説明

可逆感温変色性ヒステリシス組成物

【課題】可逆感温変色性材料とした時の物性を上げるために微細なマイクロカプセルに内包されていても、広いヒステリシス幅を有し、高発色濃度且つ消色時の残色が少ないハイコントラストな通常使用条件下(常温域)で、見かけ上、不可逆的な呈色状態を呈する可逆感温変色性組成物を提供すること。
【解決手段】(イ)ロイコ色素、(ロ)顕色性物質、及び(ハ)変色温度調整剤をマイクロカプセルに内包されてなる可逆感温変色性組成物において、(ロ)顕色性物質が化1で示される化合物であり、且つ(ハ)変色温度調整剤が化2で示される化合物であることを特徴とする可逆感温変色性ヒステリシス組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆感温変色性ヒステリシス組成物に関する。更に詳しくは、微細なマイクロカプセルに内包されていても、温度変化により広いヒステリシス幅を持って可逆的変色を呈し、ある一定の温度域において2種以上の異なった呈色状態を発現せしめることができ、且つ、コントラストが明瞭な可逆感温変色性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコ色素(電子供与性化合物)、顕色性物質(電子受容性化合物)、及び呈色反応の生起温度を制御する変色温度調整剤からなる感温変色性組成物は、温度の変化に応じて可逆的に発色したり消色したりする特性を示し、数多くの用途に使用されている。
感温変色性組成物は、ある一定の変色温度を境に変色し、常温においては1つの呈色状態しか示さず、熱又は冷熱を与えることによりもう一方の呈色状態となる。熱又は冷熱を与えることをやめれば常温における呈色状態へと戻る。
一方、特定のある変色温度調整剤を用いた可逆感温変色性組成物が、一定の温度域(ヒステリシス幅)において異なった呈色状態を発現せしめることが知られており、温度を変色温度より低温側から上昇させていく場合と、高温側から下降させていく場合とで異なる経路をたどって変色するヒステリシス特性により、変色に要した熱又は冷熱を与えることをやめても低温側と高温側の色の何れかを常温において選択的に保持できることが知られている。
【0003】
ヒステリシス特性を有する可逆感温変色性組成物としては、例えば、(イ)無色又はごく淡色のロイコ染料、(ロ)ロイコ染料と接触して該染料を発色させる顕色性物質、並びに(ハ)ロイコ染料及び顕色性物質との共存下に加熱すると該染料を消色させる、脂肪族カルボン酸のアルキルエステル及び分子内に少なくとも1種の芳香族環を有するエステル類を含有し、発色濃度−温度曲線の完全消色温度(T2)より△t℃高い温度に晒すと、ヒステリシス幅が△Ht拡大する感温変色性組成物(特許文献1)、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)フェノール性水酸基を有する化合物及びそれらの金属塩、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1,2,3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物、(ハ)5℃以上50℃未満の△T値(融点−曇点)を示す特定のカルボン酸エステル化合物の3成分を必須成分とする均質相溶性系からなる可逆感温記録性組成物(特許文献2)、(イ)無色又は淡色のロイコ色素、(ロ)該ロイコ色素を発色させる能力を有する顕色性物質、及び(ハ)分子中に少なくとも4個のエステル結合を有し、且つ分子量が3000以下のエステル化合物を含んでなる可逆変色性感温記録組成物(特許文献3)、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体として、分子内に芳香環を2個有するアルコール化合物と、炭素数4以上の飽和又は不飽和脂肪酸とから構成される特定のエステル化合物の均質相溶体からなる感温変色性色彩記憶性組織物を内包したマイクロカプセル顔料と、溶剤とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性筆記具用インキ組成物(特許文献4)等が開発されている。
しかしながら、上記の特許文献1〜4の可逆感温変色性組成物は、ヒステリシス特性について、改良の余地がある。
又、広いヒステリシス幅を有し、通常使用条件下(常温域)で、見かけ上、不可逆的な呈色状態を呈する可逆感温変色性組成物(特許文献5)を本出願人が開発したが、材料とした時の物性を上げるために可逆感温変色性組成物を微細なマイクロカプセルに内包するとヒステリシス幅が狭くなる、発色濃度が低下する、消色時に残色がでるなどの点で問題があった。
以上のことから、材料とした時の物性を上げるために可逆感温変色性組成物を微細なマイクロカプセルに内包しても、広いヒステリシス幅を有し、通常使用条件下(常温域)で、見かけ上、不可逆的な呈色状態を呈する可逆感温変色性組成物として、上記の問題が発生しないものの開発が待たれている。
【0004】
【特許文献1】特開平3−76786号公報
【特許文献2】特開平4−17154号公報
【特許文献3】特開平7−40660号公報
【特許文献4】特開2005−213361号公報
【特許文献5】特開2007−332232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、可逆感温変色性材料とした時の物性を上げるために微細なマイクロカプセルに内包されていても、広いヒステリシス幅を有し、高発色濃度且つ消色時の残色が少ないハイコントラストな通常使用条件下(常温域)で、見かけ上、不可逆的な呈色状態を呈する可逆感温変色性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねたところ、特定のビスフェノールの脂肪族カルボン酸エステル化合物と特定のビスフェノール化合物の組み合わせが、微細なマイクロカプセルに内包されていても、そのヒステリシス幅や発色濃度、残色に影響が少ない優れた可逆感温変色性ヒステリシス特性を有していることを知り、更に研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明から構成されるものである。
1.(イ)ロイコ色素、(ロ)顕色性物質、及び(ハ)変色温度調整剤をマイクロカプセルに内包されてなる可逆感温変色性組成物において、(ロ)顕色性物質が化1で示される化合物であり、且つ(ハ)変色温度調整剤が化2で示される化合物であることを特徴とする可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
【化1】






(式中のR1は、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R2は、炭素数4〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。)
【化2】

