説明

可搬記憶媒体

【課題】複数の利用者によって利用される可搬記憶媒体において、各利用者に割り当てられた情報格納領域に格納されている情報をアクセス権のない利用者から秘匿化する。
【解決手段】利用者認証部112とアクセス制御部113の各機能は、ホストコンピュータ12のCPUが情報記憶部114に記憶されている利用者認証プログラムとアクセス制御プログラムを実行することによって実現される。利用者認証部112は、ホストコンピュータ12を利用している利用者の利用権限の有無を認証する。アクセス制御部113は、情報記憶部114に格納されている情報格納領域指定情報に基づいて情報記憶部114内の各利用者に割り当てられた情報格納領域のみをホストコンピュータ12にファイルシステムとして認識させ、情報記憶部114に格納されている暗号/復号鍵を用いて情報を暗号化/復号化しながら書き込み/読み出しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の利用者によって共同利用される可搬記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の発展と共に、行政、民間では膨大な量の個人情報、営業情報等を容易に扱うことが可能となった。それに伴い、情報漏洩に関わる事件・事故が多発しており、個人情報保護法の成立、情報セキュリティマネジメントシステムの普及など、情報漏洩防止に関わる情報セキュリティ対策へのニーズは益々高まっている。
【0003】
情報漏洩の最たる原因の一つに、USB(Universal Serial Bus)メモリやSDカード等の可搬記憶媒体の紛失や盗難がある。USBメモリ等の可搬記憶媒体は、使い勝手が良く携帯しやすい半面、紛失や盗難のリスクが非常に高い。その対策としては、可搬記憶媒体に格納する情報の暗号化が一般的であるが、行政、民間の組織内においては、万一の紛失時に備えて、個人所有の可搬記憶媒体の使用を禁止し、組織で管理された可搬記憶媒体を複数の利用者で共有することが多い。このような運用においては、同一のパスワードを複数の利用者で共有することとなり、パスワード漏洩の危険性があるだけでなく、可搬記憶媒体に格納した情報をお互いの利用者間で参照可能となってしまい、情報漏洩に繋がる可能性もある。
【0004】
この問題を解決するにあたり、特許文献1や特許文献2に開示された方法の活用が考えられる。
特許文献1は、IC(Integrated Circuit)カード内の記憶領域を分割する方法を開示する。この方法を用いることにより、ICカード内に格納する情報を利用者毎に決められた領域に記憶することで、複数の利用者がお互いの情報を参照出来なくなる。しかし、ICカードは高価である上に記憶容量が小さいため、大容量の情報を扱う場合には適さない。
特許文献2は、データの読出しのみ可能なUSBメモリのROM領域にPINコードと利用者認証アプリケーションを格納することでICカードのような利用者認証手段を提供する方法を開示する。この方法により、広く利用されているUSBメモリにおいて、ICカードと同等の高度なアクセス制御を実現可能である。しかし、PINコード等を利用者毎に保有してそれぞれの利用者に記録領域を割り当てることは出来ないため、複数の利用者でUSBメモリを共有した場合には、パスワードを共有する等の運用が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−334542号公報
【特許文献2】特開2004−362516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に広く普及しているUSBメモリ等の可搬記憶媒体は、媒体内部にアクセス制御用のプログラムを持たない。このため、可搬記憶媒体を利用する利用者の認証、ホストコンピュータから可搬記憶媒体へのアクセス制御等の処理を行う場合には、接続したホストコンピュータ上の汎用OS(オペレーティングシステム)を用いて行う方法が一般的である。
【0007】
しかし、この方法を採用した場合、汎用OSで制御を行うこととなるため、情報セキュリティ上の脆弱性となり得る。
【0008】
また、利用者を認証するためのPINコードやパスワードが媒体と関連付けられるため、可搬記憶媒体を複数の利用者で共有する場合、全ての利用者が1つのPINコードやパスワードも共有することになり、情報セキュリティ上の問題がある。
【0009】
