説明

可逆熱変色性IC磁気表示カード

【課題】 カードのICチップに記録した情報を認識することができると共に、該ICチップ内に記録された内容と同一又は異なる情報を視認することができ、しかも視認される情報は磁気による表示像と熱による表示像が併用されるため、双方の像ならびに電子データが外的要因によって共に認識されなくなることが極めて少なく、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードを提供する。
【解決手段】 磁気層2と、透明な表示部を有する表面層5間に表示セルを設け、前記表示セルに磁性粒子4を封入した磁気カードにおいて、前記カードがICチップ7を備えてなり、且つ、カードに可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層6を設けてなる可逆熱変色性IC磁気表示カード1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性IC磁気表示カードに関する。更に詳細には、ICにより電気的情報を認識しつつ、磁気による表示像と熱による表示像とを視認できる可逆熱変色性IC磁気表示カードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気による表示像を視認できるカードとして、磁気層と表面層間に形成した表示セルに磁性粒子を封入し、磁気層の磁気による磁性粒子の配列状態を透視可能とした磁気カードが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記磁気カードは、磁気層に磁気潜像を形成し、セル内の磁性粒子を磁気潜像に向けて流動させて磁気潜像に磁性粒子を吸引させることにより磁気による表示像を形成するものである。
また、キャッシュカード、クレジットカード、乗車券、ポイントカード等のカード類は、データを記録する記録媒体が必要であり、該記録媒体は磁気テープ(磁気ストライプ)等の磁気記録媒体が用いられてきた。近年は処理可能なデータ量が多く、データ処理が確実で安全性に優れたICチップが磁気記録媒体の代わりに利用されつつある。
前述したようにカードの利便性と安全性は向上しつつあるが、記録媒体は記録している情報の内容を変更することができるので、カードの表示部にも最新の情報を書き込んで視認することが望まれている。しかしながら、表示部には磁気を利用した像が形成されるため、電気や磁気の影響により像が視認されなくなる虞があり、必ずしも実用性を満足させるものではなかった。
【特許文献1】特公昭56−852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来のカードの不具合を解消しようとするものであって、電気や磁気に影響されない新たな表示像を設けることにより、電気や磁気の影響で磁気表示像が視認できなくなっても記録媒体の情報を別の表示像により視認することのできるカードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、磁気層と、透明な表示部を有する表面層間に表示セルを設け、前記表示セルに磁性粒子を封入した磁気表示カードにおいて、前記カードがICチップを備えてなり、且つ、カードに可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けてなる可逆熱変色性IC磁気表示カード、或いは、磁気層と、透明な表示部を有する表面層間に表示セルを設け、前記表示セルに磁性粒子を封入した磁気カードにおいて、前記カードがICチップを備えてなり、且つ、表示層中に可逆熱変色性材料を含有してなる可逆熱変色性IC磁気表示カード、或いは、磁気層と、透明な表示部を有する表面層間に表示セルを形成するスペーサを設け、前記表示セルに磁性粒子を封入した磁気カードにおいて、前記カードがICチップを備えてなり、且つ、スペーサ中に可逆熱変色性材料を含有してなる可逆熱変色性IC磁気表示カードを要件とする。
更には、前記可逆熱変色性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料であること、前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、各相の保持温度域が共に常温域にある顔料であり、該顔料は第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度Tに達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度Tより低い第1の温度Tに達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度Tと第2の温度Tの間の温度域で第1色相或いは第2色相が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度Tは−30〜10℃の範囲にあり、温度Tが40〜90℃の範囲にあること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、カードのICチップに記録した情報を認識することができると共に、該ICチップ内に記録された内容と同一又は異なる情報を視認することができ、しかも視認される情報は磁気による表示像と熱による表示像が併用されるため、双方の像が外的要因によって共に視認されなくなることが極めて少なく、よって、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードを提供できる。また、ICチップ内に記録された内容が表示像の情報を含む場合には、該情報が全く認識不能となる可能性はさらに低くなり、より実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードは、ICチップ(半導体集積回路)を備え、磁気による表示像と熱による表示像とを形成可能なカードである。
