説明

可食フィルム、可食フィルム組成物、可食フィルムの個包装体及びその製造方法

【課題】 水で膨潤させた可食フィルムを個別に包装してなる可食フィルムの個別包装体を提供すること。
【解決手段】 耐水性材料からなる包装用袋3と、水膨潤性の可食フィルム2と、該可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液とからなり、上記包装用袋3は、上記可食フィルム2の周囲で封止されて密封されており、上記可食フィルム2は上記水又は水溶液の全量を吸収して膨潤している可食フィルムの個包装体1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食フィルム、可食フィルム組成物、可食フィルムの個包装体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、水で膨潤させるのに適した可食フィルム、可食フィルム組成物、並びに水で膨潤した可食フィルムを封入してなる個包装体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可食フィルムを個別に包装してなる可食フィルムの個包装体は、種々提案されて用いられている(たとえば特許文献1)。
ここで用いられる可食フィルムは、用途に応じて種々のものが用いられるが、食感や有効成分との関係から水や水溶液で膨潤させた、型崩れのないものも好ましく用いられる。
しかしながら、従来は、膨潤させた可食フィルムを個別に包装してなる個包装体は提案されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−61108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、膨潤させるのに適した可食フィルム、可食フィルム組成物、並びに水で膨潤させた可食フィルムを個別に包装してなる可食フィルムの個別包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、水で膨潤させた可食フィルムの個別包装体が提案されていない理由について種々検討した結果、膨潤させることによりフィルムの型崩れが発生しやすくなり、また粘着性が発現して滑沢性滑走性が失われ、個別包装する際の操作性が著しく低下することにその理由があることを見出し、かかる理由の解消に向けて更に検討した結果、可食フィルムの水分含有量が重要であることを知見すると共に、可食フィルムを包装体に収容する工程と水を包装体に収容する工程とを別々に行うことにより上記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記構成により、上記目的を達成したものである。
1.水分含有量が15重量%以下であり、且つ水膨潤性である可食フィルム。
2.1記載の可食フィルムと、該可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液とからなる可食フィルム組成物。
3.耐水性材料からなる包装用袋の中に、水膨潤性の可食フィルムと、該可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液とが封入されてなり、
上記包装用袋は、上記可食フィルムの周囲で封止されて密封されており、
上記可食フィルムは上記水又は水溶液の全量を吸収して膨潤している可食フィルムの個包装体。
4.耐水性材料からなる包装用袋と、水膨潤性の可食フィルムと、水又は水溶液とからなり、
上記包装用袋内に水分含有量15重量%以下の上記可食フィルムを収納し、それと同時に又はその後に、水又は水溶液を上記可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部投入した後、上記包装用袋における上記可食フィルムの周囲を封止して密封してなる可食フィルムの個包装体。
5.上記可食フィルムが、水膨潤性基剤を主成分として含有する可食フィルムである3又は4に記載の可食フィルムの個包装体。
6.上記水膨潤性基剤が、活性基を含む多糖類である5に記載の可食フィルムの個包装体。
7.上記包装用袋が耐水性を有する表面層とヒートシール性を有する内面層とからなるフィルム積層体である請求項3又は4に記載の可食フィルムの個包装体。
【0007】
また本発明の製造方法は下記構成により上記目的を達成したものである。
8. 水で膨潤した可食フィルムを個別に包装用袋に封入してなる可食フィルムの個包装体の製造方法であって、
水分含有量が15重量%以下の可食フィルムを包装用袋内に収納するフィルム収納工程と、
上記フィルム収納工程と同時に又はその後に、上記可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液を包装用袋内に投入する水分投入工程と、
上記水分投入工程の後、上記可食フィルムの周囲における包装用袋の解放部分を封止する密封工程とを具備する可食フィルムの個包装体の製造方法。
