説明

可溶性フィルム

【課題】フィルムを使用して送達することができる物質のタイプを拡張するために、このような物質の送達のために使用できるフィルムを製造する方法に対するニーズに応える。
【解決手段】室温における水溶性が約1g/4mL未満である、活性成分を投与するための可溶性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分を送達するためのフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
即時の湿潤可能性に続いて迅速な溶解/分解を示すフィルム組成物は、治療剤又は化粧品、食品フレーバーを含む食品フレーバー付与剤、又はフィルム内部に含有されるその他の成分を送達又は投与するために使用されて来ている。このようなフィルムは、一般に、水溶性食用ポリマー、例えばプルラン及び/又は澱粉を含む。水性環境、例えば口腔に晒されると、フィルムは溶け、これによりその中に含まれる物質が放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多数の物質が経口送達のためのフィルム形態で調製されて来ているが、いくつかの物質は、可溶性フィルム内に内蔵すること、又は検出可能なレベルでこれを内蔵することが難しいことが判っており、例えば、フレーバー炸裂又は薬理学的効果を付与するのに十分に高いレベルで口腔内に放出されない。従って、フィルムを使用して送達することができる物質のタイプを拡張するために、このような物質の送達のために使用できるフィルムを製造する方法に対するニーズが当分野に存在する。本発明はこのニーズに対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、活性成分とフィルム形成性成分とを含む混合物を形成し、該混合物を基材材料上にコーティングすることによりフィルムを形成し、次いで湿分約15重量%未満の、より典型的には湿分約10重量%未満の含水率まで該フィルムを乾燥させることによって調製された、活性成分を含有する可溶性フィルムを調製する。本発明の実施において使用されるべき活性成分は、室温における水溶性が約1g/4mL未満である成分である。活性成分は、該活性成分を含有する可溶性フィルムの単回投与形態の投与に所望の作用を与えるのに十分な量でフィルム中に存在する。1実施態様の場合、活性成分はカフェインである。
【0005】
本発明の1実施態様は、前記フィルムの重量を基準として、約18乾燥重量%以上のカフェインを含む、カフェインを含有する可溶性フィルムを提供する。単回投与フィルム1つ当たり約20mg〜約30mgのカフェインを含む単回投与形態が好ましい実施態様である。
【0006】
本発明はまた、活性成分を含有する可溶性フィルムの製造方法を提供する。本発明の方法は、活性成分とフィルム形成性成分との混合物を形成し、該混合物を基材材料上にコーティングすることによりフィルムを形成し、次いで湿分約15重量%未満の、好ましくは湿分約10重量%未満の含水率まで該フィルムを乾燥させることを含む。本発明の実施において使用されるべき活性成分は、室温における水溶性が約1g/4mL未満である成分である。活性成分は、該活性成分を含有する可溶性フィルムの単回投与形態の投与に所望の作用を与えるのに十分な量で使用される。
【0007】
また本発明により提供されるのは、特定の活性成分を必要又は所望する個体に活性成分を投与する方法である。この方法は、活性成分を含有する可溶性フィルムを個体の湿潤部位に適用することを含み、該適用時に該活性成分が放出される。本発明の実施において使用されるべき、活性成分を含有する可溶性フィルム中の活性成分は、室温における水溶性が約1g/4mL未満である成分である。活性成分は、活性成分を含有する可溶性フィルムの単回投与形態の投与に所望の作用を与えるのに十分な量でフィルム中に存在する。フィルムの投与形式の一例としては、経口投与及び局所投与が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、本明細書中で「活性成分」、「活性物質」などと称される物質を、所望の作用を与えるのに十分な又は効果的なレベルで投与するために使用することができるフィルムに関する。「物質」(substance)という用語及び「活性成分」(active)という用語は、送達のために意図された成分を意味するように、本明細書中で互いに置き換え可能に使用される。すなわち、フィルムは、成分の送達のためのキャリヤ又はビヒクルとして役立つ。活性成分は、「薬物」、「生体活性物質」、「調剤」、「医薬」、「治療剤」、「生理学的物質」及び「薬剤」を含み、そして、状態又は疾患状態の診断、療養、緩和、抑止、治療又は予防に使用するための、又は身体の構造又は機能に影響を与えるための物質を含む。この用語には皮膚の健康のための薬剤も含まれる。
