説明

可搬媒体を用いる医用画像の移動方法および移動システム

【課題】
病院間で可搬媒体を用いて医用画像を移動する際に、持ち運ぶ患者の負担を抑えながらセキュリティを確保する。
【解決手段】
パスワードと可搬媒体固有識別子と医用画像から抜き出した付帯情報とを紐付けて画像配信サーバ1に格納し、前記可搬媒体固有識別子と可搬媒体アプリケーションと付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体11に保存し、前記可搬媒体を他の施設13へ移動し、前記可搬媒体アプリケーションを実行して、パスワードなどを前記画像配信サーバ1へ送信し、前記画像配信サーバ1が、格納されている前記付帯情報を送信し、付帯情報を消去した医用画像と付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像を可搬媒体に書き込み持ち運ぶ際のセキュリティ技術に属する、可搬媒体を用いる医用画像の移動方法、およびそのための移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、ある病院で撮影した医用画像を他の病院へ持ち運んで、他の病院でその医用画像を利用する場合がある。
特許文献1において、可搬媒体における情報漏洩防止を図るための可搬記憶媒体の管理技術について述べており、可搬媒体のセキュリティ漏洩事故を防止するために、それを使用する端末管理情報を管理サーバから取得し、使用権限のない端末では可搬媒体を使用不可にする方法を採っている。しかし、医用画像を異なる施設間で移動する場合、管理できない他施設の端末に画像を移動する必要があるため、特許文献1の方法ではセキュリティを確保しながら移動することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-181176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医用画像をデータ管理する際に、DICOM規格形式で保存することが一般的となっている。DICOM規格形式のデータは画像とそれに関連した付帯情報(個人情報)からなり、何らかの媒体に保存して持ち運ぶ際に付帯情報の漏洩リスクが高い。そこで、医用画像をDICOM規格形式で持ち運ぶ際には、付帯情報を消去して持ち運ぶことで漏洩リスクを抑えることが可能であるが、付帯情報を消去すると画像と付帯情報の対応が付かなくなり、運んだ先での医用画像の運用が困難になる。また、付帯情報を消去した状態で医用画像を移動先へ持ち運び付帯情報を付け直すこともできるが、移動先が付帯情報を付け直すための仕組みを持つ必要があり、移動先のシステムの状況に依存し、確実ではない。
【0005】
付帯情報などの重要情報を媒体で持ち運ぶ際には、媒体にパスワードを掛けてセキュリティを確保する方式が一般的であるが、医用画像を保存した媒体にパスワード方式を適用した場合はパスワードを忘れると診断の遅延を招くことになり致命的である。また、媒体にパスワードを掛ける場合、パスワードを媒体に保存しなければならず、媒体さえあれば、第三者がリスク無しで繰り返しパスワードを解除するという行為を試みることが出来、媒体を紛失した場合の付帯情報漏洩のリスクが大きい。
【0006】
媒体を使用しないWebアクセスによる画像の取得方式(以降、Web方式と呼ぶ)では、「アクセス先」と「ユーザを特定するID」と「パスワード」を覚えなければならず、画像を持ち運ぶ患者にとって負担が大きく、媒体のセキュリティと同様に画像にアクセスできなくなるリスクが高い。また、Web方式による認証方式は、Webサーバにアクセス可能であれば誰でも認証可能であるため、患者が設定する「ユーザを特定するID」や「パスワード」の設定方法によって、セキュリティの脆弱性が生じやすい。また、Web方式では、容量の大きい医用画像をダウンロードしなければならず、時間的な制約が大きい医療現場で医用画像を使用する際に時間が掛かり、実用的ではない。さらに、Web方式による認証方式では、アクセス先のWebサーバがダウンした場合に画像を閲覧することができなくなる可能性があり、早期に診断を要する場合に致命的である。
【0007】
本発明は、病院間で可搬媒体を用いて医用画像を移動する際に、持ち運ぶ患者の負担を抑えながらセキュリティを確保するとともに、移動先の病院に媒体を持ち運んだあと確実に画像を見ることができ、仮に、媒体を紛失しても付帯情報漏洩リスクを最小限に抑えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の医用画像の移動方法は、付帯情報付きの医用画像から該付帯情報を消去した医用画像を可搬媒体に保存する保存ステップと、前記可搬媒体から前記付帯情報を消去した医用画像を読み出して、前記付帯情報付きの医用画像を復元する復元ステップと、を異なる場所で行う医用画像の移動方法であって、前記保存ステップは、患者が入力したパスワードと、可搬媒体固有識別子と、医