説明

可搬式湿熱システム

可搬式湿熱輸送システムが、水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分とを備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有し、湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である。方法が、鎮痛の改善、血流の改善、リラクゼーションの改善、および心仕事量の低下をもたらすことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式熱輸送システムを対象とする。とりわけ、本発明は、水蒸気を発生させ、湿熱をもたらす、可搬式熱輸送システムを対象とする。さらに、本発明は、可搬式熱輸送システムを作製する方法、ならびに、鎮痛、深部筋肉加熱、血流の上昇、心仕事量の低下、リラクゼーション、創傷治癒、水分輸送、活性物輸送、身体加温、呼吸緩和、皮膚水和、睡眠の向上、および物理療法を実現する方法を含む。
【背景技術】
【0002】
本出願は、参照により全体としてそれぞれ本明細書に組み込まれる、2008年5月15日に出願された米国仮出願第61/053,480号および2008年8月29日に出願された米国仮出願第61/093,009号の利益を主張するものである。
【0003】
使い捨て式熱ラップは、一時的なまたは慢性的な身体の痛みおよび疼痛の不快さを緩和するために熱を加える一般的な方法となっている。使い捨て式熱ラップは、典型的には、熱を発生するための発熱性組成物を備え、この発熱性組成物は、典型的には、金属粉末と、塩と、金属粉末の酸化時に発熱性組成物が熱を放出することを可能にする水とを含む。他の使い捨て式または再利用可能なデバイスは、熱を生じさせるために、酸と塩基との中和により生じるエネルギー、無機塩の水和熱、再加熱可能ゲル、および電気エネルギーを用いることが可能である。かかるデバイスは、筋肉および関節のこわばり、神経痛、腰痛、リウマチ、および呼吸器症状等々に関連する痛みおよび疼痛の治療に一般的に適していることが判明している。かかるデバイスは、通常は、熱を生じさせるが、水分を殆ど含まない。
【0004】
いくつかの使い捨て式加熱デバイスは、約1時間から約24時間までの期間にわたり持続的な熱を供給することが可能であり、渦流浴槽、高温タオル、吸水薬、加熱パッド、および弾性圧縮バンドなどの他の従来的な熱源よりも使用が面倒でなく便利なものとして一般的に説明される。しかし、渦流浴槽または高温タオルによるものなどの熱および水分の双方の輸送には、利点がある。湿熱は、しばしば、より穏やかで快適なものに感じられ、乾熱よりも迅速に熱を輸送し鎮痛をもたらすことが可能である。しかし、高温タオルおよび渦流浴槽などの湿熱を輸送する従来的な方法は、面倒で不便なものとなるおそれがあり、一般的には可搬性のものではない。さらに、高温タオルおよび蒸気熱を輸送すると謳ういくつかの現行の製品などのいくつかの方法は、短期間の時間にわたって、場合によっては15分またはそれ以下にわたって熱を輸送することが可能であるにすぎない。
【0005】
より長い加熱期間を実現するためのおよび/または熱および水分を供給するための、可搬式熱ラップデバイスにおける発熱反応を強化する様々なアプローチには、活性炭材料および不活性炭材料などの様々な異なる炭素材料を発熱性組成物に組み込むことが含まれる。他のアプローチには、過剰水が存在し、水蒸気が発生することが可能となるように、発熱性組成物に保水剤および保水材料を追加することが含まれる。
【0006】
熱および水分を供給する加熱デバイスを生み出すための他のアプローチには、発熱反応の割合および度合いを調節するように試みることと、水蒸気を生じさせることと、水蒸気の温度を調節することと、皮膚に損傷を与え得る温度の水蒸気に対してユーザの皮膚を断熱することとが含まれる。例えば、Onoに対する米国特許第6,629,964号を参照されたい。しかし、既知のデバイスが、とりわけ深部筋肉組織において十分な熱および水分を供給するのに有効な量の水蒸気を生じさせないことにより、または、長期間の時間にわたり、一般的には約4から8時間未満にわたり、多くの場合には1時間未満にわたり、典型的には約15分にわたり、水蒸気を生じさせないことにより、熱および水分を供給するための殆どの既知の加熱方法およびデバイスは、不十分な量の水蒸気を供給する。さらに、先行技術のかかるデバイスは、本質的に、蒸気または高温蒸気を輸送するように設計される。
【0007】
さらに、既知の技術のデバイスは、典型的には、発熱性組成物において水を蒸発させることにより、水蒸気を発生させる。しかし、活性炭および鉄を含む典型的な発熱性組成物の熱的性能は、組成物中の水レベルに対して非常にセンシティブであり、この水レベルに大きく左右されることが知られている。具体的には、発熱性熱セル中に過剰レベルの水が存在することにより、加熱が低速になるおそれがある。これは、水が、発熱反応の発生に必要な空気の利用可能率を制限することによるものである。したがって、空気の制限により、加熱が遅くなり、水蒸気の発生が非常に少なくなるか、または全く無くなる。しかし、高速の加熱速度を実現するためにかかる組成物中の水レベルを低減させるように試みることにより、発熱反応の期間は、著しく短縮されるおそれがあり、すなわち、活性炭が乾燥すると共に酸素を吸収する能力を喪失するために、この反応はにわかに終了することになる。
【0008】
さらに、高い水蒸気化率のためには、発熱性組成物は、非常に高温(>65℃)に達しなければならない。さらに、深部筋肉加熱および深部筋肉における効果的な持続的な鎮痛を実現するためには、深部筋肉温度は、38℃を上回らなければならない。しかし、ヒトの皮膚は、約43℃超であると当業者には考えられている高い皮膚温度で損傷を受ける場合があるため、加熱デバイスは、皮膚および深部筋肉に対して高量の熱を供給しつつ、約43℃未満にヒトであるユーザの皮膚温度を維持することが可能でなければならない。したがって、湿熱デバイスは、約43℃未満に皮膚温度を保つことにより、高レベルの熱を輸送しつつ、高温の発熱性組成物から皮膚を保護しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、熱および水分を供給するための技術の進歩にもかかわらず、迅速な水蒸気発生および加熱を実現し、持続的な水蒸気発生を実現し、深部筋肉加熱を可能にするように有効量の熱を輸送し、約43℃未満に皮膚温度を維持する可搬性加熱デバイスに対する必要性が残されたままである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、
(b)水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分と
を備え、
前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分が、流体連通状態にあり、
前記水蒸気/空気調節部分が、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有し、湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である、可搬式湿熱輸送システムを含む。
【0011】
湿熱輸送システムは、潜熱輸送表面に水蒸気/空気混合気を供給することができ、前記水蒸気/空気混合気は、約30℃から約50℃までの露点温度を有する。
さらに、本発明は、水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分を備える可搬式湿熱輸送システムと、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分とを備える治療デバイスを提供することを含み、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有し、湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である。このデバイスは、腰ラップ、膝ラップ、首ラップ、月経ラップ、関節ラップ、手/手首ラップ、首腕間ラップ、顔ラップ、足ラップ、身体ラップ、ブランケット、包帯、多目的ラップ、パッチ、パッド、およびそれらの組合せからなる群より選択される物であってよい。
【0012】
さらに、本発明は、治療デバイスを提供することを含み、水蒸気発生部分は、複数の水蒸気発生熱セルを備え、熱セルは、微粒子発熱性組成物を含む。
さらに、本発明は、治療デバイスを提供することを含み、熱源は、複数の熱セルを備え、前記熱セルの少なくとも一部分が、一列に整列され、発泡材料のストリップが、熱セルの前記列を重ねて、熱セルの前記列に平行な空気スペースをもたらす。
【0013】
さらに、本発明は、(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分を備える可搬式湿熱輸送システムであって、前記水蒸気源が、水管理体に吸収された水であり、前記熱源が、鉄を含む微粒子発熱性組成物である、可搬式湿熱輸送システムと、(b)少なくとも1つの水蒸気/空気混合層および少なくとも1つの水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分であって、前記水蒸気/空気混合層が、織成材料、不織材料、およびそれらの組合せからなる群より選択される材料の少なくとも1つの層を備える通気構造体であり、前記水蒸気分配層が、発泡材料の少なくとも1つの層を備える、水蒸気/空気調節部分と、を備える治療デバイスを提供することを含み、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する。湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である。
【0014】
さらに、本発明は、水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分とを備える、可搬式湿熱輸送システムを提供するステップであって、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分が、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分が、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、ユーザの表面に前記システムを適用するステップであって、潜熱輸送表面が、前記ユーザの表面の近位に配置される、ステップと、前記システムの加熱を開始するステップと、予め選択された温度範囲でユーザの皮膚に湿熱を伝達するステップであって、湿熱が、約15%から約95%の凝縮潜熱である、ステップと、を含む、ユーザに利益を提供する方法を含む。
【0015】
湿熱を供給する、本発明のデバイスおよび方法は、鎮痛速度を向上させ、深部筋肉温度を上昇させ、血流を上昇させ、心仕事量を低下させることが可能である。さらに、本発明のデバイスおよび方法は、創傷治癒を助け、身体加温を実現し、活性物を送達し、皮膚に水分を輸送し、リラクゼーションを実現し、呼吸緩和を実現し、睡眠を向上させ、加熱部位の物理療法を助け、術後の回復を促進または強化し、怪我の回復を促進または強化し、およびそれらの組合せを実現することが可能である。さらに、本発明のデバイスおよび方法は、皮膚および粘膜に対するおよびそれらを通した美容組成物および治療組成物の、改善された、制御可能であり、均一な適用を行なうために使用され得る。
【0016】
本出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴う本特許の写しは、請求および必要手数料の支払いに基づき、特許庁より提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の簡略化された断面概略図である。
【図2】本発明の一実施形態の簡略化された概略図である。
【図3】本発明の一実施形態の断面概略図である。
【図4】本発明の一実施形態の上面図である。
【図5a】活性可搬性湿熱輸送システムの一実施形態の赤外線写真であり、外部表面の図である。
【図5b】活性可搬性湿熱輸送システムの一実施形態の赤外線写真であり、潜熱輸送表面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、水蒸気/空気調節部分とを備える、可搬式湿熱輸送システムを含み、水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層と、水蒸気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する水蒸気/空気分配層とを備える。水蒸気発生部分および水蒸気/空気調節部分は、流体連通し、空気および水蒸気は、水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分との中および間を流れることが可能である。潜熱輸送表面は、水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される。湿熱システムの潜熱輸送表面は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送し、湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である。ヒトの皮膚の上で使用するための可搬性湿熱システムについては、予め選択される温度は、好ましくは約43℃未満である、皮膚に損傷および火傷を負わせない温度であるべきである。
【0019】
本発明の可搬性湿熱輸送システムは、人体に安全かつ迅速に熱を輸送する。さらに、本発明は、身体に安全かつ迅速に熱を輸送するための方法と、深部組織加熱、鎮痛、創傷治癒、心仕事量の低下、リラクゼーション、血流の上昇、水分輸送、睡眠の向上、物理療法、および活性物輸送を実現するための方法とを含む。本発明のデバイスおよび方法は、最大で約8時間の間にわたり持続的な湿熱を輸送することが可能である。このシステムは、使いきりの使い捨て式システムであることが可能であり、または再利用可能なもしくは部分的に再利用可能なシステムに組み込まれることが可能である。
【0020】
本明細書においては、可搬式湿熱輸送システムは、人体と共に使用するコンテクストにおいて説明される。しかし、当業者には理解されるであろうが、本明細書において説明される可搬式湿熱システムおよび方法は、潜熱輸送表面の最大温度および輸送される熱の総量が、本明細書において説明される方法を利用することによって、意図される対象に対して性能を最適化するように調整され得ることが分かると、他の動物、植物、または無生物物体と共に使用するように等しく適合可能なものである。例えば、動物の体温およびサイズは、ヒトの体温およびサイズとは大幅に異なる場合があり、したがって、選択される温度範囲および/または水蒸気に変換されるべき水分量および/または使用される熱セルの個数は、選択される種の生理学および/または解剖学に対応するように変更される必要がある場合がある。
【0021】
本発明は、本明細書において説明される本発明の要素および限定を、ならびに、本明細書において説明される任意の追加的またはオプションの成分、構成要素、または限定を、含むことが可能であり、それらのみからなることが可能であり、または実質的にそれらのみからなることが可能である。
【0022】
本明細書において使用される際に、「水蒸気」は、気体状態の水を指す。「水蒸気/空気混合気」および「水蒸気/空気混合」は、本明細書において規定されるような「水蒸気」に空気を追加することを指す。エネルギーが、液体水を水蒸気に変化させる相変化を達成するために加えられなければならない。本明細書において説明される例示的な実施形態においては、熱エネルギーが使用される。液体水から水蒸気への相変化を達成するために加えられるエネルギーは、蒸発潜熱である。蒸発潜熱エネルギーは、水蒸気の液体水への凝縮の相変化時に放出され、凝縮潜熱と呼ばれる。本明細書において使用される際に、「蒸気」という語もまた、気体状態の水を指し、水蒸気および「蒸気」という語は、本明細書においては、「蒸気」が水蒸気と液体水液滴との混合気ではない水蒸気のみを指すという理解の下で、互換的に用いられ得る。
【0023】
本明細書において使用される際に、「露点」温度は、水蒸気/空気混合気が、その中の水蒸気が凝結を開始するまでに冷却されなければならない温度を指す。
「混合比」は、乾燥空気の重量に対する水蒸気の重量の比である。
【0024】
本明細書において使用される際に、「潜熱」は、相変化(すなわち固体、液体、もしくはガスへの、およびそれらからの)の際に物質により放出または吸収される熱の形態におけるエネルギー量を指す。
【0025】
本明細書において使用される際に、「水分」は、水を指す。
本明細書において使用される際に、「湿熱」は、熱を指し、伝達可能熱エネルギーの約15%から約95%が、水蒸気の凝縮潜熱の形態である。水蒸気および水蒸気凝縮が、湿熱に関連付けられるため、湿熱は、水分成分を含む。さらに、湿熱輸送システムは、水蒸気を、および凝縮が生じ潜熱が放出される際には液体水を移送することができる。湿熱輸送システムは、いくつかの実施形態においては、別のタイプの熱輸送システムとの組合せで作動し得るため、潜熱の形態において伝達可能熱エネルギーの約15%から95%が、湿熱輸送システムにとって意味することを、および湿熱のこのレベルの発生が、少なくとも約10分間にわたって、代替的には少なくとも20分間にわたって、代替的には少なくとも30分間にわたって、湿熱輸送システムにより維持されるべきであることを理解されたい。
【0026】
本明細書において使用される際に、「予め選択された温度」は、述べられた温度プラスもしくはマイナス1℃を、または代替的にはプラスもしくはマイナス2℃を含んでよく、あるいは、この予め選択された温度は温度挙動が述べられた条件下において予測可能であり再現可能であることを意味するという理解の下において、最高温度(すなわち述べられた温度以下の温度)を、またはある温度範囲を含んでよい。
【0027】
「活性物」または「活性剤」および「治療薬」という語は、本明細書においては互換的に使用され得るものであり、薬学的活性物、および、例えば美容薬またはアロマセラピー薬などの所望のまたは有益な効果を有する物質を含み得る。
【0028】
本明細書において使用される際に、「表面」という語は、本質的に表面を、または材料(もしくは複数の材料)の複数の層の中の1つの層を含み得る。
本明細書において使用される際に、「有効な量」または「薬学上有効な量」の活性剤という語は、少なくとも所望の治療的効果を実現するために十分な量の活性剤として定義される。
【0029】
「メジアン粒径」という語は、この示されたメジアン径よりも大きな径を有する粒子の数が、この示されたメジアン径よりも小さな径を有する粒子と同数存在することを意味する。
【0030】
他の定義は、本発明の説明の中で必要に応じて提示される。
本明細書において開示される全てのカリパス測定された厚さは、他に規定のない限り、ASTM法第D5729号にしたがって測定される。
【0031】
本明細書において開示される全ての基本重量は、他に規定のない限り、ASTM法第D3776号にしたがって測定される。
本明細書において開示される全ての空気透過率は、他に規定のない限り、ASTM法第D737号にしたがって測定される。
【0032】
本明細書において開示される全ての水蒸気透過率(MVTR)は、他に規定のない限り、ASTM法第E96号にしたがって測定される。
全てのパーセンテージ、割合、および比率は、他に規定のない限り、重量によるものである。全てのかかる重量は、列挙される成分および構成要素に関するものである場合には、その特定の成分レベルに基づき、したがって、他に規定のない限り、市販の材料に含まれ得る担体または副生成物を含まない。
湿熱輸送システム
高速の鎮痛、深部筋肉加熱、および血流の上昇などの、湿熱の生理学的利益は、湿熱デバイスが特定の有効量の湿熱を輸送する場合にのみ達成され得る。使用の便利さを促進するためには、湿熱輸送システムが可搬式であることが望ましい。本発明は、可搬式の便利で安全な湿熱輸送システムにおいて、有効量の湿熱の輸送を実現する。本発明の可搬式湿熱輸送システムは、水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、水蒸気/空気調節部分とを備え、水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層と、水蒸気/空気分配層と、潜熱輸送表面とを備える。具体的には、この構造体は、迅速で、安全で、効率的で、持続的な湿熱生成および伝達を実現するために、水蒸気および空気の混合および分配を実現するように設計される。
【0033】
1つの例示的な湿熱システムの断面概略図が、図1に提示される。図1を参照すると、システムは、水蒸気発生部分10と水蒸気/空気調節部分20とを備える。水蒸気/空気調節部分20は、水蒸気/空気混合層24と水蒸気/空気分配層22とを備える。図1が示すように、水蒸気/空気調節部分20は、水蒸気発生部分10と潜熱輸送表面30と間に置かれる。図1に図示される湿熱輸送システムは、外部表面層40をさらに備える。外部表面40は、水蒸気発生部分10の近位に、および潜熱輸送表面30の対向側に位置する。
【0034】