本発明の目的は、複数の利用者によって共同利用されるUSBメモリ等の可搬記憶媒体において、ホストコンピュータ等の汎用OSで制御を行うことなく利用者認証を実現するとともに、可搬記憶媒体内部の情報格納領域を論理的に分割し、分割された情報格納領域をそれぞれ利用者毎にアクセス可能な領域として各利用者に割り当てて、個々の分割された情報格納領域に格納されている情報をアクセス権のない利用者から秘匿化することができる可搬記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の可搬記憶媒体は、
CPUとメモリを有するホスト装置に着脱可能な可搬記憶媒体であって、
複数の領域に分割された情報格納領域と、
複数の利用者について利用者毎に利用権限を認証するための認証情報と当該各利用者がアクセス可能な前記分割された情報格納領域を指定する1以上の情報格納領域指定情報と当該各情報格納領域指定情報に対応する第1の暗号/復号鍵とが格納されている利用者認証情報格納領域と、
当該可搬記憶媒体が前記ホスト装置に接続されると活性化され、前記ホスト装置のメモリに読み込まれて前記ホスト装置のCPUにより実行され、前記ホスト装置を、前記ホスト装置を利用している利用者により入力された認証情報と、前記利用者認証情報格納領域に格納されている認証情報とを照合し、前記利用者の利用権限の有無を認証する利用者認証手段として機能させる利用者認証プログラムが格納された利用者認証プログラム格納領域と、
前記利用者認証手段によって利用権限有りと認証されたことに応答して活性化され、前記ホスト装置のメモリに読み込まれて前記ホスト装置のCPUにより実行され、前記ホスト装置を、前記利用者認証情報格納領域に格納されている情報格納領域指定情報に基づいて前記利用者がアクセス可能な前記各分割された情報格納領域を特定し、当該特定された情報格納領域を前記ホスト装置にファイルシステムとして認識させ、前記利用者認証情報格納領域に格納されている第1の暗号/復号鍵を用いて前記ホスト装置から情報を暗号化しながら前記各分割された情報格納領域に書き込み、前記各分割された情報格納領域から情報を読み出しながら復号化するアクセス制御手段として機能させるアクセス制御プログラムが格納されたアクセス制御プログラム格納領域と、
を有する情報記憶部を備える。
【0011】
好ましくは、
前記利用者認証情報格納領域に格納されている暗号/復号鍵は、前記各分割された情報格納領域にアクセスするための暗号/復号鍵を、前記利用者により入力された認証情報と前記情報記憶部の利用者認証情報格納領域に格納されている情報格納領域指定情報とを用いて作成された第2の暗号/復号鍵を用いて暗号化したものであり、
前記アクセス制御手段は、前記利用者により入力された認証情報と前記利用者認証情報格納領域に格納されている情報格納領域指定情報とを用いて前記第2の暗号/復号鍵を作成し、前記利用者認証情報格納領域に格納されている第1の暗号/復号鍵を、前記第2の暗号/復号鍵を用いて復号化し、復号化された前記第1の暗号/復号鍵を用いて、前記ホスト装置から情報を暗号化しながら前記各分割された情報格納領域に書き込み、前記各分割された情報格納領域から情報を読み出しながら復号化する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の利用者によって共同利用されるUSBメモリ等の可搬記憶媒体において、ホストコンピュータ等の汎用OSで制御を行うことなく利用者認証を実現するとともに、可搬記憶媒体内部の情報格納領域を論理的に分割し、分割された情報格納領域をそれぞれ利用者毎にアクセス可能な領域として各利用者に割り当てて、個々の分割された情報格納領域に格納されている情報をアクセス権のない利用者から秘匿化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る可搬記憶媒体の構成の一例を示す図である。
【図2】可搬記憶媒体の情報記憶部のデータ構造の一例を示す図である。
【図3】利用者認証情報格納領域のデータ構造の一例を示す図である。
【図4】利用者認証情報格納領域に格納されたアクセス鍵(暗号)と、実際に分割された情報格納領域にアクセスするために使用するアクセス鍵(平文)の対応の一例を示した図である。
【図5】可搬記憶媒体の情報格納領域が利用者に割り当てられるまでの手続きの一例を示したフローチャートである。