前記ICチップはカードに埋設等により設けられ、接触型のICカード(カード処理機と接触してデータ授受を行うICカード)であってもよいし、ICチップと共に記録容量を増大させたメモリチップやCPU、アンテナコイルをカードに組み込んだ非接触型のICカード(カード処理機との間で無線により非接触で交信してデータ授受を行うICカード)であってもよい。
前記磁気による表示像は、磁気層と透明な表示部を有する表面層間に表示セルを形成し、該セル内に磁性粒子を遊動自在に封入した表示部に形成される。
前記表示部には、表示セルに対応した磁気層部分にマルチトラック(例えば、7トラック)の磁気ヘッドで磁気潜像として着磁した画線部を形成することによりセルに封入された磁性粒子が画線部に吸引され、着磁されなかった非画線部との間にコントラストを生じて表示像が視認される。一旦、消磁したのち再度、磁気潜像の書き込みを行うことにより表示像の書き換えを行うことができる。
【0007】
磁気層は光反射性の基材に磁気記録材料をコーティング、印刷、転写あるいは貼着して形成されている。磁気記録材料は、ガンマ酸化鉄(γ−Fe)、コバルト被着ガンマ酸化鉄(Co・γ−Fe)、バリウムフエライト(BaO・6Fe)などの磁性材とバインダおよび各種の添加剤からなる。
光反射性の基材は、基材自体を光反射性材料で形成する他、基材にアルミ蒸着等を施して光反射層を設けたものであってもよい。なお、光反射層は白色乃至銀色のものが好ましい。
表示層は透明性プラスチックフィルムが用いられる。
磁気層と表示層は対向され、層間に表示セルを形成する。表示セルの形成には貫通した孔を設けたスペーサを用いることが好ましく、磁気層と表示層の間にスペーサを挾持して反応型接着剤、ホットメルト型接着剤、或いは、各々の材質同志の熱接合により一体に結合されている。前記構成によって、スペーサの孔を設けた部分には表示セルが形成され、表示セル上に位置する表示層から像が視認される。
なお、スペーサとしては平板状プラスチックシートが好適に用いられる。
表示セルの形状、大きさ、位置は用途によって変えることができる。
前記表示セル内には磁性粒子を封入してなる。磁性粒子は、強い磁性を示す高透磁率のものが好適であり、鉄、ニッケル、ステンレススチール、パーマロイ等の金属ないし合金系磁性材料や、四三酸化鉄(Fe)、ガンマ酸化鉄(γ−Fe)、マンガン亜鉛フェライトなどの酸化物系ないしフェライト系磁性材料が使用される。粒子の形状は磁性粒子自体が転がり易い粒状ないし球状が好ましい。また、磁性粒子は表面を着色して使用することもできる。
なお、磁気表示カードを傾けて磁性粒子を磁気層に吸引させた際、表示セル内の下部や隅に残余磁性粒子が溜まる。この残余磁性粒子は見えないようにすることが好ましく、着色インキにより表示層に表示セルの外周に位置する部分に適宜印刷を施し、表示部の面積を表示セルの面積より小さくして残余磁性粒子を隠す方法が挙げられる。
【0008】
前記カードには、可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けたり、表示層中に可逆熱変色性材料を含有させたり、或いは、スペーサを設ける場合はスペーサ中に可逆熱変色性材料を含有させることにより熱による表示像を形成することができる。
なお、カードに可逆熱変色層を設ける場合、カードの表面や裏面に可逆熱変色層を設けたり、カードを構成する層間、例えば、磁気層と表示層の間、スペーサと表示層の間に可逆熱変色層を設けることができる。
前記可逆熱変色性材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させたマイクロカプセル顔料が有効である。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報、特開2005−1369号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜70℃)を示し、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、低温域での発色状態、又は、高温域での消色状態を特定温度域で保持できる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物が好適に用いられる。
【0009】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記TとT間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるTとTの間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0010】
前記可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度Tを冷凍室等でしか得られない温度、即ち−30〜10℃、好ましくは−20〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃、且つ、完全消色温度Tを環境温度や手触程度では変色しない温度、即ち40〜90℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは60〜70℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜70℃、好ましくは50〜70℃、更に好ましくは60乃至70℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
なお、前記ICチップの使用限度温度域は一般的に−20〜70℃であり、可逆熱変色性組成物の発消色温度を前記ICチップの使用限度温度域に設定することにより、ICチップの性能を温度要因によって損なうことなく、熱により繰り返し表示像を形成可能なカードを得ることができ、カードの持久性を満足させることができる。
【0011】
