説明

可撓管用噛合い継手及びそれを用いた組合せ式可撓管並びにその製造方法

【課題】部品点数が少なく簡単な構造で連結に特殊な部材や技術を必要とせず、組み立てが容易で高い水密性を確保することができる量産性に優れた可撓管用噛合い継手を提供することを目的とする。
【解決手段】(a)環状板と、環状板表面に直交して立設された内筒部と、内筒部の先端側外周に断続的に突設された外周突起部と、環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部と、を有する内側噛合い継手と、(b)環状板と、環状板表面に直交して立設された外筒部と、外筒部の先端側内周に断続的に突設された内周突起部と、環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部と、を有する外側噛合い継手と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの円管を可撓継手で連結することにより、施工時の荷重や埋設後の土圧や水圧に耐え、かつ、地震時などの土中の変形に柔軟に対応して円管の欠損や亀裂を防止し、気密性、水密性を確保することができる可撓管用噛合い継手及びそれを用いた組合せ式可撓管並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水道、排水路等の埋設配管として一般にヒューム管が使用されているが、地盤変動または地震等の変動により発生する折曲や偏心等の各種変位や振動等に対し、ヒューム管が対応できないために管の一部が破損、あるいは破損に至らない場合でもヒューム管の端部に欠損や亀裂を生ずることがある。そして、これが原因で浸水や漏水することがある。この地盤変動や地震等によるヒューム管の損傷や浸水、漏水を防止するため、隣接するヒューム管の接続部にはゴム・合成樹脂等の可撓性材料からなる可撓継手が使用されている。
本願出願人が出願した(特許文献1)には、「連結される開口部端面が対向して配置された二つのヒューム管と、一のヒューム管の対向する開口部端面に配設された外側櫛歯型継手と、他のヒューム管の開口部端面に配設された内側櫛歯型継手と、外側櫛歯型継手の連結用部材挿通部と内側櫛歯型継手の連結用部材挿通部に挿通された連結用ロープと、を備えているヒューム管の連結構造」が開示されている。
【特許文献1】特開2005−9674号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)のヒューム管の連結構造は、すべての方向の移動と回転に対して設定した変形以下では剛性が小さく、それ以上の変形に対しては高い強度と剛性を有し連結部の破壊を防ぐ柔軟な配管を実現できると共に、推進施工時の軸方向力に耐えることができる信頼性に優れた構造であったが、外側櫛歯型継手や内側櫛歯型継手は、環状板の片面上に所定間隔で櫛歯状に直交して複数の連結板を立設しなければならず、部品点数が多く生産に工数を要し、量産性に欠けるという課題を有していた。
(2)また、外側櫛歯型継手の連結用部材挿通部と内側櫛歯型継手の連結用部材挿通部に連結用ロープを挿通しなければならず、連結部の組み立てにも工数を要し、施工性に欠けるという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、部品点数が少なく簡単な構造で連結に特殊な部材や技術を必要とせず、組み立てが容易で高い水密性を確保することができる量産性に優れた可撓管用噛合い継手の提供、及び優れた可撓性を有し、連結部の破壊を防ぐ柔軟な配管を実現できると共に、推進施工時の軸方向力に耐えることができる信頼性に優れた組合せ式可撓管の提供、並びに、生産工数を大幅に低減できる組み立て作業性に優れた組合せ式可撓管の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の可撓管用噛合い継手及びそれを用いた組合せ式可撓管並びにその製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の可撓管用噛合い継手は、(a)環状板と、前記環状板表面に直交して立設された内筒部と、前記内筒部の先端側外周に断続的に突設された外周突起部と、前記環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部と、を有する内側噛合い継手と、(b)環状板と、前記環状板表面に直交して立設された外筒部と、前記外筒部の先端側内周に断続的に突設された内周突起部と、前記環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部と、を有する外側噛合い継手と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)内側噛合い継手、外側噛合い継手共に一体的に形成されて部品点数が少なく生産性に優れると共に、取り扱いが簡便で、容易に連結作業を行うことができる。
(2)内側噛合い継手及び外側噛合い継手が、それぞれ内筒部の先端側外周に断続的に突設された外周突起部及び外筒部の先端側内周に断続的に突設された内周突起部を有するので、外周突起部と内周突起部を互いに噛合せるようにして回転させるだけで簡便に連結作業を行うことができる。
(3)内側噛合い継手及び外側噛合い継手が、それぞれ環状板表面に直交して立設された内筒部及び外筒部を有することにより、内筒部及び外筒部の先端を互いの環状板表面に当接させて軸力を伝達することができ、土中への埋設時に推進施工を行うことができる。
(4)内側噛合い継手の内筒部及び外側噛合い継手の外筒部が同心円状に配置されて組み合わされているので、引張りや曲げだけでなく、ねじり等の外力に対しても変形可能で実用性に優れる。
(5)内側噛合い継手及び外側噛合い継手が、それぞれ内筒部の先端側外周に突設された外周突起部及び外筒部の先端側内周に突設された内周突起部を有するので、想定以上の引張り外力に対しては、外周突起部と内周突起部が互いに当接して変形を防止できる。
(6)内側噛合い継手及び外側噛合い継手の環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部を有するので、内側噛合い継手及び外側噛合い継手を型枠内にセットしてコンクリートを投入するだけで、アンカー部をコンクリートに埋設させて強固に固定することができる。
【0006】
ここで、内側噛合い継手及び外側噛合い継手の材質としては、鉄鋼、ステンレス鋼、クロム鋼、カーボン鉄鋼等の金属が好適に用いられる。これにより、想定以上の変形に対して高い機械的強度と剛性を有し、連結部の破壊を防ぐことができる。尚、水に接触する部位については、特に耐食性に優れるステンレス鋼が好ましい。
また、内側噛合い継手及び外側噛合い継手の各部は互いに溶接により接合することが好ましい。これにより、高い強度と圧縮耐力を有し、変形を防止できるので、推進工法による配管を行うことができる。
可撓管用噛合い継手が配設される各々の円管の外周にまたがって、可撓性を有し可撓管用噛合い継手を保護する外部保護カラーや円筒シールド材等を配設することにより、水圧がかかる外部からの地下水の浸入を防止することができる。円管の内周に同様の内部保護カラーや円筒シールド材等を配設した場合、可撓管用噛合い継手を二重に保護することができ止水の信頼性を向上させることができる。円筒シールド材としては、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどのゴム製のもの等が好適に用いられる。
【0007】
環状板の厚さは5mm〜18mmに形成することが好ましい。環状板の厚さが5mmより薄くなるにつれ、環状板の強度が不足して変形し易くなり、18mmより厚くなるにつれて、加工性に欠けると共に重量が増して取り扱い難くなる傾向がありいずれも好ましくない。
また、内筒部及び外筒部の厚さは3mm〜12mmに形成することが好ましい。内筒部及び外筒部の厚さが3mmより薄くなるにつれ、強度が不足して推進施工時の変形が発生し易くなる傾向があり、12mmより厚くなるにつれて、重量が増して取り扱い難くなる傾向がありいずれも好ましくない。
外周突起部及び内周突起部は、それぞれ同一のピッチで配設する。組み立て時には、外周突起部と内周突起部が互い違いになるように内側噛合い継手と外側噛合い継手を円周方向に半ピッチずらして対向配置し、内筒部及び外筒部の先端が互いの環状板表面に当接するまで押し込んだ後、外周突起部と内周突起部が噛合うように半ピッチ回転させる。尚、断続的に配置される外周突起部及び内周突起部のそれぞれの間隔は、対向する内周突起部及び外周突起部の幅よりも広く形成し、外周突起部及び内周突起部が互いに出入り自在な構造とする。
