説明

可搬式噴霧除菌装置

【課題】ウイルス・細菌性疾患流行等の非常時などに、迅速に噴霧処理を行って除菌を行え、噴霧による影響も回避する。
【解決手段】防腐食性、無臭性を有した除菌剤を水で希釈した除菌剤溶液を溶液タンク1に蓄え、該溶液タンク1内の除菌剤溶液を、フィードポンプ21、プランジャポンプ25等で構成される溶液供給ユニット2により、噴霧ユニット3の噴霧ノズル32に加圧して供給し、外気導入口34からハウジング34内に導入した外気と噴霧ノズル32からの噴霧とを混合させ、乾いた霧状として前記放出口から放出させ、該噴霧を送風機ユニット75からの送風に乗せて前方に飛ばしつつ除菌を行い、かつ、上記溶液タンク1及び各ユニット2,3を台車4に搭載して、除菌が必要な場所に運搬可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌剤溶液を微細な乾いた霧状に放出して除菌する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、除菌剤溶液として次亜塩素酸を霧化して放出する装置が記載されている。この装置は、次亜塩素酸水を用いて室内を殺菌、脱臭する装置であり、次亜塩素酸水溶液タンク内の次亜塩素酸水に超音波を作用させて霧化させると共に、送付手段からの気流及び気流噴射ノズルからの噴射気流を利用して、霧化させた次亜塩素酸水を噴霧口から放出して遠くまで搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−197689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置は、インフルエンザ等ウイルス・細菌性疾患の防止対策として有効であるが、該疾患が流行し始めてから必要箇所にこの種の装置を設置するのでは、設置完了に時間を要し、緊急用としての要求に応えられず、また、常時必要としないところにまで設置することはコストも嵩み、設置スペースによる制約も伴うこととなる。
【0005】
また、除菌剤として次亜塩素酸水を用いると、噴霧された場所の金属物が腐食したり、刺激臭があり、カーペット等が脱色したりするなどの問題を生じることもあった。
本発明は、このような従来の課題を解決するため、ウイルス・細菌性疾患流行等の非常時などに、迅速に噴霧処理を行って除菌を行え、噴霧による影響も回避できるようにした可搬式噴霧除菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、
防腐食性、無臭性を有した除菌剤を水で希釈した除菌剤溶液を蓄えた溶液タンクと、
前記溶液タンク内の除菌剤溶液を加圧して供給する溶液供給ユニットと、
前記除菌剤溶液を霧化された状態で放出する放出口及び外気導入口が形成されたハウジングと、該ハウジング内に配設されて前記溶液供給ユニットから供給された除菌剤溶液を噴霧する噴霧ノズルと、を備え、ハウジング内に導入した外気と前記噴霧ノズルからの噴霧とを混合させ、乾いた霧状として前記放出口から放出させる噴霧ユニットと、
少なくとも前記溶液タンクと前記溶液供給ユニットとを搭載し、下端部に車輪を装着した台車と、
を含んで構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、台車を所定の必要箇所まで運搬し、溶液供給ユニットを駆動すると、溶液タンク内の除菌剤溶液は、噴霧ユニットの噴霧ノズルまで加圧して供給される。
除菌剤溶液は、噴霧ノズルから微細に噴霧され、ハウジング内に導入した外気と混合しつつ、乾いた霧状として前記放出口から放出される。
【0008】
ここで、除菌剤は、防腐食性、無臭性を有するので、該除菌剤溶液を高濃度で噴霧しても、設置物の腐食、パソコン等電子機器類の故障、刺激臭の発生、カーペット等の脱色を防止できる。
【0009】
なお、本発明に係る除菌剤の有する防腐食性とは、噴霧された物品が腐食しやすくならない特性であればよい(噴霧された物品の腐食防止効果を高めるものであってもよいことは勿論である)。
【0010】
したがって、特に、ウイルス・細菌性疾患の流行時など、非常時に高濃度の噴霧を要求されるような場合、装置の運搬が容易なことと相まって極めて有効である。
また、ビルや病院内の廊下を、装置を運搬しながら噴霧して除菌・清掃するような用途にも適用でき、簡便で効率よく、作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る可搬式噴霧除菌装置の概略構成を示す図。
