説明

可撓止水継手およびその施工方法

【課題】コンクリートを打ち継いで構造体を構築する場合のコンクリート打設前の準備作業を簡単かつ短時間に行うことができる可撓止水継手及びその施工方法の提供。
【解決手段】先行および後行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部21および後行打設固定部22と、これらの間に設けられ止水および相対変位を可能とする伸縮部23と、可撓止水継手20と一体もしくは別体に設けられ先行して打設されるコンクリート打設用の妻型枠に取り付けられ打設されるコンクリートに埋設されコンクリート打設前の可撓止水継手20を支持可能な支持部材24とを備える。これにより、妻型枠に取り付けた支持部材24を介して先行打設固定部21を支持して先行コンクリートを打設すれば良く、妻型枠の設置前に支持部材24および可撓止水継手20を取り付けることができ、特殊な妻型枠を必要とせず、通常の妻型枠を使用して施工できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓止水継手およびその施工方法に関し、コンクリートを打ち継いで構築される、水路、水処理施設、海洋護岸、トンネル、共同溝などのコンクリート構造体の継手部の止水および相対変位を可能とする可撓止水継手の施工における準備作業を簡素化できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体である水路や水槽あるいは共同溝等の地中に構築される暗渠などの壁部分の継手部には、内外を止水するとともにその両側のコンクリート構造体の地震時変位ならびに温度変化等に起因する壁部分の伸縮等を許容する必要があり、止水板などの可撓止水継手が介設されている。
【0003】
このようなコンクリート構造体の継手部に介設する可撓止水継手としては、例えば特許文献1に開示された止水板1があり、図12(a)に示すように、中空部2の両端に複数本の係止凸条部3を備えて構成され、それぞれの端部の係止凸条部3を打設されるコンクリート内に埋設して固定するようにしている。
【0004】
また、共同溝などのコンクリート構造体用の可撓止水継手として、例えば特許文献2に開示された可撓ゴム継手6があり、図13(a)に示すように、略逆U字状の湾曲部7と、湾曲部7の両開口端間を一体的に接続して、湾曲部7を挟んで断面略V字状に固定される一対のフランジ部8とを備えて構成され、同図(b)に示すように、フランジ部8に取り付けたアンカーボルト9を打設するコンクリート内に埋設して固定するようにしている。
【特許文献1】特開平9−105166号公報
【特許文献2】特開2002−167789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような特許文献1や特許文献2の可撓止水部材1,6では、コンクリートの打設前に、可撓止水部材1,6を所定の位置に保持する必要があり、特許文献1の止水板1の場合には、図12(b)に示すように、先行のコンクリート側の係止凸条部3を補強用の鉄筋4に吊り下げるようにするとともに、後でコンクリートに埋設される係止凸条部3を板材などの保持材5で保持する必要があり、コンクリート打設前の準備作業が大変であり、手間と時間がかかるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の可撓ゴム継手6では、図13(b)に示すように、フランジ部8にアンカーボルト9を取り付けた状態でアンカーボルト9と鉄筋4とを継手10を介して溶接するとともに、一対のフランジ部8の外側に間隔保持材11を取り付けて角度を保持できるようにしており、この場合もコンクリート打設前の準備作業が大変であり、手間と時間がかかるという問題がある。
【0007】
この発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、コンクリートを打ち継いで構造体を構築する場合のコンクリート打設前の準備作業を簡単かつ短時間に行うことができる可撓止水継手およびその施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の可撓止水継手は、先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手であって、前記先行および後行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部および後行打設固定部と、これら先行打設固定部および後行打設固定部の間に設けられ止水および相対変位を可能とする伸縮部と、前記可撓止水継手と一体もしくは別体に設けられ先行して打設されるコンクリート打設用の妻型枠に取り付けられコンクリート打設前の当該可撓止水継手を支持可能な支持部材と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
この可撓止水継手によれば、先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手であって、前記先行および後行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部および後行打設固定部と、これら先行打設固定部および後行打設固定部の間に設けられ止水および相対変位を可能とする伸縮部と、前記可撓止水継手と一体もしくは別体に設けられ先行して打設されるコンクリート打設用の妻型枠に取り付けられコンクリート打設前の当該可撓止水継手を支持可能な支持部材と、を備えており、妻型枠に取り付けた支持部材を介して先行打設固定部を支持して先行コンクリートを打設すれば良く、支持部材を取り付けるボルト孔を妻型枠に加工しておき、妻型枠の設置前に支持部材および可撓止水継手を取り付けることができ、可撓止水継手の取り付けが施工位置でなくても可能となる。そして、特殊な妻型枠を必要とせず、通常の妻型枠を使用して施工することができるようになる。
【0010】
さらに、この発明の請求項2記載の可撓止水継手は、請求項1記載の構成に加え、 前記支持部材を、前記コンクリート構造体に埋設される構成としてなることを特徴とするものである。
【0011】
この可撓止水継手によれば、前記支持部材を、前記コンクリート構造体に埋設される構成としてあり、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて支持部材をそのまま残して後行コンクリートの施工ができ、一層施工が容易にできるようになる。
【0012】
また、この発明の請求項3記載の可撓止水継手は、請求項1または2記載の構成に加え、前記妻型枠に代えて配置される目地材を備えてなることを特徴とするものである。
【0013】
この可撓止水継手によれば、前記妻型枠に代えて配置される目地材を備えており、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて目地材を設けることで、速やかに後行コンクリートを打設することができるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項4記載の可撓止水継手は、請求項1または2記載の構成に加え、前記支持部材が、前記継手部の形状に対応して連続して構成されてなることを特徴とするものである。
