説明

可溶化蜂の子処理物、その製造方法、並びに可溶化蜂の子処理物を含有する医薬品、化粧品又は飲食品

【課題】水に対する溶解性を高めた可溶化蜂の子処理物、並びに可溶化蜂の子処理物を含有する医薬品、化粧品又は飲食品を提供する。
【解決手段】本発明の可溶化蜂の子処理物は、蜂の子を、プロテアーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することにより得られることを特徴とする。プロテアーゼ処理に用いるプロテアーゼとしては、例えば、バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼ、バチルス・リケニフォルミス由来のアルカリ性プロテアーゼが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分をプロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる可溶化蜂の子処理物、その製造方法、並びに可溶化蜂の子処理物を含有する医薬品、化粧品又は飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蜂の子は、ミツバチ、スズメバチ、クマバチ、アシナガバチ等の蜂の幼虫や蛹であり、一部の地域においては食用として用いられている。また、蜂の子はタンパク質、脂肪及び炭水化物等の栄養素をバランスよく豊富に含有するとともに、血流改善作用や滋養強壮作用等、種々の生理作用を有していることが知られ、漢方薬や健康食品の素材としても扱われている。例えば、特許文献1には、女王蜂の幼虫を粉末状に加工して得られる蜂の子粉末が開示されている。特許文献1の蜂の子粉末は、女王蜂の幼虫を熱処理した後に水分含量が10%以下となるまで乾燥させ、得られた乾燥幼虫を粉末化することにより調製される。
【特許文献1】特開2001−204421
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の蜂の子粉末は、そのまま水に溶解させた場合、容易に溶解しないという問題があった。そのため、例えば飲料品として適用する場合に、蜂の子粉末を高濃度で配合させることができず、水溶液、例えば飲料品への適用が非常に困難であった。この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水に対する溶解性を高めた可溶化蜂の子処理物、その製造方法、並びに可溶化蜂の子処理物を含有する医薬品、化粧品又は飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の可溶化蜂の子処理物は、蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することにより得られることを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の可溶化蜂の子処理物は、蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することにより得られることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の可溶化蜂の子処理物は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記プロテアーゼ処理は、バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼ及びバチルス・リケニフォルミス由来のアルカリ性プロテアーゼから選ばれる少なくとも一種を用いて処理されることを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の可溶化蜂の子処理物は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記可溶化蜂の子処理物は、アレルギー性が低減されていることを特徴とする。
請求項5に記載の可溶化蜂の子処理物の製造方法は、蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の可溶化蜂の子処理物の製造方法は、蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理、セルラー
ゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することを特徴とする。
【0009】
請求項7に記載の可溶化蜂の子処理物の製造方法は、請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記プロテアーゼ処理は、バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼ及びバチルス・リケニフォルミス由来のアルカリ性プロテアーゼから選ばれる少なくとも一種を用いて処理されることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載の医薬品、化粧品又は飲食品は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の蜂の子処理物を含有することを特徴とする。
請求項9に記載の飲食品は、請求項8に記載の発明において、アレルギー低減飲食品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水に対する溶解性を高めた可溶化蜂の子処理物、その製造方法、並びに可溶化蜂の子処理物を含有する医薬品、化粧品又は飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の可溶化蜂の子処理物を具体化した実施形態を説明する。なお、以下では、可溶化蜂の子処理物を単に蜂の子処理物として記載する。
