可燃性ガス検出装置及び可燃性ガス検出方法
【課題】 被検出雰囲気の熱伝導率が当該被検出雰囲気内の相対湿度に基づき変動することを考慮して、可燃性ガスを精度よく検出するようにした可燃性ガス検出装置及び可燃性ガス検出方法を提供する。
【解決手段】 発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧に対する電圧差及び電圧比が各ステップ430、431にて算出され、相対湿度がこの相対湿度の電圧比との近似直線関係を表す特性から電圧比に基づきステップ432にて算出され、電圧差と水素ガス濃度との関係を表す一次関数式の切片がこの切片の相対湿度との関係を表すマップデータに基づき算出相対湿度からステップ433にて決定され、一次関数式の勾配がステップ434にて被検出雰囲気の環境温度に基づき算出される。そして、水素ガスの濃度が、ステップ440にて、上記一次関数式を用いて、算出勾配、決定切片及び算出電圧差に基づいて算出される。
【解決手段】 発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧に対する電圧差及び電圧比が各ステップ430、431にて算出され、相対湿度がこの相対湿度の電圧比との近似直線関係を表す特性から電圧比に基づきステップ432にて算出され、電圧差と水素ガス濃度との関係を表す一次関数式の切片がこの切片の相対湿度との関係を表すマップデータに基づき算出相対湿度からステップ433にて決定され、一次関数式の勾配がステップ434にて被検出雰囲気の環境温度に基づき算出される。そして、水素ガスの濃度が、ステップ440にて、上記一次関数式を用いて、算出勾配、決定切片及び算出電圧差に基づいて算出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出雰囲気内の可燃性ガスを検出する可燃性ガス検出装置及び可燃性ガス検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可燃性ガスの検出装置においては、下記非特許文献1にて開示された燃料電池自動車用水素ガスセンサがある。この水素ガスセンサは、互いに異なる温度に制御される両サーミスタの各検出値の差分から湿度の影響度合いを求め、湿度成分を補正して水素ガスを検出するようになっている。
【非特許文献1】Masaaki Tada、他3名、「Hydrogen Sensor for Fuel Cell Vehicles(燃料電池自動車用水素ガスセンサ)」、SAE-2003-01-1137、p7-p8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記水素ガスセンサにおいては、被検出雰囲気中の水素ガスの濃度が同じであっても、被検出雰囲気中の湿度の変動によって当該被検出雰囲気全体の熱伝導率が変動するという現象が考慮されていないため、水素ガスの検出精度が低いという不具合を招く。
【0004】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度が当該被検出雰囲気内の湿度に基づき変動することを考慮して、可燃性ガスを精度よく検出するようにした可燃性ガス検出装置及び可燃性ガス検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る可燃性ガスの検出装置は、請求項1の記載によれば、被検出雰囲気内に晒される複数の発熱抵抗体(211、221、330)を備える。
【0006】
当該可燃性ガス検出装置において、複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体(211)の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段(230、240、480)と、
被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(390)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420、430)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
電圧差算出手段による算出電圧差、湿度決定手段による決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(433、434、440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき上記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする。
【0007】
これによれば、上記通電制御状態にて生ずる2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差が電圧差として算出され、上記通電制御状態にて生ずる2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比が電圧比として決定され、被検出雰囲気内の湿度が、上記決定電圧比と上記検出環境温度との間の関係に基づき決定される。そして、上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度が上記算出電圧差、上記決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0008】
これにより、被検出雰囲気の熱伝導率が当該被検出雰囲気内の湿度に応じて変動することを考慮して、この変動をなくするように処理して可燃性ガスを検出することとなるので、この検出精度を高く確保できる。
【0009】
また、本発明に係る可燃性ガス検出装置は、請求項2の記載によれば、被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体(211、221、330)を備える。
【0010】
当該可燃性ガス検出装置において、発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段(214、215、216、231、290、481)と、
上記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(500、390)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420、430)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(433、434、440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする。
【0011】
これによれば、上記間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の差が電圧差として算出され、上記間欠的電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の比が電圧比として決定され、被検出雰囲気内の湿度が、上記決定電圧比と上記検出環境温度との間の関係に基づき決定される。そして、上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度が上記算出電圧差、上記決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0012】
このように、発熱抵抗体の数を単一にしても、上記間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる当該発熱抵抗体の各端子電圧の差及び比を電圧差及び電圧比とすることで、ガス検出装置の構成をより一層小型化するとともに当該検出素子の電力消費をより一層抑制しつつ、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0013】
また、本発明に係る可燃性ガス検出装置は、請求項3の記載によれば、
複数の凹部(311)を間隔をおいて裏面側から形成してなる半導体基板(310)と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層(320)と、この絶縁層の表面に前記各凹部に対応して形成される複数の発熱抵抗体(211、221、330)と、これら発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層の表面に形成される保護層(350、360)とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子(300)と、
複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体(211、221)の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段(230、240、480)と、
被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(390)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
電圧差算出手段による算出電圧差、湿度決定手段による決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにした。
【0014】
これによれば、請求項1に記載の発明とは異なり、上記構成の検出素子を有する可燃性ガス検出装置においても、当該請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0015】
また、本発明に係る可燃性ガス検出装置は、請求項4の記載によれば、
凹部(311)を裏面側から形成してなる半導体基板(310)と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層(320)と、この絶縁層の表面に上記凹部に対応して形成される発熱抵抗体(211、221、330)と、この発熱抵抗体を覆うように絶縁層の表面に形成される保護層(350、360)とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子(300)と、
発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段(214、215、216、231、290、481)と、
上記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(500、390)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420、430)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
電圧差算出手段による算出電圧差、湿度決定手段による決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(433、434、440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき上記可燃性ガスを検出するようにした。
【0016】
これによれば、請求項2に記載の発明とは異なり、上記構成の検出素子を有する可燃性ガス検出装置においても、当該請求項2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0017】
なお、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、湿度決定手段は、各環境温度において上記電圧比と上記湿度との間にて成立する近似直線関係に基づき、上記決定電圧比から上記湿度を決定するようにしてもよい。
【0018】
また、請求項2或いは4に記載の発明において、電圧比決定手段でもって、上記間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧のうち、先行して生ずる端子電圧を、後続して生ずる端子電圧で除して得られる比を、電圧比とし、この電圧比が1よりも大きいとき(或いは小さいとき)にのみ、湿度決定手段による湿度決定を行うようにしてもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜4のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置において、
上記電圧差を独立変数とし、上記可燃性ガスの濃度を従属変数とし、上記湿度及び上記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と上記湿度との間の所定の関係を用いて上記決定湿度に基づき上記切片を決定する切片決定手段(433)と、
上記検出環境温度に基づき上記一次関数式の勾配を決定する勾配決定手段(434)とを備えて、
濃度算出手段は、上記決定湿度及び上記検出環境温度に代わる切片決定手段による決定切片及び勾配決定手段による決定勾配を共に用いて、上記算出電圧差に応じて、上記一次関数式に基づき上記可燃性ガスの濃度を算出するようにしたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、通電制御手段による上記通電制御状態において生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差を独立変数とし、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を従属変数とし、上記湿度及び上記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式を前提とする。
【0021】
このような前提のもと、当該一次関数式の切片と上記湿度との間で成立する所定の関係を用いて、上記一次関数式の切片が上記決定湿度に基づき決定され、かつ、当該一次関数式の勾配が上記検出環境温度に基づき決定される。
【0022】
そして、上記可燃性ガスの濃度が、上記通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、上記決定切片及び上記決定勾配を用いて上記一次関数式に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0023】
これにより、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度が当該被検出雰囲気内の湿度に応じて変動することをより一層考慮して、この変動をなくするように処理して可燃性ガスを検出することとなるので、この検出精度をより一層高く確保できる。
【0024】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置において、温度検出手段は、被検出雰囲気内に配置される測温抵抗体であってその抵抗値の変化に応じて被検出雰囲気内の環境温度を検出する測温抵抗体であることを特徴とする。
【0025】
このように、温度検出手段として、被検出雰囲気内に配置される測温抵抗体を採用しても、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果を達成できる。
【0026】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項3或いは4に記載の可燃性ガス検出装置において、温度検出手段は、半導体基板の表面上に形成される薄膜抵抗体であって、
この薄膜抵抗体はその抵抗値の変化に基づき上記被検出雰囲気内の環境温度を検出する薄膜抵抗体であることを特徴とする。
【0027】
このように、温度検出手段として、半導体基板の表面上に形成されてなる薄膜抵抗体を採用したので、この薄膜抵抗体の抵抗値が、上記環境温度の変化に伴い迅速に変化し得る。従って、請求項3或いは4に記載の発明と同様の作用効果をより一層精度よく達成し得る。
【0028】
また、本発明に係る可燃性ガス検出方法では、請求項8の記載によれば、
被検出雰囲気内に晒される両発熱抵抗体(211、221、330)の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該両発熱抵抗体を通電制御し、
上記被検出雰囲気内の上記通電制御状態において生ずる両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と上記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、上記湿度及び上記環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出する。
【0029】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る可燃性ガス検出方法の提供が可能となる。
【0030】
また、本発明に係る可燃性ガス検出方法では、請求項9の記載によれば、
被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御し、
上記被検出雰囲気内の上記間欠的通電制御状態において生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と上記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、上記湿度及び上記環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出する。
【0031】
これによれば、請求項2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る可燃性ガス検出方法の提供が可能となる。
【0032】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項8或いは9に記載の可燃性ガス検出方法において、
上記可燃性ガスの算出は、
上記電圧差を独立変数とし、上記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を従属変数とし、上記湿度及び上記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と上記湿度との間の所定の関係を用いて、上記決定湿度に基づき上記切片を決定し、
上記環境温度に基づき決定される上記一次関数式の勾配、上記切片及び上記電圧差を用いて、上記一次関数式に基づき上記可燃性ガスの濃度を算出することで行うようにしたことを特徴とする。
【0033】
これにより、請求項8或いは9に記載の発明の作用効果をより一層向上できる。
【0034】
なお、請求項1、2、3、4、8或いは9に記載の上記各関係または請求項5或いは10に記載の所定の関係及び一次関数式は、データとして、メモリに予め記憶されていてもよい。また、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明に係る可燃性ガス検出装置の第1実施形態を示しており、この可燃性ガス検出装置は、例えば、燃料電池から漏れる水素ガスを検出するのに用いられる。
【0036】
当該可燃性ガス検出装置は、装置ユニット100(図1参照)と、制御回路200(図2参照)とにより構成されている。装置ユニット100は、図1にて示すごとく、ケーシング110、蓋体120及びコネクタ130を備えている。ケーシング110は両ケーシング部材111、112を有しており、当該両ケーシング部材111、112は、その各開口部にて互いに嵌合されて、ケーシング110を構成している。
【0037】
ここで、ケーシング部材111は、ガス導入筒113を備えており、このガス導入筒113は、ケーシング部材111の底壁中央から外方へ円筒状に延出し、ガス導入口部114にて、外方に開口している。なお、図1にて、符号115は、Oリングを示す。このOリングは、当該可燃性ガス検出装置の取り付け箇所によっては、廃止してもよい。
【0038】
蓋体120は、図1にて示すごとく、ケーシング部材111の内側からガス導入筒113内に同軸的に嵌装されており、当該蓋体120は、図1及び図3にて示すごとく、円筒部材121を備えている。この円筒部材121は、その底壁側円筒部にて、図1にて示すごとく、ガス導入筒113の小径穴部内に同軸的に嵌装されており、当該円筒部材121は、その環状底壁122(図3参照)にて、ガス導入口部114にその内面側から着座している。なお、円筒部材121は、その環状底壁122の中空部にて、ガス導入口部114を通り外方に開口している。
【0039】
また、円筒部材121は、その基端側環状フランジ部123にて、ガス導入筒113の基端側に形成した大径穴部内にパッキン等の環状シール(図示しない)を介し接着剤でもって気密的に接着嵌装されている。なお、上述のように環状シールを介し接着剤で接着することに代えて、溶着に依ってもよい。
【0040】
また、蓋体120は、円筒部材121内に設けた撥水フィルタ124及び金網125を備えている。撥水フィルタ124は、その外周部にて、円筒部材121の環状底壁122と環板状スペーサ126との間に挟持されており、この撥水フィルタ124は、ガス導入口部114及び円筒部材の環状底壁122の中空部からスペーサ126内への水滴の浸入や粉塵の侵入を防止する。
