説明

可溶性A−βに対する抗体を生成させるための能動免疫

【課題】アルツハイマー病の予防若しくは処置を遂げるのに有用な方法の提供。
【解決手段】A−βの中央若しくはC末端領域からのA−βフラグメントを投与し、該フラグメントは斑に結合することなく可溶性A−βに特異的に結合する抗体のポリクローン性の混合物を誘導し得る方法。該抗体は、可溶性Aβからの患者の脳中のA−βのアミロイド沈着物の形成を阻害してかように該疾患を予防若しくは治療し得る。フラグメントA−β15−24およびその5〜10個の隣接するアミノ酸のサブフラグメントが、高力価の抗体を生成させるそれらの能力により、好ましい免疫原である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2003年2月1日出願の米国特許出願第60/444,150号明細書(全部の目的上引用することによりそっくりそのまま組込まれる)のU.S.C.第35条§119(e)の下での利益を主張する出願である。
【0002】
本発明は免疫学および医学の技術分野に存する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は老年痴呆をもたらす進行性疾患である。全般として、非特許文献1;特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4を参照されたい。大まかに言えば、該疾患は2つの範疇、すなわち高齢(65歳以上)で発生する晩発型および老年期よりかなり以前に、すなわち35と60歳との間で発症する早発型に分けられる。双方の疾患型で病状は同一であるが、しかし異常性はより若年齢で開始する症例でより重篤かつ広範囲に及ぶ傾向がある。該疾患は脳中の少なくとも2種の型の病変すなわち老人斑および神経原線維変化を特徴とする。老人斑は、脳組織の切片の微視的分析により見える中央に細胞外アミロイド沈着物を伴う直径150μmまでの無秩序の神経網の領域である。神経原線維変化は、相互に対になった周囲で捻れた2本の細糸よりなる微小管関連τタンパク質の細胞内沈着物である。
【0004】
該斑の主構成要素はAβすなわちβ−アミロイドペプチドと命名されたペプチドである。Aβペプチドはアミロイド前駆体タンパク質(APP)と命名された前駆体タンパク質の39〜43アミノ酸の内的フラグメントである。APPタンパク質内の数種の突然変異がアルツハイマー病の存在と関係づけられている。例えば、非特許文献5(バリン717からイソロイシン);非特許文献6(バリン717からグリシン);非特許文献7(バリン717からフェニルアラニン);非特許文献8(リシン595−メチオニン596からアスパラギン595−ロイシン596に変わる二重突然変異)を参照されたい。こうした突然変異はAPPのAβへの増大した若しくは変えられたプロセシング、とりわけ増大した量の長い形態のAβ(すなわちAβ1−42およびAβ1−43)へのAPPのプロセシングによりアルツハイマー病を引き起こすと考えられている。プレセニリン遺伝子PS1およびPS2のような他の遺伝子中の突然変異は、APPのプロセシングに間接的に影響して増大した量の長い形態のAβを生成させると考えられている(非特許文献9を参照されたい)。これらの観察結果は、Aβおよびとりわけその長い形態がアルツハイマー病の原因となる要素であることを示す。
【0005】
β−アミロイドペプチド(Aβ)由来の免疫原でのADのトランスジェニックマウスモデルの免疫化は、該マウスの脳中のアミロイド斑の形成を阻害かつ/若しくはそれを消失させる抗体応答をもたらす(非特許文献10;非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13))。受動的に投与したAβに対する抗体は類似の効果を達成した。ミクログリア細胞および/若しくはマクロファージによる抗体媒介性のFc依存性の食作用が、既存のアミロイド斑の消失の1機構として提案されている(非特許文献14))。この提案は、ある種の末梢で投与したAβに対する抗体がトランスジェニックマウスのCNSに入り、アミロイド斑を装飾しかつ斑の消失を誘発するという結果に基づく。また、in vivoおよび斑消失活性を測定するためにPDAPP若しくはアルツハイマー病(AD)脳の切片を使用したex vivoアッセイで有効であった抗体間で、強い相関が報告された。ミクログリア細胞上のFc受容体がex vivoアッセイで消失応答を遂げた。しかしながら、抗体の効力はFc相互作用に依存しない機構によってもまたin vivo
で得ることができることもまた報告されている(非特許文献15)。アミロイド斑を認識し得ないAβの中央部分に向けられた抗体は、可溶性Aβに結合しかつ斑沈着を低下させることが報告された(非特許文献16)。この抗体での短期間の処置がアミロイド負荷量に影響することなく対象認識課題での成績を改善することもまた報告されている(非特許文献17)。
【0006】
本出願は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6(これらのそれぞれは全部の目的上引用することによりそっくりそのまま組み込まれる)に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Hardyら、第WO 92/13069号明細書
【特許文献2】2000年5月26日出願の第WO 00/72880号明細書
【特許文献3】1998年11月30日出願の第WO 99/27944号明細書
【特許文献4】1997年12月2日出願の米国特許出願第60/067,740号明細書
【特許文献5】1998年4月7日出願の米国特許出願第60/080,970号明細書
【特許文献6】1998年11月30日出願の米国特許出願第09/201,430号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Selkoe、TINS 16、403−409(1993)
【非特許文献2】Selkoe、J.Neuropathol.Exp.Neurol.53、438−447(1994)
【非特許文献3】Duffら、Nature 373、476−477(1995)
【非特許文献4】Gamesら、Nature 373、523(1995)
【非特許文献5】Goateら、Nature 349、704)(1991)
【非特許文献6】Chartier Harlanら Nature 353、844(1991))
【非特許文献7】Murrellら、Science 254、97(1991)
【非特許文献8】Mullanら、Nature Genet.1、345(1992)
【非特許文献9】Hardy、TINS 20、154(1997)
【非特許文献10】Schenkら、(1999)Nature 400、173−177
【非特許文献11】Janusら、(2000)Nature 408、979−982
【非特許文献12】Morganら(2000)Nature 408、982−985
【非特許文献13】Sigurdssonら、(2001)Am.J.Pathol.159、439−447.1−4
【非特許文献14】Bardら、(2000)Nat.Med.、6、916−919
【非特許文献15】Bacskaiら、(2002)J.Neurosci.、22、7873−7878
【非特許文献16】DeMattosら、(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98、8850−8855
【非特許文献17】Dodartら、(2002)Nat.Neurosci.、5、452−457
【発明の概要】
【0009】
I.全般
本発明は、Aβの中央若しくはC末端領域からのフラグメントを使用するアミロイド沈着物と関連する疾患の予防方法、その予防を遂げる方法若しくは治療方法を提供する。こうしたフラグメントは、斑に結合することなく可溶性Aβに特異的に結合する抗体のポリクローン性の混合物を誘導し得る。該抗体は、可溶性Aβからの患者の脳中のAβのアミロイド沈着物の形成を阻害し得、従って該疾患を予防若しくは治療し得る。フラグメントAβ15−24およびその5〜10個の隣接するアミノ酸のサブフラグメントが、高力価の抗体を生成させるそれらの能力により好ましい免疫原である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1A−C AβのN末端フラグメントを用いる免疫化により産生される抗体はアミロイド斑に結合する。図1A。Aβ1−42(配列番号1)(卵アルブミン由来のT細胞エピトープに隣接して合成した)の多様なドメインを包含するペプチドを使用してPDAPPマウスを免疫した。リバースマーAβ5−1(配列番号2)を陰性対照として使用した。図1B。凝集したAβ1−42に対するELISA力価は、Aβ5−11およびAβ15−24群でAβ1−5群でよりも試験の長さにわたって有意により高かった(それぞれ、1:14,457、p<0.01および1:12,257、p<0.05対1:3,647;ANOVA、次いでpost hoc Tukey検定)。図1C。未処置のPDAPPマウス脳からの未固定クライオスタット切片を、Aβ5−1、Aβ3−9、Aβ5−11若しくはAβ15−24で免疫したマウスの血清に曝露させた(力価を染色について1:1000に正規化した)。Aβ15−24に対する抗体はアミロイド斑に結合しなかった。尺度の棒は500μmを表す。
【図2】図2A−C 抗体による可溶性Aβ1−42の捕捉は低下したアミロイド負荷量若しくは神経炎の病状を伴わない。図2A。Aβのフラグメントで免疫したマウスからの血清を、放射標識した可溶性Aβ1−42を捕捉するそれらの能力についてラジオイムノアッセイで検査した。Aβ15−24で免疫した全動物からの血清は、Aβ1−5群の動物の27%およびAβ3−9群の3%に比較して、可溶性Aβ1−42を捕捉することが可能であった(1血清サンプルは1;1,350より高い力価を有し、かつ、正確な力価は測定されなかった)。図2B−C。アミロイド負荷量(図2B)および神経炎の病状(図2C)を、盲検化した顕微鏡使用者により画像解析で評価した。値はAβ5−1群(陰性対照のリバースマーペプチド)の平均のパーセントとして表す。Aβ5−11群は他の群と離れた場所で(at a separate sitting)、しかし内的参照としての同一の陰性対照群(第二のAβ5−1リバースマーの組、左側)とともに評価した。アミロイド負荷量はAβ1−5、Aβ3−9およびAβ5−11群で有意に低下された(p<0.001。棒は中央値を、また、水平の点線は対照値を表す。神経炎性の負荷はAβ3−9およびAβ5−11群で有意に低下された(p<0.05)。いずれのエンドポイントもAβ15−24群での免疫化により有意に変えられなかった。統計学的解析は平方根変換を用いて(ノンパラメトリック分布を正規化するため)実施し、そしてANOVAで解析した。その後、複数の群Aβ1−5、Aβ3−9、Aβ15−24群をそれらのAβ5−1対照と比較するためDunnett検定を、また、Aβ5−11群についてその対応するAβ5−1リバースマー対照と比較するためMann−Whitneyを使用した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
II.定義
アミノ酸置換を保存的若しくは非保存的と分類する目的上、アミノ酸を後に続くとおりグループ分けする。すなわち、群I(疎水性側鎖):ノルロイシン、met、ala、v
al、leu、ile;群II(中性の親水性側鎖):cys、ser、thr;群III(酸性側鎖):asp、glu;群IV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;群V(鎖の方向に影響する残基):gly、pro;および群VI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は同一分類中のアミノ酸間の置換を伴う。非保存的置換はこれらの分類の1つの1メンバーを別の分類の1メンバーと交換することを構成する。
【0012】
「全D」という用語は、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上および100%のD−配置のアミノ酸を有するペプチドを指す。
【0013】
「剤」という用語は薬理学的活性を有する若しくは有するとみられる化合物を記述するのに使用する。剤は、既知の薬物である化合物、薬理学的活性が同定されているがしかしさらなる治療評価を受けている化合物、ならびに薬理学的活性についてスクリーニングされるべきである集合物およびライブラリーのメンバーである化合物を包含する。
【0014】
本発明の治療薬は、典型的には、望ましくない汚染物質から実質的に純粋である。これは、ある剤が、典型的には最低約50%w/w(重量/重量)純度である、ならびに、妨害するタンパク質および汚染物質を実質的に含まないことを意味している。ときに、該剤は、最低約80%w/w、およびより好ましくは最低90若しくは約95%w/w純度である。しかしながら、慣習的タンパク質精製技術を使用して、最低99%w/wの均質なペプチドを得ることができる。本発明の治療薬は、アミロイド沈着物と関連する疾患を予防しうるか、その予防を遂げうるか、若しくはそれを治療しうる。
【0015】
2種の実体の間の特異的結合は、該実体が、無関係の抗原若しくは異なる抗原のような対照に対するいずれの実体の親和性よりも最低10、100若しくは100倍より大きい相互に対する相互親和性を有することを意味している。相互に対する該2種の実体の相互親和性は、通常最低10、10、10−1若しくは1010−1である。10−1より大きい親和性が好ましい。Aβ内の1エピトープに対するポリクローナル抗体の特異的結合は、該ポリクローナル抗体集団の抗体がAβの他のエピトープに結合することなくAβの1エピトープに特異的に結合することを意味している。
【0016】
「抗体」若しくは「免疫グロブリン」という用語は完全な(intact)抗体およびそれらの結合フラグメントを包含するのに使用する。典型的には、フラグメントは、分離したH鎖、L鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、FabcおよびFvを包含する抗原フラグメントへの特異的結合に関して、それらが由来した完全な抗体と競合する。フラグメントは組換えDNA技術、または完全な免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的分離により製造する。「抗体」という用語は、他のタンパク質を伴う融合タンパク質に化学的に結合されているか若しくは融合タンパク質として発現される1種若しくはそれ以上の免疫グロブリン鎖もまた包含する。「抗体」という用語は二特異性抗体もまた包含する。二特異性若しくは二機能性抗体は、2種の異なるH/L鎖対および2種の異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合若しくはFab’フラグメントの結合を包含する多様な方法により製造し得る。例えば、SongsivilaiとLachmann、Clin.Exp.Immuol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547−1553(1992)を参照されたい。
