可逆性感熱記録媒体
【課題】高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない可逆性感熱記録媒体の提供。
【解決手段】少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有する可逆性感熱記録媒体であって、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている可逆性感熱記録媒体である。
【解決手段】少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有する可逆性感熱記録媒体であって、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている可逆性感熱記録媒体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け、カスレ、及び消し残りが生じることのない電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード;鉄道、バス、ETC等の交通機関;デジタル放送、第三世代携帯電話等の加入者カード:図書館の窓口サービス、学生証、社員証、住民基本台帳カードなどの幅広い業界に導入され、利用者の身近な生活からビジネスまで様々な分野で利用が始まっているが、現在の経済社会活動の高度化に伴い、廃棄物の発生量は増大している。
そこで、従来の大量生産、大量消費、大量廃棄等の経済社会やライフスタイルを見直し、物資の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費を抑え、環境への負荷が少ない循環型社会を形成することが急務になっている。
【0003】
例えば、電子情報記録素子(以下、「ICチップモジュール」、「ICチップ」と称することもある)を組み込んだ可逆性感熱記録媒体は、ICチップの内部情報を書き換えると共に、記録されている情報を可視画像として可逆性感熱記録媒体に表示できるため、廃棄物の発生量を減らすことが可能である。
このようなICチップモジュールを組み込んだ可逆性感熱記録媒体は、製造業分野における作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書として用いられてきている。具体的には、指示書を丸棒状部品に巻き付けたり、カードケースに入れて使用したのち、指示書に付着した汚れを洗浄し、プリンターで指示書を書き換えることが繰り返し行われている。
前記指示書に画像を形成する場合、及び指示書に形成された画像を消去する場合は、該指示書をプリンターのサーマルヘッド、消去バー、消去ローラ、消去板等の加熱装置に押し当てる。このため、指示書を書き換える際に、ICチップモジュールが破損しないようにすると共に、ICチップモジュールと可逆性感熱記録媒体の接着部から接着剤が流出しないようにする必要がある。また、指示書を洗浄する際には、ICチップモジュールが可逆性感熱記録媒体から剥がれないようにする必要がある。更に、指示書は、可とう性を有すると共に、画像の品質が良好であることが望まれている。
【0004】
例えば特許文献1〜5には、図1に示すように、一方のオーバーシートとして、通常は無色ないし淡色のロイコ染料と加熱により該ロイコ染料を発色させ、かつ再加熱により消色させる可逆顕色剤を含有する可逆性感熱層114bを少なくとも1層有する可逆性感熱記録シート114を使用し、ICチップモジュール112を組み込んだICカード、及び、該ICカードを組み込む他方のオーバーシート(フィルム基材111)と可逆性感熱記録シート114との間にコア材113を射出成形により設け、両シートをコア材113を介して熱接着させてなるICカードが提案されている。
【0005】
しかし、これらの提案のICカードでは、ICチップモジュール112が、可逆性感熱記録シート114側の面に設けられているため、ICチップモジュール112の存在により可逆性感熱記録媒体が不均一に加圧されてしまい凹凸部が形成されてしまう。その結果、可逆性感熱記録媒体を加熱装置によって均一に加熱することができなくなり、記録時には、可逆性感熱記録媒体における熱伝導を均一に保てず、可逆性感熱記録媒体に記録した画像にムラが生じてしまう。また、情報の消去時には可逆性感熱記録媒体における加熱装置の接する部分にムラが生じるため、消去不良が発生してしまう。更に、可逆性感熱記録媒体におけるICチップモジュール112が設けられた部分には凸部が生じるので、ICチップモジュール112が可逆性感熱記録媒体を介して加熱装置で加圧されて、ICチップモジュール112が可逆性感熱記録媒体から剥がれたり、傷付いてしまうという問題がある。
【0006】
これらの問題の解決方法としては、例えば特許文献6〜11に開示された手法が提案されている。これらの手法の場合には、ICチップモジュール付き可逆性感熱記録媒体が厚く硬いカードとなるので、剛性が高くなり可とう性を有さなくなるという問題がある。
このため、特許文献12〜13では、ICチップモジュールをICチップ基板を介して可逆性感熱記録シートと反対側になるように設けている。しかし、電子情報記録素子、アンテナ回路、及び導通部材を有する電子情報記録シート(以下、「インレット」と称することもある)の表面の凹凸は、電子情報記録素子だけが原因ではなく、アンテナ回路、及び導通部材も表面の凹凸を発生させている。このアンテナ回路は、アンテナ回路基板のアンテナ回路側と裏面側でジャンピング回路を形成して導通部材により接続している。この際、裏面側の導通部材、アンテナ回路側と裏面側をレーザー等により貫通させて導通させる際にカシメ部と呼ばれる箇所が発生する。この裏面側の導通部材及びカシメ部においても表面を凹凸にさせるため、ICチップだけを該ICチップ基板を介して可逆性感熱記録シートと反対側になるように設けても、可逆性感熱記録シート側の凹凸は解決されていない。特に、特許文献13では、「アンテナ回路基板2の裏面上に電気的に短絡するジャンパー線12を備えている」が、このようなジャンパー線12が可逆性感熱記録シート側に存在することによっても、可逆性感熱記録媒体の記録不良及び消去不良が発生するという問題がある。
【0007】
前記問題点を解決するため、本願出願人は、先に、特許文献14及び特許文献15を提案している。これらの提案は、電子情報記録素子をシートの貫通孔中に突出させ、シートの厚み以上に突出させないようにすると共に、可逆性感熱記録シートの可逆性感熱記録層を有さない側の面が、電子情報記録シートの、アンテナ回路基板、電子情報記録素子、アンテナ回路、及び導通部材を有さない側の面と対向させることで解決を図っており、プリンターの搬送速度が2IPSの場合には記録不良及び消去不良を改善できる。しかし、これらの提案においても、高速(3IPS以上)で画像消去及び記録を行うと、電子情報記録シート(ICチップ領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域を含む)におけるリライト画像品質(カスレのない印字、消し残りない消去)の改善効果が得られず、発色不良が発生するという問題がある。
したがって従来は、プリンターの搬送速度2IPSで電子情報記録シートにおけるリライト画像品質の改善を行ってきたが、高速の搬送速度3IPSで画像消去及び記録を行うと、リライト画像品質の改善効果が得られていないことが判った。これは、高速になるほど、プリンターの消去ヘッドからの熱量が可逆性感熱記録媒体表面に伝わりにくくなるためである。そこで、消去性を向上させるために、消去温度を上げると、消去ヘッドからの高い熱量で可逆性感熱記録媒体が過熱状態となり、その状態で可逆性感熱記録媒体に記録を行うと、急冷効果が得られず(消去モードに入ることで)発色しにくくなる。
そのため、電子情報記録シート表面の凹凸(電子情報記録シートそのものは平坦ではなく、ICチップ、アンテナ回路、アンテナ回路とICチップを結ぶカシメなどにより、基材部と50μm程度の凹凸が生じる)及び段差があると、サーマルヘッドとの接触不良による空気の断熱効果により、熱が伝わらないため、急冷効果が得られず、発色しなくなってしまう、という問題がある。
【0008】
したがって3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない高品質な電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体の提供が望まれているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平11−154210号公報
【特許文献2】特開2000−94866号公報
【特許文献3】特開2000−251042号公報
【特許文献4】特開2001−63228号公報
【特許文献5】特開2002−103654号公報
【特許文献6】特開平11−91274号公報
【特許文献7】特開平11−59037号公報
【特許文献8】特開平11−85938号公報
【特許文献9】特開2002−117880号公報
【特許文献10】特開2003−141486号公報
【特許文献11】特開2003−141494号公報
【特許文献12】特開2005−250578号公報
【特許文献13】特開2006−344207号公報
【特許文献14】特開2008−162077号公報
【特許文献15】特開2008−229911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない高品質な電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、
前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、
前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されていることを特徴とする可逆性感熱記録媒体である。
<2> 基材シートと、該基材シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、可逆性感熱記録シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<3> 第2のシートと可逆性感熱記録シートの間に、第3のシートを有する前記<2>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<4> 可逆性感熱記録シートと、該可逆性感熱記録シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、基材シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<5> 第2のシートと基材シートの間に、第3のシートを有する前記<4>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<6> 電子情報記録シートの外周縁部と、くり貫き部との隙間が0.0mm以上0.1mm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<7> 第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に対して±10μm以内である前記<1>から<6>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<8> 第2のシートの厚みAと、電子情報記録シートの最大厚みB(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)と、第3のシートの厚みCとの比〔(A−B)/C〕が、絶対値で0.00以上0.15以下である前記<3>及び<5>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<9> くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと第1のシートとの間に接着層を有し、該第1のシート及び前記接着層の合計厚みと、前記電子情報記録素子の高さとの差が、0μm〜25μmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<10> 第1、第2及び第3のシートが、いずれもポリエチレンテレフタレートからなる前記<3>、<5>、<8>、及び<9>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<11> 第3のシートが、基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一表面積である前記<3>、<5>、<8>、<9>、及び<10>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<12> 可逆性感熱記録層が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種と、ロイコ染料とを含有する前記<1>から<11>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
【化3】
ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R1は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R2は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。
【化4】
ただし、前記一般式(2)中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R3は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R4は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【0012】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。これにより、電子情報記録シートによる段差及び凹凸をなくすことができ、可逆性感熱記録媒体全体が平坦化される。その結果、サーマルヘッド又はイレーズバーによる上面からの接触ムラ、及びプラテンローラによる下面からの接触ムラをなくすことができ、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない高品質な電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有してなり、基材シート、可逆性感熱記録シート、第3のシート、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0015】
本発明においては、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。これにより、電子情報記録シートによる段差及び凹凸をなくすことができ、平坦化されるので、サーマルヘッド又はイレーズバーによる上面からの接触ムラ、及びプラテンローラによる下面からの接触ムラをなくすことができ、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがなくなる。
【0016】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、第1形態では、基材シートと、該基材シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、可逆性感熱記録シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。
本発明の可逆性感熱記録媒体は、第2形態では、可逆性感熱記録シートと、該可逆性感熱記録シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、基材シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。
【0017】
前記第2のシートと前記可逆性感熱記録シートの間に、第3のシートを有することが好ましい。これにより、第3のシートと第1のシートとで上下から電子情報記録シートを挟み込むことができ、両面から電子情報記録シートによる段差及び凹凸をなくし、平坦化でき、画像抜けを改善することができる。
【0018】
前記電子情報記録シートの外周縁部と、前記第2のシートのくり貫き部との隙間が0.0mm以上0.1mm以下であることが好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。なお、隙間が0mmとは、第2のシートのくり貫き部に電子情報記録シート全体が隙間なくぴったりと収納されていることを意味する。
前記隙間が、0.1mmを超えると、隙間が大きすぎて、更に第2のシート上に第3のシートを設けても空気の断熱効果により、熱が伝わらないために急冷効果が得られず、発色不良が生じることがある。
