説明

可撓性のある半結晶ポリアミド

【課題】自動車、重量商品車両用の流体(ガソリン、ディーゼルオイル、液圧ブレーキ、ブレーキ回路、圧縮空気、液圧クラッチ流体)の貯蔵、輸送装置で使用な組成物、構造物、タンク、ホース、パイプ、容器。
【解決手段】下記(1)〜(4)の重量%からなる組成物(合計100重量%):(1)50〜100%の式:X.Y/Zまたは6.Y2/Zの少なくとも一種のポリアミドA1(ここで、XはC6〜10脂肪族ジアミンの残基、YがC10〜14脂肪族ジカルボン酸の残基、Y2はC15〜20脂肪族ジカルボン酸の残基、Zはラクタムの残基、α、ω−アミノカルボン酸の残基、単位X1、Y1の中から選択される少なくとも一つの単位(ここで、X1は脂肪族ジアミンの残基、Y1は脂肪族ジカルボン酸の残基)を表し、Z/(X+Y+Z)およびZ/(6+Y2+Z)の重量比は0〜15%)、(2)0〜40%の可塑剤、(3)0〜50%の衝撃改質剤、(4)0〜50%のポリアミドA2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性のある半結晶ポリアミドに関するものである。
本発明の可撓性の半結晶ポリアミドは押出成形または射出成形によって自動車で使用される流体および溶剤に対する抵抗力が要求される部品を製作するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド、特にナイロン-12(PA-12)は優れた機械特性と、ガソリン、オイル、油脂に対する高い耐久性によって自動車および重荷重車両で広く使われている。しかし、エンジンが改良され、その開発環境が変化した結果、PA-12の使用温度より20〜30℃高い温度で使用でき、しかも優れた柔軟性、衝撃強度、化学抵抗および押出成形性を維持した耐熱性プラスチックが求められている。
【0003】
融点がPA-12より高いポリアミドは公知で、例えばPA-6、PA-66、PA-46、PA-6、10、PA-6、12、PA-1010等がある。しかし、純粋なPAは可撓性が十分でないという問題は未解決である。下記文献にはポリアミドの50〜99%と、触媒性ポリアミドの1〜50%と、可塑剤の0〜40%と、可撓性改質剤の0〜60%(好ましくは0〜30%)とから成る(合計100重量%)ポリアミドをベースにした熱可塑性組成物が記載されている。
【特許文献1】欧州特許EP 1038 921号公報
【0004】
この組成物は例えば可撓性ホースを作るのに有用である。この特許の実施例はPA-11とPA-12だけで、その他のホモポリアミドおよびコポリアミドに関しては説明がない。
下記文献の実施例に記載の成形材料は、酸末端基を有するPA-6,12と、アミン末端基を有するPA-6,12と、(無水マレイン酸がグラフトされた)グラフトEPRと、エチレン/アクリル酸アルキル/メタクリル酸グリシジルコポリマーと、可塑剤(BBSA)とから成る。
【特許文献2】米国特許出願公開第2002-0019477号明細書
【0005】
その他のホモポリアミドおよびコポリアミドに関する説明もある。
下記文献には多層構造体で使用されるポリアミドをベースにした組成物が記載されている。
【特許文献3】米国特許出願公開第2002-0082352号明細書
【0006】
実施例に記載の組成物は、高粘性PA-12と、ポリアミン/ポリアミドコポリマーと、グラフトSEBSまたはエチレン/プロピレンブロック共重合体とグラフトポリプロピレンとの混合物とから成る。明細書中にはその他のホモポリアミドおよびコポリアミドに関する説明もある。
下記文献には多層構造で使用されるポリアミドをベースにした組成物が記載されている。
【特許文献4】米国特許出願公開第2002-0119272号明細書
【0007】
多層構造の一つの層は下記から成る:
(1)PA-6、PA-66およびPA-6から選択されたポリアミド/6,6、
(2)ポリアミン-ポリアミド、
(3)PA-11、PA-12、PA-6、12、PA-1012およびPA-12,12から選択される任意成分のポリアミド
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、6〜10の炭素原子を有するジアミンと、10〜12の炭素原子を有する二酸と、任意成分としてのラクタム、α、ω−アミノカルボン酸、ジアミンおよび二酸の中から選択される少なくとも一種のモノマーとを鎖状に結合して得られるポリアミドをベースにした組成物を見出した。この組成物はPA-12の使用温度より20〜30℃以上高い温度で使用でき、しかも、優れた柔軟性、耐衝撃強度、耐化学薬品性および押出成形性を維持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(1)〜(4)の重量%からなる組成物(合計100重量%)にある:
(1)式:X.Y/Zまたは6.Y2/Zの少なくとも一種のポリアミドA1:50〜100%、
(ここで、
Xは6〜10の炭素原子数を有する脂肪族ジアミンの残基、
Yが10〜14の炭素原子数を有する脂肪族ジカルボン酸の残基、
Y2は15〜20の炭素原子数を有する脂肪族ジカルボン酸の残基、
Zはラクタムの残基、α、ω−アミノカルボン酸の残基、単位X1、Y1の中から選択される少なくとも一つの単位(ここで、X1は脂肪族ジアミンの残基、Y1は脂肪族ジカルボン酸の残基)を表し、
Z/(X+Y+Z)およびZ/(6+Y2+Z)の重量比は0〜15%である)
(2)可塑剤:0〜40%、
(3)衝撃改質剤:0〜50%、
(4)ポリアミドA2:0〜50%。
【0010】
ポリアミドA1の固有粘度は0.5〜2、好ましくは0.8〜1.8であるのが好ましい。
この組成物の利点は水捕捉率(water uptake)が低いことであり、この水捕捉率は3.5重量%未満、好ましくは3重量%未満である。PA−6と比較した他の利点は塩化亜鉛に対する耐久性である。
Zの配合比率はPA−X,YとPA−6,Y2の結晶化度を下げるのに十分で且つ可塑剤または衝撃改質剤の添加を容易にし、しかも、得られるコポリアミドの融点がPA−12より低くならないようにすることである。
【0011】
好ましい組成物は下記である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:55〜100%、
可塑剤:0〜40%、
衝撃改質剤:0〜45%、
ポリアミドA2:0〜45%。
【0012】
別の好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:55〜100%
可塑剤:0〜20%、
衝撃改質剤:0〜45%、
ポリアミドA2:0〜45%。
【0013】
別の好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:55〜100%、
可塑剤:0〜10%、
衝撃改質剤:0〜10%、
ポリアミドA2:0〜45%。
【0014】
より好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:55〜95%、
可塑剤:0〜20%、
衝撃改質剤:0〜45%、
ポリアミドA2:0〜45%、
(ただし、可塑剤、衝撃改質剤およびポリアミドA2の合計は5〜45%)。
【0015】
より好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1の55〜85%、
可塑剤:0〜20%、
衝撃改質剤:0〜45%、
ポリアミドA2:0〜45%、
