説明

可視/NIR光検出器

ポルフィリン化合物を提供する。さらにこれらの化合物は縮合多環式芳香族炭化水素又は縮合ヘテロ環芳香族を含んでいてもよい。縮合多環式芳香族炭化水素及び縮合ヘテロ環芳香族は、そのポルフィリン化合物の吸収を広げ且つ拡大し、溶解度、結晶性、及び膜形成性を変えうる。さらに、ポルフィリン化合物を含むデバイスも提供する。これらのポルフィリン化合物は、C60などの化合物とドナー/アクセプター構成で用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年8月25日に出願した米国出願番号第12/868,503号、2009年8月26日に出願した米国仮出願番号第61/275,156号、及び2010年3月31日に出願した米国仮出願番号第61/341,413号に対する優先権を主張し、それらの開示をその全体を参照により本明細書に明確に援用する。
【0002】
[米国政府の援助]
軍/Cecomによって授与されたW15P7T−08−C−P409による援助を受けて、本発明は行われた。政府は本発明に一定の権利を有している。
【0003】
[共同研究契約]
特許請求の範囲に記載された発明は、共同の大学企業研究契約に対して、1つ以上の以下の団体により、それらために、及び/又はそれらと一緒に行われた:リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・ミシガン、プリンストン・ユニバーシティー、ザ・ユニバーシティー・オブ・サザンカリフォルニア、及びザ・ユニバーサル・ディスプレイ・コーポレイション。この契約は本特許請求の範囲に記載された発明が行われた日及びそれより前に有効であり、特許請求の範囲に記載された発明はこの契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0004】
[本発明の分野]
本発明は、新規な有機化合物及びそれらの化合物を含むデバイスに関する。より詳細には、本発明は、ポルフィリンオリゴマー、及びドナー/アクセプター構成においてポルフィリンオリゴマー化合物を含む光検出器に関する。
【背景技術】
【0005】
有機物質を使用する光電子デバイス(オプトエレクトロニクスデバイス)は、多くの理由によってますます望ましいものになってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる物質の多くは比較的安価であり、そのために有機光電子デバイスは、無機デバイスに対する価格優位性についての潜在的可能性をもっている。さらに、有機物質の内在的性質(例えば、それらの柔軟性)は、特定の用途、例えば柔軟な基板上への作成のために、有機物質をうまく適したものにしうる。有機光電子デバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。
【0006】
感光性(フォトセンシティブ)光電子デバイスは、電磁波を電気に変換する。太陽電池、いわゆる光電池(PV)デバイスは、電力を作り出すために具体的に用いられる感光性光電子デバイスの一つのタイプである。別のタイプの感応性光電子デバイスは、光伝導セルである。これの作用においては、信号検出回路がそのデバイスの抵抗を測定し、光の吸収による変化を検出する。別のタイプの感光性光電子デバイスは、光検出器である。光検出器を作動させる場合、光検出器は、光検出器が電磁放射線に曝露されて、印加されたバイアス電圧を有しうる場合に生じる電流を測定する電流検出回路と連結して用いられる。ここに記載した検出回路は、光検出器にバイアス電圧をもたらして、電磁放射線に対する光検出器の電気的応答を測定することができる。感光性デバイスは一連のデバイス群に用いることができ、それには光検出器、撮像デバイス、光センサーなどが含まれる。感光性デバイス並びにその作製及び駆動は、米国特許第7,375,370号及び同7,230,269号明細書にさらに記載されており、その開示はその全体を本明細書に援用する。
【0007】
有機感光性及び発光デバイスに加えて、有機物質は様々なその他の電子部品に用いられることができる。例えば、トランジスタ中の物質又は構造のいくらか又は全部が有機物質を含む有機トランジスタを構成することができる。
【0008】
本明細書で用いる場合、「有機」の用語は、有機光電子デバイスを作製するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を含む。「小分子」はポリマーではない全ての有機物質をいい、「小分子」は実際には非常に大きくてもよい。小分子はある状況下では繰り返し単位を含むことができる。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」群から排除しない。小分子は、ポリマー中に、例えば、ポリマー骨格上のペンダント基として、あるいはポリマー骨格の一部として組み込まれていることもできる。小分子は、デンドリマーのコア部分として機能することもでき、デンドリマーはそのコア部分の上に作られた一連の化学的殻からなる。
【0009】
本明細書で用いる場合、「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載されている場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0010】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態のいずれかで、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0011】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップの近くに現れる。
【0012】
有機物質との関連で、「ドナー」及び「アクセプター」の用語は、接触しているが異なる2つの有機物質のHOMO及びLUMOエネルギー準位の相対的な位置をいう。これは無機の関連におけるこれらの用語の使用とは対照的であり、無機においては「ドナー」及び「アクセプター」は、無機n−型及びp−型層を作るために用いることができるドーパントの種類をいうことができる。有機の関連では、別のものと接触している一つに物質のLUMOエネルギー準位がより低ければ、その物質はアクセプターである。そうでなければそれはドナーである。外部バイアスの不存在下では、ドナー−アクセプター接合において、電子はアクセプター物質へ移動し、正孔はドナー物質へ移動することがエネルギー的に有利である。
【0013】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0014】
有機デバイスについてのさらに詳細と、上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、同明細書はその全体を参照によって本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,375,370号明細書
【特許文献2】米国特許第7,230,269号明細書
【特許文献3】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Beletskaya, I., Tyurin, V. S., Tsivadze, A. Yu., Guilard, R., Stern, C., Chem. Rev. 2009, 109, 1659-1713
【非特許文献2】Fukuzumi, S., Kojima, T., J. Mater. Chem. 2008, 18, 1427-1439
【非特許文献3】Tsuda, A., Osuka, A., Science, 2001, 293, 79-82
【非特許文献4】Tsuda, A., Furuta, H., Osuka, A., J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 10304-10321
【非特許文献5】Cho, H. S., Jeong, D. H., Cho, S., Kim, D., Matsuzaki, Y., Tanaka, K., Tsuda, A., Osuka, A., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14642-14654
【非特許文献6】Tsuda, A., Bull. Chem. Soc, Jpn., 2009, 82, 11-28
【非特許文献7】Yamane, O., Sugiura, K-i., Miyasaka, H., Nakamura, K., Fujumoto, T., Nakamura, K., Kaneda, T., Sakata, Y., Yamashita, M., Chem. Lett. 2004, 33, 40-42
【非特許文献8】Tanaka, M., Hayashi, S., Eu, S., Umeyama, T., Matano, Y., Imahori, H., Chem. Comm. 2007, 2069-2071
【非特許文献9】Davis, N. K. S., Pawlicki, M., Anderson, H. L., Org. Lett. 2088, 10, 3945-3947
【非特許文献10】Yamane, O., Sugiura, K-i., Miyasaka, H., Nakamura, K., Fujimoto, T., Nakamura, K., Kaneda, T., Sakata, Y., Yamashita, M., Chem. Lett. 2004, 33, 40-42
【非特許文献11】Tanaka, M., Hayashi, S., Eu. S., Umeyama, T., Matano, Y., Imahori, H., Chem. Comm. 2007, 2069-2071
【非特許文献12】Davis, N. K. S., Pawlicki, M., Anderson, H. L., Org. Lett. 2008, 10, 3945-3947
【非特許文献13】Cho, H. S., Jeong, D. H., Cho, S., Kim, D., Matsuzaki, Y., Tanaka, K., Tsuda, A., Osuka, A., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14642-14654
【非特許文献14】A. Tsuda, H. Furuta, A. Osuka, Angewandte Chemie International Edition 2000, 39, 2549
【非特許文献15】M. Kamo, A. Tsuda, Y. Nakamura, N. Aratani, K. Furukawa, T. Kato, A. Osuka, Organic Letters 2003, 5, 2079
【非特許文献16】F. Y. Cheng, S. Zhang, A. Adronov, L. Echegoyen, F. Diederich, Chemistrya European Journal 2006, 12, 6062
【非特許文献17】K. Kurotobi, L. S. Kim, S. B. Noh, D. Kim, A. Osuka, Angewandte Chemie International Edition 2006, 45, 3944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、新規な有機化合物及びそれらの化合物を含むデバイスに関する。より詳細には、本発明は、ポルフィリンオリゴマー、及びドナー/アクセプター構成においてポルフィリンオリゴマー化合物を含む光検出器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ポルフィリン化合物を提供し、その化合物は以下の構造を有する。
【0019】
【化1】

【0020】
〜R24は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R〜R24のうちの一つは、縮合した多環式芳香族又は縮合したヘテロ環芳香族である。Mは、二配位、三配位、四配位、五配位、又は六配位の金属イオンであるか又は2つの水素原子である。nは0〜100である。好ましくは、nは0〜5である。
【0021】
一つの側面では、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Zn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される。好ましくは、Mは、Zn、Pb、Sn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)である。
【0022】
一つの側面では、R〜R24のうちの一つは縮合したピレンである。好ましくは、R〜R及びR13〜R21のうちの一つが縮合したピレンである。
【0023】
一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
〜R63は独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。点線で示した各々の弧は、多環式芳香族置換基又はヘテロ環芳香族置換基である。Xは、二配位、三配位、四配位、又は六配位であってよい。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、及びBからなる群から選択される。
【0031】
上記の点線で示される弧は、閉じた環を形成している置換基であり、これはπ系の共役を広げてもよい。一つの側面では、この置換基は以下のものからなる群から選択される。
【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
i、j、及びmはそれぞれ独立に0〜100である。上のジグザグの線は、ポルフィリンに対してπを延長する単位が縮合する箇所を表す。黒丸は、その置換基がポルフィリンのメソ位置に結合する位置を表す。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、又はBである。Yは、H、M、又はXである。R′〜R′23は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0037】
好ましくは、点線の弧で表される置換基は、ナフタレン、アントラセン、又はピレンである。
【0038】
ポルフィリン化合物の具体例を提供する。一つの側面では、その化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
【化14】

