説明

可視光を発光する複合蛍光体材料およびその他の蛍光体材料ならびに発光スクリーンを含む可視光生成への応用

【課題】光学的励起により可視光を発光する蛍光体材料、及び該蛍光体材料を含む、光学的励起発光装置を提供する。
【解決手段】励起光を吸収して可視光を発光し、励起光による光学的励起下で、スペクトルが近いが異なるスペクトルにある、スペクトルが重なる波長もしくは帯域で可視光を発光して所望の色を生成する2つ以上の異なる遷移金属化合物を含有する複合蛍光体材料を含む蛍光体材料を使用するための技術および光学的励起される蛍光体に基づく発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文書は、光学的励起により可視光を発光する蛍光体材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫スペクトル領域(400−450nm)および400nm未満の紫外(UV)スペクトル領域の波長の光等の励起光を吸収して可視光を発光する多様な蛍光体材料が開発されている。蛍光体材料は、表示スクリーン、LED装置を含む光源、および可視光の生成を必要とするその他の用途に用いることができる。
【発明の概要】
【0003】
本特許文書は、とりわけ、励起光を吸収して可視光を発光し、かつ、励起光による光学的励起によりスペクトルが近いが異なるスペクトルにある、スペクトルが重なる波長もしくは帯域の可視光を発光して所望の色を生成する2種類以上の異なる遷移金属化合物を含む複合蛍光体材料を含有する蛍光体材料を含む、蛍光体に基づく光学的励起発光装置について記載する。
【0004】
1つの観点では、励起光を吸収して可視光を発光する蛍光体材料を製造する方法が提供される。この方法は、(1)1つ以上の赤色(深赤色)発光窒化蛍光体(たとえば、窒化蛍光体)と、(2)1つ以上の橙赤色発光蛍光体(たとえば、ケイ酸蛍光体)とを選択する段階を備える。選択した各赤色蛍光体および選択した各橙赤色蛍光体は、スペクトルが重なる、スペクトルが近いが異なるスペクトルにある波長もしくは帯域で可視光を発光して所望の光を生成する。この方法は、(1)選択した1つ以上の赤色発光蛍光体と、(2)選択した1つ以上の橙赤色発光蛍光体とを、互いにある比で混合して、所望の色の光を生成する複合蛍光体を形成する段階を備える。
【0005】
別の観点では、蛍光体材料に基づく走査ビーム表示システムは、画像情報を搬送する光パルスを含む同一波長の1本以上の励起ビームを発生する励起光源と、1本以上の励起ビームを受け取って1本以上の励起ビームを走査するビーム走査モジュールと、1本以上の走査励起ビームを受光する位置に設置され、1本以上の励起ビームの光を吸収して可視光を発光し、1本以上の走査励起ビームにより搬送された画像を生成する発光蛍光体材料を有する発光スクリーンとを備えることができ、発光蛍光体材料は、1つ以上の赤色発光蛍光体および1つ以上の橙赤色発光蛍光体の混合物であり、所望の色の光を発光する複合蛍光体材料を含む。
【0006】
さらに別の観点では、蛍光体材料に基づく走査ビーム表示システムは、画像情報を搬送する光パルスを含む同一波長の1本以上の励起ビームを発生する励起光源と、1本以上の励起ビームを受け取って1本以上の励起ビームを走査するビーム走査モジュールと、1本以上の走査励起ビームを受光する位置に設置され、1本以上の励起ビームの光を吸収して可視光を発光し、1本以上の走査励起ビームにより搬送された画像を生成する発光蛍光体材料を有する発光スクリーンとを備えることができ、発光蛍光体材料は、(1)625nmから635nmの赤色光を発光する(Ba,Sr,Ca)AlSiN:Eu、または(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、または(Ca,Sr,Ba)Si:Eu(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xであって、0≦Sr<0.46、0≦Ba<0.56、0≦Ca<0.30、0<Si<0.7、0<EuO<0.38、0<SiC≦0.12であるものと、(2)525nmから530nmの緑色光を発光する(Sr,Ba,Ca)SiO:Euと、(3)455nmから465nmの青色を発光するSrMgSi:Euとを含む。
【0007】
これらおよびその他の観点、例、ならびに実施例を、図面、詳細な説明、および特許請求の範囲に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】異なる組成の蛍光体の光吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す。
【図1B】異なる組成の蛍光体の光吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す。
【0009】
【図1C】表示すべき画像情報を搬送する走査レーザービームによる励起によって、有色光を発光するレーザー励起可能蛍光体材料(たとえば、蛍光体)から形成された発光スクリーンを備える走査レーザー表示システムの例を示す。
【0010】
【図2A】平行な発光ストライプを有するスクリーン構造の一例と、図1Cのスクリーン上の色画素の構造とを示す。
【図2B】平行な発光ストライプを有するスクリーン構造の一例と、図1Cのスクリーン上の色画素の構造とを示す。
【0011】
【図3】図1Cのレーザー表示システムを、スクリーンに複数本のレーザービームを指向させる複数のレーザーを有するプリオブジェクティブ走査構成で実施した例を示す。
【0012】
【図4】図1Cのレーザー表示システムに基づいてポストオブジェクティブ走査ビーム表示システムを実施した例を示す。
【0013】
【図5A】複数本の励起レーザービームおよび1本の不可視サーボビームにより連続的な走査ラインを同時に走査する一例を示す。
【0014】
【図5B】垂直ガルボスキャナおよび水平ポリゴンスキャナがそれぞれ無効位置にある場合における、36個の励起レーザーおよび1個のIRサーボレーサーからなるレーザーアレイにより生成されるスクリーン上のビーム位置マップを示す。
【0015】
【図6】走査サーボビームに基づいたサーボフィードバック制御を用いる走査表示システムの一例を示す。
【0016】
【図7】図6のサーボフィードバック光を検出するサーボ検出器の例を示す。
【0017】
【図8】コントラスト強化層を有する蛍光スクリーン設計を示す。
【0018】
【図9A】各蛍光ストライプにコントラスト強化材料組成を有する蛍光スクリーン設計を示す。
【0019】
【図9B】図9Aにおいてコントラスト強化材料として使用される赤、緑、及び青の色素の透過特性を示す。
【図9C】図9Aにおいてコントラスト強化材料として使用される赤、緑、及び青の色素の透過特性を示す。
【図9D】図9Aにおいてコントラスト強化材料として使用される赤、緑、及び青の色素の透過特性を示す。
【0020】
【図10】本文書に開示される複合蛍光体材料に基づいたLED装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本特許文書に記載される蛍光体材料は、励起光を吸収して所望の色の可視光を発光する1つ以上の活性蛍光体材料(active phosphor materials)を含むことができる。遷移金属イオンが活性化因子であり、かつ所望の可視光を発光する活性蛍光体材料として、遷移金属化合物が一般的に用いられる。蛍光体材料を使用して可視光を生成する装置を、特定の所望の色で可視光を生成し、もしくは複数の特定の色をたとえば白色光として適切に混合した光を生成するよう構成してよい。たとえば、白色LED光源を、LED光により励起される複数の蛍光体材料から発光される複数の色(たとえば、赤、緑、及び青)の可視光を組み合わせて白色出力光を生成するよう設計することができる。別の例として、励起光で照明されるとそれぞれ別々の色の光を発光する複数の蛍光体領域から形成されるスクリーンを用いて色画像を表示することができる。
【0022】
本文書に記載される蛍光体材料は、上記の用途およびその他の用途に用いることができ、同一の励起光による光学的励起により、スペクトルが近いが異なるスペクトルにある、スペクトルが重なる波長もしくは帯域の可視光を発光して所望の色を生成する2つ以上の異なる遷移金属化合物を含む複合蛍光体材料である。このような複合蛍光体材料は、単独で用いて所望の色の光を生成することができ、または別の光と組み合わせて混合光を生成することができる。さらに、特定の色の可視光を発光するよう設計された複合蛍光体材料は、2つ以上の異なる遷移金属化合物と混合して所定の材料特性を達成する1つ以上の付加材料を含んでよい。
【0023】
2つ以上の異なる遷移金属化合物を含む複合蛍光体材料を用いる1つの技術的利点は、複合蛍光体材料により生成される出力光を所望の色とするための遷移金属化合物およびそれらの相対量の選択を制御できることである。したがって、光の色は遷移金属イオンの自然色により限定されず、適切な複合蛍光体材料を選択することにより広範囲の色を生成することができる。2つ以上の異なる色の可視光を混合することにより可視光の色を生成する用途では、これら異なる色を所定の色として選択する自由は、組み合わせにより得られる光を所定の色とするには、特定の色を、混合色の中の他の光の色に基づいて特定の波長もしくは波長範囲に設定しなければならないので、制限される。このような用途では、本文書に記載されるように複合蛍光体材料を用いることにより、特定の色を特定の波長もしくは波長範囲に設定することができる。
【0024】
赤、緑、および青の光を混合することにより有色光を生成する例を考える。緑および青の光の波長の選択が限定される傾向があるのは、緑および青の光を直接発光する光源(たとえば、LEDもしくはレーザーダイオード)、または緑および青の光を発光する蛍光体材料が限定されているからである。したがって、赤色領域の様々な波長で赤色光を発光する複合蛍光体材料を提供することにより赤色を微調整できるようにして、赤、緑、および青の光を混合したときに所望の色が生成されるようにする必要がある。本文書では赤色光を発光する多様な複合蛍光体材料を提供して、LEDに基づいた照明装置および表示スクリーンにおいて蛍光体を設計するときに、遷移金属化合物の組成およびそれらの相対量を制御することにより赤色を調整できるようにする。
【0025】