(式中のR3及びR4は、炭素数7〜21の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R5及びR6は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、又はCF3を示す。)
2.可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセルの平均粒子径が0.3〜1.0μm、且つ、0.5μm未満の粒子を20%以上含む上記1記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
3.可逆感温変色性ヒステリシス組成物が、ヒステリシス幅が30℃乃至100℃の範囲のものである上記1又は2記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
4.可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル壁膜がメラミン樹脂である上記1、2又は3記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
5.上記1乃至4記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物を用いてなる筆記用インク、印刷用インク、塗料、成形用マスターバッチ、カラーペレット又はゾルペーストである可逆感温変色性ヒステリシス材料。
6.上記5記載の可逆感温変色性ヒステリシス材料を用いてなる筆記具、印刷物、塗装物又は成型物。
【0007】
本発明は、(イ)ロイコ色素、(ロ)顕色性物質、及び(ハ)変色温度調整剤を含んでなる可逆感温変色性組成物において、(ロ)顕色性物質として化1、(ハ)変色温度調整剤として化2で示される化合物を用いることにより、微粒子状のマイクロカプセルに内包されていても、優れたヒステリシス特性である広いヒステリシス幅や高濃度、低残色性を有するものを得た点に特徴を有するものである。
【0008】
本発明は、以下の知見に基づいて、なされたものである。
(1)可逆感温変色性
本件の可逆感温変色性は、図1によって、示すことができる。
図1において、横軸に温度、縦軸に呈色濃度が表されており、温度変化による呈色濃度の変化は矢印に沿って進行する。
最高の呈色濃度C2(以下、単に、「発色状態」と記す。)を示す温度範囲にある任意の温度T1にある場合に、これを昇温すると温度T3aに達した時点で呈色濃度が急激に低下しはじめ、温度T3bに達すると、最低の呈色濃度C1(以下、単に、「消色状態」と記す。)を示すようになる。
次に、この様に消色状態を示す温度範囲にある任意の温度T4にある本発明組成物を降温させていくと、上述した温度T3b及びT3aに達してもその消色状態にあることは変わらず、更に降温を続け、温度T2bに達した時点で呈色濃度が急激に上昇しはじめ、温度T2aに達すると発色状態C2へと戻る。
このような、可逆変色サイクルは、準可逆的変色現象と呼ばれることもあるが、一般的には、ヒステリシス変色現象として知られているものである。
尚、図1に対する上記説明においては、便宜上、温度を連続的に変化せしめる表現をとったが、相異なる適当な2つの温度点(熱又は冷熱を与える)を適用するだけで、同一の作用効果が発現される。
本発明の組成物では、この様に昇温もしくは降温の履歴状態の如何により、温度範囲T2b乃至T3a間における同じ温度において、2つの異なった呈色状態(即ち、発色状態と消色状態)が出現する。
具体的には、消色状態にある本発明組成物をT2b以下の冷熱を与えると発色状態となり、これは、T2a以下の温度範囲であれば発色状態が維持される。
又、発色状態にある本発明組成物に、T3a以上の熱を与えると消色状態となり、これは、T3b以上の温度範囲であれば、消色状態が維持される。
尚、T2bからT3aの2つの異なった呈色状態が示される温度幅がヒステリシス幅であり、ヒステリシス幅が大きいほど、変色前後の呈色状態の保持が容易となり、通常使用条件下(常温域)においては、見かけ上、不可逆的な挙動を示すようになる。
【0009】
(2)反応の一般原則
化学反応を検討する場合、以下の一般原則に留意する必要がある。
1)原則1(平衡反応)
化学反応が平衡反応である場合、以下のル・シャトリエの原則(平衡移動の法則)が適用される。
「反応の条件(濃度、圧力、温度)を変化させると、化学平衡は、その変化した条件を打ち消す方向に平衡が移動する。」
2)原則2(反応相)
化学反応は、液相又は気相の場合は生起する。しかし、固相の場合には生起しない。
【0010】
(3)本発明の変色機構
本発明の(イ)ロイコ色素、(ロ)顕色性物質、及び(ハ)変色温度調整剤を含んでなる可逆感温変色性組成物において、発色物質を発色体(イ・ロ)で表すと、本発明の変色機構は、以下の反応式(1)で表される。

(イ) + (ロ) → 発色体(イ・ロ) ・・・(1)

上記の反応における、発色(消色)反応とその発熱(吸熱)の関係は、以下のとおりである。

発色反応: (イ) + (ロ) → 発色体(イ・ロ) ・・・(2) (発熱反応)
消色反応: (イ) + (ロ) ← 発色体(イ・ロ) ・・・(3) (吸熱反応)

(原則1)
本発明の変色反応は、平衡反応であるから、以下の反応が生起する。
加熱すると、吸熱反応の消色反応(3)が進行して、消色する。
冷却すると、発熱反応の発色反応(2)が進行して、発色する。
(原則2)
本発明の変色反応は、液相において生起する。
上記の原則の成立を前提にすると、本発明の変色現象については、以下のことがいえる。
(a)加熱した場合:消色
変色温度調整剤の融点(T3a)までは、反応相は固相であるので、発色体(イ・ロ)は、発色したままであるが、融点以上の温度になると、反応相は液相を呈するので、吸熱反応である消色反応(3)が生起し、以下の消色ラインにより、消色する。

T1(任意の発色温度)→ T3a(消色開始温度:融点(液化開始点)) → T3b(消色終了温度:完全液化点) → T4(任意の消色温度)

