説明

可視範囲または近赤外線範囲において光を放出する発光材料および形成方法

発光材料およびそのような材料を形成する方法が、本明細書において説明される。一実施形態において、発光材料は、式:[ASnX’’X’’x’’][ドーパント]を有し、Aは、一価の陽イオンとして発光材料内に含まれ、X、X’、およびX’’は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択され、aは、1から5までの範囲内にあり、bは、1から3までの範囲内にあり、xとx’とx’’との合計は、a+2bであり、少なくともX’は、x’/(a+2b)≧1/5であるようなヨウ素である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第61/267,756号(2009年12月8日出願)の利益を主張し、この出願の開示は、その全体が参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、発光材料に関する。より具体的には、本発明は、可視範囲または近赤外線範囲において光を放出する発光材料、およびそのような材料を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ソーラーモジュールは、太陽放射エネルギーを、外部負荷に送達され、有用な作用を果たす電気に変換するように動作する。ソーラーモジュールは、典型的には、並列、直列、またはそれらの組み合わせで接続することができる太陽(「PV」)電池集合を含む。最も一般的な種類のPV電池は、結晶シリコン系のp−n接合素子である。他の種類のPV電池は、非結晶シリコン、多結晶シリコン、ゲルマニウム、有機材料、およびガリウムヒ素等のIII−V族半導体材料系であり得る。
【0004】
既存のソーラーモジュールの動作の際に、入射太陽放射は、PV電池の表面下に透過し、PV電池内に吸収される。太陽放射が、表面下に透過する深度は、PV電池の吸収係数に依存し得る。シリコン系PV電池の場合、シリコンの吸収係数は、太陽放射の波長に伴って変動する。例えば、900nmにおける太陽放射の場合、シリコンは、吸収係数約100cm−1を有し、太陽放射は、深度約100μmまで透過することができる。対照的に、450nmにおける太陽放射の場合、吸収係数は、約10cm−1を上回り、太陽放射は、深度約1μmまで透過することができる。PV電池内の特定の深度において、太陽放射の吸収は、電子−正孔対の形態として、電荷キャリアを産生する。電子は、一方の電極を通して、PV電池から出射する一方、正孔は、別の電極を通して、PV電池から出射する。正味効果として、入射太陽放射によって駆動されるPV電池を通る電流の流動をもたらす。すべての入射太陽放射を有用な電気エネルギーに変換不能であることは、ソーラーモジュールの損失または非効率を表す。
【0005】
現在のソーラーモジュールは、典型的には、入射太陽放射を有用な電気エネルギーに効率的に変換する能力に関して、いくつかの技術的制限に悩まされている。重大な損失機構のうちの1つは、典型的には、入射太陽スペクトルとPV電池の吸収スペクトルとの間の不整合からもたらされる。シリコン系PV電池の場合、シリコンのバンドギャップエネルギーを上回るエネルギーを有する光子は、過剰なエネルギーを有する光励起電子−正孔対の産生につながり得る。そのような過剰なエネルギーは、典型的には、電気エネルギーに変換されず、むしろ、典型的には、ホット電荷キャリア緩和または熱化を介して熱として損失される。この熱は、PV電池の温度を上昇させ、その結果、電子−正孔対を産生するその能力の観点から、PV電池の効率を低下させ得る。いくつかの事例では、PV電池の効率は、1℃温度が上昇する毎に約0.5%低下し得る。これらの熱化損失と併せて、シリコンのバンドギャップエネルギー未満のエネルギーを有する光子は、典型的には、吸収されず、したがって、典型的には、電気エネルギーへの変換に寄与しない。その結果、シリコンのバンドギャップエネルギー近傍の小範囲の入射太陽スペクトルが、有用な電気エネルギーに効率的に変換することができる。
【0006】
また、PV電池の接合設計に従って、電子−正孔対の電荷分離は、典型的には、厚さ約1μmに限定され得る空乏領域に閉じ込められる。空乏領域からの拡散またはドリフト距離より遠くにおいて産生される、電子−正孔対は、典型的には、電荷分離せず、したがって、典型的には、電気エネルギーへの変換に寄与しない。空乏領域は、典型的には、PV電池の表面下の特定の深度において、PV電池内に位置付けられる。入射太陽スペクトルにわたるシリコンの吸収係数の変動は、空乏領域の深度および他の特性に関して妥協を課し、PV電池の効率を低下させ得る。例えば、空乏領域の特定の深度が、ある波長における太陽放射に望ましい可能性があるが、同一深度は、より短い波長における太陽放射に望ましくない可能性がある。特に、より短い波長の太陽放射は、より少ない程度で、表面下に透過し得るため、生成される電子−正孔対は、空乏領域から遠過ぎて、電流に寄与することができない。
【0007】
この背景に照らして、本明細書に説明される発光材料を開発する必要性が生じる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の種々の実施形態による発光材料は、いくつかの望ましい特性を呈することができる。いくつかの実施形態において、発光材料は、高い量子効率、狭いスペクトル幅、および可視範囲または近赤外線範囲等の望ましい範囲の波長内に位置するピーク放出波長を有する、光ルミネセンスを呈することができる。また、これらの光ルミネセンス特性は、広範囲の励起波長にわたって、比較的に低感度であることができる。発光材料は、そのバンドギャップエネルギーおよび導電性に関連する等の他の望ましい特性を有することができる。有利には、発光材料は、ソーラーモジュールおよび他の用途において使用するために、安価かつ容易に、形成することができる。
【0009】
一実施形態において、発光材料は、式:
[ASnX’x’X’’x’’][ドーパント]
を有し、式中、
Aは、一価の陽イオンとして発光材料内に含まれ、
X、X’、およびX’’は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択され、
aは、1から5の範囲内にあり、
bは、1から3の範囲内にあり、
xとx’とx’’との合計は、a+2bであり、
少なくともX’は、x’/(a+2b)≧1/5であるようなヨウ素である。
【0010】
別の実施形態において、発光材料を形成する方法は、(1)AおよびXの源を提供するステップであって、Aは、IA族元素のうちの少なくとも1つから選択され、およびXは、VIIB族元素のうちの少なくとも1つから選択される、ステップと、(2)Bの源を提供するステップであって、Bは、IVB族元素のうちの少なくとも1つから選択される、ステップと、(3)AおよびXの源ならびにBの源を真空蒸着に曝し、基板に隣接して薄膜集合を形成するステップと、(4)薄膜集合を温度Theatまで加熱し、基板に隣接して発光材料を形成するステップであって、発光材料は、A、B、およびXを含み、AおよびXの源ならびにBの源のうちの1つは、より低い融点Tm1を有し、AおよびXの源ならびにBの源のうちの別の1つは、より高い融点Tm2を有し、Tm1、<Theat<Tm2である、ステップとを含む。
【0011】
本発明の他の側面および実施形態もまた、想定される。前述の発明の開示および以下の発明を実施するための形態は、本発明を任意の特定の実施形態に限定することを意味するものではなく、単に、本発明の種々の実施形態を説明することを意味する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の性質および目的をより理解するために、添付図面と関連して検討される、以下の発明を実施するための形態を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のある実施形態による、発光材料集合の正規化された放出スペクトルを例示する。
【図2】図2は、本発明のある実施形態による、ある発光材料のペロブスカイト系マイクロ構造を例示する。
【図3】図3は、本発明のある実施形態による、UD930に対するX線回折データを例示する。
【図4】図4は、本発明のある実施形態による、入射太陽スペクトルならびにUD930の測定された吸収および放出スペクトルの組み合わせられた表現を例示する。
【図5】図5から8は、発光材料、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、発光材料を形成するための製造方法を例示する。
【図6】図5から8は、発光材料、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、発光材料を形成するための製造方法を例示する。
【図7】図5から8は、発光材料、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、発光材料を形成するための製造方法を例示する。
【図8】図5から8は、発光材料、本発明のいくつかの実施形態にしたがって、発光材料を形成するための製造方法を例示する。
【図9】図9は、本発明のある実施形態に従って実装される、ソーラーモジュールを例示する。
【図10】図10は、本発明のある実施形態による、UD930に対するアニーリング温度の関数としてプロットされた、測定された光ルミネセンス強度を例示する。
【図11】図11(a)は、本発明のある実施形態による、12Kから300Kの範囲内の温度における、UD930に対する励起スペクトルを例示する。図11(b)は、本発明のある実施形態による、12Kから300Kの範囲内の温度における、UD930に対する放出スペクトルを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(定義)
本明細書において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって、別様に明示されない限り、複数参照を含む。したがって、例えば、発光材料の言及は、文脈によって、別様に明示されない限り、複数の発光材料を含むことができる。
【0015】
本明細書において使用されるように、用語「集合」は、一連の1つ以上の要素を指す。したがって、例えば、層集合は、単一層または多重層を含むことができる。要素集合はまた、部材集合と称され得る。要素集合は、同一または異なることができる。いくつかの事例では、要素集合は、1つ以上の共通特性を共有することができる。
【0016】
本明細書において使用されるように、用語「隣接する」は、近傍にある、または接していることを指す。隣接する要素は、相互から離間することができる、あるいは実際または直接、相互に接触することができる。いくつかの事例では、隣接する要素は、相互に接続することができる、または相互に一体的に形成することができる。
【0017】
本明細書において使用されるように、用語「実質的に」および「実質的」は、相当な程度または範囲を指す。ある事象または状況と併用されると、この用語は、その事象または状況が、まさに生じる事例、ならびにその事象または状況が、本明細書に説明される実施形態の典型的許容値レベルを考慮して等、近似値として生じる事例を指すことができる。
【0018】
本明細書において使用されるように、用語「随意の」および「随意に」は、続いて説明される事象または状況が、生じてもよく、または生じなくてもよく、説明が、その事象または状況が生じる事例および生じない事例を含むことを意味する。
【0019】
本明細書において使用されるように、用語「サイズ」は、物体の特徴的寸法を指す。したがって、例えば、球状である物体のサイズは、物体の直径を指すことができる。非球状である物体の場合は、非球状物体のサイズは、対応する球状物体の直径を指すことができ、対応する球状物体は、非球状物体のものと実質的に同一である、特定の導出可能または測定可能な特性集合を呈する、あるいは有する。代替として、または併せて、非球状物体のサイズは、物体の種々の直交寸法の平均を指すことができる。したがって、例えば、回転楕円体である物体のサイズは、物体の長軸および短軸の平均を指すことができる。特定のサイズを有する物体集合を参照するとき、物体は、特定のサイズの周囲のサイズ分布を有することが想定される。したがって、本明細書において使用されるように、物体集合のサイズは、平均サイズ、中間サイズ、またはピークサイズ等のサイズ分布の典型的サイズを指すことができる。