【0041】
金網125は、その外周部にて、環板状スぺーサ126と円筒状スペーサ127の環状底壁との間に挟持されており、この金網125は、次のような役割を果たす。即ち、後述する発熱抵抗体330(図4参照)への通電に伴い当該発熱抵抗体に電流が流れて当該発熱抵抗体の温度が水素ガスの下限爆発温度を上回ることで、水素ガスがスペーサ127内で発火した場合に、金網125は、スペーサ127の内部からその外方へ逸火することを防止する。
【0042】
なお、スペーサ127は、円筒部材121の円筒部内に同軸的に圧入により嵌装されて、その環状底壁にて、金網125、環状スペーサ126及び撥水フィルタ124を、円筒部材121の環状底壁122の内面上に固定している。
【0043】
コネクタ130は、ケーシング部材111の図1にて図示右側壁に組み付けられており、このコネクタ130は、その複数のコネクタピン131(図1では、一コネクタピンのみを示す)にて、ケーシング111の右側壁を通し配線板180の配線パターン部(図示しない)に電気的に接続されている。なお、当該コネクタ130は、ケーシング部材111と一体で構成されていてもよい。
【0044】
当該装置ユニット100は、図1及び図3にて示すごとく、検出素子300、敷き板140及び取り付け板150を備えており、検出素子300は、図1及び図3にて示すごとく、敷き板140及び取り付け板150と共に、円筒部材121内に支持されている。取り付け板150は、図3にて示すごとく、その断面L字状外周部151にて、円筒部材121の環状フランジ部123内に同軸的にかつ気密的に固定されている。敷き板140は、熱伝導率の小さい材料でもって形成されており、この敷き板140は、取り付け板150の外面(スペーサ127側の面)の中央部に接着剤でもって接着されている。検出素子300は、敷き板140の外面(スペーサ127側の面)に接着剤で接着されて、スペーサ127内に露呈している。
【0045】
また、当該装置ユニット100は、図1及び図3にて示すごとく、複数本のピン状ターミナル160〜164及びヒータ170を備えており、各ターミナル160〜164は、取り付け板150に挿通されている。ヒータ170は、図1及び図3にて示すごとく、両ターミナル160、163の各先端部間に電気的に接続されており、このヒータ170は、両ターミナル160、163を介する給電により検出素子300を加熱してこの検出素子300に付着する結露や不純物を乾燥消失させる。
【0046】
特に、雰囲気温度を検出する測温抵抗体を検出素子300の表面上に設ける場合、当該測温抵抗体でもって検出する温度が、検出素子300の表面に付着した結露や不純物に起因して実際の雰囲気温度よりも低くなり、温度の検出精度の低下を招くという事態の発生を防止する効果がある。なお、検出素子300は、後述する各電極膜370(図4参照)にて、ターミナル161、162及び164の各先端部にワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
【0047】
配線板180は、ケーシング110内に設けられており、この配線板180は、その外周部にて、ケーシング部材111の開口端部に支持されている。なお、当該配線板180には、各ターミナル160〜164が、その基端部にて、嵌着されて配線板180の上記配線パターン部に電気的に接続されている。
【0048】
制御回路200は、図1にて示すごとく、ケーシング110内にて配線板180の裏面(図1にて図示下側)に実装されており、この制御回路200は、当該配線板180の上記配線パターン部を介し、コネクタ130のコネクタピン131及び各ターミナル160〜164に電気的に接続されている。
【0049】
次に、上述した検出素子300の構成につき図4及び図5を参照して説明する。検出素子300はマイクロマシニング技術を用いて製造されているもので、当該検出素子300は、図4にて示すごとく、シリコン製半導体基板310及び上下両側絶縁層320を備えている。上側絶縁層320は、半導体基板310の表面に形成されており、一方、下側絶縁層320は、半導体基板310の裏面に形成されている。なお、上側絶縁層320は、半導体基板310の表面に形成した酸化シリコン膜321と、この酸化シリコン膜321上に積層した窒化シリコン膜322でもって構成されている。また、下側絶縁層320は、半導体基板310の裏面に形成した酸化シリコン膜321と、この酸化シリコン膜321上に積層した窒化シリコン膜322でもって構成されている。
【0050】
ここで、半導体基板310には、図4にて図示左右両側凹部311が、上側絶縁層320の裏面側において、間隔をおいて形成されている。また、下側絶縁層320は、各凹部311に対応する部位にて、それぞれ除去されて、各凹部311の開口部として形成されている。これにより、上側絶縁層320は、その裏面のうち各凹部311に対する各対応裏面部にて、当該各凹部311の開口部を通して外方に露呈している。なお、半導体基板310は、各凹部311以外の部位にて基板部312を構成する。
【0051】
また、検出素子300は、図4及び図5にて示すごとく、左右両側発熱抵抗体330並びに左側、中央側及び右側の各配線膜340を備えている。左側発熱抵抗体330は、上側絶縁層320の表面のうち左側凹部311に対応する部位上に渦巻き状に形成されており、一方、右側発熱抵抗体330は、上側絶縁層320の表面のうち右側凹部311に対応する部位上に渦巻き状に形成されている。本第1実施形態において、両発熱抵抗体330は、後述する各配線膜340と共に、白金抵抗材料でもって形成されている。
【0052】
左側配線膜340は、図4にて示すごとく、上側絶縁層320の表面の左側部上において、半導体基板310の基板部312に対応して位置し、図5にて示すごとく、左側発熱抵抗体330の一端と一体となるように形成されている。中央側配線膜340は、上側絶縁層320の表面の中央部上にて、半導体基板310の基板部312に対応して位置し、左側発熱抵抗体330の他端及び右側発熱抵抗体330の一端と一体となるように形成されている。また、右側配線膜340は、上側絶縁層320の表面の右側部上にて、半導体基板310の基板部312に対応して位置し、右側発熱抵抗体330の他端と一体となるように形成されている。
【0053】
また、当該検出素子300は、図4及び図5にて示すごとく、内側保護層350及び外側保護層360並びに左側、中央側及び右側の各電極膜370を備えており、内側保護層350は、各配線膜340及び各発熱抵抗体330を覆うように、上側絶縁層320の表面上に形成されている。また、外側保護層360は、内側保護層350上に積層状に形成されている。
【0054】
ここで、内側保護層350及び外側保護層360には、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール361が、内側保護層350及び外側保護層360のうち左側、中央側及び右側の各配線膜340に対応する各部位に形成されている。これにより、左側、中央側及び右側の各配線膜340は、その表面にて、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール361を通り外方に露呈している。左側、中央側及び右側の各電極膜370は、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール361を通して左側、中央側及び右側の各配線膜340上に形成されている。
【0055】
本第1実施形態では、検出素子300において、左側発熱抵抗体330、左側及び中央側の各配線膜340並びに左側及び中央側の各電極膜370が、主として、左側熱伝導式ガス検出部380を構成し、右側発熱抵抗体330、中央側及び右側の各配線膜340並びに中央側及び右側の各電極膜370が、主として、右側熱伝導式ガス検出部380を構成する。
【0056】
また、当該検出素子300は、図5にて示すごとく、測温抵抗体390を備えており、この測温抵抗体390は、白金(Pt)を含む測温抵抗材料でもって、図5にて図示上側において、上側絶縁層320と内側保護層350との間に薄膜抵抗体として形成されている。これにより、当該測温抵抗体390は、当該ガス検出装置を配置した被検出雰囲気の温度(以下、環境温度ともいう)を検出する。本第1実施形態では、測温抵抗体390の温度抵抗係数は両発熱抵抗体330の各温度抵抗係数とほぼ同一となっている。
【0057】
また、各電極膜391は、内側保護層350及び外側保護層360に形成した各コンタクトホール(図示しない)内にて測温抵抗体390の左右両端部上に形成されている。なお、この測温抵抗体390は、両電極膜391を介しターミナル(図示しない)を介し配線板180の上記配線パターン部に接続されている。
【0058】
次に、上述した制御回路200の構成について図2を参照して説明する。制御回路200は、両ブリッジ回路210、220を備えており、ブリッジ回路210は、図2にて示すごとく、ガス検出用発熱抵抗体211及び各固定抵抗212、213、214でもって、ホイートストーンブリッジ回路を形成するように構成されている。
【0059】
このブリッジ回路210において、ガス検出用発熱抵抗体211は、検出素子300の左側熱伝導式ガス検出部380を構成する左側発熱抵抗体330でもって構成されている。ここで、発熱抵抗体211は、その一端にて、接地されており、当該発熱抵抗体211の他端は、固定抵抗212、固定抵抗213及び固定抵抗214を介し接地されている。
【0060】
しかして、当該ブリッジ回路210は、発熱抵抗体211及び固定抵抗214の共通端子(一側電源端子)及び両固定抵抗212、213の共通端子(他側電源端子)の間に、定温度制御回路230から制御電圧を受けて作動する。そして、この作動のもと、当該ブリッジ回路210は、ガス検出用発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき発熱抵抗体211及び固定抵抗212の共通端子(ブリッジ回路210の一側出力端子)と両固定抵抗213、214の共通端子(ブリッジ回路210の他側出力端子)との間に生ずる電位差(水素ガスの濃度を表す)を出力する。
【0061】
定温度制御回路230は、演算増幅回路250の出力(後述する)に応じて、ガス検出用発熱抵抗体211の抵抗値を一定温度(例えば、150(℃))に対応する値に維持するように、内蔵直流電源(図示しない)の出力電圧に基づき、ブリッジ回路210への上記制御電圧を形成する。なお、発熱抵抗体211(330)の抵抗値は上記制御電圧或いは当該発熱抵抗体211の温度の上昇(又は低下)に応じて増大(又は減少)する。
【0062】
また、ブリッジ回路220は、図2にて示すごとく、ガス検出用発熱抵抗体221及び各固定抵抗222、223、224でもって、ホイートストーンブリッジ回路を形成するように構成されている。このブリッジ回路220において、ガス検出用発熱抵抗体221は、検出素子300の右側熱伝導式ガス検出部380を構成する右側発熱抵抗体330でもって構成されている。ここで、発熱抵抗体221は、その一端にて、接地されており、当該発熱抵抗体221の他端は、固定抵抗222、固定抵抗223及び固定抵抗224を介し接地されている。
【0063】
しかして、ブリッジ回路220は、発熱抵抗体221及び固定抵抗224の共通端子(一側電源端子)及び両固定抵抗222、223の共通端子(他側電源端子)の間に、定温度制御回路240から制御電圧を受けて作動する。そして、この作動のもと、当該ブリッジ回路220は、ガス検出用発熱抵抗体221の抵抗値の変化に基づき発熱抵抗体221及び固定抵抗222の共通端子(ブリッジ回路220の一側出力端子)と両固定抵抗223、224の共通端子(ブリッジ回路220の他側出力端子)との間に生ずる電位差(水素ガス濃度を表す)を出力する。
【0064】
定温度制御回路240は、演算増幅回路260の出力(後述する)に応じて、ガス検出用発熱抵抗体221の抵抗値を一定温度(例えば、330(℃))に対応する値に維持するように、内蔵直流電源(図示しない)の出力電圧に基づき、ブリッジ回路220への上記制御電圧を形成する。なお、発熱抵抗体221の抵抗値は、定温度制御回路240からの制御電圧或いは当該発熱抵抗体211の温度の上昇(又は低下)に応じて増大(又は減少)する。また、両定温度制御回路230、240の各制御電圧の出力は、電源スイッチ281のオンに同期して開始されるようになっている。
【0065】
演算増幅回路250は、ブリッジ回路210の両出力端子間に生ずる電位差を増幅して増幅電位差を定温度制御回路230及びマイクロコンピュータ270に出力する。演算増幅回路260は、ブリッジ回路220の両出力端子間に生ずる電位差を増幅して増幅電位差を定温度制御回路240及びマイクロコンピュータ270に出力する。
【0066】
マイクロコンピュータ270は、直流電源280から電源スイッチ281を介し給電されて作動し、図6にて示すフローチャートに従いコンピュータプログラムを実行する。この実行中において、マイクロコンピュータ270は、測温抵抗体390の検出環境温度や両演算増幅回路250、260の各出力電位差に基づき、水素ガスの濃度の算出に要する各種の処理を行う。なお、上記コンピュータプログラムは、マイクロコンピュータ270のROMに当該マイクロコンピュータにより読み出し可能に記憶されている。
【0067】
以上のように構成した本第1実施形態において、当該可燃性ガス検出装置の装置ユニット100が被検出雰囲気内に配置されているものとする。このような状態にて、上記被検出雰囲気内に漏洩する水素ガスが、装置ユニット100のガス導入筒113内にそのガス導入口部114から流入すると、当該水素ガスは、撥水フィルタ124及び金網125を通り円筒状スペーサ127内に流入し、然る後、検出素子300に到達する。これに伴い、当該水素ガスが、検出素子300に接触するようにして外側保護層360の表面付近にて流動する。
【0068】
このような状態において、電源スイッチ281がオンされ、マイクロコンピュータ270が直流電源280から給電されると、当該マイクロコンピュータ270は、図6のフローチャートに従い上記コンピュータプログラムの実行を開始する。この開始に伴い、ステップ400において、マイクロコンピュータ270に内蔵のソフトタイマーの起動処理がなされる。従って、当該ソフトタイマーがそのリセット起動により計時を開始する。
【0069】
ついで、上記ソフトタイマーの計時時間が所定の待ち時間を経過するまで、ステップ410においてNOとの判定が繰り返される。なお、上記所定の待ち時間は、定温度制御回路230による制御のもと発熱抵抗体211の温度が上記一定温度(150(℃))になるとともに定温度制御回路240による制御のもと発熱抵抗体221が上記一定温度(330(℃))になるに要する時間(例えば、0.5(秒))に設定されている。
【0070】
また、電源スイッチ281のオンに同期して、両定温度制御回路230、240による各制御電圧の出力が開始される。これに伴い、定温度制御回路230がブリッジ回路210の両電源端子間に制御電圧を出力すると、当該ブリッジ回路210が当該制御電圧でもって通電される。そして、このブリッジ回路210の両出力端子間から出力される電位差が演算増幅回路250により増幅されて定温度制御回路230にフィードバックされる。従って、ステップ410におけるNOとの判定の繰り返し中において、発熱抵抗体211の抵抗値が上記一定温度(150(℃))に対応する値を維持するように、当該発熱抵抗体211が定温度制御回路230により通電制御される。
【0071】
また、定温度制御回路240がブリッジ回路220の両電源端子間に制御電圧を出力すると、当該ブリッジ回路220が当該制御電圧でもって通電される。そして、このブリッジ回路220の両出力端子間から出力される電位差が演算増幅回路260により増幅されて定温度制御回路240にフィードバックされる。従って、ステップ410におけるNOとの判定の繰り返し中において、発熱抵抗体221の抵抗値が上記一定温度(330(℃))に対応する値を維持するように、当該発熱抵抗体221が定温度制御回路240により通電制御される。
【0072】
然る後、上記ソフトタイマーの計時時間が上記所定の待ち時間を経過すると、ステップ410においてYESと判定され、次のステップ411において、変数N=0とクリアされる。ついで、ステップ420において、両演算増幅回路250、260の各増幅電位差及び測温抵抗体390により検出される環境温度(以下、環境温度Tという)の入力処理がなされる。
【0073】
ついで、ステップ430において、電圧差Vdの算出処理がなされる。ここで、電圧差Vdは、発熱抵抗体221の端子電圧と発熱抵抗体211の端子電圧との差をいう。このステップ430での算出処理では、電圧差Vdが、演算増幅回路260からの増幅電位差の演算増幅回路250からの増幅電位差に対する差に基づき算出される。
【0074】
然る後、ステップ431において、電圧比Rvの算出処理がなされる。ここで、電圧比Rvは、発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧に対する比をいう。このステップ431の処理では、電圧比Rvが、演算増幅回路260からの増幅電位差の演算増幅回路250からの増幅電位差に対する比に基づき算出される。
【0075】
このようにして電圧比の算出が終了すると、次のステップ432において、上記被検出雰囲気内の相対湿度Hの算出処理がなされる。この算出処理では、各環境温度における相対湿度Hが、図7にて示す相対湿度Hと電圧比Rvとの近似直線関係を表す特性(以下、相対湿度−電圧比特性ともいう)に基づき電圧比Rvから算出される。
【0076】
本実施形態において、上記近似関係は、電圧比が被検出雰囲気内の相対湿度の増大及び環境温度の上昇(或いは、被検出雰囲気内の相対湿度の減少及び環境温度の低下)に応じて増大(或いは減少)する関係をいう。換言すれば、上記近似関係は、被検出雰囲気内の相対湿度が、電圧比の増大及び環境温度の上昇(或いは、電圧比の減少及び環境温度の低下)に応じて増大(或いは減少)する関係をいう。但し、上記相対湿度−電圧比特性は、後述する一次関数式及びマップデータと共に、データとしてマイクロコンピュータ270のROMに予め記憶されている。なお、当該データの記憶は、上記ROMに限ることなく、適宜なメモリでおこなってもよい。
【0077】
ここで、上記相対湿度−電圧比特性の導入根拠について説明する。検出素子300を被検出雰囲気内に配置して、当該被検出雰囲気に含まれる水素ガスの濃度D(以下、水素ガス濃度Dともいう)が、当該検出素子300の右側発熱抵抗体330の端子電圧の左側発熱抵抗体330の端子電圧に対する電圧差Vd(以下、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdともいう)との間においてどのような関係を有するかにつき、当該被検出雰囲気内の相対湿度Hをパラメータとして、測定してみた。但し、上記被検出雰囲気の環境温度Tは、例えば80(℃)であるものとする。また、左側発熱抵抗体330の温度は150(℃)に維持されており、一方、右側発熱抵抗体330の温度は330(℃)に維持されているものとする。
【0078】
上記測定の結果、複数のグラフが、図8にて例示するように、相対湿度Hをパラメータとして得られた。但し、図8において、グラフ1は、相対湿度H=0(%RH)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係を示す。また、グラフ2は、相対湿度H=45(%RH)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係を示し、グラフ3は、相対湿度H=100(%RH)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係を示す。なお、このような関係は、H=0(%RH)、45(%RH)及び100(%RH)以外の相対湿度においても実質的に同様に得られる。
【0079】
従って、図8の各グラフによれば、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係は、環境温度T=80(℃)のもとで、相対湿度Hをパラメータとして、図8の直交座標面の縦軸に沿い平行移動する直線的グラフでもって表されることが分かる。換言すれば、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdは、相対湿度Hをパラメータとするものの、水素ガス濃度Dと正比例の関係にあることが分かる。
【0080】
ここで、図8では、各グラフの勾配は、互いに同一であって、主として、上記被検出雰囲気内の環境温度Tによって決まる。よって、この勾配をAとすれば、各グラフは、一次関数式Vd=A・D+Bによって表せる。但し、Vdは、当該一次関数式の独立変数であり、Dは当該一次関数式の従属変数であり、Bは、当該一次関数式の切片を示す。この切片Bは、上記一次関数式の図8の直交座標面の縦軸との交点、即ち、D=0(%)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差を表す。
【0081】