(b)冷却した場合:発色
冷却によって、発熱反応である発色反応(2)が生起して、発色する。
この場合、発色点は、反応相の固化温度の低下にともない、低温側に移動し、発色は、反応相の液相が維持されている、T2b(発色開始温度:固化開始点)とT2a(発色終了温度:固化終了点)の間で生起するので、発色は、以下の発色ラインにより、発色する。
T4(任意の消色温度) → T2b(発色開始温度) → T2a(発色終了温度:固化終了点) → T1(任意の発色温度)
(C)ヒステリシス
本件の発色は、通常のように、消色ラインのT3a→T3bを逆にたどらないで、反応相の固化温度の低下にともない、発色点は低温側に移動するために、発色反応は、T2bとT2aの間で生起し、発色ラインのT2b→T2aをたどって、発色する。
その結果、特定の温度範囲においては、ヒステリシス現象を生起して、加熱(昇温)時と冷却(除温)時では、異なった色相となる。
本件のヒステリシス現象は、冷却(降温)時における、反応相の凝固点降下が原因となって生起する。
従って、反応相の融点降下は、特に、変色温度調整剤の特性(凝固点降下)の影響を受けると考えられるので、本件のヒステリシスは、該調整剤の特性により定まるものと推察し得る。
【0011】
(3)以上の検討結果から、先の発明(特許文献5)では、変色温度調整剤が優れたヒステリシス特性を呈するか否かは、冷却(降温)時における、該調整剤の特性(凝固点降下)が重要であると考え、研究を重ねたところ、特定のフッ素含有基(CF3)ビスフェノールの脂肪酸エステル化合物には、優れたヒステリシス特性があることをつきとめ、先の発明を完成した。
【0012】
(4)先の発明の可逆感温変色性組成物が優れたヒステリシス特性を呈する理由は、該発明の変色温度調整剤には、冷却(降温)時に凝固点が大幅に低下するという特性があること、該調整剤には変色性成分と固溶体を形成する特性があること、又は、該両特性が複合的に作用すること等のために、反応相の固化温度が、大幅に低下したことによるものと考えられる。
(5)ところが、先の発明は、材料とした時の物性を上げるために可逆感温変色性組成物を微細なマイクロカプセルに内包するとヒステリシス幅が狭くなる、発色濃度が低下する、消色時に残色がでるなどの点で問題があることが分かった。
そこで、上記の問題を解決するため、更に、鋭意研究を重ねたところ、変色温度調整剤として、先の発明で用いた、特定のビスフェノールの脂肪酸エステル化合物(化2)を使用するとともに、顕色性物質として、特定のビスフェノール化合物(化1)を使用すると、可逆感温変色性材料とした時の物性を上げるために、微細なマイクロカプセルに内包したとしても、広いヒステリシス幅を有し、高発色濃度且つ消色時の残色が少ないハイコントラストな通常使用条件下(常温域)で、見かけ上、不可逆的な呈色状態を呈する可逆感温変色性組成物が得られることをつきとめ、本発明を完成した。
【0013】
上記の本発明の優れた効果は、顕色性物質である、化1の化合物と、変色温度調整剤である、化2の有する化合物の相乗効果により、優れたヒステリシス特性が発揮されたものと推察される。
本発明の変色前後の呈色状態を保持できるヒステリシス幅は、30℃乃至100℃の範囲であり、更に、通常使用条件下(常温域)において、見かけ上、不可逆的な挙動を示すようになるには、T3aが35℃以上、好ましくは40℃以上であり、且つ、T2aが10℃以下、好ましくは0℃以下である。
一般に、室内の日常環境温度は、0℃以下となることはまれであり、野外においても、−10℃以下になることは、寒冷地を除いてはまれである。
してみると、本発明のヒステリシス幅の広い感温変色性組成物は、日常環境温度では、見かけ上、不可逆な挙動を示すが、適切な熱又は冷熱を与えることにより、元の状態に戻ることができるため、実質的には、可逆的なものであるから、この様な特性を有する本発明の感温変色性組成物は、各種の用途に有用である。
【0014】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明は、(A)ロイコ色素、化1で示される化合物からなる顕色性物質及び化2で示される化合物からなる変色温度調整剤からなる可逆感温変色性組成物、(B)可逆感温変色性組成物のマイクロカプセル、(C)可逆感温変色性組成物(マイクロカプセル化物)からなる材料から構成されるものである。
上記の(A)〜(C)について、以下説明する。
【0015】
(A)可逆感温変色性組成物
本可逆感温変色性組成物は、ロイコ色素、顕色性物質及び変色温度調整剤からなるものであるが、温度変化により広いヒステリシス幅を持って可逆的変色を呈するものであり、本感温変色性組成物の感温変色性は、ロイコ色素及び顕色性物質によってもたらされ、そのヒステリシス特性を伴う変色温度は、変色温度調整剤により調整することができる。
【0016】
1.ロイコ色素
ロイコ色素は、電子供与性化合物からなるものであって、以下の顕色性物質と呈色反応を生起して発色する成分であり、本発明では必須の成分である。
ロイコ色素としては、感圧複写紙用色素、感熱記録紙用色素として通常知られているものや、その他の感熱変色性組成物を構成するものして従来公知のもの等何れも用いることができ、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、フルオラン系、フェノチアジン系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系、スピロピラン系、ローダミンラクタム系、トリフェニルメタン系、トリアゼン系、スピロフタランキサンテン系、ナフトラクタム系、アゾメチン系等が挙げられる。この様なロイコ色素の具体例としては、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジブトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−クロロ−6−フェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3′−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−ジエチルアミノ−7−フェニルアミノフルオラン、3,3−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチル)フェニル−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、2′−(2−クロロアニリノ)−6′−ジブチルアミノスピロ〔フタリド−3,9′−キサンテン〕、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができるが、勿論これ等に限定されるものではない。
本発明においては、これ等のロイコ色素を1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、これにより発色状態の色彩を任意とすることができる。
【0017】
2.顕色性物質
本顕色性物質は、電子受容性化合物からなるものであって、前記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分であり、本発明の中核をなすものである。
本発明に用いられる顕色性物質は、ビスフェノール誘導体であり、下記の化合物で示されるものである。
【化1】






(式中のR1は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R2は炭素数4〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。)
前記化合物としては、具体的には、4,4’−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール、4,4’−(2−エチルペンチリデン)ビスフェノール、4,4’−オクチリデンビスフェノール、4,4’−ヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(4−メチルオクチリデン)ビスフェノール、4,4’−デシリデンビスフェノール、4,4’−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(3−メチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチルヘブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,2−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,5−ジメチルヘキシリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−3−メチルペンチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチル−4−メチルヘプチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−ヘキシリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−ペンチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−オクチリデン)ビスフェノール等を挙げることができるが、勿論これ等に限定されるものではない。
本発明においては、これ等の顕色性物質を1種又は2種以上組み合わせて用いること、又は従来公知の顕色剤を本発明の顕色性物質の諸特性を損わない範囲内で組み合わせて用いることにより、発色時の色彩濃度を自由に調節することができる。従ってその使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常前記したロイコ色素1重量部に対して、0.1〜100重量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0018】
3.変色温度調整剤
本変色温度調整剤は、前記ロイコ色素と顕色性物質の呈色においてヒステリシス特性をもたらす物質であり、本発明の中核をなすものである。
本発明に用いられる変色温度調整剤は、ビスフェノール誘導体と、炭素数8〜22の飽和脂肪酸とから構成されるエステル化合物であり、下記の化合物で示されるものである。
【化2】

