説明

可逆性感熱記録媒体

【課題】電子情報記録モジュールを組み込んだ基体上に可逆性感熱記録層を有し、該可逆性感熱記録層とは反対側の基体表面上にレーザ刻印が形成された可逆性感熱記録媒体において、レーザ刻印を形成した後に前記可逆性感熱記録層に画像を形成する際、前記画像に白抜けによる印字不良が生じることがなく印字品質に優れ、発色及び消色の繰り返しを安定に行うことができる可逆性感熱記録媒体の提供。
【解決手段】基体上に可逆性感熱記録層を有してなり、前記基体が、第1の支持体と、電子情報記録モジュールと、接着剤と、表面にレーザ刻印の凹部が形成された第2の支持体と、を有してなり、前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凹部の底部までの可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Aとするとき、前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Aの割合が20%以下である可逆性感熱記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆性感熱記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ(電子情報記録素子)とアンテナ回路とを有する電子情報モジュールを組み込んだICカードは、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード;鉄道、バス、ETC等の交通機関に用いられるカード;デジタル放送、第三世代携帯電話等の加入者カード;図書館の窓口サービス、学生証、社員証、住民基本台帳等のカード;などの幅広い業界に導入されており、利用者の身近な生活からビジネスまで様々な分野で利用されている。
【0003】
一方、カードよりもサイズが大きい作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書などは、未だ紙が使用されている。そのため、大量生産、大量消費、大量廃棄等の経済社会活動の高度化に伴い、紙の生産、消費、及び廃棄等の量も増加し、環境への負荷を増大させているという問題がある。
したがって、ICカードの技術を応用し、前記電子情報モジュールを組み込んだカードよりもサイズが大きい記録媒体の提供が望まれている。
【0004】
しかし、前記ICカードについても、繰り返し利用できないものについては廃棄量の増加を抑制できるものではないため、物資の効率的な利用やリサイクルを進めることにより、資源の消費を抑え、環境への負荷を少なくすることが求められている。
【0005】
そこで、前記電子情報記録モジュールを組み込み、可視画像を形成又は消去可能な可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体を前記ICカードとして利用することが提案されている。前記可逆性感熱記録媒体は、前記ICチップの内部情報を書き換えると共に、記録されている情報を可視画像として前記可逆性感熱記録層に表示でき、かつ繰り返して使用可能であるため、前記ICカードの廃棄量を減らすことが可能である。
【0006】
ところで、前記ICカードは、使用していく中で故障や不具合を起こすことがある。このような場合、製造元では、前記ICカードの製造日や製造ロットを特定の上、当該ロットに関する製造履歴資料を調査し、故障原因の調査、同日製造、同工程ナンバーで製造された他ロットへの影響などを調査する必要がある。
【0007】
従来、前記ICカードの製造日や製造ロットを特定する方法としては、該ICカードの表面又は裏面に文字を刻印(ナンバーリング)する方法が用いられている。具体的には、文字型をカードの表面に押しつけて型押しし、カードの表面に刻印が立体的に浮き出るようにするエンボス形成法、サーマルヘッドを用いて転写箔をカードの表面に熱転写する熱転写法、レーザによってカードの表面を焼き飛ばすレーザ刻印法などが挙げられる。
【0008】
しかし、前記ICカードに前記可逆性感熱記録媒体を用いた場合、前記エンボス形成法や前記熱転写法により刻印を形成すると、前記可逆性感熱記録媒体に不具合が生じることがある。前記可逆性感熱記録媒体は、通常、前記刻印後に、プリンタのサーマルヘッド、消去バー、消去ローラ、消去板等の加熱装置で可逆性感熱記録層に画像が形成又は消去される。前記刻印がエンボス形成法で形成された後、前記加熱装置で前記可逆性感熱記録層に画像の形成又は消去が行われた場合、印字不良や消去不良が発生するという問題がある。また、前記刻印が熱転写法で形成された後、前記加熱装置で前記可逆性感熱記録層に画像の形成又は消去が繰り返し行われた場合、転写箔が剥がれてくるという問題がある。
そのため、前記可逆性感熱記録媒体に刻印を形成する方法としては、前記レーザ刻印法が好ましく用いられる(特許文献1参照)。
【0009】
前記レーザ刻印法に関しては、背景とのコントラストが高く、かつ、文字が損なわれにくい刻印をカード型情報記録媒体に施す技術(特許文献2参照)、基材の表面又は裏面に非透明層を有するカード状の記録媒体において、前記非透明層に、該非透明層の被形成面が視認できる程度にレーザ刻印(凹部)を形成する技術(特許文献3参照)、カード基材表面に深さ15μm以下のレーザ刻印を施す技術(特許文献4参照)などが知られている。
しかし、これらの技術の場合、刻印の視認性が十分なものではないという問題がある。また、可逆性感熱記録媒体に係るものでもなく、繰り返し使用することができないため、環境への負荷に対する問題を解決できるものではないという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、基体上に可逆性感熱記録層を有し、該可逆性感熱記録層とは反対側の基体表面にレーザ刻印が形成された可逆性感熱記録媒体において、レーザ刻印を形成した後に可逆性感熱記録層に画像を形成すると、可逆性感熱記録層における該レーザ刻印部の反対側に相当する部位において、画像抜け(白抜け)が発生し、印字不良が生じるという新たな問題を知見した。更に、前記白抜けは、可逆性感熱記録媒体を繰り返し使用した場合により顕在化することも知見した。前記可逆性感熱記録媒体が繰り返し使用できない場合、環境への負荷が増大するだけでなく、電子情報記録モジュールという高価な部材を有する観点から、コスト的にも不利である。
【0011】
本発明は、従来における前記諸問題及び本発明者が知見した前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、電子情報記録モジュールを組み込んだ基体上に可逆性感熱記録層を有し、該可逆性感熱記録層とは反対側の基体表面上にレーザ刻印が形成された可逆性感熱記録媒体において、レーザ刻印を形成した後に前記可逆性感熱記録層に画像を形成する際、前記画像に白抜けによる印字不良が生じることがなく印字品質に優れ、発色及び消色の繰り返しを安定に行うことができる可逆性感熱記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、本発明の可逆性感熱記録媒体は、基体上に可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体であって、前記基体が、第1の支持体と、電子情報記録モジュールと、前記第1の支持体を覆う接着剤と、表面にレーザ刻印の凹部が形成された第2の支持体と、を有してなり、前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凹部の底部までの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Aとするとき、前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Aの割合が20%以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題及び本発明者が知見した前記問題を解決し、前記目的を達成することができ、電子情報記録モジュールを組み込んだ基体上に可逆性感熱記録層を有し、該可逆性感熱記録層とは反対側の基体表面上にレーザ刻印が形成された可逆性感熱記録媒体において、レーザ刻印を形成した後に前記可逆性感熱記録層に画像を形成する際、前記画像に白抜けによる印字不良が生じることがなく印字品質に優れ、発色及び消色の繰り返しを安定に行うことができる可逆性感熱記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、数字「4」を第2の支持体表面にレーザ刻印した一例を示す図である。
【図2】図2は、図1のX−X’断面の模式図である。
【図3】図3は、可逆性感熱記録材料の温度変化に対する発色及び消色の時間的変化の一例を表す説明図である。
【図4】図4は、可逆性感熱記録材料の発色及び消色の原理の説明図である。
【図5】図5は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一実施形態を表す図である。
【図6】図6は、本発明の可逆性感熱記録媒体の別の一実施形態を表す図である。
【図7】図7は、本発明の可逆性感熱記録媒体の更に別の一実施形態を表す図である。
【図8】図8は、本発明の可逆性感熱記録媒体の更に別の一実施形態を表す図である。
【図9】図9は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体の画像の形成及び消去を実施する画像処理装置及び画像処理方法の一態様を示す図である。
【図10A】図10Aは、比較例1の最大深度A及び最大深度Bをデジタルマイクロスコープで測定した結果の一例を示す図である。
【図10B】図10Bは、実施例5の最大深度A及び最大深度Bをデジタルマイクロスコープで測定した結果の一例を示す図である。
【図10C】図10Cは、実施例9の最大深度A及び最大深度Bをデジタルマイクロスコープで測定した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(可逆性感熱記録媒体)
本発明の可逆性感熱記録媒体は、基体上に可逆性感熱記録層を有してなり、必要に応じて更にその他の層を有してなる。
前記基体は、第1の支持体と、電子情報記録モジュールと、前記第1の支持体を覆う接着剤と、表面にレーザ刻印の凹部が形成された第2の支持体とを有してなる。
【0016】
<基体>
前記基体は、前記第1の支持体と、前記電子情報記録モジュールと、前記接着剤と、前記第2の支持体とを有してなる。前記第1の支持体と前記第2の支持体とは、前記接着剤で接着されることが好ましい。この場合、前記可逆性感熱記録層は、前記第1の支持体上に配され、前記第2の支持体が、前記可逆性感熱記録媒体において、前記可逆性感熱記録層の対面に配されることとなる。したがって、本発明において、「第2の支持体表面」と、「基体表面」とは同じ意味を表す。
【0017】
前記基体の形状、構造、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、四角形、円形などが挙げられる。前記構造としては、ブロック構造、層構造などが挙げられる。前記層構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0018】
<<第2の支持体>>
前記第2の支持体は、表面にレーザ刻印の凹部が形成されてなる。
前記第2の支持体の形状、構造、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、四角形、円形などが挙げられる。前記構造としては、シート構造が好ましく、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0019】
前記第2の支持体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ゴム、合成紙、金属、ガラス、又はこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、樹脂が特に好ましい。
【0020】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0021】
前記第2の支持体は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記第2の支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25μm以上100μm以下が好ましく、25μm以上50μm以下がより好ましい。前記厚みが、25μm未満であると、可逆性感熱記録媒体のカールを防止する効果が抑制されることがあり、100μmを超えると、可逆性感熱記録媒体の総厚みが大きくなり、柔軟性を損ね、使用性が悪くなることがある。
【0022】
−レーザ刻印−
前記レーザ刻印は、前記第2の支持体表面に形成される。前記レーザ刻印は、レーザ熱により前記第2の支持体表面が溶融されて可逆性感熱記録媒体の厚み方向に凹となる凹部からなる。
【0023】
