説明

可逆性感熱発色組成物および可逆性感熱記録媒体

【課題】 発色画像の安定性と高い消色性の両立を実現する可逆性感熱発色組成物およびこれを用いた可逆性感熱記録媒体を提供すること。
【解決手段】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、該可逆性感熱発色組成物中に消色促進剤として用いる化合物が一般式(I)X(NCO)aで表される3価以上の多価イソシアネート化合物と一般式(II)CH(CH)nNHで表される脂肪族アミンとの反応によって得られるオリゴマー組成物である可逆性感熱発色組成物と、該組成物を用いて作成した可逆性感熱記録媒体。式中Xは3価以上の基、aは3以上の整数を示す。nは5から21の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感熱発色組成物および可逆性感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物は、例えば特許文献1に記載されている。
また、可逆性感熱発色材料における消色性に対し、従来より電子供与性呈色化合物と電子受容性化合物の他に、長鎖アルキル鎖を有する特定の化合物を混合して用いる技術(例えば特許文献2)があるが、低い温度から消色性を示すため、発色画像の安定性が低下してしまい、発色画像の安定性と消色性の両立の点で、改善が必要であった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−6655号公報
【特許文献2】特開平8−132735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、発色画像の安定性と高い消色性の両立を実現する可逆性感熱発色組成物およびこれを用いた可逆性感熱記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、該可逆性感熱発色組成物中に消色促進剤として用いる化合物が下記一般式(I)で表される3価以上の多価イソシアネート化合物と下記一般式(II)で表される脂肪族アミンとの反応によって得られるオリゴマー組成物であることを特徴とする可逆性感熱発色組成物である。
【0006】
【化5】

【0007】
【化6】

【0008】
(式中Xは3価以上の基、aは3以上の整数を示す。nは5から21の整数である。)
【0009】
請求項2の発明は、前記一般式(I)におけるXが下記一般式(III)で表される3価の構造であることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱発色組成物である。
【0010】
【化7】

【0011】
(式中Yは、2価の基を示す。)
【0012】
請求項3の発明は、前記一般式(I)におけるXが下記一般式(IV)で表される3価の構造であることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱発色組成物である。
【0013】
【化8】