(式中のR3及びR4は、直鎖又は分岐の炭素数7〜21のアルキル基を示し、R5及びR6は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、又はCF3を示す。)
前記化合物としては、具体的には、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジカプレート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジパルミエート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジウンデカノエート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジトリデカエート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジカプレート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジパルミエート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジウンデカノエート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジトリデカエート、4,4’−メチレンビスフェノールジカプレート、4,4’−メチレンビスフェノールジラウレート、4,4’−メチレンビスフェノールジミリステート、4,4’−メチレンビスフェノールジパルミエート、4,4’−メチレンビスフェノールジウンデカノエート、4,4’−メチレンビスフェノールジトリデカエート等が挙げられる。
本変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常ロイコ色素1重量部に対して、1〜1000重量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
尚、本発明の組成物の諸特性を損わない範囲内であれば、この種の感温変色性組成物において従来公知の変色温度調整剤を組み合わせて用いることもできる。この様な変色温度調整剤としては、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アマイド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類等を挙げることができる。
【0019】
(B)マイクロカプセル
本発明の可逆感温変色性組成物は、独立した微小閉鎖系内に本発明の組成物を内包して用いる。これは、感温変色性組成物の組成をマイクロカプセル内で同一に保つことができるため、特性や挙動の安定したものができ、又マイクロカプセル外部の他の化学物質の影響を受けにくくなり、更には感温変色性組成物が外部に漏れ出すのを防ぐことも可能となるためである。
又、マイクロカプセルの平均粒子径は、可逆感温変色性組成物を材料として用いたときの物性や特性に優れた範囲である、マイクロカプセルの平均粒子径が0.3〜1.0μm、且つ、0.5μm未満の粒子を20%以上含むものである。即ち、インク、塗料、成形用マスターバッチ、カラーペレット又はゾルペーストとした際にこの範囲を超える大きな粒子径をもつマイクロカプセルでは、表面平滑性に劣る、加工中の物理的圧力によりカプセル膜が破壊する、ペンノズルやペン先を目詰まりさせるなどの諸問題が発生し、この範囲を超える小さな粒子径をもつマイクロカプセルでは発色濃度に乏しくなる。
従来は、本発明の範囲の平均粒子径の様な微細な粒子径にすると、ヒステリシス幅が狭くなる、発色濃度が低下する、消色時に残色がでるなどの問題が発生したが、本発明の顕色性物質と変色温度調整剤を用いることでこれらの問題が解決でき、材料特性に優れた微細な粒子径を持つ広いヒステリシス幅を保った、高発色濃度且つ消色時の残色が少ないハイコントラストな可逆感温変色性組成物となった。
この目的を達成するためには、従来公知の各種マイクロカプセル化方法を適用することができる。マイクロカプセル化方法としては、従来の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法、insitu(インサイチュ)重合法、液中硬化被覆法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等を挙げることができる。但し、これ等に限定されることなく、又2種以上異なる方法を組み合わせて採用することもできる。
又、マイクロカプセル壁膜物質としては、例えば、ポリ尿素壁膜を形成するための多価アミンとカルボニル化合物、ポリアミド壁膜を形成するための多塩基酸クロライドと多価アミン、ポリウレタン壁膜を形成するための多価イソシアネートとポリオール化合物、エポキシ樹脂壁膜を形成するためのエポキシ樹脂化合物と多価アミン、メラミン樹脂壁膜を形成するためのメラミン・ホルマリンプレポリマー、メチロールメラミンプレポリマー、メチル化メラミンプレポリマー、尿素樹脂壁膜を形成するための尿素・ホルマリンプレポリマー、フェノール樹脂壁膜を形成するためのフェノール樹脂プレポリマー、ビニル系壁膜を形成するための酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化ビニル等の各種モノマー類、ゼラチン、アラビアガム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができるが、これ等に限定されるものでなく、又2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
尚、本発明の微細なカプセル化には、粒子径の制御の容易さ、カプセル内包物とカプセル膜の極性の関係、可逆感温変色性組成物を材料とする際の後処理の容易さ等から界面重合法によるメラミン樹脂壁膜を形成するマイクロカプセル化方法が好ましい。
更に、第一次マイクロカプセル壁膜を形成した後、再度、壁膜樹脂を被覆硬化して二重の壁膜とすることにより、マイクロカプセルの物理的強度が向上したり、マイクロカプセルの表面状態が変わることで分散性を変化させることもできる。
又、本発明の組成物の諸特性を損なわない範囲内であれば、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消去剤等をマイクロカプセル内に共存させることもできる。
【0020】
(C)材料
本可逆感温変色性組成物のマイクロカプセルは、各種インク中、塗料中、合成樹脂中等に均一に分散させて用いることができる。尚、異なった色相のマイクロカプセルを数種混合して色相のバリエーションを増やすこともできるし、異なった温度域のマイクロカプセルを数種混合することにより温度変化により多数の色相変化させることもできる。
又、本可逆感温変色性組成物のマイクロカプセルは、その作成工程が高温のため、作成直後は消色状態となっている。その用途が消色状態から冷却(除温)することで発色させるものであればそのまま用いることができ、逆に、その用途が発色状態から加熱(昇温)することで消色させるものであれば、作成後、一旦冷却して発色状態にして用いる。
尚、感温変色性材料や最終製品とする際に熱が加わる工程があれば、その工程により消色してしまうので、その用途が発色から消色の変化を望むのであれば得られた感温変色性材料や最終製品を冷却することで発色状態とすることができる。
又、変色性を伴わない一般顔料等を合わせて配合することで、有色から有色への変化(色変わり)とすることができる。
(水性の印刷インク、コーティングインク及び塗料)
各種水性インクとしては、水性分散された可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセルを各種水性クリヤーバインダーに配合してスクリーン印刷インク、グラビア印刷インク、フレキソ印刷インク、インクジェット用インク等の印刷インクとすることができる。又、各種水性クリヤーバインダーに配合してコンマコーター、リバースコーター、カーテンコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター等のコーティングインクとすることができる。又、各種水性クリヤーバインダーに配合してハンドスプレー、自動スプレー、静電塗装、刷毛塗り等の塗装用の塗料とすることができる。
尚、各種水性クリヤーバインダーとしては、特に限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性糊料、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、エチレンマレイン酸樹脂、メチルビニルエーテルマレイン酸樹脂、カゼイン等の水可溶性樹脂、或いは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・塩化ビニル樹脂等の合成樹脂エマルジョン又はディスパージョンを1種又は2種以上配合して用いることができるが、可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセルを印刷又はコーティング、塗装できるものであれば特に限定されるものではない。
又、これ等の各種水性クリヤーバインダーには、増粘剤、界面活性剤、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、体質顔料、有機顔料、無機顔料、蛍光染料、乾燥遅効剤、硬化剤等を加えて各種水性インクとすることができるが、必ずしもこれ等に限定されるものではない。
【0021】
(油性の印刷インク、コーティングインク及び塗料)
各種油性インクとしては、可逆感温変色性ヒステリシス組成物をスプレードライ方法などによって乾燥させ、パウダー化した後、各種油性クリヤーバインダーに配合して、オフセットインク、凸版インク、グラビアインク、スクリーンインク、タンポインク、インクジェットインク等とすることができる。
又、油性クリヤーバインダーに配合して、コンマコーター、リバースコーター、カーテンコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター等のコーティングインクとすることができる。
又、油性クリヤーバインダーに配合してハンドスプレー、自動スプレー、静電塗装、刷毛塗り等の塗装用の塗料とすることができる。
