説明

可撓性支持体のための非粘着性コーティングを製造するための架橋可能なシリコーン組成物およびこの組成物が含有する接着促進添加剤

本発明は、特に、可撓性支持体(例えば、紙、または天然もしくはは合成のポリマーフィルムの形態の類似の材料など)のためのコーティングまたは撥水性かつ非粘着性のフィルムを形成させるための、架橋性のまたは架橋したシリコーン組成物の分野に関する。これらの組成物は、付加反応によって架橋剤と反応するために好適な、SiH単位を有する架橋性ポリオルガノシロキサンおよび不飽和ポリオルガノシロキサン(好ましくはビニル化されたもの)を、可撓性支持体上に架橋性非粘着性コーティングを形成させるための白金の存在下で含み、加えて、可撓性支持体に対する接着性を促進するための少なくとも1種の添加剤(D)を含むタイプの組成物である。目的は、有利には溶媒を用いることなく適用することができ、急速に架橋して、可撓性支持体のための非粘着性および/または撥水性のコーティングを形成し得る新規な液状シリコーン組成物を提供することである。この新規な液状シリコーン組成物は、特に、支持体に対する固着性/接着性、摩擦落ちのしにくさ、および非粘着性プロファイル(高速での十分に高い剥離力)の点で非常に質が高い、架橋シリコーンコーティングを提供する。非粘着性プロファイルは、特に接着を助ける添加剤に起因する。この目的を達成するために、本発明は、接着促進添加剤がM[D]do[Dアルコキシ]da[Dエポキシ]de[D']d'[M']m'Mであり、式中0≦do<500、0≦da≦50、1≦de≦40、0≦d'≦1、0≦d'≦0.1、0≦m'<1、d'+m'が1未満、好ましくは0.5以下であるシリコーン組成物を提供する。用途:紙およびポリマー類(PET)上のフィルムのための架橋/付加重合によって得られる非粘着性シリコーンコーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、特に、可撓性支持体(例えば、紙もしくは類似の材料製の支持体、または、天然もしくは合成のポリマーフィルムの形態の支持体)のためのコーティングもしくは撥水性および非粘着性のフィルムを形成させるために使用することができる、架橋性のまたは架橋したシリコーン組成物の分野である。
【0002】
これらの硬化性非粘着性シリコーン組成物を、これらの支持体に可逆的に積層される接着材料の除去を容易にするために、このような支持体に適用する。
【0003】
より正確には、本発明は、
・Si-H [(M)a'≧0(MH)b'≧0(DH)c'≧0(D)d'≧0] 単位と、Si-アルケニル単位、好ましくはSi-ビニル(Vi) [(M)a"≧0(MVi)b"≧0(DVi)c"≧0(D)d"≧0]単位とを同じ分子上または同じではない分子上に有する官能化ポリオルガノシロキサン(POS)であって、Si-H単位が付加反応によってSi-アルケニル単位と反応することができる官能化ポリオルガノシロキサン
〔上で使用している記号の定義は以下の通りである。M:(R3SiO1/2)、D:(R2SiO2/2)、MHまたはM':(R2HSiO1/2)、DHまたはD':(RHSiO2/2)、MVi:(R2ViSiO1/2)、DVi:(RViSiO2/2)、T:(RSiO3/2)、Q:(SiO4/2)、Vi=ビニル、R=メチル、または-O-Si=とは異なる他の炭化水素基、たとえば、アルキルまたはアリール〕と、
・適切な金属触媒、好ましくは白金と、
・任意選択で、硬化調整剤(遅延剤、抑制剤)と、
・任意選択で、たとえばシロキシル単位Qおよび/またはTを含むシリコーン樹脂をベースとする、少なくとも1種の接着調整系と
・任意選択で、他の添加剤(充填剤、促進剤、抑制剤、顔料、界面活性剤、「加工助剤」である操作助剤(たとえば、ミスティング防止添加剤))と
を含む組成物のタイプのシリコーン組成物に関する。
【0004】
本発明はまた、このタイプのシリコーン組成物の調製にも関する。
【0005】
本発明は、上記組成物からシリコーンコーティング、たとえば、可撓性支持体(たとえば、紙またはポリマーフィルム)のための撥水性および/または非粘着性のコーティングを製造するための方法にも関する。
【0006】
これらの液状シリコーン組成物は、非常に高い速度(たとえば600m/分)で作動するシリンダを備える工業的コーティング装置内で、支持体フィルムに適用される。これらの超高速コーティング手順においては、液状シリコーンコーティング組成物の粘度を、細心の注意を払ってコーティング動作条件に適応させなければならないことは明らかである。
【0007】
実際には、非粘着性シリコーンの堆積率は、0.1 g/m2〜2 g/m2、好ましくは0.3 g/m2〜1 g/m2であり、この堆積率は、マイクロメートルオーダーの厚さに相当する。
【0008】
可撓性支持体に適用されると、シリコーン組成物は架橋して固体の非粘着性および/または撥水性のシリコーンコーティング(たとえば、エラストマー)を形成する。
【0009】
超高速の工業的コーティング速度を前提とすると、正確に架橋させるために架橋速度が極めて速くなければならない、すなわち、非粘着性シリコーンフィルムが、それらフィルムの非粘着性機能を果たし、所望の機械的品質を有することが最も可能となるように十分に架橋されなければならない。この非粘着性シリコーンコーティングの架橋の品質の評価は、特に、未架橋の抽出可能化合物の分析によって行うことができ、その非架橋の抽出可能化合物の量を可能な限り低減しなければならない。たとえば、抽出可能物のレベルは、通常の工業的架橋条件下で好ましくは5%未満である。
【0010】
シリコーンコーティングを有さない外側表面の非粘着性の品質は剥離力によって表される。非粘着性シリコーンフィルムによってコーティングされた支持体上に配置する目的の要素に対しては、この剥離力は弱くなければならず、また制御されていなければならない。標準的には、この要素は、ラベルまたは同様の名称のテープの接着性表面であり得る。
【0011】
ここで、この制御された弱い非粘着性の品質に加えて、シリコーンコーティングのその支持体に対する接着性は非常に高くなければならない。この接着特性は、たとえば、コーティングの表面を指でこすり、コーティングが損傷する前の連続パスの回数を測定することを含む「摩擦落ち(rub off)」試験を用いて判断される。
【0012】
ヒドロシリル化、たとえばSi-H/Si-Viによって架橋可能であるこれらのシリコーンコーティング組成物が、工業的コーティング機においてコーティング浴の形態にある場合に、周囲温度で可能な限り長い耐用期間を有することも重要である。
【0013】
非粘着性シリコーンフィルムでコーティングされた可撓性支持体は、たとえば、
− 内側表面が感圧性接着剤層でコーティングされ、外側表面が非粘着性シリコーンコーティングを備える接着テープ、
− 粘着性または感圧性接着要素の接着性表面を保護するための紙またはポリマーフィルム、または
− ポリオレフィン型(ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、もしくはポリエチレン)の、またはポリエステル型(ポリエチレンテレフタレート(PET))のポリマーフィルム
であることができる。
【0014】
本発明の枠内では、可撓性ポリマー支持体(たとえばPET製のポリエステル)をコーティングするための液状シリコーン組成物が特に興味深いが、これらに限定されない。実際には、PETフィルムの利点の1つは、それらPETフィルムの非常に薄い厚さ(20μm)によるもので、この厚さによりフィルムロールのかさ高さを大幅に抑えることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明は、安全性および毒性に対処するという明白な理由のために、有利には溶媒を含まないシリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0016】
この性状に加えて、経済的な観点から言えば、これらの有利に溶媒を含まないシリコーンコーティング組成物(特に、ポリマー製、特にポリエステル製、たとえばPET製の支持体のための組成物)は、紙製の可撓性支持体に適した標準的な工業的コーティング設備で使用することができることが不可欠である。これにより、前記組成物は、それら組成物の取扱いを容易にし、優れたコーティング品質を有し、かつ、超高速の工業的コーティング速度で現れるミスト化(misting)の問題を軽減するために、比較的粘度が低い(たとえば1000 mPa・秒以下)ことが前提となる。
【0017】
液状シリコーンコーティング組成物の配合のために考慮すべき別の制約は、ラベルのための「ライナー」として有用である可撓性ポリマー支持体(特にPETなどのポリエステル製)のロール/アンロール作業を容易にするために、架橋したシリコーンエラストマーコーティングの摩擦係数が制御可能でなければならないことである。
【0018】
この用途では、シリコーンエラストマーコーティングが、支持体の平滑性にも、透明性にも、機械的特性にも悪影響を及ぼさないことが重要である。平滑性および機械的特性は、超高速での精密なトリミングに必要である。透明性は、光学検出器を用いた超高速でのフィルムの均一性の検査のために望ましい。
【0019】
非粘着性コーティングでは、剥離力の制御が重要である。有利には、この制御が低速および高速で有効でなければならない。低速剥離力と高速剥離力とのバランスは、通常非粘着性プロファイル(non-stick profile)と呼ばれる。
【0020】
すべての支持体(特にポリエステル支持体、たとえばPET)のための上述した特性に加えて、支持体へのシリコーンコーティングの接着性または粘着性(「摩擦落ち」耐摩耗性により明らかとなる)は、接着ラベルの存在下であっても、時間経過後に最適かつ安定であるべきである。
【0021】
ここで、本発明の枠内においては、シリコーンコーティングの支持体に対する接着性または粘着性のパラメータを最適化することに特に興味が持たれるが、他の詳細も大切である。
【0022】