9.2記載の可食フィルム組成物を用いた有効成分材摂取補助剤であって、
水または水溶液を吸収して膨潤した可食フィルムに所望の形態の有効成分材を包摂させて、該有効成分材が膨潤した可食フィルムで包摂された状態で使用者が該有効成分材を摂取できるようにすることを特徴とする有効成分材摂取補助剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の可食フィルムの個包装体は、水で膨潤させた可食フィルムを個別に包装してなるものである。
特に水を飲むことも困難な重度の嚥下障害者や薬を飲みにくい老人、意識の薄れた患者、幼児向けの製剤の個包装体として適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の可食フィルムの個包装体の1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す個包装体を開封した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2のIII-III断面図であり、本発明に用いられる包装用袋の形成材の断面図である。
【図4】図4は、本発明の個包装体の製造方法の各工程を示す図であり、(a)及び(b)はフィルム収納工程を、(c)は水分投入工程を示す概要図である。
【図5】図5は、本発明の個包装体の他の実施形態を示す平面図である。
【図6】図6は、その使用態様を示す概要図である。
【図7】図7は、本発明の個包装体に使用できる器具を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の有効成分材摂取補助剤の使用態様を示す斜視図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、本発明の有効成分材摂取補助剤の別の使用態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0010】
1 可食フィルムの個包装体、11 非シール部、2 可食フィルム、3 包装用袋、31 シール部、32 表面層、33 内面層
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の可食フィルムの個包装体について図面を参照して説明しつつ、本発明の可食フィルム及び組成物についても説明する。
図1に示す実施形態の可食フィルムの個包装体1は、耐水性材料からなる包装用袋3の中に、可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部、好ましくは2500〜3000重量部の配合量の水又は水溶液(以下、両者を総称して「水等」という)の全量を吸収してなる膨潤した可食フィルム2が封入されてなり、包装用袋3は、可食フィルム2の周囲にヒートシールにより形成されたシール部31で封止されて密封されている。
ここで上記可食フィルム(本発明の可食フィルム)は、乾燥状態の可食フィルムであり、水分含有量15重量%以下の可食フィルムである。
上記水等が1000重量部未満であると、可食フィルムが水膨潤せず、3500重量部を超えると水を吸収しきれなくなり可食フィルムから水が滲出する。
【0012】
本実施形態の個包装体は、図1に示すように開封用の非シール部11が設けられており、この非シール部11を持って引き上げることにより図2に示すように開封して使用することができる。このため、水等を吸収して膨潤し、粘着性が高くなった可食フィルムであっても、開封した状態で包装体から使用者の口へ直接供給することができるため、使用時の操作性に優れたものである。
【0013】
各構成部材の形成材料について説明する。
上記包装用袋としては、通常可食フィルムの個包装体に用いられるフィルムであって耐水性を有するものであれば特に制限なく用いることができるが、たとえば図2及び3に示すような、耐水性を有する表面層32と内面層とからなり、内面層がヒートシール性を有する外枠部33aと剥離性を有するフィルム当接部33bとからなるフィルム積層体を用いることができる。
表面層32の形成材料として用いられる耐水性を有するフィルム材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
内面層は、表面層と同じ形成材料で形成されたフィルム材料に、さらに外枠部とフィルム当接部とで異なる材料を用いてコーティングするなどして形成される。外枠部33aの形成材料としては、ヒートシール性を有する材料が用いられ、具体的にはヒートシール粘着剤として市販されているものを特に制限なく用いることができる。
たとえば、下記する粘着剤等が挙げられる。
ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ゼラチン、プルラン、カゼイン、ツェイン、セラック、サンダラック等の植物樹脂等
また、フィルム当接部33bの形成材料は、剥離加工に用いられるシリコーン樹脂やフッ素樹脂等を用いることができる。