【0014】
(式中Yは、2価の基を示す。)
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の可逆性感熱発色組成物を主成分として含有する記録層を支持体上に設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体である。
【0016】
請求項5の発明は、前記記録層上に無機または有機の紫外線吸収剤を含有する層を設けたことを特徴とする請求項4に記載の可逆性感熱記録媒体である。
【0017】
請求項6の発明は、前記可逆性感熱記録媒体が、シート状またはカード状に加工されていることを特徴とする請求項4または5に記載の可逆性感熱記録媒体である。
【0018】
請求項7の発明は、前記可逆性感熱記録媒体が、情報記憶部を有していることを特徴とする請求項6に記載の可逆性感熱記録媒体である。
【0019】
請求項8の発明は、前記情報記憶部が、磁気記録層および/またはICであることを特徴とする請求項7に記載の可逆性感熱記録媒体である。
【0020】
請求項9の発明は、前記可逆性感熱記録媒体が、接着剤層または粘着層を有することを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
【0021】
請求項10の発明は、表面および/または裏面の少なくとも一部に印刷部分を有することを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
【0022】
請求項11の発明は、前記可逆性感熱記録媒体が、発色開始温度よりも低い温度に加熱して消色可能であることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、発色画像の安定性と高い消色性の両立を実現する可逆性感熱発色組成物およびこれを用いた可逆性感熱記録媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の可逆性感熱発色組成物において、基本的な発色・消色は、電子受容性化合物(顕色剤)と電子供与性呈色化合物(発色剤)を組み合わせることによって発現する。本発明で用いる発色剤は電子供与性を示すものであり、それ自体無色或いは淡色の染料前駆体(ロイコ染料)であり、特に限定されず、従来公知のもの、例えばフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物などから選択できる。
発色剤の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
2 −アニリノ−3 −メチル−6 −ジエチルアミノフルオラン、2 −(o −クロロアニリノ)−6 −ジブチルアミノフルオラン、2 −(N −メチル−o −クロロアニリノ)−6 −ジブチルアミノフルオラン、2 −アニリノ−3 −メチル−6 −(N −n −プロピル−N −メチルアミノ)フルオラン、2 −アニリノ−6 −(N−n −ヘキシル−N −エチルアミノ)フルオラン、2 ,3 −ジメチル−6 −ジメチルアミノフルオラン、2 −(o −クロロアニリノ)−3 −クロロ−6 −ジメチルアミノフルオラン、3 −(4 −ジエチルアミノ−2 −エトキシフェニル)−3−(1 −エチル−2 −メチルインド−3 −イル)−4 −アザフタリド等。
【0025】
次に本発明に用いられる顕色剤について説明する。顕色剤には、すでに特開平5-124360号公報に長鎖炭化水素基をもつリン酸化合物、脂肪酸化合物、フェノール化合物の代表例とともに開示されているように、分子内に発色剤を発色させることができる顕色能をもつ構造と、分子間の凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物が使用される。顕色能をもつ構造としては、一般の感熱記録媒体と同様に、たとえばフェノール性水酸基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性の基が用いられるが、これらに限らず発色剤を発色できる基をもてばよい。これらには、たとえばチオ尿素基、カルボン酸金属塩などがある。分子間の凝集力をコントロールする代表的な構造としては長鎖アルキル基などの炭化水素基がある。この炭化水素基の炭素数は、一般的には8以上であることが良好な発色・消色特性を得る上で好ましい。また、この炭化水素基には不飽和結合が含まれていてもよく、また分枝状の炭化水素基も包含される。この場合も、主鎖部分は炭素数8以上であることが好ましい。また、この炭化水素基は、たとえばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などの基で置換されていてもよい。
上記のように顕色剤は、顕色能を持つ構造と炭化水素基で代表される凝集力を制御する構造が連結した構造をもつ。この連結部分には下記に示すようなヘテロ原子を含む2価の基、または、これらの基が複数個組合わせた基をはさんで結合していてもよい。また、フェニレン、ナフチレンなどの芳香環または複素環などをはさんで結合していてもよいし、これら両方をはさんでいてもよい。炭化水素基は、その鎖状構造中に上記と同様な2価の基、すなわち芳香環やヘテロ原子を含む2価の基を有するものであってもよい。
【0026】
以下、顕色剤については、上記の特開平5-124360号公報に示されている他、特開平9-193558号公報、特開平9-193557号公報、特開平9-315009号公報、特開平9-323479号公報、特開平9-290566号公報、特開平10-861号公報、特開平10-6655号公報、特願平8-166894号公報、特願平9-161908号公報に示される顕色剤を用いることができる。なお、本発明において用いられる発色剤および顕色剤は上記の例に限定されるものではない。
【0027】
次に、本発明で用いられる消色促進剤について、詳細に説明する。一般式(I)で表わされる3価以上の多価イソシアネートとしては、イソシアネート基(NCO基)を分子内に3 個以上有するものを単独あるいは混合して任意に用いることができる。一般式(I)中のXは、3 価以上の基であり、その構造について特に限定はないが、例えば以下のような構造を挙げることができる。
X の例としては、(a)カルボニル基、スルホニル基、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素から誘導される3 価以上の基、(b)主鎖中に1 個以上のヘテロ原子、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、芳香族環を含む脂肪族炭化水素から誘導される3 価以上の基、(c)1 個以上のヘテロ原子、カルボニル基、スルホニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、アルキレン、主鎖中にヘテロ原子を含んだ脂肪族炭化水素で連結された3つ以上の芳香族炭化水素から誘導される3 価以上の基を挙げることができる。
【0028】
さらに、上記記載の中に含まれるが、X の例としては下記一般式(III)または(IV)で表わされる構造のものも挙げることができる。
【0029】
【化9】

