説明

可燃性冷媒回収装置

【課題】冷凍機油の回収作業を停止することなく、処理済みの冷凍機油の排出を行うことができるようにする。
【解決手段】可燃性冷媒回収装置1は、回収タンク2と、この回収タンク2と独立して設けられた処理タンク3と、移送配管18と、移送弁19と、排出用の配管27を備えている。そして、移送配管18は、回収タンク2と処理タンク3を連結する。また、回収タンク2に回収された溶解液Sは、移送配管18を通過し、回収タンク2から処理タンク3に移送される。また、処理を行った冷凍機油を処理タンク3から排出する処理は、移送弁19を閉じて、移送配管18を通過する溶解液Sの流れを遮断し、かつ回収タンク2と処理タンク3を独立させて行われる。これにより、回収作業を停止することなく、処理済みの冷凍機油の排出を行うことができ、作業効率の大幅な向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫やエアコン等の冷凍サイクル内に残存する冷凍機油に溶解した可燃性ガスを回収し処理する可燃性冷媒回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有限な資源の再利用のためにマテリアルリサイクルは持続性のある社会に不可欠な技術となっている。一方、温暖化防止のため冷蔵庫、自動販売機等の冷凍サイクルの冷媒に低GWPのブタン、プロパン等のハイドロカーボン及び可燃性のフルオロカーボンが使われている。なお、このハイドロカーボンは、強燃性ガスである。
【0003】
また、冷媒である可燃性ガスは、潤滑用の冷凍機油に一部溶解している。そして、冷媒と冷凍機油は、大きな相溶性を持つものが選定される。その結果、使用済み冷凍機油は、この性質により、殊引火物的性格を持つため、危険物としての処理が難しく、引火点を上昇させる処理を行う必要がある。このような冷凍機油に溶解した可燃性ガスを回収し、冷凍機油を処理する回収装置としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、まず冷蔵庫、自動販売機等の冷凍サイクルから可燃性ガスが溶解した冷凍機油をタンク内に回収している。そして、この回収したタンク内で冷凍機油と可燃性ガスとの蒸気圧の差を利用して、可燃性ガスと冷凍機油の分離処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−121915号公報
【特許文献2】特開2007−170707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、冷凍機油の回収と、分離処理を同一のタンクで行う必要がある。そのため、処理後蓄積された冷凍機油を排出する際には、回収作業を停止してから排出を行う必要があり、作業効率の低下を招いていた。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、冷凍機油の回収作業を停止することなく、処理済みの冷凍機油の排出を行うことができる可燃性冷媒回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の可燃性冷媒回収装置は、被処理物から可燃性ガスが溶解した冷凍機油を回収する回収タンクと、回収タンクと独立して設けられ、回収した冷凍機油から可燃性ガスを分離させる処理タンクとを備えている。回収タンクと処理タンクを連結し、回収タンクに回収された冷凍機油が回収タンクから処理タンクに通過する移送配管と、移送配管に設けられる移送弁と、処理タンクに設けられ、処理を行った冷凍機油が排出される排出用の配管と、を備えている。
また、処理を行った冷凍機油を処理タンクから排出する処理は、移送弁を閉じることで、移送配管を通過する冷凍機油の流れを遮断し、かつ回収タンクと処理タンクを独立させて行われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の可燃性冷媒回収装置によれば、冷凍機油を回収するタンクと、分離させるタンクを別々に設け、かつ回収タンクと処理タンクを連結する移送配管に移送弁を設けた。これにより、回収タンクによる冷凍機油の回収作業を中断することなく、処理済みの冷凍機油の排出を行うことができ、作業効率の大幅な向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の可燃性冷媒回収装置の実施の形態例における回収、処理状態を示す構成図である。
【図2】本発明の可燃性冷媒回収装置の実施の形態例における処理タンクから処理済みの冷凍機油を排出する状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の可燃性冷媒回収装置実施の形態例について、図1及び図2を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.回収装置の構成
2.回収装置の回収方法
3.回収装置の処理方法
4.回収装置の排液方法
【0012】
1.回収装置の構成
まず、図1を参照して本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる回収装置の構成について説明する。
図1は本例の回収装置を示す構成図である。
【0013】