【0019】
前記第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に対して±10μm以内であることが好ましく、±8μm以内がより好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。
前記第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に比べて厚すぎたり、薄すぎたりすると、更に第3のシートを設けても電子情報記録シートの段差及び凹凸を吸収することができず、サーマルヘッドと可逆性感熱性記録媒体表面の接触が不均一になり、発色不良が生じることがある。
【0020】
前記第2のシートの厚みAと、電子情報記録シートの最大厚みB(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)と、第3のシートの厚みCとの比〔(A−B)/C〕が、絶対値で0.00以上0.15以下であることが好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。
前記比〔(A−B)/C〕が0.15を超えると、第3のシートの厚みが薄くなりすぎて、電子情報記録シートの凹凸及び段差を吸収することができず、サーマルヘッドと可逆性感熱性記録媒体表面の接触が不均一になり、発色不良が生じることがある。
【0021】
前記第2のシートのくり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと第1のシートとの間に接着層を有し、該第1のシート及び前記接着層の合計厚みと、電子情報記録素子の高さとの差が、0μm〜25μmであることが好ましく、0μm〜20μmがより好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。
前記差が0μm未満であると、電子情報記録素子が基材シート側に突出して、記録時に電子情報記録素子の周囲領域が発色不良となることがある。前記差が25μmを超えると、電子情報記録素子が裏面側に凹となり、記録時に電子情報記録素子領域が発色不良となることがある。
ここで、前記電子情報記録素子の高さ(チップ高さ)は、アンテナ回路基板表面からの電子情報記録素子の厚み(高さ)を意味し、カシメ部の有無により求め方が異なる。該カシメ部はHFインレイでは存在するが、UHFインレイでは存在しない。
具体的には、図9に示すように、基材204上にアンテナ部203を有し、該アンテナ部203上にカシメ部202と、チップ部201を有する場合には、電子情報記録素子の高さhは、(チップ部の厚みa−カシメ部の厚みb)となる。
また、図10に示すように、アンテナ部上にカシメ部がない場合には、電子情報記録素子の高さhは、(チップ部の厚みa−アンテナ部の厚みc)となる。
【0022】
前記第1のシートの厚さは、50μm〜150μmが好ましく、75μm〜125μmがより好ましい。
前記第2のシートの厚さは、25μm〜200μmが好ましく、50μm〜188μmがより好ましい。
前記第3のシートの厚さは、25μm〜200μmが好ましく、38μm〜188μmがより好ましい。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体の詳細について説明する。図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一例を示す平面図、図3及び図4は、図2のA−A線での断面図である。
図3に示す第1形態の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体20は、基材シート1、電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔12を有する第1のシート3、少なくとも電子情報記録素子11を有する電子情報記録シート10、電子情報部材を収納可能なくり貫き部13を有する第2のシート5、第3のシート7、少なくとも可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録シート9が順次積層されている。図3中、2、4、6、及び8は接着層を意味する。
この可逆性感熱記録媒体20は、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。即ち、基材シート1、第1のシート3、くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシート5、第3のシート7、及び可逆性感熱記録シート9が、この順に積層されている。
【0024】
図4に示す第2形態の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体20は、少なくとも可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録シート9、電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔12を有する第1のシート3、少なくとも電子情報記録素子11を有する電子情報記録シート10、電子情報部材を収納可能なくり貫き部13を有する第2のシート5、第3のシート7、基材シート1が順次積層されている。図4中、2、4、6、及び8は接着層を意味する。
この可逆性感熱記録媒体20は、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。即ち、可逆性感熱記録シート9、第1のシート3、くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシート5、第3のシート7、及び基材シート1が、この順に積層されている。
【0025】
<基材シート>
前記基材シート1としては、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、また、その平面形状としては、四角形、円形などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記基材シート1としては、例えば樹脂シート、ゴムシート、合成紙、金属シート、ガラスシート又はこれらの複合体を用いることができる。これらの中でも、樹脂シートが特に好ましい。
前記樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート、ポリメチルメタクリレートシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートシートが特に好ましい。
【0027】
前記基材シート1は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、20μm〜200μmが好ましく、50μm〜188μmがより好ましい。
【0028】
<電子情報記録シート>
前記電子情報記録シート(「インレット」と称することもある)は、電子情報記録素子(ICチップ)、アンテナ回路を有し、カシメ部、アンテナ回路基板、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0029】
ここで、図5A及び図5Bは、本発明で用いられる電子情報記録シートの一例を示し、図5Aは平面図、図5Bは左側面図である。
この電子情報記録シート10は、プラスチックフィルム等のアンテナ回路基板10a上に、コイル状のアンテナ回路10cを形成し、該コイルと容量素子とによりLC共振回路を形成して一定周波数の電波を受信すると共に、電子情報記録素子10bの情報を発信源に送信して返すことができる。交信周波数としては、一般的には125kHz、13.56MHz、2.45GHz、5.8GHz(マイクロ波)及びUHF帯などの周波数帯から適宜選択して使用される。10dはカシメ部である。
【0030】
アンテナ回路10cは、アンテナ回路基板10a上に積層された金属膜をエッチングすることにより形成可能であるが、これに限られるものではなく、例えば、被覆された電線(エナメル線など)を同一面上に巻きなおしてもよく、アンテナ回路基板10a上にいわゆる導電性ペーストを印刷したり、アンテナ回路基板に埋め込んだりして、アンテナ回路10cを形成してもよい。
アンテナ回路基板10aに使用する基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば紙フェノール、ガラスエポキシ、コンポジット等のリジッドタイプ、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、紙、合成紙等のフレキシブルタイプ及び両者の複合タイプを用いることができる。
前記基材の厚みは、15μm〜360μmが好ましく、強度、加工作業性、コスト等の点から20μm〜100μmがより好ましい。
ラミネートする金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、鉄箔などを使用できるが、コスト、加工性からアルミニウム箔が好ましく、その厚みは6μm〜50μmが好ましい。形状は、特に制限はなく、正方形、長方形、円形、楕円形の何れでもよい。
前記電子情報記録素子10bの厚さ(高さ)は、200μm以下が好ましく、25μm〜140μmがより好ましい。また、電子情報記録素子10bを保護するために、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、紙等の保護膜を接着させることもできる。前記保護膜の厚さは、10μm〜60μmが好ましい。
【0031】
このような電子情報記録シート10としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばUPM社製、オムロン社製、エイリアンテクノロジー社製、ソニー株式会社製、富士通株式会社製、日立製作所製、テキサス・インスツルメンツ社製等のインレットを用いることができる。
【0032】
<第1、第2、及び第3シート>
前記第1から第3シートとしては、樹脂シート、ゴムシート、合成紙、金属シート、ガラスシート又はこれらの複合体を用いることができる。これらの中でも、樹脂シートが特に好ましい。
前記樹脂シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート、ポリメチルメタクリレートシート、などが挙げられ、これらの中でも、強い剛性を有する点からPETが特に好ましい。これは、電子情報記録シートの凹凸、電子情報記録シートと第2のシートの段差、第1のシートの厚みと電子情報記録素子の高さとの差、等が多少存在しても、第1、第2、及び第3のシートが、いずれもポリエチレンテレフタレート(PET)であれば、PETは強い剛性を有するので、PETと各シート厚み差の間でブリッジ効果が得られ、画像抜けを改善することができる。
【0033】
前記第1のシートは、電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する。該貫通孔の大きさは、電子情報記録素子の大きさに応じて適宜選定することができる。
前記第3のシートは、基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一面積であることが白抜け及びカスレの生じない記録や端面からのハガレを生じさせない点から好ましい。
【0034】
<可逆性感熱記録シート>
前記可逆性感熱記録シート9は、少なくとも可逆性感熱記録層を有し、中間層、保護層、バック層、基材シート、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0035】
ここで、図6に、本発明で用いられる可逆性感熱記録シート9の一例を示す。この可逆性感熱記録シートは、基材シート102の一方の面に、可逆性感熱記録層103、中間層104及び保護層105が積層されており、他方の面に、バック層101が形成されている。
前記可逆性感熱記録層103は、色調が可逆的に変化する感熱記録層であり、温度変化によって色の状態が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料を含有する。可逆性感熱記録材料は透過率、反射率、吸収波長、散乱度等の変化の組み合わせにより、色の状態が変化する。
前記可逆性感熱記録材料としては、熱により透明度や色調が可逆的に変化する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温より高い第一の温度で第一の色の状態となり、第一の温度よりも高い第二の温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となる材料が挙げられる。これらの中でも、第一の温度と第二の温度で色の状態が変化する材料が特に好ましい。
具体的には、第一の温度で透明状態となり、第二の温度で白濁状態となる材料(特開昭55−154198号公報参照)、第二の温度で発色し、第一の温度で消色する材料(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報参照)、第一の温度で白濁状態となり、第二の温度で透明状態となる材料(特開平3−169590号公報参照)、第一の温度で黒色、赤色、青色等に発色し、第二の温度で消色する材料(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報参照)等が挙げられる。これらの中でも、樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した系や、ロイコ染料と顕色剤を用いた系が特に好ましい。
【0036】
前記ロイコ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記顕色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報等に開示されているものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記顕色剤は、分子内に、ロイコ染料を発色させる顕色能を持つ構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)と、分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)を1つ以上有する化合物である。これらの構造は、ヘテロ原子を有する2価以上の連結基を介して連結されていてもよい。また、長鎖炭化水素基は、同様の連結基及び/又は芳香族基を有していてもよい。
【0037】
このような顕色剤としては、例えば特開平9−290563号公報及び特開平11−188969号公報に開示されているものが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種が好ましい。これらの顕色剤は、感度が非常に高いため、同じ画像濃度を出力する場合、従来の顕色剤と比べて、与える印加エネルギーを10%〜30%程度削減することができる。与える印加エネルギーが少なければ、顕色剤の熱分解が緩和されると共に、可逆性感熱記録媒体の表面及び媒体自身に与えるダメージも緩和され、これにより繰り返し耐久性の劣化も緩和されるので、画像の品質を向上させることができる。
【0038】
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R1は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R2は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。
【化6】
ただし、前記一般式(2)中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R3は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R4は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【0039】
前記一般式(1)及び(2)において、X、Y、及びZは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表し、特に窒素原子又は酸素原子を含む2価の有機基が好ましく、例えば、下記構造式で表される基を少なくとも1つ有する2価の有機基などが挙げられる。
【化7】
【0040】
前記ヘテロ原子を有する2価の有機基としては、具体的には、下記構造式で表される基が好適に挙げられる。
【化8】
【0041】
これらの中でも、下記構造式で表される基が特に好適に挙げられる。
【化9】
【0042】
前記一般式(1)及び(2)において、R1及びR3は、置換基により置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表す。
前記R1及びR3としては、以下の構造式で表されるものが好適に挙げられる。
【化10】