また、図8の各グラフを前提に、上記被検出雰囲気内の相対湿度Hが、左側発熱抵抗体330の端子電圧の右側発熱抵抗体330の端子電圧に対する電圧比Rv(以下、両発熱抵抗体330の電圧比Rvともいう)との間においてどのような関係を有するかにつき、測定してみた。この測定の結果、図7にて示すグラフ4が得られた。このグラフ4によれば、相対湿度Hは両発熱抵抗体330の電圧比Rvに対し近似直線関係を有することが分かる。
【0082】
そこで、図7のグラフで特定される相対湿度Hと両発熱抵抗体330の電圧比Rvとの関係が、図8の各グラフで特定される両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係に対しどのような関係を有するかについて検討してみた。
【0083】
図8によれば、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係は、相対湿度Hをパラメータする。従って、各グラフ1、2、3の図8の縦軸との交点である切片Bは、相対湿度Hと一定の関係にあることを利用して相対湿度Hから決まる。ここで、切片Bと相対湿度Hとは、3次関数的な関係にあり簡単には導出できないが、切片Bと相対湿度Hとの関係が、実測により、マップデータとして得られる。
【0084】
また、相対湿度Hは、図7のグラフ4から分かるように、環境温度T及び両発熱抵抗体330の電圧比Rvによって一義的に決まる。よって、この決定相対湿度Hに対応する切片Bは、上記マップデータから一義的に決まることが分かる。
【0085】
以上より、一次関数式Vd=A・D+Bから変換した式、D=(Vd−B)/Aを用いれば、水素ガス濃度Dの算出が可能となる。ここで、Va=(Vd−B)と表せば、DはVaと正比例の関係となるから、Dは、D=Va/AからVaに基づき算出されて、図9にて示すグラフが得られる。そこで、図7のグラフで特定される上記相対湿度−電圧比特性を導入した。
【0086】
上述のようにステップ430及びステップ431において電圧比Rv及び電圧差Vdの算出が終了すると、ステップ432において、相対湿度Hの算出処理がなされる。この算出処理では、相対湿度Hが図7の相対湿度−電圧比特性(上記ROMに記憶済み)を用いて電圧比Rvに基づき算出される。
【0087】
ついで、ステップ433において、切片Bが、上記マップデータ(上記ROMに記憶済み)に基づきステップ432における算出相対湿度Hから決定される。そして、ステップ434において、勾配Aが、ステップ420における環境温度Tに基づき算出される。但し、勾配Aは環境温度と一定の関係を有する。なお、勾配Aは、好ましくは、検出ガスの種類をも考慮して算出するとよい。
【0088】
然る後、ステップ440において、水素ガスの濃度Dが、一次関数式Vd=A・D+Bから変換した式、D=(Vd−B)/Aを用いて、電圧差Vd、勾配A及び切片Bに基づき算出される。なお、上記変換式D=(Vd−B)/Aは、マイクロコンピュータ270のROMに予め記憶されている。
【0089】
ついで、ステップ450において、N=N+1=1と加算更新され、ステップ460において、変数N=所定回数Noか否かが判定される。現段階では、N=1であることから、ステップ460において、N=1<No(=10)に基づき、NOと判定され、コンピュータプログラムがステップ420に戻る。
【0090】
以後、ステップ450における変数Nの加算更新値がN=Noとなるまで、ステップ420〜ステップ460を通る循環処理が繰り返される。然る後、N=Noとなり、ステップ460における判定がYESになると、次のステップ470において、ステップ440にて算出済みの全ての水素ガス濃度の平均値が算出され検出水素ガス濃度として出力される。
【0091】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、定温度制御回路230、240による上述の通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体211の端子電圧の発熱抵抗体221の端子電圧に対する電圧差Vdを独立変数とし、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度Dを従属変数とし、相対湿度H及び環境温度Tをパラメータとして成立する一次関数式Vd=A・D+Bを前提とする。
【0092】
そして、当該一次関数式の切片Bと相対湿度Hとの間で成立する3次関数的な関係を表す上記マップデータに加え、定温度制御回路230、240による通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧に対する電圧比Rvと被検出雰囲気内の相対湿度Hとの間で環境温度Tにおいて成立する近似直線関係(図7参照)をも利用して、相対湿度Hが当該近似直線関係から上記決定電圧比Rvに基づき算出され、上記一次関数式の切片Bが上記マップデータから当該決定相対湿度Hに基づき決定され、かつ、当該一次関数式の勾配Aが上記環境温度Tに基づき算出される。
【0093】
そして、上記可燃性ガスの濃度Dが、定温度制御回路230、240による通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧との電圧差Vd、上記決定切片B及び上記算出勾配Aを用いて上記一次関数式に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0094】
以上より、被検出雰囲気の熱伝導率が当該被検出雰囲気内の相対湿度に応じて変動することを考慮して、この変動の影響をなくするように処理して可燃性ガスを検出することとなり、その結果、この検出精度を高く確保できる。ここで、両発熱抵抗体211、221の温度抵抗係数は上述のごとく測温抵抗体390の温度抵抗係数とほぼ同一であるから、両発熱抵抗体211、221の各抵抗値及び測温抵抗体390の抵抗値が、共通の上記環境温度においてほぼ同様の変化特性を示す。従って、可燃性ガス濃度の算出や検出がより精度よくなされ得る。また、測温抵抗体390は薄膜抵抗体であるため、この薄膜抵抗体の抵抗値が環境温度の変化に伴い迅速に変化し得る。
(第2実施形態)
図10及び図11は、本発明に係る可燃性ガス検出装置の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、上記第1実施形態において、マイクロコンピュータ270が、図10から分かるように、定温度制御回路230に代えて、この定温度制御回路230の出力制御電圧をブリッジ回路210に直接出力するとともに、定温度制御回路240に代えて、この定温度制御回路240の出力制御電圧をブリッジ回路220に直接出力するようにした構成となっている。これに伴い、本第2実施形態では、両定温度制御回路230、240が廃止されている。
【0095】
また、本第2実施形態では、マイクロコンピュータ270が、図6のフローチャートに代えて、図11にて示すフローチャートに従い、上記コンピュータプログラムを実行するように変更されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0096】
このように構成した本第2実施形態において、上記第1実施形態にて述べたと同様に当該可燃性ガス検出装置が上記被検出雰囲気内に配置されているものとする。
【0097】
このような状態において、電源スイッチ281がオンされ、マイクロコンピュータ270が直流電源280から給電されると、当該マイクロコンピュータ270は、図11のフローチャートに従い上記コンピュータプログラムの実行を開始する。この開始に伴い、ステップ480において、両発熱抵抗体211、221の定温度制御処理がなされる。
【0098】
この定温度制御処理では、制御電圧が、演算増幅回路250の出力に応じて、ガス検出用発熱抵抗体211の抵抗値を一定温度(例えば、150(℃))に対応する値に維持するように、直流電源280の出力電圧に基づき形成されてブリッジ回路210に出力される。また、他の制御電圧が、演算増幅回路260の出力に応じて、ガス検出用発熱抵抗体221の抵抗値を一定温度(例えば、330(℃))に対応する値に維持するように、直流電源280の出力電圧に基づき形成されてブリッジ回路220に出力される。
【0099】
これにより、発熱抵抗体211が上記一定温度(例えば、150(℃))に維持されるとともに、発熱抵抗体221が上記一定温度(例えば、330(℃))に維持される。
【0100】
このような状態にて、以下のステップ411以後の処理が上記第1実施形態と同様になされる。その結果、上記第1実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(第3実施形態)
図12〜図18は、本発明に係る可燃性ガス検出装置の第3実施形態を示している。この第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた検出素子300(図4及び図5参照)において、右側発熱抵抗体330に代えて、測温抵抗体500を採用した構成となっている(図12及び図13参照)。これに伴い、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた測温抵抗体390は廃止されている。
【0101】
測温抵抗体500は、上記第1実施形態にて述べた上側絶縁層320の表面のうち右側凹部311に対応する部位上に、白金(Pt)を含む測温抵抗材料でもって、蛇行状に形成されている。これにより、当該測温抵抗体500は、上記第1実施形態にて述べた測温抵抗体390と同様に、当該ガス検出装置を配置した被検出雰囲気の環境温度を検出する。
【0102】
ここで、当該測温抵抗体500は、その両端にて、上記第1実施形態にて述べた中央側及び右側の両配線膜340とそれぞれ一体となるように形成されている。なお、本第3実施形態では、測温抵抗体500の温度抵抗係数は上記第1実施形態にて述べた左側発熱抵抗体330の温度抵抗係数とほぼ同一となっている。
【0103】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた制御回路200に代えて、図14にて示す制御回路が採用されている。この制御回路は、上記第1実施形態にて述べた定温度制御回路230に代えて、温度制御回路231を採用するとともに、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路220、定温度制御回路240、演算増幅回路260を廃止した構成となっている。
【0104】
温度制御回路231は、マイクロコンピュータ270による制御のもと、所定のパルス周期にてパルス状の制御電圧(図16参照)を発生するように構成されている。ここで、当該制御電圧は、上記パルス周期の前半(例えば、図16にてt=t0〜t1参照)にて、ローレベルL(>0)となり、上記パルス周期の後半(例えば、図16にてt=t1〜t2参照)にて、ハイレベルH(>L)となるように発生される。なお、当該パルス周期は、例えば、20(秒)であって、このパルス周期の前半及び後半は、それぞれ、10(秒)である。また、上記制御電圧のレベルがローレベルL(>0)以上であるのは、後述のように発熱抵抗体211を常時通電状態におくためである。このことは、発熱抵抗体211の断線や短絡等の故障検知を容易にすることに役立つ。
【0105】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたマイクロコンピュータ270が、図6のフローチャートに代えて、図15にて示すフローチャートに従い、上記コンピュータプログラムを実行するように変更されている。ここで、図15のフローチャートは、上記第2実施形態にて述べたフローチャート(図11参照)を変更したものである。
【0106】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路210(図2参照)において、図14にて示すごとく、両固定抵抗215、216及びアナログ切り換えスイッチ290を付加的に採用した構成が採用されている。
【0107】
アナログ切り換えスイッチ290は、図14にて示すごとく、可動接点291と、この可動接点291を選択的に切り換え投入する各固定接点292、293及び294とにより構成されている。ここで、可動接点291は、上記第1実施形態にて述べた固定抵抗213、固定抵抗212及び固定抵抗211を介し接地されている。固定接点292は、固定抵抗214を介し接地されている。また、固定接点293は固定抵抗215を介し接地されるとともに、固定接点294は固定抵抗216を介し接地されている。
【0108】
しかして、当該アナログ切り換えスイッチ290は、上記第1実施形態にて述べたマイクロコンピュータ270による制御のもと、上記制御電圧のレベル変化に同期して可動接点291を各固定接点292、293及び294のいずれかに切り換え投入する。なお、以下、可動接点291の固定接点292への投入状態を第1投入状態といい、可動接点291の固定接点293への投入状態を第2投入状態といい、可動接点291の固定接点294への投入状態を第3投入状態という。
【0109】
ここで、上記制御電圧がローレベルLにあるときアナログ切り換えスイッチ290は第1投入状態になるようにマイクロコンピュータ270により切り換え制御される。これに伴い、ブリッジ回路210において、各固定抵抗214〜216のうち固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続される。
【0110】
上記制御電圧がローレベルLからハイレベルHになるとアナログ切り換えスイッチ290は第2及び第3の投入状態のいずれかに切り換わるようにマイクロコンピュータ270により制御される。これに伴い、ブリッジ回路210において、両固定抵抗215、216のいずれかが固定抵抗213に直列接続される。
【0111】
本第3実施形態では、ブリッジ回路210において、各固定抵抗214〜216の抵抗値は次のように設定されている。即ち、上記制御電圧のローレベル状態にて固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続されているとき、発熱抵抗体211の温度(以下、抵抗体温度Cともいう)をC=C1(図17参照)に維持する電流(以下、電流I1ともいう)を発熱抵抗体211に流すように、固定抵抗214の抵抗値(以下、抵抗値R1ともいう)が設定されている。
【0112】
また、上記制御電圧のハイレベル状態にて固定抵抗215が固定抵抗213に直列接続されているとき、抵抗体温度CをC=C2(図17参照)に維持する電流(以下、電流I2ともいう)を発熱抵抗体211に流すように、固定抵抗215の抵抗値(以下、抵抗値R2ともいう)が設定されている。
【0113】
また、上記制御電圧のハイレベル状態にて固定抵抗216が固定抵抗213に直列接続されているとき、抵抗体温度CをC=C3(図17参照)に維持する電流(以下、電流I3ともいう)を発熱抵抗体211に流すように、固定抵抗216の抵抗値(以下、抵抗値R3ともいう)が設定されている。
【0114】
ここで、各固定抵抗214〜216の抵抗値は、R1<R3<R2という関係を有する。従って、抵抗体温度Cは、図17にて示すごとく、C1<C3<C2という関係を有する。
【0115】
また、抵抗体温度C=C1は、100(℃)よりも高い。これは、上述のように制御電圧のレベルをローレベルL(>0)以上とすることで発熱抵抗体211に常時通電することにより、発熱抵抗体211の温度を100(℃)よりも高く維持し、当該発熱抵抗体211に対する結露水等の水分の付着を未然に防止するためである。なお、当該防止は、発熱抵抗体211の温度上昇を円滑にするのに役立つ。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0116】
このように構成した本第3実施形態において、上記第1実施形態にて述べたと同様に当該可燃性ガス検出装置が上記被検出雰囲気内に配置されているものとする。
【0117】
このような状態において、電源スイッチ281がオンされ、マイクロコンピュータ270が直流電源280から給電されると、当該マイクロコンピュータ270は、図15のフローチャートに従い上記コンピュータプログラムの実行を開始する。この開始に伴い、ステップ412において、変数N=0とクリアされる。このとき、時間t=t0であるとする。
【0118】
ついで、両ステップ481、ステップ413の循環処理がなされる。即ち、ステップ413では、温度周期τの経過か否かが判定される。本第3実施形態では、温度周期τは、当該制御電圧のパルス周期の2倍(例えば、t=t0〜t4)に相当する。しかして、温度周期τの経過までは、ステップ413でNOとの判定が繰り返されるため、上述のように両ステップ481、413の循環処理がなされる。
【0119】
このような循環処理中、ステップ481において、本第3実施形態におけるブリッジ回路210の発熱抵抗体211の温度制御処理がなされる。具体的には、温度制御回路231が、マイクロコンピュータ270により制御されて、上記パルス周期にて制御電圧をパルス状に発生する。ここで、当該制御電圧は、t=t0〜t1にてローレベルLを維持し、t=t1〜t2にてハイレベルHを維持し、t=t2〜t3にてローレベルLを維持し、t=t3〜t4にてハイレベルHを維持するように変化する。
【0120】
また、アナログ切り換えスイッチ290は、マイクロコンピュータ270による制御のもと、当該制御電圧のレベル変化に同期して、可動接点291を各固定接点292〜294のいずれかに切り換え投入する。詳細には、アナログ切り換えスイッチ290は、時間t=t0にて第1投入状態になり、t=t1にて第2投入状態になり、t=t2にて第1投入状態になり、t=t3にて第3投入状態になり、t=t4にて第1投入状態になる。
【0121】
しかして、上述のように、t=t0にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210において固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する。
【0122】
ついで、上述のように、時間t=t1にて、アナログ切り換えスイッチ290が第2投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗215が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I2が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C2に維持する。
【0123】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、215の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗215の抵抗値R2及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V1(図18にてt=t1〜t2参照)を出力する。すると、この電位差V1は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA1としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される増幅電位差VA1は、次のt=t2〜t3の間にて当該マイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。
【0124】
然る後、上述のように、時間t=t2にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗214が固定抵抗213に再び直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する。
【0125】
ついで、上述のように、時間t=t3にて、アナログ切り換えスイッチ290が第3投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗216が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I3が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C3に維持する。
【0126】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧が時間t=t3にてハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、216の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗216の抵抗値R3及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V2(図18にてt=t3〜t4参照)を出力する。すると、この電位差V2は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA2としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される演算増幅電圧VA2は、t=t4〜t5の間にてマイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。現段階では、図18にて示すごとく、電位差V1>電位差V2であることから、増幅電位差VA1>増幅電位差VA2である。
