説明

可視および近IRディファレンシャルシグネチャがある新しい染色布帛

可視(VIS)スペクトルにおいて実質的に単色の外観がある、近赤外(NIR)スペクトルにおいてカモフラージュ外観を有する布帛が提供される。新しい布帛は、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸を含んでもよい。マルチフィラメント糸は、カーボンブラックを含むマルチフィラメント、マルチフィラメントの特徴であるNIR反射率を改変する顔料を含むマルチフィラメント、およびマルチフィラメントの特徴であるNIR反射率を改変できる添加剤を実質的に含まないマルチフィラメントの3タイプのマルチフィラメント糸から選択される。布帛は、可視スペクトルにおいて実質的に単色の外観に染色される。一般に、布帛は、約700〜約860ナノメートル(nm)の波長範囲において約5%の反射率で隔てられる約10%〜約85%の反射率を有する、2つの反射率曲線を含むNIRスペクトルを有する。布帛を使用して、暗視装置を使用して観察されるNIR反射率においてカモフラージュ外観を示す被服、備品、テント、および防水布を製造してもよい。同時にこれらの被服、備品、テント、および防水布は、VIS反射率スペクトルにおいて単色を有し、実質的にカモフラージュでない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトルの可視(VIS)領域において単色の外観、およびスペクトルの近赤外線(NIR)でカモフラージュ外観を有する、合成ポリマー糸から織られまたは編まれる革新的な布帛に関する。より詳しくは、布帛を構成する個々の合成糸は、カーボンブラックを含有する合成繊維、NIR反射率シグネチャを改変する顔料を含有する合成繊維、および実質的に変性剤を含まない合成繊維から選択される、少なくとも2つのタイプを含む。さらに革新的な布帛は、有利なことに従来の染料で、可視スペクトルにおいて単一の色むらのない外観に染色される。本発明の布帛からの被服は、NIRにおいて実質的に着用者を「暗視装置」を使用した観察から隠蔽する、カモフラージュ効果を提供する。
【背景技術】
【0002】
近赤外(NIR)波長において実質的に不可視である(カモフラージュされた)、例えばジャケット、背嚢、防弾ベスト、およびブーツなどの被服(備品とも称される)に加工される布帛を作り出すための継続的な努力がなされている。このような備品としては、テント、防水布、および寝袋外面布帛もまた挙げられる。NIRカモフラージュの目的を達成するためには、布帛、被服または備品は、環境のNIRシグネチャと厳密に一致しなくてはならない。各地形要素は、その化学組成に基づいて異なる反射シグネチャを有する。例えば木の葉(森林環境の主要構成要素)は、可視領域において比較的低反射率、NIR領域において比較的高反射率を有する。対照的に、砂漠環境の主要構成要素である砂、および都市部環境の主要構成要素であるコンクリートは、可視領域において比較的高反射率、NIR領域において低反射率を有する。合成ポリマーポリアミドおよびポリエステル繊維は、400〜2000ナノメートル(nm)の範囲において非常に反射性であることが当業者に知られている。その結果、ポリアミドおよびポリエステル被服および備品のNIR反射率を低下させ、NIR反射率をそれらの環境により厳密に一致させることが望ましい。このようなNIR反射率改変は被服および備品を実質的に隠蔽し、その結果として、暗視ゴーグルまたは画像増強変換器などの暗視装置の使用によって、着用者は曝露されない。
【0003】
特にいくつかの軍隊による使用のために、備品の特定パーツおよびユニフォームは、スペクトルの可視(VIS)領域において一体色を有して、セクションに一致してカモフラージュ印刷または民間人の外観を有することが望ましい。同時に一体色が、NIR領域においてパターンを有するようにする要求がある。備品およびユニフォームのための有用な布帛は、完全に合成ポリアミドまたはポリエステルから、またはこれらの合成繊維と綿の混紡から作ることができる。したがって可視領域において一体色である一方、NIR領域において紋崩れしている布帛に対する必要性がある。
【0004】