【図2】噴霧ノズルの構成の一例を示す図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る可搬式噴霧除菌装置の要部構成を示す図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る可搬式噴霧除菌装置の概略構成を示す図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る可搬式噴霧除菌装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係る可搬式噴霧除菌装置の概略構成を示す図である。該可搬式噴霧除菌装置は、防腐食性、無臭性を有した除菌剤を水で希釈した除菌剤溶液を蓄えた溶液タンク1と、前記溶液タンク1の除菌剤溶液を加圧して供給する溶液供給ユニット2と、前記溶液供給ユニット2から供給された除菌剤溶液を噴霧ノズルから噴霧しつつ外気を導入し、該導入した外気と前記噴霧ノズルからの噴霧とを混合させて乾いた霧状として放出させる噴霧ユニット3と、これら溶液タンク1、溶液供給ユニット2及び噴霧ユニット3を搭載し、下端部に車輪40を装着して運搬可能とした台車4と、を備える。
【0013】
前記防腐食性、無臭性を有した除菌剤としては、例えば、次亜塩素酸ソーダー、亜塩素酸ソーダー、炭酸二ソーダー、カ性ソーダーを各々5%以下含んだものを使用することができる。該除菌剤は、無臭性であると同時に消臭(脱臭)機能をも有する。
【0014】
除菌剤溶液の濃度(水での希釈割合)は、噴霧される場所や用途に応じて調整すればよく、原液を水で希釈するだけで、容易に準備することができる。ウイルス・細菌性疾患等の防止対策用(非常時用)としては、定期的な消毒で用いる場合より高濃度に調整されることになる。また、予め、複数の異なる濃度の溶液を用意しておき、適正なものを選択する構成としてもよい。
【0015】
溶液タンク1は、台車4の中間高さ位置に固定された中間部支持台41上に設置されている。溶液タンク1の頂壁には、フィードポンプ(低圧ポンプ)21が設置され、該フィードポンプ21の吸込み口に接続された吸込み管22が溶液タンク1の頂壁を貫通して下方に延び、下端開口から除菌剤溶液を吸い込むようになっている。
【0016】
フィードポンプ21の吐出口に接続された低圧側吐出管23は、フィルタ24を経由して、台車4の底部支持台42に設置されたプランジャポンプ(高圧ポンプ)25の吸込み口に接続される。低圧側吐出管23のフィルタ24下流側から分岐して溶液タンク1内上部空間に至る低圧側リリーフ管26が接続され、該低圧側リリーフ管26には、所定圧以上で開弁する低圧側リリーフ弁27が介装されている。これにより、低圧側吐出管23を流れる余剰の除菌剤溶液が、低圧側リリーフ管26を介して溶液タンク1に戻され、所定の低圧側吐出圧力(例えば約0.5MPa)に維持される。また、フィルタ24により、除菌剤溶液内に含まれる塵埃が除去される。このフィルタ24は、特に後述する噴霧ノズルの噴孔口径が極めて小さいので、塵埃による詰まり防止のため設けられるが、口径が比較的大きく、塵埃が問題にならないような噴霧ノズルを用いる場合は省略可能である。
【0017】
プランジャポンプ25の吐出口には、噴霧ユニット3の後述する高さ位置調節に応じて少なくとも一部が変形自由な高圧側吐出管28が接続され、該高圧側吐出管28の先端部に噴霧ユニット3が接続されている。高圧側吐出管28の途中から分岐して溶液タンク1内上部空間に至る高圧側リリーフ管29が接続され、該高圧側リリーフ管29には、所定圧以上で開弁する高圧側リリーフ弁30が介装されている。これにより、高圧側吐出管28を流れる余剰の除菌剤溶液が溶液タンク1に戻され、所定の高圧側吐出圧力(例えば約7MPa)に維持される。
【0018】
このように、フィードポンプ21によって、除菌剤溶液をフィルタ24を通過させつつプランジャポンプ25に要求される吸込み圧が確保され、かつ、プランジャポンプ25によって噴霧ノズル32に要求される高圧での吐出圧が確保される。但し、可能であれば、1つのポンプで除菌剤溶液を供給する構成としてもよい。
【0019】
ここで、上記フィードポンプ21、吸込み管22、低圧側吐出管23、フィルタ24、プランジャポンプ25、低圧側リリーフ管26、低圧側リリーフ弁27、高圧側吐出管28、高圧側リリーフ管29、高圧側リリーフ弁30によって、溶液供給ユニット2が構成される。
【0020】
