説明

可逆性感熱記録媒体及び可逆性感熱記録部材

【課題】耐クラック性、耐熱性、及び耐久性のすべてに優れた可逆性感熱記録媒体及び該可逆性感熱記録媒体を有する可逆性感熱記録部材の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上に保護層とを有する可逆性感熱記録媒体であって、前記可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含有し、前記保護層がポリエステルアクリレート樹脂を含有し、該保護層のガラス転移温度が230℃以上であり、かつ伸度が10%以上である可逆性感熱記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感熱記録媒体及び該可逆性感熱記録媒体を有する可逆性感熱記録部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子供与性呈色性化合物(以下、「発色剤又はロイコ染料」と称することもある)と、電子受容性化合物(以下、「顕色剤」と称することもある)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、OA化の進展と共にファクシミリ、ワードプロセッサ、科学計測機等の出力用紙として、また最近ではプリペイドカード、ポイントカードなどの磁気感熱カードとしても広く使用されている。このような実用化されている感熱記録媒体は、環境問題上、リサイクル、使用量の減量化などの見直しが迫られているが、不可逆的な発色であるため、一度記録した画像を消去して繰り返し使用することはできないし、新しい情報は画像が記録されていない部分に追記できる程度であり記録可能な部分の面積は限られている。そのため、記録する情報量を減らしたり、記録エリアがなくなった時点でカードを作り直しているのが実状である。そこで、近年のゴミ問題、森林破壊問題を背景として、何度でも書き換え可能な可逆性感熱記録媒体の開発が望まれている。
【0003】
このような可逆性感熱記録媒体においては、支持体と可逆性感熱記録層の間にアンダー層を設けるとクラックが発生しやすいという課題があった。このため、可撓性の高い紫外線硬化樹脂を用い、tanδピーク温度又はそれに相当する動的緩和現象温度が155℃以下である保護層(オーバーコート層)を有する可逆性感熱記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案では、耐熱性が低いため、耐久性が低下する。また、サーマルヘッド等の熱源にカスが付着してしまうという問題がある。
そこで、本願出願人は、先に、支持体と、該支持体上に感熱記録層と、該感熱記録層上に保護層とを有し、前記感熱記録層が、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含有し、温度に依存して色調が可逆的に変化し、前記保護層が、ペンタエリスリトール基を有するアクリレート化合物及びジペンタエリスリトール基を有するアクリレート化合物から選択される2種のアクリレート化合物を含む組成物の重合物を含有する可逆性感熱記録媒体について提案している(特許文献2参照)。
しかしながら、この提案においても、耐久性、耐クラック性、及び耐ヘッドカス性のすべてについて十分満足できる性能を有するものではなく、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐クラック性、耐熱性(特に、耐ヘッドカス性)、及び耐久性(特に、発色及び消色の繰り返しを行っても発色濃度の低下がない)のすべてに優れた可逆性感熱記録媒体及び該可逆性感熱記録媒体を有する可逆性感熱記録部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、可逆性感熱記録媒体の最表面の保護層がポリエステルアクリレート樹脂を含有し、該保護層のガラス転移温度が230℃以上であり、かつ伸度が10%以上であることにより、可撓性が向上し、耐久性、耐クラック性、及び耐ヘッドカス性が向上することを知見した。更に好ましくは、前記保護層中に球状シリコーン粒子を含有することにより、該球状シリコーン粒子は前記ポリエステルアクリレート樹脂との相溶性が低いことから、球状シリコーン粒子を覆わず、表面に露出するため、摩擦が低くなり、ヘッドカスの発生を効果的に防止できることを知見した。
【0006】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の可逆性感熱記録媒体は、支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上に保護層とを有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含有し、
前記保護層がポリエステルアクリレート樹脂を含有し、該保護層のガラス転移温度が230℃以上であり、かつ伸度が10%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、耐クラック性、耐ヘッドカス性、及び耐久性のすべてに優れた可逆性感熱記録媒体、及び該可逆性感熱記録媒体を有する可逆性感熱記録部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一例を示す概略部分断面図である。
【図2】図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体の他の一例を示す概略部分断面図である。
【図3】図3は、本発明の可逆性感熱記録媒体における金属化合物層の断面図である。
【図4】図4は、本発明の可逆性感熱記録媒体の発色消色の原理を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の可逆性感熱記録媒体の発色方法を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明の可逆性感熱記録媒体の消色方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(可逆性感熱記録媒体)
本発明の可逆性感熱記録媒体は、支持体と、該支持体上に、可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上に、保護層とを有してなり、アンダー層、金属化合物含有層(ガスバリア層)、熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)、アンカー層、更に必要に応じて、その他の層を有してなる。
【0010】
<保護層>
前記保護層は、前記可逆性感熱記録媒体の最表面に設けられた層であり、ポリエステルアクリレート樹脂を含有し、粒子、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0011】
−ポリエステルアクリレート樹脂−
前記ポリエステルアクリレート樹脂は、多塩基酸と多価アルコールとが脱水縮合してなるポリエステルの2個以上のアルコール残基にアクリル酸がエステル結合したポリマーであり、例えば、下記一般式(1)で表されるポリエステルアクリレート樹脂が好ましい。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Aはアクリル酸の残基を表し、Xは多価アルコールの残基を表し、Yは多塩基酸の残基を表す。nは繰り返し数を表し、1以上の整数であることが好ましい。
【0012】
前記Aのアクリル酸の残基におけるアクリル酸としては、例えば、アクリル酸、ジアクリル酸、トリメチロールプロパントリアクリル酸、グリセリントリアクリル酸、ペンタエリスリトールテトラアクリル酸などが挙げられる。
【0013】
前記Yの多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、リノレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
前記Xの多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールオキシエチルエーテル、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記ポリエステルアクリレート樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、M9050、M8060、M8030、M7100、M8100、M8530、M8560(いずれも、東亞合成株式会社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ポリエステルアクリレート樹脂の前記保護層における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量%〜95質量%が好ましい。
【0017】
−粒子−
前記粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、粒状、板状、針状、不定形などが挙げられる。これらの中でも、球状粒子が摩擦係数が低く、ヘッドカスが生じにくい点から特に好ましい。
前記球状には、真球状乃至真球状から多少変形した略球状までも含む。
【0018】
前記粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機粒子、有機粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、シリカ、タルク、マイカなどが挙げられる。
前記有機粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン、ポリスチレン、ポリスチレン・イソプレン、スチレンビニルベンゼン等のスチレン系樹脂;塩化ビニリデンアクリル、アクリルウレタン、エチレンアクリル等のアクリル系樹脂;ポリエチレン樹脂;ベンゾグアナミンホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
【0019】
前記粒子の中でも、シリカ粒子、シリコーン粒子が好ましく、耐ヘッドカス性の点から、シリコーン粒子が特に好ましい。前記シリコーン粒子は、前記ポリエステルアクリレート樹脂との相溶性が低いため、前記ポリエステルアクリレート樹脂が前記シリコーン粒子表面を覆わないので、シリコーン粒子が表面上に露出して、サーマルヘッド等の熱源に樹脂起因のカスが発生しにくくなる。
前記粒子の前記保護層における含有量は、前記ポリエステルアクリレート樹脂100質量部に対し、1質量部〜30質量部が好ましい。
【0020】
前記保護層には、更に必要に応じて、紫外線吸収剤、滑剤などを添加することができる。
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サリシレート構造を有する化合物、シアノアクリレート構造を有する化合物、ベンゾトリアゾール構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、などが挙げられる。
前記滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類、などが挙げられる。
【0021】
前記保護層は、特定のポリエステルアクリレート樹脂、粒子、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる保護層塗布液を塗布し、乾燥させることで形成することができる。
前記保護層塗布液の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバー塗工法、エアナイフ塗工法、ブレード塗工法、ロッドブレード塗工法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、エクストルージョン塗布法などが挙げられる。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.3μm〜10μmがより好ましい。
【0022】
前記保護層のガラス転移温度は、230℃以上であり、250℃以上が好ましい。前記ガラス転移温度が、230℃未満であると、耐熱性の低下により耐久性が悪化し、耐ヘッドカス性の低下が生じることがある。
ここで、前記ガラス転移温度は、例えば、剛体振り子試験機により測定することができる。
【0023】
前記保護層の伸度は、10%以上であり、15%以上が好ましい。前記伸度が、10%未満であると、耐クラック性が低下することがある。
ここで、前記伸度は、例えば、PETフィルム上に保護層を形成したサンプルを用いて、引っ張り試験機により、下記式から求めることができる。
伸度(%)=〔(クラック発生時のサンプルの長さ−元のサンプルの長さ)/元のサンプルの長さ〕×100
【0024】
前記保護層の摩擦抵抗値は、1.3以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。前記摩擦抵抗値が、1.3を超えると、耐ヘッドカス性が低下してしまうことがある。
ここで、前記摩擦抵抗値は、例えば、PETフィルム上に保護層を形成したサンプルを用いて、摩擦磨耗解析装置により測定することができる。
【0025】
<アンダー層>
前記アンダー層は、前記可逆性感熱記録層に熱を加えて、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)、前記電子受容性化合物(顕色剤)を溶融させる際に、前記支持体側への熱の伝達を防ぎ、前記可逆性感熱記録層の加熱効率を高めるとともに、前記支持体の温度上昇による材料などへの悪影響を避けることができる。
【0026】
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0027】
前記中空粒子の最大粒子径(D100)は、5μm〜10μmが好ましく、6μm〜9μmがより好ましい。前記最大粒子径(D100)が、10μmを超えると、表面凹凸性が大きくなりベタ画像を印字した場合に白抜けが発生しやすい。一方、前記最大粒子径(D100)が5μm未満であると、中空粒子の中空率70%以上を確保することが困難になりその結果熱感度が低くなる。また、発色濃度の高濃度化のみを考えた場合、中空率は60%以上あれば効果を発現することは可能であるが、可逆性感熱記録媒体は消去過程を有しており、特にサーマルヘッドを用いた消去方式では、熱ローラ方式と比べて消去に供するエネルギーが極端に小さくなるため、印加エネルギーの有効活用の程度がより高くする必要がある。そこで、サーマルヘッドを用いた消去方式での消去濃度、消去エネルギー領域の拡大を確保するためアンダー層に用いる中空粒子の中空率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
【0028】
前記中空粒子の50%頻度の粒子径(D50)と最大粒子径(D100)の比(D100/D50)は2〜3が好ましく、2.2〜2.9がより好ましい。前記比(D100/D50)が、3を超えると、粒子径分布がブロード状態にあることを示しており、粒子径1μm以下の微小粒子の割合が多くなり、これらを用いたアンダー層は層内の中空粒子の分布不均一になり感度が低下する現象を引き起こすことがある。一方、前記比(D100/D50)が、2未満であると、非常にシャープな粒子径分布を有することになり、中空粒子の合成条件の点から実現が困難である。
【0029】
ここで、前記中空粒子の中空率は、中空粒子の粒径を測定し、その後計算により中空率を算出することができ、例えば、中空粒子をエポキシ樹脂によって包埋し、これをミクロトームで切り出し、走査電子顕微鏡(SEM)にて切断面を観察して、中空粒子の外径と内径を測定し、下記数式1から求めることができる。
<数式1>
中空率(%)=(中空粒子の内径)/(中空粒子の外径)×100
【0030】
また、前記中空粒子の粒径及び粒度分布は、例えばレーザー回折式粒径分布測定装置(堀場製作所製、LA−900)を用いて測定することができる。メジアン径(D50)は50%頻度の粒径であり、最大粒子径(D100)は分布の最大値である。
【0031】
前記中空粒子は、シェル材として架橋構造を有するビニル重合体から形成されるものが好ましい。該架橋構造を有するビニル重合体は、ビニルモノマーの少なくとも1種と、架橋モノマーの少なくとも1種を含む。
前記ビニルモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、イタコン酸等のカルボン酸を分子内に有するモノマー;アクリル酸マグネシウム、アクリル酸カルシウム、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウム、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸亜鉛等のカルボン酸金属塩;分子内にカルボン酸と反応性の基を有しているN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、マグネシウムモノアクリレート、ジンクモノアクリレート等;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、メチルメタアクリレート、t−ブチルメタアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン、N−フェニルアメイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミドなどが挙げられる。
【0032】
前記架橋モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート3−アクロイルオキシグリセリンモノアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、フタル酸ジアリール、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
これらの中でも、アクリロニトリル及びメタアクリロニトリルの少なくともいずれかをモノマー単位とする共重合体が特に好ましい。
【0033】
前記中空粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば芯物質としての揮発性物質を内包し、外殻(シェル)が重合体からなるカプセル状態の重合体粒子を作り、この重合体を加熱発泡させる方法などが挙げられる。
【0034】
前記中空粒子(シェル)のガラス転移温度(Tg)は、45℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましい。前記ガラス転移温度が45℃未満であると、作製した可逆性感熱記録媒体を塗工巻き取り時にブロッキングが発生したり、また、容易に中空粒子がつぶれてしまい、その機能を発現できないことがある。
【0035】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0036】
前記バインダー樹脂としては、疎水性樹脂、紫外線硬化樹脂、又は水系ポリマーを用いることができる。
前記疎水性樹脂としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリルエステル共重合体のラテックス;酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリルエステル共重合体、アクリルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョンなどが挙げられる。
前記紫外線硬化樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系水溶性紫外線硬化樹脂、エポキシアクリレート系水溶性紫外線硬化樹脂、アルコキシアクリレート系紫外線硬化樹脂、ポリウレタンアクリレート系紫外線硬化エマルジョン、アクリル系モノマー、ウレタンアクリル系オリゴマー、エーテル系ウレタンアクリレートオリゴマー、エステル系ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0037】
前記水系ポリマーとしては、水溶性ポリマーと水分散性ポリマーとがある。前記水溶性ポリマーとしては、例えば、完全けん化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール等の各種変性ポリビニルアルコール;澱粉又はその誘導体;メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。
前記水分散性ポリマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリルエステル共重合体のラテックス、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリルエステル共重合体、アクリルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のエマルジョンなどが挙げられる。
【0038】
前記バインダー樹脂の含有量は、前記中空粒子100質量部に対して100質量部〜300質量部が好ましく、100質量部〜200質量部がより好ましい。前記含有量が、100質量部未満であると、中空粒子の空隙が残るために発色濃度の低下を引き起こすことがあり、300質量部を超えると、アンダー層内の中空粒子の割合が低下するためアンダー層の断熱性が低下して感度低下を引き起こすことがある。
【0039】
前記アンダー層には、ヘッドマッチング性向上を図るため、アルカリ増粘性結着剤を添加することが好ましい。該アルカリ増粘性結着剤とは、アルカリ条件下で増粘する結着剤を意味する。
前記アルカリ増粘性結着剤は、単独で用いることも可能であるが、結着剤成分を分散粒子として安定に存在させるため、例えば不飽和カルボン酸の共重合体であるカルボキシル化ラテックス等を用いることが好ましい。該カルボキシル化ラテックスはpHを高くすると粒子表面の高カルボキシル化ポリマーが水中に溶解していくために増粘し、このため、結着剤の増粘性を更に向上させることができる。前記アンダー層塗布液をアルカリ下に保つため、pH調整剤が必要となるが、該pH調整剤としては、例えば、NH水などが用いられる。
前記アルカリ増粘性結着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スチレン−ブタジエン共重合体を主成分としたエマルジョンラテックスが好適に挙げられる。
前記アルカリ増粘性結着剤は、増粘作用の他に中空粒子同士を強固に結着させるため、前記増粘剤を用いた時に較べてサーマルヘッドとのマッチング性が著しく改善される。
前記アルカリ増粘性結着剤の含有量は、前記中空粒子100質量部に対し1質量部〜80質量部が好ましく、5質量部〜50質量部がより好ましい。
【0040】
前記アンダー層には、前記中空粒子及びバインダー樹脂と共に、更に必要に応じてこの種の感熱記録媒体に慣用される補助添加成分、例えば、フィラー、熱可融性成分、界面活性剤等を使用することができる。前記アンダー層塗布液を均一に、かつ高速に塗工するためには中空粒子の20質量%水分散液の液温20℃における粘度が200mPa・s以下が好ましい。前記粘度が200mPa・sを超えると、アンダー層塗布液の粘度が高くなり、塗工ムラが発生することがある。
前記アンダー層塗布液の塗布方法としては、例えば、ワイヤーバー塗工法、エアナイフ塗工法、ブレード塗工法、ロッドブレード塗工法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、エクストルージョン塗布法などが挙げられる。
なお、支持体上に形成されたアンダー層の表面をより平滑にするためにアンダー層を形成した後、キャレンダー処理することにより表面を平滑にしてもよい。
【0041】
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、3μm〜50μmが好ましく、5μm〜30μmがより好ましい。
【0042】
<可逆性感熱記録層>
前記可逆性感熱記録層(以下、「感熱記録層」と略称することがある)としては、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含む可逆性感熱組成物によるものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記可逆性感熱記録層は、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより発色状態が変化する電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との混合物を含む組成物からなっている。前記可逆性感熱記録媒体は、発色、消色が可逆的であり、温度により発色したり消色したりできる。前記組成物には、バインダーである樹脂を含んでおり、樹脂の溶融、固化により、発色剤の発色、消色の変化を起こさせたり、凍結したりしている。
【0044】
<<電子供与性呈色性化合物>>
前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無色又は淡色の染料前駆体(ロイコ染料)、フルオラン系化合物、トリフェニルメタンフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物などが挙げられる。
【0045】
前記フルオラン系化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオランなどが挙げられる。
【0046】
前記アザフタリド系化合物としては、例えば、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリドなどが挙げられる。
【0047】
前記ロイコ染料としては、例えば、2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−クロロアニリノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−トルイジノ)フルオランなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記ロイコ染料の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05μm〜0.7μmが好ましく、0.1μm〜0.5μmがより好ましく、0.1μm〜0.3μmが特に好ましい。前記ロイコ染料の平均粒子径が、0.05μm〜0.7μmであることで、可逆性感熱記録層の発色特性の向上が図られる。前記ロイコ染料は、必要に応じて、分散剤及び/又は界面活性剤を加えることにより、平均粒子径を0.05μm〜0.7μmに整えながら分散させることができる。前記分散剤及び/又は前記界面活性剤は、ロイコ染料に対して質量基準で5質量%〜20質量%含有させればよい。なお、分散装置としては、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ジェットミル、を用いることができる。微粒子化及び分散は、ボール等のメディアを用いた方式が好ましく、最初から直径が0.5mm以下のジルコニアメディアを用いるか、又は、直径が0.5mm以上1.0mm以下のジルコニアメディアを用いて粗粉砕し、次いで0.5mm以下の径のジルコニアメディアを用いて分散することにより微粒子化できる。
ここで、前記ロイコ染料の平均粒子径は、例えば、レーザ解析・散乱法(例えば、マイクロトラックHRA9320−X100型、堀場製作所製LA920型、レーゼンテックFBRM装置等)などで測定することができる。
【0049】
<<電子受容性化合物>>
前記電子受容性化合物(顕色剤)としては、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)を発色させる作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、フェノール化合物、メルカプト酢酸の金属塩、リン酸エステルなどが挙げられる。これらは、融点、顕色性能などを考慮して、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)との組み合わせで選択すればよい。
【0050】
前記電子受容性化合物(顕色剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、発色濃度、消去特性の点で、下記一般式(1)で表わされる化合物が好ましい。
【化2】

