説明

可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダー

【課題】カレンダーの作製コストおよび工数を十分低く抑えることができ、しかも、資源の消費を有効に抑制できる可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーを提供する。
【解決手段】相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、色および帯電特性が異なる表示媒体用粒子から構成される二種類の表示媒体を封入するとともに、それらの表示媒体を基板表面に形成させた電荷が作り出す電界で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる。表示部1−1、1−2をもって月毎のカレンダー表示を行う月毎カレンダー1であって、日曜日の日付表示領域2と日曜日以外の日付表示領域3と日付表示枠囲い領域4とにおいて少なくとも日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域とで基板間に配置する色および帯電特性の異なる二種類の表示媒体の組合せを異なるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆式の情報表示パネルよりなる表示部をもって月毎のカレンダー表示を行う月毎カレンダーであって、書き換え用のドライバー搭載が不要な可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な月毎カレンダーは、紙等への印刷物として作製されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、従来の一般的な月毎(月捲り)カレンダーでは、多数枚の用紙に所定の印刷を施すことが必要になってカレンダーの作製コストおよび工数か嵩むという問題がある一方で、使用済みのカレンダー部分は廃棄等を余儀なくされるという省資源上の問題もあった。
【0004】
一方、繰り返して画像等の情報を表示することができる情報表示パネルとして、本出願人は、少なくとも一方が透明の二枚の基板間の空間内に、表示媒体を封入し、それらの表示媒体を電界中で移動させて透明基板側に所要の情報を表示させることのできる可逆式情報表示パネルを提案している(例えば、特許文献1参照)。この情報表示パネルは、基板上の静電潜像等の電荷の形成に基づいて、表示媒体を移動させ、表示媒体を構成する表示媒体用粒子同士のクーロン力、電極との電気影像力、分子間力、液架橋力、重力等によって、基板間の電界がなくなってもなお、表示情報を長期間にわたって維持できるという、優れた表示保存性を発揮できる利点を有している。そこで、透明基板側に所要の、図形、記号、画像等の情報を長期間表示した後、簡単に消去して書き換えることができ、繰り返し使用できることから、上述した月毎カレンダーに好適に用いられる可能性がある。
【特許文献1】特開2004−341123号
【0005】
しかしながら、これまでの情報表示パネルを月毎カレンダーに用いようとすると、鮮明な情報表示ができなかったり、表示情報の確実な消去および書き換えができなかったりする場合があるという問題があり、そのままでは本発明の対象とする月毎カレンダーに用いることができなかった。
【0006】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、カレンダーの作製コストおよび工数を十分低く抑えることができ、しかも、資源の消費を有効に抑制できる可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーは、相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、表示媒体を封入するとともに、それらの表示媒体を基板表面に形成させた電荷が作り出す電界で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる、可逆式にして乾式の情報表示パネルよりなる表示部をもって月毎のカレンダー表示を行う月毎カレンダーであって、(1)色および帯電特性が異なる二種類の表示媒体を使用し、(2)情報表示パネルに用いる表示媒体用粒子の平均粒子径を3〜10μmの範囲とし、(3)情報表示パネルの総厚さを10μm以上で1mm未満とするとともに、(4)日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域と日付表示枠囲い領域とにおいて少なくとも日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域とで基板間に配置する色および帯電特性の異なる二種類の表示媒体の組合せを異なるものとしたことを特徴とするものである。
【0008】
ここで好ましくは、前記表示領域の内、日曜日の日付表示領域と日付表示枠囲い領域とを帯電特性の異なる白色表示媒体と赤色表示媒体との組合せで構成し、日曜日以外の日付表示領域を帯電特性の異なる白色表示媒体と黒色表示媒体との組合せで構成する。また好ましくは、二枚の基板の少なくとも一方の厚さが0.4mm以下であって、かつ、二枚の基板が対向して作り出す基板間の間隔が0.1mm以下で構成する。そしてまた好ましくは、それぞれの基板をプラスチック材料製とする。さらにまた、表示媒体として粒子群または粉流体を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーにおいては、まず、従来の情報表示パネルが抱えていた、鮮明な情報表示ができなかったり、表示情報の確実な消去および書き換えができなかったりする場合があるという問題を、(1)色および帯電特性の異なる二種類の表示媒体を使用し、(2)情報表示パネルに用いる表示媒体用粒子の平均粒子径を3〜10μmの範囲とし、(3)情報表示パネルの総厚さを10μm以上で1mm未満とすることで解消している。これにより、情報表示パネル基板上に電荷を形成できる電荷形成手段(たとえば感光体によって静電潜像として電荷を形成する手段やイオンフローによって電荷を形成する手段)を用いれば表示情報の書き換えを確実に行える。そのため、上記構成を有する可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーにおいては、一旦表示した情報を確実に消去した後、さらに新しい情報を表示することを何度でも行えるので、用紙に所定の印刷等を施すことが不要となり、コストおよびそのための作業工数を大きく抑制することができるととものに資源の消費を十分に防止することができる。