【0015】
この可撓止水継手によれば、前記支持部材が、前記継手部の形状に対応して連続して構成してあり、コンクリート打設前の可撓止水継手の支持だけでなく、使用状態で加わる外力に対しても補強材として機能し、外力が不均一にならないように分散させることができるようになる。
【0016】
また、この発明の請求項5記載の可撓止水継手は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記支持部材が、前記継手部に沿って間隔をあけて配置されてなることを特徴とするものである。
【0017】
この可撓止水継手によれば、前記支持部材が、前記継手部に沿って間隔をあけて配置してあり、支持部材を、例えば可撓止水継手に一体に設けた雌ねじが形成された部材とすれば、ボルト等で簡単に固定して施工できるようになる。
【0018】
さらに、この発明の請求項6記載の可撓止水継手は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記伸縮部が、断面U字状あるいはL字状に構成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
この可撓止水継手によれば、前記伸縮部が、断面U字状あるいはL字状に構成してあり、十分な伸縮代を確保して変位を吸収できるようにしている。
【0020】
また、この発明の請求項7記載の可撓止水継手は、請求項6記載の構成に加え、前記断面U字状の伸縮部は、開口部を切断可能な蓋部材で閉じて構成されてなることを特徴とするものである。
【0021】
この可撓止水継手によれば、前記断面U字状の伸縮部は、開口部を切断可能な蓋部材で閉じて構成してあり、閉じた中空状とすることで施工時に水やコンクリートの浸入を防止しながら、大きな変位に対して切断することで、対応できるようにしている。
【0022】
さらに、この発明の請求項8記載の可撓止水継手の施工方法は、先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手を施工するに際し、先行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部を有する前記可撓止水継手を、妻型枠に取り付けた支持部材を介して支持した後、先行のコンクリートを打設し、次いで、前記妻型枠を取り除いて前記先行打設固定部に伸縮部を介して連結された後行打設固定部を、後行のコンクリートを打設して埋設固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0023】
この可撓止水継手の施工方法によれば、先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手を施工するに際し、先行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部を有する前記可撓止水継手を、妻型枠に取り付けた支持部材を介して支持した後、先行のコンクリートを打設し、次いで、前記妻型枠を取り除いて前記先行打設固定部に伸縮部を介して連結された後行打設固定部を、後行のコンクリートを打設して埋設固定するようにしており、妻型枠に取り付けた支持部材を介して先行打設固定部を支持して先行コンクリートを打設すれば良く、支持部材を取り付けるボルト孔を妻型枠に加工しておき、妻型枠の設置前に支持部材および可撓止水継手を取り付けることができ、可撓止水継手の取り付けが施工位置でなくても可能となる。そして、特殊な妻型枠を必要とせず、通常の妻型枠を使用して施工することができ、しかも支持部材を先行コンクリートに埋設したままとすることで、一層施工が容易にできるようになる。
【0024】
また、この発明の請求項9記載の可撓止水継手の施工方法は、請求項8記載の構成に加え、前記妻型枠に取り付けられた支持部材をコンクリート構造体に埋設するようにしたことを特徴とするものである。
【0025】
この可撓止水継手の施工方法よれば、前記妻型枠に取り付けられた支持部材をコンクリート構造体に埋設するようにしており、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて支持部材をそのまま残して後行コンクリートの施工ができ、一層施工が容易にできるようになる。
【0026】
さらに、この発明の請求項10記載の可撓止水継手の施工方法は、請求項8または9記載の構成に加え、前記妻型枠を取り除いた後、目地材を接着して後行のコンクリートを打設するようにしたことを特徴とするものである。
【0027】
この可撓止水継手の施工方法よれば、前記妻型枠を取り除いた後、目地材を接着して後行のコンクリートを打設するようにしており、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて目地材を接着することで、速やかに後行コンクリートを打設することができるようになる。
【0028】
また、この発明の請求項11記載の可撓止水継手の施工方法は、請求項8〜10のいずれかに記載の構成に加え、前記支持部材を前記継手部に沿って連続して配置して前記可撓止水継手を支持するようにしたことを特徴とするものである。
【0029】
この可撓止水継手の施工方法によれば、前記支持部材を前記継手部に沿って連続して配置して前記可撓止水継手を支持するようにしており、コンクリート打設前の可撓止水継手の支持だけでなく、使用状態で加わる外力に対しても補強材として機能し、外力が不均一にならないように分散させることができるようになる。
【発明の効果】
【0030】
この発明の請求項1記載の可撓止水継手によれば、先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手で、前記先行および後行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部および後行打設固定部と、これら先行打設固定部および後行打設固定部の間に設けられ止水および相対変位を可能とする伸縮部と、前記可撓止水継手と一体もしくは別体に設けられ先行して打設されるコンクリート打設用の妻型枠に取り付けられコンクリート打設前の当該可撓止水継手を支持可能な支持部材と、を備えて構成したので、妻型枠に取り付けた支持部材を介して先行打設固定部を支持して先行コンクリートを打設すれば良く、支持部材を取り付けるボルト孔を妻型枠に加工しておき、妻型枠の設置前に支持部材および可撓止水継手を取り付けることができ、可撓止水継手の取り付けが施工位置でなくても可能となる。そして、特殊な妻型枠を必要とせず、通常の妻型枠を使用して施工することができる。
【0031】
さらに、この発明の請求項2記載の可撓止水継手によれば、前記支持部材を、前記コンクリート構造体に埋設される構成としたので、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて支持部材をそのまま残して後行コンクリートを施工することができ、一層施工が容易となる。
【0032】