又、各種油性クリヤーバインダーとしては、特に限定されるものではないが、酸化重合型樹脂、アルキッド樹脂、紫外線硬化型樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、エポキシ変性アクリル酸エステル、ポリエステル変性アクリル酸エステル、ウレタン変性アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メチロールメラミン樹脂、メチル化メチロールメラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、フッ素樹脂等を配合して用いることができるが、可逆感温変色性ヒステリシス組成物を印刷、コーティング又は塗装できるものであれば特に限定されるものではない。
またこれ等の各種水性クリヤーバインダーには、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、消泡剤、レベリング剤、体質顔料、有機顔料、無機顔料、蛍光染料、硬化剤等を加えてインク又は塗料とすることができるが、必ずしも、これ等に限定されるものではない。
又、パウダー化した可逆感温変色性ヒステリシス組成物と帯電剤などを加えて、静電方式のレーザープリンターやコピー機用のインクやトナーインクとすることもできる。
【0022】
(水性筆記具用インク)
各種水性筆記具用インクとしては、水性で無色あるいは有色のボールペンインク、筆ペンインク、フェルトペンインク、マーカーペンインクなどに水性分散された可逆感温変色性ヒステリシス組成物を配合して得ることができる。
水性筆記具用インクとしては、特に限定されるものではないが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等の水溶性糊料、キサンタンガム、ウェランガム、ジェランガム等の高分子多糖類、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、エチレンマレイン酸樹脂、メチルビニルエーテルマレイン酸樹脂、カゼイン等の水可溶性樹脂、或いは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・塩化ビニル樹脂等の合成樹脂エマルジョン又はディスパージョンを1種又は2種以上配合して用いることができるが、可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセルを水性筆記具用インク化きるものであれば特に限定されるものではない。
又、これ等の各種水性インクには、増粘剤、界面活性剤、分散剤、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、体質顔料、有機顔料、無機顔料、蛍光染料、乾燥遅効剤等を加えて各種水性インクとすることができるが、必ずしもこれ等に限定されるものではない。
【0023】
(油性筆記具用インク)
各種油性筆記具用インクとしては、油性で無色あるいは有色のボールペンインク、筆ペンインク、フェルトペンインク、マ−カーペンインクなどにパウダー化された可逆感温変色性ヒステリシス組成物を配合して得ることができる。
尚、各種油性のインクとしては、特に限定されるものではないが、酸化重合型樹脂、アルキッド樹脂、紫外線硬化型樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、エポキシ変性アクリル酸エステル、ポリエステル変性アクリル酸エステル、ウレタン変性アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、メチロールメラミン樹脂、メチル化メチロールメラミン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレンポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、フッ素樹脂、石油樹脂、ロジン酸エステル樹脂等を配合して用いることができるが、可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセルを油性筆記具用インク化できるものであれば特に限定されるものではない。
又、これ等の各種油性インクには、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、消泡剤、レベリング剤、体質顔料、有機顔料、無機顔料、蛍光染料等を加えて、各種油性インクとすることができるが、必ずしも、これ等に限定されるものではない。
【0024】
(マスターバッチ、カラーペレット)
マスターバッチ及びカラーペレットとしては、可逆感温変色性ヒステリシス組成物をスプレードライ方法などの方法により乾燥させ、パウダーとした後、該組成物を熱可塑性樹脂、低分子熱可塑性樹脂、Wax、分散剤、滑剤などと共に加熱混練し、高濃度のペレット化したマスターバッチとすることができる。
得られたマスターバッチは、ナチュラルの熱可塑性樹脂と混合して、カラーペレットが得られ、それを射出、ブロー又は押し出し成型することで、所望の形状の各種成型物が得られる。
用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエン樹脂、スチレンブタジエンアクリロニトリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、エチレンアクリル樹脂、スチレンイソプレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられるが、必ずしもこれ等に限定されるものではない。
又、これ等のマスターバッチ、カラーペレットには必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、体質顔料、有機顔料、無機顔料、染料などを添加することができる。
(コンクゾルペースト、ゾルペースト、その他の成型)
塩化ビニル樹脂と可塑剤に安定剤や分散剤等を配合したクリアーゾルにパウダー状の可逆感温変色性ヒステリシス組成物を高濃度に配合することでコンクゾルペーストが得られる。このコンクゾルペーストをクリアゾールで希釈することでゾルペーストが得られる。
このゾルペーストをスラッシュ、ローテーション、ディップ等の方法で成型することで、所望の形状の各種成型物が得られる。
又、パウダー化された可逆感温変色性ヒステリシス組成物をエポキシ樹脂とアミン化合物、或いは、不飽和ポリエステル樹脂と過酸化物に配合して注型成型することができる。 又、シリコーン樹脂に配合して、注型成型することでゴム状の成型物や粘土とすることもできる。又、小麦粉粘土に配合して手芸用の成型物を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の感温変色性組成物は、ヒステリシス幅が広いので、日常環境温度では、見かけ上、不可逆な挙動を示すが、適切な熱又は冷熱を与えることにより元の状態に戻ることができるため、可逆的なものであり、この様な特性は、繰り返して使用できる。
又、従来よりも微細な粒子径を持つため優れた材料特性を有し、可逆感温変色性色素として各種の用途に好適に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれ等のものに限定されない。
以下の実施例等において「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り、「重量部」、「重量%」を意味する。
【0027】
(実施例1)
<可逆感温変色性ヒステリシス組成物の作製>
ロイコ色素として、3−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン1部、顕色性物質として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール2部、及び変色性温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液を、保護コロイド剤として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合樹脂(ガンツレッツAN−179:ISP(株)社製)40部をNaOHにてpH4に溶解させた90℃の水溶液100部中に徐々に添加しながら、加熱攪拌して直径約0.5〜1.0μmの油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として、スミテックスレジンM−3(メラミン樹脂:(株)住友化学製)20部を徐々に添加し、90℃で30分間加熱してマイクロカプセル化を行い、膜剤がメラミン樹脂からなる可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル溶液を得た。この溶液の粒子径を測定したところ、平均粒子径0.74μmであり0.5μm以下の粒子を32%含むものであった。
<ヒステリシス幅の測定>
上記で得られたマイクロカプセル溶液10部に、水溶性固着剤として、マツミンバインダーS(アクリル酸エステルエマルジョンを含むクリヤーバインダー:(株)松井色素化学工業所製)90部を混合し感温変色性インキを得た。
次いで、得られた感温変色性インキを、80メッシュのスクリーン版を用いて、綿ニット上にスクリーンプリント後、乾燥して感温変色性のプリント布を得た。
得られたプリント布を水浴中で温度変化させたところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は55℃、完全発色温度(T2a)は−19℃、発色保持温度(T3a)は50℃、完全消色温度(T3b)は75℃、消色保持温度(T2b)は−5℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0028】
(実施例2)
実施例1において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−イソプロピリデンビスフェノールジミリステートを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.69μmで0.5μm以下の粒子を34%含む可逆感温変色性ヒステリン組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は39℃、完全発色温度(T2a)は−15℃、発色保持温度(T3a)は45℃、完全消色温度(T3b)は60℃、消色保持温度(T2b)は6℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0029】
