説明

可撓性耐弾性アセンブリ

本発明は、高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントの積み重ねを含む耐弾性アセンブリであって、アセンブリの後側部分のエレメントの5〜50質量%が隣接エレメントをそれらの表面にわたって分布した多数のスポットで相互連結する連結手段を含有するアセンブリに関する。可撓性アセンブリは、高い弾丸阻止能と低い外傷影響とを兼ね備える。本発明はさらに、前記アセンブリを含む耐弾性物品におよび前記アセンブリの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントの積み重ねを含む耐弾性アセンブリに関する。
【0002】
本発明はさらに、前記アセンブリを含む耐弾性物品におよび前記アセンブリの製造方法に関する。
【0003】
弾道パネルまたはパッケージとも呼ばれる、かかる耐弾性アセンブリは米国特許第3,971,072号明細書から公知である。この特許公報は、薄い金属外側シェルと、織られた連続フィラメント糸で形成された防弾布の複数の可撓性層の積み重ねとのアセンブリを含有する軽量防護具を開示しており、その層は、3/4インチ(19mm)以下および1/8インチ(3.2mm)以上の間隔が空いている連続パスに沿って伸びる縫い目のような連結または固定手段によってそれらの全面にわたって相互連結されている。複数の層をこのように縫い合わせることによって、または別のやり方で接合することによって、アセンブリのバックターゲット歪みは低減されると云われている。弾道作用からの保護としてのラミネートとも呼ばれる、かかる可撓性耐弾性アセンブリはさらに、米国特許出願公開第2001/0021443 A1号明細書からも公知である。この公報は、すべての層が互いに連結されている、高性能繊維を含有する布からなる複数の層を含む可撓性ラミネートを開示している。前記層間の連結は接着スポットによって得られ、それによって接着剤でカバーされた各層の面積は約10〜95%である。接着剤の量は、互いに連結される2つの層の繊維成分に関して5〜35%である。
【0004】
耐弾性アセンブリは一般にそれ自体で使用されないが、異なる種類のソフト防護服をはじめとする、保護目的のために使用される防弾チョッキまたは他の造形部品のような耐弾性物品の一部として適用される。典型的には、アセンブリまたはパネルは、ナイロンまたは綿などの通常衣服布で構成され得るキャリア中へ挿入される。耐弾性アセンブリはキャリアに永久に貼り付けられても、または取り外し可能であってもよい。
【0005】
背面変形とも呼ばれる、バックターゲット歪みは、ミサイルの衝突時に着用者の身体に対する耐弾性アセンブリまたは物品の背面の変形を指すために当該技術分野で用いられる用語である。弾丸のような衝突ミサイルはアセンブリによって止められるかもしれず、すなわちそれは材料を完全には突き抜けないまたは貫通しないかもしれないが、それはその高い衝突エネルギーおよび衝撃の結果としてかもしれず、そして生じた局所的変形はそれでも、鈍的外傷または単に外傷と一般に呼ばれる、重大な損傷を身体または内部器官にもたらす。
【0006】
鈍的外傷の減少は、アラミド、例えばケブラー(Kevlar)(登録商標)またはトワロン(Twaron)(登録商標);超高モル質量ポリエチレン(UHMPE、例えばダイニーマ(Dyneema)(登録商標)またはスペクトラ(Spectra)(登録商標))、またはポリ(p−フェニレン 2,6,−ベンゾビスオキサゾール)(PBO、例えばザイロン(Zylon)(登録商標))のような高性能繊維をベースとする、近代的なソフト防弾服の導入以来ずっと課題である。防護服性能についてのほとんどの標準は弾丸阻止能に焦点を合わせているが、しばしば最大許容外傷もまた定量化している。国立司法研究所(NIJ)標準0101.04はソフト防護服を3つの主要なカテゴリー:IIA、II、およびIIIA(最弱保護から最強保護まで)に格付けしている。レベルIIA防護具は、8.0gの見かけ質量が332m/秒の最小速度で衝突する状態で、9mmフルメタルジャケットの丸い突出部弾丸から、および11.7gの見かけ質量が312m/秒の最小速度で衝突する状態で、40S&W口径フルメタルジャケット弾丸から守る。レベルII防護具は、8.0gの見かけ質量が358m/秒の最小速度で衝突する状態で、9mmフルメタルジャケットの丸い突出部弾丸から、および10.2gの見かけ質量が427m/秒の最小速度で衝突する状態で、357マグナムジャケットソフトポイント弾丸から守る。レベルIIIA防護具は、8.0gの見かけ質量が427m/秒の最小速度で衝突する状態で、9mmフルメタルジャケットの丸い突出部弾丸から、および15.6gの見かけ質量が427m/秒の最小速度で衝突する状態で、44マグナムジャケット中空ポイント弾丸から守る。レベルIIIおよびレベルIVは、ライフル一斉射撃から守る堅い防護服に関する。
【0007】
レベルIIIA防護具は典型的には、危険任務、人質救出、および保護任務などの、高リスク作業に従事する警官によって用いられる。実際には、かかるNIJ認定防弾チョッキの性能は、レベルIIIAチョッキの最大外傷(44mm)が高すぎると感じられるので、追加の外傷パッドまたはプレート(通常8×5インチ)を胸上にフィットさせることによってさらに改善されることが多い。外傷プレートはソフトであり、そして防弾チョッキにおける保護パネルと同じ材料でできている、または金属シートをはじめとする、異なる材料でできていることができるが、すべては、それらが厚さを増やし、重量を追加し、そして着心地の良さを損なうという欠点を有する。
