説明

可溶化剤として酸を含むアルガトロバン処方物

脱水アルコールを実質的に含まないアルガトロバンを可溶化するために酸を含む溶液中にトロンビンインヒビターであるアルガトロバンの水性の安定な滅菌薬学的組成物、およびその調製のための方法が記載される。本発明は特に、非経口投与に適切な、トロンビンインヒビターの、無水アルコールを実質的に含まず、そして3.5〜8.5の間のpHを有する、水性の安定な滅菌薬学的組成物であって、溶液中に:a.0.1〜10mg/mLの1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン);およびb.該アルガトロバンを可溶化するための酸、を含む、薬学的組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般名「アルガトロバン」で一般に知られる、1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物の新規な薬学的組成物に関する。アルガトロバンは、L−アルギニン由来の合成の直接的トロンビンインヒビターであり、有用な抗凝固剤である。
【背景技術】
【0002】
アルガトロバンは、溶質のUSP分類によると水にわずかに可溶性〜ごくわずかに可溶性であると考えられ、0.8〜0.9mg/mLのオーダーの溶解度をもつ。それはまた、光および熱感受性であり、そして安定化されなければ分解する傾向にある。アルガトロバンは、無菌充填バイアル中に1mLあたり、100mgのアルガトロバン、750mgのD−ソルビトールおよび1000mgの無水アルコールを含む濃縮形態で市販され入手可能である。患者に投与されるとき、この処方物は、塩化ナトリウムまたはデキストロースのような浸透圧剤を含む混合希釈溶液中1.0mg/mLの濃度まで希釈される(特許文献1を参照のこと)。
【0003】
アルガトロバンのその他の処方物は、特許文献2および特許文献3、特許文献4および特許文献5ならびに特許文献6に記載されている。
【特許文献1】米国特許第5,214,052号明細書
【特許文献2】米国特許第5,679,690号明細書
【特許文献3】米国特許第6,087,375号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0,565,897号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0,621,036号明細書
【特許文献6】国際公開第WO2005/009361号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、非経口投与に適切な、トロンビンインヒビターの、無水アルコールを実質的に含まず、そして3.5〜8.5の間のpHを有する、水性の安定な滅菌薬学的組成物を提供し、溶液中に、0.1〜10mg/mLの1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン)、およびこのアルガトロバンを可溶化するための酸を含む。この組成物は、必要に応じて、pHの維持を補助する緩衝剤、および注入特性を高めるための浸透圧調整剤をさらに含み得る。この組成物は、貯蔵安定(光および熱の両方)であり、無菌的充填かつ熱滅菌が可能であり、そしてすぐに使える濃度から、投与の前に希釈を必要とする濃縮物までの範囲の濃度でアルガトロバンを含む。本発明のさらなる局面では、アルガトロバンの前述の処方物を、アンプル、バイアル、シリンジまたは注入バッグのようなシールされた容器中に調製するため、およびこの組成物を滅菌するのに十分な時間オートクレーブ処理するための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は、高められた水溶解度をもつアルガトロバン、そして必要に応じて薬学的に受容可能な緩衝剤および溶液の張性を調整する浸透圧調整剤を含む無菌の安定な非経口組成物を提供する。この組成物は、無菌的に充填されるか、または、好ましくは、処方物の微生物学的負荷量を減少するために最後に滅菌にかけられ得るシールされた容器中にパッケージされる。本発明は、加水分解的分解およびその他の不都合な化学反応に対し安定であり、そして、例えば、アルミニウムオーバーパウチで適切にパッケージされるとき、光分解性の分解に対して安定である。
【0006】
水溶液中のアルガトロバンの高められた溶解度は、酸の添加によって達成される。これらの酸は、代表的には、0.01〜3Nのオーダーを意味する希釈物である。任意の理論に制限されることは望まないが、この酸(有機または無機のいずれでもあり得る)は、アルガトロバンの「イオン性液体」またはin−situの塩溶液を形成すると考えられる。これは、イオン性液体および塩の対イオンをいい、ここで、これらイオンは、乏しくまたはランダムに整列され、そして/または配位されている。このイオン性液体/in−situの塩溶液は、その対イオンによって安定化された薬物分子中の非局在化された荷電状態、または共鳴をもつイオンを有し得る。この効果は、0.1〜10mg/mL、より一般的には0.8〜10mg/mLの範囲の可溶性を有するアルガトロバンの安定溶液が、エタノール、糖類、界面活性剤、長鎖脂肪酸、シクロデキストリン誘導体、カフェインのような、溶媒またはさらなる可溶化剤および/または安定化剤が実質的にないにもかかわらず、可能であることである。この溶液は、室温で少なくとも24ヶ月熱動力学的に安定であり、本質的に有意な分解がなく、そして適切なpH範囲のままである。
