説明

可視光線通信を利用したデマンド制御システム

【課題】デマンド制御システムにおいて、可視光線通信を利用してOA機器の消費電力を制御することができるようにする。
【解決手段】システム10は、デマンドの予測に基づいて設備をコントロールするデマンドコントロール装置14と、室内12に設けられ、デマンドコントロール装置14からの信号に基づいて動作する可視光源20を有する照明装置16と、照明装置16と同じ室内12に設けられたOA機器18とを有する。OA機器18は、可視光源20が発信した光信号を受信する受信部22と、受信部22により受信された光信号に基づいてOA機器18の消費電力を制御する制御部24とを有する。この構成によれば、可視光線通信を利用してOA機器18の消費電力を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線通信を利用したデマンド制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力需要家の電力需要であるデマンドが、契約電力に基づく最大デマンドを超えないように設備を制御するデマンド制御システムが知られている。このシステムにおいては、デマンドの予測値が最大デマンドを超える可能性がある場合、予め、負荷である設備を停止させる、あるいは低い消費電力で運転させることで、デマンドの削減を図っている。
【0003】
下記特許文献1には、デマンド指令に基づいて空調機の運転を切り替えて、デマンドの削減を図るデマンドコントロールに関する技術が開示されている。
【0004】
下記特許文献2には、可視光線通信を利用した技術として、照明装置の光源が発信した光信号を受信して通信する光通信の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−18687号公報
【特許文献2】特開2004−312393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のデマンド制御システムにおいては、デマンドの予測に基づいて設備をコントロールするデマンドコントロール装置と、その対象となる設備とが有線の制御線を介して接続される。このように従来のデマンド制御システムでは、制御線の敷設が必要になる。
【0007】
このため、建物内におけるデマンド制御システムの制御対象となる設備が、手間とコストを考慮して、大きな電力を消費しかつ比較的台数の少ない機器、例えば空調機、昇降機、照明装置に限定されてしまう。また、このような、ほぼ移設することのない装置に対して接続される制御線は、通常、建物の建設時に敷設される。
【0008】
しかしながら、近年の建物、特にオフィスビルにおいては、室内にOA機器が多く設けられ、建物全体のデマンドに対するそれらのOA機器の消費電力の割合が大きくなりつつある。このようなOA機器を、デマンド制御システムの制御対象にするためには、新たに制御線を敷設しなければならず、敷設工事の手間やコストがかかってしまう。さらに、その敷設工事には、建物利用者との工事の日程調整、または建物利用者に対する利用制限の調整などが必要になるが、これらの調整が容易ではないという問題がある。また、例えばパソコンのようなOA機器の場合、インターネットなどのネットワーク回線を制御線として共用することも考えられるが、デマンド制御システム側にも外部からの不正アクセスやウィルスなどのセキュリティ対策が必要になるとともに、ネットワーク回線側の装置の不具合による回線不通でデマンド制御を行うことができなくなってしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、OA機器などの比較的移設や移動し易い機器や装置に対して物理的な制御線を敷設することなく、OA機器の消費電力を制御することができる可視光線通信を利用したデマンド制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の可視光線通信を利用したデマンド制御システムは、デマンドの予測に基づいて設備をコントロールするデマンドコントロール装置と、室内に設けられ、デマンドコントロール装置からの信号に基づいて動作する可視光源を有する照明装置と、照明装置と同じ室内に設けられたOA機器と、を有し、OA機器は、可視光源が発信した光信号を受信する受信部と、受信部により受信された光信号に基づいてOA機器の消費電力を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、光信号は、デマンドコントローラ装置の警報レベルに関する情報を含み、制御部は、警報レベルが大きくなった場合、OA機器に予め設定された省エネモードに切り替えることができる。
【0012】