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて画像配信サーバに格納するステップと、前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存するステップと、を備え、前記復元ステップは、前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、患者が入力したパスワードと、前記可搬媒体に保存されている可搬媒体固有識別子とを、前記画像配信サーバへ送信するステップと、前記画像配信サーバにおいて、送信されたパスワードが正しければ、格納されている前記付帯情報を、前記可搬媒体アプリケーションに送信するステップと、前記可搬媒体アプリケーションが、前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから送信された付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元するステップとを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の医用画像の移動方法において、更に、医用画像等を可搬媒体に保存するステップに続いて、画像配信サーバへ保存の成功通知を送るステップと、画像配信サーバが、当該成功通知を受けて該当する付帯情報の生成日を登録して公開フラグを公開中として登録するステップとを備え、付帯情報付きの医用画像を復元するステップに続いて、画像配信サーバへ復元の成功通知を送るステップと、画像配信サーバが、当該成功通知を受けて前記公開フラグを非公開にして、付帯情報の公開を停止するステップとを備えるものでよい。
また、本発明の医用画像の移動方法において、更に、付帯情報の生成日から所定の時間を過ぎると、公開フラグを非公開に設定するステップを備えるものでよい。
【0010】
本発明の医用画像の移動方法は、付帯情報付きの医用画像から該付帯情報を消去した医用画像を可搬媒体に保存する保存ステップと、前記可搬媒体から前記付帯情報を消去した医用画像を読み出して、前記付帯情報付きの医用画像を復元する復元ステップと、を異なる場所で行う医用画像の移動方法であって、前記保存ステップは、患者のメールアドレスと、可搬媒体固有識別子と、医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて画像配信サーバに格納するステップと、前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存するステップと、を備え、前記復元ステップは、前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、前記画像配信サーバと通信するステップと、前記画像配信サーバにおいて、登録されているメールアドレスに対してパスワードを記載したメールを送付するステップと、メールに記載されているパスワードを入力して、前記画像配信サーバから付帯情報を取得するステップと、前記可搬媒体アプリケーションが、前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから送信された付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元するステップとを備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の医用画像の移動方法において、医用画像等を可搬媒体に保存するステップに続いて、患者識別番号と情報公開期限を印字したラベルを作成し、患者識別番号を記載した引換券を作成するステップを備え、前記引換券に記載の患者識別番号と同じ患者識別番号が記載されたラベルが付された前記可搬媒体において、前記復元ステップを行うものでよい。
【0012】
本発明医用画像の書き込み装置は、医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置であって、パスワードの入力手段と、可搬媒体固有識別子の生成手段と、医用画像から付帯情報を抜き出す手段と、入力した前記パスワードと、前記可搬媒体固有識別子と、前記医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて格納する画像配信サーバと、前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存する手段とを備えるものである。
また、本発明の医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置において、前記画像配信サーバへ、可搬媒体への保存の成功を通知する手段を備え、前記画像配信サーバが、当該成功通知を受けて該当する付帯情報の生成日を登録して公開フラグを公開中として登録するように構成してもよい。