【0007】
表1は、希酸中のアルガトロバンの高められた溶解度の要約を提供する。
【0008】
【表1】

本出願の文脈で用いられるとき、「安定」は、患者への投与のために適切である状態または条件にあることを意味する。本発明による処方物は、室温で少なくとも24ヶ月維持されるとき、安定であることが見出され、そして室温で24〜36ヶ月の間ほぼ安定である。
【0009】
本出願の文脈で用いられるとき、「滅菌」組成物は、滅菌の状態にもたらされ、そして次に微生物学的汚染に曝されていない、すなわち、滅菌組成物を保持する容器が損なわれていない組成物を意味する。滅菌組成物は、一般に、米国食品医薬品局の現在のGood Manufacturing Practice(「cGMP」)に準拠する薬品製造業者によって調製される。
【0010】
製品は、注入のために、滅菌された、安定なすぐに使用できる処方物の形態をとり得る。これは、注入の前に、濃縮されたアルガトロバンの小容量の非経口処方物を注入希釈剤に希釈する不便さを避け、ならびに無菌的取り扱いの間の微生物汚染のリスクおよび任意の可能な計算または希釈の誤りをなくす。濃縮物から調製されないこのような処方物は、糖成分、例えば、D−ソルビトール、および無水アルコール成分、例えば、無水エタノールを本質的に含まない。この製品はまた、投与の前に希釈されなければならない濃縮処方物の形態をとり得る。
【0011】
本発明の水性の滅菌された安定な薬学的組成物は、患者への非経口投与のために適切である。例えば、この組成物は、ボーラス注入または静脈内注入の形態で投与され得る。非経口投与のための適切な経路は、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、および鞘内を含む。本発明のすぐ使用できる処方物は、好ましくは、静脈内注入により投与される。
【0012】
本発明による適切な容器は、当業者に公知である。これらは、バイアル、シリンジ、注入バッグ、ボトルおよびアンプル体裁を含む。容器は、ガラスから、またはポリマー材料から製作され得る。すぐ使用できる処方物は、代表的には、バイアル、シリンジ、注入バッグおよびボトル中にパッケージされ、その一方、濃縮された処方物は、代表的には、アンプル中にパッケージされ得る。
【0013】
本発明の組成物は、公知の技法により凍結乾燥され得、そして次に投与の前に再構成される。酢酸のようなこの組成物中の特定の酸は、揮発性であり得、そして凍結乾燥の間に部分的に失われる。これらの場合には、それらは、再構成された溶液中に補充される。
【0014】
アルガトロバンの分解に対するpHの影響は、55℃で5つの水性緩衝液中で調査された。すべての緩衝溶液は、USP標準緩衝溶液に従って、注射用蒸留水中で調製される。5つの緩衝溶液は、pH2.01、5.0、7.4、8.02および11.05で調製される。各レベルについて、1mg/mLのアルガトロバンが正確に秤量され、そして較正されたフラスコに移される。この緩衝溶液は、完全に溶かすために適切に混合してフラスコに添加され、そして次に容量に希釈される。5つすべての溶液のサンプルは、琥珀色ガラス中に貯蔵され(光からの保護のため)、そして55℃で保持される。サンプルを所定の間隔で引き抜き、そして次に溶液のpH、有効性および物理的外観について分析する。
【0015】
この薬物の濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定される。得られたデータは、速度反応が見かけの一次(kobserved)であると仮定して、時間に対する薬物濃度の対数としてプロットされる。種々のpHに対する55℃の加速された温度でのアルガトロバンの分解速度がモニターされ、そして図表示が図1に示される。kobservedは、直線回帰線の傾きから算出され、そして分解速度における最大変化は、低pH値および高pH値の両方(pH2.0および11.05)にある。この研究における最低のkobservedは、pH5.0〜約pH8.0の範囲で見られ、この組成物のこのpHが、最大の安定性のために制御されるべきである。これらの結果は、pHは3.5と8.5との間、好ましくは4.5と6.5との間、より好ましくは約4.5〜5.5との間であるべきことを示す。pHは、当該技術分野で公知のように、水酸化ナトリウムまたは酢酸の添加により調整され得る。
【0016】
アルガトロバン注入のすぐ使用できる処方物は、水性媒体中のこの製品の貯蔵寿命を予測するためにストレス研究に供する。最小分解での121℃で20分間のオートクレーブサイクルの後、アルガトロバン組成物の溶液を、25℃、40℃および55℃で(光から保護して)6ヶ月の期間の間貯蔵する。これら溶液のpH、有効性、粒子状物質および物理的外観が決定される。薬物の濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定される。この研究から得たデータは、安定化効果はpH5.0±0.5で最大になり、そしてこの研究された期間に亘る40℃での総分解物の変化は、1%未満であることを示す。得られた安定性データの回帰および外挿は、室温(25℃)で24ヶ月よりは少なくない水性組成物の貯蔵寿命を示唆する。図2は、時間の関数として種々の温度条件下の1mg/mLアルガトロバン注入物についての溶液安定性のプロットである。