本発明者は、従来の可逆性感熱記録媒体において前記第2の支持体表面にレーザ刻印を形成した後に可逆性感熱記録層に画像を形成すると、可逆性感熱記録層における該レーザ刻印部の反対側に相当する部位(以下、「可逆性感熱記録層刻印相当部」と称することがある。)において、画像抜け(白抜け)が発生し、印字不良が生じ、更に、前記白抜けは、可逆性感熱記録媒体を繰り返し使用した場合により顕在化するという新たな問題を知見した。また、前記可逆性感熱記録媒体を作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書などに使用する場合、可撓性を有するもの、即ち可逆性感熱記録媒体の総厚みを小さくする必要があるが、前記可逆性感熱記録層刻印相当部における白抜けは、可逆性感熱記録媒体の総厚みが小さくなるほど生じやすいことも知見した。
【0024】
これに対し、本発明者は鋭意検討し、可逆性感熱記録媒体の繰り返しの使用や、総厚みの大きさにかかわらず、可逆性感熱記録層刻印相当部に白抜けが発生することなく印字品質に優れ、発色及び消色の繰り返しを安定に行うことができ、更に前記レーザ刻印が視認性に優れる可逆性感熱記録媒体を見出した。
【0025】
本発明において、前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凹部の底部までの可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(深さ)を最大深度Aとする。前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Aの割合は、20%以下であるが、2%以上20%以下が好ましく、4%以上20%以下がより好ましく、6%以上20%以下が特に好ましい。
【0026】
前記最大深度Aの割合が20%を超えると、低温低湿環境下(例えば、温度5℃、相対湿度30%)で可逆性感熱記録層を発色させた際、可逆性感熱記録層刻印相当部において白抜けが発生し、未発色の状態になることがある。また、前記最大深度Aの割合が2%未満であると、レーザ刻印の視認性が悪くなることがある。一方、前記最大深度Aの割合が前記より好ましい範囲であると、可逆性感熱記録層刻印相当部における白抜けがなくより印字品質に優れ、レーザ刻印の視認性にも優れる点で有利である。
【0027】
前記最大深度Aの割合は、下記式(1)から求めることができる。
最大深度Aの割合(%)=最大深度A(μm)/可逆性感熱記録媒体の総厚み(μm)×100 ・・・式(1)
【0028】
例えば、「0」から「9」までの数字10文字をレーザ刻印した場合、第2の支持体表面からレーザ刻印の凹部の底部までの可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(以下、「刻印凹部の深さ」と称することがある。)が最も長くなるのは、数字「4」又は「8」のレーザ刻印が重なる点(交点)である。例えば、縦3.5mm、横2.5mmからなる長方形の中に収まる大きさで数字「4」をレーザ刻印した場合、数字「4」のレーザ刻印が重なる点(交点)の最も深い点を前記凹部の底部とし、該底部と第2の支持体表面との可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(深さ)を最大深度Aとする。
【0029】
なお、ここでは最大深度Aについて数字「4」を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、数字「8」の場合も同様に定義できる。また、可逆性感熱記録媒体において数字「4」、数字「8」、英字「f」、英字「t」等の複数の文字をレーザ刻印し、これらの文字のレーザ刻印の交点における刻印凹部の深さがそれぞれ異なる場合は、刻印凹部の深さが最も深い文字における刻印凹部の深さを最大深度Aとする。
また、可逆性感熱記録媒体におけるレーザ刻印が一文字であっても、記号「#」等の複数の交点を有する文字の場合は、前記複数の文字をレーザ刻印した場合と同様に、刻印凹部の深さが最も深い交点における刻印凹部の深さを最大深度Aとし、記号「#」等の複数の交点を有する文字を更に複数文字レーザ刻印した場合も、同様に定義できる。
【0030】
図1及び図2に具体例を示す。図1は、数字「4」を第2の支持体表面にレーザ刻印した一例を示す図であり、図2は、図1のX−X’断面(可逆性感熱記録媒体600の厚み方向の断面)の模式図である。
図2に示すように、第2の支持体表面2aにおいてレーザヘッド95からレーザ照射して形成されたレーザ刻印の凹部90の、可逆性感熱記録媒体600の厚み方向に最も深く削られた点(図1に示す数字「4」におけるレーザ刻印の交点)90aと、第2の支持体表面2aとの可逆性感熱記録媒体600の厚み方向の長さ(刻印凹部の深さ)を最大深度Aとする。なお、図2において、符号3aは、可逆性感熱記録層表面を表す。
前記最大深度Aは、例えば、デジタルマイクロスコープ(VHX−1000、キーエンス社製)を用いて測定することができる。
【0031】
なお、図2では、レーザ刻印の凹部90は不定形の形状で示したが、この形状に限られるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記最大深度Aとしては、前記最大深度Aの割合を満たす限り、特に制限はなく、第2の支持体の材質等に応じて適宜選択することができるが、視認性に優れる点で、5μm超が好ましく、7μm超がより好ましく、13μm超が特に好ましい。
また、前記レーザ刻印の凹部の幅(可逆性感熱記録媒体の厚み方向に対して垂直方向の凹部の長さ)、即ち刻印文字の太さとしても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
前記第2の支持体は、レーザ刻印の際、レーザ熱により該第2の支持体が溶融してレーザ刻印の凹部90を形成するが、この溶融した第2の支持体が前記レーザ刻印の凹部90の周辺部に蓄積して盛り上がり、該第2の支持体表面2aに、可逆性感熱記録媒体の厚み方向に凸となる凸部80が形成される。このように、前記レーザ刻印後に前記第2の支持体表面2aにおいて、該レーザ刻印の凹部90の周囲に該第2の支持体が溶融してなる凸部80を有する場合は、第2の支持体表面2aからレーザ刻印の凸部80の頂点80aまでの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(以下、「刻印周囲凸部の高さ」と称することがある。)を最大深度Cとし、前記最大深度Aと前記最大深度Cとの和(A+C)を最大深度Bとする。前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Bの割合は、23%以下であるが、3%以上23%以下が好ましく、6%以上23%以下が特に好ましい。
【0033】
前記総厚みに対する最大深度Bの割合が23%を超えると、低温低湿環境下(例えば、温度5℃、相対湿度30%)で可逆性感熱記録層を発色させた際、可逆性感熱記録層刻印相当部において白抜けが発生し、未発色の状態になることがある。また、前記最大深度Bの割合が3%未満であると、レーザ刻印の視認性が悪くなることがある。一方、前記最大深度Bの割合が前記特に好ましい範囲であると、可逆性感熱記録層刻印相当部における白抜けがなくより印字品質に優れ、レーザ刻印の視認性にも優れる点で有利である。
【0034】
前記最大深度Bの割合は、下記式(2)から求めることができる。
最大深度Bの割合(%)=最大深度B(μm)/可逆性感熱記録媒体の総厚み(μm)×100 ・・・式(2)
【0035】
本発明において、前記最大深度Cとは、前記最大深度Aを有するレーザ刻印の凹部の周囲における、第2の支持体が溶融してなる凸部の最も高い頂点と、該第2の支持体表面との、可逆性感熱記録媒体の厚み方向の長さ(刻印周囲凸部の高さ)である。例えば、縦3.5mm、横2.5mmからなる長方形の中に収まる大きさで数字「4」をレーザ刻印した場合は、数字「4」のレーザ刻印が重なる点(交点)の周囲に形成された凸部の最も高い頂点と、第2の支持体表面との、可逆性感熱記録媒体の厚み方向の長さが最大深度Cである。
また、本発明において、前記最大深度Bとは、前記最大深度Cと、前記最大深度Aとの和(A+C)からなる長さ(以下、「刻印凹凸部の深さ」と称することがある。)をいう。
【0036】
なお、ここでは最大深度Bについて数字「4」を例に挙げて説明したが、前記最大深度Aと同様に本発明はこれに限られるものではなく、可逆性感熱記録媒体において数字「4」、数字「8」、英字「f」、英字「t」等の複数の文字をレーザ刻印した場合、記号「#」等の複数の交点を有する文字の場合、更に記号「#」等の複数の交点を有する文字を複数文字レーザ刻印した場合などは、これらの中で、刻印凹凸部の深さが最も深い文字又は交点における刻印凹凸部の深さを最大深度Bとする。
【0037】
図1及び図2に具体例を示す。図2に示すように、第2の支持体表面2aにおいてレーザヘッド95からレーザ照射して形成されたレーザ刻印の凹部90の周囲の凸部80における最も高い点、即ち凸部の頂点80aと、第2の支持体表面2aとの可逆性感熱記録媒体600の厚み方向の長さ(刻印周囲凸部の高さ)を最大深度Cとする。したがって、最大深度A及び最大深度Cの和(A+C)が、最大深度Bである。
前記最大深度C又は前記最大深度Bは、例えば、デジタルマイクロスコープ(VHX−1000、キーエンス社製)を用いて測定することができる。
【0038】
なお、図2では、凸部80は不定形の形状で示したが、この形状に限られるものではなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記最大深度Bとしては、前記最大深度Bの割合を満たす限り、特に制限はなく、第2の支持体の材質等に応じて適宜選択することができるが、視認性に優れる点で、5μm超が好ましく、11μm超がより好ましく、19μm超が特に好ましい。
また、前記レーザ刻印の凹部の周囲の凸部の幅(可逆性感熱記録媒体の厚み方向に対して垂直方向の凸部の長さ)としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
本発明の前記可逆性感熱記録媒体は、前記最大深度Aの割合(20%以下)のみを満たしているものであってもよく、前記最大深度Bの割合(23%以下)のみを満たしているものであってもよく、前記最大深度Aの割合及び前記最大深度Bの割合を両立するもの(最大深度Aの割合が20%以下であり、かつ、最大深度Bの割合が23%以下)であってもよい。
【0040】
前記レーザ刻印は、前記可逆性感熱記録媒体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、前記可逆性感熱記録媒体の製造日、製造ロット番号等の印字などが挙げられる。前記印字としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、数字、英数字、英字、記号などが挙げられる。
【0041】
前記レーザ刻印を行うレーザの種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザなどが挙げられる。
【0042】
前記レーザ刻印を行うレーザエネルギーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レーザ出力(W)が同じでも、レーザの種類や線速度などによって、対象物(第2の支持体)に与える熱エネルギーが異なるため、エネルギー密度が重要である。
【0043】
前記レーザ刻印のエネルギー密度としては、前記最大深度Aの割合及び/又は前記最大深度Bの割合を実現することができる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.0142W/(mm/s)以下が好ましく、0.009W/(mm/s)超え0.0142W/(mm/s)以下がより好ましく、0.0097W/(mm/s)以上0.0142W/(mm/s)以下が特に好ましい。前記エネルギー密度が0.0142W/(mm/s)を超えると、低温低湿環境下(例えば、温度5℃、相対湿度30%)で可逆性感熱記録層を発色させた際、可逆性感熱記録層刻印相当部において白抜けが発生し、未発色の状態になることがある。一方、前記エネルギー密度が前記特に好ましい範囲であると、可逆性感熱記録層刻印相当部における白抜けがなくより印字品質に優れ、レーザ刻印の視認性にも優れる点で有利である。
【0044】
前記第2の支持体における前記レーザ刻印を形成する位置としては、前記第2の支持体表面である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記最大深度Aが電子情報記録モジュールに達してしまうような場合は、該電子情報記録モジュールを有さない領域を選択して刻印することが好ましい。
【0045】
<<電子情報記録モジュール>>
前記電子情報記録モジュールとしては、電子情報を記録できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、モジュール基板上に電子情報記録素子とアンテナ回路とを有してなることが好ましい。前記電子情報記録モジュールが配される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第1の支持体に収容されることが好ましい。この場合、前記電子情報記録モジュールは、前記第1の支持体と共に前記接着剤により覆われていてもよい。