出願人らは、参照によってその全体を本明細書に援用する米国特許公報(特許文献1)(2005年4月15日出願)で開示される暗視装置によって曝露されることから着用者を保護するために有用な、改変されたNIRシグネチャを有するテキスタイル糸について述べている。さらに布帛の赤外線(IR)反射率を低下させる既知の方法は、布帛と組み合わせたIR吸収顔料を使用する。例えばその開示を参照によって本明細書に援用するクラークソン(Clarkson)に付与された米国特許公報(特許文献2)(「クラークソン(Clarkson)」)は、カーボンブラック顔料が1000〜1200nmのIR範囲の光を吸収することを開示している。クラークソン(Clarkson)は、IR領域においては可視であるが可視領域においては不可視であるカモフラージュパターンを含む布帛を開示している。布帛には、スペクトルの可視領域において可視である非カモフラージュパターンを印刷してもよい。この目的を達成するために、クラークソン(Clarkson)は、布帛をカーボンブラック、キチン樹脂またはその他のIR吸収顔料などのIR吸収材料で印刷する。クラークソン(Clarkson)は、布帛のIR−反射率が、それが使用される環境のIR−反射率に一致するように取り計らわれることを開示している。例えばクラークソン(Clarkson)は、温帯林では総IR反射率が典型的に35%であることを必要とし、砂漠地帯ではそれを70%に上昇させてもよいことを開示している。所望の総反射率を達成するために、カモフラージュパターンは、互いに少なくとも5%異なるIR−反射率の異なる少なくとも2つの領域を含む。IRカモフラージュパターンは、一般に、クラークソン(Clarkson)の開示に従って、布帛が染色された後に布帛上に印刷される。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第11/108021号明細書
【特許文献2】米国特許番号第5,798,304号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、単色への染色を受容する、改変されたNIRシグネチャがある布帛(例えば編地または織物)を含む。続く開示に従って提供される布帛は、NIRにおけるカモフラージュパターンを有する備品および被服のために有用である。これらの布帛からの被服および備品は、NIRスペクトル領域で見た際に、着用者のシルエットを分断でき、暗視観察装置に対して着用者に増強された隠蔽を提供する。
【0007】
ここで提供されるのは、近赤外(NIR)スペクトルにおいてカモフラージュ外観を有し、可視(VIS)スペクトルにおいて実質的に単色の外観を有する布帛である。新しい布帛は、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸を含む。2つのマルチフィラメント糸は、カーボンブラックを含むマルチフィラメント、マルチフィラメントの特徴であるNIR反射率を改変する顔料を含むマルチフィラメント、およびマルチフィラメントの特徴であるNIR反射率を改変できる添加剤を実質的に含まないマルチフィラメントの3タイプのマルチフィラメント糸よりなる群から選択することができる。
【0008】
布帛の別の実施態様は、可視スペクトルにおいて、染料によって提供される実質的に単色の外観を有する布帛を含む。別の実施態様では、布帛は、約10%〜約85%の反射率を有する2つの反射率曲線を含むNIRスペクトルを有し、2つの反射率曲線は、約700〜約860ナノメートル(nm)の波長範囲において約5%の反射率で隔てられる。
【0009】
別の実施態様では、布帛は、約25%〜約75%の反射率を有する3つの反射率曲線を含むNIRスペクトルを有し、3つの反射率曲線は、約700〜約860ナノメートル(nm)の波長範囲において約5%の反射率で隔てられる。
【0010】
別の実施態様では、布帛は、縦糸および横糸方向を有する織物を含み、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸が、縦糸方向および横糸方向を構成する。
【0011】
別の実施態様では、布帛は、ループのコース横列およびループのウェール縦列を有する編地を含み、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸が、ループのコース横列およびループのウェール縦列を構成する。
【0012】
別の実施態様では、布帛は、ポリアミドおよびポリエステルよりなる群から選択される合成ポリマーを含む、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸を含んでなることができる。
【0013】
別の実施態様では、布帛は、(例えばポリアミド/綿およびポリエステル/綿)の群から選択される、少なくとも2つの合成および天然繊維混紡を含んでなることができる。
【0014】
別の実施態様では、布帛の可視スペクトルにおける実質的に単色の外観は、布帛形成に先だって、染料を合成ポリマーマルチフィラメント糸に塗布することで提供される。例えば個々のヤーンパッケージを製織または編成工程に先だって染色して、布帛を作成する。
【0015】