(ただし、可塑剤、衝撃改質剤およびポリアミドA2の合計は15〜45%である)。
【0016】
より好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:55〜80%、
可塑剤:0〜20%、
衝撃改質剤:0〜45%、
ポリアミドA2:0〜45%、
(ただし、可塑剤、衝撃改質剤およびポリアミドA2の合計は20〜45%)。
【0017】
より好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:55〜80%、
可塑剤:4〜20%、
衝撃改質剤:5〜25%、
ポリアミドA2:0〜36%、
(ただし、可塑剤、衝撃改質剤およびポリアミドA2の合計は20〜45%)。
【0018】
別の好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一種のポリアミドA1:70〜95%、
可塑剤:0〜20%、
衝撃改質剤:0〜30%、
ポリアミドA2:0〜30%、
(ただし、可塑剤、衝撃改質剤およびポリアミドA2の合計は5〜30%)。
【0019】
別の好ましい実施例での組成物は下記組成物である(合計100重量%):
少なくとも一つのポリアミドA1:70〜95%、
可塑剤:5〜20%、
衝撃改質剤:0〜30%、
ポリアミドA2:0〜30%、
(ただし、可塑剤、衝撃改質剤およびポリアミドA2の合計は5〜30%)。
【0020】
本発明はさらに、粉末の形をした本発明組成物とその物品コーティング(塗装)での使用に関するものである。この粉末はペレットの冷凍粉砕(cryogenic grinding)によるか、ペレットをエチルアルコール中に溶かし、沈澱させて作ることができる(下記文献参照)。
【特許文献5】米国特許第4334056号明細書
【0021】
この粉末は物品上を予め形成した粉末の薄い層を溶融することで物品をフィルムで被覆するプロセスで使用するのに有利である。粉末を溶融して物品を被覆する工業的プロセスは複数存在する。
最初のプロセスは静電粉末塗装法である。この方法では粉末に静電気を与え、この粉末をゼロ電位にある被覆すべき物品と接触させる。例えば、コロナ放電、摩擦帯電またはその両者の組合せによって粉末を帯電させる静電スプレーガン中に粉末を噴射して粉末を帯電し、それをゼロ電位にある物体上へ噴霧して被覆を作る。静電粉末塗装法の他の形は、ゼロ電位にある物品を帯電した粉末の流動床中に浸漬する方法である。この方法では流動床内で物品に所望の粉末が被覆される。この粉末は小さな固体粒子群の形をしており、例えば任意形状をした0.01〜1mm(好ましくは10〜200マイクロメートル)の寸法を有し、流動床中では空気、その他の気体によって流動状態にある。粉末の帯電は電極、コロナ効果によって行なうか、摩擦電気効果を付与させる流動床内部および/または外部の任意の装置で行なうことができる。次いで、粉末で被覆された物品をオーブンに入れ、皮膜が形成されるのに十分に高い温度で粉末を溶融する。
【0022】
第2の粉末プロセスは被覆される物体を粉末の融点以上の温度に予熱し、物品が熱いうちに粉末の流動床中に浸漬して、粉末を加熱された物品と接触させ、溶融させて皮膜を形成し、固体の被覆を結成する方法である。このプロセスは「流動浸漬塗装」プロセスとよばれている。
【0023】
本発明粉末は上記の両方のプロセスで使用できる。例えば、ポリアミド10.10/6のカプロラクタムが10重量10%である縮重合で得られるポリアミド10.10/6の場合、融点は183℃で、コーテングフィルムは190℃以下で形成できる。加水分解に対する安定化剤、例えばカルビジイミド(Rhein Chemieから市販のStabaxol、登録商標)、その他の安定化剤や、通常の添加剤を加えても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0024】
本発明組成物は溶剤に溶かしてワニスまたはコーテング剤として使用することもできる。すなわち、ポリアミドを含む溶剤で物品を被覆した後、溶剤を回収するとポリアミドでコーティングされた物品が得られる。溶剤としてはアルコールまたは芳香族化合物、例えばブタンジオール、ベンゾイックアルコール、メタクレゾール、トルエン、フェノール、キシレンまたはこれらの混合液が使用できる。より好ましのはポリアミドA2を混合したPA6.10/Zである。A2はPA12であるのが好ましい。Zは10〜15%であるのが好ましい。A1/A2の配合比は60/40〜70/30、好ましくは約65/35であるのが好ましい。一つの例はZが15であるPA6.10/6.6をPA12と混合したもので、PA6.10/6.6が65重量%、PA12が35重量%のものは融点が155℃で、固有粘度(ISO307(1994)に従ってメタクレゾール中で20℃で測定)が0.6dl/gである。
本発明組成物は加熱した溶剤中に1〜30%、好ましくは1〜25%溶ける。この溶液は室温で60日以上安定である。
【0025】
本発明組成物は熱可塑性ポリオレフィン、例えばHDPE、LDPEまたはLLDPEを含むことができる。
ポリアミドA1はPA−6yであるのが好ましい(ここで、6はヘキサメチレンジアミン残基を表し、yは10〜18の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸残基を表す)。
ポリアミドA1はPA−610(ヘキサメチレンジアミン単位とセバシン酸単位を有する)、PA−612(ヘキサメチレンジアミン単位とドデカンジオン酸単位を有する)、PA−614(ヘキサメチレンジアミン単位とC14酸単位を有する)、PA−618(ヘキサメチレンジアミン単位とC18酸単位を有する)、PA−10,10(1,10−デカンジアミン単位とセバシン酸単位を有する)であるのがより好ましい。
【0026】
本発明はさらに、上記組成物から成る層を有する構造物に関するものである。この構造物は単層すなわち上記組成物から成る構造物でも、多層すなわち上記組成物から成る層を有する多層構造物でもよい。この構造物は流体の保存または輸送装置、特に自動車および大型車両の流体を保存または輸送するための装置を作るのに有用である。上記の流体は例えばガソリン、ディーゼルオイル、液圧ブレーキ液、大型車両のブレーキ回路用圧縮空気、液圧クラッチ流体等である。上記装置はタンク、ホース、パイプ、コンテナ、容器にすることができる。本発明はこの装置にも関するものである。上記構造物は他の材料から成る他の層を含むことができる。
【0027】
本発明組成物の利点はPA−12と比較した場合、それより20〜30℃高い使用温度を有し、熱老化性が改善される点にある。
多層構造物にした場合の、Xがヘキサメチレンジアミンで、Yがセバシン酸である本発明組成物の他の利点は、PA−6(またはPA−6をマトリックスとする混合物)およびEVOHに接着することである。このEVOH層は衝撃改質剤(例えば、グラフトされていてもよいEPRまたはEPDM)を含むことができる。従って、(外側から内側へ向かって)連続した下記の層を有する構造にすることができる:
(1)PA−6,y/PA−6またはPA−6をマトリックスとする混合物、
(2)PA−6,y/EVOH/PA−6またはPA−6をマトリックスとする混合物、
(3)PA−6,y/EVOH/PA−6,y、
(4)PA−6,y/PA−6またはPA−6マトリックスとする混合物/EVOH/PA−6またはPA−6をマトリックスとする混合物、
