説明

可逆変色性結露吸収テープ

【課題】 結露が吸水材に吸収されるに伴って多孔質層も吸水して変色するため、結露の検知性を有すると共に、吸水した結露の量を視認して屋内の換気の必要性を判断可能な実用性と利便性に富む可逆変色性結露吸収テープを提供する。
【解決手段】 片面に粘着層を設けた水分吸収材の非粘着層側の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する多孔質層を設けてなる可逆変色性結露吸収テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結露の付着により変色する可逆変色性結露吸収テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窓ガラスや壁の内側には屋内と屋外の温度差や湿度差によって結露が発生し易く、窓枠、床、カーテン等を濡らして黴や汚れを発生させるため、結露吸収シートを用いて結露を吸収する試みが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記結露吸収シートは、水分吸水材の裏面に粘着層が設けられたシートであって、結露が発生する場所に貼着して結露を吸収するものである。
しかしながら、前記結露吸収シートは結露を吸収した状態であるか否かを確認することができ難く、検知性に乏しいと共に換気の必要性を判断し難いといった不具合があった。
【特許文献1】特開平1−250843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記従来の結露吸収シートの不具合を解消しようとするものであって、即ち、結露を吸収した状態を簡易に判別可能であり、よって、換気の必要性を判断し易い可逆変色性結露吸収テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、片面に粘着層を設けた水分吸収材の非粘着層側の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する多孔質層を設けてなる可逆変色性結露吸収テープを要件とする。
更には、前記水分吸収材表面の多孔質層を設けた部分と設けていない部分の面積比が0.5:99.5〜50:50であること、前記水分吸収材が布帛であること、前記布帛がナイロン樹脂とポリエステル樹脂とからなる分割型複合繊維により形成されてなること、前記布帛の吸水保持力が100〜1000g/mであること、前記粘着層が水不溶性であること、水分吸収材と多孔質層の間に着色層を設けてなること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の可逆変色性結露吸収テープは、窓ガラスや壁等に発生した結露を吸収した状態を簡易に判別することができ、よって、換気の必要性を判断し易い利便性に優れた可逆変色性結露吸収テープを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記水分吸収材は結露の吸収性と蒸発性(乾燥性)を有する材質であれば全て用いることができ、織物、編物、組物、不織布等の布帛、フェルト、発泡合成樹脂発泡体、紙等の平面状水分吸収材が例示できる。
なお、耐久性と剥離性の観点から水分吸収材としては布帛が好適であり、綿、麻、絹、ウール、パルプ、レーヨン、ナイロン、ビニロン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン繊維等を例示でき、これらの繊維は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記布帛のうち、ナイロン樹脂とポリエステル樹脂とからなる分割型複合繊維が好適であり、結露の吸収性と、乾燥性の両性能を十分に満たすことができる。
前記布帛は吸水保持力が100〜1000g/m、好ましくは200〜800g/mである。吸水保持力が100g/m未満では結露を十分に吸収することができず、吸収されなかった結露が窓枠、床、カーテン等を濡らして黴や汚れを発生させ易くなる。また、吸水保持力が1000g/mを超えると吸収した結露が蒸発し難く、布帛自体に黴や汚れを発生し易くなると共に、換気の必要性を判断することができなくなる。
なお、前記吸水保持力は、JIS L1018B法により、水を含浸させた布帛を吊干し、2分後の保水率(%)を算出した後、該保水率に布帛の目付け量(g/m)を乗じて求める。
【0007】
前記水分吸収材表面に設けられる多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層であり、乾燥状態と結露を吸収した吸液状態で透明性が異なる層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
