説明

可撓セグメントリングおよびシールドトンネルの施工方法

【課題】特に手掘り掘削などの簡単な掘削作業で構築されるシールドトンネルに、人力によって組み込むことができる新規な可撓セグメントリングと、前記可撓セグメントリングを組み込んでシールドトンネルを施工する施工方法とを提供する。
【解決手段】可撓セグメントリング1は、その全体を8分割以上した可撓セグメント4によって構成するとともに、個々の可撓セグメント4を構成する一対の枠体5をいずれも薄肉の外板7、リブ板8等で構成する。施工方法は、間隔保持材14、20で互いに固定した一対の枠体5をセグメントリング2の端面9に取り付けて可撓セグメントリング1を組み立てる工程と、前記可撓セグメントリング1の内周の全周に亘って環状の止水ゴム30を取り付ける工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にシールドマシンを使用せずに手掘り掘削などの簡易な掘削作業でシールドトンネルを構築する際に、前記シールドトンネルに組み込んでその耐震性等を向上させるための可撓セグメントリングと、前記可撓セグメントリングを組み込んだシールドトンネルを施工するための施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部の地下に地下鉄道、地下道路、放水路、共同溝、上下水道等のトンネルを建設するためにシールド工法が広く普及している。
通常のシールド工法では、トンネルの断面形状に対応した巨大なシールドマシンを用いて地盤を掘削しながら、その後に、複数のセグメントを組み合わせてセグメントリングを組み立てるとともに、組み立てたセグメントリングをトンネルの長さ方向に連結する作業を繰り返すことでトンネル甲殻が構築される。
【0003】
この際、シールドマシンの後方に構築されたトンネル甲殻の前端は、前記シールドマシンに組み込まれた推力装置に接続される。そして前記トンネル甲殻は、シールドマシンの掘削方向前方への推力を発生させるために用いられる。
地震や地盤沈下等の変動が発生した際にシールドトンネルが破損するのを防止するため、前記シールドトンネルを構成する複数のセグメントリングの中には、シールドトンネルの長さ方向と交差するギャップを有するとともに、前記ギャップを、可撓セグメントリングの内周の全周に亘る環状の止水ゴムによって止水した可撓セグメントリングが組み込まれる場合がある。
【0004】
前記可撓セグメントリングには、先に説明したシールドマシンの推力を前後のセグメントリング間で伝達するための推力受け材を、トンネル断面の周方向のおよそ20〜40箇所程度に設ける必要がある(特許文献1、2等)。
しかし、例えばトンネル本坑から枝分かれしたごく短い支坑、例えば本坑と縦坑等とを繋ぐ連絡横坑等を、本坑と同様にシールドマシンを用いた通常のシールド工法によって掘削していたのではトンネル施工の工費が嵩むという問題がある。
【0005】
そこで前記支坑等については、シールドマシンを使用せずに手掘り掘削など簡易な掘削作業でシールドトンネルを構築することが検討されている。
すなわち手掘り掘削などで掘削したトンネル内で、人力で持ち運んだり組み立てたりできる大きさのセグメントを人力によって組み合わせてセグメントリングを組み立てるとともに、組み立てたセグメントリングをトンネルの長さ方向に連結する作業を繰り返すことでトンネル甲殻が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−182495号公報
【特許文献2】特開2004−308209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に手掘り掘削などの簡単な掘削作業で構築されるシールドトンネルに、人力によって組み込むことができる新規な可撓セグメントリングと、前記可撓セグメントリングを組み込んでシールドトンネルを施工する施工方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、 複数のセグメントリングを長さ方向に連結して構成されるシールドトンネルの、前記長さ方向の途中に配設される可撓セグメントリングであって、
前記可撓セグメントリングは、シールドトンネルの周方向に8分割以上された可撓セグメントを環状に連結してなり、
前記個々の可撓セグメントは、前記シールドトンネルの長さ方向に2分割され、前記長さ方向に隣接する一対のセグメントリングにそれぞれ連結された状態で、前記長さ方向に互いに離間させて配設される一対の枠体を備えるとともに、