【0042】
【化15】

【0043】
有機デバイスも提供する。このデバイスは、第一の電極、第二の電極、その第一の電極と第二の電極との間に配置された第一の層、及びその第一の電極と第二の電極との間に配置された第二の有機化合物を含む第二の層を含み、その第二の層は第一の層と直接接触している。
【0044】
第一の層は第一の化合物を含み、その第一の化合物は上述した式Iの構造を有する。
【0045】
〜R24は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。Mは、二配位、三配位、四配位、五配位、又は六配位の金属イオン又は2つの水素原子である。nは0〜100である。好ましくは、nは0〜5である。
【0046】
一つの側面では、R〜R24のうち少なくとも一つは、縮合多環式芳香族又は縮合ヘテロ環芳香族である。好ましくは、R〜R24のうち少なくとも一つは、縮合したピレンである。さらに好ましくは、R〜R及びR13〜R21のうちの少なくとも一つが縮合したピレンである。
【0047】
別の側面では、第一の層は第一の電極と接触しており、そのデバイスは、第二の層と第二の電極との間に配置され、且つ第二の層及び第二の電極と接触しているBCPの層をさらに含む。
【0048】
一つの側面では、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Zn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される。好ましくは、Mは、Zn、Pb、Sn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)である。
【0049】
一つの側面では、第二の化合物は、C60、C70、C84、F16−CuPc、PTCBI、PTCDA、PCBM、又はPTCDIからなる群から選択される。好ましくは、第二の化合物はC60である。
【0050】
一つの側面では、上記デバイスは1200nmよりも長い波長で光学的応答をする。別の側面では、上記デバイスは1500nmより長い波長で光学的応答をする。
【0051】
一つの側面では、第一の層は、溶液処理を用いて堆積される。
【0052】
一つの側面では、第一の層は、1つよりも多い第一の化合物を含む。
【0053】
なお別の側面では、第二の化合物は約80nm〜約200nmの厚さを有する層に堆積される。
【0054】
一つの側面では、第一の化合物は、ポリスチレン、クロロベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、及びピリジンのうちの1つ以上と組み合わせて堆積される。
【0055】
ポルフィリン化合物を含むデバイスの具体例を提供する。一つの側面では、第一の化合物は式II〜式XVIIIからなる群から選択される。
【0056】
〜R63は独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。点線で表されるそれぞれの弧は、多環式芳香族置換基又はヘテロ環芳香族置換基である。Xは、二配位、三配位、四配位、又は六配位であってよい。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、及びBからなる群から選択される。
【0057】
点線で表される弧は、πシステムの共役を広げることができる閉じた環を形成する置換基である。一つの側面では、この置換基は以下のものからなる群から選択される。
【0058】
【化16】