【0030】
(式中Yは、2価の基を示す。)
【0031】
【化10】

【0032】
(式中Yは、2価の基を示す。)
【0033】
この様なX を含む一般式(I)で表わされる3 価以上の多価イソシアネートについて各種タイプのものを用いることができる。これらの3 価以上の多価イソシアネート化合物については、一般に各種ジイソシアネート化合物から誘導することができる。ここで用いるジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4 ,4 ’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルメタンジイソシアネート、1 ,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1 ,5 −ナフタレンジイソシアネート、各種(o ,m ,p )キシレンジイソシアネート、4 ,4 ’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2 ,2 ,4 −トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、各種(o ,m ,p )フェニレンジイソシアネート、1 ,4 −シクロヘキシルジイソシアネート、リシンジイソシアネート、3 ,3 −ジメチルビフェニル−4 ,4 ’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、各種(m ,p )テトラメチルキシレンジイソシアネートをはじめとする各種化合物を挙げることができ、これらのジイソシアネート化合物をトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の3 価以上の多価アルコールとの間で反応させたり、あるいは、ジイソシアネートのトリマー構造化あるいは、ビューレット構造化によって各種構造の3 価以上の多価イソシアネート化合物をつくることができる。
【0034】
以下に、1 ,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4 ,4 ’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1 ,4 −シクロヘキシルジイソシアネートから誘導される3 価の多価イソシアネート誘導体を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
次に、本発明において消色促進剤として用いるオリゴマー組成物を構成するアルキルアミンは、一般式(II)で表され、nは、5から21の整数であるが、好ましくは、12から21である。
【0046】
【化21】