ただし、前記式中のq、q’、q’’、及びq’’’は、それぞれ前記R1及びR3の炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH2)q−が特に好ましい。
【0043】
前記一般式(1)及び(2)において、R2及びR4は、置換基により置換されていてもよい炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数は8〜18が好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基に結合している置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等がある。なお、R1及びR2、R3及びR4の炭素の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上がより好ましい。
前記R2及びR4としては、以下に示すものが好適に挙げられる。
【化11】
ただし、前記式中のq、q’、q’’、及びq’’’は、それぞれ前記R2及びR4の炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH2)q−CH3が特に好ましい。
【0044】
前記可逆性感熱記録層103は、更に必要に応じて、塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御したりするための添加剤を添加することができる。添加剤としては、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色安定化剤、消色促進剤等が挙げられる。
前記可逆性感熱記録層103は、ロイコ染料、顕色剤及び添加剤をバインダー樹脂と共に含有することが好ましい。前記バインダー樹脂としては、基材シート上に、これらの材料を結着できさえすれば特に限定されない。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線(UV)、電子線(EB)等を用いて硬化させた樹脂が好ましく、硬化剤を用いて熱硬化させた樹脂が特に好ましい。これにより、ゲル分率を向上させることができる。
前記熱硬化させることが可能な樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、などが挙げられる。
【0045】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イソシアネートが好ましい。前記イソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI);これらのイソシアネートのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、ブロック化イソシネート、などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、そのアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましい。ただし、硬化剤は、全量が硬化反応しなくてもよい。即ち、前記可逆性感熱記録層103に未反応の硬化剤が存在していてもよい。このとき、硬化反応を促進させるために、硬化触媒を用いてもよい。
【0046】
前記可逆性感熱記録層103は、ゲル分率が30%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、繰り返し耐久性が低下することがある。
ここで、前記ゲル分率は、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことにより測定することができる。具体的には、基材シート102から可逆性感熱記録層103を剥離して、可逆性感熱記録層103の初期質量を測定する。次に、可逆性感熱記録層103を400メッシュの金網に挾んで、未硬化のバインダー樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸した後、真空乾燥して、乾燥後の質量を測定する。これにより、ゲル分率は下記数式1から求めることができる。
<数式1>
ゲル分率(%)=(乾燥後の質量)/(初期質量)×100
このとき、可逆性感熱記録層103中の、バインダー樹脂以外の成分(有機低分子物質粒子等)の質量を除いて計算を行う。なお、予め有機低分子物質粒子の質量が分からないときは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の断面観察により、単位面積当たりに占める面積比と、バインダー樹脂と有機低分子物質粒子の比重から質量比を求めて、有機低分子物質粒子の質量を算出すればよい。
【0047】
前記可逆性感熱記録層103は、発色成分に対するバインダー樹脂の質量比が0.1〜10であることが好ましい。前記質量比が、0.1より小さいと、可逆性感熱記録層103の熱強度が不足することがあり、10より大きいと、発色濃度が低下することがある。
可逆性感熱記録層103は、ロイコ染料、顕色剤、添加剤、バインダー樹脂、及び溶媒を均一に分散させた塗布液を塗布して形成することができる。
前記溶媒としては、例えばアルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、などが挙げられる。
塗布液は、例えばペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等の分散装置を用いて調製することができる。このとき、分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各材料を分散させたものを混合してもよい。更に、各材料を加熱溶解させて急冷又は徐冷することによって析出させてもよい。
塗布方法としては、ブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、スプレー塗工法、エアナイフ塗工法、ビード塗工法、カーテン塗工法、グラビア塗工法、キス塗工法、リバースロール塗工法、ディップ塗工法、ダイ塗工法等が挙げられる。
【0048】
前記可逆性感熱記録層103の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記厚さが1μm未満であると、発色濃度が低下して画像のコントラストが低下することがあり、20μmを超えると、可逆性感熱記録層103の熱分布が大きくなって、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度が得られなくなることがある。
【0049】
−保護層−
前記保護層105は、熱、紫外線、電子線、などを用いて硬化させた樹脂を含有することができる。これらの中でも、紫外線又は電子線を用いて硬化させた樹脂が特に好ましい。
前記紫外線(電子線)を用いて硬化させることが可能な樹脂としては、例えばウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系等のオリゴマー;各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。
なお、紫外線を用いて架橋させる際には、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが好ましい。また、熱硬化させることが可能な樹脂としては、前記可逆性感熱記録層と同様の樹脂を用いることができ、同様に硬化させることができる。
前記保護層105の厚さは、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0050】
−中間層−
前記中間層104は、可逆性感熱記録層103に対する保護層105の接着性向上、保護層105の塗布液の塗布による可逆性感熱記録層103の変質防止、保護層105中の添加剤の可逆性感熱記録層103への移行防止のために設ける。これにより、画像の保存性を改善することができる。
前記中間層104は、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させた樹脂、熱可塑性樹脂を含有することができる。熱硬化性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。また、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能なものとしては、前記可逆性感熱記録層と同様のものを用いることができ、同様に硬化させることができる。なお、前記中間層104の形成方法は、可逆性感熱記録層103と同様である。
前記中間層104は、必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤等を含有してもよい。前記中間層104中のフィラーの含有量は、1体積%〜95体積%が好ましく、5体積%〜75体積%がより好ましい。また、前記中間層104中の紫外線吸収剤の含有量は、前記樹脂に対して、0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。
前記中間層104の厚さは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.3μm〜3μmがより好ましい。
【0051】
また、前記可逆性感熱記録層103上に積層される中間層104及び/又は保護層105は、酸素透過性の低い樹脂を含有することが好ましい。これにより、可逆性感熱記録層103中のロイコ染料及び顕色剤の酸化を抑制することが可能になる。
なお、前記可逆性感熱記録層103と基材シート102の間にアンダー層を設けてもよい。これにより、可逆性感熱記録層103の発色感度及び可逆性感熱記録層103と基材シート102の接着性を向上させることができる。
また、レーザー光を用いて、可逆性感熱記録層103を発色させるために、可逆性感熱記録シート9に、レーザー光を吸収して光を熱に変換する光熱変換層を設けてもよい。
更に、放熱を防止するために、可逆性感熱記録シート9に、空気層等の断熱層を設けてもよい。
【0052】
−バック層−
前記バック層101は、可逆性感熱記録層103が設けられている側の面の樹脂の収縮によるカールを防止するために、基材シート102の可逆性感熱記録層103が設けられていない側の面に設けられる。
前記バック層101は、熱、紫外線、電子線等、好ましくは、紫外線を用いて硬化させた樹脂を含有することができる。また、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能なものとしては、前記可逆性感熱記録層と同様のものを用いることができ、同様に硬化させることができる。
なお、前記バック層101の形成方法は、可逆性感熱記録層103と同様であるが、このとき、可逆性感熱記録層103が設けられている側と、バック層101が設けられている側の収縮のバランスが取れるように塗布することが好ましい。これにより、全ての層が塗布された後に、可逆性感熱記録シートを平坦にすることができる。
【0053】
また、前記バック層101は、樹脂の他に、有機フィラー、無機フィラー、滑剤、着色顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を含有することもできる。
前記無機フィラーとしては、例えば炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等が挙げられる。
前記有機フィラーとしては、例えばシリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えばサリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造等を有する化合物が挙げられる。
前記滑剤としては、例えば合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類等が挙げられる。
前記バック層101の厚さは、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0054】
前記可逆性感熱記録シート9としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば630BF、530BF、630BD、530BD、430BD、631FB、431FB(いずれも、株式会社リコー製);TRCG99CS、TRCG99SS、TRCG99SH、TRCGAACS、TRCGBBBS(いずれも、三菱製紙株式会社製)、などが挙げられる。
【0055】
<接着層>
前記基材シート1、前記第1のシート3、くり貫き部に電子情報記録シート10全体を収納した前記第2のシート5、前記第3のシート7、及び前記可逆性感熱記録シート9は、接着層2、4、6、及び8を介して順次積層されている。
前記接着層2、4、6、及び8は、接着剤を用いて形成することができる。
前記接着剤としては、常温で加圧接着できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、合成ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、EVA系樹脂、などが挙げられる。
これらの中でも、天然ゴム、合成ゴム、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、EVA系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂が特に好ましい。
前記接着剤の種類や接着層の厚さは、被着体の種類や使用される環境、接着強度等を考慮して適宜選択することができる。また、前記接着層には、各種添加剤、無機フィラー、有機フィラー、繊維材料などを含有してもよい。
前記接着層2、4、6、及び8の厚さは、それぞれ独立に、10μm〜150μmが好ましく、10μm〜130μmがより好ましく、10μm〜100μmが更に好ましい。
前記厚みが、10μm未満であると、十分な接着強度が得られないために容易に剥がれるし、150μmを超えると、加熱装置を用いて可逆性感熱記録媒体を印字や消去する際に、サーマルヘッドからの熱圧力により接着剤層が溶けて、はみ出しが発生することがある。
【0056】
次に、本発明の可逆的感熱記録媒体の製造方法の一例について説明する。
まず、接着層を有する第1のシートは、貫通孔形成手段により、接着層を有する電子情報記録シートのICチップが納まる大きさで貫通孔が形成される。また、接着層を有する第2のシートは、くり貫き部形成手段により、電子情報記録シート全体が収納されるくり貫き部が形成される。次に、接着層を有する第3のシート、接着層を有する基材シートが供給され、ローラにより、可逆性感熱記録シートと、第3のシートと、くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、貫通孔が形成された第1のシートと、基材シートが接着層を介して順次接着される。このとき、ローラにより、ICチップが破損しない程度に加圧される。更に、電子情報記録シートのICチップが第2のシートの貫通孔に納まるように、前記5枚のシートが供給される。なお、5枚のシートが接着された後、最適なサイズに切断することにより、本発明の可逆的感熱記録媒体が作製される。
【0057】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて画像を形成するには、一旦発色温度以上に加熱した後、急冷すればよい。具体的には、サーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると、可逆性感熱記録層が局部的に昇温するため、直ちに熱が拡散し、急激な冷却が起こり発色状態となる。一方、画像を消去するためには、熱源を用いて長時間加熱して冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると、可逆性感熱記録層の広い範囲で昇温するため、その後の冷却が遅くなり、消色状態となる。この場合、熱源としては、熱ローラ、熱スタンプ、熱風等を用いてもよい。また、サーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを画像形成時よりやや低下させてもよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで画像の形成及び消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。
【0058】
図7に、本発明の可逆性感熱記録媒体に画像の形成及び消去を行うプリンターの一例を示す。このプリンターでは、可逆性感熱記録媒体50が矢印の向きに搬送され、セラミックバー51、搬送ローラ52、サーマルヘッド53、及びプラテンロール54を通って系外に排出される。この場合、セラミックバー51により画像の消去が行われ、サーマルヘッド53とプラテンロール54により画像の形成が行われる。