本実施形態において使用される蜂の子としては、蜂の幼虫及び蜂の蛹から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。これら蜂の幼虫及び蛹は、雌雄のいずれであってもよく、また、ミツバチ、スズメバチ、クマバチ、アシナガバチ等いずれの蜂の幼虫及び蛹であってもよい。さらに、本実施形態で使用される蜂の子の産地は、中国、台湾、日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、南アメリカ諸国のいずれでもよい。
【0013】
本実施形態の蜂の子処理物は、蜂の子(蜂の子を粉末状に加工した蜂の子粉末、生の蜂の子を含む)、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分(すなわち、主成分が水である抽出溶媒に対する不溶性の画分(抽出残渣))が原料として使用される。蜂の子を粉末化する方法としては、従来用いられているいずれの方法を採用してもよく、例えば、特許文献1に開示される方法が挙げられる。また、生の蜂の子を原料として使用する場合には、すり潰す等してペースト状に前処理しておくことが好ましい。また、蜂の子の主成分が水である抽出溶媒に対する不溶性の画分を得る場合において、溶媒の温度は特に限定されない。なお、抽出操作は、所定温度下で攪拌しながら数時間程度行えばよい。そして、溶媒溶解成分を抽出した後、濾過及び遠心分離などの公知の固液分離方法を適用することにより、蜂の子から主成分が水である溶媒に対する不溶性の画分を得ることができる。
【0014】
ここで、主成分が水である抽出溶媒とは、溶媒中の存在割合(容量%)が最も高い成分が水である溶媒を意味している。そして、溶媒中における水の含有量は、50容量%以上であることが好ましい。また、水以外の成分として、例えばエタノール等の親水性有機溶媒を少量含有していてもよい。
【0015】
本実施形態の蜂の子処理物の製造工程は、まず、蜂の子粉末、生の蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出して得られる不溶性成分(以下、これらを総じて蜂の子原料という。)について、プロテアーゼ処理し、第1中間処理物を得る工程が行われる。次に、上記第1中間処理物について、好ましくはセルラーゼ処理し、第2中間処理物を得る工程が行われる。最後に、上記第1中間処理物又は上記第2中間処理物について、酸性化処理することにより、蜂の子処理物が得られる。プロテアーゼ処理は、プロテアーゼを用いて蜂の子原料に含有されるタンパク質のペプチド結合を加水分解して低分子化する処理である。プロテアーゼには、ペプチドの末端から加水分解するエキソ型プロテアーゼとペプチドの途中位置から分解するエンド型プロテアーゼとが存在するが、いずれの
プロテアーゼも使用することができる。また、プロテアーゼには、至適pHを酸性付近(例えば、pH6.0未満)、中性付近(例えば、pH5.0〜9.0)、アルカリ性付近(例えば、pH8.0以上)に有する酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼがそれぞれ存在するが、いずれのプロテアーゼも使用することができる。さらに、プロテアーゼは、微生物由来、動物由来、植物由来等、様々なものに由来するプロテアーゼが存在するが、いずれのものに由来するプロテアーゼも使用することができる。これらのプロテアーゼの中でも、水に対する溶解性の向上の観点から微生物由来のプロテアーゼが好ましく用いられる。
【0016】
酸性プロテアーゼとして、具体的には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger
)由来の酸性プロテアーゼを挙げることができる。市販品としては、スミチームAP(新日本化学工業社製)を使用することができる。スミチームAPを用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは35〜50℃、より好ましくは40〜50℃、さらに好ましくは45〜50℃の条件で行なわれる。
【0017】
中性プロテアーゼとして、具体的には、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis
)由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来の中性プロテアーゼ、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)
由来の中性プロテアーゼ、及びパパイヤ由来のプロテアーゼを挙げることができる。バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼとして、市販品としては、プロテアーゼN「アマノ」G(アマノエンザイム社製)を使用することができる。プロテアーゼN「アマノ」Gは、pH5.0〜7.0の領域で有効に作用し、その至適pHは、pH7.0である。プロテアーゼN「アマノ」Gを用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは40〜60℃、より好ましくは45〜55℃、さらに好ましくは50〜55℃の条件で行なわれる。
【0018】
また、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼとして、市販品としては、ウマミザイムG(アマノエンザイム社製)及びスミチームFP(新日本化学工業社製)を使用することができる。ウマミザイムGは、中性付近で有効に作用し、その至適pHは、pH8.0である。ウマミザイムGを用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは35〜55℃、より好ましくは40〜55℃、さらに好ましくは45〜55℃の条件で行なわれる。スミチームFPを用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは30〜50℃、より好ましくは35〜50℃、さらに好ましくは40〜50℃の条件で行なわれる。