また、本発明の医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置において、前記画像配信サーバが、付帯情報の生成日から所定の時間を過ぎると、公開フラグを非公開に設定するものでよい。
【0013】
本発明の医用画像の読み出し装置は、医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の読み出し装置であって、パスワードの入力手段と、前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、前記パスワードと、可搬媒体に保存されている可搬媒体固有識別子とを、画像配信サーバへ送信し、前記画像配信サーバから、送信されたパスワードが正しければ、格納されている前記付帯情報を受信する手段と、前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから受信した付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元する手段とを備えるものである。
また、本発明の医用画像の読み出し装置は、医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の読み出し装置において、画像配信サーバへ、医用画像の復元の成功通知を送る手段を備え、画像配信サーバが、当該成功通知を受けて公開フラグを非公開にして、付帯情報の公開を停止するように構成したものでよい。
【0014】
本発明の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムは、上記の医用画像の書き込み装置と、上記の医用画像の読み出し装置と、書き込み装置と読み出し装置とを接続する通信手段とを備えるものである。
また、本発明の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムは、医用画像の書き込み装置を複数備えるものでよい。
また、本発明の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムは、医用画像の読み出し装置を複数備えるものでよい。
【0015】
本発明の医用画像の書き込み装置は、医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置であって、メールアドレスの登録手段と、可搬媒体固有識別子の生成手段と、医用画像から付帯情報を抜き出す手段と、登録した前記メールアドレスと、前記可搬媒体固有識別子と、前記医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて格納する画像配信サーバと、前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存する手段と、を備えるものである。
【0016】
本発明の医用画像の読み出し装置は、医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の読み出し装置であって、前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、画像配信サーバと通信する手段と、前記画像配信サーバから、パスワードを記載したメールを受信し、パスワードを入力して、前記付帯情報を取得する手段と、前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから受信した付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元する手段とを備えるものである。
【0017】
本発明の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムは、上記の医用画像の書き込み装置と、上記の医用画像の読み出し装置と、書き込み装置と読み出し装置とを接続する通信手段とを備えるものである。
また、本発明の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムは、医用画像の読み出し装置を複数備えるものでよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、病院間で可搬媒体を用いて医用画像を移動する際に、持ち運ぶ患者の負担を抑えながらセキュリティを確保するとともに、移動先の病院に媒体を持ち運んだあと確実に画像を見ることができ、仮に、媒体を紛失しても付帯情報漏洩リスクを最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示す図である。
【図2】実施例1の画像配信サーバの構成を示す図である。
【図3】実施例1の参照用CD作成手順を説明する図である。
【図4】参照用CDに書き込まれる内容を示す図である。
【図5】データベース内の状態を示す図である。
【図6】実施例1の付帯情報を取得する手順を説明する図である。
【図7】本発明の実施例2の全体構成を示す図である。
【図8】実施例3のラベル付き参照用CDを示す図である。