また、図8に、本発明の可逆性感熱記録媒体に画像の形成及び消去を行うプリンターの他の一例を示す。このプリンターでは、可逆性感熱記録媒体60が矢印の向きに搬送され、熱ロール61、サーマルヘッド62、プラテンロール63、及び搬送ローラ64を通って系外に排出される。この場合、熱ロール61により画像の消去が行われ、サーマルヘッド62とプラテンロール63により画像の形成が行われる。
【0059】
前記可逆性感熱記録媒体の搬送速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明においては、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能である。
また、加熱処理により画像の形成及び消去が正確に行われるように、可逆性感熱記録媒体及びプリンターが構成されている。また、プリンターが小型である場合には、画像の形成及び消去が連続して行われるため、加熱処理時の加熱エネルギーを調整することにより、画像の形成及び消去が正確に行われるように構成されている。
【0060】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、可逆性感熱記録層と電子情報記録素子(ICチップ)の両方を有するため、ICチップに書き込まれた情報を可逆性感熱記録層に表示することにより情報を容易に確認することができ、利便性が向上する。
本発明の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体は、入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理、文書管理用途等の一般文書サイズに加工されたシートとして広く用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1〜9)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表1〜表4に示す材料を用いて、常法により、図3に示す層構成、即ち、基材シート(J)1、第1のシート(H)3、くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体を収納した第2のシート(E)5、第3のシート(C)7、及び可逆性感熱記録シート(A)9が、接着層(I、G、D、及びB)2、4、6、及び8を介して順次積層された、実施例1〜9の可逆性感熱記録媒体を作製した。
なお、第2のシート(E)5には、電子情報記録シート全体を収納できるくり貫き部が形成されており、該くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体が収納されている。また、第1のシート3(H)には、電子情報記録素子を挿入できる貫通孔が形成されている。第3のシート7(C)は基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一面積である。
【0063】
(実施例10)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表5に示す材料を用いて、常法により、図4に示す層構成、即ち、可逆性感熱記録シート(A)9、第1のシート(H)3、くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体を収納した第2のシート(E)5、第3のシート(C)7、及び基材シート(J)1が、接着層(I、G、D、及びB)2、4、6、及び8を介して順次積層された、実施例10の可逆性感熱記録媒体を作製した。
なお、第2のシート(E)5には、電子情報記録シート全体を収納できるくり貫き部が形成されており、該くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体が収納されている。また、第1のシート3(H)には、電子情報記録素子を挿入できる貫通孔が形成されている。第3のシート7(C)は基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一面積である。
【0064】
(比較例1)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表2に示す材料を用い、図3に示す層構成において、接着層(D)6及び第2のシート(E)5を設けない以外は、実施例1〜9と同様にして、比較例1の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0065】
(比較例2)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表2に示す材料を用い、図3に示す層構成において、接着層(G)4及び第1のシート(H)3を設けない以外は、実施例1〜9と同様にして、比較例2の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0066】
(比較例3)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表4に示す材料を用い、図3に示す層構成において、第3のシート(C)7、接着層(D)6、及び第2のシート(E)5を設けない以外は、実施例1〜9と同様にして、比較例3の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0067】
【表1】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0068】
【表2】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0069】
【表3】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0070】
【表4】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0071】
【表5】
【0072】
表1〜表5中、可逆性感熱記録シートA:株式会社リコー製(CRフィルム630BD)の詳細については以下の通りである。
−感熱記録層の作製−
下記組成を、ボールミルを用いて平均粒径が0.1〜1.0μmになるように粉砕分散した。
・2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン(ロイコ染料)・・・1質量部
・下記構造式で表される電子受容性化合物(顕色剤)・・・4質量部
【化12】
・ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハルリーンSB)・・・1質量部
・アクリルポリオール樹脂40質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、LR327)・・・10質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
得られた分散液にイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)4質量部を加え、よく撹拌して、感熱記録層塗布液を調製した。次に、得られた感熱記録層塗布液を、厚み100μmの白濁ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、E28G)上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間加熱して、厚み12〜13μmの感熱記録層を設けた。
【0073】
−保護層の作製−
下記組成をボールミルを用いて平均粒径が2〜3μmになるように粉砕分散し、保護層塗布液を調製した。
・下記構造式(1)で表される化合物
(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA(固形分100質量%))・・・4質量部
・下記構造式(2)で表される化合物
(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−60)・・・21質量部
前記構造式(1)の化合物/前記構造式(2)の化合物=1.6/8.4
【化13】
【化14】
ただし、前記構造式(1)及び(2)中、Xは、ペンタエリスリトール基又はジペンタエリスリトール基を表す。Yは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CO−CH2CH2CH2CH2CH2O−結合を表し、Zは−H、―CO−CH=CH2を表す。aは1〜5、bは1〜5、cは1〜12を表す。
・シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)・・・2質量部
・光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)・・・1質量部 ・イソプロピルアルコール・・・60質量部
・トルエン・・・10質量部
得られた保護層塗布液を前記感熱記録層上にワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下で架橋させて、厚み3μmの保護層を設けた。以上により、可逆性感熱記録シートA〔株式会社リコー製(CRフィルム630BD)〕を作製した。
【0074】
次に、作製した実施例1〜10及び比較例1〜3の各可逆性感熱記録媒体について、以下のようにして、白抜け及び貼合せズレを評価した。結果を表6に示す。
【0075】
<白抜けの評価>
神鋼電機株式会社製のRP−K8520HF−5A1プリンターを用い、搬送速度3IPS、消去温度170℃の条件で、全ベタ画像の消去及び印字を行い、可逆性感熱記録媒体のICチップ領域、インレットの周囲領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域での印字状態を目視観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:印字できない領域や印字カスレが無く、良好な画像であった。
△:うっすらと印字できない領域や印字カスレが観察された。
×:明瞭に印字できない領域や印字カスレが観察された。
【0076】
<貼合せズレ>
前記プリンターと前記条件で500回の繰り返し試験後、可逆性感熱記録シートAの基材シート(最表面基材)と、基材シートJ(最裏面基材)とのズレをJIS1級ノギスで測定した。
【0077】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け、カスレ、及び消し残りが生じることがなく、貼り合せの際にズレが生じることがないので、例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの多様な用途に幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、従来の可逆性感熱記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一例を示す平面図である。
【図3】図3は、第1形態の可逆性感熱記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、第2形態の可逆性感熱記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図5A】図5Aは、電子情報記録シートの一例を示す平面図である。
【図5B】図5Bは、電子情報記録シートの一例を示す側面図である。
【図6】図6は、可逆性感熱記録シートの一例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明で用いられるプリンターの一例を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明で用いられるプリンターの他の例を示す概略図である。
【図9】図9は、電子情報記録素子の高さの定義を説明するための側面図である。
【図10】図10は、電子情報記録素子の高さの定義を説明するための別の側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 基材シート
2、4、6、8 接着層
3 第1のシート
5 第2のシート
7 第3のシート
9 可逆性感熱記録シート
10 電子情報記録シート
11 電子情報記録素子
12 貫通孔
13 くり貫き部
20 可逆性感熱記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け、カスレ、及び消し残りが生じることのない電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード;鉄道、バス、ETC等の交通機関;デジタル放送、第三世代携帯電話等の加入者カード:図書館の窓口サービス、学生証、社員証、住民基本台帳カードなどの幅広い業界に導入され、利用者の身近な生活からビジネスまで様々な分野で利用が始まっているが、現在の経済社会活動の高度化に伴い、廃棄物の発生量は増大している。
そこで、従来の大量生産、大量消費、大量廃棄等の経済社会やライフスタイルを見直し、物資の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費を抑え、環境への負荷が少ない循環型社会を形成することが急務になっている。
【0003】
例えば、電子情報記録素子(以下、「ICチップモジュール」、「ICチップ」と称することもある)を組み込んだ可逆性感熱記録媒体は、ICチップの内部情報を書き換えると共に、記録されている情報を可視画像として可逆性感熱記録媒体に表示できるため、廃棄物の発生量を減らすことが可能である。
このようなICチップモジュールを組み込んだ可逆性感熱記録媒体は、製造業分野における作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書として用いられてきている。具体的には、指示書を丸棒状部品に巻き付けたり、カードケースに入れて使用したのち、指示書に付着した汚れを洗浄し、プリンターで指示書を書き換えることが繰り返し行われている。
前記指示書に画像を形成する場合、及び指示書に形成された画像を消去する場合は、該指示書をプリンターのサーマルヘッド、消去バー、消去ローラ、消去板等の加熱装置に押し当てる。このため、指示書を書き換える際に、ICチップモジュールが破損しないようにすると共に、ICチップモジュールと可逆性感熱記録媒体の接着部から接着剤が流出しないようにする必要がある。また、指示書を洗浄する際には、ICチップモジュールが可逆性感熱記録媒体から剥がれないようにする必要がある。更に、指示書は、可とう性を有すると共に、画像の品質が良好であることが望まれている。
【0004】
例えば特許文献1〜5には、図1に示すように、一方のオーバーシートとして、通常は無色ないし淡色のロイコ染料と加熱により該ロイコ染料を発色させ、かつ再加熱により消色させる可逆顕色剤を含有する可逆性感熱層114bを少なくとも1層有する可逆性感熱記録シート114を使用し、ICチップモジュール112を組み込んだICカード、及び、該ICカードを組み込む他方のオーバーシート(フィルム基材111)と可逆性感熱記録シート114との間にコア材113を射出成形により設け、両シートをコア材113を介して熱接着させてなるICカードが提案されている。
【0005】
しかし、これらの提案のICカードでは、ICチップモジュール112が、可逆性感熱記録シート114側の面に設けられているため、ICチップモジュール112の存在により可逆性感熱記録媒体が不均一に加圧されてしまい凹凸部が形成されてしまう。その結果、可逆性感熱記録媒体を加熱装置によって均一に加熱することができなくなり、記録時には、可逆性感熱記録媒体における熱伝導を均一に保てず、可逆性感熱記録媒体に記録した画像にムラが生じてしまう。また、情報の消去時には可逆性感熱記録媒体における加熱装置の接する部分にムラが生じるため、消去不良が発生してしまう。更に、可逆性感熱記録媒体におけるICチップモジュール112が設けられた部分には凸部が生じるので、ICチップモジュール112が可逆性感熱記録媒体を介して加熱装置で加圧されて、ICチップモジュール112が可逆性感熱記録媒体から剥がれたり、傷付いてしまうという問題がある。
【0006】
これらの問題の解決方法としては、例えば特許文献6〜11に開示された手法が提案されている。これらの手法の場合には、ICチップモジュール付き可逆性感熱記録媒体が厚く硬いカードとなるので、剛性が高くなり可とう性を有さなくなるという問題がある。