【0127】
然る後、温度周期τの経過に伴いステップ413における判定がYESになると、次のステップ420において、両増幅電位差の読み出し処理及び環境温度Tの入力処理がなされる。
【0128】
この読み出し処理及び入力処理では、上記第1実施形態にて述べた両演算増幅回路250、260からの各増幅電位差に代えて、上述のようにステップ481でマイクロコンピュータ270のRAMに記憶済みの演算増幅回路250からの両増幅電位差VA1、VA2が読み出されるとともに、測温抵抗体500により検出される環境温度Tがマイクロコンピュータ270に入力される。
【0129】
ついで、ステップ430において、電圧差Vdの算出処理がなされる。この算出処理では、上記第1実施形態にて述べた両演算増幅回路250、260からの各増幅電位差の差に代えて、ステップ420で読み出された両増幅電位差VA1、VA2の差(VA1−VA2)が算出される。
【0130】
このようにしてステップ430での処理が終了すると、ステップ431において、電圧比Rvの決定処理がなされる。この決定処理では、上記第1実施形態にて述べた両演算増幅回路250、260からの各増幅電位差の比に代えて、増幅電位差VA1の増幅電位差VA2に対する比(VA1/VA2)が電圧比Rvとして算出される。
【0131】
すると、次のステップ490において、Rv>1が成立するか否かが判定される。現段階では、上述のごとく、VA1>VA2であることから、Rv>1が成立する。従って、ステップ490における判定がYESとなる。なお、Rv≦1が成立する場合には、ステップ481以後の処理が再びなされる。
【0132】
上述のようにステップ490におけるYESとの判定に伴い、ステップ432以後の処理が上記第1実施形態と同様になされる。そして、ステップ460における判定がYESとなるまで、ステップ481以後の処理が、t=t4〜t8以後にて、上述と同様になされる。
【0133】
即ち、温度制御回路231からの制御電圧は、t=t4〜t5にてローレベルLを維持し、t=t5〜t6にてハイレベルHを維持し、t=t6〜t7にてローレベルLを維持し、t=t7〜t8にてハイレベルHを維持するように変化する。
【0134】
また、アナログ切り換えスイッチ290は、マイクロコンピュータ270による制御のもと、当該制御電圧のレベル変化に同期して、時間t=t4にて第1投入状態になり、t=t5にて第2投入状態になり、t=t6にて第1投入状態になり、t=t7にて第3投入状態になり、t=t8にて第1投入状態になる。
【0135】
しかして、上述のように、t=t4にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210の固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する(図17参照)。
【0136】
ついで、上述のように、時間t=t5にて、アナログ切り換えスイッチ290が第2投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗215が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I2が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C2に維持する(図17参照)。
【0137】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、215の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗215の抵抗値R2及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V3(図18にてt=t5〜t6参照)を出力する。すると、この電位差V3は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA3としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される増幅電位差VA3は、次のt=t6〜t7の間にて当該マイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。
【0138】
然る後、上述のように、時間t=t6にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗214が固定抵抗213に再び直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する(図17参照)。
【0139】
ついで、上述のように、時間t=t7にて、アナログ切り換えスイッチ290が第3投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗216が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I3が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C3に維持する(図17参照)。
【0140】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧が時間t=t7にてハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、216の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗216の抵抗値R3及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V1(図18にてt=t7〜t8参照)を出力する。すると、この電位差V1は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA1としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される演算増幅電圧VA1は、t=t8〜t9の間にてマイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。現段階では、図18にて示すごとく、電位差V3>電位差V1であることから、増幅電位差VA3>増幅電位差VA1である。
【0141】
しかして、t=t4〜t8に対応する温度周期τの経過に伴いステップ413においてYESとの判定がなされると、ステップ420において、上述のようにステップ481でマイクロコンピュータ270のRAMに記憶済みの演算増幅回路250からの両増幅電位差VA3、VA1が読み出されるとともに、測温抵抗体500により検出される環境温度Tがマイクロコンピュータ270に入力される。ついで、ステップ430において、ステップ420で読み出された両増幅電位差VA3、VA1の差(VA3−VA1)が算出される。然る後、ステップ431において、増幅電位差VA3の増幅電位差VA1に対する比(VA3/VA1)が電圧比Rvとして算出される。
【0142】
しかして、現段階では、上述のごとく、VA3>VA1であることから、Rv>1が成立することから、ステップ490における判定がYESとなる。これに伴い、ステップ432以後の処理が上述と同様になされる。
【0143】
以上説明したように、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路220、定温度制御回路240及び演算増幅回路260を廃止した上で、ブリッジ回路210として、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路210において上述のようにアナログ切り換えスイッチ290及び両固定抵抗215、216を付加した構成を採用し、温度制御回路231を上記第1実施形態にて述べた定温度制御回路230に代えて採用した。そして、本第3実施形態にいうブリッジ回路210及び温度制御回路231をマイクロコンピュータ270でもって図15のフローチャートに従い上述のように制御することで、温度周期τ毎に、ブリッジ回路210を上述のようにパルス駆動するとともにアナログ切り換えスイッチ290を切り換え駆動するようにした。
【0144】
これにより、ブリッジ回路及び発熱抵抗体をブリッジ回路210及び発熱抵抗体211とそれぞれ単一とすることで、検出素子300の小型化及び電力消費抑制を確保しつつ、上記第1実施形態と同様の作用効果を達成し得る。
【0145】
次に、上記第3実施形態の変形例について説明する。上記第3実施形態では、上述したごとく、温度周期τの経過毎に電圧比Rv>1の成立に伴い水素ガスの濃度の算出に伴う処理を行う例が示されている。しかしながら、これに限ることなく、当該第3実施形態を次のように変形してもよい。
【0146】
即ち、ステップ413における判定基準として、「温度周期τの経過か?」に代えて、「上記制御電圧のパルス周期の経過か?」を採用する。ここで、当該パルス周期の経過は、例えば、温度周期τの前半の経過、当該温度周期τの後半の経過、或いはこれに後続する温度周期τの前半の経過に相当する。
【0147】
このような前提のもと、当該パルス周期の経過に伴いステップ413にてYESと判定される毎に、ステップ420以後の処理が次のように繰り返される。
【0148】
上記第3実施形態にて述べたように、例えば、t=t2〜t3の間、t=t4〜t5の間、t=t6〜t7の間及びt=t8〜t9の間にてマイクロコンピュータ270のRAMに順次記憶された各増幅電位差VA1、VA2、VA3及びVA1のうち、両増幅電位差VA1、VA2、両増幅電位差VA2、VA3及び両増幅電位差VA3、VA1が順次ステップ420にて環境温度Tとともに読み出される。
【0149】
そして、このように順次読み出された両増幅電位差VA1、VA2、両増幅電位差VA2、VA3及び両増幅電位差VA3、VA1が、順次、電圧差Vdとしてステップ430にて算出される。ついで、上述のように順次読み出された両増幅電位差VA1、VA2、両増幅電位差VA2、VA3及び両増幅電位差VA3、VA1が、それぞれ、順次、電圧比Rv=VA1/VA2、VA2/VA3、VA3/VA1としてステップ431にて決定される。
【0150】
ここで、Rv=VA1/VA2>1、Rv=VA2/VA3<1及びRv=VA3/VA1>1である(図18参照)。従って、ステップ490において、Rv=VA1/VA2>1のときにはYESと判定され、Rv=VA2/VA3<1のときにはNOと判定され、Rv=VA3/VA1>1のときにはYESと判定される。
【0151】
このため、ステップ490における判定がYESのときにのみ、ステップ432以後の処理がなされる。これによっても、上記第3実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【0152】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)発熱抵抗体330及び配線膜340の形成材料としては、高温において化学的耐久性が高く、かつ温度抵抗係数が大きいことが望ましい。
(2)水素ガスに限らず、都市ガス等の可燃性ガスの濃度検出や当該ガスの漏洩検出に本発明を適用してもよい。
(3)上記各実施形態における発熱抵抗体の数は2つに限ることなく、3つ以上であってもよい。
(4)測温抵抗体390或いは500は、薄膜抵抗体に限ることなく、サーミスタ等の温度検出可能な各種の抵抗体であってもよい。
(5)測温抵抗体390或いは500に代えて、検出素子300とは別体の測温抵抗体その他の温度センサを採用してもよい。この場合、当該温度センサは、検出素子300を配置した被検出雰囲気内に配置することが望ましい。
(6)発熱抵抗体211、221(330)は、上記実施形態とは異なり、当該発熱抵抗体の温度の上昇(或いは低下)に応じて減少(或いは増大)するように抵抗値を変化させる発熱抵抗体であってもよい。この場合、上記実施形態にて述べた電圧差Vd及び電圧比Rvは、両発熱抵抗体211、221のうち抵抗値の大きい方を基準に算出するようにする。
(7)図6のステップ410における判定基準である所定の待ち時間は、0.5(秒)に限ることなく、適宜変更してもよく、要するに、両発熱抵抗体211、221をその定温度制御により各上記対応の一定温度にし得る時間であればよい。
(8)両発熱抵抗体211、221の各温度抵抗係数は、測温抵抗体390或いは500の温度抵抗係数とは、必ずしも同一でなくてもよい。
(9)上記第3実施形態において、ステップ490(図15参照)における判定基準は、Rv>1に限ることなく、Rv<1であってもよい。
(10)上記第3実施形態において、図15のフローチャートのステップ412の処理に先立ち、上記第1実施形態にて述べたフローチャート(図6参照)の両ステップ400、410と同様の処理を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明に係る可燃性ガス検出装置の第1実施形態における装置ユニットの断面図である。
【図2】上記第1実施形態における制御回路を示すブロック図である。
【図3】図1の蓋体に対する検出素子の組み付け構造を示す断面図である。
【図4】図3の検出素子の断面図である。
【図5】図3の検出素子の平面図である。
【図6】図2のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図7】上記第1実施形態における被検出雰囲気内の相対湿度と電圧比との関係を示すグラフである。
【図8】上記第1実施形態における電圧差と水素ガス濃度との関係を示す相対湿度をパラメータとしたグラフである。
【図9】上記第1実施形態における水素ガス濃度とVa(=電圧差−切片)との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態における制御回路図である。
【図11】図10のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図12】図13にて12−12線に沿う断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態における検出素子の平面図である。
【図14】当該第3実施形態における制御回路図である。
【図15】図14のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図16】上記第3実施形態における温度制御回路の出力波形を示すタイミングチャートである。
【図17】上記第3実施形態における発熱抵抗体の温度の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図18】上記第3実施形態における発熱抵抗体の端子電圧の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0154】
211、221、330…発熱抵抗体、214〜216…固定抵抗、
230、240…定温度制御回路、231…温度制御回路、280…直流電源、
250、260…演算増幅回路、270…マイクロコンピュータ、
290…アナログ切り換えスイッチ回路、300…検出素子、310…半導体基板、
311…凹部、320…絶縁層、350…内側保護層、360…外側保護層、
390、500…測温抵抗体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出雰囲気内の可燃性ガスを検出する可燃性ガス検出装置及び可燃性ガス検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の可燃性ガスの検出装置においては、下記非特許文献1にて開示された燃料電池自動車用水素ガスセンサがある。この水素ガスセンサは、互いに異なる温度に制御される両サーミスタの各検出値の差分から湿度の影響度合いを求め、湿度成分を補正して水素ガスを検出するようになっている。
【非特許文献1】Masaaki Tada、他3名、「Hydrogen Sensor for Fuel Cell Vehicles(燃料電池自動車用水素ガスセンサ)」、SAE-2003-01-1137、p7-p8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記水素ガスセンサにおいては、被検出雰囲気中の水素ガスの濃度が同じであっても、被検出雰囲気中の湿度の変動によって当該被検出雰囲気全体の熱伝導率が変動するという現象が考慮されていないため、水素ガスの検出精度が低いという不具合を招く。
【0004】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度が当該被検出雰囲気内の湿度に基づき変動することを考慮して、可燃性ガスを精度よく検出するようにした可燃性ガス検出装置及び可燃性ガス検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る可燃性ガスの検出装置は、請求項1の記載によれば、被検出雰囲気内に晒される複数の発熱抵抗体(211、221、330)を備える。
【0006】
当該可燃性ガス検出装置において、複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体(211)の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段(230、240、480)と、
被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(390)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420、430)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
電圧差算出手段による算出電圧差、湿度決定手段による決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(433、434、440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき上記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする。
【0007】
これによれば、上記通電制御状態にて生ずる2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差が電圧差として算出され、上記通電制御状態にて生ずる2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比が電圧比として決定され、被検出雰囲気内の湿度が、上記決定電圧比と上記検出環境温度との間の関係に基づき決定される。そして、上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度が上記算出電圧差、上記決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0008】
これにより、被検出雰囲気の熱伝導率が当該被検出雰囲気内の湿度に応じて変動することを考慮して、この変動をなくするように処理して可燃性ガスを検出することとなるので、この検出精度を高く確保できる。
【0009】
また、本発明に係る可燃性ガス検出装置は、請求項2の記載によれば、被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体(211、221、330)を備える。
【0010】
当該可燃性ガス検出装置において、発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段(214、215、216、231、290、481)と、
上記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(500、390)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420、430)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(433、434、440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする。
【0011】
これによれば、上記間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の差が電圧差として算出され、上記間欠的電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の比が電圧比として決定され、被検出雰囲気内の湿度が、上記決定電圧比と上記検出環境温度との間の関係に基づき決定される。そして、上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度が上記算出電圧差、上記決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0012】