【0047】
本発明において消色促進剤として用いられるオリゴマー組成物は、前記一般式(I)の3 価以上の多価イソシアネート化合物と前記一般式(II)のアルキルアミンとの縮重合および、一般式(I)の化合物に含まれるイソシアネートどうしの縮合反応によって形成している。
なお、本発明のオリゴマー組成物については合成時の、化合物(I)に含まれるイソシアネート基と、化合物(II)との反応比率および、反応条件(温度、溶媒種、濃度等)等によって分子量、分子量分布の割合を変化させることができ、任意の条件で合成したものを用いることができる。合成法については、化合物(I)および化合物(II)に対し不活性な反応溶媒を用いて行うことが可能であるが、反応溶媒として酢酸エチルを用いた場合には、その処理工程が簡便であり、実用性に優れた合成方法である。
【0048】
本発明の可逆性感熱発色組成物は、加熱温度およびまたは加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。この基本的な発色・消色現像を説明する。図1 はこの組成物の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A )にある組成物を昇温していくと、溶融し始める温度T1で発色が起こり溶融発色状態(B )となる。溶融発色状態(B )から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固まった発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A )あるいは急冷発色状態(C )より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C )をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度T2で消色が起き(D からE )、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A )に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組み合わせにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0049】
本発明の組成物では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C )は顕色剤と発色剤が分子どうしで接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図1 に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0050】
本発明の組成物を可逆性感熱記録媒体として用いる場合、発色記録の形成はサーマルヘッドなどによりいったん溶融混合する温度に加熱し、急冷すればよい。また、消色は加熱状態から徐冷する方法と発色温度よりやや低い温度に加熱する方法の二つである。しかし、これらは両者が相分離したり、少なくとも一方が結晶化する温度に一時的に保持するという意味で同じである。発色状態の形成で急冷するのは、この相分離温度または結晶化温度に保持しないようにするためである。ここにおける急冷と徐冷はひとつの組成物に対して相対的なものであり、その境界は発色剤と顕色剤の組み合わせにより変化する。
【0051】
組成物中の発色剤と顕色剤の割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で発色剤1 に対し顕色剤が0 .1 〜20 の範囲であり、好ましくは0 .2 〜10 の範囲である、この範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。また、本発明の消色促進剤の割合は、顕色剤に対し0.1質量%から300質量%が好ましく、より好ましくは3質量%から100質量%が好ましい。
【0052】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、支持体上に前記の組成物を主成分として含む記録層を設けたものである。支持体としては紙、樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、記録層を保持できるものであればよい。
記録層は本発明の組成物が存在していればどのようなものでもよいが、一般的にはバインダー樹脂中に発色剤、顕色剤、消色促進剤が樹脂中に溶解していたり、細かく均一に分散した状態のものが用いられる。発色剤、顕色剤および消色促進剤は個々に粒子を形成していてもよいが、より好ましくは複合された粒子として分散された状態のものである。これは発色剤、顕色剤、消色促進剤をいったん溶融したり溶解することによって達成できる。このような記録層の形成は、各材料をそれぞれ溶剤中で分散溶解したのち混合した液、あるいは各材料を混合して溶剤中で分散または溶解した液を支持体上に塗布し、乾燥することによって行われる。発色剤と顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0053】
本発明の可逆性感熱記録媒体には、必要に応じて記録層の塗布特性やさらに発色消色特性を改善したり制御するための添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、例えば分散剤、界面活性剤、導電剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤などがある。
【0054】
記録層の形成に用いられるバインダー樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類などがある。これらのバインダー樹脂の役割は、組成物の各材料が記録消去の熱印加によって片寄ることなく均一に分散した状態を保つことにある。したがって、バインダー樹脂には耐熱性の高い樹脂を用いることが好ましい。特に、安定した発色消去の繰り返し性を向上させる目的で、架橋状態にある樹脂を記録層中に含有させることが好ましい。例えば熱、紫外線、電子線などでバインダー樹脂を架橋させてもよい。
【0055】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、基本的に支持体上に上記の記録層が設けられたものであるが、記録媒体としての特性を向上するため、保護層、接着層、中間層、アンダーコート層、バックコート層などを設けることができる。
サーマルヘッドを用いた印字では熱と圧力のため記録層の表面が変形し、いわゆる打痕ができる場合がある。これを防止するため表面に保護層を設けることが好ましい。保護層には、ポリビニルアルコール、スチレン無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂のほか、紫外線硬化樹脂、および電子線硬化樹脂などが使用できる。また、保護層中には無機または有機の紫外線吸収剤などの添加剤を含有させることができる。
【0056】
記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層中の添加剤の記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることも好ましい。また、記録層の上に設置される保護層、中間層には酸素透過性の低い樹脂を用いることが好ましい。記録層中の発色剤および顕色剤の酸化を防止または低減することが可能になる。
【0057】
また、印加した熱を有効に利用するため支持体と記録層の間に断熱性のアンダーコート層を設けることができる。断熱層は有機または無機の微小中空体粒子をバインダー樹脂を用いて塗布することにより形成できる。支持体と記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的としたアンダーコート層を設けることもできる。
中間層、アンダーコート層には、前記の記録層用の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。また、保護層、中間層、記録層およびアンダーコート層には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどのフィラーを含有させることができる。その他、滑剤、界面活性剤分散剤などを含有させることもできる。支持体の滑性、搬送性を向上させ、或いはカールを防止するために支持体の反対側にバックコート層を設けることもできる。
【0058】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて発色画像を形成させるためには、いったん発色温度以上に加熱したのち急冷されるようにすればよい。具体的には、たとえばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや低い消色温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなり、徐冷となるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラ、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱してもよい。記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。もちろん、熱ローラ、熱スタンプ、加熱バー等によって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0059】
本発明の可逆性感熱記録媒体をシート状に加工し、前記発色させうる加熱方法を設けたプリンターにより、コンピューター等からの情報を出力した表示メディア(ハードコピー)として使用することが可能である。さらに、この表示情報を前記消色させうる加熱手段により、消去可能であるため、本発明の可逆性感熱記録媒体を何度でも再利用できる。また、前記消去加熱手段と発色加熱手段をともに設けたプリンターを用いることにより、前回の出力を消去しながら新たな情報の出力を同じメディアに表示することが可能である。さらには、サーマルヘッドが組み込まれたプリンターにより、全面に少なくとも消去可能な印加エネルギーを与え、新たな情報を印字する部分に発色させうる印加エネルギーを加える、いわゆるオーバーライトにより、容易に情報の書換が可能となる。
【0060】
本発明の可逆性感熱記録組成物からなる可逆性感熱記録部と、情報記憶部の両方を同一のカードに設けることができる。これにより、情報記憶部に記憶された情報の一部を記録層(可逆性感熱記録層)に表示することにより、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを見るだけで情報を確認することができ、利便性が向上する。情報記憶部は必要な情報を記憶できるものなら何でもよいが、磁気記録、IC、光メモリが好ましい。磁気記録層としては通常用いられる酸化鉄、バリウムフェライト等と塩化ビニル系やウレタン系或いはナイロン系樹脂等を用い、支持体に塗工形成されるか、または蒸着、スパッタリング等の方法により樹脂を用いず形成される。磁気記憶部は支持体の可逆性感熱記録層の反対面に設けてもよいし、支持体と可逆性感熱記録層の間、可逆性感熱記録層上の一部に設けてもよい。また、表示に用いる可逆感熱材料をバーコード、2次元コード等により記憶部に用いてもよい。これらの中では磁気記録、ICが更に好ましい。
【0061】
本発明の可逆感熱記録媒体では、支持体の可逆感熱記録層形成面の反対面に接着剤層または粘着剤層を設けて可逆性感熱記録ラベルとすることができる。接着剤層または粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。具体例としてはユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
接着剤層または粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層または粘着剤層を設けることにより、可逆性感熱記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩化ビニル製カードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層または粘着剤層を設けた可逆感熱記録ラベルは、前述の磁気付塩化ビニルカードだけでなく、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。また本発明の可逆性感熱記録媒体は、表面および/または裏面の少なくとも一部に印刷部分を有しているのも好ましい形態である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中の「部」および「%」はいずれも質量を基準とするものである。
(実施例1)
下記組成物を乳鉢で粉砕混合した。
1) 2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部
2) 下記構造の顕色剤 3部
【0064】
【化22】