このため、特許文献12〜13では、ICチップモジュールをICチップ基板を介して可逆性感熱記録シートと反対側になるように設けている。しかし、電子情報記録素子、アンテナ回路、及び導通部材を有する電子情報記録シート(以下、「インレット」と称することもある)の表面の凹凸は、電子情報記録素子だけが原因ではなく、アンテナ回路、及び導通部材も表面の凹凸を発生させている。このアンテナ回路は、アンテナ回路基板のアンテナ回路側と裏面側でジャンピング回路を形成して導通部材により接続している。この際、裏面側の導通部材、アンテナ回路側と裏面側をレーザー等により貫通させて導通させる際にカシメ部と呼ばれる箇所が発生する。この裏面側の導通部材及びカシメ部においても表面を凹凸にさせるため、ICチップだけを該ICチップ基板を介して可逆性感熱記録シートと反対側になるように設けても、可逆性感熱記録シート側の凹凸は解決されていない。特に、特許文献13では、「アンテナ回路基板2の裏面上に電気的に短絡するジャンパー線12を備えている」が、このようなジャンパー線12が可逆性感熱記録シート側に存在することによっても、可逆性感熱記録媒体の記録不良及び消去不良が発生するという問題がある。
【0007】
前記問題点を解決するため、本願出願人は、先に、特許文献14及び特許文献15を提案している。これらの提案は、電子情報記録素子をシートの貫通孔中に突出させ、シートの厚み以上に突出させないようにすると共に、可逆性感熱記録シートの可逆性感熱記録層を有さない側の面が、電子情報記録シートの、アンテナ回路基板、電子情報記録素子、アンテナ回路、及び導通部材を有さない側の面と対向させることで解決を図っており、プリンターの搬送速度が2IPSの場合には記録不良及び消去不良を改善できる。しかし、これらの提案においても、高速(3IPS以上)で画像消去及び記録を行うと、電子情報記録シート(ICチップ領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域を含む)におけるリライト画像品質(カスレのない印字、消し残りない消去)の改善効果が得られず、発色不良が発生するという問題がある。
したがって従来は、プリンターの搬送速度2IPSで電子情報記録シートにおけるリライト画像品質の改善を行ってきたが、高速の搬送速度3IPSで画像消去及び記録を行うと、リライト画像品質の改善効果が得られていないことが判った。これは、高速になるほど、プリンターの消去ヘッドからの熱量が可逆性感熱記録媒体表面に伝わりにくくなるためである。そこで、消去性を向上させるために、消去温度を上げると、消去ヘッドからの高い熱量で可逆性感熱記録媒体が過熱状態となり、その状態で可逆性感熱記録媒体に記録を行うと、急冷効果が得られず(消去モードに入ることで)発色しにくくなる。
そのため、電子情報記録シート表面の凹凸(電子情報記録シートそのものは平坦ではなく、ICチップ、アンテナ回路、アンテナ回路とICチップを結ぶカシメなどにより、基材部と50μm程度の凹凸が生じる)及び段差があると、サーマルヘッドとの接触不良による空気の断熱効果により、熱が伝わらないため、急冷効果が得られず、発色しなくなってしまう、という問題がある。
【0008】
したがって3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない高品質な電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体の提供が望まれているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開平11−154210号公報
【特許文献2】特開2000−94866号公報
【特許文献3】特開2000−251042号公報
【特許文献4】特開2001−63228号公報
【特許文献5】特開2002−103654号公報
【特許文献6】特開平11−91274号公報
【特許文献7】特開平11−59037号公報
【特許文献8】特開平11−85938号公報
【特許文献9】特開2002−117880号公報
【特許文献10】特開2003−141486号公報
【特許文献11】特開2003−141494号公報
【特許文献12】特開2005−250578号公報
【特許文献13】特開2006−344207号公報
【特許文献14】特開2008−162077号公報
【特許文献15】特開2008−229911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない高品質な電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、
前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、
前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されていることを特徴とする可逆性感熱記録媒体である。
<2> 基材シートと、該基材シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、可逆性感熱記録シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<3> 第2のシートと可逆性感熱記録シートの間に、第3のシートを有する前記<2>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<4> 可逆性感熱記録シートと、該可逆性感熱記録シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、基材シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている前記<1>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<5> 第2のシートと基材シートの間に、第3のシートを有する前記<4>に記載の可逆性感熱記録媒体である。
<6> 電子情報記録シートの外周縁部と、くり貫き部との隙間が0.0mm以上0.1mm以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<7> 第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に対して±10μm以内である前記<1>から<6>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<8> 第2のシートの厚みAと、電子情報記録シートの最大厚みB(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)と、第3のシートの厚みCとの比〔(A−B)/C〕が、絶対値で0.00以上0.15以下である前記<3>及び<5>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<9> くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと第1のシートとの間に接着層を有し、該第1のシート及び前記接着層の合計厚みと、前記電子情報記録素子の高さとの差が、0μm〜25μmである前記<1>から<8>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<10> 第1、第2及び第3のシートが、いずれもポリエチレンテレフタレートからなる前記<3>、<5>、<8>、及び<9>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<11> 第3のシートが、基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一表面積である前記<3>、<5>、<8>、<9>、及び<10>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
<12> 可逆性感熱記録層が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種と、ロイコ染料とを含有する前記<1>から<11>のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体である。
【化3】
ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R1は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R2は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。
【化4】
ただし、前記一般式(2)中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R3は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R4は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【0012】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。これにより、電子情報記録シートによる段差及び凹凸をなくすことができ、可逆性感熱記録媒体全体が平坦化される。その結果、サーマルヘッド又はイレーズバーによる上面からの接触ムラ、及びプラテンローラによる下面からの接触ムラをなくすことができ、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがない高品質な電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有してなり、基材シート、可逆性感熱記録シート、第3のシート、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0015】
本発明においては、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。これにより、電子情報記録シートによる段差及び凹凸をなくすことができ、平坦化されるので、サーマルヘッド又はイレーズバーによる上面からの接触ムラ、及びプラテンローラによる下面からの接触ムラをなくすことができ、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能となり、貼り合せの際にズレが生じることがなくなる。
【0016】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、第1形態では、基材シートと、該基材シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、可逆性感熱記録シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。
本発明の可逆性感熱記録媒体は、第2形態では、可逆性感熱記録シートと、該可逆性感熱記録シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、基材シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。
【0017】
前記第2のシートと前記可逆性感熱記録シートの間に、第3のシートを有することが好ましい。これにより、第3のシートと第1のシートとで上下から電子情報記録シートを挟み込むことができ、両面から電子情報記録シートによる段差及び凹凸をなくし、平坦化でき、画像抜けを改善することができる。
【0018】
前記電子情報記録シートの外周縁部と、前記第2のシートのくり貫き部との隙間が0.0mm以上0.1mm以下であることが好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。なお、隙間が0mmとは、第2のシートのくり貫き部に電子情報記録シート全体が隙間なくぴったりと収納されていることを意味する。
前記隙間が、0.1mmを超えると、隙間が大きすぎて、更に第2のシート上に第3のシートを設けても空気の断熱効果により、熱が伝わらないために急冷効果が得られず、発色不良が生じることがある。
【0019】
前記第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に対して±10μm以内であることが好ましく、±8μm以内がより好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。
前記第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に比べて厚すぎたり、薄すぎたりすると、更に第3のシートを設けても電子情報記録シートの段差及び凹凸を吸収することができず、サーマルヘッドと可逆性感熱性記録媒体表面の接触が不均一になり、発色不良が生じることがある。
【0020】
前記第2のシートの厚みAと、電子情報記録シートの最大厚みB(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)と、第3のシートの厚みCとの比〔(A−B)/C〕が、絶対値で0.00以上0.15以下であることが好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。
前記比〔(A−B)/C〕が0.15を超えると、第3のシートの厚みが薄くなりすぎて、電子情報記録シートの凹凸及び段差を吸収することができず、サーマルヘッドと可逆性感熱性記録媒体表面の接触が不均一になり、発色不良が生じることがある。
【0021】
前記第2のシートのくり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと第1のシートとの間に接着層を有し、該第1のシート及び前記接着層の合計厚みと、電子情報記録素子の高さとの差が、0μm〜25μmであることが好ましく、0μm〜20μmがより好ましい。この範囲において、画像抜けを改善することができる。
前記差が0μm未満であると、電子情報記録素子が基材シート側に突出して、記録時に電子情報記録素子の周囲領域が発色不良となることがある。前記差が25μmを超えると、電子情報記録素子が裏面側に凹となり、記録時に電子情報記録素子領域が発色不良となることがある。
ここで、前記電子情報記録素子の高さ(チップ高さ)は、アンテナ回路基板表面からの電子情報記録素子の厚み(高さ)を意味し、カシメ部の有無により求め方が異なる。該カシメ部はHFインレイでは存在するが、UHFインレイでは存在しない。
具体的には、図9に示すように、基材204上にアンテナ部203を有し、該アンテナ部203上にカシメ部202と、チップ部201を有する場合には、電子情報記録素子の高さhは、(チップ部の厚みa−カシメ部の厚みb)となる。
また、図10に示すように、アンテナ部上にカシメ部がない場合には、電子情報記録素子の高さhは、(チップ部の厚みa−アンテナ部の厚みc)となる。
【0022】
前記第1のシートの厚さは、50μm〜150μmが好ましく、75μm〜125μmがより好ましい。
前記第2のシートの厚さは、25μm〜200μmが好ましく、50μm〜188μmがより好ましい。
前記第3のシートの厚さは、25μm〜200μmが好ましく、38μm〜188μmがより好ましい。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体の詳細について説明する。図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一例を示す平面図、図3及び図4は、図2のA−A線での断面図である。
図3に示す第1形態の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体20は、基材シート1、電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔12を有する第1のシート3、少なくとも電子情報記録素子11を有する電子情報記録シート10、電子情報部材を収納可能なくり貫き部13を有する第2のシート5、第3のシート7、少なくとも可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録シート9が順次積層されている。図3中、2、4、6、及び8は接着層を意味する。
この可逆性感熱記録媒体20は、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。即ち、基材シート1、第1のシート3、くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシート5、第3のシート7、及び可逆性感熱記録シート9が、この順に積層されている。
【0024】
図4に示す第2形態の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体20は、少なくとも可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録シート9、電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔12を有する第1のシート3、少なくとも電子情報記録素子11を有する電子情報記録シート10、電子情報部材を収納可能なくり貫き部13を有する第2のシート5、第3のシート7、基材シート1が順次積層されている。図4中、2、4、6、及び8は接着層を意味する。