【0020】
本明細書において使用されるように、用語「サブミクロン範囲」は、約1μm未満または約1,000nm未満、例えば、約999nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、または約200nm未満、および約1nm以下の一般的範囲の寸法を指す。いくつかの事例では、この用語は、一般的範囲内の特定の部分範囲、例えば、約1nmから約100nm、約100nmから約200nm、約200nmから約300nm、約300nmから約400nm、約400nmから約500nm、約500nmから約600nm、約600nmから約700nm、約700nmから約800nm、約800nmから約900nm、または約900nmから約999nmを指すことができる。
【0021】
本明細書において使用されるように、用語「紫外線範囲」は、波長範囲約5nmから約400nmを指す。
【0022】
本明細書において使用されるように、用語「可視範囲」は、波長範囲約400nmから約700nmを指す。
【0023】
本明細書において使用されるように、用語「赤外線範囲」は、波長範囲約700nmから約2mmを指す。赤外線範囲は、波長範囲約700nmから約5μmを指す「近赤外線範囲」、波長範囲約5μmから約30μmを指す「中赤外線範囲」、および波長範囲約30μmから約2mmを指す「遠赤外線範囲」を含む。
【0024】
本明細書において使用されるように、用語「反射」、「反射する」、および「反射性」は、光の屈曲または偏向を指し、用語「反射体」は、そのような屈曲または偏向を生じさせる、誘発する、または別様に関与する、要素を指す。光の屈曲または偏向は、鏡面反射の場合等のように、実質的に、単一方向であることができる、あるいは乱反射または散乱の場合等のように、多方向であることができる。一般に、材料に入射する光および材料から反射する光は、同一または異なる波長を有することができる。
【0025】
本明細書において使用されるように、用語「ルミネセンス」、「発光」、および「発光性」は、エネルギー励起に応答した光の放出を指す。ルミネセンスは、原子または分子の励起された電子状態からの緩和に基づいて生じることができ、例えば、化学ルミネセンス、電気ルミネセンス、光ルミネセンス、熱ルミネセンス、摩擦ルミネセンス、およびそれらの組み合わせを含むことができる。ルミネセンスはまた、励起子、双励起子、および励起子ポラリトン等の準粒子の励起された状態からの緩和に基づいて生じることができる。例えば、蛍光およびリン光を含むことができる、光ルミネセンスの場合、励起された状態は、光の吸収等の光励起に基づいて産生することができる。一般に、材料に入射する光および材料によって放出される光は、同一または異なる波長を有することができる。
【0026】
本明細書において使用されるように、用語「光量子効率」または「OQE」は、光ルミネセンス材料によって放出される光子の数と、光ルミネセンス材料によって吸収される光子の数の比率を指す。いくつかの事例では、光量子効率は、OQE=ηηとして表すことができ、式中、ηは、励起子の励起された状態等、励起された状態の形成につながる吸収された光子の割合に対応し、およびηは、「内部量子効率」、すなわち、放出される光子をもたらす放射崩壊を受ける励起された状態の割合に対応する。
【0027】
本明細書において使用されるように、用語「吸収スペクトル」は、ある波長範囲にわたる光の吸収の表現を指す。いくつかの事例では、吸収スペクトルは、材料に入射する光の波長の関数として、材料の吸光度(または、透過率)のプロットを指すことができる。
【0028】
本明細書において使用されるように、用語「放出スペクトル」は、ある波長範囲にわたる光の放出の表現を指す。いくつかの事例では、放出スペクトルは、放出される光の波長の関数として、材料によって放出される光の強度のプロットを指すことができる。
【0029】
本明細書において使用されるように、用語「励起スペクトル」は、ある波長範囲にわたる光の放出の別の表現を指す。いくつかの事例では、励起スペクトルは、材料に入射する光の波長の関数として、材料によって放出される光の強度のプロットを指すことができる。
【0030】
本明細書において使用されるように、用語「半値全幅」または「FWHM」は、スペクトル幅の測定を指す。いくつかの事例では、FWHMは、ピーク強度値の半分におけるスペクトルの幅を指すことができる。
【0031】
光ルミネセンス特性に関して、本明細書において使用されるように、用語「実質的に平坦」は、波長の変化に対して、実質的に不変であることを指す。いくつかの事例では、光ルミネセンス特性は、ある波長範囲内の特性の値が、10%未満または5%未満等の平均値に対して、20%未満の標準偏差を呈する場合、その波長範囲にわたって、実質的に平坦であると称することができる。
【0032】
放出スペクトルに関して、本明細書において使用されるように、用語「実質的に単色」は、狭波長範囲にわたる光の放出を指す。いくつかの事例では、放出スペクトルは、スペクトル幅が、FWHMにおいて100nm未満、FWHMにおいて80nm未満、またはFWHMにおいて50nm未満等、FWHMにおいて120nm未満である場合、実質的に単色であると称することができる。
【0033】
本明細書において使用されるように、用語「ドーパント」は、添加剤または不純物等の材料中に存在する、化学実体を指す。いくつかの事例では、材料中のドーパントの存在は、その化学、磁気、電子、または光学特性等の材料の特性集合を改変することができる。
【0034】
本明細書において使用されるように、用語「電子受容体」は、別の化学実体から電子を誘引する傾向を有する、化学実体を指す一方、用語「電子ドナー」は、別の化学実体に電子を提供する傾向を有する、化学実体を指す。いくつかの事例では、電子受容体は、電子ドナーから電子を誘引する傾向を有することができる。化学実体の電子誘引および電子提供特性は相対的であることを認識されたい。特に、一事例において、電子受容体として役割を果たす化学実体は、別の事例では、電子ドナーとしての役割を果たすことができる。電子受容体の実施例として、正電荷を持つ化学実体および比較的に高い電気陰性度を有する原子を含む化学実体が挙げられる。電子ドナーの実施例として、を含む負電荷を持つ化学実体および比較的に低い電気陰性度を有する原子を含む化学実体が挙げられる。
【0035】
材料の特性の集合は、時として、温度に伴って変動することができる。本明細書に別様に規定されない限り、材料の特性は、300Kまたは27℃等の室温において規定することができる。
【0036】
(発光材料)
本発明の実施形態は、いくつかの望ましい特性を有する発光材料に関する。特に、本発明のいくつかの実施形態による発光材料は、高い量子効率、狭いスペクトル幅、および望ましい波長範囲内に位置するピーク放出波長を有する光ルミネセンスを呈することができる。また、これらの光ルミネセンス特性は、広い範囲の励起波長にわたって比較的に低い感度であることができる。特定の理論によって拘束されるわけではないが、これらの独特のかつ望ましい特性は、少なくとも部分的に発光材料の特定のマイクロ構造から導出することができる。有利には、発光材料は、安価かつ容易に処理し、種々の製品を形成することができ、ひいては、ソーラーモジュールおよび他の用途において使用することができる。
【0037】
望ましい発光材料として、式:
[A][ドーパント] (1)
を参照して表すことができる、半導体材料の種類が上げられる。
【0038】
式(1)では、Aは、ナトリウム(例えば、Na(I)またはNa+1)、カリウム(例えば、K(I)またはK+1)、ルビジウム(例えば、Rb(I)またはRb+1)、およびセシウム(例えば、Cs(I)またはCs+1)等のIA族の元素から選択され、Bは、バナジウム(例えば、V(III)またはV+3)等のVA族の元素、銅(例えば、Cu(I)またはCu+1)、銀(例えば、Ag(I)またはAg+1)、および金(例えば、Au(I)またはAu+1)等のIB族の元素、亜鉛(例えば、Zn(II)またはZn+2)、カドミウム(例えば、Cd(II)またはCd+2)、および水銀(例えば、Hg(II)またはHg+2)等のIIB族の元素、ガリウム(例えば、Ga(I)またはGa+1)、インジウム(例えば、In(I)またはIn+1)、およびタリウム(例えば、Tl(I)またはTl+1)等のIIIB族の元素、ゲルマニウム(例えば、Ge(II)またはGe+2またはGe(IV)またはGe+4)、錫(例えば、Sn(II)またはSn+2またはSn(IV)またはSn+4)、および鉛(例えば、Pb(II)またはPb+2またはPb(IV)またはPb+4)等のIVB族の元素、ならびにビスマス(例えば、Bi(III)またはBi+3)等のVB族の元素から選択され、Xは、フッ素(例えば、F−1)、塩素(例えば、Cl−1)、臭素(例えば、Br−1)、およびヨウ素(例えば、I−1)等のVIIB族の元素から選択される。依然として、式(1)を参照すると、aは、1から9または1から5等の1から12の範囲内であることができる整数であって、bは、1から5または1から3等の1から8の範囲内であることができる整数であって、xは、1から9または1から5等の1から12の範囲内であることができる整数である。いくつかの事例では、xは、A、B、およびXの酸化状態が、それぞれ、+1、+2、および−1であるとき、荷電平衡の目的等のために、a+2bと等しくあることができる。例えば、aは、1と等しくあることができ、xは、1+2bと等しくあることができる。また、a、b、およびxのうちの1つ以上は、そのそれぞれの範囲内の小さい数値を有することができることも想定される。また、式(1)の中のXは、より一般的には、XX’x’(または、XX’x’X’’x’’)として表すことができ、式中、XおよびX’(または、X、X’、およびX’’)は、VIIB族の元素から独立して選択することができ、xとx’との合計(または、xとx’とx’’との合計)は、1から9または1から5等の1から12の範囲内であることができることも想定される。式(1)の一般化したものを参照すると、xとx’との合計(または、xとx’とx’’との合計)は、a+2bと等しくあることができる。例えば、aは、1と等しくあることができ、xとx’との合計(または、xとx’とx’’との合計)は、1+2bと等しくあることができる。さらに、式(1)によって表される異なる発光材料の混成物または混合物を使用することができることも想定される。ドーパントは、随意に、式(1)によって表される発光材料内に含まれることができ、原子パーセントまたは元素組成の観点から、約1%未満または約0.1%から約1%等、約5%未満である量として存在することができる。ドーパントは、発光材料を形成するために使用される反応物から導出することができるか、あるいは発光材料の形成の際に存在する湿気、大気ガス、または他の化学実体から導出することができる。特に、ドーパントは、発光材料のマイクロ構造内に分散される電子受容体/電子ドナー対を形成し得る陽イオン、陰イオン、または両方を含むことができる。
【0039】
式(1)によって表される発光材料の実施例として、式:
[ASn][ドーパント] (2)
を参照して表されるものが挙げられる。
【0040】