本発明は、可視(VIS)スペクトルにおける実質的に単色の外観を維持しながら、近赤外(NIR)スペクトルにおけるカモフラージュ外観を布帛に与える工程を含んでもよい。方法は、カーボンブラックを含む第1のマルチフィラメント、第2のマルチフィラメントのNIR反射率特性を改変する顔料を含む第2のマルチフィラメント、および第3のマルチフィラメントのNIR反射率特性を改変できる添加剤を実質的に含まない第3のマルチフィラメントよりなる群から選択される、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸を布帛形成手段に提供する工程と、前記第1、第2、および第3のマルチフィラメント糸のパターンの所定のパターンを有する布帛を形成する工程と、布帛を単色に染色する工程とを含む。この様式で形成された布帛は、本発明の範囲内の被服および備品の構造において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここで提供される布帛は備品および被服に有用であり、赤外線で見た際にカモフラージュパターン、VISで見た際に単色の外観を提供する。これらの布帛からの被服および備品は、赤外線スペクトル領域で見た際に着用者のシルエットを分断できるので、暗視観察装置に対して着用者に増強された隠蔽を提供する。これらの布帛は、従来の製織および編成工程の手段のいずれかによって形成されてもよい。製織による布帛形成の場合、実質的にあらゆる縦糸および緯糸の組み合わせ構造が可能である。編成による布帛形成の場合、実質的にあらゆるループコースおよびウェール構造が可能である。
【0017】
織物または編地は、ポリアミドを含んでなる合成ポリマーマルチフィラメント糸から形成できる。適切なポリアミドとしては、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン610、ナイロン612、およびコポリアミドが挙げられる。一般にこれらのポリアミドポリマーは、本質的に酸性タイプ染料によって染色可能である。これらのポリアミドの酸性染料受容性は、付加アミン末端基を提供する既知の濃染添加剤を使用して改変してもよい。場合により、ポリマーの既知の改変を通じて、これらのポリアミドポリマーをカチオン染料による染色に対して感受性にすることが可能である。ポリアミドと使用するためのカチオン染料調節剤としては、例えば1つまたは複数のスルホニル基で置換された芳香族ジカルボン酸、特に5−スルホ−イソフタル酸が挙げられる。
【0018】
織物または編地は、ポリエステル合成ポリマーを含んでなる合成ポリマーマルチフィラメント糸から形成できる。適切なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびコポリエステルが挙げられる。これらのポリエステルポリマーは、技術分野で既知の分散染料を使用して染色可能である。場合により、これらのポリエステルポリマーは添加剤を含んで、ポリエステルをカチオン染料による染色に対して感受性にしてもよい。このような添加剤としては、1つまたは複数のスルホニル基で置換された芳香族ジカルボン酸、特に5−フルホ−イソフタル酸が挙げられる。
【0019】
本発明に従う織物または編地は、天然繊維との混合物を含んでなる合成ポリマーマルチフィラメント糸から形成できる。適切な天然繊維としては、綿、セルロース繊維または再生セルロース繊維が挙げられる。技術分野で既知の染色方法を使用して、本発明に従う布帛の形態のこのような組み合わせ糸に、可視スペクトルにおける有用な染料色調を提供できる。例えば繊維反応性ビニルスルホンまたはVAT染料をポリアミドおよび綿混紡に塗布することが知られている。同様に、ポリエステルおよび綿混紡に使用するためのVAT染料および分散染料の使用は、当業者の知識の範囲内である。
【0020】
布帛は、有利にはあらゆる従来の様式で単一同色に染色されてもよい。場合により、布帛を合成ポリマーマルチフィラメント糸から、または綿糸との混紡から形成してもよく、それらは全て布帛形成に先だって糸染めされる。例えば当業者に知られているヤーンパッケージの染色工程は、糸染めのための効率的な手段である。
【0021】
本発明の布帛は、改変されて異なる可視(VIS)および赤外線反射率シグネチャを提供する、ポリアミドまたはポリエステル合成ポリマーマルチフィラメント糸のどちらかの部分から形成されてもよい。したがって本発明の布帛は、少なくとも2タイプ、より典型的には3タイプの糸の合成ポリマーマルチフィラメント糸から形成され、各タイプは、異なる可視(VIS)および赤外線反射率シグネチャを有する。本発明の単一布帛中の糸のタイプ数に関する根本的な制限はない。少なくとも2つのマルチフィラメント糸が、約10ppm(perts per million)から約300ppmの量でカーボンブラックを含有するマルチフィラメント糸、マルチフィラメントの特徴であるNIR反射率を改変する顔料を含むマルチフィラメント、およびマルチフィラメントの特徴であるNIR反射率を改変できる添加剤を実質的に含まないマルチフィラメントよりなる群から選択される。
【0022】