噴霧ユニット3は、ハウジング31と、該ハウジング31内に配置された噴霧ノズル32を含んで構成される。ハウジング31は、前記台車4の背壁上端部に高さ位置を調節可能に連結された上部支持台43上に設置される。
【0021】
ハウジング31は、水平方向に長い外形を有し、後述するように除菌剤溶液を霧化して外気と混合した状態でハウジング31外に放出する放出口33と、外気をハウジング31内に導入する外気導入口34が形成されている。
【0022】
ハウジング31の底部には、ドレイン口35が上部支持台43底壁を貫通して形成され、該ドレイン口35には溶液タンク1に至るドレイン管36が接続されている。該ドレイン管36は、噴霧ユニット3の高さ位置調節に応じて少なくとも一部が変形自由に形成されている。
【0023】
ハウジング31内には、分配管37が固定され、該分配管37の下端に形成された開口に、前記高圧側吐出管28の上端(下流端)が接続され、分配管37の長手方向等間隔に複数個(用途に応じた必要数)の吐出口に、それぞれ噴霧ノズル32が接続されている。
【0024】
図2は、噴霧ノズル32の構成の一例を示している。
図2に示すように、本実施形態における噴霧ノズル32は、(基端側の)ノズル本体53と、ノズル本体53に着脱自由に構成されたノズル先端部55と、を有する。なお、ノズル先端部55は、目的に応じて噴霧を実現するために適宜選択することができる。
【0025】
ノズル本体53は、一端側(噴霧ノズル32の先端側)にめねじ部53aが形成されると共に、その内部に該一端側において拡径する流路53bが形成されている。
ノズル先端部55は、一端側(噴霧ノズル32の基端側)にノズル本体53のめねじ部53aに対応するおねじ部55aが形成されると共に、他端側(噴霧ノズル32の先端側)に噴孔55bが形成されている。この噴孔55bは、ノズル先端部55がノズル本体53(の一端側)に装着されたときにノズル本体53内の流路53bと連通する。
【0026】
そして、図2に示すように、ノズル本体53とノズル先端部55との間に、ノズル先端部55側からシール部材(例えばOリング)57、加圧スプリング(弾性部材)59及びボール状の弁体61が配置され、ノズル本体53とノズル先端部55とがネジ締結されることによって噴霧ノズル32が構成される。
【0027】
ここで、弁体61の径は、ノズル本体53内に形成された流路53bの拡径した部分よりも小さく、該流路53bの拡径しない部分よりも大きくなっている。このため、噴霧ノズル32において、弁体61は、ノズル本体53内に形成された流路53bの拡径した部分に配置されることとなり、ノズル先端部55側から加圧スプリング59によって付勢されて流路53bを閉塞する。一方、プランジャポンプ25から流路53bに6Mpa以上の圧力で除菌剤溶液が供給されると、弁体61が加圧スプリング59の付勢力に抗して移動して流路53bを開放する。これにより、噴霧ノズル32は、除菌剤溶液の供給圧力が6MPa以上の場合にのみ除菌剤溶液を噴霧し、除菌剤溶液の供給圧力が6MPa未満になると噴霧を停止する。
【0028】
そして、前記噴霧ノズル32の噴霧動作によって生じるエジェクタ効果により、周辺外気を誘引しつつこの外気と混合し、極めて小径に微粒化(霧化)するように構成されている。
【0029】
さらに、ハウジング31の頂壁には送風機38が配設され、該送風機38によって外気導入口34から吸引した外気を、ハウジング31内に下向きに導入し、送風する。
そして、上記噴霧ノズル32からの噴霧が、送風された外気とハウジング31内でさらに十分に混合することにより、人や物を濡らすことのない、いわゆるドライフォッグ(乾いた霧)状態となって放出口33から放出される。
【0030】
ハウジング31外に放出されないままハウジング31内に滞留して凝縮液化された余剰の除菌剤溶液は、ドレイン口35からドレイン管36を介して、溶液タンク1に戻される。
【0031】
また、台車4の背壁には、手摺44が連結され、該手摺44を掴んで容易に運搬できる。
次に、かかる構成を有した可搬式噴霧除菌装置の一連の作用を説明する。
【0032】
例えば、インフルエンザ等ウイルス・細菌性疾患の流行が急激に拡大するような非常時に、駅の改札や学校の玄関、発熱外来、企業の入口、工場の出入口、ビルの玄関(受付)その他、人の流れがあって、噴霧による除菌効果が大きい場所に上記可搬式噴霧除菌装置を運搬する。可搬式噴霧除菌装置は、予めこれらの場所の近辺に収容しておくのがよいが、別の場所から自動車等で装置を近辺まで運搬してきてもよい。
【0033】