(5)PA−6,y/PA−6またはPA−6マトリックスとする混合物/EVOH/PA−6またはPA−6またはPA−6,yマトリックスを有する混合物。
【0028】
外側層とその次の層との間に結合層は不必要である。しかし、構造を補強するために外側層とその次の層との間に結合層を配置することもできる。
しかし、EVOHが充分な量のエチレンを含む場合にだけPA−6,10をEVOHへ直接接着することが効果的で、EVOHのエチレン含有量が同じ場合、PA−6,10への接着力はPA−6,12への接着力より大きい。EVOHのエチレン含有量が低い場合には、構造(4)または構造(5)を使用するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ポリアミドA1と「X」において、ジアミンは直鎖のα、ω−ジアミンにすることができ、分枝していてもよく、また、線形(直鎖)ジアミンと分岐ジアミンとの混合物でもよい。
【0030】
「Y」において、二酸(ジアシッド)は直鎖のα、ω−二酸にすることができ、分枝していもよく、また、線形(直鎖)二酸と分岐し二酸との混合物でもよい。Yは10〜12の炭素原子を含むのが好ましい。
「Z」において、その配合比はPA−X,Yの結晶化度を下げ、可塑剤または衝撃改質剤を加えるのを容易にするのに十分な量であるが、得られたコポリアミドがPA−12の融点以下となるような高い比率にする。この配合比は15%以下であるが、Zの成分の性質に依存して変えることができる。当業者はPA−X,YおよびPA−X,Y/ZのDSC(示差走査熱量)を測定することによって結晶化度が低下するか否かを容易にチェックッできる。Zの配合比は0〜10%、好ましくは1〜5%にするのが有利である。ラクタムはカプロラクタムおよびラウリルラクタムから選択することができる。X1の炭素原子数は6〜14にすることができる。Y1の炭素原子数は6〜14にすることができる。ポリアミドA1は公知のポリアミドの生産方法を用いて製造できる。
【0031】
可塑剤はベンゼンスルホンアミド誘導体、例えばN−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)、エチルトルエンスルホンアミドまたはN−シクロヘキシルトルエンスルホンアミド、ヒドロキシ安息香酸のエステル、例えば2−エチルヘキシル−パラヒドロキシベンゾアート、2−デシルヘキシル−パラ−ヒドロキシベンゾアート、他のテトラヒドロフルフリルアルコールのエステルまたはエーテル、例えばオリゴがエトキシル化したテトラヒドロフルフリルアルコール、クエン酸またはヒドロキシマロン酸のエステル、例えばオリゴエトキシル化されたマロネートから選択できる。さらに、デシルヘキシル−パラ−ヒドロキシベンゾエイトおよびエチルヘキシル−パラ−ヒドロキシベンゾエイトを挙げることもできる。特に好ましい可塑剤はN−ブチルベンゼンスルホンアミド(BBSA)である。
【0032】
衝撃改質剤としては例えばポリオレフィン、架橋ポリオレフィン、EPR、EPDM、SBSおよびSEBSエラストマーを挙げることができる。ポリアミド、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーと容易に相溶化させるためにこれらのエラストマーをグラフトすることもできる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有する上記コポリマー自体は公知であり、PEBA(ポリエーテル−ブロックアミド)とよばれている。さらに、アクリルエラストマー、例えばNBR、HNBRまたはX−NBRタイプから作られた衝撃改質剤を挙げることもできる。架橋ポリオレフィンおよびポリオレフィンに関しては以下で詳細に説明する。
【0033】
架橋ポリオレフィンの架橋相(phase)は (i)互い反応する基を有する2つのポリオレフィンの反応、(ii)モノマー、オリゴマーまたはポリマー状のジアミノ分子とマレイン酸化されたポリオレフィンとの反応または(iii)例えば過酸化物を経由したルートで架橋可能な不飽和基を有する一種以上の不飽和ポリオレフィンの反応で得られる。
2種のポリオレフィンの架橋反応の架橋相は例えば下記化合物の反応から得られる:
(1)不飽和エポキシドを有する化合物(A)、
(2)不飽和無水カルボン酸を有する化合物(B)、
(3)任意成分の不飽和カルボン酸またはα、ω−アミノカルボン酸を有する化合物(C)。
【0034】
架橋ポリオレフィンの上記化合物(A)の例としてはエチレンと飽和エポキシド登録商標を有する化合物を挙げることができる。
本発明の第1の形態では、(A)はエチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーか、不飽和エポキシドがグラフトしたポリオレフィンである。不飽和エポキシドがグラフトしたポリオレフィンの用語「ポリオレフィン」とはオレフィン単位、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテンまたはその他任意のα-オレフィン単位を有するポリマーを意味する。例としては下記を挙げることができる:
【0035】
(1)ポリエチレン、例えばLDPE、HDPE、LLDPEまたはVLDPE、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、EPR(エチレン‐プロピレンゴム)、メタロセンPE(シングルサイト触媒を用いて得られるコポリマー)、
(2)スチレン/エチレン−ブチレン/スチレン(SEBS)ブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロック共重合体またはエチレン−プロピレン−ジエンモノマ(EPDM)ターポリマー、
(3)エチレンと不飽和カルボン酸の塩またはエステルまたは飽和カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも一種の化合物とのコポリマー。
このポリオレフィンはLLDPE、VLDPE、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニールコポリマーまたはエチレン/アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの中から選択するのが好ましい。その密度は0.86〜0.965であるのが好ましく、メルトフローインデックス(MFI)(190℃、2.16kg)は0.3〜40(g/10分)にすることができる。
【0036】
エチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーとしては例えばエチレンとアルキル(メタ)アクリレートまたは不飽和エポキシドとのコポリマーまたはエチレンと飽和カルボン酸のビニルエステルおよび不飽和エポキシドとのコポリマーを挙げることができる。エポキシドの量はコポリマーの重量の15重量%以下、エチレンの量は少なくとも50重量%である。
【0037】
上記の(A)はエチレンアルキル(メタ)アクリレート不飽和エポキシドコポリマーであるのが好ましく、アルキル(メタ)アクリレートのアルキルは2〜10の炭素原子を有するのが好ましい。(A)のMFI(メルトフローインデックス)(19O℃/2.16kg)は例えば0.1〜50(g/10分)にすることができる。アルキルアクリレートおよびアルキルメタアクリレートの例としては特にメタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートを使用できる。