【0065】
3) 日本ポリウレタン製コロネート2030とヘキシルアミンから合成されたオリゴマー 1部
(反応比率(モル比):日本ポリウレタン製コロネート2030:ヘキシルアミン=3
:5)
上記混合物の適当量を厚さ1 .2mm のガラス板上にのせて、ホットプレート上で200 ℃に加熱、混融した。続いて、この混融混合物の上からカバーグラスをかぶせて融液を一様な厚さに広げ、すぐにガラス板ごと全体を用意しておいた氷水中に沈めて急冷した。降温後、すぐに取り出し付着した水を除き、薄膜状の黒色に発色した本発明の組成物を得た。次に、上記の発色状態の組成物試料を110 ℃に加熱したホットプレート上に置くと瞬時に消色した。再び、この消色した組成物試料を200 ℃に加熱すると黒色を呈した。このことから、本発明の組成物は発色、消色の繰り返し特性を有することが確認された。
【0066】
(実施例2)
[記録層の作製]
1) 2−アリニノ−3-メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
2) 下記構造の顕色剤 8部
【0067】
【化23】

【0068】
3) 日本ポリウレタン製コロネートHXとドデシルアミンから合成されたオリゴマー 3部
(反応比率(モル比):日本ポリウレタン製コロネートHX:ドデシルアミン=4:6)
4) アクリルポリオール樹脂の15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 150部
【0069】
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型メキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調整した。この記録層塗布液を、厚さ188μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃で2分間乾燥したのち、60℃で24時間加熱して、膜厚約8μmの記録層を設けた。
【0070】
[保護層の作製]
1) ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂(大日本インキ社製C7-157) 15部
2) 酢酸エチル 85部
【0071】
上記組成物を、良く攪拌し保護層塗布液を調整した。この塗布液を、上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗工し90℃で1分間乾燥させたのち、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚約3μmの保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0072】
(実施例3)
実施例2において、消色促進剤として、日本ポリウレタン製コロネートHXとドデシルアミンから合成されたオリゴマーの代わりに、住化バイエルウレタン製デスモジュールZ−4470とヘキサデシルアミンから合成されるオリゴマーを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様にして、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。なお、反応比率(モル比)は、住化バイエルウレタン製デスモジュールZ−4470:ヘキサデシルアミン=1:3である。
【0073】
(実施例4)
実施例2において、消色促進剤として、日本ポリウレタン製コロネートHXとドデシルアミンから合成されたオリゴマーの代わりに、日本ポリウレタン製コロネートHXとオクタデシルアミンから合成されるオリゴマーを用いた以外は、実施例2に記載の方法と同様にして、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。なお、反応比率(モル比)は、日本ポリウレタン製コロネートHX:オクタデシルアミン=4:6である。
【0074】
(比較例1)
実施例2において、消色促進剤を用いなかった以外は、実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0075】
(比較例2)
実施例2において、消色促進剤の代わりに、N −(2 −モルホリノエチル)カルバミド酸ヘキサデシルを用いた以外は実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0076】
(比較例3)
実施例2において、消色促進剤の代わりに、N −(4 −ピリジル)−N ’−n −オクタデシル尿素を用いた以外は実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0077】
上記のように作製した可逆性記録媒体を、大倉電機社製感熱印字装置にて、電圧13 .3V 、パルス1 .2msec で印字し、得られた画像をマクベス濃度計RD914 で測定した。次にこの発色画像のあるサンプルを幅約2mm のセラミックヒーター(表面温度110 ℃)の表面を30mm /sec の速さで接触させ消去し、画像部の消去した部分の濃度および地肌部の濃度をマクベス濃度計で測定し、以下に示す計算式から消し残り濃度を求めた。
消し残り=(画像部の消去後の濃度)−(地肌濃度)
以上の結果を下記表1に示す。
また、発色画像のあるサンプルを40℃の恒温槽に24 時間保管した後、保管後の画像部および地肌部の濃度をマクベス濃度計で測定した。これにより、40℃環境下における画像部の安定性を画像残存率として、下記に示す式より算出した。この結果を表1に示す。
画像残存率(%)=[{(保存後画像濃度)−(保存後地肌濃度)}/{(保存後画像濃度)−(保存後地肌濃度)}]×100
【0078】
【表1】

