説明

可搬記憶装置

【課題】記憶領域へのアクセス可否の認証を行う場合に、使用者の指紋および心拍数を用いて不正な認証成功を確実に防止することが可能な可搬記憶装置を提供する。
【解決手段】筐体11は、使用者の指を載置する際に、安定的に指を載置するためのガイドとなる溝部16を有している。溝部16は、使用者の指の向きが筐体11の長手方向と平行に配向されるように配設されている。この溝部16の内部側面に、指紋読取部13、投光部14、および受光部15が配置される。これにより、指が指紋読取部13、投光部14、および受光部15に正しく載置された場合にのみ、指紋認証を行い、心拍数を検出することができるようになる。そして、指紋認証に成功し、かつ、検出した心拍数が所定の範囲内であると判定した場合に、フラッシュメモリ24へのアクセスが許可される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬記憶装置に関し、特に、使用者の指紋および心拍数に基づいて、記憶領域へのアクセス可否の認証を行うようにした可搬記憶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ等の情報端末を携帯化する一方で、必要な情報やデータのみを携行して、訪問先のコンピュータで必要な処理を行うといった利用も広がっている。このようなデータを携行する小型記憶装置として、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリがある。しかし、このようなUSBメモリ等の小型記憶装置は、第三者からのデータ保護に関しては無防備である。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、指紋認証によりUSBメモリに記憶されたデータに対するアクセス制限を行う技術が提案されている。
【0004】
また指紋認証以外にも、生体情報を測定し、その生体情報を用いてUSBメモリに記憶されたデータに対するアクセス制限を行うこともできる。例えば、特許文献2には、USB接続端子が設けられた生体情報測定装置に関する技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、指紋リーダによって指紋を読み取り、単一の圧力センサによって心拍のパターンを計測する指紋照合装置(特許文献3の図3参照)が開示されている。特許文献3では、単一の圧力センサ6が、指紋リーダ5の前面に凹設された指置き部5aの下部(特許文献3の段落[0012]、図3参照)に配置されることが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、指紋読取器を含むパルス酸素濃度計が開示されている。特許文献4では、指紋読取器270が、パルス酸素濃度計100の下部部分150の外側(特許文献4の段落[0020]、図2参照)、又は、上部部分110の外側、或いは、上部部分か下部部分かの側面(特許文献4の段落[0020]参照)に配置されることが記載されている。また、別の例として、スイープ型の指紋読取器270が、パルス酸素濃度計300の下部部分360の上部覆い350の上側表面(特許文献4の段落[0026]、図3参照)に配置されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−251988号公報
【特許文献2】特開2007−117641号公報
【特許文献3】特開2002−056383号公報
【特許文献4】特表2010−535594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、悪意を持った第三者が、シリコンなどで人工的に作った擬似指紋をタッチパッド13(図1、図2参照)に読み取らせることにより、認証が成功してしまう課題があった。
【0009】
また、仮に、特許文献1の技術と特許文献2の技術を組み合わせたとしても、やはり、擬似指紋での認証を防ぐことができない課題があった。具体的には、悪意を持った第三者が、特許文献1のタッチパッド13で擬似指紋を読み取らせると同時に、特許文献2の光反射型の測定機構207(図17参照)に第三者自らの指を戴置することによって、擬似指紋での認証が成功してしまうことになる。
【0010】
また、特許文献3では、単一の圧力センサ6が、指紋リーダ5の前面に凹設された指置き部5aの下部に配置されることから、指の先端部のみを覆う擬似指紋を準備し、この擬似指紋を装着した指を指置き部5aに戴置することによって、擬似指紋での認証が成功してしまうことになる。同様に、特許文献4においても、指紋読取器270に擬似指紋を読み取らせることが可能な構成となっている。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、記憶領域へのアクセス可否の認証を行う場合に、使用者の指紋および心拍数を用いて不正な認証成功を確実に防止することが可能な可搬記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、筐体と、前記筐体の長手方向の一端に配置され、電子機器と並行に抜き差しして接続する端子と、前記筐体の表面に、使用者の指の向きが前記筐体の長手方向と平行に配向されるように配設される溝部と、前記溝部の内部側面に配置され、前記使用者の指の指紋を読み取る指紋読取部と、前記溝部の内部側面に配置され、前記使用者の心拍数を検出する心拍数検出部と、前記筐体内部に、所定のデータを記憶する記憶手段と、前記指紋読取部が読み取った前記使用者の指紋を認証する認証手段と、前記認証手段により前記指紋が認証され、かつ、前記心拍数検出部が検出した前記使用者の心拍数が所定の範囲内であると判定した場合、前記記憶手段へのアクセスを許可する制御手段と、を備えることを特徴とする可搬記憶装置である。第1の発明によって、シリコンなどで人工的に作った擬似指紋での不正な認証成功を防止することが可能となる。