【0019】
また、バチルス・ステアロサーモフィラス由来のプロテアーゼとして、市販品としては、プロテアーゼS「アマノ」G(アマノエンザイム社製)を使用することができる。プロテアーゼS「アマノ」Gは、中性から弱アルカリ性の領域で有効に作用し、その至適pHは、pH8.0である。プロテアーゼS「アマノ」Gを用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは50〜75℃、より好ましくは60〜75℃、さらに好ましくは65〜70℃の条件で行なわれる。また、パパイヤ由来のプロテアーゼとして、市販品としては、パパインW−40(アマノエンザイム社製)を使用することができる。パパインW−40を用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは40〜70℃、より好ましくは45〜60℃、さらに好ましくは45〜55℃の条件で行なわれる。
【0020】
アルカリ性プロテアーゼとして、具体的には、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus
licheniformis)由来のアルカリ性プロテアーゼを挙げることができる。市販品としては、プロチンSD−AC−10F(大和化成社製)を使用することができる。プロチンSD−AC−10Fは、アルカリ性付近で有効に作用し、その至適pHは、pH10.0〜11.0である。プロチンSD−AC−10Fを用いたプロテアーゼ処理は、好ましくは40〜60℃、より好ましくは50〜60℃、さらに好ましくは55〜60℃の条件で行なわれる。
【0021】
これらのプロテアーゼ中で、水に対する溶解性の向上の観点からプロテアーゼN「アマノ」G、ウマミザイムG、及びプロチンSD−AC−10Fが好ましく用いられる。
各種プロテアーゼを用いたプロテアーゼ処理は、蜂の子原料、プロテアーゼ及び水(又は緩衝液)を含む反応液を、各種プロテアーゼに応じた反応条件下でインキュベートすることにより実施される。プロテアーゼ処理の処理時間は、反応温度、酵素の力価等により適宜設定されるが、好ましくは2〜5時間、より好ましくは3〜4時間である。処理時間が2時間未満の場合、プロテアーゼによるタンパク質分解が十分に進行しないおそれがある。逆に、処理時間が5時間を越える場合、プロテアーゼ処理(蜂の子処理物の製造)に要する時間が著しく浪費されるため不経済である。処理pHは好ましくは各酵素の至適pH付近で行なわれる。なお、このプロテアーゼ処理は、インキュベート後の反応液を直ちに85〜100℃で5〜60分間加熱してプロテアーゼを失活させることが望ましい。
【0022】
前記反応液には、蜂の子原料に起因する粘度上昇を抑えてプロテアーゼ処理を迅速に進行させるための溶媒として、水(又は緩衝液)が含有されている。反応液は、蜂の子原料の重量に対して2〜15倍量、好ましくは2〜14倍量、より好ましくは3〜10倍量の水(又は緩衝液)が含有されていることが望ましい。蜂の子原料の重量に対して2倍量未満の溶媒が加えられる場合、蜂の子原料に起因する反応液の粘度上昇を十分に抑えることができないため、プロテアーゼ処理を迅速に進行させることが困難になる。逆に、蜂の子原料の重量に対して10倍量を超える溶媒が加えられる場合、続く各処理を経て得られる蜂の子処理物を粉末化する際に、多くの時間を要するという不都合が発生する。
【0023】
引き続いて、プロテアーゼ処理により得られた第1中間処理物に対するセルラーゼ処理が行なわれる。セルラーゼ処理は、セルラーゼを用いて蜂の子原料に含有されるセルロース等のβ−1,4−グリカンのグリコシド結合を加水分解して低分子化する処理である。
【0024】
セルラーゼには、β−1,4−グリカンの末端から加水分解するエキソ型セルラーゼとβ
−1,4−グリカンの途中位置から分解するエンド型セルラーゼとが存在するが、いずれ
のセルラーゼも使用することができる。また、セルラーゼには、至適pHを酸性付近(例えば、pH6.0未満)、中性付近(例えば、pH5.0〜9.0)、アルカリ性付近(例えば、pH8.0以上)に有する酸性セルラーゼ、中性セルラーゼ、アルカリ性セルラーゼがそれぞれ存在するが、いずれのセルラーゼも使用することができる。
【0025】
セルラーゼとして具体的には、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来の
酸性セルラーゼを挙げることができる。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)
由来の酸性セルラーゼとして、市販品としては、セルラーゼA「アマノ」3(アマノエンザイム社製)を使用することができる。セルラーゼA「アマノ」3は、酸性付近で有効に作用し、その至適pHは、pH4.5である。セルラーゼA「アマノ」3を用いたセルラーゼ処理は、好ましくは40〜60℃、より好ましくは40〜55℃、さらに好ましくは50〜55℃の条件で行なわれる。
【0026】
セルラーゼを用いたセルラーゼ処理は、前記プロテアーゼ処理後の反応液にセルラーゼを添加し、セルラーゼに応じた反応条件下でインキュベートすることにより実施される。セルラーゼ処理の処理時間は、反応温度、酵素の力価等により適宜設定されるが、好ましくは0.1〜6時間、より好ましくは0.5〜2時間である。処理時間が0.1時間未満の場合、セルラーゼによるβ−1,4−グリカンの分解が十分に進行しないおそれがある。逆に、処理時間が6時間を越える場合、セルラーゼ処理(蜂の子処理物の製造)に要する時間が著しく浪費されるため不経済である。なお、このセルラーゼ処理は、インキュベート後の反応液を直ちに85〜100℃で5〜60分間加熱してセルラーゼを失活させることが望ましい。