【0017】
さらに、本発明のアルガトロバン組成物が特定のタイプの容器中で貯蔵されるとき緩衝剤が必要でないことが決定された。なぜなら、このアルガトロバン組成物は固有に安定であるからである。適切なこのような容器は、アルガトロバン組成物と接触するその表面が、代表的にはアルカリである浸出性物質を含まないようなものである。1つのこのような適切な容器は、Baxter Healthcare CorporationのIntraVia(登録商標)可撓性プラスチック容器である。緩衝剤が用いられない場合のこの組成物のpHは、ほぼ約4.5〜5.5の範囲である。
【0018】
アルガトロバンは、本発明の組成物中に0.1〜10mg/mLの範囲の量で存在する。すぐに使用できる処方物は、0.5〜10mg/mL、より一般的には約1mg/mLのアルガトロバンを含み得る。
【0019】
このアルガトロバンを可溶化するために用いられる酸は、有機または無機であり得る。適切なこのような酸は、リン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、ギ酸、リンゴ酸、塩酸およびそれらの混合物を含む。それらは、代表的には、水性環境中の対イオン安定性のイオン化および会合の程度に依存して0.01〜3Nまでの範囲の濃度でこの溶液中で採用される。好ましい酸は酢酸であり、そして0.5〜6mg/mLの範囲の量で存在する。
【0020】
適切な生理学的に受容可能な緩衝剤は、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩およびグリシンを含み、酢酸塩が好ましい。好ましい緩衝系は、酢酸ナトリウムと酢酸塩との組み合わせを含む。緩衝剤は、アルガトロバンの濃度に依存する濃度で組成物中に存在する。この濃度は、代表的には、0.5〜10mg/mLアルガトロバンを含む処方物について、0.05〜200mM、そして10〜100mMの範囲である。
【0021】
適切な浸透圧調整剤は、用いられるとき、本発明の処方物のpH要求と適合し、そして塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、デキストロースおよび乳酸ナトリウムの1つ以上を含む。好ましいのは、塩化ナトリウムおよびデキストロースである。本発明の処方物は、1〜100mg/mLの浸透圧調整剤;好ましくは4〜60mg/mLの塩化ナトリウム、より好ましくは4〜10mg/mLの塩化ナトリウム;または5%(重量対重量)を超えないレベルで、代表的には25〜60mg/mLの範囲の量のデキストロースを含み得る。
【0022】
本発明による処方物は、小容量非経口(SVP)および大容量非経口(LVP)投薬量形態に調製され得る。これらの投薬量形態は、任意の適切な容器中に保持され得る。適切な容器は、例えば、1ml〜500mlの範囲のサイズのガラスまたはポリマーバイアル、アンプル、シリンジまたは注入バッグを含む。SVPのすぐ使用できる溶液は、代表的には、1〜100mL体裁のアンプルおよびバイアル中に充填される。さらに、シリンジがすぐ使用できるSVPのための容器として用いられ得、これは、「予備充填シリンジ」として販売されている。LVP体裁は、注入バッグまたはボトルに含まれ得る。
【0023】
ポリマー容器は、好ましくは可撓性であり、そしてポリ塩化ビニル(PVC)を含んでも良いし、または含まなくても良い。好ましい容器は、米国特許第5,849,843号および同第5,998,019号に開示されるもののように、PVCを含んでいいない。ポリマー容器は、貯蔵の間に水の損失を防ぎ、そして上記処方物の安定性をさらに確実にするために第2のパッケージングシステムとして湿気バリアがさらに提供され得る。好ましい湿気バリアは、アルミニウムオーバーパウチであり、これもまた、上記組成物をタンパク質分解性の分解から保護する。
【0024】
本発明の組成物を容器中に充填するための手順、およびそれらの引き続く処理は、当該技術分野で公知である。これらの手順は、ヘルスケアのためにしばしば要求される滅菌薬学的薬物を生成するために用いられる。このような処理技法は、好ましくは、調製後のアルガトロバン処方物に存在し得る任意の微生物を破壊またはなくすための滅菌プロセスを用いる。例えば、最終的な熱滅菌は、アルガトロバン処方物の最終のシールされた容器内のすべての生存微生物を破壊するために用いられ得る。オートクレーブが、それらの最終パッケージング中の薬物製品の最終的な熱滅菌を達成するために共通して用いられる。
【0025】
最終製品の最終的な滅菌を達成するための製薬産業における代表的なオートクレーブサイクルは、121℃15分間である。本発明のアルガトロバン組成物は、受容可能な安定性とともに、115〜130℃の範囲の温度で、5〜40分間の範囲の時間オートクレーブされ得る。オートクレーブ処理は、好ましくは、119〜122℃の温度範囲で、10〜36分の範囲の時間実施される。
【0026】
あるいは、本発明による滅菌薬学的組成物は、無菌処理技法を用いて調製され得る。無菌充填は、熱滅菌には耐えないが、その中ですべての成分が滅菌されている薬物製品を調製するために通常用いられる。無菌は、滅菌材料および制御された作業環境を用いることによって維持される。すべての容器および装置は、充填の前に、好ましくは熱滅菌によって滅菌される。容器(例えば、バイアル、アンプル、注入バッグ、ボトル、またはシリンジ)は、次いで、無菌条件下で充填される。