また、内筒部や外筒部が肉厚であるときは、内筒板や外筒板に直接、アンカー部を溶接固定してもよい。これにより、環状板を省略でき、部品点数を減らすことができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の組合せ式可撓管は、開口部端面に請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の内側噛合い継手が配設された一の円管と、開口部端面に請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の外側噛合い継手が配設され前記内側噛合い継手の前記外周突起部と前記外側噛合い継手の前記内周突起部が噛合わされて前記一の円管に連結された他の円管と、円筒状に形成され前記可撓管用噛合い継手の内周側に配設された内部保護カラーと、円筒状に形成され周方向及び/又は軸方向に断続的に形成された切れ目部を有し前記可撓管用噛合い継手の外周側に配設された外部保護カラーと、前記内側噛合い継手の前記内筒部の内周と前記内部保護カラーの外周との間に充填された内部止水材と、前記外側噛合い継手の前記外筒部の外周と前記外部保護カラーの内周との間に充填された外部止水材と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)二つの円管がそれぞれの開口部端面に配設された内側噛合い継手及び外側噛合い継手により連結されると共に、可撓管用噛合い継手の内周側及び外周側に内部保護カラー及び外部保護カラーが配設され、可撓管用噛合い継手との間に内部止水材及び外部止水材が充填されることにより、可撓性を有し、気密性、水密性を確保できる連結構造とすることができる。
(2)部品点数が少なく、内側噛合い継手の外周突起部と外側噛合い継手の内周突起部を噛合わせるだけで連結できるので、位置合わせ及び連結作業が容易で施工性に優れると共に、圧縮、引張り、曲げに加え、円管の中心軸を中心とするねじりに対しても、柔軟に対応できる可撓性を有し、連結に特殊な技術や部材が不要で少ない工数で製作することができ量産性に優れる。
(3)想定以上の外力に対しては内側噛合い継手及び外側噛合い継手の剛性により変形を防止でき、土中への埋設後に土砂などが円管内へ侵入するのを防ぐことができる。
(4)内側噛合い継手及び外側噛合い継手が高い強度と軸方向耐力を有するので推進工法による配管にも対応できる。
(5)内側噛合い継手及び外側噛合い継手は円管とは別に工場で作製可能なので、品質管理が容易で寸法精度を出すことができる。
(6)外部止水材が外部保護カラーによって覆われているので、組合せ式可撓管の推進施工時に外部止水材が破損するのを防ぐことができる。
(7)円筒状に形成された外部保護カラーが周方向及び/又は軸方向に断続的に形成された切れ目部を有することにより、引張り、曲げ、ねじり等の外力に対して変形可能であるので、可撓管用噛合い継手(連結部)の可撓性、水密性を損なうことなく外部止水材や可撓管用噛合い継手を保護することができる。
(8)外部保護カラーと外部保護カラーの内側に充填された外部止水材を有するので、可撓管用噛合い継手を保護して円管内部への土砂などの侵入を防ぐと共に、水密性を確保することができる。
(9)外側噛合い継手の外筒部の外周と外部保護カラーの内周との間に外部止水材を充填するだけで可撓管用噛合い継手を止水して水密性を確保することができ生産性に優れる。
(10)内側噛合い継手の内筒部の内周と内部保護カラーの外周との間に内部止水材を充填して止水することにより、外部止水材と併せて円管を二重に浸水から保護することができ、いずれか一方の止水材が破断した場合でも、水密性を確保することができる。
【0009】
ここで、内側噛合い継手及び外側噛合い継手の圧縮及び引張耐力は円管本体の圧縮及び引張耐力を上回ることが好ましい。これにより、地震などの場合に円管より先に可撓管用噛合い継手(連結部)が壊れることがなく、配管が一挙に破壊されるのを防ぐことができる。
内部保護カラー及び外部保護カラーの材質としては、鉄鋼、ステンレス鋼、クロム鋼、カーボン鉄鋼等の金属が好適に用いられる。
内部保護カラー及び外部保護カラーの板厚は2mm〜12mmが好ましい。板厚が2mmより薄くなるにつれ、剛性、耐摩耗性が低下し内部止水材や外部止水材の破損が発生し易くなる傾向があり、板厚が12mmより厚くなるにつれ、重量が増えて施工性、加工性に欠けると共に連結部の可撓性が低下し易くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0010】
外部保護カラーの切れ目部の形成にはレーザ加工が好適に用いられる。切れ目部の幅、長さ、ピッチは円管の外径、外部保護カラーの板厚、許容する曲げ変形量等を考慮して決定される。尚、切れ目部の形状は一直線状や、くの字型、レの字型或いはこれらを組合せた形状に形成できる他、これらを所定の角度で傾斜させて配置することができる。また、周方向に断続的な切れ目部を外部保護カラーの長手方向の中央等の変位箇所に形成することにより、引張りや曲げの外力に対応して変形することができ、軸方向に断続的な切れ目部を任意の位置に形成することにより、ねじりの外力に対応して変形することができる。
内部保護カラーの外周や外部保護カラーの内周に沿ってアンカー筋を配設した場合、内部保護カラーや外部保護カラーと円管とを確実に固定できる。また、内側噛合い継手及び外側噛合い継手の環状板に配設されたアンカー部を外周側に折り曲げ、外部保護カラーの内周面と溶接してもよい。これにより、外部保護カラーと可撓管用噛合い継手を強固に固定することができ、取扱いが容易で作業性を向上させることができる。尚、内部保護カラーは、端部円周上に略台形状等に形成された固定用埋設部を設けてもよい。固定用埋設部を円管に埋設することにより、内部保護カラーと円管とを強固に固定することができ、耐久性を向上させることができる。
【0011】
内部止水材及び外部止水材としては、硬化前に流動性があり、金属との接着力が高いシリコーンゴムやポリブテン等の液状ゴムが好適に用いられる。これにより、充填が容易で生産性に優れると共に、連結部の可撓性、水密性を確保できる。特に、硬化後に高弾性を有するものは、信頼性、耐久性に優れ好ましい。
内部止水材及び外部止水材を介して一体化された可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを型枠内にセットしてコンクリートを投入することにより、内側噛合い継手及び外側噛合い継手の環状板に配設されたアンカー部を円管に埋設させて組合せ式可撓管を形成することができ生産性に優れる。
外部保護カラーは、両端を二つの円管に固定することにより、外力が加わった際に、切れ目部が開口し、様々な変形に対応することができる。内部保護カラーは、一端を外側噛合い継手が配設された他の円管に固定することにより、外力が加わった際に、外側噛合い継手と共に移動し、様々な変形に対応することができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の組合せ式可撓管であって、前記内部止水材及び前記外部止水材が液状ゴムである構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)内部止水材及び外部止水材が液状ゴムであることにより充填性に優れ、可撓管用噛合い継手の内部及び外部を止水して水密性を確保できると共に、内部止水材及び外部止水材の弾性及び伸縮性により引張り、圧縮、曲げ等の変形に対応することができ、連結部の可撓性を維持することができる。
(2)内部止水材及び外部止水材が液状ゴムであることにより、注射器等を用いて簡便に充填を行うことができる。
【0013】
ここで、液状ゴムとしては室温で空気中の水分と反応してゴム状に硬化する脱アルコール型RTV(室温硬化型)など縮合反応型のものが好適に用いられる。硬化と同時にほとんどの材質と接着するシリコーンRTVゴムは、止水の信頼性に優れ好ましい。シリコーンRTVゴムとしては、一液型のものやニ液型のものを用いることができる。
尚、少なくとも内部止水材及び外部止水材と接する内側噛合い継手の内筒部の内周面、内部保護カラーの外周面、外側噛合い継手の外筒部の外周面、外部保護カラーの内周面、にはプライマー処理を施す。また、内側噛合い継手の環状板が、環状板の内周側で内部保護カラーの端部に当接する内周当接部や環状板の外周側で外部保護カラーの内周面に当接する外周当接部を有する場合、内部止水材及び外部止水材と接する環状板の表面にもプライマー処理を施すことが好ましい。これにより、内部止水材及び外部止水材とそれに接する各部との接着性を向上させることができ、水密性に優れる。
【0014】
内部止水材及び外部止水材が十分な伸縮性を有する場合、外力に伴う可撓管用噛合い継手や内部保護カラーの移動及び外部保護カラーの変形に追従して内部止水材及び外部止水材が伸縮するので、内部止水材及び外部止水材と接する箇所全面にプライマー処理を施して接着しても可撓性が低下することがなく、接着の信頼性に優れ止水性を向上することができる。
また、外部保護カラーの切れ目部は、外側噛合い継手の外筒部の範囲内でその先端(内周突起部側)から離れた位置に形成することが好ましい。これにより、外力による変形時に外部保護カラーの切れ目部が開口しても、外側噛合い継手の外筒部に接着された外部止水材で確実に止水することができ、止水の信頼性、耐久性を向上させることができる。
尚、プライマー処理の前には清掃及び脱脂処理を行うことが好ましい。これにより、より接着性を向上させることができる。プライマー処理並びに清掃及び脱脂処理は可撓管用噛合い継手の組立て前後のいずれで行ってもよい。