【0027】
引き続いて、セルラーゼ処理により得られた第2中間処理物に対する酸性化処理が行なわれる。酸性化処理は、セルラーゼ処理後の反応液を酸性化することにより、蜂の子原料に含まれるキトサンやセルロース等の糖質及び不溶性の脂質を分解して低分子化する処理である。具体的には、セルラーゼ処理後の反応液に酸性の物質を添加してpHが安定するまで攪拌する。この酸性の物質としては、例えは、クエン酸、塩酸が挙げられる。また、酸性化処理時のpHは、好ましくはpH2.0〜4.0、より好ましくはpH3.0〜3.5である。酸性化処理の時間としては、pH、反応温度等により適宜設定されるが、好ましくは0.1〜2時間、より好ましくは0.2〜0.5時間である。
【0028】
続いて、酸性化処理後の反応液を、濾紙や珪藻土等を用いて濾過処理することにより、可溶性成分が溶解する溶液と不溶性成分とを分離する。そして、濾過処理により得られた溶液に含有される溶質を、凍結乾燥等の手段を用いて乾燥・粉末化することにより本実施形態の蜂の子処理物が得られる。
【0029】
本実施形態の蜂の子処理物は、高い抗酸化作用、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性作用、皮膚繊維芽細胞増殖促進作用、疲労回復作用、及び血流改善作用を有する。したがって、それらの作用効果を得ることを目的とした抗酸化剤、ACE阻害剤又は血圧降下剤、皮膚繊維芽細胞増殖促進剤、疲労回復剤、及び血流改善剤として適用することができる。
【0030】
具体的な配合形態として、抗酸化剤は、好ましくは飲食品、化粧品及び医薬品等として適用することができる。ACE阻害剤又は血圧降下剤は、好ましくは血圧が高めの方の飲食品及び医薬品等として適用することができる。皮膚繊維芽細胞増殖促進剤は、好ましくは化粧品等として適用することができる。疲労回復剤は、好ましくは栄養補助食品等の飲食品及び医薬品等として適用することができる。血流改善剤は、好ましくは冷え性や耳鳴り等、血行不良に起因する症状のある方の飲食品及び医薬品等として適用することができる。
【0031】
また、本実施形態の蜂の子処理物は、蜂の子原料と比較してそのアレルギー性が低減されている。したがって、本実施形態の蜂の子処理物は、好ましくはアレルギー患者等のアレルギー症状を有する方の飲食品(アレルギー低減飲食品)として適用することができる。
【0032】
本実施形態の蜂の子処理物を化粧品に適用する場合、化粧品基材に配合することにより製造することができる。化粧品の形態は、乳液状、クリーム状、粉末状等のいずれであってもよい。化粧品基剤は、一般に化粧品に共通して配合されるものであって、例えば、油分、精製水及びアルコールを主要成分として、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、増粘剤、抗脂漏剤、血行促進剤、美白剤、pH調整剤、色素顔料、防腐剤及び香料から選択される少なくとも一種が適宜配合される。
【0033】
本実施形態の蜂の子処理物を飲食品に適用する場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって使用することができる。飲食品の形態としては、特に限定されず、液状、粉末状、ゲル状、固形状等のいずれであってもよく、また剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤のいずれであってもよい。前記飲食品としては、その他の成分としてゲル化剤含有食品、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、食品添加剤、副素材、増量剤等を適宜配合してもよい。
【0034】
本実施形態の蜂の子処理物を医薬品として使用する場合は、服用(経口摂取)により投与する場合の他、血管内投与、経皮投与等のあらゆる投与方法を採用することが可能である。本実施形態の蜂の子処理物は経口摂取により投与されることが望ましい。剤形としては、特に限定されないが、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。また、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。
【0035】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態では、蜂の子処理物を得るための工程にプロテアーゼ処理及び酸性化処理が含まれている。これにより、蜂の子原料から水に対する溶解性を高めた蜂の子処理
物を高収率で得ることができる。さらに、本実施形態では、上記処理に加えて、蜂の子処理物を得るための工程にセルラーゼ処理が含まれている。これにより、蜂の子処理物の収率をより高めることができる。また、セルラーゼ処理を行なうことにより、反応液の消泡性及び濾過性が向上する。
【0036】
(2)本実施形態において、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる蜂の子処理物は、高い抗酸化作用を有している。したがって、抗酸化剤として、抗酸化作用を目的とした化粧品、飲食品及び医薬品等に好ましく適用することができる。
【0037】
(3)本実施形態において、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる蜂の子処理物は、高いACE阻害活性作用を有している。したがって、ACE阻害剤又は血圧降下剤として、血圧効果作用を目的とした飲食品及び医薬品等に好ましく適用することができる。
【0038】