一実施形態においては、水蒸気発生部分は、約50℃から約70℃までの温度の水蒸気を発生する。水蒸気が形成されると、水蒸気が加温されるだけでなく、熱が蒸発潜熱として保存される。水蒸気を発生させるためには、水蒸気源が、迅速に熱くなり、少なくとも約10分の、好ましくは約30分またはそれ以上の期間にわたって高い水蒸気化率を達成しなければならない。保存された蒸発熱は、水蒸気が凝縮する際に放出される。水蒸気は、それが凝縮する際の潜熱による熱伝達の大きさにより、および、水蒸気が容易に発生され利用し得ることにより、熱を伝達するための理想的な候補である。本明細書において説明される例示的な実施形態においては、水蒸気を発生させるための熱は、例えば米国出願整理番号第11/233916号に開示されるような鉄ベース熱的組成物などの発熱性熱的組成物を使用することにより生成される。しかし、当業者には理解されるであろうが、他の熱的材料組成物および/または熱源および/または他のエネルギー源が、本発明の実施において熱を発生させるために同様に使用されてよい。
【0035】
1つの例示的な実施形態においては、水蒸気発生部分は、熱を発生するための熱的組成物と、蒸発のために利用可能な水とを含む。任意には、これらの成分は、混合されてよい。
【0036】
湿熱システムの水蒸気/空気調節部分は、多数の目的および機能を有する。第1の機能は、発熱反応を支援するために十分な空気が水蒸気発生部分に進入するのを可能にすることである。可搬式湿熱輸送システムの透過性部分が、身体に対して着用されるため、発熱反応を支援するために十分な空気を供給することは、重要である。発熱性組成物において水を蒸発させるために、この組成物の温度は、約70℃の高さとなり得る。しかし、ヒトの皮膚は、約43℃で火傷を負うおそれがあるため、高温の発熱性組成物から保護されなければならない。したがって、本湿熱輸送システムにおいては、水蒸気が発生される際に、水蒸気は、水蒸気発生部分を出て、水蒸気/空気調節部分を通過/に進入する。水蒸気が、水蒸気/空気調節部分を通過する際に、水蒸気は、空気と混合され、蒸気/空気混合気の露点温度が予め選択された温度範囲にまで下げられるように分配される。ヒトにおける一般的な使用のためには、これは、皮膚または他の組織を害さない温度であることが好ましい。従来的には、約43℃またはそれ未満が、皮膚を火傷させない温度であると考えられている。しかし、高温源との皮膚の接触は、皮膚が受けるエネルギーを放散することができない場合にのみ火傷をもたらすことを認識すべきである。したがって、エネルギー伝達および温度が、組織損傷の可能性を決定するものとなる。典型的には、乾熱伝達または伝導性熱伝達においては、火傷は、皮膚温度が約43℃を超える場合に生じる。しかし、理論に縛られることを望むものではないが、湿熱の場合には、多くのエネルギーが凝縮潜熱を介して伝達されると考えられる。したがって、水蒸気空気混合気の温度は、例えば約50℃など、はるかに高くてよく、皮膚は、水蒸気により伝達されるエネルギーの量が不十分である、および/または皮膚温度を43℃超に高めるには不十分な割合で伝達される、および/または約43℃もしくはそれ未満に皮膚温度を維持するのに十分な割合で放散される場合には、火傷を負わない。
【0037】
本発明のシステムにより、ヒトの組織に危害を与えることなく約43℃よりも高い温度を利用することが可能となる。以前は、湿熱デバイスを出る水蒸気の温度自体は、皮膚の火傷を防ぐために、乾球温度計または熱電対により測定される場合に約50℃未満に下げられなければならないと考えられていた。しかし、本発明者らは、組織の損傷の可能性および/またはエネルギー伝達が、従来的な乾球または熱電対により測定される場合の温度において確実には反映されず、むしろ、水蒸気の露点温度により確実に関係することを発見した。乾球温度とは異なり、露点温度は、ガス混合気中の水蒸気の量に関係する。露点温度は、空気中の水分の絶対レベルである水蒸気/空気混合気の混合比により決定される。露点温度と混合比との関係は、混合比が上昇すると、露点温度が上昇するというものである。水蒸気/空気混合気のエネルギー含量は、その乾球温度(すなわち顕熱)によってよりも、水蒸気の量(すなわち保存された潜熱)によって、より影響を受ける。水蒸気/空気比の調節においては、水蒸気/空気混合気の乾球温度において偶発的な降下が起こり得る。しかし、温度変化において獲得されるまたは損失されるエネルギーが、潜熱として存在するエネルギーよりも著しく低いため、水蒸気/空気混合気の乾球温度の調節は、必要ない。したがって、潜熱を介して伝達されるエネルギー量は、水蒸気対乾燥空気比の調節によって制御され得る。かかる比率は、水蒸気のポンド/乾燥空気のポンドとして、または水蒸気のkg/乾燥空気のkgとして表すことが可能である。
【0038】
乾球温度を調節する代わりに露点温度を調節する重要性の一例として、同一のエンタルピーまたはエネルギーを有するが異なる量の水蒸気を有する例示的な条件AおよびBが、複数のポイントにより考慮される。条件Aは、その飽和点にある水蒸気/空気混合気(最大水蒸気)であり、約43.3℃(約110°F)の乾球温度を有する。この混合気は、飽和しているため、乾球温度および露点温度は、同一である。条件Aでの水蒸気/空気比は、0.06kg水蒸気/kg乾燥空気(約0.06lb水蒸気/lb乾燥空気)である。
【0039】
条件Bは、より低い湿度を、すなわちより低い飽和度の水蒸気/空気混合気および約0.052kg水/kg(約0.052lb水/lb)の水蒸気/空気比を有する。条件Aと同一のエネルギー含量を有するためには、条件Bは、条件Aよりも著しく高い乾球温度(約60℃)であることが必要となる。条件Bの約0.052kg水/kg乾燥空気(約0.052lb水/lb乾燥空気)の水蒸気/空気比は、約40.6℃の露点温度に相当する。条件Bの水蒸気/空気混合気などの水蒸気/空気混合気が、皮膚に接触する場合には、熱伝達速度が非常に遅いため、60℃で皮膚に火傷を負わせない。この水蒸気/空気混合気が皮膚に接触すると、水蒸気/空気混合気は、冷え、約40.6℃(約105°F)にて皮膚の上で凝縮する。水蒸気/空気混合気が凝縮すると、エネルギー伝達速度は、非常に高くなるが、その凝縮温度または露点温度がわずか40.6℃であるため、皮膚に火傷を負わせない。逆に、条件Aの水蒸気/空気混合気は、約43.3℃(約110°F)にて皮膚の上で凝縮し、その潜熱容量を迅速に伝達する。その結果、条件Aは、その乾球温度が条件Bの水蒸気/空気混合気の乾球温度よりも著しく低いにもかかわらず、皮膚火傷を引き起こす危険性が条件Bよりも高くなる。
【0040】
したがって、先行技術とは異なり、本発明は、水蒸気/空気混合気の乾球温度を調節するのとは対照的に、水蒸気/空気混合比を調節する。水蒸気/空気比を調節することにより、凝縮温度または露点温度が制御される。水蒸気/空気比が、約0.085kg水蒸気/kg乾燥空気(約0.085lb水蒸気/lb乾燥空気)未満に調節されると、露点温度は、50℃未満となる。好ましくは、約0.060kg水蒸気/kg乾燥空気(約0.060lb水蒸気/lb乾燥空気)未満まで水蒸気/空気混合比を調節することによって、43℃未満まで水蒸気/空気混合気の露点温度が下げられる。湿熱ラップの露点温度を制御することにおける利点の1つは、このシステムの熱力学により、温度変調が実現されることであり、潜熱の伝達が、皮膚温度によって変調される(すなわち、潜熱が露点にて伝達される。したがって、皮膚温度が水蒸気の露点以下とならない限り、伝達は行なわれない)。これは、皮膚による熱の放散が不可能なリスク集団にとってだけでなく、低血流および高脂肪含量等により正常集団にとってもとりわけ有用である。43℃未満まで露点温度を制御することにより、リスク集団についての皮膚火傷を防ぐことが可能となる。これは、皮膚温度が露点温度に達すると、潜熱による伝達が停止するためである。
【0041】
したがって、皮膚火傷を回避するためには、水蒸気が組織に対する危害を生じさせない温度で凝縮するように、水蒸気対乾燥空気の量または比が調節されなければならない。ヒトの皮膚については、例えば露点温度が約43℃未満である場合には、組織に対する危害は生じない。
【0042】
いくつかの治療用途に対してなど、比較的高い露点温度が望ましい用途については、水蒸気/空気比は、比較的高くてよい。これらの用途においては、驚くことに、本発明の湿熱システムを使用することにより血液灌流が著しく上昇することを本発明者らが発見したことにより、皮膚温度は、依然として43℃未満であってよい。任意には、高水蒸気/空気混合気の皮膚との接触時間が短く、および/または水蒸気の一部分のみが皮膚で凝縮することが可能となる場合には、高い露点温度が用いられてもよい。短い接触時間により、皮膚に接触することの可能な水蒸気の量が制限される。代替的には、このシステムは、水蒸気の一部分が皮膚に向けられ、水蒸気の一部分が皮膚から離れるようにシステムから流出することが可能となるように、設計されてよい。接触時間および/または皮膚に接触することが可能な水蒸気/空気混合気の量は、ラップ設計により、およびラップ中の熱セルの位置により左右され得る。
【0043】
本発明の可搬式湿熱輸送システムは、水蒸気を選択的に配向する。人的利用を意図されたシステムにおいては、水は、ユーザの皮膚の方向に配向される。人的利用については、皮膚に達する水蒸気は、約36℃から約50℃までの、代替的には約36℃から約45℃までの、代替的には約36℃から約43℃までの、代替的には約36℃から約42℃までの、代替的には約38℃から約42℃までの、代替的には約38℃から40℃までの所望の治療的露点温度に露点を有する。このシステムは、約20秒から約8時間までの、代替的には約20分から約5時間までの、代替的には約1/2時間から約2時間までの期間にわたって選択されたターゲットに水蒸気を配向することが可能である。人的利用については、最高皮膚温度、および最高皮膚温度で皮膚温度を維持する時間の長さは、皮膚火傷などのいかなる不利益な事象も伴うことなく所望の治療的利益が達成されるように、かかる治療を要するヒトに対して適切に選択され得る。水蒸気/空気調節部分により、治療的量の湿熱が、悪影響を伴うことなくユーザの皮膚に輸送されるようになる。
【0044】
湿熱システムの水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を有する。さらに、水蒸気/空気調節部の機能が、空気に対する水蒸気の割合を調整することであるため、水蒸気/空気調節部分は、水蒸気が水蒸気/空気発生部分と水蒸気/空気調節部分との間を自由に通過するように、水蒸気発生部分と流体連通状態になければならない。1つの例示的な実施形態においては、水蒸気/空気調節部分は、水蒸気発生部分に隣接する。さらに、水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気比の調整を遂行するために空気の供給を要するが、ある特定の比率または比率範囲が望まれるため、空気供給を調節することが望ましい。空気供給は、例えば、システムを構築するために使用される材料の密度および/または多孔度を制御することにより、あるいは代替的には、水および/または空気不透過性材料においてチャネルおよび孔を使用することにより、調節されてよい。
【0045】
水蒸気/空気調節部分とエンドユーザとの間のインターフェースは、潜熱輸送表面である。例示的な人的用途の場合において、これは、ヒトの皮膚の近位に位置する湿熱輸送システムの表面となる。いくつかの実施形態においては、潜熱輸送表面は、皮膚表面に接触し得る、または部分的に接触し得る。他の実施形態においては、潜熱輸送表面と皮膚との間に小さな空気ギャップを有することが望ましい場合がある。湿熱輸送システムにおいては、発生した水蒸気は、潜熱輸送表面の方向に優先的に配向される。この水蒸気は、潜熱輸送表面を通過してユーザの方に進むことができ、水蒸気は、潜熱輸送表面で凝縮して、ユーザに潜熱エネルギーを伝達することができ、または代替的には、水蒸気凝縮および水蒸気伝達の組合せが行なわれ得る。
【0046】
潜熱輸送「表面」という用語が選択された。しかし、表面は、いかなる特定の幾何学的形状にも限定されるようには意図されず、平坦表面、成形表面、および不規則表面を含む(しかしそれらに限定されない)。潜熱輸送表面は、材料層を備えてよい。任意には、潜熱輸送表面は、水蒸気/空気調節部分および/または水蒸気/空気調節部分の一部分の表面に一体的に装着されてよい。代替的には、潜熱輸送表面は、例えばこのシステムのための再利用可能ホルダの一部であってよい。
【0047】
水蒸気発生部分
本発明の水蒸気発生部分は、少なくとも1つの水蒸気源および熱源を含む。水蒸気源は、無数の方法でエネルギーおよび水蒸気を発生させることが可能である。熱源の非限定的な例には、化学エネルギー、酸および塩基の中和により生じるエネルギー、無機塩の水和熱、再加熱可能ゲル、および電気エネルギーによるものが含まれる。水蒸気源は、熱源と組み合わせることが可能である。例えば、発熱性熱セルは、湿熱輸送システムの水蒸気発生部分として、燃料(すなわち熱源)および水の混合物、および/または水管理体中に保持される水を含むことが可能である。代替的には、水および燃料(すなわち熱源)は、分離されてよく、水は、リザーバから供給されるかまたは皮膚などの表面に与えられ、次いで熱発生源が生じる熱と接触される。例えば電気的要素などの、水に対して適合不能なエネルギー源を備える水蒸気発生部分においては、エネルギー源は、水蒸気を生成するために別個の水含有要素を加熱するように使用されてよい。本発明において有用な水蒸気発生部分の非限定的な例は、少なくとも1つの水蒸気発生熱セル内に形成された水管理体内に水を含む発熱性組成物を使用する。湿熱輸送システムは、単一の熱セルまたは複数の熱セルを含んでよい。本発明のシステムにおいては、複数の熱セルが特に有用である。複数の熱セルにより、様々なサイズおよび形状のフレキシブルなシステムが可能となる。さらに、複数の熱セルの使用により、露点を制御するための水蒸気/空気混合比の容易な制御が可能になる。例えば、固定式水蒸気混合/通気設計についての露点温度は、熱セルの個数を増減することによって上下させることが可能である。驚くべきことには、本発明者らは、加熱期間および輸送される総エネルギーが、水蒸気発生部分の単位面積当たりで使用される熱セルの個数を変更することによって制御され得ることをさらに発見した。面積当たりの熱セルの個数がより多いほど、加熱時間がより長くなる。面積当たりの熱セルの個数がより少ないほど、加熱期間がより短くなる。いくつかの実施形態においては、湿熱輸送システムと、乾熱セルなどの他のタイプの熱セルとの組合せを利用することが望ましい場合がある。
【0048】
発熱性組成物
1つの例示的な実施形態においては、水蒸気を発生させるための熱エネルギーは、特定の発熱性組成物を備える発熱性熱セルによって供給される。この発熱性組成物は、流動性微粒子予混合物および塩水溶液を含む。米国特許出願整理番号第11/233,916号に開示される発熱性組成物が、適切な発熱性燃料組成物の例である。
【0049】
微粒子発熱性組成物は、所望の特徴と、所望の特徴を実現するために対処されなければならないいくつかの考慮要件との両方を有する。例えば、発熱性熱セルの性能は、2つの主要な点において、発熱性組成物の微粒子成分の粒径によって影響され得る。第1に、発熱性組成物の微粒子成分の粒径にばらつきがあることにより、発熱性組成物内における粒子の分離または凝離に至るおそれがある。粒径は、粒子移動度に直接的に影響し、微粒子成分は、それらの移動度において多様である可能性があり、結果的に粒子の分離または凝離がもたらされる。粒子凝離による発熱性組成物における変化により、最適および/または所望未満の反応挙動に至るおそれがある。
【0050】
本明細書において定義される発熱性組成物は、発熱性組成物が粒子の分離または凝離を阻止するように、規定のメジアン粒径範囲を有する微粒子成分を備える。しかし、本明細書において規定される範囲を上回るまたは下回るメジアン粒径範囲を有する粒子成分が、本明細書において定義される発熱性組成物における使用に適することが予期される。
【0051】
発熱性組成物の微粒子成分の粒径により発熱性熱セルの性能が影響され得る第2の点は、粒径が、微粒子発熱性組成物を通過する空気のアクセス性に影響を与えるということである。水蒸気を放出するために強力な発熱反応を支援および持続させるためには、微粒子発熱性組成物は、微粒子発熱性組成物の反応物質に空気が自由にアクセス可能となるように、多孔性であるべきである。微粒子発熱性組成物は、初期の高い水含有量(高い水蒸気発生のために)であっても多孔性であるべきであり、反応の間にわたって多孔性に留まるべきである。多孔性であるおよび多孔性に留まるためには、微粒子発熱性組成物は、効率的な水管理体成分を有する必要があり、発熱性組成物の成分の粒径は、緩い粒子パッキング挙動を示すべきである。理論に縛られることを望むものではないが、適切な多孔性および多孔性の維持は、長期間の熱生成(すなわち約8〜24時間にわたる熱生成)を有する熱セルの作製において、および複数の熱セルにおいて一貫した再現可能な挙動を有する組成物の作製において、重要な要素であると考えられる。
【0052】
一実施形態においては、本発明の熱セルは、熱セルが可搬式湿熱輸送システムに組み込まれる場合に、確実な加熱を実現し、したがって数分から数時間の時間フレームにわたる確実かつ相当な水蒸気発生を実現する、微粒子発熱性組成物を含む。例示的な微粒子発熱性組成物は、微粒子予混合組成物および塩水溶液を含む。
【0053】
微粒子予混合組成物の成分には、鉄粉、炭、吸収性ゲル化材料、および水が含まれてよく、これらの成分は、以降において詳細に説明される。塩水溶液の成分には、金属塩、水、および適宜にチオ硫酸ナトリウムなどの水素ガス抑制剤が含まれてよい。本明細書において定義される微粒子発熱性組成物は、一般的には、微粒子予混合組成物を構築し、予混合物に塩水溶液を迅速に加えて、発熱性組成物の形成をもたらすことによって用意される。
【0054】
湿熱デバイスにおいて使用するために、微粒子発熱性組成物は、高速の初期加熱を実現し、さらに持続的な期間にわたる加熱を実現する能力を有するべきである。当技術において知られている典型的な発熱性熱デバイスは、一般的には、高レベルの熱を迅速に供給することが可能であるがわずか数分しか続かないものであるか、または、持続的な期間にわたって熱を供給することが可能であるが加熱に最大で約30分かかるおそれのあるものであるかのいずれかである。本発明は、部分的には微粒子発熱性組成物内の成分の選択によって実現される、迅速かつ持続的な加熱を実現する。非限定的な例としては、成分粒径の変更により、加熱速度、加熱期間、および発熱反応温度を制御することが可能である。
【0055】
例としては、発熱反応を変更する1つの特定の方法は、約200μmのメジアン粒径を有する鉄粉と、約300μmのメジアン粒径を有する吸収性ゲル化材料とを用いることを伴い、鉄粉に対する吸収性ゲル化材料のメジアン粒径比は、約1.5:1である。鉄粉に対する吸収性ゲル化材料のこの特定の比率により、従来の発熱性組成物では実現が困難であった迅速な初期加熱および水蒸気発生を示す発熱性組成物がもたらされる。理論に縛られることを望むものではないが、従来の発熱性組成物に高レベルの水分を組み込む試みにより、間粒子空部中に水がもたらされ、これは、酸素流を制限し、初期加熱速度を遅らせると考えられる。間粒子空部体積に水を進入させないために、しばしば、水管理体が、過剰水分を吸収するために発熱性組成物に組み込まれる。しかし、鉄粒子の表面積により鉄酸化反応が制限されるという考えに基づき非常に細かい鉄粒子を使用する当技術における一般的慣例により、バーミキュライトおよび吸収性ゲル化材料などの殆どの水管理体は、鉄粒子よりも大幅に大きな粒径を有する。したがって、小さな鉄粒子が鉄の表面積を増大させると従来は考えられてきた。
【0056】
しかし、本発明者らが発見し、米国特許出願整理番号第11/233916号において説明したように、多孔性が、反応速度における重要な要素となる。したがって、水管理体および鉄の粒子間における径の相違により、粒子凝離および緊密な粒子パッキングが促進されて、反応が抑制されるおそれがある。例えば、鉄粒子に対する水管理体の粒径比が、約7:1を超える場合には、緊密な粒子パッキングおよび反応の抑制が起こる可能性がある。
【0057】
したがって、本発明に関しては、所望のパッキングを実現するために、鉄粉に対する吸収性ゲル化材料の特定のメジアン粒径比を有する発熱性組成物が使用される。選択された粒径分布および粒径比により、間粒子空部体積内の過剰な水の防止、ならびに粒子凝離および空部体積を伴う粒子パッキングの防止が促進され、より高速な初期加熱が実現される。本発明における鉄粉に対する吸収性ゲル化材料のメジアン粒径比は、約10:1から約1:10までであり、代替的には約7:1から約1:7までであり、代替的には約5:1から約1:5までであり、代替的には約3:1から約1:3までである。
【0058】

本明細書において定義される例示的な微粒子発熱性組成物は、鉄粉の酸化時に熱を放出すると考えられている。水および空気による酸化反応を介した熱の発生を生じさせるために鉄粉を使用することが可能である限りにおいては、この鉄粉の純度、種類、径、等々に対する特定の制限は存在しない。
【0059】
本発明の微粒子発熱性組成物は、乾燥予混合組成物の約10重量%から約90重量%までの範囲の、代替的には約30重量%から約88重量%までの範囲の、代替的には約50重量%から約87重量%までの範囲の濃度で、1つまたは複数の鉄粉成分を含む。さらに、本発明のシステムは、約0.1g鉄粉/cmを上回る熱セルを備えることが可能である。
【0060】
鉄粉に関する適切なソースの非限定的な例には、鋳鉄粉、還元鉄粉、電解鉄粉、スクラップ鉄粉、海綿鉄、銑鉄、錬鉄、種々の鋼、鉄合金、これらの鉄ソースの処理された変種、およびこれらの組合せが含まれる。