パラメータを最適化するために、付加重合によって架橋/硬化可能なシリコーン組成物中において、少なくとも1種の接着促進剤を使用して、任意の支持体上に撥水性、非粘着性コーティングを形成させる。
【0023】
出願US-A-2004/0161618から、アルケニル化線状POSであるMVi2-5D50-1000Ta'''=0M0-0.5と、Si-H単位を有する線状POSと、白金触媒と、架橋抑制剤と、接着促進添加剤として、エポキシ、オキシラン、またはカルボキシ型の活性官能性グラフトを有するMDM型POSとを有する、紙またはポリマー支持体に対する接着性が向上した非粘着性シリコーン組成物は公知である。より正確には、この添加剤は、MDAGED'M [AGE=アリルグリシジルエーテル]またはMDアルコキシシリルDカルボキシD'M型であり得る。この添加剤は、かなりの量のSiH単位、すなわち、1分子当たり少なくとも1つのSiH単位、あるいは少なくとも0.24重量%のSiH単位を含むという欠点がある。この残留含有量、これら単位の二官能性(bifunctionality)、およびこれら単位の反応性により、このような添加剤は必然的にいくらか不安定であるため、貯蔵時のこれら添加剤の保存はかなり限定され、これら添加剤の粘度は、場合によるが数日または数カ月以内にゲル化が起こるまで急速に増大し、その結果添加剤は使用不可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】出願US-A-2004/0161618
【特許文献2】US-B-6864311
【特許文献3】US-B-6291540
【特許文献4】US-B-5468902
【特許文献5】US-B-6743883
【特許文献6】US-A-2004/0048975
【特許文献7】US-A-4623700
【特許文献8】EP-B-0219720
【特許文献9】EP-A-0454130
【特許文献10】US-A-3220972
【特許文献11】US-A-3697473
【特許文献12】US-A-4340709
【特許文献13】US-A-3159601
【特許文献14】US-A-3159602
【特許文献15】EP-A-0057459
【特許文献16】EP-A-0188978
【特許文献17】EP-A-0190530
【特許文献18】US-A-3419593
【特許文献19】US-A-3715334
【特許文献20】US-A-3377432
【特許文献21】US-A-3814730
【特許文献22】US-A-4256870
【特許文献23】US-A-4476166
【特許文献24】US-A-4347346
【特許文献25】US-A-3989866
【特許文献26】US-A-4336364
【特許文献27】US-A-3445420
【特許文献28】FR-B-1528464
【特許文献29】FR-A-2372874
【特許文献30】FR-B-2450642
【特許文献31】US-B-3772247
【特許文献32】欧州特許出願EP-A-0601938
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】NOLL、「Chemistry and technology of silicones」、1.1章、1-9頁、Academic Press、1968年-第2版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
このような状況において、本発明の本質的な目的は、特に(「摩擦落ちが大きい」)支持体への固着性/接着性の点で非常に優れた品質を有し、非粘着性プロファイル(十分に高速での剥離力)を有する架橋シリコーンコーティングをもたらす、可撓性支持体のための非粘着性および/または撥水性コーティングにおいて、瞬時に架橋することができる、有利には無溶媒の新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。これらの特性(接着性および非粘着性プロファイル)は、特に接着促進添加剤に起因する。
【0027】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体のための非粘着性および/または撥水性コーティング組成物中で急速に架橋可能であり、有効であるが前記組成物の保存には悪影響を与えない接着促進添加剤を含む、有利には無溶媒の、新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。
【0028】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体、特に、たとえばPET型のポリエステル製のポリマーフィルムのための非粘着性および/または撥水性コーティングにおいて急速に架橋可能であり、有利には無溶媒の、改良された接着促進剤が添加された新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。得られた架橋コーティングは、
・一方で、コーティングが適切な機械的および接着特性を有するために十分な架橋性を有し、
・他方で、これらの複合体から製造される接着性ラベルの調製および使用には特に好都合となる非粘着性特性の優れた永続性のために、抽出可能物のレベルが低い。
【0029】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体、特に、たとえばPET型のポリエステル製のポリマーフィルムのための非粘着性および/または撥水性コーティングにおいて急速に架橋可能であり、有利には無溶媒の、改良された接着促進剤が添加された新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。このコーティングは、アクリル接着剤を含めた感圧性接着剤との長期にわたる接触に対して耐性がある。
【0030】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体、特に、たとえばPET型のポリエステル製のポリマーフィルムのための非粘着性および/または撥水性コーティングにおいて架橋可能であり、有利には無溶媒の、改良された接着促進剤が添加された新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。この架橋は温和な温度で急速に瞬時に起こり、これらの組成物にはさらに、周囲温度において浴内での長い耐用期間を有する。
【0031】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体、特に、たとえばPET型のポリエステル製のポリマーフィルムのための非粘着性および/または撥水性コーティングにおいて架橋可能であり、有利には無溶媒の、改良された接着促進剤が添加された新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。これらの組成物は、非粘着性コーティングを、高速で(紙支持体用に提供される標準的な設備による場合を含む)、厄介な「ミスト化」の問題を生じることなく製造するための方法に適した低い粘度を有する。
【0032】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体のための非粘着性および/または撥水性コーティングにおいて架橋可能であり、改良された接着促進剤が添加された、調製が容易で経済的な新規な液状シリコーンコーティング組成物を提案することである。
【0033】
本発明の別の本質的な目的は、少なくとも公知の促進剤と同程度に有効で、組成物の保存に悪影響を及ぼさない、改良された新規な接着促進剤を提案することである。
【0034】
本発明の別の本質的な目的は、可撓性支持体(たとえば、紙またはポリマー)、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製(たとえばPET製)ポリマーフィルム上に、特に接着促進添加剤により特に接着(「摩擦落ち」)特性が改良され、さらに剥離力プロファイル制御の要求を満たし、低レベルの抽出可能物および適切な摩擦係数を有し、すべてが有利には無溶媒である出発組成を有し、「ミスト化」なく高速コーティングと適合する粘度を有する撥水性および非粘着性のコーティングを製造するための新規な方法を提案することである。
【0035】
本発明の別の本質的な目的は、任意の支持体(たとえば、紙またはポリマー)、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製ポリマーフィルムに適用され、付加重合によって架橋/硬化させることができ、改良された効果的な接着促進添加剤を含むシリコーン組成物から得られる撥水性および非粘着性の架橋/硬化シリコーンコーティングの接着性(すなわち、耐摩耗性)を増大させるための新規な方法を提案することである。
【0036】
本発明の別の本質的な目的は、優れた接着(「摩擦落ち」)特性、剥離力プロファイルの制御、硬度(抽出可能物の%)、および適切な摩擦係数を有し、すべてが有利には無溶媒の出発組成で始まり、「ミスト化」なく高速コーティングに適合する粘度を有する、付加重合によって架橋/硬化したシリコーン組成物をベースとする非粘着性、撥水性のコーティングを少なくとも1種有する、新規な可撓性支持体(たとえば、紙またはポリマー)、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル(PET)製のポリマーフィルムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
これらの目的は、とりわけ、本発明によって実現される。本発明はまず、好ましくはポリマーフィルムの形態の支持体のための撥水性および非粘着性のコーティングを形成するために、付加重合によって架橋/硬化可能な新規なシリコーン組成物に関する。このシリコーン組成物は、
(A) 下記式(I.1)の単位を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)を含む少なくとも1種の官能性シリコーンオイルを含有するアルケニル化シリコーン成分:
【0038】
【化1】