【0015】
内部保護カラーが、周方向及び/又は軸方向に断続的に形成された切れ目部を備えている場合、内部保護カラーの両端を内側噛合い継手及び外側噛合い継手の環状板或いは円管と固定することにより、外力が加わった際に、外部保護カラーと同様に切れ目部が開口し、引張り、曲げ、ねじり等の様々な変形に対応することができる。これにより、連結部の可撓性、水密性を損なうことなく内部止水材や可撓管用噛合い継手を保護することができる。
尚、内部保護カラーの切れ目部は、外部保護カラーの切れ目部と同様にして形成することができる。
【0016】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の組合せ式可撓管であって、前記外部保護カラーの周方向に断続的に形成された前記切れ目部が前記外部保護カラーの中心軸の長手方向に複数列配置され隣接する前記切れ目部同士が周方向にずれた千鳥状に配列されている構成を有している。
この構成により、請求項2又は3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)外部保護カラーの周方向に断続的に形成された切れ目部が、外部保護カラーの中心軸の長手方向に所定のピッチで複数列配置され、隣接する切れ目部同士が周方向に所定間隔ずつずれた千鳥状に配列されているため、外力による変形時に外部保護カラーの引張り側が網目状に開いて可撓性を確保できると共に、外部止水材を保護することができる。
【0017】
ここで、外部保護カラーの切れ目部は、連結部の変形の範囲内では接続部が切れることがないように、円管の外径に応じて切れ目部の長さやピッチを選択する。これにより、変形後も確実に外部止水材を保護することができ、水密性を確保できる。
円管の曲げ耐力の30%〜60%の外力で連結部が変形するように外部保護カラーの切れ目部を形成することにより、円管の破壊を防止でき、内部を流れる下水等の漏れが発生せず、信頼性に優れる。
尚、内部保護カラーが切れ目部を有する場合、外部保護カラーと同様に千鳥状に配列してもよい。外力による変形時に内部保護カラーの引張り側が網目状に開いて可撓管用噛合い継手の可撓性を確保できると共に、内部止水材を保護することができる。
【0018】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の組合せ式可撓管であって、前記他の円管の開口部端面から延設され前記内部保護カラーの内周側に配設された補強コンクリート部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2乃至4の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)他の円管の開口部端面から延設され内部保護カラーの内周側に配設された補強コンクリート部を有することにより、可撓管用噛合い継手の内周側を補強コンクリート部で保護することができると共に、補強コンクリート部の先端部を内側噛合い継手の環状板に当接させて軸力を伝達することができるので、推進施工時に可撓管用噛合い継手に加わる負荷を低減することができ、管径の大きな円管でも推進施工を行うことができ信頼性に優れる。
【0019】
ここで、内部保護カラーの内周に沿ってアンカー筋を配設した場合、内部保護カラーと補強コンクリート部とを確実に固定できる。
内部止水材及び外部止水材を介して一体化された可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを型枠内にセットしてコンクリートを投入する際に、補強コンクリート部の先端が当接する内側噛合い継手の環状板の表面には剥離剤を塗布することが好ましい。これにより、成形時に補強コンクリート部の先端が、内側噛合い継手の環状板に張り付くのを防止でき、組合せ式可撓管の可撓性を確保することができる。
【0020】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の組合せ式可撓管であって、前記内部保護カラーの端部に延設され前記補強コンクリート部の端部に覆設された端部保護板を備えた構成を有している。
この構成により、請求項5の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)内部保護カラーの端部に延設された端部保護板を有するので、内部保護カラーの内周側に配設された補強コンクリート部の端部を保護することができ、推進施工時や変形時の外力等により補強コンクリート部の端部が削られる等して破損するのを防止でき、信頼性を向上させることができる。
(2)内部止水材及び外部止水材を介して一体化された可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを型枠内にセットしてコンクリートを投入する際に、内側噛合い継手の環状板の内部保護カラー(内周)側の表面が端部保護板により覆われるので、成形時に補強コンクリート部の先端が、内側噛合い継手の環状板に張り付くのを確実に防止でき、剥離剤を塗布する必要がなく生産性に優れる。
ここで、端部保護板は内部保護カラーの内周側に円筒部と直交して環状に形成する。端部保護板の直径方向の幅は、成形する円管の肉厚に応じて適宜、選択することができる。
【0021】
本発明の請求項7に記載の組合せ式可撓管の製造方法は、請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の内側噛合い継手の外周突起部と請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の外側噛合い継手の内周突起部とを互いに噛合せて連結する継手連結工程と、前記内側噛合い継手の内周側及び前記外側噛合い継手の外周側に請求項2乃至6の内いずれか1項に記載の内部保護カラー及び外部保護カラーをそれぞれ配設する継手保護工程と、前記内側噛合い継手の前記内筒部と前記内部保護カラーとの間に請求項2又は3に記載の内部止水材を充填する内部止水工程と、前記外側噛合い継手の前記外筒部と前記外部保護カラーとの間に請求項2又は3に記載の外部止水材を充填する外部止水工程と、前記内部止水材及び前記外部止水材により一体化された前記可撓管用噛合い継手と前記内部保護カラー及び前記外部保護カラーを型枠内にセットしてコンクリートを投入するコンクリート打設工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)継手連結工程により、内側噛合い継手の外周突起部と外側噛合い継手の内周突起部とを互いに噛合せるだけで、連結作業を行うことができ組み立て作業性に優れる。
(2)連結部保護工程により、内側噛合い継手の内周側及び外側噛合い継手の外周側に内部保護カラー及び外部保護カラーをそれぞれ配設することで可撓管用噛合い継手を保護できると共に、一体化された可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーの取り扱いが容易で施工性に優れる。
(3)内部止水工程により、内側噛合い継手の内筒部と内部保護カラーとの間に内部止水材を充填するだけで、組合せ式可撓管の可撓性を低下させることなく、可撓管用噛合い継手の内周側を確実に止水することができる。
(4)外部止水工程により、外側噛合い継手の外筒部と外部保護カラーとの間に外部止水材を充填するだけで、組合せ式可撓管の可撓性を低下させることなく、可撓管用噛合い継手の外周側を確実に止水することができる。
(5)コンクリート打設工程により、内部止水材及び外部止水材で一体化され型枠内にセットされた可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーに対し、コンクリートを投入することで、内側噛合い継手及び外側噛合い継手のアンカー部をコンクリートに埋設固定することができ、可撓性、止水性に優れた組合せ式可撓管を得ることができる。
【0022】
ここで、内側噛合い継手と外側噛合い継手の組み立ては請求項1で説明した通りである。
外部保護カラーと内側噛合い継手は、略L字型等に形成された止め金具等により固定することが好ましい。例えば、予め外部保護カラーの内周面の要所に円周上に止め金具を溶接しておき、内側噛合い継手の環状板の裏面にビス止め等により固定すればよい。これにより、連結部と外部保護カラーを一体に取扱うことができ、施工性を向上させることができる。
内部保護カラーが外部保護カラーと同様に切れ目部を備えている場合は、前述のように内部保護カラーの両端を内側噛合い継手及び外側噛合い継手の環状板或いは円管と固定する必要がある。また、内部保護カラーが切れ目部を備えていない場合は、使用時に外力が加わった際に内部保護カラーが外側噛合い継手と共に移動できなければならないので、内部止水工程を行う時には、内部保護カラーの内側噛合い継手側の端部を内側噛合い継手の環状板に仮固定しておき、使用時には固定を外す必要がある。
【0023】