【0061】
海綿鉄は、鉄粉の1つのソースであり、海綿鉄の高い内部表面積によりとりわけ有利な場合がある。内部表面積が、外部表面積を複数桁上回るため、反応度は、粒径により制御されない場合がある。市販の海綿鉄の非限定的な例には、M−100およびF−417が含まれ、これらは、米国ニュージャージー州在のHoeganaes Corporation社から入手可能である。
【0062】
約50μmから約400μmまでの、代替的には約100μmから約400μmまでの、代替的には約150μmから約300μmまでのメジアン粒径を有する鉄粉が、この場合に使用するのに適した径の例である。吸収性ゲル化材料のメジアン径に対する鉄のメジアン粒径の比率が、粒子の径および分布によって十分な空部体積を伴う粒子パッキングが実現されて、空気の実質的に自由なアクセスが可能となるようなものである限りにおいては、他の径が、同様に適切である場合がある。
【0063】
鉄粉のメジアン粒径、および本明細書において規定される任意の他の微粒子成分は、ASTM法第B214号に開示される方法などのふるい法を利用することにより決定され得る。一般的には、粒子は、様々なサイズからなる一連のふるいによりふるい分けられ、各ふるい上に保持される粒子の重量分率が、測定される。次いで、各スクリーン中の粒子の重量分率を使用して、累積重量分布曲線を構築する。累積重量分布曲線は、次に大きなふるいの上に保持された粒径未満の粒子の累積加算された重量パーセントに対して粒径をプロット化することによって、構築される。メジアン径は、累積重量分布曲線から決定され、メジアン径は、累積重量の50%に相当する粒径として規定される。累積重量分布曲線の構築に関する詳細は、「Methods of Presenting Size Analysis Data」(Particle Size Measurement、153〜156頁、第4版、Terrence Allen、1990年)に記載される。
【0064】
炭素
本発明の一実施形態の例示的な微粒子発熱性組成物は、組成物の約1重量%から約25重量%までの範囲の、代替的には約1重量%から約15重量%までの範囲の、代替的には約1重量%から約10重量%までの範囲の濃度で1つまたは複数の炭成分を含む。
【0065】
ここでの使用に適した炭の非限定的な例には、活性炭、不活性炭、およびそれらの混合物が含まれる。炭成分は、約25μmから約200μmまでの、代替的には約50μmから約100μmまでのメジアン粒径を有する。活性炭が、特に有用である。さらに、様々な炭の組合せもまた有用である。
【0066】
活性炭は、内部構造において極めて多孔性であり、とりわけ良好な酸素吸収能力を有する。実際に、活性炭は、活性炭が湿らされた場合に、極めて良好に酸素を吸収する能力を有し、したがってこれにより、活性炭は、酸化反応において触媒として機能することが可能となる。例えば吸収性ゲル化材料またはバーミキュライトなどの高水吸収性材料が存在する場合には、炭に対する水の利用可能率は、制限される場合がある。したがって、活性炭が、高水吸収性材料の追加前に予め湿らされることが重要である。理論には縛られないが、活性炭は、微粒子予混合物に塩水が加えられる際に高水吸収性材料に対して効果的に対抗することができないため、予め湿らされるべきであると考えられる。活性炭が、予め湿らされる場合には、吸着熱が、放出されて、活性炭により吸収された水は、熱力学的に低エネルギー状態となり、したがって水は、活性炭から高水吸収性材料に移動しなくなる。したがって、活性炭は、高水吸収性材料が追加される際に、湿った状態に留まり、酸素を吸着するための触媒として機能することが可能となる。
【0067】
その触媒挙動に加えて、活性炭は、発熱反応のための補助的な水管理体としての役割を果たす利点を有することができ、および/または鉄粉の酸化により生じる臭気などの臭気を吸着することができる。
【0068】
適切な炭の非限定的な例には、ヤシ殻、木材、木炭、石炭、および骨炭等々から用意される活性炭が含まれ、それらの組合せが、ここでの使用に適しているが、動物性生産物、天然ガス、脂肪、油、樹脂、およびそれらの組合せなどの他の未加工材料から用意されるものもまた、有用である。使用される活性炭の種類は、限定されない。しかし、好ましい活性炭は、良好な酸素吸着能力を有する。市販の活性炭の一例は、米国バージニア州Covington在のMeadWestvaco社から入手可能な活性炭である。
【0069】
さらに、本明細書において定義される微粒子発熱性組成物中の炭の量は、間粒子空部体積を最大化するために、最小限であるべきである。炭は、典型的には、最も細かい粒子成分であり、過剰な炭は、炭が、他の材料のより大きな粒子間の間粒子空部体積を充満させる結果となるおそれがある。したがって、湿熱を発生させるために発熱性組成物中に必要とされる炭の量は、ここで使用される吸収性ゲル化材料が比較的高レベルであるため、従来の発熱性組成物において使用される炭の量よりも概して著しく少ない。したがって、ここでは、炭は、その触媒作用のために主に使用され、その保水特性のためには最低限使用される。
【0070】
さらに、低レベルの予め湿らされた炭が、本発明の熱セルの高速製造にとって非常に望ましい。これは、低レベルの予め湿らされた炭により、予混合物が、塩水溶液を容易に吸収することが可能となるためである。高レベルの炭では、塩水吸収速度は、炭が湿っていることにより遅くなる。したがって、低レベルの予め湿らされた炭は、本明細書において定義される熱セルの製造速度を著しく上昇させる。
【0071】
吸収性ゲル化材料
本発明の微粒子発熱性組成物は、組成物の約1重量%から約25重量%までの範囲の、代替的には約1重量%から約15重量%までの範囲の、代替的には約1重量%から約10重量%までの範囲の濃度で1つまたは複数の吸収性ゲル化材料を含む。
【0072】
ここでの使用に適した吸収性ゲル化材料(「AGM」)により、本発明の微粒子発熱性組成物内に水を物理的にまたは化学的に保持することが可能となる。特に、吸収性ゲル化材料は、放出するための水を貯蓄し、制御された態様で水を放出する機能を果たす。加熱時に、貯蓄された水が、AGMから放出され、熱を吸収することによって水蒸気に転換され、これにより、水蒸気中に蒸発潜熱として熱エネルギーが保存される。さらに、貯蓄された水の一部分が、活性炭の水分レベルを維持するために使用され得る。間粒子空部体積の代わりにAGM中に過剰な水を貯蓄することにより、熱セル中の発熱性組成物は、鉄を迅速に酸化させ、AGM中に貯蓄された水から発生する水蒸気を生じさせるのに十分な高さの内部温度を生じることが可能となる。AGMの高い保水能力により、熱セル中の発熱性組成物は、持続的な期間にわたって高反応性に留まる。理論に縛られることを望むものではないが、AGMは、液体水が微粒子発熱性化合物の間空部に進入するおよび/または留められるのを防ぐまたは抑制することが可能であり、したがって、発熱性組成物の「氾濫」の防止を促進すると考えられる。
【0073】
適切な吸収性ゲル化材料の非限定的な例には、流体吸収特性を有し、水との接触時にヒドロゲルを形成することが可能な吸収性ゲル化材料が含まれる。かかる吸収性ゲル化材料の一例が、例えばポリアクリル酸などの、ポリ酸をベースとするヒドロゲル形成吸収性ゲル化材料である。このタイプのヒドロゲル形成ポリマー材料は、水などの液体との接触時に、かかる流体を吸収し、それによりヒドロゲルを形成するものである。一般的に、これらのとりわけ有用な吸収性ゲル化材料は、重合可能な、不飽和の、酸含有モノマーから調製される、実質的に水不溶性の、若干架橋した、部分的に中和された、ヒドロゲル形成ポリマー材料を含む。かかる材料においては、不飽和の酸含有モノマーから形成されるポリマー成分は、全ゲル化剤を含むことが可能であり、または、でんぷんもしくはセルロースなどの他のタイプのポリマー部分の上にグラフトさせることが可能である。アクリル酸グラフトでんぷん材料が、この後者のタイプのものである。したがって、特定の適切な吸収性ゲル化材料には、加水分解アクリロニトリルグラフトでんぷん、アクリル酸グラフトでんぷん、ポリアクリレート、無水マレイン酸ベースコポリマー、およびそれらの組合せが含まれる。ポリアクリレートおよびアクリル酸グラフトでんぷん材料が、特に有用である。市販のポリアクリレートの非限定的な例には、米国テネシー州Chattanooga在のNippon Shokubai社から入手可能なポリアクリレートが含まれる。
【0074】
吸収性ゲル化材料は、約300μmから約800μmまでの、代替的には約400μmから約800μmまでの、代替的には約500μmから約800μmまでのメジアン粒径を有する。300μm以上のメジアン粒径を有する吸収性ゲル化材料は、粒子凝離効果の最小限化または無化に寄与することが判明している。凝離効果を低減させることにより、皮膚火傷などの有害事象を伴うことなく所望の治療熱の利点が実現されるような、持続的な温度の向上が可能となる。さらに、凝離効果を低減させることにより、複数の熱セルを備え、最長で5時間の湿式治療熱をもたらす、可搬式熱輸送デバイスの高速生産が可能となる。
【0075】
上述のように、本明細書において定義される微粒子発熱性組成物は、鉄粉に対する吸収性ゲル化材料の特定のメジアン粒径比を有する。これらの成分の規定された選択メジアン粒径比を有する発熱性組成物は、最小限の凝離効果を示し、または凝離効果を全く示さず、これにより、所望の治療湿熱の利点のための意図された熱的挙動を満たす発熱性組成物が得られることが判明している。
【0076】
吸収性ゲル化材料に加えて、本発明の微粒子発熱性組成物は、毛管機能および/または親水性特性を有する他の保水材料を任意で含むことが可能である。これらの任意の保水材料は、組成物の約0.1重量%から約25重量%までの範囲の、代替的には約0.5重量%から約20重量%までの範囲の、および代替的には約1重量%から約15重量%までの範囲の濃度で、微粒子発熱性組成物内に含まれてよい。かかる任意の保水材料の非限定的な例には、バーミキュライト、多孔性シリカ、木材粉末、木材微粉末、綿、紙、植物性物質、カルボキシメチルセルロース塩、無機塩、およびそれらの組合せが含まれる。吸収性ゲル化材料および任意の保水材料は、米国特許第5,918,590号および米国特許第5,984,995号にさらに記載される。
【0077】
金属塩
本発明の微粒子発熱性組成物は、組成物の約0.5重量%から約10重量%までの範囲の、代替的には約0.5重量%から約7重量%までの範囲の、および代替的には約1重量%から約5重量%までの範囲の濃度で1つまたは複数の金属塩を含む。
【0078】
ここでの使用に適した金属塩の非限定的な例には、空気による酸化反応を促進し、発熱性組成物への電気伝導を実現して腐食(すなわち酸化)反応を維持するために、鉄粉の表面を活性化するための反応促進剤としての役割を果たす金属塩が含まれる。一般的には、鉄の腐食反応を持続するために単独でまたは組み合わせて使用することが可能な、複数の適切なアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および遷移金属塩が存在する。
【0079】
適切な金属塩の非限定的な例には、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、およびそれらの組合せが含まれる。硫酸塩の特定の非限定的な例には、硫酸鉄、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸マグネシウム、およびそれらの組合せが含まれる。塩化物の特定の非限定的な例には、塩化第二銅、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化マグネシウム、塩化第一銅、およびそれらの組合せが含まれる。塩化第一銅、塩化ナトリウム、およびそれらの混合物が、特に有用な金属塩である。市販の塩化ナトリウムの一例が、米国イリノイ州Chicago在のMorton Salt社から入手可能な塩化ナトリウムを含む。
【0080】

本発明の微粒子発熱性組成物は、組成物の約1重量%から約50重量%の範囲の、代替的には約1重量%から約35重量%の範囲の、および代替的には約5重量%から約33重量%の範囲の濃度で水を含む。ここでの使用に適した水は、任意の適切なソースからのものであることが可能であり、その非限定的な例には、水道水、蒸留水、脱イオン水、またはそれらの任意の混合物が含まれる。
【0081】
発熱性熱セルの熱的性能は、水分レベルに対して非常にセンシティブであり、少量の水は、短時間のみの反応をもたらし、過剰な水は、所望の加熱速度を遅らせ、および/または熱セルを「氾濫」させ、反応を終了させることが知られている。湿熱を生じさせるデバイスにおいては、湿熱の水蒸気を生じさせるために水の供給が必要であるため、問題はさらに大きなものとなる。しかし、本発明の鉄およびAGMの粒径および粒径分布の選択により形成された間スペースを有する微粒子発熱性組成物は、反応過程にわたってセル当たり0.25gの水蒸気を超える高量の水蒸気を発生させるのに非常に有効な熱セルを実現するだけでなく、迅速に所望の温度を達成する高速初期加熱時間を有する熱セルを実現することが判明している。これは、微粒子発熱性組成物が、高い内部保水力(好ましくは主要貯蔵部として機能するAGMによる)と高い間粒子空部体積とを有するように、吸収性ゲル化材料に対する水の十分な重量比を採用することによって実現される。本発明の微粒子発熱性組成物は、発熱性組成物の重量による、約3:1から約9:1までの、および代替的には約4:1から約7:1までの、吸収性ゲル化材料に対する水の重量比を有する。
【0082】
本発明の微粒子発熱性組成物は、高レベルの水を含むことが可能であり、さらに、現行の熱セルよりも低いセル重量レベルで構築され得る。したがって、本発明の発熱性組成物は、高い水濃度でより効果的に使用され、比較的少ない発熱性組成物が、水蒸気発生の所望の量および期間を実現するために必要となる。
【0083】
任意の成分
本発明の発熱性組成物は、任意の成分が、上述の組成物成分に対して物理的におよび化学的に適合性を有するものであるか、または製品の安定性、美観、もしくは性能を不当に損なわない場合には、既知のまたは発熱性組成物における使用に有効な1つまたは複数の任意の成分をさらに含むことが可能である。
【0084】
ここでの使用に適した任意の成分には、粒子の凝集のための凝集助剤(非限定的な例に、コーンシロップ、マルチトールシロップ、結晶性ソルビトールシロップ、および非晶質ソルビトールシロップが含まれる)、乾燥結合剤(非限定的な例に、微結晶性セルロース、超微粒セルロース、マルトデキストリン、噴霧ラクトース、共結晶化したショ糖およびデキストリン、変性デキストロース、マンニトール、プレゼラチン化でんぷん、リン酸二カルシウム、および炭酸カルシウムが含まれる)、酸化反応エンハンサ(非限定的な例に、クロム、マンガン、および銅の元素、および前記元素を含む化合物が含まれる)、水素ガス抑制剤(非限定的な例に、無機および有機アルカリ化合物ならびにアルカリ弱酸塩が含まれ、それらの特定の非限定的な例に、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸カルシウム、炭酸カルシウム、およびプロピオン酸ナトリウムが含まれる)、充填材(非限定的な例に、木材粉塵、綿リンター、およびセルロースを含む天然セルロース断片と、ポリエステル繊維を含む断片形体の合成繊維と、発泡ポリスチレンおよび発泡ポリウレタンなどの発泡合成樹脂と、シリカ粉末、多孔性シリカゲル、硫酸ナトリウム、硫酸バリウム、酸化鉄、およびアルミナを含む無機化合物とが含まれる)、固化防止剤(非限定的な例に、リン酸三カルシウムおよびアルミノケイ酸ナトリウムが含まれる)、およびそれらの混合物などの材料が含まれる。
【0085】
さらに、かかる成分には、増粘剤(非限定的な例に、コーンスターチ、ポテトスターチ、カルボキシメチルセルロース、およびαデンプンが含まれる)、および界面活性剤(非限定的な例に、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤が含まれる)が含まれる。増量剤(非限定的な例に、メタケイ酸塩、ジルコニウム、およびセラミックス、およびそれらの混合物が含まれる)を含む、さらに他の任意の成分が、適宜、本明細書における組成物またはシステム内に含まれ得る。任意の成分は、組成物の約0.01重量%から約35重量%までの範囲の、および代替的には約0.1重量%から約30重量%までの範囲の濃度で微粒子発熱性組成物に含まれてよい。
【0086】
酸素は、酸化反応が生じるために必要である。しかし、本明細書において提示される例示的な実施形態においては、内部酸素ソースは必要とされない。任意には、本発明の範囲内の他の実施形態においては、酸素生成化学物質が、微粒子発熱性組成物を用意する際に、微粒子発熱性組成物内に組み込まれ得る。本発明と共に使用するのに適した酸素ソースの非限定的な例には、空気、および様々な純度の人工的に生成される酸素が含まれる。空気は、便利かつ費用がかからないため、特に有用である。
熱セル
本発明の水蒸気発生部分の熱セルは、水蒸気源を提供するために発熱性鉄酸化反応システムを利用する微粒子発熱性組成物を含むことが可能である。微粒子発熱性組成物から構成され、湿熱を輸送するための水蒸気源として使用される熱セルは、高い水含有量であっても高反応性に留まることが可能な微粒子発熱性組成物を有するべきである。高い水含有量により、長期間にわたり高い水蒸気発生率が実現される。微粒子発熱性組成物は、可搬式湿熱輸送システムの水蒸気発生部分内に組み込まれると、高速水蒸気発生を実現する。水蒸気発生部分は、水蒸気/空気混合気中の水蒸気および空気の割合を調節することにより予め選択された温度に水蒸気の露点を調整する水蒸気/空気調節部分と連通状態にある。人的利用のためには、予め選択される露点温度は、ヒトの組織に危害を及ぼさない温度であると好ましい。
【0087】
本発明の発熱性組成物は、微粒子発熱性組成物である。本明細書において使用される際に、「微粒子」は、組成物内に含まれる分離粒子を指す。本明細書において定義される微粒子発熱性組成物は、分離粒子を含み、各粒子は、約25μmから約800μmまでの範囲のメジアン粒径を有する。粒径の範囲は、間細孔スペースを有する組成物を生じさせるものであることが好ましい。
【0088】
1つの例示的な実施形態においては、発熱性組成物は、湿らされた炭素鉄(carbon iron)と後に塩水溶液で処理されるAGMとの予混合物を調製することによって、用意される。1つの例示的な実施形態においては、組成物は、約10重量%から約90重量%までの鉄粉と、約1重量%から約25重量%までの、活性炭、不活性炭、およびそれらの混合物からなる群より選択される炭と、約1重量%から約25重量%までの、または代替的には約2重量%から約12重量%までの吸収性ゲル化材料と、約1重量%から約50重量%までの、代替的には約1重量%から約35重量%までの、または代替的には約15重量%から約35重量%までの水とを含む。本発明の例示的な単一の熱セルは、セル当たり約0.4gから約2.5gまでの予混合物と、セル当たり約0.4gから約1.5gまでの塩水溶液とを含むことが可能である。本発明の熱セルは、約0.8gから約10.0gまでの、代替的には約1.5gから約3.5gまでの、および代替的には約2.5gから約3.0gまでの、セル当たりの総セル重量を有することが可能である。湿熱輸送システムの1つの例示的な実施形態においては、システムを構築するために複数の熱セルが使用されてよい。
【0089】
上述のように、特に発熱性組成物の鉄およびAGMである微粒子成分の粒径の選択は、発熱性組成物内における粒子の分離または凝離を最小限に抑えるために重要である。粒径は、粒子移動度に直接的に影響し、微粒子成分は、それらの移動度において様々であり、粒子の分離または凝離を生じさせるおそれがある。本明細書において定義される発熱性組成物は、好ましくは、発熱性組成物が粒子の分離または凝離を阻止するような、規定のメジアン粒径範囲を有する微粒子成分を含む。しかし、本明細書において規定される範囲を上回るまたは下回るメジアン粒径範囲を有する微粒子成分が、本明細書において定義される発熱性組成物における使用に適することが予期される。
【0090】
本発明の熱セルは、粒径の選択により、粒子凝離効果を補償するための過剰なレベルの発熱性組成物の必要性が最小限に抑えられるため、殆どの従来の市販の熱セルに比較して小さい。上述のように、粒子凝離効果は、吸収性ゲル化材料と共に特定の比率で鉄粉を使用することによって、本発明の微粒子発熱性組成物において低減される。さらに、理論には縛られないが、かかる発熱性組成物の酸化反応速度は、発熱性組成物の多孔度によって制御されると考えられる。微粒子発熱性組成物を通る酸素のアクセス性は、粒子のパッキング挙動、すなわち間空部体積によって、および発熱性組成物中に存在する水の量によって影響される。粒子パッキング挙動は、粒子の相対的粒径および粒径分布によって、少なくとも部分的に決定される。
【0091】
1つの例示的な実施形態においては、熱セルは、好ましくは、フィルム層基板材料などの1つの実質的に空気不透過性および水分不透過性の表面と、ポリマー不織材料などの高空気透過性および水分透過性の1つの通気表面とである、少なくとも2つの対向する表面を備える一体化構造体に形成される。皮膚の方向に水蒸気を配向するために、熱セルの空気/水分透過性側は、湿熱輸送システムの潜熱輸送表面側の方向に配設される。一実施形態においては、空気/水分透過性表面は、湿熱輸送システムの熱セルと水蒸気/空気調節部分との間に配置され、水蒸気/空気調節部分は、熱セルと潜熱輸送表面との間に配置される。実質的に空気不透過性の表面は、外部表面であるか、または外部表面の近傍に配向されてよい。