【0039】
〔式中、
- Wは独立に、官能性アルケニル基、好ましくはC2〜C6の官能性アルケニル基、さらにより好ましくはビニルまたはアリルを表し、
- Zは独立に、触媒の活性に好ましくない影響を及ぼさない一価の炭化水素基であって、好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基(有利には、メチル、エチル、プロピル、および3,3,3-トリフルオロプロピル基)ならびにアリール基(有利にはキシリルおよびトリルおよびフェニル基)から選択される基を表し、
-a は1または2であり、bは0、1、または2であり、a+bは1〜3である〕と、
(B) 1分子当たりにケイ素に結合した少なくとも3個の水素原子を有する少なくとも1種の水素化POSを含む少なくとも1種の架橋性シリコーンオイルと、
(C) 白金族に属する少なくとも1種の金属を含む少なくとも1種の触媒と、
(D) ・下記式(I.2):
【0040】
【化2】

【0041】
の単位と、
・任意選択で下記式(I.3):
【0042】
【化3】

【0043】
の単位と、
・任意選択で下記式(I.4):
【0044】
【化4】

【0045】
の単位と、
・任意選択で下記式(I.5):
【0046】
【化5】

【0047】
の単位と
〔式中、
- Yは独立に、線状、分枝状、または環状のエポキシ官能性炭化水素基、好ましくはC2〜C6の官能性炭化水素基、さらにより好ましくは、アルキルグリシジルエーテル、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルキル(任意選択でハロゲン化されたもの)、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルケニル(任意選択でハロゲン化されたもの)、カルボン酸のグリシジル-エステルを表し;
- Y'は独立に、アルコキシ官能基、好ましくはC2〜C6のアルコキシ官能基、さらにより好ましくはメトキシまたはエトキシを表し、
- Z1、Z2、Z3、Z4は、式(I.1)についての説明における前記Z基についての上記定義と同じ定義に相当する基であり、
- cは1または2であり、dは0、1、または2であり、c+dは1〜3であり、
- eは0〜3であり、
- gは1または2であり、hは0、1、または2であり、g+hは1〜3であり、
- iは1または2であり、jは0、1、または2であり、i+jは1〜3である〕
を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)を含む少なくとも1種のエポキシ化シリコーンオイルを含有する少なくとも1種の接着促進添加剤〔この接着促進添加剤(D)は、1分子当たりに、1単位未満のSi-H、好ましくは最大0.5単位のSi-Hを、さらにより好ましくは最大0.1単位のSi-Hを含む〕と、
(E) 任意選択で少なくとも1種の架橋抑制剤と、
(F) 任意選択で接着調整系と、
(G) 任意選択で少なくとも1種の希釈剤と、
(H) 任意選択で少なくとも1種の他の機能性添加剤、特に、「ミスティング防止」添加剤型の「加工助剤」である操作助剤と
を含む。
【0048】
特に有効なエポキシ官能化シリコーンによって構成される新規な接着促進剤であって、そのSiH単位レベルがゼロであるかあるいは実質的にゼロであり、いずれの場合であっても低いため、SiHが関与する架橋形成反応の影響を極めてわずかしか受けないかあるいは全く受けない促進剤を開発したことは、本発明者らの功績である。これにより、この接着促進剤は、非粘着性コーティングを形成するために支持体に適用しようとする組成物における使用に適するゲル化していない液体の状態で、長期にわたって、たとえば、少なくとも1年、または少なくとも2年でさえも保存することができる。
【0049】
支持体への接着特性は、厳しい湿度および/または温度条件下であっても、たとえば少なくとも2週間持続し、ますます向上することに留意されたい。この永続性は、非粘着性コーティングが接着剤と接触している場合、特に接着剤がアクリル性接着剤である場合にも観測されるため、ますます注目すべきである。
【0050】
本発明により、得られるコーティングは、優れた接着性(「摩擦落ち」)を有するだけでなく、十分に高い高速での剥離力も有し、さらに優れた機械的および物理的特性(平滑性、透明性、および優れた摩擦係数)を有する。
【0051】
本発明によって、付加重合による架橋の質(すなわち反応性/架橋のレベル/速度)の点で実現した性能は、反応性および架橋のレベルに関して、得られる抽出可能物が低レベルであることによって実証されており、極めて有用である。
【0052】
得られるコーティングは支持体に特にうまく接着し、感圧性接着剤型の接着剤に対して反接着(「剥離(release)」)特性を提供することを可能とし、かつ、アクリル接着剤を含めたこれらの接着剤との長期にわたる接触に対する優れた機械的耐性を有する。
【0053】
これらの有利な特性は、たとえば超高速で作製されたフィルムのロールまたはスプールの形態で提供される、自己接着性ラベル(感圧性接着剤)の「ライナー」として有用である可撓性支持体(たとえば紙またはポリマー、特にポリマー、特にポリエステル、たとえばPET)の非粘着性を実現するために特に利用することができる。
【0054】
コーティングの利用は、これらの結果がシリコーン組成物を使用して得られる場合にますます有用である。この場合、シリコーン組成物のレオロジー的挙動が影響を受けない(それほど粘性が高くならない)ため、シリコーン組成物を任意の支持体上に、特に任意の可撓性支持体上に完全にコーティングすることができ、かつ、工業的コーティング条件下で極めてわずかしか、または全く「ミスト化」されないからである。
【0055】
さらに、本発明によるシリコーンコーティング組成物は、有利には「無溶媒」であることができる。このことは、シリコーンコーティング組成物が溶媒を含まない、特に有機溶媒を含まないことを意味する。これにより提供される健康および安全に関する利点は容易に予想される。
【0056】
本発明による添加剤(D)によってもたらされる接着性/保存性の歩み寄りは、少なくとも部分的にはこの添加剤からのSiH単位が存在しない、または実質的に存在しないことに基づくものである。この点について本発明を別の方法で定義すると、好ましくは、本発明による組成物は、この添加剤(D)のSi-H単位含有量が、(D)を構成するPOS(または複数種のPOS)の質量に対して0.15重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらにより好ましくは0.05重量%以下であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0057】
好ましくは、シリコーン組成物は主に、少なくとも、鎖内におけるビニル化オイルと、鎖内におけるSiH架橋剤とを有し、かつ、SiH/SiVi比が高い。
【0058】
場合により、これらの組成物を紙支持体の処理に使用して、反接着特性、および強力な接着剤(たとえば、特定の感圧性アクリル接着剤「PSA」)に対するシリコーンコーティングの耐性の向上を提供することができる。
【0059】
量については、本発明によれば、接着促進添加剤(D)の濃度(組成物の全質量に対する重量%で表す)が、0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%、さらにより好ましくは1重量%〜18重量%であることが有利である。
【0060】
その中に接着促進添加剤(D)が存在するシリコーン組成物の一部分の保存に対する、接着促進添加剤(D)のわずかな影響に関しては、興味深いことに、前記組成物は、有利には周囲空気中で貯蔵した場合に少なくとも6カ月(好ましくは少なくとも1年)の貯蔵安定性を有する。この貯蔵安定性は、たとえば、試験される前記組成物の粘度が2倍になる時点までの期間として定義することができる、客観的安定性試験を用いて決定することができる。
【0061】
本開示における粘度はすべて、25℃における動的粘度のいわゆる「ニュートン」測定値(すなわち、速度勾配とは独立に測定される粘度について、十分に低いせん断速度勾配でそれ自体公知のやり方で測定される動的粘度)に相当する。
【0062】
本発明によれば、接着促進添加剤(D)は、以下のPOSを含むシリコーンの群から選択される:
1.
・c=1かつc+d=2である単位(I.2):Dエポキシと、
・任意選択で、c=1かつc+d=3である単位(I.2):Mエポキシと、
・任意選択で、e=2である単位(I.3):Dと、
・任意選択で、g =1かつg+h=1である単位(I.4):Tアルコキシと、
・任意選択で、g =1かつg+h=2である単位(I.4):Dアルコキシと、
・任意選択で、g =1かつg+h=3である単位(I.4):Mアルコキシと、
・任意選択で、i=1かつi+j=2である単位(I.5):D'と、
・任意選択で、i=1かつi+j=3である単位(I.5):M'と
を有するPOSであって、
好ましくは下記式:
M[D][Dアルコキシ]da[Dエポキシ]de[D']d'[Mエポキシ]me[M']m'M
(式中、
0≦d°<500、好ましくは0≦d°≦300、
0≦da≦50、好ましくは0≦da≦40、
1≦dc≦40、好ましくは2≦dc≦30、
0≦d'<1、好ましくは0≦d'≦0.5
0≦m'<1、好ましくは0≦m'≦0.5、
d'+m'が1未満、好ましくは0.5以下、
0≦me≦2である)
を有するPOS、
2. 平均式:
M[D][Dエポキシ]de[Mエポキシ]meM
(式中、d°、de、meは、上述により定義した通りである)
のPOS、さらにより好ましくは下記平均式:
【0063】
【化6】