(4)本実施形態において、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる蜂の子処理物は、高い皮膚繊維芽細胞の増殖促進作用を有している。したがって、皮膚繊維芽細胞増殖促進剤として、ヒト皮膚繊維芽細胞増殖促進作用の発揮を目的とする飲食品及び医薬品等に好ましく適用することができる。
【0039】
(5)本実施形態において、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる蜂の子処理物は、高い抗疲労作用を有している。したがって、疲労回復剤として、疲労回復作用を目的とした飲食品及び医薬品等に好ましく適用することができる。
【0040】
(6)本実施形態において、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる蜂の子処理物は、高い血流改善作用を有している。したがって、血流改善剤として、血流改善作用を目的とした飲食品及び医薬品等に好ましく適用することができる。
【0041】
(7)本実施形態において、プロテアーゼ処理に用いるプロテアーゼは、バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼ及びバチルス・リケニフォルミス由来のアルカリ性プロテアーゼのうちのいずれかが好ましく適用される。この場合、抗酸化作用及び血流改善作用をより高めることができる。
【0042】
(8)本実施形態において、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理及び酸性化処理することにより得られる蜂の子処理物は、蜂の子原料と比較してそのアレルギー性が低減されている。したがって、アレルギー低減飲食品に好ましく適用することができる。
【0043】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 本実施形態では、蜂の子原料に対して、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理の3工程処理を行なうことにより蜂の子処理物を得ていたが、セルラーゼ処理を行なうことなく、プロテアーゼ処理及び酸性化処理の2工程処理のみにより蜂の子処理物を得るようにしてもよい。このようにした場合も、蜂の子原料から水に対する溶解性を高めた蜂の子処理物を高収率で得ることができる。
【0044】
・ 本実施形態では、蜂の子原料に対して、順にプロテアーゼ処理、セルラーゼ処理、酸性化処理を行なっていたが、これら各処理の順番はとくに限定されるものではなく、どのような順番で行なわれてもよい。また、プロテアーゼ処理とセルラーゼ処理とを同時に行なってもよい。
【0045】
・ 本実施形態では、濾過処理により得られた溶液中に含まれる溶質を乾燥・粉末化させていたが、濾過処理により得られた溶液をそのまま飲食品、医薬品及び化粧品等に適用してもよい。なお、本発明の蜂の子処理物は、粉末状の形態に限られるものではなく、液
状、ペースト状等、いずれの形態に加工させたものであってもよい。
【0046】
・ 本実施形態における蜂の子処理物は、ヒトが摂取する飲食品及び医薬品等に対して適用することができるのみならず、家畜の飼料、サプリメント、栄養食品、医薬品等として配合してもよい。
【0047】
・ アレルギー低減飲食品として適用する場合、蜂の子処理物は、珪藻土濾過処理がなされていることが好ましい。この場合、蜂の処理物のアレルギー性をより効果的に低減することができる。
【0048】
・ 蜂の子処理物のアレルギー性をより効果的に低減することができるため、好ましくは微生物由来のプロテアーゼ、より好ましくはバチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼが用いられる。
【実施例】
【0049】
以下に、試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(蜂の子処理物の調製)
表1の実施例1〜6に示されるように、中国産の雄蜂の蛹から得られた蜂の子粉末を原料として用い、プロテアーゼ処理及び酸性化処理を行なった。まず、この蜂の子粉末2.5gを20質量%となるように水に懸濁させ、蜂の子原料水溶液(125ml)を調製した。次に、蜂の子原料水溶液に各実施例に対応するプロテアーゼを25mg(蜂の子粉末に対して1質量%)添加し、50℃にて4時間プロテアーゼ処理を行なった。ここでは、プロテアーゼとして、スミチームAP(新日本化学工業社製)、プロテアーゼN「アマノ」G(アマノエンザイム社製)、ウマミザイムG(アマノエンザイム社製)、スミチームFP(新日本化学工業社製)、プロテアーゼS「アマノ」G(アマノエンザイム社製)、プロチンSD−AC−10F(アマノエンザイム社製)の6種類を使用した。また、プロテアーゼ処理時における反応液のpHは、プロテアーゼがスミチームAPの場合は3.0、プロテアーゼN「アマノ」G、ウマミザイムG、スミチームFP、プロテアーゼS「アマノ」Gの場合は7.0、プロチンSD−AC−10Fの場合は10.0とした。
【0050】
続いて、プロテアーゼ処理後の各反応液に対して、pHが3.5になるまで塩酸を添加した。その後、反応液のpHを維持しつつ、室温にて0.2時間インキュベートすることにより酸性化処理を行なった。そして、酸性化処理後の反応液を珪藻土により濾過処理し、得られた溶液中に含まれる溶質を凍結乾燥して粉末状の蜂の子処理物をそれぞれ調製し、その収量及び回収率を測定した。
【0051】
