説明

可搬式生ゴミ処理容器及び生ゴミによる堆肥の製造方法

【課題】各家庭で廃棄される生ゴミから各家庭で堆肥を簡単に製造でき、生ゴミを収集するコストを低減できるとともに、製造された堆肥は土壌の活性材として活用できる可搬式生ゴミ処理容器を提供する。
【解決手段】開口部14を持った通気性を有する容器としての袋体11と、この袋体11に被処理物としての生ゴミ17を収容する容積分を残して予め収容された有機質資材又は無機質資材からなる水分調整剤16とからなり、前記袋体11の開口部14から被処理物としての生ゴミ17を収容して前記水分調整剤16と撹拌することにより、前記生ゴミ17を水と炭酸ガスに分解処理し、発生する気体Gは前記通気性を有する袋体11の外部に放出させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各家庭、飲食店等から廃棄される生ゴミを分解処理する可搬式生ゴミ処理容器及び生ゴミによる堆肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各家庭、飲食店等から廃棄される生ゴミ等の有機物を分解処理する有機物減却再生装置を本出願人は開発し、既に登録されている(特許文献1参照。)。この有機物減却再生装置は、予め水分調整剤が収容された処理槽に投入し、この処理槽を回転して有機物と水分調整剤を撹拌し、さらに処理槽の内部に温風を送り込み、有機物を水と炭酸ガスに分解処理するとともに、分解中に発生する気体を処理槽から排出させるようになっている。
【0003】
この有機物減却再生装置は、大量の生ゴミ等の有機物を効率的に処理して減却することができ、また処理された再生資源は土壌の活性剤(堆肥)として活用できることで注目されている。
【0004】
また、封止機能を持った容器の内部に、樹木の粉砕片からなる液分吸収剤を収容して吸液床とし、この容器内に生ゴミ、EMボカシを投入した状態で、容器を密封して熟成期間放置して生ゴミによる堆肥の製造方法が知られている(特許文献2参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第3121182号公報
【特許文献2】特開2005−298220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものは、大量の生ゴミを処置する大型の設備であり、一般家庭には採用できないとともに、各家庭で廃棄された生ゴミを収集して有機物減却再生装置を備えた処理施設まで運搬するコストが掛かる。特許文献2のものは、密閉できる容器が必要であるとともに、容器にEMボカシを投入し、EMボカシによって生ゴミを分解処理する方法であり、一般家庭で生ゴミから堆肥を製造するにしてもコストが掛かる。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、各家庭で廃棄される生ゴミから各家庭で堆肥を簡単に製造でき、生ゴミを収集するコストを低減できるとともに、製造された堆肥は土壌の活性材として活用できる可搬式生ゴミ処理容器及び生ゴミによる堆肥の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述した目的を達成するために、請求項1は、開口部を持った通気性を有する容器と、この容器内に被処理物としての生ゴミを収容する容積分を残して予め収容された有機質資材又は無機質資材からなる水分調整剤とからなり、前記容器の開口部から被処理物としての生ゴミを収容して前記水分調整剤と撹拌することにより、前記生ゴミを水と炭酸ガスに分解処理し、発生する気体は前記通気性を有する容器の外部に放出させることを特徴とする可搬式生ゴミ処理容器にある。
【0008】
請求項2は、請求項1の前記容器は、通気性を有する合成繊維製袋であって、開口部には閉じ紐が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、被処理物としての生ゴミを収容する容積分を残して有機質資材又は無機質資材からなる水分調整剤を収容した通気性を有する可搬可能な容器の開口部から被処理物としての生ゴミを収容した後、前記水分調整剤と撹拌することにより、前記生ゴミを水と炭酸ガスに分解処理し、発生する気体は前記通気性を有する容器の外部に放出させることを繰り返し、その後、常温で一定期間放置して堆肥とすることを特徴とする生ゴミによる堆肥の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可搬式の容器であるため、保管に場所を取らず、軽量で取り扱いが容易であり、各家庭で廃棄される生ゴミから各家庭で堆肥を簡単に製造できる。