内面層33は、ポリプロピレンフィルムの一面にヒートシール粘着剤を塗布することにより形成することができる。
【0014】
上記の水膨潤性の可食フィルム(本発明の可食フィルム)としては、下記水膨潤性基剤を主成分として含有し、さらに可塑剤、乳化剤、その他の添加剤を含有してなるフィルムを挙げることができる。
【0015】
上記水膨潤性基剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デンプン、キサンタンガム、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カンテン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、酢酸フタル酸セルロース(別名:セルロースアセテートフタレート、CAP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、トラガント、アラビアゴム、ローカストビーンズガム、グアーガム、カラギーナン(カラゲナン)、デキストリン、デキストラン、アミロース、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、プルラン、キトサン、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、プランタゴ種皮、ガラクトマンナン、オイドラギット、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アルキルエステル、ゼラチン、セラック系樹脂(セラック、白色透明セラック)、デンプン、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、水不溶性メタクリル酸共重合体、メタクリル酸エチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・メタクリル酸メチル共重合体、プルラン等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。
これらの中でも活性基を含む多糖類を好ましく用いることができ、具体的には、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、寒天、タマリントガム等を挙げることができる。また、これらの活性基を含む多糖類と活性基を含まない多糖類とを組み合わせて用いることもできる。この場合活性基を含む多糖類の含有率は、水膨潤性基剤全体中10重量%以上とするのが好ましい。
【0016】
上記乳化剤は、溶液中の薬物等の分散性を高め、製造過程における可食フィルム形成用溶液を塗工する際に被塗工物である基材フィルム上にはじきが出るのを防ぐための成分であり、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、大豆由来レシチン等の界面活性剤を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。また、「サーフホープ」(ショ糖脂肪酸エステルの商品名、三菱化学フーズ社製)、「M-7D」(ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品、三菱化学フーズ社製)、「サンレシチンA−1」(大豆由来レシチンの市販品、太陽化学社製)等の市販品を用いることもできる。
本発明においては、これらの中でも特にショ糖脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
上記乳化剤の使用量は、上記水膨潤性基剤100重量部に対して 1〜20重量部とするのが好ましく、1〜15重量部とするのがさらに好ましい。
【0017】
上記可塑剤は、可食フィルムに柔軟性を付与するための成分であり、グリセリン、ソルビトール、ポリグリセリン等を挙げることができ、使用に際してはそれぞれ単独または2種以上混合して用いることができる。また、市販品を用いることもできる。
本発明においては、これらの中でも特にグリセリンが好ましく用いられる。
上記可塑剤の使用量は、上記水膨潤性基剤100重量部に対して5〜50重量部とするのが好ましく、10〜50重量部とするのがさらに好ましい。
【0018】
また、上記可食フィルムには、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で他の添加剤、たとえば、リン酸カリウム等のゲル化促進剤、麦芽還元糖水飴、ショ糖、乳糖、果糖又はサッカリン、アスパルテーム、アスパルテーム・L−フェニルアラニン化合物、スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビア等の甘味料、ペパーミント、ハッカ油、チェリーフレーバー、オレンジ油、ウイキョウ油、エチルマルトール、L−メントール等の香料、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の防腐剤、酸化チタン等の不透明化剤、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等の着色剤;ビグアナイト系薬剤、ペオニフロリン、ドネぺジル、イブプロフェン、臭化ブチルスコポラミン、コンドロイチン群、イソソルビト等の各種薬効成分等を用いることもできる。