【図9】実施例3のラベル付き参照用CDの作成手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は実施例1の全体構成を示すもので、施設A12は医用画像を持ち出す側の施設、施設B13は医用画像を受け取る側の施設であり、参照用CD11を用いて医用画像を受け渡す。施設A12の医用画像は、画像配信サーバ1内に格納されており、LAN2を通じて、施設A12全体に配信される。画像参照端末3には画像配信サーバ1に保存されている医用画像を参照することができるビューアが組み込まれており、また、参照している医用画像を本方式を使って参照用CD11に保存することができる。
施設B13は汎用PC6を通じて施設A12から届いた医用画像を参照することができる。汎用PC6は少なくとも画像参照端末3と互換性があるものとし、また参照用CD11を読み込むことができるドライブを備えている。施設A12と施設B13はWeb4を通じて接続されており、汎用PC6から施設A12の画像配信サーバ1が公開しているプログラムにアクセスすることができる。施設B13はLAN5を通じて画像サーバ14に画像を蓄える運用を行っている。
【0022】
図2は画像配信サーバ1の構成を説明するもので、画像配信サーバ1は、画像配信プログラム7と情報公開プログラム8を有し、医用画像格納領域9およびデータベース10を持つ。画像配信プログラム7は、医用画像格納領域9に蓄えられた画像を施設A12内にLAN2を通じて配信するためのプログラムである。情報公開プログラム8は、Web4を通じて施設A12以外のほかの施設に対し参照用CD11に保存された医用画像の付帯情報を公開するプログラムである。医用画像格納領域9は施設A12内で撮影された医用画像が格納されている領域である。データベース10は、本方式で使用する情報を格納するための領域であり、図5で詳細に説明する。
【0023】
図3を用いて参照用CD11の作成手順を説明する。ステップ101は、患者が設定した新しいパスワードを入力するステップであり、患者がパスワードを入力する。
ステップ102は、画像配信サーバ1に保存される情報を生成し、それらの情報を紐付けて画像配信サーバ1に保存するステップである。先ず、可搬媒体固有識別子を生成する。また、医用画像から付帯情報を抜き出す。そして、可搬媒体固有識別子と付帯情報、ステップ101で入力したパスワードをLAN2を通じて画像配信サーバ1に送信する。送信された情報はデータベース10にそれぞれ紐付けて格納される。
ステップ103は、参照用CD11にデータを書き込むステップである。ステップ102で画像配信サーバ1に情報登録が成功したら、ステップ102で生成した可搬媒体固有識別子と付帯情報を消去した医用画像、可搬媒体アプリケーションを参照用CD11に保存する。
ステップ104は、付帯情報をWebを通じて公開するための後処理と、履歴を残すステップである。ステップ103において参照用CD11の作成に成功したら、画像配信サーバ1に対して成功通知を送る。画像配信サーバ1は成功通知を受け取った段階で、該当する付帯情報の生成日を登録して公開フラグを公開中として登録する。履歴23に持ち出し患者名、作成者名、作成日付を書き込む。
【0024】
図4は、施設Aで、参照用CD11に書き込まれる内容を示すもので、医用画像格納領域15、可搬媒体固有識別子16および可搬媒体アプリケーション17を含む。医用画像格納領域15は、実際に付帯情報を削除した医用画像が保存される領域である。可搬媒体固有識別子16は、作成したCDを一意に特定するための情報である。可搬媒体アプリケーション17は、医用画像格納領域15に保存された医用画像を表示することができるビューアであり、画像配信サーバ1に通信することによって付帯情報を取得するための手段を有する。
【0025】
図5は、施設Aのデータベース10内の状態を示すものである。データベースは、可搬媒体固有識別子18に対して患者が入力した認証用のパスワード19を紐付け、認証に成功した場合に返す付帯情報20を保存する。また、履歴用の生成日21、付帯情報20を公開しているかどうかを表す公開フラグ22、更にはCDを作成した履歴を保存する履歴領域23からなる。
【0026】
図6を用いて、施設Bで、可搬媒体アプリケーション17で付帯情報を取得する手順を説明する。ステップ201は、ステップ101で設定したパスワードを入力するステップである。
ステップ202は、媒体固有識別子と入力したパスワードを画像配信サーバ1に送信することで付帯情報を取得するステップである。可搬媒体アプリケーションはCD内に保存されている可搬媒体固有識別子とステップ201で入力されたパスワードを画像配信サーバ1に送信して、情報公開プログラム8に対して認証を試みる。
ステップ203は、媒体固有識別子と入力したパスワードが正しければ付帯情報を暗合化して可搬媒体アプリケーション17に送るステップである。ステップ202で送信されたパスワードが正しければ情報公開プログラム8はデータベース10内の状態の公開フラグ22を確認して、公開フラグが公開状態であれば、付帯情報を暗号化して可搬媒体アプリケーションに送信する。