少なくとも2つのタイプの改変されたマルチフィラメント糸から形成された本発明の布帛は、有利には従来の様式で単色に染色される。一般に、布帛は700〜900ナノメートル(nm)の範囲内であるNIR反射率シグネチャを有し、染色前の布帛から実質的に不変である。その結果、染色布帛の外観は、VISスペクトル(400〜680nm)においては単一の実質的に同一色の外観である一方、近赤外領域(700〜900nm)では、構成要素糸の異なるNIR反射率のためにパターン化された外観を有する。
【0023】
次のようにして、3タイプのポリアミドマルチフィラメント糸を含む本発明のポリアミドベースの布帛が準備できる。3つのポリアミド糸を選択して布帛に織る。ポリアミドマルチフィラメント糸は、例えば(i)カーボンブラックを含有するナイロン66コーデュラ(Cordura)(登録商標)EP糸、(ii)標準ナイロン66コーデュラ(Cordura)(登録商標)糸、および(iii)様々な顔料材料を含有する溶液染色されたコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)糸であることができる(コーデュラ(Cordura)(登録商標)ブランド糸は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,Delaware)19808の本願特許出願人から入手できる)。異なるVISスペクトルおよび異なるNIRスペクトル反射率特性を有する各糸i〜iiiを縦糸および横糸として別々に布帛に織る。製織パターンは、当業者に既知のパターンの間で自由に選択できる。平行配置で実質的に同一幅のまたは直角に交差する糸のバンドを提供する製織パターンが、本発明の目的を容易に例証する。製織後に、布帛を染色する準備をして、既知の様式で、単一の実質的に同一色に酸性染料で染色する。染色に先だって、布帛の外観はVISスペクトルにおいて多色である。例えば染色前に、図7の布帛10で表される格子縞外観が容易に得られる。対照的に染色布帛はVISスペクトルにおいて図8の布帛20で表される単色を有し、NIR反射率スペクトルにおいて格子縞パターンを有する。
【0024】
上の同一の3本の糸i〜iiiから織られた布帛は、あらゆる地勢または環境の背景NIR反射率を代表するようにパターン化されてもよい。VISスペクトルにおいて単色に染色された、このような背景地勢パターン化布帛から製作された被服は、約700nm〜約900nmのスペクトル領域において、感応性の暗視装置の手段によって観察される被服着用者に、実質的に強化されたレベルの隠蔽を提供する。一般に本発明の布帛からの被服および備品は、暗視ゴーグルなどの強化光学撮像装置を使用して視覚化した際に、隠蔽の目的で着用される従来のカモフラージュ布帛よりも性能が優れている。
【0025】
試験法
本開示全体を通じて、全ての可視および近赤外(VIS−NIR)スペクトル測定は、企業本部が、米国94304−1030カリフォルニア州パロアルトハンセンウェイ3120(3120 Hansen Way,Palo Alto,CA 94304−1030,USA)に所在するバリアン・インコーポレーテッド(Varian,Inc.)(電話:650 213 8000)からのケアリー(CARY)5000(登録商標)分光計を使用して行った。拡散反射率装備品を用いて、600〜900nmの範囲における反射率曲線を測定した。測定されるNIR反射への背景寄与を回避するように、布帛サンプルをマウントした。
【実施例】
【0026】
続く実施例で、縦糸方向に3本のポリアミド繊維、横糸方向に3本までのポリアミド繊維を使用して、本発明の織物を準備した。一実施態様では、本発明は、布帛縦糸中の異なるNIRシグネチャを有する最小2本のマルチフィラメント糸と、横(緯糸)方向においてNIRシグネチャの異なる2本(tow)のマルチフィラメント糸によって、効果的なカモフラージュパターンを提供できる。
【0027】
従来の製織技術を使用して、本発明の布帛実施例を作成した。最初に従来の単一端縦糸巻き機械を使用して縦糸を作成し、次に従来の空気ジェット織布機上で織って布帛を構築した。布帛は縦糸方向において、55糸端、横糸方向において40横糸を含有した。この実施例では縦糸方向のポリアミドマルチフィラメント糸は、SDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)として知られる着色糸、コーデュラ(Cordura)(登録商標)EP(アマーシャム・インコーポレーテッド(AMERICHEM Inc.)からの少量のカーボンブラック、PRODUCT 11793−F1を含有する)、および無添加のコーデュラ(Cordura)(登録商標)「ブライト(Bright)」であった。SDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)繊維は、アマーシャム・インコーポレーテッド(AMERICHEM Inc.)によって供給される青色、黄色、および赤色顔料をポリマーに配合して準備した。