【0009】
十分なレベル又は量とは、活性物質が、所望の作用、例えば所望の感覚刺激効果、生理学的効果、又は治療効果を与えるのに必要とされる量で存在することを意味する。活性物質は、状態の治療において所望の結果、例えば所望の治療結果をもたらすのに十分な、本明細書中で有効量とも呼ばれる量で存在する。有効量の薬物とは、例えば非毒性ではあるが、しかし特定の時間にわたって選択された効果をもたらすのに十分な量の薬物を意味する。有効量を構成する量は、フィルム内に内蔵される特定の有効物質、治療される状態、選択された活性物質と同時投与される任意の他の活性物質、フィルムの他の成分、所望の治療継続時間、及びフィルムのサイズなどに応じて、変化する。このような量は当業者によって容易に決定することができる。
【0010】
活性物質によって加えられる作用は、2つの方式で知覚及び測定することができる。所望の作用を与えるのに十分なレベルの活性物質は、知覚された強度及び知覚された特徴によって測定することができる。強度は、例えば味、におい又は生理学的反応の強度全体(例えば強、中、弱又は微弱など)と定義される。特徴は、例えば味、におい又は生理学的又は薬学的な反応の知覚的記述(チョコレート、ペパーミント、柑橘類、高められた覚醒状態、及び疾患又は負傷の症状の改善など)と定義される。
【0011】
単回投与(single dosage)形態は、典型的には単一のフィルム、例えば経口送達用に調製されたフィルム・ストリップとなるが、しかし、ほぼ同時に投与される複数のフィルムを意味することもある。これに関して、単回投与として投薬される場合には、例えば体重や年齢などに応じて、1つ又は2つの錠剤が推奨されるのが医薬分野では一般的である。
【0012】
「実質的に水性の環境」という用語は、キャリヤ・フィルムが溶け、より好ましくは迅速に溶け、活性成分を放出する環境を意味する。典型的には、「実質的に水性の環境」は口腔内部、例えば舌の表面となり、或いは、食品、例えば一杯の水又はジュース、スープであってよい。湿潤環境、例えば重傷の火傷などから生じる外傷組織も含まれる。
「迅速に溶ける」という用語は、キャリヤ・フィルムが約60秒未満で溶けることを意味する。
【0013】
フィルム及び活性成分が水性環境内で溶けることができること、又は、フィルムが溶け、そして活性成分が水性環境中に放出され、その後、活性成分は例えば飲み込まれるか又は粘膜を通して拡散することが考えられる。
【0014】
好ましくは、活性成分は、或るレベルで水溶性であり、そして、撹拌時、加熱時、pH変化時、又は熱及び/又は撹拌及び/又はpH変化を加えた時に、水性環境内部に可溶化され得るにすぎない活性成分を含む。本発明の実施に使用するための好ましい活性物質は、室温(22℃)における水溶性が約1g/4mL未満である。1実施態様の場合、活性成分は、室温における水溶性が約1g/10mL未満である。
【0015】
いくつかの物質は、水性環境内で可溶化又は分散されたときに、所望の作用、例えば所望の味又は所望の薬学上又は治療上の効果を与えるのに十分なレベルでフィルム成分中に内蔵できることが、発見された。
【0016】
本発明の1実施態様は、活性成分を含む可溶性フィルムに関する。1実施態様の場合、本発明によって送達可能な活性成分は、或るレベルで水溶性である活性成分である。可溶性フィルム内へ内蔵し、そして可溶性フィルムによって送達するための特に好ましい物質はカフェインである。
【0017】
本発明の実施において、活性成分は室温以上で、水性環境内で可溶化又は分散される。活性成分は先ず水中に可溶化又は分散し、次いで、活性成分を含有する溶液又は懸濁液をフィルム形成性成分と混合することにより、混合物を形成することができる。或いは、そしてより好ましくは、活性成分をフィルム形成性成分の溶液中に可溶化又は分散することにより、混合物を形成することができる。次いで混合物を好適な基材上にコーティングすることによりフィルムを形成し、次いで湿分約15重量%未満、より典型的には湿分約5重量%〜約15重量%、さらにより典型的には湿分約6重量%〜約10重量%の含水率までフィルムを乾燥させる。活性物質を含む形成済フィルムを空気乾燥させるか、又は温風下で乾燥させることができる。次いでカットして所望の寸法にし、パッケージングし、そして貯蔵することができる。
【0018】
1実施態様の場合、本発明は、活性物質として約18乾燥重量%以上のカフェインを含有する乾燥させられた水溶性フィルムを提供する。好ましい実施態様の場合、調製されるフィルムは、最終的に調製されたフィルムの重量を基準として、約18乾燥重量%以上、より好ましくは約20乾燥重量%以上、さらにより好ましくは約25乾燥重量%以上のカフェインを含む。