【図6】情報格納領域の利用に必要なアクセス鍵(平文)を取得するまでの手続きの一例を示したフローチャートである。
【図7】アクセス制御部の構成の一例を示す図である。
【図8】ホストコンピュータから見た可搬記憶媒体内における、仮想的な装置の接続状態を示す図である。
【図9】ホストコンピュータが利用者毎の情報格納領域を認識する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る可搬記憶媒体について図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る可搬記憶媒体の構成の一例を示す図である。
可搬記憶媒体(USBメモリ)11は、USBインタフェース111と、情報記憶部114とを有する。
USBインタフェース111は、ホストコンピュータ12との通信を司り、ホストコンピュータ12のUSBインタフェース122との間でデータ(情報)を送受信する。
情報記憶部114は、例えばフラッシュメモリで構成される記憶装置である。後述するように、情報記憶部114は、利用者認証プログラム及びアクセス制御プログラムを記憶している。
ホストコンピュータ12は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)等で構成されたメモリと、可搬記憶媒体(USBメモリ)11との通信をするためのUSBコントローラ121と、USBインタフェース122とを有する。
可搬記憶媒体(USBメモリ)11の情報記憶部114からメモリに利用者認証プログラム及びアクセス制御プログラムを読み込み、CPUがそれらのプログラムを実行することにより、利用者認証部112及びアクセス制御部113の各機能が実現される。
利用者認証部112は、可搬記憶媒体(USBメモリ)11を利用しようとする利用者が正当な利用権限を有するか否かを認証する。アクセス制御部113は、利用者認証部112によって認証された利用者が利用権限を有する情報記憶部114内の領域にのみホストコンピュータ12からデータを読み書きすることができるように制御する。
【0016】
ホストコンピュータ12に可搬記憶媒体(USBメモリ)11を接続すると、利用者認証部112が起動され、利用者認証部112は利用者認証処理を行う。利用者認証が成功した場合のみ、アクセス制御部113の制御により、情報記憶部114のうち該当の利用者にアクセス権のある領域がUSBストレージデバイスとしてホストコンピュータ12に認識され利用可能となる。
【0017】
図2は可搬記憶媒体(USBメモリ)11の情報記憶部114のデータ構造の一例を示す図である。情報記憶部114は、利用者認証プログラム格納領域21、利用者認証情報格納領域22、アクセス制御プログラム格納領域23、及び情報格納領域24で構成される。情報格納領域24は、複数の利用者で領域を分けて利用可能とするために、論理的に1つ以上の領域に分割される。ここでは、情報格納領域A241、情報格納領域B242、情報格納領域C243の3つの情報格納領域に分割された例を示す。
なお、情報記憶部114はさまざまな構成を取ることができる。情報記憶部114は、例えば1個のフラッシュメモリで構成されており、論理的に利用者認証プログラム格納領域21、利用者認証情報格納領域22、アクセス制御プログラム格納領域23、及び情報格納領域24に分割されているものであってよい。また、情報記憶部114は、例えば1個のROM(Read Only Memory)と1個のフラッシュメモリで構成されており、ROMが論理的に利用者認証プログラム格納領域21とアクセス制御プログラム格納領域23に分割されており、フラッシュメモリが論理的に利用者認証情報格納領域22と情報格納領域24に分割されているものであってもよい。
【0018】
利用者認証プログラム格納領域21は、可搬記憶媒体(USBメモリ)11の利用者を認証するための利用者認証プログラムが格納される領域であり、不正な書き換えを防止するため、ISO9660ファイルシステム等を使用した読み込み専用ファイルシステムとしてホストコンピュータ12に提供される。
利用者認証情報格納領域22は、利用者ID、PINコード等の利用者の認証情報が格納される領域であり、この領域はホストコンピュータ12からはファイルシステムとして認識されないが、利用者認証部112は参照することができる。