【0010】
また、本発明の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーにおいては、(4)日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域と日付表示枠囲い領域とにおいて少なくとも日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域とで基板間に配置する色および帯電特性の異なる二種類の表示媒体の組合せを異なるものとすることで、日曜日と平日および祝祭日の表示色を変えた表示が可能な月毎カレンダー、特には前記表示領域の内、日曜日の日付表示領域と日付表示枠囲い領域とを帯電特性の異なる白色表示媒体と赤色表示媒体との組合せで構成し、日曜日以外の日付表示領域を帯電特性の異なる白色表示媒体と黒色表示媒体との組合せで構成した可能な月毎カレンダーとすることができるので見やすいカレンダー表示を行うことができる。
【0011】
ところで、本発明の月毎カレンダーに用いる情報表示パネルにおいて、それぞれの基板をプラスチック材料製とすることは、そのパネルを十分に薄肉化し、また軽量化することができるだけでなく、本発明のカレンダーに必要な、長期間(1ヶ月〜2ヶ月程度)表示したカレンダー情報を確実に消去して、その後さらに新しいカレンダー情報を鮮明に表示したりする場合にも有効な方法となる。
【0012】
従って、本発明の月毎カレンダーによれば、多数枚の用紙に所定の印刷を施すことが不要となり、カレンダーの製作コストおよび、そのための作業工数を大きく抑制することができ、また、表示部の再利用の下で、資源の消費を十分に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)、(b)はそれぞれこの発明に係るカレンダーの実施形態を示す図であり、図中1は、本発明の一枚の月毎カレンダー表示板を示す。これは、後述する可逆式の情報表示パネルよりなるとともに方形の表示部1−1、1−2を、一枚のカレンダー表示板1の2ヶ月分に対応する2個所のそれぞれの部分に配設して、それらの各々で月毎カレンダーとしたものである。なおこの発明では、一枚のカレンダー表示板1の2個所の部分にそれぞれの月毎カレンダーを配設することは必須ではなく、一枚のカレンダー表示板1に一枚の月毎カレンダーのみとすることも、一枚のカレンダー表示板1の3個所の部分にそれぞれ三枚の月毎カレンダーを配設することもできる。また、表示部1−1、1−2の裏面に粘着層を設け、表示部1−1、1−2を図1(b)に示すようなカレンダー未表示のカレンダー表示板1に対し着脱自在に構成している。他にも、ポケット方式、カセット方法などの方法によれば着脱自在に構成することができる。
【0014】
図1に示す例では、月毎カレンダーの日曜日の日付表示領域2、日曜日以外の日付表示領域3と、日付表示枠囲い領域4とに封入した表示媒体の二色の色彩の組合せを、目視時のコントラストを大きくして視認性を高めるべく、濃暗色と淡明色との組合せとし、日曜日の日付表示領域2および日付表示枠囲い領域4とでは、それを白色と赤色との組合せとし、日曜日以外の日付表示領域3では、それを白色と黒色との組合せとしている。なお、祝祭日は、図示のように日付表示枠囲い領域4を赤色表示することで際立たせることができる。
【0015】
ところで、それぞれの月毎カレンダーの、日曜から土曜までの曜日表示行5には、表示媒体をもって曜日表示を行うこともできるが、この曜日表示は、月が変わっても変更がないので、各月毎カレンダーの透明基板側に、所要の色彩をもって予め印刷等することもできる。
【0016】
以下、上述した月毎カレンダーに用いる、可逆式にして乾式の情報表示パネルについて説明する。
【0017】
図2(a)〜(c)はそれぞれ本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける構造の一例を示す図である。図2(a)に示す可逆式情報表示パネルは、相互に対向して平行をなす二枚の基板11、12間の、たとえば空気を封じ込めた密閉空間内に、互いに帯電特性が異なる、図では白黒二色、二種類の表示媒体13(ここでは粒子群からなる白色表示媒体13Wと粒子群からなる黒色表示媒体13Bを示す)を封入することにより構成してなる。なお、図2(b)に示す例では、図2(a)に示す例に加えて、基板11、12との間に例えば格子状に隔壁14を設けセルを形成している。また、図2(b)において、手前にある隔壁は省略している。さらに、図2(c)に示す例では、透明なカプセル17内に上述した表示媒体13を封入し、隔壁を設けずに複数のカプセル17を基板11、12間に配置して可逆式情報表示パネルを構成している。
【0018】
また、図3(a)〜(c)はそれぞれ本発明の可逆式情報表示パネルにおける構造の他の例を示す図である。図3(a)〜(c)に示す可逆式情報表示パネルは、図2(a)〜(c)について述べたところに加えて、それぞれの基板11、12の内面側に導電性部材15、16を配設するとともに、少なくとも透明基板11側の導電性部材16を透明導電性部材としたものである。