また、この他に、実施例7及び8として、蜂の子原料水溶液を蜂の子原料をプロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化の3工程処理した蜂の子処理物についても別途調製した。その際、プロテアーゼとして、プロテアーゼN「アマノ」G又はパパインW−40(アマノエンザイム社製)を用いるとともに、セルラーゼとしてセルラーゼA「アマノ」3(アマノエンザイム社製)を用いた。まず、プロテアーゼ処理を上記方法と同様の方法にて行なった。なお、プロテアーゼとしてパパインW−40を用いた場合には、プロテアーゼ処理時における反応液のpHを7.0とした。その後、プロテアーゼ処理後の反応液に対して、セルラーゼA「アマノ」3を25mg(蜂の子粉末に対しての1質量%)添加し、55℃にて1時間セルラーゼ処理を行なった。また、セルラーゼ処理時における反応液のpHは4.5とした。
【0052】
続いて、セルラーゼA「アマノ」3処理後の反応液に対して、酸性化処理を上記方法と同様の方法にて行なった。そして、酸性化処理後の反応液を珪藻土により濾過処理し、得られた溶液中に含まれる溶質を凍結乾燥して粉末状の蜂の子処理物を調製し、その収量及び回収率を測定した。
【0053】
また、比較例1は、蜂の子粉末2.5gを20質量%となるように水に懸濁させて調製した蜂の子水溶液(125ml)を使用した。比較例2は、上記蜂の子水溶液(125ml)に対して上記実施例と同様の方法により酸性化処理を行なったものを使用した。比較例3は、上記蜂の子水溶液に対して、実施例7及び8と同様の方法によりセルラーゼ処理及び酸性化処理を行なったものを使用した。比較例3では、まず、セルラーゼA「アマノ
」Gを用いてセルラーゼ処理を行ない、次に酸性化処理を行なった。そして、比較例1〜3についても各実施例と同様に濾過処理及び凍結乾燥して粉末状の蜂の子処理物をそれぞれ調製し、その収量及び回収率を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

表1に示されるように、プロテアーゼ処理及び酸性化処理の2工程処理した実施例1〜6は、未処理の比較例1と比較して高い回収率を示し、水に対する溶解性が向上していることが確認された。とくに、プロテアーゼとして、プロテアーゼN「アマノ」G、ウマミザイムG、及びプロチンSD−AC−10Fをそれぞれ使用した実施例2、3及び6は、30%以上の高い回収率を示した。中でもプロテアーゼN「アマノ」Gを使用した実施例2は、約40%という非常に高い回収率を示した。同様に、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理の3工程処理した実施例7及び8も、未処理の比較例1と比較して高い回収率を示し、水に対する溶解性が向上していることが確認された。とくに、微生物由来のプロテアーゼを使用することが有効であることが確認された。
【0055】
また、セルラーゼA「アマノ」3処理及び酸性化処理の2工程処理した比較例3は、酸性処理のみを行なった比較例2と比較して、その回収率がほとんど変化しないことが確認された。これに対して、プロテアーゼN「アマノ」G処理、セルラーゼA「アマノ」3処理及び酸性化処理の3工程処理した実施例7は、プロテアーゼN「アマノ」G処理及び酸性化処理の2工程処理した実施例2と比較して、その回収率が向上することが確認された。この結果から、プロテアーゼ処理とセルラーゼ処理とを組み合わせて用いることが回収率の向上、すなわち水に対する溶解性の向上に効果的であることが示された。また、セルラーゼ処理を行なった場合には、回収率とは別に、反応液の消泡性及び濾過性が向上することも確認された(データ不添付)。
【0056】
次に、実施例7の蜂の子処理物(凍結乾燥粉末)を試験試料として用い、蜂の子処理物の各種生理活性について評価した。以下では、実施例7について単に実施例と表記している。また、原料として用いた蜂の子粉末を比較例として用いている。
【0057】
(試験例1、抗酸化活性としてのラジカル補足能試験)
実施例の抗酸化作用をラジカル補足能試験により評価した。本試験は、ラジカル状態で517nmの極大吸収を持つDPPH(1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl)が抗酸化物質に
より還元されて退色することを利用するものである。実施例及び比較例をそれぞれ20mg/mlとなるように蒸留水中に溶解させて各試料溶液を調製した。各試料溶液100μlに、170μMのDPPHエタノール溶液1.9mlを加えて混合し、DPPHエタノール試料溶液とし、15分間反応させた。その後、分光光度計(島津製作所製UV-12
00)を用いて、各DPPHエタノール試料溶液の光の波長517nmにおける吸光度を測定した。なお、試料溶液に代えて蒸留水をDPPHエタノール溶液に混合したものをコ
ントロールとして、同様に517nmにおける吸光度を測定した。DPPHラジカル捕捉率は以下の式より求めた。その結果を表2に示す。
【0058】
DPPHラジカル捕捉率(%)={(Ac−As)/Ac}×100
Ac:コントロールの517nmにおける吸光度
As:(DPPHエタノール試料溶液の517nmにおける吸光度)−(試料溶液の517nmにおける吸光度)
【0059】
【表2】

表2に示されるように、実施例及び比較例ともにDPPHラジカル補足作用を示すものの、とくに実施例は比較例と比べて高いDPPHラジカル補足作用を示した。この結果から、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を行なうことにより、DPPHラジカル補足作用、すなわち抗酸化作用が向上することが確認された。
【0060】
フリーラジカルは悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患等の種々の疾患の原因因子と考えられている。そのため、フリーラジカルを除去する作用を有する実施例は、それらの疾患の予防及び治療のための有効な成分になり得る。したがって、フリーラジカル除去能の発揮を目的とする健康食品、化粧品及び医薬品等の有効成分として好適に配合することができる。