【0017】
β−アミロイドペプチド若しくはA4ペプチドとしてもまた知られるAβ(米国特許第4,666,829号明細書;GlennerとWong、Biochem.Biophys.Res.Commun.、120、1131(1984)を参照されたい)は、アルツハイマー病の特徴的な斑の主成分である39〜43アミノ酸のペプチドである。Aβ
は数種の天然に存在する形態を有する。Aβの天然のヒト形態はAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43と称される。これらのペプチドの配列およびAPP前駆体とのそれらの関係はHardyら、TINS 20、155−158(1997)の図1により具体的に説明されている。例えば、Aβ42は配列:
【0018】
【化1】

を有する。
【0019】
Aβ41、Aβ40およびAβ39は、C末端からのそれぞれAla、Ala−IleおよびAle−Ile−Valの省略によりAβ42と異なる。Aβ43はC末端のトレオニン残基の存在によりAβ42と異なる。
【0020】
APP695、APP751およびAPP770はそれぞれヒトAPP遺伝子によりコードされる695、751および770アミノ酸残基長のポリペプチドを指す。Kangら、Nature、325、773(1987);Ponteら、Nature、331、525(1988);およびKitaguchiら、Nature、331、530(1988)を参照されたい。ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内のアミノ酸はAPP770アイソフォームの配列に従って番号を割り当てられている。Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43のような用語はそれぞれアミノ酸残基1−39、1−40、1−41、1−42および1−43を含有するAβペプチドを指す。
【0021】
解離型Aβ若しくはそのフラグメントは単量体ペプチド単位を意味している。解離型Aβ若しくはそのフラグメントは一般に可溶性であり、そして自己凝集して可溶性オリゴマーを形成することが可能である。Aβおよびそのフラグメントのオリゴマーは通常可溶性でありかつ主としてα−へリックス若しくはランダムコイルとして存在する。単量体Aβの一製造方法は、凍結乾燥したペプチドを希釈していないDMSOに超音波処理を用いて溶解することである。生じる溶液を遠心分離していかなる不溶性微粒子も除去する。凝集型Aβ若しくはそのフラグメントは、単量体単位が非共有結合により一緒に保持されかつ不溶性βシート集成体に会合しているAβ若しくはその免疫原性フラグメントのオリゴマーを意味している。凝集型Aβ若しくはそのフラグメントはまた原線維の多量体(fibrillar polymers)も意味している。原線維は通常不溶性である。数種の抗体は、可溶性Aβ若しくはそのフラグメント、または凝集型Aβ若しくはそのフラグメントのいずれかを結合する。数種の抗体は可溶性Aβ若しくはそのフラグメントおよび凝集型Aβ若しくはそのフラグメントの双方を結合する。数種の抗体は斑に結合することなく可溶性Aβに結合する。
【0022】
「抗原」は抗体が特異的に結合する実体である。
【0023】
「エピトープ」若しくは「抗原決定基」という用語は、Bおよび/若しくはT細胞が応答する抗原上の一部位を指す。B細胞エピトープは、隣接するアミノ酸若しくはタンパク質の三次元のフォールディングにより並置される隣接しないアミノ酸の双方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶媒への曝露に際して典型的に保持される一方、三次元のフォールディングにより形成されるエピトープは典型的には変性溶媒での処理に際して喪失される。エピトープは、独特の空間配置にある典型的には最低3、およびより通常は最低5若しくは8〜10アミノ酸を包含する。エピトープの空間的
配置の決定方法は、例えばx線結晶学および2次元核磁気共鳴を包含する。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66、Glenn E.Morris編(1996)を参照されたい。同一エピトープを認識する抗体は、標的抗原への別の抗体の結合を遮断する一抗体の能力を示す単純なイムノアッセイで同定し得る。T細胞は、CD8細胞について約9アミノ酸若しくはCD4細胞について約13〜15アミノ酸の連続したエピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、エピトープに応答してプライミングされたT細胞によるH−チミジン取り込みにより測定されるところの抗原依存性の増殖を測定するin vitroアッセイ(Burkeら、J.Inf.Dis.、170、1110−19(1994))、抗原依存性の殺傷(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tiggesら、J.Immunol.、156、3901−3910)若しくはサイトカイン分泌により同定し得る。
【0024】
AβのN末端エピトープは残基1−11を伴うエピトープを意味している。C末端領域内のエピトープは残基29−43内のエピトープを意味し、また、中央領域内のエピトープは残基12−28を伴うエピトープを意味している。
【0025】
「免疫学的」若しくは「免疫」応答という用語は、レシピエント患者におけるアミロイドペプチドに向けられた有益な体液性(抗体媒介性)および/または細胞性(抗原特異的T細胞若しくはそれらの分泌産物により媒介される)応答の発生である。こうした応答は、免疫原の投与により誘導される能動的応答または抗体の投与若しくはプライミングされたT細胞により誘導される受動的応答であり得る。細胞性免疫応答は、抗原特異的CD4 Tヘルパー細胞および/若しくはCD8細胞傷害性T細胞を活性化するためのクラスI若しくはクラスII MHC分子とともにのポリペプチドエピトープの提示により導き出される。該応答は、単球、マクロファージ、NK細胞、好塩基球、樹状細胞、星状細胞、ミクログリア細胞、好酸球若しくは自然免疫の他成分の活性化もまた伴うことがある。細胞媒介性の免疫学的応答の存在は増殖アッセイ(CD4 T細胞)若しくはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイにより測定し得る(Burke、上記;Tigges、上記を参照されたい)。免疫原の保護若しくは治療効果に対する体液性および細胞性の応答の相対的寄与は、免疫した同系動物から抗体およびT細胞を個別に単離すること、ならびに第二の被験体中で保護若しくは治療効果を測定することにより識別し得る。
【0026】
「免疫原性の剤」若しくは「免疫原」は、場合によってはアジュバントともにの哺乳動物への投与に際してそれ自身に対する免疫学的応答を誘導することが可能である。
【0027】
「裸のポリヌクレオチド」という用語はコロイド状物質と複合体形成されていないポリヌクレオチドを指す。裸のポリヌクレオチドはときにプラスミドベクター中にクローン化される。
【0028】
「アジュバント」という用語は、抗原とともに投与される場合に該抗原に対する免疫応答を増強するがしかし単独で投与される場合に該抗原に対する免疫応答を生成しない化合物を指す。アジュバントは、リンパ球動員、Bおよび/若しくはT細胞の刺激、ならびにマクロファージの刺激を包含するいくつかの機構により免疫応答を増強し得る。
【0029】
「患者」という用語は、予防的若しくは治療的いずれかの処置を受領するヒトおよび他の哺乳動物被験体を包含する。
【0030】
抗体間の競合は、試験中の免疫グロブリンがAβのような共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイにより測定される。多数の型の競合的結合アッセイ、例えば:固相直接若しくは間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接若しくは間接エ
ンザイムイムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahliら、Methods in Enzymology、9:242−253(1983)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Kirklandら、J.Immunol.137:3614−3619(1986)を参照されたい);固相直接標識アッセイ、固相直接標識サンドイッチアッセイ(HarlowとLane、“Antibodies,A Laboratory Manual”、Cold Spring Harbor
Press(1988)を参照されたい);I−125標識を使用する固相直接標識RIA(Morelら、Molec.Immunol.25(1):7−15(1988)を参照されたい);固相直接ビオチン−アビジンEIA(Cheungら、Virology、176:546−552(1990));および直接標識RIA(Moldenhauerら、Scand.J.Immunol.、32:77−82(1990))が既知である。典型的には、こうしたアッセイは固体表面に結合された精製された抗原若しくはこれらのいずれかをもつ細胞、未標識試験免疫グロブリンおよび標識参照免疫グロブリンの使用を必要とする。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面若しくは細胞に結合された標識の量を測定することにより測定する。通常、試験免疫グロブリンは過剰に存在する。競合アッセイにより同定される抗体(競合抗体)は、参照抗体と同一エピトープに結合する抗体、および、参照抗体により結合されたエピトープに立体障害が起こるように十分近接した隣接エピトープに結合する抗体を包含する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは共通抗原への参照抗体の特異的結合を最低50若しくは75%阻害することができる。
【0031】
可溶性Aβに特異的に結合する抗体は、最低10−1の親和性で可溶性Aβに結合する抗体を意味している。数種の抗体は10−1と1011−1との間の親和性で可溶性Aβに結合する。
【0032】
斑に特異的に結合することなく可溶性Aβに特異的に結合する抗体は、上述されたところの可溶性Aβに結合しかつ以前のアルツハイマー病の患者若しくはトランスジェニック動物モデルの屍体からの斑(すなわち凝集型β−プリーツシートの形態のAβ)に対し最低10倍および通常は最低100倍より低い特異的結合親和性を有する抗体を意味している。例えば、こうした抗体は10−1の親和性で可溶性Aβに、および10−1未満の親和性で斑に結合するとみられる。こうした抗体の斑に対する親和性は通常10若しくは10−1未満である。こうした抗体は、付加的に、若しくは、あるいは、該抗体を斑と接触させかつ(実施例の節に記述されるとおり)蛍光標識により結合を評価する場合に、無関係の対照抗体(例えばリバースマー(reversemer)Aβペプチドに対する抗体若しくはポリクローナル抗体の混合物)に関しての蛍光強度により定義される。斑に結合することなく可溶性Aβペプチドに結合する抗体の蛍光強度は、5の係数内、ときに2の係数内にあり、およびときに対照抗体のものと実験誤差内で識別不可能である。
【0033】
1種若しくはそれ以上の列挙された要素を「含んでなる」組成物若しくは方法は具体的に列挙されない他要素を包含してよい。例えば、Aβペプチドを含んでなる組成物は、単離されたAβペプチドおよびより大きなポリペプチド配列の一成分としてのAβペプチドの双方を包含する。
【0034】
III.能動免疫のためのAβペプチド
本発明の方法での使用のためのAβペプチドは、ヒト患者若しくは動物への投与に際して、Aβの残基1−11内の1個若しくはそれ以上のエピトープに特異的に結合する抗体を生成させることなくAβの残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープに特異的に結合する抗体を生成する免疫原性ペプチドである。残基12と43との間のエピトープに特異的に結合する抗体は、Aβの斑に結合することなく可溶性Aβに特異的に
結合する。これらの型の抗体は、患者若しくはモデルの脳中のAβ沈着物の斑に特異的に結合することなく、患者若しくはモデルのアミロイドの循環中の可溶性Aβに特異的に結合し得る。可溶性Aβへの抗体の特異的結合は、Aβが斑中に取り込まれることを阻害して、従って、患者での斑の発生を阻害するかまたは処置が投与される前にこうした斑が既に発生している場合には斑の大きさ若しくは頻度のさらなる増大を阻害するかのいずれかである。
【0035】
好ましくは、投与されたAβのフラグメントは該フラグメントに応答するT細胞を生成させるとみられるエピトープを欠く。一般にT細胞エピトープは10個の隣接するアミノ酸より大きい。従って、Aβの好ましいフラグメントは大きさ5〜10若しくは好ましくは7〜10個の隣接するアミノ酸;すなわち、T細胞応答を生成させることなく抗体応答を生成させるのに十分な長さのものである。T細胞エピトープの非存在は、これらのエピトープがフラグメントの免疫原性の活性に必要とされずかつあるサブセットの患者において望ましくない炎症応答を引き起こすかもしれないため、好ましい(Andersonら、(2002)J.Immunol.168、3697−3701;Senior(2002)Lancet Neurol.1,3)。いくつかの方法において、該フラグメントはAβ13−28、17−28、25−35、35−40、33−42若しくは35−42以外のフラグメントである。大部分のT細胞エピトープはAβのアミノ酸14−30内に存在する。
【0036】