【0019】
このような可逆式情報表示パネルは、帯電特性が異なる表示媒体13に電界を付与することにより、低電位に帯電した表示媒体13が、クーロン力等によって高電位の電界方向に向かって引き寄せられる一方、高電位に帯電した表示媒体13が低電位の電界方向に向かって引き寄せられることになり、それらの表示媒体13は、電界方向の変化に伴って移動方向が切り替わり、透明の基板11側に所要の情報を表示することができる。
【0020】
従って、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)に示すところでは、粒子群からなる白色表示媒体13Wと粒子群からなる黒色表示媒体13Bとの二色の表示媒体13を、基板11、12の外部に付与される静電潜像等の電荷によって形成される電界に応じて、それらの両基板間で垂直に移動させて、表示媒体を構成する表示媒体用粒子の大きさを画素単位として、白色表示媒体13Wもしくは黒色表示媒体13Bを観察者に視認させることで、透明基板11にその表示を行うことができる。
【0021】
なお、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)に示すこのようなパネルにおいて、粒子群からなる白色表示媒体13Wを粉流体からなる白色表示媒体に、そして粒子群からなる黒色表示媒体13Bを粉流体からなる黒色表示媒体に置き換えることもできる。また、可逆式情報表示パネルの、二色の情報表示媒体の色彩の組み合せは、先に述べたような、白色と黒色等のみならず、実現可能な各種の色彩の任意の組み合せとすることができる。特に、本発明では、月毎カレンダーのうち日曜日の日付表示領域2及び日付表示枠囲い領域4の部分を、白色と赤色とすることが望ましい。
【0022】
以上のような可逆式情報表示パネルは、少なくとも一方が透明の対向する二枚の基板11、12間の密閉空間内に、表示媒体13を封入し、その表示媒体13に電界を与えて、それを移動させて情報を表示する可逆式の表示パネルであり、ここでは、粒子群または粉流体を表示媒体13として使用し、その表示媒体13を透明基板12を介して視認させることで、白黒等の大きなコントラストの下で、広い視野角を確保することができる。また、情報(表示内容)を書き換える、すなわち、表示媒体13を移動させる時だけ電界を働かせ、移動後は、電界の作用なしにも、表示媒体13は、一旦移動した位置に留まるので表示情報を長期間にわたって保持させることができる。この一方で、情報を書き換えたい時には、再び電界を働かせることで、表示媒体13が再度移動して別の情報を表示することになるので、情報の書換えを可逆的に行うことができる。
【0023】
なおここでは、表示媒体13が情報を直接的に表示するので、表示媒体13を構成する粒子(表示媒体用粒子)のサイズが情報の鮮明さを決めることになる。そこでここでは、好ましくは、平均粒子径3〜10μmの粒子からなる表示媒体用粒子を用いて構成した粒子群を表示媒体としたり、表示媒体用粒子を粉流体となるように調整して表示媒体としたりすることで、鮮明な情報の表示を担保して、繊細で緻密な情報の表示を可能とする。
【0024】
次に、上述した構成の本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報表示、情報書き換え、情報消去の例について説明する。
【0025】
図4は本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報表示の一例を説明するための図である。本発明で用いる可逆式情報表示パネルでは、図4に一例を示すように、対向する基板11、12間に易移動性の表示媒体13を封入した可逆式情報表示パネルの透明基板11側外部表面に、何らかの電荷形成手段21で電荷が付与されることにより静電場が形成される。その静電場にしたがって、正極性に帯電した基板部位に向かっては負極性に帯電した易移動性の表示媒体13がクーロン力等によって引き寄せられ、また、負極性に帯電した基板部位に向かっては正極性に帯電した易移動性の表示媒体13がクーロン力等によって引き寄せられ、それら易移動性の表示媒体13が透明基板11の内表面に引き寄せられて静電付着することにより、画像等の情報表示がなされる。
【0026】
なお、この静電潜像の形成は、電子写真感光体を用い通常の電子写真システムで行われる静電潜像を本発明の可逆式情報表示パネル上に転写形成する、あるいは、イオンフローにより静電潜像を直接形成する等の方法でも行うことができる。透明基板11の内表面に引き寄せられて静電付着した易移動性の表示媒体13は、図4に一例を示すように、静電場がなくなってもそのまま付着しているので、表示情報がそのまま保持(メモリー)される。図4では、正帯電の白色表示媒体13Wと負帯電の黒色表示媒体13Bを例示している。
【0027】
図5は本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報書き換えの一例を説明するための図である。一度画像等の情報が表示されたパネルをそのままの状態で、図5に一例を示すように、表示用パネルの透明基板11側外部表面に新たな電荷形成手段21で電荷が付与されることにより新たな静電場が形成される。その新たに形成された静電場にしたがって、再び易移動性の表示媒体13の移動が起こり、正極性に帯電した基板部位に向かっては負極性に帯電した易移動性の表示媒体13がクーロン力等によって引き寄せられ、また、負極性に帯電した基板部位に向かっては正極性に帯電した易移動性の表示媒体13がクーロン力等によって引き寄せられ、それら易移動性の表示媒体13が透明基板11の内表面に引き寄せられて静電付着することにより、画像等の情報表示が書き換えられる。図5では、正帯電の白色表示媒体3Wと負帯電の黒色表示媒体3Bを例示している。
【0028】