【0079】
(実施例5)
[情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体の作製例]
実施例4において、調整した記録層塗布液を大日本インキ工業製磁気原反(メモディックスDS-1711-1040:188μm厚の白色PET上に磁気記録層を塗工したもの)に塗布した以外は実施例4と同様にして、情報記憶部を有する可逆性感熱記録媒体を作製した。
次いで、この情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体について、実施例1と同様にして画像形成と消去を10回繰り返した。10回繰り返しても、発色濃度は1回目と同じであり、また10回後の消し残り濃度も0.01であった。
【0080】
(実施例6)
[接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体の作製例]
実施例4において、支持体として厚さ188μmのポリエステルフィルムの代わりに、厚さ38μmの透明ポリエステルフィルムを用いた以外は実施例4と同様にして可逆性記録媒体を作製し、この記録層塗布面の裏面に、約5μmのアクリル系粘着剤層を設け、接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体を作製した。この接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体を、厚さ188μmの白色ポリエステルフィルム上に貼り付けた。
次いで、この情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体について、実施例1と同様にして画像形成と消去を10回繰り返した。10回繰り返しても、発色濃度は1回目と同じであり、また10回後の消し残り濃度も0.01であった。
【0081】
(実施例7)
実施例1において、オリゴマーとして日本ポリウレタン製コロネート2067とヘキシルアミンから合成されたオリゴマー1部(反応比率(モル比):日本ポリウレタン製コロネート2067:ヘキシルアミン=1:2)を用いたこと以外は、実施例1を繰り返した。得られた混合物の適当量を厚さ1 .2mm のガラス板上にのせて、ホットプレート上で200 ℃に加熱、混融した。続いて、この混融混合物の上からカバーグラスをかぶせて融液を一様な厚さに広げ、すぐにガラス板ごと全体を用意しておいた氷水中に沈めて急冷した。降温後、すぐに取り出し付着した水を除き、薄膜状の黒色に発色した本発明の組成物を得た。次に、上記の発色状態の組成物試料を110 ℃に加熱したホットプレート上に置くと瞬時に消色した。再び、この消色した組成物試料を200 ℃に加熱すると黒色を呈した。このことから、本発明の組成物は発色、消色の繰り返し特性を有することが確認された。
【0082】
(実施例8)
実施例2において、オリゴマーとして日本ポリウレタン製コロネートHLとドデシルアミンから合成されたオリゴマー3部(反応比率(モル比):日本ポリウレタン製コロネートHL:ドデシルアミン=4:6)を用いたこと以外は、実施例2を繰り返した。
【0083】
(実施例9)
実施例8において、消色促進剤として、日本ポリウレタン製コロネートHLとドデシルアミンから合成されたオリゴマーの代わりに、日本ポリウレタン製コロネートLとヘキサデシルアミンから合成されるオリゴマーを用いた以外は、実施例8に記載の方法と同様にして、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。なお、反応比率(モル比)は、日本ポリウレタン製コロネートHL:ドデシルアミン=3:5である。
【0084】
(実施例10)
実施例8において、消色促進剤として、日本ポリウレタン製コロネートHLとドデシルアミンから合成されたオリゴマーの代わりに、武田薬品工業製タケネートD110Nとオクタデシルアミンから合成されるオリゴマーを用いた以外は、実施例8に記載の方法と同様にして、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。なお、反応比率(モル比)は、武田薬品工業製タケネートD110N:オクタデシルアミン=3:5である。
【0085】
(比較例4)
実施例8において、消色促進剤を用いなかった以外は、実施例8と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0086】
(比較例5)
実施例8において、消色促進剤の代わりに、N −(2 −モルホリノエチル)カルバミド酸ヘキサデシルを用いた以外は実施例8と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0087】
(比較例6)
実施例8において、消色促進剤の代わりに、N −(4 −ピリジル)−N ’−n −オクタデシル尿素を用いた以外は実施例8と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0088】
得られた可逆性感熱記録媒体について、前記と同様に発色濃度、消し残り濃度および画像残存率を求めた。結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
(実施例11)
[情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体の作製例]
実施例10において、調整した記録層塗布液を大日本インキ工業製磁気原反(メモディックスDS-1711-1040:188μm厚の白色PET上に磁気記録層を塗工したもの)に塗布した以外は実施例10と同様にして、情報記憶部を有する可逆性感熱記録媒体を作製した。
次いで、この情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体について、実施例7と同様にして画像形成と消去を10回繰り返した。10回繰り返しても、発色濃度は1回目と同じであり、また10回後の消し残り濃度も0.01であった。
【0091】
(実施例12)
[接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体の作製例]
実施例10において、支持体として厚さ188μmのポリエステルフィルムの代わりに、厚さ38μmの透明ポリエステルフィルムを用いた以外は実施例10と同様にして可逆性記録媒体を作製し、この記録層塗布面の裏面に、約5μmのアクリル系粘着剤層を設け、接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体を作製した。この接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体を、厚さ188μmの白色ポリエステルフィルム上に貼り付けた。
次いで、この情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体について、実施例7と同様にして画像形成と消去を10回繰り返した。10回繰り返しても、発色濃度は1回目と同じであり、また10回後の消し残り濃度も0.01であった。
【0092】
本発明によれば、発色画像の安定性と高い消色性の両立を実現する可逆性感熱発色組成物およびこれを用いた可逆性感熱記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の可逆性感熱組成物および可逆性感熱記録媒体の発色・消色特性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱発色組成物において、該可逆性感熱発色組成物中に消色促進剤として用いる化合物が下記一般式(I)で表される3価以上の多価イソシアネート化合物と下記一般式(II)で表される脂肪族アミンとの反応によって得られるオリゴマー組成物であることを特徴とする可逆性感熱発色組成物。
【化1】