以下に(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等を挙げることができ、以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色〜赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0012】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0013】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分としては、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0015】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0016】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナダカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0017】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報に記載されている下記一般式(1)で示される化合物、或いは、特開2006−188660号公報に記載されている下記一般式(2)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
【化2】

〔式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。〕
【0019】
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
また、前記式(2)中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物としては、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチル等を挙げることができる。
【0020】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の構成成分割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
又、各成分は各々二種以上の混合であってもよく、機能に支障のない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤等を添加することができる。
【0021】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用される。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセルは、平均粒子径が0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは最大外径の平均値が50μmを越えると、インキ、塗料への使用に対して分散安定性に欠けることがあり、また、最大外径の平均値が0.5μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
また、前記マイクロカプセルは、内包物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)の範囲が有効であり、内包物の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には内包物:壁膜=6:1〜1:1(質量比)である。
前記マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0022】
前記可逆熱変色性材料は、ビヒクル中に分散して、塗料や印刷インキ等の液状組成物を調製し、公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段により、カード表面や裏面に可逆熱変色層を形成できる。なお、前記可逆熱変色層は、液状組成物中の溶剤が揮発してそれ以外の化合物により形成される層であり、前記可逆熱変色性材料は樹脂に分散状態に固着されてなる。
また、樹脂中に可逆熱変色性材料をブレンドした成形用樹脂組成物により成形した表示層やスペーサを用いて本願発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードを作製することもできる。
前記可逆熱変色層中や可逆熱変色性材料を含むスペーサ中には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0023】
更に、前記可逆熱変色層上には、光安定剤及び/又は光遮蔽性顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
可逆熱変色性材料を含む表示層を用いる系においては、表示層中に光安定剤及び/又は光遮蔽性顔料を含有させたり、表示層上に光安定剤及び/又は光遮蔽性顔料を含む層を積層することもできる。
可逆熱変色性材料を含むスペーサを用いる系においては、表示層中に光安定剤及び/又は光遮蔽性顔料を含有させることができる。
前記光遮蔽性顔料としては、天然雲母、合成雲母、ガラス、アルミナ等を芯物質とし、その表面にチタン、ジルコニウム、クロム、バナジウム、鉄等の金属酸化物を被覆した透明性金属光沢顔料が好適に用いられる。
【0024】
本発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードは、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段と、熱による表示像を消去及び表示する加熱及び冷却手段とからなる装置を用いて、データの書き換えと像の消去、表示を行う。
カードに磁気による表示像を形成するには磁気ヘッドに像情報を文字化した場合の文字パターンを構成するような電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、像情報に対応した磁性粒子による表示像が形成される。像の表示方法として着磁部を線部とする所謂ポジ表示方法のほかに、非着磁部を線部とするネガ表示方法も可能である。前記のようにして形成される像は磁気層を消磁することにより消去され、再び磁気潜像の書き込みを行うことにより別の像を形成することができる。