【0008】
多数の特許公報は、追加の外傷バッドの使用を省くであろう、ソフト防護服での使用のための弾道パネルの外傷の減少に取り組んでいる。米国特許第4,413,357号明細書は、アラミド繊維の密に織られた布、可撓性ポリカーボネートシート材料の少なくとも1つの層、およびソフトな、比較的厚いフォームプラスチックの層の(パネルの前面から後面または背面への)積み重ねのアセンブリを提案している。EP 131447 A号明細書では、羽毛、フォームまたはフェルトから製造された外傷減衰層が防弾布層の前層と後層との間に挟まれ、アセンブリは縫合または他の接合によって統合されている。テキスタイルおよび衝撃吸収材の幾つかの層を含む、ワッフル様の構造化表面、少なくとも90容量%の空隙率および5〜30mmの厚さの三次元構造を有するアセンブリはEP 172415 A号明細書に記載されている。閉鎖された密閉シール空気空間を画定するストリップ、例えば独立気泡ポリウレタンフォームによって間隔を開けられた前および後の非金属耐衝撃性層を含む弾道パネルが米国特許第5,059,467号明細書によって開示されている。国際公開第92/06840 A1号パンフレットは、可撓性防弾材料および積み重ねの最内層と係合する強化パネルの積み重ねのアセンブリであって、防弾材料が例えばアラミド繊維製であることができ、パネルがポリカーボネート押出シートであることができるアセンブリに関する。布層と組み合わせて10mm厚さの追加のフォーム層を含有する保護アセンブリが国際公開第96/24816 A1号パンフレットに記載されている。フェルト層が一方向アラミド繊維材料の層の積み重ね間に空隙を維持するための手段としてCA 2,169,415 A号明細書に記載されている。モノフィラメントによって互いに12〜30mmで相互連結され、維持された前面および背面を含む、特別のスペーサー布が米国特許第6,103,641号明細書に提案されている。少なくとも1つの熱可塑性ポリエステル押出シートで裏打ちされた、高強度繊維、例えばアラミド繊維の層の前積み重ねと、少なくとも1つの熱可塑性ポリエステルシートで裏打ちされたかかる層のさらなる積み重ねとを含む多層防護具構造が米国特許第6,319,862号明細書に記載されている。
【0009】
米国特許第3,971,072号明細書から公知のアセンブリの欠点は、密な縫合が可撓性を低下させる、そしてまた耐弾性を低くするかもしれないことである。上に示された他の提案された構造は、アセンブリの厚さおよび/または重量を増やす追加の層を一般に含有する。このように業界では可撓性を高レベルの弾道保護および低い鈍的外傷と組み合わせる軽量の耐弾性アセンブリが必要とされている。
【0010】
本発明によれば、これは、エレメントの5〜50質量%がそれらの表面にわたって分布した多数のスポットで連接エレメントを相互連結する連結手段を含有し、それによって相互連結されたエレメントがアセンブリの後側部分、すなわち脅威または衝撃ミサイルに直面する面の反対側に置かれるアセンブリによって提供される。
【0011】
本発明による耐弾性アセンブリは、厚さおよび/または重量を増やすであろうが、アセンブリの可撓性が影響を受けないまたはほとんど影響を受けない余分の層、例えばいわゆる外傷ライナーを追加せずに、著しく減少した背面変形(従って鈍的外傷)を提供する。
【0012】
本発明によるアセンブリの別の利点は、例えばV50値で表される弾丸阻止能が適用される連結手段によって低下しないことである。さらに他の利点は、本発明によるアセンブリがまた、石のような他の衝突物体のような他の脅威からの、または例えば落下からの改善された保護を提供することである。本発明によるアセンブリを有利に使用する典型的な物品には、肘、肩、手首、膝、脚などのための保護パーツが含まれる。
【0013】
耐弾性アセンブリは複数の可撓性エレメントの積み重ねを含む。可撓性エレメントとは、20cmのエレメントが支持体から突き出た状態で平たい支持体上に保持されたときに、突き出た非支持部分の外縁がエレメントの支持部分より少なくとも10mm低くその自重下で下に曲がるエレメント、またはシートもしくは(積層された)層を意味する。エレメントの積み重ね内で、エレメントは、それらの接触面の少なくとも一部にわたって互いに移動するまたはシフトすることができる。互いに関するエレメントの移動は、エレメントの積み重ねが曲がり、そして収縮することを可能にし、それはソフト防護服用途にとって明らかに好ましい。アセンブリにおいて、前面は脅威または衝撃ミサイルに直面する面であり、一方後面または背面は脅威または衝撃ミサイルに直面する面と反対側、すなわち着用者または保護されるべき物体に最も近い面である。アセンブリの前面−ストライク面とも呼ばれる−は、互いに実質的に結び付けられていないまたは連結されていないエレメント、すなわちそれらの隣接面の実質的な部分にわたって連結手段で互いに貼り付けられていないまたは接着されていないエレメントを含有する。しかしながら、結合していない層の積み重ねを取り扱う、およびさらに加工することは困難である。あるレベルの結合を達成するために、アセンブリは例えば、好ましくはできるだけ少なく、例えばコーナーでまたは周辺端部周りでだけ(後面エレメントでの連結手段に加えて)縫い付けることができる。かかる連結手段は防弾性能または外傷に影響を及ぼすために適用されない。別の可能性は、可撓性カバーまたはエンベロープにアセンブリを包むことである。