ステップ204は、参照用CD11内に保存されている画像に付帯情報を付加して保存するステップである。ステップ203で付帯情報が返されたら、可搬媒体アプリケーションは医用画像格納領域15に格納されている医用画像と付帯情報を合成し、画像サーバ1に入っていた状態に復元して、PC内のフォルダに保存し、画像サーバ1に成功通知を返す。
ステップ205は保存が完了したので画像配信サーバ1の画像付帯情報を非公開にするステップである。画像サーバ1はステップ204において成功通知を受信したら、媒体固有識別子の公開フラグをオフにして、付帯情報の公開を停止する。履歴23に公開停止の履歴を追記する。
【0027】
実施例1の動作を説明する。施設A12は患者に対して施設B13の紹介を行い、施設A12は施設A内で撮影された画像を参照用CD11に保存して患者に渡し、施設B13内の汎用PC6で画像を参照した後、施設B13内の画像サーバ14に登録することを想定する。
施設A12内で撮影された医用画像を画像配信サーバ1が受信すると、医用画像格納領域9に画像が保存される。施設A12内の画像参照端末3がLAN2を通じて画像配信サーバ1に対して画像送信要求を出すと、画像配信サーバ1内の画像配信プログラム7は要求された画像を医用画像格納領域9内から取り出し、LAN2を通じて画像参照端末3に画像が配信される。
画像参照端末3では受け取った画像を表示することができる。表示した画像は患者に説明するために用いる。また、画像参照端末3に配信された画像は参照用CD11に保存することができる。
画像参照端末3において画像配信サーバ1から受信した画像をCDに保存するときは、図3の手順に従い処理を行う。CD作成の処理終了後、参照用CD11内は図4の様に構成されている。
【0028】
作成された参照用CD11は患者に渡され、施設B13に持ち込まれる。施設B13においては画像参照端末3と互換性があるCDを読み込み可能な汎用PC6にて参照用CD11を読み込み、可搬媒体アプリケーション17を実行する。可搬媒体アプリケーション17は医用画像格納領域15に保存された画像を読み込み表示する。ただし、医用画像格納領域15に保存された医用画像からは付帯情報が削除されているので、個人情報は参照できない。
可搬媒体アプリケーション17には付帯情報を取得するための機能がある。付帯情報の取得を実行すると、図6の各ステップによって付帯情報の取得が行われる。
付帯情報を追加した医用画像はLAN5を介して画像サーバ14に付帯情報付の医用画像として登録することが可能である。また、何らかの理由で画像の付帯情報が取得されなかった場合は、画像配信サーバ1は生成日21から所定の時間(例えば、数日)を過ぎると、公開フラグ22を非公開に設定する。これにより、画像の付帯情報を取得できなくなる。
【0029】
なお、図1には、施設Aから施設Bへの医用画像の移動を示しているが、書き込み側が複数の施設の、複数の書き込み装置でも良いし、或いは、読み出し側が複数の施設の、複数の読み出し装置でも良い。
【0030】
実施例1は、次のような効果を有する。
パスワードを可搬媒体に保存しないため、可搬媒体からパスワードが漏洩するリスクがない。
患者が覚えておく必要がある情報は可搬媒体生成時に入力したパスワードだけであり、それ以上の情報を必要としないため、患者への負担は必要最低限である。
可搬媒体に保存された医用画像は常に閲覧することが可能な状態であり、可搬媒体を持っていても医用画像を見ることができないという不利益はない。
可搬媒体に保存されている医用画像からは付帯情報が消去されており、かつ医用画像は体の一部や臓器などの画像であり個人を特定することが不可能な情報であるため、患者が可搬媒体を紛失して画像を閲覧されたとしても、医用画像から個人情報が特定される恐れはない。
患者が可搬媒体を紛失したとしても付帯情報の公開を停止することにより、個人情報の漏洩を防ぐことができる。
第三者が紛失した可搬媒体からの通信によって付帯情報を取得できたとしても、患者が可搬媒体を紛失したことを認識していれば、不正な通信であることを特定することは容易である。
付帯情報の取得処理を実施した後は付帯情報の公開が停止されるので、個人情報の漏洩のリスクは低減される。
可搬媒体に人間が覚えることが困難な十分に長い可搬媒体識別子を書きこむことにより、公開Webサーバ上における認証上のリスクが低減される。
可搬媒体を利用する側は特殊な装置を使用しなくても、可搬媒体アプリケーションを利用することで、付帯情報が付加された医用画像を入手することが出来る。
一般的な画像配信サーバに本方式を組み込むことにより、専用の公開Webサーバを使わなくても可搬媒体による画像移動の際のセキュリティを確保できる。
画像生成した日付を残しておくことで、画像生成した際の履歴が残り、施設A内の画像持ち出しの記録を残すことができる。
【実施例2】
【0031】