【0019】
フィルム形成性成分及び所望の活性成分に加えて、本発明のフィルムはまた、他の成分、例えばフレーバー・マスキング剤を含むことにより、選択された活性成分の苦み又はその他の望ましくないフレーバーを隠蔽することができる。
【0020】
本発明の別の実施態様は、所望の物質を所望の基材に送達する方法であって、送達時に、所望の物質が放出される方法に関する。本発明のこの方法において、所望の物質は、可溶性フィルム中に可溶化又は懸濁され、そしてフィルムは、実質的に水性の環境を含む所望の基材に送達される。
【0021】
本発明の更なる実施態様は、活性成分を必要又は所望する個体に前記活性成分を投与する方法に関する。この方法は、活性成分を含有する可溶性フィルムを個体の湿潤部位、例えば舌又は火傷した皮膚に適用することを含み、この適用時に該活性成分が放出される。言うまでもなく、コンプライアンスの点から見て、本発明のフィルムは、幼児を治療するのに特に有用である。
【0022】
本発明のフィルムが使用される治療分野は、抗ヒスタミン薬治療、疼痛管理、抗炎症、抗炎症状態、失禁、中枢神経系状態、ホルモン療法及びバース・コントロール、心臓血管及び強心剤、化粧品、制嘔吐剤、禁煙、ステロイド及び非ステロイド双方の治療、抗菌剤、抗原虫薬、抗真菌剤、カルシウムチャネル遮断薬、気管支拡張薬、酵素阻害薬、例えばコラゲナーゼ阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、エラスターゼ阻害薬、リポキシゲナーゼ阻害薬、及びアンギオテンシン変換酵素阻害薬、他の抗高血圧薬、ロイコトリエン・アンタゴニスト、抗潰瘍薬、例えばH2アンタゴニスト、抗ウィルス薬及び/又は免疫賦活剤、局部麻酔薬、鎮咳薬、麻薬性鎮痛薬、心臓作用性生成物、例えばアトリオペプチド、抗けいれん薬、免疫抑制薬、精神治療薬、鎮静薬、抗凝血薬、鎮痛薬、片頭痛薬、抗不整脈薬、抗嘔吐薬、抗癌剤、神経系薬、止血薬、及び肥満抑制薬などを含む。
【0023】
本発明のフィルムを使用して、獣医学用活性成分、並びに農業用及び園芸用薬剤を投与することもできる。言うまでもなく、獣医学用途及び園芸用途における送達は、食物/灌漑用水中での投与よりも正確な投与を可能にし、そして無駄を少なくすることを可能にする。
【0024】
活性物質の具体的な一例としては、ベンゾカイン、カフェイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、グアイフェネシン、ロラチジン、L‐テアニン、オムプレマゾール、塩酸プソイドエフェドリン、及びナイアシン又はレチノールのようなビタミンが挙げられる。
【0025】
本発明の実施において使用されるフィルム形成組成物は、特に限定的ではない。組成物は、強く、フレキシブルであり、そして耐粘着性且つ耐湿性であるべきであり、これにより組成物はそれ自体又はそのパッケージには付着しないが、実質的に水性の環境内に置かれると迅速に溶けることができる。
【0026】
可溶性フィルムを形成する分野で慣用的に使用される水溶性固形フィルム形成剤を、本発明において使用することができる。このような水溶性ポリマーの例としては、非限定的に、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、トラガカントガム、グアールガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレート・コポリマー、カルボキシビニルポリマー、アミロース、高アミロース澱粉、ヒドロキシプロピル化高アミロース澱粉、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、レバン、エルシナン、コラーゲン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質単離物、ホエイ・タンパク質単離物、カゼイン、及びこれらの種々の混合物が挙げられる。
【0027】
プルランは、アルファ‐1,6結合を介してマルトトリオース(3アルファ1,4結合されたグルコース)によって繰り返し重合された天然の中性多糖である。プルランは、無味、無臭、非晶質、且つ非結晶性である白い粉末である。プルランは、酵母Aureobasidium pullulanによって澱粉加水分解物を発酵させ、細胞材料を除去するように濾過し、精製し、濃縮し、乾燥させ、そして粉砕することにより調製される。プルラン水溶液から透明なフィルムを製造することができる。
【0028】