このように、発熱抵抗体の数を単一にしても、上記間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる当該発熱抵抗体の各端子電圧の差及び比を電圧差及び電圧比とすることで、ガス検出装置の構成をより一層小型化するとともに当該検出素子の電力消費をより一層抑制しつつ、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0013】
また、本発明に係る可燃性ガス検出装置は、請求項3の記載によれば、
複数の凹部(311)を間隔をおいて裏面側から形成してなる半導体基板(310)と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層(320)と、この絶縁層の表面に前記各凹部に対応して形成される複数の発熱抵抗体(211、221、330)と、これら発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層の表面に形成される保護層(350、360)とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子(300)と、
複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体(211、221)の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段(230、240、480)と、
被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(390)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420)と、
通電制御手段による通電制御状態にて生ずる上記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
電圧差算出手段による算出電圧差、湿度決定手段による決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにした。
【0014】
これによれば、請求項1に記載の発明とは異なり、上記構成の検出素子を有する可燃性ガス検出装置においても、当該請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0015】
また、本発明に係る可燃性ガス検出装置は、請求項4の記載によれば、
凹部(311)を裏面側から形成してなる半導体基板(310)と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層(320)と、この絶縁層の表面に上記凹部に対応して形成される発熱抵抗体(211、221、330)と、この発熱抵抗体を覆うように絶縁層の表面に形成される保護層(350、360)とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子(300)と、
発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段(214、215、216、231、290、481)と、
上記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段(500、390)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段(420、430)と、
通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段(431)と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段(432)と、
電圧差算出手段による算出電圧差、湿度決定手段による決定湿度及び上記検出環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の上記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段(433、434、440)とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき上記可燃性ガスを検出するようにした。
【0016】
これによれば、請求項2に記載の発明とは異なり、上記構成の検出素子を有する可燃性ガス検出装置においても、当該請求項2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0017】
なお、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、湿度決定手段は、各環境温度において上記電圧比と上記湿度との間にて成立する近似直線関係に基づき、上記決定電圧比から上記湿度を決定するようにしてもよい。
【0018】
また、請求項2或いは4に記載の発明において、電圧比決定手段でもって、上記間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる発熱抵抗体の各端子電圧のうち、先行して生ずる端子電圧を、後続して生ずる端子電圧で除して得られる比を、電圧比とし、この電圧比が1よりも大きいとき(或いは小さいとき)にのみ、湿度決定手段による湿度決定を行うようにしてもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜4のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置において、
上記電圧差を独立変数とし、上記可燃性ガスの濃度を従属変数とし、上記湿度及び上記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と上記湿度との間の所定の関係を用いて上記決定湿度に基づき上記切片を決定する切片決定手段(433)と、
上記検出環境温度に基づき上記一次関数式の勾配を決定する勾配決定手段(434)とを備えて、
濃度算出手段は、上記決定湿度及び上記検出環境温度に代わる切片決定手段による決定切片及び勾配決定手段による決定勾配を共に用いて、上記算出電圧差に応じて、上記一次関数式に基づき上記可燃性ガスの濃度を算出するようにしたことを特徴とする。
【0020】
これによれば、通電制御手段による上記通電制御状態において生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差を独立変数とし、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を従属変数とし、上記湿度及び上記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式を前提とする。
【0021】
このような前提のもと、当該一次関数式の切片と上記湿度との間で成立する所定の関係を用いて、上記一次関数式の切片が上記決定湿度に基づき決定され、かつ、当該一次関数式の勾配が上記検出環境温度に基づき決定される。
【0022】
そして、上記可燃性ガスの濃度が、上記通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、上記決定切片及び上記決定勾配を用いて上記一次関数式に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0023】
これにより、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度が当該被検出雰囲気内の湿度に応じて変動することをより一層考慮して、この変動をなくするように処理して可燃性ガスを検出することとなるので、この検出精度をより一層高く確保できる。
【0024】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置において、温度検出手段は、被検出雰囲気内に配置される測温抵抗体であってその抵抗値の変化に応じて被検出雰囲気内の環境温度を検出する測温抵抗体であることを特徴とする。
【0025】
このように、温度検出手段として、被検出雰囲気内に配置される測温抵抗体を採用しても、請求項1〜5のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果を達成できる。
【0026】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項3或いは4に記載の可燃性ガス検出装置において、温度検出手段は、半導体基板の表面上に形成される薄膜抵抗体であって、
この薄膜抵抗体はその抵抗値の変化に基づき上記被検出雰囲気内の環境温度を検出する薄膜抵抗体であることを特徴とする。
【0027】
このように、温度検出手段として、半導体基板の表面上に形成されてなる薄膜抵抗体を採用したので、この薄膜抵抗体の抵抗値が、上記環境温度の変化に伴い迅速に変化し得る。従って、請求項3或いは4に記載の発明と同様の作用効果をより一層精度よく達成し得る。
【0028】
また、本発明に係る可燃性ガス検出方法では、請求項8の記載によれば、
被検出雰囲気内に晒される両発熱抵抗体(211、221、330)の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該両発熱抵抗体を通電制御し、
上記被検出雰囲気内の上記通電制御状態において生ずる両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と上記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、上記湿度及び上記環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出する。
【0029】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る可燃性ガス検出方法の提供が可能となる。
【0030】
また、本発明に係る可燃性ガス検出方法では、請求項9の記載によれば、
被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御し、
上記被検出雰囲気内の上記間欠的通電制御状態において生ずる発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と上記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、上記湿度及び上記環境温度の間の関係に基づき上記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出する。
【0031】
これによれば、請求項2に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る可燃性ガス検出方法の提供が可能となる。
【0032】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項8或いは9に記載の可燃性ガス検出方法において、
上記可燃性ガスの算出は、
上記電圧差を独立変数とし、上記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を従属変数とし、上記湿度及び上記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と上記湿度との間の所定の関係を用いて、上記決定湿度に基づき上記切片を決定し、
上記環境温度に基づき決定される上記一次関数式の勾配、上記切片及び上記電圧差を用いて、上記一次関数式に基づき上記可燃性ガスの濃度を算出することで行うようにしたことを特徴とする。
【0033】
これにより、請求項8或いは9に記載の発明の作用効果をより一層向上できる。
【0034】
なお、請求項1、2、3、4、8或いは9に記載の上記各関係または請求項5或いは10に記載の所定の関係及び一次関数式は、データとして、メモリに予め記憶されていてもよい。また、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明に係る可燃性ガス検出装置の第1実施形態を示しており、この可燃性ガス検出装置は、例えば、燃料電池から漏れる水素ガスを検出するのに用いられる。
【0036】
当該可燃性ガス検出装置は、装置ユニット100(図1参照)と、制御回路200(図2参照)とにより構成されている。装置ユニット100は、図1にて示すごとく、ケーシング110、蓋体120及びコネクタ130を備えている。ケーシング110は両ケーシング部材111、112を有しており、当該両ケーシング部材111、112は、その各開口部にて互いに嵌合されて、ケーシング110を構成している。
【0037】
ここで、ケーシング部材111は、ガス導入筒113を備えており、このガス導入筒113は、ケーシング部材111の底壁中央から外方へ円筒状に延出し、ガス導入口部114にて、外方に開口している。なお、図1にて、符号115は、Oリングを示す。このOリングは、当該可燃性ガス検出装置の取り付け箇所によっては、廃止してもよい。
【0038】
蓋体120は、図1にて示すごとく、ケーシング部材111の内側からガス導入筒113内に同軸的に嵌装されており、当該蓋体120は、図1及び図3にて示すごとく、円筒部材121を備えている。この円筒部材121は、その底壁側円筒部にて、図1にて示すごとく、ガス導入筒113の小径穴部内に同軸的に嵌装されており、当該円筒部材121は、その環状底壁122(図3参照)にて、ガス導入口部114にその内面側から着座している。なお、円筒部材121は、その環状底壁122の中空部にて、ガス導入口部114を通り外方に開口している。
【0039】
また、円筒部材121は、その基端側環状フランジ部123にて、ガス導入筒113の基端側に形成した大径穴部内にパッキン等の環状シール(図示しない)を介し接着剤でもって気密的に接着嵌装されている。なお、上述のように環状シールを介し接着剤で接着することに代えて、溶着に依ってもよい。
【0040】
また、蓋体120は、円筒部材121内に設けた撥水フィルタ124及び金網125を備えている。撥水フィルタ124は、その外周部にて、円筒部材121の環状底壁122と環板状スペーサ126との間に挟持されており、この撥水フィルタ124は、ガス導入口部114及び円筒部材の環状底壁122の中空部からスペーサ126内への水滴の浸入や粉塵の侵入を防止する。
【0041】
金網125は、その外周部にて、環板状スぺーサ126と円筒状スペーサ127の環状底壁との間に挟持されており、この金網125は、次のような役割を果たす。即ち、後述する発熱抵抗体330(図4参照)への通電に伴い当該発熱抵抗体に電流が流れて当該発熱抵抗体の温度が水素ガスの下限爆発温度を上回ることで、水素ガスがスペーサ127内で発火した場合に、金網125は、スペーサ127の内部からその外方へ逸火することを防止する。
【0042】
なお、スペーサ127は、円筒部材121の円筒部内に同軸的に圧入により嵌装されて、その環状底壁にて、金網125、環状スペーサ126及び撥水フィルタ124を、円筒部材121の環状底壁122の内面上に固定している。
【0043】
コネクタ130は、ケーシング部材111の図1にて図示右側壁に組み付けられており、このコネクタ130は、その複数のコネクタピン131(図1では、一コネクタピンのみを示す)にて、ケーシング111の右側壁を通し配線板180の配線パターン部(図示しない)に電気的に接続されている。なお、当該コネクタ130は、ケーシング部材111と一体で構成されていてもよい。
【0044】
当該装置ユニット100は、図1及び図3にて示すごとく、検出素子300、敷き板140及び取り付け板150を備えており、検出素子300は、図1及び図3にて示すごとく、敷き板140及び取り付け板150と共に、円筒部材121内に支持されている。取り付け板150は、図3にて示すごとく、その断面L字状外周部151にて、円筒部材121の環状フランジ部123内に同軸的にかつ気密的に固定されている。敷き板140は、熱伝導率の小さい材料でもって形成されており、この敷き板140は、取り付け板150の外面(スペーサ127側の面)の中央部に接着剤でもって接着されている。検出素子300は、敷き板140の外面(スペーサ127側の面)に接着剤で接着されて、スペーサ127内に露呈している。
【0045】
また、当該装置ユニット100は、図1及び図3にて示すごとく、複数本のピン状ターミナル160〜164及びヒータ170を備えており、各ターミナル160〜164は、取り付け板150に挿通されている。ヒータ170は、図1及び図3にて示すごとく、両ターミナル160、163の各先端部間に電気的に接続されており、このヒータ170は、両ターミナル160、163を介する給電により検出素子300を加熱してこの検出素子300に付着する結露や不純物を乾燥消失させる。
【0046】
特に、雰囲気温度を検出する測温抵抗体を検出素子300の表面上に設ける場合、当該測温抵抗体でもって検出する温度が、検出素子300の表面に付着した結露や不純物に起因して実際の雰囲気温度よりも低くなり、温度の検出精度の低下を招くという事態の発生を防止する効果がある。なお、検出素子300は、後述する各電極膜370(図4参照)にて、ターミナル161、162及び164の各先端部にワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
【0047】
配線板180は、ケーシング110内に設けられており、この配線板180は、その外周部にて、ケーシング部材111の開口端部に支持されている。なお、当該配線板180には、各ターミナル160〜164が、その基端部にて、嵌着されて配線板180の上記配線パターン部に電気的に接続されている。
【0048】
制御回路200は、図1にて示すごとく、ケーシング110内にて配線板180の裏面(図1にて図示下側)に実装されており、この制御回路200は、当該配線板180の上記配線パターン部を介し、コネクタ130のコネクタピン131及び各ターミナル160〜164に電気的に接続されている。
【0049】
次に、上述した検出素子300の構成につき図4及び図5を参照して説明する。検出素子300はマイクロマシニング技術を用いて製造されているもので、当該検出素子300は、図4にて示すごとく、シリコン製半導体基板310及び上下両側絶縁層320を備えている。上側絶縁層320は、半導体基板310の表面に形成されており、一方、下側絶縁層320は、半導体基板310の裏面に形成されている。なお、上側絶縁層320は、半導体基板310の表面に形成した酸化シリコン膜321と、この酸化シリコン膜321上に積層した窒化シリコン膜322でもって構成されている。また、下側絶縁層320は、半導体基板310の裏面に形成した酸化シリコン膜321と、この酸化シリコン膜321上に積層した窒化シリコン膜322でもって構成されている。
【0050】
ここで、半導体基板310には、図4にて図示左右両側凹部311が、上側絶縁層320の裏面側において、間隔をおいて形成されている。また、下側絶縁層320は、各凹部311に対応する部位にて、それぞれ除去されて、各凹部311の開口部として形成されている。これにより、上側絶縁層320は、その裏面のうち各凹部311に対する各対応裏面部にて、当該各凹部311の開口部を通して外方に露呈している。なお、半導体基板310は、各凹部311以外の部位にて基板部312を構成する。
【0051】
また、検出素子300は、図4及び図5にて示すごとく、左右両側発熱抵抗体330並びに左側、中央側及び右側の各配線膜340を備えている。左側発熱抵抗体330は、上側絶縁層320の表面のうち左側凹部311に対応する部位上に渦巻き状に形成されており、一方、右側発熱抵抗体330は、上側絶縁層320の表面のうち右側凹部311に対応する部位上に渦巻き状に形成されている。本第1実施形態において、両発熱抵抗体330は、後述する各配線膜340と共に、白金抵抗材料でもって形成されている。
【0052】
左側配線膜340は、図4にて示すごとく、上側絶縁層320の表面の左側部上において、半導体基板310の基板部312に対応して位置し、図5にて示すごとく、左側発熱抵抗体330の一端と一体となるように形成されている。中央側配線膜340は、上側絶縁層320の表面の中央部上にて、半導体基板310の基板部312に対応して位置し、左側発熱抵抗体330の他端及び右側発熱抵抗体330の一端と一体となるように形成されている。また、右側配線膜340は、上側絶縁層320の表面の右側部上にて、半導体基板310の基板部312に対応して位置し、右側発熱抵抗体330の他端と一体となるように形成されている。
【0053】
また、当該検出素子300は、図4及び図5にて示すごとく、内側保護層350及び外側保護層360並びに左側、中央側及び右側の各電極膜370を備えており、内側保護層350は、各配線膜340及び各発熱抵抗体330を覆うように、上側絶縁層320の表面上に形成されている。また、外側保護層360は、内側保護層350上に積層状に形成されている。
【0054】