【0028】
表1は8つの実施例布帛を示す。布帛実施例1および2は、横糸方向にコーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)と称されるポリアミド糸を含有した。発明布帛実施例3および4は、横糸方向にSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)と称されるポリアミド糸を含有した。発明布帛実施例5および6は、横糸方向にコーデュラ(Cordura)(登録商標)EPと称されるポリアミド糸を含有した。一方、発明実施例7および8は、縦糸および横糸方向の双方に、コーデュラ(Cordura)(登録商標)EP、SDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)、およびコーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)の3つの繊維を含有する布帛であった。
【0029】
【表1】

【0030】
図7は、実施例1、3、および5の全徴群を合わせた布帛10の写真図である。布帛10は、縦糸方向にコーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)、コーデュラ(Cordura)(登録商標)EP、およびSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)を含有し、横糸方向にコーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)、コーデュラ(Cordura)(登録商標)EP、およびSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)を含有する。織物10はVISスペクトルにおいて、それぞれが互いに直角に交差する縦糸および緯糸を含んでなる、様々な部分を示す。これらの様々な各部分は、ユニークなNIR反射率スペクトルを有する。図1、3、および5に描写される600〜900ナノメートルの範囲の9つの異なるNIR反射率曲線が布帛10で示される。これらの9つの異なる曲線は、NIRにおいて十分なコントラストを提供し、暗視装置を使用して視覚化された際に、布帛をカモフラージュ用途において有用にする。例えば図1では、縦糸および横糸方向の無添加糸コーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)は600〜860nmの波長のおよそ84〜86%を反射する。縦糸方向のカーボンブラック含有糸コーデュラ(Cordura)(登録商標)EP、および横糸方向の無添加(実施例1)コーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)は600〜860nmの波長のおよそ55〜61%を反射する。縦糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)糸および横糸方向の無添加糸(実施例1)コーデュラ(Cordura)(登録商標)ブライト(Bright)は、600〜700nmの範囲にわたり20〜28%、700nm〜800nmの範囲にわたり28%〜60%、および800〜860nmの範囲にわたり60〜67%を反射する。
【0031】
図8は、図9の布帛10から準備して、褐色に染色した布帛20の写真図である。布帛は、従来のジグ染色機およびナイロン用酸性染料を使用して染色した。染色(dying)手順は次のとおりである。布帛を最初に精練して、繊維製造および製織工程からの全汚染物質を除去した。次に布帛を54℃(130°F)および71℃(160°F)ですすいだ。酸性均染染料をpH6.0で塗布して温度を100℃(212°F)に上昇させた。布帛を45分間染色し、次に冷却した。染色後、布帛を121℃(250°F)の従来の幅出機上で乾燥させた。図8は、実施例2、4および6の全徴群を取り入れた布帛の写真図である。図8は、700〜900ナノメートル範囲の9つの異なるNIR反射率曲線を示す。縦糸方向および横糸方向に無添加の繊維を有する糸(実施例2)は、600〜700nmの範囲にわたり5〜25%、700nm〜800nmの範囲にわたり25%〜80%、および800〜860nmの範囲にわたり80〜83%を反射する。縦糸方向にカーボンブラック含有糸、および横糸方向に無添加繊維を有する糸は(実施例2)、600〜700nmの範囲にわたり5〜25%、700nm〜800nmの範囲にわたり25%〜58%、および800〜860nmの範囲にわたり58〜60%を反射する。縦糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)糸、および横糸方向に無添加繊維を有する糸(実施例2)は、600〜700nmの範囲にわたり5〜20%、700nm〜800nmの範囲にわたり20%〜50%、および800〜860nmの範囲にわたり50〜65%を反射する。600〜700nm間の反射率曲線はほぼ同一である。これらの曲線間類似性は、それらのVIS色および本質的に同一のVIS反射率曲線に起因する。700nmを超えたNIR中では、それらの反射率曲線は異なる。したがってパターンは、暗視装置を使用してNIRにおいて観察可能である。