フラグメントAβ15−24およびその7〜9個の隣接するアミノ酸のサブフラグメントは、これらのペプチドがAβペプチドに対する高い免疫原性の応答を一貫して生成させるため、好ましい。これらのフラグメントは、Aβ15−21、Aβ16−22、Aβ17−23、Aβ18−24、Aβ19−25、Aβ15−22、Aβ16−23、Aβ17−24、Aβ18−25、Aβ15−23、Aβ16−24、Aβ17−25、Aβ18−26、Aβ15−24、Aβ16−25およびAβ15−25を包含する。例えばAβ15−21という呼称は、Aβの残基15−21を包含しかつAβの他残基を欠くフラグメントを示す。5〜10および好ましくは7〜10個の隣接するアミノ酸のAβ42若しくは43のC末端フラグメントもまた好ましい。これらのフラグメントは、末端特異的抗体を包含する抗体応答を生成させ得る。これらの抗体は、Aβ39−41に特異的に結合することなくAβ42およびAβ43に特異的に結合することにおいて有利である。これらの抗体は斑に結合することなく可溶性Aβに結合する。
【0037】
いくつかの方法において、Aβの中央若しくはC末端領域からのフラグメントは、N末端領域からの1フラグメントを投与することもまた包含するレジメンで投与される。一般に、こうしたフラグメントは、アミロイド斑に特異的に結合しかつ貪食細胞を介するそれらの消失を誘導する抗体を誘導する。こうした応答はAβの既存の沈着物を消失させるのにとりわけ有用である。しかしながら、沈着物が一旦消失されれば、可溶性Aβに対する抗体を誘導するためのAβの中央若しくはC末端領域からのフラグメントでのさらなる処置は、ある種の患者において炎症性の副作用の危険を伴わずにAβのさらなる沈着を予防するために有利である。Aβの残基1−3で開始しかつAβの残基7−11で終了するN末端フラグメントがとりわけ好ましい。例示的N末端フラグメントはAβ1−5、1−6、1−7、1−10、3−7、1−3および1−4を包含する。
【0038】
別の方法で示されない限り、Aβへの言及は、上で示された天然のヒトアミノ酸配列、ならびにアレル、種および誘導されたバリアントを包含するアナログを包含する。Aβのアナログは天然のAβペプチド(例えばAβ42)と特異的に結合する抗体を誘導する。Aβのアナログは、典型的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10までの位置の変化により30%までのアミノ酸位置で、天然に存在するペプチドと異なる。天然のアミノ酸残基の各欠失若しくは置換は、置換を伴わない1残基の挿入がそうであるよ
うに位置の変化と考えられる。アミノ酸置換はしばしば保存的置換である。
【0039】
別の方法で示されない限り、Aβフラグメントへの言及は、上で示された天然のヒトアミノ酸配列のフラグメント、ならびにアレル、種および誘導されたバリアントを包含するアナログを包含する。Aβフラグメントのアナログは天然のAβペプチド(例えばAβ42)と特異的に結合する抗体を誘導する。Aβフラグメントのアナログは、典型的には、約30%までのアミノ酸位置で、天然に存在するペプチドフラグメントと異なる。例えば、Aβ15−21のアナログは、1、2、3若しくは4 10までの位置の変化により変動しうる。天然のアミノ酸残基の各欠失若しくは置換は、置換を伴わない残基の挿入がそうであるように位置の変化と考えられる。アミノ酸置換はしばしば保存的置換である。
【0040】
Aβ若しくはAβフラグメントのいくつかのアナログは、1、2、5、10若しくはなお全部の位置で非天然のアミノ酸またはN若しくはC末端のアミノ酸の改変を包含してもまたよい。例えば、Aβの位置1および/若しくは7の天然のアスパラギン酸残基はイソアスパラギン酸で置換され得る。非天然のアミノ酸の例は、D、α、α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、ω−N−メチルアルギニン、β−アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サイロキシン、γ−アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリンおよびイソアスパラギン酸である。本発明のいくつかの治療薬は全−Dペプチド、例えば全−D Aβ若しくは全−D Aβフラグメント、および全−Dペプチドアナログである。フラグメントおよびアナログは、下述されるとおり、トランスジェニック動物モデルにおいて未処置の若しくはプラセボ対照と比較して予防若しくは治療上の有効性についてスクリーニングし得る。
【0041】
Aβ、そのフラグメントおよびアナログは固相ペプチド合成若しくは組換え発現により合成し得るか、または天然の供給源から得ることができる。自動ペプチド合成機は、Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティのような多数の供給元から商業的に入手可能である。組換え発現は、大腸菌(E.coli)のような細菌、酵母、昆虫細胞若しくは哺乳動物細胞中であり得る。組換え発現のための手順は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(C.S.H.P.Press、ニューヨーク 第2版、1989)により記述されている。いくつかの形態のAβペプチドはまた商業的にも入手可能である(例えば、American Peptides Company,Inc.、カリフォルニア州サニーベール、およびCalifornia Peptide Research,Inc.カリフォルニア州ナパ)。
【0042】
治療薬はまた、例えば一方若しくは一方若しくは双方の側でAβペプチドに隣接する1個若しくはそれ以上の他のアミノ酸と一緒にAβペプチドの免疫原性フラグメントを包含するより長いポリペプチドも包含する。例えば、好ましい剤は、異種アミノ酸配列に対するヘルパーT細胞応答およびそれによりAβセグメントに対するB細胞応答を誘導する異種アミノ酸配列に融合されたAβの1セグメントを含んでなる融合タンパク質を包含する。1個若しくはそれ以上の隣接する異種アミノ酸はまた、製造、貯蔵若しくは使用において分解からそれを保護するためにAβペプチドをキャップするのにも使用し得る。こうしたポリペプチドは、下述されるとおり、動物モデルにおいて未処置若しくはプラセボ対照と比較して予防若しくは治療上の有効性についてスクリーニングし得る。本発明の治療薬はポリリシン配列により隣接されたAβの免疫原性フラグメントを包含する。該ポリリシン配列は、AβのN末端、C末端、若しくはNおよびC末端の双方、またはAβの免疫原性フラグメントに融合し得る。Aβペプチド、アナログ、活性フラグメント若しくは他の
ポリペプチドは、会合したすなわち多量体の形態で若しくは解離した形態で投与し得る。治療薬は単量体の免疫原性の剤の多量体もまた包含する。
【0043】
さらなる一変形において、Aβの免疫原性フラグメントは免疫原性組成物の一部としてウイルス若しくは細菌により提示され得る。免疫原性ペプチドをコードする核酸はウイルス若しくは細菌のゲノム若しくはエピソーム中に組込まれる。場合によっては、該核酸は、分泌型タンパク質、または該ペプチドが発現されるようにウイルスの外表面タンパク質若しくは細菌の膜貫通タンパク質との融合タンパク質として該免疫原性ペプチドが発現されるような様式で組込まれる。こうした方法で使用されるウイルス若しくは細菌は非病原性であるか若しくは弱毒化されているべきである。適するウイルスは、アデノウイルス、HSV、ベネズエラウマ脳炎ウイルスおよび他のアルファウイルス、水疱性口内炎ウイルスおよび他のラブドウイルス、ワクシニアおよび鶏痘を包含する。適する細菌はサルモネラ属(Salmonella)およびシゲラ属(Shigella)を包含する。HBVのHBsAgへの免疫原性ペプチドの融合がとりわけ適する。
【0044】
治療薬はまた、Aβと有意のアミノ酸配列の類似性を必ずしも有しないがしかしにもかかわらずAβの模倣物としてはたらきかつ類似の免疫学的応答を誘導するペプチドおよび他の化合物も包含する。例えば、β−プリーツシートを形成するいずれかのペプチドおよびタンパク質を適合性についてスクリーニングし得る。Aβ若しくは他のアミロイド原性のペプチドに対するモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体もまた使用し得る。こうした抗Id抗体は抗原を模倣し、そしてそれに対する免疫応答を生成させる(Essential Immunology(Roit編、Blackwell Scientific Publications、パロアルト、第6版)を参照されたい)。Aβペプチド以外の剤は、上に列挙されたAβの好ましいセグメント(例えば15−24)の1種若しくはそれ以上に対する免疫原性の応答を誘導するはずである。好ましくは、こうした剤は、Aβの他のセグメントに向けられることなくこれらのセグメントの1種に特異的に向けられる免疫原性の応答を誘導する。
【0045】
ペプチド若しくは他の化合物のランダムライブラリーもまた適合性についてスクリーニングし得る。コンビナトリアルライブラリーを、段階的様式で合成し得る多くの型の化合物について製造し得る。こうした化合物は、ポリペプチド、β−ターン模倣物、多糖、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーのN置換グリシンおよびオリゴカルバメートを包含する。化合物の大型のコンビナトリアルライブラリーは、Affymax、第WO 95/12608号明細書、Affymax、第WO 93/06121号明細書、コロンビア大学(Columbia University)、第WO 94/08051号明細書、Pharmacopeia、第WO 95/35503号明細書およびScripps、第WO 95/30642号明細書(それらのそれぞれは全部の目的上引用することにより組み込まれる)に記述されるエンコード化合成ライブラリー(encoded synthetic libraries)(ESL)法により構築し得る。ペプチドライブラリーはファージディスプレイ法によってもまた生成し得る。例えばDevlin、第WO 91/18980号明細書を参照されたい。
【0046】
コンビナトリアルライブラリーおよび他の化合物を、最初に、Aβ若しくは他のアミロイド原性ペプチドに対し特異的であることが既知の抗体またはリンパ球(B若しくはT)に特異的に結合するそれらの能力を決定することにより適合性についてスクリーニングする。例えば、最初のスクリーニングは、Aβ若しくはそのフラグメントに対するいずれかのポリクローナル血清若しくはモノクローナル抗体を用いて実施し得る。化合物をその後、Aβ内の特定のエピトープ(例えば15−24)への特異的結合についてスクリーニングし得る。化合物は、抗体エピトープの特異性をマッピングするために記述された同一の
手順により試験し得る。こうしたスクリーニングにより同定された化合物をその後、Aβ若しくはそのフラグメントに対する抗体若しくは反応性のリンパ球を誘導する能力についてさらに分析する。例えば、血清の多重希釈溶液を、Aβ若しくはそのフラグメントでプレコートしたマイクロタイタープレート上で試験し得、そしてAβ若しくはフラグメントに対し反応性の抗体について試験するため標準的ELISAを実施し得る。化合物をその後、実施例に記述されるとおり、アミロイド原性疾患に対する素因を作られたトランスジェニック動物で予防および治療上の有効性について試験し得る。こうした動物は、例えば、Gamesら、上記により記述されたAPPの717突然変異をもつマウス、ならびに、McConlogueら、米国特許第5,612,486号明細書およびHsiaoら、Science、274、99(1996);Staufenbielら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:13287−13292(1997);Sturchler−Pierratら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:13287−13292(1997);Borcheltら、Neuron、19:939−945(1997))により記述されたようなAPPの670/671スウェーデン型突然変異をもつマウスを包含する。同一のスクリーニングアプローチを、上述されたAβの他の潜在的剤のアナログおよびAβのフラグメントを包含するより長いペプチドで使用し得る。
【0047】
IV.複合物
免疫応答を誘導するための数種の剤は、LBに対する免疫応答を誘導するための適切なエピトープを含有するがしかし免疫原性であるには小さすぎる。この状況で、ペプチド免疫原を適する担体分子に結合して免疫応答を導き出すのに役立つ複合物を形成し得る。単一の剤を単一の担体に結合し得るか、1種の剤の複数のコピーを1種の担体の複数のコピーに結合しそれらを順に相互に結合し得るか、1種の剤の風数のコピーを1種の担体の単一のコピーに結合し得るか、または、1種の剤の単一のコピーを1種の担体若しくは異なる担体の複数のコピーに結合し得る。適する担体は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、卵アルブミン、破傷風トキソイド、またはジフテリア、大腸菌(E.coli)、コレラ若しくはH.ピロリ(H.pylori)のような他の病原性細菌からのトキソイド、あるいは弱毒化トキシン誘導体を包含する。T細胞エピトープもまた適する担体分子である。数種の複合物は、免疫刺激性ポリマー分子(例えばトリパルミトイル−S−グリセリンシステイン(PamCys)、マンナン(マンノースポリマー)若しくはグルカン(β−1→2ポリマー))、サイトカイン(例えばIL−1、IL−1αおよびβペプチド、IL−2、γ−INF、IL−10、GM−CSF)、ならびにケモカイン(例えばMIP1αおよびβ、ならびにRANTES)に本発明の剤を結合することにより形成し得る。免疫原性の剤はまた、O’Mahony、第WO 97/17613号および同第WO 97/17614号明細書に記述されるところの組織を横断する輸送を高めるペプチドにも結合し得る。免疫原はスペーサーアミノ酸(例えばgly−gly)を用いて若しくは用いずに担体に結合してよい。
【0048】
数種の複合物は本発明の剤を最低1種のT細胞エピトープに結合することにより形成し得る。数種のT細胞エピトープは無差別(promiscuous)である一方、他のT細胞エピトープは普遍的(universal)である。無差別なT細胞エピトープは、多様なHLA型を表示する多様な被験体におけるT細胞免疫の誘導を高めることが可能である。無差別なT細胞エピトープと対照的に、普遍的T細胞エピトープは、異なるHLA−DRアレルによりコードされる多様なHLA分子を表示する被験体の大きなパーセント、例えば最低75%でT細胞免疫の誘導を高めることが可能である。
【0049】
破傷風トキソイド(例えばP2およびP30エピトープ)、B型肝炎表面抗原、百日咳トキソイド、麻疹ウイルスFタンパク質、トラコーマクラミジア(Chlamydia