ここで、内側保護層350及び外側保護層360には、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール361が、内側保護層350及び外側保護層360のうち左側、中央側及び右側の各配線膜340に対応する各部位に形成されている。これにより、左側、中央側及び右側の各配線膜340は、その表面にて、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール361を通り外方に露呈している。左側、中央側及び右側の各電極膜370は、左側、中央側及び右側の各コンタクトホール361を通して左側、中央側及び右側の各配線膜340上に形成されている。
【0055】
本第1実施形態では、検出素子300において、左側発熱抵抗体330、左側及び中央側の各配線膜340並びに左側及び中央側の各電極膜370が、主として、左側熱伝導式ガス検出部380を構成し、右側発熱抵抗体330、中央側及び右側の各配線膜340並びに中央側及び右側の各電極膜370が、主として、右側熱伝導式ガス検出部380を構成する。
【0056】
また、当該検出素子300は、図5にて示すごとく、測温抵抗体390を備えており、この測温抵抗体390は、白金(Pt)を含む測温抵抗材料でもって、図5にて図示上側において、上側絶縁層320と内側保護層350との間に薄膜抵抗体として形成されている。これにより、当該測温抵抗体390は、当該ガス検出装置を配置した被検出雰囲気の温度(以下、環境温度ともいう)を検出する。本第1実施形態では、測温抵抗体390の温度抵抗係数は両発熱抵抗体330の各温度抵抗係数とほぼ同一となっている。
【0057】
また、各電極膜391は、内側保護層350及び外側保護層360に形成した各コンタクトホール(図示しない)内にて測温抵抗体390の左右両端部上に形成されている。なお、この測温抵抗体390は、両電極膜391を介しターミナル(図示しない)を介し配線板180の上記配線パターン部に接続されている。
【0058】
次に、上述した制御回路200の構成について図2を参照して説明する。制御回路200は、両ブリッジ回路210、220を備えており、ブリッジ回路210は、図2にて示すごとく、ガス検出用発熱抵抗体211及び各固定抵抗212、213、214でもって、ホイートストーンブリッジ回路を形成するように構成されている。
【0059】
このブリッジ回路210において、ガス検出用発熱抵抗体211は、検出素子300の左側熱伝導式ガス検出部380を構成する左側発熱抵抗体330でもって構成されている。ここで、発熱抵抗体211は、その一端にて、接地されており、当該発熱抵抗体211の他端は、固定抵抗212、固定抵抗213及び固定抵抗214を介し接地されている。
【0060】
しかして、当該ブリッジ回路210は、発熱抵抗体211及び固定抵抗214の共通端子(一側電源端子)及び両固定抵抗212、213の共通端子(他側電源端子)の間に、定温度制御回路230から制御電圧を受けて作動する。そして、この作動のもと、当該ブリッジ回路210は、ガス検出用発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき発熱抵抗体211及び固定抵抗212の共通端子(ブリッジ回路210の一側出力端子)と両固定抵抗213、214の共通端子(ブリッジ回路210の他側出力端子)との間に生ずる電位差(水素ガスの濃度を表す)を出力する。
【0061】
定温度制御回路230は、演算増幅回路250の出力(後述する)に応じて、ガス検出用発熱抵抗体211の抵抗値を一定温度(例えば、150(℃))に対応する値に維持するように、内蔵直流電源(図示しない)の出力電圧に基づき、ブリッジ回路210への上記制御電圧を形成する。なお、発熱抵抗体211(330)の抵抗値は上記制御電圧或いは当該発熱抵抗体211の温度の上昇(又は低下)に応じて増大(又は減少)する。
【0062】
また、ブリッジ回路220は、図2にて示すごとく、ガス検出用発熱抵抗体221及び各固定抵抗222、223、224でもって、ホイートストーンブリッジ回路を形成するように構成されている。このブリッジ回路220において、ガス検出用発熱抵抗体221は、検出素子300の右側熱伝導式ガス検出部380を構成する右側発熱抵抗体330でもって構成されている。ここで、発熱抵抗体221は、その一端にて、接地されており、当該発熱抵抗体221の他端は、固定抵抗222、固定抵抗223及び固定抵抗224を介し接地されている。
【0063】
しかして、ブリッジ回路220は、発熱抵抗体221及び固定抵抗224の共通端子(一側電源端子)及び両固定抵抗222、223の共通端子(他側電源端子)の間に、定温度制御回路240から制御電圧を受けて作動する。そして、この作動のもと、当該ブリッジ回路220は、ガス検出用発熱抵抗体221の抵抗値の変化に基づき発熱抵抗体221及び固定抵抗222の共通端子(ブリッジ回路220の一側出力端子)と両固定抵抗223、224の共通端子(ブリッジ回路220の他側出力端子)との間に生ずる電位差(水素ガス濃度を表す)を出力する。
【0064】
定温度制御回路240は、演算増幅回路260の出力(後述する)に応じて、ガス検出用発熱抵抗体221の抵抗値を一定温度(例えば、330(℃))に対応する値に維持するように、内蔵直流電源(図示しない)の出力電圧に基づき、ブリッジ回路220への上記制御電圧を形成する。なお、発熱抵抗体221の抵抗値は、定温度制御回路240からの制御電圧或いは当該発熱抵抗体211の温度の上昇(又は低下)に応じて増大(又は減少)する。また、両定温度制御回路230、240の各制御電圧の出力は、電源スイッチ281のオンに同期して開始されるようになっている。
【0065】
演算増幅回路250は、ブリッジ回路210の両出力端子間に生ずる電位差を増幅して増幅電位差を定温度制御回路230及びマイクロコンピュータ270に出力する。演算増幅回路260は、ブリッジ回路220の両出力端子間に生ずる電位差を増幅して増幅電位差を定温度制御回路240及びマイクロコンピュータ270に出力する。
【0066】
マイクロコンピュータ270は、直流電源280から電源スイッチ281を介し給電されて作動し、図6にて示すフローチャートに従いコンピュータプログラムを実行する。この実行中において、マイクロコンピュータ270は、測温抵抗体390の検出環境温度や両演算増幅回路250、260の各出力電位差に基づき、水素ガスの濃度の算出に要する各種の処理を行う。なお、上記コンピュータプログラムは、マイクロコンピュータ270のROMに当該マイクロコンピュータにより読み出し可能に記憶されている。
【0067】
以上のように構成した本第1実施形態において、当該可燃性ガス検出装置の装置ユニット100が被検出雰囲気内に配置されているものとする。このような状態にて、上記被検出雰囲気内に漏洩する水素ガスが、装置ユニット100のガス導入筒113内にそのガス導入口部114から流入すると、当該水素ガスは、撥水フィルタ124及び金網125を通り円筒状スペーサ127内に流入し、然る後、検出素子300に到達する。これに伴い、当該水素ガスが、検出素子300に接触するようにして外側保護層360の表面付近にて流動する。
【0068】
このような状態において、電源スイッチ281がオンされ、マイクロコンピュータ270が直流電源280から給電されると、当該マイクロコンピュータ270は、図6のフローチャートに従い上記コンピュータプログラムの実行を開始する。この開始に伴い、ステップ400において、マイクロコンピュータ270に内蔵のソフトタイマーの起動処理がなされる。従って、当該ソフトタイマーがそのリセット起動により計時を開始する。
【0069】
ついで、上記ソフトタイマーの計時時間が所定の待ち時間を経過するまで、ステップ410においてNOとの判定が繰り返される。なお、上記所定の待ち時間は、定温度制御回路230による制御のもと発熱抵抗体211の温度が上記一定温度(150(℃))になるとともに定温度制御回路240による制御のもと発熱抵抗体221が上記一定温度(330(℃))になるに要する時間(例えば、0.5(秒))に設定されている。
【0070】
また、電源スイッチ281のオンに同期して、両定温度制御回路230、240による各制御電圧の出力が開始される。これに伴い、定温度制御回路230がブリッジ回路210の両電源端子間に制御電圧を出力すると、当該ブリッジ回路210が当該制御電圧でもって通電される。そして、このブリッジ回路210の両出力端子間から出力される電位差が演算増幅回路250により増幅されて定温度制御回路230にフィードバックされる。従って、ステップ410におけるNOとの判定の繰り返し中において、発熱抵抗体211の抵抗値が上記一定温度(150(℃))に対応する値を維持するように、当該発熱抵抗体211が定温度制御回路230により通電制御される。
【0071】
また、定温度制御回路240がブリッジ回路220の両電源端子間に制御電圧を出力すると、当該ブリッジ回路220が当該制御電圧でもって通電される。そして、このブリッジ回路220の両出力端子間から出力される電位差が演算増幅回路260により増幅されて定温度制御回路240にフィードバックされる。従って、ステップ410におけるNOとの判定の繰り返し中において、発熱抵抗体221の抵抗値が上記一定温度(330(℃))に対応する値を維持するように、当該発熱抵抗体221が定温度制御回路240により通電制御される。
【0072】
然る後、上記ソフトタイマーの計時時間が上記所定の待ち時間を経過すると、ステップ410においてYESと判定され、次のステップ411において、変数N=0とクリアされる。ついで、ステップ420において、両演算増幅回路250、260の各増幅電位差及び測温抵抗体390により検出される環境温度(以下、環境温度Tという)の入力処理がなされる。
【0073】
ついで、ステップ430において、電圧差Vdの算出処理がなされる。ここで、電圧差Vdは、発熱抵抗体221の端子電圧と発熱抵抗体211の端子電圧との差をいう。このステップ430での算出処理では、電圧差Vdが、演算増幅回路260からの増幅電位差の演算増幅回路250からの増幅電位差に対する差に基づき算出される。
【0074】
然る後、ステップ431において、電圧比Rvの算出処理がなされる。ここで、電圧比Rvは、発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧に対する比をいう。このステップ431の処理では、電圧比Rvが、演算増幅回路260からの増幅電位差の演算増幅回路250からの増幅電位差に対する比に基づき算出される。
【0075】
このようにして電圧比の算出が終了すると、次のステップ432において、上記被検出雰囲気内の相対湿度Hの算出処理がなされる。この算出処理では、各環境温度における相対湿度Hが、図7にて示す相対湿度Hと電圧比Rvとの近似直線関係を表す特性(以下、相対湿度−電圧比特性ともいう)に基づき電圧比Rvから算出される。
【0076】
本実施形態において、上記近似関係は、電圧比が被検出雰囲気内の相対湿度の増大及び環境温度の上昇(或いは、被検出雰囲気内の相対湿度の減少及び環境温度の低下)に応じて増大(或いは減少)する関係をいう。換言すれば、上記近似関係は、被検出雰囲気内の相対湿度が、電圧比の増大及び環境温度の上昇(或いは、電圧比の減少及び環境温度の低下)に応じて増大(或いは減少)する関係をいう。但し、上記相対湿度−電圧比特性は、後述する一次関数式及びマップデータと共に、データとしてマイクロコンピュータ270のROMに予め記憶されている。なお、当該データの記憶は、上記ROMに限ることなく、適宜なメモリでおこなってもよい。
【0077】
ここで、上記相対湿度−電圧比特性の導入根拠について説明する。検出素子300を被検出雰囲気内に配置して、当該被検出雰囲気に含まれる水素ガスの濃度D(以下、水素ガス濃度Dともいう)が、当該検出素子300の右側発熱抵抗体330の端子電圧の左側発熱抵抗体330の端子電圧に対する電圧差Vd(以下、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdともいう)との間においてどのような関係を有するかにつき、当該被検出雰囲気内の相対湿度Hをパラメータとして、測定してみた。但し、上記被検出雰囲気の環境温度Tは、例えば80(℃)であるものとする。また、左側発熱抵抗体330の温度は150(℃)に維持されており、一方、右側発熱抵抗体330の温度は330(℃)に維持されているものとする。
【0078】
上記測定の結果、複数のグラフが、図8にて例示するように、相対湿度Hをパラメータとして得られた。但し、図8において、グラフ1は、相対湿度H=0(%RH)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係を示す。また、グラフ2は、相対湿度H=45(%RH)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係を示し、グラフ3は、相対湿度H=100(%RH)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係を示す。なお、このような関係は、H=0(%RH)、45(%RH)及び100(%RH)以外の相対湿度においても実質的に同様に得られる。
【0079】
従って、図8の各グラフによれば、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係は、環境温度T=80(℃)のもとで、相対湿度Hをパラメータとして、図8の直交座標面の縦軸に沿い平行移動する直線的グラフでもって表されることが分かる。換言すれば、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdは、相対湿度Hをパラメータとするものの、水素ガス濃度Dと正比例の関係にあることが分かる。
【0080】
ここで、図8では、各グラフの勾配は、互いに同一であって、主として、上記被検出雰囲気内の環境温度Tによって決まる。よって、この勾配をAとすれば、各グラフは、一次関数式Vd=A・D+Bによって表せる。但し、Vdは、当該一次関数式の独立変数であり、Dは当該一次関数式の従属変数であり、Bは、当該一次関数式の切片を示す。この切片Bは、上記一次関数式の図8の直交座標面の縦軸との交点、即ち、D=0(%)のときの両発熱抵抗体330間の電圧差を表す。
【0081】
また、図8の各グラフを前提に、上記被検出雰囲気内の相対湿度Hが、左側発熱抵抗体330の端子電圧の右側発熱抵抗体330の端子電圧に対する電圧比Rv(以下、両発熱抵抗体330の電圧比Rvともいう)との間においてどのような関係を有するかにつき、測定してみた。この測定の結果、図7にて示すグラフ4が得られた。このグラフ4によれば、相対湿度Hは両発熱抵抗体330の電圧比Rvに対し近似直線関係を有することが分かる。
【0082】
そこで、図7のグラフで特定される相対湿度Hと両発熱抵抗体330の電圧比Rvとの関係が、図8の各グラフで特定される両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係に対しどのような関係を有するかについて検討してみた。
【0083】
図8によれば、両発熱抵抗体330間の電圧差Vdと水素ガス濃度Dとの関係は、相対湿度Hをパラメータする。従って、各グラフ1、2、3の図8の縦軸との交点である切片Bは、相対湿度Hと一定の関係にあることを利用して相対湿度Hから決まる。ここで、切片Bと相対湿度Hとは、3次関数的な関係にあり簡単には導出できないが、切片Bと相対湿度Hとの関係が、実測により、マップデータとして得られる。
【0084】
また、相対湿度Hは、図7のグラフ4から分かるように、環境温度T及び両発熱抵抗体330の電圧比Rvによって一義的に決まる。よって、この決定相対湿度Hに対応する切片Bは、上記マップデータから一義的に決まることが分かる。
【0085】
以上より、一次関数式Vd=A・D+Bから変換した式、D=(Vd−B)/Aを用いれば、水素ガス濃度Dの算出が可能となる。ここで、Va=(Vd−B)と表せば、DはVaと正比例の関係となるから、Dは、D=Va/AからVaに基づき算出されて、図9にて示すグラフが得られる。そこで、図7のグラフで特定される上記相対湿度−電圧比特性を導入した。
【0086】
上述のようにステップ430及びステップ431において電圧比Rv及び電圧差Vdの算出が終了すると、ステップ432において、相対湿度Hの算出処理がなされる。この算出処理では、相対湿度Hが図7の相対湿度−電圧比特性(上記ROMに記憶済み)を用いて電圧比Rvに基づき算出される。
【0087】
ついで、ステップ433において、切片Bが、上記マップデータ(上記ROMに記憶済み)に基づきステップ432における算出相対湿度Hから決定される。そして、ステップ434において、勾配Aが、ステップ420における環境温度Tに基づき算出される。但し、勾配Aは環境温度と一定の関係を有する。なお、勾配Aは、好ましくは、検出ガスの種類をも考慮して算出するとよい。
【0088】
然る後、ステップ440において、水素ガスの濃度Dが、一次関数式Vd=A・D+Bから変換した式、D=(Vd−B)/Aを用いて、電圧差Vd、勾配A及び切片Bに基づき算出される。なお、上記変換式D=(Vd−B)/Aは、マイクロコンピュータ270のROMに予め記憶されている。
【0089】
ついで、ステップ450において、N=N+1=1と加算更新され、ステップ460において、変数N=所定回数Noか否かが判定される。現段階では、N=1であることから、ステップ460において、N=1<No(=10)に基づき、NOと判定され、コンピュータプログラムがステップ420に戻る。
【0090】
以後、ステップ450における変数Nの加算更新値がN=Noとなるまで、ステップ420〜ステップ460を通る循環処理が繰り返される。然る後、N=Noとなり、ステップ460における判定がYESになると、次のステップ470において、ステップ440にて算出済みの全ての水素ガス濃度の平均値が算出され検出水素ガス濃度として出力される。
【0091】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、定温度制御回路230、240による上述の通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体211の端子電圧の発熱抵抗体221の端子電圧に対する電圧差Vdを独立変数とし、被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度Dを従属変数とし、相対湿度H及び環境温度Tをパラメータとして成立する一次関数式Vd=A・D+Bを前提とする。
【0092】
そして、当該一次関数式の切片Bと相対湿度Hとの間で成立する3次関数的な関係を表す上記マップデータに加え、定温度制御回路230、240による通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧に対する電圧比Rvと被検出雰囲気内の相対湿度Hとの間で環境温度Tにおいて成立する近似直線関係(図7参照)をも利用して、相対湿度Hが当該近似直線関係から上記決定電圧比Rvに基づき算出され、上記一次関数式の切片Bが上記マップデータから当該決定相対湿度Hに基づき決定され、かつ、当該一次関数式の勾配Aが上記環境温度Tに基づき算出される。
【0093】
そして、上記可燃性ガスの濃度Dが、定温度制御回路230、240による通電制御状態にて生ずる発熱抵抗体221の端子電圧の発熱抵抗体211の端子電圧との電圧差Vd、上記決定切片B及び上記算出勾配Aを用いて上記一次関数式に基づき算出され、この算出濃度に基づき可燃性ガスが検出される。
【0094】
以上より、被検出雰囲気の熱伝導率が当該被検出雰囲気内の相対湿度に応じて変動することを考慮して、この変動の影響をなくするように処理して可燃性ガスを検出することとなり、その結果、この検出精度を高く確保できる。ここで、両発熱抵抗体211、221の温度抵抗係数は上述のごとく測温抵抗体390の温度抵抗係数とほぼ同一であるから、両発熱抵抗体211、221の各抵抗値及び測温抵抗体390の抵抗値が、共通の上記環境温度においてほぼ同様の変化特性を示す。従って、可燃性ガス濃度の算出や検出がより精度よくなされ得る。また、測温抵抗体390は薄膜抵抗体であるため、この薄膜抵抗体の抵抗値が環境温度の変化に伴い迅速に変化し得る。
(第2実施形態)
図10及び図11は、本発明に係る可燃性ガス検出装置の第2実施形態を示している。この第2実施形態では、上記第1実施形態において、マイクロコンピュータ270が、図10から分かるように、定温度制御回路230に代えて、この定温度制御回路230の出力制御電圧をブリッジ回路210に直接出力するとともに、定温度制御回路240に代えて、この定温度制御回路240の出力制御電圧をブリッジ回路220に直接出力するようにした構成となっている。これに伴い、本第2実施形態では、両定温度制御回路230、240が廃止されている。
【0095】
また、本第2実施形態では、マイクロコンピュータ270が、図6のフローチャートに代えて、図11にて示すフローチャートに従い、上記コンピュータプログラムを実行するように変更されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0096】