式(2)において、Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択され、Xは、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。依然として、式(2)を参照すると、xは、a+2bと等しくあることができる。いくつかの事例では、aは、1と等しくあることができ、Xは、1+2bと等しくあることができる。望ましい特性を有するいくつかの発光材料は、CsSnX[ドーパント]として表すことができ、UD700およびUD930として指定される材料を含む。UD700の場合、Xは、臭素であって、UD930の場合、Xは、ヨウ素である。UD700は、約695nmにおいて、ピーク放出波長を呈する一方、UD930は、約950nmにおいて、ピーク放出波長を呈する。UD700およびUD930のスペクトル幅は、狭く(例えば、FWHMにおいて、約50meV以下)、吸収スペクトルは、吸収端から遠紫外線まで実質的に平坦である。UD700およびUD930の光ルミネセンス放出は、広い波長範囲の太陽放射によって、UD700の場合、約695nm、UD930の場合、約950nmにおけるこれらの材料の吸収端まで誘導される。塩化物類似体、すなわち、CsSnCl[ドーパント]は、約450nmにおいて、ピーク放出波長を呈し、ある実装のために望ましくあることができる。約300Kにおけるキセノンランプ源を使用して測定された、UD700、UD930、および塩化物類似体の正規化された放出スペクトルは、本発明のある実施形態に従って、図1に例示される。望ましい特性を有する他の発光材料は、CsSn[ドーパント]、CsSnX[ドーパント]、およびCsSn[ドーパント]、CsSnX[ドーパント]を有するか、または伴わないそれらの混合物、例えば、CsSnX[ドーパント]、CsSn[ドーパント]、およびCsSnX[ドーパント]の混合物、ならびにセシウムの少なくとも一部が、CHNH等の同等サイズの別の一価イオンまたは他の多元素の一価イオンと置換される発光材料を含む。望ましい特性を有する付加的発光材料として、約705nmにおいてピーク放出波長を呈するRbSnI[ドーパント]、および約540nmにおいてピーク放出波長を呈するRbSnBr[ドーパント]等のRbSnX[ドーパント]が挙げられる。望ましい特性を有するさらなる発光材料として、約465nmにおいてピーク放出波長を呈するKSnBr[ドーパント]等のKSnX[ドーパント]が挙げられる。これらの発光材料はそれぞれ、単一層あるいは同一の発光材料または異なる発光材料から形成される他の層が散在する多重層内の薄膜として蒸着することができる。
【0041】
式(1)によって表される発光材料の付加的実施例として、式:
[AGe][ドーパント] (3)
を参照して表されるものが挙げられる。
【0042】
式(3)において、Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択され、Xは、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。依然として、式(3)を参照すると、xは、a+2bと等しくあることができる。いくつかの事例では、aは、1と等しくあることができ、Xは、1+2bと等しくあることができる。例えば、Aが、セシウムであって、Xが、ヨウ素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsGeI][ドーパント] (4)
を参照して表すことができる。
【0043】
式(1)によって表される発光材料の付加的実施例として、式:
[APb][ドーパント] (5)
を参照して表されるものが挙げられる。
【0044】
式(5)において、Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択され、Xは、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。依然として、式(5)を参照すると、xは、a+2bと等しくあることができる。いくつかの事例では、aは、1と等しくあることができ、Xは、1+2bと等しくあることができる。例えば、Aが、セシウムであって、Xが、ヨウ素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsPbI][ドーパント] (6)
を参照して表すことができる。
【0045】
式(1)によって表される発光材料の付加的実施例として、式:
[ASnX’x’][ドーパント] (7)
を参照して表されるものが挙げられる。
【0046】
式(7)において、Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択され、XおよびX’は、異なり、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。依然として、式(7)を参照すると、xとx’との合計は、a+2bと等しくあることができる。望ましい光ルミネセンス特性を達成するために、XおよびX’のうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物イオンの総数の少なくとも1/5、少なくとも1/4、少なくとも1/3、少なくとも1/2、または少なくとも2/3を構成し得る、ヨウ素であることができる。例えば、X’が、ヨウ素である場合、x’/(a+2b)≧1/5、≧1/4、≧1/3、≧1/2、または≧2/3である。いくつかの事例では、aは、1と等しくあることができ、xとx’との合計は、1+2bと等しくあることができる。例えば、Aが、セシウムであって、Xが、塩素であって、X’が、ヨウ素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsSnClI][ドーパント] (8)
[CsSnClI][ドーパント] (9)
[CsSnCl][ドーパント] (10)
[CsSnCl][ドーパント] (11)
[CsSnClI][ドーパント] (12)
[CsSnClI][ドーパント] (13)
[CsSnClI][ドーパント] (14)
[CsSnCl][ドーパント] (15)
[CsSnClI][ドーパント] (16)
のうちの1つを参照して表すことができる。
また、例えば、Aが、セシウムであって、Xが、臭素であって、X’が、ヨウ素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsSnBrI][ドーパント] (17)
[CsSnBrI][ドーパント] (18)
[CsSnBr][ドーパント] (19)
[CsSnBr][ドーパント] (20)
[CsSnBrI][ドーパント] (21)
[CsSnBrI][ドーパント] (22)
[CsSnBrI][ドーパント] (23)
[CsSnBr][ドーパント] (24)
[CsSnBrI][ドーパント] (25)
のうちの1つを参照して表すことができる。
また、例えば、Aが、セシウムであって、Xが、フッ素であって、X’が、ヨウ素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsSnFI][ドーパント] (26)
[CsSnFI][ドーパント] (27)
[CsSn][ドーパント] (28)
[CsSn][ドーパント] (29)
[CsSnFI][ドーパント] (30)
[CsSnI][ドーパント] (31)
[CsSnFI][ドーパント] (32)
[CsSnF][ドーパント] (33)
[CsSnFI][ドーパント] (34)
のうちの1つを参照して表すことができる。
【0047】
式(1)によって表される発光材料のさらなる実施例として、式:
[ASnX’x’X’’x’’][ドーパント] (35)
を参照して表されるものが挙げられる。
【0048】
式(35)において、Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択され、X、X’、およびX’’は、異なり、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。依然として、式(35)を参照すると、xとx’とx’’との合計は、a+2bと等しくあることができる。望ましい光ルミネセンス特性を達成するために、X、X’、およびX’’のうちの少なくとも1つは、ハロゲン化物イオンの総数の少なくとも1/5、少なくとも1/4、少なくとも1/3、少なくとも1/2、または少なくとも2/3を構成し得る、ヨウ素であることができる。例えば、X’がヨウ素である場合、x’/(a+2b)≧1/5、≧1/4、≧1/3、≧1/2、または≧2/3である。いくつかの事例では、aは、1と等しくあることができ、xとx’とx’’との合計は、1+2bと等しくあることができる。例えば、Aがセシウムであって、Xが塩素であって、X’がヨウ素であって、X’’が臭素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsSnClIBr][ドーパント] (36)
[CsSnClIx’Br4−x’][ドーパント]、x’=1、2、または3 (37)
[CsSnClx’Br3−x’][ドーパント]、x’=1または2 (38)
[CsSnClIBr][ドーパント] (39)
[CsSnClIx’Br3−x’][ドーパント]、x’=1または2 (40)
[CsSnClIBr][ドーパント] (41)
のうちの1つを参照して表すことができる。
また、例えば、Aが、セシウムであって、Xが、塩素であって、X’が、ヨウ素であって、X’’が、フッ素である場合、発光材料は、時として、式:
[CsSnClIF][ドーパント] (42)
[CsSnClIx’4−x’][ドーパント]、x’=1、2、または3 (43)
[CsSnClx’3−x’][ドーパント]、x’=1または2 (44)
[CsSnClIF][ドーパント] (45)
[CsSnClIx’3−x’][ドーパント]、x’=1または2 (46)
[CsSnClIF][ドーパント] (47)
のうちの1つを参照して表すことができる。
【0049】
式(1)によって表されるある発光材料は、ペロブスカイト系マイクロ構造を有することができる。このペロブスカイト系マイクロ構造は、特定の層内の比較的に強い化学結合および異なる層内の比較的に弱い化学結合とともに層化されることができる。特に、式(1)によって表されるある発光材料は、ペロブスカイト系結晶構造を有することができる。この構造は、異なる平面に沿ってBXの8面体単位網の形態として配設することができ、本発明のある実施形態に従って、図2に例示されるように、Bは各8面体単位の中心にあって、Xによって囲繞され、Aは平面間の格子間にあって、Bは陽イオンであって、Xは一価の陰イオンであって、Aは全電荷を平衡化し、結晶構造を安定化させる役割を果たす陽イオンである。ペロブスカイト系マイクロ構造のある側面は、本発明のある実施形態に従って、UD930に対して、図3に例示されるようにX線回折(「XRD」)データ内において観察することができる。
【0050】
図2に戻って参照すると、ドーパントは、例えば、ドーパント集合を有する構造内に含まれる原子集合の置換によって明らかになるように、ペロブスカイト系結晶構造内に組み込むことができる。UD930の場合、例えば、Cs+1およびSn+2の一方または両方とも、Sn(IV)またはSn+4等の陽イオンと置換することができ、およびI−1は、F−1、Cl−1、Br−1、O−2、OH−1、またはI−1と比較してより小さい半径を有する他の陰イオン等の陰イオンと置換することができる。ドーパントの組み込みは、例えば、特定の平面に沿ったより短いB−X−B結合長および異なる平面間のより短いB−X−B結合長等、特定の平面に沿って、ならびに異なる平面間のより短い結合長によって明らかとなるように、ドーパントの不在の場合と比較して、ペロブスカイト系結晶構造を改変することができる。いくつかの事例では、F−1およびCl−1の一方または両方とのI−1の置換は、特定の平面に沿う、および異なる平面間のSn+2に対して、より短く、およびより強い結合をもたらすことができる。特定の理論によって拘束されるわけではないが、ドーパントの組み込みは、ペロブスカイト系結晶構造のさらなる安定性をもたらすことができ、望ましい光ルミネセンス特性は、少なくとも部分的に、これらのドーパントの存在から導出することができる。いくつかの事例では、他のハロゲン化物とのI−1の置換は、混合されたハロゲン化物の合金を形成するための最大約50%のI−1等、典型的ドーピングレベルを上回るレベルであることができる。