蛍光体材料に用いられる多様な遷移金属化合物は、その他のものより高価となり得る。したがって、赤色光を発光する複合蛍光体材料を用いるもう1つの利点は、特定の赤色を発光する複合蛍光体材料を設計するときに1つ以上の比較的に廉価な遷移金属化合物をなるべく用いつつ、それでも所望の色および特定の用途におけるその他の性能測定基準を達成して、複合蛍光体材料の全体的コストを削減することである。本文書に記載される技術のこの観点は、表示領域が大きく(たとえば、寸法にして100インチを超える)、大量の蛍光体材料が必要となる大型表示システム用の表示スクリーン等の、蛍光体に基づく所定の技術の実用化においては重要である。
【0026】
波長が405nmもしくはその近傍の光を含むUV光による光学的励起により赤色を発光する周知の材料としては、Eu活性化因子を含有するBa、Ca、およびSrの窒化物に基づいた蛍光体材料がある。Eu活性化因子を含有するBa、Ca、およびSrの窒化物による赤色発光蛍光体を緑および青の光と一緒に用いて、表示用もしくはその他の用途用の色域要件(たとえば、NTSC/PAL色域要件)に基づく所望の色を生成することができる。さらに、Eu活性化因子を含有するBa、Ca、およびSrの窒化物による赤色発光蛍光体は、温度消光において良好な性能を示すことが知られており、温度が上昇しても(たとえば、150℃以上から数百℃へ)十分な発光効率を保ちつつ動作することができる。一般的に温度が高まった状態で動作するLEDに基づく多様な照明装置では、Eu活性化因子を含有するBa、Ca、およびSrの窒化物による赤色発光蛍光体並びにその他の窒化物蛍光体は、赤色発光蛍光体の選択肢となる。
【0027】
しかし、Eu活性化因子を含有するBa、Ca、およびSrの窒化物による蛍光体並びにその他の赤色発光窒化物蛍光体は、一般的に高価である。たとえば、赤色発光窒化物蛍光体の価格は、赤色発光窒化物蛍光体の発光波長より短い波長の赤橙スペクトル領域の光を発光するケイ酸蛍光体の価格よりも著しく高い。Eu活性化因子を含有するBa、Ca、およびSrの窒化物による蛍光体のなかには、ケイ酸蛍光体よりも10倍もしくは50倍超(たとえば、50倍)高い価格で売られているものもある。
【0028】
本文書に開示される赤色発光蛍光体は、ピークにおいて赤色発光窒化物蛍光体の波長よりも短い発光波長で赤色光を発光して、適切なNTSC/PAL色域要件を維持しつつ赤色発光の認知される輝度を高める赤色発光窒化物蛍光体およびケイ酸蛍光体が混合された複合蛍光体を含む。このような窒化物−ケイ酸複合蛍光体は、コストが低いケイ酸蛍光体を加え、コストが高い赤色発光窒化物蛍光体の量を減らすことにより、蛍光体のコストを削減することができる。窒化物蛍光体およびケイ酸蛍光体は、励起光を吸収するときの吸収スペクトルプロファイルが異なるので、窒化物−ケイ酸複合蛍光体の組成は、特定の励起波長における光学的励起効率が最適化されるように構成することができる。さらに、窒化物−ケイ酸複合蛍光体の組成は、高価な赤色発光窒化物蛍光体の高温の温度消光性能を必要とするいくつかのLED装置における上昇した温度よりも低い温度で蛍光体を動作させる所定のLED装置および蛍光体表示装置の温度消光において十分な性能を維持するように調合することができる。
【0029】
図1Aは、異なる波長に発光ピークを有する3つの異なる窒化物蛍光体材料、つまり、Ca窒化物蛍光体CaSi:Eu、Si窒化物蛍光体SrSi:Eu、およびBa窒化物蛍光体BaSi:Euの光吸収および発光のスペクトルプロファイルを示している。遷移金属イオンCa、Si、およびBaを異なる組み合わせにすることにより、異なる発光波長およびスペクトルプロファイルが生じる。3つの窒化物蛍光体の励起光を吸収する光吸収プロファイルも図1Aに示されている。したがって、異なる組み合わせの遷移金属イオンを用いて、たとえば、赤、緑、および青等の異なる色の発光を生成することができる。
【0030】
所望の色の光を発光する1つの蛍光体を用いる代わりに、特定の色を発光する複合蛍光体材料は、所定の励起波長で励起光を吸収して、スペクトルが近いが異なるスペクトルにある、スペクトルが重なる波長もしくは帯域で可視光を発光して所望の色を生成する2つ以上の異なる蛍光体材料(遷移金属化合物)を含む。図1Aに示すように、異なる蛍光体組成は、光吸収スペクトルプロファイルが重なり合うが異なるものとなり得、この観点を用いて異なる蛍光体の混合物を用いることにより、異なる蛍光体の異なるが重なりあう発光を組み合わせて所望の出力色を生成しつつ、励起光の光吸収効率を最適化することができる。
【0031】
図1Bは、405nmの共通の励起光下にある窒化物蛍光体およびケイ酸蛍光体の発光スペクトルプロファイルの例を示す。窒化物蛍光体は、発光ピークが615から630nmにある赤色発光蛍光体であり、ケイ酸蛍光体は、発光ピークが短波長側(「橙色」側)の600から610nmにある近赤色発光蛍光体である。このようなケイ酸蛍光体および窒化物蛍光体の混合物を用いて、図1Bにおいて「窒化物−ケイ酸発光」と表示されている例により示される、これら2つの蛍光体のプロファイルの間にある赤色発光プロファイルを生成することができる。この混合物蛍光体の発光ピークは、600nmと620nmの間にある。ケイ酸蛍光体を加えることにより、発光が615から630nmからより短波長へとシフトするが、シフトする発光ピークを赤色領域に維持してNTSC/PAL色域要件に適合するように混合物を構成することができる。したがって、ケイ酸蛍光体を加えることにより発光波長をシフトさせることで、NTSC/PAL色域要件における色純度が著しく落ちることなく、人間の目により認知される発光される赤色の輝度が上昇する。このシフトは、混合物の組成または窒化物蛍光体とケイ酸蛍光体との比を制御することにより制御することができ、シフトする赤色発光ピークを、たとえば、固定された青色および緑色と合わせて適切な色域を生成する等の用途に望まれる特定の赤色波長に持っていくことができる。複合蛍光体では、窒化物蛍光体の量は、純粋な窒化物蛍光体に比べて減少しているので、コストが低減する。
【0032】
図1Bの複合蛍光体により生成される赤色発光プロファイルをさらに拡大するべく、いくつかの実施例では、追加的なレフカラーフィルタリングを実施して、赤色発光プロファイルを整形することができる。これは、一実施例では、赤色発光複合蛍光体が配置された領域に空間的に重なることで発光された光をフィルタリングする赤色光フィルターを用いて行うことができる。このフィルタリングは、所望の赤色吸収スペクトルプロファイルを有する光フィルタリング材料を複合蛍光体に付加することによっても達成される。図1Bでは、赤色フィルターの分光透過率によって、窒化物−ケイ酸発光と表示された発光プロファイルは整形されて示されている。
【0033】
赤色発光複合蛍光体を構成するには、赤色光もしくは近赤色光を発光する多様な窒化物およびケイ酸の蛍光体が考えられる。赤色発光窒化物蛍光体の例としては、(Ba,Sr,Ca)AlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、および(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、並びに(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xが挙げられ、0≦Sr<0.46、0≦Ba<0.56、0≦Ca<0.30、0<Si<0.7、0<EuO<0.38、0<SiC≦0.12である。Sr、Ba、Ca2、Si、EuO、およびSiCは、最終化合物(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xに存在する化合物である。近赤色発光ケイ酸蛍光体の例としては、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、(Ba,Mg,Eu,Mn)Si、(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Euであって、0≦Ba<0.35、0≦Ca<0.20、0<Eu<0.55、0.1≦Sr<0.65、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euであり、0≦Ba<0.82、0≦Ca<0.57、0<Eu<0.84、0.1<Sr<0.75であるもの、および(Ba,Mg,Eu,Mn)Siであって、0.3≦Ba≦0.80、0.02≦Mg≦0.1、0<Eu≦0.25、0<Mn<0.1であるものが挙げられる。
【0034】
これらの窒化物およびケイ酸の蛍光体に基づいて、赤色発光複合蛍光体を蛍光体の用途における特定の必要性に基づいて形成することができる。一般的に、赤色発光複合蛍光体は、1つ以上の窒化物蛍光体および1つ以上のケイ酸蛍光体を含むことができる。たとえば、1つ以上の窒化物蛍光体の重量パーセントは、複合蛍光体の全重量の90%から10%であってよく、1つ以上のケイ酸蛍光体の重量パーセントは、複合蛍光体の10%から90%であってよい。1つ以上のケイ酸蛍光体と1つ以上の窒化物蛍光体との相対重量比は、1:1(等量)、または複合蛍光体の特定用途における必要性によってはその他の比であってよい。たとえば、いくつかの例では、1つ以上のケイ酸蛍光体の全体量を1つ以上の窒化物蛍光体の全体量と同じ(等量)に設定して、青色および緑色と混合したときに生成できる可能な色の数を増やし、もしくは最大化する所望の赤色を生成する。図1Bの例に戻ると、1つ以上のケイ酸蛍光体と1つ以上の窒化物蛍光体との相対比は、部分的に、複合蛍光体の有効発光波長に基づいて決定することができる。たとえば、赤色領域におけるより長い(したがって、「より暗い」)波長での発光には窒化物蛍光体がより多く必要であり(コストが増加)、赤色領域におけるより短い(したがって、「より明るい」)波長での発光にはケイ酸蛍光体がより多く必要である(コストが減少)。
【0035】
様々な窒化物蛍光体が、良好な温度消光性能を有していることが知られており、高温下で高輝度発光するLED装置に適切である。温度消光性能が窒化物蛍光体よりも低い様々なケイ酸蛍光体は、高輝度LEDおよびその他の装置における蛍光体の候補とは見なされない。周囲温度もしくその近傍または周囲温度からわずかに上昇した温度で蛍光体を動作させる用途においては、蛍光体材料の発光効率、発光波長、およびコストは、温度消光性能よりも重要である。ディスプレイ用途においては、赤色発光窒化物蛍光体を赤色発光窒化物−ケイ酸複合蛍光体で置き換えることにより輝度が高まり、その代償として表示装置における色純度および色域再現が著しく下がらないということは、表示システムの全体性能が大幅に向上するということであり、かつ、表示スクリーン、特に大型表示スクリーンのコストが減少する。
【0036】