このように構成した本第2実施形態において、上記第1実施形態にて述べたと同様に当該可燃性ガス検出装置が上記被検出雰囲気内に配置されているものとする。
【0097】
このような状態において、電源スイッチ281がオンされ、マイクロコンピュータ270が直流電源280から給電されると、当該マイクロコンピュータ270は、図11のフローチャートに従い上記コンピュータプログラムの実行を開始する。この開始に伴い、ステップ480において、両発熱抵抗体211、221の定温度制御処理がなされる。
【0098】
この定温度制御処理では、制御電圧が、演算増幅回路250の出力に応じて、ガス検出用発熱抵抗体211の抵抗値を一定温度(例えば、150(℃))に対応する値に維持するように、直流電源280の出力電圧に基づき形成されてブリッジ回路210に出力される。また、他の制御電圧が、演算増幅回路260の出力に応じて、ガス検出用発熱抵抗体221の抵抗値を一定温度(例えば、330(℃))に対応する値に維持するように、直流電源280の出力電圧に基づき形成されてブリッジ回路220に出力される。
【0099】
これにより、発熱抵抗体211が上記一定温度(例えば、150(℃))に維持されるとともに、発熱抵抗体221が上記一定温度(例えば、330(℃))に維持される。
【0100】
このような状態にて、以下のステップ411以後の処理が上記第1実施形態と同様になされる。その結果、上記第1実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
(第3実施形態)
図12〜図18は、本発明に係る可燃性ガス検出装置の第3実施形態を示している。この第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた検出素子300(図4及び図5参照)において、右側発熱抵抗体330に代えて、測温抵抗体500を採用した構成となっている(図12及び図13参照)。これに伴い、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた測温抵抗体390は廃止されている。
【0101】
測温抵抗体500は、上記第1実施形態にて述べた上側絶縁層320の表面のうち右側凹部311に対応する部位上に、白金(Pt)を含む測温抵抗材料でもって、蛇行状に形成されている。これにより、当該測温抵抗体500は、上記第1実施形態にて述べた測温抵抗体390と同様に、当該ガス検出装置を配置した被検出雰囲気の環境温度を検出する。
【0102】
ここで、当該測温抵抗体500は、その両端にて、上記第1実施形態にて述べた中央側及び右側の両配線膜340とそれぞれ一体となるように形成されている。なお、本第3実施形態では、測温抵抗体500の温度抵抗係数は上記第1実施形態にて述べた左側発熱抵抗体330の温度抵抗係数とほぼ同一となっている。
【0103】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べた制御回路200に代えて、図14にて示す制御回路が採用されている。この制御回路は、上記第1実施形態にて述べた定温度制御回路230に代えて、温度制御回路231を採用するとともに、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路220、定温度制御回路240、演算増幅回路260を廃止した構成となっている。
【0104】
温度制御回路231は、マイクロコンピュータ270による制御のもと、所定のパルス周期にてパルス状の制御電圧(図16参照)を発生するように構成されている。ここで、当該制御電圧は、上記パルス周期の前半(例えば、図16にてt=t0〜t1参照)にて、ローレベルL(>0)となり、上記パルス周期の後半(例えば、図16にてt=t1〜t2参照)にて、ハイレベルH(>L)となるように発生される。なお、当該パルス周期は、例えば、20(秒)であって、このパルス周期の前半及び後半は、それぞれ、10(秒)である。また、上記制御電圧のレベルがローレベルL(>0)以上であるのは、後述のように発熱抵抗体211を常時通電状態におくためである。このことは、発熱抵抗体211の断線や短絡等の故障検知を容易にすることに役立つ。
【0105】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたマイクロコンピュータ270が、図6のフローチャートに代えて、図15にて示すフローチャートに従い、上記コンピュータプログラムを実行するように変更されている。ここで、図15のフローチャートは、上記第2実施形態にて述べたフローチャート(図11参照)を変更したものである。
【0106】
また、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路210(図2参照)において、図14にて示すごとく、両固定抵抗215、216及びアナログ切り換えスイッチ290を付加的に採用した構成が採用されている。
【0107】
アナログ切り換えスイッチ290は、図14にて示すごとく、可動接点291と、この可動接点291を選択的に切り換え投入する各固定接点292、293及び294とにより構成されている。ここで、可動接点291は、上記第1実施形態にて述べた固定抵抗213、固定抵抗212及び固定抵抗211を介し接地されている。固定接点292は、固定抵抗214を介し接地されている。また、固定接点293は固定抵抗215を介し接地されるとともに、固定接点294は固定抵抗216を介し接地されている。
【0108】
しかして、当該アナログ切り換えスイッチ290は、上記第1実施形態にて述べたマイクロコンピュータ270による制御のもと、上記制御電圧のレベル変化に同期して可動接点291を各固定接点292、293及び294のいずれかに切り換え投入する。なお、以下、可動接点291の固定接点292への投入状態を第1投入状態といい、可動接点291の固定接点293への投入状態を第2投入状態といい、可動接点291の固定接点294への投入状態を第3投入状態という。
【0109】
ここで、上記制御電圧がローレベルLにあるときアナログ切り換えスイッチ290は第1投入状態になるようにマイクロコンピュータ270により切り換え制御される。これに伴い、ブリッジ回路210において、各固定抵抗214〜216のうち固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続される。
【0110】
上記制御電圧がローレベルLからハイレベルHになるとアナログ切り換えスイッチ290は第2及び第3の投入状態のいずれかに切り換わるようにマイクロコンピュータ270により制御される。これに伴い、ブリッジ回路210において、両固定抵抗215、216のいずれかが固定抵抗213に直列接続される。
【0111】
本第3実施形態では、ブリッジ回路210において、各固定抵抗214〜216の抵抗値は次のように設定されている。即ち、上記制御電圧のローレベル状態にて固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続されているとき、発熱抵抗体211の温度(以下、抵抗体温度Cともいう)をC=C1(図17参照)に維持する電流(以下、電流I1ともいう)を発熱抵抗体211に流すように、固定抵抗214の抵抗値(以下、抵抗値R1ともいう)が設定されている。
【0112】
また、上記制御電圧のハイレベル状態にて固定抵抗215が固定抵抗213に直列接続されているとき、抵抗体温度CをC=C2(図17参照)に維持する電流(以下、電流I2ともいう)を発熱抵抗体211に流すように、固定抵抗215の抵抗値(以下、抵抗値R2ともいう)が設定されている。
【0113】
また、上記制御電圧のハイレベル状態にて固定抵抗216が固定抵抗213に直列接続されているとき、抵抗体温度CをC=C3(図17参照)に維持する電流(以下、電流I3ともいう)を発熱抵抗体211に流すように、固定抵抗216の抵抗値(以下、抵抗値R3ともいう)が設定されている。
【0114】
ここで、各固定抵抗214〜216の抵抗値は、R1<R3<R2という関係を有する。従って、抵抗体温度Cは、図17にて示すごとく、C1<C3<C2という関係を有する。
【0115】
また、抵抗体温度C=C1は、100(℃)よりも高い。これは、上述のように制御電圧のレベルをローレベルL(>0)以上とすることで発熱抵抗体211に常時通電することにより、発熱抵抗体211の温度を100(℃)よりも高く維持し、当該発熱抵抗体211に対する結露水等の水分の付着を未然に防止するためである。なお、当該防止は、発熱抵抗体211の温度上昇を円滑にするのに役立つ。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0116】
このように構成した本第3実施形態において、上記第1実施形態にて述べたと同様に当該可燃性ガス検出装置が上記被検出雰囲気内に配置されているものとする。
【0117】
このような状態において、電源スイッチ281がオンされ、マイクロコンピュータ270が直流電源280から給電されると、当該マイクロコンピュータ270は、図15のフローチャートに従い上記コンピュータプログラムの実行を開始する。この開始に伴い、ステップ412において、変数N=0とクリアされる。このとき、時間t=t0であるとする。
【0118】
ついで、両ステップ481、ステップ413の循環処理がなされる。即ち、ステップ413では、温度周期τの経過か否かが判定される。本第3実施形態では、温度周期τは、当該制御電圧のパルス周期の2倍(例えば、t=t0〜t4)に相当する。しかして、温度周期τの経過までは、ステップ413でNOとの判定が繰り返されるため、上述のように両ステップ481、413の循環処理がなされる。
【0119】
このような循環処理中、ステップ481において、本第3実施形態におけるブリッジ回路210の発熱抵抗体211の温度制御処理がなされる。具体的には、温度制御回路231が、マイクロコンピュータ270により制御されて、上記パルス周期にて制御電圧をパルス状に発生する。ここで、当該制御電圧は、t=t0〜t1にてローレベルLを維持し、t=t1〜t2にてハイレベルHを維持し、t=t2〜t3にてローレベルLを維持し、t=t3〜t4にてハイレベルHを維持するように変化する。
【0120】
また、アナログ切り換えスイッチ290は、マイクロコンピュータ270による制御のもと、当該制御電圧のレベル変化に同期して、可動接点291を各固定接点292〜294のいずれかに切り換え投入する。詳細には、アナログ切り換えスイッチ290は、時間t=t0にて第1投入状態になり、t=t1にて第2投入状態になり、t=t2にて第1投入状態になり、t=t3にて第3投入状態になり、t=t4にて第1投入状態になる。
【0121】
しかして、上述のように、t=t0にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210において固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する。
【0122】
ついで、上述のように、時間t=t1にて、アナログ切り換えスイッチ290が第2投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗215が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I2が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C2に維持する。
【0123】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、215の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗215の抵抗値R2及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V1(図18にてt=t1〜t2参照)を出力する。すると、この電位差V1は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA1としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される増幅電位差VA1は、次のt=t2〜t3の間にて当該マイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。
【0124】
然る後、上述のように、時間t=t2にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗214が固定抵抗213に再び直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する。
【0125】
ついで、上述のように、時間t=t3にて、アナログ切り換えスイッチ290が第3投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗216が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I3が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C3に維持する。
【0126】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧が時間t=t3にてハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、216の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗216の抵抗値R3及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V2(図18にてt=t3〜t4参照)を出力する。すると、この電位差V2は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA2としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される演算増幅電圧VA2は、t=t4〜t5の間にてマイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。現段階では、図18にて示すごとく、電位差V1>電位差V2であることから、増幅電位差VA1>増幅電位差VA2である。
【0127】
然る後、温度周期τの経過に伴いステップ413における判定がYESになると、次のステップ420において、両増幅電位差の読み出し処理及び環境温度Tの入力処理がなされる。
【0128】
この読み出し処理及び入力処理では、上記第1実施形態にて述べた両演算増幅回路250、260からの各増幅電位差に代えて、上述のようにステップ481でマイクロコンピュータ270のRAMに記憶済みの演算増幅回路250からの両増幅電位差VA1、VA2が読み出されるとともに、測温抵抗体500により検出される環境温度Tがマイクロコンピュータ270に入力される。
【0129】
ついで、ステップ430において、電圧差Vdの算出処理がなされる。この算出処理では、上記第1実施形態にて述べた両演算増幅回路250、260からの各増幅電位差の差に代えて、ステップ420で読み出された両増幅電位差VA1、VA2の差(VA1−VA2)が算出される。
【0130】
このようにしてステップ430での処理が終了すると、ステップ431において、電圧比Rvの決定処理がなされる。この決定処理では、上記第1実施形態にて述べた両演算増幅回路250、260からの各増幅電位差の比に代えて、増幅電位差VA1の増幅電位差VA2に対する比(VA1/VA2)が電圧比Rvとして算出される。
【0131】
すると、次のステップ490において、Rv>1が成立するか否かが判定される。現段階では、上述のごとく、VA1>VA2であることから、Rv>1が成立する。従って、ステップ490における判定がYESとなる。なお、Rv≦1が成立する場合には、ステップ481以後の処理が再びなされる。
【0132】
上述のようにステップ490におけるYESとの判定に伴い、ステップ432以後の処理が上記第1実施形態と同様になされる。そして、ステップ460における判定がYESとなるまで、ステップ481以後の処理が、t=t4〜t8以後にて、上述と同様になされる。
【0133】
即ち、温度制御回路231からの制御電圧は、t=t4〜t5にてローレベルLを維持し、t=t5〜t6にてハイレベルHを維持し、t=t6〜t7にてローレベルLを維持し、t=t7〜t8にてハイレベルHを維持するように変化する。
【0134】
また、アナログ切り換えスイッチ290は、マイクロコンピュータ270による制御のもと、当該制御電圧のレベル変化に同期して、時間t=t4にて第1投入状態になり、t=t5にて第2投入状態になり、t=t6にて第1投入状態になり、t=t7にて第3投入状態になり、t=t8にて第1投入状態になる。
【0135】
しかして、上述のように、t=t4にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210の固定抵抗214が固定抵抗213に直列接続され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する(図17参照)。
【0136】
ついで、上述のように、時間t=t5にて、アナログ切り換えスイッチ290が第2投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗215が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I2が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C2に維持する(図17参照)。
【0137】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、215の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗215の抵抗値R2及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V3(図18にてt=t5〜t6参照)を出力する。すると、この電位差V3は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA3としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される増幅電位差VA3は、次のt=t6〜t7の間にて当該マイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。
【0138】
然る後、上述のように、時間t=t6にて、アナログ切り換えスイッチ290が第1投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗214が固定抵抗213に再び直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がローレベルLにてブリッジ回路210に出力され、電流I1が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C1に維持する(図17参照)。
【0139】
ついで、上述のように、時間t=t7にて、アナログ切り換えスイッチ290が第3投入状態になり、ブリッジ回路210において固定抵抗216が固定抵抗213に直列接続されると、温度制御回路231からの制御電圧がハイレベルHにてブリッジ回路210に出力され、電流I3が発熱抵抗体211に流れて当該発熱抵抗体の温度をC=C3に維持する(図17参照)。
【0140】
ここで、上述のように、温度制御回路231からの制御電圧が時間t=t7にてハイレベルHにてブリッジ回路210に出力されると、ブリッジ回路210は、両固定抵抗213、216の共通端子と固定抵抗212及び発熱抵抗体211の共通端子との間から、固定抵抗216の抵抗値R3及び発熱抵抗体211の抵抗値の変化に基づき電位差V1(図18にてt=t7〜t8参照)を出力する。すると、この電位差V1は、演算増幅回路250により増幅されて増幅電位差VA1としてマイクロコンピュータ270に出力される。このようにマイクロコンピュータ270に出力される演算増幅電圧VA1は、t=t8〜t9の間にてマイクロコンピュータ270のRAMに記憶される。現段階では、図18にて示すごとく、電位差V3>電位差V1であることから、増幅電位差VA3>増幅電位差VA1である。
【0141】
しかして、t=t4〜t8に対応する温度周期τの経過に伴いステップ413においてYESとの判定がなされると、ステップ420において、上述のようにステップ481でマイクロコンピュータ270のRAMに記憶済みの演算増幅回路250からの両増幅電位差VA3、VA1が読み出されるとともに、測温抵抗体500により検出される環境温度Tがマイクロコンピュータ270に入力される。ついで、ステップ430において、ステップ420で読み出された両増幅電位差VA3、VA1の差(VA3−VA1)が算出される。然る後、ステップ431において、増幅電位差VA3の増幅電位差VA1に対する比(VA3/VA1)が電圧比Rvとして算出される。