本例の可燃性冷媒回収装置1は、冷蔵庫やエアーコンディショナー等の被処理物から冷媒として用いられているハイドロカーボン、及び可燃性のフルオロカーボン、いわゆる可燃性ガスと冷凍機油を分離して回収する装置である。図1に示すように、可燃性冷媒回収装置1は、回収タンク2と、この回収タンク2と独立して設けられた処理タンク3と、不活性ガス源4と、減圧部の一例を示す真空ポンプ5と、この真空ポンプ5の下流側に配置される酸素センサ6と、不図示の制御部から構成されている。
【0014】
回収タンク2は、被処理物Pから回収した冷媒である可燃性ガスが溶解している冷凍機油(以下、「溶解液」という。)Sを収納するタンクである。回収タンク2には、回収された液量を検知する液量センサ11と、回収タンク2内の圧力を測定する圧力センサ12が設けられている。
【0015】
また、回収タンク2は、回収用配管16を介して被処理物Pに接続される。回収用配管16における回収タンク2側の端部には、スプレイノズル14が設けられている。このスプレイノズル14によって、回収した溶解液Sが回収タンク2内に噴射される。回収用配管16には、回収弁17が設けられている。
【0016】
さらに、回収タンク2と処理タンク3は、移送配管18によって連結されている。移送配管18には、移送弁19が取り付けられている。回収タンク2に溜まった溶解液Sは、移送配管18を通過し、処理タンク3に移送される。また、移送弁19を閉じることで、移送配管18を通過する溶解液Sの流れが遮断される。そして、回収タンク2と処理タンク3を独立させることができる。さらに、移送配管18における処理タンク3側の端部には、スプレイノズル24が設けられている。このスプレイノズル24によって、回収タンク2から移送された溶解液Sが処理タンク3内に噴射される。
【0017】
また、回収タンク2は、配管42を介して真空ポンプ5に接続されている。この配管42には、弁43が設けられている。なお、被処理物Pから回収した溶解液Sは、スプレイノズル14によって回収タンク2内に噴射されるため、大量の溶解液Sが微細なミストとなり霧散する。この微細なミストが配管42を通り、真空ポンプ5や酸素センサ6に移送されることを防止するために、配管42における回収タンク2側には、ミストセパレータ13が配置されている。
【0018】
このミストセパレータ13は、気体(可燃性ガス)と液体(冷凍機油)を分離し、気体だけを配管42に通している。また、配管42の中途部には、空気吸引弁45が設けられている。
【0019】
処理タンク3は、処理タンク3内の液量を検知する液量センサ21と、処理タンク3の圧力を測定する圧力センサ22と、溶解液Sを加熱するヒータ26と、溶解液Sの温度を測定する温度センサ29を有する。また、処理タンク3の底部には、排出用の配管27が接続され、この配管27にドレーン弁28が設けられている。
【0020】
さらに、処理タンク3は、ポンプ30に配管31を介して接続されている。配管31には、ポンプ30で吸引した溶解液Sを再び処理タンク3に噴射するスプレイノズル32が設けられている。
【0021】
さらに、処理タンク3は、回収タンク2と同様に、真空ポンプ5に配管39を介して接続されている。この配管39には、弁41が設けられている。また、配管39における処理タンク3側には、ミストセパレータ23が取り付けられている。このミストセパレータ23は、気体と液体を分離し、液体を処理タンク3に戻す役割を有している。そして、配管39には、気体のみが通過する。
【0022】
なお、本例では、溶解液Sが真空ポンプ5や酸素センサ6側に吸引されることを防ぐために、ミストセパレータ13,23を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、液体を吸着するフィルタを配管39,42に配置してもよい。また、ヒータ26は、電気の他に蒸気や所定の温度以上の温水、ブライン等を用いた間接加熱手段を用いることができる。
【0023】
不活性ガス源4は、処理部である回収タンク2及び処理タンク3に不活性ガスを供給するものである。不活性ガスとしては、一般的には窒素、二酸化炭素が使われ、その他にヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガス類元素を用いることもできる。この不活性ガス源4は、配管33、35を介して各々回収タンク2、処理タンク3に接続されている。配管33及び配管35には、それぞれ弁34,36が設けられている。
【0024】
また、不活性ガス源4は、不活性ガス配管37を介して真空ポンプ5及び酸素センサ6に接続している。この不活性ガス配管37には、不活性ガス吸引弁38が設けられている。
【0025】
真空ポンプ5は、配管39,42及び不活性ガス配管37の下流側に配置される。また、真空ポンプ5を保護するために、バイパス弁46及びバイパス配管47が設けられている。このバイパス弁46及びバイパス配管47によって、回収装置1の停止時に封入した不活性ガスの圧力を、回収装置1の起動時に大気圧と等しくすることができる。
【0026】
この真空ポンプ5の下流側には、酸素センサ6が設けられている。真空ポンプ5を作動させると、回収タンク2及び処理タンク3内の気体が配管39,42を通り、真空ポンプ5に吸引され、真空ポンプ5の下流側に吐き出される。そして、酸素センサ6は、真空ポンプ5から吐き出された気体中の酸素濃度を計測する。
【0027】