光学的励起により発光して画像を生成する蛍光体スクリーンを用いる走査ビーム表示システムは、開示している複合蛍光体を用いる用途の一例である。一実施例では、たとえば、色画像を形成するのに適切な赤色、緑色、および青色の光をそれぞれ生成するようUVレーザービームにより光学的励起可能な異なる3色の蛍光体を、スクリーン上に画素ドットとして、または平行な赤、緑、および青の反復的な蛍光体ストライプとして形成してよい。一般的に、このような走査ビームシステムの蛍光体スクリーンは、たとえば、システムの走査特性、操作期間の大半において出力をオフにしつつ画像を搬送させるべくレーザー出力をオンオフに変調するレーザー励起ビームの変調、LED装置と異なり、蛍光体材料が外気にさらされスクリーン上の広い領域に蛍光体材料が広がるスクリーン設計等の多様な特性がシステムに組み込まれていることにより、周囲温度よりもわずかに上昇した温度で動作する。以下の項では、複合蛍光体材料の利点を活用できるこのような走査ビーム表示システムの技術的詳細を述べる。
【0037】
ここに記載する走査ビーム表示システムの例においては、スクリーン上に堆積させた有色蛍光体材料を励起して色画像を生成する少なくとも1本の走査レーザービームを用いる。走査レーザービームは、赤色、緑色、および青色もしくはその他の可視色の画像を搬送するよう変調され、赤色、緑色、および青色の有色蛍光体材料をそれぞれ赤色画像、緑色画像、および青色画像で励起するよう制御される。したがって、走査レーザービームは、画像を搬送するが、観察者により観察される可視光を直接に生成するのではない。その代わりに、スクリーン上の有色発光蛍光体材料が走査レーザービームのエネルギーを吸収して赤色、緑色、および青色、またはその他の色の可視光を発光し、観察者により観察される実際の色画像を生成する。
【0038】
蛍光体材料に発光もしくはルミネッセンスを生じさせるのに十分なエネルギーを持つ1本以上のレーザービームを用いた蛍光体材料のレーザー励起は、光学的励起の多様な形態のうちの1つである。その他の実施例では、光学的励起は、スクリーンに用いられる蛍光体材料を励起するのに十分なエネルギーを有する非レーザー光源により生成してよい。非レーザー光源の例としては、多様な発光ダイオード(LED)、ランプ、および、高エネルギーの光を可視領域の低エネルギーの光に変換する蛍光体材料を励起するある波長もしくはスペクトル帯域の光を発生するその他の光源が挙げられる。スクリーン上の蛍光体材料を励起する励起光ビームは、蛍光体材料が発光する可視光の周波数よりも高い周波数もしくはスペクトル領域とすることができる。したがって、励起光ビームは、紫スペクトル領域および紫外(UV)スペクトル領域にあってよく、たとえば、420nm未満(たとえば、約405nm)の波長であってよい。以下に記載する例では、紫または紫外のレーザービームが、蛍光体材料(phosphor material)もしくはその他の蛍光体材料(fluorescent material)の励起光の例として使用され、その他の波長の光であってよい。
【0039】
図1Cは、有色蛍光体ストライプを有するスクリーンを用いたレーザー型表示システムの例を示す。または、色画素で構成された発光領域を使用してスクリーン上に画素を形成してよい。システムは、少なくとも1本の走査レーザービーム120を発生してスクリーン101上に投射するレーザーモジュール110を備える。スクリーン101は、垂直方向に平行な有色蛍光体ストライプを有し、2本の隣り合う蛍光体ストライプは、異なる色で発光する異なる蛍光体材料から形成されている。図示の例では、赤色蛍光体はレーザー光を吸収して赤色光を発光し、緑色蛍光体はレーザー光を吸収して緑色光を発光し、青色蛍光体はレーザー光を吸収して青色光を発光する。隣り合う3本の有色蛍光体ストライプは、それぞれ異なる3色の色を有する。図1Cにおいては、ストライプの1つの特定的な空間的色連続体が、赤、緑、青として示されている。その他の連続体を使用してもよい。レーザービーム120は、有色蛍光体の光吸収帯域内の波長であり、通常は、色画像用の可視色である青色、緑色、および赤色よりも短い波長である。例として、有色蛍光体は、420nm未満のスペクトル領域のUV光を吸収して所望の赤色、緑色、および青色の光を生成する蛍光体であってよい。レーザーモジュール110は、ビーム120を生成するUVダイオードレーザー等の1つ以上のレーザー、ビーム120を水平および垂直に走査して1度に1枚の画像フレームをスクリーン101にレンダリングするビーム走査機構、およびビーム120を変調して赤色、緑色、および青色の画像チャネルの情報を搬送させる信号変調機構を有する。このような表示システムを、観察者およびレーザーモジュール110がスクリーン101の互いに反対側に位置するリア走査システムとして構成してよい。または、このような表示システムを、観察者およびレーザーモジュール110が互いにスクリーン101の同じ側に位置するフロント走査システムとして構成してよい。
【0040】
スクリーン101は、たとえば、スクリーン寸法が100インチを超える大型の表示フォーマットを支持するように形成することができる。大型の表示フォーマットは、図1Cの表示システムを複数用いてスクリーン101を積み重ねることで複合型の大型スクリーンを形成することによっても構築することができる。複合大型スクリーン内の各スクリーン101は、それぞれ対応するレーザーモジュール110により照明される。単一スクリーンによる実施形態および複数スクリーンによる実施形態の両方において、赤色光、緑色光、および青色光を発光する蛍光体の総量は、最終の表示フォーマットのサイズにより増大する。したがって、蛍光体のコストは、これらシステムの商業的展開に影響する。
【0041】
図1Cの走査レーザー表示システムにおける多様な特性、モジュール、およびコンポーネントの実施例が、2007年2月15日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2007/004004号(発明の名称「蛍光体スクリーンを用いたサーボ補助走査ビーム表示システム」)(PCT公開公報第WO2007/095329号)、2007年5月4日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2007/068286号(発明の名称「走査ビームディスプレイ用の蛍光体組成」)(PCT公開公報第WO2007/131195号)、2007年5月15日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2007/68989号(発明の名称「走査ビーム表示システム用の多層蛍光体スクリーン」)(PCT公開公報第WO2007/134329号)、および2006年10月25日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2006/041584号(発明の名称「蛍光体スクリーンを用いた走査ビーム表示システム用の光学設計」)(PCT公開公報第WO2007/050662号)に記載されている。上記の特許出願の開示内容の全体を、本願の明細書の一部として参照として組み込む。
【0042】
図2Aは、図1Cのスクリーン101の設計の例を示す。スクリーン101は、走査レーザービーム120を透過させ、かつレーザーモジュール110に対向して走査レーザービーム120を受光する後方基板201を有してよい。第2前方基板202が後方基板201に対して固定されており、リア走査構成として観察者に対向する。基板201と202との間には、有色蛍光体ストライプ層203が配置され、蛍光体ストライプを含んでいる。赤色、緑色、および青色を発光する有色蛍光体ストライプは、それぞれ、「R」、「G」、および「B」で表される。前方基板202は、蛍光体ストライプが発光した赤色、緑色、および青色を透過させる。基板201および202は、ガラスもしくはプラスチックパネルを含む多様な材料から形成してよい。後方基板201は、薄膜層とすることができ、可視エネルギーを観察者に向けて再循環させるよう構成されている。各色画素は、水平方向に隣り合う3本の有色蛍光体ストライプのそれぞれの一部を含み、その垂直方向寸法は、レーザービーム120の垂直方向のビーム拡がりにより規定される。したがって、各色画素は、3色の異なる色(たとえば、赤、緑、および青)の3つのサブ画素を含む。レーザーモジュール110は、1度に1本の水平ラインを、たとえば左から右にレーザービーム120で走査し、そして上から下にスクリーン101を走査する。レーザーモジュール110とスクリーン101との相対的な位置合わせをモニターして、レーザービーム120とスクリーン101上の各画素位置とが適切に位置合わせされるように制御することができる。一実施例では、レーザーモジュール110を、スクリーン101に対して位置が固定されるように制御して、ビーム120の走査が所定の方法で制御され、レーザービーム120とスクリーン101上の各画素位置とが適切に位置合わせされるようにすることができる。
【0043】
図2Aでは、走査レーザービーム120は、画素内の緑色蛍光体ストライプに向けられており、その画素の緑色光を生成する。図2Bは、スクリーン101の挙動を、スクリーン101の表面に垂直な方向B−Bに沿った視点で示す。各有色ストライプは形状が縦長であるので、ビーム120の断面をストライプの方向に沿って細長となるように整形して、画素の各有色ストライプ内におけるビームのフィルファクター(fill factor)を最大化してよい。これは、レーザーモジュール110にビーム整形光学エレメントを用いることにより実現してよい。スクリーン上の蛍光体材料を励起する走査レーザービームを生成するべく用いられる光源は、単一モードレーザーまたはマルチモードレーザーであってよい。レーザーは、細長い方向の蛍光体ストライプに垂直な方向に沿って単一モードを有して、ビーム拡がりが各有色ストライプの幅より小さくそこに収まるようにしてもよい。蛍光体ストライプの細長い方向に沿っては、このレーザービームはマルチモードを有して、蛍光体ストライプに垂直な方向のビーム拡がりよりも大きい領域に広がるようにしてよい。このように、ある方向においては単一モードのレーザービームによりスクリーン上のビームのフットプリントが小さくなるようにし、それに垂直な方向においては複数モードによりスクリーン上のフットプリントが大きくなるようにレーザービームを用いることにより、スクリーン上の細長い有色サブ画素に適合するようにビームを整形することが可能になり、かつ、マルチモードによりビームに十分なレーザー出力を与えて十分な輝度がスクリーン上に保証されるようにすることができる。
【0044】