【0051】
式(1)によって表されるある発光材料は、サブミクロン範囲内のサイズを有する成分晶子または粒子を有する多結晶であることができる。粒子の構成は、準等方性、すなわち、粒子が、形状およびサイズが比較的に均一であって、比較的に均一な粒界配向を呈するものから、異方性、すなわち、粒子が、形状、サイズ、粒界配向、テクスチャ、またはそれらの組み合わせの観点から、比較的に大きい逸脱を呈するものまで、変動し得る。UD930の場合、例えば、粒子は、異方性様式において、および約250nmから約350nm等の約200nmから約400nmの範囲内の平均サイズを伴って形成することができる。
【0052】
式(1)によって表されるいくつかの発光材料は、ソーラーモジュールのための望ましい特性を有する。特に、発光材料は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、または少なくとも約35%等、約6%超の高い光量子効率を伴い、最大約40%、約50%、またはそれ以上であり得、および少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、または少なくとも約85%等の約50%超の高い内部量子効率を伴い、最大約95%、約99%、またはそれ以上であり得る光ルミネセンスを呈することができる。また、発光材料は、FWHMにおいて、約100nm未満または約80nm未満等、FWHMにおいて、約120nm未満である狭いスペクトル幅を有する光ルミネセンスを呈することができる。したがって、例えば、スペクトル幅は、FWHMにおいて、約50nmから約120nm、約50nmから約100nm、または約50nmから約80nm等、FWHMにおいて、約20nmから約120nmの範囲内であることができる。共振空洞導波路内への発光材料の組み込みはさらに、スペクトル幅を狭くすることができる。
【0053】
加えて、発光材料は、使用される反応物および処理条件を調節することによって、望ましいレベルに調節可能であるバンドギャップエネルギーおよび抵抗率を有することができる。例えば、バンドギャップエネルギーは、例えば、セシウム、ルビジウム、カリウム、およびナトリウムに対応するバンドギャップエネルギーの増加順序に伴って、Aと相関し得る。別の実施例として、バンドギャップエネルギーは、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、およびフッ素に対応するバンドギャップエネルギーの増加順序に伴って、Xと相関し得る。このバンドギャップエネルギーの増加順序は、ピーク放出波長の減少順序に変換することができる。したがって、例えば、ヨウ素を含む発光材料は、時として、約900nmから約1μmの範囲内のピーク放出波長を呈することができる一方、臭素または塩素を含む発光材料は、時として約700nmから約800nmの範囲内のピーク放出波長を呈することができる。バンドギャップエネルギーを調節することによって結果として生じる光ルミネセンスは、可視範囲または赤外線範囲等の望ましい波長範囲内に位置するピーク放出波長を有することができる。いくつかの事例では、ピーク放出波長は、約900nmから約1μm、約910nmから約1μm、約910nmから約980nm、または約930nmから約980nm等、近赤外線範囲内に位置することができる。
【0054】
さらに、前述の光ルミネセンス特性は、広範囲の励起波長にわたって、比較的に低い感度であることができる。実際、この独特の特性は、発光材料の励起スペクトルを参照して、励起スペクトルが、紫外線範囲、可視範囲、および赤外線範囲の部分を包含する励起波長の範囲にわたって実質的に平坦であり得ることを理解することができる。いくつかの事例では、励起スペクトルは、約200nmから約980nmまたは約200nmから約950nm等、約200nmから約1μmの励起波長の範囲にわたって、実質的に平坦であることができる。同様に、発光材料の吸収スペクトルは、紫外線範囲、可視範囲、および赤外線範囲の部分を包含する励起波長の範囲にわたって、実質的に平坦であることができる。いくつかの事例では、吸収スペクトルは、約200nmから約980nmまたは約200nmから約950nm等、約200nmから約1μmの励起波長の範囲にわたって実質的に平坦であることができる。また、発光材料の光量子効率は、約200nmから約1μm、約200nmから約980nmまたは約450nmから約900nm等の励起波長の範囲にわたって実質的に平坦であることができる。
【0055】
例えば、UD930は、300Kにおいて約1.32eVの値を有する直接バンドギャップを有する。このバンドギャップは、少なくとも部分的に格子ポテンシャル内の非調和性から生じる温度の低下に伴って減少し得る。特定の理論によって拘束されるわけではないが、UD930(および、式(1)によって表されるある他の発光材料)に対する光ルミネセンスは、励起子放出を介して生じることができる。励起子は、光吸収の結果として形成され得る電子−正孔対に対応する。ほとんどの半導体材料は、比較的に小さい励起子結合エネルギーを有し、したがって、励起子は、典型的には、室温では存在しない。式(1)によって表されるある発光材料は、比較的に大きい励起子結合エネルギーを有することができ、共振空洞導波路内に組み込み、垂直方向における放出および空洞導波路の平面に沿って誘導放出の抑制をもたらすことができる。ストークスシフトまたは励起子結合エネルギーが大きいほど、空洞導波路は、不完全性に対して耐性が大きくなり得る。したがって、空洞導波路は、分子線エピタキシャル成長法(「MBE」)等の技法に依存することなく、安価な様式で容易に形成することができる。
【0056】
UD930の望ましい特性はさらに、本発明のある実施形態に従って、太陽スペクトルならびにUD930の測定された吸収および放出スペクトルの組み合わせられた表現を例示する図4を参照して理解され得る。特に、図4は、地球の表面に入射する太陽放射を表す標準的太陽スペクトルである、AM1.5Gソーラースペクトル((A)と称される)を例示する。AM1.5G太陽スペクトルは、大気吸収のため、930nmの領域内に間隙を有する。AM1.5G太陽スペクトルおよびシリコン系PV電池の特性に照らして、UD930の吸収スペクトル((B)と称される)および放出スペクトル((C)と称される)は、放出層内に組み込まれると、スペクトル集中に対してこの材料を特に効果的にする。特に、UD930の光ルミネセンスは、実質的に、AM1.5Gソーラースペクトルの間隙内に位置し、間隙内にある約950nmのピーク放出波長を有する。これは、ひいては、反射体層を通過し、UD930に到達し得る入射太陽放射の大幅な減少を有することなく、放出放射を放出層に向かって後方反射するように調節される反射体層(例えば、放出層の上方および下方における)の使用を可能にする。また、UD930の吸収スペクトルは、実質的に平坦であって、約950nmにおける吸収端から、AM1.5G太陽スペクトルの大きな割合を通して、紫外線まで延在する。加えて、約950nm(または、約1.32eV)のピーク放出波長は、シリコン系PV電池の吸収端に整合し、スペクトル幅は、FWHMにおいて、約50meV(または、FWHMにおいて、約37nm)である。シリコンの吸収係数は、放出波長のこの範囲内において、約10cm−1であって、PV電池内の接合は、放出放射を効率的に吸収し、放射を電子−正孔対に変換するように設計することができる。その結果、UD930は、入射太陽放射からの広い波長範囲を広く吸収することができる一方、シリコンと整合する狭い波長範囲を放出し、電気への入射太陽放射の高い変換効率を可能にする。さらに、UD930の吸収スペクトルおよび放出スペクトルは、低い程度に重複し、それによって、そうでなければ変換効率の低下をもたらすであろう自己吸収の事例を低減させる。
【0057】
(発光材料の形成方法)
式(1)によって表される発光材料は、高い収率ならびに適度な温度および圧力において、反応物または前駆体集合の反応を介して形成することができる。反応は、式:
源(B)+源(A、X) → 発光材料 (48)
を参照して表すことができる。
【0058】
式(48)において、源(B)は、Bの源としての役割を果たし、いくつかの事例では、源(B)はまた、ドーパントまたはハロゲン化物イオン源としての役割を果たすこともできる。例えば、Bが、ゲルマニウム、錫、または鉛の場合、源(B)は、形態BY、BY、B、およびBYのB(II)化合物ならびに形態BYB(IV)化合物から選択される1つ以上の種類のB含有化合物を含むことができ、式中、Yは、酸素(例えば、O−2)等のVIB族の元素、フッ素(例えば、F−1)、塩素(例えば、Cl−1)、臭素(例えば、Br−1)、およびヨウ素(例えば、I−1)等のVIIB族の元素、ならびに硝酸(すなわち、NO−1)、チオシアン酸(すなわち、SCN−1)、次亜塩素酸(すなわち、OCl−1)、硫酸(すなわち、SO−2)、オルトリン酸(すなわち、PO−3)、メタリン酸(すなわち、PO−1)、シュウ酸(すなわち、C−2)、メタンスルホン酸(すなわち、CHSO−1)、トリフルオロメタンスルホン酸(すなわち、CFSO−1)、およびピロリン酸(すなわち、P−4)等の多元素化学実体から選択することができる。錫(II)化合物の実施例として、フッ化錫(II)(すなわち、SnF)、塩化錫(II)(すなわち、SnCl)、塩化錫(II)二水和物(すなわち、SnCl.2HO)、臭化錫(II)(すなわち、SnBr)、ヨウ化錫(II)(すなわち、SnI)、酸化錫(II)(すなわち、SnO)、硫化錫(II)(すなわち、SnSO)、オルトリン酸錫(II)(すなわち、Sn(PO)、メタリン酸錫(II)(すなわち、Sn(PO)、シュウ酸錫(II)(すなわち、Sn(C))、メタンスルホン酸錫(II)(すなわち、Sn(CHSO)、ピロリン酸錫(II)(すなわち、Sn)、およびトリフルオロメタンスルホン酸錫(II)(すなわち、Sn(CFSO)が挙げられる。錫(IV)化合物の実施例として、塩化錫(IV)(すなわち、SnCl)および塩化錫(IV)五水和物(すなわち、SnCl.5HO)が挙げられる。BおよびB’が、IVB族の元素から独立して選択される、源(B)および源(B’)、またはB、B’、およびB’’が、IVB族の元素から独立して選択される、源(B)、源(B’)、および源(B’’)等、異なる種類の源(B)を使用することができることが想定される。
【0059】
依然として、式(48)を参照すると、源(A、X)は、AおよびXの源としての役割を果たし、いくつかの事例では、源(A、X)はまた、ドーパント源としての役割を果たすことができる。源(A、X)の実施例として、形態AXのアルカリハロゲン化物が挙げられる。例えば、Aが、セシウム、カリウム、またはルビジウムである場合、源(A、X)は、フッ化セシウム(I)(すなわち、CsF)、塩化セシウム(I)(すなわち、CsCl)、臭化セシウム(I)(すなわち、CsBr)、ヨウ化セシウム(I)(すなわち、CsI)、フッ化カリウム(I)(すなわち、KF)、塩化カリウム(I)(すなわち、KCl)、臭化カリウム(I)(すなわち、KBr)、ヨウ化カリウム(I)(すなわち、KI)、フッ化ルビジウム(I)(すなわち、RbF)、塩化ルビジウム(I)(すなわち、RbCl)、臭化ルビジウム(I)(すなわち、RbBr)、およびヨウ化ルビジウム(I)(すなわち、RbI)等の1つ以上の種類のA(I)ハロゲン化物を含むことができる。AおよびA’が、IA族の元素から独立して選択され、XおよびX’が、VIIB族の元素からから独立して選択される、源(A、X)および源(A’、X’)、またはA、A’、およびA’’が、IA族の元素から独立して選択され、X、X’、およびX’’が、VIIB族の元素から独立して選択される、源(A、X)、源(A’、X’)、および源(A’’、X’’)等、異なる種類の源(A、X)を使用することができることが想定される。
【0060】