この可逆性感熱記録媒体20は、前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている。即ち、可逆性感熱記録シート9、第1のシート3、くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシート5、第3のシート7、及び基材シート1が、この順に積層されている。
【0025】
<基材シート>
前記基材シート1としては、形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、また、その平面形状としては、四角形、円形などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記基材シート1としては、例えば樹脂シート、ゴムシート、合成紙、金属シート、ガラスシート又はこれらの複合体を用いることができる。これらの中でも、樹脂シートが特に好ましい。
前記樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート、ポリメチルメタクリレートシート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートシートが特に好ましい。
【0027】
前記基材シート1は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材シートの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、20μm〜200μmが好ましく、50μm〜188μmがより好ましい。
【0028】
<電子情報記録シート>
前記電子情報記録シート(「インレット」と称することもある)は、電子情報記録素子(ICチップ)、アンテナ回路を有し、カシメ部、アンテナ回路基板、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0029】
ここで、図5A及び図5Bは、本発明で用いられる電子情報記録シートの一例を示し、図5Aは平面図、図5Bは左側面図である。
この電子情報記録シート10は、プラスチックフィルム等のアンテナ回路基板10a上に、コイル状のアンテナ回路10cを形成し、該コイルと容量素子とによりLC共振回路を形成して一定周波数の電波を受信すると共に、電子情報記録素子10bの情報を発信源に送信して返すことができる。交信周波数としては、一般的には125kHz、13.56MHz、2.45GHz、5.8GHz(マイクロ波)及びUHF帯などの周波数帯から適宜選択して使用される。10dはカシメ部である。
【0030】
アンテナ回路10cは、アンテナ回路基板10a上に積層された金属膜をエッチングすることにより形成可能であるが、これに限られるものではなく、例えば、被覆された電線(エナメル線など)を同一面上に巻きなおしてもよく、アンテナ回路基板10a上にいわゆる導電性ペーストを印刷したり、アンテナ回路基板に埋め込んだりして、アンテナ回路10cを形成してもよい。
アンテナ回路基板10aに使用する基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば紙フェノール、ガラスエポキシ、コンポジット等のリジッドタイプ、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、紙、合成紙等のフレキシブルタイプ及び両者の複合タイプを用いることができる。
前記基材の厚みは、15μm〜360μmが好ましく、強度、加工作業性、コスト等の点から20μm〜100μmがより好ましい。
ラミネートする金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔、鉄箔などを使用できるが、コスト、加工性からアルミニウム箔が好ましく、その厚みは6μm〜50μmが好ましい。形状は、特に制限はなく、正方形、長方形、円形、楕円形の何れでもよい。
前記電子情報記録素子10bの厚さ(高さ)は、200μm以下が好ましく、25μm〜140μmがより好ましい。また、電子情報記録素子10bを保護するために、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、紙等の保護膜を接着させることもできる。前記保護膜の厚さは、10μm〜60μmが好ましい。
【0031】
このような電子情報記録シート10としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばUPM社製、オムロン社製、エイリアンテクノロジー社製、ソニー株式会社製、富士通株式会社製、日立製作所製、テキサス・インスツルメンツ社製等のインレットを用いることができる。
【0032】
<第1、第2、及び第3シート>
前記第1から第3シートとしては、樹脂シート、ゴムシート、合成紙、金属シート、ガラスシート又はこれらの複合体を用いることができる。これらの中でも、樹脂シートが特に好ましい。
前記樹脂シートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート、ポリメチルメタクリレートシート、などが挙げられ、これらの中でも、強い剛性を有する点からPETが特に好ましい。これは、電子情報記録シートの凹凸、電子情報記録シートと第2のシートの段差、第1のシートの厚みと電子情報記録素子の高さとの差、等が多少存在しても、第1、第2、及び第3のシートが、いずれもポリエチレンテレフタレート(PET)であれば、PETは強い剛性を有するので、PETと各シート厚み差の間でブリッジ効果が得られ、画像抜けを改善することができる。
【0033】
前記第1のシートは、電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する。該貫通孔の大きさは、電子情報記録素子の大きさに応じて適宜選定することができる。
前記第3のシートは、基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一面積であることが白抜け及びカスレの生じない記録や端面からのハガレを生じさせない点から好ましい。
【0034】
<可逆性感熱記録シート>
前記可逆性感熱記録シート9は、少なくとも可逆性感熱記録層を有し、中間層、保護層、バック層、基材シート、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0035】
ここで、図6に、本発明で用いられる可逆性感熱記録シート9の一例を示す。この可逆性感熱記録シートは、基材シート102の一方の面に、可逆性感熱記録層103、中間層104及び保護層105が積層されており、他方の面に、バック層101が形成されている。
前記可逆性感熱記録層103は、色調が可逆的に変化する感熱記録層であり、温度変化によって色の状態が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料を含有する。可逆性感熱記録材料は透過率、反射率、吸収波長、散乱度等の変化の組み合わせにより、色の状態が変化する。
前記可逆性感熱記録材料としては、熱により透明度や色調が可逆的に変化する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温より高い第一の温度で第一の色の状態となり、第一の温度よりも高い第二の温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となる材料が挙げられる。これらの中でも、第一の温度と第二の温度で色の状態が変化する材料が特に好ましい。
具体的には、第一の温度で透明状態となり、第二の温度で白濁状態となる材料(特開昭55−154198号公報参照)、第二の温度で発色し、第一の温度で消色する材料(特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報参照)、第一の温度で白濁状態となり、第二の温度で透明状態となる材料(特開平3−169590号公報参照)、第一の温度で黒色、赤色、青色等に発色し、第二の温度で消色する材料(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報参照)等が挙げられる。これらの中でも、樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した系や、ロイコ染料と顕色剤を用いた系が特に好ましい。
【0036】
前記ロイコ染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記顕色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報等に開示されているものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記顕色剤は、分子内に、ロイコ染料を発色させる顕色能を持つ構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)と、分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)を1つ以上有する化合物である。これらの構造は、ヘテロ原子を有する2価以上の連結基を介して連結されていてもよい。また、長鎖炭化水素基は、同様の連結基及び/又は芳香族基を有していてもよい。
【0037】
このような顕色剤としては、例えば特開平9−290563号公報及び特開平11−188969号公報に開示されているものが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種が好ましい。これらの顕色剤は、感度が非常に高いため、同じ画像濃度を出力する場合、従来の顕色剤と比べて、与える印加エネルギーを10%〜30%程度削減することができる。与える印加エネルギーが少なければ、顕色剤の熱分解が緩和されると共に、可逆性感熱記録媒体の表面及び媒体自身に与えるダメージも緩和され、これにより繰り返し耐久性の劣化も緩和されるので、画像の品質を向上させることができる。
【0038】
【化5】
ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R1は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R2は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。
【化6】
ただし、前記一般式(2)中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R3は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R4は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【0039】
前記一般式(1)及び(2)において、X、Y、及びZは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表し、特に窒素原子又は酸素原子を含む2価の有機基が好ましく、例えば、下記構造式で表される基を少なくとも1つ有する2価の有機基などが挙げられる。
【化7】
【0040】
前記ヘテロ原子を有する2価の有機基としては、具体的には、下記構造式で表される基が好適に挙げられる。
【化8】
【0041】
これらの中でも、下記構造式で表される基が特に好適に挙げられる。
【化9】
【0042】
前記一般式(1)及び(2)において、R1及びR3は、置換基により置換されていてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表す。
前記R1及びR3としては、以下の構造式で表されるものが好適に挙げられる。
【化10】
ただし、前記式中のq、q’、q’’、及びq’’’は、それぞれ前記R1及びR3の炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH2)q−が特に好ましい。
【0043】
前記一般式(1)及び(2)において、R2及びR4は、置換基により置換されていてもよい炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表し、炭素数は8〜18が好ましい。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基に結合している置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等がある。なお、R1及びR2、R3及びR4の炭素の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上がより好ましい。
前記R2及びR4としては、以下に示すものが好適に挙げられる。
【化11】
ただし、前記式中のq、q’、q’’、及びq’’’は、それぞれ前記R2及びR4の炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH2)q−CH3が特に好ましい。
【0044】
前記可逆性感熱記録層103は、更に必要に応じて、塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御したりするための添加剤を添加することができる。添加剤としては、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色安定化剤、消色促進剤等が挙げられる。
前記可逆性感熱記録層103は、ロイコ染料、顕色剤及び添加剤をバインダー樹脂と共に含有することが好ましい。前記バインダー樹脂としては、基材シート上に、これらの材料を結着できさえすれば特に限定されない。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線(UV)、電子線(EB)等を用いて硬化させた樹脂が好ましく、硬化剤を用いて熱硬化させた樹脂が特に好ましい。これにより、ゲル分率を向上させることができる。
前記熱硬化させることが可能な樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、などが挙げられる。
【0045】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イソシアネートが好ましい。前記イソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI);これらのイソシアネートのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、ブロック化イソシネート、などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、そのアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましい。ただし、硬化剤は、全量が硬化反応しなくてもよい。即ち、前記可逆性感熱記録層103に未反応の硬化剤が存在していてもよい。このとき、硬化反応を促進させるために、硬化触媒を用いてもよい。
【0046】
前記可逆性感熱記録層103は、ゲル分率が30%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、繰り返し耐久性が低下することがある。
ここで、前記ゲル分率は、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことにより測定することができる。具体的には、基材シート102から可逆性感熱記録層103を剥離して、可逆性感熱記録層103の初期質量を測定する。次に、可逆性感熱記録層103を400メッシュの金網に挾んで、未硬化のバインダー樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸した後、真空乾燥して、乾燥後の質量を測定する。これにより、ゲル分率は下記数式1から求めることができる。
<数式1>
ゲル分率(%)=(乾燥後の質量)/(初期質量)×100
このとき、可逆性感熱記録層103中の、バインダー樹脂以外の成分(有機低分子物質粒子等)の質量を除いて計算を行う。なお、予め有機低分子物質粒子の質量が分からないときは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の断面観察により、単位面積当たりに占める面積比と、バインダー樹脂と有機低分子物質粒子の比重から質量比を求めて、有機低分子物質粒子の質量を算出すればよい。
【0047】
前記可逆性感熱記録層103は、発色成分に対するバインダー樹脂の質量比が0.1〜10であることが好ましい。前記質量比が、0.1より小さいと、可逆性感熱記録層103の熱強度が不足することがあり、10より大きいと、発色濃度が低下することがある。