噴霧する場所まで装置を運搬すると、その場所の広さ、形状に応じて必要かつ十分な範囲まで噴霧が飛散するように、上部支持台43と共に噴霧ユニット3の高さ位置を調節する。
【0034】
各ポンプの駆動制御回路に接続された電源コード(いずれも図示せず)を、近辺の電源コンセントと接続し、スイッチを入れてフィードポンプ21及びプランジャポンプ25と送風機38を駆動する。
【0035】
溶液タンク1内の除菌剤溶液は、フィードポンプ21により吸引加圧され、低圧側吐出管23からフィルタ24を通って除塵された後、プランジャポンプ25に供給される。プランジャポンプ25によりさらに高圧に加圧された除菌剤溶液が高圧側吐出管28から分配管37を経て、複数の噴霧ノズル32に至る。除菌剤溶液は、各噴霧ノズル32から噴霧され、エジェクタ効果により外気を誘引しつつ微細に霧化され、さらに送風機38から送風された外気と混合し、ドライフォッグとなって放出される。
【0036】
なお、送風機を設けない場合でも、上記エジェクタ効果によって外気導入口から外気が導入されつつ、噴霧と混合してドライフォッグ(乾いた霧)状態となって放出口33から放出されるので、簡易的には送風機を省略してもよいが、送風機を設けることにより、放出口33からより多くの噴霧を遠くまで飛ばすことができる。
【0037】
駆動時間は、噴霧場所で必要な噴霧量に応じて設定すればよく、タイマで自動設定する構成としてもよい。噴霧による除菌が必要な空間が大きい場合には、適宜、手摺44を持って装置を運搬しつつ噴霧すればよい。
【0038】
これにより、広い空間においても人や物をほとんど濡らすことのない除菌剤溶液の噴霧を短時間で拡散させることができ、この空間の設置物及びそこを通る人を効率的に除菌でき、インフルエンザ等ウイルス・細菌性疾患の流行を迅速かつ効果的に抑制することができる。
【0039】
また、除菌剤溶液として従来のように次亜塩素酸水を使用する場合、次亜塩素酸水は腐食性を有しているため、設置物を腐食させたり、パソコンへの付着によってこれを故障させたりすることがあり、また、脱臭機能を有するものの自身の刺激臭も強く噴霧量が多いと人に不快感を与えてしまう。その他、カーペットが脱色することもある。特に、インフルエンザ対策等で使用する場合は、かなり高濃度で噴霧する必要があるため、これらの傾向が高い。
【0040】
これに対し、本実施形態の上記複数の成分を含んだ除菌剤は、防腐食性、無臭性を有するので、該除菌剤溶液を高濃度で噴霧しても、設置物の腐食、パソコン等電子機器類の故障、刺激臭の発生、カーペット等の脱色を防止できる。したがって、特に、インフルエンザ等、非常時に高濃度の噴霧を要求されるような場合、装置の運搬が容易なことと相まって極めて有効である。また、除菌と共に消臭も行われる。
【0041】
なお、通常は、定期的に低濃度の除菌剤溶液を用いて除菌し、ウイルス・細菌性疾患の流行時には、高濃度の除菌剤溶液を用いて除菌するような使い分けをしてもよい。
このような緊急時対策以外の本実施形態装置の用途としては、例えば、清掃業者により病院内をエレベータで移動し、各階の廊下で本装置を運搬させながら各病室の出入口等を重点的に噴霧して除菌消毒したり、あるいは、病室の患者が入れ替わるときに行われる入念な病室の清掃の際に使用すればよく、短時間で効率よく除菌・消毒することができる。
【0042】
噴霧の制御として、前記送風機38を周期的に駆動・停止させたり、溶液タンク1内の除菌剤溶液の液位をセンサで検出し、空近くになると噴霧を停止することもできる。
さらに、フィルタ24前後の圧力を検出し、差圧が所定値以上となったときに、フィルタ24の交換を促したり、プランジャポンプ25の吐出圧力を検出し、基準圧力未満となったときに、プランジャポンプ25等のメンテナンスを促したりすることもできる。
【0043】
図3は、第2実施形態を示し、第1実施形態と同様の構成において、噴霧ユニット3を上部支持台43に対して水平面内回転自由に支持して、いわゆる首振り動作が可能な構成としたものである。本実施形態では、上部支持台43の一部を段付円筒状に開口し、該開口部に段付円板状のターンテーブル45が水平面内回転自由に嵌合される。該ターンテーブル45は、上部支持台43の裏面に固定されたモータ46と、該モータ46とターンテーブル45間に連結されたリンク・カム機構47とで構成される揺動機構によって、水平面内を所定角度ずつ対称的に揺動し、首振り動作を行う。
【0044】
かかる構成とすれば、要求に応じてモータ46を駆動すると、ターンテーブル45及びこれに支持された噴霧ユニット3が水平面内を首振り動作し、放出口34から放出されるドライフォッグ状の噴霧をより広く拡散することができ、効率が向上する。