trachomitis)主要外膜タンパク質、ジフテリアトキソイド、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)スポロゾイド周囲T、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)CS抗原、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)トリオースリン酸イソメラーゼ、大腸菌(Escherichia coli)TraT、およびインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のような多数の天然に存在するT細胞エピトープが存在する。本発明の免疫原性ペプチドは、Sinigaglia F.ら、Nature、336:778−780(1988);Chicz R.M.ら、J.Exp.Med.、178:27−47(1993);Hammer J.ら、Cell 74:197−203(1993);Falk K.ら、Immunogenetics、39:230−242(1994);第WO 98/23635号明細書;およびSouthwood S.ら J.Immunology、160:3363−3373(1998)(それらのそれぞれは全部の目的上引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されるT細胞エピトープともまた複合させ得る。さらなる例は:
インフルエンザヘマグルチニン:HA307−319
マラリアCS:T3エピトープEKKIAKMEKASVFNV(配列番号4)
B型肝炎表面抗原:HBsAg19−28FFLLTRILTI(配列番号5)
熱ショックタンパク質65:hsp65153−171DQSIGDLIAEAMDKVGNEG(配列番号6)
カルメット−ゲラン杆菌 QVHFQPLPPAVVLK(配列番号7)
破傷風トキソイド:TT830−844QYIKANSKFIGITEL(配列番号8)破傷風トキソイド:TT947−967FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号9)
HIV gp120T1:KQIINMWQEVGKAMYA(配列番号10)
を包含する。
【0050】
あるいは、複合物は、汎DRエピトープ(「PADRE」)のようなMHCクラスII分子の大きな比率を結合することが可能な最低1種の人工的T細胞エピトープに本発明の剤を結合することにより形成し得る。PADREは米国特許第5,736141号明細書、第WO 95/07707号明細書、およびAlexander Jら、Immunity、1:751−761(1994)(それらのそれぞれは全部の目的上引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている。好ましいPADREペプチドはAKXVAAWTLKAAA(配列番号11)であり、(共通の残基を太字で表す)、ここでXは好ましくはシクロへキシルアラニン、チロシン若しくはフェニルアラニンであり、シクロヘキシルアラニンが最も好ましい。
【0051】
免疫原性の剤は化学的架橋により担体に結合し得る。担体に免疫原を結合するための技術は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を使用するジスルフィド結合の形成を包含する(ペプチドがスルフヒドリル基を欠く場合、これをシステイン残基の付加により提供し得る)。これらの試薬はそれら自身と1種のタンパク質上のペプチドシステイン残基との間にジスルフィド結合を、および、リシン上のε−アミノ若しくは他のアミノ酸中の他の遊離のアミノ基によりアミド結合を創製する。多様なこうしたジスルフィド/アミド形成剤がImmun.Rev.62、185(1982)により記述されている。他の二官能性カップリング剤はジスルフィド結合よりむしろチオエーテルを形成する。これらのチオエーテル形成剤の多くは商業的に入手可能であり、そして6−マレイミドカプロン酸、2−ブロモ酢酸および2−ヨード酢酸、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸の反応性エステルを包含する。カルボキシル基は、それらをスクシンイミド若しくは1−ヒドロキシ−2−ニトロ−4−スルホン酸ナトリウム炎と組合せることにより活性化し得る。
【0052】
免疫原性は、Tエピトープと本発明のペプチド免疫原との間のスペーサー残基(例えばGly−Gly)の付加により改善し得る。B細胞エピトープ(すなわちペプチド免疫原)からTエピトープを物理的に分離することに加え、該グリシン残基はペプチド免疫原とのTエピトープの結合により創製されるいかなる人工的二次構造も破壊し得、そしてそれによりTおよび/若しくはB細胞応答の間の妨害を排除し得る。ヘルパーエピトープと抗体を導き出すドメインとの間のコンホメーション上の分離は、従って、提示される免疫原と適切なTおよびB細胞との間のより効率的な相互作用を可能にする。
【0053】
多様なHLA型を表示する被験体の大きなパーセントにおける、本発明の剤に対するT細胞免疫の誘導を高めるために、多様なT細胞エピトープを伴う複合物の混合物を製造し得る。該混合物は、多様なT細胞エピトープを伴う最低2種の複合物の混合物、多様なT細胞エピトープを伴う最低3種の複合物の混合物、若しくは多様なT細胞エピトープを伴う最低4種の複合物の混合物を含有してよい。該混合物はアジュバントとともに投与してよい。
【0054】
免疫原性ペプチドはまた担体(すなわち異種ペプチド)との融合タンパク質としても発現させ得る。免疫原性ペプチドは、そのアミノ末端、そのカルボキシル末端若しくは双方で担体に結合し得る。場合によっては免疫原性ペプチドの複数の反復物(repeat)が融合タンパク質中に存在し得る。場合によっては免疫原性ペプチドを該ペプチドの例えばNおよびC末端双方で異種ペプチドの複数のコピーに結合し得る。場合によっては、免疫原性ペプチドの複数のコピーを、相互に結合されている異種ペプチドの複数のコピーに結合し得る。数種の担体ペプチドは該担体ペプチドに対するヘルパーT細胞応答を誘導するようはたらく。該誘導されたヘルパーT細胞が順に、該担体に結合された免疫原性ペプチドに対するB細胞応答を誘導する。
【0055】
本発明での使用に適する融合タンパク質のいくつかの例を下に示す。これらの融合タンパク質のいくつかは、米国特許第5,196,512号明細書、欧州特許第378,881号明細書および欧州特許第427,347号明細書に記述されるような破傷風トキソイドのエピトープに結合されたAβのセグメントを含んでなる。数種の融合タンパク質は、米国特許第5,736,142号明細書に記述される最低1種のPADREペプチドに結合されたAβのセグメントを含んでなる。数種の異種ペプチドは無差別のT細胞エピトープである一方、他の異種ペプチドは普遍的なT細胞エピトープである。いくつかの方法において、投与のための剤は、単純に、直線状の配置で異種セグメントに結合されたAβセグメントをもつ単一の融合タンパク質である。本発明の治療薬は式を使用して表し得る。例えば、いくつかの方法において、該剤は式2(式中xは1〜5からの整数である)により表される融合タンパク質の多量体である。好ましくはxは1、2若しくは3であり、2が最も好ましい。xが2である場合、こうした多量体はMAP4と称される好ましい配置で結合された4種の融合タンパク質を有する(米国特許第5,229,490号明細書を参照されたい)。
【0056】
MAP4配置を下に示し、ここで、ペプチド合成をN末端およびリシンの側鎖アミンの双方で開始することにより分枝状構造が生じる。回数に依存してリシンが配列に組込まれ、そして分枝することを可能にされ、生じる構造は複数のN末端を提示することができる。この例において、分枝したリシンを含有する核上に4種の同一のN末端が生じられる。こうした多重性はコグネイトのB細胞の応答性を大きく高める。下の例において、ZはAβの免疫原性フラグメントを指し、また、Z1−4はAβの免疫原性フラグメント(1種若しくは複数)を指す。該フラグメントは相互に同一若しくは異なることができる。
【0057】
【化2】

融合タンパク質の他の例は:
MAP4配置のZ−破傷風トキソイド830−844:
Z−QYIKANSKFIGITEL(配列番号12)
MAP4配置のZ−破傷風トキソイド947−967:
Z−FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号13)
MAP4配置のZ−破傷風トキソイド830−844:
Z−QYIKANSKFIGITEL(配列番号14)
直線状の配置のZ−破傷風トキソイド830−844+947−967:
Z−QYIKANSKFIGITELFNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号15)
PADREペプチド(全部が直線状の配置)、ここでXは好ましくはシクロへキシルアラニン、チロシン若しくはフェニルアラニンであり、シクロヘキシルアミンが最も好ましい−Z:
AKXVAAWTLKAAA−Z(配列番号16)
Z×3−PADREペプチド:
Z−Z−Z−AKXVAAWTLKAAA(配列番号17)
直線状の配置のZ−卵アルブミン323−339:
Z−ISQAVHAAHAEINEAGR(配列番号20)
を包含する。
【0058】
融合タンパク質のさらなる例は:
AKXVAAWTLKAAA−Z−Z−Z−Z(配列番号18)
Z−AKXVAAWTLKAAA(配列番号19)
PKYVKQNTLKLAT−Z−Z−Z(配列番号21)
Z−PKYVKQNTLKLAT−Z(配列番号22)
Z−Z−Z−PKYVKQNTLKLAT(配列番号23)
Z−Z−PKYVKQNTLKLAT(配列番号24)
Z−PKYVKQNTLKLAT−EKKIAKMEKASSVFNV−QYIKANSKFIGITEL−FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE−Z−Z−Z−Z−QYIKANSKFIGITEL−FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号25)
Z−QYIKANSKFIGITELCFNNFTVSFWLRVPKVSASHLE−Z−QYIKANSKFIGITELCFNNFTVSFWLRVPKVSASHLE−Z(配列番号26)
二分枝状樹脂上のZ−QYIKANSKFIGITEL(配列番号27):フラグメントは相互と同一若しくは異なることができる。
【0059】
【化3】

を包含する。
【0060】
同一若しくは類似の担体タンパク質および結合方法を、Aβ若しくはAβの免疫原性フラグメントに対する抗体の生成で使用されるべき免疫原を生成させるために使用し得る。例えば、担体に結合したAβ若しくはAβの免疫原性フラグメントを、Aβ若しくはAβの免疫原性フラグメントに対するモノクローナル抗体の製造で実験動物に投与し得る。
【0061】
V.治療薬をコードする核酸
アミロイド沈着物に対する免疫応答は、Aβペプチド、およびそれらのフラグメント、他のペプチド免疫原、若しくは受動免疫に使用される抗体およびそれらの構成要素の鎖のセグメントをコードする核酸の投与によってもまた誘導し得る。こうした核酸はDNA若しくはRNAであり得る。免疫原をコードする核酸セグメントは、典型的に、患者の意図された標的細胞中で該DNAセグメントの発現を可能にするプロモーターおよびエンハンサーのような調節要素に結合される。免疫応答の誘導に望ましいような血液細胞中での発現のためには、L若しくはH鎖免疫グロブリン遺伝子からのプロモーターおよびエンハンサー要素、若しくはCMV主要前初期プロモーターおよびエンハンサーが発現を指図するのに適する。結合された調節要素およびコーディング配列はしばしばベクターにクローン化される。二本鎖抗体の投与のため、該二本鎖を同一の若しくは別個のベクターにクローン化し得る。本発明の治療薬をコードする核酸はまた最低1種のT細胞エピトープもコードし得る。アジュバントの使用および担体の使用に関する本明細書の開示は、必要に応じて変更を加えて、本発明の治療薬をコードする核酸とともにのそれらの使用に当てはまる。
【0062】
レトロウイルス系(例えばLawrieとTumin、Cur.Opin.Genet.Develop.3、102−109(1993)を参照されたい);アデノウイルスベクター(例えばBettら、J.Virol.67、5911(1993)を参照されたい);アデノ随伴ウイルスベクター(例えばZhouら、J.Exp.Med.179、1867(1994)を参照されたい)、ワクシニアウイルスおよび禽痘ウイルスを包含するポックス科からのウイルスベクター、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス由来のもののようなアルファウイルス属からのウイルスベクター(例えばDubenskyら、J.Virol.70、508−519(1996)を参照されたい)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(米国特許第5,643,576号明細書を参照されたい)、ならびに水疱性口内炎ウイルス(第WO 96/34625号明細書を参照されたい)およびパピローマウイルス(Oheら、Human Gene Therapy 6、325−333(1995);Wooら、第WO 94/12629号明細書およびXiaoとBrandsma、Nucleic Acids.Res.24、2630−2622(1996))のようなラブドウイルスを包含する多数のウイルスベクター系が利用可能である。
【0063】
免疫原をコードするDNA若しくはそれを含有するベクターをリポソーム中にパッケージングし得る。適する脂質および関連するアナログは米国特許第5,208,036号、同第5,264,618号、同第5,279,833号および同第5,283,185号明細書により記述されている。ベクターおよび免疫原をコードするDNAはまた微粒子担体に吸着若しくはそれらと会合し得、それらの例はポリメチルメタクリレートポリマーならびにポリラクチドおよびポリ(ラクチドコグリコリド)を包含する。例えばMcGee
ら、J.Micro Encap.(1996)を参照されたい。
【0064】
遺伝子治療ベクター若しくは裸のDNAは、個々の患者への投与により、典型的には全身投与(例えば静脈内、腹腔内、鼻、胃、皮内、筋肉内、皮下若しくは頭蓋内注入)または局所適用(例えば米国特許第5,399,346号明細書を参照されたい)によりin