【0092】
均一な加熱および水蒸気発生は、複数の熱セルを使用することにより実現され得る。複数の熱セルを使用することにより、個々の熱セルのサイズを縮小することが可能となる。本発明のシステムにおける熱セルおよびそれらの間隔が比較的小サイズであることにより、熱セルへの空気流をも可能にする。さらに、発生される水蒸気は、使用される熱セルの個数およびそれらの間隔によって制御され得る。非限定的な例としては、1つの例示的な実施形態においては、同一のサイズおよび組成物の(例えば、熱セルの個数および熱セル間の間隔を除いては全ての点で同一である)2つの可搬式熱輸送システムにおいて、24個の熱セルで作製されたシステムは、12個の熱セルで作製されたシステムの水蒸気発生率の2倍未満の水蒸気発生率を有し、さらに、4倍の長さにわたり継続した。理論には縛られないが、非線形的な水蒸気発生および期間の関係は、空気にアクセス可能なシステムの固定的表面積によるものと考えられる。したがって、反応速度、水蒸気発生率、および熱発生の期間は、使用される熱セルの個数と所与の面積内におけるそれらの間隔とによって制御され得る。
【0093】
通気表面
熱セルの通気表面(例えば「通気熱セル表面」)は、水蒸気発生部分内の微粒子発熱性組成物内に空気を供給し、微粒子発熱性組成物が熱セルから漏出するのを防ぐことと、水蒸気/空気調節部分の一部として水蒸気/空気混合層を形成することとの2つの機能を果たすことが可能である。通気表面は、1つの例示的な実施形態においては通気表面が皮膚の方向に配向されるため、特に皮膚に対して垂直の配向においてシステムが使用される場合に、水蒸気および空気の混合の調節に影響を与える。したがって、発生された水蒸気と混合される空気の量を調節して、水蒸気/空気混合気の露点温度を下げるのを補助するために、様々な通気皮膚対面表面を使用することが可能である。しかし、通気表面の高い空気透過性により、通気表面は、システムの反応速度に関して、とりわけ水蒸気発生率に関して、限定的な効果を有さない。
【0094】
通気熱セル表面は、約15gsm(グラム/平方メートル)から約90gsmまで、および代替的には約15gsmから約76gsmまで、基本重量において様々であることが可能な、SMMS(スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド)材料、SMS(スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド)材料、スパンボンド材料、メルトブローン材料、メッシュ、織成繊維、およびそれらの組合せから形成され得る。SMMS材料においては、この構造体内の「S」層は、強度および空気進入をもたらし、2つの「M」層は、はるかに細いデニールのフィラメントから作製され、比較的小さな炭粒子がセルから漏出するのを防ぐ役割を果たす。SMMS層について使用される適切な材料の非限定的な例には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、または当業者に知られている他の適切なポリマー材料が含まれる。
【0095】
通気熱セル表面は、約25cm/cm/秒を上回る空気透過性を有することが可能であり、約5,000g/m/24時間を上回る水蒸気透過率を有することが可能である。通気表面は、約0.05mmから約1mmまでの、代替的には約0.1mmから約0.8mmまでの、および代替的には約0.4mmの厚さを有することが可能である。
熱セルの対向表面
熱セルの対向する空気不透過性または空気半透過性/水分不透過性または水分半透過性表面は、フィルム、または不織繊維に貼り付けられてフィルム層基板を形成するフィルムから作製され得る。一般的には、適切なフィルムは、熱シール性を有するものであり、容易に熱により融合され得る。不織材料が使用される場合には、この不織材料は、フィルム層基板に支持および完全性をもたらす。適切なフィルムの非限定的な例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレン、鹸化エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、天然ゴム、再生ゴム、剛性ゴム、およびそれらの組合せが含まれる。フィルム層基板は、約1から約300μmの範囲の厚さを有し、空気不透過性から空気半透過性および水分不透過性から水分半透過性であることが可能である。不織繊維が使用される場合には、この不織繊維については、例えばナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、またはポリエステルなどの、軽量および高引張強度の好ましい特徴的な特性を有するものが適切である。
【0096】
好ましい不織材料の非限定的な例は、約15gsmから約100gsm(グラム/平方メートル)の基本重量のSMMSラミネート構造体である。かかる不織材料は、Riedelの「Nonwoven Bonding Methods and Materials」(Nonwoven World、1987年)において概略的に説明される。市販の不織シートの一例は、材料番号W502FWHであり、これは、米国ペンシルベニア州Haxle Township在のFQN(First Quality Nonwoven)社から市販されている。
【0097】
有用なフィルム層基板の非限定的な例には、約5μmから約100μmまでの厚さを有するポリ(エチレン−酢酸ビニル)または低密度ポリエチレン(LDPE)のフィルムに貼り付けられたポリプロピレン不織シートが含まれる。市販のポリプロピレン/エチレン酢酸ビニル(PP/EVA)フィルムの一例は、材料番号DH245であり、これは、米国オハイオ州CincinnatiのClopay Plastics社から市販されている。
【0098】
熱セルは、通気表面材料と不透過性/半透過性フィルムとの対向する表面をそれらの外縁部で共に接合し、それにより小袋、エンベロープ、またはポケットを形成することによって、形成され得る。さらに、ポケットは、真空、熱成形、機械エンボス加工、真空エンボス加工、または他の許容可能な手段によって、空気不透過性/空気半透過性および水分不透過性/水分半透過性基板中に作製され得る。ここでの利用に好ましいものは、熱成形であり、これは、「Thermoforming」(The Wiley Encyclopedia of Packaging Technology、668〜675頁、(1986年)、Marilyn Bakker編)に記載されている。
【0099】
微粒子発熱性組成物で充填される場合に、各熱セルは、充填体積、空部体積、およびセル体積を有する。本明細書において使用される際に、充填体積は、充填された熱セル内の微粒子組成物の体積を意味する。本明細書において使用される際に、空部体積は、熱セル内に差圧を伴わずに、および基板材料の追加的な伸張または変形を伴わずに測定される、完成熱セル内において微粒子組成物により充填されずに残されたセルの体積を意味する。本明細書において使用される際に、セル体積は、熱セルの充填体積と空部体積との和を意味する。セル体積に対する充填体積の比は、約0.7から約1.0までであり、代替的には約0.75から約1.0までであり、さらに代替的には約0.8から約1.0までであり、代替的には約0.85から約1.0までであり、および代替的には約0.9から約1.0までである。
【0100】
さらに、熱セルは、最大厚さの箇所で、熱セルの高さまたは厚さに関して測定され得る。1つの例示的な実施形態においては、最大厚さの箇所での熱セルの厚さは、約0.2cm(センチメートル)超から約1.0cmまでであり、好ましくは約0.3cm超から約0.9cmまでであり、代替的には約0.4cmから約0.8cmまでであり、代替的には約0.5cmから約0.7cmまでである。
【0101】
結果的に得られる熱セルは、例えば円盤、三角形、ピラミッド、円錐、球、正四方形、立方体、矩形、直方体、円筒、および楕円等の、任意の幾何学形状を有することが可能である。熱セルの形状は、約0.2cmから約5cmまでの、代替的には約0.5cm超から約1cmまでの高さと、約0.2cmから約20cmまでの、代替的には約5cmから約10cmまでの幅と、約1cmから約20cmまでの、代替的には約5cmから約10cmまでの長さとを有し、結果として約0.04cmから約30cmまでの、代替的には約1.25cmから約10cmまでのセル体積となる、基板に対して平行な長軸を有する、細長いジオメトリのものであることが可能である。
【0102】
代替的には、この形状は、約0.2cmから約5cmまでの、約1cmから約4cmまでの、代替的には約2cmから約3cmまでのセル直径と、約0.2cmから約1cmまでの、代替的には約0.3cmから約0.9cmまでの、代替的には約0.4cmから約0.8cmまでの、および代替的には約0.5cmから約0.7cmまでの高さとを有し、結果として約0.0045cmから約20cmまでの、代替的には約0.2cmから約1cmまでのセル体積となる、円盤形状ジオメトリであることが可能である。
【0103】
熱セルは、約0.03cmから約20cmまでの、代替的には約0.1cmから約20cmまでの、および代替的には約1cmから約20cmまでの、セル当たりの平面視表面積を有することが可能である。セル当たりのこの面積を有する熱セルは、身体形状との形状合致性が向上し、ターゲット区域に対するむらのない均一な熱を供給し、着用者の快適性が向上した可撓性デバイスに、容易に組み込まれる。
【0104】
熱セルは、セル当たり約0.4gから約2.5gまでの予混合物の、代替的にはセル当たり約1.0gから約2.4gまでの予混合物の、および代替的にはセル当たり約1.5gから約2.3gまでの予混合物の予混合物重量を有することが可能である。セル当たりのこの予混合物重量を有する熱セルは、身体形状との形状適合性が向上し、ターゲット区域に対するむらのない均一な熱を供給し、着用者の快適性が向上した可撓性デバイスおよびシステムに、やはり容易に組み込まれる。
【0105】
湿熱システムの1つの例示的な実施形態においては、複数の熱セルが使用される。全ての熱セルが、湿熱発生体もしくは湿熱発生体の構成要素であってよく、または代替的には、熱セルの一部分が、乾熱セルとの組合せにおいて使用される湿熱発生体もしくは湿熱発生体の構成要素であってよい。
【0106】
水蒸気源が熱セル内に組み込まれる1つまたは複数の湿熱輸送システムを備える1つの例示的な湿熱ラップにおいては、水蒸気源は、ラップの総平面積の約25%から約90%までの、代替的には約25%から約75%までの、および代替的には約25%から約60%までの平面積を備えてよい。
水蒸気/空気調節部分
本発明の湿熱輸送システムは、上述のような水蒸気発生部分を含む。好ましくは、水蒸気発生部分は、水蒸気/空気調節部分の方向に水蒸気を選択的に配向する。上述のように、1つの例示的な実施形態においては、これは、水蒸気発生デバイスの一方の側の上に透過性フィルムを用い、水蒸気発生デバイスの他方の側の上に不透過性フィルムを用いることにより達成され得る。水蒸気/空気調節部分は、露点温度の調整を可能にする。水蒸気発生部分は、水蒸気/空気調節部分と流体連通状態にあり、システムから出る水蒸気/空気混合気の露点温度を、ターゲットユーザに潜熱を輸送するための安全な温度にまで下げる。本明細書において説明される実施形態においては、流体連通は、フィルムなどの透過性材料または他の透過性材料により実現される。しかし、当業者には理解されるであろうが、例えばチャネルまたは孔などの、流体連通をもたらす他の構成が、流体連通を促進するために同様に適する場合がある。
【0107】
任意には、水蒸気/空気調節部分は、水蒸気発生部分により発生された水蒸気を潜熱輸送表面の方向に、および最終的にはユーザターゲットの方向に配向することができる。人間の治療用途および美容用途の場合においては、これは、ユーザの身体表面の方向を意味する。潜熱輸送表面は、皮膚に対して快適に保持されるか、または代替的には、この表面と皮膚との間に制御され予め選択された量のギャップを伴う状態で皮膚の非常に近くに保持されると好ましい。したがって、湿熱輸送システムは、皮膚に接着剤により接着されることによって定位置に保持され得るか、または代替的には、少なくとも部分的に身体表面形状に形状適合することによって定位置に保持される、例えばポケット、ラップ、もしくは成形デバイスなどのホルダ内に配置され得る。ホルダは、所望の身体部分に対して水蒸気発生部分および/または水蒸気/空気調節部分を定位置に保持することができる。1つの例示的な実施形態においては、水蒸気/空気調節部分または代替的には水蒸気/空気調節部分の一部分が、ホルダの構造体内に含まれる。ホルダは、使いきりの使い捨て式ホルダまたは再利用可能なホルダであってよい。ホルダは、接着剤、固定具、紐、インターロック部品、ボタン、スナップ、またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない、当技術において知られている任意の様々な手段によって定位置に保持されてよい。
【0108】
1つの例示的な実施形態においては、水蒸気/空気調節部分は、少なくとも1つの水蒸気/空気混合層と、少なくとも1つの水蒸気/空気分配層とを備えることが可能である。これらの層は、水蒸気および空気がこれらの層と水蒸気発生部分との中および間を通過することが可能となるように配置される。さらに、水蒸気/空気調節部分は、とりわけシステムを圧縮する態様においてシステムが使用される場合に、水蒸気発生部分内へのむらのない空気流を、および水蒸気発生部分から出るむらのない水蒸気流を促進することが可能である。圧縮の影響を最小限に抑えるためには、圧縮に対して抵抗力のある水蒸気混合層を使用することが望ましい。かかる材料の一例は、針穿孔された不織材料である。さらに、水蒸気/空気調節部分は、1つまたは複数の潜熱輸送表面を備えることが可能である。潜熱輸送表面は、水蒸気/空気調節部分の一部分の表面自体であってよく、または代替的には、材料層もしくは複数の材料層を備えてよい。
【0109】
水蒸気/空気混合層、水蒸気/空気分配層、および潜熱輸送表面を備える水蒸気/空気調節部分の空気透過性は、ASTM法第D737号を利用して測定された場合に、約25cm/cm/秒から約8000cm/cm/秒まで、代替的には約300cm/cm/秒から約8000cm/cm/秒まで、および代替的には約500cm/cm/秒から約7000cm/cm/秒までである。水蒸気/空気調節部分の水蒸気透過率は、ASTM法第E96号を利用して測定された場合に、約500g/m/24時間から約2,500g/m/24時間まで、代替的には約1,000g/m/24時間から約2,000g/m/24時間まで、および特には約1400g/m/24時間を上回る。1つの例示的な実施形態においては、水蒸気/空気調節部分は、1つまたは複数の水蒸気/空気混合層と、1つまたは複数の水蒸気/空気分配層とを備えてよい。
【0110】
1つの例示的な実施形態においては、とりわけ有用な構成は、単一の水蒸気/空気分配層と、単一の水蒸気/空気混合層とを用いるものである。この実施形態においては、湿熱システムは、湿熱ラップおよび/またはパック内に組み込まれる。湿熱システムの単一の水蒸気/空気分配層および単一の水蒸気/空気混合層の外縁部が湿熱ラップパックの外縁部内でシールされるように、湿熱ラップまたはパックの外縁部が熱シールされることが重要となる。1つの好ましい実施形態においては、水蒸気/空気分配層は、発泡材料から構成されてよく、この発泡体の基材は、空気および水蒸気に対して実質的に不透過性であるが、この発泡材料は、空気および/または水蒸気の通過を可能にするチャネルおよび/または孔を有する。外縁部で熱シールされた穿孔された発泡層を備える水蒸気/空気分配層は、空気が湿熱ラップの外縁部内に進入するのを抑制する。その結果、水蒸気分配層中の孔および/またはチャネルのサイズおよび個数が、水蒸気を発生させるための十分な空気の進入を可能にすると共に、さらに、排出される水蒸気がラップを出て皮膚の方向に容易に移動するのを可能にし、それにより反応速度ひいては発生される水蒸気量を調節することによって、システムを調節する役割を果たす。発生される水蒸気量を調節することによって、ラップの水蒸気調節部分は、単純化され得る。さらに、熱セルを使用する実施形態については、反応のための空気量の調節により、セルが過度の高温に達しないようにするための熱セルの加熱の制御も容易になる。1つの例示的な実施形態においては、良好な湿熱生成/伝達特性を可能にし、活性化および再利用可能熱ラップまたはホルダ内への設置を開始させる気密パッケージングからのパックの取出しのための手による再利用可能湿熱パックの安全な取り扱いを可能にするために、0.0794cm(1/32インチ)の発泡体からなる単一層のみが必要であった。取り扱いに便利な薄い湿熱パックが、半耐久性湿熱ラップまたは他の半耐久性湿熱デバイスにおける使用にとって望ましい。これは、この薄い湿熱パックにより、使い捨て式湿熱パックの安全な取り扱いおよびラップの一部分の好都合な再利用が可能となるためである。
【0111】
1つの例示的な実施形態においては、とりわけ有用な構成は、第1の水蒸気/空気混合層が水蒸気発生部分に隣接した状態において、互いに間に交互に配置される、2つの水蒸気/空気混合層と2つの水蒸気/空気分配層とを用いるものである。代替的には、水蒸気/空気分配層が、水蒸気発生部分に隣接して配置されてよい。任意には、上述のように、水蒸気/空気混合層が、水蒸気発生部分と一体的な関係において物理的に形成されてもよい。
【0112】
本発明のシステムは、水蒸気生成を最大化すると共に、人的利用のために選択された温度でユーザに潜熱および水分を輸送するために、約50℃から約70℃までの高温で発熱性水蒸気源が作動し得るように設計される。人的利用については、選択される温度は、典型的には、皮膚に危害を及ぼさない温度である。水蒸気および潜熱を放出するための水蒸気の凝縮が、湿熱システムにおけるエネルギー伝達にとって重要であるため、好ましい実施形態における湿熱システムについて予め選択される温度は、潜熱輸送表面の近位での水蒸気/空気混合気の露点温度である。人的利用のための例示的な実施形態においては、露点温度は、約45℃であってよく、または代替的には約43℃であってよく、または代替的には約40℃であってよく、ここで約は、±1℃または代替的には±2℃の温度変動を含む。したがって、このシステムは、ユーザを熱的損傷から保護し、熱エネルギーを保存し後に放出する理想的な水蒸気発生環境を維持する。
【0113】
驚くべきことには、いくつかの場合において、ヒトの組織に危害を及ぼすことなく約43℃を上回る露点温度が利用され得ることを、本発明者らは発見した。理論に縛られることを望むものではないが、ユーザの身体に輸送される十分な潜熱エネルギーが、循環を刺激し、熱エネルギーの消散を促進して、危害を回避させることによって、これは可能であると考えられる。代替的には、ラップの設計によって、接触時間が全ての水蒸気を凝縮させるためには不十分なものとなり、したがって皮膚へのエネルギー伝達が低下するように、水蒸気の皮膚との接触時間を変更することができる。
【0114】
1つの例示的な実施形態においては、水蒸気は、水蒸気および空気の混合気を、約0.085kg水蒸気/kg乾燥空気(約0.085lb水蒸気/lb乾燥空気)未満の水蒸気対乾燥空気比に調節することによって、皮膚接触に関して安全なものになされる。空気に対する水蒸気の比を調節することによって、水蒸気/空気混合気中の水蒸気は、露点温度で凝縮して、熱が、熱的負傷の危険を伴うことなくユーザの皮膚に最適におよび安全に伝達され得る。本明細書において使用される際に、「乾燥空気」は、無視できないほどの水含有量を伴わない空気を指す。
【0115】
本明細書における説明は、2対の水蒸気/空気混合層と、2対の水蒸気/空気分配層とを用いる1つの例示的な実施形態を含む。しかし、2つまたはそれ以上の水蒸気/空気混合層の中の1つまたは複数、あるいは2つまたはそれ以上の水蒸気/空気分配層の中の1つまたは複数、あるいはそれらのある組合せが、本発明の実施において用いられてもよいことが、当業者には理解されよう。複数の混合層および/または分配層を有する実施形態において適切な熱的環境および空気混合環境をもたらすために、各層の位置、厚さ、空気透過性、および水蒸気透過率、および/または材料のタイプを調整することが望ましい場合がある。
【0116】
1つの例示的な実施形態においては、乾燥空気に対する水蒸気の比は、複数の熱セルの列に対して平行に配設された1つまたは複数の長手方向ストリップを用いることによって、調節され得る。このストリップ(または複数のストリップ)は、水蒸気/空気調節部分の一部分として機能することができる。図2の簡略化された概略図を参照すると、1つの例示的な実施形態においては、温熱セル50が、ラップ52の本体の上に複数列に整列される。発泡ストリップ54が、熱セル50の各列を長手方向に重ねて、空気チャネル56を形成する。ストリップ54は、この湿熱システムにおいて、湿熱システム内の熱セル50と潜熱輸送表面との間に位置決めされることが好ましい。長手方向ストリップは、複数の熱セルの列に対して平行な空気スペースを生成する役割を果たすことが可能である。空気スペースは、水蒸気発生部分内にむらのない空気流を供給するのを補助し、水蒸気/空気の混合を補助することが可能である。長手方向ストリップの高さは、乾燥空気に対する水蒸気の比が、0.085kg水/kg乾燥空気未満(0.085lb水/lb乾燥空気未満)に、および代替的には約0.060kg水/乾燥空気未満(約0.060lb水/乾燥空気未満)になるように、調整することが可能である。理論に縛られることを望むものではないが、複数の熱セルを覆うストリップにより、ストリップによって覆われる複数の熱セルは、共働的に作用し得るおよび/または影響され得ると考えられる。全ての熱セルが複数列にグループ化されおよび/または整列され、ストリップにより覆われる必要はない。いくつかの実施形態においては、熱セルの一列もしくは1グループのみが、または複数列もしくは複数グループの一部分が、ストリップにより覆われてよい。