アクセス制御プログラム格納領域23は、アクセス制御プログラムが格納される領域であり、利用者認証後に活性化されて利用可能となる。この領域も不正な書き換えを防止するため、ISO9660ファイルシステム等を使用した読み込み専用ファイルシステムとしてホストコンピュータ12に提供される。
情報格納領域24は、利用者認証後に利用可能となり、ホストコンピュータ12によるデータの読み込み及び書き込みは、この領域に対して行われる。情報格納領域24へのアクセスは、アクセス制御部113を介して行われる。
【0019】
図3は、利用者認証情報格納領域22のデータ構造の一例を示す図である。利用者認証情報格納領域22には、利用者ID31、PINコード32、利用可能領域33、及びアクセス鍵(暗号)34が格納される。
利用者ID31には、利用者を一意に識別するためのID(利用者識別情報)を格納する。PINコード32には、利用者のパスワードとして使用されるPINコードを格納する。利用可能領域33には、その利用者がアクセス可能な分割された情報格納領域を指定する1以上の情報格納領域指定情報を格納する。アクセス鍵(暗号)34には、それぞれの情報格納領域24にアクセスするための暗号化された暗号/復号鍵が格納される。
【0020】
PINコード32は、利用者認証時に使用するPINコードをハッシュ化するなどして元の情報に復元できない形式で保存する。
また、アクセス鍵(暗号)34は、利用可能領域33と対になる暗号/復号鍵であり、利用者ID31、PINコード32及び利用可能領域33を用いて暗号/復号鍵を作成し、その暗号/復号鍵を用いてそれぞれの情報格納領域24にアクセスするためのアクセス鍵(平文)を暗号化して保存したものである。異なる利用者が同一の分割された情報格納領域24にアクセスする場合、同一の暗号/復号鍵が必要となる。アクセス鍵(暗号)34は、このような場合に、それぞれの情報格納領域24にアクセスするためのアクセス鍵(平文)を利用者固有の情報で暗号化することで利用者ごとに別々に定義可能としたものである。
なお、利用者ID31、PINコード32及び利用可能領域33に加えて、例えば媒体内部の所定の領域に保存されている所定の固有値を用いて暗号/復号鍵を作成することにより、さらにセキュリティ性を向上させることができる。
これにより、論理的に分割された情報格納領域24毎に一意となるアクセス鍵(暗号/復号鍵)を、平文で保有することを不要とし、かつ分割された情報格納領域24毎のアクセス鍵と利用者認証時に入力するPINコードを分離することが可能となる。
【0021】
図4は、利用者認証情報格納領域22に格納されたアクセス鍵(暗号)34と、実際に分割された情報格納領域24にアクセスするために使用するアクセス鍵(平文)41の対応の一例を示した図である。図中の矢印は、情報格納領域A241へアクセス可能である利用者、ADMIN、USER01、及びUSER05が、利用者認証情報格納領域22のアクセス鍵(暗号)34を使用してアクセス鍵(平文)411を生成し、情報格納領域A241へアクセスするイメージを示したものである。
アクセス制御部113は、利用者認証部112による利用者認証後、ホストコンピュータ12に利用可能な情報格納領域にのみアクセスさせるために、利用者ID31、PINコード32及び利用可能領域33を用いて作成された暗号/復号鍵によりアクセス鍵(暗号)34を復号してアクセス鍵(平文)41を生成する。そして、アクセス制御部113は、アクセス鍵(平文)41を用いて情報格納領域24にデータを暗号化しながら書き込み、情報格納領域24からデータを復号化しながら読み出す。
【0022】
通常、可搬記憶媒体のデータを暗号化又は復号化するためのアクセス鍵は、媒体と1対1となるが、図3に示したデータ構造を持たせることにより、情報格納領域24を複数の論理的な領域に分割し、利用者とアクセス可能な情報格納領域の組み合わせを、柔軟に設定することが可能となる。
【0023】
図5は、可搬記憶媒体(USBメモリ)11の情報格納領域24を利用するまでの手続きの一例を示したフローチャートである。
ホストコンピュータ12に接続された可搬記憶媒体(USBメモリ)11は、接続と同時に媒体内の利用者認証プログラム格納領域21のみを活性化させる(S51)。この時点でホストコンピュータ12からアクセス出来るのは利用者認証プログラム格納領域21のみであり、情報格納領域24には一切アクセスできない。