一方、カードに熱による表示像を形成するには加熱装置により熱印加することにより、可逆熱変色性材料が部分的に変色又は消色して表示像が形成される。前記のようにして形成された像は冷却装置の適用により消去され、再び加熱装置の適用により像を形成することができる。これを詳しく説明すると、冷却装置により可逆熱変色層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)以下の温度まで冷却して可逆熱変色層を着色(発色)状態とした後、加熱装置により熱印加することにより可逆熱変色層を部分的に変色(消色)させて像を形成する。また、冷却装置の適用により可逆熱変色層を着色させることにより、像を形成する前の状態に戻り、再度加熱装置により熱印加することにより新たな像を形成できる。なお、可逆熱変色層を着色状態にする際、加熱装置により可逆熱変色層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全消色温度(T)以上の温度に加熱して全面を消色させた後、冷却装置により可逆熱変色層に含まれるマイクロカプセル顔料の完全発色温度(T)以下の温度まで冷却して可逆熱変色層の全面を着色する操作を行うことにより、以前に形成した像の残像が見られない商品性の高いカードを得ることができる。
また、熱による表示像の形成については、冷却装置によって像を表示し、加熱装置によって像を消去し、再び冷却装置の適用により像の表示を行うこともできる。
前記加熱装置としては、サーマルヘッド、レーザー光等が挙げられ、冷却装置としては、ペルチエ素子が挙げられる
【実施例】
【0025】
実施例1(図2参照)
基材として白色ポリエステルフィルム(厚さ50μm)にガンマ酸化鉄(γ−Fe)を含む磁気記録材料を塗布した磁気層2と、スペーサ3として中央部に10mm×40mmの孔(打ち抜き部)を有するポリエステルフィルム(厚さ300μm)とを貼着した。
次いで、磁性粒子4(球状還元鉄粉)をスペーサの孔に充填した後、表示層5として透明ポリエステルフィルム(厚さ50μm)を貼着した。
前記表示層上の表示セルを除く部分に、温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:61℃、ΔH:64℃)を含むインキを用いて可逆熱変色層6を設けて可逆熱変色性IC磁気表示カード1を得た。
なお、前記カードにはICチップ7を設けてなる。
【0026】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段と、熱による表示像を消去、表示する加熱及び冷却手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、着磁手段である磁気ヘッドにデータに対応した内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、データに対応した磁性粒子による表示像(文字)が形成される。
可逆熱変色層(予め−14℃以下に冷却して全面をピンク色に変色させた状態)には、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した内容の表示像(ピンク地に白色の抜き文字)が形成される。
【0027】
前記カードは、電気や磁気の影響によって磁気による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと熱による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。また、高温下や低温下の環境温度により熱による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと磁気による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。
電気や磁気と、高温下や低温下の環境温度の双方が同時に影響することは極めて少なく、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードが得られた。
【0028】
前記カードは、再び装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、磁気層を消磁することにより文字が消去され、再び磁気ヘッドによりデータに対応した別の内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、新たなデータに対応した磁性粒子による表示像が形成される。
可逆熱変色層は、冷却装置により−14℃以下に冷却して全面をピンク色に変色させた後、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した新たな内容の表示像が形成される。
【0029】
実施例2(図3参照)
基材として白色ポリエステルフィルム(厚さ50μm)にガンマ酸化鉄(γ−Fe)を含む磁気記録材料を塗布した磁気層2と、スペーサ3として中央部に10mm×40mmの孔(打ち抜き部)を有するポリエステルフィルム(厚さ300μm)とを貼着した。
次いで、磁性粒子4(球状還元鉄粉)をスペーサの孔に充填した後、表示層5として温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:61℃、ΔH:64℃)をポリエステル樹脂中にブレンドして成形したシート(厚さ50μm)を貼着して可逆熱変色性IC磁気表示カード1を得た。
なお、前記カードにはICチップ7を設けてなる。
【0030】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段と、熱による表示像を消去、表示する加熱及び冷却手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、着磁手段である磁気ヘッドにデータに対応した内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、データに対応した磁性粒子による表示像(文字)が形成される。