従って、各家庭から生ゴミを収集する自治体にとっては収集のための費用を大幅に軽減できる。さらに、得られた堆肥は、各家庭での家庭菜園等に活用でき、堆肥を必要としない家庭においては、堆肥を必要とする農家、学校等に供給することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は第1の実施形態を示し、通気性を有する容器としての可搬式の袋体11は、ナイロン等の合成繊維糸を織成又は編成した布を袋状に縫製した柔軟性を有するものであり、底部12を有する胴部13の上部には開口部14が設けられている。開口部14にはその開口を巾着式に閉じることができる閉じ紐15が設けられている。袋体11は容積が例えば20リットルであり、この袋体11内には有機質資材又は無機質資材からなる水分調整剤16が予め収容される。水分調整剤16は、例えば10リットルであり、袋体11の内部には被処理物としての生ゴミを収容する容積分(約10リットル)を残して予め収容されている。
【0013】
水分調整剤16としては、籾殻、おがくず、チップ、バーク、コーヒー粕、そば殻等の有機質資材又はセラミック粒状体等の無機質資材に土壌菌からなる微生物及び酵素を付着したものである。従って、10リットルの水分調整剤16を収容したとしても袋体11は軽量であり、持ち運び取り扱いが容易であり、また保管に場所を取らないため、雨水等で濡れない場所であればどのような場所でも設置できる。
【0014】
このような袋体11の開口部14から袋体11の内部に家庭で廃棄される被処理物としての生ゴミ17を投入する。なお、一般家庭では1日に廃棄される生ゴミ17の平均量は300〜400gと言われており、1日分の生ゴミ17を包丁等でできるだけ細かく破砕するのが望ましい。そして、開口部14を閉じ紐15によって結束して閉じ、袋体11を手で持ち上げて上下方向に振ると、水分調整剤16と生ゴミ17とが撹拌される。
【0015】
このように毎日、家庭から廃棄される生ゴミ17を袋体11に投入して撹拌する操作を繰り返す。袋体11は通気性を有するため酸素が供給され、生ゴミ17は微生物によって水と炭酸ガスによって分解され、発生する気体Gは袋体11を透過して外部に放出される。生ゴミ17は水の含有率が約88%と言われているのに対し、分解作用を行う微生物が最も活発に活動できる含水率が55〜65%と言われているため、袋体11の内部に予め収容されている水分調整剤16によって水分調整が行なわれ、袋体11の内部の固形物が減却されて殆ど残らない。従って、毎日、家庭から廃棄される生ゴミ17を袋体11に投入しても袋体11の内部の嵩は殆んど増えない。
【0016】
しかし、水分調整剤16が水分を吸収できない飽和状態になった場合、袋体11の開口部14を閉じ紐15によって結束した状態で、直射日光が当たらない場所に1〜2週間保管すると、袋体11の内部に堆肥ができる。得られた堆肥は、各家庭での家庭菜園等に活用でき、堆肥を必要としない家庭においては、堆肥を必要とする農家、学校等に供給することができる。この場合、堆肥を袋体11のまま供給でき、取り扱いがしやすい。堆肥を供給した後は、新しい袋体11を用意(購入等)して再び水分調整剤16を収容することにより、前述と同様に生ゴミ17を投入して堆肥化できる。
【0017】
なお、可搬式生ゴミ容器として袋体を用いたが、周壁が通気性を有するものであれば、プラスチック容器でもよく、その形状も限定されるものではない。
【0018】
なお、本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0019】
ここで、生ゴミのリサイクルの新しい方式を説明する。
【0020】
現在では各家庭から発生した生ゴミは、各自治体で収集し、収集した生ゴミを焼却炉で焼却しているが、生ゴミは80%以上が水分であるため、高温で加熱する必要があり、高温で加熱するためには高性能の焼却炉は勿論のこと、大量の燃料を必要とし、ランニングコストが高くなっている。生ゴミと一緒に燃焼する可燃ゴミには有害物質が含まれており、これらが不完全燃焼して有害物質となって放出されて大気汚染の原因、地球温暖化の原因になっている。
【0021】
一方、わが国の農地は、やせ細っている。やせ細った農地で生産される野菜はビタミン、ミネラルの含有量が少なくなっている。その原因は、農薬や化学肥料の大量使用によって土壌が劣化したためと言われており、生ゴミをリサイクルして資源の有効活用とともに有機肥料を農地に還元し、劣化した土壌を蘇らせることが提案されている。
