説明

可搬型空調装置

【課題】生産費用および運転費用を削減する空調システムを提供すること。複雑さが減少し、ただしその効率は維持している空調装置を提供すること。運搬が容易になるように、設置面積の小さくなった空調装置を提供すること。
【解決手段】低電力吸引構成要素を使用した、簡単で効率的な構造の可搬型空調装置。通常の氷水を熱交換媒体として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型空調装置に関し、特に、小型で、要求される電力が低く、構造も使いやすさも簡単である可搬型空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調方法では、所望の場所に、環境を調節するため、高度に複雑で大型の高価な構成要素システムを組み立てる。空調装置の構造が高コストで、かつ複雑である上、空調装置は、熱交換を容易にするために、フロンなどの高価で潜在的に危険な液体を使用していることが非常に多い。フロンは典型的な空調装置の重要な動作要素である。また、通常の空調装置の利用時に必要となるコンプレッサ、ファンおよび他の電気機器は、一般に大量の電気を必要とし、これは、空調が必要とされるどんな場所でも常に利用できるとは限らない。
【0003】
この従来の環境調節方法の明白な欠点は、携帯できる形で使用しようとする場合、すなわち、可搬型空調装置が望まれる場合に存在する。通常の空調装置の構成を動作させるための要求条件が広範囲にわたるため、携帯できるユニットを実現する可能性は難しくなり、費用がかかることは言うまでもない。また、従来型の空調装置の重量および大きさからも効率的な可搬型装置は導き出されない。
【0004】
それ故、可搬型空調装置に関する本発明は、まず第一に上記複数の問題を克服していることから、事実上無限の用途および場所で使用できる空調システムを実現する非常に改善された装置および方法である。
【0005】
現在の空調形態のこれらすべての態様から、費用および複雑さを最低限に抑えて持ち運びできる形態で環境を調節する改善された装置および方法の必要性が増加してくるのであり、本発明はそれらすべてを解決する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、運転についても消費電力についても真に携帯可能な空調装置を提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、生産費用および運転費用を削減する空調システムを提供することである。
【0008】
本発明のさらにもう1つの目的は、複雑さが減少し、ただしその効率は維持している空調装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらにもう1つの目的は、運搬が容易になるように、設置面積の小さくなった空調装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的および利点は、以下の本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、低電力吸引構成要素(low−power draw component)ならびに簡単かつ効率的な構造を利用し、並びに熱交換媒体として通常の氷水を用いる可搬型空調装置が開示される。
【0012】
添付の図面は本発明の実施形態を示している。但し、本実施形態は本発明の内容をすべて網羅することも限定することも意図していないことを理解されたい。これらは本発明を実施することのできる一部の形態の例示としてのものに過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の範囲を限定する意図なく、本発明の種々の実施形態を説明しながら図面を参照する。図1〜図5は、本発明の例示的実施形態の種々の態様を示す。
【0014】
図に示すように、可搬型空調装置100は、いかなる形状をもとり得る断熱構造101であるが、例示的実施形態を表す図においては、矩形の箱となっている。断熱構造101は、流体103を失うことなく保持することのできるリザーバ102を断熱構造101の壁と壁との間に形成するような形状となっている。流体103は、空気調整の達成に必要な熱交換のための媒体であって、以下に詳しく説明する。
【0015】