図6は本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報消去の一例を説明するための図である。図6に一例を示すように、表示用パネルの基板11、12のそれぞれの外面に電荷形成手段22、23を配置して、例えば基板11、12に交番電圧を印加する。これにより、可逆式情報表示パネルの基板11、12の外面に電荷を供給することによって、画像等の情報を消去することができる。
【0029】
上述した構成の情報表示パネルをカレンダーの表示部1−1、1−2として用いる場合には、それぞれの基板11、12をプラスチック材料製とすることが、カレンダーの薄肉化および軽量化を実現する上で好ましい。
【0030】
ところで、情報表示パネルの基板11、12については、それらの少なくとも一方の基板11はパネルの外側から表示媒体の色が確認できる透明基板であり、この基板11は、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料で構成することが好適である。なお、基板12は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル樹脂などのポリマーシートや、金属シートのように可撓性のあるもの、および、ガラス、石英などの可撓性のない無機シートが挙げられる。
【0031】
基板の厚みは、2〜400μmが好ましく、さらに5〜300μmが好適である。薄すぎると、強度、基板間の間隔の均一性を保ちにくくなり、400μmより厚いと、基板外に形成した静電潜像等の電荷による電界の力で表示媒体が移動しなくなる不都合がある。
【0032】
また、必要に応じて基板に設けられる導電性部材15、16の構成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類やITO、酸化インジウム、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。導電性部材の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。
この場合、視認側基板11に設ける導電性部材16は透明である必要があるが、背面側基板に設ける導電性部材15は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能であり、導電性である上記材料を好適に用いることができる。
【0033】
なお、導電性部材の厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、3〜1000nm、好ましくは5〜400nmが好適である。背面側基板12にもうける導電性部材15の材質や厚みになどは上述した視認側基板に設ける導電性部材16と同様であるが、透明である必要はない。
【0034】
そして、これもまた必要に応じて設けられる隔壁14については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類により適宜最適に設定されるので、一概には特定することができないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmに、隔壁の高さは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板11、12の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。
【0035】
これらのリブからなる隔壁14により形成されるセルは、図7に略線平面図で示すごとく、基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方が良く、情報表示の鮮明さが増す。
【0036】
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明に係る情報表示パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法が好適に用いられる。
【0037】
次に、情報表示パネルで用いる表示媒体13を構成する表示媒体用粒子(以下、粒子ともいう)について説明する。表示媒体用粒子はそれだけで粒子群を形成して表示媒体としたり、他の粒子と合わせた粒子群を形成して表示媒体としたり、後述する粉流体となるように調整して表示媒体としたりすることができる。粒子は、その主成分となる樹脂に、必要に応じて、従来と同様に、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含ますことがきる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0038】
樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリルウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテル、ポリアミド等が挙げられ、二種以上混合することもできる。特に、基板との付着力を制御する観点から、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルフッ素樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が好適である。
【0039】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。
正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0040】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。
【0041】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。