vivoで送達し得る。こうしたベクターはブピバカインのような促進剤をさらに包含し得る(米国特許第5,593,970号明細書)。DNAは遺伝子銃を使用してもまた投与し得る(XiaoとBrandsma、上記を参照されたい)。免疫原をコードするDNAを極微の金属ビーズの表面上に沈殿させる。微小発射体はショック波若しくは膨張するヘリウムガスで加速されそして数細胞層の深さまで組織に浸透する。例えば、Agacerus,Inc.、ウィスコンシン州ミドルタウンにより製造されるアクセル[Accel]TM遺伝子送達装置が適する。あるいは、裸のDNAを、化学的若しくは機械的刺激を用いて皮膚上にDNAを単にスポットすることにより皮膚を通して血流中に進ませる(第WO 95/05853号明細書を参照されたい)。
【0065】
さらなる一変形において、免疫原をコードするベクターを、個々の患者から外植した細胞(例えばリンパ球、骨髄吸引物、組織生検)若しくは普遍的ドナー造血幹細胞のような細胞にex vivoで送達し得、次いで通常はベクターを取り込んだ細胞についての選択後に患者に該細胞を再植込し得る。
【0066】
VI.アジュバント
ペプチドのような本発明の免疫原性の剤はときにアジュバントとともに投与する。アジュバントは、該ペプチドが単独で使用された場合の状況に関して誘導される抗体の力価および/若しくは誘導される抗体の結合親和性を増大させる。多様なアジュバントをAβの免疫原性フラグメントとともに使用して免疫応答を導き出し得る。好ましいアジュバントは、免疫原に対する固有の応答の質的形態に影響を及ぼす免疫原中のコンホメーション変化を引き起こすことなく該応答を増強する。好ましいアジュバントは、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(MPLTM)(英国特許第2220211号明細書(RIBI ImmunoChem Research Inc.、モンタナ州ハミルトン、現在Corixaの一部)を参照されたい)を包含する。スティミュロン[Stimulon]TMQS−21は南米で見出されるシャボンノキ(Quillaja Saponaria Molina)樹の樹皮から単離されたトリテルペン配糖体すなわちサポニンである(Kensilら、Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(PowellとNewman編、Plenum Press、ニューヨーク、1995)中;米国特許第5,057,540号明細書を参照されたい)、(Aquila BioPharmaceuticals、マサチューセッツ州フラミンガム)。他のアジュバントは、場合によってはモノホスホリルリピドA(Stouteら、N.Engl.J.Med.336、86−91(1997)を参照されたい)、プルロニックポリマーおよび殺したミコバクテリアのような免疫刺激剤と組合せの水中油型乳剤(スクアレン若しくはラッカセイ油のような)である。別のアジュバントはCpGである(第WO 98/40100号明細書)。アジュバントは、有効成分を含む治療的組成物の1成分として投与し得るか、または、治療薬の投与と別個にその前、同時に若しくは後に投与し得る。
【0067】
アジュバントの好ましい一分類は水酸化アルミニウム塩、リン酸アルミニウム塩、硫酸アルミニウム塩のようなアルミニウム塩(ミョウバン)である。こうしたアジュバントは、MPL若しくは3−DMP、QS−21、ポリグルタミン酸若しくはポリリシンのような多量体若しくは単量体のアミノ酸のような他の特定の免疫刺激剤とともに若しくはそれらを伴わずに使用し得る。別の分類のアジュバントは水中油型乳剤製剤である。こうしたアジュバントは、ムラミルペプチド(例えばN−アセチルムラミル−L−トレオニル−D
−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチルノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)エチルアミン(MTP−PE)、N−アセチルグルコサミニル−N−アセチルムラミル−L−Al−D−isoglu−L−Ala−ジパルミトキシプロピルアミド(DTP−DPP)teramideTM)、若しくは他の細菌の細胞壁の成分のような他の特定の免疫刺激剤とともに若しくはそれらを伴わずに使用し得る。水中油型乳剤は、(a)モデル110Y微小流動化装置(Microfluidics、マサチューセッツ州ニュートン)のような微小流動化装置を使用してミクロン以下の粒子に処方した、5%スクアレン、0.5%Tween 80および0.5%Span 85を含有する(場合によっては多様な量のMTP−PEを含有する)MF59(第WO 90/14837号明細書)、(b)ミクロン以下の乳剤に微小流動化したか若しくはより大きな粒子径の乳剤を生成するようにボルテックス攪拌したかのいずれかの、10%スクアレン、0.4%Tween 80、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDPを含有するSAF、ならびに(c)2%スクアレン、0.2%Tween 80、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)よりなる群からの1種若しくはそれ以上の細菌の細胞壁の成分、好ましくはMPL+CWS(デトックス[Detox]TM)を含有するRibiTMアジュバント系(RAS)(Ribi ImmunoChem、モンタナ州ハミルトン)を包含する。
【0068】
好ましいアジュバントの別の分類は、スティミュロン[Stimulon]TM(QS−21、Aquila、マサチューセッツ州フラミンガム)のようなサポニンアジュバント、若しくはISCOM(免疫刺激複合体)およびISCOMATRIXのようなそれから生成される粒子である。他のアジュバントはRC−529、GM−CSF、ならびにフロイントの完全アジュバント(CFA)およびフロイントの不完全アジュバント(IFA)を包含する。他のアジュバントは、インターロイキン(例えばIL−1αおよびβペプチド、IL−2、IL−4、IL−6、IL−12、IL−13ならびにIL−15)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)のようなサイトカイン、MIP1αおよびβならびにRANTESのようなケモカインを包含する。アジュバントの別の分類は、N−グリコシルアミド、N−グリコシル尿素およびN−グリコシルカルバメートを包含する糖脂質アナログであり、それらのそれぞれは免疫調節物質若しくはアジュバントとして糖残基中でアミノ酸により置換されている(米国特許第4,855,283号明細書を参照されたい)。熱ショックタンパク質、例えばHSP70およびHSP90もまたアジュバントとして使用しうる。
【0069】
アジュバントは単一組成物として免疫原とともに投与し得るか、または免疫原の投与前、同時に若しくは後に投与し得る。免疫原およびアジュバントは同一のバイアルに包装かつ供給し得るか、若しくは別個のバイアル中に包装しかつ使用前に混合し得る。免疫原およびアジュバントは、典型的には意図される治療上の応用を示すラベルを付けて包装される。免疫原およびアジュバントが別個に包装される場合、該包装は、典型的には使用前に混合するための説明書を包含する。アジュバントおよび/若しくは担体の選択は、アジュバントを含有する免疫原性の製剤の安定性、投与経路、投与スケジュール、ワクチン接種されている種に対する該アジュバントの有効性に依存し、また、ヒトにおいては、製薬学的に許容できるアジュバントは関係する規制団体によりヒト投与について承認された若しくは承認可能であるものである。例えば、フロイントの完全アジュバントはヒト投与には適しない。ミョウバン、MPLおよびQS−21が好ましい。場合によっては2種若しくはそれ以上の異なるアジュバントを同時に使用し得る。好ましい組合せは、MPLを伴うミョウバン、QS−21を伴うミョウバン、QS−21を伴うMPL、GM−CSFを伴
うMPL若しくはRC−529、ならびにミョウバン、QS−21およびMPLを一緒にを包含する。また、フロイントの不完全アジュバントは、場合によってはミョウバン、QS−21およびMPLのいずれか、ならびにそれらの全部の組合せとともに使用し得る(Changら、Advanced Drug Delivery Reviews 32、173−186(1998))。
【0070】
VII.抗体の受動的投与
Aβのフラグメントでの能動免疫は抗体の受動的投与と組合せ得る。受動的投与に使用される抗体は、斑の食作用的消失応答の誘導のためのAβのN末端エピトープに対する抗体であり得るか、または可溶性Aβを消失させるためのAβの中央若しくはC末端領域に対する抗体であり得る。いくつかの方法において、N末端領域抗体に対する抗体を用いる受動的投与を最初に実施して既存のアミロイド沈着物を消失させる。その後、Aβの中央若しくはC末端領域からのフラグメントを投与して、可溶性Aβからのアミロイド沈着物のさらなる沈着を予防する。他の方法において、Aβの中央若しくはC末端部分に対するフラグメントを用いる能動的投与を最初に実施して、可溶性Aβを消失させる抗体を生成させる。その後、血中の抗体のレベルが少なくなり始める場合に、Aβの中央若しくはC末端エピトープに特異的に結合する抗体の受動的投与により付加的な用量を供給する。
【0071】
受動的投与での使用に適する抗体は、引用することにより組み込まれる第WO 00/72880号および同第WO 02/46237号明細書に記述されている。AβのN末端エピトープに特異的に結合する好ましい抗体は、Aβの残基1−3で開始しかつ残基7−11で終了する1エピトープに結合する。いくつかの好ましい抗体はアミノ酸1−3、1−4、1−5、1−6、1−7若しくは3−7内のエピトープに特異的に結合する。いくつかの好ましい抗体はAβの残基1−3で開始しかつ残基7−11で終了する1エピトープに特異的に結合する。こうした抗体は、典型的にはアミロイド沈着物に特異的に結合するが、しかし可溶性Aβに結合してもしなくてもよい。AβのC末端エピトープに特異的に結合するいくつかの好ましい抗体は、天然に存在する短い形態のAβ(すなわちAβ39、40若しくは41)に特異的に結合することなく天然に存在する長い形態のAβ(すなわちAβ42およびAβ43に特異的に結合する。のC末端および中央のエピトープに対する抗体は、典型的には、アミロイド沈着物への特異的結合を伴わずに可溶性物(soluble)に特異的に結合する。抗体が例えばAβ1−5のような指定された残基内の1エピトープに特異的に結合すると言われる場合、意味しているものは、該抗体が該指定される残基(すなわちこの一例においてAβ1−5)を含有するポリペプチドに特異的に結合することである。こうした抗体はAβ1−5内のすべての残基に必ずしも接触しない。また、Aβ1−5内のすべての単一アミノ酸置換若しくは欠失も結合親和性に必ずしも有意に影響を及ぼさない。ある抗体のエピトープ特異性は例えば第WO 00/72880号明細書により記述されるとおり決定し得る。
【0072】
抗体はポリクローン性若しくはモノクローン性であり得る。ポリクローナル血清は、典型的に、Aβの長さに沿っていくつかのエピトープに特異的に結合する抗体の混合した集団を含有する。しかしながら、ポリクローナル血清はAβ1−10のようなAβの特定の一セグメントに特異的であり得る。好ましい抗体は、キメラ、ヒト化(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)ならびに第WO 90/07861号明細書、米国特許第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、同第5,530,101号明細書およびWinter、米国特許第5,225,539号明細書を参照されたい)、若しくはヒト(Lonbergら、第WO93/12227号明細書(1993);米国特許第5,877,397号、同第5,874,299号、同第5,814,318号、同第5,789,650号、同第5,770,429号、同第5,661,016号、同第5,633,425号、同第5,625,126号、同第5,569,825号、同第5,5
45,806号明細書、Nature 148、1547−1533(1994)、Nature Biotechnolgy 14、826(1996)、Kucherlapati、第WO 91/10741号明細書(1991))である。異なる結合特異性の数種のマウス抗体がヒト化抗体を作成するための出発原料として利用可能である。ヒトアイソタイプIgG1が、食細胞上のFcRI受容体に対するヒトアイソタイプの最高の親和性を有するそれのためのN末端領域に対する抗体に好ましい。いくつかの抗体は、約10、10、10若しくは1010−1より大きいかもしくはそれらに等しい結合親和性でAβに特異的に結合する。
【0073】
VIII.処置の影響を受けやすい患者
処置の影響を受けやすい患者は、疾患の危険にさらされているがしかし症状を示さない個体、ならびに現在症状を示している患者を包含する。アルツハイマー病の場合、彼若しくは彼女が十分に長く生きる場合は事実上誰でもアルツハイマー病に罹る危険にさらされている。従って、本方法は、対象患者の危険のいかなる評価に対する必要性も伴わずに一般集団に予防的に投与し得る。本方法は、アルツハイマー病の既知の遺伝的危険を有する個体にとりわけ有用である。こうした個体は、本疾患を経験した親族を有する者、および遺伝的若しくは生化学的マーカーの分析によりその危険が決定される者を包含する。アルツハイマー病に対する危険の遺伝的マーカーは、APP遺伝子中の突然変異、とりわけそれぞれハーディおよびスウェーデン型突然変異と称される位置717ならびに位置670および671の突然変異を包含する(Hardy、TINS、上記を参照されたい)。危険の他のマーカーはプレセニリン遺伝子PS1およびPS2ならびにApoE4中の突然変異、ADの家族歴、抗コレステロール血症若しくはアテローム硬化症である。現在アルツハイマー病に罹っている個体は、特徴的な痴呆、ならびに上述された危険因子の存在から認識され得る。加えて、ADを有する個体を同定するための多数の診断的検査が利用可能である。これらはCSFτおよびAβ42のレベルの測定を包含する。上昇したτおよび減少したAβ42レベルはADの存在を意味する。アルツハイマー病に罹っている個体はまた、第WO 00/72880号明細書にて論考されるところのADRDA基準によっても診断し得る。
【0074】
無症候性の患者において、処置はいずれの年齢(例えば10、20、30歳)でも開始し得る。通常、しかしながら、患者が40、50、60若しくは70歳に達するまで処置を開始することは必要でない。処置は、典型的にはある期間にわたる複数の投薬量を伴う。処置は、長期にわたる治療薬(例えばAβペプチド)に対する抗体または活性化されたT細胞(副作用)若しくはB細胞応答をアッセイすることによりモニターし得る。応答が下落する場合、追加免疫投薬量を指示する。潜在的なダウン症候群患者の場合、処置は、母親に治療薬を投与することにより出生前に若しくは出生直後に開始し得る。
【0075】