水蒸気/空気混合層
1つの例示的な実施形態においては、少なくとも1つの水蒸気/空気混合層は、約18gsmから約430gsm(グラム/平方メートル)の間の、および代替的には約50gsmから約150gsmまでの間の通気構造体を備えることが可能である。この少なくとも1つの水蒸気/空気混合層は、約1mmから約19mmまでの、代替的には約0.1mmから4mmまでの、代替的には約0.1mmから約5mmまでの、および代替的には約1mmから約4mmまでの、ASTM法第D5729号にしたがってカリパス測定された厚さを有することが可能である。
【0117】
水蒸気/空気混合層に適した材料の非限定的な例には、織成材料、不織材料(ウェットレイド不織材料、エアレイド不織材料、点接着不織材料、ニードルパンチ不織材料、および熱接着不織材料を含む)、繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、木材パルプ、レーヨン、繊維性植物ベース材料(セルロース、ウール、シルク、ジュート、麻、綿、亜麻、サイザル、カラムシを含む)、およびそれらの組合せが含まれる。
【0118】
この少なくとも1つの水蒸気/空気混合層は、ASTM法第D737号により測定された場合の約400cm/cm/秒から約17,000cm/cm/秒までの、および代替的には約1,000cm/cm/秒から約1,500cm/cm/秒までの空気透過性と、ASTM法第E96号により測定された場合の約5,000g/m/24時間から約7,000g/m/24時間までの、および代替的には約5,500g/m/24時間から約6,500g/m/24時間までの水蒸気透過率とを有する。
【0119】
水蒸気/空気分配層
1つの例示的な実施形態においては、この少なくとも1つの水蒸気/空気分配層は、約0.1mmから約13mmまでの、代替的には約0.5mmから約6mmまでの、および代替的には約1mmから約2mmまでの、ASTM法第D5729号にしたがってカリパス測定された厚さを有する断熱材料層を備えることが可能である。この少なくとも1つの水蒸気/空気分配層は、ASTM法第D3776号によって測定された場合の、約5gsmから約430gsmまでの、代替的には約5gsmから約50gsmまでの、および代替的には約5gsmから約25gsmまでの基本重量を有することが可能である。水蒸気/空気分配層の材料は、実質的に空気および水分透過性であり、圧縮に対する抵抗力を有し得る。
【0120】
水蒸気/空気分配層に適した材料の非限定的な例には、ポリエチレンベース発泡体、ポリプロピレンベース発泡体、ポリエステルベース発泡体、ポリスチレンベース発泡体、ポリウレタンベース発泡体、発泡プラスチックシート、プラスチックフィルム、フォイル、紙フォイルラミネート、紙、不織布、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せが含まれる。
【0121】
空気/水分布透過性材料は、ASTM法第D737号を利用して測定された、約0.025cm/cm/秒の空気透過性と、ASTM法第E96号を利用して測定された、約200g/m/24時間未満の水蒸気透過率とを有することが可能である。さらに、この材料は、約0.5W/m・Kから約285W/m・K(K度ケルビン)までの熱伝導率と、約5kg/mから約150kg/mまでの密度とを有する。この材料の熱伝導率は、以下のソース、すなわち「For Computer Heat−Conduction Properties Data」(A.L.Edwards、UCRL−505 Copyright K&K Associates 1997)から求めることが可能である。
【0122】
いくつかの実施形態においては、水蒸気/空気分配層を形成し、空気および水蒸気がユーザの方に通過することが可能となるように、ならびに、特に水蒸気発生のための仕組みとして発熱酸化反応が用いられる場合には、水蒸気発生部分に空気が進入し到達することが可能となるように、空気/水分布透過性材料を選択的に穿孔することが望ましい場合がある。代替的には、空気および空気/水蒸気混合気の通過を可能にするために、孔および/またはチャネルが用いられてもよい。
【0123】
水蒸気/空気分配層について使用される材料は、空気および水蒸気に対して実質的に不透過性であってよいが、これらの材料は、蒸気/空気分配層の全体的な空気透過性が、ASTM法第D737号により測定された場合に約500cm/cm/秒から約2500cm/cm/秒までになるように、代替的には約1000cm/cm/秒から約2500cm/cm/秒までになるように、および代替的には約1500cm/cm/秒から約2300cm/cm/秒までになるように、組み合わされる、構築される、または構成されるべきである。蒸気/空気分配層の水蒸気透過率は、ASTM法第E96号により測定された場合に約6,000g/m/24時間から約9,000g/m/24時間まで、代替的には約7,000g/m/24時間から約8,500g/m/24時間まで、代替的には約7,500g/m/24時間から約8,500g/m/24時間まで、および好ましくは約8,100g/m/24時間である。
長手方向ストリップ
一実施形態について上述したように、水蒸気/空気調節部分は、長手方向ストリップをさらに備える。長手方向ストリップは、反応のためにシステムに追加空気を供給するために、および追加の水蒸気/空気混合を行なうために使用され得る。長手方向ストリップは、任意の可撓性および非圧縮性材料を含むことが可能である。長手方向ストリップの高さは、約0.085kg水/kg乾燥空気未満(約0.085lb水/lb乾燥空気未満)の、および代替的には約0.060kg水蒸気/kg乾燥空気未満(約0.060lb水蒸気/lb乾燥空気未満)の所望の水蒸気対空気比を達成するために調整することが可能である。長手方向ストリップにおいて使用するのに適した材料の非限定的な例には、ポリエチレンベース発泡体、ポリプロピレンベース発泡体、ポリスチレンベース発泡体、ポリウレタンベース発泡体、発泡プラスチックシート、プラスチックフィルム、フォイル、紙フォイルラミネート、不織布、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せが含まれる。長手方向ストリップは、システムが使いきりの使い捨て式システムであるか、再利用可能システムであるかにかかわらず、システムの潜熱輸送表面の近位に配設することが可能である。任意には、システムの一部分が使い捨て式である再利用可能システムに関しては、長手方向ストリップは、使い捨て式部分または再利用可能部分のいずれかの一部分であることが可能である。
【0124】
潜熱輸送表面
潜熱輸送表面は、水蒸気/空気調節部分と連通状態にあり、システムの使用時にはターゲットのユーザ表面に当接するか、または隣接する。潜熱輸送表面は、ユーザ表面(例えば人的利用の場合には皮膚)に接触してよく、または代替的には、潜熱輸送表面とユーザ表面との間に予め定められたギャップを有した状態で位置決めされてよい。潜熱輸送表面は、水蒸気/空気調節部分の一部分の上の表面であってよく、または代替的には、別個の層であってよい。1つの例示的な実施形態においては、潜熱輸送表面は、例えば、約20gsmから約100gsmまでの、代替的には約40gsmから約90gsmまでの、および特には約80gsmから約82gsmまでの基本重量を有する材料層であってよい。1つの例示的な実施形態においては、潜熱輸送表面は、例えば、約0.05mmから約12mmまでの、および代替的には約0.1mmから約5.0mmまでの、および代替的には約0.2mmから約2mmまでのカリパス測定された厚さを有してよい。潜熱表面は、ASTM法第D737号を利用して測定された、約200cm/cm/秒から約500cm/cm/秒までの、代替的には約300cm/cm/秒から約400cm/cm/秒までの、および特には約314cm/cm/秒の空気透過性を有することが可能である。潜熱表面は、ASTM法第E96号に利用して測定された、約5,000g/m/24時間を上回る水蒸気透過率を有することが可能である。
【0125】
潜熱輸送表面に適した材料の非限定的な例には、ナイロン、レーヨン、セルロースエステル、ポリビニル誘導体、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、セルロース、ウール、シルク、ジュート、麻、綿、亜麻、サイザル、カラムシ、およびそれらの組合せが含まれる。
システムの外部表面層
潜熱輸送表面側の対向側のシステムの外部表面層(すなわち人的利用のための1つの例示的な実施形態においては、水蒸気発生部分の外側または皮膚から最も遠い表面)が、システムの非皮膚対面側が過度に高温になるのを防ぎ、さらにシステムの皮膚対面側の方向へ下方に熱を配向する、断熱層を備えることが好ましい。断熱層は、熱セル、または水蒸気発生部分を形成する他の水蒸気源の対向側に隣接して配置することが可能である。
【0126】
断熱層に適した材料の非限定的な例には、ポリエチレンベース発泡体、ポリプロピレンベース発泡体、ポリスチレンベース発泡体、ポリエステルベース発泡体、ポリウレタンベース発泡体、発泡プラスチックシート、プラスチックフィルム、フォイル、紙フォイルラミネート、不織布、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せが含まれる。
【0127】
かかる断熱層は、約0.1mmから約3mmまでの、代替的には約0.5mmから約2.5mmまでの、代替的には約1mmから約2mmまでの、および代替的には約1mmの、ASTM法第D5729号にしたがってカリパス測定された厚さを有することが可能である。
【0128】
かかる断熱層は、ASTM法第D737号を利用して測定された、約0.025cm/cm/秒未満の空気透過性と、ASTM法第E96号を利用して測定された、約250g/m/24時間未満の水蒸気透過率とを有する。さらに、断熱層は、約0.5W/m・Kから約285W/m・K(K度ケルビン)までの熱伝導率と、約5kg/mから約150kg/mまでの密度とを有する。この材料の熱伝導率は、以下のソース、すなわち「For Computer Heat−Conduction Properties Data」(A.L.Edwards、UCRL−505 Copyright K&K Associates 1997)から求めることが可能である。
【0129】
任意の1つまたは複数の最外材料層を、断熱層に隣接して追加することが可能である。かかる最外材料の非限定的な例には、皮膚接触層について上述されたものが含まれる。さらに、断熱層および最外材料は、予結合ラミネートとして形成することが可能である。任意には、この最外材料層は、カバーとしての役割を果たしてよく、および/または使用時にデバイスを定位置に保持するための構造体の一部であってよい。
【0130】
熱発生部分および/または水蒸気/空気調節部分および/または潜熱輸送表面の様々な層は、当業者に知られている無数の方法で共に結合することが可能である。適切な接着方法の非限定的な例には、層の外縁部での熱シーリング、各層間における高温溶解膠剤または接着剤、スプレー式接着剤、超音波接合/溶接、圧力接合、圧着(crimping)、およびそれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態においては、層のいくつかのみを選択的に接合することが望ましい場合がある。
【0131】
成形可能部分
任意には、本発明のシステムは、成形可能部分をさらに備えることが可能であり、および/または成形構造体内に配置され得る。成形可能部分は、顔および/または頭など良好なフィットが困難になり得る身体部分上においてシステムを使用するために、追加的な可撓性および安定性をもたらすことが可能である。
【0132】
成形可能部分を形成することが可能な材料の非限定的な例には、金属フォイル、金属ワイヤフレーム構造体、可撓性プラスチック構造体、可撓性ラミネート構造体、およびそれらの組合せが含まれる。かかる成形可能部分は、システムの構造体内に組み込むことが可能であり、または外方表面に着脱可能にもしくは着脱不能に装着された外部構造体であることが可能である。
【0133】
熱ラップ
湿熱システムを備えるラップ、パック、またはパッチは、独立型のものであってよく、または代替的にはホルダ内に配置されてよい。独立型実施形態は、例えば接着剤によって、または、ラッピング、紐掛け、もしくは固定具により固定され得るラップを形成する材料延在部によってなど、ユーザに直接的に装着され得る。さらに、デバイスは、使いきりデバイスであってよく、または再利用可能もしくは部分的に再利用可能であってよいことを理解されたい。再利用可能デバイスについては、例えば熱表面などの交換可能部品が、好都合に取り外し可能であり、使用のために定位置に固定可能であるべきである。
【0134】
ホルダに適した材料には、潜熱輸送表面および/または外部表面層について使用するのに適するものとして列挙された材料が含まれるが、それらに限定されない。
【0135】
製造方法
発熱性組成物熱セル
本発明の微粒子発熱性組成物は、湿式治療熱の利点をもたらす発熱性組成物を提供するのに適した、任意の既知のまたは他の有効な技術によって、用意することが可能である。本発明の微粒子発熱性組成物は、好ましくは、本明細書において説明される混合技術などの従来的な混合技術を利用して用意される。本発明の微粒子発熱性組成物の成分を混合する方法は、1987年3月17日に発行されたYasukiらに対する米国特許第4,649,895号においてより完全に説明される。
【0136】
好ましい一実施形態においては、微粒子発熱性組成物の成分を混合する1つの特定の技術は、ブレンダまたはミキサに炭を加え、その後に全水の少量を加え、次いで炭/水混合物を混合することを伴う。通常は、混合を補助し、時期尚早の発熱反応を回避するために十分な水が加えられる。混合が止められ、吸収性ゲル化材料が炭/水混合物に追加される。全ての成分が完全に混合されるまで混合が再び始められ、次いで鉄粉が追加され混合される。次いで、組成物は、完全に混合されて微粒子予混合物が形成されるまで混合される。塩化ナトリウム、任意にはチオ硫酸ナトリウムなどの水素ガス抑制剤、および残りの水が、個別に混合されて塩水溶液を形成し、次いでこの塩水溶液が、鉄粉予混合物に加えられて、本発明の熱セルの構築に有用な微粒子発熱性組成物が形成される。
【0137】
1つの例示的な実施形態においては、2つの対向する表面を有する熱セルが、ポリプロピレン/ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)共有押出形成フィルム層基板シート中のポケットなどの、フィルム層基板シート中のポケットに定量の微粒子予混合組成物を追加することによって用意され得る。このプロセスにおいては、水または塩水が、予混合組成物の頂部上に迅速に加えられ、ポリプロピレンSMMS不織基板から形成される構造体などの通気構造体が、予め形成されたポケット含有シートのEVAフィルム側に対向し対面する表面としてセルを覆って配置される。フィルム層および不織層は、低熱を用いて共に接合されて、一体構造を形成する。結果的に得られる熱セルは、フィルム層と通気構造体との間のポケット内にシールされた微粒子発熱性組成物を含む。
【0138】
本明細書において説明される方法により用意される熱セルは、熱セルが本明細書において規定される鉄粉に対する吸収性ゲル化材料の選択メジアン粒径比を有する発熱性組成物を備える場合には、初めにおよび所望の熱治療全体にわたって、高い水蒸気発生を実現することにおいて特に有効であることが判明している。
【0139】
代替的には、個々の熱セルは、ポケットを形成するために真空を利用することによって用意され得る。すなわち、真空は、微粒子予混合組成物が型を直接覆うフィルム層基板表面の頂部上に配置される際に、型内にフィルム層基板表面を引き込むために使用される。微粒子予混合組成物は、型の底部内のフィルムにかけられる真空によって定位置に保持される真空形成ポケット内に落下する。次に、塩水溶液が、予混合組成物の頂部上に迅速に加えられる。次いで、SMMSポリプロピレン不織基板表面などの通気構造体が、第1のフィルム層基板表面を覆って配置されて、第1のフィルム層基板表面に対向する表面を形成し、微粒子発熱性組成物は、2つの対向する表面間に含まれることとなる。次いで、微粒子発熱性組成物は、第1および第2の対向する表面の間にシールされる。熱セルが形成されシールされると、真空が解かれる。この特定の構造および複数の熱セルを作成する方法は、デバイスの皮膚対面側の方向に発生された水蒸気を配向するように維持するための別個の水分不透過性フィルムを有する必要性を省くため、湿熱ラップに関して特に有利である。
【0140】
結果的に得られる熱セルは、個別に、または複数の熱セルとして使用することが可能である。複数のセルは、典型的には治療的熱治療にとって望ましい。単一の熱セルの使用は、例えば薬剤送達用途に関して有用である場合がある。熱セルは、使い捨て式および/または再利用可能身体ラップ、多目的ラップ、包帯、およびブランケット等々の様々な可搬式デバイス内に組み込むことが可能である。例えば腰ラップ、膝ラップ、首ラップ、月経ラップ、関節ラップ、手/手首ラップ、首腕間ラップ、顔ラップ、足ラップ、身体ラップ、ブランケット、包帯、パッチ、パック、多目的ラップ、およびそれらの組合せなどの、湿熱輸送システムを含むことが可能ないくつかの身体ラップは、身体の様々な部分の周囲に/に対して定位置にラップを保持するための手段を有することが可能である。保持手段には、接着剤、および/または、再閉鎖可能な2パートマジックテープ固定システム、紐、および固定具等々の固定システムが含まれ得るが、それらに限定されない。
【0141】
代替的には、例えば複数の熱セルから形成される水蒸気発生部分は、使い捨て式であることが可能であり、デバイスの一部分が使い捨て式であり一部分が再利用可能であるような、再利用可能デバイスに装着可能なものであることが可能である。非限定的な例としては、水蒸気発生部分は、使い捨て式であることが可能であり、水蒸気/空気調節部分は、再利用可能なものであることが可能である。
【0142】
結果的に得られた熱セルは、前述の米国特許第4,649,895号に記載されているように、所望の時まで酸化反応が生じるのを防ぐために、二次空気不透過性パッケージ内に塩水溶液を加えた後の1から5分以内にパッケージングされる。熱セルは、窒素ブランケットなどの当業者に知られている手段を利用して無酸素環境内に保持される場合には、後にパッケージングされてもよい。
【0143】
様々な効果および性能の要望に応じて、追加層を追加することが可能であり、または、デバイスの皮膚対面側、その対向側、もしくはそれらの両側に関して層を変性することが可能である。例としては、不織皮膚対面層が軟性を与えるためにテクスチャ化され得ること、または層が香気もしくは活性物を注入され得ることが含まれるが、それらに限定されない。
【0144】
非限定的な例としては、以下において説明されるように、1つまたは複数の断熱層が、皮膚対面側またはその対向側のいずれかに追加されてよい。代替的には、または追加的には、様々な他の層が、以下において説明されるように、デバイスの皮膚対面側に追加されてよい。最終構造体は、外縁シールで全ての層にわたって外縁部にてシールされてよく、または、各層が、シーリングシステムを利用して隣接層にシールされてよい。このシーリングシステムの非限定的な例には、スプレー式接着剤、超音波接合、ポリマー溶接システム、各層間における高温溶解膠剤または接着剤、圧力接合、圧着、およびそれらの組合せが含まる。
【0145】
1つの例示的な実施形態においては、熱セルは、異なる加熱出力を有してよい。例えば、高湿熱/短時間熱セルと、低湿熱/長時間熱セルとの組合せが可能である。熱セルの加熱期間を制御し得る様式の例には、セル内に含まれる発熱性微粒子組成物材料の量、および/または水蒸気を形成するために利用可能な水分の量が含まれるが、それらに限定されない。別の例示的な変形例は、単一のデバイスにおいて、1つまたは複数の湿熱輸送システム熱セルを、1つまたは複数の従来式の伝導熱セルと組み合わせて使用することである。
【0146】
本発明のシステムは、任意に、皮膚を介して輸送されることとなる治療成分を含むことが可能であり、この任意の治療成分には、芳香族化合物、不活性芳香族化合物、美容活性物、薬学的活性物、加湿活性物、健康活性物、栄養補給剤、アロマセラピー薬、他の治療薬、およびそれらの組合せが含まれる。
【0147】
かかる活性物の量は、特定の活性物に応じて様々であることが可能である。本発明の実施形態により実現される量は、乾熱機構によるものなどの乾燥環境における皮膚を介した投与に必要な量よりも概して少ない。
【0148】
任意の治療成分は、別個の基板層としての水蒸気発生部分中に組み込まれてよく、熱セルを形成する少なくとも1つの基板層中に組み込まれてよく、熱セル中に含まれる化学作用物質中に組み込まれてよく、別個の活性物収容セル内に組み込まれてよく、または、水蒸気発生部分および水蒸気/空気調節部分と共に使用されることとなる別個の不連続デバイス内に組み込まれてよい。さらに、熱セルは、別個の基板層を備えることが可能であり、または、対向する表面の少なくとも1つ、接着剤付き構成要素、および/または汗吸収構成要素内に組み込まれてもよい。