内部止水工程及び外部止水工程を行う際は、内部保護カラーの外周面と外側噛合い継手の環状板の内周との間及び外部保護カラーの内周面と外側噛合い継手の環状板の外周との間に、円周上の要所に楔型等に形成した間隔調整コマを配設することが好ましい。これにより、内部保護カラーの外周面と内側噛合い継手の内筒部の内周面との間及び外部保護カラーの内周面と外側噛合い継手の外筒部の外周面との間に形成される内周側空間部及び外周側空間部の間隔を全周に渡ってほぼ一定にすることができ、内部止水材及び外部止水材の充填をスムーズに行うことができる。また、内部止水材及び外部止水材の仕上り厚さを均一にでき、止水のばらつきを低減して耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明の可撓管用噛合い継手及びそれを用いた組合せ式可撓管並びにその製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)内側噛合い継手、外側噛合い継手共に一体的に形成されて部品点数が少ないので、取り扱いが簡便で、容易に連結作業を行うことができる作業性に優れた可撓管用噛合い継手を提供することができる。
(2)内側噛合い継手と外側噛合い継手の少なくともいずれか一方を回転させるだけで、断続的に突設された外周突起部と内周突起部を互いに噛合せることができ、簡便に連結作業を行うことができる作業性、施工性に優れた可撓管用櫛歯型継手を提供することができる。
(3)内側噛合い継手の内筒部及び外側噛合い継手の外筒部の各々の先端を互いの環状板表面に当接させて軸力を伝達することができ、土中への埋設時に推進施工を行うことができる施工性に優れた可撓管用櫛歯型継手を提供することができる。
(4)内側噛合い継手の内筒部及び外側噛合い継手の外筒部が同心円状に配置されて組み合わされているので、引張りや曲げだけでなく、ねじり等の外力に対しても変形可能な実用性に優れた可撓管用櫛歯型継手を提供することができる。
(5)想定以上の引張り外力に対しては、内側噛合い継手の外周突起部と外側噛合い継手の内周突起部が互いに当接して変形を防止できる信頼性に優れた可撓管用櫛歯型継手を提供することができる。
(6)内側噛合い継手及び外側噛合い継手の環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部を有するので、内側噛合い継手及び外側噛合い継手を型枠内にセットしてコンクリートを投入するだけで、アンカー部をコンクリートに埋設させて強固に固定することができる生産性に優れた可撓管用櫛歯型継手を提供することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)二つの円管がそれぞれの開口部端面に配設された内側噛合い継手及び外側噛合い継手により連結されると共に、可撓管用噛合い継手の内周側及び外周側に内部保護カラー及び外部保護カラーが配設され、可撓管用噛合い継手との間に内部止水材及び外部止水材が充填されることにより、可撓性を有し、気密性、水密性を確保できる信頼性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(2)内側噛合い継手及び外側噛合い継手の位置合わせ及び連結作業が容易で施工性に優れると共に、圧縮、引張り、曲げに加え、円管の中心軸を中心とするねじりに対しても柔軟に対応できる可撓性を有し、連結に特殊な技術や部材が不要で少ない工数で製作することができる量産性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(3)想定以上の外力に対しては内側噛合い継手及び外側噛合い継手の剛性により変形を防止でき、土中への埋設後に土砂などが円管内へ侵入するのを防ぐことができる信頼性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(4)高い強度と軸方向耐力を有する内側噛合い継手及び外側噛合い継手を備えているので、推進工法による配管にも対応できる施工性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(5)周方向及び/又は軸方向に断続的に形成された切れ目部を有する外部保護カラーを備えることにより、引張り、曲げ、ねじり等の外力に対して変形可能で、可撓性、水密性を損なうことなく外部止水材や可撓管用噛合い継手を保護することができる信頼性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(6)外部保護カラーとその内側に充填された外部止水材で可撓管用噛合い継手を保護することができ、円管内部への土砂などの侵入を防ぐと共に、水密性を確保することができる信頼性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(7)特別な固定手段や接着などの複雑な工程が不要で、外側噛合い継手の外筒部の外周と外部保護カラーの内周との間に外部止水材を充填するだけで可撓管用噛合い継手を止水して水密性を確保することができる量産性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(8)内部止水材と外部止水材により、二重に浸水から保護することができる水密性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)内部止水材及び外部止水材が液状ゴムであることにより充填性に優れ、可撓管用噛合い継手の内部及び外部を止水して水密性を確保できると共に、内部止水材及び外部止水材の弾性及び伸縮性により引張り、圧縮、曲げ等の変形に対応することができ、可撓管用噛合い継手の可撓性を維持することができる信頼性、実用性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(2)内部止水材及び外部止水材が液状ゴムであることにより、注射器等を用いて簡便に充填を行うことができる施工性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)外部保護カラーが千鳥状に配置された切れ目部を有するので、外力による変形時に外部保護カラーの引張り側の切れ目部が網目状に開いて連結部の可撓性を確保できると共に、外部止水材を保護することができる信頼性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)他の円管の開口部端面から内部保護カラーの内周側に延設された補強コンクリート部により、可撓管用噛合い継手の内周側を保護することができると共に、補強コンクリート部の先端部を内側噛合い継手の環状板に当接させて軸力を伝達することができるので、推進施工時に可撓管用噛合い継手に加わる負荷を低減することができ、管径の大きな円管でも推進施工を行うことができる信頼性、施工性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)内部保護カラーの端部に延設された端部保護板により補強コンクリート部の端部を保護することができ、推進施工時や変形時の外力等により補強コンクリート部の端部が削られる等して破損するのを防止できる信頼性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
(2)内部止水材及び外部止水材を介して一体化された可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを型枠内にセットしてコンクリートを投入する際に、内側噛合い継手の環状板の内部保護カラー(内周)側の表面を端部保護板で覆うことにより、成形時に補強コンクリート部の先端が、内側噛合い継手の環状板に張り付くのを防止でき、剥離剤を塗布する工程が不要で生産性に優れた組合せ式可撓管を提供することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)継手連結工程において、内側噛合い継手の外周突起部と外側噛合い継手の内周突起部とを互いに噛合せるだけで、工具等を用いることなく、短時間で容易に連結作業を行うことができる組み立て作業性に優れた組合せ式可撓管の製造方法を提供することができる。
(2)連結部保護工程において、外側噛合い継手の外周側及び内側噛合い継手の内周側に外部保護カラー及び内部保護カラーをそれぞれ配設することにより、可撓管用噛合い継手を保護できると共に、可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを一体に取り扱うことができる施工性に優れた組合せ式可撓管の製造方法を提供することができる。
(3)内部止水工程において、内側噛合い継手の内筒部と内部保護カラーとの間に内部止水材を充填するだけで可撓管用噛合い継手の内周側を確実に止水することができる施工性、信頼性に優れた組合せ式可撓管の製造方法を提供することができる。
(4)外部止水工程において、外側噛合い継手の外筒部と外部保護カラーとの間に外部止水材を充填するだけで可撓管用噛合い継手の外周側を確実に止水することができる施工性、信頼性に優れた組合せ式可撓管の製造方法を提供することができる。