(実施例3)
実施例1において、顕色性物質として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えて、4,4′−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノールを用いること、および、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−イソプロピリデンビフェノールジラウレートを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.78μmで0.5μm以下の粒子を28%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は45℃、完全発色温度(T2a)は−25℃、発色保持温度(T3a)は40℃、完全消色温度(T3b)は56℃、消色保持温度(T2b)は−5℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0030】
(実施例4)
実施例2において、顕色性物質として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えて、4,4′−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノールを用いることを除き、他は全て実施例2と同様にして、平均粒子径が0.74μmで0.5μm以下の粒子を32%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は39℃、完全発色温度(T2a)は−16℃、発色保持温度(T3a)は44℃、完全消色温度(T3b)は60℃、消色保持温度(T2b)は5℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0031】
(実施例5)
実施例1において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−エチリデンビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.73μmで0.5μm以下の粒子を33%含む可逆感温変色性ヒステリン組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は31℃、完全発色温度(T2a)は−11℃、発色保持温度(T3a)は30℃、完全消色温度(T3b)は34℃、消色保持温度(T2b)は−1℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0032】
(実施例6)
実施例1において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−(1−メチルプロピリデン)ビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.78μmで0.5μm以下の粒子を31%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は61℃、完全発色温度(T2a)は−35℃、発色保持温度(T3a)は41℃、完全消色温度(T3b)は46℃、消色保持温度(T2b)は−20℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0033】
(実施例7)
実施例1において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−(1−エチルプロピリデン)ビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.75μmで0.5μm以下の粒子を32%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は70℃、完全発色温度(T2a)は−40℃、発色保持温度(T3a)は45℃、完全消色温度(T3b)は66℃、消色保持温度(T2b)は−25℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
【0034】
(比較例1)
実施例1において、顕色性物質として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えて、4,4′−イソプロピリデンビスフェノールを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が3.17μmで0.5μm以下の粒子を2%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は54℃、完全発色温度(T2a)は−15℃、発色保持温度(T3a)は54℃、完全消色温度(T3b)は74℃、消色保持温度(T2b)は0℃であり、発色状態においては実施例1の8割程度の黒色を呈し、消色状態においては残色のため無色とはならず薄い灰色となるものであった。
【0035】
(比較例2)
実施例1において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、ステアリン酸ブチルを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.71μmで0.5μm以下の粒子を32%含む可逆感温変色性組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、完全発色温度(T2a)は13℃、発色保持温度(T3a)は17℃、完全消色温度(T3b)は23℃、消色保持温度(T2b)は19℃であり、ヒステリシス幅はなく、加熱すると無色となり加熱を止めると元の黒色に戻るヒステリシス特性を伴わない可逆感温変色性を示した。
【0036】
(比較例3)
実施例1において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、カプリン酸ステアリルを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.63μmで0.5μm以下の粒子を31%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス幅は4℃、完全発色温度(T2a)は22℃、発色保持温度(T3a)は30℃、完全消色温度(T3b)は36℃、消色保持温度(T2b)は26℃であり、ヒステリシス幅が4℃と狭いため、比較例2と同様に加熱すると無色となり加熱を止めると元の黒色に戻る可逆感温変色性であり、常温域で見かけ上不可逆な呈色状態をもたらす可逆感温変色性ヒステリシス組成物ではなかった。
【0037】
(実施例8)筆記具用インク:油性インク
<可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル溶液の作製>
実施例1のロイコ色素の3−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオランに代えて、3−ジブチルアミノー7,8−ベンゾフルオランを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、平均粒子径が0.79μmで0.5μm以下の粒子を32%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。ヒステリシス幅を測定したところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は55℃、完全発色温度(T2a)は−19℃、発色保持温度(T3a)は50℃、完全消色温度(T3b)は75℃、消色保持温度(T2b)は−5℃であり、発色状態においては濃厚な赤色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
<感温変色性マイクロカプセルパウダーの作製>
上記で得た可逆感温変色性ヒステリシス組成物を常温に冷却後、酸を添加することにより保護コロイド剤の機能を低下させ、濾別、水洗、スプレードライ機を用いて乾燥することにより、パウダー状の感温変色性マイクロカプセルを約30部得た。
得られた感温変色性マイクロカプセルのヒステリシス特性は、乾燥前と同様のものであり、発色状態においては濃厚な赤色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
そして、得られたマイクロカプセルパウダーを−30℃で48時間冷却させ発色させたものを30部、ダイヤナールBR101(アクリル樹脂:(株)三菱レーヨン製)30部、酢酸セロゾルブ40部、ディスパロンDA−375(アニオン系界面活性剤:楠本化成(株)製)5部を混合し、ロールミルで分散を行った後、該分散物50部、メチルシクロヘキサン30部、PFA-220(脂肪酸アマイド分散物:楠本化成(株)製)1部を混合して筆記具用油性インクを得た。
得られた筆記具用インクを、ペン体に充填することで感温変色性のマーカーペンを得た。
【0038】
(実施例9)筆記具用インク:水性インク
<可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル溶液の作製>
実施例1のロイコ色素の3−ジブチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオランに代えて、3−ジブチルアミノー7,8−ベンゾフルオランを用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして、可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル化を行った後、酸を添加することにより保護コロイド剤の機能を低下させ、濾別、水洗を2回繰り返し、平均粒子径が0.69μmで0.5μm以下の粒子を40%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物の水分散物を作成した。
得られた感温変色性色素のヒステリシス幅の測定をしたところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は55℃、完全発色温度(T2a)は−19℃、発色保持温度(T3a)は50℃、完全消色温度(T3b)は75℃、消色保持温度(T2b)は−5℃であり、発色状態においては濃厚な赤色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