【0027】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、いかなる方法でもその範囲を制限すると解釈されるべきではない。各事例では、1mg/mL処方物が調製される。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
アルガトロバン 1mg
酢酸、USP 0.546mg
酢酸ナトリウム三水和物、USP 2.8mg
NaCL、USP浸透圧調整剤 5.9mg
酢酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例2)
アルガトロバン 5mg
酢酸、USP 0.546mg
NaCL、USP浸透圧調整剤 5.9mg
酢酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例3)
アルガトロバン 1mg
リン酸、USP 8.5mg
リン酸ナトリウム 1.8mg
NaCL、USP浸透圧調整剤 5.9mg
酢酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例4)
アルガトロバン 10mg
塩酸 0.146mg
NaCL、USP浸透圧調整剤 5.9mg
HClまたはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例5)
アルガトロバン 1mg
酒石酸、USP 12.3mg
NaCL、USP浸透圧調整剤 5.9mg
酒石酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例6)
アルガトロバン 5mg
クエン酸、USP 15mg
クエン酸ナトリウム 1.2mg
NaCl、USP浸透圧調整剤 5.9mg
クエン酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例7)
アルガトロバン 1mg
酢酸、USP 0.546mg
酢酸ナトリウム三水和物、USP 2.8mg
デキストロース、USP浸透圧調整剤 50mg
酢酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例8)
アルガトロバン 5mg
酢酸、USP 0.546mg
酢酸ナトリウム三水和物、USP 2.8mg
(浸透圧調整剤なし)
酢酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(実施例9)
アルガトロバン 5mg
ギ酸、USP 3.6mg
NaCl、USP浸透圧調整剤 5.9mg
ギ酸またはNaOH 必要に応じてpHを調整するため
注射用蒸留水、USP 適量
オートクレーブサイクル=121℃、2〜20分間
(手順)
調合、フィルター処理、および充填するための器具およびガラス製品は、適正に洗浄および発熱物質除去処理される。フィルターアセンブリ、充填チューブアセンブリ、およびその他のパーツおよび器具は滅菌される。
【0029】
最終容量の80%の冷却注射用蒸留水が較正調合タンクに集められる。塩化ナトリウムをタンクに添加し、そしてこの溶液を塩化ナトリウムが溶解されるまで攪拌する。次いで、酢酸ナトリウムをタンクに添加し、すべての賦形剤が溶解されるまで攪拌する。このタンクを、注射用蒸留水で最終容量の90%まで調整し、そして混合する。約1.08グラムの酢酸を2リットルの水に添加し、アルガトロバンのスラリー溶液を調製する。アルガトロバンを、2リットルの酸性水に秤量し、スラリー溶液を形成する。このスラリーを次いで、調合タンクに添加し、そしてこの溶液を混合する。溶液を、次いで、必要に応じて、1N水酸化ナトリウムまたは酢酸でpH5.5に調整する。この溶液を、注射用蒸留水で最終容量にし、そして混合する。
【0030】
この溶液を、次いで、250mlの非PVC可撓性バッグ(1つの標準PL 146.RTM.PVCメンブレンチューブ、1つのPL 2409−3多層プラスチック同時押出し投与ポートチューブ、1つのPL 141 PVCブルーチップ閉鎖物(投与ポートプロテクター)を備えたIntra Via(登録商標)可撓性プラスチック容器(PL 2408−3非−PVC多層プラスチックフィルム)、Baxter Healthcare Corporationから入手可能)中に充填する。これらのバッグは、アルミニウムホイールオーバーパウチ中にシールされる。これら製品を、次いでオートクレーブ処理滅菌器に入れ、そして121℃で20分間滅菌する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、55℃で貯蔵された時間(週)の関数としてのアルガトロバン含量に対するpHの影響のグラフ表示である。
【図2】図2は、時間の関数として、種々の温度条件下の1mg/mLアルガトロバン注入物に対する溶液安定性のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口投与に適切な、トロンビンインヒビターの、無水アルコールを実質的に含まず、そして3.5〜8.5の間のpHを有する、水性の安定な滅菌薬学的組成物であって、溶液中に:
a.0.1〜10mg/mLの1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン);および