図3を参照すると、図1Cのレーザーモジュール110の実施例が示されている。複数のレーザーを含むレーザーアレイ310を用いて、表示輝度を強化するべくスクリーン101を同時に走査する複数のレーザービーム312を生成する。信号変調コントローラ320が設けられており、レーザーアレイ310のレーザーを制御および変調して、スクリーン101に表示される画像を搬送するようレーザービーム312を変調する。信号変調コントローラ320は、3つの異なる色チャネル用のデジタル画像信号を生成するデジタル画像プロセッサと、デジタル画像信号を搬送するレーザー制御信号を生成するレーザー駆動回路と有する。レーザー制御信号は、レーザーアレイ310のレーザー、たとえば、レーザーダイオードの電流を変調するべく印加される。
【0045】
ガルボミラー等の垂直方向走査用の走査ミラー340および水平方向走査用のマルチファセットポリゴンスキャナ350を用いることによりビーム走査を実現することができる。走査レンズ360を用いて、走査ビームをポリゴンスキャナ350からスクリーン101に投射することができる。走査レンズ360は、レーザーアレイ310の各レーザーをスクリーン101に結像させるように設計されている。ポリゴンスキャナ350の各反射面は、それぞれN本の水平ラインを同時に走査し、Nはレーザーの数である。図示の例では、レーザービームは、まずガルボミラー340に向けられ、次にガルボミラー340からポリゴンスキャナ350に向けられる。出力された走査ビーム120は、次にスクリーン101に投射される。リレー光学系330がレーザービーム312の光路に配置されており、レーザービーム312の空間特性を補正して、ガルボミラー340およびポリゴンスキャナ350によりスクリーン101に投射される走査ビーム120として走査され、蛍光体を励起し、蛍光体が発光した有色光により画像を生成する密なビーム束332を生成する。リレー光学系モジュール370がスキャナ340と350との間に挿入されており、垂直スキャナ340のリフレクタの反射面をポリゴンスキャナ350の対応する反射面に結像させ、ポリゴンスキャナ350の狭い面から垂直方向にビームがぶれるのを防止する。
【0046】
レーザービーム120は、スクリーン101を空間的に走査して、それぞれの色画素にそれぞれ違う時間に的中する。したがって、各変調ビーム120は、赤色、緑色、および青色の画像信号を各画素においてそれぞれ違う時間に搬送し、複数の画素間でもそれぞれ違う時間に搬送する。したがって、ビーム120は、信号変調コントローラ320により、違う画素には違う時間で画像情報をコードされる。したがって、ビーム走査により、ビーム120に時間領域でコードされた画像信号が、スクリーン101上の空間画素にマップされる。たとえば、変調されたレーザービーム120においては、各色画素時間を、3つの異なる色チャネル用の3つの色サブ画素に対応して3つの連続した時間スロットに等分することができる。ビーム120の変調では、パルス変調技術を用いて、各色の所望のグレースケール、各画素における適切な色の組み合わせ、および所望の画像輝度を生成してよい。
【0047】
一実施例では、2本の隣り合うビームがスクリーン101の水平ライン1本によりスクリーン101上で互いに垂直方向に離間されるように、複数のビーム120を異なる隣り合った垂直位置に向けてスクリーン101に当てる。ガルボミラー340の所定の位置およびポリゴンスキャナ350の所定の位置において、ビーム120はスクリーン101の垂直方向に沿って互いに位置がそろっていなくてよく、水平方向に沿ってスクリーン101上の違う位置にあってよい。ビーム120は、スクリーン101の1箇所だけに当たることができる。
【0048】
一実施例では、ガルボミラー340のある角度位置においては、ポリゴンスキャナ350の回転することで、レーザーアレイ310のN個のレーザーからのビーム120により、スクリーン101上のN本の隣り合った水平ラインからなる1つのスクリーンセグメントが走査される。ガルボミラー340は、ポリゴンによる走査の間、スクリーン101全体が走査されて全画像表示が生成されるまで、上から下へと垂直方向に所定の速度で直線的に傾斜して自己の傾斜角を変化させる。ガルボは、ガルボの垂直角度走査範囲の末端部に達すると自己の最上位置に引き返し、このサイクルは、表示のリフレッシュ速度に同期して繰り返される。
【0049】
別の実施例では、ガルボミラー340の所定の位置およびポリゴンスキャナ350の所定の位置において、ビーム120はスクリーン101の垂直方向に沿って互いに位置がそろっていなくてよく、水平方向に沿ってスクリーン101上の違う位置にあってよい。ビーム120は、スクリーン101の1箇所だけに当たることができる。ガルボミラー340のある固定角度位置においては、ポリゴンスキャナ350が回転することで、レーザーアレイ310のN個のレーザーからのビーム120により、スクリーン101上のN本の隣り合った水平ラインからなる1つのスクリーンセグメントが走査される。1つのスクリーンセグメント全体の水平走査が終わる毎に、N本の水平ラインからなる隣接した次のスクリーンセグメントを走査するようN本のビーム120の全ての垂直方向位置が調整されるように、ガルボミラー340は、別の固定角度位置に調節される。このプロセスは、スクリーン101全体が走査され、全画像表示が生成されるまで、繰り返される。
【0050】
図3に示す走査ビーム表示システムの上記の例では、走査レンズ360がビーム走査装置340および350の下流に配置され、1本以上の走査励起ビーム120をスクリーン101上に集光させる。この光学的構成は、「プリオブジェクティブ」走査システムと呼ばれる。このプリオブジェクティブ構成では、走査レンズ360に向かった走査ビームは、2つの直交する方向に沿って走査される。したがって、走査レンズ360は、2つの直交する方向に沿ってスクリーン101上に走査ビームを集光するよう設計されている。直交し合う方向の両方において適切に集光させるべく、走査レンズ360は、合成レンズとすることができ、しばしば複数のレンズエレメントから形成される。一実施例では、たとえば、走査レンズ360は、入射したビームが、走査レンズの光軸に垂直な2つの直交軸のそれぞれに沿って走査されるときに、スクリーン上の焦点位置と入射走査角(シータ)との間に線形関係を有するように設計された2次元f−シータレンズとすることができる。プリオブジェクティブ構成におけるf−シータレンズ等の2次元走査レンズ360は、2つの直交する走査方向に沿って光学的歪みを示す場合があり、これによりスクリーン101上のビーム位置は曲線を描く。弓形歪みを小さくするべく複数のレンズエレメントで走査レンズ360を構成することができるが、製造が高額となりうる。
【0051】
プリオブジェクティブ走査ビームシステムにおける2次元走査レンズに関連する上記の歪み問題を回避するべく、2次元走査レンズ360をより簡易で低額の1次元走査レンズで置き換えて、ポストオブジェクティブ走査ビーム表示システムを実施することができる。2007年4月30日に出願された米国特許出願第11/742,014号(発明の名称「ポストオブジェクティブ走査ビームシステム」)(米国特許第7,697,183号)には、本願に記載される蛍光体スクリーンに使用するのに適切なポストオブジェクティブ走査ビームシステムの例が記載されており、本願明細書の一部として、参照として組み込む。
【0052】
図4は、図1Cのシステム設計に基づくポストオブジェクティブ走査ビーム表示システムの実施例を示す。複数のレーザーを含むレーザーアレイ310を用いて、表示輝度を強化するべくスクリーン101を同時に走査する複数本のレーザービーム312を生成する。信号変調コントローラ320が設けられており、レーザーアレイ310のレーザーを制御および変調して、スクリーン101に表示される画像を搬送するようレーザービーム312を変調する。ビーム走査は、ポリゴンスキャナ350等の水平スキャナおよび検流計スキャナ(galvanometer scanner)340等の垂直スキャナを含む2スキャナ設計に基づく。ポリゴンスキャナ350の各反射面は、同時にN本の水平ラインを走査し、Nはレーザーの個数である。リレー光学系モジュール330によって、レーザービーム312間の間隔が狭められ、水平走査されるべくポリゴンスキャナ350の面の寸法内に収まるように広がる密なレーザービーム332のセットが形成される。ポリゴンスキャナ350の下流には、1次元水平走査レンズ380が配置され、その下流には、1次元走査レンズ380を介してポリゴンスキャナ350から水平走査された各ビーム332を受光する垂直スキャナ340(たとえば、ガルボミラー)が配置され、水平走査が終わる毎に、ポリゴンスキャナ350の次の面による次の水平走査が始まる前に、水平走査された各ビーム332を垂直走査する。垂直スキャナ340は、2次元走査ビーム390をスクリーン101に向かわせる。
【0053】
水平および垂直走査のこの光学的構成では、1次元走査レンズ380がポリゴンスキャナ140の下流および垂直スキャナ340の上流に配置され、水平走査された各ビームをスクリーン101に集光させ、スクリーン101上の表示画像における水平方向の弓形歪みを許容範囲内に最小化するので、スクリーン101上に、一見して「直線状」の水平走査ラインが生成される。直線状の水平走査ラインを生成可能なこのような1次元走査レンズ380は、同様の性能を有する2次元走査レンズよりも簡易かつ低額である。走査レンズ380の下流において、垂直スキャナ340は、平坦なリフレクタであり、ビームを単純にスクリーン101に反射させて垂直方向に走査し、水平走査された各ビームをスクリーン101上の異なる垂直方向位置に当てて異なる水平ラインを走査させる。垂直スキャナ340のリフレクタの水平方向寸法は、ポリゴンスキャナ350および走査レンズ380から入射する各走査ビームの空間的広がりをカバーする十分な大きさである。図4のシステムは、1次元走査レンズ380が垂直スキャナ340の上流に配置されているので、ポストオブジェクティブ構成である。この特定的な例では、垂直スキャナ340の下流には、レンズもしくはその他の集光エレメントは配置されていない。
【0054】
特に、図4のポストオブジェクティブシステムでは、特定のビームにとって、走査レンズからスクリーン101上の位置までの距離は、垂直スキャナ340の垂直方向走査位置によって変化する。したがって、1次元走査レンズ380が、細長い形状の1次元走査レンズの中心から、直線状の水平ラインに沿って固定的な焦点距離を有するように設計されている場合、各ビームの焦点特性は、スクリーン101上においてぶれないビーム集光を維持するには、垂直スキャナ380の垂直方向走査位置に応じて変化しなければならない。この点においては、1次元走査レンズ380に入射するビームの収束を、垂直スキャナ340の垂直走査位置に基づいて調整する動的集光メカニズムを実施することができる。