【0061】
(試験例2、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性試験)
実施例のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を評価した。ACEは血圧上昇因子アンジオテンシンIIの生成に関わる酵素であり、この酵素の働きを抑えることは、血圧の降下にもつながることが確認されている。実施例及び比較例をそれぞれ0.08mg/ml,0.4mg/ml,2mg/mlとなるように蒸留水中に溶解させて試料溶液を調整した。
【0062】
ACE阻害活性の測定は、受田らの方法に準じて行った。まず、各試料溶液50μl及び5.83mM ACE基質溶液(Bz−Gly−His−Leu・H2O,1M NaCl/pH8.3 50mM ホウ酸緩衝液に溶解)150μlを混合し、37℃にて5分間プレインキュベートした。続いて、各試料に120mU/mlのウサギ肺由来アンジオテンシン変換酵素をそれぞれ50μl添加し、37℃にて30分間インキュベートした後、1N塩酸を250μl添加して反応を停止させた。そして、各試料中に生成された馬尿酸
を酢酸エチルで抽出し、濃縮乾固したものを蒸留水2.5mlに再溶解して、その228nmにおける吸光度を測定した。
【0063】
なお、試料溶液に代えて蒸留水を混合したものを用意し、これをコントロールとするとともに、各試料及びコントロールのそれぞれに対して、インキュベート前に予め1N塩酸250μlを加えたものを用意し、これを各ブランクとした。そして、コントロール及び各ブランクについても、インキュベート後に、同様の抽出処理、濃縮乾固処理及び再溶解処理を行ない、228nmにおける吸光度を測定した。そして、各濃度の試料溶液におけるACE阻害率を以下の式より求めた。
【0064】
ACE阻害率(%)=[{(Ec−Ecb)−(Es−Esb)}/(Ec−Ecb)]×100
Ec:コントロールの228nmにおける吸光度
Ecb:コントロールのブランクの228nmにおける吸光度
Es:各試料の228nmにおける吸光度
Esb:各試料のブランクの228nmにおける吸光度
そして、求められた各濃度におけるACE阻害率に基づいて、ACE阻害活性を50%阻害する濃度(mg/ml)をACE阻害活性IC50値として算出した。その結果を表3に示す。
【0065】
【表3】

表3に示されるように、比較例ではACE阻害活性については殆ど認められないのに対し、実施例では高いACE阻害活性が認められた。この結果から、ACE阻害活性は、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を行なうことにより初めて発現することが示された。よって、ACE阻害活性を有する実施例は、血圧降下作用の発揮を目的とする飲食品及び医薬品等の有効成分として好適に配合することができる。
【0066】
(試験例3、皮膚繊維芽細胞増殖試験)
実施例のヒト皮膚繊維芽細胞増殖作用について評価した。実施例を6μg/ml,30μg/ml,150μg/mlとなるように、10%FBS含有DMEM培地中に溶解させて試料培地を調整した。また、実施例を含まない10%FBS含有DMEM培地を用意し、これをコントロールとした。
【0067】
まず、ヒト皮膚繊維芽細胞を10%FBS含有DMEM培地にて培養後、0.8×104cells/mlとなるように調製し、24wellプレートの各ウェルに1mlずつ播種した。翌日、培地を試料培地に交換し、48時間培養した後に、血球計算板にて細胞数の測定を行なった。その結果を表4に示す。
【0068】
【表4】

表4に示すように、実施例を30μg/ml及び150μg/mlの濃度で含有する試料培地においては、コントロールに対して有意な細胞数の増加が認められた。この結果から、実施例は、ヒト皮膚繊維芽細胞を増殖させる作用を有することが示された。よって、実施例は、ヒト皮膚繊維芽細胞増殖作用の発揮を目的とする飲食品及び医薬品等の有効成分として好適に配合することができる。
【0069】
(試験例4、疲労回復試験)
実施例の疲労回復作用をマウス強制水泳試験により評価した。マウスを水中に入れると、最初の1分間程度は四肢と尾を使って泳ぎ、脱出を試みる。しかし、その後は疲労によりマウスが水泳を止め、水面に浮くだけの時間が生じる。本試験では、これを不動時間として計測する。なお、本試験では実施例及び比較例の他に、陽性対照としてL−カルノシ
ンについても、その評価を行なった。
【0070】
試験動物としてddY系雄性マウス(5週齢)を使用し、各試料を蒸留水に溶解させたものを4日間経口投与した。各試料は、実施例及び比較例については、1日当たり500mg/kg(体重)となるように投与し、L−カルノシンについては、1日当たり50mg/kg(体重)となるように投与した。また、蒸留水のみを投与したものを用意し、これをコントロールとした。そして、5日目に強制水泳試験を実施した。強制水泳については、まず、5分間の予備強制水泳を試行し、その直後に各試料を前日までと同量経口投与した。その経口投与60分経過後に再強制水泳を5分間試行し、5分間の再強制水泳中に、マウスが水中で動かない時間を累計して、これを不動時間とした。その結果を表5に表す。
【0071】
【表5】

表5に示されるように、実施例及び比較例ともに、コントロールと比較して有意な浮動時間の短縮が認められた。よって、実施例は、肉体疲労の改善作用の発揮を目的とする飲食品及び医薬品等の有効成分として好適に配合することができる。
【0072】
(試験例5、血流試験)