(5)コンクリート打設工程において、内部止水材及び外部止水材で一体化された可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを型枠内にセットし、コンクリートを投入するだけで、内側噛合い継手及び外側噛合い継手のアンカー部をコンクリートに埋設固定することができる量産性に優れた組合せ式可撓管の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを示す斜視図である。
図1中、1は実施の形態1における可撓管用噛合い継手、10はステンレス鋼等の金属製の可撓管用噛合い継手1の内側噛合い継手、11は内側噛合い継手10の環状板、11aは環状板11の裏面に固設された内側噛合い継手10のアンカー部、12は環状板11表面に直交して立設された内側噛合い継手10の内筒部、13は内筒部12の先端側外周に断続的に突設された内側噛合い継手10の外周突起部、20はステンレス鋼等の金属製の可撓管用噛合い継手1の外側噛合い継手、21は外側噛合い継手20の環状板、21aは環状板21の裏面に固設された外側噛合い継手20のアンカー部、22は環状板21表面に直交して立設された外側噛合い継手20の外筒部、23は外筒部22の先端側内周に断続的に突設された外側噛合い継手20の内周突起部、25は円筒状に形成され内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の内周側に配設される内部保護カラー、26は内部保護カラー25の端部円周上に略台形状に形成された固定用埋設部、30は円筒状に形成され内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の外周側に配設される外部保護カラー、30aは外部保護カラー30の周方向に断続的に形成され千鳥状に配列された切れ目部、30bは外部保護カラー30の切れ目部30aと切れ目部30aの間に形成された接続部、31は外部保護カラー30の内周面の要所に円周上に配設され内側噛合い継手10の環状板11の裏面と固定される略L字型の止め金具、32は外部保護カラー30の内周に沿って配設されたアンカー筋である。
【0032】
以上のように形成された実施の形態1の可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管について、以下、図面を用いて説明する。
図2は実施の形態1における可撓管用噛合い継手を当接する管端部に配設した組合せ式可撓管を示す要部断面図であり、図3は実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の曲げ変形状態を示す要部断面図であり、図4(a)は実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管を示す要部側面図であり、図4(b)は実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の曲げ変形状態を示す要部側面図であり、図4(c)は図4(b)におけるA部拡大図である。
図2及び図3中、35は実施の形態1における可撓管用噛合い継手1を用いた組合せ式可撓管、36は開口部端面36aに内側噛合い継手10のアンカー部11aが埋設され外周に外部保護カラー30のアンカー筋32が埋設された一の円管、37は開口部端面37aに外側噛合い継手20のアンカー部21a及び内部保護カラー25の固定用埋設部26が埋設され外周に外部保護カラー30のアンカー筋32が埋設された他の円管、38は内側噛合い継手10の内筒部12の内周と内部保護カラー25の外周との間に充填されたシリコーンゴム等の内部止水材、39外側噛合い継手20の外筒部22の外周と外部保護カラー30の内周との間に充填されたシリコーンゴム等の外部止水材である。
【0033】
内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20を金属製とすることにより、想定以上の変形に対して高い機械的強度と剛性を有し、連結部の破壊を防ぐことができる。特に、水に接触する部位については、耐食性に優れるステンレス鋼を用いることが好ましい。
また、内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の圧縮及び引張耐力は円管36,37の圧縮及び引張耐力を上回るように形成した。これにより、地震などの場合に円管36,37より先に可撓管用噛合い継手1が壊れることがなく、配管が一挙に破壊されるのを防ぐことができる。
内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の各部を互いに溶接により接合することで、高い強度と圧縮耐力を有し、変形を防止できるので、推進工法による配管を行うことができる。
【0034】
内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の環状板11,21の厚さは5mm〜18mmに形成した。環状板11,21の厚さが5mmより薄くなるにつれ、環状板11,21の強度が不足して変形し易くなり、18mmより厚くなるにつれて、加工性に欠けると共に重量が増して取り扱い難くなる傾向があることがわかったためである。
また、内筒部12及び外筒部22の厚さは3mm〜12mmに形成した。内筒部12及び外筒部22の厚さが3mmより薄くなるにつれ、強度が不足して推進施工時の変形が発生し易くなる傾向があり、12mmより厚くなるにつれて、重量が増して取り扱い難くなる傾向があることがわかったためである。
外周突起部13及び内周突起部23は、それぞれ同一のピッチで配設した。外周突起部13と内周突起部23が互い違いになるように内側噛合い継手10と外側噛合い継手20を円周方向に半ピッチずらして対向配置し、内筒部12を外筒部22の内側に挿通して半ピッチ回転させるだけで可撓管用噛合い継手1を組み立てることができる。
【0035】
内部保護カラー25及び外部保護カラー30は鉄鋼、ステンレス鋼、クロム鋼、カーボン鉄鋼等の金属で板厚が2mm〜12mmの円筒状に形成した。板厚が2mmより薄くなるにつれ、剛性、耐摩耗性が低下し内部止水材38や外部止水材39の破損が発生し易くなる傾向があり、板厚が12mmより厚くなるにつれ、重量が増えて施工性、加工性に欠けると共に可撓管用噛合い継手1の可撓性が低下し易くなる傾向があることがわかったためである。
また、図4に示すように、外部保護カラー30にはレーザ加工により千鳥状の切れ目部30aを形成した。これにより、組合せ式可撓管35の曲げ変形時に引張り側の外部保護カラー30の切れ目部30aが網目状に開いて外部保護カラー30を変形させることができ、可撓管用噛合い継手1の可撓性を確保できると共に、内部止水材38及び外部止水材39を保護することができる。切れ目部30aの幅、長さ、ピッチは円管36,37の外径、外部保護カラー30の板厚、許容する曲げ変形量等を考慮して決定した。尚、切れ目部30aの形状は一直線状や、くの字型、レの字型或いはこれらを組合せた形状に形成できる他、これらを所定の角度で傾斜させて配置することができる。
【0036】
外部保護カラー30は、両端部の内周に沿って配設したアンカー筋32により、円管36,37と固定することにより、外力が加わった際に、切れ目部30aが開口し、様々な変形に対応することができる。また、内部保護カラー25は、一端部の円周上に形成した略台形状の固定用埋設部26を円管37に埋設固定することにより、外力が加わった際に、外側噛合い継手20と共に移動し、様々な変形に対応することができる。
尚、内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の環状板11、21に配設されたアンカー部11a、21aを外周側に折り曲げ、外部保護カラー30の内周面と溶接した場合、外部保護カラー30と可撓管用噛合い継手1を強固に固定することができ、取扱いが容易で作業性を向上させることができる。
【0037】
内部止水材38及び外部止水材39としては、硬化前に流動性があり、金属との接着力が高いシリコーンゴムやポリブテン等の液状ゴムを用いた。特に、室温で空気中の水分と反応してゴム状に硬化する脱アルコール型RTVなど縮合反応型のものは、充填が容易で施工性に優れると共に、可撓管用噛合い継手1の可撓性、水密性を確保でき、止水の信頼性、耐久性に優れる。
また、内部止水材38及び外部止水材39の伸縮性や弾性により、組合せ式可撓管35の可撓管用噛合い継手1(連結部)に発生する圧縮や引張などの変形に追従することができる。
【0038】
次に、実施の形態1の可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の製造方法について、以下、図面を用いて説明する。
まず、継手連結工程について説明する。
図5は実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の継手連結工程を示す要部断面模式図である。
図5中、11bは内側噛合い継手10の環状板11の内周側で内部保護カラー25の端部に当接する内周当接部、11cは内側噛合い継手10の環状板11の外周側で外部保護カラー30の内周面に当接する外周当接部、40は内側噛合い継手10の内筒部12の内周面及び内側噛合い継手10の環状板11の内周当接部11b側の表面に形成されたプライマー処理層、41は外側噛合い継手20の外筒部22の外周面及び内側噛合い継手10の環状板11の外周当接部11c側の表面に形成されたプライマー処理層である。