また、この発明の請求項3記載の可撓止水継手によれば、前記妻型枠に代えて配置される目地材を備えているので、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて目地材を設けることで、速やかに後行コンクリートを打設することができる。
【0033】
さらに、この発明の請求項4記載の可撓止水継手によれば、前記支持部材が、前記継手部の形状に対応して連続して構成してあるので、コンクリート打設前の可撓止水継手の支持だけでなく、使用状態で加わる外力に対しても補強材として機能させることができ、外力が不均一にならないように分散させることができる。
【0034】
また、この発明の請求項5記載の可撓止水継手によれば、前記支持部材が、前記継手部に沿って間隔をあけて配置してあるので、支持部材を、例えば可撓止水継手に一体に設けた雌ねじが形成された部材とすれば、ボルト等で簡単に固定して施工することができる。
【0035】
さらに、この発明の請求項6記載の可撓止水継手によれば、前記伸縮部が、断面U字状あるいはL字状に構成してあるので、十分な伸縮代を確保して変位を吸収させることができる。
【0036】
また、この発明の請求項7記載の可撓止水継手によれば、前記断面U字状の伸縮部は、開口部を切断可能な蓋部材で閉じて構成してあるので、閉じた中空状とすることで施工時に水やコンクリートの浸入を防止することができ、大きな変位に対しては切断することで、対応して変位を吸収することができる。
【0037】
さらに、この発明の請求項8記載の可撓止水継手の施工方法によれば、先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手を施工するに際し、先行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部を有する前記可撓止水継手を、妻型枠に取り付けて埋設される支持部材を介して支持した後、先行のコンクリートを打設し、次いで、前記妻型枠を取り除いて前記先行打設固定部に伸縮部を介して連結された後行打設固定部を、後行のコンクリートを打設して埋設固定するようにしたので、妻型枠に取り付けた支持部材を介して先行打設固定部を支持して先行コンクリートを打設すれば良く、支持部材を取り付けるボルト孔を妻型枠に加工しておけば、妻型枠の設置前に支持部材および可撓止水継手を取り付けることができ、可撓止水継手の取り付けが施工位置でなくてもスペースのある場所で行うことができる。これにより、特殊な妻型枠を必要とせず、通常の妻型枠を使用して施工することができ、しかも支持部材を先行コンクリートに埋設したままとすることで、一層施工を容易にすることができる。
【0038】
また、この発明の請求項9記載の可撓止水継手の施工方法によれば、前記妻型枠に取り付けられた支持部材をコンクリート構造体に埋設するようにしたので、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて支持部材をそのまま残して後行コンクリートを施工することができ、一層施工を容易にすることができる。
【0039】
さらに、この発明の請求項10記載の可撓止水継手の施工方法によれば、前記妻型枠を取り除いた後、目地材を接着して後行のコンクリートを打設するようにしたので、先行コンクリートの打設後、妻型枠を取り除いて目地材を接着することで、速やかに後行コンクリートを打設することができる。
【0040】
また、この発明の請求項11記載の可撓止水継手の施工方法によれば、前記支持部材を前記継手部に沿って連続して配置して前記可撓止水継手を支持するようにしたので、コンクリート打設前の可撓止水継手の支持だけでなく、使用状態で加わる外力に対しても補強材として機能させることができ、外力が不均一にならないように分散させることができ、耐久性を向上することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図3はこの発明の可撓止水継手の一実施の形態にかかり、図1はこの発明の可撓止水継手が適用されるコンクリート構造体の概略斜視図、図2は可撓止水継手の施工後の取付状態の横断面図、図3は可撓止水継手の部分横断面図および取り付け状態で変位した場合の部分横断面図であり、図4および図5はこの発明の可撓止水継手の施工方法の一実施の形態にかかり、図4は施工の第1工程の説明図および支持部材の概略斜視図、図5は第2工程以降の説明図である。
【0042】
この可撓止水継手20は、コンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体12,13の継手部14を止水するとともに、継手部14の両側のコンクリート構造体12,13の相対変位を可能とするものである。
【0043】
コンクリート構造体の一例である共同溝では、断面形状が矩形で所定長さの函体12,13が継手部14で連結されて構成されており、開削工法によって均しコンクリート15の上面に現場打ちによって所定長さ毎(函体毎)に継手部14を介設して打ち継がれて構築され、完成後は所定深さの地中に埋め戻されるものである。
【0044】
このようなコンクリート構造体12、13の継手部14に設けられる可撓止水継手20は、先行打設固定部21および後行打設固定部22を備え、これら先行打設固定部21と後行打設固定部22との間に伸縮することで止水と相対変位を許容する伸縮部23とを備えて構成され、ゴムや合成樹脂などの可撓性素材によって横断面方向には一体的に形成され、長手方向には、分割されたものを継手部14の形状に合わせて工場や現場で環状などに成形される。
【0045】
この可撓止水継手20の先行打設固定部21および後行打設固定部22は、それぞれ先に打設される先行コンクリート構造体12および後に打設する後行コンクリート構造体13に、コンクリートの打設によって埋設固定されるようになっており、埋設固定強度を高めることができる形状としてある。
【0046】
この可撓止水継手20の先行打設固定部21は、例えば略くさび状に形成されて継手部14と直交するように配置され、横断面における前方が狭い台形状とされて基端部中央に支持用の溝21aが形成され、溝21aの継手部14の内側が切り落とされた端面21bとされてコンクリートと接することで埋設固定強度を確保し、溝21aの継手部14の外側21cに伸縮部23が連続するようになっている。
【0047】
また、この先行打設固定部21には、台形状の内側側面にブチルシート21dが設けてあり、その粘着力で接着され、コンクリート構造体12と先行打設固定部21との間の止水性を確保するようにしてある。
【0048】
一方、この先行打設固定部21と伸縮部23を介して一体に形成され、後で打設される後行コンクリート構造体13の打設によって埋設固定される可撓止水継手20の後行打設固定部22は、固定強度を高めるとともに、伸び変形時における引き抜き強度を高める突起部22aを有しており、例えばこの可撓止水継手20では、コンクリート構造体13の外周部と継手部14の端面14a(コンクリート構造体13の端面でもある。)に当てられる横断面形状がL字状に形成された側面シール部22bと端面固定部22cを備え、側面シール部22bの先端部内側に突き出して横断面形状が円形の突起部22aが形成してある。