また、光信号は、デマンドコントローラ装置の警報レベルに関する情報を含み、制御部は、警報レベルが大きくなるにつれてOA機器の消費電力を抑制するように制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可視光線通信を利用したデマンド制御システムによれば、OA機器などの比較的移設や移動し易い機器や装置に対して物理的な制御線を敷設することなく、OA機器の消費電力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る可視光線通信を利用したデマンド制御システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るデマンド制御システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る可視光線通信を利用したデマンド制御システムの実施形態について、図を用いて説明する。一例として、このシステムが導入される建物の一つの室内を挙げ、この室内に設けられるOA機器を制御するデマンド制御システムについて説明する。なお、本発明は、この態様に限らず、建物全体、または建物内の複数の室内のOA機器を対象にするデマンド制御システムにも適用することができる。
【0016】
図1は、本実施形態の可視光線通信を利用したデマンド制御システム(以下、単に「システム」と記す)10の構成を示す図である。システム10は、上述したように、室内12に設けられるOA機器を制御する装置である。しかし、本実施形態のシステム10は、この構成に限定されず、建物内におけるその他の設備、例えば空調機、昇降機、照明装置を、従来どおり制御線を介して制御することもできる。
【0017】
システム10は、デマンドの予測に基づいて設備をコントロールするデマンドコントロール装置14を有する。デマンドコントロール装置14は、建物に設けられた電力会社の取引メータに、例えばパルス検出器を介して接続されている。デマンドコントロール装置14は、パルス検出器により測定される電力量に基づいて、所定のデマンド時限の最終時点におけるデマンドの予測値を算出する。そして、デマンドコントロール装置14は、その予測値と最大デマンドとに基づいて警報レベルを発報する。この警報レベルは、1つ、または複数の段階に設定される。警報レベルが複数の段階に設定される場合、デマンドコントロール装置14は、予測値と最大デマンドの差が小さくなるにつれて、例えばレベルが大きくなるように警報レベルを発報することができる。
【0018】
室内12とは、利用者が利用する部屋であり、例えばオフィスビルなどの建物の執務スペースや会議室のことである。本実施形態の室内12には、照明装置16とOA機器18とが設けられる。
【0019】
照明装置16は、可視光で室内12を照らして明るくする装置であり、例えば天井に複数設置される。照明装置16は、LEDからなる可視光源20と、この可視光源20を点滅させる回路(図示せず)とを有する。なお、本実施形態では、可視光源20がLEDである場合について説明するが、本発明はこの構成に限定されず、点滅可能な光源であれば、可視光源20は有機EL、電球または蛍光灯であってもよい。
【0020】
照明装置16の回路は、照明装置16を操作する操作部(図示せず)と、デマンドコントロール装置14とがそれぞれ接続されている。操作部は、例えば室内12の壁面に設置され、照明装置16を操作するスイッチである。操作部の操作により、回路は、可視光源20の点灯及び消灯を行うことができる。
【0021】
また、照明装置16の回路は、デマンドコントロール装置14から出力される信号に基づいて、可視光源20の点滅を行うことができる。具体的には、各警報レベルにそれぞれ対応した可視光源20の点滅パターンが予め設定されており、回路は、デマンドコントロール装置14から発報される警報レベルに基づいて、その警報レベルに対応する点滅パターンで可視光源20の点滅を行う。この点滅が光信号に対応する。
【0022】
OA機器18は、例えば執務用のパソコンであり、例えば各デスクの上にそれぞれ配置される。OA機器18は、可視光源20から発信された光信号を受信する受信部22と、受信部22により受信された光信号に基づいてOA機器18の消費電力を制御する制御部24とを有する。
【0023】
制御部24は、一つの態様では、ハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現される制御ユニットである。具体的には、制御部24の機能は、記録媒体に記録された制御プログラムがメモリに読み出されてCPU(Central Processing Unit)により実行されることによって実現される。制御プログラムは、記録媒体に記録されて提供されることが可能である。ただし、制御部24は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。また、制御部24は、パソコンに予め組み込まれたソフトウェアとCPUにより実現されてもよく、または外付けの装置により実現されてもよい。
【0024】
制御部24は、各光信号にそれぞれ対応した警報レベルが予め設定されており、警報レベルに応じてOA機器の消費電力を制御する。
【0025】
