説明

可撓性ホ−ス

【課題】 内面層チュ−ブと補強層と被覆層との組み合わせの可撓性ホ−スであって、夫々の境界を特に選択された接着層を用いて一体にすることによりホ−ス自体の柔軟性を損なうことなく、又、外力による折れ曲がりに強く、そして通水径を維持できるホ−スを提供することができたもので、配管施工時の作業の簡便さと耐久性の向上が確保できた。
【解決手段】 給水・給湯用配管に用いられる可撓性ホースであって、弾性を有する内面層チューブと、該内面層チューブの外周に少なくとも1層の編み組みされた補強層と、該補強層の外周に被覆層を備え、内面層チューブと補強層間、補強層と被覆層間を接着層を介して一体に接着したことを特徴とする可撓性ホ−ス。1‥内面層チュ−ブ、1a‥内層、1b‥外層、2‥補強層、3‥被覆層、4、5‥接着層、10‥ホ−ス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所や洗面台の水栓金具、トイレ、貯水タンク、食洗機、その他給水・給湯用の配管等に使用される可撓伸縮継手に用いるホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台所や洗面台及びトイレの貯水タンク、その他給水・給湯用の配管に使用されるホ−スは、内面層チューブをゴム又は熱可塑性エラストマーを主体とし、その外周をステンレス鋼線やナイロン、ポリエステル等の編み組補強した可撓性を有するホースが広く用いられ、これにホース型可撓伸縮継手が加締締結されて使用されている。
【0003】
しかるに、配管工事のスペースは比較的狭く、又、使用する長さは短いためホース型可撓伸縮継手の施工時に無理に曲げられたり、周囲の部材に接触する等、無用な外力が加わることが多い。
【0004】
このため、前記のホース型可撓伸縮継手は柔軟性には優れるが、上記の編み組補強層の剛性がそれほど高くないため、一定以上の外力が加わると折れ曲がってしまうという欠点があった。このホースに折れ曲がりが生じた際には通水路がふさがれ、通水量が減り、又は通水できなくなる場合がある。
【0005】
このため、補強層にバネ用ステンレス鋼線を用いる方法が考えられたが、この方法では、補強層はその形状を保持しているにもかかわらず、各層間が接着していないため、補強層内にて内面層チューブのみが潰れてしまうこともあった。
【0006】
又、内面層チューブ内に比較的密なスプリングを埋設する方法が考えられたが、この方法では、スプリングが通水路を狭めてしまうこと、製品重量が重くなること、製品コストが上がること等の欠点があった。尚、埋設されたスプリングが粗であった場合、スプリングのピッチ間を起点に折れ曲がりが生じるため意味をなさない場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内面層チューブと補強層間、及び補強層と被覆層間を接着させ、各層を一体化することにより、ホースの柔軟性を損なうことなく、配管施工時の外力による折れ曲がりに強いホースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、主として給水・給湯用配管に用いられる可撓性ホースであって、弾性を有する内面層チューブと、該内面層チューブの外周に少なくとも1層の編み組みされた補強層と、該補強層の外周に被覆層を備え、内面層チューブと補強層間、補強層と被覆層間を接着層を介して一体に接着したことを特徴とするものである。
【0009】
更に具体的に言えば、上記給水・給湯用配管に用いられる可撓性ホースであって、内層がポリブテン樹脂、フッ素樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、外層がポリオレフィン系熱可塑性エラストマ−である弾性を有する内面層チューブと、該内面層チューブの外周に太さが1,000〜6,000デニールのポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、或いは木綿繊維から選ばれ、その撚り数を0〜15回/10cmとし、引揃本数1〜5本、立本数12〜36本、編上角度50〜57度で少なくとも1層の編み組みされた補強層と、該補強層の外周に、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−又はポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる被覆層が形成され、前記内面層チューブと補強層間の接着層が、ポリオレフイン系エラストマーであり、前記補強層と被覆層間の接着層が、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−、若しくはポリウレタン系接着剤であり、各接着層にて各層が一体化されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