実施例の血流改善作用について評価した。本試験では、実施例及び比較例の他に陽性対照としてL−アルギニンについても、その評価を行なった。ラットに対して、2g/kg(体重)となるように実施例、比較例及びL−アルギニンを経口投与し、60分経過後に麻酔注射を行なうとともに、ラットの尾部付け根にける血流量の測定を開始した。血流量の測定は60分間行ない、その平均血流量を算出した。その結果を表6に示す。なお、実施例、比較例及びL−アルギニンを投与していないラットについても同様の操作を行い、これをコントロールとした。
【0073】
【表6】

表6に示されるように、実施例及び比較例ともに有意な血流量の増加作用を示した。とくに、実施例は比較例と比べても高い血流量の増加作用を示した。この結果から、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を行なうことにより、血流量増加作用がさらに向上することが確認された。よって、実施例は、血流量改善作用の発揮を目的とする飲食品及び医薬品等の有効成分として好適に配合することができる。
【0074】
(試験例6、アレルギー性に関する試験)
実施例のアレルギー性の有無について評価した。本試験では、実施例及び比較例に含まれる甲殻類アレルギー物質(甲殻類アレルギー性タンパク質)をELISA法により測定した。甲殻類アレルギー物質の測定は、FAテスト EIA−甲殻類「ニッスイ」(日水製薬株式会社製)を用いて行なった。実施例及び比較例をそれぞれ2.5mg/mlとなるように蒸留水中に溶解させて試料溶液を調整し、各試料溶液中に含まれる甲殻類アレルギー物質含量を測定した。なお、各試料溶液について甲殻類アレルギー物質含量の測定を3度行い、甲殻類アレルギー物質含量の平均値が20ppm以上である場合にアレルギー性有り(陽性)、1.0ppm以上20ppm未満である場合にアレルギー性の疑い有り(疑陽性)、1.0ppm未満である場合にアレルギー性無し(陰性)と判定した。その結果を表7に示す。
【0075】
【表7】

表7に示されるように、比較例は甲殻類アレルギー性物質含量が多く、甲殻類アレルギーについて陽性を示した。これに対して、実施例は甲殻類アレルギー性物質含量が低減されており、甲殻類アレルギーについて陰性を示した。この結果から、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を行なうことにより、甲殻類アレルギー性物質含量が低下し、アレルギー性が低減されることが確認された。よって、実施例はアレルギー低減飲食品として好適に適用することができる。
【0076】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする冷え性改善剤。
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする耳鳴り改善剤。
【0077】
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする血圧降下剤。
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする皮膚繊維芽細胞増殖促進剤。
【0078】
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする抗疲労剤。
○ 前記可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする血流改善剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することにより得られることを特徴とする可溶化蜂の子処理物。
【請求項2】
蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することにより得られることを特徴とする可溶化蜂の子処理物。
【請求項3】
前記プロテアーゼ処理は、バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼ及びバチルス・リケニフォルミス由来のアルカリ性プロテアーゼから選ばれる少なくとも一種を用いて処理されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の可溶化蜂の子処理物。
【請求項4】
前記可溶化蜂の子処理物は、アレルギー性が低減されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の可溶化蜂の子処理物。
【請求項5】
蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することを特徴とする可溶化蜂の子処理物の製造方法。
【請求項6】
蜂の子、又は蜂の子を主成分が水である抽出溶媒により抽出処理して得られる不溶性成分を、プロテアーゼ処理、セルラーゼ処理及び酸性化処理を組み合わせて処理することを特徴とする可溶化蜂の子処理物の製造方法。
【請求項7】
前記プロテアーゼ処理は、バチルス・サブティリス由来の中性プロテアーゼ、アスペルギルス・オリザエ由来の中性プロテアーゼ及びバチルス・リケニフォルミス由来のアルカリ性プロテアーゼから選ばれる少なくとも一種を用いて処理されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の可溶化蜂の子処理物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の可溶化蜂の子処理物を含有することを特徴とする医薬品、化粧品又は飲食品。
【請求項9】
前記飲食品は、アレルギー低減飲食品であることを特徴とする請求項8に記載の飲食品。

【公開番号】特開2010−30975(P2010−30975A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206248(P2008−206248)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【Fターム(参考)】