【0064】
(式中、
・記号Z5は、互いに同一または異なり、式(I.1)についての説明における前記Z基についての上記定義と同じ定義に相当する基であり、
・15≦p≦200、好ましくは50≦p≦100、さらにより好ましくは75≦p≦85、
・0≦q≦20、好ましくは1≦q≦15、さらにより好ましくは6≦q≦9、
・r+s=3、
・0≦r≦3、
・0≦s≦3、
・t+u=3、
・0≦t≦3、
・0≦u≦3である)
のPOS、および
3.これらの混合物。
【0065】
記号Dエポキシ、Mエポキシ、Mアルコキシ、Dアルコキシ、Tアルコキシは、これらを有する基によって官能化されたシロキシ基であることを理解されたい。
【0066】
【化7】

【0067】
本明細書を通して、POSのM、D、T、Qシロキシ単位の指定については、標準的な命名法を参照する。参考試料として、NOLL、「Chemistry and technology of silicones」、1.1章、1-9頁、Academic Press、1968年-第2版を挙げることができる。
【0068】
接着性能をさらに向上させるために、特に(D)が上述のようなPOS(2)を含む場合には、本発明によれば、接着促進添加剤(D)が、オニウムボレート、より好ましくはヨードニウムボレートおよび/またはボラン類から好ましくは選択される、少なくとも1種の光開始剤組成物(たとえば、カチオン性のもの)を含むことが好都合であると考えられる。
【0069】
光開始剤組成物の例としては、下記式に相当する光開始剤組成物を挙げることができる。
【0070】
【化8】

【0071】
適切なオニウムボレートに関するさらなる詳細については、たとえば、次の特許出願または特許:US-B-6864311、US-B-6291540、US-B-5468902を参照することができる。
【0072】
この光開始剤組成物を、有利にはプロトン性溶媒、たとえば、イソプロピルアルコールで希釈する。希釈濃度は、たとえば、10%〜30%、特に20±2%である。
【0073】
組成物が光開始剤組成物を含む場合、反応を加速させるために、熱および/または化学線、たとえば紫外線にコーティングを曝すことができる。
【0074】
適切なボラン類に関するさらなる詳細については、たとえば、次の特許出願または特許:US-B-6743883、US-A-2004/0048975を参照することができる。
【0075】
組成物が、
1.0≦Si-H/Si-アルケニル≦7、
好ましくは1.5≦Si-H/Si-アルケニル≦5
となるようなSi-H/Si-アルケニルモル比を有することが、本発明によれば特に賢明であると考えられる。
【0076】
とりわけ1つの可能性によれば、組成物は、互いに異なる画分F1と画分F2とを有するアルケニル化シリコーン成分Aを含有し、
− F2は、組成物の硬化/架橋によって得られる非粘着性コーティングの支持体に対する接着性を高める(したがって耐摩耗性にする)活性を有し、かつ
− F2は、以下のものを含む群から選択される少なくとも1種のアルケニル化シリコーンオイルによって形成される:
→(A2.1) 1分子当たりにケイ素に結合した単一のアルケニル基(好ましくはC2〜C6のアルケニル基)を有する単一の末端を有する少なくとも1種の線状POSを各々が含むモノアルケニル化シリコーンオイルであって、線状の平均式:MWDmM〔式中、M、MW、およびDは、式(I.1)のシロキシ単位であり、Mについてa=0かつb=3、MWについてa=1かつb=2であり、Dについてa=0かつb=2であり、mは150以上の自然数である〕を有するモノアルケニル化シリコーンオイル、
→(A2.2) 1分子当たりにケイ素に結合したアルケニル基(好ましくはC2〜C6のアルケニル基)をその各末端に有する少なくとも1種の線状POSを各々が含む長鎖のシリコーンオイルであって、線状の平均式:MWDnMW〔式中、MWおよびDは、式(I.1)のシロキシ単位であり、MWについてa=1かつb=2であり、Dについてa=0かつb=2であり、nは250以上の自然数である〕を有する長鎖のシリコーンオイル(前記オイルA2.2の粘度v2は、3000 mPa・秒〜200,000 mPa・秒である)、
→(A2.3) 1分子当たりにケイ素に結合した少なくとも1つのアルケニル基(好ましくはC2〜C6のアルケニル基)を有する少なくとも1種の線状POSを各々が含む「弱」アルケニル化シリコーンオイルであって、前記線状POSが、線状の平均式:(MW)x(M)y(D)p(DW)p'〔式中、M、MWおよびDは、式(I.1)のシロキシ単位であり、M、MWについてa=1かつb=2であり、Dについてa=0かつb=2であり、DWについてa=1かつb=1であり、p、p'は自然数であり、x、y=0、1、または2、x+y=2である〕を有し、A2.3の全質量に対するアルケニル単位の質量比RW (重量%)は、0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である「弱」アルケニル化シリコーンオイル、および
→これらの混合物。
【0077】
接着促進活性を有するF2の全質量に対するSi-アルケニル単位のこの質量比Rw(重量%)は、たとえば、以下のように定義される:
→A2.1について
0.05≦Rw≦0.2、好ましくは0.07≦Rw≦0.15
→A2.2について
0.05≦Rw≦0.25、好ましくは0.1≦Rw≦0.2
【0078】
有利には、
・A2.1は、たとえば、(ジメチル)(ビニル)シリル末端と(トリメチル)(ビニル)シリル末端とを両方有するポリジメチルシロキサン類を含む群から選択され、
・A2.2は、たとえば、(ジメチル)(ビニル)シリル末端を2つ有するポリジメチルシロキサン類を含む群から選択され、
・A2.3は、たとえば、(ジメチル)-(ビニル)シリル末端を有するポリ(ジメチルシロキシ)(メチル-ビニルシロキシ)シロキサン類を含む群から選択される。
【0079】
アルケニル化シリコーン成分Aのポリオルガノシロキサン(I.1)は、線状、枝分かれ、または環状構造を有することができる。その重合度は、たとえば、2〜5000である。
【0080】
好ましい一実施形態では、Aは、1分子当たりにケイ素に結合した少なくとも2個のアルケニル基(好ましくはC2〜C6のアルケニル基)を有する少なくとも1種の線状POSを含む群から選択される少なくとも1種のアルケニル化シリコーンオイルであって、
− 線状の平均式:
MWr(D)q(DW)q'Mr'
(式中、MおよびDは式(I.1)のシロキシ単位であり、Mについてa=0かつb=3、MWについてa=1かつb=2であり、Dについてa=0かつb=2であり、DWについてa=1かつb=1であり、qおよびq'は自然数であり、r、r'=0、1、または2かつr+r'=2である)
を有し、
− 75≦v4≦40,000、好ましくは100≦v4≦2,000、より好ましくは100≦v4≦1,000
で定義される粘度v4(25℃におけるmPa・秒)を有し、かつ
− Aの前記POSの全質量に対するSi-アルケニル単位の質量比RW(重量%)が、
0.1≦RW≦3.5、好ましくは0.2≦RW≦3、より好ましくは0.5≦RW≦3
で定義される、
アルケニル化シリコーンオイルを含む。
【0081】
たとえば、画分F1はこのようなアルケニル化シリコーンオイルでよい。
【0082】
式(I.1)のシロキシル単位の例は、ビニルジメチルシロキサン単位、ビニルフェニルメチルシロキサン単位、およびビニルシロキサン単位である。
【0083】
ポリオルガノシロキサン(I.1)の例は、ジメチルビニルシリル末端を有するジメチルポリシロキサン類、トリメチルシリル末端を有するメチルビニルジメチルポリシロキサン共重合体、ジメチルビニルシリル末端を有するメチルビニルジメチルポリシロキサン共重合体、および環状メチルビニルポリシロキサン類である。
【0084】
ビニル化オイルは、非粘着性の硬化性組成物を調製するために従来から利用されている市販の製品である(たとえば、特許US-A-4623700)。
【0085】
より重いアルケニルまたはアルケニルオキシアルキレン基を有するこれらのオイルは、特にEP-B-0219720およびEP-A-0454130に記載されている。
【0086】
架橋性シリコーンオイルBに関しては、たとえば下記式のシロキシル単位を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(II.2)を含むことができる。
【0087】
【化9】