青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。
【0042】
赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0043】
黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエロー
GR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。
緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
【0044】
橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。
紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。
白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0045】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0046】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。
【0047】
また、表示媒体13を構成する粒子は平均粒子径d(0.5)が、3〜10μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体の移動に支障をきたすようになる。
【0048】
更にここでは、各粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な粒子移動が可能となる。
【0049】
さらにまた、各粒子の相関について、使用した粒子の内、最大径を有する粒子のd(0.5)に対する最小径を有する粒子のd(0.5)の比を50以下、好ましくは10以下とすることが肝要である。
【0050】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000 (Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、粒子径および粒子径分布の測定を行なうことができる。
【0051】
次に、情報表示用パネルに用いる表示媒体13として例えば用いる粉流体について説明する。なお、この発明に表示媒体として例えば用いる粉流体の名称については、出願人が「電子粉流体(登録商標):登録番号4636931」の権利を得ている。
【0052】
ここでの「粉流体」は、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。例えば、液晶は液体と固体の中間的な相と定義され、液体の特徴である流動性と固体の特徴である異方性(光学的性質)を有するものである。(平凡社:大百科事典)。一方粒子の定義は、無視できるほどの大きさであっても有限の質量をもった物体であり、重力の影響を受けるとされている(丸善:物理学事典)。ここで、粒子でも、気固流動層体、液固流動体という特殊状態があり、粒子に底板から気体を流すと、粒子には気体の速度に対応して上向きの力が作用し、この力が重力とつりあう際に、流体のように容易に流動できる状態になるものを気固流動層体と呼び、同じく、流体により流動化させた状態を液固流動体と呼ぶとされている(平凡社:大百科事典)。このように気固流動層体や液固流動体は、気体や液体の流れを利用した状態である。 そこでここでは、このような気体の力も、液体の力も借りずに、自ら流動性を示す状態の物質を、特異的に作り出せることが判明し、これを粉流体と定義した。
【0053】
すなわち、この発明における粉流体は、液晶(液体と固体の中間相)の定義と同様に、粒子と液体の両特性を兼ね備えた中間的な状態で、先に述べた粒子の特徴である重力の影響を極めて受け難く、高流動性を示す特異な状態を示す物質である。このような物質はエアロゾル状態、すなわち気体中に固体状もしくは液体状の物質が分散質として安定に浮遊する分散系で得ることができ、この発明に係る情報表示パネルで固体状物質を分散質とするものである。
【0054】
この発明に係る情報表示パネルは、少なくとも一方が透明な、対向する基板間に、表示媒体として、例えば気体中に固体粒子が分散質として安定に浮遊するエアロゾル状態で高流動性を示す粉流体を封入するものであり、このような粉流体は、低電圧の印加でクーロン力などにより容易に安定して移動させることができる。この粉流体は、先に述べたように、気体の力も液体の力も借りずに、自ら流動性を示す、流体と粒子の特性を兼ね備えた両者の中間状態の物質である。その粉流体は、特にエアロゾル状態とすることができ、この発明に係る情報表示パネルでは、気体中に固体状の物質が分散質として比較的安定に浮遊する状態で用いられる。
【0055】
表示媒体用粒子の帯電量は当然その測定条件に依存するが、情報表示パネルにおける表示媒体用粒子の帯電量はほぼ、初期帯電量、隔壁との接触、基板との接触、経過時間に伴う電荷減衰に依存し、特に表示媒体用粒子の帯電挙動の飽和値が支配因子となっているということが分かった。
【0056】
さらに、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体をそのまま表示媒体とする乾式の情報表示パネルに用いる場合は、パネル基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示の安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下、更に好ましくは35%RH以下とすることが重要であるが、表示媒体用粒子で構成する粒子群や粉流体をカプセル内に封入して表示媒体とする乾式の情報表示パネルに用いる場合には、パネル基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理はさほど重要ではない。