【0008】
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、透光性支持体に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤や界面活性剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0009】
前記多孔質層は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により水分吸収材表面に形成できる。
【0010】
前記水分吸収材表面の多孔質層を設けた部分と設けていない部分の面積比は0.5:99.5〜50:50であることが好ましい。
多孔質層を設けた部分が0.5未満では結露を検知した状態を視認し難く、また、50を超えると結露を吸収、放出(蒸発)する効果を発現でき難くなる。
【0011】
前記水分吸収材の多孔質層を設けた面とは反対側の面に粘着層を設けてなる。
前記粘着層中に含まれる粘着剤は、耐水性(水不溶性)を有すると共に、結露吸収テープを剥がす際、容易に剥離することが好ましく、具体的には再剥離性を有するアクリル系粘着剤が好適である。
【0012】
本発明の可逆変色性結露吸収テープは、使用時まで粘着層を保護するため、粘着層上に剥離シートを設けることもできる。前記剥離シートは、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の剥離剤を塗布して剥離層を形成したものが挙げられる。
【0013】
また、所望により防黴剤を、水分吸収材、多孔質層、粘着剤層から選ばれる少なくとも一層に含有させることができる。
【0014】
前記のようにして得られる可逆変色性結露吸収テープには、水分吸収材や多孔質層中に色剤を含有させて色変化を多彩にすることもできる。
また、前記水分吸収材と多孔質層の間に色剤を含む水透過性の着色層を設けることによっても色変化を多彩にすることもできる。
前記色剤は、一般の有色染料や顔料の他、蛍光顔料や蛍光染料を用いることもできる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。尚、実施例中の部は重量部を示す。
実施例1(図1参照)
水分吸収材2として、ナイロン樹脂33%、ポリエステル樹脂67%からなる11分割型複合繊維「(株)クラレ製ランプ、167デニール/48フィラメント」を用いて花柄レース調にパイル加工したピンク色の編み生地(吸水保持力:600g/m)の片面に粘着層3と剥離紙4を設けた。
次いで、前記水分吸収材の他方の面に、シリカ粉とアクリル樹脂エマルジョンを含む白色スクリーン印刷用インキを用いて、花柄のスクリーン版にて印刷し、乾燥硬化させて白色の多孔質層5を形成して変色性結露吸収テープ1を得た。
尚、多孔質層を設けた部分と設けていない部分の面積比は20:80であった。
【0016】
前記結露吸収テープは、常態(非吸水状態)ではピンク色の生地上に白色の花柄からなる多孔質層を視覚させるが、水を吹きつけると吸液により多孔質層が透明化し、全面がピンク色の様相が視認される。吸水状態では全面がピンク色の状態を保持していたが、乾燥するに従って徐々に元のピンク色の下地に白色の花柄が印刷された状態に戻り、前記様相変化は繰り返し再現することができた。
前記結露吸収テープから剥離紙を取り外し、硝子窓の部屋側に貼着すると、硝子窓に発生した結露を吸収して、上部から徐々に白色の花柄が消色する。更に結露を吸収することで上部から下部へと変色していき、全面がピンク色に変色したところで窓を開けて空気の入れ換えを行ない、その状態で放置したところ、もとの状態に戻った。
【0017】
実施例2(図2、3参照)
水分吸収材2として、ナイロン樹脂33%、ポリエステル樹脂67%からなる11分割型複合繊維「(株)クラレ製ランプ、167デニール/48フィラメント」を用いて格子柄レース調にパイル加工した白色の編み生地(吸水保持力:550g/m)の片面に粘着層3と剥離紙4を設けた。
次いで、前記水分吸収材の他方の面に、青色水性スクリーンインキを用いて星柄をスクリーン印刷し、乾燥硬化させて水透過性を有する青色の着色層6を設け、更に珪酸アルミニウム粉とウレタン樹脂エマルジョンを含む白色スクリーン印刷用インキを用いて、星柄のスクリーン版にて前記着色層上に印刷し、乾燥硬化させて白色の多孔質層5を形成して変色性結露吸収テープ1を得た。
尚、多孔質層を設けた部分と設けていない部分の面積比は10:90であった。