表示層(予め−14℃以下に冷却して全面をピンク色に変色させた状態)には、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した内容の表示像(ピンク地に白色の抜き文字)が形成される。
なお、前記マイクロカプセル顔料を含む表示層は透明性を有しており、可逆熱変色性組成物の発消色に関わらず表示セル内の磁性粒子による表示像が明瞭に視認できた。
【0031】
前記カードは、電気や磁気の影響によって磁気による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと熱による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。また、高温下や低温下の環境温度により熱による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと磁気による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。
電気や磁気と、高温下や低温下の環境温度の双方が同時に影響することは極めて少なく、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードが得られた。
【0032】
前記カードは、再び装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、磁気層を消磁することにより文字が消去され、再び磁気ヘッドによりデータに対応した別の内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、新たなデータに対応した磁性粒子による表示像が形成される。
表示層は、冷却装置により−14℃以下に冷却して全面をピンク色に変色させた後、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した新たな内容の表示像が形成される。
【0033】
実施例3(図4参照)
基材として白色ポリエステルフィルム(厚さ50μm)にガンマ酸化鉄(γ−Fe)を含む磁気記録材料を塗布した磁気層2に、スペーサ3として中央部に10mm×40mmの孔(打ち抜き部)を有するポリエステルフィルム(厚さ300μm)とを貼着した。
なお、前記スペーサは、温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:61℃、ΔH:64℃)をポリエステル樹脂中にブレンドして成形したシートを用いてなる。
次いで、磁性粒子4(球状還元鉄粉)をスペーサの孔に充填した後、表示層5として透明性非熱変色性黄色顔料をブレンドして成形したポリエステルフィルム(厚さ50μm)を貼着して可逆熱変色性IC磁気表示カード1を得た。
前記スペーサ上には黄色顔料を含む表示層が存在するため、スペーサがピンク色の時はピンク色と黄色が混色となった赤色が視認される。
前記カードにはICチップ7を設けてなる。
【0034】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段と、熱による表示像を消去、表示する加熱及び冷却手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、着磁手段である磁気ヘッドにデータに対応した内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、データに対応した磁性粒子による表示像(文字)が形成される。
スペーサがピンク色(予め−14℃以下に冷却して全面をピンク色に変色させた状態)の状態で加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した内容の表示像(赤地に黄色の抜き文字)が形成される。
なお、前記黄色顔料を含む表示層は透明性を有しており、表示セル内の磁性粒子による表示像を明瞭に視認できた。
【0035】
前記カードは、電気や磁気の影響によって磁気による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと熱による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。また、高温下や低温下の環境温度により熱による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと磁気による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。
電気や磁気と、高温下や低温下の環境温度の双方が同時に影響することは極めて少なく、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードが得られた。
【0036】
前記カードは、再び装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、磁気層を消磁することにより文字が消去され、再び磁気ヘッドによりデータに対応した別の内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、新たなデータに対応した磁性粒子による表示像が形成される。
スペーサは、冷却装置により−14℃以下に冷却して全面を赤色に変色させた後、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した新たな内容の表示像が形成される。
【0037】
実施例4
基材として白色ポリエステルフィルム(厚さ50μm)にガンマ酸化鉄(γ−Fe)を含む磁気記録材料を塗布した磁気層と、スペーサとして中央部に10mm×40mmの孔(打ち抜き部)を有するポリエステルフィルム(厚さ300μm)とを貼着した。
次いで、磁性粒子(球状還元鉄粉)をスペーサの孔に充填した後、表示層として透明ポリエステルフィルム(厚さ50μm)を貼着した。