断熱構造101は、種々のタイプの構造とすることができるが、最も一般的には二重壁構造を有し、外壁104、内壁105およびその間に挟まれた断熱材106から成る。もちろん、高効率射出成型材、固体セラミック材、または任意の数の他の効率的な断熱材などの他のタイプの断熱構造も容易に使用することができる。断熱構造101の内部へのアクセスを許容するために、断熱構造101の少なくとも一端は開放端107とされている。
【0016】
開放端107は、これに対応する蓋108を有し、断熱構造101の開放端107に密封状態で係合し、断熱構造101の内部に実質的に気密区画を形成するようになっている。蓋108も、可搬型空調装置100の種々の構成要素を受ける形状の区画109を形成するか、または構造の一部分として有する。このような構成要素としては、蒸発器コイル110、ならびにファン111およびスイッチ112などがある。スイッチ112は、簡単なオン/オフ・スイッチから、時間指定式の一時的スイッチ(timed momentary)、または周囲温度を監視でき、ユーザが選択した所望の温度に対する温度に基づいて可搬型空調装置100をオン/オフすることができるサーモスタットまで、様々なタイプのものとすることができる。
【0017】
蓋108は、種々の形状、大きさおよび構成とすることができるが、できるだけ小さくするために流線型(steamlined)とすることが望ましく、実質的に気密シールを形成するために、リザーバ102と係合する構成とする。一般に、リザーバ102は、可搬型空調装置100全体の大きさの少なくとも3分の2を占める。蓋108は、また、排出口113および戻り流入口114を内蔵する。排出口113および戻り流入口114は、概して、上記蓋の、蒸発器コイル110とは反対の側にある開口部である。蓋108が再循環ポンプ115を備えることも、またはポンプ115をリザーバ102内に設置することもできるが、ただし、ポンプ115は、流体103がポンプ115の内部構成要素に入り込むことを防ぐために、耐水性とする。ポンプ115は、一方を蒸発コイル110に接続され、他方をリザーバ102に接続されている。
【0018】
上記可搬型空調装置100の専用機器に代わる一般的な代替装置として、アイスボックスまたは他の適切な容器などの既存の断熱容器に、上記蓋108のみを使用することができる。このようにすれば、生産する材料が少なくて済み、包装も最小限にでき、ユーザは既存の断熱構造101を利用することができる。
【0019】
電源コード116は、ポンプ115およびファン111など、動作に電気を必要とする構成要素に通電するために用いられる。一般的に、電源コード116はスイッチ112に取り付けられ、一方、このスイッチは、電力を必要とする他の構成要素に電力を分配するが、電源コード116は、簡単に反復される空調装置100の所望の構成要素に直接接続することもできる。電源コード116の接続は、用途により様々に行うことができるが、おそらく業界標準の12Vのシガーライタ・プラグ117を用いると最も便利であろう。しかし、この接続方法は、バッテリー、または120Vプラグ、バッテリー・ホルダ等への取り付けのために、簡単にワニ口クリップを使用できることを理解されたい。
【0020】
可搬型空調装置100には、用途により、他の各種構成要素も使用できる。ドレン・プラグ119は、熱交換の完了後、リザーバ102からの流体103の排出またはリザーバ102への「流体補給(top off)」を容易にするために用いることができる。ハンドル119も、添付の図面に示すように設計に含めることができ、断熱構造101の外壁104に取り付けられて、可搬型空調装置100が容易に運搬できるようにする。
【0021】
運転時、可搬型空調装置100は、まずリザーバ102を冷却流体103で満たすことにより動作する。冷却流体103は、図に示す例示的実施形態では氷水となっている。本発明に関しては、冷却流体103が、ポンプ115で流体103を吸い上げられるように少量の水を加えた大量の氷120であることが重要である。熱交換が生じるにつれて氷120が溶けて、利用できる流体103の量が増加し、運転中に追加の流体103を加える必要がなくなる。すなわち、流体103は、この工程を開始する際に1回加えるだけでよい。
【0022】
他の流体を用いることもできるし、または冷却効果の向上のためまたは流体を長持ちさせるために変更を加えることもできる。使用時間を長くするため、または戻る空気(吸入)と排出される空気(排気)との差を大きくするには、塩などの添加物を加えて、流体103の液体の状態を保ちながら流体103の温度を下げ、ポンプ115および蒸発器コイル110を流体103が自由に流れるようにする。