前記各枠体は、前記可撓セグメントリングの外形を構成する湾曲板状の、厚み22mm以下の外板と、前記外板の、シールドトンネルの長さ方向の、隣接するセグメントリング側の一端から径方向内方に突設させて前記セグメントリングへの取り付け部とされた、厚み16mm以下の平板状のリブ板とを備えており、
前記一対の枠体間は、両枠体の外板間を跨らせて前記両外板の内面に取り付けられた、可撓セグメントリングの全周に亘る環状の止水ゴムによって止水されていることを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、複数のセグメントリングを連結して構成されるシールドトンネルの長さ方向の途中に、前記請求項1記載の可撓セグメントリングを組み込むシールドトンネルの施工方法であって、
前記可撓セグメントリングと隣接する一対のセグメントリングのうち一方のセグメントリングの、他方のセグメントリングに対向する面に、前記可撓セグメントリングを構成する複数の可撓セグメントのそれぞれ一方の枠体をリブ板を介して取り付ける工程と、
前記各枠体に、それぞれ可撓セグメントを構成する一対の枠体間の間隔を保持する間隔保持材を介して各々他方の枠体を取り付ける工程と、
各一対の枠体の外板間を跨らせて、前記両外板の内面に可撓セグメントリングの内周の全周に亘る環状の止水ゴムを順次取り付ける工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、可撓セグメントリングを8分割以上に分割した小型の可撓セグメントによって前記可撓セグメントリングを構成している。
また前記個々の可撓セグメントのもとになる一対の枠体を、それぞれ可撓セグメントリングの外形を構成する湾曲板状の外板と、前記外板の、シールドトンネルの長さ方向の、隣接するセグメントリング側の一端から径方向内方に突設させて前記セグメントリングへの取り付け部とされた平板状のリブ板等とで形成している。
【0011】
しかも推力受け材を設ける必要がないため、前記枠体を形成する外板およびリブ板をこれまでよりも薄肉化することもできる。
具体的には、例えば従来は推力を受けるために32mm程度必要であったリブ板を、地中に埋設することから地中の土水圧に耐え得る程度、詳しくは16mm以下、好ましくは5mm以上、特に好ましくは9mm前後程度まで薄肉化できる。同様に外板も地中の土水圧に耐え得る程度、詳しくは22mm以下、好ましくは10mm以上、特に好ましくは16mm前後程度まで薄肉化できる。
【0012】
そのため、前記枠体それ自体を軽量化できる。
またトンネル本坑などの大型のシールドトンネルでは、可撓セグメントの、トンネル長さ方向の寸法精度を維持するべく、一対の枠体間をタック溶接等で簡易的に継げ、かつ前記一対の枠体間に推力受け材を挟んで一体に組み立てた状態のユニットを複数個、組み立てて可撓セグメントリングを構築する必要がある(ただし前記組み立てにはシールドマシンの吊り上げ・旋回装置等の機械化力を用いることができ、重量が重くてもさほど問題にはならない)。
【0013】
これに対し、手掘り等による小型のシールドトンネルでは、前記のように掘削によるマシンのジャッキ推力が発生せず、推力受け材を設ける必要がないため、2分割した枠体を別個に取り扱うことができる。そこで別途、セグメント幅寸法精度(枠体間の間隔)を保持させるために、推力受け材より簡易な構造でかつ軽量の間隔保持材を枠体に取り付けて、この間隔保持材により、可撓セグメントの、トンネル長さ方向の寸法精度を高精度に保持するようにする。
【0014】
これにより、例えば人力で、前記の手順により可撓セグメントリングを組み立てることができる。
したがって、特に手掘り掘削などの簡単な掘削作業で構築されるシールドトンネルに、人力によって組み込むことができる新規な可撓セグメントリングと、前記可撓セグメントリングを組み込んでシールドトンネルを施工する施工方法とを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特に前記手掘り掘削などの簡単な掘削作業で構築されるシールドトンネルに、人力によって組み込むことができる新規な可撓セグメントリングと、前記可撓セグメントリングを組み込んでシールドトンネルを施工する施工方法とを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の一例の可撓セグメントリングを組み込んでシールドトンネルを施工途中の状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の例の可撓セグメントリングのもとになる1つの可撓セグメントを構成する一対の枠体の概略斜視図である。