ただし、前記一般式(1)中、lは、0〜2の整数を表し、mは、0又は1の整数を表し、nは、1〜3の整数を表し、X及びYは、N原子又はO原子を含む2価の有機基を表す。
また、Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、Rは、炭素数1以上の脂肪族炭化水素基を表す。
前記一般式(1)において、脂肪族炭化水素基は、直鎖でもよいし、分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。脂肪族炭化水素基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられる。R、及びRの炭素数の和が7以下では発色の安定性、消色性が低下することがあるため、R、及びRの炭素数の和としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましい。
【0051】
前記脂肪族炭化水素基Rとしては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【化3】

なお、前記式中のq、q'、q”、q'”は、それぞれ、前記R、Rの炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH)q−が好ましい。
【0052】
前記脂肪族炭化水素基Rとしては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【化4】

なお、前記式中のq、q'、q”、q'”は前記と同じである。これらの中でも、−(CH)q−CHが好ましい。
【0053】
X、Yは、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、好ましくは、
【化5】

で表される基を少なくとも1個以上有する2価の基を表す。その例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0054】
【化6】

これらの中でも、以下に示すものが好ましい。
【0055】
【化7】

【0056】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【化8】

前記式中、rは2以上の整数を表し、sは1以上の整数を表す。
【0057】
前記電子受容性化合物(顕色剤)の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜2.5μmが好ましく、0.5μm〜2.0μmがより好ましい。前記電子受容性化合物(顕色剤)の平均粒子径が、0.1μm〜2.5μmであれば、前記可逆性感熱記録媒体用の前記電子受容性化合物(顕色剤)として使用した際に、発色特性を向上させることができる。更に、前記平均粒子径が前記より好ましい範囲内であると、前記発色特性向上効果の点で有利である。
【0058】
前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)とのモル比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:0.1〜1:20が好ましく、1:0.2〜1:10がより好ましい。前記電子受容性化合物(顕色剤)が少なくても、多くても、発色状態の濃度が低下して問題となることがある。前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
前記可逆性感熱記録層中の発色成分と樹脂とのモル比は、1:0.1〜1:10が好ましく、前記樹脂が少ないと可逆性感熱記録層の熱強度が不足し、前記樹脂が多い場合には発色濃度が低下してしまう。
【0059】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、ロイコ染料とともに、分散剤及び/又は界面活性剤を加えて、平均粒子径を0.05μm〜0.7μmの範囲に調整しながら、分散させることができる。分散剤及び/又は界面活性剤は、ロイコ染料に対して質量基準で5質量%以上20質量%以下含有させればよい。
前記分散に用いる分散機としては、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、高圧ジェットミルなどが挙げられる。微粒子化及び分散は、ボールなどのメディアを用いた方式が好ましく、平均粒子径が0.5mm以下のジルコニアメディアを用いるか、又は、平均粒子径が0.5mm以上1.0mm以下のジルコニアメディアを用いて粗粉砕し、次いで、0.5mm以下の径のジルコニアメディアを用いて分散することにより微粒子化できる。
ここで、前記電子受容性化合物(顕色剤)の平均粒子径は、例えば、レーザ解析・散乱法(例えば、マイクロトラックHRA9320−X100型、堀場製作所製LA920型、レーゼンテックFBRM装置等)などで測定することができる。
【0060】
<<可逆性感熱組成物>>
前記可逆性感熱組成物としては、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含むものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物がバインダー樹脂中に分散した組成物であり、必要に応じて、感熱記録層の塗布特性及び発色消色特性を改善したり、制御したりするための添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、例えば、制御剤、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤などがある。
【0061】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂は、前記可逆性感熱組成物における各材料が、記録消去の熱印加によっても片寄ることなく、均一に分散した状態を保つ機能を有する。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の高いバインダー樹脂、例えば、熱、紫外線、電子線、架橋剤などで架橋させたバインダー樹脂が好ましい。
【0062】
架橋前の前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基を持つ樹脂、架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合させた樹脂などが挙げられる。なお、前記バインダー樹脂は、これらの架橋前の樹脂と架橋剤との組合せにより得られる架橋樹脂に限定されるものではない。
【0063】
前記アクリルポリオール樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基モノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2−ヒドロキシブチルモノアクリレート(2−HBA)、1−ヒドロキシブチルモノアクリレート(1−HBA)などを用いたアクリルポリオール樹脂が挙げられる。これら水酸基モノマーの中でも、塗膜のワレ抵抗性、耐久性の点で、第1級水酸基を有する2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0064】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミン類、フェノール類、エポキシ化合物などが挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類(イソシアネート系化合物)が好ましい。
前記イソシアネート系化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知のイソシアネート単量体のウレタン変性体、アロファネート変性体、イソシアヌレート変性体、ビュレット変性体、カルボジイミド変性体、ブロックドイソシアネートなどの変性体などが挙げられる。前記変性体を形成するイソシアネート単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
【0065】
前記可逆性感熱組成物には、架橋促進剤を添加してもよい。前記架橋促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,4−ジアザ−ビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、有機すず化合物等の金属化合物などが挙げられる。また、前記架橋剤は、添加した全量が架橋反応をしていても、していなくてもよい。即ち、未反応架橋剤が存在していてもよい。この種の架橋反応は、経時的に進行するため、未反応の架橋剤が存在していることは、架橋反応が全く進行していないことを示すのではなく、未反応の架橋剤が検出されたとしても、架橋状態にある樹脂が存在しないということにはならない。また、前記ポリマーが架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法として、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるポリマーは、溶媒中に溶け出し溶質中には残らなくなるため、溶質中のポリマーの有無を分析すればよい。そこで、溶質中にポリマーの存在が確認できなければ、ポリマーは非架橋状態にあることがいえ、非架橋状態のポリマーと区別することができる。ここでは、これをゲル分率で表すことができる。
【0066】
前記ゲル分率とは、溶媒中で樹脂溶質が相互作用により独立運動性を喪失して集合し個化した状態(ゲル)を生じるときのそのゲルの生成比率をいう。前記バインダー樹脂のゲル分率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましく、80%以上がより特に好ましい。前記ゲル分率が、30%未満であると、繰り返し耐久性が低下することがある。前記ゲル分率を向上させるためには、前記バインダー樹脂中に、熱、UV、EB等によって硬化する硬化性樹脂を混合するか、樹脂自身を架橋すればよい。
【0067】
前記ゲル分率の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、支持体より膜を剥離してその膜の初期質量を測定し、その後に膜を400メッシュ金網に挾んで、架橋前の樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸してから真空乾燥して、乾燥後の質量を測定する方法などが挙げられる。
前記ゲル分率の計算は、下記式によって行う。
ゲル分率(%)=[乾燥後質量(g)/初期質量(g)]×100
【0068】
前記ゲル分率を前記計算で算出するときに、感熱記録層中の樹脂成分以外の有機低分子量物質粒子等の質量を除いて計算を行う。この際、予め有機低分子物質の質量が分からないときには、TEM、SEM等の断面観察により、単位面積あたりに占める面積比率と樹脂と有機低分子物質のそれぞれの比重により質量比率を求めて、有機低分子量物質の質量を算出して、ゲル分率値を算出すればよい。
【0069】
また、前記ゲル分率の測定の際に、支持体上に可逆性感熱記録層が設けられており、その上に保護層等の他の層が積層されている場合、支持体と可逆性感熱記録層の間に他の層がある場合には、上述したように、まず、TEM、SEM等の断面観察により可逆性感熱記録層及びその他の層の厚みを調べておき、その他の層の厚み分の表面を削り取り、可逆性感熱記録層表面を露出させると共に、可逆性感熱記録層を剥離して前記測定方法と同様にゲル分率測定を行えばよい。
【0070】
この方法において、可逆性感熱記録層上層に紫外線硬化樹脂等がある場合には、これらの層が混入するのを極力防ぐために、これらの層の厚み分を削ると共に可逆性感熱記録層表面も少し削りゲル分率値への影響を防ぐ必要がある。
【0071】
−制御剤−
前記制御剤(消色促進剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、発色濃度及び消去特性の点から、アミド基、ウレタン基、尿素基、ケトン基、ジアシルヒドラジド基等を部分構造として含有する化合物が好ましい。これらの中でも、アミド基、2級アミド基、ウレタン基を有する化合物がより好ましく、具体的な例として、以下のものが挙げられる。
【化9】

【0072】
【化10】

(式中、n、n'、n”、n'”、n””は、0〜21の整数を表す。ただし全てが5以下であることはない。)
【0073】
【化11】

【0074】
1123CONHC1225、C1531CONHC1633、C1735CONHC1837、C1735CONHC1835、C2141CONHC1837、C1531CONHC1837、C1735CONHCHHNOCC1735、C1123CONHCHHNOCC1123、C7H15CONHCHNOCC1735、C19CONHCHNOCC19、C1123CONHCHNOCC1123、C1735CONHCHNO
CC1735、(CHCHC1435CONHCHNOCC1435(CH、C2143CONHCHNOCC2143、C1735CONHC12HNOCC1735、C2143CONHC12HNOCC2143、C1733CONHCHHNOCC1733、C1733CONHCHNOCC1733、C2141CONHCHNOCC2141、C1733CONHC12HNOCC1733、C17NHCOCCONHC1837、C1021NHCOCCONHC1021、C1225NHCOCCONHC1225、C1837NHCOCCONHC1837、C2143NHOCCCONHC2143、C1837NHOCC12CONHC1837、C1835NHCOCCONHC1835、C1835NHCOC16CONHC1835、C1225OCONHC1837、C1327OCONHC1837、C1633OCONHC1837、C1837OCONHC1837、C2143OCONHC1837、C1225OCONHC1633、C1327OCONHC1633、C1633OCONHC1633、C1837OCONHC1633、C2143OCONHC1633、C1225OCONHC1429、C1327OCONHC1429、C1633OCONHC1429、C1837OCONHC1429、C2245OCONHC1429、C1225OCONHC1237、C1327OCONHC1237、C1633OCONHC1237、C1837OCONHC1237、C2143OCONHC1237、C2245OCONHC1837、C1837NHCOOCOCONHC1837、C1837NHCOOCOCONHC1837、C1837NHCOOCOCONHC1837、C1837NHCOOC12OCONHC1837、C1837NHCOOC16OCONHC1837、C1837NHCOOCOCOCONHC1837、C1837NHCOOCOCOCONHC1837、C1837NHCOOC1224OCONHC1837、C1837NHCOOCOCOCOCONHC1837、C1633NHCOOCOCONHC1633、C1633NHCOOCOCONHC1633、C1633NHCOOCOCONHC1633、C1633NHCOOC12OCONHC1633、C1633NHCOOC16OCONHC1633、C1837OCOHNC12NHCOOC1837、C1633OCOHNC12NHCOOC1633、C1429OCOHNC12NHCOOC1429、C1225OCOHNC12NHCOOC1225、C1021OCOHNC12NHCOOC1021、C17OCOHNC12NHCOOC17
【0075】
【化12】

これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
前記制御剤(消色促進剤)の含有量は、前記電子受容性化合物(顕色剤)100質量部に対して、0.1質量部〜300質量部が好ましく、3質量部〜100質量部がより好ましい。前記制御剤は、電子供与性呈色性化合物(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)とを混合する際に、これらと均一に混合すればよい。
【0077】
本発明の可逆性感熱記録媒体における可逆性感熱記録層は、前記バインダー樹脂中に前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)とが細かく均一に分散した状態の組成物からなる。前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)とは、個々に粒子を形成していてもよいが、より好ましくは複合された粒子として分散された状態を形成するとよい。これは、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)とを溶融したり溶解したりすることによって達成できる。このような可逆性感熱組成物は、各材料をそれぞれ溶剤中で分散又は溶解した後混合した混合液、或いは各材料を混合して溶剤中で分散又は溶解した混合液として支持体上に塗布できる。電子供与性呈色性化合物(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)は、マイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0078】
前記可逆性感熱組成物は、電子供与性呈色性化合物(発色剤)、電子受容性化合物(顕色剤)、種々の添加剤、硬化剤及び架橋状態にある樹脂並びに塗液溶媒などよりなる混合物を均一に混合分散させて調製した塗液である。
塗液調製に用いられる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール,n−ブタノール、メチルイソカルビノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン等のエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネート等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン等のピロリドン類などが挙げられる。
【0079】
塗液調製は、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等の公知の塗液分散装置を用いて行うことができる。また、前記塗液分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に、加熱溶解して、急冷乃至除冷によって析出させてもよい。
【0080】
<<可逆性感熱記録層の形成>>
前記可逆性感熱記録層を支持体上に形成するには、特に制限はなく、従来公知の方法を用いればよく、例えば、前記可逆性感熱組成物の塗布液を支持体上に塗布して乾燥させればよい。前記可逆性感熱組成物の塗布液の塗工方法としては、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工などが挙げられる。
【0081】
前記可逆性感熱組成物の塗布液を塗布後、乾燥及び必要に応じてバインダー樹脂の架橋を完全にするための硬化処理を行う。乾燥及び硬化処理は、恒温槽等を用いて比較的高温かつ短時間で、又は比較的低温で長時間かけて熱処理してもよい。硬化反応条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、反応性の面から30℃〜130℃程度の温度条件で1分間〜150時間程度加温することが好ましく、40℃〜100℃の温度条件で2分間〜120時間程度加温することがより好ましい。また、乾燥工程とは別に架橋工程を設けてもよい。前記架橋工程の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜100℃の温度条件で2分間〜120時間程度加温することが好ましい。
【0082】
前記可逆性感熱記録層の厚みとしては、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)の種類によって異なり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記可逆性感熱記録層の厚みが、1μm未満であると、発色の際のコントラストが不完全となることがあり、20μmを超えると、前記可逆性感熱記録層の熱感度が低下することがある。
【0083】
<金属化合物含有層(ガスバリア層)>
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)は、少なくとも、樹脂、有機金属化合物、及び無機層状化合物を含んでなり、更に必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)は、前記可逆性感熱記録層を被覆することにより、前記可逆性感熱記録層に酸素が侵入して、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)と前記電子受容性化合物(顕色剤)との反応により、前記可逆性感熱記録層が褪色したり、変色したりするのを防ぐ機能を有している。特に、可逆性感熱記録媒体の使用期間の長期化に伴って、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)のガスバリア性を更に向上させる必要がある。前記可逆性感熱記録層への酸素の進入を防ぐことにより、可逆性感熱記録媒体は、耐光性に優れ、長期間褪色及び変色を防止することができる。
【0084】
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の厚みとしては、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の酸素透過特性によって異なり、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜10μmが好ましく、0.3μm〜5μmがより好ましい。前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の厚みが、0.1μm未満であると、酸素バリア性及び水分バリア性が不完全となることがあり、10μmを超えると、前記可逆性感熱記録層の加熱ヘッドなどに対する感度が低下することがある。
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)としては、単層であってもよいし、複層であってもよい。前記金属化合物含有層(ガスバリア層)が複層であると、ガスバリア信頼性の点で有利である。
【0085】
<<樹脂>>
前記樹脂としては、ポリビニルアルコール系重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて(その用途、酸素透過性、透明性、無機層状化合物との混合特性、感熱記録層との接着性、耐湿性、塗工のしやすさ等によって)適宜選択することができるが、可視光の透過率が大きい樹脂が好ましい。
前記樹脂は、ガスバリア性を有するポリビニルアルコール系重合体でもよいが、ガスバリア性だけでなく耐湿性も有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体、又はこれらを含むガスバリア性樹脂の組成物としてもよい。
【0086】
前記ポリビニルアルコール系重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの誘導体、ポリビニルアルコールの変性物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリビニルアルコールの誘導体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水酸基の40モル%程度までがアセタール化されているポリビニルアルコール誘導体、などを挙げることができる。
前記ポリビニルアルコールの変性物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、カルボキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体等を共重合して得られるポリビニルアルコール変性物、などを挙げることができる。
前記ポリビニルアルコール系重合体の重合度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜5,000が好ましく、500〜3,000がより好ましい。
前記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましい。
【0087】
なお、前記ポリビニルアルコール系重合体は、乾燥状態でのガスバリア性が非常に高いという利点がある反面、高湿度下でのガスバリア性の低下の度合いがエチレン−ビニルアルコール系共重合体より大きいため、高湿度下で利用する場合、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を形成する際に、後述の無機層状化合物の含量を多くすることが好ましい。
【0088】
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られる樹脂が好ましい。前記エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られる樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン及び酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化して得られる樹脂、エチレン、酢酸ビニル、又はその他の単量体を共重合して得られるエチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化して得られる樹脂などが挙げられる。
前記エチレン−酢酸ビニル系共重合体の共重合前の単量体におけるエチレン比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20モル%〜60モル%が好ましい。前記エチレン比率が20モル%未満であると、高湿度下におけるガスバリア性が低下することがあり、60モル%を超えると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%以上の樹脂が好ましい。
前記酢酸ビニル成分のケン化度が95モル%未満であると、ガスバリア性、耐油性が不充分になることがある。前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体としては、溶剤中での溶解安定性が良好となるという点で、過酸化物等により処理して低分子量化した樹脂が好ましい。
【0089】
前記エチレン−ビニルアルコール系共重合体をはじめとする水溶性樹脂は、その水溶性ゆえに単独では耐水性に乏しいため、本発明においては、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物の少なくともいずれかを含む有機金属化合物を、水溶性樹脂の硬化剤として用いる。前記有機金属化合物は水溶性樹脂との反応性が高いため、本発明においては、耐水性に優れるコーティング層を形成することができる。本願明細書において、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物は、それぞれ、チタン又はジルコニウムに、有機基が直接又は酸素原子、窒素原子等による他の結合を介して結合した構造を、分子内に少なくとも1個有する化合物である。
【0090】
前記有機ジルコニウム化合物として、例えば、ジルコニウムキレート[一般式:Zr(OR)n(X)4-n、R=有機基、X=配位子、n=0〜3の整数]、ジルコニウムアシレート[一般式:Zr(OR1n(OCOR24-n、R1,R2=有機基、n=0〜3の整数]、ジルコニウムアルコキシド[一般式:Zr(OR)4、R=有機基]などが挙げられる。前記ジルコニウムキレートとしては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートなどが挙げられる。前記ジルコニウムアシレートとしては、例えば、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムトリブトキシステアレートなどが挙げられる。前記ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウムなどが挙げられる。
【0091】
前記有機チタン化合物としては、例えば、チタンキレート[一般式:Ti(OR)n(X)4-n、R=有機基、X=配位子、n=0〜3の整数]、チタンアシレート[一般式:Ti(OR1n(OCOR24-n、R1,R2=有機基、n=0〜3の整数]、チタンアルコキシド[一般式:Ti(OR)4、R=有機基]などが挙げられる。前記チタンキレートとしては、例えば、チタンアセチルアセテート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンラクテート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)などが挙げられる。前記チタンアシレートとしては、例えば、ポリヒドロキシチタンステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレートなどが挙げられる。前記チタンアルコキシドとしては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、テトラステアリルチタネートなどが挙げられる。
【0092】
前記有機金属化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐水性及び密着性の点で、キレート化合物、アシレート化合物などが好ましい。
【0093】
前記金属化合物含有層における金属含有量(Ti含有量及びZr含有量)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜15質量%が好ましく、0.2質量%〜10質量%がより好ましく、2質量%〜8質量%が特に好ましい。
前記金属化合物含有層における金属含有量が、0.1質量%未満であると、接着性が十分でないことがあり、15質量%を超えると、酸素バリア性が低下することがある。一方、前記金属化合物含有層における金属含有量が前記特に好ましい範囲内であると、接着性と酸素バリア性の両面から有利である。
前記有機金属化合物が添加されることにより、前記金属化合物含有層の凝集破壊を改善して、ピンホールの発生を防止することができる。
【0094】
<<無機層状化合物>>