【0088】
式中、
- Lは、炭素数1〜8のアルキル基(有利には、メチル、エチル、プロピルおよび3,3,3-トリフルオロプロピル基)およびアリール基(有利にはキシリルおよびトリルおよびフェニル基)から好ましくは選択される、触媒の活性に好ましくない影響を及ぼさない一価の炭化水素基であり、
- d'は1または2、e'は0、1、または2であり、D'+e'は1〜3の値を有する。
【0089】
このポリオルガノシロキサン(I.2)の(25℃での)動的粘度は、ηd=5、好ましくは10であり、さらにより好ましくは20 mPa・秒〜1000 mPa・秒である。
【0090】
ポリオルガノシロキサン(I.2)は、線状、枝分かれ、または環状の構造を有することができる。重合度は2以上である。より一般的には、重合度は5,000以下である。
【0091】
式(I.2)の単位の例は、
M':H(CH3)2SiO1/2、D':HCH3SiO2/2、D':H(C6H5)SiO2/2
である。
【0092】
ポリオルガノシロキサン(I.2)、すなわち架橋性オイル(B)の例は、
- M'DD':水素ジメチルシリル末端を有するジメチルポリシロキサン類、ポリ(ジメチルシロキシ)(メチル水素シロキシ)、α,ω-ジメチル水素-シロキサン類、
- MDD':トリメチルシリル末端を有するジメチル-水素メチルポリシロキサン単位を有する共重合体、
- M'DD':水素ジメチルシリル末端を有するジメチル-水素メチルポリシロキサン単位を有する共重合体、
- MD':トリメチルシリル末端を有する水素メチルポリシロキサン類、
- D'4:環状水素メチルポリシロキサン類である。
【0093】
これらの架橋性オイル(B)の例は、特許US-A-4623700および欧州特許EP-B-0219720に挙げられている。
【0094】
好ましくは、架橋性シリコーンオイルBは、
− 線状の下記平均式:
MαM'βDγD'δ
〔式中、
・M=(R1)3SiO1/2
・M'=Ha(R1)bSiO1/2、a+b=3であり、a=1、2、または3かつb=0〜3、
・D=(R2)2SiO2/2
・D'=HR3SiO2/2
・R1、R2、R3は独立に、式(I.1)の前記基Zと同じ定義に相当し、
α=0〜2であり、β=2〜0であり、δ+γは10〜200、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜70であり、さらに好ましくはγ=0である〕
の少なくとも1種のPOS(B1)であって、
・5≦v5≦500、好ましくは10≦v5≦200、より好ましくは10≦v5≦100
で定義される粘度v5(25℃におけるmPa・秒)を有し、かつ
・5≦Si-H≦46、好ましくは20≦Si-H≦46、より好ましくは30≦Si-H≦46
で定義されるSi-H力価(POS B1に対する重量%)を有する
POS(B1)、および/または
− 下記平均式:
M'hQk
(式中、
・M'=Ha(R1)bSiO1/2、a+b=3であり、a=1、2または3かつb=0〜3、
・Q=SiO4/2
・4≦h≦20、1≦k≦4または5である)
の少なくとも1種の枝分かれPOS(B2)であって、
・5≦v5'≦100、好ましくは10≦v5'≦30
で定義される粘度v5'(25℃におけるmPa・秒)を有し、かつ
・15≦Si-H≦40、好ましくは25≦Si-H≦35、より好ましくは25≦Si-H≦30
で定義されるSi-H力価(POS B2に対する重量%)を有する、
枝分かれPOS(B2)
を含む。
【0095】
形態(B1)の好ましい第1の変形では、α=2、β=0、δ+γは10〜200、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜70であり、さらに好ましくはγ=0である。
【0096】
形態(B1)の好ましい第2の変形では、
0≦α≦2
0≦β≦2
0≦γ
0<δ
0≦γ/δ、好ましくは0≦γ/δ≦2、さらにより好ましくは0≦γ/δ≦1.5、
15≦(β/δ)x1000≦150、好ましくは15≦(β/δ)x1000≦80、さらにより好ましくは15≦(β/δ)x1000≦60である。
【0097】
上記架橋剤(B1)の線状の平均式は、下記のものを包含する広範な式である。
・-a-:架橋剤(B1)が、同一の(好ましくは線状の)POS分子上に単位MM'DD'を含み、1種または複数種の異なるMM'DD'分子を含むことができる場合。
・-b-:架橋剤(B1)が、各々がMM'DD'単位の一部を有する(好ましくは線状の)POS分子の混合物によって形成される場合。
・-c-:架橋剤(B1)が、上述のタイプ-a-および-b-の(好ましくは線状の)架橋剤(B1)の混合物によって形成される場合。
【0098】
架橋剤(B1)のタイプ-b-の例として、MおよびD'単位を含む(B1)と、M、D、およびD'単位を含むPOSとの混合物;あるいはMおよびD単位を含む(B1)と、M'、D、およびD'単位を含むPOSとの混合物;あるいはMおよびD'単位を含む(B1)と、MおよびD単位を含むPOSとの混合物;あるいはM'およびD'単位を含む(B1)と、MおよびD単位を含むPOSとの混合物を挙げることができる。
【0099】
本発明による付加重合シリコーン組成物のベース(A)(B)は、たとえば特許:US-A-3220972、US-A-3697473およびUS-A-4340709に記載されているような線状ポリオルガノシロキサン(I.1)および(I.2)のみを含むことができる。
【0100】
触媒(C)もまた周知である。白金およびロジウムの化合物を好ましくは使用する。US-A-3159601、US-A-3159602、US-A-3220972、ならびに欧州特許EP-A-0057459、EP-A-0188978、およびEP-A-0190530に記載されている白金と有機生成物との錯体、US-A-3419593、US-A-3715334、US-A-3377432、およびUS-A-3814730に記載されている白金とビニル化オルガノシロキサンとの錯体を特に使用することができる。一般に好まれる触媒は白金である。この場合、触媒(II)の量は、白金金属の重量で計算して、アルケニル化シリコーン成分(A)と架橋オイル(B)との合計重量に基づき、一般に2 ppm〜500 ppm、好ましくは5 ppm〜200 ppmである。
【0101】
組成物は、(D)に加えて、別の接着促進添加剤(Dbis)を含むこともできる。後者は好ましくはエポキシ官能性シラン類から、好ましくは、
・(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシ-シラン[Coatosil(登録商標)1770]、
・トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート[A-Link 597]と、
・(ガンマグリシドキシプロピル)トリメトキシシラン[Dynasilan(登録商標)GLYMO]、
・(ガンマメタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン[Dynasilan(登録商標)MEMO]、
・SiVi基と、エポキシ官能基との両方を含むシリコーン化合物、および
・これらの混合物
を含む群から選択される。
【0102】
添加剤(Dbis)の適切な濃度は、たとえば、0.5%〜5%、好ましくは1%〜3%である。
【0103】
本発明の好ましい配合によれば、この組成物は、下記化合物から選択される少なくとも1種の架橋抑制剤(E)を含む:
- ポリオルガノシロキサン類、有利には環状かつ少なくとも1つのアルケニルによって置換されたポリオルガノシロキサン類、特に好ましくはテトラメチルビニルテトラシロキサン、
- ピリジン、
- ホスフィン類および有機ホスファイト、
- 不飽和アミド類、
- ジアルキルジカルボキシレート(特許US-A-4256870、US-A-4476166)、
- ジアルキルアセチレンジカルボキシレート(特許US-A-4347346)、
- アルキル化マレエート、
- ジアリルマレエート、
- アセチレンアルコール類(特許US-A-3989866、4336364、3445420)、および
- これらの混合物。
【0104】
上記アセチレンアルコール類(FR-B-1528464およびFR-A-2372874参照)は、ヒドロシリル化反応の好ましい熱阻害剤に含まれるものであり、下記式を有する:
R4-(R5)C(OH)-C≡CH
(式中、
R4は、線状もしくは枝分かれアルキル基、またはフェニル基であり、
R5は、H、または線状もしくは枝分かれアルキル基、またはフェニル基であり、
R4、R5基と、三重結合のα位置に位置する炭素原子とは、任意選択で環を形成することができ、
R4およびR5に含まれる炭素原子の総数は少なくとも5、好ましくは9〜20である)。
【0105】
上記アルコール類は、好ましくは、沸点が250℃よりも高いアルコール類から選択される。
【0106】
例として、以下を挙げることができる:
- エチニル-1-シクロヘキサノール-1、
- メチル-3ドデシン-1オール-3、
- トリメチル-3,7,11ドデシン-1オール-3、
- ジフェニル-1,1プロピン-2オール-1、
- エチル-3エチル-6ノニン-1オール-3、
- メチル-3ペンタデシン-1オール-3。
【0107】
これらのα-アセチレンアルコール類は市販の製品である。
【0108】
このような遅延剤は、触媒の作用を周囲温度で抑制し、この抑制作用が高温架橋処理中には停止するような量で存在する。この量は、特にヒドロシリル化反応抑制剤がエチニルシクロヘキサノールである場合には、アルキレン化シリコーン成分(A)とシリコーンオイル(B)との合計重量に対して一般に最大3000ppm程度、好ましくは100〜2500ppmのオーダーである。
【0109】
一変形態様によれば、非粘着性の架橋性シリコーン組成物は、少なくとも1種の接着調整系(F)を含む。
【0110】
この接着調整系(F)は、公知の系から選択される。これらの系は、仏国特許FR-B-2450642、特許US-B-3772247または欧州特許出願公開EP-A-0601938に記載されている系であってよい。例として、下記に基づく調整剤を挙げることができる。
・タイプ:MDViQ、MMViQ、MDViT、MMヘキセニルQ、またはMMアリルオキシプロピルQ
の少なくとも1種の反応性ポリオルガノシロキサン樹脂(A)96〜85重量部
・タイプMD'Q、MDD'Q、MDT'、MQ、またはMDQ
の少なくとも1種の非反応性樹脂(B)4〜15重量部
【0111】
本発明の好ましい特性によれば、[(F)]の濃度は、組成物の全質量に対する乾燥重量%で以下のように定義される。
・[(F)]≦20
・好ましくは[(F)]≦15
・さらにより好ましくは(F)]≦10
【0112】
実際には、調整系の性能が、組成物の全質量に対してFが20乾燥重量%を超えないような量で非粘着性シリコーン組成物に調整系を導入するように注意が払われる程度にまで最適化されることが本発明の枠内で観測されている。
【0113】
組成物中に場合により存在する希釈剤(G)は、有利にはアルファオレフィン、特に1分子あたり4〜15個の炭素原子を含むアルファオレフィンから選択される。
【0114】
他の機能性添加剤(H)を組成物に導入することができる。これらの添加剤は、たとえばガラスマイクロビーズ、ミスティング防止剤などの充填剤から選択することができる。
【0115】
有利には、完全な硬化性組成物ABC(D)(E)(G)(H)〔( )内の成分は任意選択である〕は常温で液体であり、これらの粘度は、たとえば以下のように定義される粘度v(25℃におけるmPa・秒)であってよい:
100≦v≦3,000、好ましくは200≦v≦2,000、さらに好ましくは500≦v≦1,000
【0116】
非粘着性および撥水性のコーティングを製造するためのコーティングベースとして特に使用することができる、上で定義したタイプの本発明によるシリコーン組成物の調製は、単に、当業者に公知の混合手段および方法を用いて成分ABC(D)(E)(F)(G)(H)を混合する工程を含む。
【0117】
本発明はまた、支持体上に撥水性、非粘着性のコーティングを形成させるために付加重合によって架橋/硬化可能なシリコーン組成物のための、それ自体新規な生成物としての接着促進添加剤にも関する。この接着促進添加剤は、
・下記式(I.2):
【0118】
【化10】