【0019】
本発明の可食フィルムにおける特に好ましい組成を以下に示す。
キサンタンガム、ローカストビーガム、カラギーナン、ジェランガム、グアーガム及びこれらの混合物からなる群より選択される1以上の水溶性基剤と、可塑剤としてのグリセリンとを必須の構成成分とする組成。
なお、上記組成における配合割合などは上述の説明の通りである。
【0020】
上記水等は、水又は水溶液である。水溶液は、水に各種薬効成分(ビグアナイト系薬剤、ペオニフロリン、ドネぺジル、イブプロフェン、臭化ブチルスコポラミン、コンドロイチン群、イソソルビト等)や甘味料、香料等を溶解させたものを用いることができ、この際の溶解させる量は任意である。
本発明の可食フィルム組成物は、上述の本発明の可食フィルムと上述の配合量の水等とからなる。この際両者の使用形態は特に制限されず、本実施形態のように包装袋の中に両者を封入した形態としてもよいし、それぞれ別個に用意しておき、使用時に使用者が両者を混合して可食フィルムに水等を吸収させるようにしてもよい。
【0021】
次いで、本発明の個包装体の製造方法について説明する。
本発明の可食フィルムの個包装体の製造方法は、上述の本発明の可食フィルムの個包装体の製造方法である。具体的には、水分含有量が15重量%以下の可食フィルムを包装用袋内に収納するフィルム収納工程と、上記フィルム収納工程と同時に又はその後に、上記可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部、好ましくは2500〜3000重量部の上記水等を包装用袋内に投入する水分投入工程と、上記水分投入工程の後、上記可食フィルムの周囲における包装用袋の解放部分を封止する密封工程とを行うことにより実施される。
上記可食フィルムの水分含有量(可食フィルム全体の重量中の水分量)が、15重量%を超えると、粘性が高くなり操作性が悪くなり、個別に包装することが困難となる。
また、水等の投入量が1000重量部未満であると、可食フィルムが膨潤したとは言えない状態であり、膨潤することにより得られるべき効果が得られない。また、3500重量部を超えると、吸収されない水分が袋内に存在することになり、可食フィルム劣化の原因となることや開封時に使用者に向けて水が飛んでしまう等の問題が生じる。
【0022】
以下、各工程について詳細に説明する。
ここでは特に詳述しないが、上記各工程を行う前に、包装用袋に用いるフィルムを所定形状に切断する工程や可食フィルムの製造工程を行い、所定の包装用袋形成材料及び所定形状の可食フィルムを得る。
【0023】
フィルム収納工程は、図4(a)及び(b)に示すようにして行う。
すなわち、図4(a)に示すように、包装用袋を形成する前の長方形状の袋形成用フィルムの内面層におけるフィルム当接部33bの所定位置に可食フィルム2を載置する。次いで、図4(b)に示すように、もう一枚の袋形成用フィルムをその内面層33が可食フィルムに当接するように重ね合わせて3辺をヒートシールして、図4(c)に示す形態の1辺が開封状態の袋を形成する。
この工程は、このように完全な袋を形成せずに2枚のフィルムの間に可食フィルムを挟み、当該2枚のフィルムの所定位置をヒートシールして、得られる包装用袋の内部に可食フィルムが収納された状態とすることにより行うことができる。
なお、予め1辺又は2辺が解放された包装用袋を形成した後、可食フィルムを収納してもよい。
【0024】
水分投入工程は、図4(c)に示すように、解放された1辺から所定量の水等を投入することにより行う。
水等の供給方法は特に制限されないが、ヒートシールに悪影響を与えないように針状の水等放出口を有する水分供給器を用いて行うのが好ましい。
【0025】
密封工程は、包装用袋の解放されている部分を封止して完全に密封状態とする工程であり、特に図示しないが、図4(c)における解放状態の辺31aをヒートシールすることにより行う。
【0026】
上述の各工程を行うことにより本発明の個包装体を得ることができ、必要に応じて包装体の外表面に印刷を施す工程等各種の後工程を行うことができる。
【0027】
以上のようにして得られる本発明の可食フィルムの個包装体は、耐水性材料からなる上記包装用袋と、水膨潤性の上記可食フィルムと、上記水等とからなり、上記包装用袋内に水分含有量が15重量%以下の可食フィルムを収納し、それと同時に又はその後に、上記可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部、好ましくは2000〜3000重量部の上記水等を投入した後、上記包装用袋における上記可食フィルムの周囲を封止して密封してなるものであり、水で膨潤した可食フィルムが包装用袋内に封入されているものである。