【図3】前記枠体の断面を示す断面図である。
【図4】前記枠体の、間隔保持材を取り付ける位置での断面を示す断面図である。
【図5】前記枠体を用いて、本発明の施工方法によって図1の例の可撓セグメントリングを組み立て、シールドトンネルを施工する一工程を示す断面図である。
【図6】次の工程を示す断面図である。
【図7】次の工程を示す断面図である。
【図8】次の工程を示す断面図である。
【図9】次の工程を示す断面図である。
【図10】枠体とともに図1の例の可撓セグメントリングを構成する止水ゴムの一例の一部切り欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態の一例の可撓セグメントリングを組み込んでシールドトンネルを施工途中の状態を示す概略斜視図、図2は前記図1の例の可撓セグメントリングのもとになる1つの可撓セグメントを構成する一対の枠体の概略斜視図、図3、図4は前記枠体の断面を示す断面図である。
図1、図2を参照して、この例の可撓セグメントリング1は、複数のセグメントリング2を長さ方向Lに連結して構成される円筒状のシールドトンネル3の、前記長さ方向Lの途中に配設されるものであって、前記シールドトンネル3の周方向Cに8分割以上、図の例では16分割された可撓セグメント4を環状に連結して構成されている。
【0018】
また個々の可撓セグメント4は、前記シールドトンネル3の長さ方向Lに2分割され、前記長さ方向Lに隣接する一対のセグメントリング2にそれぞれ連結された状態で、前記長さ方向Lに互いに離間させて配設される一対の枠体5を備えている。前記複数の枠体5を、それぞれ互いに離間させて環状に連結することで、シールドトンネル3の長さ方向Lと交差するギャップ6が形成される。
【0019】
図1〜図4を参照して、各枠体5は、前記可撓セグメントリング1の外形を構成する外板7と、前記外板7の、シールドトンネル3の長さ方向Lの、隣接するセグメントリング2側の一端から径方向内方に突設されたリブ板8とを備えている。
このうち外板7は、図の例の場合、円環状の可撓セグメントリング1の外形に沿ってシールドトンネルの周方向Cに湾曲された湾曲板状に形成されている。
【0020】
またリブ板8は、隣接するセグメントリング2の平面状の端面9に沿う平板状に形成されて、前記セグメントリング2への取り付け部とされている。
図3を参照して、前記リブ板8には、前記セグメントリング2に枠体5を取り付けるためのボルト10が挿通される通孔11が形成されている。
また図2、図3を参照して、外板7の径方向内方側の、前記長さ方向Lの中間位置には、前記リブ板8と平行な平板状の補助リブ板12が径方向内方に突出させて設けられている。
【0021】
前記補助リブ板12は、前記シールドトンネル3の径方向内方への突出高さが、周方向Cの中央でリブ板8と同一、その両側でリブ板8の約半分とされた略凸字状に形成されている。
前記中央部の径方向内方側の先端には、リブ板8との間を繋ぐ外板7と平行な湾曲板状の取付板13が設けられている。
【0022】
図4を参照して、前記取付板13には、後述する施工方法において一対の枠体5間の間隔を保持する内側間隔保持材14を取り付けるためのボルト15(図5参照)が挿通される通孔16が形成されている。また取付板13の径方向外方側の面には、前記通孔16を挿通されたボルト15と螺合されるナット17が固定されている。
図2を参照して、前記リブ板8、および補助リブ板12は、いずれも外板7の周方向の全幅に亘って設けられており、それぞれの両端間が端板18と接続されている。
【0023】
端板18は、前記円筒状のシールドトンネル3の中心軸線を通る平面と一致する平板状とされ、外板7とも接続されて、前記外板7の周方向の両端から径方向内方へ突設されており、隣り合う枠体5同士を連結して円環状に組み立てる際の連結部として機能する。
すなわち、図示していないが前記端板18には、前記連結のためのボルトが挿通される通孔が形成されている。またこれも図示していないが、前記端板18同士をボルトによって互いに固定して隣り合う枠体5同士を連結するに際し、例えば間に水膨張ゴム等の止水材を挟むことで止水がされる。