【0046】
−電子情報記録素子−
前記電子情報記録素子は、「ICチップ」、「ICチップモジュール」、「ICパッケージ」などとも呼ばれる。
前記電子情報記録素子の厚み(高さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200μm以下が好ましく、25μm以上150μm以下がより好ましい。
【0047】
−アンテナ回路−
前記アンテナ回路の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記モジュール基板上に積層された金属膜をエッチングする方法、被覆された電線(エナメル線など)を同一面上に繰り返し巻き回す方法、前記モジュール基板上にいわゆる導電性ペーストを印刷する方法、前記アンテナ回路を前記モジュール基板に埋め込む方法、前記アンテナ回路としての金属箔をラミネートする方法などが挙げられる。
【0048】
前記アンテナ回路の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、前記アンテナ回路の配線部の厚みが、5μm以上30μm以下であり配線の有無により凹凸形状を有している。前記厚みが30μmを超えると、前記凹凸形状に基づく、可逆性感熱記録層における画像の白抜け、カスレ等の印字不良が生じることがある。
【0049】
−モジュール基板−
前記モジュール基板に使用する基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙フェノール、ガラスエポキシ、コンポジット等のリジッドタイプ;ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、紙、合成紙等のフレキシブルタイプ;及び両者の複合タイプなどが挙げられる。
【0050】
前記モジュール基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記可逆性感熱記録媒体を薄くして柔軟性を向上させる観点から、15μm以上100μm以下が好ましい。
【0051】
前記モジュール基板に対して、例えば、前記アンテナ回路としての金属箔をラミネートする場合、前記金属箔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅箔、アルミニウム箔、鉄箔などが挙げられる。これらの中でも、コストや加工性に優れることからアルミニウム箔が好ましい。前記金属箔の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上50μm以下が好ましい。
【0052】
前記モジュール基板の形状としては、特に制限はなく、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形などが挙げられる。
【0053】
前記電子情報記録モジュールは、一定周波数の電波を受信すると共に、前記電子情報記録素子の情報を発信源に送信して返すことができる。前記一定周波数の電波としては、一般的には、125kHz、13.56MHz、2.45GHz、5.8GHz(マイクロ波)、及びUHF(Ultra High Frequency)帯等の交信周波数から適宜選択して使用される。
【0054】
前記電子情報記録モジュールは、市販品を用いることができる。前記市販品の具体例としては、AVERY DENNISON社製、UPMキュンメネ株式会社製、オムロン株式会社製、エイリアンテクノロジー社製、ソニー株式会社製、富士通株式会社製、株式会社日立製作所製、テキサス・インスツルメンツ社製、藤井株式会社製、大日本印刷株式会社製、凸版印刷株式会社製等のインレットシートなどが挙げられる。
【0055】
<<第1の支持体>>
前記第1の支持体は、前記接着剤により覆われてなり、前記第2の支持体と、前記可逆性感熱記録層との間に配されることが好ましい。
前記第1の支持体は、前記電子情報記録モジュールを収容することができる収容部を有することが好ましく、該収容部は、前記第1の支持体の厚み方向に凹となるような凹部(以下、「電子情報記録モジュール収容用凹部」と称することがある。)であることがより好ましい。
【0056】
前記第1の支持体の形状、構造、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、四角形、円形などが挙げられる。前記構造としては、シート構造が好ましく、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0057】
前記第1の支持体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ゴム、合成紙、金属、ガラス、又はこれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、樹脂が特に好ましい。
【0058】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0059】
前記第1の支持体は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記第1の支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記第1の支持体に、凸状の前記電子情報記録モジュールを挿入可能に形成される前記電子情報記録モジュール収容用凹部が形成される場合は、該電子情報記録モジュール収容用凹部の深さを考慮して選択され、20μm以上300μm以下が好ましく、100μm以上250μm以下がより好ましい。
【0060】
−電子情報記録モジュール収容用凹部−
前記電子情報記録モジュール収容用凹部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、深さ(可逆性感熱記録媒体の厚み方向の電子情報記録モジュール収容用凹部の長さ)が、10μm以上260μm以下が好ましい。前記電子情報記録モジュール収容用凹部がこのような形状を有すると、電子情報記録モジュールの電子情報記録素子が可逆性感熱記録媒体の厚み方向で凸になることを防止できるため、前記可逆性感熱記録層における画像抜けやカスレがなく、極めて優れた印字品質を得ることができる。
【0061】
また、前記電子情報記録モジュール収容用凹部と前記電子情報記録素子との間の該電子情報記録モジュール収容用凹部の幅方向(可逆性感熱記録層の厚み方向に対して垂直方向)における間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2mm以上10mm以下が好ましい。前記凹部と前記電子情報記録素子との間の前記電子情報記録モジュール収容用凹部の幅方向における間隔が10mmを超えると、前記可逆性感熱記録層における画像の白抜け、カスレが発生することがある。
【0062】
前記電子情報記録モジュール収容用凹部と前記電子情報記録素子との間の該電子情報記録モジュール収容用凹部の深さ方向(可逆性感熱記録層の厚み方向)における間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上50μm以下が好ましく、15μm以上45μm以下がより好ましい。前記電子情報記録モジュール収容用凹部と前記電子情報記録素子との間の該電子情報記録モジュール収容用凹部の深さ方向における間隔が、10μm未満であると、前記電子情報記録素子が前記第1の支持体側に突出して、記録時に該電子情報記録素子の周囲領域が発色不良となることがあり、50μmを超えると、前記電子情報記録素子上の前記第1の支持体の表面が凹となり、記録時に電子情報記録素子領域が発色不良となることがある。一方、前記好ましい範囲内であると、前記可逆性感熱記録層における画像の白抜けを防止することができる。
【0063】
前記電子情報記録モジュール収容用凹部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、切削加工、レーザ加工、プレス加工、及びエッチング加工のいずれかが好ましい。これらの凹部の形成方法によると、目的とする大きさに対して高精度で電子情報記録モジュール収容用凹部を形成することができる。
【0064】
<<接着剤>>
前記接着剤は、前記第1の支持体を覆うものであり、前記第1の支持体と前記第2の支持体とを接着することが好ましい。このとき、前記接着剤は、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に層状に配されていてもよい。
【0065】
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、合成ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、湿気硬化型樹脂、UV硬化型樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
これらの中でも、前記接着剤は、天然ゴム、合成ゴム、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリウレタン系樹脂が特に好ましい。
【0067】
前記接着剤が層状に配される場合(以下、「接着剤層」と称することがある。)、該接着剤層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記アンテナ回路と前記第1の支持体との最短距離が、10μm以上となるように配されることが好ましく、20μm以上となるように配されることがより好ましい。前記最短距離が、10μm未満であると、前記アンテナ回路の凹凸形状の影響を受け、可逆性感熱記録層における画像形成時の白抜け、カスレ等の発色不良の原因となることがある。
【0068】
ここで、前記最短距離が20μmであれば、前記アンテナ回路の凹凸形状を吸収することができるが、これより大きいと、前記可逆性感熱記録媒体の総厚みが大きくなり、柔軟性が得られないことがある。したがって、前記最短距離の上限値としては、50μm以下が好ましい。
【0069】
なお、本発明において、前記最短距離とは、前記第1の支持体と前記アンテナ回路の配線部上面が最も近づいた位置との間の距離(可逆性感熱記録媒体の厚み方向の距離)を意味する。
前記最短距離は、前記アンテナ回路の配線部近傍を断面研磨し、断面形状を観察することにより測定することができる。
【0070】
前記接着剤層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記最短距離を考慮して設定されることが好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下が更に好ましく、200μmが特に好ましい。
【0071】
前記の接着剤層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、スプレー塗布法、ラミネータ法、ロール塗布法などが挙げられる。これらの中でも、均一な厚みで接着剤層を形成する観点からは、ロール塗布法が好ましい。
【0072】
<可逆性感熱記録層>
前記可逆性感熱記録層は、前記基体上に配される層であり、前記第1の支持体上に配されることが好ましい。
【0073】
前記可逆性感熱記録層は、色調が可逆的に変化する感熱記録層であり、温度変化によって色の状態が可逆的に変化する可逆性感熱記録材料を含有する。前記可逆性感熱記録材料は、透過率、反射率、吸収波長、散乱度等の変化の組み合わせにより、色の状態が変化する。
【0074】
前記可逆性感熱記録材料としては、熱により透明度や色調などが可逆的に変化する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、常温より高い第一の温度で第一の色の状態となり、第一の温度よりも高い第二の温度で加熱し、その後冷却することにより第二の色の状態となる材料などが挙げられる。これらの中でも、前記第一の温度と前記第二の温度とで色の状態が変化する材料が特に好ましい。
【0075】
具体的には、前記第一の温度で透明状態となり、記第二の温度で白濁状態となる材料(例えば、特開昭55−154198号公報参照)、前記第二の温度で発色し、前記第一の温度で消色する材料(例えば、特開平4−224996号公報、特開平4−247985号公報、特開平4−267190号公報参照)、前記第一の温度で白濁状態となり、前記第二の温度で透明状態となる材料(例えば、特開平3−169590号公報参照)、前記第一の温度で黒色、赤色、青色等に発色し、前記第二の温度で消色する材料(例えば、特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報参照)などが挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂母材中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した材料や、電子供与性呈色化合物(発色剤)及び電子受容性化合物(顕色剤)を含む材料が特に好ましい。