【0059】
【化17】

【0060】
【化18】

【0061】
【化19】

【0062】
i、j、及びmはそれぞれ独立に0〜100である。上のジグザグの線は、ポルフィリンに対してπを延長する単位が縮合する箇所を表す。黒丸は、その置換基がポルフィリンのメソ位置に結合する位置を表す。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、又はBである。Yは、H、M、又はXである。R′〜R′23は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。
【0063】
好ましくは、点線で表される弧は、ナフタレン、アントラセン、又はピレンである。
【0064】
別の側面では、第一の化合物は化合物1〜化合物11からなる群から選択される。
【0065】
なお別の側面では、上記デバイスは消費者製品である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、モノマー、ダイマー(二量体)、トリマー(三量体)の吸収特性をしめし、より長いオリゴマーを用いることによってどのように応答波長が長くなりうるかを示している。
【図2】図2は、アントラセンを縮合させる影響を示している。両側に縮合をした分子は、片側に縮合をした分子よりも共役を伸ばし且つ広げる。
【図3】図3は、異なる末端及び横の置換の変化を有する4種のZnダイマーを示す。この図はこれ以後の図で参照される。
【図4】図4は、A、C、及びD(図3を参照されたい)のフィルムの吸収を示す。末端の置換基への様々な変化は吸収波長に殆ど影響を及ぼさない。
【図5】図5は、「A」、「B」、「C」、及び「D」(図3を参照されたい)に対する典型的なI−V及びEQEデータを示す。「A」、「B」、及び「C」を備えたデバイスは、1:10のポリスチレン:ダイマー比を有し、フィルム形成を助け、デバイスの歩留まりを高める。全てのデバイスは、ITO/PEDOTの上に製膜し、約1000ÅのC60、100ÅのBCP、及び1000ÅのAgを有する。
【図6】図6は、分子「C」に対する、典型的な光照射したIV、EQE、及び比検出能(D)を示す。
【図7】図7は、ピレンで置換され又はピレンが縮合したダイマー類のフィルム吸光度(左)を示す。置換されたダイマーは右上に示され、縮合したダイマーは右下に示されている。
【図8】図8は、1000ÅのC60を伴うピレン置換ダイマーに対する光照射したIV、EQE、及びDのデータを示す(フィルムは図7に示したものとほぼ同じ厚さである)。フィルムはクロロベンゼンから製膜した。
【図9】図9は、1250ÅのC60を伴うピレン縮合ダイマーに対する光照射したIV、EQE、及びDのデータを示す(フィルムは図7に示したものと同じ厚さである)。フィルムは99%クロロベンゼン+1%ピリジンから製膜した。
【図10】図10は、異なる中心金属化の影響を示す。SnCl及びPbは両方とも波長応答を広げる。
【図11】図11は、アントラセン縮合ポルフィリンダイマーの吸収スペクトルを示す。
【図12】図12は、ピレン亜鉛ポルフィリンダイマーの合成、及びピレン環と紐状ポルフィリン(ポルフィリンテープ)との続いての縮合のスキームを示す。
【図13】図13は、出発ポルフィリンダイマーと比較した、縮合生成物に対する、溶液中での凝集の明白な影響を示している。ピレンポルフィリンダイマー及び縮合したピレン環をもつポルフィリンダイマーのH−NMRスペクトルを、5%ピリジン−d/CDCl中(上側)及び5%ピリジン−d/C中(縮合ピレンダイマー、下側)で示した。
【図14】図14は、縮合アントラセン亜鉛ポルフィリンダイマーの合成のためのスキームを示す。
【図15】図15は、試験した上記4種の分子の吸光計数(α)を示す。DTBPh、実線(丸);CNPh、長い破線(四角);Psub、短い破線(三角);及びPfused、点線(菱形)。挿入図:試験した分子の化学構造。全てのドナーは同じポルフィリンダイマーベースを用い、それらの末端封鎖のみが異なる。CNPhはR=R1、X=H;DTBPhは、R=R2、X=H;Psubは、R=R3、X=H;そしてPfusedは、R=R4、式中X′はピレンに対する二番目の結合、である。
【図16】図16は、以下のものの0.5wt/vol%のクロロベンゼン溶液をドクターブレードを用いた塗布によって堆積させたフィルムの原子間力顕微鏡写真を示す:(a)CNPh、(b)1vol%ピリジンを伴うCNPh、(c)DTBPh、(d)Psub、及び(e)1vol%ピリジンを伴うPfused。それぞれの顕微鏡写真の縦軸の目盛範囲は、110nm、80nm、20nm、20nm、及び40nmである。フィルムのRMS粗さは、それぞれ、20nm、9.0nm、0.5nm、2.7nm、及び5.3nmである。
【図17】図17(a)は、示した様々なポルフィリンテープ状分子からなるフィルムのX線回折強度を示す。(b)は、基板表面(黒い水平線)に対する分子の回転を示す。(001)面は基板表面に対して平行であり、(100)面の投影は平行四辺形で示され、単位格子のb−及びc−方向に印をつけている。Cは(001)面に垂直な方向を示しており、紙面内にある。
【図18】図18は、ポルフィリンテープ/C60光検出器の電流密度対電圧特性を示している。試験したいくつかの材料に基づく検出器に対する理想係数及び直列比抵抗は以下のとおりである。DTBPh:n=1.31±0.11及びRs=530±160Ω-cm、CNPh:n=1.81±0.04及びRs=5.8±2.1Ω-cm、Psub:n=1.35±0.02及びRs=0.90±0.1Ω-cm、及びPfused:n=1.33±0.03及びRs=1.4±0.1Ω-cm。
【図19】図19は、いくつかのポルフィリンテープ状化合物から作製したデバイスの外部量子効率を太い線で表している(上の組)。同じデバイスの比検出能を細い線で示している(下の組)。線種は以下のとおりである。DTBPhは実線;CNPhは一点鎖線;Psubは破線;及びPfusedは点線である。
【図20】図20は、λ=1064nmにおける1nsパルスを用い、−1Vのバイアスをかけた0.3mmの直径のデバイスの電気的応答を示している。フィット(数式による近似線)は、1.87±0.03nmの減衰時間定数に相当する。挿入図:電気的応答のボード線図であり、56±7MHzの3dBロールオフ周波数を示している。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本明細書ではポルフィリンオリゴマー類を提供し、これらは光検出器用又は光電池用材料として、ドナー/アクセプター構造に用いることができる。特に、縮合した多環式芳香族炭化水素(polyaromatic hydrocarbons(PAH))や縮合したヘテロ環芳香族を含むポルフィリンテープ類を提供する。縮合PAH及び縮合ヘテロ環芳香族は、ポルフィリン化合物の吸収を延ばして広げ、その溶解性、結晶性、及びフィルム形成特性を変えうる。
【0068】
歴史的には、有機光検出器は、約1000nmよりも短い波長に限定されてきた。有機光検出器を作り出すことの困難さは、より大きな分子中に共役を広げるのと同時に、励起子が励起子解離が起こりうるドナー/アクセプター界面へと拡散するために充分な時間を有するのに充分な励起子寿命を維持することの困難さに帰着できる。赤外線吸収をする物質は、可視領域で吸収をするものよりも狭いHOMO/LUMOエネルギーギャップを有しており、これが適切なドナー又はアクセプターとの対形成をすることをより難しくしている。
【0069】
ポルフィリン分子は、周知の可視光吸収体である。ポルフィリン類のオリゴマーは、2つのポルフィリンを、そのポルフィリン間を3つの炭素−炭素結合で一緒に縮合することによって作ることができ(図1)、共役、及びそれによって吸収をダイマー(二量体)については約1200nm、あるいはトリマー(三量体)については1500nmまで延ばす。共役を延ばす第二の方法は、図2に見られるように、多環式芳香族炭化水素(PAH)、例えば、ピレン又はアントラセンをポルフィリンの末端に縮合させることである。これが共役を延ばし、吸収波長を長くし、吸収をより広いバンドに広げる。吸収を延ばす第三の方法は、ポルフィリンの核を修飾することによる。この核は、2つの水素原子、2+の原子価をもつ金属原子(すなわち、Zn、Pb、Sn(II)など)、又は全体で2+の原子価をもつ金属錯体(すなわち、ClAl、Sn(IV)O、Sn(IV)Clなど)を含むことができ、この金属は吸収のエネルギー及び強度を変えることができる。さらにまた、異なる末端構造及びコア金属は、様々な溶媒中への溶解度、結晶する傾向、フィルム形成性、及び輸送特性、例えば、担体移動度及び励起子拡散長を変えるだろう。
【0070】
ポルフィリンオリゴマー類のエネルギー論は単一ポルフィリン類に類似しているが、より狭いバンドギャップをもち、より短い励起状態の寿命を示す。しかし、我々は、従来からの受容体、例えばC60を用いることができることを示している。様々な末端及び横側の基(例えば、メトキシ又はシアノ基)はエネルギーを上昇させあるいは低くし、これを検出器における開路電圧及び暗電流を変えるために用いることができる。
【0071】
ポルフィリン類は、生命にとって必須の最も重要な生体分子の一つであり、植物における光合成及び動物における呼吸などの酸化−還元反応について現実に重要な役割を担っている。(Wasielewski, M. R., Chem. Rev. 1992, 435-461、及びその中の参考文献; Harriman, A., Sauvage, J.-P., Chem. Soc. Rev. 1996, 24, 41-48、及びその中の参考文献; Murakami, Y., Kikuchi, J.-i., Hisaeda, Y., Hayashida, O., Chem. Rev. 1996, 96, 721-758、及びその中の参考文献)。合成ポルフィリン類は、有機エレクトロニクスの様々な分野における有用な光電子材料(オプトエレクトロニクス材料)として幅広い用途をもっている(応用:過去、現在、そして未来。The Porphyrin Handbook(ザ・ポルフィリンハンドブック); Kadish, K. M., Smith, K. M. 及びGuilard, R., 編; Academic Press: サンディエゴ、CA、2000; Vol. 6; 電子移動。ザ・ポルフィリンハンドブック; Kadish, K. M., Smith, K. M. 及びGuilard, R., 編; Academic Press: サンディエゴ, CA, 2000, Vol. 8。いくつかの最も最近の例;Perez, M. D., Borek, C., Djurovich, P. I., Mayo, E. I., Lunt, R. R., Forrest, S. R., Thompson, M. E., Adv. Mater. 2009, 21, 1517-1520; Imanori, H., Umeyama, T., Ito, S., Acc. Chem. Res. 2009, ACS ASAP, 10.1021/ar900034t; Liu, Y., Feng, X., Shen, P., Zhou, W., Weng, C., Zhao, B., Tan, S., Chem. Comm. 2009, 2499-2501; 及びChe, C.-M., Chui, S. S.-Y., Xu, Z.-X., Roy, V. A. L., Yan. J. J., Fu, W.-F., Lai, P. T., Williams, I. D., Che. Asia. J. 2008, 3, 1092-1103)、例えば、太陽電池、光検出器として、様々な反応における触媒として(Biochemistry and Binding: Activation of Small Molecules. The Porphyrin Handbook; Kadish, K. M., Smith, K. M. 及びGuilard, R., 編; Academic Press; サンディエゴ, CA, 2000; Vol. 4; Lu, Y., Yeung, N., Sieracki, N., Marshall, N. M., Nature, 2009, 855-862。(b)Doyle, M. P., Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 850-852; Thu, H-Y., Tong, G. S-M., Huang, J-S., Chan, S. L-F., Deng, Q-H., Che, C-M., Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 9747-9751), bioimaging agents and biologically active ingredients in medicine (Medical Aspects of Porphyrins. The Porphyrin Handbook; Kadish, K. M. Smith, K. M. 及びGuilard, R., 編; Academic Press: サンディエゴ, CA, 2003; Vol. 14)。光電子材料としてのポルフィリンの使用の利点には電荷分離の効率及び電荷輸送が含まれ、それは組み立てたポルフィリンが厚い膜であってもそうである(Huijser, A., Savenije, T. J., Meskers, S. C. J., Vermeulen, M. J., Siebbeles, L. D. A., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 12469-12500; Winters, M. U., Dahlstedt, E. D.,
Blades, H. E., Wilson, C. J., Frampton, M. J., Anderson, H. L., Albinsson, B, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 4291-4297; Siebbeles, L. D. A., Huijser, A., Savenije, T. J., J. Mater. Chem. 2009, 19, 6067-6072; Huijser, A., Suijkerbuijk, B. M. J. M., Klein Gebbink, R. J. M., Savenije, T. J., Siebbeles, L. D. A., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 2485-2492)、可視領域における強い吸光度、高い化学的安定性、光電子特性の調節能力(Applications; Past, Present and Future. The Porphyrin Handbook; Kadish, K. M., Smith, K. M. and Guilard, R.,編; Academic Press: San Diego, CA, 2000; Vol. 6; Electron Transfer. The Porphyrin Handbook; Kadish, K. M. Smith, L. M. and Guilard, R.,編; Academic Press, サンディエゴ, CA, 2000; Vol. 8; Perez, M. D., Borek. C., Djurovich, P. I., Mayo, E. I., Lunt, R. R., Forrest, S. R., Thompson, M. E., Adv. Mater. 2009, 21, 1517-1520; Imahori, H., Umeyama, T., Ito, S., Acc. Chem. Res. 2009, ACS ASAP, 10.1021/ar900034t; Liu, Y., Feng, X., Shen, P., Zhou, W., Weng, C., Zhao, B., Tan, S., Chem. Comm. 2009, 2499-2501; 及びChe, C.-M., Chui, S. S.-Y., Xu, Z.-X., Roy, V. A. L., Yan. J. J., Fu, W.-F., Lai, P. T., Williams, I. D., Che. Asia. J. 2008, 3, 1092-1103)。ポルフィリンの配列からなるマルチポルフィリンシステムにかなりの注目が現在注がれている(Beletskaya, I., Tyurin, V. S., Tsivadze, A. Yu., Guilard, R., Stern, C., Chem. Rev. 2009, 109, 1659-1713; Fukuzumi, S., Kojima, T., J. Mater. Chem. 2008, 18, 1427-1439)。ポルフィリン類を、ポルフィリン単位の間を3つの炭素−炭素結合で一緒に縮合することによって作られるポルフィリン類のオリゴマー(ポルフィリンテープ)は、近赤外領域にまで広がった吸収をもつ高い共役システムを示す(例えば、亜鉛ポルフィリンのダイマー(二量体)については1200nm、あるいは亜鉛ポルフィリンのトリマー(三量体)については1500nm)(Tsuda, A., Osuka, A., Science, 2001, 293, 79-82; Tsuda, A., Furuta, H., Osuka, A., J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 10304-10321; Cho, H. S., Jeong, D. H., Cho, S., Kim, D., Matsuzaki, Y., Tanaka, K., Tsuda, A., Osuka, A., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14642-14654; 及びTsuda, A., Bull. Chem. Soc, Jpn., 2009, 82, 11-28)。
【0072】
吸収を広げる第二の方法は、ポルフィリン核を修飾することによる。その核は2つの水素原子、あるいは2+価の原子価をもつ金属原子(すなわち、Zn、Pb、Sn(II)など)、あるいは全体で2+の原子価をもつ金属錯体(すなわち、ClAl、Sn(IV)O、Sn(IV)Clなど)を含むことができ、その金属は、吸収エネルギー及び吸収強度を変化させる。共役を広げる新しい方法は、多環式芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon(PAH))、例えばピレン又はアントラセンを、先に示されているようにポルフィリンの末端に縮合させて、一つ縮合(モノ縮合)したポルフィリン類を形成することによるものである(Yamane, O., Sugiura, K-i., Miyasaka, H., Nakamura, K., Fujumoto, T., Nakamura, K., Kaneda, T., Sakata, Y., Yamashita, M., Chem. Lett. 2004, 33, 40-42; Tanaka, M., Hayashi, S., Eu, S., Umeyama, T., Matano, Y., Imahori, H., Chem. Comm. 2007, 2069-2071; 及びDavis, N. K. S., Pawlicki, M., Anderson, H. L., Org. Lett. 2088, 10, 3945-3947)。これが共役を広げ、吸収波長を長くし、且つ吸収をより広いバンドへと広げ、それとともにソーレバンド(Soret band)のものと比較して増大した強度のQバンドを有する。しかし、PAHとポルフィリン類との縮合には活性化された基、例えば、メトキシ又はカルボキシル基の存在が必要であり、非置換PAHでは起こらない(Yamane, O., Sugiura, K-i., Miyasaka, H., Nakamura, K., Fujimoto, T., Nakamura, K., Kaneda, T., Sakata, Y., Yamashita, M., Chem. Lett. 2004, 33, 40-42; Tanaka, M., Hayashi, S., Eu. S., Umeyama, T., Matano, Y., Imahori, H., Chem. Comm. 2007, 2069-2071; 及びDavis, N. K. S., Pawlicki, M., Anderson, H. L., Org. Lett. 2008, 10, 3945-3947)。さらに我々の最良の知見によれば、縮合を1つよりも多い芳香族環を用いて進め、末端キャップしたポルフィリン類を形成することは示されていない。一方、ポルフィリンテープは異なる酸化還元特性を有し、より狭いエネルギーギャップを有する(Cho, H. S., Jeong, D. H., Cho, S., Kim, D., Matsuzaki, Y., Tanaka, K., Tsuda, A., Osuka, A., J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14642-14654)。これがPAHとの縮合反応を容易にするとともに、多重縮合反応が、活性基を用いる必要なしに一つのポルフィリン分子内で可能になりうる。本明細書では、ポルフィリンテープの両方の末端とPAHとを2つ又は3つの炭素−炭素結合で繋げることによって構成された新しい群のポルフィリンテープとPAHとの複合体を提供する。
【0073】
別に特段の記載がない限り、様々な態様の層のいずれも、任意の適した方法で堆積することができる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着、インクジェット、例えば米国特許第6,013,982号明細書及び同6,087,196号明細書(これらはその全体を参照により本明細書に援用する)に記載されているもの、有機気相蒸着(OVPD)、例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号明細書(これはその全体を参照により本明細書に援用する)に記載されているもの、及び有機気相ジェットプリンティング(OVJP)、例えば、米国特許出願第10/233,470号明細書(これらはその全体を参照により本明細書に援用する)に記載されているものが含まれる。その他の適した堆積方法には、スピンコーティング及びその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは窒素又は不活性雰囲気下で行われる。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通した蒸着、コールドウエルディング、例えば米国特許第6,294,398号明細書及び6,468,819号明細書に記載されているもの(これらはその全体を参照により本明細書に援用する)、並びにいくつかの堆積方法、例えば、インクジェット及びOVJDに伴うパターニング方法が含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積させる材料は、それらを具体的な堆積方法に適合させるように修飾してもよい。例えば、アルキル及びアリール基などの、分岐又は非分岐の、好ましくは少なくとも3つの炭素を含む置換基を小分子に用いて、溶液方法を行うことができる性質を高めることができる。20又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20の炭素が好ましい範囲である。非対称構造をもつ材料は、対称構造を有するものよりも、より良い溶液加工性を有しうるが、これは非対称な材料は、より低い再結晶の傾向をもちうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を行いうる性質を高めるために用いることができる。
【0074】
本発明の態様に従って作製したデバイスは、広範囲の消費者製品に組み込むことができ、それには、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニター、テレビ、掲示板、室内もしくは屋外照明及び/又は信号のための明かり、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明なディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、超小型表示装置(マイクロディスプレイ)、車両、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、又は信号が含まれる。様々な制御機構を用いて、本発明に従って作製したデバイスを制御することができ、それにはパッシブマトリクス及びアクティブマトリクスが含まれる。それらのデバイスの多くは、人に快適な温度範囲、例えば18℃〜30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)での使用が意図されている。
【0075】
本明細書に記載した材料及び構造は、多くの有機デバイスに応用することができる。例えば、その他の光電子デバイス、例えば、OLED、有機太陽電池、及び有機光検出器は、これらの材料及び構造を用いることができる。さらに一般的には、有機デバイス、例えば有機トランジスタは、これらの材料及び構造を用いることができる。
【0076】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当技術分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31及び32欄で定義されており、これを参照によって本明細書に援用する。
【0077】
ポルフィリンオリゴマー類及びこれらの化合物を含むデバイスを提供する。このポルフィリン化合物は、可視波長で作動する、より一般的な小分子有機光検出器(即ち、銅フタロシアニン/C60)で一般的なドナー/アクセプター構造中に存在する。このポルフィリンオリゴマーはドナーとして作用し、アクセプター、例えばC60と対になることができる。一つの実施は、その検出器を底部照射構造中に置くことである。ガラス基板は、透明導電層、例えばインジウム錫オキシド(ITO)とともに用いられ、次の層の形成を助けるためのPEDOT:PSSの光学層が続き、可溶性ポルフィリンの溶液堆積又は昇華性ポルフィリンの熱蒸着、約80〜200nmの厚さのアクセプター(例えば、C60)の熱蒸着、そして最後に接点(例えば、BCP/銀、又はLiF/アルミニウム)の蒸着が続く。
【0078】
ポルフィリン化合物を提供し、それらの化合物は以下の構造を有する。
【0079】
【化20】