【0024】
図2および図3を参照して、前記取付板13と両側の端板18との間の、周方向Cの中間位置には、前記外板7、リブ板8、および補助リブ板12と接続させて、前記シールドトンネル3の中心軸線を通る平面と一致する平板状の補強板19が、径方向内方に突出させて設けられている。
図4を参照して、前記外板7の、補助リブ板12を挟んでリブ板8と反対側の領域には、後述する施工方法において一対の枠体5間の間隔を保持する外側間隔保持材20や止水ゴム21を取り付けるためのボルト22(図5〜図7参照)が挿通される通孔23が形成されている。また外板7の径方向外方側の面(外面)には、前記通孔23を挿通されたボルト22と螺合されるナット24が固定されている。
【0025】
前記各部からなる枠体5には、先に説明したように推力受け材を設ける必要がないため、前記各部、特に外板7やリブ板8をこれまでより薄肉化することができる。
具体的には、例えば従来は推力を受けるために32mm程度必要であったリブ板8を、地中に埋設することから地中の土水圧に耐え得る程度、詳しくは16mm以下、好ましくは5mm以上、特に好ましくは9mm前後程度まで薄肉化できる。同様に外板7も地中の土水圧に耐え得る程度、詳しくは22mm以下、好ましくは10mm以上、特に好ましくは16mm前後程度まで薄肉化できる。
【0026】
そのため可撓セグメントリング1を8分割以上の多分割として個々の可撓セグメント4、並びに前記可撓セグメント4を構成する枠体5を小型化したこと、前記個々の可撓セグメント4を構成する一対の枠体5を別個に取り扱うことができることと相まって、前記枠体5を軽量化して、例えば人力で、前記の手順により可撓セグメントリング1を組み立てることができる。
【0027】
したがって、特に手掘り掘削などの簡単な掘削作業で構築されるシールドトンネル3に、人力によって可撓セグメントリング1を組み込むことが可能となる。
図5〜図9はそれぞれ、前記枠体5を用いて、本発明の施工方法によって図1の例の可撓セグメントリング1を組み立て、シールドトンネル3を施工する工程を示す断面図である。
【0028】
図1〜図5を参照して、本発明の施工方法においては、まず図1において奥側から手前へ向けて順次、シールドトンネル3の長さ方向Lに連結してきた最先端のセグメントリング2の端面9に、可撓セグメント4を構成する一方の枠体5を取り付ける。
詳しくは図3を参照して、前記枠体5のリブ板8に設けた通孔11と、セグメントリング2の端面9に設けた通孔25とを一致させた状態でボルト10を挿通し、ナット26を螺合させて締め付けることで、前記端面9に枠体5を取り付ける。
【0029】
また隣り合う枠体5間は、図示していないが端板18間に水膨張ゴム等の止水材を挟んだ状態で、両端板18に設けた通孔同士を一致させてボルトを挿通し、ナットを螺合させて締め付けることで互いに固定する。
この操作をセグメントリング2の全周に亘って繰り返し行い、可撓セグメントリング1のもとになる枠体5のリングを組み立てる。
【0030】
次に図4、図5を参照して、個々の枠体5に、それぞれ可撓セグメントを構成する一対の枠体間の間隔を保持する内側間隔保持材14、および外側間隔保持材20を取り付ける。
すなわち内側間隔保持材14は、図示しない通孔を、枠体5の取付板13に設けた通孔16と一致させてボルト15を挿通し、ナット17と螺合させて締め付けることで互いに固定する。
【0031】
また外側間隔保持材20は、図示しない通孔を、枠体5の外板7に設けた通孔23と一致させてボルト22を挿通してナット24と螺合させるとともに、さらに径方向内方側からナット27を螺合させて締め付けることで互いに固定する。
次いで前記内側間隔保持材14、および外側間隔保持材20の先端側(図4、図5において右側)に、先の枠体5とともに個々の可撓セグメント4を構成するもう一方の枠体5を取り付ける。
【0032】
詳しくは、内側間隔保持材14の前記先端側に設けた図示しない通孔と、もう一方の枠体5の取付板13に設けた通孔16とを一致させてボルト15を挿通し、ナット17と螺合させて締め付けることで互いに固定する。
また外側間隔保持材20の前記先端側に設けた図示しない通孔と、もう一方の枠体5の外板7に設けた通孔23と一致させてボルト22を挿通してナット24と螺合させるとともに、さらに径方向内方側からナット27を螺合させて締め付けることで互いに固定する。