【0039】
内側噛合い継手10の外周突起部13と外側噛合い継手20内周突起部23が互い違いになるように円周方向に略半ピッチずらして内側噛合い継手10と外側噛合い継手20を対向配置する(図1)。内筒部12及び外筒部22の先端が互いの環状板21,11表面に当接するまで押し込んだ後、外周突起部13と内周突起部23が噛合う(位置が一致する)ように半ピッチ回転させる。
プライマー処理層40、41は、後述する内部止水工程及び外部止水工程において充填される内部止水材38及び外部止水材39に接する各部との接着性を向上させるために形成する。尚、プライマー処理層40、41を形成するプライマー処理工程は、継手連結工程の前に単体の内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20に対して行ってもよいし、継手連結工程の後に行ってもよい。
【0040】
次に、継手保護工程について説明する。
図6は実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の継手保護工程を示す要部断面模式図である。
図6中、42は内部保護カラー25の外周面に形成されたプライマー処理層、43は内部保護カラー25と内側噛合い継手10の環状板11の内周当接部11b側の表面と内側噛合い継手10の内筒部12とで囲まれ内部止水材38が充填される環状の内周側空間部、44は内部保護カラー25の外周面と外側噛合い継手20の環状板21の内周との間で円周上の要所に配設された合成樹脂製で楔型の間隔調整コマ、45は内部保護カラー25の内側噛合い継手10側の端部を内側噛合い継手10の環状板11に仮固定すると共に内部止水材38の漏れを防止する粘着テープや粘着シート等の仮固定部材、46は外部保護カラー30の内周面に形成されたプライマー処理層、47は外部保護カラー30と内側噛合い継手10の環状板11の外周当接部11c側の表面と外側噛合い継手20の外筒部22とで囲まれ外部止水材39が充填される環状の外周側空間部、48は外部保護カラー30の内周面と外側噛合い継手20の環状板21の外周との間で円周上の要所に配設された合成樹脂製で楔型の間隔調整コマである。
【0041】
継手保護工程においては、内部保護カラー配設工程及び外部保護カラー配設工程を行う。
内部保護カラー配設工程では、内部保護カラー25を可撓管用噛合い継手1の内周に配設し、内部保護カラー25の内側噛合い継手10側の端部に粘着テープや粘着シート等の仮固定部材45を貼り付けて内側噛合い継手10の環状板11の内周当接部11bに仮固定する。このとき、内部保護カラー25の外周面と外側噛合い継手20の環状板21の内周との間には、円周上の要所に楔型の間隔調整コマ44を配設する。
外部保護カラー配設工程では、外部保護カラー30を可撓管用噛合い継手1の外周に配設し、止め金具31を内側噛合い継手10の環状板11の裏面にビス止め等により固定する。このとき、外部保護カラー30の内周面と外側噛合い継手20の環状板21の外周との間には、円周上の要所に楔型の間隔調整コマ48を配設する。
【0042】
内部保護カラー25及び外部保護カラー30にプライマー処理層42、46を形成することにより、後工程の内部止水工程及び外部止水工程において充填される内部止水材38及び外部止水材39と内部保護カラー25及び外部保護カラー30との接着性を向上させている。
内部保護カラー25の外周面と外側噛合い継手20の環状板21の内周当接部11bを仮固定部材45で仮固定し、外部保護カラー30の内周面と外側噛合い継手20の環状板21の裏面を止め金具31で固定することにより、後工程の内部止水工程及び外部止水工程で内部止水材38及び外部止水材39が充填されるまでの取扱いを容易にしている。
また、間隔調整コマ44、48を配設することで、内部保護カラー25の外周面と内側噛合い継手10の内筒部12の内周との間及び外部保護カラー30の内周面と外側噛合い継手20の外筒部22の外周との間にそれぞれ形成される内周側空間部43、外周側空間部47の高さを全周に渡ってほぼ一定にした。これにより、後工程の内部止水工程及び外部止水工程における内部止水材38及び外部止水材39の充填性を向上させ、内部止水材38及び外部止水材39の仕上り厚さを均一にしている。
尚、内部保護カラー配設工程と外部保護カラー配設工程は、いずれを先に行ってもよい。また、内部保護カラー25及び外部保護カラー30へのプライマー処理層42、46の形成は、内部保護カラー配設工程及び外部保護カラー配設工程の前に行うことが施工性に優れ好ましい。
【0043】
次に、外部止水工程及び内部止水工程について説明する。
図7(a)は外部止水材の充填状態を示す要部断面模式図であり、図7(b)は外部止水材の変形状態を示す要部断面模式図である。
図7(b)中、49は組合せ式可撓管35の変形時に内側噛合い継手10の環状板11と外側噛合い継手20の外筒部22の先端との間に発生する隙間である。
図7(a)に示すように外部止水工程において、外側噛合い継手20の環状板21側の開口(間隔調整コマ48側)から外周側空間部47(図6参照)に液状ゴム等の外部止水材39を充填する。
外周側空間部47内の外部止水材39と接する箇所全面にプライマー処理層41、46が形成されていることにより、外周側空間部47内の各部と外部止水材39を確実に接着させることができる。特に、外部保護カラー30の内周面と外側噛合い継手20の外筒部22の外周面との間に隙間なく外部止水材39が充填されることにより、確実に止水することができ信頼性に優れる。
【0044】
外部止水材39が十分な伸縮性を有するので、組合せ式可撓管35の連結部(可撓管用噛合い継手1)の変形に伴って外部保護カラー30の切れ目部30aが開口した際に、図7(b)に示すように、外部止水材39が延伸して良好な変形状態をえることができると共に、止水性を確保することができる。
また、外部保護カラー30の切れ目部30aは外側噛合い継手20の外筒部22の範囲内でその先端(内周突起部23側)から離れた位置に形成した。これにより、組合せ式可撓管35が変形し隙間49が発生しても、切れ目部30aと隙間49が重なることがないので、切れ目部30aや隙間49の近傍で外部止水材39の一部に亀裂等が生じても、外部止水材39が完全に断裂することがなく、止水性を保つことができる。
【0045】
図8(a)は内部止水材の充填状態を示す要部断面模式図であり、図8(b)は内部止水材の変形状態を示す要部断面模式図である。
図8(b)中、50は組合せ式可撓管35の変形時に内側噛合い継手10の環状板11と内部保護カラー25の先端との間に発生する隙間、51は内側噛合い継手10の内筒部12の先端と外側噛合い継手20の環状板21との間に発生する隙間である。
図8(a)に示すように内部止水工程において、外側噛合い継手20の環状板21側の開口(間隔調整コマ44側)から内周側空間部43(図6参照)に液状ゴム等の内部止水材38を充填する。
内周側空間部43内の内部止水材38と接する箇所全面にプライマー処理層40、42が形成されていることにより、内周側空間部43内の各部と内部止水材38を確実に接着させることができる。特に、内部保護カラー25の外周面と内側噛合い継手10の内筒部12の内周面との間に隙間なく内部止水材38が充填されることにより、確実に止水することができ信頼性に優れる。
尚、内部止水材38が硬化した後、仮固定部材45は取り外しておく。
【0046】
内部止水材38が十分な伸縮性を有するので、組合せ式可撓管35の連結部(可撓管用噛合い継手1)の変形に伴って内側噛合い継手10の環状板11と内部保護カラー25との間が開口した際に、図8(b)に示すように、内部止水材38が延伸して良好な変形状態をえることができると共に、止水性を確保することができる。
隙間50と隙間51が重なることがないので、内圧等により隙間50や隙間51の近傍で内部止水材38の一部に亀裂等が生じても、外部止水材38が完全に断裂することがなく、止水性を保つことができる。
尚、外部止水工程及び内部止水工程はいずれを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
本実施の形態では、内部保護カラー25の一端側のみを固定用埋設部26で円管37に埋設固定し、他端側を自由端として可撓管用噛合い継手1の可撓性を確保したが、外部保護カラー30と同様に内部保護カラー25の周方向及び/又は軸方向に断続的に切れ目部を形成し、他端側も内側噛合い継手10の環状板11等に固定するようにしてもよい。外部保護カラー30と同様に切れ目部が開口し、良好な変形状態をえることができる
【0047】
次に、コンクリート打設工程について説明する。
内部止水材38及び外部止水材39を介して一体化された可撓管用噛合い継手1及び内部保護カラー25、外部保護カラー30を遠心成形用の型枠内にセットしてコンクリートを投入しながら遠心成形をする。