可逆性感熱記録層103は、ロイコ染料、顕色剤、添加剤、バインダー樹脂、及び溶媒を均一に分散させた塗布液を塗布して形成することができる。
前記溶媒としては、例えばアルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、などが挙げられる。
塗布液は、例えばペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等の分散装置を用いて調製することができる。このとき、分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各材料を分散させたものを混合してもよい。更に、各材料を加熱溶解させて急冷又は徐冷することによって析出させてもよい。
塗布方法としては、ブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、スプレー塗工法、エアナイフ塗工法、ビード塗工法、カーテン塗工法、グラビア塗工法、キス塗工法、リバースロール塗工法、ディップ塗工法、ダイ塗工法等が挙げられる。
【0048】
前記可逆性感熱記録層103の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記厚さが1μm未満であると、発色濃度が低下して画像のコントラストが低下することがあり、20μmを超えると、可逆性感熱記録層103の熱分布が大きくなって、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度が得られなくなることがある。
【0049】
−保護層−
前記保護層105は、熱、紫外線、電子線、などを用いて硬化させた樹脂を含有することができる。これらの中でも、紫外線又は電子線を用いて硬化させた樹脂が特に好ましい。
前記紫外線(電子線)を用いて硬化させることが可能な樹脂としては、例えばウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系等のオリゴマー;各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。
なお、紫外線を用いて架橋させる際には、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが好ましい。また、熱硬化させることが可能な樹脂としては、前記可逆性感熱記録層と同様の樹脂を用いることができ、同様に硬化させることができる。
前記保護層105の厚さは、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0050】
−中間層−
前記中間層104は、可逆性感熱記録層103に対する保護層105の接着性向上、保護層105の塗布液の塗布による可逆性感熱記録層103の変質防止、保護層105中の添加剤の可逆性感熱記録層103への移行防止のために設ける。これにより、画像の保存性を改善することができる。
前記中間層104は、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させた樹脂、熱可塑性樹脂を含有することができる。熱硬化性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。また、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能なものとしては、前記可逆性感熱記録層と同様のものを用いることができ、同様に硬化させることができる。なお、前記中間層104の形成方法は、可逆性感熱記録層103と同様である。
前記中間層104は、必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤等を含有してもよい。前記中間層104中のフィラーの含有量は、1体積%〜95体積%が好ましく、5体積%〜75体積%がより好ましい。また、前記中間層104中の紫外線吸収剤の含有量は、前記樹脂に対して、0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。
前記中間層104の厚さは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.3μm〜3μmがより好ましい。
【0051】
また、前記可逆性感熱記録層103上に積層される中間層104及び/又は保護層105は、酸素透過性の低い樹脂を含有することが好ましい。これにより、可逆性感熱記録層103中のロイコ染料及び顕色剤の酸化を抑制することが可能になる。
なお、前記可逆性感熱記録層103と基材シート102の間にアンダー層を設けてもよい。これにより、可逆性感熱記録層103の発色感度及び可逆性感熱記録層103と基材シート102の接着性を向上させることができる。
また、レーザー光を用いて、可逆性感熱記録層103を発色させるために、可逆性感熱記録シート9に、レーザー光を吸収して光を熱に変換する光熱変換層を設けてもよい。
更に、放熱を防止するために、可逆性感熱記録シート9に、空気層等の断熱層を設けてもよい。
【0052】
−バック層−
前記バック層101は、可逆性感熱記録層103が設けられている側の面の樹脂の収縮によるカールを防止するために、基材シート102の可逆性感熱記録層103が設けられていない側の面に設けられる。
前記バック層101は、熱、紫外線、電子線等、好ましくは、紫外線を用いて硬化させた樹脂を含有することができる。また、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能なものとしては、前記可逆性感熱記録層と同様のものを用いることができ、同様に硬化させることができる。
なお、前記バック層101の形成方法は、可逆性感熱記録層103と同様であるが、このとき、可逆性感熱記録層103が設けられている側と、バック層101が設けられている側の収縮のバランスが取れるように塗布することが好ましい。これにより、全ての層が塗布された後に、可逆性感熱記録シートを平坦にすることができる。
【0053】
また、前記バック層101は、樹脂の他に、有機フィラー、無機フィラー、滑剤、着色顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を含有することもできる。
前記無機フィラーとしては、例えば炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物等が挙げられる。
前記有機フィラーとしては、例えばシリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、例えばサリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造等を有する化合物が挙げられる。
前記滑剤としては、例えば合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類等が挙げられる。
前記バック層101の厚さは、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
【0054】
前記可逆性感熱記録シート9としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば630BF、530BF、630BD、530BD、430BD、631FB、431FB(いずれも、株式会社リコー製);TRCG99CS、TRCG99SS、TRCG99SH、TRCGAACS、TRCGBBBS(いずれも、三菱製紙株式会社製)、などが挙げられる。
【0055】
<接着層>
前記基材シート1、前記第1のシート3、くり貫き部に電子情報記録シート10全体を収納した前記第2のシート5、前記第3のシート7、及び前記可逆性感熱記録シート9は、接着層2、4、6、及び8を介して順次積層されている。
前記接着層2、4、6、及び8は、接着剤を用いて形成することができる。
前記接着剤としては、常温で加圧接着できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、合成ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、EVA系樹脂、などが挙げられる。
これらの中でも、天然ゴム、合成ゴム、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、EVA系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂が特に好ましい。
前記接着剤の種類や接着層の厚さは、被着体の種類や使用される環境、接着強度等を考慮して適宜選択することができる。また、前記接着層には、各種添加剤、無機フィラー、有機フィラー、繊維材料などを含有してもよい。
前記接着層2、4、6、及び8の厚さは、それぞれ独立に、10μm〜150μmが好ましく、10μm〜130μmがより好ましく、10μm〜100μmが更に好ましい。
前記厚みが、10μm未満であると、十分な接着強度が得られないために容易に剥がれるし、150μmを超えると、加熱装置を用いて可逆性感熱記録媒体を印字や消去する際に、サーマルヘッドからの熱圧力により接着剤層が溶けて、はみ出しが発生することがある。
【0056】
次に、本発明の可逆的感熱記録媒体の製造方法の一例について説明する。
まず、接着層を有する第1のシートは、貫通孔形成手段により、接着層を有する電子情報記録シートのICチップが納まる大きさで貫通孔が形成される。また、接着層を有する第2のシートは、くり貫き部形成手段により、電子情報記録シート全体が収納されるくり貫き部が形成される。次に、接着層を有する第3のシート、接着層を有する基材シートが供給され、ローラにより、可逆性感熱記録シートと、第3のシートと、くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、貫通孔が形成された第1のシートと、基材シートが接着層を介して順次接着される。このとき、ローラにより、ICチップが破損しない程度に加圧される。更に、電子情報記録シートのICチップが第2のシートの貫通孔に納まるように、前記5枚のシートが供給される。なお、5枚のシートが接着された後、最適なサイズに切断することにより、本発明の可逆的感熱記録媒体が作製される。
【0057】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて画像を形成するには、一旦発色温度以上に加熱した後、急冷すればよい。具体的には、サーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると、可逆性感熱記録層が局部的に昇温するため、直ちに熱が拡散し、急激な冷却が起こり発色状態となる。一方、画像を消去するためには、熱源を用いて長時間加熱して冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると、可逆性感熱記録層の広い範囲で昇温するため、その後の冷却が遅くなり、消色状態となる。この場合、熱源としては、熱ローラ、熱スタンプ、熱風等を用いてもよい。また、サーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを画像形成時よりやや低下させてもよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで画像の形成及び消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。
【0058】
図7に、本発明の可逆性感熱記録媒体に画像の形成及び消去を行うプリンターの一例を示す。このプリンターでは、可逆性感熱記録媒体50が矢印の向きに搬送され、セラミックバー51、搬送ローラ52、サーマルヘッド53、及びプラテンロール54を通って系外に排出される。この場合、セラミックバー51により画像の消去が行われ、サーマルヘッド53とプラテンロール54により画像の形成が行われる。
また、図8に、本発明の可逆性感熱記録媒体に画像の形成及び消去を行うプリンターの他の一例を示す。このプリンターでは、可逆性感熱記録媒体60が矢印の向きに搬送され、熱ロール61、サーマルヘッド62、プラテンロール63、及び搬送ローラ64を通って系外に排出される。この場合、熱ロール61により画像の消去が行われ、サーマルヘッド62とプラテンロール63により画像の形成が行われる。
【0059】
前記可逆性感熱記録媒体の搬送速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明においては、3IPS以上の高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け及びカスレの生じない記録、並びに消し残りのない消去が可能である。
また、加熱処理により画像の形成及び消去が正確に行われるように、可逆性感熱記録媒体及びプリンターが構成されている。また、プリンターが小型である場合には、画像の形成及び消去が連続して行われるため、加熱処理時の加熱エネルギーを調整することにより、画像の形成及び消去が正確に行われるように構成されている。
【0060】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、可逆性感熱記録層と電子情報記録素子(ICチップ)の両方を有するため、ICチップに書き込まれた情報を可逆性感熱記録層に表示することにより情報を容易に確認することができ、利便性が向上する。
本発明の電子情報記録素子付き可逆性感熱記録媒体は、入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理、文書管理用途等の一般文書サイズに加工されたシートとして広く用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1〜9)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表1〜表4に示す材料を用いて、常法により、図3に示す層構成、即ち、基材シート(J)1、第1のシート(H)3、くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体を収納した第2のシート(E)5、第3のシート(C)7、及び可逆性感熱記録シート(A)9が、接着層(I、G、D、及びB)2、4、6、及び8を介して順次積層された、実施例1〜9の可逆性感熱記録媒体を作製した。
なお、第2のシート(E)5には、電子情報記録シート全体を収納できるくり貫き部が形成されており、該くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体が収納されている。また、第1のシート3(H)には、電子情報記録素子を挿入できる貫通孔が形成されている。第3のシート7(C)は基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一面積である。
【0063】
(実施例10)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表5に示す材料を用いて、常法により、図4に示す層構成、即ち、可逆性感熱記録シート(A)9、第1のシート(H)3、くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体を収納した第2のシート(E)5、第3のシート(C)7、及び基材シート(J)1が、接着層(I、G、D、及びB)2、4、6、及び8を介して順次積層された、実施例10の可逆性感熱記録媒体を作製した。
なお、第2のシート(E)5には、電子情報記録シート全体を収納できるくり貫き部が形成されており、該くり貫き部に電子情報記録シート(F)10全体が収納されている。また、第1のシート3(H)には、電子情報記録素子を挿入できる貫通孔が形成されている。第3のシート7(C)は基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一面積である。
【0064】
(比較例1)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表2に示す材料を用い、図3に示す層構成において、接着層(D)6及び第2のシート(E)5を設けない以外は、実施例1〜9と同様にして、比較例1の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0065】
(比較例2)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表2に示す材料を用い、図3に示す層構成において、接着層(G)4及び第1のシート(H)3を設けない以外は、実施例1〜9と同様にして、比較例2の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0066】
(比較例3)
−可逆性感熱記録媒体の作製−