特に選択された内面層チュ−ブと補強層と被覆層との組み合わせになる可撓性ホ−スにあって、夫々の境界をこれ又特に選択された接着層を用いて一体にすることによりホ−ス自体の柔軟性を損なうことなく、又、外力による折れ曲がりに強く、そして通水径を維持できるホ−スを提供することができたもので、配管施工時の作業の簡便さと耐久性の向上が確保できたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のホースは、以上のように内面層チューブと補強層間、及び、補強層と被覆層間をとくに選択された接着剤にて接着させ、各層を一体化することにより、ホース自体の柔軟性を損なうことなく、また外力による折れ曲がりに強く、そして通水径を維持できることとなったものである。
【0012】
内面層チューブは、ゴム又は熟可塑性エラストマーが用いられ、これが単層或いは積層して構成されるものであり、2層にてなる場合には、耐塩素水性を向上させるため、その内層にはポリブテン樹脂、フツ素系樹脂、或いは架橋ポリエチレン樹脂が用いられ、外層にはポリオレフイン系熟可塑性エラストマーが好んで用いられる。
【0013】
そして、補強層は少なくとも1層の編み組みされたポリエステル、ナイロン、ビニロン等の合成繊維や木綿等の天然繊維(植物繊維)が好んで用いられるものである。
【0014】
かかる繊維は、1,000〜6,000デニ−ル、撚り数0〜15回/10cm、引揃本数1〜5本、立本数12〜36本、編上角度50〜57度で編み上げられるのがよく、これはホースの使用条件、例えば必要とされる耐圧力によって好適に選択される。尚、前記編上角度は繊維の静止角(54度44分)を狙ったものである。又、耐圧性能を確保するためにはある程度の糸密度が必要であり、1,000デニ−ルより細いと打ち込み本数が多くなり、製造設備が巨大化し、6,000デニ−ルより太いと糸同士の重なり部分が大きくなり、高価であり、しかも使用中に吹き抜けを起こす危険性がある。
【0015】
内面層チューブと補強層を一体化するためには、内面層チュ−ブが比較的接着性が良くないことから接着層は特に限定され、ポリオレフイン系エラストマーを用いると十分な接着が得られることが判明した。
【0016】
そして、被覆層がポリウレタン系熱可塑性エラストマ−又はポリエステル系熱可塑性エラストマーであり、前記補強層と被覆層間の接着層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−、若しくはポリウレタン系接着剤が用いられる。尚、接着層がポリエステル系熱可塑性エラストマーの場合は、被覆層と接着層の共押し出しが可能であり、作業性向上が図れることとなる。
【0017】
尚、ポリウレタン系接着剤を用いる場合、この接着剤が補強層へ浸透する傾向があり、このため、場合によっては補強層を固着せしめることが懸念されるケ−スもあるが、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−又はポリウレタン系熱可塑性エラストマ−の場合は、補強層の表層部のみで接着効果を示すので補強層を固着せず、より高い柔軟性を発揮できることとなる。
【0018】
このように、ホ−スを構成する各層を一体化することにより、ホース自体の柔軟性を損なうことなく、また外力による折れ曲がりに強く、そして通水径を維持できることとなったものである。
【0019】
ビルトイン食洗機について述べれば、従来ビルトイン食洗機の給湯用ホ−スには一般的に可撓性、柔軟性に優れ折れ曲がった際の復元性も有するPVC製のホ−スが用いられてきた。しかしながら、PVCに含まれる可塑剤中に環境ホルモン物質を含んでいるものや独特の臭気を発するものもあり、又、環境への負荷を減らす点からもPVCの使用を控えるようになってきている。しかるに、本構造のホ−スはPVCを使用しない可撓性、柔軟性に優れるビルトイン食洗機用ホ−スを提供することができることとなった。
【0020】