【0057】
この空隙部分とは、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)において、対向する基板11、12に挟まれる部分から、導電性部材15、16(導電性部材を設けた場合)、表示媒体13の占有部分、隔壁14の占有部分(隔壁を設けた場合)、情報表示パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体13が接する気体部分を指すものとする。
【0058】
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0059】
ここでの情報表示用パネルにおける基板11と基板12との間隔は、表示媒体13が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。対向する基板間の空間における表示媒体13の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体13の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダーは、一旦表示した情報を確実に消去した後、さらに新しい情報を表示することを何度でも行えるので、用紙に所定の印刷等を施すことが不要となり、コストおよびそのための作業工数を大きく抑制することができるととものに資源の消費を十分に防止する用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)、(b)はそれぞれこの発明に係るカレンダーの実施形態を示す平面図である。
【図2】(a)〜(c)はそれぞれ本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける構造の一例を示す図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ本発明の可逆式情報表示パネルにおける構造の他の例を示す図である。
【図4】本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報表示の一例を説明するための図である。
【図5】本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報書き換えの一例を説明するための図である。
【図6】本発明で用いる可逆式情報表示パネルにおける情報消去の一例を説明するための図である。
【図7】隔壁により区画されるセルの配置例を示す略線平面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 月毎カレンダー
1−1、1−2 表示部
2 日曜日の日付表示領域
3 日曜日以外の日付表示領域
4 日付表示枠囲い表示領域
5 曜日表示行
11、12 基板
13 表示媒体(粒子群または粉流体)
13W 白色表示媒体
13B 黒色表示媒体
14 隔壁
15、16 導電性部材
17 カプセル
21、22、23 電荷形成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する、少なくとも一方が透明な二枚の基板間の密閉空間内に、表示媒体を封入するとともに、それらの表示媒体を基板表面に形成させた電荷が作り出す電界で移動させて、透明基板側に所要の情報を表示させる、可逆式にして乾式の情報表示パネルよりなる表示部をもって月毎のカレンダー表示を行う月毎カレンダーであって、(1)色および帯電特性が異なる二種類の表示媒体を使用し、(2)情報表示パネルに用いる表示媒体用粒子の平均粒子径を3〜10μmの範囲とし、(3)情報表示パネルの総厚さを10μm以上で1mm未満とするとともに、(4)日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域と日付表示枠囲い領域とにおいて少なくとも日曜日の日付表示領域と日曜日以外の日付表示領域とで基板間に配置する色および帯電特性の異なる二種類の表示媒体の組合せを異なるものとしたことを特徴とする可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダー。
【請求項2】
前記表示領域の内、日曜日の日付表示領域と日付表示枠囲い領域とを帯電特性の異なる白色表示媒体と赤色表示媒体との組合せで構成し、日曜日以外の日付表示領域を帯電特性の異なる白色表示媒体と黒色表示媒体との組合せで構成したことを特徴とする請求項1に記載の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダー。
【請求項3】
前記二枚の基板の少なくとも一方の厚さが0.4mm以下であって、かつ、二枚の基板が対向して作り出す基板間の間隔が0.1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダー。
【請求項4】
それぞれの基板をプラスチック材料製としてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダー。
【請求項5】
表示媒体として粒子群または粉流体を用いたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可逆式情報表示パネルを用いた月毎カレンダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−227068(P2006−227068A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37611(P2005−37611)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】