【0076】
<<電子供与性呈色化合物>>
前記電子供与性呈色化合物(発色剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、それ自体無色あるいは淡色の染料前駆体(ロイコ染料)などが挙げられる。前記ロイコ染料としては、例えば、フルオラン化合物、フタリド化合物、アザフタリド化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記フルオラン化合物の具体例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオランなどが挙げられる。
【0078】
前記アザフタリド化合物の具体例としては、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリドなどが挙げられる。
【0079】
その他の発色剤としては、例えば、2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−クロロアニリノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−トルイジノ)フルオランなどが挙げられる。
【0080】
<<電子受容性化合物>>
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、分子内に、前記電子供与性呈色化合物を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)を1つ以上有する化合物である。これらの構造は、ヘテロ原子を有する2価以上の連結基を介して連結されていてもよい。また、長鎖炭化水素基は、同様の連結基及び/又は芳香族基を有していてもよい。
【0081】
前記電子受容性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報等に開示されているものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
このような顕色剤の具体例としては、特開平9−290563号公報及び特開平11−188969号公報に開示されているものなどが挙げられる。これらの中でも、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくとも1種が好ましい。これらの顕色剤は、感度が非常に高いため、同じ画像濃度を出力する場合、従来の顕色剤と比べて、与える印加エネルギーを10%〜30%程度削減することができる。与える印加エネルギーが少なければ、顕色剤の熱分解が緩和されると共に、可逆性感熱記録媒体の表面及び媒体自身に与えるダメージも緩和され、これにより繰り返し耐久性の劣化も緩和されるので、画像の品質を向上させることができる。
【0083】
【化1】

但し、前記一般式(1)において、Xは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。aは、1以上3以下の整数を表し、bは、1以上20以下の整数を表す。
【0084】
【化2】

但し、前記一般式(2)において、Zは、ヘテロ原子を有する2価の有機基を表す。Rは、置換又は無置換の2価の炭化水素基を表す。Rは、置換又は無置換の1価の炭化水素基を表す。dは、1以上3以下の整数を表す。
【0085】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)において、前記X及び前記Zは、それぞれ独立にヘテロ原子を有する2価の有機基を表すが、窒素原子又は酸素原子を含む2価の有機基が好ましく、例えば、下記構造式で表される基を少なくとも1つ有する2価の有機基などが挙げられる。
【0086】
【化3】

【0087】
前記ヘテロ原子を有する2価の有機基としては、具体的には、下記構造式で表される基が好適に挙げられる。
【化4】

【0088】
これらの中でも、前記ヘテロ原子を有する2価の有機基は、下記構造式で表される基が特に好ましい。
【化5】

【0089】
前記一般式(2)において、前記Rは、置換基により置換されていてもよい炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表すが、以下の構造式で表されるものが好ましい。
【化6】

但し、前記構造式において、q、q’、q’’、及びq’’’は、前記Rの炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH)q−が特に好ましい。
【0090】
前記一般式(1)及び前記一般式(2)において、前記R及び前記Rは、それぞれ独立に置換基により置換されていてもよい炭素数1以上24以下の脂肪族炭化水素基を表し、前記炭素数は、8以上18以下が好ましい。
【0091】
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖していても分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。前記炭化水素基に結合している置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基などが挙げられる。なお、前記Rの炭素数、若しくは、前記R及び前記Rの炭素数の和が7以下では、発色の安定性や消色性が低下するため、前記Rの炭素数、若しくは、前記R及び前記Rの炭素数の和は、8以上が好ましく、11以上がより好ましい。
【0092】
前記R及び前記Rとしては、以下の構造式で表されるものが好適に挙げられる。
【化7】

但し、前記構造式において、q、q’、q’’、及びq’’’は、それぞれ前記R及び前記Rの炭素数を満足する整数を表す。これらの中でも、−(CH)q−CHが特に好ましい。
【0093】
<<添加剤>>
前記可逆性感熱記録層は、必要に応じて、塗布特性や発色消色特性を改善したり、制御したりするための添加剤を更に添加することができる。前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
<<バインダー樹脂>>
前記可逆性感熱記録層は、前記電子供与性呈色化合物、前記電子受容性化合物、必要に応じて更に前記添加剤を、バインダー樹脂と共に含有することが好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記第1の支持体上にこれらの材料を結着できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、繰り返し画像形成時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線(UV)、電子線(EB)等を用いて硬化させた樹脂が好ましく、硬化剤を用いて熱硬化させた樹脂が特に好ましい。これにより、ゲル分率を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
前記熱硬化させることが可能な樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが挙げられる。
【0096】
前記硬化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イソシアネートが好ましい。前記イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI);これらのイソシアネートのトリメチロールプロパン等によるアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、ブロック化イソシネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネート、そのアダクトタイプ、ビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプが好ましい。但し、前記硬化剤は、全量が硬化反応しなくてもよい。即ち、前記可逆性感熱記録層に未反応の硬化剤が存在していてもよい。このとき、硬化反応を促進させるために、硬化触媒を用いてもよい。
【0098】
前記可逆性感熱記録層のゲル分率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30%以上であることが好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、繰り返し画像形成時の耐久性が低下することがある。
【0099】
ここで、前記ゲル分率は、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことにより測定することができる。具体的には、前記第1の支持体から前記可逆性感熱記録層を剥離して、前記可逆性感熱記録層の初期質量を測定する。次に、前記可逆性感熱記録層を400メッシュの金網に挾んで、未硬化のバインダー樹脂が可溶な溶剤中に24時間浸した後、真空乾燥して、乾燥後の質量を測定する。これによりゲル分率は、下記式(3)から求めることができる。
ゲル分率(%)=乾燥後の質量/初期質量×100 ・・・式(3)
【0100】
このとき、前記可逆性感熱記録層中の、前記バインダー樹脂以外の成分(例えば、有機低分子物質粒子等)の質量を除いて計算を行う。なお、予め有機低分子物質粒子の質量が分からないときは、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の断面観察により、単位面積当たりに占める面積比と、バインダー樹脂と有機低分子物質粒子との比重と、から質量比を求めて、有機低分子物質粒子の質量を算出すればよい。
【0101】
前記電子供与性呈色化合物(発色剤)に対する前記バインダー樹脂の質量比(バインダー樹脂/電子供与性呈色化合物)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1以上10以下が好ましい。前記質量比が、0.1未満であると、前記可逆性感熱記録層の熱強度が不足することがあり、10を超えると、発色濃度が低下することがある。
【0102】
前記可逆性感熱記録層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記電子供与性呈色化合物及び前記電子受容性化合物、必要に応じて更に前記添加剤、前記バインダー樹脂等の可逆性感熱記録層の材料を、溶媒を均一に分散させた塗布液を塗布して形成する方法などが挙げられる。
【0103】
前記塗布液中の前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、グリコールエーテル類、エステル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記塗布液の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等の分散装置を用いて調製する方法などが挙げられる。このとき、分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散させてもよいし、各材料を分散させたものを混合してもよい。更に、各材料を加熱溶解させて急冷又は徐冷することによって析出させてもよい。
【0105】
前記塗布液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、スプレー塗工法、エアナイフ塗工法、ビード塗工法、カーテン塗工法、グラビア塗工法、キス塗工法、リバースロール塗工法、ディップ塗工法、ダイ塗工法などが挙げられる。
【0106】
前記可逆性感熱記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましい。前記厚みが、1μm未満であると、発色濃度が低下して画像のコントラストが低下することがあり、20μmを超えると、可逆性感熱記録層の熱分布が大きくなって、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度が得られなくなることがある。
【0107】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バック層、保護層、中間層、アンダー層などが挙げられる。
【0108】
<<バック層>>
前記バック層は、前記第2の支持体表面(前記第2の支持体における前記接着剤が配される面の対面)に配される層である。前記可逆性感熱記録媒体が前記バック層を有すると、可逆性感熱記録媒体のカールを防止することができる点で好ましい。
【0109】
前記バック層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱、紫外線、電子線等、好ましくは、紫外線を用いて硬化させた樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能な樹脂としては、例えば、前記可逆性感熱記録層における前記バインダー樹脂と同様のものなどが挙げられ、硬化させる方法も同様である。
【0110】