【0014】
耐弾性アセンブリは、高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントの積み重ねを含む。
【0015】
本出願の文脈の中で、繊維はその幅および厚さよりはるかに大きい長さ寸法の細長い物体である。このように繊維という用語は、モノフィラメント、マルチフィラメント糸、リボン、ストリップまたはテープなどを含み、規則的なまたは不規則な断面を有することができる。繊維という用語には、上記の複数の任意の1つまたは組み合わせが含まれる。
【0016】
高強度繊維は少なくとも約1.0GPaの引張強度および少なくとも約40GPaの引張弾性率を有する。繊維は無機または有機繊維であってもよく、好適な繊維は例えば米国特許第5,185,195号明細書にリストされている。好適な無機繊維は、例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバーおよびセラミックファイバーである。かかる高い引張強度の好適な有機繊維は、例えば、芳香族ポリアミド繊維(また単にアラミド繊維)、特にポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリベンゾイミダゾールもしくはポリベンゾオキサゾール、特にポリ(1,4−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)、またはポリ(2,6−ジイミダゾ[4,5−b−4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)(PIPD、M5とも呼ばれる)などの液晶ポリマーおよびはしご形ポリマー繊維ならびに、例えば、ゲル紡糸法によって得られるものなどの、高度に延伸されている、例えば、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、およびポリアクリロニトリルの繊維である。繊維は好ましくは少なくとも約2GPa、少なくとも2.5GPaまたはさらに少なくとも3GPaの引張強度を有する。高度に延伸されたポリオレフィン、アラミド、PBOおよびPIPD繊維、またはそれらの少なくとも2つの組み合わせが好ましくは使用される。これらの繊維の利点は、それらが非常に高い引張強度を有し、その結果、それらが軽量耐弾性物品での使用に特に非常に好適であることである。
【0017】
好適なポリオレフィンは特に、少量の1つもしくはそれ以上の他のポリマー、特に他のアルケン−1−ポリマーをまた含有してもよい、エチレンおよびプロピレンのホモポリマーおよびコポリマーである。
【0018】
良好な結果は、線状ポリエチレン(PE)がポリオレフィンとして選択された場合に得られる。線状ポリエチレンは本明細書では、側鎖または分枝が一般に少なくとも10C原子を含有する、100C原子当たり1側鎖未満の、好ましくは300C原子当たり1側鎖より少ないポリエチレンを意味すると理解される。線状ポリエチレンはさらに、プロペン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン、オクテンなどの、それと共重合できる5モル%以下の1つもしくはそれ以上の他のアルケンを含有してもよい。
【0019】
好ましくは、線状ポリエチレンは、少なくとも4dl/g、より好ましくは少なくとも8dl/gの固有粘度(IV、デカリン中の溶液について135℃で測定されるように)の高いモル質量のものである。かかるポリエチレンはまた超高モル質量ポリエチレン(UHMWPE)とも呼ばれる。固有粘度は、MおよびMのような実際のモル質量パラメーターより容易に測定することができるモル質量(分子量とも呼ばれる)の尺度である。IVとMとの間には幾つかの経験的関係があるが、かかる関係はモル質量分布に高度に依存する。式M=5.37×10[IV]1.37(EP 0504954 A1号明細書を参照されたい)に基づき、4または8dl/gのIVは、それぞれ、約360または930kg/モルのMに等しいであろう。
【0020】
例えば、GB 2042414 A号または国際公開第01/73173 A1号パンフレットに記載されているような、ゲル紡糸法によって製造されたポリエチレン・フィラメントからなる高性能ポリエチレン(HPPE)繊維が好ましくは使用される。ゲル紡糸法は、高い固有粘度の線状ポリエチレンの溶液を調製する工程と、溶解温度より高い温度で溶液をフィラメントへ紡糸する工程と、ゲル化が起こるようにフィラメントをゲル化温度未満に冷却する工程と、溶剤の除去前、除去中および/または除去後にフィラメントを延伸する工程とから本質的になる。
【0021】
繊維のネットワークを含有する層は、繊維だけから、好適なポリマーコーティング付きの繊維から、または繊維とマトリックス材料として好適なポリマーなどのバインダーとから形成されてもよい。繊維は様々な構造のネットワークに配置することができる。例えば、繊維は、撚糸束または不撚糸束から様々な異なる配置にすることができる。好適な例には、編まれたまたは織られた(平織、綾織、バスケット織、繻子織もしくは他の織り方の)布、またはフェルトもしくは安定化された一方向に配向した繊維の層のような不織構造体が挙げられる。防弾性能の観点から、高強度繊維が主として一方向に配向しているネットワーク構造が好ましい。その例には、バインダーで安定化された一方向に配向した繊維の層だけでなく、EP 1144740 B1号明細書に記載される構造体または単一織り布と呼ばれる他の織布のように、高強度繊維が例えばたて繊維として織布の主要部を形成し、かつ、よこ繊維が少量部分を形成し、そして高強度繊維である必要がない、織り構造体もまた挙げられる。