次に、得られた感温変色性の水分散物50部、2%ケルザンS(キサンタンガム:三晶(株)製)3部、ジョンクリルHPD−96(水溶性アクリル樹脂:BASFジャパン(株)製)10部、グリセリン10部、水27部を混合し水性筆記具用インクを得た。
得られた水性筆記具用インクを−20℃以下に冷却して発色させた後、ペン体に充填することで感温変色性のボールペンを得た。
【0039】
(実施例10)印刷用インク:水性グラビアインク
前記実施例で得られた感温変色性色素の水分散物50部、ウォーターベースグラビアクリアB(アクリル樹脂を含むクリヤーインク:((株)松井色素化学工業所製)45部、イソプロピルアルコール5部を混合し感温変色性の水性グラビアインクを得た。
得られた水性グラビアインクを、グラビア印刷機を用いて紙上に円形の編目模様を印刷し、−20℃以下に冷却して発色させ感温変色性の印刷物を得た。
この印刷物は通常使用条件下では赤色に発色しているが、75度以上の熱を加えると白色となることから、偽造防止或いは偽造感知の機能が得られた。
【0040】
(実施例11)印刷用インク:水性捺染インク
実施例2で得られた可逆感温変色性ヒステリシス組成物10部に、水溶性固着剤として、マツミンバインダーS(アクリル酸エステルエマルジョンを含むクリヤーバインダー:(株)松井色素化学工業所製)90部を混合し感温変色性水性インクを得た。
次いで、得られた感温変色性水性インクを、80メッシュのスクリーン版を用いて、白地のTシャツ上に正方形のベタ柄でプリント、乾燥して感温変色性のTシャツを得た。
得られたTシャツは、庫内温度−20℃以下の冷凍庫内にしばらく放置すると、当該印刷部のみ鮮明な黒色を呈するものとなり、絵柄や文字をアイロン又は電気ゴテ等の加熱媒体を用いて描くと、体温や室温(25℃)では消失しない白色の絵柄や文字を書き込むことができた。この様な書き込みと消去を何回も繰り返すことができるユニークなものとなった。
【0041】
(実施例12)印刷インク:油性スクリーンインク
実施例3で得られた可逆感温変色性ヒステリシス組成物を常温に冷却後、酸を添加 することにより保護コロイド剤の機能を低下させ、濾別、水洗、スプレードライ機を用いて乾燥することにより、パウダー状の感温変色性マイクロカプセルを約30部得た。
得られたマイクロカプセルパウダー25部を、バイロン300(飽和ポリエステル樹脂:(株)東洋紡製)25部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55部、TSE350(シリコーン系消泡剤:東芝シリコーン(株)製)1部を混合して油性スクリーンインクを得た。
次いで、得られた油性スクリーンインクを用いて、無色透明25μmのポリエステルフィルム製の粘着ラベル上に、モザイク模様を印刷し、−30℃に冷却して黒色に発色させて、情報目隠しラベルを得た。
得られた情報目隠しラベルを、情報を書き込んだハガキに貼り付けることで情報を隠蔽でき、ハガキごと80℃に加熱することで、目隠しラベルのモザイク模様が消え読み取ることができた。
【0042】
(実施例13)印刷インク:紫外線硬化型油性スクリーンインク
実施例12で得られた感温変色性マイクロカプセルパウダー25部を−30℃に48時間冷却し発色状態とした後、クロミカラーUVスクリーンクリヤー(紫外線硬化型インク:(株)松井色素化学工業所製)74部、TSE350(シリコーン系消泡剤:東芝シリコーン(株)製)1部、ピグメントレッド#122(赤色顔料)0.1部を混合して紫外線硬化型の油性スクリーンインクを得た。
次いで、25μmのPETフィルム製の粘着ラベル上に、得られた紫外線硬化型油性スクリーンインクを印刷し、透明のPETフィルムを粘着にてラミネートした。
次に、得られたPETフィルムを冷却して発色させ、直径1cmの円形状に切り取り、熱インジケーターを得た。
得られた熱インジケーターを、携帯電話の電池に貼り付けることにより、電池の異常加熱の履歴が色の変化により識別できるものとなった。
【0043】
(実施例14)塗料:熱硬化型塗料
実施例12で得られた感温変色性マイクロカプセルパウダー10部をエピコート828(エポキシ樹脂:(株)JER製)30部、エピキュアーU(硬化剤:(株)JER製)10部、キシレン50部と共に混合し、感温変色性の熱硬化型塗料を得た。
次いで、得られた熱硬化型塗料を用いて、金属ネジの頭部にスプレー塗装し、電気配線の締め付けけのための結束用金属ネジを得た。
得られた金属ネジは、電気配線の結束ネジの締め付け不良での過電流による異常発熱箇所を視認、発見することができるものとなった。
【0044】
(実施例15)マスターバッチ
<可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル溶液の作製>
実施例2で得られた可逆感温変色性ヒステリシス組成物に酸を添加することにより保護コロイド剤の機能を低下させ、フィルタープレスにて濾過し、含水率40%の感温変色性マイクロカプセルを67部得た。これに、アニオン系界面活性剤(“デモールN”花王(株)製)5部を含む水溶液400部を加えた後、95℃に加熱攪拌しながら、カプセル膜剤として、50%メチロールメラミン水溶液20部を除々に投入し、引き続き1時間反応させ、平均粒子径が0.82μmで0.5μm以下の粒子を25%含む可逆感温変色性ヒステリシス組成物を得た。
上記で得た可逆感温変色性ヒステリシス組成物を冷却後、スプレードライ機を用いて乾燥することにより、バウダー状の感温変色性マイクロカプセルを約35部得た。
得られた感温変色性マイクロカプセルは、璧膜が二重のメラミン樹脂で被覆されたものであり、1重のものに比べて、物理的強度に優れるものであった。
また、ヒステリシス幅の測定をしたところ、ヒステリシス特性を伴って可逆感温変色性を示し、ヒステリシス幅は39℃、完全発色温度(T2a)は−15℃、発色保持温度(T3a)は45℃、完全消色温度(T3b)は60℃、消色保持温度(T2b)は6℃であり、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
次いで、得られた感温変色性マイクロカプセルバウダー20部、ステアリン酸マグネシウム2部、ビスコール550P(低分子ポリプロピレン樹脂:(株)三洋化成製)15部、ショウアローFA−531(ポリプロピレン樹脂:昭和電工(株)製)63部をタンブラー混合機で混合した後、220℃で押し出し成型機に通じホットカッターでペレット化することで感温変色性のマスターバッチを得た。
【0045】
(実施例16)カラーペット
前記実施例で得られたマスターバッチ10部、ショウアローMA610H(ポリプロピレン樹脂:昭和電工(株)製)90部をタンブラー混合機で混合し、220℃の押し出し成型機に通じホットカッターでペレット化することで感温変色性のカラーペレットを得た。
次いで、得られたカラーペレットを射出成型機により成型後、冷却発色させることで医療品容器の感温変色性の蓋を得た。
得られた蓋は、高温放置による医薬品の劣化を目視できるインジケーター機能を持つものであった。
【0046】
(実施例17)コンクゾルペースト
実施例15で得られた感温変色性マイクロカプセルパウダー20部、ゼスト1000Z(塩化ビニル樹脂:新第一塩ビ(株)製)33部、DINP45部、ゾルゲン30(分散剤:第一工業製薬(株)製)1部、TS−101(安定剤:昭島化学(株)製)1部をミキサーで混合しコンクゾルペーストを得た。
【0047】
(実施例18)ゾルペースト
前記実施例で得られたコンクゾルペースト10部、ゼスト135J(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂:新第一塩ビ(株)製)38部、DINP50部、ゾルゲン30(分散剤:第一工業製薬(株)製)1部、TS−101(安定剤:昭島化学(株)製)1部をミキサーで混合し、真空脱法して感温変色性ゾルペーストを得た。
次いで、得られた感温変色性ゾルペーストを、カレンダー押し出し機にて200μmの感温変色性フィルムとした。
次に、得られた感温変色性フィルムの片面にAS−6800(粘着剤:一方社油脂工業(株)製)50部、B−45(架橋剤:一方社油脂工業(株)製)1.4部、酢酸エチル50部の混合物をバーコータ−により塗布し、感温変色性粘着テープを得た。
得られた感温変色性粘着テープを、電線の接続部分に巻き付けることで、異常発熱のインジケーターとすることができた。
【0048】
以上の実施例及び比較例の結果から、以下のことがいえる。
(1)(ロ)顕色性物質として化1の化合物を用いたとしても、(ハ)変色温度調整剤として化2の化合物を用いない場合には、本発明の所期の目的は達成することができない(比較例2、3)。
(2)(ハ)変色温度調整剤として化2の化合物を用いたとしても、(ロ)顕色性物質として化1の化合物を用いない場合には、本発明の所期の目的は達成することができない(比較例1)。
(3)一方、(ロ)顕色性物質として化1の化合物と、(ハ)変色温度調整剤として化2の化合物を併用した場合には、本発明の所期の目的を達成することができる(実施例1〜18)。
(4)以上のことから、本発明の可逆感温変色性ヒステリシス組成物は、(ロ)顕色性物質として化1の化合物と、(ハ)変色温度調整剤として化2の化合物を併用するものであり、該組成物は、ヒステリシス特性が格段に優れたものであることからみて、本発明の(ロ)顕色性物質(化1)と(ハ)変色温度調整剤(化2)の選択には、格別の意義があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の感温変色性組成物は、ヒステリシス幅が広いので、日常環境温度では、見かけ上、不可逆な挙動を示すが、適切な熱又は冷熱を与えることにより元の状態に戻ることができるため、可逆的なものであり、この様な特性は、繰り返して使用できる。
従って、可逆感温変色性色素として、各種の用途に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明組成物の温度変化による呈色濃度変化のヒステリシス特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0051】
C1:消色濃度
C2:発色濃度
T1:任意の発色温度
T2a:発色終了温度(固化終了点)
T2b:発色開始温度
T3a:消色開始温度(融点:液化開始点)
T3b:消色終了温度
T4:任意の消色温度

















