前記無機層状化合物としては、天然物であっても膨潤性粘度鉱物の合成品であってもよく、耐湿性を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分散媒に膨潤・へき開する無機層状化合物が好ましい。前記分散媒に膨潤・へき開する無機層状化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィロケイ酸塩の1:1構造をもつカオリナイト族、ジャモン石群に属するアンチゴライト族、層間カチオンの数によってスメクタイト族、含水ケイ酸塩鉱物であるバーミキュライト族、マイカ族、などが挙げられる。前記分散媒に膨潤・へき開する無機層状化合物の具体例としては、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石、鱗片状シリカなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ガスバリア層として使用した場合のガスバリア性能からモンモリロナイト、雲母が好ましい。
【0095】
前記無機層状化合物が天然物である場合、前記樹脂に分散後のサイズが比較的大きいため、ガスバリア機能を確保しやすいという反面、不純物として微量に含有する無機金属イオンが、可逆性感熱記録媒体の画像形成時に、熱エネルギーの印加によって前記金属化合物含有層(ガスバリア層)などの酸化劣化を引き起こし、着色成分を形成することがある。この現象は、可逆性感熱記録媒体の本来の形成画像を消去した場合に、消え残りとして視認されてしまい、著しく画像品質を損ねてしまう。前記画像品質の低下を防ぐべく、天然品である無機層状化合物と樹脂との混合時に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を添加することで、不純物無機金属イオンによる酸化劣化を防止することが好ましい。
【0096】
前記無機層状化合物が膨潤性粘度鉱物の合成品である場合、上述の不純物がほとんど混在していないため、前記画像品質の低下が生じないものの、前記無機層状化合物の合成処理時に粒子径が小さくなってしまい、ガス通過路長が短くなってしまい、所望のガスバリア性を発現できないことがある。前記無機層状化合物としては、天然品及び合成品のいずれの無機層状化合物も使用できるが、使用する物質の特性を的確に把握しながら、樹脂/無機層状化合物の混合比率を選択することで、ガスバリア特性を向上することができる。
前記合成品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、合成雲母、天然の雲母物理的又は化学的処理をした雲母などが挙げられる。
【0097】
前記無機層状化合物の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、長さ及び幅が、それぞれ、5nm〜5,000nmが好ましく、10nm〜3,000nmがより好ましく、厚みが長さの1/10〜1/10,000程度の板状が好ましく、1/50〜1/5,000程度の板状がより好ましい。
前記無機層状化合物の長さ及び幅のいずれかが5,000nmを超えると、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)での混合むらが起こりやすく、均一に混合することが難しく、薄膜が形成し難いことがあり、前記無機層状化合物の長さ及び幅のいずれかが5nm未満であると、前記無機層状化合物が前記金属化合物含有層(ガスバリア層)中で前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に平行に並んで分散しにくくなり、ガスバリア性が劣ってくることがある。前記無機層状化合物の厚みが長さの1/10を超えると、前記無機層状化合物が前記金属化合物含有層(ガスバリア層)中で前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に平行に並んで分散しにくくなり、ガスバリア性が劣ってくることがある。
【0098】
前記樹脂と前記無機層状化合物との前記金属化合物含有層(ガスバリア層)における質量比率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、95/5〜50/50が好ましく、90/10〜65/35がより好ましい。前記無機層状化合物の質量比率が5未満であると、ガスバリア性が不足するため、その効果が不十分となり、前記無機層状化合物の質量比率が50を超えると、塗膜強度及び他層との接着性が不足して剥離したり、透明性が損なわれたりすることがある。ここで、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)における部分的な剥離は、前記可逆性感熱記録媒体の白化の原因になり易い。
【0099】
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)においては、前記無機層状化合物が前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の層方向に沿って平行に並んで分散していることが好ましい。
図3に本発明の可逆性感熱記録媒体中の金属化合物含有層(ガスバリア層)4の断面図を模式的に示した。
無機層状化合物11は、溶剤、ガスバリア樹脂の分散液中に分散させて薄い金属化合物含有層(ガスバリア層)4として形成すると、図3に示すように、ガスバリア樹脂10中で層方向に沿って平らに並びやすい性質がある。このように金属化合物含有層(ガスバリア層)4中で無機層状化合物11が層方向に沿って層状に並ぶと、酸素、水蒸気ガスといった気体分子は、金属化合物含有層(ガスバリア層)4の上から下へ透過しようとする場合、無機層状化合物11を避けて透過していくことになる。そうすると、気体分子が金属化合物含有層(ガスバリア層)4を透過する経路は、金属化合物含有層(ガスバリア層)4の断面の垂直距離に比べ非常に長くなる。金属化合物含有層(ガスバリア層)4を形成するガスバリア樹脂10は、本来的にガスバリア性を有しているので、透過経路が長くなれば、これに比例して金属化合物含有層(ガスバリア層)4のガスバリア性が向上する。
【0100】
上述のように、金属化合物含有層(ガスバリア層)4に無機層状化合物11を分散、特に層方向に沿って平行に分散させることにより、金属化合物含有層(ガスバリア層)4の酸素遮断性に加えて、水分遮断性も向上する。特に、ポリビニルアルコールのような酸素遮断特性に優れたガスバリア樹脂10は、水分吸収性があり、高湿度環境下では酸素遮断特性が十分ではなかったが、これらのガスバリア樹脂10に無機層状化合物11を添加することにより、金属化合物含有層(ガスバリア層)4は、低湿度環境は勿論高湿度環境下でも優れた酸素遮断特性を発揮できる。更に、ガスバリア性樹脂の水分吸収による劣化も防止することができ、金属化合物含有層(ガスバリア層)4と感熱記録層との剥離を防止することもできる。
【0101】
無機層状化合物は、ガスバリア性樹脂中でガスバリア層の層方向に配向して存在するので、ガスバリア層のガスバリア性を向上させることができる。
【0102】
<<接着性向上剤>>
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)は、無機層状化合物を含有しているため、感熱記録層、保護層などの隣接層との接着性を向上させるための接着性向上剤を添加してもよい。前記可逆性感熱記録媒体の基本特性である多数回にわたる記録画像の形成と消去、即ち加熱冷却の繰り返しに耐えうるように、必要に応じて、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物等の隣接層に対する接着性向上剤を1種又は2種以上加えることができる。
【0103】
前記シランカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシラン;、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート等のイソシアネートアルコキシシラン;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するアルコキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に隣接する有機残基との反応が速やかに進行する点で、アミノ基を有するトリアルコキシシラン化合物、メルカプト基を有するトリアルコキシシラン化合物が好ましく、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)中の無機層状化合物との化学反応が速やかに進行する点で、トリアルコキシシリル基のアルキル基がメチル基であることが更に好ましい。
【0104】
前記アジリジン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチロールプロパントリス(3−アジリジニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス[3−(2−メチル−アジリジニル)−プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス(2−アジリジニルブチレート)、トリス(1−アジリジニル)ホスフィンオキシド、ペンタエリスリトールトリス−3−(1−アジリジニルプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス−3−(1−アジリジニルプロピオネート)、1,6−ビス(1−アジリジノカルバモイル)ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0105】
前記イソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水添トルエンジイソシアネート(水添TDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、水添4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネート;これらの誘導体であるビュレット型、イソシアヌレート型、アダクト型などの3官能以上のポリイソシアネート;イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマー等の脂肪族系イソシアネート化合物;フェニレンジイソシアネート(PDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)等の芳香族ジイソシアネート;これらの誘導体であるビュレット型、イソシアヌレート型、アダクト型などの3官能以上のポリイソシアネート;イソシアネートを含む各種のオリゴマー、ポリマー等の芳香族系イソシアネート化合物;などが挙げられる。前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を形成するためには、水溶性高分子と共に使用する関係上、ガスバリア性コーティング組成物が基本的に溶媒として水を含有しているため、水との反応を抑えて、成膜後に硬化が進行するのが好ましい。したがって、イソシアネート化合物の骨格に親水性基を導入して水分散状態で存在する自己乳化型のポリイソシアネート化合物がより好ましい。更に、疎水基を導入することで、成膜前での水との反応をより抑えることができるため一層好ましい。
【0106】
前記カルボジイミド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分散型乳化タイプが好ましい。前記カルボジイミド化合物の親水化変性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、安定性、架橋性のバランスが良好である点で、イソシアナート末端カルボジイミド化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応により鎖伸長し、更に親水性オリゴマーで分子末端を親水化変性した物質が好ましい。
【0107】
<<前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の形成方法>>
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の形成方法としては、前記可逆性感熱組成物を塗工できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可逆性感熱組成物を塗工し、加熱乾燥する方法、などが挙げられる。
前記可逆性感熱組成物の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法、エアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)においては、前記無機層状化合物が前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に沿って平行に並んで分散していることが好ましい。その点、前記可逆性感熱組成物の塗工方法によって前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を形成すると、前記無機層状化合物が前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に沿って平行に並んで分散しやすい。
【0108】
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を前記塗工方法によって形成する場合、塗工用の可逆性感熱組成物を製造する方法としては、例えば、
(1)樹脂(ガスバリア性樹脂)と有機金属化合物とを溶剤に溶解させた溶液に、無機層状化合物(水等の分散媒に予め膨潤・へき開させておいてもよい。)を添加混合し、攪拌装置、分散装置を利用して無機層状化合物を分散させる方法、
(2)無機層状化合物を、水等の分散媒に膨潤・へき開させた後、攪拌装置、分散装置を利用し、更に、無機層状化合物をへき開、分散した分散液(分散溶液)に、ガスバリア性樹脂と有機金属化合物とを溶剤に溶解させた溶液を添加混合する方法
等を挙げることができる。また、無機層状化合物が天然物である場合には、これら混合液中に、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを含有する化合物を添加しておくことが好ましい。
【0109】
樹脂と有機金属化合物との溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール系重合体及び/又はエチレン−ビニルアルコール系共重合体と有機金属化合物とを溶解し得る、水性及び非水性のいずれかの溶剤が挙げられる。これらの中でも、環境への有害性がない点で、水が好ましい。なお、エチレン−ビニルアルコール系共重合体については、溶解性を付与するために、これに炭素数2〜4の低級アルコールを併用することが好ましい。
【0110】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を樹脂として用いる場合、過酸化物等で処理することにより低分子量化した末端変性エチレン−ビニルアルコール系共重合体と、水と低級アルコールとの混合溶剤を利用して、ガスバリア性樹脂溶液を構成することが好ましい。この場合、水50質量%〜85質量%と、炭素数2〜4の低級アルコール15質量%〜50質量%と含む混合溶剤を使用すると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の溶解性が良好となり、適度な固形分を維持するためにも好適である。前記混合溶剤中の低級アルコールの含量が50質量%を超えると、無機層状化合物を分散した場合、へき開が不充分になってしまうことがある。