【0055】
たとえば、レーザーからポリゴンスキャナ350までの1本以上のレーザービームの光路において、動的集光メカニズムとして、静止レンズおよび動的再集光レンズを用いることができる。各ビームは、動的集光レンズにより、静止レンズよりも上流の位置に集光される。レンズの焦点がレンズの焦点と一致する場合、レンズからの出射光は平行化されている。レンズの焦点間のずれの方向および量により、コリメータレンズからポリゴンスキャナ350への出射光は、発散または収束しうる。したがって、2つのレンズの光軸に沿った相対位置を調整すると、スクリーン101上を走査される光の焦点を調整することができる。再集光レンズアクチュエータを用いて、レンズ間の相対位置を制御信号に応答して調整することができる。この特定的な例では、再集光レンズアクチュエータを用いて、ポリゴンスキャナ350からの光軸に沿って1次元走査レンズ380に向かうビームの収束を、垂直スキャナ340の垂直走査に同期して調整する。図4の垂直スキャナ340は、第1水平スキャナ350の走査速度よりもずっと遅い速度で走査し、したがって、スクリーン101上の垂直走査により生じる集光のぶれ幅は、遅い垂直走査速度での垂直走査時間に応じて変化する。したがって、図1Cのシステムにおいて、速い水平走査速度ではなく遅い方の垂直走査速度において、応答速度の下限を設けて集光調整メカニズムを実施することが可能になる。
【0056】
スクリーン101上のビーム120は、2本の隣り合うビームが、スクリーン101上で互いからスクリーン101の水平ライン1本分だけ垂直方向に沿って離間されるように、隣接する異なる垂直位置に位置付けられる。ガルボミラー540の所定の位置およびポリゴンスキャナ550の所定の位置において、ビーム120はスクリーン101の垂直方向に沿って互いに位置がそろっていなくてよく、水平方向に沿ってスクリーン101上の違う位置にあってよい。ビーム120は、スクリーン101の1箇所だけに当たることができる。
【0057】
図5Aは、上記した、一度に複数の走査レーザービーム120によって実行される1つのスクリーンセグメントの同時走査を示す。視覚的には、ビーム120は、スクリーン101を横切って1度に1つの厚い水平ストロークで「ペイント」して、スクリーン101の画像領域の開始エッジと終了エッジとの間の1つのスクリーンセグメントをカバーし、その後に、さらなる厚い水平ストロークで「ペイント」して、隣接する垂直方向にシフトしたスクリーンセグメントをカバーするペイントブラシのように振舞う。レーザーアレイ310がN=36個のレーザーを含むと仮定すると、スクリーン101の1080本のラインのプログレッシブ走査では、全体を走査するには、垂直に並ぶ30個のスクリーンセグメントを走査する必要がある。したがって、事実上、この構成では、スクリーン101は垂直方向に沿って複数のスクリーンセグメントに分割され、各走査ビームがスクリーンセグメント内のライン1本だけを走査し、そのスクリーンセグメント内に連続的に並ぶラインのうち異なるラインを異なるビームが走査するように、N本の走査ビームは1度に1つのスクリーンセグメントを走査する。1つのスクリーンセグメントが走査されると、N本の走査ビームは同時に動かされ、隣接する次のスクリーンセグメントを走査する。
【0058】
複数のレーザービームを用いる上記の構成では、各走査レーザービーム120は、垂直方向に沿って、スクリーンセグメントの数と同じ本数のラインだけをスクリーン全体にわたって走査する。したがって、水平走査用のポリゴンスキャナ550は、1本のビームによりスクリーン全体のラインの全本数を走査する単一ビーム構成で要求される走査速度よりも遅い速度で動作することができる。スクリーン上の水平ラインの総数が所定の数(たとえば、HDTVでは1080本)である場合、レーザーの数が多いほど、スクリーンセグメントの数は少なくなる。したがって、レーザーが36個の場合、ガルボミラーおよびポリゴンスキャナは、フレーム当たり30本のラインを走査し、レーザーが10個しかない場合は、フレーム当たり全部で108本のラインが走査される。したがって、複数のレーザーを用いることにより、用いられるレーザーの数に略比例する画像輝度を高めることができ、同時に、走査システムの速度を遅くすることもできる。
【0059】
本明細書に記載される走査表示システムは、レーザービームをオン/オフするタイミング、およびスクリーン101に含まれる蛍光体ストライプに対するレーザービームの相対位置を知得して、それらをシステムが特定の画像品質で適切に動作するように許容可能な誤差範囲内で制御するべく、製造処理中に較正することができる。しかし、このシステムのスクリーン101およびレーザーモジュール101に含まれるコンポーネントは、走査装置のジッタ、温度もしくは湿度の変化、重力によるシステム配置の変化、振動による沈降、経年劣化等の多様な要因により、時間が経過するにつれ変化する可能性がある。このような変化は、時間が経つにつれ、スクリーン101に対するレーザー源の配置に影響を与え、したがって、工場で設定された位置付けは、これらの変化により変わる可能性がある。特に、このような変化によって、表示される画像に、視認可能で、望ましくない場合が多い効果が現れる。たとえば、走査励起ビーム120のレーザーパルスが、スクリーンに対する走査ビーム120の水平走査方向における位置ずれにより、当該レーザーパルスが対象とするサブ画素の隣のサブ画素に的中する場合がある。これが生じると、表示される画像の色彩が、その画像の本来の色彩から変わってしまう。したがって、本来の画像では赤色の画素が、スクリーン上では緑色画素として表示されてしまうかもしれない。別の例としては、走査励起ビーム120のレーザーパルスが、スクリーンに対する走査ビーム120の水平走査方向における位置ずれにより、本来対象とするサブ画素およびその本来対象とするサブ画素の隣の隣接サブ画素の両方に的中する場合がある。これが生じると、表示される画像の色彩が、その画像の本来の色彩から変わり、画像解像度が悪化する。画素が小さいほど位置変化の許容誤差が小さいので、スクリーン表示解像度が高いほど、これらの変化による視認可能な効果は増大しうる。さらに、大型スクリーンの場合、各励起ビーム120を走査するときのモーメントアームが大きくなるので、角度誤差によるスクリーン上の位置ずれが大きくなる可能性があるので、スクリーンのサイズが大きくなるほど、位置合わせに影響を及ぼす変化による効果はより明白になりうる。たとえば、既知のビーム角度におけるスクリーン上のレーザービーム位置が時間の経過により変化する場合、結果として画像に色合いのシフトが生じる。この効果は顕著であるので、観察者には望ましくない。
【0060】
所望の画像品質を実現するべく、所望のサブ画素に対する走査ビーム120の適切な位置合わせを維持するための多様な位置合わせメカニズムの実施例を、本明細書で提供する。これらの位置合わせメカニズムにより、スクリーン上の蛍光体領域および蛍光体領域の外部の1つ以上の周辺領域の両方に基準マークが設けられ、励起ビーム120により発生するフィードバック光を蛍光体ストライプが発光する赤色、緑色、および青色の可視光により提供することにより、スクリーン上の走査ビームの位置およびその他の特性を表すことができる。フィードバック光を1つ以上の光サーボセンサを用いて測定して、1つ以上のフィードバックサーボ信号を生成することができ、このフィードバックサーボ信号を用いて、スクリーン上の赤色、緑色、および青色のサブ画素の位置マップを生成する。レーザーモジュール110のサーボ制御により、このフィードバックサーボ信号を処理して、スクリーン上のビーム位置およびビームのその他の特性についての情報を抽出し、それに応じて走査ビーム120の方向およびその他の特性を調整し、表示システムが適切に動作するよう保証する。
【0061】
たとえば、表示領域の外部に配置された観察者には見えない周辺サーボ基準マークを用いるべくフィードバックサーボ制御システムを設けて、蛍光体ストライプに垂直な水平走査方向に沿った水平位置、蛍光体ストライプの長手方向に沿った垂直位置、画像の色(たとえば、色の彩度)および画像の鮮明さを制御するためのスクリーン上のビームの集光、画像輝度およびスクリーン全体における画像輝度の均一性を制御するためのスクリーン上のビーム強度等の多様なビーム特性を制御することができる。別の例としては、表示システムの起動時に、スクリーン較正手順を実行して、スクリーン上のサブ画素の的確な位置を時間領域で含むビーム位置情報を較正マップとして測定することができる。この較正マップをレーザーモジュール110で用いて、所望の色純度を実現するべく、走査ビーム120のタイミング設定および位置付けを制御する。さらに別の例としては、表示システムの通常動作の間、スクリーンの蛍光体領域におけるサーボ基準マークを用いて較正マップを定期的に更新するべく動的サーボ制御システムを設けて、観察者による観察体験に影響を与えることなく、フィードバック光を供給することができる。励起光から蛍光体ストライプ分割体が生成するサーボ光、サーボ制御用のその他の基準マークからのフィードバック光、およびスクリーン較正を用いる例は、参照により組み込んだPCT特許出願第PCT/US2007/004004(発明の名称「蛍光体スクリーンを用いたサーボ補助走査ビーム表示システム」)(PCT公開公報第WO2007/095329号)に記載されている。
【0062】
本願の表示システムは、画像を搬送する励起光ビームを走査するのと同一の走査モジュールによりスクリーン上を走査される所定のサーボビームに基づいたサーボ制御メカニズムを提供する。この所定のサーボビームを用いて、走査励起ビームに対してサーボフィードバック制御を行い、通常の表示動作の間、光が適切に位置合わせされ、かつ、励起ビームによって光パルスが正確に送達されるようにする。この所定のサーボビームは、励起ビームとは異なる光波長を有する。例として、この所定のサーボビームを、人間には不可視のIRサーボビームとすることができる。以下の例では、この所定のサーボビームの特性および挙動を説明するべく、IRサーボビーム130を用いる。
【0063】