遠心成形により内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の環状板11、21に配設されたアンカー部11a、21a、内部保護カラー25の一端部に形成された固定用埋設部26、外部保護カラー30のアンカー筋32を円管36、37に埋設させて組合せ式可撓管35を一体に成形できる。
【0048】
以上のように実施の形態1における可撓管用噛合い継手によれば、以下の作用を有する。
(1)内側噛合い継手10、外側噛合い継手20共に一体的に形成されて部品点数が少なく生産性に優れると共に、取り扱いが簡便で、容易に連結作業を行うことができる。
(2)内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20が、それぞれ内筒部12の先端側外周に断続的に突設された外周突起部13及び外筒部22の先端側内周に断続的に突設された内周突起部23を有するので、外周突起部13と内周突起部23を互いに噛合せるようにして回転させるだけで簡便に連結作業を行うことができる。
(3)内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20が、それぞれ環状板11,21表面に直交して立設された内筒部12及び外筒部22を有することにより、内筒部12及び外筒部22の先端を互いの環状板21,11表面に当接させて軸力を伝達することができ、土中への埋設時に推進施工を行うことができる。
(4)内側噛合い継手10の内筒部12及び外側噛合い継手20の外筒部22が同心円状に配置されて組み合わされているので、引張りや曲げだけでなく、ねじり等の外力に対しても変形可能で実用性に優れる。
(5)内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20が、それぞれ内筒部12の先端側外周に突設された外周突起部13及び外筒部22の先端側内周に突設された内周突起部23を有するので、想定以上の引張り外力に対しては、外周突起部13と内周突起部23が互いに噛合って変形を防止できる。
(6)内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の環状板11,21の裏面に円周上に立設されたアンカー部11a,21aを有するので、内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20を型枠内にセットしてコンクリートを投入するだけで、アンカー部11a,21aをコンクリートに埋設させて強固に固定することができる。
【0049】
実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管によれば、以下の作用を有する。
(1)二つの円管36,37がそれぞれの開口部端面36a,37aに配設された内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20により連結されると共に、可撓管用噛合い継手1の外周側及び内周側に内部保護カラー25及び外部保護カラー30が配設され、可撓管用噛合い継手1との間に内部止水材38及び外部止水材39が充填されることにより、可撓性を有し、気密性、水密性を確保できる連結構造とすることができる。
(2)部品点数が少なく、内側噛合い継手10の外周突起部13と外側噛合い継手20の内周突起部23を噛合わせるだけで連結できるので、位置合わせ及び連結作業が容易で施工性に優れると共に、圧縮、引張り、曲げに加え、円管の中心軸を中心とするねじりに対しても、柔軟に対応できる可撓性を有し、連結に特殊な技術や部材が不要で少ない工数で製作することができ量産性に優れる。
(3)想定以上の外力に対しては内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20の剛性により変形を防止でき、土中への埋設後に土砂などが円管36,37内へ侵入するのを防ぐことができる。
(4)内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20が高い強度と軸方向耐力を有するので推進工法による配管にも対応できる。
(5)内側噛合い継手10及び外側噛合い継手20は円管36,37とは別に工場で作製可能なので、品質管理が容易で寸法精度を出すことができる。
(6)外部止水材39が外部保護カラー30によって覆われているので、組合せ式可撓管35の推進施工時に外部止水材39が破損するのを防ぐことができる。
(7)円筒状に形成された外部保護カラー30が周方向及び/又は軸方向に断続的に形成された切れ目部30aを有することにより、引張り、曲げ、ねじり等の外力に対して変形可能であるので、可撓管用噛合い継手1(連結部)の可撓性、水密性を損なうことなく外部止水材39や可撓管用噛合い継手1を保護することができる。
(8)外部保護カラー30と外部保護カラー30の内側に充填された外部止水材39を有するので、可撓管用噛合い継手1を保護して円管36,37内部への土砂などの侵入を防ぐと共に、水密性を確保することができる。
(9)外側噛合い継手20の外筒部22の外周と外部保護カラー30の内周との間に外部止水材39を充填するだけで可撓管用噛合い継手1を止水して水密性を確保することができ生産性に優れる。
(10)内側噛合い継手10の内筒部12の内周と内部保護カラー25の外周との間に内部止水材38を充填して止水することにより、外部止水材39と併せて円管36,37を二重に浸水から保護することができ、いずれか一方の止水材が破断した場合でも、水密性を確保することができる。
(11)内部止水材38及び外部止水材39が液状ゴムであることにより充填性に優れ、可撓管用噛合い継手1の内部及び外部を止水して水密性を確保できると共に、内部止水材38及び外部止水材39の弾性及び伸縮性により引張り、圧縮、曲げ等の変形に対応することができ、組合せ式可撓管35の可撓性を維持することができる。
(12)内部止水材38及び外部止水材39が液状ゴムであることにより、注射器等を用いて簡便に充填を行うことができる。
(13)外部保護カラー30の周方向に断続的に形成された切れ目部30aが、外部保護カラー30の中心軸の長手方向に所定のピッチで複数列配置され、隣接する切れ目部30a同士が周方向に所定間隔ずつずれた千鳥状に配列されているため、外力による変形時に引張り側の外部保護カラー30の切れ目部30aが網目状に開いて組合せ式可撓管35の可撓性を確保できる。
【0050】
実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の製造方法によれば、以下の作用を有する。
(1)継手連結工程により、内側噛合い継手10の外周突起部13と外側噛合い継手20の内周突起部23とを互いに噛合せるだけで、連結作業を行うことができ組み立て作業性に優れる。
(2)連結部保護工程により、内側噛合い継手10の内周側及び外側噛合い継手20の外周側に内部保護カラー25及び外部保護カラー30をそれぞれ配設することで可撓管用噛合い継手1を保護できると共に、一体化された可撓管用噛合い継手1と内部保護カラー25及び外部保護カラー30の取り扱いが容易で施工性に優れる。
(3)内部止水工程により、内側噛合い継手10の内筒部12と内部保護カラー25との間に内部止水材38を充填するだけで、組合せ式可撓管35の可撓性を低下させることなく、可撓管用噛合い継手1の内周側を確実に止水することができる。
(4)外部止水工程により、外側噛合い継手20の外筒部22と外部保護カラー30との間に外部止水材39を充填するだけで、組合せ式可撓管35の可撓性を低下させることなく、可撓管用噛合い継手1の外周側を確実に止水することができる。
【0051】
(実施の形態2)
図9(a)は実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管を示す要部断面図であり、図9(b)は実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の変形状態を示す要部断面図である。
尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図9において、実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管35aが実施の形態1と異なるのは、内部保護カラー25aの円筒部25bの内周側に打設された補強コンクリート部37bを備えている点と、内部保護カラー25aの円筒部25bの端部に延設され補強コンクリート部37bの端部に覆設された端部保護板25cを備えている点と、内部保護カラー25aの外周及び内周に配設され円管37及び補強コンクリート部37bに埋設されたアンカー筋25dを備えている点である。
【0052】
端部保護板25cは内部保護カラー25aの内周側に円筒部25bと直交して環状に形成した。端部保護板25cの直径方向の幅は、成形する円管36,37の肉厚に応じて適宜、選択することができる。
また、内部保護カラー25aの円筒部25bの外周及び内周に沿ってアンカー筋25dを配設することにより、内部保護カラー25aと円管37及び補強コンクリート部37bとを確実に固定した。