【0018】
前記結露吸収テープは、常態(非吸水状態)では白色の生地上に白色の星柄からなる多孔質層を視覚させるが、水を吹きつけると吸液により多孔質層が透明化し、青色の星柄が視認される。吸水状態では青色の星柄を保持していたが、乾燥するに従って徐々に元の白色星柄の状態に戻り、前記様相変化は繰り返し再現することができた。
前記結露吸収テープから剥離紙を取り外し、硝子窓の部屋側に貼着すると、硝子窓に発生した結露を吸収して上部から徐々に青色の星柄へと変色し、更に結露を吸収すると上部から下部へと変色していく様相が確認できる。最下部まで青色に変色したところで窓を開けて空気の入れ換えを行ない、その状態で放置したところ、もとの状態に戻った。
【0019】
実施例3
水分吸収材として、綿35%、ポリエステル樹脂65%からなる11分割型複合繊維「(株)クラレ製ランプ、167デニール/48フィラメント」を用いて作製した白色ブロード生地(吸水保持力:750g/m)の片面に油性アクリル樹脂からなる非水溶性の粘着層と剥離紙を設けた。
次いで、前記水分吸収材の他方の面に、青色水性スクリーンインキを用いて水玉柄をスクリーン印刷し、乾燥硬化させて青色の着色層を設け、更に珪酸アルミ粉とピンク色顔料及びアクリル樹脂エマルジョンを含むピンク色スクリーン印刷用インキを用いて、水玉柄のスクリーン版にて着色層上に印刷し、乾燥硬化させて淡ピンク色の多孔質層を形成して変色性結露吸収テープを得た。
尚、多孔質層を設けた部分と設けていない部分の面積比は1:99であった。
【0020】
前記結露吸収テープは、常態(非吸水状態)では白色の生地上にピンク色の水玉柄からなる多孔質層を視覚させるが、水を吹きつけると吸液により多孔質層が透明化し、下地の青色との混色となった紫色の水玉柄が視認される。吸水状態では紫色の水玉柄を保持していたが、乾燥するに従って徐々にピンク色の水玉柄の状態に戻り、前記様相変化は繰り返し再現することができた。
前記結露吸収テープから剥離紙を取り外し、硝子窓の部屋側に貼着すると、硝子窓に発生した結露を吸収して、上部から徐々に紫色の水玉柄へと変色し、更に結露を吸収することで上部から下部へと変色していく様相が確認できる。最下部まで紫色に変色したところで窓を開けて空気の入れ換えを行ない、その状態で放置したところ、もとの状態に戻った。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明可逆変色性結露吸収テープの一実施例の縦断面図である。
【図2】本発明可逆変色性結露吸収テープの他の実施例の正面図である。
【図3】図2の可逆変色性結露吸収テープの縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 可逆変色性結露吸収テープ
2 水分吸収材
3 粘着層
4 剥離紙
5 多孔質層
6 着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に粘着層を設けた水分吸収材の非粘着層側の表面に、低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた、非吸水状態で不透明であり、吸水状態で透明化する多孔質層を設けてなる可逆変色性結露吸収テープ。
【請求項2】
前記水分吸収材表面の多孔質層を設けた部分と設けていない部分の面積比が0.5:99.5〜50:50である請求項1記載の可逆変色性結露吸収テープ。
【請求項3】
前記水分吸収材が布帛である請求項1又は2記載の可逆変色性結露吸収テープ。
【請求項4】
前記布帛がナイロン樹脂とポリエステル樹脂とからなる分割型複合繊維により形成されてなる請求項3記載の可逆変色性結露吸収テープ。
【請求項5】
前記布帛の吸水保持力が100〜1000g/mである請求項3又は4記載の可逆変色性結露吸収テープ。
【請求項6】
前記粘着層が水不溶性である請求項1乃至5のいずれかに記載の可逆変色性結露吸収テープ。
【請求項7】
水分吸収材と多孔質層の間に着色層を設けてなる請求項1乃至6のいずれかに記載の可逆変色性結露吸収テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−46005(P2008−46005A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222177(P2006−222177)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【出願人】(591045105)クラレリビング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】