【0049】
この突起部22aには、コンクリート打設時の空気抜きのため、継手部14の軸方向に貫通する空気抜き孔22dが形成され、例えば直径が20mm程度の孔を所定ピッチで形成する。
【0050】
さらに、後行打設固定部22には、側面シ−ル部22bの内側にブチルシート22eが設けてあり、側面シール部22bにその粘着力で接着され、コンクリート構造体13と後行打設固定部22との間の止水性を確保するようにしている。
【0051】
また、この後行打設固定部22の側面シール部22bの外側には、凸条22fが形成してあり、後述する継手部14を覆う防水シート28との密着性を向上し、止水性を向上できるようにしてある。
【0052】
このような先行打設固定部21と後行打設固定部22の間に設けられる可撓性止水継手20の伸縮部23は、先行打設固定部21の溝21aの外側に連続する継手垂直部23aと、後行打設固定部22の端面固定部22cの内側端に連続する継手平行部23bとが横断面形状がL字状に一体に形成してある。
【0053】
このように構成した可撓止水継手20のコンクリート構造体12,13の継手部14への施工方法について、図4および図5により説明する。
【0054】
この可撓止水継手20では、継手部14の端面14aを形成するため組み立てられる妻型枠16を利用して可撓止水継手20を支持するため支持部材24が用いられ、これまでの鉄筋などに支持固定する場合に比べ、短時間にコンクリートの打設の準備ができるようにしてある。
【0055】
この支持部材24は、図4(b)に示すように、先行打設固定部21の溝21aが装着される支持板部24aとこの支持板部24aに垂直に突き出す固定板部24bとが略L字状に配置されてステンレス金属板の溶接構造とされ、継手部14の形状に対応した形状とされる。
【0056】
したがって、ここでは、支持部材24は、図1に示すように、継手部14が矩形の環状とされているのに対応して、例えば分割して作ったものを最終的には、矩形の環状に連続させたものが用いられる。
【0057】
そして、この支持部材24の固定板部24bには、所定のピッチで固定用の取り付け孔24cが形成されるとともに、この固定板部24bの表裏両側にコンクリートが充填できるように切り欠き部24dが取り付け孔24cの間にそれぞれ形成してある。
【0058】
また、支持部材24には、妻型枠16から所定位置に固定板部24bを配置して継手部14の端面14aから所定深さに先行打設固定部21が埋設されるようにするため間隔保持部材24eが用いられる。
【0059】
この間隔保持部材24eは、図4(c)に示すように、円筒部24fの中心部に雌ねじが形成された金属製等のねじパイプ24gが取り付けられて構成され、円筒部24fは、例えばコンクリート製とし、コンクリート構造体12に埋設一体化させるようにする。
【0060】
また、継手部14の端面14aを形成する妻型枠16には、予め支持部材24の取り付け孔24cに対応するボルト孔を形成しておく。
【0061】
このような支持部材24を用いて行う可撓止水継手20の施工は、まず、先にコンクリートを打設する先行コンクリート構造体12を構築するため型枠を均しコンクリート15上に組み立てる。
【0062】
これと並行して、継手部14の端面14aを形成する妻型枠16に間隔保持部材24eを妻型枠16の外側からのボルトで取り付けるとともに、この間隔保持部材24eの外側に支持部材24の固定板部24bを当て、その取り付け孔24cからのボルトで固定板部24bを取り付ける(図4(a)参照)。
【0063】
この後、支持部材24の支持板部24aに可撓止水継手20の先行打設固定部21の溝部21aを刺し込むようにして取り付け、溝部21aの内側の端面21bが固定板部24bに当たるようにする。この可撓止水継手20の取り付けの際、支持板部24aの継手部14側に目地材25を配置し、可撓止水継手20の伸縮部23の継手垂直部23aに接着剤で取り付けるとともに、伸縮部23の継手平行部23bの先行コンクリート打設側にも目地材26を配置して接着剤で取り付ける(図5(a)参照)。
【0064】
これにより、可撓性止水継手20で伸び変形が生じた場合の変位追従性をこれら目地材25、26で向上することができる。
【0065】
このような妻型枠16への支持部材24の取り付けおよび可撓止水継手20の取り付けは、妻型枠16を設置する現場でなくても良く、広いスペースのある場所や妻型枠16を設置現場の作業容易な位置に移動して行うようにし、可撓止水継手20を取り付けた後、妻型枠16ごと所定の位置に設置するようにする。
【0066】
これにより、従来の先行コンクリートの打設前に鉄筋などに埋設される先行打設固定部を吊り下げるようにするなどの準備作業に比べ、支持部材24をボルトで妻型枠16に取り付け、この支持部材24に可撓止水部材20を取り付けるだけで良く、簡単かつ短時間に準備作業を行うことができる。
【0067】
こうして可撓止水継手20を取り付けた先行のコンクリート打設用の型枠を設置したのち、先行コンクリートを打設する(図5(b)参照)。
【0068】
そして、養生後、型枠を脱型し、継手部14の端面14aの妻型枠16に代えてゴムやスポンジなどの目地材27を配置し、可撓止水継手20の伸縮部23の継手平行部23bに接着して取り付ける。
【0069】
この目地材27により可撓止水継手20の圧縮変形時の変形抵抗の減少および損傷防止を図るようにする。
【0070】
こののち、後行のコンクリート構造体13の構築に必要な型枠を組み立てた後、後行のコンクリートを打設する。このコンクリートの打設の際、後行打設固定部22の突起部22aの内側に空気が溜まることがあるので、必要に応じて空気抜き孔22dを設ける。
【0071】
そして、養生後、型枠を脱型することで継手部14への可撓止水継手20の取り付け施工が完了する(図5(c)参照)。
【0072】
なお、継手部14の全周、すなわち底部、側面および天面には、防水シート28を取り付け雨水などの浸入を防止する。この防水シート28は、コンクリート構造体12,13の継手部14の接続が完了した後、地下構造物とする場合には土砂などで埋め戻されるが、このとき、土砂などが継手部14に浸入し、可撓止水継手20に外力が加わるなどの不具合が生じる恐れを防止するために用いるものである。
【0073】
このような可撓止水継手20およびその施工方法によれば、例えばコンクリート構造体12,13の継手部14の間隔が開くように相対変位する場合には、図3(b)に示すように、可撓止水継手20の先行打設固定部21が先行コンクリート構造体12に接着固定されるとともに、後行打設固定部22が後行コンクリート構造体13に打設によって固定された状態とされて伸縮部23の継手垂直部23aが後方から変形し、相対変位を許容した状態で止水性を保持することができる。
【0074】
また、この可撓止水継手20およびその施工方法では、可撓止水継手20が継手部14の形状に対応して連続した環状の埋設固定状態の支持部材24に支持してあるので、可撓止水継手20に外力が加わった場合に、支持部材24によって外力を分散させて支持することができ、局部的に損傷することなどを有効に防止することができる。