ここで食洗機給湯用について更に言えば、内径7〜9φのホ−スで本願のホ−スを使用し、内面層チュ−ブの内層にポリブテン樹脂、外層にポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用し内面層チューブの肉厚をそのホース内径に対し22〜34%、最適な範囲は25〜30%である。22%より小さいとホ−ス内径に対し肉厚が薄いためホ−スが容易に折れ曲がってしまい、又、折れ曲がった後の復元性も乏しいため、例えば食洗機の施工時に本体を押し込んだ際にホ−スが折れ曲がって通水路が閉塞したり閉塞したまま復元しなかったりする。一方で34%を越えると、肉厚が厚くなるためホ−スは折れにくくなるが、今度はホース自体の剛性が高く硬くなるため施工自体が困難となる。
【実施例】
【0021】
(実施例)
以下、実施例をもって更に詳細に説明する。図1は本発明のホ−ス10の切断斜視図であり、その内径は15mm、外径は24mmである。内面層チュ−ブ1は2層にて形成されている。1aは内層であり、ポリブテン樹脂、1bは外層であり、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマ−(AES社製:サントプレン201−73)である。これらは共押し出しにて一体に形成されている。補強層2は4,500デニ−ルのポリエステル繊維であり、撚り数5回/10cm、引き揃え本数2本、立本数36本の編み上げ層である。又、被覆層3はポリウレタン系熱可塑性エラストマ−(DICバイエルポリマ−社製:パンデックスT−8180)である。
【0022】
内面層チュ−ブ1と補強層2との一体化のため、この間に接着層4としてポリオレフィン系エラストマ−(日本製紙ケミカル社製:ス−パ−クロン822)が液体状態で用いられ、熱を加えることにより両層に浸透し両者は一体化された。
【0023】
補強層2と被覆層3との一体化のために、この間に接着層5としてポリエステル系熱可塑性エラストマ−(東レ・デュポン社製:エハイトレル・4057又は4056)を用い、これは、被覆層と共に共押し出し成形され、その後、補強層2と被覆層3内に浸透して一体化するものである。
【0024】
本発明の可撓性ホ−スと従来の一般の可撓性ホ−スを比較をすると、内部を流れる水に対しては、耐塩素水性の向上が図られたものであり、内部を流れる水に対して有害物が溶出することがなくなったものである。又、折れ曲がり防止のためにスプリングを用いることがあったが、これをスプリングレスとしたもので、軽量、コストダウンが実現したものである。
【0025】
更に、ホ−ス材料として塩ビ材料が用いられておらず、廃棄処分の際にもダイオキシンの発生等を考慮する必要がなくなったものである。更に、接着層としてポリオレフィン接着剤を用いた場合には接着力不足により折れ曲がった(いわゆるキンクの発生)が、本発明は接着力が強固で内面層〜外面層が一体となり、かつ、柔軟性、耐折れ曲がり性が十分であった。
【0026】
ビルトイン食洗機の給水給湯用ホ−スの実施例を説明する。ホース内径は8φ、外径は15.3φであり、内面層チュ−ブ1は2層にて形成されている。内面層チューブの内層1aをポリブテン樹脂、外層1bをポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用し、内層1aの肉厚を0.25mm、外層1bの肉厚を2.00mmとする。これにより内面層チューブ全体の肉厚は2.25mmとなり、ポイントとなるホース内径に対する肉厚の比は28%である。補強層2は1500デニ−ルのポリエステル繊維であり、引き揃え本数3本、立て本数24本の編み上げ層である。又、被覆層3はポリウレタン系熱可塑性エラストマーである。
【0027】
これらを前述のホ−スと同様に内面層チューブと補強層との接着に液体状のポリオレフィン系エラストマーを、補強層と被覆層との一体化のために接着層としてポリエステル系熱可塑性エラストマーを被覆層と共に共押し出しにて成形される。
【0028】
かかるホースを食洗機用給湯用ホ−スとして使用すると、従来の一般の給湯用ホースと比べ、PVCを使用せず、内部を流れる水に対しては耐塩素水性の向上が図られたものであり、内面層チユーブの肉厚をホース内径の25〜30%とすることにより、ホースの折れ曲がりが防止され、仮に折れ曲がった場合でも容易に復元すると共に柔軟性も確保することができた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明における可撓性ホ−スは構成する全ての層が一体化されているため、柔軟性と外力に対する耐折れ曲がり性に特徴があり、スぺ−スの狭い場所での作業性が改善され、給水・給湯用のホ−スのみならず各種のホ−スに適用可能である。
【0030】