利用者認証プログラム格納領域21の活性化後、ホストコンピュータ12のCPUは、可搬記憶媒体(USBメモリ)11の利用者認証プログラム格納領域21からメモリに利用者認証プログラムを読み込んで実行し、利用者認証部112を起動する(S52)。そして、ホストコンピュータ12のCPUは利用者に利用者IDとPINコードの入力を促す。この際、利用者とのユーザインタフェースにはホストコンピュータ12が用いられる。
【0024】
利用者IDとPINコードの入力が行われると、利用者認証部112は、入力された利用者IDをキーとして利用者認証情報格納領域22を検索し、PINコード32を取得する。利用者認証部112は、入力されたPINコードとPINコード32を照合し、それらが一致するとき、利用者認証成功と判定する(S53)。なお、PINコード32が例えばハッシュ化されている場合には、利用者認証部112は、入力されたPINコードをハッシュ化してPINコード32と照合する。
利用者認証に失敗した場合、再度利用者IDとPINコードの入力を促し、利用者認証に成功した場合、次の処理に移る(S54)。
利用者認証完了後、ホストコンピュータ12のCPUは、可搬記憶媒体(USBメモリ)11のアクセス制御プログラム格納領域23からメモリにアクセス制御プログラムを読み込んで実行し、アクセス制御部113を起動する。アクセス制御部113は、情報格納領域24を利用するための準備として、その利用者がアクセス可能な情報格納領域24とアクセスに必要なアクセス鍵(暗号)34の一覧を取得し、展開する(S55)。そして、アクセス制御部113は、アクセス可能な情報格納領域24をホストコンピュータ12にファイルシステムとして認識させ、ホストコンピュータ12にその情報格納領域24を読み込み及び書き込み可能な領域として割り当てる(S56)。
【0025】
これらの手順を踏んだ後に、ホストコンピュータ12は、認証された利用者がアクセス可能な情報格納領域24に対してデータ(情報)を読み込み及び書き込みすることができる。
【0026】
図6は、情報格納領域24の利用に必要なアクセス鍵(平文)41を取得するまでの手続きの一例を示したフローチャートであり、ステップS55の詳細についての説明である。
ステップS54により利用者認証に成功した後、その利用者ID31に関連付けられた利用可能領域33及びアクセス鍵(暗号)34を取得する(S61)。利用可能領域33及びアクセス鍵(暗号)34の取得後、ステップS53で使用した入力されたPINコードを取得する(S62)。
この後、利用者ID31、ステップS62で取得したPINコード及びステップS61で取得した利用可能領域33を用いて暗号/復号鍵を作成し、その暗号/復号鍵を用いてステップS61で取得したアクセス鍵(暗号)34を復号し、アクセス鍵(平文)41を生成する(S63)。利用者がアクセス可能な情報格納領域24が複数存在する場合は、全ての情報格納領域24に対して処理を繰り返す(S64)。以上の処理にて情報格納領域24にアクセスするための暗号/復号鍵であるアクセス鍵(平文)41を生成する。
【0027】
ステップS63で暗号/復号鍵作成のために使用するPINコードは、認証情報格納領域22に存在するハッシュ化されたPINコード32ではなく、ステップS53の利用者認証(利用者ID及びPINコード照合)で、利用者により入力されたPINコードとする。この仕組みにより、仮に認証情報格納領域22に不正アクセス出来たとしても、そこに格納されているPINコード32からはアクセス鍵(平文)41を生成できないため、情報格納領域24への不正アクセスを防止することができる。
【0028】
図7は、アクセス制御部113の構成の一例を示す図である。
アクセス制御部113は、情報格納領域暗号/復号部71、仮想USBメモリ構築部72、仮想USBハブ構築部73で構成される。
情報格納領域暗号/復号部71は、ホストコンピュータ12から情報格納領域24にデータ(情報)を読み込み又は書き込みする際に暗号化又は復号化を行う。
仮想USBメモリ構築部72は、情報格納領域24を仮想的なUSBメモリとして認識させる。
仮想USBハブ構築部73は、仮想USBメモリ構築部72で認識させた複数の仮想USBメモリをホストコンピュータ12に認識させるための仮想ハブ機能を提供する。仮想USBハブ構築部73は、利用者認証が完了した後に、図3の利用者ID31と利用可能領域33を参照し、認証された利用者がアクセス可能な情報格納領域24のみをホストコンピュータ12に1つ以上のUSBメモリ(ファイルシステム)として認識させる。