IX.処置レジメン
一般に、処置レジメンは、患者にAβに対する免疫原性の応答を誘導するのに有効な剤、好ましくはAβの免疫原性フラグメントを投与することを必要とする。予防的応用において、製薬学的組成物若しくは医薬品を、アルツハイマー病に感受性の、そうでなければその危険にさらされている患者に、該危険を排除若しくは低下させるか、重症度を小さくするか、または該疾患の生理学的、生化学的、組織学的および/若しくは行動的症状を包含する疾患、該疾患の発症の間に提示する合併症および中間的な病理学的表現型の発生を遅延させるのに十分な量で投与する。治療的応用においては、剤を、該疾患の発症におけるその合併症および中間的な病理学的表現型を包含する該疾患の症状(生理学的、生化学的、組織学的および/若しくは行動的)を治癒、または少なくとも部分的にその悪化を停止若しくは阻害するのに十分な剤の投与量および頻度を含んでなるレジメンで、こうした疾患が疑われるか若しくは既に罹っている患者に投与する。いくつかの方法において、剤の投与は、特徴的なアルツハイマー病の病状を未だ発症していない患者における筋認識(
myocognitive)障害を低下若しくは排除する。治療的若しくは予防的処置を達成するのに十分な量を治療上若しくは予防上有効な用量と定義する。治療的若しくは予防的処置を達成するのに十分な量および投薬頻度の組合せを治療上若しくは予防上有効なレジメンと定義する。予防的および治療的双方のレジメンにおいて、剤は通常、十分な免疫応答が達成されるまでいくつかの投薬量で投与される。治療的若しくは予防的処置を達成するのに十分な投薬量および投与頻度を治療上若しくは予防上有効なレジメンと定義する。典型的には、患者の免疫応答をモニターし、そして免疫応答が弱まり始める場合に反復した投薬量を与える。免疫応答は、患者の血液中のABに対する抗体を検出すること、脳中のAB若しくは斑のレベル、またはMMSEならびにADAS(アルツハイマー病の状態および機能を伴う患者を評価するための包括的尺度である)のような精神測定的尺度による症状を検出することにより、モニターし得る。
【0076】
上述された状態の処置のための本発明の剤および組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか若しくは動物であるか、投与される他の医薬品、および処置が予防的であるか若しくは治療的であるかを包含する多くの異なる因子に依存して変動する。通常、患者はヒトであるが、しかし、トランスジェニック哺乳動物を包含する非ヒト哺乳動物もまた処置し得る。処置投薬量は安全性および有効性を至適化するように滴定される必要がある。免疫原の量はアジュバントもまた投与されるかどうかに依存し、より高い投薬量がアジュバントの非存在下で必要とされる。投与のための免疫原の量は、ときに、患者あたり1〜500μgから、およびより通常はヒト投与について注入あたり5〜500μgから変動する。ときに注入あたり1〜2mgというより高用量を使用する。典型的には、最低10、20、50若しくは100μgを各ヒト注入に使用する。免疫原の量は全体としての免疫原の量に対する免疫原内の免疫原性のエピトープの質量比にもまた依存する。典型的には、10−3ないし10−5マイクロモルの免疫原性のエピトープをマイクログラムの免疫原に使用する。注入のタイミングは1日1回から年1回まで、10年に1回まで大きく変動し得る。免疫原の1投薬量を与えるいずれの所定の日にも、投薬量は、アジュバントもまた投与される場合に1μg/患者より大きくかつ通常は10μg/患者より大きく、また、アジュバントの非存在下で10μg/患者より大きくかつ通常は100μg/患者より大きい。典型的なレジメンは1回の免疫化、次いで6週間隔のような時間間隔での追加免疫注入よりなる。別のレジメンは1回の免疫化、次いで1、2および12か月後の追加免疫注入よりなる。別のレジメンは生涯2か月ごとに1注入を必要とする。あるいは、追加免疫注入は免疫応答のモニタリングにより示されるとおり不規則であり得る。
【0077】
免疫原をコードする核酸の用量は、患者あたり約10ngから1gまで、100ngないし100mg、1μgないし10mg若しくは30〜300μgのDNAの範囲にわたる。感染性ウイルスベクターの用量は、投与あたり10〜100個若しくはそれ以上のビリオンから変動する。
【0078】
(併用療法における)抗体での受動免疫のためには、投薬量は約0.0001から100mg/kgまで、およびより通常は0.01ないし5mg/kg宿主体重の範囲にわたる。例えば、投薬量は、1mg/kg体重若しくは10mg/kg体重、または1〜10mg/kgの範囲内、あるいは言い換えれば70kgの患者について70mg若しくは700mg、または70〜700mgの範囲内であり得る。例示的処置レジメンは、2週間ごとあたり1回若しくは月1回若しくは3ないし6か月ごとに1回の投与を必要とする。いくつかの方法において、異なる結合特異性をもつ2種若しくはそれ以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与される各抗体の投薬量は指示される範囲内にある。抗体は通常複数の機会に投与する。単一投薬量間の間隔は週、月若しくは年であり得る。間隔はまた、患者でのAβに対する抗体の血液レベルを測定することにより示されるように不規則でもあり得る。いくつかの方法において、投薬量は1〜1000μg/ml、
およびいくつかの方法においては25〜300μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調節する。あるいは、抗体は徐放性製剤として投与し得、この場合、より少なく頻繁な投与が必要とされる。投薬量および頻度は患者での該抗体の半減期に依存して変動する。一般に、ヒト抗体は最長の半減期を示し、次いでヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体である。投薬量および投与頻度は、該処置が予防的であるか若しくは治療的であるかに依存して変動し得る。予防的応用においては比較的低投薬量を長期間にわたり比較的頻繁でない間隔で投与する。若干の患者は彼らの生涯の残りの間処置を受領し続ける。治療的応用においては、疾患の進行が低下若しくは停止されるまで、および好ましくは患者が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高投薬量がときに必要とされる。その後、患者に予防的レジメンを投与し得る。
【0079】
免疫応答を誘導するための剤は、予防的および/若しくは治療的処置のために非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻内若しくは筋肉内の手段により投与し得る。免疫原性の剤の最も典型的な投与経路は皮下であるとは言え、他の経路が等しく有効であり得る。次に最も一般的な経路は筋肉内注入である。この型の注入は腕若しくは脚の筋肉で最も典型的に実施される。いくつかの方法において、剤は、沈着物が蓄積している特定の組織に直接注入される(例えば頭蓋内注入)。筋肉内注入若しくは静脈内注入が抗体の投与に好ましい(併用療法において)。いくつかの方法においては特定の治療的抗体を頭蓋中に直接注入する。いくつかの方法においては、抗体を徐放性組成物若しくはメディパッド[Medipad]TM装置のような装置として投与する。
【0080】
本発明の剤はしばしば有効な治療薬、すなわち、および多様な他の製薬学的に許容できる成分を含んでなる製薬学的組成物として投与される。Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing
Company、ペンシルバニア州イーストン、1980)を参照されたい。好ましい形態は意図される投与様式および治療的応用に依存する。該組成物は所望の製剤に依存して、動物若しくはヒト投与のための製薬学的組成物を処方するために一般に使用されるベヒクルと定義される製薬学的に許容できる非毒性の担体若しくは希釈剤もまた包含し得る。希釈剤は組合せの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択する。こうした希釈剤の例は、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理的食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液およびハンクス液である。加えて、製薬学的組成物若しくは製剤は、他の担体、補助物質若しくは非毒性の非治療的非免疫原性安定剤などもまた包含してよい。
【0081】
製薬学的組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(ラテックス官能性化セファロース(TM)、アガロース、セルロースなどのような)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーならびに脂質凝集物(油滴若しくはリポソームのような)のような大型のゆっくりと代謝される巨大分子もまた包含し得る。加えて、これらの担体は免疫刺激剤(すなわちアジュバント)として機能し得る。
【0082】
非経口投与のため、本発明の剤は、水、油、生理的食塩水、グリセロール若しくはエタノールのような無菌の液体であり得る製薬学的担体を含む生理学的に許容できる希釈剤中の物質の溶液若しくは懸濁剤の注入可能な投薬量として投与し得る。加えて、湿潤剤若しくは乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などのような補助的物質が組成物中に存在し得る。製薬学的組成物の他の成分は、石油、動物、植物若しくは合成起源のもの、例えばラッカセイ油、ダイズ油および鉱物油である。一般に、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールのようなグリコールはとりわけ注入可能な溶液に好ましい液体の担体である。抗体は、有効成分の徐放性を可能にするような様式で処方し得るデポー注射剤若しくは植込製剤の形態で投与し得る。例示的一組成物は、HClでpH6.0に調節した50mM L−ヒスチジン、150mM NaClよりなる水性緩衝液中で処方された5mg/mLのモノクローナル抗体を含んでなる。非経口投与のための組成物は典型的には実
質的に無菌、等張であり、そしてFDA若しくは類似の団体のGMP条件下で製造される。
【0083】
典型的には、組成物は、液体の溶液若しくは懸濁剤のいずれかのような注入可能物として製造され;注入前に液体ベヒクル中の溶液若しくは懸濁剤に適する固体の形態もまた製造し得る。該製剤はまた、乳化、あるいはリポソームまたは上で論考されたところの高められたアジュバント効果のためのポリラクチド、ポリグリコリド若しくはコポリマーのような微粒子中に被包化もし得る(Langer、Science 249、1527(1990)およびHanes、Advanced Drug Delivery Reviews 28、97−119(1997)を参照されたい)。本発明の剤は、有効成分の徐放性若しくは拍動性放出を可能にするような様式で処方し得るデポー注射剤若しくは植込製剤の形態で投与し得る。
【0084】
他の投与様式に適する付加的な製剤は、経口、鼻内、および肺製剤、坐剤、ならびに経皮適用を包含する。
【0085】
坐剤については、結合剤および担体は例えばポリアルキレングリコール若しくはトリグリセリドを包含し;こうした坐剤は0.5%ないし10%、好ましくは1%〜2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成し得る。経口製剤は、製薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロースおよび炭酸マグネシウムのような賦形剤を包含する。これらの組成物は溶液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤若しくは散剤の形態をとり、そして10%〜95%、好ましくは25%〜70%の有効成分を含有する。
【0086】
局所適用は経皮若しくは皮内送達をもたらし得る。局所投与はコレラトキシン、またはそれ若しくは他の類似の細菌のトキシンの無毒化した誘導体若しくはサブユニットとの剤の共投与により助長し得る(Glennら、Nature 391、851(1998)を参照されたい)。共投与は、成分を混合物としてまたは化学的架橋若しくは融合タンパク質としての発現により得られる結合した分子として使用することにより達成し得る。
【0087】
あるいは、経皮送達は皮膚経路を使用して若しくはトランスフェロソーム(transferosome)(Paulら、Eur.J.Immunol.25、3521−24(1995);Cevcら、Biochem.Biophys.Acta 1368、201−15(1998))を使用して達成し得る。
【0088】
X.モニタリング方法
本発明は、アミロイド原性疾患に罹っているかもしくはそれに感受性の患者におけるAβペプチドに対する抗体応答の検出方法を提供する。該方法は患者に投与されている処置の経過をモニターするのにとりわけ有用である。該方法を使用して症候性の患者での治療的処置および無症候性の患者での予防的処置の双方をモニターし得る。いくつかの方法は、免疫原性の剤の1投薬量を投与する前に患者における抗体応答の基礎値を測定すること、および処置後の免疫応答についての値とこれを比較することを必要とする。抗体応答の値の有意の増大(すなわち、こうした測定値の平均からの1標準偏差として表される同一サンプルの反復測定における典型的な実験誤差より大きい)は正の処置の転帰(すなわち該剤の投与が免疫応答を達成したか若しくは増強したこと)を知らせる。抗体応答の値が有意に変化しないか若しくは減少する場合は、負の処置の転帰を示す。一般に、免疫原性の剤を用いる処置の最初の1クールを受ける患者は、連続的投薬で抗体応答の増大(最終的にはプラトーに達する)を示すと期待される。剤の投与は一般に抗体応答が増大している間は継続する。プラトーの達成は、処置の投与を中断し得るかまたは投薬量若しくは頻度を低下し得ることの指標である。
【0089】
他の方法において、抗体応答の対照値(すなわち平均および標準偏差)を対照集団について決定する。典型的には対照集団の個体は前の処置を受領していない。治療薬を投与した後の患者の抗体応答の測定値をその後対照値と比較する。対照値に関して有意の増大(例えば平均から1標準偏差以上大きい)は正の処置の転帰を知らせる。有意の増大の欠如若しくは減少は負の処置の転帰を知らせる。剤の投与は、一般に抗体応答が対照値に関して増大している間は継続する。前のとおり、対照値に関してプラトーの達成は、処置の投与を中断し得るかまたは投薬量若しくは頻度を低下し得ることの指標である。