【0032】
図3は、表1中の実施例3について述べた糸を含有する、未染色布帛のグラフ図である。図3は600〜900ナノメートルの範囲内のこの布帛のNIR反射率を示し、3つの異なる反射曲線を有する。実施例3の布帛は、構成縦糸および緯糸から形成される領域間の暗視装置で観察可能な分離を提供する。例えば縦糸方向の無添加糸、および横糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)糸は、600〜700nmの範囲にわたり35〜40%、700nm〜800nmの範囲にわたり40%〜65%、および800〜860nmの範囲にわたり65〜72%を反射する。縦糸方向のカーボンブラック含有糸、および横糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)糸は、600〜700nmの範囲にわたり31〜33%、700nm〜800nmの範囲にわたり33%〜50%、および800〜860nmの範囲にわたり50〜57%の反射率を示す。縦糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(Coyote)糸、および横糸方向の無添加剤糸は、600〜700nmの範囲にわたり15〜20%、700nm〜800nmの範囲にわたり20%〜50%、および800〜860nmの範囲にわたり50〜61%を反射する。
【0033】
図4は、布帛が褐色に染色されたこと以外は、図3と同一の布帛(実施例4)のグラフ図である。布帛を記述したのと同一様式で染色して乾燥させた。図4は、600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率を示す。実施例4の布帛は、様々な布帛領域の暗視装置観察可能な分離を提供する、3つの異なる反射曲線を示す。実施例4の織物は、縦糸方向に無添加糸がありSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)緯糸が交差する領域において、600〜700nmの範囲にわたり4〜20%、700nm〜800nmの範囲にわたり20%〜55%、および800〜860nmの範囲にわたり55〜68%の反射を示す。縦糸方向にカーボンブラック、および緯糸方向にコヨーテ(Coyote)繊維を含有する糸は、600〜700nmの範囲にわたり5〜20%、700nm〜800nmの範囲にわたり20%〜46%、800〜860nmの範囲にわたり46〜55%を反射する。縦糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)糸、および緯糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)糸は、600〜700nmの範囲にわたり5〜15%、%700nm〜800nmの範囲にわたり15〜45%、および800〜860nmの範囲にわたり45〜58%を反射する。600〜700nmの間の反射率曲線が、ほぼ同一であることに留意されたい。これらの曲線の類似性は、VIS色が同一反射率曲線と本質的に同一であるために生じる。700nmを超えると反射率曲線は分離して、暗視装置で観察可能な明確なパターンを提供する。
【0034】
図5は、表1の実施例5について述べられる糸を含有する、未染色布帛のグラフ図である。図5は、3つの異なる反射曲線を有するものとして、600〜900ナノメートルの範囲内のこの実施例5布帛のNIR反射率を示す。その結果、これらの3つの異なる曲線は、例えば暗視ゴーグルなどの画像エンハンスメント装置(image enhancement device)の助けを借りて視覚化された、布帛の様々な領域の観察可能な分離を提供する。実施例5の縦糸方向の無添加糸および横糸方向のカーボンブラック含有糸は、600〜860nmの範囲にわたり65〜70%を反射する。縦糸方向および横糸方向のカーボンブラック含有糸は、600〜860nmにわたり50〜55%を反射する。縦糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)繊維、および横糸方向のカーボンブラック含有繊維は、600〜700nmの範囲にわたり20〜27%、700nm〜800nmの範囲にわたり27%〜55%、および800〜860nmの範囲にわたり55〜60%を反射する。
【0035】
