説明

可溶性検体の検出および増幅

【課題】試料中の目的の化合物を検出する方法を提供する。
【解決手段】目的の化合物を固相で捕捉することなく認識し結合する認識部分と検出用の核酸部分とを有する結合構成物を試料と混合して溶液を生成し、溶液中で結合構成物と化合物との複合体を形成させる。認識部分を認識して結合しうる結合標的を有する磁性粒子である表面を溶液に導入して、結合していない結合構成物と表面との複合体を形成させる。磁力への曝露によって溶液から磁性粒子を取り除くことによって、結合構成物と化合物との複合体及び結合構成物と表面との複合体を含む溶液から結合構成物と表面との複合体を取り除いく。溶液中に残った結合構成物と化合物との複合体を核酸部分の有無を検出することによって検出する。核酸部分の存在によって試料中に目的の化合物が存在することが示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して化合物の検出の分野に関し、特に化合物を検出する方法および化合物の検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
病的生物に対する免疫応答の検出、または患者血清中の病原体関連タンパク質もしくは他の抗原の検出には、この15年に渡るイムノアッセイの進歩が多大な貢献をしてきている。イムノアッセイの一形態では、他の生物種の免疫グロブリンを認識するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が用いられる。生物種特異抗体(anti-species antibody )として知られるこれらの試薬は、一般に蛍光色素または酵素で標識され、免疫血清中に見出される免疫グロブリンによる抗原への結合を検出するために使用される。サンドイッチアッセイとして知られるイムノアッセイの別の形態では、病原体タンパク質に対する抗体が用いられて、例えば患者の血清または脳脊髄液(CSF)から抗原が捕捉され、該抗原がその抗原に対する別の標識抗体の結合により検出される。しかしながら、これらのアッセイは全て結合した免疫グロブリンの検出感度による制限を有し、かなり高濃度(モル濃度で)の標識試薬を必要とする。
【0003】
ごく最近のアッセイでは、非常に少ない量の核酸を検出するために、核酸増幅法、たとえばDNA増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などが用いられる。核酸増幅法によって、イムノアッセイの検出レベルよりもかなり低いレベルの血清中または環境中の病的因子を検出することが可能になりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような技法は環境からの物質混入に対し非常に敏感であることが多く、かつ目的の核酸の一部分を特定して検出用に増幅するためには該核酸の配列を予め知っておく必要がある。核酸の増幅には、増幅し検出する核酸が存在することが必要であり、従って目的の化合物がタンパク質、糖質、または核酸以外の他の分子である場合には、全く役に立たないか、用途が限られる。試料中の化合物の検出における有効性および感度のさらなる向上が望ましく、本発明は、現存する問題点に取り組み、関連する利益を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願全体にわたり種々の刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は参照によりその全体が本願に援用される。これらの文書の引用は、同文書のうちいずれかが関連する先行技術であると認めることを意図するものではない。これらの文書の日付に関する記述または内容に関する記載は本出願人が入手できた情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確さについて何ら認めるものではない。
【0006】
本発明は、試料中に少量存在する可能性のある目的の化合物を検出する方法に関する。特に、本発明は、溶液中の目的の化合物を、該目的化合物に結合する核酸標識結合構成物(核酸で標識された結合構成物)により検出し、結合していない核酸標識結合構成物を分離し、溶液相中の結合している核酸標識結合構成物を検出する方法に関する。本発明は、試料中の結合構成物の核酸部分の有無を検出し、従って目的の化合物の有無を検出するための核酸増幅方法と併用するのに特に適している。
【0007】
本発明は、溶液中から、目的の化合物に結合していないあらゆる過剰な結合構成物を分
離すること、従って偽「陽性」シグナルに対する真の「陽性」シグナルの比を大きくすることによって、化合物の検出方法の感度を高め、それによって有効性を高めることができるとの認識によるものである。本発明は、目的の化合物を固相で捕捉または検出する必要のない、汎用性のある検出システムをさらに提供する。目的の化合物がペプチドやタンパク質などの核酸以外の分子を含む場合、本発明の方法は、目的のペプチドもしくはタンパク質を特定し、検出用にDNA増幅を利用するために、該ペプチドもしくはタンパク質をコードする核酸配列を予め知っておく必要がない、という利点をさらに提供する。
【0008】
本発明の一態様は、試料中の目的の化合物を検出する方法であって、結合構成物を使用することを特徴とする方法である。結合構成物は、目的の化合物を認識して結合する認識部分と、核酸部分とを含む。結合構成物を試料と混合すると、認識部分が目的の化合物と結合して構成物と化合物との複合体を形成する。本発明は結合構成物の認識部分に結合し得る1または複数の接触可能な結合標的を有する表面も含む。該表面を試料および結合構成物の混合物と接触させると、該表面の接触可能な結合標的が、結合していないあらゆる過剰な結合構成物と結合して構成物と表面との複合体を形成する。十分なインキュベーションの後、構成物と表面との複合体および全ての結合していない過剰な表面を混合物から分離して、溶液中に構成物と化合物との複合体を残す。分離後、溶液を分析して結合構成物の核酸部分の有無を検出するが、結合構成物の核酸部分が存在することにより試料中に目的の化合物が存在することが示される。
【0009】
本発明の第2の態様は、試料中の目的の化合物を溶液相で検出する際の感度を増大させる方法である。該方法は、目的の化合物を含んでいると思われる試料を提供することと、目的の化合物に結合し得る認識部分および核酸部分を含む結合構成物を提供することと、試料を結合構成物と十分な時間接触させて、試料中の目的の化合物が全て認識部分と結合して溶液中に構成物と化合物との複合体が形成されるようにすることとを含む。該方法は、認識部分に結合し得る1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を提供することと、該表面を溶液と十分な時間接触させて、接触可能な結合標的が目的の化合物に結合していない全ての結合構成物の認識部分と結合して構成物と表面との複合体が形成されるようにすることをさらに含む。構成物と表面との複合体は溶液から分離され、溶液中には構成物と化合物との複合体が残る。溶液中の、結合構成物の核酸部分の有無が検出される。溶液から構成物と表面との複合体を分離することにより、目的の化合物に結合していないほぼ全ての結合構成物が分離され、目的の化合物の検出感度が増大し、結合構成物の核酸部分の存在が試料中の目的の化合物の存在を示す。
【0010】
本発明の第3の態様は、目的の化合物を検出するためのキットであって、目的の化合物を認識して結合する認識部分と核酸部分とを含んでなる結合構成物を含むキットである。本発明のキットは、結合構成物の認識部分に結合し得る1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面も含む。本発明のキットは任意選択で核酸増幅用プライマー対も含みうるが、該プライマー対の各プライマーは結合構成物の核酸部分の標的核酸配列の3’末端において相補配列にハイブリダイズする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】それぞれ認識部分と核酸部分とを含む、複数の結合構成物を示す図。実施例1を参照のこと。
【図2】複数の結合構成物を示す図。一部の結合構成物は目的の化合物を認識して認識部分に結合し、構成物と化合物との複合体を形成している。実施例1を参照のこと。
【図3】接触可能な結合標的を有する表面を示す図。接触可能な結合標的は結合構成物の認識部分により認識されて結合し、構成物と表面との複合体が形成される。実施例1を参照のこと。
【図4】構成物と表面との複合体の、構成物と化合物との複合体からの分離を示す図。実施例1を参照のこと。
【図5】実施例2の結果を示す図。Mopep2粒子は、モノクローナル抗体12D5(12D.5 Mab)とセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)との結合物に結合して溶液から分離し、従って12D.5 MabとHRPOとの結合物がMopep2でコーティングされたウェルに用量依存的に結合するのを阻害することが可能である。ウシ血清アルブミン(BSA)でコーティングされた粒子は、12D.5 MabとHRPOとの結合物がMopep2でコーティングされたウェルに結合するのを阻害することができなかった。ODは光学密度を示す。
【図6】実施例4の結果を示す図。実施例4では、目的の化合物を検出するために、結合構成物の核酸部分をPCRにより増幅する本発明の方法を用いた。この実施例では、結合構成物Fab‐DNA(Mab 12D.5/pUC19構成物)が、目的の化合物すなわち遊離の抗原(細菌の組換えOMPE断片またはrOMPE)に結合して溶液中に構成物と化合物との複合体を形成する能力について実証された。接触可能な結合標的(Mopep2粒子)を有する表面(磁性粒子)は、目的の化合物に結合していない全てのFab‐DNAに結合した。磁石を用いて該表面を分離して、核酸増幅に利用可能な結合構成物の核酸部分(pUC19)を備えた構成物と化合物との複合体(抗原に結合したFab‐DNA)を溶液中に残した。ポリメラーゼ連鎖反応による増幅の結果、検出可能な2.6kbのDNA断片が次の試料、すなわち790pg、395pg、198pg、98pg、および12pgについて得られた。49pgおよび24pgの試料においては非常に細い2.6kbのバンドが観察された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[序論]
本発明は、偽「陽性」シグナルに対する真の「陽性」シグナルの比を大きくすることによって、化合物の検出方法の感度を高め、それによって該方法の有効性を高めることができるとの認識によるものである。本発明は、目的の化合物を固相で検出する必要のない検出システムの汎用性をさらに認めるものであり、核酸を含まない目的の化合物の検出においても(核酸増幅などの)シグナル増幅法の利点を享受することの価値を認めるものである。
【0013】
本発明の幅広さに関する非限定的な序論として、本発明は一般的かつ有用ないくつかの態様を含み、該態様は:
(1)試料中の目的の化合物を検出する方法であって、目的の化合物を認識して結合する認識部分と核酸部分とを含む結合構成物を提供する工程と、結合構成物を試料と混合して構成物と化合物との複合体を形成させる工程と、結合構成物の認識部分を認識して結合し得る1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を提供する工程と、表面を結合構成物と試料との混合物に導入して、結合していない全ての結合構成物とともに表面が構成物と表面との複合体を形成するようにする工程と、混合物から構成物と表面との複合体を分離して構成物と化合物との複合体を残す工程と、結合構成物の核酸部分の有無を検出する工程とを含み、結合構成物の核酸部分の存在が試料中に目的の化合物が存在することを示すことを特徴とする方法。
【0014】
(2)目的の化合物の溶液相での検出の感度を増大させる方法であって、目的の化合物を含んでいると思われる試料を提供する工程と、目的の化合物に結合し得る認識部分および核酸部分を含む結合構成物を提供する工程と、試料を結合構成物と十分な時間接触させて、試料中の目的の化合物が全て認識部分と結合して溶液中に構成物と化合物との複合体が形成されるようにする工程と、認識部分に結合し得る1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を提供する工程と、該表面を該溶液と十分な時間接触させて、接触可能な結合標的が目的の化合物に結合していない全ての結合構成物の認識部分と結合して構成物と表面との複合体が形成されるようにする工程と、構成物と表面との複合
体を溶液から分離し、溶液中に構成物と化合物との複合体を残す工程と、溶液中の、結合構成物の核酸部分の有無を検出する工程とを含み、溶液から構成物と表面との複合体を分離することにより、目的の化合物に結合していないほぼ全ての結合構成物が分離され、目的の化合物の検出感度が増大することと、結合構成物の核酸部分の存在が試料中の目的の化合物の存在を示すこととを特徴とする方法。
【0015】
(3)目的の化合物を検出するためのキットであって、目的の化合物を認識して結合する認識部分と核酸部分とを含んでなる結合構成物と、結合構成物の認識部分に結合し得ることが知られている1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面とを含むキット。該キットは、任意選択で、各プライマーが結合構成物の核酸部分の標的核酸配列の3’末端において相補配列にハイブリダイズする核酸増幅用プライマー対を含む。
【0016】
本発明は、体液、生体抽出物、または環境試料などの試料中に存在する目的の化合物を、該化合物を認識して結合し得る核酸標識結合構成物を用いて検出する感度の良い方法に関する。この化合物検出方法は、可溶性検体の検出および増幅と呼ばれる。本発明は、目的の化合物が少量存在する試料について使用するのに特に適した、目的の化合物の検出方法を提供する。「感度」は、陽性および陰性として従来知られている2つのカテゴリーを識別するように設計されたシステムによって検出された真の陽性の割合として定義することができる。本発明では、過剰量の結合構成物を提供し、次いで試料から全ての結合していない(すなわち目的の化合物に結合していない)過剰な結合構成物(これを検出すると偽「陽性」シグナルとなる)を分離することによって、目的の化合物と結合して構成物と化合物との複合体となっており真の「陽性」シグナルとして検出される結合構成物のみが溶液中に残るようにすることが可能なので、検出感度が増強される。従って、検出感度は結合していない過剰な結合構成物を溶液から分離する効率に比例する。本発明はまた、検出が溶液相で実施され、固相での検出に限定されないので、一般に用途がより広くなる。さらに、目的の化合物を認識して結合するために必要な結合実体(結合構成物)が1つだけであるため、2つの結合実体を用いる方法に伴う問題、例えば2つの抗体を用いるサンドイッチアッセイなどで発生しうるような、第1の抗体の結合によって誘発された構造変化に由来する立体障害や感度低下の可能性などの問題が回避される。
【0017】
本発明のさらなる目的および利点は、説明を続けるうちに、また添付の図面と併せれば明らかになるであろう。本発明の範囲を完全に理解するためには、本発明の種々の態様を組み合わせて本発明の望ましい実施形態を作製しうることをさらに認識するべきであろう。
【0018】
別途規定されないかぎり、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は本発明が所属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。概して、本明細書で使用される用語ならびに後述する製造手順または実験手順は、当技術分野でよく知られ一般的に用いられている。本明細書で使用される技術用語は、様々な専門辞典に例示されているとおり、該用語が使用される分野における通常の意味を有している。ある用語が単数形で提示される場合、本発明者らは該用語の複数形も意図している。本明細書で使用される用語ならびに後述する手順は、当技術分野でよく知られ一般的に用いられている。援用されている参照文献において使用される用語および定義に矛盾がある場合は、本願で使用される用語は本明細書で与えられた定義によるものとする。本明細書で使用されるその他の技術用語は、様々な専門辞典(例えば、Chambers Dictionary of Science and Technology, Peter M.B. Walker編、Chambers Harrap Publishers, Ltd., Edinburgh, UK, 1999, p.1325 )に例示されているとおり、該用語が使用される分野における通常の意味を有している。本発明者らは、ある作用メカニズムまたは作用様式に限定するつもりはない。作用メカニズムまたは作用様式について言及するのは単に例示のためである。
【0019】
I.試料中の目的の化合物を検出する方法
本発明の第1の方法は、試料中の非常に少ない量の目的の化合物の存在を検出し得る、試料中の目的の化合物を検出するための感度の高い方法を含む。本発明の第1の方法は、核酸標識結合構成物による目的の化合物の認識と、1または複数の結合標的を有する1または複数の表面を用いた結合していない核酸標識結合構成物の分離と、前記結合構成物の核酸部分の有無を溶液中で検出することとを要し、結合構成物の核酸部分の存在が、目的の化合物が試料中に存在することを示すことを特徴とする。目的の化合物を含むと思われる試料は、例えば、完全に天然のものであってもよいし、完全に非天然のもの(例えば合成物)であってもよいし、天然物と非天然物との組合せであってもよい。試料としては、完全な細胞、組織、器官、体液、抽出物、または環境試料が挙げられる。
【0020】
本発明の第1の方法には、結合構成物の使用が含まれる。結合構成物を試料と混合し、結合構成物の認識部分が目的の化合物に結合して構成物と化合物との複合体が溶液中に形成されるようにする。
【0021】
結合構成物は、目的の化合物を認識かつ結合しうる認識部分と、核酸部分とを含む。認識部分は、目的の化合物を認識かつ結合しうる実質的に任意の分子または分子の組合せを含みうる。そのような認識部分には、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、抗体、Fab断片、核酸、核酸模倣物、細胞表面抗原、糖質、またはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、認識部分は抗体(天然型、修飾型、もしくは組換え型)または抗体断片(例えばFab断片もしくは一本鎖抗体可変領域断片)を含む。他の実施形態では、認識部分は、抗体に結合する抗原、ペプチドもしくは小分子などの標的に結合するアプタマー、またはリガンドに結合する受容体を含みうる。好適な一実施形態では、認識部分は目的の化合物に一価として結合する。別の好適な実施形態では、認識部分は、多価として、例えば二価としてかつ任意選択で二重特異性をもって目的の化合物に結合する。
【0022】
結合構成物の核酸部分は、検出可能な任意の核酸または核酸模倣物を含みうる。結合構成物の核酸部分として使用される核酸には、任意の種類の核酸、例えばDNAもしくはRNA、または核酸模倣物(例えば、限定するものではないが、ペプチド核酸)、またはこれらの組合せが挙げられる。本発明の核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。好適な一実施形態では、本発明の結合構成物に含まれる核酸部分の配列は、試料中に見出されることが予測される配列を含まない配列であり、従って試料中の核酸配列が混入物になりにくいことが期待されながらも、容易に検出可能なように設計される。核酸部分は、選択した検出方法で容易に検出されるのに十分な長さであることが好ましい。
【0023】
認識部分は、任意の方法により、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的に核酸部分に結合させればよく、結合方法は所与の認識部分の性質によって変わることになる。非共有結合により結合させる方法には、限定するものではないが、物理的吸着、静電力、イオン相互作用、水素結合、親水性・疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および磁力が挙げられる。所望の場合、例えば可撓性を増大させる必要がある場合、スペーサー腕部を用いて認識部分を間接的に核酸部分に結合させればよい。認識部分を、共有結合、またはビオチンとアビジンとの相互作用など親和性の高い非共有結合の相互作用により核酸部分に結合にさせることが好ましい。
【0024】
本発明の第1の方法は、結合構成物の認識部分によって認識され該認識部分に結合することが知られている1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を使用することを含む。そのような表面は、液体試料から分離可能な任意の粒子でもよいし、平面状もしくは非平面状の表面またはこれらの組合せなどの、粒子状でない表面であって
もよい。表面は任意選択で例えばチャンバ内などに封入されていてもよい。結合標的には、結合構成物の認識部分によって認識され該認識部分に結合しうる任意の標的、例えば抗体の可変領域のミモトープペプチドもしくはエピトープ模倣物、抗原全体もしくは部分抗原、核酸、または糖部分などが挙げられる。接触可能な結合標的を任意の方法により表面に結合させることが可能であり、結合方法は所与の表面および結合標的によって変わることになる。
【0025】
試料と結合構成物との混合物に表面が導入される場合、十分にインキュベーションされた後、表面の接触可能な結合標的は結合していない全ての結合構成物の認識部分と結合して、構成物と表面との複合体を形成する。次いで、構成物と表面との複合体および全ての結合していない表面を、試料中の溶液状の構成物と化合物との複合体から分離するが、分離は表面の種類に適した方法、例えば磁性粒子を分離するためには磁石、平面状の表面については液体の移動(デカンテーション)、または圧力もしくは真空、遠心分離、濾過による分離である。代替例として、目的の化合物に結合して構成物と化合物との複合体となっていない全ての結合構成物を、沈殿、「塩析」、サイズ排除法もしくは濾過、抽出、または相分離(これらに限定はされない)などの方法によって溶液から分離することも可能である。
【0026】