【0142】
しかして、現段階では、上述のごとく、VA3>VA1であることから、Rv>1が成立することから、ステップ490における判定がYESとなる。これに伴い、ステップ432以後の処理が上述と同様になされる。
【0143】
以上説明したように、本第3実施形態では、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路220、定温度制御回路240及び演算増幅回路260を廃止した上で、ブリッジ回路210として、上記第1実施形態にて述べたブリッジ回路210において上述のようにアナログ切り換えスイッチ290及び両固定抵抗215、216を付加した構成を採用し、温度制御回路231を上記第1実施形態にて述べた定温度制御回路230に代えて採用した。そして、本第3実施形態にいうブリッジ回路210及び温度制御回路231をマイクロコンピュータ270でもって図15のフローチャートに従い上述のように制御することで、温度周期τ毎に、ブリッジ回路210を上述のようにパルス駆動するとともにアナログ切り換えスイッチ290を切り換え駆動するようにした。
【0144】
これにより、ブリッジ回路及び発熱抵抗体をブリッジ回路210及び発熱抵抗体211とそれぞれ単一とすることで、検出素子300の小型化及び電力消費抑制を確保しつつ、上記第1実施形態と同様の作用効果を達成し得る。
【0145】
次に、上記第3実施形態の変形例について説明する。上記第3実施形態では、上述したごとく、温度周期τの経過毎に電圧比Rv>1の成立に伴い水素ガスの濃度の算出に伴う処理を行う例が示されている。しかしながら、これに限ることなく、当該第3実施形態を次のように変形してもよい。
【0146】
即ち、ステップ413における判定基準として、「温度周期τの経過か?」に代えて、「上記制御電圧のパルス周期の経過か?」を採用する。ここで、当該パルス周期の経過は、例えば、温度周期τの前半の経過、当該温度周期τの後半の経過、或いはこれに後続する温度周期τの前半の経過に相当する。
【0147】
このような前提のもと、当該パルス周期の経過に伴いステップ413にてYESと判定される毎に、ステップ420以後の処理が次のように繰り返される。
【0148】
上記第3実施形態にて述べたように、例えば、t=t2〜t3の間、t=t4〜t5の間、t=t6〜t7の間及びt=t8〜t9の間にてマイクロコンピュータ270のRAMに順次記憶された各増幅電位差VA1、VA2、VA3及びVA1のうち、両増幅電位差VA1、VA2、両増幅電位差VA2、VA3及び両増幅電位差VA3、VA1が順次ステップ420にて環境温度Tとともに読み出される。
【0149】
そして、このように順次読み出された両増幅電位差VA1、VA2、両増幅電位差VA2、VA3及び両増幅電位差VA3、VA1が、順次、電圧差Vdとしてステップ430にて算出される。ついで、上述のように順次読み出された両増幅電位差VA1、VA2、両増幅電位差VA2、VA3及び両増幅電位差VA3、VA1が、それぞれ、順次、電圧比Rv=VA1/VA2、VA2/VA3、VA3/VA1としてステップ431にて決定される。
【0150】
ここで、Rv=VA1/VA2>1、Rv=VA2/VA3<1及びRv=VA3/VA1>1である(図18参照)。従って、ステップ490において、Rv=VA1/VA2>1のときにはYESと判定され、Rv=VA2/VA3<1のときにはNOと判定され、Rv=VA3/VA1>1のときにはYESと判定される。
【0151】
このため、ステップ490における判定がYESのときにのみ、ステップ432以後の処理がなされる。これによっても、上記第3実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【0152】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)発熱抵抗体330及び配線膜340の形成材料としては、高温において化学的耐久性が高く、かつ温度抵抗係数が大きいことが望ましい。
(2)水素ガスに限らず、都市ガス等の可燃性ガスの濃度検出や当該ガスの漏洩検出に本発明を適用してもよい。
(3)上記各実施形態における発熱抵抗体の数は2つに限ることなく、3つ以上であってもよい。
(4)測温抵抗体390或いは500は、薄膜抵抗体に限ることなく、サーミスタ等の温度検出可能な各種の抵抗体であってもよい。
(5)測温抵抗体390或いは500に代えて、検出素子300とは別体の測温抵抗体その他の温度センサを採用してもよい。この場合、当該温度センサは、検出素子300を配置した被検出雰囲気内に配置することが望ましい。
(6)発熱抵抗体211、221(330)は、上記実施形態とは異なり、当該発熱抵抗体の温度の上昇(或いは低下)に応じて減少(或いは増大)するように抵抗値を変化させる発熱抵抗体であってもよい。この場合、上記実施形態にて述べた電圧差Vd及び電圧比Rvは、両発熱抵抗体211、221のうち抵抗値の大きい方を基準に算出するようにする。
(7)図6のステップ410における判定基準である所定の待ち時間は、0.5(秒)に限ることなく、適宜変更してもよく、要するに、両発熱抵抗体211、221をその定温度制御により各上記対応の一定温度にし得る時間であればよい。
(8)両発熱抵抗体211、221の各温度抵抗係数は、測温抵抗体390或いは500の温度抵抗係数とは、必ずしも同一でなくてもよい。
(9)上記第3実施形態において、ステップ490(図15参照)における判定基準は、Rv>1に限ることなく、Rv<1であってもよい。
(10)上記第3実施形態において、図15のフローチャートのステップ412の処理に先立ち、上記第1実施形態にて述べたフローチャート(図6参照)の両ステップ400、410と同様の処理を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明に係る可燃性ガス検出装置の第1実施形態における装置ユニットの断面図である。
【図2】上記第1実施形態における制御回路を示すブロック図である。
【図3】図1の蓋体に対する検出素子の組み付け構造を示す断面図である。
【図4】図3の検出素子の断面図である。
【図5】図3の検出素子の平面図である。
【図6】図2のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図7】上記第1実施形態における被検出雰囲気内の相対湿度と電圧比との関係を示すグラフである。
【図8】上記第1実施形態における電圧差と水素ガス濃度との関係を示す相対湿度をパラメータとしたグラフである。
【図9】上記第1実施形態における水素ガス濃度とVa(=電圧差−切片)との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第2実施形態における制御回路図である。
【図11】図10のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図12】図13にて12−12線に沿う断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態における検出素子の平面図である。
【図14】当該第3実施形態における制御回路図である。
【図15】図14のマイクロコンピュータの作用を示すフローチャートである。
【図16】上記第3実施形態における温度制御回路の出力波形を示すタイミングチャートである。
【図17】上記第3実施形態における発熱抵抗体の温度の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【図18】上記第3実施形態における発熱抵抗体の端子電圧の時間的変化を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0154】
211、221、330…発熱抵抗体、214〜216…固定抵抗、
230、240…定温度制御回路、231…温度制御回路、280…直流電源、
250、260…演算増幅回路、270…マイクロコンピュータ、
290…アナログ切り換えスイッチ回路、300…検出素子、310…半導体基板、
311…凹部、320…絶縁層、350…内側保護層、360…外側保護層、
390、500…測温抵抗体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出雰囲気内に晒される複数の発熱抵抗体を備えてなる可燃性ガス検出装置において、
前記複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする可燃性ガス検出装置。
【請求項2】
被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体を備えてなる可燃性ガス検出装置において、
前記発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする可燃性ガス検出装置。
【請求項3】
複数の凹部を間隔をおいて裏面側から形成してなる半導体基板と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層と、この絶縁層の表面に前記各凹部に対応して形成される複数の発熱抵抗体と、これら発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層の表面に形成される保護層とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子と、
前記複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出装置。
【請求項4】
凹部を裏面側から形成してなる半導体基板と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層と、この絶縁層の表面に前記凹部に対応して形成される発熱抵抗体と、この発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層の表面に形成される保護層とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子と、
前記発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出装置。
【請求項5】
前記電圧差を独立変数とし、前記可燃性ガスの濃度を従属変数とし、前記湿度及び前記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と前記湿度との間の所定の関係を用いて前記決定湿度に基づき前記切片を決定する切片決定手段と、
前記検出環境温度に基づき前記一次関数式の勾配を決定する勾配決定手段とを備えて、
前記濃度算出手段は、前記決定湿度及び前記検出環境温度に代わる前記切片決定手段による決定切片及び前記勾配決定手段による決定勾配を共に用いて、前記算出電圧差に応じて、前記一次関数式に基づき前記可燃性ガスの濃度を算出するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項6】
前記温度検出手段は、前記被検出雰囲気内に配置される測温抵抗体であってその抵抗値の変化に応じて前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する測温抵抗体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項7】
前記温度検出手段は、前記半導体基板の表面上に形成される薄膜抵抗体であって、
この薄膜抵抗体はその抵抗値の変化に基づき前記被検出雰囲気内の環境温度を検出することを特徴とする請求項3或いは4に記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項8】
被検出雰囲気内に晒される両発熱抵抗体の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該両発熱抵抗体を通電制御し、
前記被検出雰囲気内の前記通電制御状態において生ずる前記両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と前記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
前記両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、前記湿度及び前記環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出方法。
【請求項9】
被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御し、
前記被検出雰囲気内の前記間欠的通電制御状態において生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と前記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
前記発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、前記湿度及び前記環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出方法。
【請求項10】
前記可燃性ガスの算出は、
前記電圧差を独立変数とし、前記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を従属変数とし、前記湿度及び前記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と前記湿度との間の所定の関係を用いて、前記決定湿度に基づき前記切片を決定し、
前記環境温度に基づき決定される前記一次関数式の勾配、前記切片及び前記電圧差を用いて、前記一次関数式に基づき前記可燃性ガスの濃度を算出することで行うようにしたことを特徴とする請求項8或いは9に記載の可燃性ガス検出方法。
【請求項1】
被検出雰囲気内に晒される複数の発熱抵抗体を備えてなる可燃性ガス検出装置において、
前記複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする可燃性ガス検出装置。
【請求項2】
被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体を備えてなる可燃性ガス検出装置において、
前記発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにしたことを特徴とする可燃性ガス検出装置。
【請求項3】
複数の凹部を間隔をおいて裏面側から形成してなる半導体基板と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層と、この絶縁層の表面に前記各凹部に対応して形成される複数の発熱抵抗体と、これら発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層の表面に形成される保護層とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子と、
前記複数の発熱抵抗体のうち2つの発熱抵抗体の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該2つの発熱抵抗体を通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による通電制御状態にて生ずる前記2つの発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出装置。
【請求項4】
凹部を裏面側から形成してなる半導体基板と、この半導体基板の表面に形成される絶縁層と、この絶縁層の表面に前記凹部に対応して形成される発熱抵抗体と、この発熱抵抗体を覆うように前記絶縁層の表面に形成される保護層とを備えて、被検出雰囲気内に配置される検出素子と、
前記発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御する通電制御手段と、
前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の差を電圧差として算出する電圧差算出手段と、
前記通電制御手段による間欠的通電制御状態にて時を異にして生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の比を電圧比として決定する電圧比決定手段と、
この電圧比決定手段による決定電圧比と前記温度検出手段による検出環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定する湿度決定手段と、
前記電圧差算出手段による算出電圧差、前記湿度決定手段による決定湿度及び前記検出環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の前記可燃性ガスの濃度を算出する濃度算出手段とを備えて、
この濃度算出手段の算出濃度に基づき前記可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出装置。
【請求項5】
前記電圧差を独立変数とし、前記可燃性ガスの濃度を従属変数とし、前記湿度及び前記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と前記湿度との間の所定の関係を用いて前記決定湿度に基づき前記切片を決定する切片決定手段と、
前記検出環境温度に基づき前記一次関数式の勾配を決定する勾配決定手段とを備えて、
前記濃度算出手段は、前記決定湿度及び前記検出環境温度に代わる前記切片決定手段による決定切片及び前記勾配決定手段による決定勾配を共に用いて、前記算出電圧差に応じて、前記一次関数式に基づき前記可燃性ガスの濃度を算出するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項6】
前記温度検出手段は、前記被検出雰囲気内に配置される測温抵抗体であってその抵抗値の変化に応じて前記被検出雰囲気内の環境温度を検出する測温抵抗体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項7】
前記温度検出手段は、前記半導体基板の表面上に形成される薄膜抵抗体であって、
この薄膜抵抗体はその抵抗値の変化に基づき前記被検出雰囲気内の環境温度を検出することを特徴とする請求項3或いは4に記載の可燃性ガス検出装置。
【請求項8】
被検出雰囲気内に晒される両発熱抵抗体の各抵抗値を互いに異なる各一定温度に対応する各値にそれぞれ維持するように当該両発熱抵抗体を通電制御し、
前記被検出雰囲気内の前記通電制御状態において生ずる前記両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と前記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
前記両発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、前記湿度及び前記環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出方法。
【請求項9】
被検出雰囲気内に晒される発熱抵抗体の抵抗値を互いに異なる一定温度に対応する各値に時を異にして維持するように当該発熱抵抗体を間欠的に通電制御し、
前記被検出雰囲気内の前記間欠的通電制御状態において生ずる前記発熱抵抗体の各端子電圧の電圧比と前記被検出雰囲気内の環境温度との間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の湿度を決定し、
前記発熱抵抗体の各端子電圧の電圧差、前記湿度及び前記環境温度の間の関係に基づき前記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を算出することで、当該可燃性ガスを検出するようにした可燃性ガス検出方法。
【請求項10】
前記可燃性ガスの算出は、
前記電圧差を独立変数とし、前記被検出雰囲気内の可燃性ガスの濃度を従属変数とし、前記湿度及び前記環境温度をパラメータとして成立する一次関数式の切片と前記湿度との間の所定の関係を用いて、前記決定湿度に基づき前記切片を決定し、
前記環境温度に基づき決定される前記一次関数式の勾配、前記切片及び前記電圧差を用いて、前記一次関数式に基づき前記可燃性ガスの濃度を算出することで行うようにしたことを特徴とする請求項8或いは9に記載の可燃性ガス検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−10670(P2006−10670A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309246(P2004−309246)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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