図6は、布帛が褐色に染色されたこと以外は、図5と同一の布帛のグラフ図である。実施例6布帛は、既述したのと同一様式で染色し乾燥させた。図6は、600〜900ナノメートルの範囲のこの布帛のNIR反射率を示し、3つの異なる反射曲線を有する。これらの3つの曲線は、暗視装置で視覚化した際に、布帛の様々な領域間に明確な観察可能な分離を生じさせる。縦糸方向に無添加糸および方向にカーボンブラック含有糸がある実施例6布帛領域は、600〜700nmの範囲にわたり4〜22%、700nm〜800nmの範囲にわたり22%〜64%、および800〜860nmの範囲にわたり64〜66%を反射する。実施例6の縦糸方向のカーボンブラック含有糸、横糸方向のカーボンブラック含有繊維は、600〜700nmの範囲にわたり4〜22%、700nm〜800nmの範囲にわたり22%〜50%、および800〜860nmの範囲にわたり50〜53%を反射する。縦糸方向のSDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)繊維、および横糸方向のカーボンブラック含有繊維は、600〜700nmの範囲にわたり4〜15%、700nm〜800nmの範囲にわたり15%〜46%、および800〜860nmの範囲にわたり46〜57%を反射する。実施例6反射率曲線は、600〜700nmの間でほぼ同一である。類似性は、それらのVIS色が本質的に同一であり、したがって同一反射率曲線を示すために生じる。しかし700nmを超えるとそれらの反射率曲線は分離して、暗視装置を使用して観察可能な明確なパターンを可能にする。
【0036】
実施例7は、実施例1、3、および5の全ての特徴を組み合わせる。この実施例7において縦糸および横糸は、無添加糸、コーデュラ(Cordura)(登録商標)EPとして知られるカーボンブラックを有する糸、および、SDNコーデュラ(Cordura)(登録商標)コヨーテ(COYOTE)として知られる着色顔料を有する糸の表1の3本のポリアミド糸からなる。可視およびNIR反射率曲線は、既述の組み合わせのものと全く同一であった。事実上、実施例7布帛は、NIRにおいて9つの異なる反射率パターンを有した。
【0037】
実施例8は、布帛が褐色に染色されたこと以外は、実施例7と同一布帛である。実施例8布帛は、前に述べたのと同一様式で染色し乾燥させた。完成すると、布帛はVISスペクトルにおいて単色を示し、NIR領域において9つの異なる領域的反射率パターンを示した。これらの反射率パターンは実施例2、4、および6で述べられるのと全く同一であった。
【0038】
当業者は、上記の本発明の教示の利点をもって、それに修正を加えてもよい。このような修正は、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内にあると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】縦糸方向に無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸を含有し、横糸方向に無添加ポリアミド糸を含有する、未染色布帛のグラフ図である。600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率が示される。
【図2】縦糸方向に標準無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸、および横糸方向に無添加ポリアミド糸を含有する、酸性染料で褐色に染色された布帛のグラフ図である。600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率が示される。
【図3】縦糸方向に標準無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸、および横糸方向に様々な顔料を添加したポリアミド糸を含有する未染色布帛のグラフ図である。600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率が示される。
【図4】縦糸方向に標準無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸、および横糸方向に様々な顔料を添加したポリアミド糸を含有する、酸性染料で褐色に染色された布帛のグラフ図である。600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率が示される。
【図5】縦糸方向に標準無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸、および横糸/緯糸方向にカーボンブラック添加ポリアミド糸を含有する、未染色布帛のグラフ図である。600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率が示される。