分離工程後、結合構成物の核酸部分の有無を検出することにより、試料中の目的の化合物の有無を判定する。結合構成物の核酸部分の有無は、核酸の有無を検出することのできる任意の方法、例えば酵素による増幅、ハイブリダイゼーション、または標識の検出によって検出可能である。本発明の一実施形態では、本方法は、例えば適切なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応による核酸部分の増幅によって結合構成物の核酸部分の有無を検出するように適合されていることが好ましい。この実施形態では、ごくわずかな、少なくともわずか1つの構成物と化合物との複合体があれば核酸の増幅の鋳型としての役割を果たす。増幅された核酸は、任意の適切な方法を用いて、例えば標識オリゴヌクレオチドを用いて、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動で適切なバンドを検出することにより、測定または検出することができる。
【0027】
本発明の一実施形態では、分析しようとする試料には目的の化合物が2種類以上含まれていてもよい。試料中の2種類以上の異なる目的化合物を検出するためには、各々が異なる化合物を認識し得る異なる認識部分を有している2種類以上の異なる結合構成物が提供される。該結合構成物は、試料中の2種類以上の目的化合物の有無を検出するために、結合構成物の種類ごとにそれぞれ固有の核酸部分を含む。
【0028】
II.目的の化合物の溶液相での検出の感度を増大させる方法
本発明の第2の方法は、目的の化合物の溶液相での検出の感度を増大させる方法を含む。本方法は、目的の化合物を低濃度または少量含むと思われる試料に特に適している。
【0029】
本発明の第2の方法は、目的の化合物を含むと思われる試料を提供する工程と、目的の化合物に結合し得る認識部分と核酸部分とを含む結合構成物を提供する工程と、試料を結合構成物と十分な時間接触させて、認識部分が試料中の全ての目的の化合物に結合して溶液中に構成物と化合物との複合体が形成されるようにする工程と、認識部分に結合し得る1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を提供する工程と、該表面を溶液と十分な時間接触させて、接触可能な結合標的が目的の化合物に結合していない全ての結合構成物の認識部分と結合して構成物と表面との複合体が形成されるようにする工程と、構成物と表面との複合体を溶液から分離し、溶液中に構成物と化合物との複合体を残す工程と、溶液中の、結合構成物の核酸部分の有無を検出する工程とを含む方法であって、溶液から構成物と表面との複合体を分離することにより、目的の化合物に結合していないほぼ全ての結合構成物が分離され、目的の化合物の検出感度が増大すること、およ
び結合構成物の核酸部分の存在が試料中の目的の化合物の存在を示すことを特徴とする方法である。
【0030】
本発明の第2の方法は、目的の化合物を含むと思われる試料を提供する工程と、結合構成物を提供する工程とを含む。目的の化合物を含むと思われる試料は、例えば、完全に天然のものであってもよいし、完全に非天然のもの(例えば合成物)であってもよいし、天然物と非天然物との組合せであってもよい。試料としては、完全な細胞、組織、器官、体液、抽出物、または環境試料が挙げられる。結合構成物は、目的の化合物を認識かつ結合しうる認識部分と、核酸部分とを含む。試料を結合構成物と十分な時間接触させて、結合構成物の認識部分が目的の化合物に結合して溶液中に構成物と化合物との複合体が形成されるようにする。
【0031】
結合構成物の認識部分は、目的の化合物を認識かつ結合しうる実質的に任意の分子または分子の組合せを含みうる。そのような認識部分には、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、抗体、Fab断片、核酸、核酸模倣物、細胞表面抗原、糖質、またはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、認識部分は抗体(天然型、修飾型、もしくは組換え型)または抗体断片(例えばFab断片もしくは一本鎖抗体可変領域断片)を含む。他の実施形態では、認識部分は、抗体に結合する抗原、ペプチドもしくは小分子などの標的に結合するアプタマー、またはリガンドに結合する受容体を含みうる。好適な一実施形態では、認識部分は目的の化合物に一価として結合する。別の好適な実施形態では、認識部分は、多価として、例えば二価としてかつ任意選択で二重特異性をもって目的の化合物に結合する。
【0032】
結合構成物の核酸部分は、検出可能な任意の核酸または核酸模倣物を含みうる。結合構成物の核酸部分として使用される核酸には、任意の種類の核酸、例えばDNAもしくはRNA、または核酸模倣物(例えば、限定するものではないが、ペプチド核酸)、またはこれらの組合せが挙げられる。本発明の核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。好適な一実施形態では、本発明の結合構成物に含まれる核酸部分の配列は、試料中に見出されることが予測される配列を含まない配列であり、従って試料中の核酸配列が混入物になりにくいことが期待されながらも、容易に検出可能なように設計される。核酸部分は、選択した検出方法で容易に検出されるのに十分な長さであることが好ましい。
【0033】
認識部分は、任意の方法により、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的に核酸部分に結合させればよく、結合方法は所与の認識部分の性質によって変わることになる。非共有結合により結合させる方法には、限定するものではないが、物理的吸着、静電力、イオン相互作用、水素結合、親水性・疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および磁力が挙げられる。所望の場合、例えば可撓性を増大させる必要がある場合、スペーサー腕部を用いて認識部分を間接的に核酸部分に結合させればよい。認識部分を、共有結合、またはビオチンとアビジンとの相互作用など親和性の高い非共有結合の相互作用により核酸部分に結合にさせることが好ましい。
【0034】
本発明の第2の方法は、結合構成物の認識部分によって認識され該認識部分に結合することが知られている1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を提供することを含む。そのような表面は、液体試料から分離可能な任意の粒子でもよいし、平面状もしくは非平面状の表面またはこれらの組合せなどの、粒子状でない表面であってもよい。表面は任意選択で例えばチャンバ内などに封入されていてもよい。結合標的には、結合構成物の認識部分によって認識され該認識部分に結合しうる任意の標的、例えば抗体の可変領域のミモトープペプチドもしくはエピトープ模倣物、抗原全体もしくは部分抗原、核酸、または糖部分などが挙げられる。接触可能な結合標的を任意の方法により表面に結合させることが可能であり、結合方法は所与の表面および結合標的によって変わるこ
とになる。
【0035】
表面を溶液と十分な時間接触させて、接触可能な結合標的が目的の化合物に結合していない全ての結合構成物の認識部分と結合して構成物と表面との複合体が形成されるようにする。構成物と表面との複合体ならびに結合していない過剰な表面を溶液から分離し、構成物と化合物との複合体を残す。分離は、表面の種類に適した任意の方法でよく、例えば磁性粒子を分離するためには磁石、平面状の表面については液体の移動(デカンテーション)、または圧力もしくは真空、遠心分離、濾過による分離である。代替例として、目的の化合物に結合して構成物と化合物との複合体となっていない全ての結合構成物を、沈殿、「塩析」、サイズ排除法もしくは濾過、抽出、または相分離(これらに限定はされない)などの方法によって溶液から分離することも可能である。構成物と表面との複合体ならびに結合していない全ての過剰な表面を分離することにより、目的の化合物に結合していない実質的に全ての結合構成物が分離される。より好ましくは、目的の化合物に結合していない全ての結合構成物が溶液から分離される。構成物と表面との複合体ならびに結合していない全ての過剰な表面を分離することにより、目的の化合物に結合していない結合構成物から生じる「偽」陽性シグナルが減少し、従って結合していない過剰な結合構成物が分離されないアッセイに比べて目的の化合物の検出感度が増大する。
【0036】
分離工程後、結合構成物の核酸部分の有無を検出することにより、試料中の目的の化合物の有無を判定する。結合構成物の核酸部分の有無は、核酸の有無を検出することのできる任意の方法、例えば酵素による増幅、ハイブリダイゼーション、または標識の検出によって検出可能である。本発明の一実施形態では、本方法は、例えば適切なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応による核酸部分の増幅によって結合構成物の核酸部分の有無を検出するように適合されていることが好ましい。この実施形態では、ごくわずかな、少なくともわずか1つの構成物と化合物との複合体があれば核酸増幅の鋳型としての役割を果たす。増幅された核酸は、任意の適切な方法を用いて、例えば標識オリゴヌクレオチドを用いて、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動で適切なバンドを検出することにより、測定または検出することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、分析しようとする試料には目的の化合物が2種類以上含まれていてもよい。試料中の2種類以上の異なる目的化合物を検出するためには、各々が異なる化合物を認識し得る異なる認識部分を有している2種類以上の異なる結合構成物が提供される。該結合構成物は、試料中の2種類以上の目的化合物の有無を検出するために、結合構成物の種類ごとにそれぞれ固有の核酸部分を含む。
【0038】
III.目的の化合物を検出するためのキット
本発明は、試料中の非常に少ない量の目的の化合物の存在を検出し得る、試料中の目的の化合物を検出するために使用されるキットも含む。
【0039】
本発明のキットは結合構成物を含む。結合構成物は、目的の化合物を認識かつ結合し得る認識部分と、核酸部分とを含む。認識部分は、目的の化合物を認識かつ結合しうる実質的に任意の分子または分子の組合せを含みうる。そのような認識部分には、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、抗体、Fab断片、核酸、核酸模倣物、細胞表面抗原、糖質、またはこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、認識部分は抗体(天然型、修飾型、もしくは組換え型)または抗体断片(例えばFab断片もしくは一本鎖抗体可変領域断片)を含む。他の実施形態では、認識部分は、抗体に結合する抗原、ペプチドもしくは小分子などの標的に結合するアプタマー、またはリガンドに結合する受容体を含みうる。好適な一実施形態では、認識部分は目的の化合物に一価として結合する。別の好適な実施形態では、認識部分は、多価として、例えば二価としてかつ任意選択で二重特異性をもって目的の化合物に結合する。
【0040】
結合構成物の核酸部分は、検出可能な任意の核酸または核酸模倣物を含みうる。結合構成物の核酸部分として使用される核酸には、任意の種類の核酸、例えばDNAもしくはRNA、または核酸模倣物(例えば、限定するものではないが、ペプチド核酸)、またはこれらの組合せが挙げられる。本発明の核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。好適な一実施形態では、本発明の結合構成物に含まれる核酸部分の配列は、試料中に見出されることが予測される配列を含まない配列であり、従って試料中の核酸配列が混入物になりにくいことが期待されながらも、容易に検出可能なように設計される。核酸部分は、選択した検出方法で容易に検出されるのに十分な長さであることが好ましい。