図1Cを参照すると、レーザーモジュール110は、所定のサーボビームの例としてIRビーム等の不可視のサーボビーム130を発生する。レーザーモジュール110は、励起ビーム120とともに、スクリーン101をサーボビーム130で走査する。励起ビーム120と異なり、サーボビーム130は画像データを搬送するよう変調されていない。サーボビーム130は、CWビームとすることができる。スクリーン101上のストライプ分割体は、サーボビーム130の光に対して反射性を有し、反射によりフィードバック光132を生成するように形成することができる。サーボビーム130は、励起ビーム120に対して既知の空間的関係を有する。したがって、サーボビーム130の位置付けを用いて、励起ビーム120の位置付けを判定することができる。サーボビーム130と励起ビーム120との間のこの関係性は、スクリーン101の非観察領域にライン開始(SOL)マーク等の基準サーボマークを用いることにより判定することができる。レーザーモジュール101は、フィードバック光132を受光検出してスクリーン101上におけるサーボビーム130の位置付け情報を取得し、この位置付け情報を用いてスクリーン上の励起光120の位置合わせを制御する。
【0064】
サーボビーム130は人間には不可視であり、したがって、システムの通常動作時に画像がスクリーン101に表示されるとき、スクリーン101に認知可能な可視のアーチファクトは生成されない。たとえば、サーボビーム130は、780nmから820nmまでの範囲の波長を有することができる。安全性を考慮して、スクリーン101は、不可視のサーボビーム130がスクリーン101から観察者側に出射しないよう遮蔽するフィルターを有するよう形成することができる。この点において、可視スペクトル領域(たとえば、420nmから680nm)においてだけバンドパス透過範囲を有するカットオフ吸収フィルターを用いて、サーボビーム130および励起ビーム120を遮蔽してよい。サーボビーム130に基づく励起ビーム120のサーボ制御は、システムの通常動作の間、動的に実行することができる。このサーボ構成により、サーボ動作の通常表示モードの間、画像を生成する励起ビーム120に対するマニピュレーションが回避され、したがって、画像を生成する励起ビーム120に対するサーボに関連したマニピュレーションにより生じうる可視のアーチファクトが回避される。
【0065】
さらに、システムが画像を表示しない期間、たとえば、システムの起動期間においては、または励起ビーム120がスクリーン101のアクティブな表示領域の外部にあるときは、スクリーン101により散乱もしくは反射された励起光も、サーボ制御動作に用いてよい。このような場合、光122として参照番号を振られている散乱もしくは反射された励起光は、各レーザービーム120の、たとえば水平方向の位置合わせもしくは垂直方向の位置合わせのためのサーボ制御用のサーボフィードバック光として用いることができる。
【0066】
図3および図4のシステムの例では、サーボビーム130は、1本以上の励起ビーム120とともに、リレー光学系モジュール330Aまたは330B、ビームスキャナ340および350、並びに走査レンズ360または380を含む同一の光路を進むよう方向付けられる。図5Aを参照すると、サーボビーム130は、走査励起ビーム120とともに、スクリーンの垂直方向に沿って、1度に1つのスクリーンセグメントを走査される。サーボビーム130は不可視であり、1本の励起ビーム120の走査経路に重ねることができ、またはいずれの励起ビーム120の経路とも異なる独自の走査経路を行くこともできる。サーボビーム130と各励起ビーム120との空間的関係は、スクリーン101上のサーボビーム130の位置付けを用いて各励起ビーム120の位置付けを推測することができるように、既知のものとして固定されている。
【0067】
サーボビーム130を生成する光源および励起ビーム120を生成する光源は、レーザーアレイであってよい光源モジュールに含まれる半導体レーザーであってよく、レーザーアレイに含まれるレーザーのうち少なくとも1つを、サーボビーム130を生成するサーボレーザーとすることができる。一実施例では、サーボレーザーの位置は、レーザーモジュール110のレーザーアレイに含まれる各励起レーザーに対して既知である。サーボビーム130および各励起ビーム120は、同一のリレー光学系、同一のビームスキャナ、および同一の投射レンズを進むよう方向付けられ、スクリーン101に投射される。したがって、スクリーン101上のサーボビーム130の位置付けは、スクリーン上の各励起ビーム120の位置付けに対して、既知の関係を有する。サーボビーム130と各励起ビーム120とのこの関係性を用い、測定されたサーボビーム130の位置付けに基づいて、励起ビーム120を制御することができる。サーボビーム130と各励起ビーム120との相対位置関係は、たとえば、別に実行される、またはシステムの電源投入期間に実行される較正処理の間に、サーボフィードバックを用いて測定することができる。測定された相対位置関係は、サーボフィードバック制御に用いられる。
【0068】
図5Bは、プロトタイプのプリオブジェクティブ走査表示システムにおいて、垂直ガルボスキャナおよび水平ポリゴンスキャナがそれぞれの無効位置にある場合に、36個の励起レーザーおよび1個のIRサーボレーザーからなるレーザーアレイにより生成されるスクリーン上のビーム位置のマップを示す。36個の励起レーザーは、4×9のレーザーアレイに配置され、IRサーボレーザーは、レーザーアレイの中心に配置される。レーザービームは、スクリーン上で、約20mm×25mmの面積を占める。この例では、垂直方向に隣接する2つの励起レーザー間の垂直方向間隔は、1画素の半分であり、隣接する2つの励起レーザー間の水平方向間隔は、3.54画素である。励起レーザーは、水平方向および垂直方向の両方に沿って空間的に互い違いに配置されているので、1つのスクリーンセグメントの走査ごとに、垂直方向に沿って36個の画素を通る6本の水平ラインをスクリーン上に生成する。動作時には、これらの37本のレーザービームは、図5Aに示す走査に基づいて同時に走査され、1度に1つのスクリーンセグメントを走査し、垂直方向位置が異なる複数のスクリーンセグメントを順次に走査して、スクリーン全体を走査する。IRサーボレーザーは、36個の励起レーザーのそれぞれに対して位置が固定されているので、IRサーボレーザーによりスクリーン101に生成されるサーボビーム130の位置付けは、36個の励起レーザーのそれぞれから出射される励起ビーム120のビームスポットに対して既知の関係を有する。
【0069】
図6は、不可視のサーボビーム130を用いるサーボ制御に基づく走査ビーム表示システムを示す。表示プロセッサ/コントローラ640を用いることで、スクリーン101からサーボフィードバック光132を検出する放射サーボ検出器620からのサーボ検出器信号に基づいて、制御機能および制御知能を提供することができる。単一の検出器620で十分であるが、2つ以上のサーボ検出器620を用いてサーボ検出感度を高めることができる。
【0070】
同様に、1つ以上の放射サーボ検出器630を用いて、スクリーンに励起ビーム120を散乱もしくは反射させることにより発生する励起サーボ光122を収集し、サーボ制御のための更なるフィードバック信号をプロセッサ/コントローラ640に供給してよい。このようにフィードバック制御にサーボ光122を用いることは、IRサーボフィードバック制御と組み合わせて用いられる任意の特性とすることができる。いくつかのシステム実施例では、図6に示すフィードバック光122に基づくフィードバックはなくても、IRサーボフィードバックだけで、励起ビーム120をスクリーン101上の適切な蛍光体ストライプに位置合わせするのに十分である。蛍光体ストライプ分割体が発生するサーボ光122をサーボ制御に用いる例は、参照により組み込んだPCT特許出願第PCT/US2007/004004号(発明の名称「蛍光体スクリーンを用いたサーボ補助走査ビーム表示システム」)(PCT公開公報第WO2007/095329号)に記載されている。
【0071】
図6では、励起ビーム120およびサーボビーム130をスクリーン101に走査して投射する走査投射モジュール610が設けられている。モジュール610は、ポストオブジェクティブ構成においてもプリオブジェクティブ構成においても設けることができる。図示されるように、画像データが表示プロセッサ/コントローラ640にフィードされ、表示プロセッサ/コントローラは、励起レーザー510の信号変調コントローラ520へと、画像データを搬送する画像データ信号を生成する。アレイ510に含まれる励起レーザーのうちサーボレーザーは、画像データを搬送するための変調は実行されない。信号変調コントローラ520は、画像データを含む画像信号を搬送するレーザー変調信号を生成する、それぞれ別のレーザー510に割り当てられたレーザー駆動回路を含むことができる。次に、レーザー制御信号は、レーザーアレイ510に含まれるレーザー、たとえば、レーザーダイオードの電流を変調するべく印加され、レーザービーム512が生成される。表示プロセッサ/コントローラ640は、スクリーン101上の垂直方向ビーム位置を変更するべくレーザー配向を調整したり、各レーザーのDC電力レベルを調整したりするべく、レーザーアレイ510のレーザーに対してレーザー制御信号を生成することも行う。さらに、表示プロセッサ/コントローラ5930は、水平ポリゴンスキャナおよび垂直スキャナを制御し同期させるべく、走査投射モジュール610に、走査制御信号を生成する。
【0072】
図7は、サーボ検出器620によりサーボフィードバック光132を検出するサーボ検出器構成の一例を示す。サーボ検出器620は、不可視のサーボビーム130のサーボビーム波長の光に感度を有し、可視光および励起光等のその他の光への感度は低くなるよう構成された検出器であってよい。サーボフィードバック光132を選択的に透過させ、励起光および可視光等のその他の波長の光を遮断するよう、スクリーン101からの光をフィルタリングするべく、光フィルター710を使用することができる。このようなフィルターにより、多様な光検出器をサーボ検出器として用いることが可能になる。図7は、励起波長のサーボフィードバック光122を検出する光サーボ検出器630の例も示す。サーボ検出器620は、励起ビーム120が有する励起波長の光に感度を有し、サーボビーム130およびスクリーン101から発光された可視光の波長を有する光への感度は低くなるよう構成された検出器であってよい。サーボフィードバック光122を選択的に透過させ、その他の波長の光を遮断するよう、スクリーン101からの光をフィルタリングするべく、光フィルター720を使用することができる。サーボ検出器620および630からのサーボ検出器信号721および722は、サーボ制御動作のためにプロセッサ/コントローラ640に供給される。
【0073】
スクリーンの性能を強化するべく、蛍光体に加えて、さらなる光フィルタリング材料を含めてスクリーンを構成することができる。
【0074】