【0075】
さらに、このような可撓止水継手20およびその施工方法によれば、先行コンクリート構造体12への可撓止水継手20の取り付けが、妻型枠16に支持部材24をボルトで固定し、支持板部24aに溝部21aを挿入して固定すれば良く、打設前に鉄筋などに吊り下げるように準備する場合に比べ、準備作業を大幅に減少でき、簡単かつ短時間に施工することができるとともに、作業を妻型枠16の設置位置で行うことなく、スペースのある場所や位置を移動して作業しやすい位置で行うことができる。
【0076】
また、後行コンクリートの打設を、妻型枠16を支持部材24の間隔保持部材24eからボルトを緩めて取り外し、目地材27を可撓止水継手20の伸縮部23の継手平行部23bに部分接着するなどで保持するだけで行うことができ、後行のコンクリートの打設前の準備も短時間に行うことができる。
【0077】
さらに、この可撓止水継手20によれば、伸縮部23が継手垂直部23aと継手平行部23bとで略L字状に配置することで大きな変位を吸収することができ、これにより、継手垂直部23aを比較的短くすることができるので、先行打設固定部21から後行打設固定部22までの幅を小さくすることができ、コンクリート構造体12、13の配筋との干渉を防止でき、取り付けの自由度が向上する。
【0078】
次に、この発明の可撓止水継手およびその施工方法の他の一実施の形態について、図6により説明するが、すでに説明した上記実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0079】
この可撓止水継手30は、図6(a),(b)に示すように、先行打設固定部31および後行打設固定部32を備え、その間に伸縮部33を備える構成ですでに説明した可撓止水継手20と同一であるが、大きく異なるのが伸縮部33の形状である。
【0080】
この可撓止水継手30の先行打設固定部31は、その外形が、すでに説明した可撓止水継手20と略同一とされるが、溝部21aを省略して継手部14の内側に端面31bが形成され、外側31cに伸縮部33が連続するようになっている。
【0081】
また、後行打設固定部32は、コンクリートへのアンカー部となる突起部32aが側面シール部32bの端部でなく、中間部に設けてある。
【0082】
この可撓止水継手30の伸縮部33は、先行打設固定部31の外側31cに連続する継手垂直部33aと後行のコンクリート構造体13の端面に沿う継手平行部33bとの間に横断面形状がU字状の湾曲部33cが設けられて構成され、この湾曲部33c内には、補強材が埋設してあり、例えば補強布33dが入れてある。
【0083】
なお、他の構成はすでに説明した可撓止水部材20およびその施工方法と同一である。
【0084】
また、施工方法も、図6(b)に示すように、支持部材24の支持板部24aに溝部が挿入されずに先行打設固定部31の外側31cの内側面を当てるようにして支持する以外、すでに説明した可撓止水継手と同様にして施工することができる。
【0085】
このような可撓止水継手30およびその施工方法によれば、すでに説明した可撓止水継手20と同一の作用効果を奏するほか、伸縮部33に湾曲部33cが設けてあるので、図6(b)に示すように、変形代を大きくすることができ、大きな相対変位の吸収能力を確保することができる。また、伸縮部33が大きく変形しても内部に補強用の補強布33dが入れてあるので、強度を確保することができ、損傷を防止することができる。
【0086】
次に、この発明の可撓止水継手およびその施工方法のさらに他の一実施の形態について、図7により説明するが、すでに説明した上記第1の実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0087】
この可撓止水継手40は、図7に示すように、先行打設固定部41および後行打設固定部42を備え、その間に伸縮部43を備える構成ですでに説明した可撓止水継手20と同一であるが、大きく異なるのが伸縮部43の形状およびこれを支持する支持部材44である。
【0088】
この可撓止水継手40の伸縮部43は、先行打設固定部41の外側41cに連続する継手垂直部を省略して後行のコンクリート構造体13の端面に沿う継手平行部43bが設けられて構成してあり、可撓止水継手40の幅(先行打設固定部41先端から後行打設固定部42後端までの長さ)を一層小さくしてある。
【0089】
これにより、支持部材44の固定板部44bを妻型枠に直接当てて取り付けるようにし、施工完了後は妻型枠に代えて設置する目地材27に当てられる。そして、支持部材44の固定板部44bの先行コンクリート側には、キャップ付きナット44eが配置されて妻型枠の外側からボルトで締め付けることができるとともに、打設したコンクリートがナット内には入らないようにしてある。
【0090】
また、このキャップ付きナット44eと固定板部44bとのいずれか、または両方にL字状の鉄筋で構成したアンカー44fが溶接などで取り付けてあり、コンクリート構造体12への埋設固定強度を高めることができるようにしてある。
【0091】
なお、他の構成はすでに説明した可撓止水部材20およびその施工方法と同一である。
【0092】
また、施工方法も、図7に示すように、支持部材44の固定板部44bの配置が異なる以外、すでに説明した可撓止水継手20の場合と同様にして施工することができる。
【0093】
このような可撓止水継手40およびその施工方法によれば、すでに説明した可撓止水継手20およびその施工方法と同一の作用効果を奏するほか、伸縮部43の継手垂直部が先行打設固定部41と兼用されて省略してあるので、可撓止水継手40の幅を一層小さくすることができ、補強用の鉄筋との干渉を防止して設置することが容易となる。
【0094】
次に、この発明の可撓止水継手およびその施工方法の他の一実施の形態について、図8により説明するが、すでに説明した上記実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0095】
この可撓止水継手50は、図8(a),(b),(c)に示すように、先行打設固定部51および後行打設固定部52を備え、その間に伸縮部53を備える構成ですでに説明した可撓止水継手20と同一であるが、大きく異なる部分が先行打設固定部51の形状と妻型枠への支持のための支持部材54を可撓止水継手50と一体としてある点である。
【0096】
この可撓止水継手50の先行打設固定部51は、その横断面形状が先端部が広い略台形状の台形部51aと、この台形部51aの先端に一体に形成される横断面形状が略T字状の板状部51bとで構成され、打設される先行コンクリートに埋設され、台形部51aおよびT字状の板状部51bの形状効果によって強固に固定できるようにしてある。そして、先行打設固定部51の板状部51bの先端面には、ブチルシート51cが設けてあり、その粘着力で接着され、コンクリート構造体12と先行打設固定部51との間の止水性を確保するようにしている。
【0097】
この先行打設固定部51の台形部51aの基端には、予め支持部材54を構成するナット54aが可撓止水継手50の押出成形などの加工後、所定のピッチで取り付けられて一体としてある。