【0033】
また隣り合う枠体5間は、図示していないが端板18間に水膨張ゴム等の止水材を挟んだ状態で、両端板18に設けた通孔同士を一致させてボルトを挿通し、ナットを螺合させて締め付けることで互いに固定する。
この操作をセグメントリング2の全周に亘って繰り返し行い、先に組み立てた枠体5のリングに対してシールドトンネル3の長さ方向に互いに離間させた状態でもう一方の枠体5のリングを組み立てる。
【0034】
これにより前記両リング間に、シールドトンネル3の長さ方向Lと交差するギャップ6が形成される。
前記ギャップ6は、一対の枠体5の外板7間を跨らせて前記外板7の外面に取り付けた薄板状のカバープレート28によって塞いでおく。
次に図6を参照して、手掘り掘削などで掘削したトンネルの内面と、構築途中のシールドトンネル3との隙間に裏ゴメ材29を注入して硬化させる。
【0035】
裏ゴメ材29の注入は、例えばセグメントリング2、可撓セグメントリング1を数個連結する毎に繰り返し行うようにする。
次に図6、図7を参照して、可撓セグメントリング1の全周のうちの一部、例えば全周の1/12(中心角で表して30°)程度の作業範囲内の可撓セグメント4において、ナット27の締め付けおよび螺合を解除して外側間隔保持材20を取り外すとともに、ボルト15の締め付けおよび螺合を解除して内側間隔保持材14を取り外し、前記取り外した後の一対の外板7の径方向内方側の面(内面)に、前記両外板7間を跨らせて可撓セグメントリング1の全周に亘る環状の止水ゴム30の周方向の一部を取り付けたのち、図示していないが、再び内側間隔保持材14をボルト15の螺合および締め付けによって取り付ける。
【0036】
この一連の作業を、前記作業範囲を周方向にずらしながら順次繰り返すことで、可撓セグメントリング1の全周、すなわち360°において止水ゴム30を取り付ける。
この取り付け状態では、可撓セグメントリング1の全周に亘って、図8に示すように、止水ゴム30が取り付けられることで止水がされるとともに、内側間隔保持材14が取り付けられることで、前記可撓セグメントリング1を構成する個々の可撓セグメント4の一対の枠体5間の間隔が高精度に保持される。
【0037】
図10は、前記止水ゴム30の一例の一部切り欠き斜視図である。
図7、図10を参照して、この例の止水ゴム30は、可撓セグメントリングの全周に亘る環状に形成されたもので、前記一対の外板7の内面にそれぞれ取り付けるための一対の板状の取付部31と、両取付部31間を繋いで、シールドトンネル3の径方向内方へ突出させた湾曲板状の中間部32と、前記両取付部31の先端に設けられた、前記取付部31、中間部32より厚みの大きい係合部33とを備えている。
【0038】
前記各部は、ゴム等の弾性材料によって一体に形成されており、両係合部33内には、それぞれ補強のために線材34が埋設されている。また取付部31、中間部32、および係合部33内には、これも補強のために1枚または2枚以上の基布35が埋設される。
前記両取付部31を、それぞれ外板7の内面に接触させながら、図示しない通孔にボルト22を挿通させた断面略L字状の押え金具36と、前記押え金具36と取付部31との間に介在させた平板状のスペーサ37とを、前記ボルト22に螺合させたナット38を前記外板7の方向に締め付けることで、止水ゴム30が、前記外板7間を跨らせた状態でその内面に取り付けられる。
【0039】
すなわち前記締め付けにより、スペーサ37によって取付部31を厚み方向に圧縮して外板7に圧接させるとともに、前記スペーサ37と係合部33とをシールドトンネル3の長さ方向に互いに係合させて取付部31の抜け止めとして機能させることで、止水ゴム30が、一対の外板7の内面に、前記外板7間を跨らせた状態で取り付けられる。これにより、シールドトンネル3の長さ方向Lに連結してきた最先端のセグメントリング2に連結させて可撓セグメントリング1が構成される。
【0040】
次に図8を参照して、前記可撓セグメントリング1を構成する個々の可撓セグメント4の、先端側(図において右側)の枠体5にセグメントを順次取り付けるとともに隣り合うセグメントを連結することで、新たなセグメントリング2を連結する。
セグメントの取り付けは、先の枠体5の場合と同様である。すなわち枠体5のリブ板8に設けた通孔11と、セグメントリング2のもとになるセグメントの端面9に設けた通孔25とを一致させた状態でボルト10を挿通し、ナット26を螺合させて締め付けることで、前記枠体5に新たなセグメントを取り付ける(図9参照)。