式(48)によって表される反応は、源(B)を源(A、X)と組み合わせるか、混合するか、または別様に接触させ、次いで、ある形態のエネルギーを印加することによって実行することができる。いくつかの実施形態の場合、源(B)および源(A、X)は、基板上に蒸着され、薄膜または層集合を形成することができる。例えば、源(B)および源(A、X)は、基板上に同時に蒸着され、薄膜を形成することができるか、または連続的に蒸着され、隣接して薄膜を形成することができる。好適な蒸着技法の実施例として、真空蒸着(例えば、熱蒸発または電子ビーム蒸着)、物理的蒸着(「PVD」)、化学蒸着(「CVD」)、原子層蒸着(「ALD」)、スパッタリング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、ウェブコーティング、ウェットコーティング、およびスピンコーティングが挙げられる。他の実施形態の場合、源(B)および源(A、X)は、乾燥形態において、溶液中において、または任意の他の好適な混合技法に従って、混合することができる。例えば、源(B)および源(A、X)は、粉末形態で提供されることができ、任意の好適な乾燥混合技法を使用して混合することができる。別の実施例として、源(B)および源(A、X)は、反応媒体中に分散され、反応混合物を形成することができ、反応媒体は、溶媒または溶媒の混合物を含むことができる。源(B)および源(A、X)が、好適に組み合わせられると、ある形態のエネルギーが印加され、音響または振動エネルギー、電気エネルギー、磁気エネルギー、機械的エネルギー、光エネルギー、あるいは熱エネルギーの形態等において発光材料の形成を促進する。例えば、源(B)および源(A、X)は、基板上に蒸着されることができ、結果として生じる薄膜集合は、好適な温度に加熱され、発光材料を形成することができる。加熱は、好適な時間周期の間、空気、不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)、または還元性雰囲気中において行うことができる。また、多重形態のエネルギーが、同時または連続的に印加されることができることも想定される。
【0061】
結果として生じる発光材料は、主要元素成分としてのA、B、およびX、ならびにYから導出されるか、またはそれに対応する元素成分を含むことができる。また、発光材料は、元素組成の観点から、約5%未満または約1%未満の量として存在し得る、炭素、塩素、水素、および酸素等の付加的元素成分、さらに、元素組成の観点から、約0.1%未満の微量として存在し得るナトリウム、硫酸、リン、およびカリウム等の元素成分を含むことができる。
【0062】
式(48)によって表される反応の実施例として、式:
BY+AX → 発光材料 (49)
を参照して表されるものが挙げられる。
【0063】
式(49)において、Bは、ゲルマニウム、錫、および鉛から選択され、Yは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択され、Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択され、Xは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択される。依然として、式(26)を参照すると、BYは、より一般的には、BYおよびB’Y’(または、BY、B’Y’、およびB’’Y’’)として表すことができ、式中、BおよびB’(または、B、B’、およびB’’)は、ゲルマニウム、錫、および鉛から独立して選択され、YおよびY’(または、Y、Y’、およびY’’)は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から独立して選択されることが想定される。例えば、Bが、錫である場合、BYは、SnYとして表すことができる、またはより一般的には、SnYおよびSnY’(または、SnY、SnY’、およびSnY’’)として表すことができ、式中、YおよびY’(または、Y、Y’、およびY’’)は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から独立して選択される。
【0064】
例えば、SnI(または、SnCl)は、CsIと反応し、UD930等、約950nmにおいてピーク放出波長を有する発光材料を形成することができる。別の実施例として、SnBrは、CsBrと反応し、UD700等、約695nmにおいてピーク放出波長を有する発光材料を形成することができる。別の実施例として、SnBrは、KBrと反応し、約465nmにおいてピーク放出波長を有する発光材料を形成することができる。別の実施例として、SnIは、RbIと反応し、約705nmにおいてピーク放出波長を有する発光材料を形成することができる。さらなる実施例として、SnBrは、RbBrと反応し、約540nmにおいてピーク放出波長を有する発光材料を形成することができる。
【0065】
次に、本発明のいくつかの実施形態に従って、発光材料を形成するための製造方法を例示する図5から図8を参照する。
【0066】
最初に図5を参照すると、基板500が提供される。基板500は、製造作業の際、支持構造としての役割を果たし、および結果として生じる発光材料を環境条件から保護する役割を果たす。基板500は、剛性または可撓性であることができ、多孔性または非多孔性であることができ、光学的に透明、半透明、または不透明であることができ、およびガラス、金属、セラミック、ポリマー、または別の好適な材料から形成することができる。いくつかの実装の場合、基板500は、底基板と、底基板に隣接して形成され、後続製造作業のための蒸着表面を提供する、およびコーティングまたは薄膜集合とを含むことができる。好適なコーティング材料の実施例として、シリカ(すなわち、SiOまたはα−SiO)、アルミナ(すなわち、Al)、TiO、Ta、Nb、ZrO、HfO、SnO、ZnO、La、Y、CeO、Sc、Er、V、およびIn等の酸化物、ならびに他の好適な薄膜誘電材料が挙げられる。
【0067】
基板効果は、時として、結果として生じる光ルミネセンス特性に関連して生じ得る。例えば、ある他の材料から形成される基板と比較して、アルミナ系セラミック基板の場合、約5倍から約10倍等、光ルミネセンス強度の約3倍以上の向上が生じ得る。特定の理論によって拘束されるわけではないが、そのような向上は、少なくとも部分的に、R1R2放出プロセス、アルミナ系セラミック基板の表面粗度、およびアルミナ系セラミック基板高反射率(発光材料に向かって、入射反射の後方反射を促進することができる)のうちの1つまたはそれらの組み合わせから導出することができる。
【0068】
次に、図5に例示されるように、反応物集合(発光材料の前駆体)が、基板500に隣接して蒸着される。例示される実施形態において、源(B)および源(A、X)は、真空蒸着に曝され、それによって、基板500に隣接して前駆体層502を形成する。蒸着は、約1×10−4トル未満、約1×10−5トル未満、および約1×10−6トル以下まで、圧力を真空にする真空蒸着システムを使用して実行することができる。別の好適な蒸着技法が、真空蒸着の代わりに、またはそれと併用して使用することができることが想定される。
【0069】
源(B)および源(A、X)の蒸着は、同一真空蒸着技法または異なる真空蒸着技法に従って、連続的に実行することができる。例えば、BYおよびAXは、合計2つの層から16層、または合計2つの層から6つの層等、合計2つの層から30以上の層の連続層として蒸着することができ、約5:1から約1:5または約2:1から約1:2等、約99:1から約1:99のBY対AXの重量またはモル比を有する。より低い融点Tm1を有する、BYおよびAXのうちの特定の一方は、蒸発槽内に定置され、熱蒸発によって蒸着されることができる一方、より高い融点Tm2を有するBYおよびAXのうちの他方は、別の蒸発槽内に定置され、熱蒸発または電子ビーム蒸着によって蒸着されることができる。融点約318℃を有するSnI(または、融点約246℃を有するSnCl)および融点約620℃を有するCsIの場合、SnI(または、SnCl)は、熱蒸発によって蒸着されることができる一方、CsIは、熱蒸発または電子ビーム蒸着によって蒸着されることができる。各個々のBY含有層または各個々のAX含有層の厚さは、約10nmから約1μmまたは約10nmから約300nm等、約10nmから約1.5μmの範囲内であることができ、全層に対する総厚は、約40nmから約20μmまたは約50nmから約5μm等、約20nmから約45μmの範囲内である。
【0070】
源(B)および源(A、X)はまた、特定の真空蒸着技法に従って、同時に蒸着することができる。例えば、BYおよびAXは、単一層または多重層を形成するように同時に蒸着することができ、BY対AXの重量またはモル比は、約5:1から約1:5または約2:1から約1:2等、約10:1から約1:10であって、総厚は、約10nmから約1μmまたは約10nmから約300nm等、約10nmから約1.5μmの範囲内である。特に、BYおよびAXは、蒸発槽内において混合され、次いで、熱蒸発によって蒸着することができる。BYとAXとの混合は、粉末形態中において、またはBYおよびAXの前溶融物を形成することによって実行することができる。SnI(または、SnCl)およびCsIの場合、SnI(または、SnCl)は、CsIより低い温度で蒸発することができ、したがって、蒸発槽の温度は、混合物中のCsIの相対的量が増加するのに伴って徐々に上昇することができる。
【0071】
異なる種類の源(B)を使用することができ、源(A、X)によって同時に蒸着されるか、または源(A、X)によって連続的に蒸着されることができる。例えば、BYおよびB’Y’は、蒸発槽内において混合され、熱蒸発によって蒸着された後に、AXの蒸着等が続くことができる。BYとB’Y’との混合は、粉末形態中において、またはBYおよびB’Y’の前溶融物を形成することによって実行することができ、BY対B’Y’の重量またはモル比は、約5:1から約1:5または約2:1から約1:2等、約99:1から約1:99である。別の実施例として、BY、B’Y’、およびB’’Y’’は、蒸発槽内において混合され、熱蒸発によって蒸着された後に、AXの蒸着等が続くことができる。同様に、異なる種類の源(A、X)を使用することができ、源(B)によって同時に蒸着されるか、または源(B)によって連続的に蒸着されることができる。
【0072】
依然として図5を参照すると、次に、封入材料が蒸着され、それによって、前駆体層502に隣接して封入層504を形成する。封入層504は、結果として生じる発光材料の保護および密閉を提供し、酸素、湿気、および他の汚染物質へのその曝露を低減し、それによって、結果として生じる光ルミネセンス特性の安定性を向上させる役割を果たす。好適な封入材料の実施例として、シリカ、アルミナ、TiO、Ta、Nb、ZrO、HfO、SnO、ZnO、La、Y、CeO、Sc、Er、V、およびIn等の酸化物、SiO2−x等の窒化物、CaF、SrF、ZnF、MgF、LaF、およびGdF等のフッ化物、HfO/Ta、TiO/Ta、TiO/Al、ZnS/Al、およびAlTiO等のナノ積層体、ならびに他の好適な薄膜誘電材料が挙げられる。好適な封入材料の付加的実施例として、ホウケイ酸ガラス(例えば、borofloat(登録商標)ガラスおよびD263TMガラス)、リン酸ガラス、および他の低融点ガラス等のガラスが挙げられる。封入層504の厚さは、約50nmから約500nmまたは約50nmから約300nm等、約10nmから約1.5μmの範囲内にあることができる。ガラスの蒸着された層の場合、銀、アルミニウム、金、銅、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、またはイリジウム等、好適な金属が、ガラスの層に隣接して蒸着され、気密を提供することができる。電子ビーム蒸着等の真空蒸着は、層のアセンブリの他の層とともに、封入層504を形成するために使用することができる。代替として、スパッタリング等の別の好適な蒸着技法を使用することができる。
【0073】