【0098】
この先行打設固定部51の台形部51aに取り付けたナット54aの外側51dに伸縮部53が連続するようになっている。
【0099】
また、可撓止水継手50の後行打設固定部52は、コンクリートへのアンカー部となる横断面形状が略3角形状の突起部52aが側面シール部52bの端部から端面固定部52cと平行に配置された平行固定部52dの先端に設けてある。そして、この後行打設固定部52の平行固定部52dおよび突起部52aの背面にブチルシート52eがその粘着力で接着され、コンクリート構造体13と後行打設固定部52との間の止水性を確保するようにしている。
【0100】
この可撓止水継手50の伸縮部53は、先行打設固定部51の外側51dに円弧状の撓み部53aを介して後行のコンクリート構造体13の端面に沿う継手平行部53bが設けられて構成してある。
【0101】
なお、他の構成はすでに説明した可撓止水部材20と同一である。
また、施工方法も、図8(b)に示すように、支持部材54のナット54aに妻型枠から固定用のボルトを入れて打設前の可撓止水継手50の支持が行われるとともに、台形部51aと板状部51bとの間に目地材55が、端面固定部52cの外周部分に目地材56がそれぞれ取り付けられる以外、すでに説明した可撓止水継手20と同様にして施工することができる。
【0102】
このような可撓止水継手50によれば、すでに説明した可撓止水継手20と同一の作用効果を奏するほか、支持部材54のナット54aが可撓止水継手50に予め工場などで一体に取り付けてあるので、現場では、妻型枠にボルトで固定するだけで打設前の準備ができ、一層現場でのコンクリート打設前の準備を簡単に行うことができる。
【0103】
なお、後行打設固定部52の先端に突起部52aが形成される平行固定部52dに必要に応じて空気抜き孔を形成するようにしても良い。
【0104】
次に、この発明の可撓止水継手およびその施工方法を止水板に適用した他の一実施の形態について、図9により説明する。
【0105】
この止水板で構成する可撓止水継手60では、コンクリート構造体としての壁中央部に両端部が取り付けられて止水するものであり、これまでのように、コンクリート打設前の支持を鉄筋などの配筋に支持することなく、簡単に施工できるようにしたものである。
【0106】
この可撓止水継手60は、先行コンクリートに打設によって埋設固定される先行打設固定部61と、後行コンクリートに打設によって埋設固定される後行打設固定部62と、これらの間に配置される中空の伸縮部63とを備えて構成され、伸縮部63が下方に突き出す略一直線上に配置されている。
【0107】
この可撓止水継手60では、先行打設固定部61および後行打設固定部62が同一形状とされ、板状の表裏両側にそれぞれ2列の係止凸条部61a、62aが突き出して形成してある。また、先行打設固定部61および後行打設固定部62の先端部には、上下に貫通する貫通孔61b、62bが形成された突出部が形成してある。
【0108】
これら先行打設固定部61および後行打設固定部62の間に設けられる伸縮部63は、略U字状の伸縮部本体63aを備え、その上端開口部が他の部分に比べて薄く大きな力が加わると切断可能な蓋部材63bで塞がれた状態としてある。
【0109】
このように構成した可撓止水継手60のコンクリート構造体12,13の継手部14への施工方法について、図9(b)により説明する。
【0110】
このような可撓止水継手60である止水板の施工には、すでに説明した支持部材24がそのまま用いられ、継手部14の端面14aを形成する妻型枠16に間隔保持部材24eを妻型枠16の外側からのボルトで取り付けるとともに、この間隔保持部材24eの外側に支持部材24の固定板部24bを当て、その取り付け孔24cからのボルトで固定板部24bを取り付ける。
【0111】
この後、支持部材24の支持板部24aに可撓止水継手60の先行打設固定部61の内側部分を支えるようにするとともに、後行打設固定部62を外側に折り曲げるようにし、両側から目地材64、65で挟むようにして妻型枠16で押えるようにする。このほか、コンクリート構造物12の構築に必要な型枠を組み立てる。
【0112】
このような妻型枠16への支持部材24の取り付けおよび可撓止水継手60の取り付けは、すでに説明したように、妻型枠16を設置する現場でなくても良く、広いスペースのある場所や妻型枠16を設置現場の作業容易な位置に移動して行うようにし、可撓止水継手60を取り付けた後、妻型枠16ごと所定の位置に設置するようにする。
【0113】
これにより、従来の先行コンクリートの打設前に鉄筋などに埋設される先行打設固定部を吊り下げるようにするなどの準備作業に比べ、支持部材24をボルトで妻型枠16に取り付け、この支持部材24に可撓止水部材60を取り付けるだけで良く、簡単かつ短時間に準備作業を行うことができる。
【0114】
こうして可撓止水継手60を取り付けた先行のコンクリート打設用の型枠を設置したのち、先行コンクリートを打設する。
【0115】
そして、養生後、継手部14の端面14aの妻型枠16を脱型し、伸縮部63の継手部14の外側(図での上方)の目地材65に代えて妻型枠16の厚さを加えた目地材66を配置するとともに、内側(図での下方)に目地材67を配置し、可撓止水継手60の伸縮部63に接着して取り付ける(図9(c)参照)。
【0116】
これらの目地材66,67により可撓止水継手60の圧縮変形時の変形抵抗の減少および損傷防止を図るようにする。
【0117】
こののち、後行のコンクリート構造体13の構築に必要な型枠を組み立てた後、後行のコンクリートを打設する。
【0118】
そして、養生後、型枠を脱型することで継手部14への可撓止水継手60の取り付け施工が完了する。
【0119】
このような可撓止水継手60およびその施工方法によれば、例えばコンクリート構造体12,13の継手部14の間隔が開くように相対変位する場合に、変位が小さい場合には、中空の伸縮部63がそのまま変形することで許容し、変位が大きい場合には、中空の伸縮部63の蓋部材63bが切断されることで大きく変形して許容することができる。
【0120】
また、このような可撓止水継手60およびその施工方法によれば、先行コンクリート構造体12への可撓止水継手60の取り付けが、妻型枠16に支持部材24をボルトで固定し、支持板部24aに先行打設固定部61を載せるように取り付ければ良く、打設前に鉄筋などに吊り下げるように準備する場合に比べ、準備作業を大幅に減少でき、簡単かつ短時間に施工することができるとともに、作業を妻型枠16の設置位置で行うことなく、スペースのある場所や位置を移動して作業しやすい位置で行うことができる。
【0121】
また、後行コンクリートの打設を、妻型枠16を支持部材24の間隔保持部材24eからボルトを緩めて取り外し、目地材66,67を可撓止水継手60の伸縮部63に部分接着するなどで保持するだけで行うことができ、後行のコンクリートの打設前の準備も短時間に行うことができる。
【0122】
次に、この発明の可撓止水継手およびその施工方法の他の一実施の形態について、図10により説明するが、すでに説明した上記可撓止水継手(止水板)60の実施の形態と同一部分には同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0123】