【0080】
〜R24は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。R〜R24のうちの一つは縮合多環式芳香族又は縮合ヘテロ環芳香族である。Mは、二配位、三配位、四配位、五配位、又は六配位の金属イオン、あるいは2つの水素原子である。nは0〜100である。好ましくは、nは0〜5である。nが5である場合は、この化合物は約2500nmでの波長応答を示す。理論に縛られないが、励起状態はこの化合物の比較的小さな領域に局在化されていると考えられる。したがって、ポルフィリンオリゴマーを5単位よりもさらに広げても、この化合物の波長応答を変えないであろう。
【0081】
一つの側面では、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Zn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される。好ましくは、Mは、Zn、Pb、Sn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)である。
【0082】
一つの側面では、R〜R24のうちの一つは縮合したピレンである。好ましくは、R〜R及びR13〜R21のうちの一つが縮合したピレンである。
【0083】
一つの側面では、上記化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
【化25】

【0089】
【化26】

【0090】
〜R63は独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。それぞれの点線の弧は、多環式芳香族置換基又はヘテロ環芳香族置換基である。Xは、二配位、三配位、四配位、又は六配位であってよい。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、及びBからなる群から選択される。
【0091】
この点線の弧は、閉じた環を形成している置換基であり、これはπ系の共役を広げることができる。例えば、以下の構造:
【化27】

は、
【化28】

と記載できる。
【0092】
別の側面では、点線の弧は以下のものからなる群から選択される置換基である。
【0093】
【化29】

【0094】
【化30】

【0095】
【化31】

【0096】
【化32】

【0097】
i、j、及びmはそれぞれ独立に0〜100である。ジグザグの線は、ポルフィリンに対してπ系を延長する単位の縮合箇所を表す。黒丸は、その置換基がポルフィリンのメソ位に結合している箇所を表す。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、又はBである。Yは、H、M、又はXである。R′〜R′23は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。
【0098】
上に示した置換基の群の中では、ポルフィリンテープは明示していない。これらの式中の「黒丸(ドット)」は、その置換基がポルフィリンのメソ位に結合している箇所を表している。「ジグザグ」の線は、ポルフィリンに対するπ拡張単位の縮合箇所を描いている。以下の説明は、ポルフィリンに縮合した多環式芳香族基の縮合箇所を示すその「黒丸」、及びそのポルフィリン環のメソ位との結合の箇所を示している「ジグザグ」線を表わしている非限定的な例である。
【0099】
【化33】

【0100】
好ましくは、この点線の弧の置換基は、ナフタレン、アントラセン、又はピレンである。最も好ましくは、点線の弧はピレンである。理論に縛られないが、縮合したピレンはねじれをもたらし、それがその化合物の溶解性を高め、これが加工性を高める。向上した溶解性をもつ化合物は、薄膜を作るために特に有利でありうる。
【0101】
このポルフィリン化合物の具体例を提供する。一つの側面では、その化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0102】
【化34】

【0103】
【化35】

【0104】
【化36】

【0105】
【化37】

【0106】
有機デバイスも提供する。このデバイスは、第一の電極、第二の電極、その第一の電極と第二の電極との間に配置された第一の層、及びその第一の電極と第二の電極との間に配置された第二の有機化合物を含む第二の層を含み、その第二の層は第一の層と直接接触している。
【0107】
第一の層は第一の化合物を含み、その第一の化合物は以下の構造を有する。
【0108】
【化38】

【0109】
〜R24は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。Mは、二配位、三配位、四配位、五配位、又は六配位の金属イオン、あるいは2つの水素原子である。nは0〜100である。好ましくは、nは0〜5である。
【0110】
一つの側面では、R〜R24のうちの少なくとも一つは、縮合した多環式芳香族又は縮合したヘテロ環芳香族である。好ましくは、R〜R24のうちの少なくとも一つは、縮合したピレンである。より好ましくは、R〜R及びR13〜R21のうち少なくとも一つは、縮合したピレンである。
【0111】
別の側面では、第一の層は第一の電極と接触しており、且つこのデバイスは第二の層及び第二の電極の間に配置され且つこれらと接触しているBCPの層をさらに含む。
【0112】
一つの側面では、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Zn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される。好ましくは、Mは、Zn、Pb、Sn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)である。
【0113】
一つの側面では、第二の化合物は、C60、C70、C84、F16−CuPc、PTCBI、PTCDA、PCBM、又はPTCDIからなる群から選択される。好ましくは、第二の化合物はC60である。
【0114】
一つの側面では、このデバイスは、1200nmよりも長い波長での光学的応答を有する。別の側面では、このデバイスは1500nmよりも長い波長での光学的応答を有する。
【0115】
一つの側面では、第一の層は溶液加工を用いて堆積する。
【0116】
別の側面では、第一の層は、1つより多い第一の化合物を含む。
【0117】
なお別に、第二の化合物は、約80nm〜約200nmの厚さをもつ層に堆積される。
【0118】
一つの側面では、第一の化合物は、ポリスチレン、クロロベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、及びピリジンのうちの1つ以上と組み合わせて堆積される。
【0119】
ポルフィリン化合物を含むデバイスの具体例を提供する。一つの側面では、上記の第一の化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0120】
【化39】

【0121】
【化40】

【0122】
【化41】

【0123】
【化42】

【0124】
【化43】

【0125】
【化44】

【0126】
〜R63は独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。それぞれの点線の弧は、多環式芳香族置換基又はヘテロ環芳香族置換基である。Xは、二配位、三配位、四配位、又は六配位でありうる。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、及びBからなる群から選択される。
【0127】
点線の弧は、閉じた環を形成している置換基である。上で論じたとおり、その置換基はπ系の共役を広げることができる。一つの側面では、点線の弧は以下のものからなる群から選択される置換基である。
【0128】
【化45】

【0129】
【化46】

【0130】
【化47】

【0131】
【化48】

【0132】
i、j、及びmはそれぞれ独立に0〜100である。ジグザグの線は、ポルフィリンに対するπ拡張単位の縮合箇所を表している。黒丸は、その置換基がポルフィリンのメソ位に結合している箇所を表している。Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、又はBである。Yは、H、M、又はXである。R′〜R′23は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。上で論じたとおり、ポルフィリンテープ(テープ状ポルフィリン)は、上の置換基の一覧には明示していない。これらの化学式のなかの「黒丸」は、その多環式芳香族基がポルフィリンのメソ位に結合している箇所を表している。「ジグザグ」の線は、そのポルフィリンへのπ拡張単位の縮合箇所を表している。
【0133】
好ましくは、点線の弧で表される置換基は、ナフタレン、アントラセン、又はピレンである。
【0134】
別の側面では、第一の化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0135】
【化49】