図7は実施例2の全体構成を示すもので、実施例2は、医用画像を患者本人が受け取るものである。施設C24には、施設A12と同様に、施設内の医用画像を蓄える画像配信サーバ25が存在し、LAN26を通じて画像配信サーバ25から医用画像を取得する画像参照端末27を備える。
施設C24から医用画像を持ち出す際には、実施例1とは異なり、パスワードではなく患者のメールアドレスを登録する。登録したメールアドレスは、パスワードの代わりに画像配信サーバ25に登録される。
実施例1の参照用CD11と同じく、参照用CD29には可搬媒体固有識別子と付帯情報を消去した医用画像、及び可搬媒体アプリケーションが保存される。また、同様にして、画像配信サーバ25には可搬媒体固有識別子と付帯情報、及びメールアドレスが保存される。
【0032】
実施例1と異なる部分は、患者が自宅30で参照用CD29を個人PC31に入れ可搬媒体アプリケーションを起動しても、付帯情報を取得するための手段が無いため、画像配信サーバ25に付帯情報を配信してもらう。そのために、可搬媒体アプリケーションは画像配信サーバ25に通信し、それを受けて画像配信サーバ25は登録されているメールアドレスに対してパスワードを記載したメールを送付する。
パスワードが発行されると可搬媒体アプリケーションのパスワード発行機能は無くなり、代わりに付帯情報を取得する手段が出現する。ここで付帯情報を取得する操作を行うと、パスワードを求められるので、メールに記載されているパスワードを入力すると1度だけ付帯情報を取得することができ、画像に付帯情報を付加することができる。
実施例1と異なり、パスワードは何度でも再発行することができ、付帯情報を取得する回数に制限は無い。実施例2によれば、付帯情報を何度でも取得することができる。
【0033】
なお、図7には、施設Cから一つの自宅への医用画像の移動を示しているが、読み出し側が複数の自宅からなる、複数の読み出し装置でも良いし、また、書き込み側が複数の施設の、複数の書き込み装置でも良い。
【実施例3】
【0034】
実施例3は、実施例1において、可搬媒体を施設A12から施設B13に移す際に、患者ではなく運送業者などの別の手段を用いて運ぶものである。
【0035】
図8に、実施例3で用いる、ラベル参照用CD35を示す。ラベル付き参照用CD35には、患者を識別するための患者識別番号33とCD内の画像に紐付ける患者付帯情報を取得するための期限である情報公開期限34を印字したラベル32が貼りつけられている。患者識別番号33が印字された引換券36は、ラベル付き参照用CD35の正当な受取人であることを示す引換券である。これは、紹介状に患者識別番号33を印字することで代替されることもある。ここで、紹介状とは患者を他の病院へ紹介する際に紹介先病院が患者の病気を把握するために参照する、患者の診断情報などを記載した書類である。
【0036】
CDを作成する際には、図9に示すラベル付き参照用CDの作成手順で作成する。図9の手順は、図3の手順に、ステップ105としてラベルを生成し、貼り付ける手順を追加したものである。ステップ105では、先ず、ラベル32に患者番号33、情報公開期限34を印字する。ラベル32を参照用CD11に貼り付ける(これを、ラベル付き参照用CD35とする。)。また、患者識別番号33を記載した引換券36を作成し、それを患者に渡す。
【0037】
実施例3の動作を説明すると、図9の手順によって生成されたラベル付き参照用CD35は運送業者によって施設B13に運ばれる。また、患者識別番号33が記載された引換券36を患者に渡す。患者は引換券36を持って施設B13を訪れる。施設B13は引換券36を受け取るとラベル付き参照用CD35のラベル32に記載されている患者識別番号33と引換券36に記載されている患者識別番号33を照合し、正しいCDを患者に受け渡す。その後の付帯情報の取得の流れは実施例1と同様である(ただし、使用するCDは参照用CD11ではなく、ラベル付き参照用CD35を用いる)。
【0038】
実施例3によれば、実施例1の効果に加えて、専門の運送業者に施設BへのCDの移動を任せることで、患者が画像を紛失するリスクを減らすことができる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・画像配信サーバ、2・・・LAN、3・・・画像参照端末、4・・・Web、5・・・LAN、6・・・汎用PC、7・・・画像配信プログラム、8・・・情報公開プログラム、9・・・医用画像格納領域、10・・・データベース、11・・・参照用CD、12・・・施設A、13・・・施設B、14・・・画像サーバ、15・・・医用画像格納領域、16・・・可搬媒体固有識別子、17・・・可搬媒体アプリケーション、18・・・可搬媒体固有識別子、19・・・パスワード、20・・・付帯情報、21・・・生成日、22・・・公開フラグ、23・・・履歴、