【0013】
前記心拍数検出部は、赤外光を発光する投光部と、前記使用者の指を透過した前記投光部の反射光を受光する受光部を有し、前記投光部と前記受光部は、前記筐体の長手方向に前記指紋読取部を挟んで対向して配置される。
これにより、指が指紋読取部、投光部、および受光部に正しく載置された場合にのみ、指紋認証を行い、心拍数を検出することができる。特に、指の先端部のみを覆う擬似指紋に対しても、不正な認証成功を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、記憶領域へのアクセス可否の認証を行う場合に、使用者の指紋および心拍数を用いて不正な認証成功を確実に防止することが可能な可搬記憶装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用したUSBメモリの外観を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線の断面図である。
【図3】受光部が検出した反射光に基づいて生成した電流波形を示す図である。
【図4】USBメモリの構成例を示すブロック図である。
【図5】USBメモリ使用者の認証処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
[本発明の実施の形態]
図1および図2は、本発明を適用したUSB(Universal Serial Bus)メモリの外観構成例を示す図である。図1は、USBメモリの外観を示す斜視図であり、図2は、図1のA−A線の断面図である。
【0018】
USBメモリ1は、扁平な矩形形状の筐体11、筐体11の一端に配置されるUSBコネクタ(端子)12、筐体11の表面上に配置される指紋読取部13、指紋読取部13を挟んで筐体11の長手方向に対向して配置される投光部14、および受光部15を備える。
【0019】
USBコネクタ12は、筐体11の長手方向と平行に抜き差ししてコンピュータ(不図示)などの電子機器のUSBポートとUSB規格に準じて通信する機能を備える。指紋読取部13は、載置された使用者の指の指紋を読み取り、読み取った指紋画像データを指紋認証部22(図4)に供給する。
【0020】
投光部14は、例えば、赤外光を発光する発光ダイオード(LED)を備えた光源である。受光部15は、受光した光の強度に応じて電流を生成する光電変換素子を備え、指を透過した投光部14の反射光を受光する。これら投光部14と受光部14は、反射型フォトリフレクタとして機能するものであって、使用者の心拍数を測定するものである。
【0021】
一般に、血流のヘモグロビンは赤外光を吸収する特性がある。従って、投光部14が発光した赤外光が指先を透過し、ヘモグロビンが赤外光を吸収することになる。そして、血流量によって投光部14の反射光が変化するため、図3に示す電流波形のように、受光部14が生成する電流値も変化する。この電流値の変化を検出することで心拍数を測定することができる。図3の縦軸は、受光部14が検出した反射光に基づいて生成した電流値を示し、横軸は、時間を示す。
【0022】
図1および図2の説明に戻る。筐体11は、使用者の指を載置する際に、安定的に指を載置するためのガイド(案内)となる溝部16を有している。溝部16は、使用者の指の向きが筐体11の長手方向と平行に配向されるように配設されている。この溝部16の内部側面に、指紋読取部13、投光部14、および受光部15が配置される。
【0023】
つまり、溝部16は、その内部側面が、指紋認証させる指を指紋読取部13上部に配置するためのガイドとして機能することで、図2に示すように、指の膨らみを溝部16に安定的に載置させて指紋を読み取らせることができる。また溝部16は、その内部側面が、心拍数を検出する指を投光部14および受光部15上部に配置するためのガイドとしても機能することで、溝部16に安定的に指先を載置させて心拍数を検出させることができる。
【0024】
以上のように、本発明のUSBメモリ1は、図1および図2に示す構成により、使用者の指を溝部16に載置させると、必ず、指先が指紋読取部13に当接するとともに、投光部14と受光部15に当接することになる。すなわち、指が指紋読取部13、投光部14、および受光部15に正しく載置された場合にのみ、指紋認証を行い、心拍数を検出することができるようになる。従って、悪意を持った第三者が、シリコンなどで人工的に作った擬似指紋を指紋読取部13に読み取らせると同時に、自らの指を投光部14と受光部15に載置することは困難となるため、不正な認証成功を防止することが可能となる。
【0025】
図4は、USBメモリ1の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図4に示すように、USBメモリ1は、USBメモリ1の駆動を制御するUSBホストコントローラ21、指紋読取部13で読み取られた指紋画像データの認証を行う指紋認証部22、受光部15からの電流値に基づいて心拍数の測定を行う心拍数測定部23、および、各種のデータを記憶する記憶領域としての機能を有するフラッシュメモリ24を備える。
【0027】
USBホストコントローラ21は、USBコネクタ12、指紋認証部22、心拍数測定部23、およびフラッシュメモリ24を制御する。例えば、USBホストコントローラ21は、指紋認証部22から供給された認証結果から指紋認証に成功したと判断し、かつ、心拍数測定部23から供給された測定結果から心拍数が所定の範囲内であると判断した場合、フラッシュメモリ24へのアクセスを許可する。
【0028】
指紋認証部22は、指紋読取部13から供給された指紋画像データと、予め登録されている指紋画像データ(アクセス許可された使用者の指紋画像データ)とを照合して指紋認証を行う。指紋認証部22は、認証結果をUSBホストコントローラ21に供給する。