前記炭素数2〜4の低級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールが特に好ましい。
【0111】
可逆性感熱組成物を形成する攪拌装置、分散装置としては、分散液中で無機層状化合物を均一に分散することができる、通常の撹拌装置、分散装置である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、透明で安定な無機層状化合物分散液が得られる点で、高圧分散機、超音波分散機、などが好ましい。前記高圧分散機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナノマイザー(ナノマイザー社製)、マイクロフルイタイザー(マイクロフライデックス社製)、アルチマイザー(スギノマシン社製)、DeBee(Bee社製)、ニロ・ソアビホモジナイザー(ニロ・ソアビ社製)などが挙げられる。前記高圧分散機の圧力条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1MPa〜100MPaが好ましい。前記高圧分散機の圧力条件が、1MPa未満であると、無機層状化合物の分散が進まず、分散に膨大な時間を要してしまうという不具合が生じることがあり、100MPaを超えると、無機層状化合物の破砕が起こり易くなり、微粉化しすぎてしまい、ガス通過路長が短くなってしまうため目的であるガスバリア性が低下することがある。
【0112】
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)とその隣接層の密着性を向上するために添加する密着性向上剤であるシランカップリング剤、イソシアネート化合物、アジリジン化合物及びカルボジイミド化合物は、前記樹脂(ガスバリア性樹脂)と無機層状化合物との分散調製後に添加してもよい。このようにして前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を形成することにより、可逆性感熱記録媒体のガスバリア性は格段に向上し、水分等の影響による剥離に対する耐性も向上する。
【0113】
<熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)>
前記熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)は、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)と前記保護層との接着性、密着性を向上させるための層であり、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)及び前記保護層と親和性の強い熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する層である。前記熱硬化性樹脂含有層は、例えば、熱硬化性樹脂と硬化剤(架橋剤)の混合組成物(熱硬化性樹脂組成物)を前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に塗布してから硬化させて得られる。
【0114】
前記熱硬化性樹脂と前記硬化剤との組合せとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルブチラール樹脂とイソシアネート、アクリルポリオール樹脂とイソシアネート、ポリエステルポリオール樹脂とイソシアネート、ポリウレタンポリオール樹脂とイソシアネート、フェノキシ樹脂とイソシアネート、ポリビニルブチラール樹脂とイソシアネートなどの組合せが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂とイソシアネートの組合せが好ましい。
【0115】
前記イソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(IPC)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)などが挙げられる。
【0116】
前記熱硬化性樹脂含有層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜3μmが好ましく、0.2μm〜2μmがより好ましい。前記熱硬化性樹脂含有層の厚みが0.1μm未満であると、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)と保護層との接着性を十分発揮できないことがあり、前記熱硬化性樹脂含有層の厚みが、3μmより厚いと、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)と保護層との接着性をそれ以上向上できないけれども、可逆性感熱記録媒体の厚みが厚くなってしまうことがある。
【0117】
<アンカー層>
前記アンカー層は、前記可逆性感熱記録層と前記金属化合物含有層(ガスバリア層)との結合を強力にすることが第1の目的であり、塗工時あるいは可逆性感熱記録媒体の使用中及び保存中等に可逆性感熱記録媒体の特性を変化させない材料のなかから選択する。
【0118】
前記アンカー層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常のコーティング法、通常のラミネート法、などが挙げられる。
前記アンカー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜10μmが好ましく、0.1μm〜3μmがより好ましい。
前記アンカー層の厚みが、0.1μm未満であると、接着性が不十分なことがあり、10μmを超えると、記録層の熱感度が低下することがある。
【0119】
前記可逆性感熱記録層上に前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を設ける際に、まず前記可逆性感熱記録層上に熱硬化性樹脂を含むアンカー剤を塗工して、1層又は2層以上のアンカー層を形成した後に、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)を形成する。アンカー層は、前記可逆性感熱記録層と前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の接着性向上、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の塗布による前記可逆性感熱記録層の変質防止、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)に含まれる添加剤の前記可逆性感熱記録層への移行、あるいは前記可逆性感熱記録層に含まれる添加剤の前記金属化合物含有層(ガスバリア層)への移行を防止する機能を持たせることができる。
【0120】
前記アンカー剤は、接着剤と狭義のアンカー剤とに分類することができる。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系、ウレタン系、アクリル系の各種ラミネート用接着剤などが挙げられる。
前記狭義のアンカー剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の各種ラミネート用アンカーコート剤などが挙げられる。
なお、これらの接着剤、狭義のアンカー剤は、架橋剤等の接着性改質材料を含んでいてもよい。
【0121】
前記アンカー層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法、乾燥・硬化方法などは、前記可逆性感熱記録層、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)で用いられた公知の塗工方法を用いることができる。
【0122】
前記アンカー層は、例えば、エステルポリオール樹脂とイソシアネートの反応生成物のように、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含んでいることが好ましい。この熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、感熱記録層とガスバリア層との間を強固に接着するものであるので、熱硬化する前の前駆体(例えば、エステルポリオール樹脂とイソシアネート)の状態で一方の層(例えば、感熱記録層)に塗布して熱硬化させて得ることが好ましい。
【0123】
エステルポリオール樹脂とイソシアネートの反応生成物を含むアンカー層の場合、イソシアネートとエステルポリオール樹脂の質量比は、10対100から150対100とすることが好ましい。また、前記アンカー層の厚みは、0.1μm〜10μmが好ましい。前記厚みが、0.1μmより薄いと、接着力が十分でなくなることがあり、10μmより厚くなると、接着効果が増加しないが、可逆性感熱記録材料の厚みを厚くする効果があり、可逆性感熱記録材料の熱伝導性を悪くしたり、可撓性を損なったりすることがある。
【0124】
−紫外線吸収層−
前記紫外線吸収層は、前記可逆性感熱記録層が紫外線に曝されないように保護する層である。前記可逆性感熱記録層における材料、特に、前記電子供与性呈色性化合物(発色剤)及び前記電子受容性化合物(顕色剤)は、長期間紫外線に曝されると、劣化して変色したり、退色したり、十分な発色反応をしなくなったりする。このため、感熱記録層は不必要な紫外線に曝されないように保護しておくことが好ましい。例えば、可逆性感熱記録媒体において、可逆性感熱記録層とアンカー層との間に紫外線吸収層が設けられる。
前記紫外線吸収層の材料としては、紫外線を吸収するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線吸収性能を有するフィラーを添加したアンカー層用の樹脂、などが挙げられる。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウム、アルミナ、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、シリカ、タルク、マイカなどが挙げられる。
前記有機フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン、ポリスチレン、ポリスチレン・イソプレン、スチレンビニルベンゼンなどのスチレン系樹脂、塩化ビニリデンアクリル、アクリルウレタン、エチレンアクリルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド等のホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。
前記フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、粒状、板状、針状などが挙げられる。
【0125】
前記紫外線吸収層中のフィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積分率で5体積%〜50体積%が好ましい。
前記紫外線吸収層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜20μmが好ましい。前記紫外線吸収層の厚みが0.1μm未満であると、紫外線吸収が不十分になることがあり、20μmを超えると、熱伝導性が低下することがある。
【0126】
<支持体>
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記可逆性感熱記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0127】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料、などが挙げられる。前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
前記支持体は、塗布層の接着性を向上させる目的で、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、等により表面改質することが好ましい。また、前記支持体には、酸化チタン等の白色顔料などを添加して白色にすることが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、数μm〜数mmが好ましく、10μm〜2,000μmがより好ましく、60μm〜150μmが更に好ましい。
前記支持体としては、必要に応じた厚みの支持体を単独あるいは貼り合わせてもよく、可逆性感熱記録層と同一面、反対面、内部などに、磁気記録層、ICチップを有していてもよく、可逆性感熱記録層が自己支持性である場合には、支持体の使用を省略することができる。
また、前記支持体は、酸素バリア性及び水分バリア性を有することが好ましい。ここで、前記支持体の酸素バリア性及び水分バリア性が不十分な場合は、支持体を後述する金属化合物含有層(ガスバリア層)で被覆すればよい。
なお、一般に、支持体は、比較的厚手のフィルム、シートなどであるので、酸素遮断機能、及び水分遮断機能は十分に備わっている。支持体に酸素遮断機能、及び水分遮断機能が備わっていないときには、支持体側を後述するガスバリア層で被覆してもよい。
【0129】
本発明の可逆性感熱記録媒体には、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、界面活性剤、導電剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤、フィラーなどが挙げられる。
【0130】
前記可逆性感熱記録層、前記アンカー層、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)には、それぞれ、紫外線吸収性能を有する(紫外線遮蔽性能を有しない)フィラーを添加してもよく、前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記紫外線吸収剤として列挙したフィラーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、粒状、板状、針状などが挙げられる。
前記金属化合物含有層(ガスバリア層)中のフィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積分率で5体積%〜50体積%が好ましい。
【0131】
前記可逆性感熱記録層、前記アンカー層、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)には、それぞれ滑剤を添加してもよい。
前記滑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス類;硬化ひまし油等の植物性ワックス類;牛脂硬化油等の動物性ワックス類;ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類;マルガリン酸、ラウリン酸、ミスチレン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、フロメン酸等の高級脂肪酸類;ソルビタンの脂肪酸エステル等の高級脂肪酸エステル類;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド等のアミド類などが挙げられる。
各層中の滑剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、体積分率で0.1体積%〜95体積%が好ましく、1体積%〜75体積%がより好ましい。