表4に示す材料を用い、図3に示す層構成において、第3のシート(C)7、接着層(D)6、及び第2のシート(E)5を設けない以外は、実施例1〜9と同様にして、比較例3の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0067】
【表1】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0068】
【表2】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0069】
【表3】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0070】
【表4】
*電子情報記録シートにおけるチップ部(厚み)a、カシメ部(厚み)b、アンテナ部(厚み)c、及び基材(厚み)dについては、図9及び図10参照
【0071】
【表5】
【0072】
表1〜表5中、可逆性感熱記録シートA:株式会社リコー製(CRフィルム630BD)の詳細については以下の通りである。
−感熱記録層の作製−
下記組成を、ボールミルを用いて平均粒径が0.1〜1.0μmになるように粉砕分散した。
・2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン(ロイコ染料)・・・1質量部
・下記構造式で表される電子受容性化合物(顕色剤)・・・4質量部
【化12】
・ジアルキル尿素(日本化成株式会社製、ハルリーンSB)・・・1質量部
・アクリルポリオール樹脂40質量%溶液(三菱レイヨン株式会社製、LR327)・・・10質量部
・メチルエチルケトン・・・80質量部
得られた分散液にイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)4質量部を加え、よく撹拌して、感熱記録層塗布液を調製した。次に、得られた感熱記録層塗布液を、厚み100μmの白濁ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、E28G)上にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間加熱して、厚み12〜13μmの感熱記録層を設けた。
【0073】
−保護層の作製−
下記組成をボールミルを用いて平均粒径が2〜3μmになるように粉砕分散し、保護層塗布液を調製した。
・下記構造式(1)で表される化合物
(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA(固形分100質量%))・・・4質量部
・下記構造式(2)で表される化合物
(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPCA−60)・・・21質量部
前記構造式(1)の化合物/前記構造式(2)の化合物=1.6/8.4
【化13】
【化14】
ただし、前記構造式(1)及び(2)中、Xは、ペンタエリスリトール基又はジペンタエリスリトール基を表す。Yは−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CO−CH2CH2CH2CH2CH2O−結合を表し、Zは−H、―CO−CH=CH2を表す。aは1〜5、bは1〜5、cは1〜12を表す。
・シリカ(水澤化学工業株式会社製、P−526)・・・2質量部
・光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)・・・1質量部 ・イソプロピルアルコール・・・60質量部
・トルエン・・・10質量部
得られた保護層塗布液を前記感熱記録層上にワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下で架橋させて、厚み3μmの保護層を設けた。以上により、可逆性感熱記録シートA〔株式会社リコー製(CRフィルム630BD)〕を作製した。
【0074】
次に、作製した実施例1〜10及び比較例1〜3の各可逆性感熱記録媒体について、以下のようにして、白抜け及び貼合せズレを評価した。結果を表6に示す。
【0075】
<白抜けの評価>
神鋼電機株式会社製のRP−K8520HF−5A1プリンターを用い、搬送速度3IPS、消去温度170℃の条件で、全ベタ画像の消去及び印字を行い、可逆性感熱記録媒体のICチップ領域、インレットの周囲領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域での印字状態を目視観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:印字できない領域や印字カスレが無く、良好な画像であった。
△:うっすらと印字できない領域や印字カスレが観察された。
×:明瞭に印字できない領域や印字カスレが観察された。
【0076】
<貼合せズレ>
前記プリンターと前記条件で500回の繰り返し試験後、可逆性感熱記録シートAの基材シート(最表面基材)と、基材シートJ(最裏面基材)とのズレをJIS1級ノギスで測定した。
【0077】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、高速で画像消去及び記録を行っても、電子情報記録シート周囲領域、電子情報記録素子領域、アンテナ回路領域、及び導通部材領域における白抜け、カスレ、及び消し残りが生じることがなく、貼り合せの際にズレが生じることがないので、例えば入出チケット、冷凍食品用容器、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、物流管理用途、製造工程管理用途などの多様な用途に幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、従来の可逆性感熱記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一例を示す平面図である。
【図3】図3は、第1形態の可逆性感熱記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、第2形態の可逆性感熱記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図5A】図5Aは、電子情報記録シートの一例を示す平面図である。
【図5B】図5Bは、電子情報記録シートの一例を示す側面図である。
【図6】図6は、可逆性感熱記録シートの一例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明で用いられるプリンターの一例を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明で用いられるプリンターの他の例を示す概略図である。
【図9】図9は、電子情報記録素子の高さの定義を説明するための側面図である。
【図10】図10は、電子情報記録素子の高さの定義を説明するための別の側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 基材シート
2、4、6、8 接着層
3 第1のシート
5 第2のシート
7 第3のシート
9 可逆性感熱記録シート
10 電子情報記録シート
11 電子情報記録素子
12 貫通孔
13 くり貫き部
20 可逆性感熱記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、
前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、
前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されていることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
基材シートと、該基材シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、可逆性感熱記録シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
第2のシートと可逆性感熱記録シートの間に、第3のシートを有する請求項2に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
可逆性感熱記録シートと、該可逆性感熱記録シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、基材シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
第2のシートと基材シートの間に、第3のシートを有する請求項4に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
電子情報記録シートの外周縁部と、くり貫き部との隙間が0.0mm以上0.1mm以下である請求項1から5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に対して±10μm以内である請求項1から6のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項8】
第2のシートの厚みAと、電子情報記録シートの最大厚みB(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)と、第3のシートの厚みCとの比〔(A−B)/C〕が、絶対値で0.00以上0.15以下である請求項3及び5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項9】
くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと第1のシートとの間に接着層を有し、該第1のシート及び前記接着層の合計厚みと、前記電子情報記録素子の高さとの差が、0μm〜25μmである請求項1から8のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項10】
第1、第2及び第3のシートが、いずれもポリエチレンテレフタレートからなる請求項3、5、8、及び9のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項11】
第3のシートが、基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一表面積である請求項3、5、8、9、及び10のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項12】
可逆性感熱記録層が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種と、ロイコ染料とを含有する請求項1から11のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R1は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R2は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R3は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R4は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【請求項1】
少なくとも電子情報記録素子を有する電子情報記録シートと、
前記電子情報記録素子を挿入可能な貫通孔を有する第1のシートと、
前記電子情報記録シート全体を収納可能なくり貫き部を有する第2のシートと、を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記くり貫き部に前記電子情報記録シート全体を収納した第2のシートを前記第1のシート上に有すると共に、前記電子情報記録シート表面から突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されていることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
基材シートと、該基材シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、可逆性感熱記録シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記基材シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
第2のシートと可逆性感熱記録シートの間に、第3のシートを有する請求項2に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
可逆性感熱記録シートと、該可逆性感熱記録シート上に、第1のシートと、電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと、基材シートとをこの順に有し、
前記電子情報記録シートの前記可逆性感熱記録シート側に突出した電子情報記録素子が前記第1のシートの貫通孔に挿入されている請求項1に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
第2のシートと基材シートの間に、第3のシートを有する請求項4に記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
電子情報記録シートの外周縁部と、くり貫き部との隙間が0.0mm以上0.1mm以下である請求項1から5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項7】
第2のシートの厚みが、電子情報記録シートの最大厚み(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)に対して±10μm以内である請求項1から6のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項8】
第2のシートの厚みAと、電子情報記録シートの最大厚みB(ただし、電子情報記録素子の部分を除く)と、第3のシートの厚みCとの比〔(A−B)/C〕が、絶対値で0.00以上0.15以下である請求項3及び5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項9】
くり貫き部に電子情報記録シート全体を収納した第2のシートと第1のシートとの間に接着層を有し、該第1のシート及び前記接着層の合計厚みと、前記電子情報記録素子の高さとの差が、0μm〜25μmである請求項1から8のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項10】
第1、第2及び第3のシートが、いずれもポリエチレンテレフタレートからなる請求項3、5、8、及び9のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項11】
第3のシートが、基材シート及び可逆性感熱記録シートと同一表面積である請求項3、5、8、9、及び10のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項12】
可逆性感熱記録層が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物の少なくとも1種と、ロイコ染料とを含有する請求項1から11のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R1は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R2は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表し、cは、0以上3以下の整数を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。R3は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。R4は、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【図3】
【図4】
【図5B】
【図9】
【図10】
【図1】
【図2】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図4】
【図5B】
【図9】
【図10】
【図1】
【図2】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−173013(P2009−173013A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321197(P2008−321197)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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