【0023】
流体103をリザーバ102に加えると、流体103をできるだけ低温に維持するために、断熱構造101に蓋108を嵌合し、可搬型空調装置100の効率を最大限にする。プラグ117は、用途に応じて、バッテリー、自動車の12vコンセント、または壁コンセントといった適切な電源に接続する。ここで、冷却工程開始のため、スイッチ112、サーモスタット、または他の制御装置が起動される。
【0024】
通電されると、ファン111およびポンプ115は動作し、ポンプ115がリザーバ102から冷水を吸い上げて、蒸発器コイル110を通し、次にリザーバ102に戻す。同時に、ファン111は、戻り流入口114近辺から区画109へと周囲の空気を引き出し、その空気を低温蒸発器コイル110を通して移動させる。空気が冷却されると、ファン111は、区画109から引き続き空気を引き出し、排出口113を通して環境を調節したい場所に送り出し、それ故その場所を冷却する。
【0025】
この方法では、周囲の空気は、スイッチ112が切られるまで、またはサーモスタットを使用している場合には周囲の空気が設定温度に達するまで、継続して冷却される。可搬型空調装置100では、このように、可搬型空調装置100を直接取り囲む環境を冷却するために、必要に応じて、オンとオフを繰返すことができる。代わりに、ファン111が動作を続けている間にポンプ115のオンとオフを繰返し、空気が動き続けるようにする。流体103が暖まり周囲の気温と平衡状態になると、冷却効率が自然に下がり、最終的には冷却効果ゼロとなる。ここで、ドレン・プラグ118を取外して、流体103の多くを取り除けるようにし、氷120をもっと追加して流体103の温度をもう1回下げることもできる。
【0026】
低温の流体103を高温の液体に交換するか、または温パック等、長時間にわたって熱を貯めておけるものが入っている流体103に交換することにより、この設定を加熱にも使用できることは記しておく価値がある。空気は、蒸発器コイル110を通過する間に暖められる。
【0027】
本発明のいくつかの例示的実施形態についてしか詳細を上記に記載していないが、当業者であれば、本発明の新規の教示および利点から大幅に逸脱することなしに、例示的実施形態に多くの修正を加えることができることは容易に理解できるであろう。従って、すべてのこのような修正は、添付の特許請求の範囲に定義する本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】可搬型空調装置の正面図である。
【図2】可搬型空調装置の斜視図である。
【図3】可搬型空調装置の平面図である。
【図4】可搬型空調装置の側面図である。
【図5】可搬型空調装置の切取り図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型空調装置であって、
a.リザーバを形成し、少なくとも一方の側は開放されている断熱ハウジングを備え、
b.前記断熱ハウジングは、前記断熱ハウジングを密封状態で係合するように構成された断熱蓋を有し、前記蓋は、前記蓋内に区画を形成し、
c.前記リザーバは、前記可搬型空調装置の容量の少なくとも3分の2を有し、
d.前記区画は、蒸発器コイルを含み、
e.前記区画は、前記蒸発器コイルの外部と流体連通するように動作可能に構成されたファンを含み、さらに、
f.前記蒸発器コイルの内部および前記リザーバと流体連通する再循環ポンプと、
g.前記再循環ポンプおよび前記ファンの動作を制御するために、前記再循環ポンプおよび前記ファンに動作可能に取り付けられた少なくとも1つのスイッチと、
h. 前記サーモスタットおよび前記スイッチに動作可能に取り付けられた電源コードと、
i.前記蓋内に動作可能に構成され、前記蒸発器コイルと流体連通する排出口と、
j.前記蓋内に動作可能に設置され、前記蒸発器コイルと流体連通する戻り流入口と
を備える可搬型空調装置。
【請求項2】
前記スイッチがサーモスタットである、請求項1に記載の可搬型空調装置。
【請求項3】
流体を排出できるように前記ハウジング内に動作可能に構成されたドレン・プラグをさらに備える、請求項1に記載の可搬型空調装置。
【請求項4】
運搬を容易にするため、前記ハウジング上に構成された少なくとも1つのハンドルをさらに備える、請求項1に記載の可搬型空調装置。
【請求項5】
前記断熱ハウジング内にさらに冷却流体を備える、請求項1に記載の可搬型空調装置。