【0041】
認識部分は、任意の方法により、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的に核酸部分に結合させればよく、結合方法は所与の認識部分の性質によって変わることになる。非共有結合により結合させる方法には、限定するものではないが、物理的吸着、静電力、イオン相互作用、水素結合、親水性・疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および磁力が挙げられる。所望の場合、例えば可撓性を増大させる必要がある場合、スペーサー腕部を用いて認識部分を間接的に核酸部分に結合させればよい。認識部分を、共有結合、またはビオチンとアビジンとの相互作用など親和性の高い非共有結合の相互作用により核酸部分に結合にさせることが好ましい。
【0042】
本発明のキットは、結合構成物の認識部分によって認識され該認識部分に結合することが知られている1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面も含む。そのような表面は、液体試料から分離可能な任意の粒子でもよいし、平面状もしくは非平面状の表面またはこれらの組合せなどの、粒子状でない表面であってもよい。表面は任意選択で例えばチャンバ内などに封入されていてもよい。結合標的には、結合構成物の認識部分によって認識され該認識部分に結合しうる任意の標的、例えば抗体の可変領域のミモトープペプチドもしくはエピトープ模倣物、抗原全体もしくは部分抗原、核酸、または糖部分などが挙げられる。接触可能な結合標的を任意の方法により表面に結合させることが可能であり、結合方法は所与の表面および結合標的によって変わることになる。
【0043】
結合構成物の核酸部分が核酸の増幅によって検出される実施形態では、キットは、核酸増幅用のプライマー対、例えば各プライマーが核酸部分の標的核酸配列の3’末端で相補配列にハイブリダイズするPCRプライマー対を任意選択で含みうる。キットは、核酸増幅用の酵素、例えばTaqポリメラーゼまたはRNA逆転写酵素などを任意選択でさらに含みうる。結合構成物の核酸部分が核酸のハイブリダイゼーションによって検出される実施形態では、キットは、1つ以上のハイブリダイゼーション用プローブ、例えば検出可能な標識で標識されたオリゴヌクレオチドを含んでいるとよい。シグナルの増幅を含む実施形態では、キットは、シグナルの増幅に必要な試薬、例えば酵素または基質などを任意選択で含みうる。本発明のキットは、結合構成物の核酸部分を直接検出するための試薬、例えば分子ビーコンや適切な抗体などを任意選択で含みうる。キットは、構成物と表面との複合体と、結合していない全ての表面とを分離する手段、例えば表面が磁性粒子の実施形態については磁石、表面が濾過可能な粒子状物の実施形態についてはフィルタ、表面がチューブの管壁の実施形態についてはピペットを任意選択で含みうる。
【0044】
本発明のキットは、任意選択で、キットの使用説明書を含んでいてもよい。そのような説明書は、例えば冊子、小冊子、パンフレット、ブックレット、または視聴覚教材など任意の適切な形態であってよい。説明書は、キットの使用者が試料中の目的の化合物を検出するためにキットを正しく使用できるように十分詳細にわたることが好ましい。そのような説明書には、例えば、試薬の混合、キットの構成要素の操作、試料の適切な取扱についての説明、安全対策および結果の解釈についての手引き、ならびに不具合への対処に関する説明などが含まれうる。
【0045】
[目的の化合物]
本発明の方法およびキットは、様々な種類の目的の化合物を検出するために使用することができる。本発明の方法は、試料中に少量または低濃度で存在すると思われる目的の化合物を検出するのに特に適している。目的の化合物としては、限定するものではないが、核酸、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、レクチン、抗体、酵素、および受容体;糖質(単糖、オリゴ糖、および多糖)およびグリコシル化された分子;脂質、脂肪、脂質化分子;ならびに抗原全体または部分抗原が挙げられる。目的の化合物は、小分子(例えば、受容体のリガンド、乱用薬物、無機イオン、金属もしくはキレート、代謝物、化学物質中間体、または天然産物)であってもよい。目的の化合物は、モノマーでも、オリゴマーでも、ポリマーでもよく、複数の分子の会合体(例えば、アミロイドβプロトフィブリル、ジストロフィンと糖タンパク質との会合体、プロテアソーム、シャペロンタンパク質、または細胞壁もしくは細胞膜の断片など)であってもよい。目的の化合物は、完全に天然物由来のものでもよいし、完全に人工物由来のものでもよいし、両方の組合せ(例えば天然の化合物を化学的もしくは物理的に修飾したもの)であってもよい。
【0046】
[試料]
本発明の方法は、目的の化合物を含むと思われる任意の適切な試料に適用することができる。試料は完全に天然のものであってもよいし、完全に非天然のもの(例えば合成物)であってもよいし、天然物と非天然物との組合せであってもよい。試料は、完全な細胞(例えば、原核細胞、細菌の細胞、真核細胞、植物細胞、菌類の細胞、または無脊椎動物、脊椎動物、哺乳動物、およびヒトなどの多細胞生物由来の細胞)、組織、器官、または体液(例えば、限定するものではないが、血液、血清、血漿、尿、精液、および脳脊髄液)を含みうる。試料は、生体材料(例えば原核生物、細菌、真核生物、植物、菌類、多細胞生物または動物、無脊椎動物、脊椎動物、哺乳動物、およびヒト由来のもの)から得られた抽出物であってもよい。試料は、生物全体もしくは生物の一部、細胞、器官、組織、体液、培養物全体もしくは培養物の一部、または環境試料もしくはその一部から得られた抽出物であってもよい。試料は、本発明の方法で使用するために最小限の調製(例えば適切な容器に回収すること)しか必要ないものでもよいし、さらなる調製(例えば、限定するものではないが、望ましくない物質もしくは混入物の除去、不活性化、もしくは阻害、濾過、サイズ選択、アフィニティ精製、細胞の溶解もしくは組織の消化、濃縮、または希釈)を要するものでもよい。試料は、処理(例えば、機械的破砕、溶解、加熱、溶剤の添加、または懸濁剤などによる処理)することによって溶液中に構成物と化合物との複合体を検出できる限りは、いかなる相(固体、液体、または気体)であってもよく、溶液状でも懸濁物でもよい。例えば、試料は、緩衝剤水溶液に懸濁し、任意選択で濾過して望ましくない粒子状物質を結合構成物の導入前に除去した土壌試料であってもよい。
【0047】
[結合構成物]
本発明は結合構成物を含む。結合構成物は、目的の化合物を認識かつ結合し得る認識部分と、核酸部分とを含む。認識部分は、目的の化合物を認識かつ結合し得る、事実上あらゆる分子または分子の組合せでありうる。そのような認識部分には、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、ミモトープ、抗体、Fab断片、核酸、核酸模倣物、アプタマー、細胞表面抗原、糖質、小分子(例えば低分子の抗原または受容体のリガンド)、無機イオンもしくはキレート、またはこれらの組合せが挙げられる。特に好適なのは、目的の化合物に一価として結合し得る認識部分である。
【0048】
一実施形態では、認識部分は抗体、例えばヒトまたはその他の哺乳動物のIgG、IgG、IgG、IgG、IgG、IgM、IgA、SigA、もしくはIgE、または鳥類のIgYであり、好適な一実施形態では、認識部分は抗体断片である。目的の化合物に対する抗体および抗体断片の調製については当技術分野でよく知られている。その
技法については、例えば、"Antibodies, A Laboratory Manual", 1988, Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press および最新版の"Using Antibodies, A Laboratory Manual", 1999, Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press に記載されている。認識部分が抗体または抗体断片である場合、天然型(例えば血清から単離された免疫グロブリン)でもよいし、修飾型(例えば還元または脱グリコシル化された抗体)でもよいし、組換え型(例えばファージディスプレイにより生産された抗体)でもよいし、これらの組合せであってもよい。
【0049】
認識部分は、天然型、修飾型、または組換え型の、結合性の抗体断片、例えばFab断片、または例えば一本鎖抗体の可変領域の断片もしくは免疫グロブリンの軽鎖ドメインおよび重鎖ドメインの組換え可変領域がリンカー配列で接続されているScFv(Pantoliano et al., 1991, Biochemistry, 30:10117-10125 )であってもよい。一実施形態では、結合構成物の認識部分は、目的の化合物に一価として結合し得るFab断片を含む。目的の化合物に対するFab断片は、目的の化合物に対する抗体が、重鎖を繋いでいるジスルフィド架橋の還元または酵素的切断によって切断されて、1つの抗体が2つの別個のFab断片となり、該断片がそれぞれ目的の化合物を認識かつ結合可能であり、かつ別の分子(例えば結合構成物の核酸部分)に結合可能な反応性のスルフヒドリル基もしくはチオール基を有している場合に得られる。一実施形態では、Fab断片の遊離スルフヒドリル基を介して該Fab断片が核酸部分に共有結合により直接結合して結合構成物を形成してもよい。別の実施形態では、Fab断片は、Fab断片と核酸部分との両方に特異的に結合して結合構成物を形成しうる二機能性のリンカーを介して、結合構成物の核酸部分に間接的に共有結合されてもよい。代替例として、本発明の認識部分は、非共有結合による方法、例えばアビジンとビオチンとの相互作用、亜鉛とポリヒスチジンとの相互作用、抗体と抗原との相互作用、アプタマーとペプチドとの相互作用、または亜鉛結合性を有するポリペプチドドメインなどの核酸に結合し得る他のポリペプチドを介して核酸部分に結合されてもよい。
【0050】
認識部分(例えば、ペプチド、ミモトープ、抗体、またはアプタマー)は、天然の分子,人工の分子、融合分子もしくはキメラ分子、ランダム・非ランダムなコンビナトリアル合成(Dooley and Houghten, 1993, Life Sci., 52, p.1509-1517; Kramer et al., 1993, Peptide Res., 6, p.314-319; Folgori et al., 1994, EMBO J., 13, p.2236-2243; Smith and Petrenko, 1997, Chem. Rev., 97, p.391-410 )もしくは定向進化法、例えば酵母のツーハイブリッドシステム、タンパク質再構成アッセイ(protein fragment complementation assay)、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、および細菌表面ディスプレイなどの技法(Crameri and Suter, 1993, Gene, 137, p.69-75; Meola et al., 1995, J. Immunol., 154, p.3162-3172; Georgiou et al., 1997, Nature Biotechnol., 15, p.29-34; Moessner and Plueckthun, 2001, Chimia, 55, p.324; B.K. Kay, J. Winter, and J. McCafferty (editors), "Phage Display of Peptides and proteins: A Laboratory Manual", Academ ic Press, Inc., San Diego, 1996, p.344 )により作出された分子、またはこれらの組合せを含みうる。認識部分は、当分野
