説明

可撓管継手用パッキング

【課題】 管体への密着性を向上させて、水密性を保持するとともに、管体の引き抜きを阻止する性能を向上した可撓管継手を提供する。
【解決手段】 建物の排水管などの管体の接続用管継手に使用するもので、管体の外面と継手部の内面との間に介装するため、弾性材によって形成されたパッキングについて、管体11の外面に嵌合可能な環状部21と、環状部21の一端から軸方向へ延びる一端部分22と、環状部21の他端から軸方向へ延びる他端部分23とを有するパッキング本体20を具備し、ボルト16による継手部18の接続時に、継手部18に設けられている内側斜面19と管体外面との間に介在する剛体球25を、上記一端部分22の周方向に複数個設け、かつ一端部分22が独立的に動き得るようにスリット26を設けて分割した構成を有する可撓管継手用パッキング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の排水管などの管体を接続する管継手に使用するもので、管体の外面と継手部の内面との間に介装するため、弾性材によって形成されたパッキングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水鋼管用等に適用される可撓管継手に用いられるパッキングには、パッキング本体内に剛体球を配置して、耐引き抜き力を高めたものがある(実登第3099370号)。この方式の継手では耐引き抜き力は優れているが、継手にかかる圧力を従来よりも高圧にした場合、管の抜ける進行速度が早くなるという問題があった。
【0003】
またこの種の管継手は、建物における汚水、雑排水の排水管に使用され、地震などによる建物の振動に対する可撓性、管の熱による膨張、収縮の吸収性などに対応するために、可撓性を備えているものであるが、従来の方式の継手では、管の変動に対する追従性能が必ずしも十分でない。例えば、継手部の緊締によりパッキング本体が圧縮されてしわのよったようになり、水密性が低下する原因になるとか、管の引き抜き力に対抗する作用が不足するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】実登第3099370号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目してなされたものであり、その課題は、管体への密着性を向上させて、水密性を保持するとともに、管体の引き抜きを阻止する性能を向上した可撓管継手用パッキングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、建物の排水管などの管体を接続する管継手に使用するもので、管体の外面と継手部の内面との間に介装するため、弾性材によって形成されたパッキングについて、管体の外面に嵌合可能な環状部と、環状部の一端から管軸方向へ延びる一端部分と、環状部の他端から管軸方向へ延びる他端部分とを有するパッキング本体を具備し、ボルトによる継手部の締結時に、継手部に設けられている内側斜面と管体外面との間に介在する剛体球を、上記一端部分の周方向に複数個設け、かつ一端部分が独立的に動き得るようにスリットを設けて分割するという手段を講じたものである。
【0007】
本発明に係るパッキングは、管体の外面と継手部の内面との間に介装して使用され、水密性能を発揮するために弾性材によって形成される。従って、パッキングには例えばニトリルゴム(NBR)などの合成樹脂材料のような弾性材が適している。パッキングにはまた天然ゴム系の弾性材も使用され得る。なお、管体は鋼管製、継手部はねずみ鋳鉄(FC)、ダクタイル鋳鉄(FCD)等の鋳鉄製品製のものを使用することを想定しているが、これらに限定されるものではない。
【0008】
本発明に係るパッキングは、パッキング本体を具備し、パッキング本体は、環状部と、環状部の一端から管軸方向へ延びる一端部分、及び環状部の他端から管軸方向へ伸びる他端部分を有している。環状部は、管体の外面に嵌合可能なもので、パッキングとして止水効果を発揮する主要部分であり、継手部によって圧縮される部分である。そのパッキング本体は、環状部の両方の端部を夫々一端部分、他端部分としている。
【0009】