【0022】
かかる一方向に配向した高強度繊維の層のケースでは、エレメントは好ましくは、隣接層での繊維方向が好ましくは45°〜90°の角度で互いに回転している一方向に配向した繊維の少なくとも2つの層を含有し、より好ましくは該角度は約80〜90°である。
【0023】
バインダーで安定化された一方向に配向した繊維の層とは、その配向がバインダーで安定化されている、フィラメントが平面で実質的に平行に配向している層を意味する。かかる層はまた当該技術分野では単一層とも呼ばれる。バインダーという用語は、単一層の構造が取り扱い中におよびエレメントの製造中に保持されるように、繊維を一緒に結び付けるまたは保持する、そして繊維を全体的にまたはある程度包んでもよい材料を意味する。バインダー材料は様々な形および方法で、例えば、フィルムとして、横接合ストリップもしくは横繊維(一方向繊維に関して横の)として、または繊維にマトリックス材料を、例えばポリマー溶融物もしくは液体中のポリマー材料の溶液もしくは分散系を含浸させるおよび/または組み込ませることによって付けることができる。好ましくは、マトリックス材料は単一層の全表面にわたって均一に分配されるが、接合ストリップまたは接合繊維は局所的に付けることができる。好適なバインダーは、EP 0191306 B1号明細書、EP 1170925 A1号明細書、EP 0683374 B1号明細書およびEP 1144740 B1号明細書に記載されている。
【0024】
好ましい実施形態では、バインダーはポリマーマトリックス材料であり、熱硬化性材料もしくは熱可塑性材料、または該2つの混合物であってもよい。マトリックス材料の破断点伸びは好ましくは繊維の伸び率より大きい。バインダーは好ましくは3〜500%の伸び率を有する。好適な熱硬化性および熱可塑性ポリマーマトリックス材料は、例えば、国際公開第91/12136 A1号パンフレット(15〜21ページ)に列挙されている。熱硬化性ポリマーの群からは、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、エポキシドまたはフェノール樹脂が好ましくはマトリックス材料として選択される。熱可塑性ポリマーの群からは、ポリウレタン、ポリビニル、ポリアクリル、ポリオレフィンまたはポリイソプレン−ポリエチレン−ブチレン−ポリスチレンもしくはポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーなどの熱可塑性エラストマー・ブロックコポリマーをマトリックス材料として選択することができる。好ましくは、バインダーは熱可塑性エラストマーから本質的になり、それは単一層中の前記繊維の個々のフィラメントを好ましくは実質的にコートし、そして約40MPa未満の引張弾性率(ASTM D638に従って25℃で測定された)を有する。かかるバインダーは単一層の、ならびにエレメントおよびそれらのアセンブリの高い可撓性をもたらす。単一層でのバインダーがスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーである場合、非常に良好な結果が得られることが分かった。
【0025】
本発明の特別な実施形態では、本発明によるアセンブリ中のエレメントでのバインダーはまた、ポリマーマトリックス材料に加えて、バインダーの総容量に基づいて計算されて、5〜80容量%の量で充填材を含有する。より好ましくは、充填材の量は10〜80容量%、最も好ましくは20〜80容量%である。結果として、耐弾性物品の可撓性は耐弾道特性への有意な悪影響なしに上がることを分かった。
【0026】
充填材は繊維間接合に寄与しないが、むしろ繊維間でのマトリックスの容量希釈に役立ち、その結果として耐弾性物品はより可撓性であり、より高いエネルギー吸収を有する。充填材は好ましくは低い重量または密度を有する微細分散された物質を含む。充填材としてのガスの使用はマトリックス材料の加工において現実的問題を提示するが、充填材はガスであってもよい。充填材はまた、とりわけ、乳化剤、安定剤、バインダーなどまたは微細分散された粉末などの、分散系を調製するために慣例の物質を含んでもよい。
【0027】
好ましくは、単一層でのバインダーの量は、繊維が防弾性能に最も寄与するので、30質量%以下、より好ましくは25、20質量%、またはさらに15質量%以下である。
【0028】
好ましくは、エレメントが繊維の2つもしくはそれ以上の層を含有する場合、層または単一層は、本質的にそれらの全表面にわたって互いに連結されるまたは貼り付けられる。かかる連結または貼り付けは、例えば、ある温度および圧力で層を積層するまたはカレンダー加工する間に、層中に存在するバインダーから生じることができるが、接着剤として働く層間の熱可塑性フィルムのような追加の結合剤の層間追加から生じてもよい。
【0029】