【0029】
心拍数測定部23は、投光部14および受光部15を制御するとともに、受光部15から供給される電流値(図3)に基づいて、使用者の心拍数を測定する。心拍数測定部23は、測定結果である心拍数をUSBホストコントローラ21に供給する。
【0030】
フラッシュメモリ24は、USBコネクタ12を介して入力された所定のデータを記憶する。
【0031】
次に、図5のフローチャートを参照して、USBメモリ使用者の認証処理について説明する。
【0032】
ステップS1において、ユーザは、USBメモリ1のUSBコネクタ12をコンピュータのUSBポートに装着する。ステップS2において、ユーザは、指をUSBメモリ1の溝部16に載置する。
【0033】
ステップS3において、USBメモリ1の指紋読取部13は、溝部16に載置された指の指紋を読み取り、指紋画像データを指紋認証部22に供給する。指紋認証部22は、指紋読取部13から供給された指紋画像データと、予め登録されている指紋画像データとを照合して指紋認証を行う。
【0034】
ステップS4において、USBメモリ1の受光部15は、投光部14が発光した赤外光の反射光を受光し、受光した光の強度に応じて電流を生成し、心拍数測定部23に供給する。心拍数測定部23は、受光部15から供給された電流値(図3)に基づいて、使用者の心拍数を算出(測定)する。
【0035】
ステップS5において、USBホストコントローラ21は、ステップS3の処理での認証結果から指紋が一致したと判定し、かつ、ステップS4の処理で算出された心拍数が所定の範囲内(例えば、60〜80)であると判定した場合、ステップS6に進む。なお、心拍数の判定範囲は、例えば、人間の安静時の平均値である。
【0036】
ステップS6において、USBホストコントローラ21は、フラッシュメモリ24へのアクセスを許可する。ステップS7において、コンピュータは、USBポートに接続されたUSBメモリ1を認識する。
【0037】
ステップS5において、USBホストコントローラ21は、ステップS3の処理での認証結果から指紋が一致していない、または、ステップS4の処理で算出された心拍数が所定範囲内ではないと判定した場合、ステップS8に進む。ステップS8において、USBホストコントローラ21は、エラー処理を実行し、フラッシュメモリ24へのアクセスを許可しない。
【0038】
[発明の実施の形態における効果]
1.シリコンなどで人工的に作った擬似指紋での不正な認証成功を防止することが可能となる。
【0039】
2.使用者の心拍数を測定するモジュールとして反射型フォトリフレクタを用いるようにしたため、低コストで実現することが可能となる。
【0040】
3.特定アカウントでのアクセスやサーバアクセスの際の本人認証として用いたり、あるいは、ATM(Automatic Teller Machine)の取引時の本人認証に用いたりすることが可能である。
【0041】
[変形例]
1.図4のステップS5において、USBメモリ1のUSBホストコントローラ21は、指紋認証に成功し、かつ、測定した使用者の心拍数が所定の範囲内であると判定した場合に、フラッシュメモリ24へのアクセスを許可するようにしたが(ステップS6)、これに限らず、例えば、心拍数が所定の範囲内で、かつ、心拍数が一定に保たれなければフラッシュメモリ24へのアクセスを許可しないようにしてもよい。
【0042】
2.測定した心拍数に応じて、USBメモリ1のフラッシュメモリ24へのアクセスを制限するようにしてもよい。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る可搬記憶装置の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
1………USBメモリ
11………筐体
12………USBコネクタ
13………指紋読取部
14………投光部
15………受光部
16………溝部
21………USBホストコントローラ
22………指紋認証部
23………心拍数測定部
24………フラッシュメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の長手方向の一端に配置され、電子機器と並行に抜き差しして接続する端子と、
前記筐体の表面に、使用者の指の向きが前記筐体の長手方向と平行に配向されるように配設される溝部と、
前記溝部の内部側面に配置され、前記使用者の指の指紋を読み取る指紋読取部と、
前記溝部の内部側面に配置され、前記使用者の心拍数を検出する心拍数検出部と、
前記筐体内部に、所定のデータを記憶する記憶手段と、
前記指紋読取部が読み取った前記使用者の指紋を認証する認証手段と、
前記認証手段により前記指紋が認証され、かつ、前記心拍数検出部が検出した前記使用者の心拍数が所定の範囲内であると判定した場合、前記記憶手段へのアクセスを許可する制御手段と、
を備えることを特徴とする可搬記憶装置。
【請求項2】
前記心拍数検出部は、赤外光を発光する投光部と、前記使用者の指を透過した前記投光部の反射光を受光する受光部を有し、
前記投光部と前記受光部は、前記筐体の長手方向に前記指紋読取部を挟んで対向して配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の可搬記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−238186(P2012−238186A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106953(P2011−106953)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】