で知られている任意の適切な手段、例えばアフィニティ選択、アフィニティ精製、パニングの反復、または表面プラズモン共鳴技術など(Faegerstam et al., 1991, J. Mol. Recognition, 3, p.208-214; Houshmand et al., 1999, Anal. Biochem., 268, p.363-370)により目的の化合物を認識かつ結合する能力について選択可能である。
【0051】
結合構成物の認識部分は、目的の化合物に対して一価として結合してもよいし多価として結合してもよい。好適な一実施形態では、結合構成物の認識部分は、目的の化合物に対して一価として結合する。一価の結合の例には、限定するものではないが、一価として抗原に結合するFab断片、一価としてリガンドに結合する受容体分子、および一価としてペプチドに結合するアプタマーが挙げられる。ある種の他の実施形態では、結合構成物の
認識部分は、目的の化合物に対して多価として、例えば二価または三価として結合することが好ましい。例えば、結合構成物と目的の化合物との間の結合の親和力を増大させるためには、多価であることが望ましい。一部の実施形態では、結合構成物の認識部分は、目的の化合物に対して二価でありかつ二重特異性をもって結合しうる(すなわち、認識部分が目的の化合物の2つの別個の特異的結合部位を認識かつ結合しうる)。単一特異性の二価の結合の例は、抗体断片の二量体または単一特異性をもって結合するように設計された二重特異性抗体(diabody )(Holliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, p.6444-6448)である。二重特異性の二価抗体の例は、目的の化合物の2つの別個の結合部位に結合するように設計された二重特異性抗体である。
【0052】
結合構成物の核酸部分は、検出可能な任意の核酸または核酸模倣物を含みうる。結合構成物の核酸部分として使用される核酸には、例えばDNAもしくはRNA、核酸模倣物(限定するものではないが、例えばペプチド核酸)、またはこれらの組合せなどの任意の種類の核酸が挙げられる。この態様では、結合構成物の核酸部分は検出用マーカーとして、例えば核酸の増幅、核酸のハイブリダイゼーション、酵素によるシグナル増幅を介した検出、標識の検出、またはこれらの検出法の組合せのためのマーカーとしての役割を果たす。本発明の核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。
【0053】
好適な一実施形態では、本発明の結合構成物に含まれる核酸部分の配列は、試料中に見出されることが予測される配列を含まない配列であり、従って試料中の核酸配列が混入物となりにくいことが期待されながらも、容易に検出可能なように設計される。例えば、試料が哺乳動物由来の血清である場合、核酸部分の配列が、高等植物にしか存在せず哺乳動物の血清中には見出されないと考えられる核酸配列を含んでいてもよい。別の好適な実施形態では、本発明の結合構成物に含まれる核酸部分の配列は、天然に存在すると思われる配列を含まない。他の実施形態では、本発明の核酸部分は、人工的に誘導された配列(例えばランダム・非ランダムなコンビナトリアル手法により得られた配列)または反復配列、例えば単一のハイブリダイゼーションプライマーもしくはハイブリダイゼーションプローブに相補的な反復配列を含みうる。他の実施形態では、本発明の核酸部分は、直列または並列して認識部分に結合している複数の反復する核酸部分を含みうる。
【0054】
核酸部分は、選択した検出方法で容易に検出されるのに十分な長さであることが好ましい。核酸部分の検出に核酸の増幅工程が含まれる場合、核酸部分は、約50〜約5000ヌクレオチド、または約100〜約4000ヌクレオチド、または約200〜約3000ヌクレオチドの長さの一本鎖を含むことが好ましい。しかしながら、核酸部分は、選択された核酸部分増幅方法、例えばPCRもしくは逆転写PCRなどに適した任意のヌクレオチド数を含みうる。核酸部分の検出に核酸の増幅工程が含まれない場合、核酸部分は、約4〜約5000ヌクレオチド、約20〜約4000ヌクレオチド、または約100〜約3000ヌクレオチドの長さの一本鎖を含むことが好ましい。しかしながら、核酸部分は、選択された核酸部分検出方法に適した任意のヌクレオチド数を含みうる。
【0055】
認識部分は、所与の認識部分および核酸部分の性質に応じて、任意の方法により、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的に核酸部分と結合させることができる。そのような結合方法は、例えば、当分野でよく知られているような共有結合による架橋方法ならびに非共有結合による連結方法など(例えば、R.P. Haugland, "Handbook of Fluorescent Probes and Research Products", 9th edition, J. Gregory(editor), Molecular Probes, Inc., Eugene, OR, USA, 2002, p.966; Seitz and Kohler, 2001, Chemistry, 7, p.3911-3925; Pierce Technical Handbook, Pierce Biotechnology, Inc., 1994, Rockford, IL を参照のこと)でよい。望ましければ、例えば可撓性を増大させたい場合
は、スペーサー腕部を用いて認識部分を核酸部分に結合させればよい。(Keyes et al., 1997, Biophys.J., 72, p.282-90; Hustendt et al., 1995, Biochemistry, 34, p.4369-
4375; Pierce Technical Handbook, Pierce Biotechnology, Inc., 1994, Rockford, IL )。一実施形態では、認識部分を共有結合により核酸部分と結合させる。共有結合させる方法は当分野でよく知られており、例えば、反応性基、化学修飾もしくは化学的活性化、光活性化架橋、または二機能性もしくは三機能性の架橋剤を使用すること(Pierce Technical Handbook, Pierce Biotechnology, Inc., 1994, Rockford, IL )が挙げられる。別の実施形態では、認識部分を非共有結合により核酸部分と結合させる。非共有結合させる方法には、限定するものではないが、物理的吸着、静電力、イオン相互作用、水素結合、親水性・疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および磁力が挙げられる。共有結合させる方法と非共有結合させる方法との組合せを使用してもよい。例えば、核酸部分(または核酸部分が反復したもの)をビオチン化して、認識部分に共有結合により架橋結合させた多価のアビジン部分に非共有結合させてもよい。
【0056】
[表面および接触可能な結合標的]
本発明はまた、結合構成物の認識部分により認識されて該認識部分に結合することが知られている1または複数の接触可能な結合標的を有する1または複数の表面を含む。そのような表面は、粒子状の表面でも粒子状でない表面でもよく、任意の適切な材料、例えば、限定するものではないが、プラスチック、ポリマー、セラミックス、ガラス、シリカ化合物、修飾シリカ化合物、フルオロカーボン、金属もしくは金属酸化物、吸着剤、樹脂、生体材料(例えばポリペプチドおよび糖質)、またはこれらの組合せから作製され得る。粒子状の表面には、液体試料から分離可能な任意の粒子、例えば、磁性粒子、ポリマー粒子、ガラス粒子、シリカ粒子、セラミックス粒子などでよい。粒子状の表面は、球状、非球状、対称形、非対称形、または不規則形などを含む任意の形状であってよく、大きさは均一でも不均一でもよい。粒子状の表面は、例えば、粉末、ビーズ、繊維、高分子集合体、ナノ粒子、またはナノチューブなどの任意の適切な形態をとりうる。粒子状の表面は、任意選択で、例えば再利用可能もしくは使い捨てのカートリッジ、カセット、またはインサートなどのチャンバ内に封入されていてもよい。粒子状でない表面には、限定するものではないが、平面状もしくは非平面状の表面(例えば、チューブもしくはウェルの側面)、無孔のフィルムもしくは膜、多孔質のフィルムもしくは膜、繊維、充填材、メッシュ、格子、フィルタ、マトリクス、ゲル、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0057】
本発明の接触可能な結合標的には、結合構成物の認識部分により認識されて該認識部分に結合しうる任意の結合標的、例えば、核酸、抗体の可変領域のミモトープペプチドもしくはエピトープ模倣物(Geysen et al., 1986, Mol. Immunol., 23, p.709-715 )、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、レクチン、抗体、酵素、受容体;糖質(単糖、オリゴ糖、および多糖)およびグリコシル化された分子;脂質、脂肪、および脂質化分子;抗原全体もしくは部分抗原;小分子(例えば受容体のリガンド、乱用薬物、無機イオもしくはキレート、代謝物、化学物質中間体、または天然産物)が挙げられる。接触可能な結合標的は、モノマーでも、オリゴマーでも、ポリマーでもよく、複数の分子の会合体でもよい。接触可能な結合標的は、完全に天然物由来のものでもよいし、完全に人工物由来のものでもよいし、両方の組合せ(例えば天然物由来の化合物を化学的に修飾したもの)であってもよい。
【0058】
接触可能な結合標的は、所与の表面および接触可能な結合標的の性質に応じて、任意の方法により、共有結合または非共有結合により、直接的または間接的に表面と結合させることができる。接触可能な結合標的は、共有結合、例えば接触可能な結合標的の化学的反応性基と表面の化学的反応性基とを適切な試薬を用いて反応させることにより、表面に結合させることができる。例えば、第1級アミンを有する結合標的は、シアノボロ水素化ナトリウムを用いてアミン結合性の支持体と結合させて第2級アミンを形成させることが可能であり、糖質を有する結合標的は、遊離のヒドラジド基を有する表面と結合させて安定なヒドラゾン結合を形成させることが可能である。別例では、1‐エチル‐3[3‐ジメ