また、酸素センサ6は、不図示の制御部と電気的に接続されており、酸素センサ6が計測した酸素濃度は、制御部に出力される。また、回収弁17、不活性ガス吸引弁38や空気吸引弁45等の全ての弁は、電気信号で開閉される自動弁が使用されており、制御部によって制御されている。制御部は、酸素センサ6から出力された酸素濃度に基づいて、例えば不活性ガスの封入、回収動作の停止や警報を行う。
【0028】
制御部としては、パーソナルコンピュータ(PC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等が用いられる。
【0029】
酸素センサ6の下流側には、逆火防止器48と、ファン51が設けられている。真空ポンプ5によって吸引された可燃性ガス等の気体は、ファン51を介して爆発下限界未満まで希釈して排出される。なお、燃焼装置によって可燃性ガスを燃焼させる場合には、希釈装置を設けなくもよい。あるいは再利用するために不図示のボンベに回収する場合は、ファン51の代わりに充填装置を設けてもよい。
【0030】
2.回収装置の回収方法
次に、上述した構成を有する可燃性冷媒回収装置1の被処理物Pから冷媒及び冷凍機油の回収方法について図1及び図2を参照して説明する。図2は、処理タンク3から冷凍機油を排出する状態を示す図である。
【0031】
まず、ファン51を起動し、弁41,43及びバイパス弁46を開き、保安上、あらかじめ封入してある不活性ガスと残留可燃性冷媒を希釈し、排気する。次に、バイパス弁46を閉じ、真空ポンプ5を作動させて、回収タンク2及び処理タンク3内の圧力を減圧する。そして、回収タンク2及び処理タンク3内が所定の圧力まで減圧されると、回収弁17を開き、被処理物Pから溶解液Sを回収する。
【0032】
溶解液Sが回収タンク2内に一定量溜まると、移送弁19を開く。これにより、溶解液Sが移送配管18通過して回収タンク2側から処理タンク3側へ自由落下し、回収タンク2から処理タンク3に移送される。移送の時間を短縮させるために、回収タンク2の圧力を処理タンク3の圧力よりも若干高めてもよい。
【0033】
3.回収装置の処理方法
次に、回収装置1による処理方法について説明する。
処理タンク3内の溶解液Sは、ヒータ26により所定の温度まで加熱される。これにより、可燃性ガスが気化し、冷凍機油から分離される。そして、処理タンク3内に所定の量の溶解液Sが溜まったら移送弁19を閉じることで、処理タンク3を回収タンク2から独立させる。そして、液温が所定の温度以上に達し、処理タンク3内の圧力が所定の圧力以下に達すると処理が完了する。
【0034】
4.回収装置の排液方法
次に、回収装置1による排液方法について説明する。
図2に示すように、弁41を閉じ、処理タンク3を真空ポンプ5からも独立させる。この状態で弁34を開き、不活性ガス源4から不活性ガスを処理タンク3内に供給する。そのため、処理タンク3内の圧力が上昇する。
【0035】
そして、処理タンク3内の圧力が大気圧以上に制御される。次に、ドレーン弁28を開き、排出用の配管27から処理済みの冷凍機油を排出する。このとき、回収タンク2と処理タンク3は、移送弁19を閉じることで、独立しているため、回収タンク2による回収作業を中断することなく処理タンク3において処理済みの冷凍機油の排出処理行うことができる。これにより、作業効率の大幅な向上を図ることができる。
【0036】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…可燃性冷媒回収装置、 2…回収タンク、 3…処理タンク、 4…不活性ガス源、 5…真空ポンプ、 11,21…液量センサ、 12,22…圧力センサ、 16…回収用配管、 17…回収弁、 18…移送配管、 19…移送弁、 26…ヒータ、 27…配管、 28…ドレーン弁、 29…温度センサ、 S…溶解液(冷凍機油)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物から可燃性ガスが溶解した冷凍機油を回収する回収タンクと、
前記回収タンクと独立して設けられ、回収した前記冷凍機油から前記可燃性ガスを分離させる処理タンクと、
前記回収タンクと前記処理タンクを連結し、前記回収タンクに回収された前記冷凍機油が前記回収タンクから前記処理タンクに通過する移送配管と、
前記移送配管に設けられる移送弁と、
前記処理タンクに設けられ、処理を行った冷凍機油が排出される排出用の配管と、を備え、
前記処理を行った冷凍機油を前記処理タンクから排出する処理は、前記移送弁を閉じることで、前記移送配管を通過する前記冷凍機油の流れを遮断し、かつ前記回収タンクと前記処理タンクを独立させて行われる
可燃性冷媒回収装置。
【請求項2】
前記回収タンク及び前記処理タンクに不活性ガスを供給する不活性ガスをさらに設けた
請求項1に記載の可燃性冷媒回収装置。
【請求項3】
前記回収タンク及び前記処理タンクの酸素濃度を測定する酸素センサをさらに設けた
請求項1又は2に記載の可燃性冷媒回収装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−2720(P2013−2720A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133719(P2011−133719)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(592152510)株式会社中島自動車電装 (12)