【0028】
次に、本発明の有効成分材摂取補助剤について説明する。
本実施形態の有効成分材摂取補助剤200は、図8に示すように、本発明の可食フィルム組成物からなる膨潤フィルム201を用いたものである。
そして、本実施形態の有効成分材摂取補助剤200は、図8に示すように、水等を吸収して膨潤した可食フィルムとしての膨潤フィルム201に所望の形態の有効成分材202を包摂させて、有効成分材が膨潤した可食フィルムで包摂された状態で使用者が該有効成分材を摂取できるようになされている。
包摂させる形態は特に制限されないが、図8に示すように、あらかじめ可食フィルムの厚さ方向中央部分に切り込み203を入れておき、この切り込み203に錠剤やカプセル形態の有効成分材を投入する形態とすることができる。
この際用いることができる有効成分材は特に制限されず、各種薬剤やサプリメントの成形物等を用いることができる。
【0029】
なお、本発明は上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
たとえば、包装用袋の形状を蓋つきの箱状とし、1枚又は複数枚の可食フィルムを収納してなる形態とすることができる。この場合、箱の深さを調節することで収納する可食フィルムの枚数を増やすことができる他、コップの代わりとして用いる等することができる。また、スティック状の包装用袋に棒状又は短冊状の可食フィルムを収納してなる形態等とすることができる。
【0030】
また、図5に示す形態とすることもできる。なお、以下の説明では上述の実施形態と異なる部分を中心に説明する。特に説明しない点については上述の説明が適宜適用される。
図5に示す形態の個包装体1は、矩形状の個包装体の一辺が凸設されて形成された凸設部15が設けられている。凸設部15の先端側にはミシン目17が設けられて形成された切り離し部16が設けられており、切り離し部16を切り離すことにより包装体を開封し、可食フィルムを取り出す。この際、凸設部15が設けられているので、図6に示すように、凸設部15を口に含んで吸引するか、包装用袋における凸設部15の反対側から押し出すようにすることで、簡易且つ確実に膨潤した可食フィルムを口中に投入することができる。本実施形態の可食フィルムは、水分で膨潤しているので、膨潤して重量がある袋の部分を口よりも高く持ち上げるだけで流れるようにつるんとのど元まで移動し、わずかな嚥下力で飲み下すことができる。
【0031】
また、本発明の個包装体は、図7に示すような器具100を用いて使用することもできる。器具100は、取っ手102と、可食フィルム載置部101とからなり、使用時には取っ手102を手に持ち、可食フィルム載置部101上に水等で膨潤した可食フィルムを載せて使用者の口に運ぶことにより、水等で膨潤して粘性が出ている可食フィルムを、手を汚すことなく食することができる。
次に、図9を参照して本発明の有効成分材摂取補助剤の他の実施形態について説明する。
【0032】
図9(a)に示す有効成分材摂取補助剤210は、可食フィルム211で有効成分材フィルム222をサンドイッチしてなる。有効成分材フィルム222は、医薬品分野や健康食品分野、食料品分野において通常用いられている各種成分をフィルム化したものを特に制限なく用いることができる。
図9(b)に示す有効成分材補助剤220は、可食フィルム221で有効成分材222を巻回してなり、接着用ののりしろ部223を設けている。使用時には、のりしろ部223を可食フィルムの表面に貼り付けて(c)に示すように円筒状とするなどして使用することができる。このように形成することで、有効成分材の味を感じる方向が上下両方向のみとなり、(a)に示すような形態に比して僻みなどの味による苦痛を低減することができる。そのため苦みの強い有効成分の場合などに有効である。
図9(c)に示す有効成分材補助剤230は、円筒状に形成された可食フィルム231の内部に有効成分232が投入されている。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが本発明はこれらに制限されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
以下に示す組成で可食フィルムを調製した。
フィルムの調整に際しては、表1に示す組成で可食フィルム形成用の溶液を製造し、得られた溶液をキャスティングして液体膜を形成し、得られた液体膜を乾燥させて長尺状のフィルムを得、この長尺状のフィルムを所定位置で切断して長方形状とし水分含有量15重量%以下(具体的には10−13重量%)の可食フィルムの乾燥体を得た。
得られた可食フィルムを、図4(a)及び(b)に示すように長方形状の包装袋用フィルムに配設し、その3辺をヒートシールした後、フィルム100重量部に対して3000重量部の水を包装体中に注入した。その後、残りの一辺を封止して、可食フィルムの個別包装体を得た。