【0038】
使用可能な不飽和エポキシドの例としては特に下記が挙げられる:
(1)脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレアート、グリシジルイタコネート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタアクリレート、
(2)アリサイクリック(allcyclic)グリシジルエステルおよびエーテル、例えば2-シクロヘキセン-l-イルグリシジルエーテル、ジグリシジルシクロヘキセン-4,5-ジカルボキシレート、グリシジルシクロヘキセン-4-カルボキシレート、グリシジル−5-ノルボルネン-2-メチル-2-カルボキシレートおよびグリシジル−end-cis-ビシクロ[2.2.1] ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシレート。
本発明の他の形態では、化合物(A)は2つのエポキシド基を有する化合物、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)である。
【0039】
化合物(B)の例としてはエチレンと無水不飽和カルボン酸とのコポリマーを挙げることができる。この(B)はエチレンと無水不飽和カルボンとのコポリマーか、無水不飽和カルボン酸がグラフトしたポリオレフィンである。不飽和エポキシドがグラフトされるポリオレフィンは上記ポリオレフィンの中から選択できる。(B)の成分として使用可能な無水不飽和ジカルボン酸の例としては特に無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸および無水テトラヒドロフタル酸を上げることができる。例としてはエチレン、アルキル(メタ)アクリレート、無水不飽和カルボン酸のコポリマー、エチレン、飽和カルボン酸のビニルエステル、無水不飽和カルボン酸のコポリマーが挙げられる。無水不飽和カルボン酸の量はコポリマーの量は15重量%以下であり、エチレンの量は少なくとも50重量%にする。
【0040】
(B)はエチレン、アルキル(メタ)アクリレート、無水不飽和カルボン酸とのコポリマーあるのが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキルは2〜10の炭素原子を有するのが好ましい。このアルキル(メタ)アクリレートは上記のものの中から選択できる。(B)のMFI(19O℃/2.16kg)は例えば0.1〜50(g/10分)にすることができる。
コポリマー(B)の一部をエチレン/アクリル酸コポリマーまたはエチレン/無水マレイン酸(この無水マレイン酸は完全または部分的に加水分解されている)コポリマーと置換しても本発明の範囲を逸脱するものではない。このコポリマーはアルキル(メタ)アクリレートを含むこともでき、その比率は(B)の最大30%である。
【0041】
本発明の他の形態では(B)を脂肪族、脂環式または芳香族のポリカルボン酸またはその部分的または完全な無水物の中から選択することができる。脂肪酸の例としてはコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ドデセンコハク酸、ブタンテトラカルボン酸を挙げることができる。
脂環式の酸の例としてはシクロペンタンジカルボン酸、シクロペンタントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、メチルシクロペンタンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド−メチレンテトラヒドロフタル酸、メチル−エンド−メチレンテトラヒドロフタル酸を挙げることができる。
芳香族酸の例としてはフタール酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸またはピロメリト酸を挙げることができる。
無水物の例としては上記酸の部分的または完全な無水物を挙げることができる。
アジピン酸を用いるのが有利である。
【0042】
不飽和カルボン酸を有する化合物(C)の例としては完全または部分的に加水分解された上記化合物(B)を挙げることができる。この(C)は例えばエチレンと不飽和カルボン酸とのコポリマー、好ましくはエチレンと(メタ)アクリル酸とのコポリマーである。また、エチレンアルキル(メタ)アクリレートアクリル酸コポリマーを挙げることもできる。これらのコポリマーは例えば0.1〜50(g/10分)のMFI(190℃/2.16kg)を有する。
酸の量は10重量%以下、好ましくは0.5〜5重量%である。(メタ)アクリレートの量は例えば5〜40重量%である。
上記(C)をα、ω−アミノカルボン酸、例えばNH2-(CH2)5COOH、NH2-(CH2)10COOHおよびNH2(CH2)11-COOH、好ましくはアミノウンデカン酸の中から選択することもできる。
【0043】
架橋相を形成するのに必要な(A)および(B)の配合比率は、(A)中および(B)中に存在する反応性官能基の数に従って当業者が通常の規則で決定できる。
例えば、α、ω−アミノカルボン酸を選択した(C)から成る架橋相の場合で、(A)がエチレン/アルキル(メタ)アクリレート不飽和エポキシドコポリマーで、(B)がエチレン/アルキル(メタ)アクリレート無水不飽和カルボン酸コポリマーの時の配合比は、エポキシ官能基に対する無水官能基の比が約1となるような比にする。α、ω−アミノカルボン酸の量は(A)と(B)の0.1〜3%、好ましくは0.5〜1.5%である。
不飽和カルボン酸から成る(C)の場合、すなわち、(C)を例えばエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/アクリル酸コポリマーから選択した場合、(C)と(B)の量は、酸基および酸無水物基の数がエポキシド官能基の数に少なくとも等しくなる、好ましくは(C)が(B)の20〜80重量%、好ましくは20〜50重量%となるように、化合物(B)および(C)を使用する。
【0044】
触媒を加えても本発明の範囲を逸脱するものではない。この触媒は一般にエポキシ基と無水物基との間の反応で使用される。
(A)中のエポキシ官能基と(B)中の無水物基または酸基との間の反応を加速できる化合物としては特に以下のものを挙げることができる:
(1)第三アミン、例えばジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、N-ブチルモルホリン、N.N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-メチルイミダゾール、テトラメチルエチルヒドラジン、N.N-ジメチルピペラジン、N,N,N',N'-テトラメチル−l,6-ヘキサンジアミンまたは16〜18の炭素原子数を有する第三アミンの混合物およびジメチル獣脂(tallow)アミンとして知られているもの、
(2)1,4-ジアザビシクロ[2.2.2] オクタン(DABCO)
(3)第三級ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン
(4)アルキルジチオカルバミン酸亜鉛。
これら触媒の量は(A)+(B)+(C)の0.1〜3%、好ましくは0.5〜1%にする。
【0045】
架橋していないポリオレフィンとしては上記の反応基がグラフトされるポリオレフィンを挙げることができる。また、上記化合物(A)または(B)または(C)にすることもできるが、架橋しないため単独で使用される。