チルアミノプロピル]‐カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて、第1級アミンを有する表面にカルボキシル基を結合させることもできる。接触可能な結合標的を、非共有結合による方法、例えば、限定するものではないが、物理的吸着、静電力、イオン相互作用、水素結合、親水性・疎水性相互作用、ファンデルワールス力、および磁力などにより表面に結合させることも可能である。非共有結合による方法の非限定的な例としては、ビオチンとアビジンとの相互作用、プロテインAまたはプロテインGと免疫グロブリンとの相互作用、および抗原と抗体との相互作用が挙げられる。
【0059】
接触可能な結合標的を、例えば、限定するものではないが、ポリマー、セラミック、ガラス、シリカ、または有機表面などの表面に、表面上の種々の化学基を介して共有結合させることができる。表面は、粒子状の表面および粒子状でない表面のいずれも、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドラジド基、またはクロロメチル基を備えることは容易である。表面が磁性粒子である一実施形態では、市販品の磁性粒子を用いて、該磁性粒子に所望の接触可能な結合標的を結合させることができるように特性を選択することが可能である。例えば、市販品の磁性粒子であるミクロモート社(Micromod)のNanomag(登録商標)Silica(商標)、NH250(カタログ番号13‐01‐252、ドイツ国ロストック‐バーレンミュンデ所在のミクロモート・パルティケルテヒノロギー・ゲーエムベーハー(Micromod Partikeltechnologie GmbH ))の表面には遊離のアミノ基が含まれており、該アミノ基が、例えばいずれもアミン反応性の末端部とスルフヒドリル反応性の末端部とを有するN‐スクシンイミジル(4‐ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)またはスルホスクシンイミジル‐4‐(N‐マレイミドメチル)シクロヘキサン‐1‐カルボキシレート(Sulfo−SMCC)などの架橋剤と反応し得る。SIABのNHSエステルは第1級アミンを含む分子と結合することが可能であり、確実に生じる反応は安定なアミド結合である。
【0060】
[分離]
構成物と表面との複合体および全ての過剰な結合していない表面を、任意の適切な分離方法を用いて、試料溶液中の構成物と化合物との複合体から分離させるが、分離方法は使用する表面の種類によって変わりうる。そのような方法には、限定はしないが、圧力もしくは真空、遠心分離、サイズ排除、濾過、またはこれらの組合せによる分離が挙げられる。非限定的な分離例は以下のとおりである。表面が粒子状物(粉末、ビーズ、繊維、高分子集合体、ナノ粒子、またはナノチューブなど)である場合、構成物と表面との複合体を、沈降法、遠心分離法、濾過法、サイズ排除法、または非共有結合による誘引力(例えば、電荷または疎水性による相互作用)により分離することができる。表面が平面状もしくは非平面状の非粒子状物(マイクロタイターウェルもしくはチューブもしくは容器の壁面など)である場合、構成物と表面との複合体を、デカンテーションまたは吸引により分離することができる。表面が磁性粒子である場合、構成物と表面との複合体を混合物から分離するには、磁石に曝露するなどして磁力を適用すればよい。
【0061】
一実施形態では、表面は、チャンバ内(例えばチューブ内、カートリッジ内、カラム内、もしくはカセット内)に恒久的もしくは一時的に封入されていてもよく、このことにより結合していない過剰な結合構成物の分離が容易になりうる。例えば、試料と結合構成物とを含む混合物を、表面(ビーズ、マトリクス、ゲル、もしくはフィルタなど)に結合している接触可能な結合標的の入ったカートリッジもしくはカラムに通過させることによって、該カートリッジもしくはカラムから溶出する溶液、または該カートリッジもしくはカラムを通過する溶液から結合していない過剰な結合構成物を取り除くことができる。
【0062】
一部の実施形態では、構成物と表面との複合体を混合物から「分離」するのに、構成物と表面との複合体を溶液から物理的に取り除く必要はなく、この場合、構成物と表面との複合体を溶液相での検出工程から隔離すれば十分である。例えば、表面が磁性粒子である
場合、構成物と表面との複合体を混合物から適切に分離するには、例えば混合物が入っている容器の側面に磁力を適用することによって、磁性粒子を容器の側面に誘引して溶液から隔離し、検出工程用に溶液の一部をサンプリングすることができるようにすればよい。
【0063】
代替実施形態では、目的の化合物に結合して構成物と化合物との複合体となってはいない全ての結合構成物を、例えば、限定するものではないが、沈殿、「塩析」、サイズ排除もしくは濾過、抽出、または相分離などの方法によって溶液から分離することができる。この代替実施形態では、本発明の方法の原理は依然として同じである。すなわち、(1)結合実体(結合構成物)を一種類だけ使用すること、(2)目的の化合物に結合していないほぼ全ての結合構成物を分離して、偽「陽性」シグナルに対する真の「陽性」シグナルの比を大きくすることによって、目的の化合物の検出感度を高めること、(3)溶液相で検出し、固相検出する必要がないこと、および(4)目的の化合物の核酸配列を予め知っている必要がないこと、である。
【0064】
[検出]
分離工程後、結合構成物の核酸部分の有無を検出することによって、試料中の目的の化合物の有無が示される。結合構成物の核酸部分の有無は、必ずしも核酸の増幅を必要としない、核酸の有無を検出することのできる任意の方法、例えば酵素による増幅、ハイブリダイゼーション、または標識の検出によって検出可能である。結合構成物の核酸部分の検出は、そのような目的に適した任意の方法により達成可能である。これらの方法は当分野で周知であり、限定するものではないが、核酸部分の増幅、核酸部分のハイブリダイゼーション、シグナルの増幅、標識の検出、またはこれらの組合せなどが含まれる。
【0065】
本発明の方法には、核酸部分の核酸増幅が含まれうる。本発明の好適な実施形態は、少量または低濃度の目的の化合物を検出することが可能であり、わずかな、最低で1つの構成物と化合物との複合体を増幅かつ検出することが可能である。そのような好適な実施形態では、ごくわずかな、最低で1つの構成物と化合物との複合体は、構成物と表面との複合体を分離した後に増幅用の鋳型としての役割を果たすために溶液中に残存している必要がある。増幅させた核酸は、任意の適切な方法、例えば、ハイブリダイゼーションプローブとして標識オリゴヌクレオチドを使用して、またはポリアクリルアミドゲル電気泳動で適切な大きさの増幅断片を検出することによって、測定または検出することができる。核酸部分の増幅には、任意の適切な増幅方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応による増幅または逆転写による増幅(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Joseph Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, 2001, p.999; Short Protocols in Molecular Biology, Frederick M. Ausubel et al., (editors), John Wiley & Sons, 2002, p.1548 )、RCA法(rolling circle amplification)(Liu et al., 1996, J. Am. Chem. Soc.,118, p.1587-1594 )、アンチセンスRNA増幅(Phi llips and Eberwine, 1996, Methods, 10, p.283-288 )、SDA法(strand displacement amplification )(Walker etal., 1992, Nucleic Acids Res., 20, p.1691-1696)、複合プライマーSDA法(composite primer/strand displacement amplification)(クルン(Kurn)の米国特許番号第6
,251,639号、2001年6月26日、「ポリヌクレオチド配列を定温で線形増幅するための、RNA‐DNA複合プライマーを用いる方法および組成物(Methods and compositions for linear isothermal amplification of polynucleotide sequences, using a RNA-DNA composite primer)」、Qβレプリカーゼを用いた増幅法(Lomeli et al.,
1989, Clin. Chem., 35, p.1826-1831 )、LLA法(linked linear amplification )(Reyes et al., 2001, Clin. Chem., 47, p.31-40)、3SR法(self-sustained sequence replication )(Fahy et al., 1991, Genome Res., 1, p.25-33)、または当分野で周知のその他の核酸増幅法(Andras et al., 2001, Mol. Biotechnol., 19, p.29-44)を使用することができる。結合構成物の核酸部分を検出する別の方法は、例えば、プライマー伸長ならびに伸長させた核酸の検出によるものでもよい。
【0066】
核酸部分のハイブリダイゼーションは、プローブを結合構成物の核酸部分にハイブリダイズさせてから、当分野で周知の方法に従ってハイブリダイズした構築物を検出することによって実施可能である。プローブは、DNA、RNA、核酸模倣物(例えば、限定するものではないが、ペプチド核酸)、またはこれらの組合せを含みうる。プローブは、検出可能な適切な標識、例えば、限定するものではないが、放射性同位体、スピンラベル、フルオロフォア(有機色素およびランタニドキレートなど)、クロモフォア、共鳴エネルギー移動を生じる対のうち一方もしくは両方、ハプテン、抗原、抗体、または酵素を含みうる。例えばフルオロフォアやハプテンなどの標識を、当分野で周知の方法により核酸に直接取り込ませてから該標識を検出してもよい。核酸の検出には、シグナル(例えばプローブ上の標識由来のシグナル)の酵素による増幅工程が含まれる場合があり、増幅工程では例えばペルオキシダーゼ・チラミドを用いたシグナル増幅法(R. P. Haugland, "Handbook of Fluorescent Probes and Research Products", 9th edition, J. Gregory (editor), Molecular Probes, Inc., placeplaceCityEugene, country-regionStateOR, placeUSA,
2002, p.966)またはアルカリホスファターゼ・抗アルカリホスファターゼを用いたシグナル増幅法が用いられる。結合構成物の核酸部分を、その他の方法、例えば限定するものではないが分子ビーコン法(任意選択で実時間検出を組み合わせる)やその他の共鳴エネルギー移動の方法、または免疫学的検出(例えば、ELISA式のアッセイにおいて増幅されたDNA配列を認識して捕捉する抗体を用いる検出)によって、直接、または増幅やハイブリダイゼーションの後に検出することも可能である。
【0067】