ここで使用される澱粉は、いずれも本発明のフィルムに適している任意の天然源に由来する全ての澱粉を含むものとする。本明細書に使用される天然澱粉という用語は、天然に見いだされる澱粉である。交雑種(crossbreeding)、転流(translocation)、逆位(inversion)、形質転換(transformation)、又は、これらの変異形を含むための任意の他の遺伝子工学法又は染色体工学法を含む標準的な育種技術によって得られた植物に由来する澱粉も好適である。加えて、上記一般的な組成物の人工突然変異形及び人工変異形から成長させられた植物に由来する澱粉であって、周知の標準的な突然変異育種法によって生成することができるものも好適である。
【0029】
典型的な澱粉源は、穀物、塊茎、根、マメ科植物、及び果実を含む。天然源はトウモロコシ、エンドウ豆、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、大麦、小麦、コメ、サゴ、アマランス、タピオカ、クズウコン、カンナ、モロコシ(sorghum)、これらのワキシー変種又は高アミロース変種であってよい。「ワキシー」(waxy)澱粉は、約95重量%以上のアミロペクチンを含有する澱粉として定義される。「高アミロース」澱粉は、約40重量%以上のアミロースを含有する澱粉として定義される。
【0030】
好ましい澱粉系フィルムは、化工澱粉を含むことになる。好ましくは、澱粉の約50%以上、より好ましくは約65%以上、さらにより好ましくは約90%以上が化工澱粉となる。澱粉は、物理的及び/又は化学的及び/又は酵素的変性を含む、当業者に知られた任意の変性技術を用いて変性することができる。
【0031】
剪断処理澱粉、又は国際公開第95/04082号パンフレットによって表される特許群において記載された、熱抑制(thermally-inhibited)澱粉のような物理的に変性された澱粉が、本明細書における使用に好適な場合がある。
【0032】
化学的に変性された生成物はまた、ベース材料として含まれるように意図され、例として、架橋、アセチル化及び有機エステル化、ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化、ホスホリル化及び無機エステル化されたもの、カチオン性、アニオン性、非イオン性及び両イオン性のもの、並びにこれらのスクシネート誘導体及び置換型スクシネート誘導体を非限定的に含む。このような変性は当業者には知られており、例えば「Modified Starches: Properties and Uses」Wurzburg編、CRC Press, Inc., Florida (1986)に記載されている。
【0033】
酸化、酵素変換、酸加水分解、熱及び/又は酸デキストリン化によって調製される流動性又はシン−ボイリング(thin-boiling)澱粉を含む澱粉のいずれかに由来する変換生成物、熱及び/又は剪断処理生成物が、本明細書中で有用であることもある。
【0034】
さらに好適なのは、予備糊化(pregelatinized)澱粉である。予備糊化澱粉は、当業者に知られており、例えば米国特許第4,465,702号、同第5,037,929号、同第5,131,953号、及び同第5,149,799号の各明細書に開示されている。澱粉を予備糊化するための慣用的な手順は、当業者に知られており、例えばChapter XXII-“Production and Use of Pregelatinized Starch”, Starch: Chemistry and Technology, 第III巻 Industrial Aspects, R.L. Whistler 及びE. F. Paschall編 Academic Press, New York, 1967に記載されている。
【0035】
ここで使用するのに適した特性を有する任意の澱粉又は澱粉ブレンドを当業者によって知られた任意の方法によって精製することにより、多糖にとって固有である、又は処理中に形成されたフレーバー及び色を、澱粉から除去することができる。澱粉を処理するための好適な精製法が、欧州特許第554 818号明細書(Kasica他)によって表された特許群に開示されている。顆粒形態又は予備糊化形態で使用するように意図された澱粉のためのアルカリ洗浄技術が、米国特許第4,477,480号明細書(Seidel)及び同第5,187,272号明細書(Bertalan他)によって表される特許群に記載されている。
【0036】
特に好適な澱粉は、活性成分を乳化又はカプセル封入することができる澱粉なので、付加的なカプセル封入剤又は乳化剤が必要になることはない。このような澱粉の一例としては、ヒドロキシアルキル化澱粉、例えばヒドロキシプロピル化又はヒドロキシエチル化澱粉、及びスクシネート化澱粉、例えばオクテニルスクシネート化又はドデシルスクシネート化澱粉が挙げられる。乳化性又はカプセル封入性澱粉の使用は、フィルム材料(澱粉成分、活性物質、及び任意の添加剤)の溶液又は分散体を後で処理するために貯蔵できる点で特に有用である。ヒドロキシアルキル化澱粉の付加的な利点は、より軟質のフィルムを形成するので、可塑剤の必要が少なくなるか又は全くなくなることである。