【0046】
ポリアミドA2はA1と同一でないが、A1と同じファミリーの中から選択されるポリアミドで、例としてはPA11、PA6およびPA12を挙げることができる。特殊実施例ではこれは縮合重合触媒、例えば有機または無機の酸、例えばリン酸を含んだポリアミドである。触媒は任意方法で製造した後にポリアミドA2に添加するか、製造で使用した触媒の残りにすることもできる。後者の方法は簡単で、好ましい。「触媒作用を有するポリアミド」という用語はベ―ス樹脂を合成するための段階を越えて化学反応が続き、従って、本発明組成物の製造時にも化学反応が続くことを意味する。ポリアミドA1とA2のブレンディング時にも重合反応および/または解重合反応が実質的に起こり、本発明組成物が作られる。本発明者は(鎖延長によって)重合が続き、(例えばリン酸を介した橋掛けによって)鎖が分枝すると考えるが、この説明に拘束されるものではない。さらに、重合平衡の再平衡化(re-equilibration)へ向かう傾向、従って、一種の均質化とも考えられる。しかし、ポリアミドを完全に乾燥して(その含水率を正しく制御するのが好ましい)、解重合を避けることが推薦される。触媒の量はリン酸でA2に対して5ppm〜15000ppmにすることができる。触媒の量はポリアミドA2に対して3000ppmまでにすることができ、好ましくは50〜1000ppmである。他の触媒、例えば硼酸の場合、触媒の含有量は上記と違えることができ、ポリアミドの通常の縮合重合方法に従って選択することができる。A2はPA−11,PA6およびPA−12の中から選択するのが好ましい。
【0047】
A1、可塑剤、衝撃改質剤およびA2の配合比は広範囲に変えることができる。
例えば、大型商品車両のブレーキ回路用の圧縮空気ホースを作る場合、可塑剤は5〜20重量%(好ましくは10〜15重量%)で、衝撃改質剤は0〜5重量%、ポリアミドA2は0〜5重量%、残部はポリアミドA1である。A1はPA−10,10またはPA6,yであるのが好ましい。この組成は優れた衝撃強度と耐破裂(バースト)抵抗性とを示す。
【0048】
例えば、自動車用および大型商品車両用の液圧クラッチ回路のホースを作る場合、可塑剤は0〜5重量%、衝撃改質剤は0〜5重量%、ポリアミドA2は0〜35重量%、残部はポリアミドA1であるのが好ましい。A1はPA6,yであるのが好ましい。このホースは高圧耐久性を有する。A2が存在するので、耐破裂耐久性の外にタフネスが向上し、寿命が延びる。
【0049】
例えば、自動車タンクから噴射装置へおよびその逆方向へガソリンまたはディーゼルオイルを運ぶホースを作る場合には、可塑剤は4〜10重量%(好ましくは4〜8重量%)、衝撃改質剤は5〜15重量%(好ましくは8〜12重量%)、ポリアミドA2は10〜20重量%(好ましくは12〜17重量%)、残部はポリアミドA1にするのが好ましい。衝撃改質剤は架橋したポリオレフィンであるのが好ましい。A1はPA6,yまたはPA10,10であるのが好ましい。このホースは他の層、例えばPA−6、PA−6とポリオレフィンきの混合物(PA−6がマトリックス)、EVOH、フルオロポリマー、ポリエステル、脂肪族ポリケトンまたはPPSの層を含むのが好ましい。
【0050】
本発明組成物は熱可塑性樹脂の標準的方法を使用して各成分を溶融混合することによって製造することができる。
本発明組成物は下記の中から選択される少なくとも一種の添加剤をさらに含むことができる:色素、顔料、光沢剤、抗酸化剤、難燃剤、紫外線安定剤、ナノフィラー(nanofillers)、核剤。
【0051】
多層構造に関しては下記を挙げることができる:
構造物(a)
本発明組成物の層と他のポリアミドの層とから成る。両者の間に共押出し用結合層を配置できる。
構造物(b)
2つのポリアミド層の間に本発明組成物の層を配置したものから成る。両者およびそれ以上の層の間に共押出し用結合層を配置できる(例としてはPA11またはPA12の層、本発明組成物層、PA6の層を挙げることができる)。
構造物(c)
本発明組成物の層、任意成分の結合層、フルオロポリマー(例えばPVDF)層、PPS、EVOH、脂肪族ポリケトンおよびポリエステルの層から選択される層、任意成分の結合層、本発明組成物の層から成る。
構造物(d)
本発明組成物の層、任意成分の結合層、フルオロポリマー(例えばPVDF)、PPS、EVOH、脂肪族ポリケトンおよびポリエステルから選択される層、任意成分の結合層、ポリアミド層を順次有する。
構造物(e)
本発明組成物の層、任意成分の結合層、フルオロポリマー(例えばPVDF)、PPS、EVOH、脂肪族ポリケトンおよびポリエステルから選択される層を順次有する。
【0052】
上記構造物はガソリンおよびディーゼルオイルを含む任意流体で使用できる。上記構造物の少なくとも一層は静電気を防止にするための導電性物質を含むことができる。また、上記構造物に静電気を防止し、従って帯電防止構造物にするために導電性物質を含む層を加えることができる。上記構造物は流体を貯蔵または輸送するための装置を作るのに用いるのが有利である。その場合、最初に記載の層は外側層に、最後に記載の層は貯蔵または輸送する流体と接触する側の層にするのが好ましい。本発明の一つの可能な形態では流体と接触する層は同じ組成の2つの層の形とし、その流体と接触する層が静電気防止のための導電性物質を含み、それによって帯電防止構造物にする。
【0053】
上記構造物および以下に記載する構造物において、導電性物質、導電体はカーボンブラック、炭素繊維またはカーボンナノチューブにすることができる。カーボンブラックはBET比表面積(ASTM D3037-89規格で測定)が5〜200のm2/gで、DBP吸収(ASTM D 2414-90規格で測定)が50〜300ml/100gであるものを選択して使用するのが好ましい。これは下記文献記載されており、カーボンブラックの配合比率は一般に17〜30重量%、好ましくは23〜26重量%である。
【特許文献6】国際特許出願公開第WO 99/33908号公報
【0054】
ガソリンで使用する場合、本発明構造物は、本発明組成物の層に加えて、PA−6、EVOHおよびPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の中から選択される一つ以上の層を有する。PA−6はエラストマー、例えばEPR、EPDMまたは低密度ポリエチレンを含むことができ、また、PA−6との相溶性を良くするために官能性モノマーをグラフトすることもできる。
好ましい実施例では上記のPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物は下記組成にする(合計で100重量%):
PA−6:50〜90%(好ましくは60〜80%)、
HDPE:1〜30%(好ましくは10〜25%)、
衝撃改質剤およびポリエチレンから選択される少なくとも一種のポリマーP1:5〜30%(好ましくは10〜20%)、
(ただし、HDPEおよびP1の少なくとも一方は完全または部分的に官能化されている)
【0055】
衝撃改質剤はエラストマーおよび超低密度ポリエチレンの中から選択するのが好ましい。衝撃改質剤としてのエラストマーとうしてはSBS、SISおよびSEBSブロックポリマーおよびエチレン−プロピレン(EPR)またはエチレン−プロピレンジエンモノマ(EPDM)エラストマーを用いることができる。超低密度ポリエチレンとしては例えば密度が0.860〜0.900の例えばメタロセンポリエチレンを挙げることができる。