【0090】
他の方法において、抗体応答の対照値(例えば平均および標準偏差)を、治療薬での処置を受けかつその抗体応答が処置に応答してプラトーに達した個体の対照集団から決定する。患者での抗体応答の測定値を対照値と比較する。患者で測定されたレベルが対照値と有意に異ならない(例えば1標準偏差より大きくない)場合は処置を中断し得る。患者でのレベルが対照値の有意に下である場合は剤の継続投与が正当化される。患者でのレベルが対照値より下で持続する場合には、処置レジメンの変更、例えば異なるアジュバント、フラグメントの使用若しくは受動的投与への切替えを指示してもよい。
【0091】
他の方法において、現在処置を受領していないがしかし1クールの以前の処置を受けたことがある患者を、処置の再開が必要とされるかどうかを決定するために抗体応答についてモニターする。該患者での抗体応答の測定値を、1クールの以前の処置後に該患者で以前に達成された抗体応答の値と比較し得る。以前の測定値に関して有意の低下(すなわち同一サンプルの反復測定での典型的な誤差より大きい)は処置を再開し得ることの指標である。あるいは、患者で測定された値を、1クールの処置を受けた後の患者の1集団で測定した対照値(平均および標準偏差)と比較し得る。あるいは、患者での測定値を、疾患の症状を伴わないままである予防的に処置した患者の集団、若しくは疾患の特徴の改善を示す治療的に処置した患者の集団での対照値と比較し得る。これらの場合の全部において、対照レベルに関して有意の低下(すなわち1標準偏差より大きい)は処置を患者で再開すべきであることの指標である。
【0092】
分析のための組織サンプルは、典型的には患者からの血液、血漿、血清、粘液若しくは脳脊髄液である。サンプルをいずれかの形態のAβペプチド、典型的にはAβ42若しくは免疫化に使用したペプチドに対する免疫応答の指標について分析する。免疫応答はAβペプチドに特異的に結合する抗体の存在から決定し得る。抗体は、該抗体に特異的に結合するリガンドへの結合アッセイで検出し得る。典型的にはリガンドは固定されている。結合は標識抗イディオタイプ抗体を使用して検出し得る。
【0093】
能動的および受動的双方の投与を使用する併用レジメンにおいて、類似のアプローチを使用して、第WO 00/72880号明細書に記述されるところの受動的投与から生じる抗体のレベルをモニターし得る。
【実施例】
【0094】
材料および方法
Aβフラグメント。Aβ1−5、Aβ3−9、Aβ5−11、Aβ15−24および逆配列Aβ5−1に対応するペプチドを、分枝状のペプチド枠組み(4個のペプチド腕をもつ三重のリシン核(triplet−lysine core))上で卵アルブミン由来の17アミノ酸のT細胞エピトープ(アミノ酸323−329−ISQAVHAAHAEINEAGR(配列番号3))に隣接して合成して、Tam,J.P.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85、5409−5413により記述されるところの多抗原ペプチドを製造した。ポリクローナル抗体(Pab)Aβ1−42を生じさせ、そして、Bard,F.ら、(2000)Nat.Med.6、916−919
により以前に記述されたとおり免疫グロブリン画分を単離した。ポリクローナルPab−EL16、Pab−EL17およびPab−EL20は、それぞれ上述されたところの分枝状枠組みで合成したAβ1−7、Aβ15−24およびAβ3−9に対応するペプチドで免疫したPDAPPマウスの血清から得た。Pab−EL26はAβ(7−1)−42で免疫したマウスの血清から得た。ペプチドはAnaSpec、米国カリフォルニア州サンノゼにより合成された。
【0095】
免疫化手順。100μgのAβフラグメントをフロイントの完全アジュバント中の腹腔内注入により投与し、次いで2および4週、ならびにその後毎月、フロイントの不完全アジュバント中の100μgのペプチドで追加免疫した。
【0096】
凝集型および可溶性Aβ1−42への抗体結合。血清力価(連続希釈により測定した)および凝集した合成Aβ1−42へのモノクローナル抗体結合を、Schenk D.ら、(1999)Nature 400、173−177により以前に記述されたとおりELISAにより実施した。可溶性Aβ1−42はジメチルスルホキシド中で超音波処理した合成Aβ1−42ペプチドを指す。抗体の連続希釈溶液を50,000cpmの125I−Aβ1−42とともに室温で一夜インキュベートした。75mg/mlのプロテインAセファロース(Amersham Biosciences、スウェーデン・ウプサラ)/200μgのウサギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch、米国ペンシルバニア州ウエストグローブ)を含有する50μlのスラリーを、希釈した抗体とともに室温で1時間インキュベートし、2回洗浄し、そしてWallacガンマカウンター(PerkinElmer Life Sciences、米国イリノイ州グローブ)でカウントした。全部の段階は10mMトリス、0.5M NaCl、1mg/mlゼラチンおよび0.5%Nonidet P−40、pH8.0よりなるラジオイムノアッセイ緩衝液中で実施した。
【0097】
結果
一連のペプチドを、in vivoでの効果的な抗体応答を誘発するそれらの能力について比較した。12ないし13月齢のPDAPPマウスを、3種のN末端ペプチドフラグメント(Aβ1−5、Aβ3−9若しくはAβ5−11)の1種若しくは該ペプチドの内的領域由来のフラグメント(Aβ15−24)で免疫した(図1a)。内的ペプチドAβ15−24は、可溶性Aβに対する高い親和性を表し(Seubertら、(1992)Nature 359、325−327.)、固定されていないAD若しくはPDAPP組織の切片中の斑を認識しない、抗体266のエピトープを包含する。従って、このペプチドに向けられたポリクローン性の応答が斑認識が可能な抗体を産生し得たかどうか、若しくは可溶性Aβ単独との反応性が有効性を提供するのに十分であったかどうかを決定することは興味深かった。これらの研究において、逆配列をもつペプチドAβ5−1は陰性対照としてはたらいた。ペプチドは卵アルブミン由来の17アミノ酸のT細胞エピトープに隣接して合成し、そして同一の多価配置で提示された(材料および方法を参照されたい)。ペプチドの全部(Aβ5−1リバースマーを除く)は凝集した合成Aβ1−42をELISAにより認識した血清を生じさせたとは言え、Aβ5−11およびAβ15−24はAβ1−5より有意により高い力価を生じさせた(それぞれp<0.01およびp<0.05)(図1b)。対照的に、N末端ペプチドに対する血清のみが斑内のAβを認識することが可能であり;Aβ15−24に対する抗血清は、合成の凝集したペプチドとの強い反応性にもかかわらず斑を結合しなかった(図1c)。可溶性Aβを捕捉するそれらの能力にもまた血清群間で差異が存在した(図2a)。Aβ1−5若しくはAβ3−9で免疫したマウスからの血清の30%未満が可溶性ペプチドを捕捉した(それぞれ27%および5%)。対照的に、Aβ5−11で免疫した動物のおよそ半分からの血清、およびAβ15−24で免疫したものの全部が、可溶性Aβ1−42を捕捉した。
【0098】
Aβ沈着の程度はPDAPPマウスが加齢する際に大きく変動し得るため、群あたり最低30動物を用いるin vivo試験を設計した。有効性データは個々のマウスについて示し、そして対照の平均(100%に設定した)に関するアミロイド負荷量若しくは神経炎性ジストロフィーのいずれかのパーセントとして表す。3種のN末端ペプチドのそれぞれでの免疫化はアミロイド負荷量を有意に低下させた(46〜61%、p<0.002)(図2b)。さらに、Aβ3−9およびAβ5−11は神経炎性の病状を有意に低下させた(それぞれ34%および41%、p<0.05)、(図2c)。Aβ15−24での免疫化はアミロイド負荷量若しくは神経炎性の病状のいずれに対する保護も提供しなかった。これらの結果は抗体の有効性に関する1機構としての斑結合を裏付ける。それらはまた、可溶性Aβの捕捉が神経炎性の病状の低下に必要とされないことも示す。Aβ3−9に対する抗体応答は強い斑反応性および神経ジストロフィーに対する最高レベルの保護を提供したが、それでもなお可溶性ペプチドの認識について最も弱い能力を表したからである。斑に結合することなく可溶性Aβに結合する抗体はまた、より高力価で若しくはより長期間にわたって投与される場合にもこうした活性を有するとみられる。斑に結合することなく可溶性Aβに結合する抗体はまた、Aβの形成および/若しくはさらなる沈着の予防においても有用であり得る。Aβ15−24での免疫化により生成される高力価の抗体は、このフラグメントおよびそのサブフラグメントが本目的上高力価の可溶性抗体を生成させるためにとりわけ有用であることを示す。
【0099】
前述の発明は理解の明瞭さの目的上詳細に記述したとは言え、付属として付けられる請求の範囲の範囲内である種の改変を実施しうることが明らかであろう。本明細書に引用される全部の刊行物および特許文書は、これにより、それぞれが個々にそのように示されると同一の程度まで全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる。情況から別の方法で明らかでない限り、本発明の各要素、特徴若しくは態様をいかなる他者とも組合せで使用し得る。
【0100】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0101】
1.Aβのフラグメントの有効なレジメンを投与することを含んでなり、該フラグメントは残基1〜11の間の1個若しくはそれ以上のエピトープに特異的に結合する抗体を誘導することなく残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導し、かつ、該フラグメントはAβ13−28、17−28、25−35、35−40、33−42若しくは35−42でなく、それにより誘導される抗体は患者中の可溶性Aβに特異的に結合してそれにより可溶性Aβからの脳中のAβのアミロイド沈着物の形成を阻害しかつそれによりAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の予防を遂げる、患者の脳中のAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の予防方法。
【0102】
2.該フラグメントがAβに対するT細胞応答を誘導する完全なT細胞エピトープを含まない、1.に記載の方法。
【0103】
3.誘導される抗体がAβのアミロイド沈着物に特異的に結合する能力を欠く、1.に記載の方法。
【0104】
4.該フラグメントがAβの5〜10個の隣接するアミノ酸のセグメントを含有する、1.に記載の方法。
【0105】
5.該フラグメントがAβ15−24内の5〜10個の隣接するアミノ酸のセグメントを含有する、1.に記載の方法。
【0106】
6.該フラグメントが、Aβ15−21、Aβ16−22、Aβ17−23、Aβ18−
24、Aβ19−25、Aβ15−22、Aβ16−23、Aβ17−24、Aβ18−25、Aβ15−23、Aβ16−24、Aβ17−25、Aβ18−26、Aβ15−24、Aβ16−25およびAβ15−25よりなる群から選択される、1.に記載の方法。
【0107】
7.該フラグメントが、Aβ39、40若しくは41に特異的に結合することなくAβ42および/若しくはAβ43に特異的に結合する抗体を誘導するC末端フラグメントである、1.に記載の方法。
【0108】
8.Aβのフラグメントの有効なレジメンを投与することを含んでなり、該フラグメントはAβ15−21、Aβ16−22、Aβ17−23、Aβ18−24、Aβ19−25、Aβ15−22、Aβ16−23、Aβ17−24、Aβ18−25、Aβ15−23、Aβ16−24、Aβ17−25、Aβ18−26、Aβ15−24、Aβ16−25およびAβ15−25よりなる群から選択され、そしてそれによりAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の予防を遂げる、患者の脳中のAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の予防方法。
【0109】
9.Aβ1−11をもつ1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導するAβのフラグメントを投与することをさらに含んでなる、1.に記載の方法。
【0110】
10.Aβ1−11をもつ1エピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導するAβのフラグメントが、残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を該フラグメントが誘導する前に投与される、9.に記載の方法。
【0111】
11.Aβ1−11をもつ1エピトープでAβに特異的に結合する抗体を投与することをさらに含んでなる、1.に記載の方法。
【0112】
12.Aβ1−11をもつ1エピトープでAβに特異的に結合する抗体が、残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導するフラグメントの前に投与される、1.に記載の方法。
【0113】
13.疾患が認識障害を特徴とする、先行するいずれかに記載の方法。
【0114】
14.疾患がアルツハイマー病である、先行するいずれかに記載の方法。
【0115】
15.疾患がダウン症候群である、先行するいずれかに記載の方法。
【0116】
16.疾患が軽度の認識障害である、先行するいずれかに記載の方法。
【0117】
17.患者がヒトである、先行するいずれかに記載の方法。
【0118】
18.患者中で誘導された抗体をモニターすることをさらに含んでなる、先行するいずれかに記載の方法。
【0119】
19.患者が無症候性である、先行するいずれかに記載の方法。
【0120】
20.患者が無症候性でありかつ該投与することが該患者の症状の悪化を阻害する、先行するいずれかに記載の方法。
【0121】
21.患者が50歳未満である、先行するいずれかに記載の方法。
【0122】
22.患者がアルツハイマー病に対する感受性を示す遺伝的危険因子を有する、先行するいずれかに記載の方法。
【0123】
23.患者が、投与段階が最初に実施された後5年間、検出可能な症状を発症しない、19.に記載の方法。
【0124】
24.患者がアルツハイマー病に対する既知の危険因子を有しない、1.〜21.および23.のいずれかに記載の方法。
【0125】
25.該レジメンが、複数の日に最低50マイクログラムのフラグメントの投薬量を投与することを含んでなる、先行するいずれかに記載の方法。