エレメント中の層の実際の数は層の厚さに応じて大幅に変わってもよいが、エレメントが可撓性を示すように選択されるべきである。一般に、層が薄ければ薄いほど、より多くの層が所望のレベルの可撓性を保持するためにエレメント中に存在してもよい。好ましい実施形態では、層の数は2〜8、好ましくは2または4である。
【0030】
エレメントは、繊維層に加えて、フィルム層を1つもしくは両方の外面上にさらに含んでもよい。好適なフィルムには、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレンもしくはそれらのコポリマー;ポリテトラフルオロエチレン;ポリエステル、ポリアミド、またはポリウレタンの熱可塑性エラストマー・バージョンをはじめとする、前記ポリマーのような熱可塑性ポリマーから製造された、例えば20、15ミクロン未満またはさらに10ミクロン未満の厚さの薄いフィルムが含まれる。かかるフィルムの利点は、繊維層のさらなる安定化、およびエレメントの相対運動を容易にすることによるアセンブリの可撓性の増加である。フィルムは無孔性であってもよいが、(微小)孔性であることもできる。
【0031】
本発明によるアセンブリでは、エレメントの5〜50質量%がそれらの表面にわたって分布した多数のスポットで隣接エレメントを相互連結する連結手段を含有し、それによって相互連結されたエレメントがアセンブリの後側部分、すなわち脅威または衝撃ミサイルに直面する面の反対側に置かれる。後側部分は後面からのアセンブリの約75質量%で形成されると理解される。アセンブリの後側部分でのこれらのエレメントは、後面を形成する最後のエレメントを含むことができるが、1つもしくはそれ以上の(相互連結されていない)エレメントによって、またはアセンブリの後面を形成する他の可撓性層によって裏打ちされている、ある数の相互連結エレメントであることもできる。好ましくは、かかる他の裏打ちエレメントまたは層は、アセンブリの25質量%以下、より好ましくは20、15、10質量%以下またはさらに5質量%以下を形成する。
【0032】
好適な連結手段は、それらの接触面の少なくとも一部にわたってエレメントの相対運動が依然として可能であるように、2つの隣接エレメント間に局所連結を作ることができるものである。例には、エレメント間のすべての相対運動を緩めることなく連結を行うことができる限り、様々な縫合方法、ホッチキス留め、リベット留め、異なるパターンでの熱溶接、接着剤のドットの付着、両面の接着剤ストリップの付着、または当該技術分野で公知の他の手段のような手段が挙げられる。この理由のために、連結手段は表面にわたって分配される。全表面にわたって広がった連結手段の多数の小さなスポットが、高密度の連結手段を有する数個の局部よりも好ましい。
【0033】
好ましくは、連結手段はエレメントの表面積の20%以下、より好ましくは15、10、5、2%以下、またはさらに1%以下をカバーする。本発明者らは、連結手段でカバーされる表面積の増加と共に、外傷だけでなく可撓性も低下する傾向があり、それ故相互連結されるべきシートの相対数をそれに応じて減らすことができることを観察した。
【0034】
連結手段は表面にわたってランダムに広げられてよいが、規則的なパターンまたはパスに従ってもよい。連結手段は例えば実質的に直線だけでなく、曲線、または円形もしくは螺旋状パスに従うこともできる。
【0035】
連結手段、特に縫い目のパスはすべて本質的に平行に走ってもよいが、ある角度にあってもよく、そしてこのように、例えば互いに交差する平行パスの2つもしくはそれ以上のグループのように、互いに交差してもよい。好適な角度は10〜90°、好ましくは約45〜90°である。連結手段のパスはこのように、三角形、正方形、星形、またはそれらの組み合わせのような典型的な構造を形成してもよい。
【0036】
ロック縫合、通常の鎖またはジグザグ縫合のような、縫合または裁縫は連結手段を適用する最も好ましいやり方である。縫い目は、一度により多数のエレメントによってもまた、比較的容易に適用することができ、表面積当たりの縫い目の数は容易に変えられてもよい。縫い目はまた比較的少ない表面積をカバーし、従ってエレメントの相対運動を可能にする。
【0037】
縫い目長さ、すなわち縫糸が縫い目パスでエレメントに入る2つの連続点間の距離は広く変わってもよい。好適な縫い目長さは約1〜15mm、好ましくは約2〜10または3〜8mmである。
【0038】
縫い目、または他の連結手段の隣接パス間の距離は、幅広く、例えば約0.5〜15cmで変わってもよい。より短い距離は外傷を減少させるのにより有効であるが、短すぎる距離は可撓性を低下させるのに対して、長すぎる距離はほとんど有効ではない。好ましくは、縫い目パス間の距離は少なくとも約1、2または3cmであり、12、10、8または6cm未満である。カバーされる表面積について上に示されたように、パスの距離が短ければ短いほど、アセンブリのタイプに応じて、所望の効果を得るために相互連結されるべきであるシートの数(または質量%)は小さくなる。当業者は、表示限度内のある慣例の実験によって所与のアセンブリについて最適条件を見いだすことができる。
【0039】