結合構成物の核酸部分を検出するために増幅が必要な場合、好適な方法は、当分野で周知の方法(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Joseph Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory, 2001; Short Protocols in Molecular Biology, Frederick M. Ausubel et al. (editors), John Wiley & Sons, 2002 )に従ってポリメラーゼ連鎖反応により核酸部分を増幅することである。試料中の目的の化合物を検出する能力は、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせることにより著しく向上かつ拡大しうる。PCRは、増幅能力を著しく向上させる、核酸の特定の配列を数百万倍に増幅させることのできる方法である。このような著しい増幅能力の向上は、一組のプライマーが隣接する特定の標的核酸配列を増幅する能力に基づくものである。核酸が増幅されたら、検出目的に適した任意の方法、例えばアガロースゲルを用いて増幅結果を検出すればよい。
【実施例1】
【0068】
試料中の目的の化合物を検出する方法の非限定的な例
図1は、実施例3に記載されているような、本発明の方法において使用するための結合構成物を複数示している。各結合構成物101は、目的の化合物を認識かつ結合する認識部分102と、核酸部分103とを備えている。この実施形態では、認識部分102は、Fab断片、例えば目的の化合物に対するモノクローナル抗体の重鎖のジスルフィド架橋を切断する事によって作製されたFab断片を含むことが好ましい。この実施形態では、核酸部分103はDNAを含むことが好ましい。認識部分102は、共有結合104によって、例えば核酸部分103と認識部分102のFab断片の遊離スルフヒドリル基との間の共有結合によって核酸部分103に結合させることができる。
【0069】
図2は、実施例4に記載されているような、目的の化合物201を含む試料と混合済みのいくつかの結合構成物101を示している。結合構成物101の認識部分102は目的の化合物201を認識して構成物と化合物との複合体202を形成している。図の一番下には、目的の化合物201に結合しなかった認識部分102と核酸部分103とを含む結合構成物101も示されている。
【0070】
図3は、接触可能な結合標的302を有する表面301を示す。この実施形態では、実
施例2に記載されているように、表面301は磁性粒子であり、接触可能な結合標的302はミモトープペプチドである。該表面は、結合構成物101を含む可能性のある試料混合物に導入されるが、該結合構成物101は目的の化合物と結合して構成物と化合物との複合体201となっている場合もあれば、目的の化合物と結合していない場合もある。接触可能な結合標的301は、目的の化合物と結合していない全ての結合構成物101の認識部分102に結合し、構成物と表面との複合体303を形成する。
【0071】
図4は、実施例4に記載されているように、構成物と表面との複合体303を分離するために使用されている磁石401を示す。構成物と表面との複合体303および結合していない過剰な表面301が分離されて、構成物と化合物との複合体202が溶液中に残る。分離後、構成物と化合物との複合体202に含まれている結合構成物101の核酸部分103を、目的に適した任意の方法で検出することができる。結合構成物101の核酸部分103の存在を検出することにより、目的の化合物201の存在が示される。
【実施例2】
【0072】
ミモトープを有する磁性粒子の調製
本実施例では、表面が接触可能な結合標的としてミモトープペプチドを有する磁性粒子であることを特徴とする、本発明の非限定的な一実施形態が提供される。このモデル系では、細菌の細胞壁タンパク質であるモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis )OMPEタンパク質を認識する抗体を使用した。モラクセラ・カタラーリスのOMPEタンパク質の組換え断片は、バッファロー大学のティモシー・マーフィ博士より供与されたものであり、モノクローナル抗体12D.5(Mab 12D.5)を調製するための免疫原として用いた。ペプチドの重複マッピングを用いて、抗原エピトープが組換え断片のアミノ酸187−220の中に存在することが示された。このエピトープに相当するペプチド(Mopep2と命名)を、合成後に遊離スルフヒドリル基結合性の構造に結合するように、N末端にシステインを備えて合成した。Mab 12D.5を、2‐メルカプトエチルアミンHCl(ピアス社(Pierce))を用いて切断して2つのFab断片とし、別の分子に結合させることのできる反応性のスルフヒドリル基が残るようにした。
【0073】
10mg/mlの、表面に遊離アミノ基を備えた磁性粒子ストックであるミクロモート社(Micromod)のNanomag(登録商標)Silica(商標)、NH250(ロット番号210213T、カタログ番号13‐01‐252、ドイツ国ロストック‐バーレンミュンデ所在のミクロモート・パルティケルテヒノロギー・ゲーエムベーハー(Micromod Partikeltechnologie GmbH ))を、DMSO中の140mgのSIABと反応させて暗所にて2時間回転させた。この粒子を磁石により分離し、続いて5mMのEDTAと1.7mg/mlのMopep2を100μl含む50mMのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)の中で一晩インキュベートした。Mopep2ペプチド上の遊離スルフヒドリル基はSIAB処理された磁性粒子と反応して安定なチオエーテル結合を生じた。未反応の部位を遊離システインでブロッキングし、このMopep2で標識された粒子を洗浄して、分析のために1mlのPBS中に再懸濁した。
【0074】
このMopep2粒子が溶液中で遊離の12D.5 Mabに結合する能力を試験するために、阻害ELISA法を実施した。Mopep2粒子またはウシ血清アルブミン(BSA)で同じように標識された対称の粒子のいずれか10μlを、2μg/mlから始めてPBSで2倍希釈系列としたセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と12D.5との結合物とともに(総容量100μl)96ウェルマイクロタイタープレートで30分間インキュベートした。磁石を用いて粒子をウェルの底部に隔離し、各希釈物について50μlを、Mopep2でコーティングしたプレートに加え、さらに30分間インキュベートした。次いで、3,3’5,5’‐テトラメチルベンジジン基質を添加して標準的なELISA法を実施し、10分間発色させ、停止溶液を加えずに630nmにおける吸
光度を読み取った。図5に示したデータは、Mopep2粒子がモノクローナル抗体12D.5(12D.5 Mab)とセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRPO)との結合物に結合して該結合物を溶液から分離することが可能であり、その結果12D.5 MabとHRPOとの結合物がMopep2でコーティングされたウェルに用量依存的に結合するのを阻害することを示している。ウシ血清アルブミン(BSA)でコーティングされた粒子は、12D.5 MabとHRPOとの結合物がMopep2でコーティングされたウェルに結合するのを阻害することはできなかった。
【実施例3】
【0075】
結合構成物の調製
本実施例では、結合構成物の認識部分としてFab断片が使用されることを特徴とする、結合構成物の一実施形態が提供される。プラスミドpUC19をインビトロジェン(Invitrogen)から購入し、プラスミドDNAをEcoRIで直線状にした。この直線状のpUC19 DNAをアガロースゲルから抽出して精製した。このDNAをMab 12D.5のFab断片に結合し、結合構成物の核酸部分とした。続いて市販のプライマーを使用して直線状の鋳型pUC19から1kbの断片を増幅させた。遊離スルフヒドリル基(‐SH)を介して12D.5のFab断片に結合して結合構成物の核酸部分となり得るDNA断片を作製するため、5’ソラレン、3’アミノ‐オリゴヌクレオチドを、利用可能なアミンを介してSIABリンカーに結合させた。1kbのpUC19 DNAを過剰量のオリゴヌクレオチドの存在下で変性させ、長波長紫外線を用いてソラレンにアニーリングさせた。分子量カットオフ(MWCO)フィルタを用いて過剰なオリゴヌクレオチドを取り除き、次いで、SIAB/pUC19鋳型を、SIABリンカーの遊離スルフヒドリル基結合性の端部を用いてFab断片に結合させた。Fab‐DNAと命名されたこの結合構成物全体については、さらなる精製は実施しなかった。
【実施例4】
【0076】
PCRによる目的の化合物の検出
本実施例では、結合構成物の核酸部分がPCRにより増幅されることを特徴とする、目的の化合物の検出の一実施形態が提供される。この実験から、結合構成物Fab‐DNA(Mab 12D.5/pUC19構成物)が目的の化合物である遊離の抗原(細菌の組換えOMPE断片すなわちrOMPE)に結合し、その結果溶液中に構成物と化合物との複合体を形成しうることが示された。接触可能な結合標的(Mopep2ペプチド)を有する表面(磁性粒子)は、目的の化合物に結合していない全てのFab‐DNAに結合し、磁石を用いて該表面が分離され、構成物と化合物との複合体(抗原に結合したFab‐DNA)が、核酸増幅に使用可能な結合構成物の核酸部分(pUC19)とともに溶液中に残った。
【0077】
rOMPEは、1mlのPBS中で100ng/ml〜1.56ng/mlの2倍希釈系列として力価を調製した。各希釈物を20μl(8μgのFab‐DNA)とともに30分間インキュベートし、次いで10μlのMopep2粒子を各ウェルに添加してさらに30分間インキュベートした。対照のウェルには、(1)1.1mlのPBS+0.2mlのFab‐DNA、rOMPEなし(陽性対照)、および(2)1mlのPBS+0.2mlのFab‐DNA+0.1mlの粒子(陰性対照)を含めた。磁性粒子を溶液から分離するためにウェルを希土類磁石に15分間曝露し、各ウェルから増幅用に0.2mlの溶液を取り出した。
【0078】
試料を次のようにしてPCR増幅した。50μlのPCR反応混合液には、5μlの10×PCR緩衝液(MgClを含まない)、1μlの50mM MgCl、0.5μlの50mM dNTP、1μlのpUC19用の各センスもしくはアンチセンスプライマー、1μlのTaqポリメラーゼ、2μlの試料(溶液)、および38.5μlのdd
Oを含めた。センスプライマーの配列はCCTCTAGAGTCGACCTGCAGGCATGC(配列番号1)であり、アンチセンスプライマーの配列はCACTGGCCGTCGTTTTACAACGTCGTG(配列番号2)であった。全ての配列は5’→3’方向に示してある。
【0079】
試料を以下のパラメータのサイクルを用いて増幅させた。
【0080】
【表1】

【0081】
PCR試料を1%アガロースゲルで展開し、エチジウムブロマイドで視覚化した。各濃度のPCR試料10μlをゲルに載せた。PCRプライマーにより約2650bpのpUC19断片が増幅された。1kbのDNAラダー(インビトロジェン)を分子量マーカーとして使用した。図6に示すように、PCRプライマーにより2.6kbのDNA断片が次の試料、すなわち790pg、395pg、198pg、98pg、および12pgにおいて増幅された。49pgおよび24pgの試料においては非常に細いバンドが観察された。