剛体球は、継手部の内側斜面と管体外面との間に介在するものであり、パッキング本体の一端部分に設けられる。剛体球は、パッキング本体に固定されるとともに、そこから外方及び内方に一部が突き出ており、従って継手部の内側斜面及び管体外面に接触可能な構造になっている。なお、剛体球は金属製を想定しており、その一部がパッキング本体の一端部分から露出するか或いはパッキング本体の弾性材によって覆われた状態かのどちらかの状態を取る。
【0010】
パッキング本体の一端部分の周方向に複数個このような剛体球が設けられ、かつまた、一端部分が独立的に動き得るようにスリットによって分割される。逆に言えば、パッキング本体の一端部分がスリットによって複数部分に分割されており、分割各部分に剛体球を設けている、ということになる。分割部分の数と剛体球の個数とは一致する(1分割部分に付き剛体球1個)か、或いは剛体球の個数を分割部分の倍数とする(1分割部分に付き剛体球2個又は3個以上)ことができる。なお、剛体球はパッキング本体に動かないように固定されていることが望ましい。
【0011】
パッキング本体は、管体の外面に面接触可能であり、かつ他端部分の方向へ傾斜したヒダ部を内周面に設けることができる。ヒダ部は、管体の外面に面接触することにより、管体に働く引き抜き力に対抗するもので、そのために、環状部の内周面に他端部分の方向へ傾斜させてあり、引き抜き力によってヒダ部が一端部分の方向へ移動しようとするときには、ヒダ部がめくれなければならず、めくれるときに環状部へ食い込むことにより引き抜きを阻止するように作用する。
【0012】
パッキング本体は、管体の端部を覆うように係止する係止端部を他端部分に有していることが望ましい。係止端部は、管端を覆うことにより防食作用を発揮し、管体と継手部とを接触させないため当たり音の発生を防止するとともに、隙間確保のために樹脂の充填も不要とし、継手に可撓性を保持せしめる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のように構成されかつ作用するものであるから、管体への密着性が向上して、継手部を緊締してもパッキング本体をしわがよったように変形させず、水密性を保持することができ、また、ヒダ部により管体に対する引き抜き阻止力を向上することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図示の実施形態を参照して本発明に係る可撓継手用パッキングの実施形態を説明する。各図において、11は管体、12は継手管であり、継手管12は、管体内径と同径の中央部13を有し、かつ両端にフランジ部14、14′を有しており、フランジ部14、14′には継手リング15が組み合わされている。フランジ部14、14′及び継手リング15にはボルト孔が設けられており、ボルト16を挿通しナット17とともに緊締することができる。継手管12と継手リング15とは本発明における継手部18を構成する。継手部18の内周には、本発明に係るパッキングを取り付けるパッキング配置部が設けられており、継手リング15の内周には内側斜面19として、継手部18の外方へ向かってテーパー状となる斜面が設けられている。なお、ナット17は、継手リング15のボルト孔に雌ねじを設けて代用することも可能であるから必須ではない。
【0015】
パッキング本体20は、管体11の外面に嵌合可能な環状部21と、環状部21の一端から管軸方向へ延びる一端部分22と、環状部21の他端から管軸方向へ延びる他端部分23とから成り、これに、剛体球25等を設けて構成されている。剛体球25は、図2に示されているように12個が周方向に等間隔でパッキング本体20の一端部分22に取り付けられており、各剛体球25はテーパー状断面を有する一端部分22の取り付け部よりも大径であるので、内面側、外面側ともに露出し、管体11の外面及び継手リング15の内側斜面19に接触可能になっている。各剛体球25を設けた一端部分22は、スリット26によって1個ごとに分割されている。例示のスリット26は逆テーパー状に形成さ
れ、かつスリットの底に当たるスペース部分27にて隣りの一端部分同士が完全に離れており、パッキング本体20の圧縮じわの発生を防止し、管体11の位置変動に対する追従性能を向上するように意図されている。
【0016】
パッキング本体20は、また、ヒダ部28を環状部21の内周面に有している。図1のものは、図5に示すように、管体11の外面に面接触可能であり、かつ環状部21の他端部分23の方向へ端部が傾斜したヒダ部28を管軸方向に2個設けた例であり、2段階に作用を発揮する。図6はヒダ部28を3個設けた例であり、これらによりヒダ部28は個数を限定しないことを示している。1個でも良いことは勿論である。