縫い目は、標準ミシン、特に工業ミシンを用いることによって付けることができ、標準縫糸またはスレッドを使用することができる。好ましい実施形態では、縫糸は、例えばエレメントの層中の高強度糸に似た高強度糸である。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、アセンブリ中のエレメントの約10〜40質量%は連結手段を含有し、そのエレメントはアセンブリの後側部分、すなわち脅威または衝撃ミサイルに直面する面の反対側に置かれ、より好ましくはエレメントの約15〜35、17〜30質量%、またはさらに18〜25質量%が連結手段を含有する。これはアセンブリの鈍的外傷の減少と可撓性の低下との釣合いを提供し、それは、防弾チョッキのような、かかるアセンブリを含む物品の保護レベルおよび着用者の着心地の良さを向上させる。例えば、40−エレメント・アセンブリで最後の10エレメント、すなわち約25質量%が5×5cmの正方形を画定する縫い目の横方向パスの形で連結手段を含有する。
【0041】
本発明の一実施形態では、後側部分のエレメントのうち選択された数のエレメントが、それらをワンパックとして一緒に連結する連結手段を含有してもよい。
【0042】
別の実施形態では、後側部分中の選択されたエレメントは、少なくとも2つのエレメントの少なくとも2つのグループへグループ分けされ、そのグループは、グループ内のエレメントを相互連結する連結手段を含有する。例えば、40−エレメント・アセンブリで最後の10エレメントが連結手段を含有する2エレメントの5ペアにグループ分けされる。特にかかる実施形態では、連結手段、例えば縫い目のパスは、例えば縫い目パスがエレメントと作る角度の点で異なって、別個のグループのエレメントについて異なってもよく、それによって隣接グループの異なる縫い目パスは例えばある角度で回転することができ、パスは実質的に互いに交差する(例えばあたかも積み重ねによって見られるように)。このようにして、表面積当たりの連結手段(縫い目)の数を減らすことができる。かかる実施形態の利点は、アセンブリの可撓性対外傷減少のさらなる最適化である。異なるグループのエレメントはまた、縫い目および接着剤のような、異なる連結手段の組み合わせを含有する。
【0043】
米国特許第5,185,195号明細書はまた、複数の可撓性繊維エレメントの積み重ねを含む耐弾性アセンブリであって、少なくとも2つのエレメントが連結手段によって一緒に固定されているが、連結手段(縫い目)が該明細書では3.2mm未満の距離を有する隣接パスに沿って伸び、こうして表面の大きな部分をカバーし、後部エレメントに限定されないアセンブリを開示している。実施例では、織布の積み重ねのすべての層が縫い合わされた。特に縫い目である連結手段の非常に高い面密度は、縫い合わせられたスポットの向上した貫入抵抗をもたらすことが示されており、外傷には言及していない。
【0044】
本出願はさらに、高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントの積み重ねを含む耐弾性アセンブリであって、エレメントの少なくとも50質量%が、少なくとも約1cmの隣接縫い目パス間の距離で少なくとも2つのエレメントの少なくとも2つのグループで縫い合わせられているアセンブリに関する。好ましくは、少なくとも75、85、90、95質量%またはさらにはすべてのエレメントがグループで縫い合わせられる。エレメント、単一層、繊維、バインダー、フィルム層、縫い目面密度、縫い目長さ、縫い目パスおよびそれらの配向についてさらに好ましい実施形態は、後側部分のエレメントだけが相互連結されるアセンブリについての上記の実施形態にすべて似ている。かかるアセンブリの利点は低い外傷影響と良好な可撓性との組み合わせであり、そして一方弾丸阻止能は低下しない。本発明者らは前の実験でアセンブリの前方層での縫合がアセンブリを貫通する弾丸の確率を上げることを観察したので、すべてのエレメントが縫われている場合でさえ阻止能が低下しないことは驚くべきである。いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明者らは、この効果が本発明ケースでは比較的低い、従って弾丸が縫い目に命中する可能性を減らす前面エレメント上の縫い目の数に関係しているかもしれないと推測する。
【0045】
好ましい実施形態では、アセンブリは、縫い目で相互連結されている2〜4グループのエレメントで構成されており、ここで、グループ中の縫い目パスは、約1〜10cmのパス間の距離でおよび約1〜15mmの縫い目長さで実質的に平行に走っており、かつ、隣接グループの縫い目パスは約10〜90°、好ましくは約45〜90°の角度で回転している。かかるアセンブリの利点は、高い弾丸阻止能、低い外傷、および良好な可撓性のさらなる釣合いである。
【0046】
本発明はさらに、本発明によるアセンブリを含む耐弾性物品に関する。耐弾性物品には、防護具、特に防弾チョッキのようなソフト防護具が含まれるが、それに限定されない。本発明は具体的には、高レベルの保護、特に低い外傷と組み合わせて可撓性が必要とされるそれらの物品に関する。本発明によるアセンブリを有利に使用する他の典型的な物品には、肘、肩、手首、膝、脚など用の様々な保護パーツが含まれ、それらの物品は、弾丸以外の脅威からの保護を提供し、作業またはスポーツ中に使用されてもよい。
【0047】
本発明はさらに、高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントを積み重ねる工程と、エレメントの表面にわたって分布した多数のスポットで連結手段を適用することによってアセンブリの後側に置かれたエレメントの5〜50質量%を相互連結する工程とによる、低下した背面変形の可撓性耐弾性アセンブリの製造方法に関する。これらの工程の順序は決定的に重要ではないが、先ず、選択されたエレメントに連結手段を適用し、次に積み重ねられたアセンブリを製造することが実際的な面から好ましい。