この可撓止水継手60Aでは、伸縮部63が蓋部材のないU字状に構成される点で可撓止水継手60と異なる。
【0124】
なお、他の構成はすでに説明した可撓止水部材60と同一である。
【0125】
このように構成した可撓止水継手60Aのコンクリート構造体12,13の継手部14への施工方法について、図10(b)、(c)により説明する。
【0126】
このような可撓止水継手60Aである止水板の施工には、すでに説明した可撓止水継手60と同様に、支持部材24の支持板部24aに可撓止水継手60Aの先行打設固定部61の内側部分を支えるようにするとともに、後行打設固定部62を折り曲げるようにして針金で妻型枠16に支持し、両側から小さい目地材64Aと大きい目地材65で挟むようにし妻型枠16で押えるようにする。このほか、コンクリート構造物12の構築に必要な型枠を組み立てる。
【0127】
こうして可撓止水継手60Aを取り付けた先行のコンクリート打設用の型枠を設置したのち、先行コンクリートを打設する。
【0128】
そして、養生後、継手部14の端面14aの妻型枠16を脱型し、伸縮部63の継手部14の外側(図での上方)の目地材65に代えて伸縮部63のU字状の凹部を埋めるように目地材65Aを取り付け、さらに妻型枠16に代えて目地材66Aを配置するとともに、内側(図での下方)に目地材67を配置し、可撓止水継手60Aの伸縮部63に接着して取り付ける(図10(c)参照)。
【0129】
こののち、後行のコンクリート構造体13の構築に必要な型枠を組み立てた後、後行のコンクリートを打設する。
【0130】
そして、養生後、型枠を脱型することで継手部14への可撓止水継手60Aの取り付け施工が完了する。
【0131】
このような可撓止水継手60Aおよびその施工方法によってもすでに説明した可撓止水継手60と同様の作用効果を奏する。
【0132】
なお、可撓止水継手60Aの施工方法として、図10(d)に示すように、施工後の状態として伸縮部63のU字状の凹部を埋めるように継手外周まで到る大きい目地材65Bを用い、空洞のない状態でコンクリートを打設するようにしても良い。
【0133】
次に、この発明の可撓止水継手およびその施工方法を止水板に適用した一実施の形態について、図11により説明する。
【0134】
この止水板で構成する可撓止水継手70では、すでに説明した可撓止水継手60,60Aと同様に、コンクリート構造体としての壁中央部に両端部が取り付けられて止水するものであり、支持部材を用いることで、コンクリート打設前の支持を鉄筋などの配筋に支持することなく、簡単に施工できるようにする点で上記各実施の形態と共通するが、先行コンクリートの打設後、支持部材をコンクリート構造体に埋設したままとせず、取り外す点で異なるものである。
【0135】
この可撓止水継手70は、先行コンクリートに打設によって埋設固定される先行打設固定部71と、後行コンクリートに打設によって埋設固定される後行打設固定部72と、これらの間に配置される略U字状の伸縮部73とを備えて構成されている。
【0136】
この可撓止水継手70では、先行打設固定部71および後行打設固定部72が同一形状とされ、先行および後行のコンクリート構造体12,13の継手部14の外周のV字状の傾斜面12a,13aに当てられる固定板部71a,72aと、外側面がこれら固定板部71a,72aと略直交するとともに、傾斜面12a,13aに略垂直で内側面が互いに略直線状の板状アンカー部71b,72bを備え、それぞれの板状アンカー部71b,72bの先端部に両外側に膨らんだ膨出部71c,72cを備えている。
【0137】
そして、これら先行打設固定部71と後行打設固定部72の間に略U字状の伸縮部73が配置され、開口端部に先行打設固定部71および後行打設固定部72の内側端部がそれぞれ連結されて一体に形成されている。
【0138】
また、この可撓止水継手70では、先行打設固定部71および後行打設固定部72の固定板部71a,72aのコンクリート構造体12,13側にそれぞれブチルシート74が取り付けられ、コンクリートとの間の止水性を確保できるようにしてある。
【0139】
このように構成した可撓止水継手70のコンクリート構造体12,13の継手部14への施工方法について、図11(b)により説明する。
【0140】
このような可撓止水継手70である止水板の施工には、すでに説明した支持部材24の支持板部24aを省略したものが用いられ、継手部14の端面14aを形成する妻型枠16に間隔保持部材24eを妻型枠16の外側に当てた押え板24hとともにボルトで取り付け、この間隔保持部材24eの外側に支持部材24の固定板部24bを当ててボルトで取り付ける。
【0141】
この後、支持部材24の固定板部24bに可撓止水継手70の伸縮部73のU字状の谷部分を被せるようにして支えるようにするとともに、後行打設固定部72を伸縮部73側に折り曲げるようにし、先行打設固定部71の固定板部71aおよび伸縮部73の外側に保持充填部材75を装着して固定板部71aを支持するようにする。コンクリート構造物12の構築に必要な型枠を組み立てる。
【0142】
このような妻型枠16への支持部材24の取り付けおよび可撓止水継手70の取り付けは、すでに説明したように、妻型枠16を設置する現場でなくても良く、広いスペースのある場所や妻型枠16を設置現場の作業容易な位置に移動して行うようにし、可撓止水継手70を取り付けた後、妻型枠16ごと所定の位置に設置するようにする。
【0143】
これにより、従来の先行コンクリートの打設前に鉄筋などに埋設される先行打設固定部を吊り下げるようにするなどの準備作業に比べ、支持部材24をボルトで妻型枠16に取り付け、この支持部材24に可撓止水部材70を取り付けるだけで良く、簡単かつ短時間に準備作業を行うことができる。
【0144】
こうして可撓止水継手70を取り付けた先行のコンクリート打設用の型枠を設置したのち、先行コンクリートを打設する。
【0145】
そして、養生後、継手部14の端面14aの妻型枠16を脱型するとともに、支持部材24も取り外す。そして、伸縮部73の谷部分に支持部材24の固定板部24bに代えて固定板部24bの厚さの目地材76を配置し、コンクリート構造体12に接着して取り付ける(図11(c)参照)。
【0146】
これらの目地材76により可撓止水継手70の圧縮変形時の変形抵抗の減少および損傷防止を図るようにする。
【0147】
こののち、後行打設固定部72の固定板部72aと伸縮部73との間に保持充填部材75を充填するとともに、後行のコンクリート構造体13の構築に必要な型枠を組み立てた後、後行のコンクリートを打設する。
【0148】
そして、養生後、型枠を脱型することで継手部14への可撓止水継手70の取り付け施工が完了する。
【0149】
このような可撓止水継手70およびその施工方法によれば、例えばコンクリート構造体12,13の継手部14の間隔が相対変位する場合にU字状の伸縮部73が変形することで許容することができる。
【0150】