【化2】


(式中Xは3価以上の基、aは3以上の整数を示す。nは5から21の整数である。)
【請求項2】
前記一般式(I)におけるXが下記一般式(III)で表される3価の構造であることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱発色組成物。
【化3】


(式中Yは、2価の基を示す。)
【請求項3】
前記一般式(I)におけるXが下記一般式(IV)で表される3価の構造であることを特徴とする請求項1に記載の可逆性感熱発色組成物。
【化4】


(式中Yは、2価の基を示す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の可逆性感熱発色組成物を主成分として含有する記録層を支持体上に設けたことを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
前記記録層上に無機または有機の紫外線吸収剤を含有する層を設けたことを特徴とする請求項4に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
前記可逆性感熱記録媒体が、シート状またはカード状に加工されていることを特徴とする請求項4または5に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
前記可逆性感熱記録媒体が、情報記憶部を有していることを特徴とする請求項6に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項8】
前記情報記憶部が、磁気記録層および/またはICであることを特徴とする請求項7に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項9】
前記可逆性感熱記録媒体が、接着剤層または粘着層を有することを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項10】
表面および/または裏面の少なくとも一部に印刷部分を有することを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項11】
前記可逆性感熱記録媒体が、発色開始温度よりも低い温度に加熱して消色可能であることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−231782(P2006−231782A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51533(P2005−51533)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】