又、補強層2を4500デニール相当の太さをもったポリエステル繊維スパン糸(具体的には、10S/8糸で撚り数10回/10cm、引き揃え本数2本、立本数36本の編み上げ層)とすることで、接着層4の含浸がより助長され、内面層チューブ1と補強層2との一体化が促進されることとなる。同様に、接着層5の含浸も助長されることで、補強層2と被覆層3との一体化も促進されることとなる。その結果、ホース全体の一体化が強化され、耐折れ曲がり性が向上する。加えて、補強層2が短繊維の集合体となったことで、補強層内部での繊維毎の滑り性がよくなり柔軟性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明のホ−スの切断斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1‥内面層チュ−ブ、
1a‥内層、
1b‥外層、
2‥補強層、
3‥被覆層、
4、5‥接着層、
10‥ホ−ス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として給水・給湯用配管に用いられる可撓性ホースであって、弾性を有する内面層チューブと、該内面層チューブの外周に少なくとも1層の編み組みされた補強層と、該補強層の外周に被覆層を備え、内面層チューブと補強層間、補強層と被覆層間を接着層を介して一体に接着したことを特徴とする可撓性ホ−ス。
【請求項2】
前記内面層チュ−ブが2層構造であり、その内層がポリブテン樹脂、フッ素樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、外層がポリオレフィン系熱可塑性エラストマ−である請求項1記載の可撓性ホ−ス。
【請求項3】
前記補強層が、1,000〜6,000デニール・撚り数を0〜15回/10cmとする合成繊維、或いは天然繊維であり、引揃本数1〜5本、立本数12〜36本、編上角度50〜57度で編み上げた請求項1記載の可撓性ホ−ス。
【請求項4】
合成繊維が、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維である請求項3記載の可撓性ホ−ス。
【請求項5】
天然繊維が、木綿繊維である請求項3記載の可撓性ホ−ス。
【請求項6】
前記内面層チューブと補強層間の接着層が、ポリオレフイン系エラストマーである請求項1記載の可撓性ホ−ス。
【請求項7】
被覆層が、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−又はポリエステル系可塑性エラストマーである請求項1記載の可撓性ホ−ス。
【請求項8】
前記補強層と被覆層間の接着層が、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−、若しくはポリウレタン系接着剤である請求項1記載の可撓性ホ−ス。
【請求項9】
主として給水・給湯用配管に用いられる可撓性ホースであって、ポリブテン樹脂、フッ素樹脂、架橋ポリエチレン樹脂、外層がポリオレフィン系熱可塑性エラストマ−である弾性を有する内面層チューブと、該内面層チューブの外周に太さが1,000〜6,000デニールのポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、或いは木綿繊維から選ばれ、その撚り数を0〜15回/10cmとし、引揃本数1〜5本、立本数12〜36本、編上角度50〜57度で少なくとも1層の編み組みされた補強層と、該補強層の外周に、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−又はポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる被覆層が形成され、前記内面層チューブと補強層間の接着層が、ポリオレフイン系エラストマーであり、前記補強層と被覆層間の接着層が、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−、ポリウレタン系熱可塑性エラストマ−、若しくはポリウレタン系接着剤であり、各接着層にて各層が一体化されたことを特徴とする可撓性ホ−ス。

【図1】
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【公開番号】特開2006−266274(P2006−266274A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60643(P2005−60643)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】