次に、層のアセンブリは、アニーリングに曝され、層間の結合を促進し、式(48)に従う反応を促進し、それによって、前駆体層502を式(1)に従う発光材料を含む放出層に変換する。アニーリングは、ホットプレート、オーブン、抵抗加熱、またはランプ加熱を使用して、層のアセンブリを加熱する等によって、伝導、対流、または放射加熱を介して、熱エネルギーを印加するための任意の好適な加熱技法を使用して実行することができる。また、熱エネルギーは、高速加熱サイクルに従って印加され、高速熱アニーリングをもたらすことができることが想定される。
【0074】
結果として生じる光ルミネセンス特性は、アニーリング温度およびアニーリング時間周期に依存し得る。したがって、アニーリング温度およびアニーリング時間周期は、より高い光ルミネセンス強度をもたらすように最適化することができる。例えば、BYおよびAXのうちの特定の一方は、より低い融点Tm1を有することができ、BYおよびAXの他方は、より高い融点Tm2を有することができ、最適アニーリング温度Theatは、Tm1超かつより低い融点とより高い融点との間の最大4/3点(すなわち、(Tm1+3Tm2)/4)または中間点(すなわち、(Tm1+Tm2)/2)等、Tm1超かつTm2未満であることができるが、アニーリングはまた、より高いまたはより低い温度で実行することができる。融点約318℃を有するSnIおよび融点約620℃を有するCsIの場合、最適アニーリング温度Theatは、約340℃から約420℃または約350℃から約410℃等、約318℃超かつ約620℃未満であることができる。融点約246℃を有するSnClおよび融点約620℃を有するCsIの場合、最適アニーリング温度Theatは、約246℃超かつ約620℃未満であることができる。いくつかの事例では、初期溶融は、SnClとSnClおよびCsIの反応生成物との間の共晶混合物の形成から生じることができる。最適アニーリング時間期間は、約5秒から約10分または約5秒から約1分等、約1秒から約1時間の範囲内であることができるが、アニーリングはまた、より長いかまたはより短い時間期間の間に実行することができる。アニーリング温度およびアニーリング時間期間の最適値はまた、例えば、使用される特定の試薬、前駆体層502内の個々の層の厚さ、または前駆体層502の総厚に応じて好適に調節することができる。いくつかの事例では、反応物の層間の反応は、固体状態反応によって反応物の融点温度を大幅に下回る温度によって生じることができる。特に、層は、拡散が、例えば、数百ナノメートル以下、および数秒から数分の時間期間内において生じるように十分に薄くあることができ、それによって、反応物を反応させて、発光材料を形成することが可能となる。
【0075】
次に図6を参照すると、基板600が提供され、前駆体層604が、基板600に隣接して形成される。図6の製造方法のある側面は、図5に対して前述のように、類似様式で実装することができ、したがって、本明細書ではさらに説明されない。
【0076】
図6に例示されるように、反射体層602が、最初に基板600に隣接して形成された後に、反射体層602に隣接して前駆体層604の形成、および前駆体層604に隣接して別の反射体層606の形成が続く。対の反射体層602および606は、結果として生じる発光材料の保護および密閉を提供し、酸素、湿気、および他の汚染物質へのその曝露を低減する役割を果たす。加えて、対の反射体層602および606は、放出放射の損失を低減し、側方方向に沿って放出放射の誘導を促進する役割を果たす。
【0077】
例示される実施形態において、反射体層602および606の形成は、ALDまたは別の好適な蒸着技法を使用して、誘電材料集合を蒸着することによって実行される。特に、反射体層602および606はそれぞれ、多重誘電層を含む誘電スタックとして実装され、誘電層の数は、2から100の範囲内、30から90の範囲内、または30から80の範囲内等、2から1,000の範囲内である。各個々の誘電層は、約10nmから約150nmまたは約10nmから約100μm等、約1nmから約200nmの範囲内の厚さを有することができる。反射体層602および606を形成する誘電層の数に応じて、反射体層602および606のそれぞれの総厚は、約1μmから約15μmまたは約1μmから約10μm等、約100nmから約20μmの範囲内であることができる。ある実装の場合、誘電スタックは、異なる誘電材料から形成される多重層を含むことができる。異なる材料から形成される層は、交互様式等の周期的様式において、または非周期的様式において、配設することができる。反射体層602および606を形成するために使用することができる誘電材料の実施例として、シリカ、アルミナ、TiO、Ta、Nb、ZrO、HfO、SnO、ZnO、La、Y、CeO、Sc、Er、V、およびIn等の酸化物、SiO2−x等の窒化物、CaF、SrF、ZnF、MgF、LaF、およびGdF等のフッ化物、ナノ積層体、HfO/Ta、TiO/Ta、TiO/Al、ZnS/Al、およびAlTiO、および他の好適な薄膜誘電材料が挙げられる。望ましくは、誘電スタックを形成する異なる材料は、誘電スタック内に組み入れられる高い屈折率の層集合および低い屈折率の層集合を形成するように、異なる屈折率を有する。ある実装の場合、約0.3から約1の範囲内または約0.3から約2の範囲内の屈折率差が、望ましくあり得る。例えば、TiOおよびSiOが、誘電スタックの交互層内に含まれ、層間に比較的に大きな屈折率差を提供することができる。より大きな屈折率差は、放出放射に対してより大きなストップバンドをもたらし、それによって、理想的全方向反射体の性能に近づくことができる。加えて、より大きな屈折率差は、入射太陽放射に対する反射率に対してより大きな角度公差をもたらし、垂直方向からのより大きな角度において放出放射の漏出を低減させることができる。
【0078】
次いで、図6に例示される層のアセンブリは、アニーリングに曝され、層間の結合を促進し、式(48)に従う反応を促進し、それによって、前駆体層604を反射体層602と606との間に狭入される放出層に変換する。
【0079】
次に図7を参照すると、反射体層702が、基板700に隣接して形成され、前駆体層704が、反射体層702に隣接して形成される。図7の製造方法のある側面は、図5および図6に対して前述のように、類似様式において実装することができ、したがって、本明細書には、さらに説明されない。
【0080】
図7に例示されるように、次に、スペーサ層706が、前駆体層704に隣接して形成された後に、スペーサ層706に隣接して別の反射体層708の形成が続く。スペーサ層706および反射体層708は、結果として生じる発光材料の保護および密閉を提供し、酸素、湿気、および他の汚染物質へのその曝露を低減する役割を果たす。加えて、反射体層708は、放出放射の損失を低減させ、側方方向に沿って放出放射の誘導を促進する役割を果たす一方、スペーサ層706は、放出放射の低損失誘導のために、屈折率整合を提供する。前駆体層704に対する反射体層702と反射体層708との相対的位置は、他の実装のために切り替えることができ、スペーサ層706(または、別の類似スペーサ層)および反射体層708(または、別の類似反射体層)は、基板700に隣接して形成することができ、スペーサ層706(または、別の類似スペーサ層)は、前駆体層704の形成のための蒸着表面を提供することが想定される。
【0081】
例示される実施形態において、スペーサ層706および反射体層708の形成は、真空蒸着または別の好適な蒸着技法を使用して、材料集合を蒸着することによって、実行される。特に、反射体層708は、比較的に広い波長範囲にわたって全方向反射となるように実装され、銀、アルミニウム、金、銅、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、またはイリジウム等の金属、金属合金、または広い範囲の反射率を有する別の好適な材料を蒸着することによって形成することができる。反射体層708の厚さは、約10nmから約150nmまたは約10nmから約100μm等、約1nmから約200nmの範囲内であることができる。図7に例示されるように、スペーサ層706は、約2未満、約1.5未満、または約1.4未満である屈折率を有するもの等、好適な低い屈折率の材料を蒸着することによって形成することができる。好適な低い屈折率の材料の実施例として、MgF(屈折率約1.37)、CaF、シリカ、アルミナ、および他の好適な薄膜、低い屈折率、誘電材料が挙げられる。スペーサ層706の厚さは、約50nmから約300nmまたは約10nmから約100nm等、約1nmから約500nmの範囲内であることができる。
【0082】
次いで、図7に例示される層のアセンブリは、アニーリングに曝され、層間の結合を促進し、式(48)に従う反応を促進し、それによって、前駆体層704を反射体層702と708との間に狭入される放出層に変換する。
【0083】
次に、図8を参照すると、底面基板800が提供され、前駆体層802が、底面基板800に隣接して形成される。図8に例示されないが、スペーサ層および反射体層の一方または両方とも、底面基板800に隣接して形成されることができ、前駆体層802の形成のための蒸着表面を提供することができることが想定される。図8の製造方法のある側面は、図5から図7に対して前述のように、類似様式で実装することができ、したがって、本明細書においてさらに説明されない。
【0084】
図8に例示されるように、次に、結合層804が、前駆体層802に隣接して形成された後に、結合層804に隣接して上基板806を位置付け、層のアセンブリの結合およびアニーリングが続く。結合層804および上基板806は、結果として生じる発光材料の保護および密閉を提供し、酸素、湿気、および他の汚染物質へのその曝露を低減する役割を果たす。結合層804(または、別の類似結合層)は、上基板806に隣接して形成され、次いで、前駆体層802に隣接して位置付けられて、結合を達成することができることが想定される。
【0085】
例示される実施形態において、結合層804の形成は、任意の好適な蒸着技法を使用して、接着剤または結合材料を蒸着することによって実行される。特に、結合層804は、ガラス(例えば、スピンオンガラスまたは密閉ガラス)あるいはポリマー(例えば、ペルフルオロポリマーまたはエポキシ系ポリマー)等、熱硬化性接着剤もしくは結合材料を蒸着することによって形成することができる。結合層804の厚さは、約10nmから約150nmまたは約10nmから約100μm等、約1nmから約200nmの範囲内であることができる。
【0086】
結合は、結合を促進し、式(48)に従う反応を促進するための熱エネルギーの印加とともに、流体圧力、機械的応力、または別の好適な結合技法を使用して達成することができる。また、熱硬化性接着剤または結合材料ではなく、紫外線光硬化性接着剤または結合材料を使用して、達成することができることが想定される。例えば、プレポリマー(または、モノマー集合)の薄いコーティングを表面集合に印加することができ、表面がともに圧着された後に、紫外線光曝露を表面の一方または両方を通して印加し、プレポリマー(または、モノマー)を硬化させることができる。
【0087】
(ソーラーモジュール)
図9は、本発明のある実施形態に従って実装される、ソーラーモジュール900を例示する。ソーラーモジュール900は、結晶シリコンから形成されるp−n接合素子であるPV電池902を含む。しかしながら、PV電池902はまた、別の好適な光活性材料から形成することができる。図9に例示されるように、PV電池902は、結晶シリコンの薄いスライスまたは細片として実装される。シリコンの薄いスライスの使用は、シリコン消費を低減可能にし、ひいては、製造コストの削減を可能にする。マイクロ機械加工作業をシリコンウエハ上において行い、多数のシリコンスライスを形成することができ、シリコンスライスはそれぞれ、PV電池902等のPV電池を形成するように、さらに処理されることができる。図9に例示されるように、PV電池902は、PV電池902の側面904に入射する放射を受容および吸収するように構成されるが、他のPV電池902の表面もまた、関与することができる。