【0048】
本発明の方法を行う好ましいやり方は、エレメントのアセンブリについて上述した様々な実施形態と同様である。
【0049】
本発明は次の実験に関連してさらに説明されるであろう。
【0050】
方法
IV:固有粘度は、溶解時間が16時間であり、2g/l溶液の量で酸化防止剤としてのDBPC入りで、異なる濃度で測定されるような粘度をゼロ濃度に外挿することによって、デカリン中135℃で方法PTC−179(ハーキュレス社(Hercules Inc.)1982年4月29日改訂)に従って求める。
【0051】
引張特性:引張強度(または強度)、引張弾性率(または弾性率)および破断点伸びは、500mmの繊維の公称ゲージ長、50%/分のクロスヘッド速度およびタイプ繊維グリップ(Fibre Grip)D5618Cのインストロン(Instron)2714クランプを用いて、ASTM D885Mに明記されるようにマルチフィラメント糸に関して定義し、測定する。測定された応力−歪み曲線に基づいて、弾性率は0.3〜1%歪み間の勾配として求める。弾性率および強度の計算のために、測定された引張力を、10メートルの繊維を秤量することによって求められるような力価で割り、GPa単位の値を、HPPE繊維について0.97g/cmの密度を仮定して計算する。
【0052】
アセンブリの防弾性能は、0.44マグナムSJHP弾丸(レミントン(Remington)製)を用いてスタナグ(Stanag)2920に従った試験手順で40×40cmサンプルに関して測定する。層のアセンブリを、約35℃であらかじめ調整させたローマ・プラスチリン(Roma plastilin)裏打ち材で充填された支持体上に可撓性ストラップを用いて固定する。外傷影響は、試験サンプルの縁から7.5〜8.0cmに436±10m/秒で衝突する4弾丸の背面変形から生じた裏打ち材中のギザギザ深さを測定することによって定量化する。この手順は、レベルIIIA保護についてのNIJ標準0101.04に準拠するが、より厳しく(弾丸がサンプルの中心での代わりにより危ない周囲スポットで衝突する)、サンプルは44mmもしくはそれ以下の平均外傷を示し、この試験での非完全貫通はNIJ IIIAに合格であると見なす。
【0053】
別の一連の実験で、V50値は、カラン・デアッセ・プラスチン(Caran d’Ache plastine)を裏打ちとして用いて、スタナグ2920手順に類似の9mmパラベラム(Parabellum)フルメタルジャケット弾丸(ダイナミット・ノーベル(Dynamit Nobel)製)について測定した。
【0054】
比較実験A
アセンブリを、ダイニーマ(登録商標)UD−SB21積層布(DSMダイニーマ、オランダ国(DSM Dyneema,The Netherlands)から入手可能な)からカットした40×40cmエレメントの36層を積み重ねることによって製造した。UD製品は約145g/mの面密度を有し、ダイニーマ(登録商標)SK76高性能ポリエチレン・マルチフィラメント糸(引張強度3.5GPa、弾性率115GPaの;超高モル質量ポリエチレンをベースとする)から製造した4つのクロスプライ層および約18質量%のエラストマー・マトリックス材料、ならびに両面上にポリエチレン分離フィルムを含有する。
【0055】
アセンブリを、4コーナーにおいて約4cm長さの単一縫い目パスによって安定化させ、次に上に示したように防弾性能に関して試験した。表1に報告する結果は、少なくとも2つの独立したアセンブリ、およびあらゆるアセンブリについて少なくとも4発についての平均データである。製品は典型的にはNIJ脅威レベルIIIA要件を満たす。
【0056】
比較実験B
実験Aと同じようにアセンブリを製造したが、36エレメントを、約5mmの縫い目長さおよび約10cmの平行縫い目パス間の距離で、横方向にさらに縫い付けた。縫合は、縫糸としてセラフィル(Serafill)(登録商標)10ポリエステル糸を用いて、アドラー(Adler)(登録商標)工業ミシンで行った(4コーナー縫い目に関して)。このアセンブリの可撓性は、様々な方向にアセンブリを手動で曲げることによって判断されるように、比較実験Aのものより著しく低かった。防弾試験は、外傷影響でより多くの変動を示し、8発のうち1発はアセンブリを完全に貫通した;表1を参照されたい。
【0057】
比較実験CおよびD
実験Bを繰り返したが、縫い目パス間の距離を減らした。表1の結果は、外傷影響が増大する傾向があることを示す。さらに、Cについては8発のうち1発は阻止されず、Dのケースでは8発のうち2発は完全に貫通した。可撓性は、前の実験と比べてさらに低下すると判断された。
【0058】
実施例1
実験Aと同じようにアセンブリを製造したが、アセンブリの後側で最後の12エレメントを、約5cmの平行縫い目パス間の距離で(5×5cmの正方形を画定して)、横方向にさらに縫い付けた。縫合のこのやり方は、手動判断によって、ならびにその上に残りの部分が保持された支持体から突き出た20cmアセンブリの自重下で下への曲がりを測定することによっての両方で、縫われていない対照に対して僅かにより低い可撓性をもたらすにすぎないことが分かった。しかしながら、防弾性能は著しく改善され、外傷影響は著しくより低く、すべての弾丸が阻止された(表1)。