【0132】
本発明の可逆性感熱記録媒体の支持体の周囲、裏面、内部などに、磁気記録層、ICチップを設けることもできる。本発明の可逆性感熱記録媒体とともにICチップを設ければ、ICカード、ICタグとして使用することもできる。また、本発明の可逆性感熱記録媒体とともに磁気記録層を設ければ、磁気カードとして使用することもできる。その他にも、ひとつの支持体の両面に可逆性感熱記録媒体を作製したり、支持体の反対側に接着層などを設けることもできる。
【0133】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態の可逆性感熱記録媒体の構成を図1に示す。図1は、本発明の可逆性感熱記録媒体を模式的に示した部分断面図である。図1において、可逆性感熱記録媒体1においては、シート状の支持体2の表面に、可逆性感熱記録層3、ガスバリア層4、プライマー層8、保護層5がこの順に積層されている。
【0134】
可逆性感熱記録層3は、下面は十分にガスバリア性のある支持体2に積層されており、上面はガスバリア層4で被覆されて、両面とも外気と直接接触しないようになっている。可逆性感熱記録媒体は、原理的には、発色消色を繰り返すことのできる感熱記録材料からなる層があればよい。しかし、可逆性感熱記録層3に用いられる発色剤及び顕色剤は、光の影響を受けやすく、特に光により活性化された状態で酸素とのラジカル反応を起こしやすい。ラジカル反応を起こすと、発色していた可逆性感熱記録層3が消色したり褪色したりし、また、消色していた可逆性感熱記録層3が黄変などの発色をすることがある。ガスバリア層4は、外気中の酸素が可逆性感熱記録層3に侵入することを防ぐためのものである。プライマー層8は、ガスバリア層4と保護層5との密着性を向上させ、ガスバリア層4と保護層5との層間剥離を防ぐ効果を有する。保護層5は、可逆性感熱記録媒体1に記録をする際に、サーマルヘッドを用いて印字したとき、サーマルヘッドの熱と圧力のためガスバリア層4及び可逆性感熱記録層3の表面が変形し、いわゆる打痕ができることを防ぐ。保護層5は、可逆性感熱記録媒体の表面を機械的な応力、水分などから保護する機能もあることが好ましい。
【0135】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態の可逆性感熱記録媒体の構成を図2に示す。図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体を模式的に示した部分断面図である。図2の第2の実施形態の可逆性感熱記録媒体1においては、可逆性感熱記録媒体1の可逆性感熱記録層3と支持体2との中間に断熱性の高いアンダー層7が積層されている。
【0136】
<第3の実施形態>
本発明の可逆性感熱記録媒体は、粘着層等を介して、他の媒体へ貼り付けてもよい。あるいは、PETフィルムなどの支持体の片面(裏面)にバックコート層を設け、該バックコート層の反対面に熱転写リボンに用いられる剥離層、剥離層上に可逆性感熱記録層、更に表面上に紙、樹脂フィルム、PETフィルムなどに転写できる樹脂層を設け熱転写プリンタを用いて転写させてもよい。本発明の可逆性感熱記録媒体は、シート状あるいはカード状に加工されていてもよく、その形状は任意の形状に加工することができ、また、可逆性感熱記録媒体の表面又は裏面への印刷加工を施すことができる。カード状に加工された可逆性感熱記録媒体は、磁気層、ICチップを搭載して磁気カード、ICカードとすることもできる。また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、両面を可逆性感熱記録媒体としたり、非可逆の感熱記録層を併用してもよく、このとき、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。
【0137】
<可逆的な発色消色の原理>
可逆性感熱記録媒体の可逆的な発色消色の原理を簡単に説明する。
一般的な可逆性感熱記録媒体は、紙、プラスチックカード等のフィルム状、シート状又は板状の支持体の表面に、発色剤及び顕色剤を熱可塑性樹脂などのバインダーに混合分散させた組成物により可逆性感熱記録層を形成したものである。この可逆性感熱記録層に含まれる発色剤及び顕色剤を含む組成物においては、発色剤及び顕色剤が単に固体状で混合されている状態では、発色しない。しかし、この組成物を高温にすると、組成物全体が溶融状態になって、含まれる発色剤及び顕色剤が反応して発色する。この溶融状態の組成物を除冷すると、発色剤及び顕色剤がその融解温度付近で解離し、それぞれ個々に凝集乃至結晶化し消色してしまう。そして、その状態がバインダーである熱可塑性樹脂などの固化により凍結状態にされてしまう。ところが、発色している溶融状態の組成物を急冷すると、発色剤と顕色剤との解離が起こる前に、熱可塑性樹脂が固化し、発色剤と顕色剤の反応生成物は、発色したまま凍結状態になり固化してしまうものもある。適当な溶融温度と凍結温度を持ち、このような現象を起こす二種の化合物とバインダーの組み合わせからなる組成物を選べば、加熱溶融後の冷却速度の調節により発色、消色が選択でき、常温においては発色、消色のそれぞれの状態を凍結状態にして保つことができる。
【0138】
図4に、前記可逆性感熱記録媒体の温度変化に対する発色、消色の時間的変化をグラフにして表した。図4において、横軸は時間、縦軸は温度を表す。T1は発色剤と顕色剤の溶融発色反応温度、T2は、発色剤及び顕色剤とバインダーとの組成物が凍結状態に固化してしまう温度を表す。即ち、T1とT2との間の温度領域で、発色していた組成物中の発色剤と顕色剤の反応生成物は、発色剤と顕色剤とに解離して、それぞれ凝集又は結晶化することができる。ただし、反応生成物は、解離して凝集又は結晶化するには、ある程度の反応時間を要する。
【0139】
図4のグラフにおいて、最初、常温で状態(a)(発色状態とする。)であった組成物を、加熱して温度T1とする。組成物は、温度T1になると時間t1の間に溶融するが、そのまま発色状態(b)を保つ。これを除冷してt2時間かけて温度T2としてから、常温に戻す。時間t2が、溶融して発色していた反応生成物が発色剤と顕色剤とに解離して凝集又は結晶化する時間以上であるので、組成物が固化して凍結状態になる前に、反応生成物が解離してしまい、常温では消色状態(c)で凍結されることになる。
【0140】
消色した組成物を再度加熱して溶融状態(d)にすると、組成物中の発色剤と顕色剤とが溶融して反応し発色する。この組成物を短い時間t4で急冷して、そのまま常温にすれば、組成物は反応した分子状態が凍結されたままの状態(e)で常温になり発色したままである。
【0141】
更に、状態(e)の組成物を溶融温度T1とT2との間の解離、結晶化温度領域に、長い時間t5曝しておくと(状態(f))、反応生成物が発色剤と顕色剤とに解離して、それぞれ凝集又は結晶化してしまい消色することもある。この場合も、組成物は常温に戻すと消色した状態(g)のままである。このような組成物の相変化を利用すれば、加熱、冷却の温度、冷却速度等の制御によって、組成物を発色させたり消色させたりすることができる。なお、グラフでは模式的にT1とT2の間隔を大きく示してあるが、この温度間隔は実際には、数℃から10℃程度の組成物が選択される。
【0142】
<可逆性感熱記録媒体への画像形成、消去>
本発明の可逆性感熱記録媒体への画像形成、消去方法としては、使用目的によって熱ペン、サーマルヘッド、レーザ加熱等の従来の可逆性感熱記録媒体への発色方法及び消色方法による画像形成方法が利用できる。
【0143】
図5は、本発明の可逆性感熱記録媒体の発色方法を示す図であり、図6は、本発明の可逆性感熱記録媒体の消色方法を示す図である。
図5を用いて、本発明の可逆性感熱記録媒体の発色方法を説明する。
まず、発色していない可逆性感熱記録媒体1の表面にドットプリンタのサーマルヘッドのような小面積の加熱ヘッド15を押し当てる。可逆性感熱記録層3、バリア層4、及び保護層5は薄いので、可逆性感熱記録層3の被加熱部分13はすぐに加熱され、感熱記録層3を構成する発色剤等の融点に達する。そして、可逆性感熱記録層3の加熱ヘッド15に面している被加熱部分13の発色剤と顕色剤が溶融し反応して発色する。そこで、加熱ヘッド15を可逆性感熱記録媒体1の表面から取り除けば、可逆性感熱記録媒体1の被加熱部分13は十分に小領域なのですぐに冷える。そして、被加熱部分13は発色したまま凍結状態にされる。
【0144】
図6を用いて、本発明の可逆性感熱記録媒体の消色方法を説明する。
まず、可逆性感熱記録媒体1の表面を加熱して可逆性感熱記録層3の被加熱領域を溶融する。ただし、上述のサーマルヘッドのように小領域を加熱するのではなく、例えば、図6に示すように加熱ローラ18で比較的広い領域を加熱することが好ましい。そして、可逆性感熱記録層3の被加熱領域が溶融したら、加熱ローラ18を転がして被加熱領域を移動させていく。そうすると、一旦溶融して発色した被加熱領域は比較的ゆっくり冷えていく。その間に可逆性感熱記録層3中の発色剤と顕色剤とが解離してそれぞれ凝集又は結晶化する。このため、可逆性感熱記録層3は消色され、その後常温まで冷却されて凍結状態となる。この消色方法は、発色していない部分も加熱することになるが、通常、消色は可逆性感熱記録媒体全体を消色すればよいので、このような方法が便利である。図6において、加熱ローラ18が図の矢印方向に沿って左側に転がったとすれば、感熱記録層3の発色していた未加熱部分16は、加熱ローラ18の動きに伴い加熱され除冷されることにより消色領域17となる。
【0145】
(可逆性感熱記録部材)
本発明の可逆性感熱記録部材は、情報記憶部及び可逆表示部を有し、該可逆表示部が本発明の前記可逆性感熱記録媒体を有してなり、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
前記可逆表示可能な可逆性感熱記録層と情報記憶部とを、同一のカードに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を感熱記録層に表示することにより、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には可逆性感熱性記録部の表示を書き換えることで、可逆性感熱記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
【0146】
前記情報記憶部と可逆表示部を有する部材としては、以下の2つのものに大別できる。
(1)情報記憶部を有する部材の一部を可逆性感熱記録媒体の支持体として、可逆性感熱記録層を直接形成したもの。
(2)情報記憶部を有する部材に、別途形成された、支持体上に可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体の支持体面を接着したもの。
これら(1)及び(2)の場合、情報記憶部と可逆表示部のそれぞれの機能が発揮できるよう設定される。したがって情報記憶部の設定位置は、可逆性感熱記録媒体における支持体の可逆性感熱記録層を設けた面と反対側の面に設けることも、支持体と可逆性感熱記録層との間でも、あるいは感熱記録層上の一部に設けることもできる。
【0147】
前記情報記憶部としては、特に制限はないが、例えば、磁気感熱記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、RF−IDタグ、ホログラムなどが好ましく用いられる。特にカードサイズよりも大きなサイズのシート媒体では、ICメモリ、RF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
【0148】
前記磁気感熱記録層は、例えば、酸化鉄、バリウムフェライト、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂等を用い、支持体上に塗工形成されるか、又は蒸着、スパッタリング等の方法により樹脂を用いず形成することができる。前記磁気感熱記録層は支持体における該感熱記録層とは反対側の面に設けてもよいし、前記支持体と該感熱記録層との間、前記感熱記録層上の一部に設けてもよい。また、表示に用いる可逆性感熱記録材料をバーコード、二次元コード等により記憶部に用いてもよい。
前記ホログラムとしては、書き換え可能なものが好ましく、例えば、高分子アゾベンゼン液晶フィルムに干渉光を書き込んだ書き換え可能なホログラムなどが挙げられる。
【0149】
前記情報記憶部を有する部材としては、一般的には、カード、ディスク、ディスクカートリッジ、又はテープカセットがある。具体的には、ICカード、光カード等の厚手カード、フレキシブルディスク、光磁気記録ディスク(MD)、DVD−RAM等の記憶情報が書換可能なディスクを内蔵したディスクカートリッジ、CD−RW等のディスクカートリッジを用いないディスク、CD−R等の追記型光ディスク、相変化型記録材料を用いた光情報記録媒体(CD−RW)、ビデオテープカセットなどが挙げられる。
【0150】
また、可逆表示部と情報記憶部の双方を有する部材としては、例えば、カードの場合で説明すると、情報記憶部に記憶された情報の一部を感熱記録層に表示することによって、カード所有者等は、特別な装置がなくてもカードを見るのみで情報を確認することができるので、可逆性感熱記録媒体を適用しないカードに比べて利便性が非常に向上することになる。前記情報記憶部は、必要な情報を記憶できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気記録、接触型IC、非接触型IC、又は光メモリが有用である。
具体的には、以下の本発明の可逆性感熱記録ラベル、可逆性感熱記録部材、画像処理装置及び画像処理方法などに特に好適に使用することができる。なお、本発明において、可逆性感熱記録媒体の表面とは、感熱記録層側表面のことを意味し、保護層に限ったものでなく、印刷層表面、オーバーヘッド層表面などの印字消去の際にサーマルヘッドに接触する全て又は一部の面を意味している。
【実施例】
【0151】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0152】
(実施例1)
<可逆性感熱記録媒体の作製>
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0153】
−アンダー層の形成−
スチレン−ブタジエン系共重合体(日本エイアンドエル株式会社製、PA−9159)30質量部、ポリビニルアルコール樹脂(株式会社クラレ製、ポバールPVA103)12質量部、中空粒子(松本油脂株式会社製、マイクロスフィアーR300、中空率90%)20質量部、及び水40質量部を添加し、均一状態になるまで約1時間撹拌して、アンダー層塗布液を調製した。
得られたアンダー層塗布液を、前記支持体上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃で2分間乾燥して、厚み20μmのアンダー層を形成した。
【0154】
−可逆性感熱記録層の形成−
下記構造式で表される電子受容性化合物(顕色剤)3質量部、ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハクリーンSB)1質量部、アクリルポリオール50質量%メチルエチルケトン溶液(三菱レイヨン株式会社製、LR327)9質量部、及びメチルエチルケトン70質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が1μmまでなるように粉砕し分散液を作製した。
【化13】