【0136】
【化50】

【0137】
【化51】

【0138】
【化52】

【0139】
なお別の側面では、上記デバイスは消費者製品である。
【実施例】
【0140】
化合物の例:
【0141】
〔例1.亜鉛ポルフィリンダイマーとピレン環の縮合〕(図12を参照されたい)
【0142】
4,4,5,5−テトラメチル−2−(ピレン−1−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン
トルエン中の1−ブロモピレンの約0.1M溶液に、10モル%のClPd(PPh、5当量のピコリンボラン、及び10当量のトリエチルアミンを添加した。反応混合液を、窒素を用いて脱ガスし、夜通し還流させた。反応混合物を水で失活させ、トルエンを留去し、残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(1:0から1000:5のヘキサン−酢酸エチル混合物を用いた傾斜溶出)にかけて、70〜80%で4,4,5,5−テトラメチル−2−(ピレン−1−イル)−1,3,2−ジオキサボロランを得た。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): 1.51 (s, 12H), 8.02 (t, 1H, J=7.7Hz), 8.07-8.24 (m, 6H), 8.56 (d, 1H, J=9.7 Hz), 9.09 (d, 1H, J=9.7 Hz), MALDI TOF: 328 (M+), C22H21BO2に対しては328.16が求められる。
【0143】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(1−ピレニル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図12を参照されたい)。
A)NBS(1.54g、8.7mmol、1.3当量)を、ジクロロメタン(300mL)及びピリジン(5mL)中のポルフィリンI(図12、化合物I、5g、6.7ミリモル)の撹拌した溶液に、−10℃(NaCl/氷浴)において窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を同じ温度で10分間撹拌し、次に5分間で0℃まで温め(水浴)、アセトンで失活させた(20mL)。未精製反応混合物を、ジクロロメタン−ピリジン混合物(100:1)で溶出しながら、シリカゲルカラムを通した。緑−紫の画分全部を集め、溶媒を蒸発させ、残留物をジクロロメタン−ピリジン混合物(95:5、100mL)に溶かし、200mLのメタノールを添加して、臭素化されたポルフィリンを沈殿させた。全ての結晶を30分後に濾過によって集め、モノ及びジブロモ化されたポルフィリンの混合物を得た(比2.3:1、4.9g、約85%)。この混合物をさらに精製することなく次の段階で用いた。
B)トルエン(700mL)中の上記のモノ及びジブロモポリフィリン(モノ対ジブロモポルフィリンの比は2.3:1、4g、約4.7ミリモル)、炭酸セシウム(7.8g、24ミリモル、5当量)、Pd(PPh(271mg、5モル%)、及び1−ピレニル−テトラメチルジオキサボロラン(2.32g、7.1ミリモル)の混合物を脱ガスし、窒素雰囲気下で12時間還流させた。反応混合物を冷やし、続けて、セライト、シリカゲル、及び中性アルミナのパッドに、トルエンで洗いながら順に通した。トルエンを減圧下で留去し、残留物を、ジクロロメタン−メタノールからの分別結晶化と、ヘキサン及び酢酸エチルの混合物で溶出させるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって分離して、[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(1−ピレニル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図12、化合物IIを参照されたい。2.76g、2.9ミリモル、62%)及び[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5,15−ビス(1−ピレニル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(0.81g、0.71ミリモル、15%)を得た。
【0144】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(1−ピレニル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図12、化合物IIを参照されたい)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): 1.54 (s, 36H), 7.43 (d, 1H, J=9.3 Hz), 7.67 (d, 1H, J=9.3 Hz), 7.60 (s, 2H), 8.00-8.18 (m, 6H), 8.32 (t, 2H, J=7 Hz), 8.40 (d, 1H, J=9.1 Hz), 8.51 (d, 1H, J=7.7 Hz), 8.63 (d, 2H, J=4.6 Hz), 8.82 (d, 1H, J=7.7 Hz), 8.95 (d, 2H, J=4.6 Hz), 9.18 (d, 2H, J=4.5 Hz), 9.46 (d, 2H, J=4.5 Hz), 10.33 (s, 1H)。MALDI TOF: 950 (M+)、C64H60N4Znに対しては948.41が求められる。
【0145】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5,15−ビス(1−ピレニル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): 1.47, 1.477及び1.481 (s, 36H, 回転異性体), 7.50 (dd, 2H, J=9.3, 10.6 Hz), 7.71-7.74 (m, 4H, 回転異性体), 8.04-8.14 (m, 8H), 8.33 (t, 4H, J=7.2 Hz), 8.42 (d, 2H, J=9.1 Hz), 8.54 (d, 2H, J=7.7 Hz), 8.63 (dd, 4H, J=0.8, 4.7 Hz), 8.86 (dd, 2H, J=2.8, 7.7 Hz), 8.92 (d, 4H, J=4.7 Hz)。MALDI TOF: 1150 (M+)、C80H68N4Znに対しては1148.47が求められる。
【0146】
{μ−[10,10′−ビス(1−ピレニル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]ジ亜鉛(II)(図12、化合物IIIを参照されたい)。
ポルフィリンII(160mg,0.17ミリモル)、DDQ(191mg、0.82ミリモル、5当量)及びスカンジウム(III)トリフラート(414mg、0.82ミリモル、5当量)を、窒素雰囲気下でトルエン(300mL)に溶かし、この混合物を室温で1時間撹拌し、さらに2時間加熱還流させた。室温まで冷やした後、この混合物を、順次、シリカゲルのパッド(2回)及びアルミナのパッド(ジクロロメタン−ピリジン混合物100:1での溶出)を通過させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をジクロロメタン−ピリジン混合物(30mL、100:1)に溶かし、200mLのメタノールの添加によって、生成物を沈殿させた。収量110mg(0.058ミリモル、68%)。1H-NMR (CDCl3中の5%ピリジン-d5, 400 MHz): 1.33 (s, 72H), 7.06 (s, 4H), 7.10 (d, 4H, J=4.5 Hz), 7.38 (d, 4H, J=4.5 Hz), 7.47-7.61 (m, 12H), 7.67 (t, 2H, J=9 Hz), 7.93 (t, 2H, J=8 Hz), 8.01 (d, 2H, J=7 Hz), 8.10 (d, 2H, J=9 Hz), 8.16 (d, 4H, J=8 Hz), 8.25 (d, 2H, J=7 Hz), 8.31 (t, 2H, J=8 Hz), 8.53 (s, 2H)。13C-NMR (CDCl3中5%ピリジン-d5, 75 MHz): 31.4, 34.6, 105.6, 117.8, 120.3, 122.1, 122.5, 124.1, 124.5, 124.8, 125.1, 125.9, 126.6, 126.7, 127.1, 127.4, 128.0, 128.1, 130.3, 130.6, 130.7, 131.0, 131.3, 131.9, 135.8, 136.9, 140.3, 148.2, 153.1, 153.36, 153.44, 154.3。MALDI TOF: 1894.5 (M+)、C128H114N8Zn2に対しては1895.77が求められる。
【0147】
{μ−[9,10,9′,10′−ビス(1,10−ピレニル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]ジ亜鉛(II)(図12、化合物IVを参照されたい)。
亜鉛ポルフィリンダイマーIII(65mg、0.034ミリモル)と無水塩化鉄(III)(120mg、0.74ミリモル、約20当量)を、無水ジクロロメタン(50mL)中で、窒素雰囲気下にて2時間撹拌した。反応混合物をピリジン(2mL)で失活させ、水で洗い、ジクロロメタンで溶出させるシリカゲルと中性アルミナを用いたパッドを順次通して、元となるフリーの縮合ポルフィリンダイマーの溶液を得た(MALDI TOF: 1763 (M+), 計算値1764)。メタノール(10mL)中の酢酸亜鉛(II)二水和物(200mg)の溶液を、フリーの元となるダイマーに添加し、その混合物を2時間、室温で撹拌した。反応混合物を水で洗い、ジクロロメタンで溶出させてシリカゲル及び中性アルミナのパッドを順次通した。減圧下でジクロロメタンを蒸発させた後の残留物を、ジクロロメタン(10mL)に溶かし、メタノール(100mL)の添加によって生成物を沈殿させた。収量40〜50mg(62〜77%)。縮合したピレン−ポルフィリンダイマーIVは、溶液中でさえ増大したp−p重なりを示し、そのためCDCl又はCDCl中のピリジン−dの5%溶液中でのH−NMRは、芳香族領域の非常に幅広いシグナルからなり、tert-ブチル基の幅広いシグナルしか同定できなかった(図13を参照されたい)。しかし、ベンゼン−d中のピリジン−dの5%溶液を用いることによって凝集を避けることができる(図13を参照されたい)。1H-NMR (CDCl3中の5%ピリジン-d5, 400 MHz): tert-ブチルプロトン1.18 (s, 36H), 1.41及び1.45 (s, 36H)、幅広いシングレットとして芳香族プロトン6.95, 7.00, 7.04, 7.54, 7.57, 7,60, 7,97, 8,13, 8,32。1H-NMR (ベンゼン-d6中の5%ピリジン-d5, 400 MHz): いくつかの芳香族シグナルはベンゼンの信号と重なっている、1.32 (s, 36H), 1.45及び1.47 (s, 36H), 6.73 (s, 2H), 7.46-7.55 (m, 6H), 7.74-8.06 (m, 20H), 8.35 (d, 2H, J=4.5 Hz), 8.50 (s, 2H), 8.64 (d, 4H, J
=2.7 Hz), 9.03 (d, 2H, J=8.3 Hz)。MALDI TOF: 1890.1 (M+)、C128H110N8Zn2に対しては1889.74が求められる。
【0148】
〔例2. 1−置換アントラセン環と亜鉛ポルフィリンダイマーとの二重縮合〕(図14、化合物VIを参照されたい)。
【0149】
2−(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン及び2−(4,5−ジメトキシアントラセン−9−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
トルエン(300mL)中の1−ブロモ−及び9−ブロモ−4,5−ジメトキシアントラセンの混合物(1−及び9−ブロモ−異性体の比は3:1、7.0g、22.1ミリモル)の溶液に、7モル%のClPd(PPh(1g、1.54ミリモル)、5当量のピコリンボラン、及び10当量のトリエチルアミンを添加した。反応混合物を窒素で脱ガスし、夜通し還流させた。反応混合物を水で失活させ、トルエンを留去し、残留物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(1:0から1000:5のヘキサン−酢酸エチル混合物を用いた傾斜溶出)にかけて、2−(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.3g、6.3ミリモル、29%)及び2−(4,5−ジメトキシアントラセン−9−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(0.5g、1.4ミリモル、6.2%)を得た。
【0150】
2−(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
1H-NMR (CDCl3, 250 MHz): 1.42 (s, 12H), 4.01 (s, 3H), 4.02 (s, 3H), 6.68 (dd, 2H, J=9.0, 8.0 Hz), 7.34 (t, 1H, J=9 Hz), 7.64 (d, 1H, J=9 Hz), 8.06 (d, 1H, J=8 Hz), 9.26 (s, 1H), 9.28 (s, 1H)。MALDI TOF: 364 (M+), C22H25BO4には364.18が求められる。
【0151】
2−(4,5−ジメトキシアントラセン−9−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
1H-NMR (CDCl3, 250 MHz): 1.54 (s, 12H), 4.03 (s, 6H), 6.68 (d, 2H, J=8 Hz), 7.37 (dd, 2H, J=8.0, 9.0 Hz), 7.93 (d, 2H, J=9 Hz), 9.37 (s, 1H)。MALDI TOF: 364 (M+), C22H25BO4には364.18が求められる。
【0152】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図14、化合物Vを参照されたい)
トルエン(500ml)中の上記のモノ及びジブロモポルフィリン(モノブロモポルフィリンとジブロモポルフィリンとの比は10:1、1.38g、約1.78ミリモル)、炭酸セシウム(3g、8.9ミリモル、5当量)、Pd(PPh(620mg、30モル%)、及びジメトキシアントラセン−1−イル−テトラメチルジオキサボロラン(0.95g、2.67ミリモル、1.5モル%)の混合物を脱ガスし、窒素雰囲気下で2時間還流させた。反応混合物を冷やし、トルエンで洗いながら、順次、セライト、シリカゲル、及び中性アルミナのパッドを通した。トルエンを減圧下で留去し、残留物をジクロロメタン−メタノールからの分別結晶化、及びヘキサンと酢酸エチルの混合物で溶出させるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって分離して、[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図11、化合物V)1.35g、1.37ミリモル、77%、及び[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5,15−ビス(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)を得た。
【0153】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(4,5−ジメトキシアントラセン−1−イル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図14、化合物V)。
1H-NMR (CDCl3中5%ピリジン-d5, 400 MHz): 1.50 (s, 36H, J=1 Hz), 4.05 (s, 3H), 4.33 (s, 3H), 6.39 (d, 1H, J=8.8 Hz), 6.47 (d, 1H, J=7.1 Hz), 6.91 (dd, 1H, J=7.1, 8.8 Hz), 7.36 (s, 1H), 7.74 (t, 2H, J=2 Hz), 8.02 (t, 2H, J=2 Hz), 8.10 (t, 2H, J=2 Hz), 8.14 (d, 1H, J=8 Hz), 8.68 (d, 2H, J=4.6 Hz), 8.82 (d, 2H, J=4.6 Hz), 9.06 (d, 2H, J=4.5 Hz), 9.33 (d, 2H, J=4.5 Hz), 9.49 (s, 1H), 10.14 (s, 1H)。13C-NMR (CDCl3中5%ピリジン-d5, 75 MHz): 31.0, 33.00, 33.02, 36.2, 56.1, 56.3, 100.0, 100.7, 104.6, 114.1, 116.6, 118.9, 119.1, 119.9, 122.4, 122.5, 123.7, 126.4, 128.3, 128.5, 129.5, 129.9, 130.4, 130.5, 130.7, 130.9, 131.4, 135.5, 140.4, 146.1, 146.2, 147.4, 148.0, 148.2, 148.7, 153.5, 153.6。MALDI TOF: 985.6 (M+), C64H64N4O2Znには984.43が求められる。
【0154】
{μ−[10,10′−ビス(4,5−ジメトキシアントラセン−1,9−イル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]}ジ亜鉛(II)(図14、化合物VIを参照されたい)
ポルフィリンV(50mg、0.051ミリモル)、DDQ(115mg、0.51ミリモル、10当量)及びスカンジウム(III)トリフラート(249mg、0.51ミリモル、10当量)を、窒素雰囲気下でトルエン(50mL)に溶かし、この混合物を室温で1時間撹拌し、さらに8時間加熱し還流させた。室温に冷やした後、その混合物をシリカゲルのパッド(2回)及びアルミナのパッド(ジクロロメタン−ピリジン混合物100:1で溶出)を通した。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をジクロロメタン−ピリジン混合物(30ml、100:1)に溶かし、200mLのメタノールを添加することによって生成物を沈殿させた。収量47mg(0.23ミリモル、94%)。縮合したアントラセン−ポルフィリンダイマーVIは、溶液中で大きな凝集を示し、それによりCDCl中ピリジン−dの5%溶液中でのH−NMRスペクトルは、芳香族領域の幅広いシグナルとtert-ブチル基の幅広いシグナルのみしか同定できない。
1H-NMR (CDCl3中5%のピリジン-d5, 400 MHz): tert-ブチルプロトン1.43, 1.44, 及び1.47 (s, 72H), メトキシ基の幅広い一重線(シングレット)3.97, 4.08, 及び4.17, 幅広い一重線として芳香族プロトン6.60 (m), 6.67 (d, J=8 Hz), 6.78 (d, J=7 Hz), 6.85 (s), 6.99 (t, J=9 Hz), 7.04 (s), 7.07 (d, J=8 Hz), 7.12 (d, J=9 Hz), 7.49 (s), 7.67 (s)。13C-NMR (CDCl3中5%のピリジン-d5, 75 MHz): 29.3, 31.1 (幅広い), 34.6 (幅広い), 52.2(幅広い), 55.3(幅広い), 122.2, 123.1, 123.2, 123.3, 125.5, 125.53, 126.0, 127.2, 127.7, 127.74, 127.9, 128.0, 128.3, 128.4, 128.5, 128.7, 129.8, 134.5, 135.5, 137.6, 138.5。MALDI TOF: 1963 (M+)、C128H118N8O4Zn2に対し1963.78が求められる。吸収スペクトルは図11に見ることができる。
【0155】
〔例3. 9−置換アントラセン環と亜鉛ポルフィリンダイマーとの三重縮合(図14の化合物VIIIを参照されたい〕
【0156】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(4,5−ジメトキシアントラセン−9−イル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図14、化合物VIIを参照されたい)
A)NBS(3.6g、20mmol、2.3当量)を、ジクロロメタン(300mL)及びピリジン(5mL)中のポルフィリンI(図12、化合物I、5g、6.7ミリモル)の撹拌した溶液に、−10℃(NaCl/氷浴)において窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を同じ温度で10分間撹拌し、次に5分間で0℃まで温め(水浴)、アセトン(20mL)で失活させた。未精製反応混合物を、ジクロロメタン−ピリジン混合物(100:1)で溶出しながら、シリカゲルカラムを通した。緑−紫の画分全部を集め、溶媒を蒸発させ、残留物をジクロロメタン−ピリジン混合物(95:5、100mL)に溶かし、200mLのメタノールを添加して、臭素化されたポルフィリンを沈殿させた。全ての結晶を30分後に濾過によって集め、ジブロモ化されたポルフィリン(4.6g、5.03ミリモル、75%)を得た。
B)トルエン(400mL)中の上記のジブロモポリフィリン(0.82g、0.9ミリモル)、炭酸セシウム(1.64g、5ミリモル、5.6当量)、Pd(PPh(205mg、20モル%)、及びジメトキシアントラセン−9−イル−テトラメチルジオキサボロラン(0.49g、1.35ミリモル、1.5当量)の混合物を、脱気し、10分間加熱し還流させた。Pd(dba)(164mg、20モル%)及びトリ−tert−ブチルホスフィン(ヘキサン中10質量%溶液4ml)を添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で2時間撹拌し続けた。反応混合物を冷やし、順次、セライトパッド、シリカゲル、及び中性アルミナに、トルエンで洗いながら通した。トルエンを減圧下で留去し、残留物を、ジクロロメタン−メタノールからの分別結晶化と、ヘキサン及び酢酸エチルの混合物で溶出させるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによって分離して、[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(4,5−ジメトキシアントラセン−9−イル)ポリフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)(図14、化合物VIIを参照されたい。127mg、0.13ミリモル、14%)を得た。
1H-NMR (CDCl3中5%のピリジン-d5, 400 MHz): 1.48 (s, 36H), 4.16 (s, 6H), 6.39 (d, 2H, J=9 Hz), 6.62 (d, 2H, J=7 Hz), 6.73 (dd, 2H, J=7,9 Hz), 7.71 (t, 2H, J=2 Hz), 8.03 (d, 4H, J=2 Hz), 8.24 (d, 2H, J=4.6 Hz), 8.74 (d, 2H, J=4.6 Hz), 9.04 (d, 2H, J=4.4 Hz), 9.32 (d, 2H, J=4.4 Hz), 9.73 (s, 1H), 10.15 (s, 1H)。13C-NMR (CDCl3中5%のピリジン-d5, 75 MHz): 31.7, 34.9, 55.6, 100.8, 105.6, 115.9, 116.3, 120.3, 121.2, 121.3, 123.6, 123.7, 125.1, 129.9, 131.1, 131.3, 132.3, 132.4, 135.8, 136.2, 136.8, 142.2, 148.1, 149.4, 149.7, 149.9, 150.4, 150.7, 155.7。MALDI TOF: 985 (M+)、C64H64N4O2Znに対して984.43が求められる。
【0157】
{μ−[10,10′−ビス(4,5−ジメトキシアントラセン−1,8,9−イル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]}ジ亜鉛(II)(図14、化合物VIを参照されたい)
ポルフィリンVII(20mg、0.051ミリモル)、DDQ(36mg、0.16ミリモル、8当量)、及びスカンジウム(III)トリフラート(79mg、0.16ミリモル、8当量)を、窒素雰囲気下でトルエン(20mL)に溶かし、この混合物を室温で1時間撹拌し、さらに8時間加熱還流させた。室温まで冷やした後、この混合物を、順次、シリカゲルのパッド(2回)及びアルミナのパッド(ジクロロメタン−ピリジン混合物100:1で溶出)を通した。収量19mg(定量的)。縮合したアントラセン−ポルフィリンダイマーVIIIは、溶液中で大きな凝集を示し、そのため、CDCl中ピリジン−dの5%溶液中でのH−NMRスペクトルは、芳香族領域の幅広いシグナルのみからなり、分解することはできなかった。MALDI TOF: 1959 (M+)、C128H114N8O4Zn2に対しては1957.75が求められる。吸収スペクトルは図11に見られる。
【0158】
〔例4. 3−置換ベンゾチエニル環と亜鉛ポリフィリンダイマーとの二重縮合〕
【0159】
【化53】