【請求項6】
前記冷却流体が水と塩の混合物である、請求項5に記載の可搬型空調装置。
【請求項7】
可搬型空調装置であって、
a.リザーバを形成し、少なくとも一方の側は開放されているアイスボックスを備え、
b.前記アイスボックスは、前記アイスボックスを密封状態で係合するように構成された断熱蓋を有し、前記蓋は、前記蓋内に区画を形成し、
c.前記リザーバは、前記可搬型空調装置の容量の少なくとも3分の2を有し、
d.前記区画は、蒸発器コイルを含み、
e.前記区画は、前記蒸発器コイルの外部と流体連通するように動作可能に構成されたファンを含み、さらに、
f.前記蒸発器コイルの内部および前記リザーバと流体連通する再循環ポンプと、
g.前記再循環ポンプおよび前記ファンの動作を制御するために、前記再循環ポンプおよび前記ファンに動作可能に取り付けられた少なくとも1つのスイッチと、
h. 前記サーモスタットおよび前記スイッチに動作可能に取り付けられた電源コードと、
i.前記蓋内に動作可能に構成され、前記蒸発器コイルと流体連通する排出口と、
j.前記蓋内に動作可能に設置され、前記蒸発器コイルと流体連通する戻り流入口と
を備える可搬型空調装置。
【請求項8】
前記スイッチがサーモスタットである、請求項7に記載の可搬型空調装置。
【請求項9】
前記アイスボックス内に動作可能に構成されて、流体を排出できるようにするドレン・プラグをさらに備える、請求項7に記載の可搬型空調装置。
【請求項10】
運搬を容易にするために、前記ハウジング上に構成された少なくとも1つのハンドルをさらに備える、請求項7に記載の可搬型空調装置。
【請求項11】
前記アイスボックス内に冷却流体をさらに有する、請求項7に記載の可搬型空調装置。
【請求項12】
前記冷却流体が水と塩の混合物である、請求項11に記載の可搬型空調装置。
【請求項13】
a.断熱ハウジングに密封状態で係合するように構成された断熱蓋であって、前記蓋内で区画を形成する断熱蓋を備え、
b.前記区画は、蒸発器コイルを含み、
c.前記区画は、前記蒸発器コイルの外部と流体連通するように動作可能に構成されたファンを含み、さらに、
d.前記蒸発器コイルおよび前記断熱ハウジングと流体連通する再循環ポンプと、
e.前記再循環ポンプおよび前記ファンの動作を制御するために、前記再循環ポンプおよび前記ファンに動作可能に取り付けられた少なくとも1つのスイッチと、
f.前記サーモスタットおよび前記スイッチに動作可能に取り付けられた電源コードと、
g.前記蓋内に動作可能に構成され、前記蒸発器コイルと流体連通する排出口と、
h.前記蓋内に動作可能に設置され、前記蒸発器コイルと流体連通する戻り流入口と
を備える可搬型空調装置。
【請求項14】
前記スイッチがサーモスタットである請求項13に記載の可搬型空調装置。
【請求項15】
a.リザーバを形成し、少なくとも一方の側は開放されている断熱ハウジングを備え、
b.前記断熱ハウジングは、前記断熱ハウジングを密封状態で係合するように構成された断熱蓋を有し、前記蓋は、前記蓋内に区画を形成し、
c.前記区画は、蒸発器コイルを含み、
d.前記区画は、前記蒸発器コイルの外部と流体連通するように、動作可能に構成されたファンを含み、
e.前記蒸発器コイルの内部および前記リザーバと流体連通する再循環ポンプと、
f.前記再循環ポンプおよび前記ファンの動作を制御するために、前記再循環ポンプおよび前記ファンに動作可能に取り付けられた少なくとも1つのスイッチと、
g.前記サーモスタットおよび前記スイッチに動作可能に取り付けられた電源コードと、
h.前記蓋内に動作可能に構成され、前記蒸発器コイルと流体連通する排出口と、
i.前記蓋内に動作可能に設置され、前記蒸発器コイルと流体連通する戻り流入口と
を備える可搬型空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−538404(P2008−538404A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506035(P2008−506035)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051120
【国際公開番号】WO2006/109257
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(507339685)コンフォート イノベーションズ,エルエルシー (1)