【0056】
エチレン−プロピレン(EPR)またはエチレン−プロピレン−ジエンモノマ(EPDM)エラストマーを用いるのが好ましい。官能基化は不飽和カルボン酸のグラフトまたは共重合で行なうことができる。この酸の官能性誘導体を使用しても本発明の範囲を逸脱するものではない。不飽和カルボン酸の例としては2〜20の炭素原子を有するもの、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸を挙げることができる。これらの酸の官能性誘導体には例えば無水物、エステル誘導体、アミド誘導体、イミド誘導体および不飽和カルボン酸の金属塩、例えばアルカリ金属塩がある。
グラフトモノマーとしては4〜10の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸およびその官能性誘導体、特にその無水物が好ましい。無水マレイン酸を用いるのが有利である。
【0057】
官能化されたHDPEおよび/または官能化されたP1の比率は、官能化されたHDPEまたは官能化されていないHDPEと官能化されたP1または官能化されていないP1との組合せに対して0〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは20〜60重量%にすることができる。
【0058】
PA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物は各成分を熱可塑性ポリマーの分野で一般的に用いられている溶融混合方法を用いて機械的に混合して製造することができる。PA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の最初の形態では、HDPEはグラフトされず、P1はグラフトされたエラストマー/グラフトされていないエラストマーの混合物である。PA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の他の形態では、HDPEがグラフトされず、P1がグラフトされたポリエチレンで、必要に応じてこれにエラストマーが混合される。PA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物においてPA−6の全部または一部を本発明のPA−6,10/Zと置換しても本発明の範囲を逸脱することはない。このことは以下の構造物でも同じである。
【0059】
内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する構造物としては下記のものを例示することができる:
構造物(f)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、任意層の結合層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、任意層の導電体を含む内側層を外側から内側へ向かって連続して有する。
構造物(g)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、任意層の結合層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとする導電体を含むPA−6/ポリオレフィン混合物の層を外側から内側へ向かって連続して有する。
構造物(h)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、任意層の結合層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、EVOH層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層を外側から内側へ向かって連続して有する。
構造物(h1)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、任意層の結合層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、EVOH層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、導電体を含むPA−6層またはPA−6をマトリックスとする層PA−6/ポリオレフィン混合物を外側から内側へ向かって連続して有する。
【0060】
構造物(i)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、任意層の結合層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、EVOH層、導電体を含むPA−6層またはPA−6をマトリックスとする層PA−6/ポリオレフィン混合物を外側から内側へ向かって連続して有する。
構造物(j)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、衝撃改質剤を含む任意層としての結合層、EVOH層、導電体を含んでいてもよいPA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層を外側から内側へ向かって連続して有する。
【0061】
構造物(k)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、衝撃改質剤を含む任意層としての結合層、EVOH層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、導電体を含んでいてもよいPA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層を外側から内側へ向かって連続して有する。
構造物(l)
本発明の層(好ましくはPA−6,y)、任意層としてのPA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、EVOH層、任意層としてのPA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、導電体を含んでいてもよい本発明の層(好ましくはPA−6,y)を外側から内側へ向かって連続して有する。
構造物(j)および(k)の結合剤の層はコポリアミドかコポリアミドの混合物にすることができ、必要に応じて衝撃改質剤(例えば、必要に応じてグラフトされたEPRまたはEPDM)を含むことができる。
【実施例】
【0062】
実施例1
圧縮空気ブレーキ用の可塑化PA−10,10
組成:PA−10,10(86.4%)+13%BBSA+0.6%Polyad PB201(Polyad PB201=沃化第一銅をベースにした無機の抗酸化剤)。
この組成物をテストし、DIN 73378のPHLY規格値と比較した。モジュラスは射出成形で作った材料で評価し、バースト(破裂)強度値および衝撃強度値は押出し成形で作ったチューブ(内径/外径=6/8mm)で評価した。下記の[表1]はこの可塑化されたPA−10,10がモジュラス、バースト強度および老化後の衝撃強度に関して上記規格を満たすことを示している。なお、140℃でのバースト強度値は要求される130℃条件より高い。
【0063】
【表1】

【0064】
実施例2
液圧パイプ(クラッチ)用のPA−6,10およびPA−6,12