具体的には、制御部24は、警報レベルが大きくなった場合、OA機器に予め設定された省エネモードに切り替える。省エネモードとは、パソコンのディスプレイのバックライトの出力を低下させるモード、パソコンのCPUの出力を低下させるモード、またはこれらを組み合わせたモードなどのことである。
【0026】
また、制御部24は、警報レベルが大きくなるにつれてOA機器の消費電力を抑制するように制御することもできる。例えば、警報レベルが大きくなるにつれて、上記の省エネモードを徐々に組み合わせ、パソコンの消費電力の抑制を徐々に大きくすることもできる。さらに、警報レベルが最大になった場合、パソコンの電源を遮断して、そのパソコンの消費電力を完全に無くすこともできる。
【0027】
次に、本実施形態に係るシステム10の制御動作の一例を、図2を用いて説明する。なお、この制御動作では、デマンドコントロール装置14が、デマンドの予測値と最大デマンドとに基づき警報レベルを上げる段階であると判断した時点をスタートとする。
【0028】
まず、ステップS101において、デマンドコントロール装置14により警報レベルが報知される。そして、この警報レベルに関する信号が、照明装置16へ出力される。
【0029】
ステップS102では、照明装置16の回路によって、受信した警報レベルに対応する可視光源20の点滅パターンに基づいて可視光源20が動作する。そして、可視光源20の点滅による光信号が室内12に出力される。
【0030】
そして、ステップS103で、受信部22により、可視光源20の光信号が受信され、その信号が制御部24に送られる。
【0031】
最後に、ステップS104において、制御部24により、警報レベルの情報を含む光信号に基づくOA機器、すなわちパソコンの消費電力抑制に関する制御が行われ、本制御動作が終了する。
【0032】
本実施形態によれば、従来のデマンド制御システムのように、デマンドコントロール装置と、その装置の制御対象となるOA機器とを、わざわざ有線の制御線を介して接続することなく、可視光通信を利用してOA機器の消費電力を制御することができる。しかも、その可視光通信は、OA機器が設けられる室内の照明装置により行われるので、新たな設備投資のコストを抑制することができる。また、本実施形態によれば、パソコンのようなOA機器が接続されるインターネットなどのネットワーク回線を共用する必要もないので、その回線の状態に影響を受けず、その回線を介した外部からの不正アクセスやウィルスなどのセキュリティ対策をデマンド制御システム側で行う必要もない。
【0033】
本実施形態においては、OA機器18がパソコンである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。照明装置16と同じ室内に設けられるのであれば、テレビ、プリンタ、ファクシミリ、複写機、またはこれらを組み合わせた機器であってもよく、比較的移設や移動し易い機器や装置であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 可視光線通信を利用したデマンド制御システム、12 室内、14 デマンドコントロール装置、16 照明装置、18 OA機器、20 可視光源、22 受信部、24 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デマンドの予測に基づいて設備をコントロールするデマンドコントロール装置と、
室内に設けられ、デマンドコントロール装置からの信号に基づいて動作する可視光源を有する照明装置と、
照明装置と同じ室内に設けられたOA機器と、
を有し、
OA機器は、
可視光源が発信した光信号を受信する受信部と、
受信部により受信された光信号に基づいてOA機器の消費電力を制御する制御部と、
を有することを特徴とする可視光線通信を利用したデマンド制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の可視光線通信を利用したデマンド制御システムにおいて、
光信号は、デマンドコントローラ装置の警報レベルに関する情報を含み、
制御部は、警報レベルが大きくなった場合、OA機器に予め設定された省エネモードに切り替える、
ことを特徴とする可視光線通信を利用したデマンド制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の可視光線通信を利用したデマンド制御システムにおいて、
光信号は、デマンドコントローラ装置の警報レベルに関する情報を含み、
制御部は、警報レベルが大きくなるにつれてOA機器の消費電力を抑制するように制御する、
ことを特徴とする可視光線通信を利用したデマンド制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−186965(P2012−186965A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49797(P2011−49797)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】