【0149】
本発明は、揮発性物質、水溶性物質、周囲温度にて限定的な水溶性を有する物質、およびそれらの組合せを含むがそれらに限定されない、多様なタイプの活性物質に適用し得る。さらに、いくつかの場合においては、例えば適切な溶媒または可溶化剤と組み合わせてシステムに提供される場合などには、水不溶性物質がこのシステムにおいて使用され得る。
【0150】
活性芳香族化合物の非限定的な例には、アロマセラピー薬、メントール、ショウノウ、ユーカリ、およびそれらの組合せが含まれる。不活性芳香族化合物の非限定的な例には、ベンズアルデヒド、シトラール、デカナール、アルデヒド、およびそれらの組合せが含まれる。美容活性物の非限定的な例には、水分強化活性物、しわ取り活性物、皮膚色強化活性物、皮膚白色化活性物、皮膚暗色化活性物、およびそれらの組合せが含まれる。薬学的活性物/治療薬の非限定的な例には、抗生物質、ビタミン、栄養補給剤、ハーブ剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗炎症剤、止痒剤、解熱剤、麻酔剤、充血除去剤、粘液溶解剤、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛活性物、抗真菌剤、抗菌剤、およびそれらの組合せが含まれる。とりわけ、鎮痛活性物の非限定的な例には、アスピリン、サルサレート、ジフルニサール、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロエナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロキシン、セレコキシブ、およびそれらの組合せが含まれる。
【0151】
本発明は、多数の用途を有し、その非限定的な例には、一定の安全な効率的な持続的な湿熱の輸送、鎮痛、深部筋肉加熱、血流の上昇、心仕事量の低下、創傷治癒、身体加温、活性物輸送、水分輸送、呼吸緩和、皮膚水和、睡眠の向上、物理療法、およびそれらの組合せが含まれる。システムの形状、サイズ、および形態は、特定の選択される用途、すなわち身体ラップ、顔ラップ、多目的ラップ、包帯、およびブランケット等々を容易にするために、様々であってよい。
【0152】
人的利用については、このシステムは、大量の潜熱を安全かつ効率的に輸送すると共に、約36℃から約50℃までの、代替的には約36℃から約45℃までの、代替的には約36℃から約42℃までの、代替的には約36℃から約43℃までの、代替的には約38℃から約42℃までの、および代替的には約38℃から約40℃までの皮膚表面温度を維持する。さらに、このシステムは、加熱開始の約5分以内に約36℃の皮膚表面温度を実現する。さらに、一実施形態においては、このシステムは、熱電対により測定された場合に、少なくとも約60分間にわたり少なくとも38℃の皮膚表面温度を実現する。
【0153】
一実施形態においては、システムは、皮膚表面に輸送される水蒸気/空気混合気の露点温度を調整することによって安全な熱を輸送することが可能である。露点は、空気に対する水蒸気の割合すなわち混合比を調整することによって調整される。1つの例示的な実施形態においては、水蒸気/空気混合気は、0.065kg水蒸気/kg乾燥空気未満(0.065lb水蒸気/lb乾燥空気未満)、および代替的には約0.060kg水蒸気/kg乾燥空気未満(約0.060lb水蒸気/lb乾燥空気未満)の空気に対する水蒸気の混合比を有し、これは、約40℃から約50℃までの露点温度に相当する。
【0154】
身体上での使用時のシステムの水蒸気/空気混合気の温度が、約32℃から約35℃までである平常皮膚温度を数度だけ上回り、水蒸気/空気混合気の露点温度が、皮膚に達した際にほぼ平常皮膚温度となるため、熱は、水蒸気/空気混合気からの水の凝縮潜熱を介して皮膚に安全に伝達され得る。したがって、システムは、皮膚に大量の熱を安全に輸送することが可能であり、熱の約15%から約95%まで、代替的には約20%から約80%まで、および代替的には約40%から約75%までが、潜熱として輸送される。一実施形態においては、湿熱システムは、少なくとも10分間にわたり、代替的には少なくとも30分間にわたり、または代替的には少なくとも約1時間にわたり、代替的には少なくとも約3時間にわたり、または代替的には少なくとも約5時間にわたり、凝縮潜熱として熱の約15%から約95%までを輸送する。
【0155】
熱の輸送に加えて、湿熱システムは、水蒸気が水に凝縮し、組織に凝縮潜熱を輸送する際に、組織に加湿をもたらすこともできる。
皮膚表面温度は、以下の方法によって測定され得る。温度測定は、熱電対を使用して行なわれてよい。温度測定は、皮膚と潜熱輸送表面との間に熱電対を配置することによって行なわれてよい。1つの例示的な実施形態においては、温度測定は、Kタイプ熱電対(Omega、part#5SRTC−TT−K−40−72)を用いて行なわれ、温度データ自記計(Omega、HH84)によって記録される。ユーザの皮膚の表面の温度を測定するためには、ユーザは、室温および室内条件に対して皮膚を標準化するために、約20分間にわたり約22℃の室内に座る。この間に、テープが熱電対の感知区域を覆って配置されないように注意を払いつつ、熱電対が、皮膚表面の上に配置されテープ留めされる。平衡時間が満了すると、温度を測定し、所望の期間にわたり記録することが可能となる。
【0156】
いくつかの実施形態において試験結果の標準化を容易にすることは、測定されることとなる湿熱システムを構築し、不透過性コンテナ内にシステムをシールし、試験前に平衡状態にするために24時間にわたりこれを取り置くために望ましいことである。システムが試験される際には、システムは、熱セルを作動させるために不透過性コンテナ/保護パッケージングから取り出され、身体部分と測定デバイスとの間にて身体に接触した状態で、例えば熱電対および/または熱流束センサなどの温度測定デバイスと共に、典型的には前腕または腰であるユーザの身体部分の上に配置される。1度の測定が行なわれてよく、または代替的には、経時的に一連の測定が行なわれてよい。典型的には、皮膚温度は、参照のために、試験されることとなるシステムの適用前におよび/またはシステムの適用後に測定されてよい。これは、皮膚の上に測定デバイスを配置することによって達成され得る。
【0157】
好ましくは、全ての測定は、周囲環境条件で、すなわち測定が行なわれる実験室または区域内において約21℃から約23℃の温度範囲および約38%から約42%の相対湿度範囲で行なわれる。
【0158】
好ましくは、露点温度は、特定の関心の露点温度が身体と湿熱ラップとの間の水蒸気量に関係するため、湿熱システムが作動されユーザ上の定位置に位置するときに測定される。身体と湿熱ラップとの間の水蒸気量は、ラップにより発生される水蒸気量から、凝縮した水蒸気量とラップから流出する水蒸気量とを引いたものによって決まる。
【0159】
露点温度は、Stainless Steel HM47453SPフィルタを有するVaisala HUMICAP(登録商標)HMT337露点トランスミッタ(Vaisala社)によって測定され得る。このユニットは、Vaisala社によって製造され、その米国事務所(郵便番号01801、米国マサチューセッツ州Woburn、Gill St、10D在、電話1−888−824−7252)から求められる。この計器は、高湿度環境におけるプローブ上での凝縮を防ぐ加熱式湿度プローブを有する。露点温度を記録するために、湿熱ラップが、作動されて、熱および水蒸気の生成を開始し、ユーザの表面上に配置される。ヒトであるユーザについては、腰または前腕の皮膚が好都合であるが、デバイスを使用し得る任意の表面で測定され得る。測定の開始前にシステムが「安定化する」ように1〜5分与えることが好ましい。測定を行なうために、湿度プローブは、湿熱パックとユーザ表面との間に挿入され、安定化される。露点温度は、測定デバイスのトランスミッタ上に表示される。露点温度測定は、プローブが約90秒間にわたり安定した後になされる。プローブは、非常に局所化された環境を測定し、したがって、ラップと表面との間の様々な位置で複数の測定を行なうことが望ましい場合がある。
【0160】
本明細書において説明されるような本発明のシステムは、安全な皮膚温度で、約75W/mから約500W/mまでの、代替的には約100W/mから約200W/mまでの、代替的には約200W/mから約500W/mまでの、および代替的には約300W/mから約500W/mまでの熱流束を生成し輸送することが可能である。
【0161】
任意には、発生されるおよび/または伝達される熱は、赤外線撮像を利用してモニタリングおよび/または測定され得る。像解析用のFLIR ExaminIR SoftwareおよびMX350 24’’Tabletop Tripodまたは同様のものを備える、FLIR System社により製造されたFLIR System SC660 Infrared Camera。
【0162】
湿熱システムは、熱を発生し、皮膚の表面に熱を輸送するが、皮膚の表面に輸送される熱の約15%から約95%まで、代替的には約20%から約80%まで、および代替的には約40%から約75%までが、水蒸気/空気混合気の凝縮時に潜熱として輸送される。理論に縛られることを望むものではないが、ユーザに伝達される熱の残りは、伝導により伝達される熱であると考えられる。熱伝達の大部分は、水蒸気/空気混合による露点温度の制御を介した身体上/中での凝縮によるものであるため、本発明のシステムは、約43℃以下の一定の皮膚温度を維持しつつ、従来の乾燥加熱ラップの2倍から5倍までのピーク加熱レベルを身体に輸送することが可能であり、したがってユーザは安全な使用を体験することが可能となる。
【0163】
このシステムは、反応の際に様々な速度で熱を生成する。初めは、システムは、約2.0mg/分/cmの非常に高速の水蒸気発生速度で水蒸気を生じさせる。この期間において、皮膚への熱伝達の速度は、非常に速く、これは、初めの約30分間のシステム利用の間にわたってこの量の水蒸気の凝縮潜熱によって皮膚への熱流束における大きな上昇が生じ、それにより非常に高速で深部筋肉および皮膚の温度が上昇されるためである。熱が凝縮潜熱によって輸送されるということは、安定的な皮膚温度が、システムの適用の約10〜60分以内にもたらされ、水蒸気と皮膚表面の凝縮水蒸気との間の平衡露点温度で安定することによって説明される。一定温度で皮膚に高熱流束が継続的に加えられることは、潜熱が、皮膚に危害または損傷を引き起こす温度未満の一定の選択された温度を維持しつつ、深部筋肉組織への熱伝達の少なくとも約15%から最大で約95%までに関わっていることを説明する。人的利用に関する1つの例示的な実施形態においては、約43℃未満の、代替的には約41℃未満の、または代替的には約39℃未満の温度。
【0164】
さらに、皮膚の水分含有量の上昇により、皮膚の熱伝導率が向上し、皮膚を通りさらに深く下の組織内への熱伝導率が向上する。初期水蒸気発生速度が、深部組織および皮膚の温度を治療レベルにまで上昇させると、水蒸気発生部分は、水蒸気発生速度が約0.05mg/分/cmから約1.0mg/分/cmまでの間のより低いレベルにまで下げられるように設計される。このより低く保たれた速度で、システムは、システムの使用期間の間の初めの10〜30分のシステム使用以内に達成される所望の治療温度に皮膚および深部組織の温度を維持するのに十分な潜熱を生じさせる水蒸気を生成し続ける。
【0165】
例えば、損傷を与える温度に皮膚をさらすことなく、すなわち約43℃未満の皮膚温度を維持しつつ、システムの加熱開始の10〜30分以内に身体組織質量の温度を治療温度にまで上昇させるのに十分な熱を供給することが可能であることなど、潜熱は、大量の熱流束によりユーザに対してシステムの熱利益をもたらすことが可能である。これは、伝導性熱伝達に依存する従来の乾熱ラップが、1時間未満で38℃の深部筋肉温度を達成するために約50℃にまで皮膚温度を上昇させることを要するのとは対照的である。
【0166】
1つの例示的な実施形態においては、本発明の湿熱輸送システムのエネルギー出力は、典型的には約50W/mから約100W/mまでの熱流束を輸送する従来の乾燥ラップと比較して、約75W/mから約500W/mまでの、代替的には約100W/mから約300W/mまでの、代替的には約150W/mから約250W/mまでの熱流束である。これは、安全な適用温度での同一の期間にわたり身体に輸送される熱においては約3倍の差である。
【0167】
熱流束は、PU_22(Huksaflux、HuksefluxUSA,Inc.社、郵便番号11949、米国ニューヨーク州Manorville、P.O.Box 850)熱流束センサによって測定することが可能である。熱流束センサからの信号は、OM−DAQPRO−5300自記計(Omega Engineering Inc.社、住所: 米国コネチカット州Stamford、Box 4047、One Omega DR.、電話(203)359−1660)により読み取られる。このユニットは、熱流束センサから受領したミリボルト信号をW/mに変換するようにプログラムされる。自記計からコンピュータにデータを転送するためにUSBインターフェースが使用される。1つの例示的な測定においては、データは、10秒間隔で1時間にわたり記録される。測定の実施において、熱流束センサ(または複数の熱流束センサ)が初めに自記計に接続され、ソフトウェアにおいてデータ記録が開始される。試験されることとなる湿熱システムが、そのシールされた保管小袋またはコンテナから取り出され、空気との接触によって作動される。湿熱システムは、水蒸気を放出している側が熱流束センサの頂部に面する状態で配置される。加熱デバイスが熱流束センサの上に配置されると、データの取得が開始され、次いで測定値が所望の期間にわたって記録される。熱流束の結果は、表になされ、時間に対してプロット化することが可能である。かかるプロットは、最大熱流束、安定状態熱流束を示す期間、および熱流速が降下する期間を明確にするのを助けるのにとりわけ有用である。
【0168】
潜熱の測定
放出される潜熱は、熱流束および水の損失/発生速度を用いて決定され得る。潜在する湿熱システムの全熱の%を決定するために、システムがその透過性側を上に向けた状態で配置される際に、湿熱ラップの熱出力(例えば熱流束)が測定される。これは、水分がラップから自由に漏出するのを可能にし、ラップに再吸収されて戻ることのないようにするために行なわれる。全熱流束を測定するために、湿熱ラップは、23℃の温度および40%の相対湿度の環境内において36℃に維持された一定温度プレートの表面に装着された熱流束センサの頂部上に配置される。この温度プレートは、米国ジョージア州Suwanee在のVWR Scientific社から入手可能な温度制御循環ウォーターバス(モデル 1157)から1.3L/分の流量で水を循環させることによって、一定温度に維持される。使用し得る一定温度プレートは、JIS S 4100(日本規格協会)に記載される。
【0169】
水蒸気発生速度は、湿熱システムの重量変化を測定することによって決定される。水蒸気発生速度を決定するための方法は、以下において説明される。潜熱を計算するためには、水損失速度に、2.261kJ/gm水である水の潜熱を掛ける。
【0170】
熱流束および水損失速度をプロット化する。潜熱による%全熱流束の計算は、熱流束および水蒸気化速度のグラフを調査して、それぞれが最大熱流束および最長安定状態挙動を有する期間を決定することによって行なうことが可能である。一実施形態においては、高速の加熱および水蒸気発生と持続的な加熱および水蒸気発生との両方が実現されるため、多数の時点を使用して、実現される熱流束の範囲を計算することができる。したがって、熱流束および水蒸気発生は、発熱反応の過程にわたって変動することが可能である。
【0171】
60分の期間にわたり5つの規則正しい間隔で熱を測定した、1つの例示的な24セル湿熱ラップについては、潜熱である全熱のパーセンテージは、約42%から約61%までの範囲であった。より具体的には、潜熱である全熱のパーセンテージは、測定1から測定5のそれぞれについて、49%、61%、61%、42%、および47%であった。全熱量は、測定1から測定5のそれぞれについて、約750W・分/m、約2400W・分/m、約5000W・分/m、約3400W・分/m、および約1500W・分/mであった。この例は、もっぱら例示のために提示されるものであり、本発明の多数の他の変形形態が可能であるので、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0172】
熱流束および水蒸気損失速度を用いて、各期間での潜熱による%熱流束を計算する。使用される等式を以下に示す。
【0173】
【数1】

【0174】
本発明のシステムおよび方法は、潜熱として生成された熱の約15%から約95%までを、代替的には約20%から約80%までを、および代替的には約40%から約75%までを、ユーザに伝達する。
【0175】
湿熱システムにより伝達される潜熱の生成および量は、この方法により試験された場合に検出可能な潜熱伝達量を一般的には示さない、「蒸気」熱デバイスとして市場に出ている先行デバイスと区別可能である。
【0176】
さらに、本発明の可搬式湿熱輸送システムは、身体に適用された場合に、皮膚および筋肉の温度に劇的な影響を与え、このシステムが適用される区域において血液循環量/流量を上昇させる。身体における全心臓血管仕事量は、局所的な血流が劇的に上昇されるにもかかわらず、このシステムの適用により軽減される。
【0177】
このシステムがユーザの皮膚のある区域に適用される期間にわたり、システムの適用前の皮膚のこの区域の休止血液流量の約3から約9倍の上昇が、このシステムによって実現される。1つの例示的な24湿熱セル実施形態においては、システムは、乾熱ラップに対して約5倍血流を上昇させ、1つの例示的な12湿熱セル実施形態においては、システムは、乾熱ラップに対して約2倍血流を上昇させた。1時間にわたりこのシステムの1つの例示的な24セル湿熱実施形態を用いることにより、従来の吸水薬治療と同等に、および従来の渦流治療を上回り、血流が上昇した。この例は、もっぱら例示のために提示されるものであり、本発明の多数の他の変形形態が可能であるので、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0178】
心仕事量が、ある期間にわたる平均血圧と平均心拍数との積として測定される場合に、心仕事量は、ヒトであるユーザの皮膚に対して本発明の可搬式熱輸送システムを適用することによって、少なくとも約4%だけ低減される。心仕事量は、乾熱ラップまたは吸水薬などの他の典型的な加熱モダリティの適用により、基本的に一定に保持される。渦流浴の場合には、心仕事量は、15分の適用の間に20%超も著しく上昇した。本発明により実現されるタイプの心臓リラクゼーションは、以前は、可搬式湿熱デバイスによって達成できなかった。
【0179】
湿熱輸送システムは、皮膚表面下2.5cmにて約38℃の温度まで、約36℃である典型的な休止温度を十分に上回る温度にまで、深部筋肉温度を上昇させることができる。さらに、このシステムは、約43℃未満の皮膚の外方表面温度を維持しつつ、加熱開始から約60分以内に、ユーザの皮膚の外方表面下の少なくとも約2.5cmの深度にて少なくとも約38℃の組織温度を実現させる。
【0180】
さらに、このシステムは、約43℃未満の皮膚の外方表面温度を維持しつつ、加熱開始から約20分以内に初期組織温度測定値を少なくとも約1℃上回る上昇を、約43℃未満の皮膚の外方表面温度を維持しつつ、加熱開始から約40分以内に初期組織温度測定値を少なくとも約2℃上回る上昇を、および、約43℃未満の皮膚の外方表面温度を維持しつつ、加熱開始から約60分以内に初期組織温度測定値を少なくとも約3℃上回る上昇を、ユーザの皮膚の外方表面下の少なくとも約2.5cmの組織の温度において実現する。
【0181】
本発明の湿式加熱システムの例示的な12熱セル実施形態および24熱セル実施形態を使用する際の、ユーザの深部筋肉温度および皮膚温度を、従来の乾温熱セルデバイスについての深部筋肉温度および皮膚温度と比較した。例示的な24セル湿熱セルデバイスは、約38℃まで深部筋肉を加熱し、最高皮膚温度は約40℃であった。例示的な12セル湿熱セルデバイスは、約37.5℃まで深部筋肉を加熱し、最高皮膚温度は約40℃であった。従来の乾熱セルデバイスは、60分の加熱後に約36.5℃未満まで深部筋肉を加熱し、最高皮膚温度は約35℃であった。この例は、もっぱら例示のために提示されるものであり、本発明の多数の他の変形形態が可能であるので、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0182】
かかる深部組織温度は、以前は渦流浴の利用によってのみ実現可能であったタイプの熱的加熱に特有のものである。本発明により実現されるこのタイプの加熱能力は、以前は、可搬式湿熱デバイスによっては実現できなかった。
【0183】
皮膚温度および深部組織温度は、以下の方法により測定することが可能である。
皮膚温度は、米国カリフォルニア州Goleta在のBIOPAC,Inc.社によって作製されたサーミスタプローブ、TSD202Aを用いて測定される。かかるプローブは、0.6秒の応答時間を有する「高速応答」プローブであり、直径は1.7mmである。プローブの出力は、MP100 16ビットA/Dコンバータによってデジタル化され、コンピュータ上に保存される。