【0037】
澱粉の分子量はまた、フィルム内のその機能性、具体的にはフィルム強度にとって重要である。例えば、デキストリンは本出願には適していない。
【0038】
澱粉成分は単独の化工澱粉、化工澱粉のブレンド、又は化工澱粉と天然澱粉とのブレンドであってよい。ブレンドは、フィルムのコストを下げ、又は種々の望ましい特性及び機能性をより容易に達成するのに特に有用である場合がある。天然澱粉が使用される場合、これらは、少量、具体的には澱粉成分の15重量%未満、より具体的には10重量%未満でのみ使用することができる。
【0039】
澱粉成分は、セルロース系材料又はガム、例えばプルランを含んでもよい。プルランは、澱粉と十分に適合性があり、且つ澱粉と事実上代替可能である。他のセルロース系材料又はガムの例としては、非限定的に、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ミクロ結晶性セルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロコロイド、カラゲナン、ガム、及びアルギネートが挙げられる。しかし、セルロース系材料又はガムは、フィルムの必須成分ではなく、約15%未満、より具体的には約10重量%未満の澱粉成分レベルで使用することができ、或いは、フィルムには存在しなくてもよい。澱粉は一般にプルランよりも低廉であるので、プルラン・フィルムのコストは、プルランの少なくとも一部、具体的には、プルランの約50重量%以上、より具体的には約85重量%以上、最も好ましくは約90重量%以上の代わりに澱粉を使用することによって低減することができ、この場合、プルラン・フィルムの必須機能が損なわれることはない。
【0040】
1種以上の可塑剤を添加することにより、フィルムの見かけ可撓性を増大させることができる。さらに、固形ポリオール可塑剤が一般に、より良好な耐吸湿性及び耐粘着性を提供することになる。当業者ならば、フィルムの所望の必要性に見合うように可塑剤を選択することができ、例えば口腔用フィルムの食用可塑剤を選択することができる。本発明において有用な可塑剤は、ポリオール、ポリカルボン酸、及びポリエステルを含む。有用なポリオールの例としては、非限定的に、エチレングリコール、プロピレングリコール、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール;単糖、二糖、オリゴ糖、例えばフルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、及び高フルクトース・コーンシロップ固形物及びアスコルビン酸が挙げられる。ポリカルボン酸の例としては、非限定的に、クエン酸、マレイン酸、琥珀酸、ポリアクリル酸、及びポリマレイン酸が挙げられる。ポリエステルの例としては、非限定的に、グリセリントリアセテート、アセチル化モノグリセリド、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートが挙げられる。より典型的には、可塑剤はグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、及び/又はポリエチレングリコールである。可塑剤は所望の量、具体的には活性成分含有の配合フィルムの0〜約50重量%、より具体的には10〜約30重量%で存在してよい。
【0041】
フレーバーはマスキング剤として又は活性成分として使用することができる。天然又は人工フレーバーを使用することができる。これらのフレーバーは、合成フレーバー油及びフレーバー芳香剤、及び/又は植物、葉、花、及び果実などに由来する油、オレオレジン、及び抽出物、並びにこれらの組み合わせから選択することができる。代表的な油は:スペアミント油、シナモン油、ペパーミント油、クローブ油、ベイ油、タイム油、シーダー・リーフ油、ナツメグの油、セージの油、及びビターアーモンドの油を含む。人工、天然又は合成のフルーツ・フレーバー、例えばバニラ、チョコレート、コーヒー、カカオ及び柑橘油(レモン、オレンジ、ブドウ、ライム及びグレープフルーツを含む)、及びフルーツ・エッセンス(リンゴ、西洋ナシ、桃、苺、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、及びアンズなどを含む)も有用である。これらのフレーバーは個別に又は混和物として使用することができる。一般に使用されるフレーバーは、個別で採用されるか混和物として採用されるかとは無関係に、ミント、例えばペパーミント、人工バニラ、シナモン誘導体、及び種々のフルーツ・フレーバーを含む。酢酸シンナミル、桂皮アルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、ジヒドロカルビルアセテート、オイゲニルホルメート、p‐メチルアニゾールなどを含むアルデヒド及びエステルのようなフレーバーを使用することもできる。