得られた個包装体を開封して内容物を観察したところ、可食フィルムが水分をすべて吸収して膨潤しており、開封した段階で水が垂れるようなことはなかった。得られた可食フィルムの水分含有率を測定したところ、96.7重量%であった。
【表1】

【0035】
〔実施例2〕
可食フィルム形成用溶液の組成を下記表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして個包装体を得た。
得られた個包装体を開封して内容物を観察したところ、可食フィルムが水分をすべて吸収して膨潤しており、開封した段階で水が垂れるようなことはなかった。
用いた可食フィルムの水分含有率を測定したところ15重量%であった。
【表2】

【0036】
〔実施例3〕
可食フィルム形成用溶液の組成を下記表3に示す組成とした以外は実施例1と同様にして個包装体を得た。
得られた個包装体を開封して内容物を観察したところ、可食フィルムが水分をすべて吸収して膨潤しており、開封した段階で水が垂れるようなことはなかった。
用いた可食フィルムの水分含有率を測定したところ12重量%であった。
【表3】

【0037】
〔実施例4〕
可食フィルム形成用溶液の組成を下記表4に示すA〜Gの各組成とした以外は実施例1と同様にして個包装体を得た。
得られた個包装体を開封して内容物を観察したところ、可食フィルムが水分をすべて吸収して膨潤しており、開封した段階で水が垂れるようなことはなかった。
用いた可食フィルムの水分含有率を測定したところA:15重量%、B:15重量%、C:15重量%、D:15重量%、E:15重量%、F:15重量%、G:15重量%であった。
【表4】

【0038】
〔実施例5〕
可食フィルム形成用溶液の組成を下記表5に示組成とした以外は実施例1と同様にして個包装体を得た。
得られた個包装体を開封して内容物を観察したところ、可食フィルムが水分をすべて吸収して膨潤しており、開封した段階で水が垂れるようなことはなかった。
用いた可食フィルムの水分含有率を測定したところ15重量%であった。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有量が15重量%以下であり、且つ水膨潤性である可食フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の可食フィルムと、該可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液とからなる可食フィルム組成物。
【請求項3】
耐水性材料からなる包装用袋の中に、該包装袋内に収容される水膨潤性の可食フィルムと、該可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液とが封入されてなり、
上記包装用袋は、上記可食フィルムの周囲で封止されて密封されており、
上記可食フィルムは上記水又は水溶液の全量を吸収して膨潤している可食フィルムの個包装体。
【請求項4】
耐水性材料からなる包装用袋と、水膨潤性の可食フィルムと、水又は水溶液とからなり、
上記包装用袋内に水分含有量15重量%以下の上記可食フィルムを収納し、それと同時に又はその後に、水又は水溶液を上記可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部投入した後、上記包装用袋における上記可食フィルムの周囲を封止して密封してなる可食フィルムの個包装体。
【請求項5】
上記可食フィルムが、水膨潤性基剤を主成分として含有する可食フィルムである請求項3又は4に記載の可食フィルムの個包装体。
【請求項6】
上記水膨潤性基剤が、活性基を含む多糖類である請求項5に記載の可食フィルムの個包装体。
【請求項7】
上記包装用袋が耐水性を有する表面層とヒートシール性を有する内面層とからなるフィルム積層体である請求項3又は4に記載の可食フィルムの個包装体。
【請求項8】
水で膨潤した可食フィルムを個別に包装用袋に封入してなる可食フィルムの個包装体の製造方法であって、
水分含有量が15重量%以下の可食フィルムを包装用袋内に収納するフィルム収納工程と、
上記フィルム収納工程と同時に又はその後に、上記可食フィルム100重量部に対して1000〜3500重量部の水又は水溶液を包装用袋内に投入する水分投入工程と、
上記水分投入工程の後、上記可食フィルムの周囲における包装用袋の解放部分を封止する密封工程とを具備する可食フィルムの個包装体の製造方法。
【請求項9】
請求項2記載の可食フィルム組成物を用いた有効成分材摂取補助剤であって、
水または水溶液を吸収して膨潤した可食フィルムに所望の形態の有効成分材を包摂させて、該有効成分材が膨潤した可食フィルムで包摂された状態で使用者が該有効成分材を摂取できるようにすることを特徴とする有効成分材摂取補助剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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