前記表示層上の表示セルを除く部分に、温度変化により青色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:62℃、ΔH:65℃)及び非変色性ピンク色顔料を含むインキを用いて可逆熱変色層を設けて可逆熱変色性IC磁気表示カードを得た。
前記可逆熱変色層は温度は温度変化により紫色からピンク色に変色する。
なお、前記カードにはICチップ7を設けてなる。
【0038】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段と、熱による表示像を消去、表示する加熱及び冷却手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、着磁手段である磁気ヘッドにデータに対応した内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、データに対応した磁性粒子による表示像(文字)が形成される。
可逆熱変色層(予め−14℃以下に冷却して全面を紫色に変色させた状態)には、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した内容の表示像(紫地にピンク色の抜き文字)が形成される。
【0039】
前記カードは、電気や磁気の影響によって磁気による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと熱による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。また、高温下や低温下の環境温度により熱による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと磁気による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。
電気や磁気と、高温下や低温下の環境温度の双方が同時に影響することは極めて少なく、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードが得られた。
【0040】
前記カードは、再び装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、磁気層を消磁することにより文字が消去され、再び磁気ヘッドによりデータに対応した別の内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、新たなデータに対応した磁性粒子による表示像が形成される。
可逆熱変色層は、冷却装置により−14℃以下に冷却して全面を紫色に変色させた後、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した新たな内容の表示像が形成される。
【0041】
実施例5(図5参照)
基材として白色ポリエステルフィルム(厚さ50μm)にガンマ酸化鉄(γ−Fe)を含む磁気記録材料を塗布した磁気層2と、スペーサ3として中央部に10mm×40mmの孔(打ち抜き部)を有するポリエステルフィルム(厚さ300μm)とを貼着した。
次いで、磁性粒子4(球状還元鉄粉)をスペーサの孔に充填した後、表示層5として透明ポリエステルフィルム(50μm)を貼着した。
前記表示層上の表示セルを除く部分に、温度変化により黒色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−22℃、T:58℃、ΔH:67℃)を含むインキを用いて可逆熱変色層6を設け、ついで、前記可逆熱変色層上に雲母の表面を二酸化チタンで被覆した透明性金属光沢顔料(金色)を含むインキを用いて勤続光沢層8を設けて可逆熱変色性IC磁気表示カード1を得た。
前記可逆熱変色層上には金属光沢層が存在するため、可逆熱変色層が黒色の時は金色が視認される。
なお、前記カードにはICチップ7を設けてなる。
【0042】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段と、熱による表示像を消去、表示する加熱及び冷却手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、着磁手段である磁気ヘッドにデータに対応した内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、データに対応した磁性粒子による表示像(文字)が形成される。
可逆熱変色層(予め−22℃以下に冷却して全面を黒色に変色させた状態)で加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した内容の表示像(金地に白色の抜き文字)が形成される。
【0043】
前記カードは、電気や磁気の影響によって磁気による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと熱による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。また、高温下や低温下の環境温度により熱による表示像が視認されなくなっても、ICチップ内の電子データと磁気による表示像は残存するため、カード内のデータに関する情報を把握することができた。
電気や磁気と、高温下や低温下の環境温度の双方が同時に影響することは極めて少なく、記録情報を常に把握できる実用性に富む可逆熱変色性IC磁気表示カードが得られた。
【0044】
前記カードは、再び装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、磁気層を消磁することにより文字が消去され、再び磁気ヘッドによりデータに対応した別の内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、新たなデータに対応した磁性粒子による表示像が形成される。
可逆熱変色層は、冷却装置により−22℃以下に冷却して全面を黒色に変色させた後、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した新たな内容の表示像が形成される。
【0045】