【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)ロイコ色素、(ロ)顕色性物質、及び(ハ)変色温度調整剤をマイクロカプセルに内包されてなる可逆感温変色性組成物において、(ロ)顕色性物質が化1で示される化合物であり、且つ(ハ)変色温度調整剤が化2で示される化合物であることを特徴とする可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
【化1】






(式中のR1は、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R2は、炭素数4〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。)
【化2】

(式中のR3及びR4は、炭素数7〜21の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R5及びR6は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、又はCF3を示す。)
【請求項2】
可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセルの平均粒子径が0.3〜1.0μm、且つ、0.5μm未満の粒子を20%以上含む請求項1記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
【請求項3】
可逆感温変色性ヒステリシス組成物が、ヒステリシス幅が30℃乃至100℃の範囲のものである請求項1又は2記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
【請求項4】
可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル壁膜がメラミン樹脂である請求項1、2又は3記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の可逆感温変色性ヒステリシス組成物を用いてなる筆記用インク、印刷用インク、塗料、成形用マスターバッチ、カラーペレット又はゾルペーストである可逆感温変色性ヒステリシス材料。
【請求項6】
請求項5記載の可逆感温変色性ヒステリシス材料を用いてなる筆記具、印刷物、塗装物又は成型物。







【図1】
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【公開番号】特開2010−132822(P2010−132822A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311619(P2008−311619)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(390039583)株式会社松井色素化学工業所 (13)
【Fターム(参考)】