尚、実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の製造方法は実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0053】
以上のように実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管によれば、実施の形態1の作用に加え、以下の作用を有する。
(1)他の円管37の開口部端面37aから延設され内部保護カラー25の内周側に配設された補強コンクリート部37bを有することにより、可撓管用噛合い継手1の内周側を補強コンクリート部37bで保護することができると共に、補強コンクリート部37bの先端部を内側噛合い継手10の環状板11に当接させて軸力を伝達することができるので、推進施工時に可撓管用噛合い継手1に加わる負荷を低減することができ、管径の大きな円管36,37でも推進施工を行うことができ信頼性に優れる。
(2)内部保護カラー25aの円筒部25bの端部に延設された端部保護板25cを有するので、内部保護カラー25の内周側に配設された補強コンクリート部37bの端部を保護することができ、推進施工時や変形時の外力等により補強コンクリート部37bの端部が削られる等して破損するのを防止でき、信頼性を向上させることができる。
(3)内部止水材38及び外部止水材39を介して一体化された可撓管用噛合い継手1と内部保護カラー25及び外部保護カラー30を型枠内にセットしてコンクリートを投入する際に、内側噛合い継手10の環状板11の内部保護カラー25a(内周)側の表面が端部保護板25cにより覆われるので、成形時に補強コンクリート部37bの先端が、内側噛合い継手10の環状板11に張り付くのを防止でき、剥離剤を塗布する必要がなく生産性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、部品点数が少なく簡単な構造で連結に特殊な部材や技術を必要とせず、組み立てが容易で高い水密性を確保することができる量産性に優れた可撓管用噛合い継手の提供、及び優れた可撓性を有し、連結部の破壊を防ぐ柔軟な配管を実現できると共に、推進施工時の軸方向力に耐えることができる信頼性に優れた組合せ式可撓管の提供、並びに、生産工数を大幅に低減できる組み立て作業性に優れた組合せ式可撓管の製造方法の提供を行うことができ、推進管や外圧管として好適に用いることができる可撓性を有するヒューム管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態1における可撓管用噛合い継手と内部保護カラー及び外部保護カラーを示す斜視図
【図2】実施の形態1における可撓管用噛合い継手を当接する管端部に配設した組合せ式可撓管を示す要部断面図
【図3】実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の曲げ変形状態を示す要部断面図
【図4】(a)実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管を示す要部側面図 (b)実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の曲げ変形状態を示す要部側面図 (c)図4(b)におけるA部拡大図
【図5】実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の継手連結工程を示す要部断面模式図
【図6】実施の形態1における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の継手保護工程を示す要部断面模式図
【図7】(a)外部止水材の充填状態を示す要部断面模式図 (b)外部止水材の変形状態を示す要部断面模式図
【図8】(a)内部止水材の充填状態を示す要部断面模式図 (b)内部止水材の変形状態を示す要部断面模式図
【図9】(a)実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管を示す要部断面図 (b)実施の形態2における可撓管用噛合い継手を用いた組合せ式可撓管の変形状態を示す要部断面図
【符号の説明】
【0056】
1 可撓管用噛合い継手
10 内側噛合い継手
11,21 環状板
11a,21a アンカー部
11b 内周当接部
11c 外周当接部
12 内筒部
13 外周突起部
20 外側噛合い継手
22 外筒部
23 内周突起部
25,25a 内部保護カラー
25b 円筒部
25c 端部保護板
25d,32 アンカー筋
26 固定用埋設部
30 外部保護カラー
30a 切れ目部
30b 接続部
31 止め金具
35,35a 組合せ式可撓管
36,37 円管
36a,37a 開口部端面
37b 補強コンクリート部
38 内部止水材
39 外部止水材
40,41,42,46 プライマー処理層
43 内周側空間部
44,48 間隔調整コマ
45 仮固定部材
47 外周側空間部
49,50,51 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)環状板と、前記環状板表面に直交して立設された内筒部と、前記内筒部の先端側外周に断続的に突設された外周突起部と、前記環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部と、を有する内側噛合い継手と、
(b)環状板と、前記環状板表面に直交して立設された外筒部と、前記外筒部の先端側内周に断続的に突設された内周突起部と、前記環状板の裏面に円周上に立設されたアンカー部と、を有する外側噛合い継手と、
を備えていることを特徴とする可撓管用噛合い継手。
【請求項2】
開口部端面に請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の内側噛合い継手が配設された一の円管と、開口部端面に請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の外側噛合い継手が配設され前記内側噛合い継手の前記外周突起部と前記外側噛合い継手の前記内周突起部が噛合わされて前記一の円管に連結された他の円管と、円筒状に形成され前記可撓管用噛合い継手の内周側に配設された内部保護カラーと、円筒状に形成され周方向及び/又は軸方向に断続的に形成された切れ目部を有し前記可撓管用噛合い継手の外周側に配設された外部保護カラーと、前記内側噛合い継手の前記内筒部の内周と前記内部保護カラーの外周との間に充填された内部止水材と、前記外側噛合い継手の前記外筒部の外周と前記外部保護カラーの内周との間に充填された外部止水材と、を備えていることを特徴とする組合せ式可撓管。
【請求項3】
前記内部止水材及び前記外部止水材が液状ゴムであることを特徴とする請求項2に記載の組合せ式可撓管。
【請求項4】
前記外部保護カラーの周方向に断続的に形成された前記切れ目部が前記外部保護カラーの中心軸の長手方向に複数列配置され隣接する前記切れ目部同士が周方向にずれた千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の組合せ式可撓管。
【請求項5】
前記他の円管の開口部端面から延設され前記内部保護カラーの内周側に配設された補強コンクリート部を備えていることを特徴とする請求項2乃至4の内いずれか1項に記載の組合せ式可撓管。
【請求項6】
前記内部保護カラーの端部に延設され前記補強コンクリート部の端部に覆設された端部保護板を備えていることを特徴とする請求項5に記載の組合せ式可撓管。
【請求項7】
請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の内側噛合い継手の外周突起部と請求項1に記載の可撓管用噛合い継手の外側噛合い継手の内周突起部とを互いに噛合せて連結する継手連結工程と、前記内側噛合い継手の内周側及び前記外側噛合い継手の外周側に請求項2乃至6の内いずれか1項に記載の内部保護カラー及び外部保護カラーをそれぞれ配設する継手保護工程と、前記内側噛合い継手の前記内筒部と前記内部保護カラーとの間に請求項2又は3に記載の内部止水材を充填する内部止水工程と、前記外側噛合い継手の前記外筒部と前記外部保護カラーとの間に請求項2又は3に記載の外部止水材を充填する外部止水工程と、前記内部止水材及び前記外部止水材により一体化された前記可撓管用噛合い継手と前記内部保護カラー及び前記外部保護カラーを型枠内にセットしてコンクリートを投入するコンクリート打設工程と、を備えていることを特徴とする組合せ式可撓管の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−56967(P2007−56967A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242149(P2005−242149)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【出願人】(500038662)麻生商事株式会社 (11)
【Fターム(参考)】