b.該アルガトロバンを可溶化するための酸、を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
さらに:
c.緩衝剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
さらに:
d.浸透圧調整剤を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記酸が、リン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸、ギ酸、リンゴ酸および塩酸の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記緩衝剤が、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、酒石酸、安息香酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩およびグリシンの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記浸透圧調整剤が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、デキストロースおよび乳酸ナトリウムの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記組成物が、熱滅菌された容器中に提供される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記熱滅菌された容器が、バイアル、アンプル、シリンジ、注入バッグまたはボトルである、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
非経口投与に適切な、トロンビンインヒビターの、無水アルコールを実質的に含まない、水性の安定な滅菌薬学的組成物であって、溶液中に:
a.0.5〜10mg/mLの1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン);
b.該アルガトロバンを可溶化するための0.01〜3Nの酸;
c.溶液を約4.5〜5.5のpHに維持するための緩衝剤;および
d.1〜100mg/mlの浸透圧調整剤、を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
1mLあたり、
a.1〜10mg/mLの1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン);
b.該アルガトロバンを可溶化するための0.5〜6mgの酢酸;
c.溶液を約4.5〜5.5のpHに維持するための緩衝剤;および
d.1〜100mgのNaCl浸透圧調整剤、を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
非経口投与に適切な、トロンビンインヒビターの、無水アルコールを実質的に含まず、そして3.5〜8.5の間のpHを有する、水性の安定な滅菌薬学的組成物を調製する方法であって:
a.0.5〜10mg/mLの1−[5−[(アミノイミノメチル]アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン);および
b.該アルガトロバンを可溶化するための酸、を含む水溶液を、シールされた容器中に形成する工程、および
該組成物を滅菌するのに十分な時間の間オートクレーブ処理する工程、を包含する、方法。
【請求項12】
前記溶液がさらに:
c.緩衝剤およびd)浸透圧調整剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液が:
a.0.5〜10mg/mLの1−[5−(アミノイミノメチル)アミノ]−1−オキソ−2−[[(1,2,3,4−テトラヒドロ−3−メチル−8−キノリニル)スルホニル]アミノ]ペンチル]−4−メチル−2−ピペリジンカルボン酸水和物(アルガトロバン);
b.該アルガトロバンを可溶化するための0.01〜3Nの酸;
c.溶液を約4.5〜5.5のpHに維持するための緩衝剤;および
d.1〜100mg/mlの浸透圧調整剤、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
オートクレーブ処理が、115〜130℃の範囲の温度で、5〜40分の範囲の時間実施される、請求項11または13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−507018(P2009−507018A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529147(P2008−529147)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/033432
【国際公開番号】WO2007/027565
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(504375581)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (26)
【Fターム(参考)】