また、前記バック層は、前記樹脂の他に、有機フィラー、無機フィラー、滑剤、着色顔料、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を含有させることもできる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
前記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ホルムアルデヒド系樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
【0112】
前記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸塩、ケイ酸塩、金属酸化物、硫酸化合物などが挙げられる。
【0113】
前記滑剤としては、例えば、合成ワックス類、植物性ワックス類、動物性ワックス類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸エステル類、アミド類などが挙げられる。
【0114】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造等を有する化合物などが挙げられる。
【0115】
前記バック層は、前記可逆性感熱記録層と同様の方法で形成することができる。このとき、前記バック層は、前記可逆性感熱記録媒体における前記可逆性感熱記録層が配されている面と、前記バック層が配されている面との収縮のバランスが取れるように塗布することが好ましい。これにより、可逆性感熱記録媒体の全ての層が塗布された後に、前記可逆性感熱記録媒体を平坦にすることができる。
【0116】
前記バック層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上10μm以下が好ましい。
【0117】
<<保護層>>
前記保護層は、前記可逆性感熱記録層表面に配される層である。前記可逆性感熱記録媒体が前記保護層を有すると、可逆性感熱記録層を保護することができる点で好ましい。
【0118】
前記保護層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱、紫外線、電子線等、好ましくは、紫外線を用いて硬化させた樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
前記紫外線(電子線)を用いて硬化させることが可能な樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等のオリゴマー;各種単官能又は多官能の、アクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーなどが挙げられる。
なお、紫外線を用いて硬化させる場合は、光重合開始剤、光重合促進剤を用いることが好ましい。前記光重合開始剤、前記光重合促進剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。
【0120】
熱硬化させることが可能な樹脂としては、例えば、前記可逆性感熱記録層における可逆性感熱記録材料と同様のものなどが挙げられ、硬化させる方法も同様である。
【0121】
また、前記保護層は、酸素透過性の低い樹脂を含有することが好ましい。これにより、前記可逆性感熱記録層中の電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の酸化を抑制することが可能になる。
【0122】
前記保護層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0123】
<<中間層>>
前記中間層は、前記保護層と前記可逆性感熱記録層との間に配される層である。前記可逆性感熱記録媒体が前記中間層を有すると、前記可逆性感熱記録層に対する保護層の接着性向上、前記保護層の塗布液の塗布による可逆性感熱記録層の変質防止、前記保護層中の添加剤の可逆性感熱記録層への移行防止などにより、画像の保存性を向上させることができる。
【0124】
前記中間層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させた樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
前記熱、紫外線、電子線等を用いて硬化させることが可能な樹脂としては、例えば、前記可逆性感熱記録層の材料と同様のものなどが挙げられ、硬化させる方法も同様である。
【0126】
前記熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0127】
前記中間層としては、前記樹脂の他に、更に必要に応じて、フィラー、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
前記中間層中のフィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記中間層に対して、1質量%以上95質量%以下が好ましく、5質量%以上75質量%以下がより好ましい。
また、前記中間層中の紫外線吸収剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記樹脂に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0128】
また、前記中間層は、酸素透過性の低い樹脂を含有することが好ましい。これにより、前記可逆性感熱記録層中の電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物の酸化を抑制することが可能になる。
【0129】
前記中間層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.3μm以上3μm以下がより好ましい。
前記中間層は、前記可逆性感熱記録層と同様方法で形成することができる。
【0130】
<<アンダー層>>
前記アンダー層は、前記可逆性感熱記録層と前記基体(前記第1の支持体)との間に配される層である。前記可逆性感熱記録媒体が前記アンダー層を有すると、前記可逆性感熱記録層の発色感度及び前記可逆性感熱記録層と前記基体の接着性を向上させることができる。また、中空粒子を有すると、サーマルヘッドからの印加エネルギーに対して放熱を防止することができる。
【0131】
こうして形成される本発明の前記可逆性感熱記録媒体の総厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、150μm以上500μm以下が好ましく、250μm以上400μm以下がより好ましい。前記総厚みが150μm未満であると、薄くなりすぎることでサーマルヘッドへの押し付けが足りず、印字不良が発生することがある。また、薄くなりすぎことで、過剰な柔軟性が付与され、ホルダーへの挿抜動作が円滑に行えなくなることもある。前記総厚みが500μmを超えると、柔軟性が損なわれサーマルヘッドへの密着性向上効果が発揮できないことや、プリンタのスタッカーに積み上げ可能な枚数が少なくなることなどが挙げられる。更に、前記総厚みが580μm以上となると、プリンタの搬送系で詰まりが発生することがある。
【0132】
前記可逆性感熱記録媒体の加工形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カード状、該カード状よりサイズの大きいシート状のいずれかに加工されていることが好ましい。
なお、カードサイズとしては、通常54mm×85mm程度であり、シートサイズとしては、通常85mm×200mm程度である。
【0133】
前記可逆性感熱記録媒体の総厚みが厚いと(例えば、500μmを超えると)、サイズの小さいカード用途に制限され、大きな画面、多様な表示には不向きであり、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、製造業分野における作業書、部品管理票等の物流管理用途、工程管理票等の製造工程管理用途などの指示書などのシートサイズの用途には不向きである。
一方、前記可逆性感熱記録媒体の総厚みが前記好ましい範囲であると、このような用途にも好適に利用できる。
【0134】
<発色及び消色の原理>
ここで、前記可逆性感熱記録媒体の、可逆的な発色及び消色の原理を簡単に説明する。
前記可逆性感熱記録層に含まれる電子供与性呈色化合物(発色剤)及び電子受容性化合物(顕色剤)を含む可逆性感熱記録材料においては、該発色剤及び該顕色剤が単に固体状で混合されている状態では発色はしない。
しかし、この可逆性感熱記録材料を高温にすると、可逆性感熱記録材料全体が溶融状態になり、該可逆性感熱記録材料に含まれる発色剤及び顕色剤が反応して発色する。
【0135】
この溶融状態の可逆性感熱記録材料を除冷すると、発色剤及び顕色剤がその融解温度付近で解離し、それぞれ個々に凝集又は結晶化し消色する。そして、その状態が前記バインダー樹脂などの固化により凍結状態にされる。
一方、発色している溶融状態の可逆性感熱記録材料を急冷すると、発色剤と顕色剤との解離が起こる前に、前記バインダー樹脂が固化し、発色剤と顕色剤との反応生成物は、発色したまま凍結状態になり固化する。
【0136】
したがって、適当な溶融温度と凍結温度を有し、このような現象を起こす2種の化合物(発色剤及び顕色剤)とバインダー樹脂との組み合わせからなる可逆性感熱記録材料を選択すれば、加熱溶融後の冷却速度の調節により発色又は消色が選択でき、常温においては発色又は消色のそれぞれの状態を凍結状態にして保つことができる。
【0137】
図3は、前記可逆性感熱記録材料の温度変化に対する発色及び消色の時間的変化の一例を表す説明図である。図3において、横軸は時間、縦軸は温度を表す。
温度T1は、発色剤及び顕色剤の溶融発色反応温度を表す。温度T2は、発色剤及び顕色剤と、バインダー樹脂との可逆性感熱記録材料が凍結状態に固化する温度を表す。
即ち、T1とT2との間の温度領域で、発色していた可逆性感熱記録材料中の発色剤と顕色剤との反応生成物は、発色剤と顕色剤とに解離して、それぞれ凝集又は結晶化することができる。
【0138】
但し、反応生成物が解離して凝集又は結晶化するには、ある程度の反応時間を要する。図3のグラフにおいて、最初、常温で状態(a)(発色状態とする)であった可逆性感熱記録材料を、加熱して温度T1とする。可逆性感熱記録材料は、温度T1になると時間tの間に溶融するが、そのまま発色状態(b)を保つ。
【0139】
これを除冷して時間tをかけて温度T2としてから、常温に戻す。時間tが、溶融して発色していた反応生成物が発色剤と顕色剤とに解離して凝集又は結晶化する時間以上であるので、可逆性感熱記録材料が固化して凍結状態になる前に、反応生成物が解離してしまい、常温では消色状態(c)で凍結されることになる。
【0140】
消色した可逆性感熱記録材料を再度加熱して溶融状態(d)にすると、組成物中の発色剤と顕色剤とが溶融して反応し発色する。この組成物を短い時間tで急冷して、そのまま常温にすれば、可逆性感熱記録材料は、反応した分子状態が凍結されたままの状態(e)で常温になり発色したままである。
【0141】
更に状態(e)の可逆性感熱記録材料を溶融温度T1とT2との間の解離、結晶化温度領域に、長い時間t曝しておくと、反応生成物が発色剤と顕色剤とに解離して、それぞれ凝集又は結晶化してしまい消色することもある。この場合も、可逆性感熱記録材料は、常温に戻すと消色した状態(g)のままである。
【0142】
このような可逆性感熱記録材料の相変化を利用すれば、加熱、冷却の温度、冷却速度等の制御によって、組成物を発色させたり消色させたりすることができる。
なお、図3のグラフでは、模式的にT1とT2との間隔を大きく示してあるが、この温度間隔は実際には、数度(℃)から10度(℃)程度の可逆性感熱記録材料が選択されることが好ましい。
【0143】
可逆性感熱記録層は、上述のような特性を示すが、図4に示すように、可逆性感熱記録媒体600の第2の支持体表面2aにレーザ刻印の凹部90を形成すると、可逆性感熱記録媒体の総厚みとレーザ刻刻印後の残厚みとでは厚み差が発生する。発色状態を維持するためには、上述したように冷却速度を速める必要があるが、レーザ刻印の凹部90の箇所では、プリンタのサーマルヘッド96からの熱エネルギーに対して、レーザ刻印の凹部90部の空気層による断熱効果で、熱による可逆性感熱記録媒体600への熱伝導性(熱拡散)が妨げられて、冷却速度が遅くなり、消色モードに入っているのではないかと推察される。
【0144】
つまり、レーザ刻印の凹部90の深さと可逆性感熱記録媒体の総厚みとの関係については、技術的に明らかになっていないが、プリンタのサーマルヘッド96からの熱エネルギーが、可逆性感熱記録媒体600に熱拡散する際に、可逆性感熱記録媒体600の総厚みに対する熱拡散性やレーザ刻印の凹部90部における空気層での断熱効果やレーザ刻印の凹部90の有無によるプリンタのプラテンローラ81への熱伝導性(熱拡散性)やレーザで刻印する際に発生する盛り上がり(図4において図示しない)によるプラテンローラとの密着性、熱拡散性等が複雑に寄与しているのではないかと推察される。
【0145】