【0184】
深部筋肉温度は、米国ニュージャージー州Clifton在のPhysitemp Instruments,Inc.社によって作製された、T熱電対プローブおよびワイヤ、パーツ番号IT−18によって測定される。この熱電対は、0.3秒の時定数を有する24ゲージである。熱電対は、22ゲージ針内において組織中に挿入される。
【0185】
深部筋肉温度の測定前に、被験者は、22℃の室内に20分間座る。この20分間の間に、サーミスタおよび熱電対が、それぞれ皮膚の上および下に配置される。サーミスタおよび熱電対が配置される被験者の区域は、皮膚血流を測定するためにレーザドップラー撮像装置によりスキャンされる。試験されることとなる加熱デバイスまたはモダリティ(例えば従来の乾熱ラップ、本発明のシステム、渦流浴槽、吸水薬、等々)が、使用される加熱モダリティについての標準臨床治療プロトコルに合致する期間にわたり適用される。試験期間後に、被験者の試験区域が、皮膚血流を測定するために再度スキャンされる。試験期間の終了後に、サーミスタおよび熱電対は、除去され、熱電対が配置される区域が、検査および洗浄される。実験中に5分おきに、被験者は、10ポイントのヴィジュアルアナログスケールに基づき、被験者による熱の感知および加熱モダリティの満足度に丸を付けるように依頼される。
【0186】
熱電対は、皮膚を貫通するための針を使用して、皮膚の表面から2.5cmの四頭筋組織中に配置される。組織中に熱電対を配置するために、針が、皮膚に対して60度の角度で挿入され、深さは、超音波撮像によって確認される。熱電対が挿入されると、針は除去され、無菌熱電対は組織中に定位置に残される。被験者の肢は、肢に対して生じ得る外傷を最小限に抑えるために、試験期間中は動かない。無菌状態を確保するために、熱電対アセンブリは、使用前の1時間の間にわたってCIDEXにより滅菌され、次いで無菌生理食塩水中で洗浄される。
【0187】
熱電対は、深部筋肉組織中に配置され、脂肪層中には配置されない。配置は、被験者の上方大腿の超音波測定(Sonosite 180、米国ワシントン州シアトル)によって確認される。
【0188】
熱電対の出力は、人的利用および病院使用に保証されたアイソサーメックス・デジタル・サーモメタ・システムによって変換される。かかるデバイスは、0.1%まで正確であり、米国オハイオ州Columbus在のColumbus Instruments社により作製される。
【0189】
熱電対は、試験の間中にわたり、および加熱モダリティの除去後15分間にわたり、定位置に残される。本発明のシステムは、1時間にわたり定位置に残される。
皮膚血流は、赤外線レーザドップラー流量計(米国カリフォルニア州Goleta在のBiopac systems社によるTST 140プローブ)を用いて測定することが可能である。このデバイスは、1平方cmの有効表面積を有する3gフラットプローブを有する。このプローブは、LDF 100C増幅器内に差し込まれ、16ビットアナログ/デジタル変換器(米国カリフォルニア州Goleta在、Biopac Systems社、NP150)により秒当たり2,000サンプルにデジタル化される。このユニットは、流量測定前に30分間にわたり加温される。流量プローブは、実験前および実験の終了時に較正される。プローブによりサンプリングされる組織体積は、1mmである。試験の被験者は、実験前に20分間にわたり22℃の室内に座り、その間に、血流が測定される。
【0190】
測定は、加熱モダリティの適用前、加熱モダリティの除去直後、ならびに、加熱モダリティの除去の5分、10分、および15分後に行なわれる。
経時的な皮膚および筋肉の温度と、皮膚血流とを、次いで解析することが可能である。
【0191】
心仕事量は、特定の条件下において身体が費やした心臓労力の計算値を示したものである。心仕事量は、心拍数と拡張期血圧および収縮期血圧の数学的平均との積として定義される。
開始心仕事量=平均開始心拍数×開始平均血圧
開始平均血圧=((平均開始収縮期血圧−平均開始拡張期血圧)×0.33+平均開始拡張期血圧)/100
最終心仕事量=平均最終心拍×最終平均血圧
最終平均血圧=((平均最終収縮期血圧−平均最終拡張期血圧)×0.33+平均最終拡張期血圧)/100
心仕事量差分=開始心仕事量−最終心仕事量
心拍数は、分当たりの拍動で測定される。心拍数は、1分の期間にわたって試験の被験者の橈骨動脈拍動を個人が触診することによって測定される。
【0192】
血圧は、空気血圧計を用いた試験の被験者の右腕の聴診によって測定される。収縮期血圧および拡張期血圧が、米国心臓協会の手順および規格にしたがって決定され、mmHgにて提示されるが、収縮期は、初めの叩打であり、拡張期は、叩打から消音までの変化である。血圧計カフが、200mmHgに膨張され、圧力は、秒当たり3mmHg間隔で低減される。
【0193】
さらに、このシステムは、システムの加熱開始の約10分以内に快適さおよび鎮痛の感知をもたらすことが可能である。快適レベルおよび鎮痛を決定するために、0〜10ポイントのヴィジュアルアナログスケールを使用して、主観的な快適さを測定する。かかるスケールは、例えば、試験の被験者の脚において上述の深部筋肉試験を行なう際などに使用することが可能である。快適さおよび鎮痛は、加熱モダリティの適用前、および初めの1時間の間に5分ごとに測定され、さらに長い実験についてはその後1時間ごとに測定されてよい。加熱モダリティの除去後、5分、10分、および15分で、快適さおよび鎮痛を測定する。代替的には、鎮痛は、湿熱システムを用いた治療の前後に可動域を評価することによって決定されてよい。
【0194】
さらに、本発明のシステムは、約0.05mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分から約2.5mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分まで、および代替的には約0.1mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分から約2.0mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分までを生じさせ、水蒸気は、皮膚の表面上での凝縮によって皮膚の表面に水分を輸送する。
【0195】
発生される水蒸気量および水蒸気発生速度は、加熱の開始前からシステムの消耗後までの、およびシステムを使用する際の時間にわたる、本発明のシステムまたは他の発熱性加熱デバイスの重量変化を測定することによって測定することが可能である。重量変化を測定および記録するために、Mettler−Toledo Balance Model PG503−Sが、RS232Cインターフェースケーブルを使用して、Toledo BalanceLink(Mettler Toledo AG社、CH−8606 Greaifensee、電話+41 44 944 22 11)ソフトウェアを実行しているコンピュータに接続される。試験前に、製造業者の指示にしたがって秤が較正される。10.2cm(4インチ)厚ステロフォームシートが秤の天秤皿の頂部に配置され、秤がゼロに合わせられる。
【0196】
試験されることとなるシステムが、製造後に保管されていた気密フォイル小袋から取り出され、水蒸気が漏出し得るように潜熱輸送表面が上に向けられた状態で、ステロフォームシートの中央に配置され、データ記録が開始される。発熱性加熱デバイスの開始重量およびその後の発熱性加熱デバイスの重量が、システムが消耗するまで記録され、これにより、反応の開始から終了までの水分損失を測定することが可能となる。
【0197】
重量損失量は、水分損失量に相関し、水分損失量により、反応の際に発生された水蒸気量が推定される。本発明のものなどの発熱性組成物では、発熱性組成物の他の成分が、反応の際に喪失されないため、および、水が、反応の一部として消費されないため、重量損失は、損失した水および発生される水蒸気に相関し得る。重量損失に基づく測定値および発生される水蒸気の計算値は、近似的なものである。これは、反応過程の間に、酸化鉄が生成され、したがって、反応過程の間に幾分かの重量がさらに獲得されるためである。しかし、最小限の量の酸化鉄が生成され、したがって、最小限の量の重量が獲得される。したがって、喪失される重量の量は、喪失される水の量に近いものとなる。
【0198】
ユーザの皮膚の面積当たりの発生される水蒸気量は、システムにより発生される水蒸気の総量を、システムが適用される皮膚の面積で割ることによって、計算することが可能である。さらに、単位時間当たりに発生される水蒸気は、システムにより発生される水蒸気の量を、水蒸気発生期間で割ることによって、計算することが可能である。手動によって、またはコンピュータソフトウェアを用いて、かかる計算を実施する方法が、当業者には理解されよう。
【0199】
さらに、このシステムは、約30分未満の期間にわたり、システムの適用前の皮膚水分レベルに対して少なくとも約300%だけ皮膚水分レベルを上昇させることが可能である。
【0200】
皮膚水分量および皮膚水分の上昇は、Corneometer 810静電容量皮膚水分メータ(独国Cologne在、Courage Khazaka Electronics社)により測定される。コルネオメータは、静電容量によって皮膚の角質層の湿度レベルを判定する。皮膚の水和レベルの変化は、静電容量における変化をもたらす。静電容量プローブが、7.1N/cmの圧力で1秒の間皮膚に適用される。皮膚の静電容量の度合いは、1〜100単位数により示される。1単位数は、20nmの測定深度での0.02mg/cmの角質層の水含有量を表す。非常に乾燥した皮膚は、30単位数未満であり、乾燥皮膚は、30〜45単位数であり、十分に加湿された皮膚は、45単位数を上回る。
【0201】
組織(すなわちこの場合においては皮膚)の静電容量は、皮膚表面を撮像するために、20nmの深さまで100,000サイクル/秒(Hz)の周波数で電磁波を印加することによって測定される。プローブは、調査を望まれる位置にて試験の被験者の皮膚の上に配置される。試験前に、被験者は、皮膚が標準化された状態になり得るように、20分間にわたり約22℃および40%の相対湿度の室内に座る。皮膚水分を計算するための静電容量は、加熱モダリティの除去前および除去直後に測定される。
使用方法
熱的デバイスは、単独の湿熱システムであってよく、または従来の伝導加熱システムと組み合わせて使用される湿熱システムであってもよい。例えば、熱的デバイスは、少なくとも1つの湿熱セルを備えてよく、少なくとも1つの乾熱セルが、熱的デバイスに組み込まれてよい。この構成は、例えば芳香物質または治療薬の送達を容易にするために、調節された態様で熱および湿熱を供給することなどにおいて有用な場合がある。
【0202】
本発明は、システムの形状、サイズ、および形態、すなわち身体ラップ、顔ラップ、包帯、およびブランケット等々に応じて、鎮痛、深部筋肉加熱、血流の上昇、心仕事量の低下、リラクゼーション、創傷治癒、水分輸送、活性物輸送、身体加温、呼吸緩和、皮膚水和、睡眠の向上、物理療法、およびそれらの組合せを実現するために、可搬式形態において一定の安全な効率的で持続的な熱を輸送する方法を提供することが可能である。
【0203】
本発明の一実施形態は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分とを備える可搬式湿熱湿システムを提供するステップであって、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの皮膚に対してシステムを適用するステップと、
(c)ユーザの皮膚に対して、システムにより発生された水蒸気/空気混合気を供給するステップと、
(d)ユーザの皮膚に熱を伝達するステップであって、システムは、ユーザの皮膚に熱を伝達し、約43℃未満に皮膚温度を維持しつつ、ユーザに対する熱の約15%から約95%までを凝縮潜熱として伝達する、ステップと
を含む、深部組織加熱を実施する方法を含む。
【0204】
この方法は、約75W/mから約500W/mまでの、代替的には約100W/mから約200W/mまでの、代替的には約200W/mから約500W/mまでの、および代替的には約300W/mから約500W/mまでの熱流束を供給することが可能である。
【0205】
さらに、この方法は、システムの加熱開始の約5分以内に少なくとも約36℃の皮膚表面温度を実現するステップを含むことが可能である。さらに、この方法は、約43℃未満の皮膚の外方表面の温度を維持しつつ、システムの加熱開始から約60分以内に皮膚の外方表面下の少なくとも約2.5cmの深さにて少なくとも約38℃の組織温度を実現することが可能である。
【0206】
さらに、本発明の一実施形態は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分とを備える可搬式湿熱湿システムを提供するステップであって、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの皮膚に対してシステムを適用するステップと、
(c)システムの加熱を開始するステップと、
(d)ユーザの皮膚に対して、システムにより発生された水蒸気/空気混合気を供給するステップであって、システムは、約43℃未満に皮膚温度を維持しつつ、システムの加熱開始から約60分以内に鎮痛を実現する、ステップと、
を含む、高速鎮痛を実現する方法を含む。
【0207】
この方法は、鎮痛活性物を供給するステップと、皮膚を通して活性物を送達するステップとをさらに含むことが可能である。鎮痛活性物は、水蒸気発生部分に、水蒸気源に、または水蒸気/空気調節部分に組み込むことが可能である。さらに、鎮痛活性物は、皮膚を通して鎮痛活性物を送達するために、本発明のシステムと組み合わせて使用される別個のデバイスに組み込むことが可能である。
【0208】
さらに、本発明の一実施形態は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分とを備える可搬式湿熱湿システムを提供するステップであって、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの皮膚に対してシステムを適用するステップと、
(c)システムの加熱を開始するステップと、
(d)ユーザの皮膚に対してシステムを適用する期間に、システムが適用されるユーザの皮膚の区域において、システムの適用前の皮膚のこの区域の血流に対して約2倍から約9倍まで血流を上昇させると共に、約43℃未満に皮膚温度を維持するステップと
を含む、血流を上昇させる方法を含む。
【0209】
さらに、本発明は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分とを備える可搬式湿熱湿システムを提供するステップであって、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの皮膚に対してシステムを適用するステップと、
(c)システムの加熱を開始するステップと、
(d)約43℃未満に皮膚温度を維持しつつ、ユーザの皮膚に対してシステムを適用する期間に少なくとも約4%だけ心仕事量を低下させるステップであって、ユーザの皮膚に対してシステムを適用する期間は、少なくとも約1時間であることが可能である、ステップと
を含む、心仕事量の低下およびリラクゼーションを実現する方法を含む。
【0210】
さらに、本発明の一実施形態は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分とを備える可搬式湿熱湿システムを提供するステップであって、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの皮膚に対してシステムを適用し、システムの加熱を開始するステップと、
(c)約0.05mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分から約10mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分までを生じさせるステップであって、水蒸気は、皮膚の表面上での凝縮により皮膚の表面に水分を輸送する、ステップと
含む、皮膚に対して水分を供給する方法を含む。
【0211】
この方法は、約60分未満の期間に、システムの適用前の皮膚水分レベルに対して少なくとも約300%だけ皮膚水分レベルを上昇させるステップをさらに含むことが可能である。この方法は、美容活性物を用意するステップと、皮膚に美容活性物を送達するステップとを含むことが可能である。
【0212】
さらに、本発明の一実施形態は、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と水蒸気/空気調節部分とを備える可搬式湿熱湿システムを提供するステップであって、前記水蒸気/空気調節部分は、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備え、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの表面に対してシステムを適用するステップであって、潜熱輸送表面は、ユーザの表面の近位に配置される、ステップと、
(c)前記システムの加熱を開始するステップと、
(d)予め選択された温度範囲でユーザの皮膚に湿熱を伝達するステップであって、湿熱は、約15%から約95%の凝縮潜熱である、ステップと
を含む、ユーザに利益を提供する方法を含む。
【0213】
この方法は、ユーザの皮膚に対して前記システムを適用する期間に少なくとも約4%だけ心仕事量を低下させることと、前記システムを適用する前記ユーザの皮膚の区域において、前記システムの適用前の皮膚の前記区域の血流に対して約3倍から約9倍まで血流を上昇させることと、リラクゼーションを実現することと、創傷治癒を実現することと、呼吸緩和を実現することと、身体加温を実現することと、皮膚水和を実現することと、睡眠の向上を実現することと、物理療法を実現することと、術後の回復を促進または強化することと、怪我の回復を促進または強化することと、それらの組合せとからなる群より選択される利益を提供するステップをさらに含むことが可能である。
【0214】
実施例
以下の実施例は、本発明の範囲内に含まれる実施形態をさらに説明し例示する。これらの実施例は、もっぱら例示のために提示されるものであり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくそれらの多数の変形形態が可能であるので、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。例示される全ての濃度は、特に断りのない限り、重量/重量パーセントである。
【0215】
[実施例1〜3]
水蒸気源
以下において例示される水蒸気源は、本発明のシステムの水蒸気発生部分において使用するために微粒子発熱性組成物で充填された発熱性熱セルである。
【0216】
以下において例示される微粒子発熱性組成物は、微粒子発熱性組成物を形成するための従来的な混合技術を利用することにより用意され、結果的に得られる組成物は、本発明の熱セルの構築を可能にする。
【0217】
予混合物は、リトルフォードデイミキサ(ittleford Day Mixer)などのブレンダまたはミキサ内に活性炭および水を加え、約10分間にわたり混合することによって調製される。次いで、ポリアクリレート吸収性ゲル化材料が加えられ、この混合物が約10分間にわたり混合される。次に、スポンジ鉄粉がミキサに加えられ、結果的に得られる予混合物が約5分間にわたり混合される。
【0218】
約2.2gの結果的に得られる予混合組成物が、各予め形成されたポケットに加えられる。これらのポケットは、ポリプロピレン/EVA共有押出形成フィルム(例えば、60%PP/40%EVAの共有押出形成されたRMS# GCAS10045989 24.7gsm 0.035556mm(1.4ミル)(Clopay社、米国ケンタッキー州Augusta在)フィルム)のシートにおいて、ポケットを形成するために真空を用いることにより作製されたものである。
【0219】
次に、ミキサ内に水、塩化ナトリウム、および任意にチオ硫酸ナトリウムを加え、約15分間にわたり混合することにより、塩水溶液が用意される。次いで、結果的に得られる塩水溶液が、予混合組成物上に迅速に加えられる。
【0220】
100%ポリプロピレンのfinished part# CTM4417064の44.lgsm SMMS(First Quality Nonwovens社、米国ペンシルベニア州McElhattan在)不織材料の通気表面が、予混合物および塩水を収容するポケットを覆って配置され、予め形成されたポケット所有体のEVA側に対面する。フィルムシートおよびSMMSは、低熱を用いて共に接合されて、一体構造体を形成する。結果的に得られる一体構造体は、通気表面と対向するフィルム層表面との対向表面間のポケット内にシールされた微粒子発熱性組成物を収容する熱セルを備える。
【0221】
熱セルは、塩水が微粒子組成物に加えられた直後に熱を発し始めるため、上部表面および下部表面は、接合され、完成した熱セルは、将来的な使用のために気密二次パッケージング内に迅速にパッケージングされる。
【0222】
表1は、本発明の熱セルの様々な微粒子発熱性組成物を示す。
【0223】
【表1】

【0224】
本発明の例示的な実施形態が、図3および図1を参照として以下において説明される。同一の記号は、全体にわたって同一の構造的要素を表す。
