例の使用ネットワークインターフェイス部選択処理についても所定の期間ごとに1サイクル(ステップS105〜S120a)が実行されて終了する構成を採用することもできる。また、例えば、第1ないし第6実施例であれば、パーソナルコンピュータ100からインターネットINTに向けてデータを送信し、かかるデータを含むパケットを可搬型ネットワーク中継装置10,10a〜10dが受信したことを契機として、中継ネットワークIF部選択処理が実行されてもよい。なお、この構成において、第6実施例における受信信号強度決定処理を、同じ契機で開始させることもできる。同様にして、第7実施例の使用ネットワークインターフェイス部選択処理についても、携帯電話装置600からインターネットINTに向けてデータを送信しようとする場合に実行されてもよい。
【0111】
H7.変形例7:
第5実施例では、各WAN側IF部(無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60)について、他方のネットワークインターフェイス部が有する受信信号強度決定部により決定された受信信号強度を利用して受信信号強度を決定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、無線WAN−IF部50における受信信号強度については、移動体通信IF部60が有する受信信号強度決定部61により決定された受信信号強度を利用して決定し、移動体通信IF部60については、受信信号強度決定部61により決定された受信信号強度を、移動体通信IF部60における受信信号強度として決定することもできる。また、例えば、その逆に、移動体通信IF部60における受信信号強度については、無線WAN−IF部50が有する受信信号強度決定部51により決定された受信信号強度を利用して決定し、無線WAN−IF部50については、受信信号強度決定部51により決定された受信信号強度を、無線WAN−IF部50における受信信号強度として決定することもできる。
【0112】
H8.変形例8:
各実施例における可搬型ネットワーク中継装置10,10a〜10d及び携帯電話装置600の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、各実施例において、無線LAN−IF部40や無線WAN−IF部50,650は、IEEE802.11a/b/g/nに準拠した無線LANに限らず、将来的に利用可能となる無線LAN一般により無線通信を行う無線通信インターフェイスであるとしてもよい。また、移動体通信IF部60,660は、3G/HSPAに準拠した移動体通信に限らず、例えばLTE(Long Term Evolution)や次世代モバイルWiMAX(IEEE802.16m)、次世代PHS(XGP:eXtended Global Platform)といった将来的に利用可能となる移動体通信一般により無線通信を行う無線通信インターフェイスであるとしてもよい。
【0113】
また、各実施例では、WAN側IF部の数は、無線WAN−IF部50及び移動体通信IF部60の2つであったが、3つ以上とする構成を採用することもできる。この構成において、同じ種類のネットワークインターフェイス部を複数備える構成を採用することもできる。
【0114】
また、各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【符号の説明】
【0115】
10,10a,10b,10c,10d…可搬型ネットワーク中継装置
20…CPU
21…転送処理部
21b…ブリッジ機能部
21r…ルータ機能部
22…転送制御部
23…信号強度変化算出部
24…インターフェイス選択部
25…準備期間測定部
26…位置特定部
32…RAM
33…フラッシュROM
34…接続確立履歴データ格納部
40…無線LANインターフェイス部(無線LAN−IF部)
50…無線WANインターフェイス部(無線WAN−IF部)
51…受信信号強度決定部
60…移動体通信インターフェイス部(移動体通信IF部)
61…受信信号強度決定部
100…パーソナルコンピュータ
150…無線LANアクセスポイント
160…無線基地局
201…無線LAN
202…無線LAN
203…移動体通信網
341…準備期間データ格納部
342…接続確立履歴格納部
500…鉄道車両
TB1…優先度テーブル
TB2…無線基地局テーブル
TB3…受信信号強度テーブル
AR1,AR2…受信可能領域
INT…インターネット
600…携帯電話装置
620…CPU
621…データ通信制御部
622…電話機能部
623…表示制御部
624…操作制御部
625…アプリケーション実行部
626…信号強度変化算出部
627…インターフェイス選択部
631…RAM
632…フラッシュROM
641…音声入出力部
642…表示部
643…操作部
650…無線WANインターフェイス部(無線WAN−IF部)
660…移動体通信インターフェイス部(移動体通信IF部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型ネットワーク通信装置であって、
互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局との間で無線通信を行う複数の第1のネットワークインターフェイス部と、
前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、いずれか1つの前記第1のネットワークインターフェイス部を利用して、パケットの送受信を行う通信処理部と、
各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記無線基地局から受信する信号の受信信号強度を決定する受信信号強度決定部と、
各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記決定された受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する信号強度変化算出部と、
前記算出された変化値に基づき、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記通信処理部によるパケットの送受信に用いられる前記第1のネットワークインターフェイス部である使用ネットワークインターフェイス部を選択する、インターフェイス選択部と、
を備える、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が最も小さい前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定の大きさよりも小さい前記第1のネットワークインターフェイス部の中から、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、