【0119】
の単位と、
・任意選択で下記式(I.3):
【0120】
【化11】

【0121】
・任意選択で下記式(I.4):
【0122】
【化12】

【0123】
の単位と、
・任意選択で下記式(I.5):
【0124】
【化13】

【0125】
の単位と
〔式中、
- Yは独立に、線状、分枝状、または環状のエポキシ官能性炭化水素基、好ましくはC2〜C6の官能性炭化水素基、さらにより好ましくは、アルキルグリシジルエーテル、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルキル(任意選択でハロゲン化されたもの)、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルケニル(任意選択でハロゲン化されたもの)、カルボン酸のグリシジル-エステルを表し;
- Y'は独立に、アルコキシ官能基、好ましくはC2〜C6のアルコキシ官能基、さらにより好ましくはメトキシまたはエトキシを表し、
- Z1、Z2、Z3、Z4は、式(I.1)についての説明における前記Z基についての上記定義と同じ定義に相当する基であり、
- cは1または2であり、dは0、1、または2であり、c+dは1〜3であり、
- eは0〜3であり、
- gは1または2であり、hは0、1、または2であり、g+hは1〜3であり、
- iは1または2であり、jは0、1、または2であり、i+jは1〜3である〕
を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)を含む少なくとも1種のエポキシ化シリコーンオイルを含み、
この接着促進添加剤(D) は、1分子当たりに、1単位未満のSi-H、好ましくは最大0.1単位のSi-Hを含む
ことを特徴とする。
【0126】
本発明による組成物は、ポリオレフィン類(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)および/またはポリエステル類(たとえば、PET類)から選択されるポリマープラスチック材料のフィルムによって好ましくは形成される可撓性支持体(紙またはポリマー)に適用することができる。後者のポリエステル類をより特に挙げることができる。しかし、これにより、様々なタイプ(スーパーカレンダー、層状等)の紙、カード、セルロースシート、金属シートなどの他の可撓性支持体が除外されるわけではない。
【0127】
非粘着性シリコーン層でコーティングした、たとえばPET型のポリエステル製可撓性支持体は、接着性ラベル用の「ライナー」として使用される。
【0128】
別の態様によれば、本発明は、支持体、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製ポリマーフィルム上に撥水性および非粘着性のコーティングを製造するための方法に関する。この方法は、支持体に、上で定義したようなシリコーン組成物を少なくとも1層適用する工程と、この層を好ましくは加熱により活性化することによって確実に架橋させる工程とを含むことを特徴とする。
【0129】
これらの組成物は、たとえば5ロールコーティングヘッド、エアナイフ (air-knife) 型、またはイクオライザー(equalizing bar system)型などの工業的ペーパーコーティング機で使用される装置を用いて可撓性支持体または材料上に適用することができ、次いで70〜200℃に加熱したトンネルオーブン内を通過させることによって硬化させることができる。これらのオーブンを通過する時間は温度の関数であり、一般に、100℃程度の温度で5〜15秒程度、180℃程度の温度で1.5〜3秒程度である。
【0130】
適用する組成物の量は、たとえば、処理しようとする表面1m2当たり0.5〜2g程度であり、この量は0.5〜2μm程度の層の適用に相当する。
【0131】
このようにコーティングした材料または支持体を、続いて任意のゴム、アクリルまたは他の感圧接着性材料と接触させることができる。これらの接着性材料は、その後前記支持体または材料から容易にはがすことができる。
【0132】
本発明によれば、コーティングの架橋のために、付加重合シリコーン組成物でコーティングされた支持体を、好ましくは180℃以下の温度で10秒未満の間置く。
【0133】
別の主題によれば、本発明は、支持体、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製ポリマーフィルムに適用され、付加重合によって架橋/硬化可能な上で定義したようなシリコーン組成物から得られた撥水性および非粘着性の架橋/硬化シリコーンコーティングの接着性(すなわち、耐摩耗性)を高めるための方法にも関する。
【0134】
最後に、本発明は、可撓性支持体(たとえば、紙またはポリマー)、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製ポリマーフィルムに関し、この支持体は、付加重合によって架橋/硬化されたシリコーン組成物に基づく、上で定義したような少なくとも1種の撥水性および非粘着性のコーティングを含むことを特徴とする。
【0135】
本発明による非粘着性シリコーンコーティングは、過酷な湿度および温度条件下であっても、また長期にわたってアクリル接着剤に接触していても、特にPET製の可撓性支持体にうまく耐久的に接着する。これらのシリコーンコーティングは架橋/硬化する(抽出可能物はわずかである)。これらは、剥離力が高速でも高いままであるような剥離力プロファイル(優れた非粘着性)を有する。それらは、平滑性および透明性を有し、これによりこれらのシリコーンコーティングは、高性能のラベル支持体となる。
【0136】
以下の実施例を目安として挙げるが、本発明の分野および発明性(inventiveness)を限定するものと見なすことはできない。
【実施例】
【0137】
[組成物の成分についての説明]:
− ビニル化ポリマーA:
粘度が450mPa・秒で2.5%重量%のVi基を含む、トリメチルシロキシ末端を有するポリ(ジメチル)(メチル-ビニル)シロキサン
− SiH架橋剤B:
滴定により測定して46重量%のSiH基を有するトリメチルシロキシ末端を有するポリメチル水素シロキサン
− 触媒C:
滴定により測定して白金金属0.2重量%のカールシュテット(Karstedt)錯体
【0138】
[使用するエポキシ構造体についての説明]:
− 添加剤D1 = 平均構造:MD9DAGE4M(DAGE基はポリマー鎖上にランダムに分布している)で示されるMD9D'4M型のSiH官能基を有するシリコーンオイル上にアリルグリシジルエーテル(AGE)をグラフト化することによって得られるエポキシシリコーンオイル
− 添加剤D2 = エタノール、次いでAGEを、平均構造:MDOEet33DAGE22Mで示されるMD'55M型のSiH官能基を有するシリコーンオイルと反応させることによって得られるエトキシ化エポキシシリコーンオイル
− 添加剤D3 = エポキシシクロヘキシル基のグラフト化によって得られるエポキシシリコーンオイル
・このエポキシシリコーンオイルはp=80かつq=7である下記平均式を有し、
【0139】
【化14】