図3は、水蒸気/空気調節部分の一部として2つの水蒸気/空気混合層と2つの水蒸気/空気分配層とを有する湿熱輸送システムの一実施形態を図示する。図3を参照すると、水発生部分110は、熱セル180を備える。熱セル180は、上述の表1の成分を用いて実施例1にしたがって構築される。水発生部分110には、水蒸気/空気調節部分120が隣接する。水発生部分110の第2の側には、断熱層および最外層を備える外部表面140が隣接する。
【0225】
熱セル180は、ポリプロピレンSMMS(例えば、100%ポリプロピレンの34gsm SB/4gsm M/4gsm M/34gsm SB、Code W502FWH634、76gsm(Polymer Group Inc.社、米国バージニア州Waynesboro在))通気表面170に対向する、空気不透過性水分不透過性ポリプロピレン/EVAフィルム層(例えば、60%PP/40%EVAの共有押出形成されたRMS# GCAS10045989 24.7gsm 0.035556mm(1.4ミル)(Clopay社、米国ケンタッキー州Augusta在))の対向表面160中に形成されたポケット111の中に加えられた微粒子発熱性組成物を有する。
【0226】
外部表面140は、対向表面160に隣接し、0.15875cm(1/16インチ)断熱性ポリプロピレン発泡層162(例えば、100%PP 0.15875cm(1/16インチ)MicroFoam RMS#95818584 16gsm(Pregis社、米国ケンタッキー州Wurtland在))および最外ポリプロピレン不織層164を含む2つの層を備える。
【0227】
通気表面170には、高厚ポリエチレン/ポリエステル不織バッティング(例えば、70% 9dpfPET/PE BICO/30% 12dpfの中空PET繊維のRMS#95169555 84gsmスルーエアボンド材(Libeltex社、ベルギー国Meulebeke在))の3mm厚の第1の水蒸気/空気混合層124が隣接する。第1の水蒸気/空気混合層124には、0.15875cm(1/16インチ)厚穿孔ポリプロピレン発泡体(例えば、100%PP 0.15875cm(1/16インチ)MicroFoam RMS#95818584 16gsm(Pregis社、米国ケンタッキー州Wurtland在)、穿孔を与えるために抜き型により内部的に変更される)の第1の水蒸気/空気分配層122が隣接する。第1の水蒸気/空気分配層122には、第1の水蒸気/空気混合層124において使用されるものと同一の材料の高厚ポリエチレン/ポリエステル不織バッティングの第2の3mm厚水蒸気/空気混合層125が隣接する。第2の厚水蒸気/空気混合層125には、第1の水蒸気/空気分配層122において使用されるものと同一の材料の0.15875cm(1/16インチ)厚穿孔ポリプロピレン発泡体の第2の水蒸気/空気分配層123が隣接する。第2の水蒸気/空気分配層123には、ポリプロピレン不織材料(例えば、50/50 ポリプロピレン/ポリエチレン BICO Part# 236YLJO09P 80gsm(Fiberweb社、米国ワシントン州Washougal在)、機械変形により内部的に変更される)の2つの皮膚接触層を備える潜熱輸送表面130が取り付けられる。これらの層は、システムを形成するために、層の外縁部にて共にシールされる。
【0228】
図1を参照すると、図1は、1つの水蒸気/空気混合層および1つの水蒸気/空気分配層のみを有する湿熱システムの一実施形態を図示する。図1を参照すると、熱セル80は、表1の成分を用いて上述の実施例1にしたがって構築される。熱セル80は、100%ポリプロピレン(すなわち、finished part# CTM4417064、44.1gsm SMMS(First Quality Nonwovens社、米国ペンシルベニア州McElhattan在))SMMS通気表面70に対向する、ポリプロピレン/EVA(例えば、60%PP/40%EVAの共有押出形成されたRMS# GCAS10045989 24.7gsm 0.035556mm(1.4ミル)(Clopay社、米国ケンタッキー州Augusta在))フィルム層60の対向表面中に形成されたポケット11の中に加えられた微粒子発熱性水蒸気発生組成物を有する。
【0229】
外部表面40は、対向表面フィルム層60に隣接し、0.15875cm(1/16インチ)断熱性ポリプロピレン発泡体(例えば、MicroFoam RMS#95818584 16gsm(Pregis社、米国ケンタッキー州Wurtland在))層および最外ポリプロピレン不織層を含む2つの層を備える。
【0230】
通気表面70には、高厚ポリエチレン/ポリエステル(例えば、70% 9dpfPET/PE BICO/30% 12dpfの中空PET繊維のRMS#95169555 84gsmスルーエアボンド材(Libeltex社、ベルギー国Meulebeke在))不織バッティングの3mm厚水蒸気/空気混合層20を備える水蒸気/空気混合層24が隣接する。水蒸気/空気混合層24には、0.15875cm(1/16インチ)厚穿孔ポリプロピレン発泡体(例えば、100%PP 0.15875cm(1/16インチ)MicroFoam RMS#95818584 16gsm(Pregis社、米国ケンタッキー州Wurtland在)、穿孔を与えるために抜き型により内部的に変更される)の水蒸気/空気分配層22が隣接する。水蒸気/空気分配層22には、ポリプロピレン不織材料(例えば、50/50 ポリプロピレン/ポリエチレン BICO Part# 236YLJO09P 80gsm(Fiberweb社、米国ワシントン州Washougal在)、機械変形により内部的に変更される)の2つの皮膚接触層を備える潜熱輸送表面30が隣接する。これらの層は、システムを形成するために、層の外縁部にて共にシールされる。
【0231】
図4を参照すると、図4は、水蒸気源および熱源を含む微粒子発熱性組成物を備える水蒸気発生部分を形成する複数の熱セル(例えば24個の熱セル)580を有する、本発明の治療デバイス500の一実施形態の上部平面図である。
IR撮像実施例
図5Aおよび図5Bは、本発明の作動された湿熱輸送システム治療デバイスの1つの例示的な実施形態のIR画像を示す。図5Aは、本発明の作動された湿熱輸送システム治療デバイスの外部表面の図である。図5Aが示すように、個々の熱セルの輪郭が、IR画像において外部表面上に視認できる。図5Bは、本発明の作動された湿熱輸送システム治療デバイスの潜熱輸送表面の図である。図5Bが示すように、水蒸気/空気調節部分は、作動されたシステムの潜熱輸送表面にわたる熱の分散および均一性を促進する。図5Bが示すように、個々の熱セルの周囲形状は、熱の分散により潜熱輸送表面に熱を輸送する作動されたシステムの潜熱輸送表面のIR画像においては識別できない。
【0232】
本明細書において開示される寸法および値は、引用された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。代わりに、特に断りのない限り、それぞれのそのような寸法は、引用された値とその値の周辺の機能的等価範囲との両方を意味するように意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するように意図される。
【0233】
あらゆる相互参照されるまたは関連の特許または特許出願を含む、本明細書において引用される全ての文献は、明確に除外または限定されない限り、ここに参照により全体として本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが、本明細書において開示もしくは特許請求される任意の発明に関する先行技術であることを認めるものではなく、または、それが、単独でもしくは任意の他の参照(もしくは複数の参照)との任意の組合せにおいて、任意のかかる発明を教示、示唆、もしくは開示するものであることを認めるものではない。さらに、本文献における用語の意味または定義が、参照により組み込まれる文献中の同一用語の意味または定義と矛盾する場合には、本文献においてその用語に付与された意味または定義が、基準となる。
【0234】
本発明の特定の実施形態を図示し説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な他の変更および修正をなし得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲においては、本発明の範囲内に含まれる全てのかかる変更および修正を包含するように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式湿熱輸送システムであって、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、
(b)水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分と
を備え、
前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、
前記水蒸気/空気調節部分は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有し、前記湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である、システム。
【請求項2】
前記予め選択された温度範囲は、約43℃未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記システムの前記潜熱輸送表面で、約0.085kg水蒸気/kg乾燥空気未満(約0.085lb水蒸気/lb乾燥空気未満)の水蒸気対乾燥空気比を実現する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記水蒸気発生部分は、少なくとも1つの水蒸気発生熱セルを備え、前記熱セルは、微粒子発熱性組成物を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記水蒸気発生熱セルは、約1cmから約20cmまでの平坦表面積を有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記水蒸気/空気混合層は、約400cm/cm/秒から約17,000cm/cm/秒までの空気透過性と、約5,000g/m/24時間から約7,000g/m/24時間までのMVTRとを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記水蒸気/空気混合層は、約0.1mmから約5mmまでの厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記水蒸気/空気分配層は、約0.025cm/cm/秒未満の空気透過性を有する実質的に空気不透過性の材料を含み、前記水蒸気/空気分配層は、複数の水蒸気分配孔を備え、これにより、前記水蒸気/空気分配層は、約500cm/cm/秒超から約2500cm/cm/秒までの空気透過性を有することとなる、請求項1から7までのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記水蒸気/空気分配層は、ポリエチレンベース発泡体、ポリプロピレンベース発泡体、ポリエステルベース発泡体、ポリスチレンベース発泡体、ポリウレタンベース発泡体、発泡プラスチックシート、プラスチックフィルム、フォイル、紙フォイルラミネート、紙、不織布、スポンジ、ガラスウール、繊維ガラス、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記水蒸気/空気調節部分は、複数の前記水蒸気/空気混合層および複数の前記水蒸気/空気分配層を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、潜熱輸送表面に水蒸気/空気混合気を供給し、前記水蒸気/空気混合気は、約30℃から約50℃までの露点温度を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、約75W/mから約500W/mまでの熱流束を供給する、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、ヒトの皮膚表面に湿熱を供給して、約38℃から約42℃までの前記皮膚の前記表面の温度を維持すると共に、約100W/mから約500W/mまでの熱流束量を生成する、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、使いきりの使い捨て式デバイスとして形成される、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムは、複数回使用デバイスとして形成され、前記水蒸気発生部分は、使いきりの使い捨て式デバイスであり、前記水蒸気/空気調節部分は、再利用可能である、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
薬学的活性物、芳香活性物、美容活性物、加湿活性物、健康活性物、ハーブ、栄養補給剤、アロマセラピー薬、およびそれらの組合せからなる群より選択される活性物をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
成形可能部分をさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記成形可能部分は、金属フォイル、金属ワイヤフレーム構造体、可撓性プラスチック構造体、可撓性ラミネート構造体、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の可搬式湿熱輸送システムを備える治療デバイス。
【請求項20】
前記水蒸気源が占める面積が、前記水蒸気発生部分の全面積の約25%から約98%までを含む、請求項19に記載の治療デバイス。
【請求項21】
前記デバイスは、背中ラップ、膝ラップ、首ラップ、月経ラップ、関節ラップ、手/手首ラップ、首腕間ラップ、顔ラップ、足ラップ、身体ラップ、ブランケット、包帯、多目的ラップ、パッチ、パッド、およびそれらの組合せからなる群より選択される物である、請求項19または20に記載の治療デバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、ユーザに湿熱を輸送して、前記デバイスの加熱開始の約5分以内に少なくとも約36℃の皮膚温度を実現する、請求項19から21のいずれか一項に記載の治療デバイス。
【請求項23】
前記デバイスは、ユーザに湿熱を輸送して、少なくとも約60分間にわたり少なくとも約38℃の皮膚温度を実現する、請求項19から22のいずれか一項に記載の治療デバイス。
【請求項24】
前記デバイスは、ユーザに湿熱を輸送して、ユーザの皮膚の外方表面下の少なくとも約2.5cmでの組織の温度において、前記システムの加熱開始から約20分以内に初期組織温度測定値を少なくとも約1℃上回る上昇を実現すると共に、約43℃未満の前記皮膚の前記外方表面の温度を維持する、請求項19から21のいずれか一項に記載の治療デバイス。
【請求項25】
前記デバイスは、約0.05mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分から約10mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分までを生じさせ、前記水蒸気は、前記皮膚の前記表面上での凝縮により前記皮膚の前記表面に水分を輸送する、請求項19から24のいずれか一項に記載の治療デバイス。
【請求項26】
前記熱源は、複数の熱セルを備え、前記熱セルの少なくとも一部分が、一列に整列され、発泡材料のストリップが、熱セルの前記列を重ね、前記ストリップは、熱セルの前記列に平行な空気スペースをもたらす、請求項19から25のいずれか一項に記載の治療デバイス。
【請求項27】
可搬式湿熱輸送システムを備える治療デバイスであって、前記システムは、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分であって、前記水蒸気源は、水管理体に吸収された水であり、前記熱源は、鉄を含む微粒子発熱性組成物である、水蒸気発生部分と、
(b)少なくとも1つの水蒸気/空気混合層および少なくとも1つの水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分であって、前記水蒸気/空気混合層は、織成材料、不織材料、およびそれらの組合せからなる群より選択される材料の少なくとも1つの層を備える通気構造体であり、前記水蒸気分配層は、発泡材料の少なくとも1つの層を備える、水蒸気/空気調節部分と
を備え、
前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、
前記水蒸気/空気調節部分は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有し、前記湿熱の約15%から約95%が、凝縮潜熱である、治療デバイス。
【請求項28】
前記水蒸気発生部分は、複数の水蒸気発生熱セルを備え、前記セルは、微粒子発熱性混合物を備える、請求項27に記載の治療デバイス。
【請求項29】
前記熱源は、熱セルを備え、熱は、熱が分散される際に前記熱セルの周囲形状が前記潜熱輸送表面の赤外線画像において識別できないように、前記潜熱輸送表面で分散される、請求項28に記載の治療デバイス。
【請求項30】
ユーザに利益を提供する方法であって、
(a)水蒸気源および熱源を備える水蒸気発生部分と、水蒸気/空気混合層および水蒸気/空気分配層を備える水蒸気/空気調節部分とを備える、可搬式湿熱輸送システムを提供するステップであって、前記水蒸気発生部分および前記水蒸気/空気調節部分は、流体連通状態にあり、前記水蒸気/空気調節部分は、予め選択された温度範囲で湿熱を輸送する、前記水蒸気/空気調節部分に隣接して配設される潜熱輸送表面を有する、ステップと、
(b)ユーザの皮膚表面に前記システムを適用するステップであって、前記潜熱輸送表面は、前記ユーザの前記皮膚表面の近位に配置される、ステップと、
(c)前記システムの加熱を開始するステップと、
(d)予め選択された温度範囲で前記ユーザの前記皮膚に湿熱を伝達するステップであって、前記湿熱は、約15%から約95%の凝縮潜熱である、ステップと
を含む、方法。
【請求項31】
前記可搬式湿熱システムは、ヒトであるユーザの皮膚表面に適用され、前記ヒトの皮膚は、湿熱の伝達の間、約43℃未満の温度を維持する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記システムの加熱開始の約5分以内に少なくとも約36℃の皮膚表面温度を実現するステップをさらに含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
組織に湿熱を輸送して、前記システムの加熱開始から約60分以内に前記皮膚の外方表面下の少なくとも約2.5cmの深さで少なくとも約38℃の温度を実現すると共に、約43℃未満の前記皮膚の前記外方表面の温度を維持するステップをさらに含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記湿熱は、約43℃未満のユーザ皮膚表面温度を維持しつつ、前記システムの前記加熱開始から約60分以内に鎮痛を実現する、請求項30から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
鎮痛活性物を用意するステップと、前記皮膚を通して前記活性物を送達するステップとをさらに含む、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
約0.05mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分から約10mg水蒸気/分/cm水蒸気発生部分までを生じさせるステップであって、前記水蒸気は、約43℃未満のユーザ皮膚表面温度を維持しつつ、前記皮膚の前記表面上での凝縮により前記皮膚の前記表面に水分を輸送する、ステップをさらに含む、請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ユーザの前記皮膚に対して前記システムを適用する期間に少なくとも約4%だけ心仕事量を低下させることと、前記システムを適用する前記ユーザの皮膚の区域において、前記システムの適用前の皮膚の前記区域の血流に対して約3倍から約9倍まで血流を上昇させることと、リラクゼーションを実現することと、創傷治癒を実現することと、呼吸緩和を実現することと、身体加温を実現することと、皮膚水和を実現することと、睡眠の向上を実現することと、物理療法を実現することと、術後の回復を促進することと、怪我の回復を促進することと、術後の回復を強化することと、怪我の回復を強化することと、それらの組合せとからなる群より選択される利益を提供するステップをさらに含む、請求項30から36のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2011−525122(P2011−525122A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509652(P2011−509652)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043779
【国際公開番号】WO2009/140377
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】