いずれも、利用者認証後に情報格納領域24をホストコンピュータ12に認識させる時点で動作する。
【0029】
図8は、ホストコンピュータ12から可搬記憶媒体(USBメモリ)11を見た場合における、仮想的な装置の接続状態を示す図である。
仮想USBハブ81を介して、仮想USBメモリA831、仮想USBメモリB832、及び仮想USBメモリC833は、独立した可搬記憶媒体としてホストコンピュータ12に認識される。また、利用者認証プログラム格納領域21も独立した仮想CD−ROM82として認識される。
【0030】
可搬記憶媒体(USBメモリ)11の接続時、ホストコンピュータ12からは仮想CD−ROM82のみが認識されるが、利用者認証が完了した後は、その利用者がアクセス可能な分割された情報格納領域24が1つ以上のUSBメモリとして認識される。
【0031】
図9は、ホストコンピュータ12が利用者毎の情報格納領域24を認識する例を示す。
それぞれの利用者についてホストコンピュータ12がE、F、Gドライブとして認識するのが、本実施形態に係る可搬記憶媒体(USBメモリ)11である。媒体接続後にCD−ROMドライブ1つが認識され、利用者認証完了後には1つ以上のリムーバブルディスクドライブが認識される。
なお、ホストコンピュータ12が図中の全ての利用者について認識するCドライブ、及びDドライブは、ホストコンピュータ12のハードディスク、及びホストコンピュータのDVD−ROMドライブを示しており、本発明の対象外である。
【0032】
ホストコンピュータ12が図中の全ての利用者についてEドライブとして認識するのは、利用者認証プログラム格納領域21であり、利用者認証プログラム格納領域21は仮想的にCD−ROMとして認識される。利用者認証プログラム格納領域21の割り当ては図中の破線の矢印91で示す通りであり、ホストコンピュータ12は媒体を利用する全ての利用者について利用者認証プログラム格納領域21を認識する。
一方、Fドライブ、及びGドライブとして認識されているのは、可搬記憶媒体(USBメモリ)11の利用可能な情報格納領域24であり、分割された情報格納領域24毎に仮想的なリムーバブルディスクとして認識される。情報格納領域24の割り当ては図中の実線の矢印92で示す。ここで、認識される情報格納領域24は、利用者毎に異なり、利用者認証情報格納領域22でアクセス可能と定義されている情報格納領域24のみが認識される。利用者とアクセス可能な情報格納領域24の組み合わせによっては同一の情報格納領域24を複数の利用者で共有することも可能である。利用者がアクセスできない報格納領域24はホストコンピュータ12から認識されないので、不正アクセス防止を図ることが出来る。
【0033】
なお、上述した実施形態では、可搬記憶媒体がUSBメモリである例について説明したが、本発明はUSBメモリに限定されることはなく、例えば、インタフェースをUSBからIEEE1394、Bluetooth(登録商標)に変更する、電子情報記録方式をフラッシュメモリから磁気媒体に変更する、可搬記憶媒体としてSDメモリカードを使用するなど、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な修正、及び代用を成しえることは自明である。
【0034】
また、上述した実施形態では、可搬記憶媒体をホストコンピュータに接続する例について説明したが、可搬記憶媒体を携帯電話機等他のホスト装置に接続する場合にも本発明を適用することができるのはもちろんである。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、複数の利用者によって共同利用されるUSBメモリ等の可搬記憶媒体において、ホスト装置の汎用OSで制御を行うことなく利用者認証を実現するとともに、可搬記憶媒体内部の情報格納領域を論理的に分割し、分割された情報格納領域をそれぞれ利用者毎にアクセス可能な領域として各利用者に割り当てて、個々の分割された情報格納領域に格納されている情報をアクセス権のない利用者から秘匿化することができる。
【0036】
この制御にあたっては、可搬記憶媒体外部のプログラム等を利用することなく、複数の利用者でPINコードやパスワード等を共有する必要のない安全な方法によって実現する。これにより、可搬記憶媒体を複数の利用者で共有する場合に、それぞれのパスワードを使用することにより、パスワード漏洩防止を図ることが出来る。