前記複数の第1のネットワークインターフェイス部には、それぞれ予め優先度が設定されており、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定の大きさよりも小さく、かつ、前記優先度の最も高い前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項5】
請求項3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定の大きさよりも小さく、かつ、最も低域の周波数帯を使用する前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項6】
請求項3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、
各前記第1のネットワークインターフェイス部を用いた無線通信における接続確立のための処理の開始から終了までの期間である準備期間を測定する準備期間測定部を備え、
各前記第1のネットワークインターフェイス部は、それぞれ対応する無線ネットワークとの間で前記処理を実行し、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定のしきい値よりも小さく、かつ、前記準備期間が最も短いネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項7】
請求項3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、
各前記第1のネットワークインターフェイス部を用いた無線通信における接続確立のための処理の実行結果を示す情報を記憶する記憶部を備え、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定のしきい値よりも小さく、かつ、前記実行結果が成功であった前記第1のネットワークインターフェイス部の中から、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項8】
請求項3に記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、
前記互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局からの信号の受信可能領域の大きさを、それぞれ特定する受信可能領域特定部を備え、
前記インターフェイス選択部は、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、前記変化値が所定のしきい値よりも小さく、かつ、前記受信可能領域の大きさが最も大きい無線基地局が所属する無線ネットワークに対応する前記第1のネットワークインターフェイス部を、前記使用ネットワークインターフェイス部として選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の可搬型ネットワーク通信装置において、
前記受信信号強度決定部は、少なくとも1つの前記第1のネットワークインターフェイス部について、他の前記第1のネットワークインターフェイス部を用いて前記可搬型ネットワーク通信装置の位置情報を検出し、前記検出した位置情報に基づき前記受信信号強度を決定する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の可搬型ネットワーク通信装置において、さらに、
通信端末との間で無線通信又は有線通信を行う第2のネットワークインターフェイス部を備え、
前記通信処理部は、前記使用インターフェイス部と前記第2のネットワークインターフェイス部との間でパケットの中継を行い、
前記インターフェイス選択部は、前記使用ネットワークインターフェイス部を、前記通信処理部によって前記第2のネットワークインターフェイス部との間でパケットの中継が行われる前記第1のネットワークインターフェイス部として、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部の中から選択する、可搬型ネットワーク通信装置。
【請求項11】
互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局との間で無線通信を行う複数の第1のネットワークインターフェイス部を有する可搬型ネットワーク通信装置において、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、パケットの送受信に用いられる1つの前記第1のネットワークインターフェイス部である使用ネットワークインターフェイス部を選択する方法であって、
(a)各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記無線基地局から受信する信号の受信信号強度を決定する工程と、
(b)各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記決定された受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する工程と、
(c)前記算出された変化値に基づき、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する工程と、
を備える、方法。
【請求項12】
互いに異なる無線ネットワークに属する無線基地局との間で無線通信を行う複数の第1のネットワークインターフェイス部を有する可搬型ネットワーク通信装置において、前記複数の第1のネットワークインターフェイス部のうち、パケットの送受信に用いられる1つの前記第1のネットワークインターフェイス部である使用ネットワークインターフェイス部を選択するためのコンピュータプログラムであって、
各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記無線基地局から受信する信号の受信信号強度を決定する機能と、
各前記第1のネットワークインターフェイス部について、前記決定された受信信号強度の単位時間当たりの変化の大きさを示す変化値をそれぞれ算出する機能と、
前記算出された変化値に基づき、前記使用ネットワークインターフェイス部を選択する機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−98818(P2013−98818A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240857(P2011−240857)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】