【0088】
例示される実施形態において、ソーラーモジュール900はまた、PV電池902の側面904に隣接する側面908を有するスラブとして形成されるスペクトル集光器906を含む。スペクトル集光器906は、放出層内に含まれ、比較的に広い範囲の太陽放射エネルギーを、PV電池902の吸収スペクトルに整合される比較的に狭い、実質的に単色であるエネルギーバンドに変換することができる、本明細書に説明されるような発光材料集合を含む。ソーラーモジュール900の動作の際に、入射太陽放射は、スペクトル集光器906の上面910に衝突し、この入射太陽放射のうちのある割合が、上面910下に透過し、吸収され、実質的に単色である放出放射に変換される。この放出放射は、スペクトル集光器906内において側方に誘導され、この放出放射のある割合が、この放出放射を吸収し、電気に変換するPV電池902の側面904に到達する。
【0089】
事実上、スペクトル集光器906は、(1)入射太陽放射を収集するステップと、(2)入射太陽放射をPV電池902のバンドギャップエネルギー近傍の実質的に単色である放出放射に変換するステップと、(3)放出放射をPV電池902に伝達し、放出放射を有用な電気エネルギーに変換することができるステップとを含む動作集合を行う。スペクトル集光器906は、収集、変換、および伝達動作のそれぞれに対して、最適化、または別様に調節される個別構造を含むことができる。代替として、これらの動作のいくつかは、共通構造内に実装することができる。スペクトル集光器906によって行われるこれらの動作は、以下にさらに説明される。
【0090】
収集は、放出放射への変換のための準備における入射太陽放射の捕捉または傍受を指す。スペクトル集光器906の収集効率は、スペクトル集光器906内の発光材料の量および分布に依存し得る。いくつかの事例では、発光材料は、入射太陽放射を傍受することができる発光中心集合と見なすことができ、多量の発光中心は、典型的には、収集効率を増加させる。発光中心の分布に応じて、入射太陽放射の収集は、スペクトル集光器906全体を通して分布される様式において生じることができるか、またはスペクトル集光器906の1つ以上の領域内において生じることができる。収集効率はまた、入射太陽放射の各発光材料に到達する能力を含め、スペクトル集光器906の他の側面にも依存し得る。特に、収集効率は、典型的には、入射太陽放射の反射を低減させるための反射防止コーティングを介して等、入射太陽放射と発光材料との好適な光結合によって改善される。
【0091】
変換は、入射太陽放射に応答した放出放射を指し、そのような変換の効率は、吸収された太陽光子が放出される光子に変換される確率を指す。スペクトル集光器906の変換効率は、その光量子効率またはその内部量子効率を含む発光材料の光ルミネセンス特性に依存し得るが、また、共振空洞効果を介することを含むその局所光環境との発光中心の相互作用に依存し得る。発光中心の分布に応じて、入射太陽放射の変換は、スペクトル集光器906全体を通して分布される様式において生じることができるか、またはスペクトル集光器906の1つ以上の領域内において生じることができる。また、使用される特定の発光材料に応じて、変換効率は、発光材料によって吸収される入射太陽放射の波長に依存し得る。
【0092】
伝達は、PV電池902に向かっての放出放射の誘導または伝搬を指し、そのような伝達の効率は、放出される光子がPV電池902に到達する確率を指す。スペクトル集光器906の伝達効率は、放出と吸収スペクトルとの間の重複度を含む、発光材料の光ルミネセンス特性に依存し得るが、また、共振空洞効果を介することを含む、その局所光環境との発光中心の相互作用に依存し得る。
【0093】
これらの動作を行うことによって、スペクトル集光器906は、いくつかの効果を提供する。特に、PV電池902の代わりに収集動作を行うことによって、スペクトル集光器906は、シリコン消費を大幅に低減させることが可能であって、ひいては、製造コストの大幅削減を可能にする。いくつかの事例では、シリコン消費量は、約10から約1,000倍だけ削減することができる。また、スペクトル集光器906は、(1)集中効果および(2)単色効果の少なくとも2つの効果に基づいて太陽エネルギー変換効率を向上させる。
【0094】
集中効果の観点から、スペクトル集光器906は、比較的に広い範囲の入射太陽放射エネルギーをPV電池902のバンドギャップエネルギーに近い狭帯域のエネルギーに変換することによってスペクトル集中を行う。入射太陽放射は、スペクトル集光器906の上面910を介して収集され、放出放射は、PV電池902の側面904に向かって誘導される。例えば、スペクトル集光器906の上面910の面積によって表されるような太陽放射収集面積は、例えば、PV電池902の側面904の面積によって表されるようなPV電池902の面積より遥かに大きくあり得る。PV電池902上への結果として生じる集中係数は、約10から約100および最大約1,000以上の範囲内であることができる。例えば、集中係数は、約10,000を超えることができ、最大約60,000以上であることができる。ひいては、集中係数は、ソーラーモジュール900の開回路電圧またはVocを増加させることができ、PV電池902に到達する放出放射内の各集中係数10に対して、太陽エネルギー変換効率約2%(絶対値)または10%(相対値)の増加をもたらすことができる。例えば、Vocは、シリコンのバンドギャップエネルギーの約半分である典型的な値の約0.55Vから、シリコンのバンドギャップエネルギーの約1.5倍である約1.6Vまで増加することができる。典型的な太陽放射エネルギー束または強度は、約100mWcm−2であって、いくつかの事例では、最大10(または、それ以上)の集中係数が、収集、変換、および伝達動作に関して、スペクトル集光器906を最適化することによって達成することができる。
【0095】
単色効果の観点から、スペクトル集光器906から放出される狭帯域放射は、その接合設計の観点から最適化され、この狭帯域放出放射に作用し得るPV電池902によって効率的に吸収されることができる。加えて、放出放射のエネルギーをPV電池902のバンドギャップエネルギーと整合させることによって、熱化は、ほとんどの場合、PV電池902内ではなく、スペクトル集光器906内において生じ得る。
【0096】
空洞量子電磁力学の側面を使用して、マイクロ空洞または共振空洞導波路としてスペクトル集光器906を実装することができる。結果として生じる共振空洞効果は、いくつかの効果を提供することができる。例えば、共振空洞効果は、PV電池902に向かって放出放射の方向を制御するために利用することができ、したがって、PV電池902に到達する放出放射の割合を向上させる。この指向性制御は、非誘導方向における光学モードに対する放出の抑制を有する一方、PV電池902に向かって誘導された方向における光学モードに対する放出を可能にするか、または向上させることができる。そのような様式では、損失コーンを介した放出放射の損失を大幅に低減させることができる。また、共振空洞効果は、波長集合の放出を向上させること等によって、ある光学モードと関連付けられた放出特性を修正し、他の光学モードと関連付けられた別の波長集合の放出を抑制するために利用することができる。この放出特性の修正は、スペクトル牽引を介して、放出スペクトルと吸収スペクトルとの間の重複を低減することができ、自己吸収から生じる損失を低減させることができる。この放出特性の修正はまた、より大きな励起子結合エネルギーをもたらすことができる励起子放出を介して、ルミネセンスを促進することができる。加えて、共振空洞効果は、発光材料集合の吸収および放出特性を向上させることができ、間接的光学遷移または禁制光学遷移を有する半導体材料の使用を可能にする。この吸収および放出特性の向上は、パーセル効果等を介して光学利得ならびに増幅された自発放出を有することができる。いくつかの事例では、スペクトル集光器906内の高強度の放出放射は、誘導放出およびレージングをもたらすことができ、さらに、放出放射がPV電池902に向かって誘導されることに伴って損失を低減させることができる。
【0097】
例示される実施形態において、スペクトル集光器906内の光学状態の局所密度は、誘導光学モードおよび放射光学モードの両方を含むことができる。誘導光学モードは、スペクトル集光器906に沿った放出放射の伝搬に関与することができる一方、放射光学モードは、スペクトル集光器906からの放出放射の伝搬に関与することができる。比較的に低い程度の垂直閉じ込めの場合、光学状態の局所密度および放出特性は、比較的に低い程度に修正される。誘電スタックの誘電層間の屈折率差を増加させること等による、垂直閉じ込めの増加は、光学状態の局所密度内により大きな歪曲を導入し、指向性制御を含む放出特性の修正をもたらすことができる。また、垂直共振に対して、スペクトル集光器906内の放出層の厚さを調節することによって、放射光学モードを抑制することができる。この抑制は、スペクトル集光器906からの放出損失を低減させる一方、PV電池902に向かう方向に、スペクトル集光器906に沿って側方放出の確率を向上させることができる。ある実装の場合、放出層は、実質的に共振電磁波の波腹位置に中心が置かれるように、一対の反射体層間に配置することができ、対の反射体層は、約10以上の波長に波長のある割合の範囲内の空洞長をもたらすように離間することができる。側方閉じ込めはまた、例えば、放射の伝達に関与しないスペクトル集光器906の側縁および表面に隣接して反射体層を形成することによって達成することができる。
【0098】
共振空洞導波路として実装されると、スペクトル集光器906の性能は、低から高に変動し得るその質またはQ値を参照して特徴付けることができる。比較的に低いQ値は、効率に改良をもたらすのに十分であり得、Q値が大きいほど、効率に付加的な改良もたらす。ある実装の場合、スペクトル集光器906は、少なくとも約10または少なくとも約100等、少なくとも約5、および最大約10,000または最大約1,000等、最大約10以上であるQ値を有することができる。高Qの共振空洞導波路の場合、スペクトル集光器906は、励起子が空洞光子と作用し、励起子ポラリトンと称される結合された励起子−光子準粒子を形成する励起子放出を呈し得る。スペクトル集光器906は、励起子と空洞光子との間の、または双励起子の場合、励起子間の結合の程度に応じて弱結合体制または強結合体制で動作することができる。
【0099】
強結合体制において、スペクトル集光器906は、高い効率かつ高い強度放出および極端に低いレージング閾値をもたらし得るポラリトンレーザとして実装することができる。ポラリトンレーザは、実質的に、ゼロ損失および効率最大約100%を有することができる。ポラリトンレーザはまた、時として、ゼロ閾値レーザと称され、殆どまたは全くレージング閾値が存在せず、レージングが、少なくとも部分的に励起子あるいは双励起子または励起子ポラリトン等の関連準粒子から導出される。準粒子の形成およびエネルギーレベルまたは状態の結果として生じる修正は、自己吸収から生じる損失を低減させることができる。従来のレーザとは対照的に、ポラリトンレーザは、反転分布を伴わずに、コヒーレントおよび実質的に単色の放射を放出することができる。特定の理論によって拘束されるわけではないが、ポラリトンレーザの放出特性は、励起子ポラリトンが、共振空洞導波路内においてボーズ凝縮を受けると生じ得る。レージングはまた、弱結合体制においても生じ得るが、レージング閾値は、強結合体制の場合より高くあり得る。弱結合体制において、レージングは、励起子ポラリトンではなく、主に、励起子から導出され得る。
【0100】