24・・・施設C、25・・・画像配信サーバ、26・・・LAN、27・・・画像参照端末、28・・・Web、29・・・参照用CD、30・・・自宅、31・・・個人PC、32・・・ラベル、33・・・患者識別番号、34・・・情報公開期限、35・・・ラベル付き参照用CD、36・・・引換券。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付帯情報付きの医用画像から該付帯情報を消去した医用画像を可搬媒体に保存する保存ステップと、前記可搬媒体から前記付帯情報を消去した医用画像を読み出して、前記付帯情報付きの医用画像を復元する復元ステップと、を異なる場所で行う医用画像の移動方法であって、
前記保存ステップは、患者が入力したパスワードと、可搬媒体固有識別子と、医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて画像配信サーバに格納するステップと、前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存するステップと、を備え、
前記復元ステップは、前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、患者が入力したパスワードと、前記可搬媒体に保存されている可搬媒体固有識別子とを、前記画像配信サーバへ送信するステップと、前記画像配信サーバにおいて、送信されたパスワードが正しければ、格納されている前記付帯情報を、前記可搬媒体アプリケーションに送信するステップと、前記可搬媒体アプリケーションが、前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから送信された付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元するステップとを備える
ことを特徴とする医用画像の移動方法。
【請求項2】
請求項1記載の医用画像の移動方法において、更に、
医用画像等を可搬媒体に保存するステップに続いて、画像配信サーバへ保存の成功通知を送るステップと、画像配信サーバが、当該成功通知を受けて該当する付帯情報の生成日を登録して公開フラグを公開中として登録するステップとを備え、
付帯情報付きの医用画像を復元するステップに続いて、画像配信サーバへ復元の成功通知を送るステップと、画像配信サーバが、当該成功通知を受けて前記公開フラグを非公開にして、付帯情報の公開を停止するステップとを備える
ことを特徴とする医用画像の移動方法。
【請求項3】
請求項2記載の可搬媒体を用いる医用画像の移動方法において、更に、
付帯情報の生成日から所定の時間を過ぎると、公開フラグを非公開に設定するステップを備えることを特徴とする医用画像の移動方法。
【請求項4】
付帯情報付きの医用画像から該付帯情報を消去した医用画像を可搬媒体に保存する保存ステップと、前記可搬媒体から前記付帯情報を消去した医用画像を読み出して、前記付帯情報付きの医用画像を復元する復元ステップと、を異なる場所で行う医用画像の移動方法であって、
前記保存ステップは、患者のメールアドレスと、可搬媒体固有識別子と、医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて画像配信サーバに格納するステップと、前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存するステップと、を備え、
前記復元ステップは、前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、前記画像配信サーバと通信するステップと、前記画像配信サーバにおいて、登録されているメールアドレスに対してパスワードを記載したメールを送付するステップと、メールに記載されているパスワードを入力して、前記画像配信サーバから付帯情報を取得するステップと、前記可搬媒体アプリケーションが、前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから送信された付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元するステップとを備える
ことを特徴とする医用画像の移動方法。
【請求項5】
請求項1記載の医用画像の移動方法において、
医用画像等を可搬媒体に保存するステップに続いて、患者識別番号と情報公開期限を印字したラベルを作成し、患者識別番号を記載した引換券を作成するステップを備え、前記引換券に記載の患者識別番号と同じ患者識別番号が記載されたラベルが付された前記可搬媒体において、前記復元ステップを行うことを特徴とする医用画像の移動方法。
【請求項6】
医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置であって、
パスワードの入力手段と、
可搬媒体固有識別子の生成手段と、
医用画像から付帯情報を抜き出す手段と、
入力した前記パスワードと、前記可搬媒体固有識別子と、前記医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて格納する画像配信サーバと、