【実施例5】
【0082】
目的の化合物の検出
異なる種類の目的の化合物についての非限定的な検出例は以下のとおりである。
(アミロイドβプロトフィブリル)
この実施例では、目的の化合物はプロトフィブリルと呼ばれるアミロイドβタンパク質のオリゴマーである。アミロイドβプロトフィブリルの検出は、アルツハイマー病の早期検出に有用である。試料は、アルツハイマー病であるかそのリスクを負っていると思われる患者由来の血清または脳脊髄液(CSF)である。結合構成物は、(1)プロトフィブリルを認識する抗体もしくは抗体断片である認識部分と、(2)天然には存在しない核酸部分とを含んでいる。核酸部分は合成プライマーによって認識可能なDNA鋳型であり、該合成プライマーはPCRを用いて増幅するために低ストリンジェンシーで鋳型に結合するように設計されている。結合構成物を、100μlの血清試料に10ng/mlとなるように添加し、十分な時間インキュベートして抗体もしくは抗体断片が試料中に存在するプロトフィブリルに結合して溶液中に構成物と化合物(構成物とプロトフィブリル)との複合体が形成されるようにする。結合表面は、接触可能な結合標的、すなわち抗プロトフィブリル抗体(結合構成物の認識部分)を作製するために免疫原として使用されたのと同一のペプチド配列、で標識された磁性粒子である。この磁性粒子は反応性の第1級アミン基を有するので、例えば1‐エチル‐3‐(3‐ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などの水溶性カルボジイミドを用いて前記免疫原性ペプチドをそのカルボキシ末端のカルボキシルを介して粒子に結合させることが可能となっている。30%の粒子懸濁物10μlを、構成物と化合物(構成物とプロトフィブリル)との複合体を含む溶液に添加して、結合していない抗プロトフィブリル/DNA結合構成物とともに粒子が構成物と表面との複合体を形成できるようにする。この溶液に磁石を適用して磁性粒子を分離することにより、結合していない結合構成物を分離して溶液中に構成物と化合物との複合
体を残す。その結果得られた(構成物と化合物との複合体を含む)溶液2μlを、プライマーと、遊離のヌクレオチドと、TaqDNAポリメラーゼとを含むPCR反応溶液に添加する。溶液中に構成物と化合物との複合体として存在する全ての結合構成物のDNA部分が増幅される。このPCR反応物を1%アガロースゲルで展開し、エチジウムブロマイド染色で視覚化する。試料中にアミロイドβプロトフィブリルが存在するか否かは、増幅されたDNA断片の正しい分子量に相当するバンドがゲル中に存在するか否かによって示される。
【0083】
(レジオネラ・ニューモフィラ抗原)
この実施例では、目的の化合物はレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia )セログループ1の糖質抗原である。レジオネラ・ニューモフィラは、在郷軍人病として知られる市中肺炎ならびにポンティアック熱の病原因子である。セログループ1は在郷軍人病症例の大部分に関与している。試料は、レジオネラ・ニューモフィラに感染している疑いのある患者の尿試料であることが好ましい。結合構成物は、(1)レジオネラ・ニューモフィラのセログループ1の糖質抗原(「抗原」)を認識する抗体もしくは抗体断片である認識部分と、(2)天然には存在しない核酸部分とを含む。核酸部分は、PCRにより増幅するために低ストリンジェンシー条件で結合するように設計された合成プライマーによって認識されうるDNA鋳型である。該結合構成物を、100μlの尿試料に10ng/mlの濃度になるように添加し、十分な時間インキュベートして、抗体もしくは抗体断片が試料中に存在するレジオネラ・ニューモフィラのセログループ1の糖質抗原に結合して溶液中に構成物と化合物との複合体(構成物と抗原との複合体)を形成できるようにする。結合性の表面は、接触可能な結合標的すなわち前記抗体もしくは抗体断片(結合構成物の認識部分)の可変領域に結合し得るペプチドミモトープで標識された磁性粒子である。好適なペプチドミモトープは当分野で周知の方法、例えばランダムもしくは非ランダムなペプチドライブラリーのファージディスプレイまたはペプチドのコンビナトリアル合成と、その後のアフィニティ選択により入手可能である(Smith and Petrenko, 1997, Chem. Rev., 97, p.391-410; Kramer et al., 1993, Peptide Res., 6, p.314-319)。磁性粒子は反応基の第1級アミンを有し、1‐エチル‐3[3‐ジメチルアミノプロピル]‐カルボジイミド塩酸塩(EDC)などの水溶性カルボジイミドを用いて、ペプチドミモトープのカルボキシ末端のカルボキシルを介してペプチドミモトープを粒子に結合させることが可能である。30%の粒子懸濁物10μlを、構成物と化合物との複合体(構成物とレジオネラ・ニューモフィラのセログループ1の糖質抗原との複合体)を含む溶液に添加し、結合していない抗体/DNA結合構成物とともに粒子が構成物と表面との複合体を形成しうるようにする。該溶液に磁石を適用して磁性粒子を分離することによって、結合していない結合構成物を分離して溶液中に構成物と化合物との複合体を残す。得られた溶液(構成物と化合物との複合体を含む)2μlを、プライマー、遊離のヌクレオチド、およびTaqDNAポリメラーゼを含むPCR反応溶液に添加する。構成物と化合物との複合体として溶液中に存在している全ての結合構成物のDNA部分が増幅される。PCR反応物を1%アガロースゲルで展開し、エチジウムブロマイド染色により視覚化する。レジオネラ・ニューモフィラのセログループ1の糖質抗原が試料中に存在するか否かは、増幅させたDNA断片について正しい分子量に該当するバンドがゲル中にそれぞれ存在するか否かによって示される。
【0084】
(結核菌特異的なヒト抗体)
この実施例では、目的の化合物は、結核菌の38キロダルトンの細胞外タンパク質に対して特異的な結核菌特異的ヒトIgG(抗MTbIgG)である。結核菌はヒトの肺結核症の病原因子である。試料は、結核菌に感染している疑いのある患者の血清であることが好ましい。結合構成物は、(1)抗MTbIgGの可変領域によって認識かつ結合されうるペプチドエピトープもしくはミモトープである認識部分と、(2)試料中に見出されることが予測される配列を含まない配列、例えば哺乳動物や細菌には見出されない高等植物
由来の核酸配列を有する核酸部分とを含む。認識部分は、抗MTbIgGのミモトープでもよいし、抗MTbIgGによって認識される細菌タンパク質もしくはペプチドに由来する天然のペプチド配列であってもよく、いずれの場合においても、該ペプチドは結核菌特異的ヒト免疫グロブリンGのサブクラスと結合して構成物と化合物との複合体(構成物と抗MTbIgGとの複合体)を形成することができる。核酸部分は、PCRにより増幅するために低ストリンジェンシー条件で結合するように設計された合成プライマーによって認識されうるDNA鋳型である。該結合構成物を、100μlの血清試料に10ng/mlの濃度になるように添加し、十分な時間インキュベートして、結合構成物の認識部分が試料中に存在する抗MTbIgGに結合して溶液中に構成物と化合物との複合体(構成物と抗MTbIgGとの複合体)を形成できるようにする。結合性の表面は、結合構成物の認識部分を認識かつ結合しうる抗体もしくは抗体断片が結合しているアガロースビーズである。該アガロースビーズは、シアノボロ水素化ナトリウム(NaBHCN)を用いて抗体の重鎖のアミノ基に架橋させることが可能な反応性のアルデヒド基を有する。30%の粒子懸濁物20μlを、構成物と化合物との複合体(構成物と抗MTbIgGとの複合体)を含む溶液に添加し、結合していないペプチド/DNA結合構成物とともにビーズが構成物と表面との複合体を形成しうるようにする。この混合物をエッペンドルフチューブに入れ、遠心分離してアガロースビーズを懸濁物からペレットとし、構成物と化合物との複合体(構成物と抗MTbIgGとの複合体)が上清中に溶液状態で遊離したまま残るようにする。該上清2μlを、プライマー、遊離のヌクレオチド、およびTaqDNAポリメラーゼを含むPCR反応溶液に添加する。構成物と化合物との複合体として溶液中に存在している全ての結合構成物のDNA部分が増幅される。PCR反応物を1%アガロースゲルで展開し、エチジウムブロマイド染色により視覚化する。試料中に結核菌特異的ヒト免疫グロブリンGが存在するか否かは、増幅させたDNA断片について正しい分子量に該当するバンドがゲル中にそれぞれ存在するか否かによって示される。
【0085】
全ての見出しは読み手の便宜を図るためのものであり、特記されない限り、見出しは見出しに続く文書の意味を限定するように用いられるものではない。本発明の思想および範囲を逸脱することなく、本発明に種々の変更および試行を加えることが可能である。従って、本発明は明細書に具体的に記載された発明または図面に例示された発明に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の記載によってのみ特定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中で試料中の目的の化合物を検出する方法において、
(a)目的の化合物を固相で捕捉することなく認識し結合する認識部分と、核酸部分とを有する結合構成物を提供する工程と、
(b)前記結合構成物を試料と混合して溶液を生成し、固相で捕捉することなく溶液中で結合構成物と化合物との複合体を形成させる工程と、
(c)前記結合構成物の認識部分を認識して結合しうる1または複数の接触可能な結合標的を有する磁性粒子である1または複数の表面を提供する工程と、
(d)前記1または複数の表面を、前記結合構成物と化合物との複合体の形成された前記溶液に導入して、結合していない結合構成物と前記1または複数の表面との複合体である結合構成物と表面との複合体を形成させることによって、前記溶液が前記結合構成物と化合物との複合体及び前記結合構成物と表面との複合体を含む工程と、
(e)前記結合構成物と表面との複合体を前記溶液から物理的に取り除くことなく、前記結合構成物と表面との複合体を前記溶液中で隔離する工程と、
(f)磁力への曝露によって、前記結合構成物と表面との複合体及び結合していない過剰な前記表面を前記溶液から取り除いて、前記結合構成物と化合物との複合体を前記溶液中に残す工程と、
(g)前記溶液中における前記結合構成物の核酸部分の有無を検出する工程であって、核酸部分の増幅を含み、前記結合構成物と化合物との複合体における前記結合構成物の前記核酸部分の存在が試料中に目的の化合物が存在することを示す工程と、を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10712(P2012−10712A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218349(P2011−218349)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【分割の表示】特願2006−525390(P2006−525390)の分割
【原出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(511237210)レスタリスト ピーティーイー エルティーディー (1)
【氏名又は名称原語表記】Restalyst Pte Ltd
【Fターム(参考)】