【0155】
次に、この粉砕した電子受容性化合物(顕色剤)を含む分散液に、電子供与性呈色体化合物(発色剤)としての2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン1質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)3質量部を加え、良く撹拌させて、可逆性感熱記録層用塗布液を得た。得られた可逆性感熱記録層用塗布液を前記アンダー層上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃で2分間乾燥後、60℃で24時間熱硬化を行って、厚み11μmの可逆性感熱記録層を形成した。
【0156】
−アンカー層の形成−
酢酸エチル125質量部に、ポリエステルポリオール樹脂(三井化学ポリウレタン株式会社製、タケラックA−3210)15質量部、及びイソシアネート化合物(三井化学ポリウレタン株式会社社製、タケネートA−3070)10質量部を混合し、アンカー層用塗布液を調製した。
得られたアンカー層用塗布液を前記可逆性感熱記録層上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥し、厚み0.7μmのアンカー層を形成した。
【0157】
−金属化合物含有層(ガスバリア層)の形成−
(1)エチレン−ビニルアルコール共重合体溶液の調製
精製水50質量%、及びiso−プロピルアルコール(IPA)50質量%を含む混合溶剤60質量部に、エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD−2908、以下、EVOHと略記することがある)30質量部を加え、更に濃度が30質量%の過酸化水素水10質量部を添加して攪拌下で80℃に加温し、約2時間反応させた。その後冷却してカタラーゼを3,000ppmになるように添加し、残存過酸化水素を除去し、固形分30質量%のほぼ透明なエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を調製した。
【0158】
(2)無機層状化合物分散液の調製
無機層状化合物である天然品モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製、クニピアF)5質量部を精製水95質量部中に攪拌しながら添加し、高速攪拌機にて充分に分散した。その後、40℃にて1日間保温し、固形分5質量%の無機層状化合物分散液を調製した。
【0159】
(3)金属化合物含有層(ガスバリア層)用塗布液の調製と金属化合物含有層(ガスバリア層)の形成
精製水50質量%、ノルマルプロピルアルコール(NPA)50質量%の混合溶剤60.7質量部に、(1)で調製したエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液を15.7部質量添加し、充分に攪拌混合した。更にこの溶液を高速で攪拌しながら、前記(2)で調製した無機層状化合物分散液23.6質量部を添加した。この混合溶液100質量部に対して、3質量部の陽イオン交換樹脂粒子を添加し、イオン交換樹脂粒子の破砕が起きない程度の攪拌速度で1時間攪拌して、陽イオンの除去を行った後、陽イオン交換樹脂のみをストレーナで濾別した。得られた混合溶液に、水酸化マグネシウム0.06質量部を添加し、更に高圧分散装置にて圧力50MPaの設定で分散処理した後、300メッシュのフィルターにて濾過し固形分5.9質量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体溶液と無機層状化合物分散液の混合溶液(EVOH/無機層状化合物=80質量部/20質量部)を得た。次に、得られた混合溶液10質量部を攪拌しながら、有機金属化合物として、チタンラクテート44質量%溶液(松本ファインケミカル社製、TC−310)を0.015質量部添加し、金属化合物含有層(ガスバリア層)用塗布液を調製した。
得られた金属化合物含有層(ガスバリア層)用塗布液を前記アンカー層上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥し、厚み0.5μmの金属化合物含有層(ガスバリア層)を形成した。
なお、前記形成された金属化合物含有層(ガスバリア層)におけるTi含有量は、0.2質量%であった。
なお、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)の同定は、走査型電子顕微鏡(SEM)(ULTRA55、Carl Zeiss社製)を用いて行い、前記金属化合物含有層(ガスバリア層)中の有機金属化合物の同定は、X線分析装置(EMAX ENERGY、堀場製作所製)により行った。
【0160】
−熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)の形成−
メチルエチルケトン30質量%、イソプロピルアルコール20質量%、及び酢酸エチル50質量%の混合液50質量部に、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学株式会社製、エスレックBL−1)50質量部を溶解し、イソシアネート化合物(サカタインクス株式会社製、ラミオールR、硬化剤)3質量部を混合し、熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)用塗布液を調製した。
得られた熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)用塗布液を前記金属化合物含有層(ガスバリア層)上にワイヤーバーを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥して、厚み0.8μmの熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)を形成した。
なお、前記熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)の同定は、走査型電子顕微鏡(SEM)(ULTRA55、Carl Zeiss社製)を用いて行った。
【0161】
−保護層の形成−
ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)9質量部、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、滑剤(東レダウ社製、ST102PA)0.001質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにて良く攪拌して平均粒径3μmまでなるように分散し、保護層用塗布液を調製した。
得られた保護層用塗布液を前記熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)上にワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで光照射し架橋させて、70℃で24時間熱硬化を行い、厚み4μmの保護層を形成した。以上により、実施例1の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0162】
(実施例2)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M8060、東亜合成株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0163】
(実施例3)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M8030、東亜合成株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0164】
(実施例4)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)とポリエステルアクリレート樹脂(M7100、東亜合成株式会社製)の混合物(1:1(質量比))に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0165】
(実施例5)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)とポリエステルアクリレート樹脂(M7100、東亜合成株式会社製)の混合物(1:1(質量比))に代え、アンダー層の中空粒子(ロームアンドハースジャパン社製、ローペイクHP−91、中空率50%)とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0166】
(実施例6)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、アンダー層を設けない以外は、実施例1と同様にして、実施例6の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0167】
(実施例7)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M8060、東亜合成株式会社製)に代え、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)を、シリコーン粒子(トスパール145、球形、東芝シリコーン社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0168】
(実施例8)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M8030、東亜合成株式会社製)に代え、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)を、シリコーン粒子(トスパール120、球形、東芝シリコーン社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0169】
(実施例9)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M8030、東亜合成株式会社製)に代え、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)を、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)とシリコーン粒子(トスパール120、球形、東芝シリコーン社製)を1:1(質量比)の混合物に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例9の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0170】
(実施例10)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
実施例1において、保護層の形成で、ポリエステルアクリレート樹脂(M9060、東亜合成株式会社製)を、ポリエステルアクリレート樹脂(M8030、東亜合成株式会社製)に代え、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)を、シリカ粒子(E220A、不定形、日本シリカ工業社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例10の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0171】
(比較例1)
<可逆性感熱記録媒体の作製>
実施例1において、保護層を以下のようにして形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の可逆性感熱記録媒体を作製した。
−保護層の形成−
ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)9質量部、シリカ粒子(水澤化学工業社製、P−526、不定形)1質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、滑剤(東レダウ社製、ST102PA)0.001質量部、及びイソプロピルアルコール11質量部を加え、ボールミルにて良く攪拌して平均粒径3μmまでなるように分散し、保護層用塗布液を調製した。得られた保護層用塗布液を前記熱硬化性樹脂含有層(プライマー層)上にワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで光照射し架橋させて、70℃で24時間熱硬化を行い、厚み4μmの保護層を形成した。
【0172】
(比較例2)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
比較例1において、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)を、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPEA−12、日本化薬株式会社製)に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例2の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0173】
(比較例3)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
比較例1において、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)を、ポリエステルアクリレート樹脂(A−9300−1CL、新中村化学工業株式会社製)に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例3の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0174】
(比較例4)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
比較例1において、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)を、ポリウレタン樹脂(U−6LPA、新中村化学工業株式会社製)に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例4の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0175】
(比較例5)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
比較例1において、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)を、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)とエチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPEA−12、日本化薬株式会社製)を1:1(質量比)で混合した混合物に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例5の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0176】
(比較例6)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
比較例1において、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)を、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)とエチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPEA−12、日本化薬株式会社製)を1:9(質量比)で混合した混合物に代えた以外は、比較例1と同様にして、比較例6の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0177】
(比較例7)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
比較例1において、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)を、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)とエチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPEA−12、日本化薬株式会社製)を1:9(質量比)で混合した混合物に代え、アンダー層を設けなかった以外は、比較例1と同様にして、比較例7の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0178】
次に、実施例1〜10及び比較例1〜7において、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0179】
<ガラス転移温度Tgの測定>
厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、実施例1〜10及び比較例1〜7で調製した各保護層用塗布液を厚みが4μmとなるように塗布し、保護層を形成したサンプル(長さ50mm、幅10mm)を用いて、剛体振り子試験機(RPT−3000、エー・アンド・デー社製)によりガラス転移温度Tgを測定した。
【0180】
<伸度の測定>
厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、実施例1〜10及び比較例1〜7で調製した各保護層用塗布液を厚み4μmとなるように塗布し、保護層を形成したサンプル(長さ100mm、幅10mm)を用いて、引っ張り試験機(MX2−500N、イマダ社製)により、下記式から伸度を求めた。なお、クラックの発生の有無は、サンプルの表面を目視で観察して確認した。
伸度(%)=〔(クラック発生時のサンプルの長さ−元のサンプルの長さ)/元のサンプルの長さ〕×100
【0181】
<摩擦抵抗値の測定>
厚み125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、実施例1〜10及び比較例1〜7で調製した各保護層用塗布液を厚み4μmとなるように塗布し、保護層を形成したサンプル(長さ100mm、幅10mm)を用いて、摩擦磨耗解析装置(TS501、界面協和科学株式会社製)により摩擦抵抗値を評価した。
【0182】
<耐久性(発色濃度)試験>
作製した各可逆性感熱記録媒体について、カードプリンタ(パナソニックコミュニケーションズ社製、R−28000)を用い、印字及び消去を300回繰り返した。印字及び消去条件としては、印字エネルギーを0.57mJ/dot、消去温度を130℃、搬送速度を56mm/secとした。300回繰り返した後に、濃度計(X−rite938、X−RITE社製)を用いて画像濃度を測定した。
【0183】
<耐クラック性の評価>
作製した各可逆性感熱記録媒体について、カードプリンタ(パナソニックコミュニケーションズ社製、R−28000)を用い、印字及び消去を300回繰り返した後に、可逆性感熱記録媒体の表面を目視で観察し、下記の基準により耐クラック性を評価した。
〔評価基準〕
5:可逆性感熱記録媒体の表面に、クラックの発生なし
4:可逆性感熱記録媒体の表面に、クラックが僅かに発生
3:可逆性感熱記録媒体の表面に、クラックが部分的に発生
2:可逆性感熱記録媒体の表面の大部分で、クラックが発生
1:可逆性感熱記録媒体の表面の全面でクラックがして、可逆性感熱記録媒体の表面を破壊した
【0184】
<耐ヘッドカス性の評価>
作製した各可逆性感熱記録媒体について、カードプリンタ(パナソニックコミュニケーションズ社製、R−28000)を用い、印字及び消去を300回繰り返した後に、プリンタのヘッドを顕微鏡により観察し、カスの付着を下記基準で評価した。また、可逆性感熱記録媒体表面を目視観察し、ヘッドカスによる印字障害について、下記基準で評価した。なお、印字障害とは、プリンタのヘッドにカスが付着することで可逆性感熱記録媒体表面に印字できなくなり、文字、形が認識できなくなる状態のことを意味する。
〔評価基準〕
5:ヘッドにカスの付着がなく、印字障害なし
4:ヘッドにカスがわずかに付着しているが、印字障害なし
3:ヘッドにカスが部分的に付着しており、部分的に印字障害が発生している
2:ヘッドの大部分にカスが付着しており、大部分で印字障害が発生している
1:ヘッドの全面にカスが付着しており、全面で印字障害が発生している
【0185】
【表1−1】