【0045】
また、簡易的には、上記揺動機構を省略し、手動で首振り操作するようにしてもよい。
図4は、第1実施形態と同様の構成において、噴霧ユニット3の噴霧ノズル及び送風機の配置を変更した第3実施形態を示す。
【0046】
本実施形態では、噴霧ノズル32は、ハウジング31の上壁後部に放出口33の幅広な横方向(台車の進行方向と直角な水平方向)に沿って複数個(4〜8等、用途に応じた必要数)配設される。各噴霧ノズル32は、噴孔をハウジング31内の下向きに臨ませて装着される。そして、高圧側吐出管28の下流端部を、ハウジング31の外側を通ってハウジング31の上壁に配設し、該下流端部に設けた複数の吐出口に、前記複数の噴霧ノズル32が接続されている。なお、高圧側吐出管28の下流端を、第1実施形態同様に、分配管37に接続し、該分配管37に噴霧ノズル32を接続する構成としてもよい。
【0047】
ハウジング31内は、内部が噴霧ノズル32と放出口33との間で隔壁71によって第1室72と第2室73とに画成される。但し、第1室72と第2室73とは、ハウジング31内の上面側から下面側に向かって延びる隔壁71の下方を連通部74として連通している。
【0048】
また、ハウジング31上壁外面の放出口34上方に近接した位置に、前方に向けて送風口75aを有する送風機ユニット75を配設する。
かかる第3実施形態によれば、噴霧ノズル32からの除菌剤溶液の噴霧は下方に向けられると共に、該噴霧動作のエジェクタ効果によって、外気導入口34から外気が導入され、ハウジング31内を外気導入口34から、放出口33へと流れる気流が生成され、除菌剤溶液の噴霧は、この導入された外気と混合されると共に、生成された気流によって放出口33へと導かれる。
【0049】
ここで、ハウジング31内において、第1室72はハウジング31内の下方に設けられた連通部74によって、第2室73と連通しており、除菌剤溶液の噴霧は、図中矢印で示すように、導入された外気と混合されつつ連通部74を介して第1室72から第2室73へと移動する。即ち、噴霧ノズル32からの除菌剤溶液の噴霧は、連通部74を介して水平方向に移動する。そして、第2室73内に移動した噴霧は、導入された外気により生成された気流によって第2室73内を上方へと移動し、放出口33から放出される。
【0050】
このように、噴霧を下向きから水平方向に移動させ、その後、上方に移動させてから放出させることにより、噴霧の経路が迂回し、十分に外気と接触して霧化が促進される。また、噴霧中の粒径の大きい液状の粒子の多くは、初めに下向きに噴霧されることで重力とも相まってハウジング31の底壁に付着し、さらに、噴霧方向の変化等によって、ハウジング31の底壁以外の内壁にも付着しやすく、最終的にハウジング31底壁に集まってドレイン口35から排出される。
【0051】
このようにして、放出口33から放出される噴霧を、人や物を濡らすことのないドライフォッグとする効果がより高められる。
このようにしてドライフォッグ状の除菌剤溶液噴霧は、放出口33の上方への傾斜によって、図示のように斜め上方に向けて放出され、放出口33上方に配置された送風機ユニット75の送風口75aから前方に送風される気流に効率よく接触し、気流に乗って噴霧をより遠方まで(10メートル以上)飛ばすことができ噴霧される領域を広げることができる。したがって、特に障害物があって台車の移動が困難な場所でも良好に噴霧を散布することができる。
【0052】
なお、本第3実施形態に、前記第2実施形態の構成を適用して、噴霧ユニット3を首振り動作可能としてよいことは勿論である。
図5は、第5実施形態を示し、噴霧ユニット3を、台車4から切り離して離れた場所に移動して噴霧できるようにしたものである。噴霧ユニット3は、台車4に着脱自由に装着するか、あるいは、台車4とは完全に切り離して形成してもよい。
【0053】
例えば、博覧会広場等に噴霧ユニット3を除く(若しくは噴射ユニット3と共に)装置本体を自動車に載せて電源との接続が可能な所定の場所まで運搬し、該装置本体101のプランジャポンプ吐出口と、噴霧ユニット3の噴霧ノズル32(分配管37入口)とを、長い吐出ホース(100m以上でも可能)28’を介して接続し、噴霧ユニット3のみを、装置本体設置場所から離れた展示会ブースB毎に噴霧ユニットを移動しつつ出入り口等に噴霧するようなことも可能となる。
【0054】