下記[表2]のポリアミドの配合比率は100重量%の残部を表す。PA−11は600ppmのリン酸を含む触媒作用を有するPA−11を表す。
【0065】
【表2】

【0066】
[表2]はPA−6,10およびPA−6,12がPA−12の代わりに高圧耐久性を必要とする液圧用途(例えばクラッチ流体用チューブ)に有利に使用できることを示している。PA−6,10はバースト強度、衝撃強度および高温耐劣化性においてPA−6,12と比較して有利である。PA−11の添加はタフネスと寿命を増やすが、バースト強度を悪くする。
【0067】
実施例3
ガソリンライン用多層管
下記化合物を用いて管状構造物(内径=6mm、壁厚=1mm)を製造した:
PA−6,10=10%の架橋相LT、15%の600ppmのリン酸を含む触媒作用を有するPA−11、5%のBBSA、0.6%のPolyad PB201を含むPA−6,10(合計100重量%)から成る。
【0068】
上記架橋相LTは5%のLotader(登録商標)4700+2.5%のLotader(登録商標)AX8900+2.5%のLucalen(登録商標)A 3110Mをブレンドして得られる。
Lotader(ロタダー、登録商標)4700=30重量%のアクリレートと1.5重量%のMAHを含むエチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸コポリマーで、190℃/2.16kgでのMFIは7g/10分。
Lotader(ロタダー、登録商標)AX8900=25重量%のアクリレートと8重量%のGMAを含むエチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジルコポリマーで、190℃/2.16kgでのMFIは6g/10分である。
Lucalen(ルカレン、登録商標)A 3110M=88/8/4の重量組成を有するエチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸コポリマー(BASFから市販)。
【0069】
導電性PA−610=PA−6,10にカーボンブラックを22重量%(導電性PA−6,10の重量に対して)加えたもの。SAEJ2260規格を用いて測定した表面抵抗率は102〜106オーム/□である。
EVOH32=32mol%のエチレンを含むEVOHコポリマー。ソアルノール(Soarnol)DC3203Fの名称で日本合成から市販。
EVOH44=44mol%のエチレンを含むEVOHコポリマー。ソアルノール(Soarnol)AT4403の名称で日本合成から市販。
Orqallov(オルガロイ、登録商標)=70%PA-6/15%HDPE/15%グラフトしたEPR混合物で、抗酸化剤をさらに含む。
導電性Orqallov(オルガロイ、登録商標)=上記Orgalloyにカーボンブラックを加えて導電性Orgalloyに対するカーボンブラックの量を22重量%にしたもの。SAEJ2260規格に従って測定したその表面抵抗率は102〜106オーム/□である。
カーボンブラック=3Mから「Ensaco 250 Granular」の名称で市販。DBP吸収率は190ml/g、BET表面積は約65m2/gである。
【0070】
構造1:PA-6,10(500μm)外側層/Orgalloy(登録商標)(500μm)、
構造2:PA-6,10(500μm)外側層/Orgalloy(登録商標)(400μm)/導電性Orgalloy(登録商標)(100μm)、
構造3:PA-6,10(375μm)外側層/Orgalloy(登録商標)(100μm)/EVOH32(100μm)/Orgalloy(登録商標)(425μm)、
構造4:PA-6,10(375μm)/Orgalloy(登録商標)(100μm)/EVOH32(100μm)/Orgalloy(登録商標)(325μm)/導電性Orgalloy(登録商標)(100μm)、
構造5:PA-6,10(350μm)/Orgalloy(登録商標)(100μm)/EVOH32(100μm)/Orgalloy(登録商標)(100μm)/導電性PA-6,10(350μm)、
構造6:PA-6,10(350μm)/EVOH44(300μm)/導電性PA-6,10(350μm)。
【0071】
PA−6,10は耐塩化亜鉛性を有する。従って、このタイプの系列は自動車のシャシーで使用できる。
構造3〜6はエチルアルコールを含むガソリンに対してポリアミドナイロン−6,10単独よりも著しく低い透過性を示す。
構造1と2は透過性が低く、優れた端熱性を有する。PA−6,10およびOrgalloy(登録商標)の融点は220℃である。
構造2、5、6は導電性内側層を有し、ポリマー上を流れるガソリンの摩擦によって発生する静電気を除去できる。
上記の各構造は、ポリアミドナロイロン−6,10とOrgalloy(登録商標)との間に結合剤層がなく、PA−6,10とEVOHとの間の結合剤層としてOrgalloy(登録商標)が使用できるという利点かある。 PA−6,10の代わりにPA−6,12を用いて同じ構造のものを作った。Orgalloy(登録商標)からPA−6,10またはPA−6,12を分離するのに必要な剥離力は50N/cm以上である(室温、25mm/分で剥離)。
【0072】
構造6はPA−6,10とEVOHとの間にOrgalloy(登録商標)層無しで作った。この場合には充分な接着を与えるためにはエチレン含有量の高いEVOHを使用する必要がある。
構造3、4でも同様にOrgalloy(登録商標)とEVOH32の内部層をソアルノール(Soarnol)AT4403の単層に代えることができる。
【0073】
実施例4
下記の[表3]は上記タイプの組成にすることによって曲げ(flexural)モジュラスが大幅に低下し、しかも、熱化学的特性と優れた耐老化性とが維持できることを示している。[表3]で「LT」および「PA−11」は実施例3と同じ意味を有する。PA−6,10は同じ組成を有するPA−6,12と比較して興味ある挙動を示す。すなわち、モジュラスは低いが、高温での耐バースト(破裂)力が高くなる。これらの材料はガソリンまたはディーゼルオイルのラインで単層または多層のチューブ(実施例3)として使用できる。
【0074】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(4)の重量%からなる組成物(合計100重量%):
(1)50〜100%の式:X.Y/Zまたは6.Y2/Zの少なくとも一種のポリアミドA1
(ここで、
Xは6〜10の炭素原子数を有する脂肪族ジアミンの残基、
Yが10〜14の炭素原子数を有する脂肪族ジカルボン酸の残基、
Y2は15〜20の炭素原子数を有する脂肪族ジカルボン酸の残基、
Zはラクタムの残基、α、ω−アミノカルボン酸の残基、単位X1、Y1の中から選択される少なくとも一つの単位(ここで、X1は脂肪族ジアミンの残基、Y1は脂肪族ジカルボン酸の残基)を表し、
Z/(X+Y+Z)およびZ/(6+Y2+Z)の重量比は0〜15%である)
(2)0〜40%の可塑剤、
(3)0〜50%の衝撃改質剤、
(4)0〜50%のポリアミドA2
【請求項2】
可塑剤がBBSAである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
衝撃改質剤が架橋したポリオレフィンの中から選択される請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアミドA2が縮合重合触媒を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