【0126】
26.該フラグメントが、該フラグメントにより誘導される抗体のレベルを増大させるアジュバントとともに投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0127】
27.該フラグメントが、腹腔内、経口、鼻内、皮下、筋肉内、局所若しくは静脈内に投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0128】
28.該フラグメントが、患者中で発現されて該フラグメントを産生する、該フラグメントをコードするポリヌクレオチドを投与することにより投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0129】
29.患者の血液中の誘導された抗体のレベルについて患者をモニターすることをさらに含んでなる、先行するいずれかに記載の方法。
【0130】
30.該フラグメントが最低3か月の期間にわたり複数の投薬量で投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0131】
31.投薬量が最低50マイクログラムである、30.に記載の方法。
【0132】
32.該フラグメントが担体分子に結合されて複合物を形成する、1.に記載の方法。
【0133】
33.担体が異種ポリペプチドである、32.のいずれかに記載の方法。
【0134】
34.該フラグメントの複数のコピーが1個の担体分子に結合されて複合物を形成する、32.に記載の方法。
【0135】
35.該フラグメントの複数のコピーが、相互に結合されている担体分子の複数のコピーに結合されている、32.に記載の方法。
【0136】
36.異種ポリペプチドがQYIKANSKFIGITEL(配列番号8)を含んでなる、33.に記載の方法。
【0137】
37.異種ポリペプチドがアミノ酸配列AKXVAAWTLKAAA(配列番号11)を含んでなる、33.に記載の方法。
【0138】
38.該ポリペプチドが異種ポリペプチドに対するT細胞応答およびそれにより該フラグメントに対するB細胞応答を誘導する、33.に記載の方法。
【0139】
39.該フラグメント単独を投与することに関して誘導される抗体の力価および/若しくは結合親和性を高めるアジュバントを投与することをさらに含んでなる、1.に記載の方法。
【0140】
40.アジュバントおよびポリペプチドが組成物として一緒に投与される、39.に記載の方法。
【0141】
41.アジュバントがポリペプチドの前に投与される、39.に記載の方法。
【0142】
42.アジュバントがポリペプチドの後に投与される、39.に記載の方法。
【0143】
43.アジュバントがミョウバンである、39.に記載の方法。
【0144】
44.アジュバントがMPLである、39.に記載の方法。
【0145】
45.アジュバントがQS−21である、39.に記載の方法。
【0146】
46.アジュバントがフロイントの不完全アジュバントである、39.に記載の方法。
【0147】
47.該フラグメントの投薬量が10マイクログラム以上である、先行するいずれかに記載の方法。
【0148】
48.Aβのフラグメントの有効なレジメンを投与することを含んでなり、該フラグメントは残基1〜11、およびフラグメント、33−42 Aβ13−28、17−28、25−35、35−40若しくは35−42の間の1個若しくはそれ以上のエピトープに特異的に結合する抗体を誘導することなく残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導し、それにより該誘導された抗体は患者中の可溶性Aβに特異的に結合してそれにより可溶性Aβからの脳中のAβのアミロイド沈着物の形成を阻害しかつそれによりAβのアミロイド沈着物と関連する疾患を治療する、患者の脳中のAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の治療方法。
【0149】
49.該フラグメントが、Aβに対するT細胞応答を誘導する完全なT細胞エピトープを含まない、48.に記載の方法。
【0150】
50.誘導される抗体がAβのアミロイド沈着物に特異的に結合する能力を欠く、48.に記載の方法。
【0151】
51.該フラグメントがAβの5〜10個の隣接するアミノ酸のセグメントを含有する、48.に記載の方法。
【0152】
52.該フラグメントが、Aβ15−24内の5〜10個の隣接するアミノ酸のセグメントを含有する、48.に記載の方法。
【0153】
53.該フラグメントが、Aβ15−21、Aβ16−22、Aβ17−23、Aβ18−24、Aβ19−25、Aβ15−22、Aβ16−23、Aβ17−24、Aβ18−25、Aβ15−23、Aβ16−24、Aβ17−25、Aβ18−26、Aβ15−24、Aβ16−25およびAβ15−25よりなる群から選択される、48.に記載の方法。
【0154】
54.該フラグメントが、Aβ39、40若しくは41に特異的に結合することなくAβ42および/若しくはAβ43に特異的に結合する抗体を誘導するC末端フラグメントである、48.に記載の方法。
【0155】
55.Aβ15−21、Aβ16−22、Aβ17−23、Aβ18−24、Aβ19−25、Aβ15−22、Aβ16−23、Aβ17−24、Aβ18−25、Aβ15−23、Aβ16−24、Aβ17−25、Aβ18−26、Aβ15−24、Aβ16−25およびAβ15−25よりなる群から選択されるAβのフラグメントの有効なレジメンを投与しかつそれによりAβのアミロイド沈着物と関連する疾患を治療することを含んでなる、患者の脳中のAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の治療方法。
【0156】
56.Aβ1−11をもつ1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導するAβのフラグメントを投与することをさらに含んでなる、55.に記載の方法。
【0157】
57.Aβ1−11をもつ1エピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導するAβのフラグメントが、残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を該フラグメントが誘導する前に投与される、56.に記載の方法。
【0158】
58.Aβ1−11をもつ1エピトープでAβに特異的に結合する抗体を投与することをさらに含んでなる、48.に記載の方法。
【0159】
59.Aβ1−11をもつ1エピトープでAβに特異的に結合する抗体が、残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導するフラグメントの前に投与される、48.に記載の方法。
【0160】
60.疾患が認識障害を特徴とする、先行するいずれかに記載の方法。
【0161】
61.疾患がアルツハイマー病である、先行するいずれかに記載の方法。
【0162】
62.疾患がダウン症候群である、先行するいずれかに記載の方法。
【0163】
63.疾患が軽度の認識障害である、先行するいずれかに記載の方法。
【0164】
64.患者がヒトである、先行するいずれかに記載の方法。
【0165】
65.患者での誘導される抗体をモニターすることをさらに含んでなる、先行するいずれかに記載の方法。
【0166】
66.患者が無症候性である、先行するいずれかに記載の方法。
【0167】
67.患者が無症候性でありかつ該投与することが該患者の症状の悪化を阻害する、先行するいずれかに記載の方法。
【0168】
68.患者が50歳未満である、先行するいずれかに記載の方法。
【0169】
69.患者がアルツハイマー病に対する感受性を示す遺伝的危険因子を有する、先行するいずれかに記載の方法。
【0170】
70.患者が、該投与する段階を最初に実施した後5年間、検出可能な症状を発症しない
、66.に記載の方法。
【0171】
71.患者がアルツハイマー病に対する既知の危険因子を有しない、1.〜68.および70.のいずれかに記載の方法。
【0172】
72.該レジメンが、複数の日に最低50マイクログラムの該フラグメントの投薬量を投与することを含んでなる、先行するいずれかに記載の方法。
【0173】
73.該フラグメントが、該フラグメントにより誘導される抗体のレベルを増大させるアジュバントとともに投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0174】
74.該フラグメントが、腹腔内、経口、鼻内、皮下、筋肉内、局所若しくは静脈内で投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0175】
75.該フラグメントが、患者中で発現されて該フラグメントを産生する、該フラグメントをコードするポリヌクレオチドを投与することにより投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0176】
76.患者の血液中の誘導された抗体のレベルについて患者をモニターすることをさらに含んでなる、先行するいずれかに記載の方法。
【0177】
77.該フラグメントが最低3か月の期間にわたり複数の投薬量で投与される、先行するいずれかに記載の方法。
【0178】
78.投薬量が最低50マイクログラムである、77.に記載の方法。
【0179】
79.該フラグメントが担体に結合されて複合物を形成する、55.に記載の方法。
【0180】
80.担体が異種ポリペプチドである、79.のいずれかに記載の方法。
【0181】
81.該フラグメントの複数のコピーが担体に結合されて複合物を形成する、79.に記載の方法。
【0182】
82.該フラグメントの複数のコピーが、相互に結合されている担体の複数のコピーに結合されている、79.に記載の方法。
【0183】
83.異種ポリペプチドがQYIKANSKFIGITEL(配列番号8)を含んでなる、80.に記載の方法。
【0184】
84.異種ポリペプチドがアミノ酸配列AKXVAAWTLKAAA(配列番号11)を含んでなる、80.に記載の方法。
【0185】
85.該ポリペプチドが異種ポリペプチドに対するT細胞応答およびそれにより該フラグメントに対するB細胞応答を誘導する、80.に記載の方法。
【0186】
86.該フラグメント単独を投与することに関して誘導される抗体の力価および/若しくは結合親和性を高めるアジュバントを投与することをさらに含んでなる、55.に記載の方法。
【0187】
87.アジュバントおよびポリペプチドが組成物として一緒に投与される、86.に記載
の方法。
【0188】
88.アジュバントがポリペプチドの前に投与される、86.に記載の方法。
【0189】
89.アジュバントがポリペプチドの後に投与される、86.に記載の方法。
【0190】
90.アジュバントがミョウバンである、86.に記載の方法。
【0191】
91.アジュバントがMPLである、86.に記載の方法。
【0192】
92.アジュバントがQS−21である、86.に記載の方法。
【0193】
93.アジュバントがフロイントの不完全アジュバントである、86.に記載の方法。
【0194】
94.該フラグメントの投薬量が10マイクログラム以上である、先行するいずれかに記載の方法。
【0195】
95.48.〜55.のいずれかで定義されるところのAβのフラグメントおよびアジュバントを含んでなる製薬学的組成物。
【0196】
96.Aβのフラグメントが残基1〜11の間の1個若しくはそれ以上のエピトープに特異的に結合する抗体を誘導することなく残基12と43との間の1個若しくはそれ以上のエピトープでAβに特異的に結合する抗体を誘導し、かつ、該フラグメントがAβ13−28、17−28、25−35、35−40若しくは35−42でなく、それにより誘導される抗体は患者中の可溶性Aβに特異的に結合してそれにより可溶性Aβからの脳中のAβのアミロイド沈着物の形成を阻害しかつそれによりAβのアミロイド沈着物と関連する疾患の予防を遂げる、医薬品の製造における患者の脳中のAβのアミロイド沈着物と関連する疾患を治療若しくはその予防を遂げるのに有効なAβのフラグメントの使用。
【0197】
97.該フラグメントがAβに対するT細胞応答を誘導する完全なT細胞エピトープを含まない、96.に記載の使用。
【0198】
98.誘導される抗体がAβのアミロイド沈着物に特異的に結合する能力を欠く、96.に記載の使用。
【0199】
99.該フラグメントがAβの5〜10個の隣接するアミノ酸のセグメントを含有する、96.に記載の使用。
【0200】
100.該フラグメントがAβ15−24内の5〜10個の隣接するアミノ酸のセグメントを含有する、96.に記載の使用。
【0201】
101.該フラグメントが、Aβ15−21、Aβ16−22、Aβ17−23、Aβ18−24、Aβ19−25、Aβ15−22、Aβ16−23、Aβ17−24、Aβ18−25、Aβ15−23、Aβ16−24、Aβ17−25、Aβ18−26、Aβ15−24、Aβ16−25およびAβ15−25よりなる群から選択される、96.に記載の使用。
【0202】
102.該フラグメントが、Aβ39、40若しくは41に特異的に結合することなくAβ42および/若しくはAβ43に特異的に結合する抗体を誘導するC末端フラグメントである、96.に記載の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者でのアルツハイマー病の処置若しくは予防を遂げるための医薬品の製造における、i)Aβ16−23よりなりかつアミノ酸配列KLVFFAEDを有するAβのフラグメント、若しくは
ii)Aβ16−23よりなりかつアミノ酸配列KLVFFAEDを有するAβのフラグメントであって、該フラグメントは担体分子に結合されて複合物を形成し、この担体分子は該フラグメントに対する免疫応答を導き出すのを助ける、
の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−201902(P2011−201902A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112789(P2011−112789)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2006−503233(P2006−503233)の分割
【原出願日】平成16年1月31日(2004.1.31)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【出願人】(510020022)
【Fターム(参考)】