【0041】
この際、前記のように個々の可撓セグメント4を構成する一対の枠体5間の間隔は、内側間隔保持材14によって高精度に保持されている。
このあとさらにセグメントリング2、可撓セグメントリング1を順次連結する作業と、前記セグメントリング2、可撓セグメントリング1を数個連結する毎に裏ゴメ材29を注入する作業と、裏ゴメ材29の硬化により可撓セグメントリング1の構造が安定した時点で、図示していないが内側間隔保持材14を取り外す作業とを繰り返すことでトンネル甲殻を構築する。
【0042】
そして図9を参照して、止水ゴム30より径方向内方側に、前記押え金具36に取り付けた一対の支持体39を介して可撓セグメントリング1の全周に亘る環状の、例えば発泡ゴム等からなる目地材40を保持した状態で、各セグメントリング2、および可撓セグメントリング1の内周面をモルタル等の仕上材41で仕上げることでシールドトンネル3が施工される。
【0043】
前記施工方法によれば、先に説明したように個々の枠体5を軽量化して、例えば人力で、前記の手順により可撓セグメントリング1を組み立てることができる。
したがって、特に手掘り掘削などの簡単な掘削作業で構築されるシールドトンネル3に、人力によって可撓セグメントリング1を組み込むことが可能となる。
なお本発明の構成は、以上で説明した各図の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 可撓セグメントリング
2 セグメントリング
3 シールドトンネル
4 可撓セグメント
5 枠体
6 ギャップ
7 外板
8 リブ板
9 端面
10 ボルト
11 通孔
12 補助リブ板
13 取付板
14 内側間隔保持材
15 ボルト
16 通孔
17 ナット
18 端板
19 補強板
20 外側間隔保持材
21 止水ゴム
22 ボルト
23 通孔
24 ナット
25 通孔
26 ナット
27 ナット
28 カバープレート
29 裏ゴメ材
30 止水ゴム
31 取付部
32 中間部
33 係合部
34 線材
35 基布
36 押え金具
37 スペーサ
38 ナット
39 支持体
40 目地材
41 仕上材
C 周方向
L 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントリングを長さ方向に連結して構成されるシールドトンネルの、前記長さ方向の途中に配設される可撓セグメントリングであって、
前記可撓セグメントリングは、シールドトンネルの周方向に8分割以上された可撓セグメントを環状に連結してなり、
前記個々の可撓セグメントは、前記シールドトンネルの長さ方向に2分割され、前記長さ方向に隣接する一対のセグメントリングにそれぞれ連結された状態で、前記長さ方向に互いに離間させて配設される一対の枠体を備えるとともに、
前記各枠体は、前記可撓セグメントリングの外形を構成する湾曲板状の、厚み22mm以下の外板と、前記外板の、シールドトンネルの長さ方向の、隣接するセグメントリング側の一端から径方向内方に突設させて前記セグメントリングへの取り付け部とされた、厚み16mm以下の平板状のリブ板とを備えており、
前記一対の枠体間は、両枠体の外板間を跨らせて前記両外板の内面に取り付けられた、可撓セグメントリングの全周に亘る環状の止水ゴムによって止水されていることを特徴とする可撓セグメントリング。
【請求項2】
複数のセグメントリングを連結して構成されるシールドトンネルの長さ方向の途中に、前記請求項1記載の可撓セグメントリングを組み込むシールドトンネルの施工方法であって、
前記可撓セグメントリングと隣接する一対のセグメントリングのうち一方のセグメントリングの、他方のセグメントリングに対向する面に、前記可撓セグメントリングを構成する複数の可撓セグメントのそれぞれ一方の枠体をリブ板を介して取り付ける工程と、
前記各枠体に、それぞれ可撓セグメントを構成する一対の枠体間の間隔を保持する間隔保持材を介して各々他方の枠体を取り付ける工程と、
各一対の枠体の外板間を跨らせて、前記両外板の内面に可撓セグメントリングの内周の全周に亘る環状の止水ゴムを順次取り付ける工程と、
を含むことを特徴とするシールドトンネルの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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