【0042】
一般に、National Academy of Sciences, 第63〜258ページによるChemicals Used in Food Processing 発行1274に記載されているような、任意のフレーバー又は食品添加物を使用することができる。アルデヒド・フレーバーの更なる例としては、非限定的に、アセトアルデヒド(リンゴ);ベンズアルデヒド(チェリー、アーモンド);桂皮アルデヒド(シナモン);シトラール、すなわちアルファ・シトラール(レモン、ライム);ネラール、すなわちベータ・シトラール(レモン、ライム);デカナール(オレンジ、レモン);エチルバニリン(バニラ、クリーム);ヘリオトロピン、すなわちピペロナール(バニラ、クリーム);バニリン(バニラ、クリーム);アルファ-アミルシナルンアルデヒド(スパイシー・フルーティ・フレーバー);ブチルアルデヒド(バター、チーズ);バレルアルデヒド(バター、チーズ);シトロネラル(変性、多くのタイプ);デカナール(柑橘フルーツ);アルデヒドC‐8(柑橘フルーツ);アルデヒドC‐9(柑橘フルーツ);アルデヒドC‐12(柑橘フルーツ);2‐エチルブチルアルデヒド(ベリー・フルーツ);ヘキセナール、すなわちトランス‐2(ベリー・フルーツ);トリルアルデキド(チェリー、アーモンド);ベラトルアルデヒド(バニラ);2,6‐ジメチル‐5‐ヘプテナール、すなわちメロナール(メロン);2‐6‐ジメチルオクタナール(未熟なフルーツ);及び2‐ドデセナール(柑橘類、マンダリン);チェリー;ブドウ;及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0043】
採用されるフレーバーの量は通常、フレーバーのタイプ、個々のフレーバー、所望の強度、及び所要の味マスキングのようなファクターに従って、好みに応じて決められる。従って、この量は、最終製品中に所望される結果を得るために変化させることができる。このような変化は、過度の実験の必要なしに、当業者の能力の範囲内で行われる。一般に約0.1〜約30wt%の量が使用可能であると共に、約2〜約25wt%の量が好ましく、そして約8〜約15wt%の量がより好ましい。
【0044】
例として天然及び人工両方の甘味料;乳化剤、例えばポリソルベート80;湿潤剤;界面活性剤;着色剤、より具体的には食品等級の着色剤;タンパク質、例えばゼラチン;ガム、例えばグアールガム;及びフレーバーに加えてフレーバー増強剤を非限定的に含む任意の成分を、種々の理由のために添加することができる。このような任意の成分は典型的には少量で、具体的には、最終調製成分の重量を基準として、全部で約30重量%未満で添加される。
【0045】
フィルムは当業者に知られた種々のプロセスによって形成することができる。例えば、澱粉を他のフィルム成分と一緒に水又は他の溶剤中に分散し、乾燥させてフィルム形態にすることができる。別の実施態様の場合、澱粉及び他の乾燥成分をブレンドして、次いで水又は他の溶剤中に任意の付加的なフィルム成分と一緒に分散し、乾燥させてフィルム形態にすることができる。例えば湿式キャスティング、凍結乾燥、及び押出成形を含む当業者に知られた任意の技術によって、好適な厚さの固化された形態にこれを成形することにより、このような分散体又は溶液から膜を形成することができる。分散体又は溶液は、別の食用生成物、錠剤又は食材上に直接的にコーティング又は噴霧し、そして乾燥させて食用フィルムを形成することもできる。
【0046】
本発明のフィルムを製造する特に好適な方法は、フィルム成分の溶液を形成することによりコーティング用配合物を調製し、活性成分を添加し、そして加熱することにより活性成分を溶液中に押し込むことによる。活性成分は、活性成分を含有する単回投与用の最終的な可溶性フィルムが所定の有効量を含むように添加される。カフェインの目標投与レベルは典型的には、単一のストリップを投与する場合、1ストリップ当たり約20mg〜約30mgとなる。
【0047】