【0160】
[10,20−ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−(3−ベンゾチエニル)ポルフィリナト(2−)−κN21,κN22,κN23,κN24]亜鉛(II)
トルエン(400mL)中の上記のモノ及びジブロモポルフィリンの混合物(モノ−とジ−ブロモポルフィリンの比6:4、1.0g、約1.1ミリモル)、炭酸セシウム(3g、8.9ミリモル)、Pd(PPh(120mg、10モル%)、ピリジン(4mL)、水(2mL)、及び3−ベンゾチエニルボロン酸(0.39g、2.2ミリモル、2当量)を脱気し、窒素雰囲気下で7時間還流させた。反応混合物を冷やし、トルエンで洗いながらセライト、シリカゲル、及び中性アルミナのパッドに順次通した。トルエンを減圧下で留去し、残留物を、ジクロロメタン溶液にメタノールを添加することによって結晶化させた。モノ及びビス−置換3−ベンゾチエニルポルフィリンの収量は1gであり、さらに精製することなく次のステップに用いた。
【0161】
【化54】

【0162】
{μ−[9,10,9′,10′−ビス(2,3−ベンゾチエニル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]ジ亜鉛(II)
上記のベンゾチエニル置換ポルフィリン(1.0g、0.68ミリモル)、DDQ(770mg、2.4ミリモル、5当量)、及びスカンジウム(III)トリフラート(1670mg、3.4ミリモル、5当量)を、窒素雰囲気下でトルエン(500mL)に溶かし、この混合物を室温で1時間撹拌し、さらに1時間加熱還流させた。室温まで冷やした後、この混合物をヘキサン−ジクロロメタン−ピリジンの混合物で溶出させるカラムクロマトグラフィーにかけた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残留物をジクロロメタン−ピリジン混合物(30mL、100:1)に溶かし、200mLのメタノールの添加によって、生成物を沈殿させた。収量170mg(0.1ミリモル、15%)。縮合したアントラセン−ポルフィリンダイマーVIは、溶液中で大きな凝集を示し、そのためCDCl中ピリジン−dの5%溶液中でのH−NMRスペクトルは、芳香族領域の幅広いシグナルとtert-ブチル基の幅広いシグナルしか同定できない。UV/VIS(CH2Cl2中2%C5H5N)λ,nm: 1485, 1186, 768, 670, 617, 433。(MALDI TOF: 1833.3 (M+), C128H118N8O4Zn*C5H5Nに対して1832.67が求められる。
【0163】
【化55】

【0164】
{μ−[9,10,9′,10′−ビス(1,10−ピレニル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]ジ鉛(II)
完全に縮合した亜鉛ポルフィリンダイマーIII(50mg、0.026ミリモル)をジクロロメタン(10mL)に溶かし、濃塩酸(0.2mL)を添加し、反応混合物を1分間激しく撹拌した。反応混合物をピリジン(0.5mL)で失活させ、水で洗い、ジクロロメタンで溶出させてシリカゲル及び中性アルミナのパッドを順次通し、元となるフリーの縮合ポルフィリンダイマーの溶液を得た(MALDI TOF (100%int): 1763 (M+), 1764が求められる)。酢酸鉛(II)三水和物(100mg)のピリジン(4mL)溶液を、元となるフリーの二量体の溶液に添加し、その混合物を3時間加熱還流させた。その後、反応混合物を室温まで冷やし、ジクロロメタンで溶出させてシリカゲル及び中性アルミナのパッドを順次通した。減圧下で溶媒を留去した後の残留物をジクロロメタン(1mL)に溶かし、メタノール(10mL)を添加することによって生成物を沈殿させた。収量43mg(0.020ミリモル、76%)。1H-NMR (ベンゼン-d6中5%ピリジン-d5, 400 MHz, 75℃で記録した)は幅広いシグナルからなる: 1.33 (br.s, 36H), 1.53 (br.s, 36H), 7.04 (br.t, 2H, J=4.5 Hz), 7.63 (br.t, 2H, J=4.5 Hz), 7.69-8.23 (m), 8.57 (br.s, 2H), 8.92 (br.s, 2H)。MALDI TOF (100% int); 2174.73 (M+), C128H110N8Pb2に対しては2175.84が求められる。UV/VIS/NIR (CH2Cl2中1%C5H5N), λ(ε): 1459 (63583), 1241 (26596), 634 (141820), 476 (33718), 426 (36312)。
【0165】
【化56】