以下に、本発明の前記可逆性感熱記録媒体の層構成の一例を、図面を用いて説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
【0146】
−第1の実施形態−
図5は、本発明の可逆性感熱記録媒体の一実施形態を表す図である。
可逆性感熱記録媒体100は、可逆性感熱記録層3と、該可逆性感熱記録層3に隣接して配され、該可逆性感熱記録層3が配される面とは反対側の面に電子情報記録モジュール収容用凹部10を有する第1の支持体1と、該第1の支持体1における可逆性感熱記録層3が配される面とは反対側の面に配される第2の支持体2と、第1の支持体1と第2の支持体2との間に配され、モジュール基板4上にアンテナ回路5、及びバンプ6とアンダーフィル9とでアンテナ回路5に固定された電子情報記録素子(ICチップ)7を有する電子情報記録モジュール8とを有し、第1の樹脂層11により、第1の支持体1と電子情報記録モジュール8とが接着され、接着剤12により第2の支持体2と第1の支持体1とが接着されている。
【0147】
可逆性感熱記録媒体100によれば、電子情報記録素子7が電子情報記録モジュール収容用凹部10に対して挿入され、可逆性感熱記録媒体100の第1の支持体1の厚み方向において15μm以上の隙間を有し、電子情報記録モジュール収容用凹部10の幅方向(第1の厚み方向に対して垂直な方向)において2mm以上4mm以下の隙間を有するように形成され、可逆性感熱記録媒体100の総厚みを薄く維持したまま、電子情報記録モジュール8の機械的耐久性を低下させることなく、屈曲耐性が維持することが可能となる。
【0148】
また、可逆性感熱記録媒体100において、第1の支持体1の対向する面に第2の支持体2を設けることにより、可逆性感熱記録媒体100の表裏面の応力のバランスがよくなり可逆性感熱記録媒体のカールを低減することができる。
第2の支持体2表面には、1文字の寸法が縦3.5mm、横2.5mmの長方形の中に収まる大きさで、レーザを用いてロット番号や製造日が刻印される。
【0149】
−第2の実施形態−
図6は、本発明の可逆性感熱記録媒体の別の一実施形態を表す図である。
可逆性感熱記録媒体200は、第1の支持体1及び第2の支持体2に加え、前記第1の実施形態に係る可逆性感熱記録媒体100における電子情報記録モジュール収容用凹部10に対して、樹脂が充填され、第2の樹脂層23が形成されている。これ以外は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0150】
可逆性感熱記録媒体200によれば、電子情報記録モジュール収容用凹部10内に形成された第2の樹脂層23により、該電子情報記録モジュール収容用凹部10に対応する可逆性感熱記録媒体200の表面領域に凹みが生ずることを抑制することができ、画像品質に優れた画像の形成及び消去を行うことができる。
【0151】
−第3の実施形態−
図7は、本発明の可逆性感熱記録媒体の更に別の一実施形態を表す図である。
可逆性感熱記録媒体300は、電子情報記録モジュールの変更例に係り、電子情報記録素子7をバンプ6を介して外部端子50に接続し樹脂39で封止されたICパッケージ37が外部端子50とはんだボール36とを介してアンテナ回路5に接続された電子情報記録モジュール38を有する。これ以外は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0152】
可逆性感熱記録媒体300によれば、ICパッケージ37が電子情報記録モジュール収容用凹部10に対して挿入され、可逆性感熱記録媒体300の第1の支持体1の厚み方向において15μm以上の隙間を有し、電子情報記録モジュール収容用凹部10の幅方向において2mm以上4mm以下の隙間を有するように形成され、可逆性感熱記録媒体300の総厚みを薄く維持したまま、電子情報記録モジュール8の機械的耐久性を低下させることなく、屈曲耐性が維持することが可能となる。
【0153】
−第4の実施形態−
図8は、本発明の可逆性感熱記録媒体の更に別の一実施形態を表す図である。
可逆性感熱記録媒体400は、電子情報記録素子7をバンプ6を介して外部端子50に接続し樹脂49で封止されたICパッケージ47が外部端子50とはんだ46を介してアンテナ回路5に接続された電子情報記録モジュール48を有する。これ以外は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0154】
可逆性感熱記録媒体400によれば、ICパッケージ47が電子情報記録モジュール収容用凹部10に対して挿入され、可逆性感熱記録媒体400の第1の支持体1の厚み方向において15μm以上の隙間を有し、電子情報記録モジュール収容用凹部10の幅方向において2mm以上4mm以下の隙間を有するように形成され、可逆性感熱記録媒体400の総厚みを薄く維持したまま、電子情報記録モジュール48の機械的耐久性を低下させることなく、屈曲耐性が維持することが可能となる。
【0155】
<用途>
本発明の可逆性感熱記録媒体は、レーザ刻印を形成した後に可逆性感熱記録層に画像を形成する際、該画像に白抜けによる印字不良が生じることがなく印字品質に優れ、発色及び消色の繰り返しを安定に行うことができるため、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード;鉄道、バス、ETC等の交通機関に用いられるカード;デジタル放送、第三世代携帯電話等の加入者カード;図書館の窓口サービス、学生証、社員証、住民基本台帳等のカード等のカードサイズのものに好適に利用可能である。また、前記カードサイズのものだけでなく、作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書などの前記カードサイズより大きいシートサイズのものにも好適に利用可能である。
【0156】
本発明の前記可逆性感熱記録媒体において、画像の形成及び消去の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した画像処理方法及び画像処理装置を用いることができるが、後述する画像処理装置及び画像処理方法を用いて画像の形成及び消去を行うことが好ましい。
【0157】
(画像処理装置及び画像処理方法)
本発明の前記可逆性感熱記録媒体の可逆性感熱記録層に画像を形成及び/又は消去する画像処理装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像形成手段及び画像消去手段の少なくともいずれかを有することが好ましく、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、搬送手段、制御手段等を有していてもよい。
【0158】
本発明の前記可逆性感熱記録媒体の可逆性感熱記録層に画像を形成及び/又は消去する画像処理方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像形成工程及び画像消去工程の少なくともいずれかを含むことが好ましく、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、搬送工程、制御工程等を含んでいてもよい。
【0159】
前記画像処理方法は、前記画像処理装置により好適に実施することができ、前記画像形成工程及び前記画像消去工程は、それぞれ前記画像形成手段及び前記画像消去手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0160】
<画像形成手段及び画像形成工程>
前記画像形成工程は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を形成する工程であり、前記画像形成手段により好適に行われる。
前記画像形成手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サーマルヘッド、レーザ照射装置などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0161】
<画像消去手段及び画像消去工程>
前記画像消去工程は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を消去する工程であり、前記画像消去手段により好適に行われる。
前記画像消去手段としては、本発明の前記可逆性感熱記録媒体を加熱して画像を消去する手段であり、例えば、ホットスタンプ、セラミックヒータ、ヒートローラ、ヒートブロック、熱風、サーマルヘッド、レーザ照射装置などが挙げられる。これらの中でも、セラミックヒータ、サーマルヘッドなどが好ましい。
【0162】
前記セラミックヒータを用いることにより、装置が小型化でき、かつ安定した消去状態が得られ、コントラストのよい画像が得られる。前記セラミックヒータの設定温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、110℃以上が好ましく、112℃以上がより好ましく、115℃以上が特に好ましい。
【0163】
前記サーマルヘッドを用いることにより、更に小型化が可能となり、また、消費電力を低減することが可能であり、バッテリー駆動のハンディタイプの装置も可能となる。また、前記画像の記録及び消去を兼ねて一つのサーマルヘッドとすることができ、この場合は、更に小型化が可能となる。一つのサーマルヘッドで記録と消去とを行う場合、一旦前画像を全部消去した後、改めて新しい画像を記録してもよいし、画像毎にエネルギーを変えて一度に前の画像を消去し、新しい画像を記録していくオーバーライト方式も可能である。該オーバーライト方式においては、前記画像の記録及び消去を合わせた時間が少なくなり、記録のスピードアップにつながる。
【0164】
<搬送手段及び搬送工程>
前記搬送工程は、前記可逆性感熱記録媒体を順次搬送する工程であり、前記搬送手段により好適に行われる。
前記搬送手段としては、搬送する機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ベルト、搬送ローラ、搬送ベルトと搬送ローラとの組合せなどが挙げられる。
【0165】
<制御手段及び制御工程>
前記制御工程は、前記各工程を制御する工程であり、前記制御手段により好適に行われる。
前記制御手段としては、前記各工程を制御する機能を有する限り特に制限はなく、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器などが挙げられる。
【0166】
前記画像処理装置により前記画像処理方法を実施する一の態様について、図面を用いて詳細に説明するが、本発明は、これに限られるものではない。
【0167】
図9は、本発明の前記可逆性感熱記録媒体の画像の形成及び消去を実施する画像処理装置及び画像処理方法の一態様を示す図である。画像処理装置500は、消去ヘッド32と、サーマルヘッド52と、搬送ローラ31、33、53とを備えている。この画像処理装置500においては、消去ヘッド32にて可逆性感熱記録層に記録された画像を加熱消去する。次いで、処理された新しい情報がサーマルヘッド52により可逆性感熱記録層に記録される。
【0168】
また、可逆性感熱記録媒体70がRF−IDタグを有している場合には、画像処理装置500は、搬送トレイ40に、RF−IDリーダライタ41を有している。
この画像処理装置500においては、最初、消去ヘッド32にて可逆性感熱記録層に記録された画像を加熱消去する。次に、可逆性感熱記録媒体70におけるRF−IDタグの情報をRF−IDリーダライタ41により読み取り、新しい情報をRF−IDに入力した後に、RF−IDリーダライタによって読み取り書き換えた情報を基にして、サーマルヘッド52により処理された新しい情報が可逆性感熱記録層に記録される。なお、ここではRF−IDリーダライタを例に挙げたが、前記電子情報記録モジュールの情報を読み取り又は書き換えできるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、バーコード読み取り装置や、磁気ヘッドなどを有していてもよい。
【0169】
バーコード読み取り装置の場合には、消去ヘッド32により可逆性感熱記録層に記録されたバーコード及びその他の可視化情報を消去し、可逆性感熱記録層に既に記録されているバーコード情報を読み取った後、バーコードから読み取った情報を基に処理された新しい情報がバーコード及びその他の可視化情報としてサーマルヘッドにより可逆性感熱記録層に記録される。
【0170】
画像処理装置500については、可逆性感熱記録媒体70をスタックしておく給紙カセット21があり、ここから可逆性感熱記録媒体70がフリクションパッド方式等の給紙方法により1枚ずつピックアップされる。搬送された可逆性感熱記録媒体は、搬送ローラ31により搬送され、搬送ローラ33により消去ユニットである消去ヘッド32部へ可逆性感熱記録媒体70が搬送され、可逆性感熱記録媒体70に記録されている可視化情報が消去される。その後、RF−IDリーダライタ41へと送られ、ここでデータの読み書きが行われる。
【0171】