また、このような可撓止水継手70およびその施工方法によれば、先行コンクリート構造体12への可撓止水継手70の取り付けが、妻型枠16に支持部材24をボルトで固定し、固定板部24bに伸縮部73を被せ、外側に保持充填部材75を充填して取り付ければ良く、打設前に鉄筋などに吊り下げるように準備する場合に比べ、準備作業を大幅に減少でき、簡単かつ短時間に施工することができるとともに、作業を妻型枠16の設置位置で行うことなく、スペースのある場所や位置を移動して作業しやすい位置で行うことができる。
【0151】
また、後行コンクリートの打設を、妻型枠16と支持部材24とを取り外し、目地材76を先行コンクリート構造体12に部分接着するなどで保持するだけで行うことができ、後行のコンクリートの打設前の準備も短時間に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】この発明の可撓止水継手の一実施の形態にかかる可撓止水継手が適用されるコンクリート構造体の概略斜視図である。
【図2】この発明の可撓止水継手の一実施の形態にかかる可撓止水継手の施工後の取付状態の横断面図である。
【図3】この発明の可撓止水継手の一実施の形態にかかる部分横断面図および取り付け状態で変位した場合の部分横断面図である。
【図4】この発明の可撓止水継手の施工方法の一実施の形態にかかる施工の第1工程の説明図および支持部材の概略斜視図である。
【図5】この発明の可撓止水継手の施工方法の一実施の形態にかかる第2工程以降の説明図である。
【図6】この発明の可撓止水継手の他の一実施の形態にかかるそれぞれの部分横断面図および変形状態の部分横断面図である。
【図7】この発明の可撓止水継手の施工方法のさらに他の一実施の形態にかかる部分横断面図である。
【図8】この発明の可撓止水継手の他の一実施の形態にかかる部分横断面図、施工完了状態の部分横断面図および変形状態の部分横断面図である。
【図9】この発明の可撓止水継手のさらに他の一実施の形態にかかる部分横断面図、施工途中の部分横断面図および施工完了状態の部分横断面図である。
【図10】この発明の可撓止水継手の他の一実施の形態にかかる部分横断面図、施工途中の部分横断面図、施工完了状態の部分横断面図および他の施工完了状態の部分横断面図である。
【図11】この発明の可撓止水継手の一実施の形態にかかる部分横断面図、施工途中の部分横断面図、施工完了状態の部分横断面図である。
【図12】従来の止水板の横断面図およびその施工方法の説明図である。
【図13】従来の可撓止水継手の正面図およびその施工方法の説明図である。
【符号の説明】
【0153】
12 コンクリート構造体
13 コンクリート構造体
14 継手部
14a 端面
15 均しコンクリート
20 可撓止水継手
21 先行打設固定部
21a 溝部
21b 端面
21c 外側
21d ブチルシート
22 後行打設固定部
22a 突起部
22b 側面シール部
22c 端面固定部
22d 空気抜き孔
22e ブチルシート
22f 凸条
23 伸縮部
23a 継手垂直部
23b 継手平行部
24 支持部材
24a 支持板部
24b 固定板部
24c 取り付け孔
24d 切り欠き部
24e 間隔保持部材
24f 円筒部
24g ねじパイプ
24h 押え板
25 目地材
26 目地材
27 目地材
28 防水シート
30 可撓止水継手
31 先行打設固定部
32 後行打設固定部
33 伸縮部
40 可撓止水継手
41 先行打設固定部
42 後行打設固定部
43 伸縮部
44 支持部材
50 可撓止水継手
51 先行打設固定部
52 後行打設固定部
53 伸縮部
54 支持部材
60 可撓止水継手
61 先行打設固定部
62 後行打設固定部
63 伸縮部
60A 可撓止水継手
70 可撓止水継手
71 先行打設固定部
72 後行打設固定部
73 伸縮部
74 ブチルシート
75 保持充填部材
76 目地材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手であって、
前記先行および後行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部および後行打設固定部と、
これら先行打設固定部および後行打設固定部の間に設けられ止水および相対変位を可能とする伸縮部と、
前記可撓止水継手と一体もしくは別体に設けられ先行して打設されるコンクリート打設用の妻型枠に取り付けられコンクリート打設前の当該可撓止水継手を支持可能な支持部材と、
を備えてなることを特徴とする可撓止水継手。
【請求項2】
前記支持部材を、前記コンクリート構造体に埋設される構成としてなることを特徴とする請求項1記載の可撓止水継手。
【請求項3】
前記妻型枠に代えて配置される目地材を備えてなることを特徴とする請求項1または2記載の可撓止水継手。
【請求項4】
前記支持部材が、前記継手部の形状に対応して連続して構成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の可撓止水継手。
【請求項5】
前記支持部材が、前記継手部に沿って間隔をあけて配置されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可撓止水継手。
【請求項6】
前記伸縮部が、断面U字状あるいはL字状に構成されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の可撓止水継手。
【請求項7】
前記断面U字状の伸縮部は、開口部を切断可能な蓋部材で閉じて構成されてなることを特徴とする請求項6記載の可撓止水継手。
【請求項8】
先行および後行のコンクリートを打ち継いで構築されるコンクリート構造体の継手部に設けられて内外の止水および当該継手部の相対変位を可能とする可撓止水継手を施工するに際し、
先行のコンクリート構造体に打設により埋設固定される先行打設固定部を有する前記可撓止水継手を、妻型枠に取り付けた支持部材を介して支持した後、先行のコンクリートを打設し、次いで、前記妻型枠を取り除いて前記先行打設固定部に伸縮部を介して連結された後行打設固定部を、後行のコンクリートを打設して埋設固定するようにしたことを特徴とする可撓止水継手の施工方法。
【請求項9】
前記妻型枠に取り付けられた支持部材をコンクリート構造体に埋設するようにしたことを特徴とする請求項8記載の可撓止水継手の施工方法。
【請求項10】
前記妻型枠を取り除いた後、目地材を接着して後行のコンクリートを打設するようにしたことを特徴とする請求項8または9記載の可撓止水継手の施工方法。
【請求項11】
前記支持部材を前記継手部に沿って連続して配置して前記可撓止水継手を支持するようにしたことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の可撓止水継手の施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−328642(P2006−328642A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149370(P2005−149370)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】