【0059】
実施例2
実施例1を繰り返したが、今度は最後の12エレメントを6エレメントの2グループで縫い合わせ、それによって各グループを5cmの平行パス間の距離で一方向に縫い合わせ、それによって縫い目方向は第2グループに対して約90°回転した。縫合はアセンブリの感知される可撓性を低下させるようには見えなかった。
【0060】
実施例3および4
実施例1および2を繰り返したが、今度は最後の8エレメントを縫い合わせ、さらにより良好な外傷性能をもたらした(すべての弾丸を阻止)。可撓性は、縫合前のアセンブリに類似のレベルにあると判断された。
【0061】
実施例5〜10
実施例1および2を繰り返したが、今度は縫い目パス間の距離は4.3、2.5または1cmであった。縫合はアセンブリの感知される可撓性を有意に低下させるようには見えず、縫い目パス距離と可撓性との間の明白な関係を手動評価および曲げ試験から少なくとも全く導き出すことができなかった。表1のデータは、この部分連結法の結果としての外傷性能の向上を裏付ける。
【0062】
比較実験E
この一連の実験で、アセンブリの前面への縫い目の適用の影響を、40×40cmダイニーマ(登録商標)UD−SB21の24層を含有するアセンブリのすべてのエレメントを(約5cmの縫い目パス間の距離で)横方向に縫い合わせることによって評価した。パラベラム9mm弾丸を、縫い目パスの間または縫い目上のどちらかで発射した。実験は少なくとも3回行った。縫い目間発射の場合508m/秒の平均V50が見いだされたが、縫い目真上でアセンブリを撃つと425m/秒の平均V50をもたらした。
【0063】
これらの実験は、前側エレメント中の縫い目の存在が弾丸阻止能を低下させることを示し、後側部分でアセンブリのエレメントの一部のみを相互連結することの利点を実証する。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントの積み重ねを含む耐弾性アセンブリであって、
前記エレメントの5〜50質量%が隣接エレメントをそれらの表面にわたって分布した多数のスポットで相互連結する連結手段を含有し、それによって前記相互連結されたエレメントが前記アセンブリの後側部分、すなわち脅威または衝撃ミサイルに直面する面の反対側に置かれることを特徴とするアセンブリ。
【請求項2】
前記繊維が少なくとも約2GPaの引張強度を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記繊維のネットワークが織布である、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
隣接層での繊維方向が互いに回転している状態で前記エレメントが一方向に配向した繊維の少なくとも2つの層を含有する、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記一方向に配向した繊維の層がバインダーで安定化されている、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記エレメントが1つまたは両方の外面上にフィルム層をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記連結手段がエレメントの表面積の10%以下をカバーする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記連結手段が縫い目である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記連結手段が0.5〜15cmの距離を有する隣接パスに置かれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記エレメントの約10〜40質量%が隣接エレメントをそれらの表面にわたって分布した多数のスポットで相互連結する連結手段を含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記相互連結したエレメントが少なくとも2つのエレメントの少なくとも2つのグループにグループ分けされる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のアセンブリを含む耐弾性物品。
【請求項13】
高強度繊維のネットワークを含有する少なくとも1つの層を含む複数の可撓性エレメントを積み重ねる工程と、前記エレメントの表面にわたって分布した多数のスポットで連結手段を適用することによって、前記アセンブリの後側部分に置かれた前記エレメントの5〜50質量%を相互連結する工程とを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項14】
前記連結手段が縫合によって適用される、請求項13に記載の方法。


【公表番号】特表2008−505302(P2008−505302A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519699(P2007−519699)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007225
【国際公開番号】WO2006/002977
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】