ここで、消去ヘッド32の表面温度は、可逆性感熱記録媒体の消去温度にマッチングさせる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃以上190℃以下が好ましく、110℃以上180℃以下がより好ましく、115℃以上170℃以下が更に好ましい。
【0172】
更に、サーマルヘッド部52へと搬送され、可逆性感熱記録媒体70に新しい情報を記録する。その後、搬送ローラ53により可逆性感熱記録媒体70が搬送され、上部の排紙部54より可逆性感熱記録媒体70が排紙トレイ60に搬出される。
【実施例】
【0173】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0174】
(製造例1:可逆性感熱記録媒体Aの製造)
総厚み380μmの可逆性感熱記録媒体Aとして、第1の支持体としてのPETシート(ルミラー(登録商標)E22、厚み188μm、東レ株式会社製)の一方の面に、可逆性感熱記録層を一面側に配した可逆性感熱記録シートA(CRフィルム630BD、株式会社リコー製)を用いた。この可逆性感熱記録シートAの詳細は、以下の通りである。
【0175】
−アンダーコート層の形成−
下記組成のアンダーコート層の材料を均一状態になるまで約1時間撹拌してアンダーコート層塗布液を調製した。
[組成]
・スチレン−ブタジエン系共重合体 30質量部
(PA−9159、日本エイアンドエル株式会社製)
・ポリビニルアルコール樹脂(ポバールPVA103、株式会社クラレ製) 12質量部
・中空粒子 20質量部
(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)R−300、松本油脂製薬株式会社製)
・水 40質量部
【0176】
得られたアンダーコート層塗布液を、前記第1の支持体(ルミラー(登録商標)E22、厚み188μm、東レ株式会社製)上に、ワイヤーバーにて塗布し、80℃にて2分間加熱乾燥して、厚み20μmのアンダーコート層を形成した。
【0177】
−可逆性感熱記録層の形成−
下記組成の可逆性感熱記録層の材料を、ボールミルを用いて数平均粒径が0.1μm〜1.0μmになるように粉砕し可逆性感熱記録層分散液を調製した。
なお、数平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置(LA−700、株式会社堀場製作所製)を用いて常法により測定した。
[組成]
・2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン(ロイコ染料) 1質量部
・下記構造式で表される電子受容性化合物(顕色剤) 4質量部
【化8】

・ジアルキル尿素(ハルリーンSB、日本化成株式会社製) 1質量部
・アクリルポリオール樹脂40質量%溶液 10質量部
(水酸基価:108、ガラス転移温度:80℃、LR327、三菱レイヨン株式会社製)
・メチルエチルケトン 80質量部
【0178】
次に、この可逆性感熱記録層分散液にイソシアネート(コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)4質量部を加え、よく撹拌し、可逆性感熱記録層塗布液を調製した。得られた可逆性感熱記録層塗布液を、前記アンダーコート層上(該アンダーコート層における第1の支持体が配される面と反対側の面)にワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間加熱して、厚み13μmの可逆性感熱記録層を形成した。
【0179】
−中間層の形成−
下記組成の中間層の材料を充分攪拌し中間層用塗布液を調製した。
[組成]
・アクリルポリオール樹脂50質量%溶液 3質量部
(水酸基価:64、ガラス転移温度:80℃、LR-503、三菱レイヨン株式会社製)
・酸化亜鉛微粒子30質量%分散液(ZS303、住友セメント株式会社製) 7質量部
・イソシアネート系硬化剤 1.5質量部
(コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)
・メチルエチルケトン 7質量部
【0180】
得られた中間層用塗布液を、前記可逆性感熱記録層上(該可逆性感熱記録層におけるアンダーコート層形成面の対面)に、ワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱乾燥後、60℃にて2時間加熱し、厚み約2μmの中間層を形成した。
【0181】
−保護層の形成−
下記組成の保護層の材料を、ボールミルを用いて数平均粒径が2μm〜3μmになるように粉砕し保護層塗布液を調製した。
なお、数平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置(LA−700、株式会社堀場製作所製)を用いて常法により測定した。
[組成]
・アクリレート化合物 4質量部
(KAYARAD DPHA(固形分100質量%)、日本化薬株式会社製)
・アクリレート化合物 21質量部
(KAYARAD DPCA−60、日本化薬株式会社製)
・シリカ(P−526、水澤化学工業株式会社製) 2質量部
・光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー株式会社製) 1質量部
・イソプロピルアルコール 60質量部
・トルエン 10質量部
【0182】
得られた保護層塗布液を前記中間層上(該中間層における可逆性感熱記録層形成面の対面)にワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間加熱乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下で架橋させて、厚み3μmの保護層を配した。
以上により、可逆性感熱記録シートA(CRフィルム630BD、株式会社リコー製)を作製した。
【0183】
−電子情報記録モジュール収容用凹部の形成−
この可逆性感熱記録シートAの第1の支持体(可逆性感熱記録層形成面の対面)において、切削加工により第1の支持体の厚み方向に凹となるように直径7mm、深さ150μmの電子情報記録モジュール収容用凹部を形成した。
【0184】
−電子情報記録モジュールの形成−
ホットメルト接着剤(ボンドマスター170−7310、日本エヌエスシー株式会社製)を介して、第1の支持体に形成された電子情報記録モジュール収容用凹部にICチップが収まるように電子情報記録モジュールをロールプレスにより貼り合わせた。ここで、電子情報記録モジュールとしては、モジュール基板上にアンテナ回路、及びバンプとアンダーフィルとで回路基板に固定されたICチップを有する電子情報記録モジュールA(RKT132、株式会社日立製作所製)を用いた。この時、ICチップと電子情報記録モジュール収容用凹部との厚み方向の隙間が10μmになるように貼り合わせた。
【0185】
−接着剤層の形成−
可逆性感熱記録シートAの前記電子情報記録モジュールを形成した面上(第1の支持体側)にホットメルト接着剤(ボンドマスター170−7310、日本エヌエスシー株式会社製)をロール法により厚み101μmで塗布した。
【0186】
−第2の支持体の形成−
第2の支持体としては、PETシート(ルミラー(登録商標)E20、厚み38μm、東レ株式会社製)の一方の面に、以下の方法で帯電防止層を配したものを用いた。
【0187】
下記組成の帯電防止層の材料を、ボールミルを用いて充分攪拌し帯電防止層用塗布液を調製した。
[組成]
・紫外線硬化性導電性ポリマー 100質量部
(セプルジーダ(登録商標)HC−A04、信越ファインテック株式会社製)
・開始剤(イルガキュアI−184、日本チバガイギー株式会社製) 0.6質量部
・アクリル系微粒子 0.95質量部
(数平均粒径15μm球状フィラー、ケミスノーMX1500、綜研化学株式会社製)
【0188】
得られた帯電防止層用塗布液を、PETシート(E20、厚み38μm、東レ株式会社製)上に、ワイヤーバーにて塗布し、110℃にて2分の加熱乾燥後、80W/cm、10m/分間、3パスの紫外線ランプで架橋させて、厚み約15μmの帯電防止層を形成し、これを第2の支持体として以下に用いた。
【0189】
−第1の支持体と第2の支持体との貼合わせ−
前記帯電防止層を配した第2の支持体の該帯電防止層形成面の対面と、前記電子情報記録モジュールが貼られ、接着剤層が形成された該接着剤層面(該接着剤層における第1の支持体形成面の対面)とをロールプレスにより貼り合わせた。
【0190】
−形状加工−
前記第1の支持体と第2の支持体との貼合わせ加工を施した後、ダイを用いてICシートとして85mm×200mmの大きさに切断し、総厚み380μmの可逆性感熱記録媒体Aを製造した。
なお、可逆性感熱記録媒体Aの層構成は、上から順に以下のとおりである。
保護層/中間層/可逆性感熱記録層/アンダーコート層/電子情報記録モジュールを収容した第1の支持体/接着剤層/第2の支持体/帯電防止層
【0191】
(製造例2:可逆性感熱記録媒体Bの製造)
製造例1において、接着剤層の厚みにつき101μmを36μmに変え、第2の支持体に帯電防止層(厚み約15μm)を形成しなかったこと以外は、製造例1と同様の方法で、総厚み300μmの可逆性感熱記録媒体Bを製造した。
【0192】
(製造例3:可逆性感熱記録媒体Cの製造)
製造例1において、接着剤層の厚みにつき101μmを81μmに変えたこと以外は、製造例1と同様の方法で、総厚み360μmの可逆性感熱記録媒体Cを製造した。
【0193】
(製造例4:可逆性感熱記録媒体Dの製造)
製造例1において、接着剤層の厚みにつき101μmを221μmに変えたこと以外は、製造例1と同様の方法で、総厚み500μmの可逆性感熱記録媒体Dを製造した。
【0194】
(実施例1)
可逆性感熱記録媒体Aの第2の支持体表面に下記条件にて「0」から「9」までの数字10文字を、1文字が縦3.5mm、横2.5mmの長方形内に収まる大きさでレーザ刻印を行った。
[条件]
レーザ装置:COレーザ(クラス4)ML−Z9520(コントローラML−Z9500)、キーエンス社製
印字分解能:5μm
焦点深度(レーザ取り付け面から第2の支持体表面までの距離):300mm
波長:10.6nm
線速(スキャンスピード):1,000mm/s
レーザ出力:14.15W(30Wの47.2%使用)
エネルギー密度:0.01415W/(mm/s)
【0195】
(実施例2)
実施例1において、可逆性感熱記録媒体Aを可逆性感熱記録媒体Bに変え、レーザ出力につき14.15W(30Wの47.2%使用)を13.2W(30Wの44%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.0132W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0196】
(実施例3)
実施例1において、可逆性感熱記録媒体Aを可逆性感熱記録媒体Cに変え、レーザ出力につき14.15W(30Wの47.2%使用)を13.95W(30Wの46.5%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.01395W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0197】
(実施例4)
実施例1において、可逆性感熱記録媒体Aを可逆性感熱記録媒体Dに変え、レーザ出力につき14.15W(30Wの47.2%使用)を15.45W(30Wの51.5%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.01545W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0198】
(実施例5)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを13.5W(30Wの45%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.0135W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0199】
(実施例6)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを12W(30Wの40%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.012W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0200】
(実施例7)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを10.5W(30Wの35%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.0105W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0201】
(実施例8)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを9.75W(30Wの32.5%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.00975W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0202】