図8は、蛍光体層820の観察者側にコントラスト強化層810を使用するスクリーン800の一例を示す。蛍光体層820は、互いに平行な蛍光体ストライプを含む。したがって、コントラスト強化層810も、所定の光を透過させ、その他の光の透過を阻止することにより光学的に光をフィルタリングする複数の材料から形成される、対応する互いに平行なストライプを含む。励起光(たとえば、UV光もしくは紫光)による励起に反応して赤色光を発光する赤色蛍光体ストライプ821に対応するコントラスト強化層810のストライプ811は、赤色蛍光体ストライプ821が発光する赤色光を範囲に含む赤色スペクトル帯域を透過させ、緑色光および青色光を含むその他の可視光を吸収もしくは遮断する「赤色」材料から形成される。同様に、UV光による励起に反応して緑色光を発光する緑色蛍光体ストライプに対応するコントラスト強化層810のストライプは、緑色蛍光体が発光する緑色光を範囲に含む緑色スペクトル帯域を透過させ、赤色光および青色光を含むその他の可視光を吸収もしくは遮断する「緑色」材料から形成される。UV光による励起に反応して青色光を発光する青色蛍光体ストライプに対応するコントラスト強化層810のストライプは、青色蛍光体が発光する青色光を範囲に含む青色スペクトル帯域を透過させ、緑色光および赤色光を含むその他の可視光を吸収もしくは遮断する「青色」材料から形成される。コントラスト強化層810に含まれるこれらの対応する互いに平行なストライプは、それぞれ、「R」、「G」、および「B」と符合が与えられている。
【0075】
この例では、コントラスト強化層810は、スクリーンに垂直な方向に沿ってそれぞれ対応する蛍光体領域と空間的に位置がそろって適合する複数のストライプフィルタリング領域を含む。各フィルタリング領域は、対応かつ適合する蛍光体領域が発光する色の光を透過させ、その他の色の光を遮断する。層810に含まれる各フィルタリング領域は、対応する蛍光体領域が発光する色とは異なるその他の色の光を吸収する材料から形成してもよい。適切な材料の例としては、染料(dye)系着色剤および顔料(pigment)系着色剤が挙げられる。さらに、コントラスト強化層510の各フィルタリング領域は、所望の透過帯域を有するバンドパス干渉フィルターを構成する多層構造とすることができる。
【0076】
動作時においては、励起光120(たとえば、UV光)は、蛍光体層820に入射して各蛍光体を励起して、各色の可視光を発光させる。発光された可視光は、コントラスト強化層810を透過して観察者に届く。スクリーン800に入射する周辺光801は、コントラスト強化層810に入射し、コントラスト強化層810を二回通ることにより入射周辺光801の一部が観察者に反射される。したがって、観察者への総光出射802には、蛍光体層820が発光した画像を搬送する有色可視光と、反射周辺光とが含まれる。この反射周辺光は画像を搬送しておらず、したがって蛍光体層820に生成された画像をぼやけさせる性質がある。観察者へと反射されるこの周辺光はコントラスト強化層810を二回通り、したがって二回フィルタリングおよび減衰されているので、反射周辺光の強度は、受光した周辺光の強度の約3分の2だけ弱められている。例として、入射周辺光801のうち緑色および青色の成分は、赤色サブ画素に入射する周辺光801の光束の約3分の2を占める。入射周辺光801の緑色および青色の成分は、コントラスト強化層810により遮断される。周辺光のうち、コントラスト強化層810の赤色フィルター材料の透過帯域内の赤色成分だけが層810を透過し、透過した赤色周辺光の一部が観察者に反射し返される。反射周辺光のこの一部は、下層の有色蛍光体ストライプにより形成されるサブ画素と本質的に同一色であり、したがってカラーコントラストは低下しない。
【0077】
各サブ画素の表示コントラストを強化するためのコントラスト強化層810における上記の色選択的吸収材料の使用は、別途コントラスト強化層を設けずに、各サブ画素の発光蛍光体材料に同様の材料を混合することによっても実施することができる。一実施例では、蛍光体層構成における各蛍光体領域を、蛍光体材料と、蛍光体材料が発光する光を透過させ、その他の色の光を吸収する色選択的吸収材料と、の混合物から形成することができる。したがって、コントラスト強化特性を各サブ画素に組み込んで、観察者に反射される周辺光を減少させる。
【0078】
図9Aは、互いに平行な蛍光体ストライプから構成される共通の蛍光体層910において、赤色光、緑色光、および青色光をそれぞれ発光するコントラスト強化特性を組み込んだ赤色、緑色、および青色の蛍光体材料を使用する別の実施例を示す。3本の連続する赤色、緑色、および青色の蛍光体ストライプ911、912、および913を考える。赤色蛍光体ストライプ911の材料は、赤色光を発光可能な赤色蛍光体と、赤色光を透過させ、緑色光および青色光を含むその他の光を吸収する赤色インクもしくは赤色色素との混合物である。さらに、赤色インクもしくは赤色色素は、図9Bに示すような透過特性930を有するものであってよい。赤色蛍光体には赤色インクもしくは赤色色素が混合されているので、特筆すべき特性の1つは、赤色インクもしくは赤色色素が約420nmの波長未満(たとえば、405nm)を実質的に透過させて(〜100%)、励起光の吸収を防止することである。さらに、赤色インクもしくは赤色色素は、約580nmを超える波長を実質的に透過させて、赤色蛍光体から発光された赤色を透過させることができる。
【0079】
緑色蛍光体ストライプ912の材料は、緑色光を発光する緑色蛍光体と、緑色光を透過させ、赤色光および青色光を含むその他の光を吸収する緑色インクもしくは緑色色素との混合物である。さらに、緑色インクもしくは緑色色素は、図9Cに示すような透過特性940を有するものであってよい。緑色蛍光体には緑色インクもしくは緑色色素が混合されているので、特筆すべき特性の1つは、緑色インクもしくは緑色色素が約420nmの波長未満を実質的に透過させて(〜100%)、励起光の吸収を防止することである。さらに、約480nmを超え、かつ約580nmを下回る波長範囲を実質的に透過させて、緑色蛍光体から発光された緑色を透過させることができる。
【0080】
青色蛍光体ストライプ913の材料は、青色を発光する青色蛍光体と、青色光を透過させ、赤色光および緑色光を含むその他の光を吸収する青色インクもしくは青色色素との混合物である。さらに、青色インクもしくは青色色素は、図9Dに示すような透過特性950を有するものであってよい。青色蛍光体には青色インクもしくは青色色素が混合されているので、特筆すべき特性の1つは、青色インクもしくは青色色素が約480nmの波長未満を実質的に透過させて(〜100%)、励起光(〜420nm未満)の吸収を防止し、かつ青色蛍光体から発光された青色を透過させることができることである。
【0081】
図1Bを参照すると、ケイ酸蛍光体および窒化物蛍光体を含む複合蛍光体材料から発光される赤色光のスペクトルプロファイルを制御するさらなる光フィルタリングとして示される赤色フィルタリングは、図8のフィルターストライプおよび図9Aの赤色インクもしくは赤色色素により実現することができ、赤色複合蛍光体材料に赤色インクもしくは赤色色素を混合して、発光された赤色光を透過させ、そのスペクトルプロファイルを制御し、かつ緑色光および青色光を含むその他の光を吸収させる。
【0082】
図10は、本文書に開示される複合蛍光体材料に基づくLED装置を示す。本装置は、蛍光体材料を収容するLED装置筐体と、装置筐体の透過部分から出射する可視光を蛍光体材料に発光させるUV光を発生するLED照明とを備える。LED照明を駆動するLED駆動回路が設けられている。蛍光体材料は、白色光もしくは有色光を発生するべく1つ以上の複合材料を含むことができる。
【0083】
蛍光体が発光する赤色光、緑色光、および青色光を混色することにより再現可能な最大数の色が必要とされる所定の用途では、窒化物赤色発光蛍光体を用いることで深赤色光を発生することができ、橙赤色ケイ酸蛍光体との混合は不要である。このような用途としては、図1Cの構成に基づく所定の走査ビーム表示があってよい。純色、再度、および色相を生成する忠実度を高めるべく、特定の青色蛍光体および緑色蛍光体と組み合わせた純窒化物赤色蛍光体に基づいて、多様な蛍光体の組み合わせのうち、以下の例を有利に使用することができる。
(1)(Ba,Sr,Ca)AlSiN:Eu(625nmから635nmの赤色)、(Sr,BaCa)SiO:Eu(525nmから530nmの緑色)、およびSrMgSi:Eu(455nmから465nmの青色)
(2)(Ca,Sr,Ba)Si:Eu(625nmから635nmの赤色)、(Sr、Ba、Ca)SiO:Eu(525nmから530nmの緑色)、SrMgSi:Eu(青色)
(3)(Ca,Sr,Ba)Si:Eu(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xであって0≦Sr<0.46、0≦Ba<0.56、0≦Ca<0.30、0<Si<0.7、0<EuO<0.38、0<SiC≦0.12(625nmから635nmの赤色)、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu(525nmから530nmの緑色)、SrMgSi:Eu(455nmから465nmの青色)
【0084】
本特許文書は多くの特定事項を含むが、これらを発明の範囲もしくは特許請求の範囲を限定するものとみなすべきでなく、発明の特定の実施形態に固有の特性の記載とみなすべきである。別々の実施形態の文脈で本特許文書に記載された所定の特性を、一つの実施形態で組み合わせて実施することもできる。反対に、一つの実施形態の文脈で記載された様々な特性を、複数の実施形態で別々に実施することもでき、もしくは任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特性は、所定の組み合わせにおいて機能すると上において記載され、特許請求の範囲でも第一にはそのように記載されるかもしれないが、特許請求される組み合わせのうちの1つ以上の特性を、場合によっては組み合わせから除外することができ、特許請求される組み合わせを、サブコンビネーションもしくはサブコンビネーションの変形に向けてもよい。
【0085】
開示された実施形態は少数にすぎない。しかし、記載された実施形態の変形例および増強例ならびにその他の実施形態を、本特許文書に記載し図示した内容に基づいて考え出すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を搬送する光パルスを有する同一波長の1本以上の励起ビームを発生する励起光源と、
前記1本以上の励起ビームを受光し、前記1本以上の励起ビームを走査するビーム走査モジュールと、
前記1本以上の走査励起ビームを受光するよう位置付けられ、前記1本以上の励起ビームの光を吸収して可視光を発光し、前記1本以上の走査励起ビームにより搬送される画像を生成する発光蛍光体材料を含む発光スクリーンと