活性成分及びフィルム形成性成分を含有する調製済混合物をナイフ、バー又は押出ダイ・コーティング法を用いて基材に適用することにより、コーティングされた基材を乾燥させて溶剤の大部分を除去し、そして基材からフィルムを除去する。好適な基材の例としては、非限定的に、シリコーン・エラストマー、金属フォイル及び金属化ポリフォイル、ポリテトラフルオラエチレン材料又はこれらと同等のものを含有する複合フォイル又はフィルム、ポリエーテルブロックアミド・コポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、及び分離可能な基材として当業者において有用な他のこのような材料が挙げられる。
【0048】
フィルムは、ある程度の水又はその他の溶剤が残っているという点で完全には乾燥されていない。水の量を制御して、所望の機能性を得ることができる。例えば、水をより多くすると、典型的にはフィルムはよりフレキシブルになる一方、あまりにも多量の水は、ブロッキングして(すなわち、積み重ねられたフィルムは互いに付着するようになり、分離するのが難しくなる)粘着性になるフィルムをもたらす。典型的には湿分約15重量%未満、より好ましくは湿分約5重量%〜約15重量%、さらにより好ましくは湿分約6重量%〜約10重量%の含水率を有することになる。
【0049】
フィルム厚は所望の最終用途に一部依存する。典型的にはフィルム厚は10〜500ミクロン、具体的には25〜200ミクロンとなる。口腔内で迅速に溶けるための口腔用フィルムとして調製する場合、フィルム厚はより好ましくは約50〜150ミクロンである。
【0050】
本発明のフィルムは、テープ、パッチ、シート、包帯、又は当業者に知られた任意のその他の形態のような物品形態を成して形成することができる。投与システムは、任意の望ましいユニット形態で生成することができる。種々の形状を有することに加えて、生成される投与ユニットは、最終用途に応じて種々のサイズで提供することができる(例えば経口投与用に構成されるか局所投与用に構成されるかとは無関係に)。
【0051】
一般に、器具は、フィルムを曲げるか又は折ることなしに口腔内に予め選択された量の薬物を送達するのに適したサイズのストリップの形態を成すことになる。厚さは広範囲にわたって、典型的には約1〜約5ミル、好ましくは約3〜約5ミル厚、好ましくは約4〜約5ミル厚の範囲にわたって変化することができる。一般に、約1インチ幅、約1.25インチ長、及び約4ミル厚(重量約105mg)のストリップが経口投与のために使用されることになる。
【0052】
フィルムは湿分及び粘着に対して耐性を示すが、しかし、水に晒されると、例えば舌又はその他の基材表面上に置かれると素早く湿潤され、続いて迅速に溶解される。澱粉の湿潤可能性及び溶解速度を当業者によって改変することにより、特定の送達プロフィールをターゲットにすることができる。例えば、フィルムが経口用フィルムである場合に、溶解がより迅速であることが典型的には好ましいのに対して、他の用途の場合には、さほど迅速でない溶解を許容することができる。
【0053】
当業者ならばフィルム配合物を改変して、プルラン及び/又は澱粉成分の操作及び他の成分の制御によって、透明性及び他の所望の特徴を提供することもできる。
フィルムは、身の回りのケア、スキンケア、創傷ケア、医薬品、息をさわやかにすることを含む種々の用途のために、任意の活性物質を送達するのに使用することができる。ヒトにおける用途に加えて、獣医学、農業及び園芸用の用途が考えられる。
【0054】
本発明のフィルムは多数回投与用のパッケージングのために積み重ねることができ、或いは、所望の場合には単回投与形態でパッケージングすることもできる。
下記例を単に説明を目的として提供する。
【実施例】
【0055】
実施例1
40gの変性食用澱粉及び0.5gのカラゲナンを、強力な撹拌を用いて、70℃の温度の100g中で溶かした。均一になったら、10gのグリセロール及び5gのプロピレングリコール、12gのフレーバー及び10gの甘味料を、撹拌しながら添加した。均一溶液に20gのカフェインを添加した。次いでFD&C色素を添加して、溶液に所望の色を与えた。混合容器からコーティング・ステーションに溶液を移動している間、混合及び温度を維持した。溶液をコーティングして乾燥させ、続いて口腔における消費に適した小片にした。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例2
40gの変性食用澱粉及び0.5gのゲランを、強力な撹拌を用いて、40℃の温度の100g中で溶かした。10gのグリセロール及び5gのプロピレングリコール、10gのフレーバー及び7gの甘味料を、溶液が均一になるまで、撹拌しながら添加した。均一溶液に、15gの臭化水素酸デキストロメトルファンを添加した。次いでFD&C色素を添加して、溶液に所望の色を与えた。溶液をコーティングして乾燥させ、続いて口腔における消費に適した小片にした。