【図6】縦糸方向に無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸、横糸/緯糸方向にカーボンブラック添加ポリアミド糸を含有する、酸性染料で褐色に染色された布帛のグラフ図である。600〜900ナノメートルの範囲におけるこの布帛のNIR反射率が示される。
【図7】縦糸および緯糸(または横糸)方向に、標準無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸を含有する、未染色布帛の写真図である。
【図8】縦糸および緯糸(または横糸)方向に、標準無添加ポリアミド糸、カーボンブラック添加ポリアミド糸、および様々な顔料を添加したポリアミド糸を含有する、染色布帛の写真図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを含む第1のマルチフィラメント、第2のマルチフィラメントの近赤外(NIR)反射率特性を改変する顔料を含む第2のマルチフィラメント、および第3のマルチフィラメントのNIR反射率特性を改変できる添加剤を実質的に含まない第3のマルチフィラメントよりなる群から選択される、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸を含む、NIRスペクトルにおいてカモフラージュ外観を有し、可視(VIS)スペクトルにおいて実質的に単色の外観を有する布帛。
【請求項2】
可視スペクトルにおける前記実質的に単色の外観が染料によって提供される、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
NIRスペクトルが、約10%〜約85%の反射率を有する2つの反射率曲線を含み、前記2つの反射率曲線が、約700〜約860ナノメートル(nm)の波長範囲において約5%の反射率で隔てられる、請求項1に記載の布帛。
【請求項4】
NIRスペクトルが、約25%〜約75%の反射率を有する3つの反射率曲線を含み、前記3つの反射率曲線が約700〜約860ナノメートル(nm)の波長範囲において約5%の反射率で隔てられる、請求項1に記載の布帛。
【請求項5】
縦糸および横糸方向を有する織物を含み、前記少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸が前記縦糸方向および前記横糸方向を構成する、請求項1に記載の布帛。
【請求項6】
ループのコース横列およびループのウェール縦列を有する編地を含み、前記少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸が前記ループのコース横列および前記ループのウェール縦列を構成する、請求項1に記載の布帛。
【請求項7】
前記少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸が、ポリアミドおよびポリエステルよりなる群から選択される合成ポリマーを含む、請求項1に記載の布帛。
【請求項8】
前記布帛に塗布される染料によって、可視スペクトルにおける前記実質的に単色の外観が提供される、請求項2に記載の布帛。
【請求項9】
布帛形成に先だって前記合成ポリマーマルチフィラメント糸に塗布される染料によって、可視スペクトルにおける前記実質的に単色の外観が提供される、請求項2に記載の布帛。
【請求項10】
本発明に従う前記織物または編地が、そのような糸と天然繊維との混合物を含んでなる合成ポリマーマルチフィラメント糸から形成できる、請求項1に記載の布帛。
【請求項11】
カーボンブラックを含む第1のマルチフィラメント、第2のマルチフィラメントの近赤外(NIR)反射率特性を改変する顔料を含む第2のマルチフィラメント、および第3のマルチフィラメントのNIR反射率特性を改変できる添加剤を実質的に含まない第3のマルチフィラメントよりなる群から選択される、少なくとも2つの合成ポリマーマルチフィラメント糸を布帛形成手段に提供する工程と、前記第1、第2、および第3のマルチフィラメント糸のパターンの所定のパターンを有する布帛を形成する工程と、前記布帛を単色に染色する工程とを含む、可視(VIS)スペクトルにおける実質的に単色の外観を保持しながら、NIRスペクトルにおけるカモフラージュ外観を布帛に与える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−519384(P2009−519384A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545755(P2008−545755)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/047446
【国際公開番号】WO2007/070539
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】