【0017】
パッキング本体20の他端部分には、管体11の端部に、覆うように係止する係止端部29が設けられている。係止端部29は、環状部21の他端部分23の先端に位置しており、他端部分23は薄膜状であるので伸縮性が良好であり、環状部21及び係止端部29が夫々所期の位置に配置されることを妨げない。なお、パッキング本体20の環状部21は管体11と継手部18との間を埋めて水密性を発揮する肉厚のほぼ台形状の断面形状を有している(図5、図6参照)。
【0018】
このような構成を有する本発明のパッキングを使用して可撓管継手30を施工するに
は、予め管体11に継手リング15を嵌め合わせ、次いでパッキング本体20を管体11に同様に嵌め合わせる。その際、係止端部29が管体11の端部を確実に覆うように注意し、パッキング本体20の一端部分22が継手リング15の内側斜面19と管体外面との間に入り込むようにする。さらに、パッキング本体20の外側を覆うよう継手管12に嵌め合わせ、そのフランジ部14と前記継手リング15のボルト孔にボルト16を差し込
み、かつナット17を螺合して締結作業を行う。
【0019】
ボルト16、ナット17の緊締により、継手リング15にパッキングの一端部分22が押し込まれる結果、内側斜面19によって剛体球25が管体11の外面に加圧され食い込む状態となる(図1参照)。このような締結状態になると、継手リング15とフランジ14に挟まれているパッキング本体20の環状部21も変形を生じることになる。ボルト16、ナット17の緊締により圧縮を受けている環状部21もスリット26により圧縮変形が吸収されるので、しわのよったようになることがなく、ここに水密な継手を完成する。また、継手管12と管体11とが管軸方向からずれる相対移動を起しても、スリット26により圧縮と伸張が調整され、所期の水密性が保持される。さらに、相対移動が管軸方向のものである場合、引き抜きに対しては、管体外面に圧接しているヒダ部28が抜けに対抗し、押し込みに対しては係止端部29が間に介在して管端の当たりを防止するように作用する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る可撓管継手用パッキングの実施例を示す縦断面図。
【図2】同じくパッキングの一端部分側の端面図。
【図3】同じくパッキングの側面図。
【図4】同じくパッキングの他端部分側の端面図。
【図5】図2のV−V線断面図。
【図6】ヒダの変形例を示す図5と同様の断面図。
【符号の説明】
【0021】
11 管体
12 継手管
14、14′ フランジ部
15 継手リング
16 ボルト
18 継手部
19 内側斜面
20 パッキング本体
21 環状部
22 一端部分
23 他端部分
25 剛体球
26 スリット
28 ヒダ部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の排水管などの管体を接続する管継手に使用するもので、管体の外面と継手部の内面との間に介装するため、弾性材によって形成されたパッキングであって、管体の外面に嵌合可能な環状部と、環状部の一端から管軸方向へ延びる一端部分と、環状部の他端から管軸方向へ延びる他端部分とを有するパッキング本体を具備し、ボルトによる継手部の締結時に、継手部に設けられている内側斜面と管体外面との間に介在する剛体球を、上記一端部分の周方向に複数個設け、かつ一端部分が独立的に動き得るようにスリットを設けて分割した構成を有する可撓管継手用パッキング。
【請求項2】
パッキング本体は、管体の外面に面接触可能であり、かつ他端部分の方向へ傾斜したヒダ部を環状部の内周面に有している請求項1記載の可撓管継手用パッキング。
【請求項3】
パッキング本体は、管体の端部を覆うように係止する係止端部を他端部分に有している請求項1記載の可撓管継手用パッキング。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−46620(P2006−46620A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232525(P2004−232525)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000118590)伊藤鉄工株式会社 (13)
【Fターム(参考)】