【0058】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分とフィルム形成性成分とを含む混合物を形成し、該混合物を基材材料上にコーティングすることによりフィルムを形成し、次いで湿分約15重量%未満の含水率まで該フィルムを乾燥させることによって調製された、活性成分を含有する可溶性のフィルムであって、前記活性成分が、室温において約1g/4mL未満の水溶性を有し、そして該活性成分を含有する可溶性フィルムの単回投与形態の投与に所望の作用を与えるのに十分な量でフィルム中に存在するものである、フィルム。
【請求項2】
前記活性成分の室温における水溶性が約1g/10mL未満である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記混合物が溶液の形態を成す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記混合物に熱及び/又は撹拌を加えると、溶液が形成される、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記混合物が懸濁液の形態を成す、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
前記活性成分がカフェインである、請求項3に記載のフィルム。
【請求項7】
最終調製されたフィルムの重量を基準として約18乾燥重量%以上のカフェインを含む、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
約20乾燥重量%以上のカフェインを含む、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
約25乾燥重量%以上のカフェインを含む、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルム形成性成分が、約85%以上の化工澱粉を含む澱粉成分を含むものである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】
前記澱粉は、ヒドロキシアルキル化澱粉及びスクシネート化澱粉から成る群から選択されるものである、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
活性成分を含有する可溶性フィルムを製造する方法であって、該方法が、活性成分とフィルム形成性成分との混合物を形成し、該混合物を基材材料上にコーティングすることによりフィルムを形成し、次いで湿分約15重量%未満の含水率まで該フィルムを乾燥させることを含み、前記活性成分が、室温において約1g/4mL未満の水溶性を有し、そして該活性成分を含有する可溶性フィルムの単回投与形態の投与に所望の作用を与えるのに十分な量で使用されるものである、方法。
【請求項13】
前記混合物が溶液の形態又は懸濁液の形態を成すものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルムの重量を基準として、約18乾燥重量%以上のカフェインを含む、可溶性のカフェイン含有フィルム。
【請求項15】
単回投与フィルム当たり約20mg〜約30mgのカフェインを含む、請求項14に記載の単回投与用の可溶性フィルム。
【請求項16】
活性成分を必要又は所望する個体に前記活性成分を投与する方法であって、該方法が請求項1に記載の活性成分含有の可溶性フィルムを個体の湿潤部位に適用することを含み、該適用時に該活性成分が放出される、方法。
【請求項17】
前記フィルムが舌に適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルムが、外傷組織に適用される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記外傷組織が皮膚である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記活性成分がカフェインである、請求項17に記載の方法。

【公開番号】特開2013−56935(P2013−56935A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−262781(P2012−262781)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2006−554335(P2006−554335)の分割
【原出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(500104819)ヘンケル アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト アオフ アクチェン (6)
【Fターム(参考)】