を備え、
前記発光蛍光体材料は、1つ以上の赤色発光蛍光体および1つ以上の橙赤色発光蛍光体の混合物でありかつ所望の色の光を発光する複合蛍光体材料を含む
蛍光体材料に基づく走査ビーム表示システム。
【請求項2】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体は、(Ba,Sr,Ca)AlSiN:Euを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項3】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体は、(Ca,Sr,Ba)Si:Euを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項4】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体は、(Ca,Sr,Ba)Si:Euを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項5】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体は、(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xであって、0≦Sr<0.46、0≦Ba<0.56、0≦Ca<0.30、0<Si<0.7、0<EuO<0.38、0<SiC≦0.12であるものを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項6】
前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体は、(Sr,Ba,Ca)SiO:Euを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項7】
前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体は、(Ba,Mg,Eu,Mn)Siを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項8】
前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体は、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項9】
前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体は、(Sr,Ba,Ca)SiO:Euであって、0≦Ba<0.35、0≦Ca<0.20、0<Eu<0.55、0.1≦Sr<0.65であるものを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項10】
前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体は、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euであって、0≦Ba<0.82、0≦Ca<0.57、0<Eu<0.84、0.1<Sr<0.75であるものを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項11】
前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体は、(Ba,Mg,Eu,Mn)Siであって、0.3≦Ba≦0.80、0.02≦Mg≦0.1、0<Eu≦0.25、0<Mn<0.1であるものを含む請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項12】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体の重量パーセントは、前記複合蛍光体の全重量の90%から10%であり、前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体の重量パーセントは、前記複合蛍光体の10%から90%である請求項1に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項13】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体の前記重量パーセントは、前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体の前記重量パーセントと等しい請求項12に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項14】
前記1つ以上の赤色発光蛍光体の前記重量パーセントは50%であり、前記1つ以上の橙赤色発光蛍光体の前記重量パーセントは50%である請求項12に記載の走査ビーム表示システム。
【請求項15】
励起光を吸収して可視光を発光し、前記励起光による光学的励起下で、スペクトルが近いが異なるスペクトルにある、スペクトルが重なる波長もしくは帯域で可視光を発光して所望の色を生成する2つ以上の異なる遷移金属化合物を含有する複合蛍光体材料を含む蛍光体材料を備える蛍光体に基づく発光装置。
【請求項16】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ba,Sr,Ca)AlSiN:Euを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ca,Sr,Ba)Si:Euを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項18】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ca,Sr,Ba)Si:Euを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項19】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xであって、0≦Sr<0.46、0≦Ba<0.56、0≦Ca<0.30、0<Si<0.7、0<EuO<0.38、0<SiC≦0.12であるものを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項20】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Sr,Ba,Ca)SiO:Euを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項21】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ba,Mg,Eu,Mn)Siを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項22】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項23】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Sr,Ba,Ca)SiO:Euであって、0≦Ba<0.35、0≦Ca<0.20、0<Eu<0.55、0.1≦Sr<0.65であるものを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項24】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euであって、0≦Ba<0.82、0≦Ca<0.57、0<Eu<0.84、0.1<Sr<0.75であるものを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項25】
前記異なる遷移金属化合物の1つは、(Ba,Mg,Eu,Mn)Siであって、0.3≦Ba≦0.80、0.02≦Mg≦0.1、0<Eu≦0.25、0<Mn<0.1であるものを含む請求項15に記載の発光装置。
【請求項26】
励起光を吸収することにより可視光を発光する蛍光体材料を製造する方法であって、
(1)1つ以上の窒化物蛍光体と、(2)1つ以上のケイ酸蛍光体とを選択する段階と、
(1)選択された前記1つ以上の窒化物蛍光体と、(2)選択された前記1つ以上のケイ酸蛍光体とを、所望の色で光を生成する複合蛍光体が形成される互いに対する比で混合する段階と
を備え、
選択された各窒化物蛍光体および選択された各ケイ酸蛍光体は、スペクトルが近いが異なるスペクトルにある、スペクトルが重なる波長もしくは帯域で可視光を発光して、前記所望の色を生成する
方法。
【請求項27】
前記複合蛍光体の(1)選択された前記1つ以上の窒化物蛍光体および(2)選択された前記1つ以上のケイ酸蛍光体の両方から発光される光をフィルタリングする光フィルタリング材料を使用して前記所望の色の前記光のスペクトルプロファイルを補正する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
画像情報を搬送する光パルスを有する同一波長の1本以上の励起ビームを発生する励起光源と、
前記1本以上の励起ビームを受光し、前記1本以上の励起ビームを走査するビーム走査モジュールと、
前記1本以上の走査励起ビームを受光するよう位置付けられ、前記1本以上の励起ビームの光を吸収して可視光を発光し、前記1本以上の走査励起ビームに搬送される画像を生成する発光蛍光体材料を含む発光スクリーンと
を備え、
前記発光蛍光体材料は、(1)625nmから635nmの赤色光を発光する(Ba,Sr,Ca)AlSiN、または(CA,Sr、Ba)Si:Eu、または(Ca,Sr,Ba)Si:Eu(Ba,Ca,Sr,Eu)Si8−2Xであって、0≦Sr<0.46、0≦Ba<0.56、0≦Ca<0.30、0<Si<0.7、0<EuO<0.38、0<SiC≦0.12であるものと、(2)525nmから530nmの緑色光を発光する(Sr,Ba,Ca)SiO:Euと、(3)455nmから465nmの青色を発光するSrMgSi:Euとを含む
蛍光体材料に基づく走査ビーム表示システム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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