【0022】
生ゴミを本発明による堆肥化によってコストを掛けることなく農地に還元でき、しかも大気汚染及び地球温暖化の問題を軽減することができるものであり、新しい生ゴミリサイクル方法として提案できるものである。そのためには、各家庭、自治体、企業、農家、病院、学校等が一体となって実施することで実現可能である。
【0023】
ここで、生ゴミリサイクルの1方式を、図2に基づいて説明する。
【0024】
1.自治体は、各家庭に本発明の「可搬式生ゴミ処理袋」を無料又は有料で配布する。「可搬式生ゴミ処理袋」の胴部には、企業名、商品名等の広告を印刷し、広告料は、自治体の収入とする。
【0025】
2.各家庭は、配布された「可搬式生ゴミ処理袋」に生ゴミを投入し、袋体に予め収容されている水分調整剤と撹拌する。袋体は通気性を有するため酸素が供給され、生ゴミは微生物によって水と炭酸ガスによって分解される。この操作を数日繰り返して水分調整剤が飽和状態になった時点で、袋体を直射日光が当たらない場所に1〜2週間保管すると、袋体の内部に堆肥ができる。
【0026】
3.得られた堆肥は、各家庭での家庭菜園等に活用できるが、堆肥を必要としない家庭においては、自治体が堆肥を「可搬式生ゴミ処理袋」とともに収集する。
【0027】
4.自治体は、収集した堆肥を、農家、病院等に無料あるいは有料で供給する。又は病院や公園の花壇、道路の植栽用の肥料として使用する。また、地域によって異なるが、減反によって農地が耕作放棄されている所があるが、このような耕作放棄地を利用して花畑公園として観光化しようと試みられ、現に成功を収めている地域もある。しかし、広大な農地では大量の肥料が必要とするが、前述のように、各家庭、自治体、企業、農家、病院、学校等が一体となって生ゴミリサイクルを継続して実施することで実現可能である。
【0028】
なお、前記2.において、各家庭においては、配布された「可搬式生ゴミ処理袋」に生ゴミを投入し、袋体に予め収容されている水分調整剤と撹拌した後、袋体の内部に堆肥ができるまで保管しているが、2週間に1回程度、生ゴミの入った袋体(未だ堆肥になっていない状態)を業者が回収し、業者が大型処理機で発酵処理して堆肥化してもよい。業者の処理費用は、自治体で負担することにより、発酵処理した堆肥を自治体の公共施設に供給できるとともに、公園化するために農地を提供した農家に無料で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、(a)〜(c)は可搬式生ゴミ処理袋の説明図。
【図2】生ゴミリサイクルを示す説明図。
【符号の説明】
【0030】
11…袋体、14…開口部、15…閉じ紐、16…水分調整剤、17…生ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を持った通気性を有する容器と、この容器内に被処理物としての生ゴミを収容する容積分を残して予め収容された有機質資材又は無機質資材からなる水分調整剤とからなり、
前記容器の開口部から被処理物としての生ゴミを収容して前記水分調整剤と撹拌することにより、前記生ゴミを水と炭酸ガスに分解処理し、発生する気体は前記通気性を有する容器の外部に放出させることを特徴とする可搬式生ゴミ処理容器。
【請求項2】
前記容器は、通気性を有する合成繊維製袋であって、開口部には閉じ紐が設けられていることを特徴とする請求項1記載の可搬式生ゴミ処理容器。
【請求項3】
被処理物としての生ゴミを収容する容積分を残して有機質資材又は無機質資材からなる水分調整剤を収容した通気性を有する可搬可能な容器の開口部から被処理物としての生ゴミを収容した後、前記水分調整剤と撹拌することにより、前記生ゴミを水と炭酸ガスに分解処理し、発生する気体は前記通気性を有する容器の外部に放出させることを繰り返し、その後、常温で一定期間放置して堆肥とすることを特徴とする生ゴミによる堆肥の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−296147(P2008−296147A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145552(P2007−145552)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(506046654)
【Fターム(参考)】