ポラリトンレーザの形態において、高Qの共振空洞導波路として実装することによって、スペクトル集光器906は、いくつかの望ましい特性を呈することができる。特に、レージングは、従来のレーザの場合よりも桁違いに小さい励起強度約200mWcm−2未満、約100mWcm−2未満、約50mWcm−2未満、または約10mWcm−2未満、かつ約1mWcm−2以下まで等、非常に低い閾値で達成することができる。典型的な太陽放射強度は約100mWcm−2であるので、レージングは、殆どまたは全く集中を伴わずに通常の太陽光によって達成することができる。また、レージングは、約500ピコ秒未満、約200ピコ秒未満、約100ピコ秒未満、または約50ピコ秒未満、および約1ピコ秒以下まで等、短い放射寿命において生じることができ、非放射機構を介した緩和を回避または低減し得る。さらに、レージングは、共振空洞効果が実質的に不在である場合と比較して、少なくとも約1.5、少なくとも約2、または少なくとも約5、および最大約10倍以上等、放出スペクトルのスペクトル幅を狭小化し、狭放出線を形成するステップを有することができる。例えば、UD930の場合、UD930が、高Qの共振空洞導波路内に組み込まれると、スペクトル幅は、約3nmから約10nm等、約2nmから約10nmの範囲内の値まで狭小化することができる。レージングからの狭放出線は、単色効果の結果、太陽光変換効率を向上させることができる。そのような様式において、レージングおよび距離に有する低損失は、より高い強度の放出をPV電池902に到達させ、より高い太陽光変換効率を可能にすることができる。PV電池902に向かって誘導される放出の損失は、殆どまたは全く測定され得ない。レージングによって、太陽エネルギー変換効率は、約20%から約30%の範囲内または約28%から約30%の範囲内等、最大約30%以上となることができる。
【0101】
(実施例)
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態の具体的側面を説明し、当業者に説明を例示および提供する。実施例は、単に、本発明のいくつかの実施形態の理解および実践において有用である特定の方法論を提供するので、実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0102】
(実施例1)
(発光材料の形成−UD930)
UD930のサンプルを、2つのアプローチに従って、真空蒸着によって再現可能な様式で形成した。一方のアプローチに従って、ヨウ化錫(II)およびヨウ化セシウム(I)を、連続層、典型的には、合計最大6つの層内に蒸着した。別のアプローチに従って、塩化錫(II)およびヨウ化セシウム(I)を、連続層、典型的には、合計最大6つの層内に蒸着した。あるサンプルの場合、塩化錫(II)含有層の厚さは、約90nmであって、ヨウ化セシウム(I)含有層の厚さは、約170nmであった。ヨウ化錫(II)(または、塩化錫(II))を、熱蒸発によって蒸着した一方、ヨウ化セシウム(I)を、電子ビーム蒸着によって蒸着した。蒸着は、ガラス、セラミック、およびシリコンから形成されるものを含め、種々の基板上において、圧力約10−5トル(または、それ以下)で実行した。
【0103】
蒸着後、結果として生じるサンプルを、乾燥した窒素雰囲気中のグローブボックス内においてアニーリングし、ヨウ化錫(II)(または、塩化錫(II))とヨウ化セシウム(I)との間の自己限定性化学反応をもたらした。塩化錫(II)を使用して形成されたサンプルの場合、アニーリングはまた、時として、空気中において実行した。最適アニーリング温度は、特定のサンプルに応じて若干変動することが観察されたが、典型的には、約318℃におけるヨウ化錫(II)の融点(または、約246℃における塩化錫(II)の融点)を上回った。図10は、本発明のある実施形態に従って、シリコン基板(天然SiOを有する)上に蒸着されたヨウ化錫(II)/ヨウ化セシウム(I)に対するアニーリング温度の関数としてプロットされた、約943nmにおいて測定された光ルミネセンス強度を例示する。ヨウ化錫(II)の融点以下の温度におけるアニーリングは、弱光ルミネセンス強度をもたらすことが観察された一方、強帯域の光ルミネセンス強度は、ヨウ化錫(II)の融点を上回る約50℃の温度において、アニーリング後に観察された。最適アニーリング時間周期は、使用される特定のサンプルおよび特定の基板に応じて若干変動することが観察された。ガラス基板上に形成されるサンプルの場合、最適アニーリング時間周期は、典型的には、約15秒であった。光ルミネセンスの安定性は、サンプルが乾燥した窒素雰囲気中に保管された場合、またはエポキシの層を使用して、ガラス基板に結合すること等によって封入される場合に向上された。
【0104】
(実施例2)
(発光材料の特性−UD930)
図11(a)は、本発明のある実施形態に従って、12Kから300Kの範囲内の温度において、UD930に対して観察された励起スペクトルを例示し、図11(b)は、同一温度範囲内において、UD930に対して得られた放出スペクトルを例示する。理解され得るように、温度に有するピーク位置の変動は、励起および放出スペクトルに対して類似する。
【0105】
当業者は、本明細書に説明される発光材料を開発する際に、付加的説明を必要としないが、それでもなお、2007年3月21日出願の同時係属および共有の米国特許出願第11/689,381号(現米国特許第7,641,815号)(その開示は、参照することによって、全体として本明細書に組み込まれる)を検証することによって、いくつかの有用なガイダンスを見出すであろう。
【0106】
本発明は、その具体的実施形態を参照して説明されたが、添付の請求項によって定義される発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行ってもよく、均等物と代用されてもよいことは、当業者によって理解されるはずである。加えて、多くの修正が、特定の状況、材料、物質の組成、方法、またはプロセスを、発明の目的、精神および範囲に適合するように成されてもよい。そのような修正はすべて、本明細書に添付の請求項の範囲内であることが意図される。特に、本明細書に開示される方法は、特定の順序で行われる特定の動作を参照して説明されたが、これらの動作は、本発明の教示から逸脱することなく、同等方法を形成するように組み合わせられるか、再分割されるか、または並べ替えられてもよいことが理解されるであろう。故に、本明細書に具体的に意図されない限り、動作の順序および群化は本発明の制限ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光材料であって、該発光材料は、式:
[ASnX’x’X’’x’’][ドーパント]
を有し、式中、
Aは、一価の陽イオンとして該発光材料内に含まれ、
X、X’、およびX’’は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択され、
aは、1から5までの範囲内にあり、
bは、1から3までの範囲内にあり、
xとx’とx’’との合計は、a+2bであり、
少なくともX’は、x’/(a+2b)≧1/5であるようなヨウ素である、発光材料。
【請求項2】
Aは、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択される、請求項1に記載の発光材料。
【請求項3】
Aは、セシウムであり、aは、1または2である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項4】
bは、1または2である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項5】
XおよびX’’のうちの少なくとも1つは、フッ素である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項6】
XおよびX’’のうちの少なくとも1つは、塩素である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項7】
XおよびX’’のうちの少なくとも1つは、臭素である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項8】
x’/(a+2b)≧1/2である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項9】
x’/(a+2b)≧2/3である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項10】
aは、1であり、bは、1である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項11】
aは、1であり、bは、2である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項12】
aは、2であり、bは、1である、請求項1に記載の発光材料。
【請求項13】
前記ドーパントは、元素組成に関して、5%未満の量で前記発光材料内に含まれる、請求項1に記載の発光材料。
【請求項14】
前記ドーパントは、元素組成に関して、0.1%から1%までの範囲内の量で前記発光材料内に含まれる、請求項1に記載の発光材料。
【請求項15】
前記ドーパントは、酸素を含む陰イオンを含む、請求項1に記載の発光材料。
【請求項16】
前記陰イオンは、O−2およびOH−1のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の発光材料。
【請求項17】
発光材料を形成する方法であって、
AおよびXの源を提供することであって、Aは、IA族元素のうちの少なくとも1つから選択され、Xは、VIIB族元素のうちの少なくとも1つから選択される、ことと、
Bの源を提供することであって、Bは、IVB族元素のうちの少なくとも1つから選択される、ことと、
該AおよびXの源ならびに該Bの源を真空蒸着に曝して、基板に隣接した薄膜集合を形成することと、
該薄膜集合を温度Theatまで加熱して、該基板に隣接した発光材料を形成することであって、該発光材料は、A、B、およびXを含み、該AおよびXの源ならびに該Bの源のうちの1つは、より低い融点Tm1を有し、該AおよびXの源ならびに該Bの源のうちの別の1つは、より高い融点Tm2を有し、Tm1<Theat<Tm2である、ことと
を含む、方法。
【請求項18】
m1<Theat<(Tm1+3Tm2)/4である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
m1<Theat<(Tm1+Tm2)/2である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記AおよびXの源は、式AXを有する化合物を含み、前記Bの源は、式BYを有する化合物を含み、Yは、VIIB族元素のうちの少なくとも1つから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記AおよびXの源ならびに前記Bの源を真空蒸着に曝すことは、
該AおよびXの源を電子ビーム蒸着および熱蒸発のうちの少なくとも1つに曝すことと、
該Bの源を熱蒸発に曝すことと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記AおよびXの源ならびに前記Bの源を真空蒸着に曝すことは、
該AおよびXの源ならびに該Bの源を混合して、混合物を形成することと、
該混合物を真空蒸着に曝して、前記基板に隣接した薄膜集合を形成することと
を含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−513016(P2013−513016A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543157(P2012−543157)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058669
【国際公開番号】WO2011/071738
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512148702)オムニピーブイ, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】