前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存する手段と
を備える医用画像の書き込み装置。
【請求項7】
請求項6記載の医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置において、
前記画像配信サーバへ、可搬媒体への保存の成功を通知する手段を備え、
前記画像配信サーバが、当該成功通知を受けて該当する付帯情報の生成日を登録して公開フラグを公開中として登録するように構成したことを特徴とする医用画像の書き込み装置。
【請求項8】
請求項7記載の医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置において、
前記画像配信サーバが、付帯情報の生成日から所定の時間を過ぎると、公開フラグを非公開に設定することを特徴とする医用画像の書き込み装置。
【請求項9】
医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の読み出し装置であって、
パスワードの入力手段と、
前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、前記パスワードと、可搬媒体に保存されている可搬媒体固有識別子とを、画像配信サーバへ送信し、前記画像配信サーバから、送信されたパスワードが正しければ、格納されている前記付帯情報を受信する手段と、
前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから受信した付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元する手段と
を備える医用画像の読み出し装置。
【請求項10】
請求項9記載の医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の読み出し装置において、
画像配信サーバへ、医用画像の復元の成功通知を送る手段を備え、
画像配信サーバが、当該成功通知を受けて公開フラグを非公開にして、付帯情報の公開を停止するように構成したことを特徴とする医用画像の読み出し装置。
【請求項11】
請求項6または請求項7記載の医用画像の書き込み装置と、
請求項9または請求項10記載の医用画像の読み出し装置と、
前記書き込み装置と前記読み出し装置とを接続する通信手段と
を備える可搬媒体を用いる医用画像の移動システム。
【請求項12】
請求項11記載の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムにおいて、
医用画像の書き込み装置を複数備えることを特徴とする可搬媒体を用いる医用画像の移動システム。
【請求項13】
請求項11記載の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムにおいて、
医用画像の読み出し装置を複数備えることを特徴とする可搬媒体を用いる医用画像の移動システム。
【請求項14】
医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の書き込み装置であって、
メールアドレスの登録手段と、
可搬媒体固有識別子の生成手段と、
医用画像から付帯情報を抜き出す手段と、
登録した前記メールアドレスと、前記可搬媒体固有識別子と、前記医用画像から抜き出した付帯情報とを、それぞれ紐付けて格納する画像配信サーバと、
前記可搬媒体固有識別子と、可搬媒体アプリケーションと、付帯情報を消去した医用画像とを可搬媒体に保存する手段と、
を備える医用画像の書き込み装置。
【請求項15】
医用画像を可搬媒体を用いて移動するための医用画像の読み出し装置であって、
前記可搬媒体の可搬媒体アプリケーションを実行して、画像配信サーバと通信する手段と、
前記画像配信サーバから、パスワードを記載したメールを受信し、パスワードを入力して、前記付帯情報を取得する手段と、
前記可搬媒体で移動された付帯情報を消去した医用画像と、前記画像配信サーバから受信した付帯情報とを合成して付帯情報付きの医用画像を復元する手段と
を備える医用画像の読み出し装置。
【請求項16】
請求項14記載の医用画像の書き込み装置と、
請求項15記載の医用画像の読み出し装置と、
前記書き込み装置と前記読み出し装置とを接続する通信手段と
を備える可搬媒体を用いる医用画像の移動システム。
【請求項17】
請求項16記載の可搬媒体を用いる医用画像の移動システムにおいて、
医用画像の読み出し装置を複数備えることを特徴とする可搬媒体を用いる医用画像の移動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−257839(P2011−257839A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129942(P2010−129942)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】