【0166】
{μ−[9,10,9′,10′−ビス(1,10−ピレニル)−5,5′,15,15′−テトラキス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−18,18′,20,20′−ジシクロ−2,2′−ビポルフィリナト(4−)−κN21,κN22,κN23,κN24,κN21′,κN22′,κN23′,κN24′]テトラクロロジ錫(II)
完全に縮合した亜鉛ポルフィリンダイマーIII(50mg、0.026ミリモル)をジクロロメタン(10mL)に溶かし、濃塩酸(0.2mL)を添加し、反応混合物を1分間激しく撹拌した。反応混合物をピリジン(0.5mL)で失活させ、水で洗い、ジクロロメタンで溶出させてシリカゲル及び中性アルミナのパッドを順次通し、元となるフリーの縮合ポルフィリンダイマーの溶液を得た(MALDI TOF (100%int): 1763 (M+), 1764が求められる)。ピリジン(5mL)中の塩化錫(II)三水和物(200mg)の溶液を、クロロホルム(100mL)中のフリーの基本の二量体の溶液に添加し、その混合物を2時間加熱還流させた。その後、反応混合物を室温まで冷やし、水(100mL)で洗い、次にジクロロメタンで溶出させてシリカゲルのパッドを通した。減圧下で溶媒を留去した後の残留物をジクロロメタン(10mL)に溶かし、メタノール(50mL)を添加することによって生成物を沈殿させた。収量35mg(0.016ミリモル、63%)。1H-NMR (ベンゼン-d6中5%ピリジン-d5, 400 MHz, 75℃で記録した)は凝集によって幅広いシグナルからなる。MALDI TOF (100% int); 2066.9 (100%, M+-2Cl), 2139.1 (M+), C128H110N8Sn2Cl2 (M-2Cl)に対しては2067.63が求められ、C128H110N8Sn2Cl4(M+)に対しては2139.57が求められる。
【0167】
〔デバイス例〕
【0168】
2、3の例が実証されている一方で、Siの遮断(カットオフ)を超える波長(λ)での応答を示す近赤外(NIR)有機光検出器は、画像形成及びその他の検出用途に用いるために興味がもたれる(A. Rogalski, Infrared Physics & Technology 2002, 43, 187)。これまでの研究では、λ>1000nmでの応答を示すポリマー光検出器が実証されているが、光学的感度は、一般に、長い吸収端部によって、2、3%より低い外部量子効率(EQE)を有している。(Y. J. Xia, L. Wang, X. Y. Deng, D. Y. Li, X. H. Zhu, Y. Cao, Applied Physics Letters 2006, 89; L. Wen, B. C. Duck, P. C. Dastoor, S. C. Rasmussen, Macromolecules 2008, 41, 4576; 及びE. Perzon, F. L. Zhang, M. Andersson, W. Mammo, O. Inganas, M. R. Andersson, Advanced Materials 2007, 19, 3308)。大きなNIR光応答をもつ有機材料システムは、いくつかの理由から希である。光で発生した励起子を解離させるのに充分なエネルギーオフセットをもつドナー及びアクセプター材料の間で、タイプII(ねじれ)ヘテロ接合が形成されなければならない。そのエネルギーギャップが小さくなるにしたがって、適切なエネルギー配列をもつ分子の組み合わせを見つけることはますます困難になる。さらに、励起子寿命は、励起子−フォノンが誘導する再結合(すなわち内部転換)によって、エネルギーギャップの減少とともに一般的には短くなる。(H. S. Cho, D. H. Jeong, S. Cho, D. Kim, Y. Matsuzaki, K. Tanaka, A. Tsuda, A. Osuka, Journal of the American Chemical Society 2002, 124, 14642; D. Tittelbachhelmrich, R. P. Steer, Chemical Physics 1995, 197, 99)。これらの困難さは、II−VI量子ドット(λ>1000nmでEQE<1%)(X. M. Jiang, R. D. Schaller, S. B. Lee, J. M. Pietryga, V. I. Klimov, A. A. Zakhidov, Journal of Materials Research 2007, 22, 2204)又はシングルウォールカーボンナノチューブ(λ=1150及び1300nmにてEQE約2%)(M. S. Arnold, J. D. Zimmerman, C. K. Renshaw, X. Xu, R. R. Lunt, C. M. Austin, S. R. Forrest, Nano Letters 2009, 9, 3354)と関連してポリマー及び小分子材料を用いるハイブリッド有機−無機デバイスの開発を動機付けている。本明細書では、三重に繋がったポルフィリンテープダイマーに基づく光検出器を用いてλ=1350nmにおいてEQE=6.5%を有するNIRを実証する。これらのポルフィリンテープは、電子系の共役を空間的に広げることによって、より長波長の応答さえ示すように修飾することができる有望な新しい群の物質の代表である(H. S. Cho, D. H. Jeong, S. Cho, D. Kim, Y. Matsuzaki, K. Tanaka, A. Tsuda, A. Osuka, Journal of the American Chemical Society 2002, 124, 14642)。
【0169】
準備した分子は、3,5−ジ−tert−ブチルフェニルである4つの横側の基をもつ、メソ−メソ及び両方のβ−β位で三重に連結された2つのZnメタル化ポルフィリンの基礎部分からなるが、単結合で結合した4−シアノフェニル(CNPh)、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル(DTBPh)、ピレン(Psub)、及び二重に結合したピレン(Pfused)からなる末端が異なる(図15の挿入図を参照されたい)。三重に縮合されたポルフィリンテープは、これまでに記載されているように合成した。(A. Tsuda, H. Furuta, A. Osuka, Angewandte Chemie International Edition 2000, 39, 2549; M. Kamo, A. Tsuda, Y. Nakamura, N. Aratani, K. Furukawa, T. Kato, A. Osuka, Organic Letters 2003, 5, 2079; F. Y. Cheng, S. Zhang, A. Adronov, L. Echegoyen, F. Diederich, Chemistrya European Journal 2006, 12, 6062)。PsubはOsukaらによって報告されたものと同様の方法によってPfusedに変換した。(K. Kurotobi, L. S. Kim, S. B. Noh, D. Kim, A. Osuka, Angewandte Chemie International Edition 2006, 45, 3944)。これらの化合物は可視を通じ且つNIRまで吸収し、λ1050nmと1350nmの波長の間のQ−バンド吸収ピークをもち、且つ1.5−3×10cm−1以下の対応する吸光係数をもっており、これは図4に示したとおりである。材料特性分析のためのフィルムは、フィルムキャスティングナイフ(すなわち、ドクターブレード)を用いて、石英基板そのままの上、あるいはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT−PSS)でコーティングした石英基板の上に堆積させた。原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面のモルフォロジーを測定した。CNPhは、純粋なクロロベンゼンに可溶(5〜10mg/ml)であり、図16(a)に示したとおり、20nmより大きな二乗平均平方根(RMS)粗さをもつ大きな結晶ドメインを形成し、これはデバイス作製のためには粗すぎることが判明した。CNPhへの1(vol)%ピリジンの添加は、その溶解性を高め、それによってRMS粗さを9.0nmに低下させて、大きな、ひびの入ったオークの木の葉の形状の粒子を、図16(b)に示したようにアーモンド形の粒子へとフィルムのモルフォロジーを変えた。DBTPh及びPsubの両方ともCNPhよりもクロロベンゼンへの溶解性が高く(>10mg/ml)それぞれ、0.5nm及び2.7nmのRMS粗さをもつフィルムを形成した(図16(c)及び(d))。Pfusedの溶解性は、クロロベンゼン中に2.5mg/ml未満であり、薄い(それゆえ過度に透明な)フィルムをもたらした。1(vol)%のピリジンの添加が溶解性を高め、5.3nmのRMS粗さをもつフィルムをもたらした。
【0170】
X線回折ピーク(図17aを参照されたい)は、クロロベンゼンからのCNPhキャストについては2θ=4.21±0.1°、1(vol)%ピリジンを伴うクロロベンゼンからのCNPhキャストについては4.28±0.1°、そしてPsubについては4.34±0.1°にて観察され、これらはそれぞれ20.96±0.50Å、20.62±0.48Å、及び20.32±0.47Åの、(001)面間の距離に対応している。これらは、それぞれ、CNPh及びPsubについて20.2Å及び20.0Åの計算した(001)面間隔にしっかり合致しており、図17(b)に示した計算された結晶構造に見られるとおりである。単独の(001)回折ピークは、分子が、その(001)面が基板表面に対して平行となって結晶化していることを示している。ピリジンの添加は、CNPhの回折ピークの半値全幅(FWHM)を0.214±0.004°(2θ)から0.463±0.010°(2θ)に増大させ、これらはそれぞれ43±2nm(約20分子層)及び18±1nm(約9分子層)の平均結晶子サイズによるシェラー・ブロードニングに対応する。(A. Guinier, Xray diffraction in crystals, imperfect crystals, and amorphous bodies, W. H. Freeman, San Francisco, 1963)。PsubのFWHMは0.354±0.010°(2θ)であり、これは24±1nm(約12分子層)の結晶子サイズに相当する。DTBPh又はPfusedについては回折ピークは観察されず、これらのフィルムはアモルファスであることを示している。Psub及びPfusedの還元及び酸化電位を、フェロセン/フェリシニウム参照に対して測定した。Psub及びPfusedの還元(酸化)電位はそれぞれ−1.10V(−0.01V)及び−0.97V(−0.13V)である。DTBPh、CNPh、及びC60の還元(酸化)電位はこれまでにそれぞれ−1.07V(+0.03V)及び−1.07V(0.01V)、及び−0.86Vと測定されている(L. A. Fendt, H. Fang, M. E. Plonska-Brzezinska, S. Zhang, F. Cheng, C. Braun, L. Eshegoyen, F. Diederich, European Journal of Organic Chemistry 2007, 4659; S. A. Lerke, B. A. Parkinson, D. H. Evans, P. J. Fagan, Journal of the American Chemical Society 1992, 114, 7807)。デバイスは、予め清浄にしたPEDOT−PSS被覆インジウム錫オキシド(ITO)が載ったガラス基板上に、上記モルフォロジー研究のためのものと同じ条件を用い、それに続いて順次C60、バソクプロイン(BCP)、及びAgカソードの真空熱蒸着によって作製した。±1Vにおいて2×10より大きな整流比がCNPh、DTBPh、及びPfusedについて観測され、Psubデバイスについては2×10より大きな値が観測された。n=約1.8であるCNPhに基づくデバイスを除いて、n=約1.3の理想係数が全てのデバイスについて観測され、これは図18に示すとおりである。n<1.5の理想性はドリフト拡散に典型的であり、n=1.5からn=2の間の理想性は、バルク中又はドナー−アクセプターヘテロ界面における欠陥による生成−再結合の特徴である。欠陥に関連したトラップは、不純物の存在又はモルフォロジーの乱れから起こりうる。(N. Li, B. E. Lassiter, R. R. Lunt, G. Wei, S. R. Forrest, Applied Physics Letters 2009, 94, 3)。PsubをPfusedに変換する場合、ピレン末端基への追加の結合の形成の過程は、Psubの還元電位を低下させ、そのため界面ギャップ(すなわち、ポルフィリンテープ分子の最高被占軌道すなわちHOMOと、C60の最低空軌道すなわちLUMOの間のエネルギー差)を0.12eV低下させ、それが、測定される約3桁の強度の差と比較して、界面で生じる暗電流の計算による11倍の増大(B. P. Rand, D. P. Burk, S. R. Forrest, Physical Review B 2007, 75, 11)をもたらす。これらの差は、DTBPh及びPsubと比較して、欠陥による増大した生成−再結合速度がCNPh及びPfused材料に存在するこ
とを示唆している。あるいは、Psub及びDTBPhの嵩高い末端基がドナー系及びアクセプター系の間の相互作用を低下させ、その結果低減した対再結合をもたらし、そしてそれによって、より嵩高さが小さな末端基をもつCNPh及びPfusedに対し、より低い暗電流をもたらす。(M. D. Perez, C. Borek, S. R. Forrest, M. E. Thompson, Journal of the American Chemical Society 2009, 131, 9281)
【0171】
いくつかのデバイスについてスペクトルから分解したEQEを図19に示している。λ=1045nm、1130nm、1090nm、及び1345nmの波長で1.2±0.1%、1.6±0.1%、2.1±0.1%、及び6.5±0.3%のピーク効率が、それぞれTBPh系、CNPh系、Psub系、及びPfused系のデバイスに対して測定されている。トランスファー・マトリクスモデルを用いて、これらのEQEデータから内部量子効率(IQE)及びそれらのデバイス構造の光学特性を決定した(P. Peumans, A. Yakimov, S. R. Forrest, Journal of Applied Physics 2003, 93, 3693)。Pfusedの20±4nmの、C60の125nmの、BCPの10nmの、そしてAgの100nmの厚さの膜からなる構造においては、λ=1350nmの光の入射輻射の19±5%が吸収され、観測されたEQEは5.9%だった。これは、IQE=31±8%をもたらし、これは励起子が6.2±1.6nmの活性領域厚さから集められていることを示している。0.25、0.5、及び1mg/mlのクロロベンゼン溶液からキャストされた膜(フィルム)は、それぞれ、20±4nm、60±12nm、及び120±24nmの厚さをもたらし、それはλ=1350nmにおいてEQE=5.3±0.6%、6.2±0.4%、及び4.5±0.4%をもたらす。ドナー層の厚さへのこの弱い依存性は、その最も薄いフィルムよりも短い拡散長と整合している。
【0172】
比検出能は下記の式を用いて計算される。
【数1】