この場合、噴霧ユニットのハウジングに凝縮して溜まった余剰の除菌剤溶液を、ドレインホースを介して溶液タンクに戻すことは、距離が離れすぎて無理なので、噴霧ユニットにドレインタンクを設け、タンクに溜まった余剰の除菌剤溶液を適宜溶液タンクに戻す構成とすればよい。ドレインタンクを噴霧ユニットに着脱自由として噴霧途中でドレインタンクを外して余剰の除菌剤溶液を溶液タンクに戻すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…溶液タンク、2…溶液供給ユニット、3…噴霧ユニット、4…台車、21…フィードポンプ、24…フィルタ、25…プランジャポンプ、28’…吐出ホース、31…ハウジング、32…噴霧ノズル、33…放出口、34…外気導入口、35…ドレイン口、36…ドレイン管、37…分配管、38…送風機、40…車輪、41…中間部支持台、42…底部支持台、43…上部支持台、44…手摺、45…ターンテーブル、46…モータ、47…リンク・カム機構、71…隔壁、72…第1室、73…第2室、74…連通部、75…送風機ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐食性、無臭性を有した除菌剤を水で希釈した除菌剤溶液を蓄えた溶液タンクと、
前記溶液タンク内の除菌剤溶液を加圧して供給する溶液供給ユニットと、
前記除菌剤溶液を霧化された状態で放出する放出口及び外気導入口が形成されたハウジングと、該ハウジング内に配設されて前記溶液供給ユニットから供給された除菌剤溶液を噴霧する噴霧ノズルと、を備え、ハウジング内に導入した外気と前記噴霧ノズルからの噴霧とを混合させ、乾いた霧状として前記放出口から放出させる噴霧ユニットと、
少なくとも前記溶液タンクと前記溶液供給ユニットとを搭載し、下端部に車輪を装着した台車と、
を含んで構成される可搬式噴霧除菌装置。
【請求項2】
前記除菌剤は、次亜塩素酸ソーダ、亜塩素酸ソーダ、炭酸二ソーダ、カ性ソーダを各々5%以下含む請求項1に記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項3】
前記溶液供給ユニットは、前記溶液タンク内の除菌剤溶液を吸引して加圧供給するフィードポンプと、該フィードポンプから吐出されフィルタを介して供給された除菌剤溶液を加圧して前記噴霧ノズルに供給するプランジャポンプと、を含む請求項1又は請求項2に記載の可搬式除菌装置。
【請求項4】
前記ハウジング内に、前記噴霧ノズルから前記放出口までの噴霧の経路を迂回させるように前記ハウジング内空間を仕切る画壁を備える請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項5】
前記ハウジング内の噴霧を凝縮液化した余剰の除菌剤溶液を、前記溶液タンク内に戻すドレイン系を含む請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項6】
前記噴霧ユニットも前記台車に搭載される請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項7】
前記噴霧ユニットは、前記台車から切り離し可能である請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項8】
前記噴霧ユニットは、前記台車に高さ調節自由に連結される請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項9】
前記ハウジングに、前記放出口からの噴霧を送風する送風機が配設される請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項10】
前記噴霧ユニットは、台車に対し、水平面内を揺動する首振り動作が可能に構成されている請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。
【請求項11】
前記噴霧ノズルは、複数個並列に配設される請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の可搬式噴霧除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−24804(P2011−24804A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174154(P2009−174154)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(592183916)
【Fターム(参考)】