【0140】
・このエポキシシリコーンオイルはイソプロピルアルコール溶液中のカチオン性光開始剤組成物を含有する。使用する光開始剤組成物はイソプロパノール中の18%溶液であり、下記式に対応する:
【0141】
【化15】

【0142】
注:MはMe3SiO1/2単位を示す
D'はMeHSiO2/2単位を示す
DはMe2SiO2/2単位を示す
TはMeSiO3/2単位を示す
【0143】
NMRによって、またアルコール性カリウムとの反応によって、エポキシオイルD1およびD2中に残留SiHが存在しないことを確認する(検出限界:0.1%)。
【0144】
[コーティングおよび架橋条件-使用するPETフィルムについての性質および言及]
コーティングはすべてROTOMEC 5-ローラーコーティング機で行い、ポリエステルフィルムに適用したシリコーンの架橋は下記一般条件下で行った:
-コーティングする支持体のタイプ:厚さ30μmのLumirror 60.01ポリエステルフィルム(供給元:Toray plastics)
-支持体巻き戻し機の速度:100 m/分
-オーブン温度:180℃
-オーブンから出る時点の支持体の温度:139℃
【0145】
[実施例1:エポキシ化添加剤なしの対照配合物]
ビニル化シリコーンポリマーA(150g)と架橋剤B(10.4g)とを、250mlの粉末箱内で混合する。この配合物を注意深く混合し、その後触媒C(7.5g)を添加する。この調製物をもう一度撹拌し、その後フィルム上へのコーティング用のギャップに注入する。
【0146】
[実施例2:2%のエポキシ化添加剤D1を用いた試験]
ビニル化ポリマーA(150g)を、250mlの粉末箱内で添加剤D1(3.4g)および架橋剤B(10.4g)と混合する。この配合物を注意深く混合した後、触媒C(7.5g)を添加する。この調製物をもう一度撹拌した後、フィルム上へのコーティング用のギャップに注入する。
【0147】
[実施例3:2%のエポキシ化添加剤D2を用いた試験]
ビニル化ポリマーA(150g)を、250mlの粉末箱内で添加剤D2(3.4g)および架橋剤B(10.4g)と混合する。この配合物を注意深く混合し、その後触媒C(7.5g)を添加する。この調製物をもう一度撹拌し、その後フィルム上へのコーティング用のギャップに注入する。
【0148】
[実施例4:エポキシ化添加剤D3および紫外線処理を用いた試験]
実施例1を繰り返すが、15%の添加剤D3を配合物に添加する。
【0149】
本実施例では、オーブン内に入れる前に、出力120 W/cmの融合ランプの下を通すことによって、シリコーン処理したフィルムにUV照射する。
【0150】
[試験]:
フィルムがコーティング機を離れた後、老化試験に供する。この老化試験では、シリコーン処理したPETに、UPM-RAFLATACが販売しているアクリル接着剤(RP40)を適用して接触させる。
【0151】
次いで、この複合体を、50℃/湿度70%に調整した耐候試験室内に置く。
【0152】
シリコーン層の安定性を検証するための摩擦落ち測定は、接着剤を剥離した後、層に機械的応力をかけるためにシリコーン支持体の上を人指し指でこすることにより行う。シリコーンコーティングが引き裂き(tearing)により断片化することに相当する摩擦落ち(または、ガム状になる(gumming))現象が出現するまでの、指による前後のパスの回数を記録する。スコア10により、シリコーン層の優れた安定性が確認される。
【0153】
逆に、スコア1は、指の1回目の前後のパスによりシリコーンの剥離が出現した場合に相当する。
【0154】
[結果/特性]:
下記表に、実施した以下の種々の試験についてまとめる:
− シリコーン堆積量、すなわち、ポリエステルの1表面積当たりに適用されたシリコーンの量
− メチルイソブチルケトン(MIKB)により抽出可能なシリコーンの割合、すなわち、非架橋シリコーン<0}のレベル
− 湿潤オーブン内でアクリル接着剤と接触する期間を長期化させた場合の、シリコーン処理したフィルムの各期間後の「摩擦落ち」抵抗性。
【0155】
長期にわたる接着剤との接触の後であっても、エポキシ化添加オイルを組み込んだ後にシリコーン処理したフィルムの挙動において改善が認められる。
【0156】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性および非粘着性のコーティングを支持体上に形成させるための、付加重合によって架橋/硬化可能なシリコーン組成物であって、
(A) 下記式(I.1):
【化1】

〔式中、
- Wは独立に、官能性アルケニル基、好ましくはC2〜C6の官能性アルケニル基、さらにより好ましくはビニルまたはアリルを表し、
- Zは独立に、触媒の活性に好ましくない影響を及ぼさない一価の炭化水素基であって、好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基(有利には、メチル、エチル、プロピル、および3,3,3-トリフルオロプロピル基)ならびにアリール基(有利にはキシリルおよびトリルおよびフェニル基)から選択される基を表し、
- aは1または2であり、bは0、1、または2であり、a+bは1〜3である〕
の単位を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)を含む少なくとも1種の官能性シリコーンオイルを含有するアルケニル化シリコーン成分と、
(B) 1分子当たりにシリコンに結合した少なくとも3個の水素原子を有する少なくとも1種の水素化POSを含む少なくとも1種の架橋性シリコーンオイルと、
(C) 白金族に属する少なくとも1種の金属を含む少なくとも1種の触媒と、
(D) ・下記式(I.2):
【化2】

の単位と、
・任意選択で下記式(I.3):
【化3】

の単位と、
・任意選択で下記式(I.4):
【化4】

の単位と、
・任意選択で下記式(I.5):
【化5】

の単位と
〔式中、
- Yは独立に、線状、分枝状、または環状のエポキシ官能性炭化水素基、好ましくはC2〜C6の官能性炭化水素基、さらにより好ましくは、アルキルグリシジルエーテル、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルキル(任意選択でハロゲン化されたもの)、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルケニル(任意選択でハロゲン化されたもの)、カルボン酸のグリシジル-エステルを表し;
- Y'は独立に、アルコキシ官能基、好ましくはC2〜C6のアルコキシ官能基、さらにより好ましくはメトキシまたはエトキシを表し、
- Z1、Z2、Z3、Z4は、式(I.1)についての説明における前記Z基についての上記定義と同じ定義に相当する基であり、
- cは1または2であり、dは0、1、または2であり、c+dは1〜3であり、
- eは0〜3であり、
- gは1または2であり、hは0、1、または2であり、g+hは1〜3であり、
- iは1または2であり、jは0、1、または2であり、i+jは1〜3である〕
を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)を含む少なくとも1種のエポキシ化シリコーンオイルを含有する少なくとも1種の接着促進添加剤〔この接着促進添加剤(D)は、1分子当たりに、1単位未満のSi-H、好ましくは最大0.5単位のSi-Hを、さらにより好ましくは最大0.1単位のSi-Hを含む〕と、
(E) 任意選択で少なくとも1種の架橋抑制剤と、
(F) 任意選択で接着調整系と、
(G) 任意選択で少なくとも1種の希釈剤と、
(H) 任意選択で少なくとも1種の他の機能性添加剤、特に、「ミスティング防止」添加剤タイプの「加工助剤」である添加剤と
を含むことを特徴とするシリコーン組成物。
【請求項2】
接着促進添加剤(D)のSi-H単位含有量が、(D)を構成する前記1種または複数種のPOSの質量に対して0.15重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、さらにより好ましくは0.05重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
接着促進添加剤(D)の濃度(組成物の全質量に対する重量%として表す)が、0.1重量%〜40重量%、好ましくは0.5重量%〜20重量%、さらにより好ましくは1重量%〜18重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
周囲空気中での貯蔵の貯蔵安定性が少なくとも6カ月である(前記貯蔵安定性は、試験する前記組成物の粘度が2倍になる時点までの期間として定義する)ことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
接着促進添加剤(D)が、以下のものを含むシリコーンの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物:
1.
・c=1かつc+d=2である単位(I.2):Dエポキシと、
・任意選択で、c=1かつc+d=3である単位(I.2):Mエポキシと、
・任意選択で、e=2である単位(I.3):Dと、
・任意選択で、g =1かつg+h=1である単位(I.4):Tアルコキシと、
・任意選択で、g =1かつg+h=2である単位(I.4):Dアルコキシと、
・任意選択で、g =1かつg+h=3である単位(I.4):Mアルコキシと、
・任意選択で、i=1かつi+j=2である単位(I.5):D'と、
・任意選択で、i=1かつi+j=3である単位(I.5):M'と
を有するPOSであって、
好ましくは下記式:
M[D][Dアルコキシ]da[Dエポキシ]de[D']d'[Mエポキシ]me[M']m'M
(式中、
0≦d°<500、好ましくは0≦d°≦300、
0≦da≦50、好ましくは0≦da≦40、
1≦dc≦40、好ましくは2≦dc≦30、
0≦d'<1、好ましくは0≦d'≦0.5
0≦m'<1、好ましくは0≦m'≦0.5、
d'+m'が1未満、好ましくは0.5以下、
0≦me≦2である)
を有するPOS、
2.平均式:
M[D][Dエポキシ]de[Mエポキシ]meM
(d°、de、meは、上述により定義した通りである)
のPOS、さらにより好ましくは下記平均式:
【化6】