式中、
【数2】

は応答速度であり、Aは検出器の活性領域であり、SはRMS雑音電流スペクトル密度である。(S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices, Wiley, New York 1981, xii)。Psub系デバイスについてはλ=1090nmにおいて1.0±0.1×1011Jonesの、Pfused系デバイスについてはλ=1350nmにおいて2.3±0.1×1010Jonesの、ゼロバイアス(ここでは熱雑音が主である)でのピーク比検出能が得られ、これは図19に示したとおりである。これらの検出能は、同じ波長範囲内で感応性であるInGaAs検出器に対するもの(約1013Jones)よりも顕著に小さいが、冷却したPbS検出器を用いて得られたものと比較して同程度である。(A. Rogalski, Infrared Physics & Technology 2002, 43, 187; J. G. Webster, The measurement, instrumentation, and sensors handbook, CRC Press published in cooperation with IEEE Press, Boca Raton, Fla. 1999)。
【0173】
外部からの50Ωの負荷を用いる光学的励起への電気的応答を用いて、光で発生させたキャリア抽出とデバイスの帯域幅を精査し、その結果を図6に示した。Psub系検出器については、応答減衰時間定数はV=0において2.09±0.02nsであり、−1Vにおいてτ=1.87±0.03nsへ漸近的に低下する。これは図20の挿入図に示すとおり56±7MHzの3dBロールオフ周波数に相当する。−1Vにおいて、Pfused系、DTBPh系、及びCNPh系のデバイスの応答時間はそれぞれτ=2.15±0.02ns、2.30±0.02ns、及び3.17±0.02nsである。これらのデバイスのキャパシタンスは、C=20.4及び21.6nF/cmの間であり、これは、50Ωの負荷を横切り約0.8nsの抵抗−容量(RC)時定数を有すべき完全に消耗した領域は、直列抵抗を仮定して無視できることを示している。ここでτは、C60及び/又はポルフィリンダイマーの厚さのいずれかが増大した場合に低下し、それによりキャパシタンスが低下することがわかり、これは寄生直列抵抗がデバイス帯域幅に制限をもたらすことを示している。
【0174】
したがって、これらのポルフィリンテープ状分子は、NIR光検出器用途に用いるのに有望でありうる。この広い群の物質において共役の長さを広げることによって、その吸収は可視近くからNIRの深くまで延ばされる。検出器の性能は、フィルム(膜)の結晶構造及びモルフォロジーに影響を与える官能化置換分子によって影響を受ける。Pfusedに基づく検出器は、EQE=6.5%、D=2.3±0.1×1010Jonesを有し、且つλ=1350nmにおいてτ=2.12±0.02nmの応答時間を有する。
【0175】
本明細書に記載した様々な態様は例示のみの目的のためであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、本明細書に記載した材料及び構造の多くは、本発明の精神から離れることなくその他の材料及び構造と置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、これは当業者には明らかであろう。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定することを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】

(式中、R〜R24は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
〜R24のうちの一つは、縮合した多環式芳香族又は縮合したヘテロ環芳香族であり;
Mは、二配位、三配位、四配位、五配位、又は六配位の金属イオンであるか又は2つの水素原子であり;且つ
nは0〜100である。)
を有する化合物。
【請求項2】
Mが、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Zn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Mが、Zn、Pb、Sn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
〜R24のうちの一つは、縮合したピレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
〜R及びR13〜R21のうちの一つは、縮合したピレンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
nが0〜5である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
以下のものからなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

(式中、R〜R63は独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
点線で表されたそれぞれの弧は、多環式芳香族置換基又はヘテロ環芳香族置換基であり;
Xは、二配位、三配位、四配位、又は六配位であってよく;
Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、及びBからなる群から選択される。)
【請求項8】
上記の点線の弧で表される置換基が以下のものからなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

(式中、i、j、及びmはそれぞれ独立に0〜100であり;
上記のジグザグの線は、ポルフィリンに対してπを延長する単位が縮合する箇所を表し;
黒丸は、その多環式芳香族基がポルフィリンのメソ位置に結合する位置を表し;
Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、又はBであり;
Yは、H、M、又はXであり;且つ
R′〜R′23は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
【請求項9】
点線の弧で表される置換基が、ナフタレン、アントラセン、又はピレンである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
以下のものからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【請求項11】
第一の電極;
第二の電極;及び
前記第一の電極と第二の電極との間に配置された第一の化合物を含む第一の層、及び前記第一の電極と第二の電極との間に配置された第二の有機化合物を含む第二の層を含み、前記第二の層が前記第一の層と直接接触している有機デバイスであって、
前記第一の化合物が下記の構造:
【化16】

(式中、R〜R24は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
Mは、二配位、三配位、四配位、五配位、又は六配位の金属イオンであるか又は2つの水素原子であり;且つ
nは0〜100である。)
を有する、有機デバイス。
【請求項12】
〜R24のうち少なくとも一つが、縮合した多環式芳香族又は縮合したヘテロ環芳香族である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
〜R24のうち少なくとも一つが、縮合したピレンである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
〜R及びR13〜R21のうちの少なくとも一つが、縮合したピレンである、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項11に記載のデバイスであって、前記第一の層が前記第一の電極と接触しており、且つ、前記第二の層と前記第二の電極との間に配置され、さらに前記第二の層及び前記第二の電極と接触しているBCPの層をさらに含むデバイス。
【請求項16】
Mが、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Ti、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、P、As、Sb、Bi、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、U、Zn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第二の化合物が、C60、C70、C84、F16−CuPc、PTCBI、PTCDA、PCBM、又はPTCDIからなる群から選択される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第二の化合物がC60である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
1200nmよりも長い波長で光学的応答をする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
1500nmよりも長い波長で光学的応答をする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項21】
Mが、Zn、Pb、Sn、ClAl、SnO、SnCl、Pb(OAc)、及びSn(OH)からなる群から選択される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第一の層が溶液処理を用いて堆積される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第一の層が1つよりも多い第一の化合物を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項24】
前記第二の化合物が約80nm〜約200nmの厚さを有する層に堆積されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第一の化合物が、ポリスチレン、クロロベンゼン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロナフタレン、ジクロロベンゼン、及びピリジンのうちの1つ以上と組み合わせて堆積される、請求項11に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第一の化合物が以下のものからなる群から選択される、請求項11に記載のデバイス。
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

(式中、R〜R63は独立に、水素、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択され;
点線で表された弧はそれぞれ、多環式芳香族置換基又はヘテロ環芳香族置換基であり;
Xは、二配位、三配位、四配位、又は六配位であってよく;
Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、及びBからなる群から選択される。)
【請求項27】
前記の点線の弧で表された置換基が以下のものからなる群から選択される、請求項26に記載のデバイス。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

(式中、i、j、及びmはそれぞれ独立に0〜100であり;
上記のジグザグの線は、ポルフィリンに対してπを延長する単位が縮合する箇所を表し;
黒丸は、その多環式芳香族基がポルフィリンのメソ位置に結合する位置を表し;
Xは、O、S、Se、Te、N、P、As、Si、Ge、又はBであり;
Yは、H、M、又はXであり;且つ
R′〜R′23は独立に、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、カルコゲン、メルカプト、アルキル、フルオロアルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択される。)
【請求項28】
点線の弧で表される置換基が、ナフタレン、アントラセン、又はピレンである、請求項26に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第一の化合物が以下のものからなる群から選択される請求項11に記載のデバイス。
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【請求項30】
消費者製品である請求項11に記載のデバイス。

【図3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−503181(P2013−503181A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526987(P2012−526987)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046816
【国際公開番号】WO2011/028610
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509119061)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (14)
【出願人】(512047210)ザ・ユニヴァーシティ・オブ・サザン・カリフォルニア (2)
【Fターム(参考)】