*M9060:東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート樹脂
*M8060:東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート樹脂
*M8030:東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート樹脂
*M7100:東亞合成株式会社製、ポリエステルアクリレート樹脂
*DPHA:商品名;KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製、ジペンタエリスリトールアクリレート
*DPEA−12:商品名;KAYARAD DPEA−12、日本化薬株式会社製、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
*A−9300−1CL:ポリエステルアクリレート樹脂、新中村化学工業株式会社製
*U−6LPA:ポリウレタン樹脂、新中村化学工業株式会社製
*シリカ粒子:P526、水澤化学工業社製、不定形
*シリコーン粒子:トスパール145、東芝シリコーン社製、球形
*シリコーン粒子:トスパール120、東芝シリコーン社製、球形
*シリカ粒子:E220A、日本シリカ工業社製、不定形
【表1−2】

【0186】
本発明の態様としては以下のとおりである。
<1> 支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上に保護層とを有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含有し、
前記保護層がポリエステルアクリレート樹脂を含有し、該保護層のガラス転移温度が230℃以上であり、かつ伸度が10%以上であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体である。
<2> 保護層のガラス転移温度が250℃以上であり、かつ伸度が15%以上である前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<3> 保護層の摩擦抵抗値が、1.3以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<4> 保護層が球状粒子を含有し、該球状粒子が球状シリコーン粒子である前記<1>から<3>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<5> 可逆性感熱記録層と支持体の間に、少なくとも中空粒子を含有するアンダー層を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<6> 中空粒子が、中空率70%以上であり、該中空粒子の最大粒子径(D100)が5μm〜10μmであると共に、50%頻度の粒子径(D50)との比率(D100/D50)が2〜3である前記<5>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<7> 可逆性感熱記録層と保護層の間に、ポリビニルアルコール系重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体から選択される少なくとも1種を含む樹脂、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物の少なくともいずれかを含む有機金属化合物、並びに無機層状化合物を含む金属化合物含有層を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<8> 金属化合物含有層の平均厚みが、0.1μm〜10μmである前記<7>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<9> 金属化合物含有層と保護層との間に、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む熱硬化性樹脂含有層を更に有する前記<7>から<8>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<10> 情報記憶部と可逆表示部とを有し、前記可逆表示部が前記<1>から<9>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体を有することを特徴とする可逆性感熱記録部材である。
<11> 情報記憶部が、磁気感熱記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、ホログラム、RF−IDタグカード、ディスク、ディスクカートリッジ及びテープカセットから選択される少なくとも1種を有する前記<10>に記載の可逆性感熱記録部材である。
【0187】
本発明の可逆性感熱記録媒体及び可逆性感熱記録部材は、例えば、ファクシミリ、ワードプロセッサ、科学計測機等の出力用紙として、また、交通機関の定期券、各種のプリペイドカード及びポイントカード等の磁気カード、ICカード、ICタグとして好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0188】
1 可逆性感熱記録媒体
2 支持体
3 可逆性感熱記録層(感熱記録層)
4 金属化合物含有層(ガスバリア層)
5 保護層
6 アンカー層
7 アンダー層
8 プライマー層
10 ガスバリア樹脂
11 無機層状化合物
13 被加熱部分
15 加熱ヘッド
16 未加熱部分
17 消色部
18 加熱ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0189】
【特許文献1】特開平11−334220号公報
【特許文献2】特開2007−331382号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に可逆性感熱記録層と、該可逆性感熱記録層上に保護層とを有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色性化合物及び電子受容性化合物を含有し、
前記保護層がポリエステルアクリレート樹脂を含有し、該保護層のガラス転移温度が230℃以上であり、かつ伸度が10%以上であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
保護層のガラス転移温度が250℃以上であり、かつ伸度が15%以上である請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
保護層の摩擦抵抗値が、1.3以下である請求項1から2のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
保護層が球状粒子を含有し、該球状粒子が球状シリコーン粒子である請求項1から3のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
可逆性感熱記録層と支持体の間に、少なくとも中空粒子を含有するアンダー層を有する請求項1から4のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
中空粒子が、中空率70%以上であり、該中空粒子の最大粒子径(D100)が5μm〜10μmであると共に、50%頻度の粒子径(D50)との比率(D100/D50)が2〜3である請求項5に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
可逆性感熱記録層と保護層の間に、ポリビニルアルコール系重合体及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体から選択される少なくとも1種を含む樹脂、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物の少なくともいずれかを含む有機金属化合物、並びに無機層状化合物を含む金属化合物含有層を有する請求項1から6のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項8】
金属化合物含有層の平均厚みが、0.1μm〜10μmである請求項7に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項9】
金属化合物含有層と保護層との間に、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む熱硬化性樹脂含有層を更に有する請求項7から8のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項10】
情報記憶部と可逆表示部とを有し、前記可逆表示部が請求項1から9のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体を有することを特徴とする可逆性感熱記録部材。
【請求項11】
情報記憶部が、磁気感熱記録層、磁気ストライプ、ICメモリ、光メモリ、ホログラム、RF−IDタグカード、ディスク、ディスクカートリッジ及びテープカセットから選択される少なくとも1種を有する請求項10に記載の可逆性感熱記録部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−210805(P2012−210805A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51554(P2012−51554)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】