比較例1
基材として白色ポリエステルフィルム(厚さ50μm)にガンマ酸化鉄(γ−Fe)を含む磁気記録材料を塗布した磁気層と、スペーサ3として中央部に10mm×40mmの孔(打ち抜き部)を有するポリエステルフィルム(厚さ300μm)とを貼着した。
次いで、磁性粒子(球状還元鉄粉)をスペーサの孔に充填した後、表示層として透明ポリエステルフィルム(厚さ50μm)を貼着して磁気表示カードを得た。
なお、前記カードにはICチップを設けてなる。
【0046】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、磁気による表示像を消去、表示する消磁及び着磁手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
表示セルには、着磁手段である磁気ヘッドにデータに対応した内容の文字パターンを構成する電流が流され、磁気層に文字パターンを構成する線部が生じ、この線部に磁性粒子を流動して吸引させ、データに対応した磁性粒子による表示像(文字)が形成される。
【0047】
前記カードは、電気や磁気の影響によって磁気による表示像が視認できなくなると、カード内のデータに関する情報を把握することができなくなり、利便性を損なうものであった。
【0048】
比較例2
ポリエステルフィルム(厚さ300μm)表面に、温度変化によりピンク色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(T:−14℃、T:61℃、ΔH:64℃)を含むインキを用いて可逆熱変色層を設けて可逆熱変色性カードを得た。
なお、前記カードにはICチップを設けてなる。
【0049】
前記カードを、カードのICチップに記録されているデータの読み取り手段と、新たなデータを書き込む手段と、熱による表示像を消去、表示する加熱及び冷却手段とからなる装置に挿入すると、ICチップには新たなデータが書き込まれる。
可逆熱変色層(予め−14℃以下に冷却して全面をピンク色に変色させた状態)には、加熱手段であるサーマルヘッドにより熱印加してデータに対応した内容の表示像(ピンク地に白色の抜き文字)が形成される。
【0050】
前記カードは、高温下や低温下の環境温度によって熱による表示像が視認されなくなると、カード内のデータに関する情報を把握することができなくなり、利便性を損なうものであった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に用いられる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【図2】本発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードの一実施例の縦断面図である。
【図3】本発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードの他の実施例の縦断面図である。
【図4】本発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードの他の実施例の縦断面図である。
【図5】本発明の可逆熱変色性IC磁気表示カードの他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0052】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 可逆熱変色性IC磁気表示カード
2 磁気層
3 スペーサ
4 磁性粒子
5 表示層
6 可逆熱変色層
7 ICチップ
8 金属光沢層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気層と、透明な表示部を有する表面層間に表示セルを設け、前記表示セルに磁性粒子を封入した磁気カードにおいて、前記カードがICチップを備えてなり、且つ、カードに可逆熱変色性材料を含む可逆熱変色層を設けてなる可逆熱変色性IC磁気表示カード。
【請求項2】
磁気層と、透明な表示部を有する表面層間に表示セルを設け、前記表示セルに磁性粒子を封入した磁気カードにおいて、前記カードがICチップを備えてなり、且つ、表示層中に可逆熱変色性材料を含有してなる可逆熱変色性IC磁気表示カード。
【請求項3】
磁気層と、透明な表示部を有する表面層間に表示セルを形成するスペーサーを設け、前記表示セルに磁性粒子を封入した磁気カードにおいて、前記カードがICチップを備えてなり、且つ、スペーサー中に可逆熱変色性材料を含有してなる可逆熱変色性IC磁気表示カード。
【請求項4】
前記可逆熱変色性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性IC磁気表示カード。
【請求項5】
前記マイクロカプセル顔料が、色濃度−温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して第1色相と第2色相間の互変性を呈し、各相の保持温度域が共に常温域にある顔料であり、該顔料は第1色相状態にあって温度が上昇する過程では、第2の温度Tに達すると、第1色相は変色し始め、第2の温度Tより高い温度T以上の温度域で完全に第2色相となり、第2色相状態にあって温度が下降する過程では、前記第2の温度Tより低い第1の温度Tに達すると、第2色相は変色し始め、第1の温度Tより低い温度T以下の温度域で完全に第1色相となり、前記第1の温度Tと第2の温度Tの間の温度域で第1色相或いは第2色相が選択的に保持されるヒステリシス特性を示し、温度Tは−30〜10℃の範囲にあり、温度Tが40〜90℃の範囲にある請求項4記載の可逆熱変色性IC磁気表示カード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−217393(P2008−217393A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53697(P2007−53697)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】