可塑剤が5〜20%で、衝撃改質剤が0〜5%で、ポリアミドA2が0〜5%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
可塑剤が10〜15%である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項5または6の組成物から成る層を有する圧縮空気ホース。
【請求項8】
可塑剤が0〜5%、衝撃改質剤が0〜5%、ポリアミドA2が0〜35%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物の層を有する液圧クラッチ流体用ホース。
【請求項10】
請求項1〜6および8のいずれか一項に記載の組成物から成る少なくとも一つの層を有する構造物。
【請求項11】
請求項10に記載の構造物から成る、流体を保存または輸送するための装置。
【請求項12】
可塑剤が4〜10%、衝撃改質剤が5〜15%、ポリアミドA2が10〜20%(重量%)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
可塑剤が4〜8%、衝撃改質剤が8〜12%、ポリアミドA2が12〜17%である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
衝撃改質剤が架橋したポリオレフィンである請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜4および12〜14のいずれか一項に記載の組成物から成る少なくとも一つの層を有する多層構造物。
【請求項16】
PA−6、PA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物、EVOH、フルオロポリマー、ポリエステル、脂肪族ポリケトンおよびPPSの中から選択される少なくとも一つの他の層をさらに有する請求項15に記載の構造物。
【請求項17】
請求項15の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、結合剤の層(任意成分)、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層を、外側から内側に向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項18】
請求項15の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、結合剤の層(任意成分)、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとし且つ導電体を含むPA−6/ポリオレフィン混合物の層を、外側から内側へ向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項19】
請求項15の組成物の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、結合剤の層(任意成分)、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、EVOHの層、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層を、外側から内側に向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項20】
請求項15の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、結合剤の層(任意成分)、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとし且つ導電体を含むPA−6/ポリオレフィン混合物の層を、外側から内側へ向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項21】
請求項15の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、衝撃改質剤を含んでいてもよい結合剤の層、EVOH層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、導電体を含んでいてもよいPA−6の層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層を、外側から内側へ向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項22】
請求項15の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、衝撃改質剤を含んでいてもよい結合剤の層、EVOH層、PA−6層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとし且つ導電体を含むPA−6/ポリオレフィン混合物の層を、外側から内側へ向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項23】
請求項15の組成物(好ましくはPA−6、10)の層、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、EVOHの層、PA−6の層またはPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物の層、導電体を含んでいてもよい本発明組成物(好ましくはPA−6,10)の層を、外側から内側へ向かってこの順番で有する、内部層がガソリンまたはディーゼルオイルと接触する、請求項15または16に記載の構造物。
【請求項24】
上記のPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物が50〜90%のPA−6と、1〜30%のHDPEと、5〜30%の衝撃改質剤およびポリエチレンの中から選択された少なくとも一種のポリマーP1とから成り(合計100重量%)、HDPEおよびP1の少なくとも一方が完全または部分的に官能化されている請求項16〜23のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項25】
上記のPA−6をマトリックスとするPA−6/ポリオレフィン混合物が60〜80%のPA−6と、10〜25%のHDPEと、10〜20%の衝撃改質剤およびポリエチレンの中から選択された少なくとも一種のポリマーP1とから成り(合計100重量%)、HDPEおよびP1の少なくとも一方が完全または部分的に官能化されている請求項24に記載の構造物。
【請求項26】
衝撃改質剤がエラストマおよび超低密度ポリエチレンの中から選択される請求項24または25に記載の構造物。

【公表番号】特表2008−516009(P2008−516009A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533963(P2007−533963)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010689
【国際公開番号】WO2006/037615
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】