加えて、可搬記憶媒体内で論理的に分割された情報格納領域のうち、認証された利用者がアクセス可能な領域のみを仮想的な記憶媒体(ファイルシステム)としてホスト装置に認識させることにより、可搬記憶媒体に格納されている情報のうちアクセス権のない情報に関する情報(情報の一覧など)が秘匿化される。これにより、より一層のセキュリティ性の向上を図ることが出来る。
【符号の説明】
【0037】
11…可搬記憶媒体 (USBメモリ)、111…USBインタフェース、112…利用者認証部、113…アクセス制御部、114…情報記憶部、12…ホストコンピュータ、121…USBコントローラ、122…USBインタフェース、21…利用者認証プログラム格納領域、22…利用者認証情報格納領域、23…アクセス制御プログラム格納領域、24…情報格納領域、241…情報格納領域A、242…情報格納領域B、243…情報格納領域C、71…情報格納領域暗号/復号部、72…仮想USBメモリ構築部、73…仮想USBハブ構築部、81…仮想USBハブ、82…仮想CD−ROM、831…仮想USBメモリA、832…仮想USBメモリB、833…仮想USBメモリC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUとメモリを有するホスト装置に着脱可能な可搬記憶媒体であって、
複数の領域に分割された情報格納領域と、
複数の利用者について利用者毎に利用権限を認証するための認証情報と当該各利用者がアクセス可能な前記分割された情報格納領域を指定する1以上の情報格納領域指定情報と当該各情報格納領域指定情報に対応する第1の暗号/復号鍵とが格納されている利用者認証情報格納領域と、
当該可搬記憶媒体が前記ホスト装置に接続されると活性化され、前記ホスト装置のメモリに読み込まれて前記ホスト装置のCPUにより実行され、前記ホスト装置を、前記ホスト装置を利用している利用者により入力された認証情報と、前記利用者認証情報格納領域に格納されている認証情報とを照合し、前記利用者の利用権限の有無を認証する利用者認証手段として機能させる利用者認証プログラムが格納された利用者認証プログラム格納領域と、
前記利用者認証手段によって利用権限有りと認証されたことに応答して活性化され、前記ホスト装置のメモリに読み込まれて前記ホスト装置のCPUにより実行され、前記ホスト装置を、前記利用者認証情報格納領域に格納されている情報格納領域指定情報に基づいて前記利用者がアクセス可能な前記各分割された情報格納領域を特定し、当該特定された情報格納領域を前記ホスト装置にファイルシステムとして認識させ、前記利用者認証情報格納領域に格納されている第1の暗号/復号鍵を用いて前記ホスト装置から情報を暗号化しながら前記各分割された情報格納領域に書き込み、前記各分割された情報格納領域から情報を読み出しながら復号化するアクセス制御手段として機能させるアクセス制御プログラムが格納されたアクセス制御プログラム格納領域と、
を有する情報記憶部を備えることを特徴とする可搬記憶媒体。
【請求項2】
前記利用者認証情報格納領域に格納されている暗号/復号鍵は、前記各分割された情報格納領域にアクセスするための暗号/復号鍵を、前記利用者により入力された認証情報と前記情報記憶部の利用者認証情報格納領域に格納されている情報格納領域指定情報とを用いて作成された第2の暗号/復号鍵を用いて暗号化したものであり、
前記アクセス制御手段は、前記利用者により入力された認証情報と前記利用者認証情報格納領域に格納されている情報格納領域指定情報とを用いて前記第2の暗号/復号鍵を作成し、前記利用者認証情報格納領域に格納されている第1の暗号/復号鍵を、前記第2の暗号/復号鍵を用いて復号化し、復号化された前記第1の暗号/復号鍵を用いて、前記ホスト装置から情報を暗号化しながら前記各分割された情報格納領域に書き込み、前記各分割された情報格納領域から情報を読み出しながら復号化する、
ことを特徴とする請求項1に記載の可搬記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−203699(P2012−203699A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68371(P2011−68371)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【Fターム(参考)】