(式中、
・記号Z5は、互いに同一または異なり、式(I.1)についての説明における前記Z基についての上記定義と同じ定義に相当する基であり、
・15≦p≦200、好ましくは50≦p≦100、さらにより好ましくは75≦p≦85、
・0≦q≦20、好ましくは1≦q≦15、さらにより好ましくは6≦q≦9、
・r+s=3、
・0≦r≦3、
・0≦s≦3、
・t+u=3、
・0≦t≦3、
・0≦u≦3である)
のPOS、および
3.これらの混合物。
【請求項6】
接着促進添加剤(D)が、少なくとも1種の光開始剤組成物、好ましくは、オニウムボレート、より好ましくはヨードニウムボレートおよび/またはボラン類から選択される光開始剤組成物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
Si-H/Si-アルケニルのモル比が、
1.0≦Si-H/Si-アルケニル≦7、
好ましくは1.5≦Si-H/Si-アルケニル≦5
となるような比であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
Aが、1分子当たりにケイ素に結合した少なくとも2個のアルケニル基(好ましくはC2〜C6のアルケニル基)を有する少なくとも1種の線状POSを含む群から選択される少なくとも1種のアルケニル化シリコーンオイルであって、
− 線状の平均式:
MWr(D)q(DW)q'Mr'
(式中、MおよびDは式(I.1)のシロキシ単位であり、Mについてa=0かつb=3、MWについてa=1かつb=2であり、Dについてa=0かつb=2であり、DWについてa=1かつb=1であり、qおよびq'は自然数であり、r、r'=0、1、または2かつr+r'=2である)
を有し、
− 75≦v4≦4,000、好ましくは100≦v4≦2,000、より好ましくは100≦v4≦1,000
で定義される粘度v4(25℃におけるmPa・秒)を有し、かつ
− Aの前記POSの全質量に対するSi-アルケニル単位の質量比RW(重量%)が、
0.1≦RW≦3.5、好ましくは0.2≦RW≦3、より好ましくは0.5≦RW≦3
で定義される、
アルケニル化シリコーンオイルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
架橋性シリコーンオイルBが、
− 線状の下記平均式:
MαM'βDγD'δ
〔式中、
・M=(R1)3SiO1/2
・M'=Ha(R1)bSiO1/2、a+b=3であり、a=1、2、または3かつb=0〜3、
・D=(R2)2SiO2/2
・D'=HR3SiO2/2
・R1、R2、R3は独立に、式(I.1)の前記基Zと同じ定義に相当し、
α=0〜2であり、β=2〜0であり、δ+γは10〜200、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜70であり、さらに好ましくはγ=0である〕
の少なくとも1種のPOS(B1)であって、
・5≦v5≦500、好ましくは10≦v5≦200、より好ましくは10≦v5≦100
で定義される粘度v5(25℃におけるmPa・秒)を有し、かつ
・5≦Si-H≦46、好ましくは20≦Si-H≦46、より好ましくは30≦Si-H≦46
で定義されるSi-H力価(POS B1に対する重量%)を有する、
POS(B1)、および/または
− 下記平均式:
M'hQk
(式中、
・M'=Ha(R1)bSiO1/2、a+b=3であり、a=1、2または3かつb=0〜3、
・Q=SiO4/2
・4≦h≦20、1≦k≦4または5である)
の少なくとも1種の枝分かれPOS(B2)であって、
・5≦v5'≦100、好ましくは10≦v5'≦30
で定義される粘度v5'(25℃におけるmPa・秒)を有し、かつ
・15≦Si-H≦40、好ましくは25≦Si-H≦35、より好ましくは25≦Si-H≦30
で定義されるSi-H力価(POS B2に対する重量%)を有する、
枝分かれPOS(B2)
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
エポキシ官能性シラン、好ましくは、
・(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシ-シラン(Coatosil(登録商標)1770)、
・トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート(A-Link 597)、
・GLYMO、
・MEMO、および
・これらの混合物
を含む群から選択される少なくとも1種の接着促進共添加剤(Dbis)を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
100≦v≦3,000、好ましくは200≦v≦2,000、さらに好ましくは500≦v≦1,000
で定義される粘度v(25℃におけるmPa・秒)を特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
支持体上に撥水性、非粘着性のコーティングを形成させるための、付加重合によって架橋/硬化可能なシリコーン組成物のための接着促進添加剤であって、
・下記式(I.2):
【化7】

の単位と、
・任意選択で下記式(I.3):
【化8】

の単位と、
・任意選択で下記式(I.4):
【化9】

の単位と、
・任意選択で下記式(I.5):
【化10】

の単位と
〔式中、
- Yは独立に、線状、分枝状、または環状のエポキシ官能性炭化水素基、好ましくはC2〜C6の官能性炭化水素基、さらにより好ましくは、アルキルグリシジルエーテル、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルキル(任意選択でハロゲン化されたもの)、線状、分枝状、および/または環状のエポキシアルケニル(任意選択でハロゲン化されたもの)、カルボン酸のグリシジル-エステルを表し;
- Y'は独立に、アルコキシ官能基、好ましくはC2〜C6のアルコキシ官能基、さらにより好ましくはメトキシまたはエトキシを表し、
- Z1、Z2、Z3、Z4は、式(I.1)についての説明における前記Z基についての上記定義と同じ定義に相当する基であり、
- cは1または2であり、dは0、1、または2であり、c+dは1〜3であり、
- eは0〜3であり、
- gは1または2であり、hは0、1、または2であり、g+hは1〜3であり、
- iは1または2であり、jは0、1、または2であり、i+jは1〜3である〕
を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(POS)を含む少なくとも1種のエポキシ化シリコーンオイルを含み、
この接着促進添加剤(D) は、1分子当たりに、1単位未満のSi-H、好ましくは最大0.1単位のSi-Hを含み、
好ましくは、請求項2から6の少なくとも一項に定義されている通りの接着促進添加剤(D)である
ことを特徴とする接着促進添加剤。
【請求項13】
支持体、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製のポリマーフィルム上に、撥水性および非粘着性のコーティングを製造する方法であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載のシリコーン組成物の少なくとも1層を前記支持体に適用する工程と、
前記層を、好ましくは加熱により前記層を活性化させることによって、確実に架橋させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
支持体、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製ポリマーフィルムに適用される、撥水性および非粘着性の架橋/硬化シリコーンコーティングの接着性(すなわち耐摩耗性)を高めるための方法であって、請求項1から11のいずれか一項に記載のシリコーン組成物から前記コーティングを得る工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
支持体、好ましくはポリマーフィルム、より好ましくはポリエステル製ポリマーフィルムであって、請求項1から11のいずれか一項に記載のシリコーン組成物に基づく撥水性および非粘着性のコーティングを少なくとも1層含むことを特徴とする支持体。

【公表番号】特表2009−541559(P2009−541559A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517193(P2009−517193)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056432
【国際公開番号】WO2008/000771
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508170896)ブルースター・シリコンズ・フランス・エス・アー・エス (5)
【Fターム(参考)】