(実施例9)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを9W(30Wの30%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.009W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0203】
(実施例10)
実施例2において、レーザ出力につき13.2W(30Wの44%使用)を8.85W(30Wの29.5%使用)に変え、エネルギー密度につき0.0132W/(mm/s)を0.00885W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例2と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0204】
(実施例11)
実施例3において、可逆性感熱記録媒体Aを可逆性感熱記録媒体Cに変え、レーザ出力につき13.95W(30Wの46.5%使用)を8.91W(30Wの29.7%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01395W/(mm/s)を0.00891W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例3と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0205】
(実施例12)
実施例4において、レーザ出力につき15.45W(30Wの51.5%使用)を9.3W(30Wの31%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01545W/(mm/s)を0.0093W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例4と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0206】
(比較例1)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを15W(30Wの50%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.015W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0207】
(比較例2)
実施例1において、レーザ出力につき14.15Wを14.25W(30Wの47.5%使用)に変え、エネルギー密度につき0.01415W/(mm/s)を0.01425W/(mm/s)に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法でレーザ刻印を行った。
【0208】
<最大深度A及び最大深度Bの測定>
実施例1〜12及び比較例1〜2の可逆性感熱記録媒体の最大深度A及び最大深度Bは、以下の方法で測定した。結果を下記表1に示す。
【0209】
−最大深度Aの測定及び最大深度Aの割合の算出−
最大深度Aとしては、第2の支持体表面と、レーザ刻印によって削られた数字「4」の交点におけるレーザ刻印の凹部の底部の最も深い点までの長さ(可逆性感熱記録媒体の厚み方向におけるレーザ刻印の深さ)をデジタルマイクロスコープ(VHX−1000、キーエンス社製)を用いて、ワイドレンジズームレンズVH−Z100R、倍率300倍、スキャンピッチ2μm、3D画像による3D計測で測定した。
測定した最大深度Aから、下記式(1)により、可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する最大深度Aの割合を算出した。
最大深度Aの割合(%)=最大深度A(μm)/可逆性感熱記録媒体の総厚み(μm)×100 ・・・式(1)
【0210】
−最大深度Bの測定及び最大深度Bの割合の算出−
最大深度Bとしては、レーザ刻印によって削られた数字「4」の交点におけるレーザ刻印の凹部の底部の最も深い点までの長さと、該交点周囲の溶融した第2の支持体からなる凸部の最も高い頂点との長さとの合計(可逆性感熱記録媒体の厚み方向におけるレーザ刻印の深さ)をデジタルマイクロスコープ(VHX−1000、キーエンス社製)を用いて、ワイドレンジズームレンズVH−Z100R、倍率300倍、スキャンピッチ2μm、3D画像による3D計測で測定した。
測定した最大深度Bから、下記式(2)により、可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する最大深度Bの割合を算出した。
最大深度Bの割合(%)=最大深度B(μm)/可逆性感熱記録媒体の総厚み(μm)×100 ・・・式(2)
【0211】
最大深度A及び最大深度Bをデジタルマイクロスコープ(VHX−1000、キーエンス社製)で測定した結果の一例を図10A〜Cに示す。図10Aは、比較例1の測定結果を示す図であり、図10Bは、実施例5の測定結果を示す図であり、図10Cは、実施例9の測定結果を示す図である。ここでは、比較例1、実施例5及び9の結果のみを示すが、その他の実施例及び比較例も同様にして測定できる。
【0212】
<評価>
実施例1〜12及び比較例1〜2の可逆性感熱記録媒体の可逆性感熱記録層における白抜け(印字不良)、及び第2の支持体表面にレーザ刻印した文字の視認性を以下の方法で評価した。結果を下記表1に示す。
【0213】
−白抜け−
実施例1〜12及び比較例1〜2の可逆性感熱記録媒体に対して、温度5℃、相対湿度30%の環境下で、プリンタ(PR−Kプリンタ、シンフォニアテクノロジー社製)を用いて可逆性感熱記録層表面における画像を消去した後、該プリンタを用いて、該可逆性感熱記録層表面の全面をベタ発色させた。このベタ発色させた可逆性感熱記録層における該レーザ刻印部の反対側に相当する部位(可逆性感熱記録層刻印相当部)における印字画像の白抜けを下記基準で評価した。
[評価基準]
○:可逆性感熱記録層刻印相当部に白抜けの発生は認められない
△:可逆性感熱記録層刻印相当部に少し白抜けの発生がわずかに認められる
×:可逆性感熱記録層刻印相当部に白抜けの発生が明確に認められる
【0214】
−視認性−
実施例1〜12及び比較例1〜2の可逆性感熱記録媒体の第2の支持体表面におけるレーザ刻印文字全体の視認性を下記基準で評価した。
○:レーザ刻印文字が明確に認識できる
△:レーザ刻印文字の一部に欠けがあり認識し難いが、実用上問題ない
×:レーザ刻印文字が全く認識できない
【0215】
【表1】

上記表1において、「凹部[μm]」は、第2の支持体表面からレーザ刻印の凹部の底部までの可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(最大深度A)を示す。
また、「凸部+凹部[μm]」は、第2の支持体表面からレーザ刻印の凹部の底部までの可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(最大深度A)と、第2の支持体表面からレーザ刻印の凸部の頂点までの可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さ(最大深度C)との和(最大深度B)を示す。
【0216】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、前記画像に白抜けによる印字不良が生じることがなく印字品質に優れ、発色及び消色の繰り返しを安定に行うことができ、更にレーザ刻印の視認性が良好であり、適度な柔軟性(可撓性)を有するため、広く電子情報記録部(ICチップ)付きの可逆性感熱記録媒体として、例えば、工業製品、各種薬品容器等のステッカー、製造業分野における作業書、部品管理票、工程管理票等の指示書などの多様な用途に幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0217】
1 第1の支持体
2 第2の支持体
2a 第2の支持体表面
3 可逆性感熱記録層
4 モジュール基板
5 アンテナ回路
7 電子情報記録素子
8、38 電子情報記録モジュール
12 接着剤
37、47 ICパッケージ
80 凸部
90 凹部
100、200、300、400、600 可逆性感熱記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0218】
【特許文献1】特開2008−262527号公報
【特許文献2】特開2004−110581号公報
【特許文献3】特開2003−127570号公報
【特許文献4】特開2006−201901号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記基体が、第1の支持体と、電子情報記録モジュールと、前記第1の支持体を覆う接着剤と、表面にレーザ刻印の凹部が形成された第2の支持体と、を有してなり、
前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凹部の底部までの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Aとするとき、
前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Aの割合が20%以下であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項2】
基体上に可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記基体が、第1の支持体と、電子情報記録モジュールと、前記第1の支持体を覆う接着剤と、表面にレーザ刻印の凹部及び該凹部の周囲に凸部が形成された第2の支持体と、を有してなり、
前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凹部の底部までの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Aとし、前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凸部の頂点までの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Cとし、前記最大深度Aと前記最大深度Cとの和(A+C)を最大深度Bとするとき、
前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Bの割合が23%以下であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項3】
基体上に可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体であって、
前記基体が、第1の支持体と、電子情報記録モジュールと、前記第1の支持体を覆う接着剤と、表面にレーザ刻印の凹部及び該凹部の周囲に凸部が形成された第2の支持体と、を有してなり、
前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凹部の底部までの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Aとし、前記第2の支持体表面から前記レーザ刻印の凸部の頂点までの前記可逆性感熱記録媒体の厚み方向における長さを最大深度Cとし、前記最大深度Aと前記最大深度Cとの和(A+C)を最大深度Bとするとき、
前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Aの割合が20%以下であり、前記可逆性感熱記録媒体の総厚みに対する前記最大深度Bの割合が23%以下であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【請求項4】
レーザ刻印のエネルギー密度が、0.0142W/(mm/s)以下である請求項1から3のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項5】
可逆性感熱記録層が、電子供与性呈色化合物及び電子受容性化合物を含む請求項1から4のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。
【請求項6】
可逆性感熱記録媒体が、カード状及びシート状のいずれかに加工されている請求項1から5のいずれかに記載の可逆性感熱記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公開番号】特開2013−52576(P2013−52576A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191933(P2011−191933)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】